JP2019144152A - がんに対する含硫アミノ酸枯渇療法 - Google Patents
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Abstract
【課題】システイン要求性のがんに対し、システインを枯渇させることにより増殖を抑制するという新規メカニズムに基づくがん治療法の提供。【解決手段】がん患者であって、組織中及び/又は体液中にシスタチオニンγ−リアーゼを発現し、及び/又は硫化水素を発生している患者をシステイン枯渇療法に奏効性を示す患者と判定することを含む、システイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者を選別する方法。シスタチオニンγ−リアーゼ阻害剤及びxCT阻害剤を含む、シスタチオニンγ−リアーゼを過剰発現しているがんの治療薬。前記治療薬に加えて、同時又は別々に投与される白金製剤、イリノテカン、又はSN38を含有することを特徴とする治療薬。【選択図】なし
Description
本発明は,白金製剤の化学療法への抵抗性を判定する方法,及び該薬剤抵抗性を低減させる方法に関する。
シスプラチン(CDDP)等の白金製剤による化学療法は,初回腫瘍減量手術を受ける卵巣癌患者の延命効果をもたらす。しかし,初回腫瘍減量手術後の化学療法の効果がない患者の結末は奏効性を示す患者よりも極めて悪い。卵巣癌への白金製剤への抵抗性のメカニズムが同定されれば,白金製剤への抵抗性メカニズムの阻害との併用療法により,腫瘍減量手術により治療された進行期にある卵巣癌患者の延命効果を向上し得ると考えられる。
白金製剤への抵抗性を示す患者における予測バイオマーカーを同定するため,本発明者らはこれまで,腫瘍減量手術後に白金化学療法で治療されたステージIII/IV卵巣癌患者由来の組織マイクロアレイ(TMAs)を,新しい技術である抗体ベースのプロテオミクスを用いてスクリーニングを行った。その結果,腫瘍減量手術後の白金製剤の化学療法に抵抗性を示すステージIII/IV卵巣癌患者において,シスタチオニンγ−リアーゼ(CSE又はCTH;EC4.4.1.1)が過剰発現していることを見出した(特許文献1)。CSEは,シスタチオニンからシステインを生成するトランススルフレーション酵素であり,システインとホモシステインから硫化水素(H2S)を合成することができる。本検討の結果から,CDDPへの抵抗性の新しいメカニズムとして,CSEの過剰発現が関与することが示された。CSEはCDDPに対する抵抗性を減じるための分子標的であり,かつ,CSEの過剰発現は腫瘍減量手術後化学療法による治療戦略を決定するための予測バイオマーカーとして利用することができることが示されている。
本発明者らは,腫瘍におけるシステイン代謝についてさらに解析を重ねた結果,腫瘍におけるシステインの産生と輸送を阻害する,すなわち腫瘍におけるシステインを枯渇させることで,白金製剤を併用することなくCSEを過剰発現している卵巣癌を治療できることを発見し,新規の治療法を提供できることを見出した。
本発明はかかる知見に基づきなされたものであり,よって,本発明は以下の発明に関する。
(1) がん患者であって,組織中及び/または体液中にシスタチオニンγ−リアーゼ(CSE)を発現し、及び/または硫化水素を発生している患者をシステイン枯渇療法に奏効性を示す患者と判定することを含む,システイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者を選別する方法。
(2) 前記がん患者の組織中及び/または体液中のシスタチオニン及び/または硫化水素を測定することを含む,(1)に記載のシステイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者を選別する方法。
(3) CSE阻害剤及びxCT阻害剤を含む,CSEを過剰発現しているがんの治療薬。
(4) CSE阻害剤が,CSEに特異的に結合する抗体,CSEに対するアンチセンス,CSEに対するsiRNA又はshRNA,CSEに特異的に結合するアプタマーまたは化合物である,(3)記載の治療薬。
(5) CSE阻害剤が,プロパルギルグリシン,又は(S)−トランス−2−アミノ−4−(2−アミノエトキシ)−3−ブテン酸塩酸塩である,(4)記載の治療薬。
(6) CSEに対するshRNAが,5’−CCGGGCACCTCATTATCTTTCATAACTCGAGTTATGAAAGATAATGAGGTGCTTTTTG−3’(TRCN0000078263)(配列番号1),又は5’−CCGGCCTTCATAATAGACTTCGTTTCTCGAGAAACGAAGTCTATTATGAAGGTTTTTG−3’(TRCN0000078264)(配列番号2)の配列を有する,(3)記載の治療薬。
(7) xCT阻害剤が,xCTに特異的に結合する抗体,xCTに対するアンチセンス,xCTに対するsiRNA又はshRNA,xCTに特異的に結合するアプタマー,又は化合物である,(3)〜(6)のいずれか1項に記載の治療薬。
(8) xCT阻害剤が,サラゾスルファピリジン(SASP)、又はエラスチン(ERASTIN)である(7)に記載の治療薬。
(9) xCT阻害剤が,シスチントランスポーターとしての生物学的機能を阻害する,(7)に記載の治療薬。
(10) CSE阻害剤とxCT阻害剤が同時に又は別々に投与されることを特徴とする,(3)〜(9)のいずれか1項に記載の治療薬。
(11) 更に,同時又は別々に投与される白金製剤,イリノテカン,又はSN38を含有することを特徴とする,(3)〜(10)のいずれか1項に記載の治療薬。
(12) 組織中及び/または体液中にCSEを発現し、及び/または硫化水素を発生しているがん患者を治療するための、(3)〜(11)のいずれか1項に記載の治療薬。
(13) (1)又は(2)の方法によりシステイン枯渇療法に奏効性を示すと選別されたがん患者に(3)〜(11)のいずれか1項に記載の治療薬を投与することを含む、がん治療方法。
(14)(1)又は(2)の方法によりシステイン枯渇療法に奏効性を示す患者を選別すること、及びシステイン枯渇療法に奏効性を示すと選別されたがん患者に(3)〜(11)のいずれか1項に記載の治療薬を投与することを含む、がん治療方法。
(1) がん患者であって,組織中及び/または体液中にシスタチオニンγ−リアーゼ(CSE)を発現し、及び/または硫化水素を発生している患者をシステイン枯渇療法に奏効性を示す患者と判定することを含む,システイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者を選別する方法。
(2) 前記がん患者の組織中及び/または体液中のシスタチオニン及び/または硫化水素を測定することを含む,(1)に記載のシステイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者を選別する方法。
(3) CSE阻害剤及びxCT阻害剤を含む,CSEを過剰発現しているがんの治療薬。
(4) CSE阻害剤が,CSEに特異的に結合する抗体,CSEに対するアンチセンス,CSEに対するsiRNA又はshRNA,CSEに特異的に結合するアプタマーまたは化合物である,(3)記載の治療薬。
(5) CSE阻害剤が,プロパルギルグリシン,又は(S)−トランス−2−アミノ−4−(2−アミノエトキシ)−3−ブテン酸塩酸塩である,(4)記載の治療薬。
(6) CSEに対するshRNAが,5’−CCGGGCACCTCATTATCTTTCATAACTCGAGTTATGAAAGATAATGAGGTGCTTTTTG−3’(TRCN0000078263)(配列番号1),又は5’−CCGGCCTTCATAATAGACTTCGTTTCTCGAGAAACGAAGTCTATTATGAAGGTTTTTG−3’(TRCN0000078264)(配列番号2)の配列を有する,(3)記載の治療薬。
(7) xCT阻害剤が,xCTに特異的に結合する抗体,xCTに対するアンチセンス,xCTに対するsiRNA又はshRNA,xCTに特異的に結合するアプタマー,又は化合物である,(3)〜(6)のいずれか1項に記載の治療薬。
(8) xCT阻害剤が,サラゾスルファピリジン(SASP)、又はエラスチン(ERASTIN)である(7)に記載の治療薬。
(9) xCT阻害剤が,シスチントランスポーターとしての生物学的機能を阻害する,(7)に記載の治療薬。
(10) CSE阻害剤とxCT阻害剤が同時に又は別々に投与されることを特徴とする,(3)〜(9)のいずれか1項に記載の治療薬。
(11) 更に,同時又は別々に投与される白金製剤,イリノテカン,又はSN38を含有することを特徴とする,(3)〜(10)のいずれか1項に記載の治療薬。
(12) 組織中及び/または体液中にCSEを発現し、及び/または硫化水素を発生しているがん患者を治療するための、(3)〜(11)のいずれか1項に記載の治療薬。
(13) (1)又は(2)の方法によりシステイン枯渇療法に奏効性を示すと選別されたがん患者に(3)〜(11)のいずれか1項に記載の治療薬を投与することを含む、がん治療方法。
(14)(1)又は(2)の方法によりシステイン枯渇療法に奏効性を示す患者を選別すること、及びシステイン枯渇療法に奏効性を示すと選別されたがん患者に(3)〜(11)のいずれか1項に記載の治療薬を投与することを含む、がん治療方法。
本発明の治療薬は,システイン枯渇という新しいメカニズムに基づいたがん治療方法を提供することができる。これにより,これまでのがん治療戦略では治療できなかったがん,とくには白金製剤・イリノテカンが奏効しなかったがんについても治療できる可能性がある。
一態様において,本発明は,がん患者であって,組織中及び/または体液中にCSEを発現し、及び/または硫化水素を発生している患者をシステイン枯渇療法に奏効性を示す患者と判定することを含む,システイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者を選別する方法に関する。
本明細書において「がん」は,宿主生物にとって病原体となるような悪性形質転換を受けた細胞を意味する。原発性がん細胞(すなわち,悪性形質転換の部位の近くから得られた細胞)は,十分に確立された技術,特に組織学的検査により,非がん性細胞から容易に区別することができる。がんは,原発性がん細胞のみならず,転移がん細胞も含む。通常,固形腫瘍として現れるがんに言及する場合,「臨床的に検出可能な」腫瘍は,腫瘍塊に基づいて検出可能であり,例えば,CATスキャン,MRイメージング,X線,超音波,または触診,及び/又は患者から得られる試料中の1つ以上のがん特異的抗原の発現を検出可能な手順によって検出できる。がんとしては,これらに限定されるものではないが,肺癌,非小細胞肺癌,小細胞肺癌,非ホジキンリンパ腫,副腎皮質癌,AIDS関連癌,エイズ関連リンパ腫,小児小脳星細胞腫,小児大脳星細胞腫,基底細胞癌,皮膚癌(非黒色腫),胆道癌,肝外胆管がん,肝内胆管癌,膀胱癌,骨や関節の癌,骨肉腫と悪性線維組織球腫,脳癌,脳腫瘍,脳幹神経膠腫,小脳星細胞腫,神経膠腫,大脳星細胞腫/悪性神経膠腫,上衣腫,髄芽腫,テント上原始神経外胚葉性腫瘍,視経路および視床下部神経膠腫,頭頸部癌,転移性扁平上皮頸部癌,気管支腺腫/カルチノイド,カルチノイド腫瘍,神経系リンパ腫,中枢神経系の癌,中枢神経系リンパ腫,神経芽細胞腫,小児癌,Seziary症候群,頭蓋外胚細胞腫瘍,性腺外胚細胞腫瘍,肝外胆管癌,眼の癌,眼内黒色腫,網膜芽細胞腫,唾液腺癌,口腔癌,口腔空洞癌,口腔咽頭癌,口腔癌,舌の癌,食道がん,胃癌,消化管カルチノイド腫瘍,消化管間質腫瘍(GIST),小腸癌,結腸癌,結腸直腸癌,直腸癌,肛門直腸癌,肛門癌,胚細胞腫瘍,肝細胞(肝臓)癌,ホジキンリンパ腫,喉頭癌,咽頭癌,下咽頭癌,鼻咽頭癌,副鼻腔および鼻腔癌,咽喉癌,膵島細胞腫瘍(内分泌膵臓),膵臓癌,副甲状腺癌,肝臓癌,胆嚢癌,虫垂癌,腎臓癌,尿道癌,腎盂と尿管の移行上皮癌および他の泌尿器の癌,扁平上皮癌,陰茎癌,精巣癌,胸腺腫,胸腺腫および胸腺癌,甲状腺癌,前立腺癌,卵巣癌,卵巣上皮癌,卵巣低悪性度腫瘍,卵巣胚細胞腫瘍,妊娠性絨毛腫瘍,乳癌,子宮癌,子宮肉腫,子宮頸癌,子宮内膜がん,子宮体がん,膣がん,外陰癌,およびウィルムス腫瘍,急性リンパ芽球性白血病,急性骨髄性白血病,慢性リンパ性白血病,慢性骨髄性白血病,多発性骨髄腫,慢性骨髄増殖性疾患,ヘアリー細胞白血病,原発性中枢神経系リンパ腫,慢性骨髄増殖性疾患,皮膚T細胞リンパ腫,リンパ系新生物,Waldenstramのマクログロブリン血症,髄芽腫,皮膚癌(非メラノーマ),皮膚癌(黒色腫),褐色細胞腫,メルケル細胞皮膚癌,中皮腫,悪性中皮腫,多発性内分泌腫瘍症候群,骨髄異形成症候群,骨髄異形成/骨髄増殖性疾患,松果体芽腫および下垂体腫瘍,形質細胞腫,胸膜肺芽細胞腫,網膜芽細胞腫,横紋筋肉腫,肉腫,ユーイング腫瘍のファミリー,軟組織肉腫,軟組織肉腫,菌状息肉腫,カポジ肉腫を含み,好ましくは,卵巣癌である。
本明細書において,「がん患者」とは,上述の「がん」を発症していると診断されたヒトの他,当該「がん」を発症している蓋然性が高いヒトを含む。がんを発症している蓋然性が高いヒトには,例えば,がん特異的に上昇するマーカー分子の発現レベルが高いヒト,がん特異的に減少するマーカー分子の発現レベルが低いヒト,又は癌特異的な症状を呈するヒトが含まれる。がん患者には進行度に応じて0,I,II,III,及びIVの複数のステージが存在することが知られているが,本明細書におけるがん患者はいずれのステージの患者であってもよく,例えば,ステージIII又はIVの患者であり得る。
「組織」とは,がん組織,がん周辺組織を含み,それらの分画物若しくは処理物であってもよい。また,「体液」とは,血液,血漿,血清,リンパ液,尿,漿液,髄液(例えば,脳脊髄液),関節液,眼房水,涙液,唾液またはそれらの分画物若しくは処理物を挙げることができる。また,本発明の方法において使用する組織または体液は,前処理されたものであってもよいし,患者から採取した組織または体液をそのまま使用してもよい。
「組織中及び/または体液中にCSEを発現し、及び/または硫化水素を発生している」か否かは,当該がん患者の組織中及び/または体液中にCSE及び/または硫化水素を測定することにより判定することができる。よって,本発明は,がん患者の組織中及び/または体液中にCSE及び/または硫化水素を測定すること,並びに,組織中及び/または体液中にCSEを発現し、及び/または硫化水素を発生しているがん患者をシステイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者と判定することを含む,システイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者を選別する方法であってもよい。
具体的には,組織中及び/または体液中のCSEの測定は,生体外で測定又は診断する場合,酵素免疫測定法(EIA法),簡易EIA法,酵素結合イムノソルベントアッセイ法(ELISA法),ラジオイムノアッセイ法(RIA法),蛍光免疫測定法(FIA法)等の標識化免疫測定法;ウェスタンブロッティング法等のイムノブロッティング法;金コロイド凝集法等のイムノクロマト法;イオン交換クロマトグラフィ法,アフィニティークロマトグラフィ法等のクロマトグラフィ法;比濁法(TIA法);比ろう法(NIA法);比色法;ラテックス凝集法(LIA法);粒子計数法(CIA法);化学発光測定法(CLIA法,CLEIA法);沈降反応法;表面プラズモン共鳴法(SPR法);レゾナントミラーディテクター法(RMD法);比較干渉法等により行うことができる。
がん患者の組織中及び/または体液中のシスタチオニンの測定は、がん患者の組織及び/または体液をCSEと特異的に結合する物質(例えば、抗体若しくはその免疫結合性断片(F(ab’)2、Fab’、Fab、scFv、dsFv若しくはこれらの重合体、Diabody、及び、CDRを含むペプチドなど、本明細書全体において同様)、ペプチド、アプタマーなど)と接触させること、及び、当該物質と結合したCSEを測定することを含んでいてもよい。
また,組織中及び/または体液中の硫化水素を測定硫化水素の測定は、硫化水素と特異的に反応して発色するか,蛍光を発する物質を投与して,画像診断により診断することができる。たとえば、細胞内の硫化水素は、N−[3’,6’−Dihydroxy−3−oxo−3H−spiro(isobenzofuran−1,9’−xanthen)−5−yl]−(1,4,7,10−tetraazacyclododecane−1−acetamide−κN1,κN4,κN7,κN10)copper(2+)bis(trifluoroacetate)(製品名−SulfoBiotics−HSip−1、株式会社同仁化学研究所、日本)、又はN−[3’,6’−Bis(acetyloxy)−3−oxo−3H−spiro(isobenzofuran−1,9’−xanthen)−5−yl]−(1,4,7,10−tetraazacyclododecane−1−acetamide−κN1,κN4,κN7,κN10)copper(2+)bis(trifluoroacetate)(製品名−SulfoBiotics−HSip−1 DA、株式会社同仁化学研究所、日本)を用いて測定することができる。
CSEはシスタチオニンをシステインに変換する。本発明者らの見出したところによれば、CSEの発現が亢進することにより、シスタチオニンが著しく減少することが見出されていることから、CSEの代わりにシスタチオニンを測定することにより、組織中及び/または体液中にCSEを発現しているかどうかを判定してもよい。すなわち,本発明の選別方法は「CSEを発現している」の代わりに、「シスタチオニンが減少している」ことを利用してもよい。よって、本発明は,がん患者の組織中及び/または体液中にシスタチオニンを測定すること,並びに,組織中及び/または体液中のシスタチオニンレベルが低下しているがん患者をシステイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者と判定することを含む,システイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者を選別する方法を含む。組織中及び/または体液中シスタチオニンは、当業者周知の方法により測定することができる。
本発明の方法においては,被検がん患者の組織中及び/または体液中にCSEを発現し及び/または硫化水素が発生している場合には,当該がん患者はシステイン枯渇療法に奏効性を示すと判定され,被検がん患者の組織中及び/または体液中にCSEを発現し、及び/または硫化水素を発生していない場合には,当該がん患者はシステイン枯渇療法に奏効性を示さないと本発明のシステイン枯渇療法に奏効性を示さないと判定される。がん患者の選別は,定性的,定量的又は半定量的に行うことができる。すなわち,本明細書において,「発現している/発現していない」、及び「発生している/発生していない」とは,100%の発現/発生の有無を意味するものではなく,相対的な発現量/発生量の大小を意味する。よって,システイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者又はシステイン枯渇療法に奏効性を示すことが予め知られているがん患者と同程度又はそれ以上のCSEを発現し、及び/または硫化水素を発生している場合には,CSEを発現し、及び/または硫化水素を発生していると判定することができる。あるいは、システイン枯渇療法に奏効性を示さないがん患者又はシステイン枯渇療法に奏効性を示さないことが予め知られているがん患者と比較してより少ないCSEを発現し、及び/または硫化水素を発生している場合には,CSEを発現しておらず、及び/または硫化水素を発生していないと判定することができる。同様に、シスタチオニンレベルが低下しているとは、システイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者又はシステイン枯渇療法に奏効性を示すことが予め知られているがん患者と同程度又はそれ以下のシスタチオニンレベルであることを意味してもよい。あるいは、システイン枯渇療法に奏効性を示さないがん患者又はシステイン枯渇療法に奏効性を示さないことが予め知られているがん患者と比較してより高いシスタチオニンレベルである場合には,シスタチオニンレベルが低下しているとすることができる。また,本発明のシステイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者の選別方法は,システイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者を選別するための情報を提供する方法としてもよい。
本明細書において「システイン枯渇療法」とは,がん細胞内のシステインレベルを減少させることによりがんを治療又は予防する方法を意味する。システインレベルの減少は,CSE阻害剤により生体内のシステイン合成酵素であるCSEの発現及び/又は機能を阻害すること,及び,xCT阻害剤によりシスチントランスポーターであるxCTの発現及び/又は機能を阻害することにより達成することができる。
別の態様において,本発明は「シスタチオニンγ−リアーゼ(CSE)阻害剤及びxCT阻害剤を含む,CSEを過剰発現しているがんの治療薬」に関する。よって本発明の治療薬は,CSE阻害剤を含む。「シスタチオニンγ−リアーゼ(CSE)阻害剤」とは,CSEのシスタチオニンからシステインを合成する活性を結果的に阻害する薬剤であればよく,例えば,CSEの発現を阻害する薬剤又はシスタチオニンγ−リアーゼと結合してその活性を阻害する薬剤が含まれる。CSE阻害剤としては,例えば,CSEに特異的に結合する抗体又はその免疫反応性断片,CSEに対するアンチセンス,CSEに対するsiRNA又はshRNA,CSEに特異的に結合するアプタマー,プロパルギルグリシン,及び(S)−トランス−2−アミノ−4−(2−アミノエトキシ)−3−ブテン酸塩酸塩を挙げることができる。CSEに対するshRNAとしては,5’−CCGGGCACCTCATTATCTTTCATAACTCGAGTTATGAAAGATAATGAGGTGCTTTTTG−3’(TRCN0000078263)(配列番号1),及び5’−CCGGCCTTCATAATAGACTTCGTTTCTCGAGAAACGAAGTCTATTATGAAGGTTTTTG−3’(TRCN0000078264)(配列番号2)を挙げることができる。
被検物質がCSEのシスタチオニンからシステインを合成する活性を阻害するか否かは,例えば,当該被験物質の存在下又は非存在下(コントロール)でCSE及びシスタチオンを接触させ,生成したシステインの量を比較することにより決定することができる。被験物質の存在下のシステインの生成量が,コントロールと比較して減少するとき,当該被験物質はCSEのシスタチオニンからシステインを合成する活性を阻害すると判定することができる。
また,本発明の治療薬は,前記CSE阻害剤と共にxCT阻害剤を含む。「xCT阻害剤」とは,xCTのシスチントランスポーターとしての活性を結果的に阻害する薬剤であればよく,例えば,xCTの発現を阻害する薬剤又はxCTと結合してその活性を阻害する薬剤,及びxCTを安定化することが知られているCD44vと結合してxCTの安定化を阻害する薬剤が含まれる。xCT阻害剤としては,xCTに特異的に結合する抗体,xCTに対するアンチセンス,xCTに対するsiRNA又はshRNA,xCTに特異的に結合するアプタマー,サラゾスルファピリジン(SASP),又はエラスチン(ERASTIN)、あるいは,CD44vに特異的に結合する抗体,CD44vに対するアンチセンス,CD44vに対するsiRNA又はshRNA,CD44vに特異的に結合するアプタマーを挙げることができる。
被検物質がxCTのシスチントランスポーターとしての生物学的機能を阻害するか否かは,例えば,当該被験物質の存在下又は非存在下(コントロール),RIなどで標識化したシスチンをxCT発現細胞培養培地に添加し,細胞内に取り込まれた標識化シスチンの量を比較することにより決定することができる。好ましくは,細胞としてCSEを過剰発現しているがん細胞を用いる。被験物質の存在下で標識化シスチンを添加した細胞において,コントロール細胞と比較して標識化シスチンの細胞内への取り込みが少ない場合,当該被験物質はxCTのシスチントランスポーターとしての生物学的機能を阻害すると判定することができる。
本発明の治療薬は,CSEを過剰発現しているがんを治療対象とする。本願において,CSEを過剰発現しているがんとは,例えば,OVTOKO細胞株又はOVCAR3細胞株よりも1細胞当たりのCSEの発現量が多いことを意味してもよい。
本発明は更に,CSE阻害剤及びxCT阻害剤を含有する,CSEを過剰発現しているがん治療用キットとすることができる。キットは,外箱,容器,希釈剤,濁液剤,及び/又は調製方法・投与方法に関する説明書を共に含めることができる。本発明の治療薬がキットとして供給される場合,異なる構成成分が別々の容器中に包装され,一つのキットに含まれていてもよいし,あるいは,1種類以上の一部の構成成分(例えば,CSE阻害剤又はxCT阻害剤)のみがキットに含まれ,当該キットとは別に提供される残りの構成成分と共に使用されるように提供されていてもよい。また,本発明の治療薬がキットとして供給される場合,好ましくは,必要な構成成分は使用直前に混合される。
本発明は,CSEを過剰発現しているがんの治療薬を製造するための,CSE阻害剤及びxCT阻害剤の使用を含む。また,本発明は,CSEを過剰発現しているがんの治療するための,CSE阻害剤及びxCT阻害剤の使用を含む。更に,本発明は,それを必要とする患者に有効量のCSE阻害剤及びxCT阻害剤を投与することを備える,CSEを過剰発現しているがんの治療方法を含む。例えば、本発明は上述の方法によりシステイン枯渇療法に奏効性を示すと選別されたがん患者に本発明の治療薬を投与することを含む、がん治療方法を含む。あるいは、本発明は、上述の方法によりシステイン枯渇療法に奏効性を示す患者を選別すること、及びシステイン枯渇療法に奏効性を示すと選別されたがん患者に前記治療薬を投与することを含む、がんの治療方法を含む。
CSE阻害剤及びxCT阻害剤を含有する治療薬は,経口投与形態,又は注射剤,点滴剤等の非経口投与形態で投与することができる。本発明の治療薬を哺乳動物等に投与する場合,錠剤,散剤,顆粒剤,シロップ剤等として経口投与してもよいし,又は,注射剤,点滴剤として非経口的に投与してもよい。このような治療薬は,通常の薬学的に許容される担体を用いて,常法により製剤化することができる。経口用固形製剤を調製する場合は,主薬に賦形剤,更に必要に応じて,結合剤,崩壊剤,滑沢剤等を加えた後,常法により溶剤,顆粒剤,散剤,カプセル剤等とする。注射剤を調製する場合には,主薬に必要によりpH調整剤,緩衝剤,安定化剤,可溶化剤等を添加し,常法により皮下又は静脈内用注射剤とすることができる。本発明の治療薬が含有するCSE阻害剤とxCT阻害剤は,同時に投与されてもよいし,連続的に又は時間をおいて別々に投与されてもよい。投与量は,CSEを過剰発現しているがんに対して抗がん作用を発揮可能な量であれば特に制限されるものではないが,症状,年齢,性別,体重,投与形態等により異なるが,例えば成人に経口的に投与する場合には,各々通常1日量として0.1−1000mgである。
更に,本発明の治療薬は,白金製剤,イリノテカン,又はSN38を含有していてもよい。白金製剤,イリノテカン,又はSN38と,CSE阻害剤と,xCT阻害剤は,同時に投与されてもよいし,連続的に又は時間をおいて別々に投与されてもよい。
白金製剤とは,白金を含有する抗がん剤を意味し,これに限定されない例として,オキサリプラチン,カルボプラチン,シスプラチン,及びネダプラチンを例示することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが,本発明はこれに限定されるものではない。なお,本願全体を通して引用される全文献は参照によりそのまま本願に組み込まれる。
(材料及び実験方法)
以下の実験はNDMC(所沢,日本),NCC(東京,日本),及びTMU(台北,台湾)の倫理問題に関する内部審査委員会の承認を得て行われた。
以下の実験はNDMC(所沢,日本),NCC(東京,日本),及びTMU(台北,台湾)の倫理問題に関する内部審査委員会の承認を得て行われた。
[患者及び組織サンプル]
3つの病院においてステージIII又はIVの卵巣癌の手術切除を受けた全部で243人の患者からホルマリン固定パラフィン包埋手術組織切片を集めた。全ての患者は術後白金製剤ベースコンビネーション化学療法を受けたが,いずれの患者も術前にネオアジュバント化学療法又は放射線療法は受けていなかった。
3つの病院においてステージIII又はIVの卵巣癌の手術切除を受けた全部で243人の患者からホルマリン固定パラフィン包埋手術組織切片を集めた。全ての患者は術後白金製剤ベースコンビネーション化学療法を受けたが,いずれの患者も術前にネオアジュバント化学療法又は放射線療法は受けていなかった。
腫瘍の組織学的タイプは世界保健機関(WHO)の基準に従って分類した。Shimizu,Yら,Cancer(1998)82(5):893−901及びSilverberg,SGら,official journal of the International Society of Gynecological Pathologists(2000)19(1):7−15により提案された採点システムを参照して,組織学的採点を記述の方法(Yamamoto,Sら,Mod Pathol.(2007)20(12):1278−85)に従い行った。国際産婦人科連合(FIGO)システムをステージングに用いた。化学療法への臨床反応は,超音波検査又はコンピュータ断層撮影で評価し,RECISTバージョン1.1ガイドラインに従い,CR,PR,SD,及びPDに分類した。
[NDMC−トレイニングTMA]
1987年から2005年の間にNDMCの産婦人科で手術後に白金製剤による化学療法を受けたステージIII又はIVの原発性卵巣癌患者139人
1987年から2005年の間にNDMCの産婦人科で手術後に白金製剤による化学療法を受けたステージIII又はIVの原発性卵巣癌患者139人
化学療法レジメンは以下の通りであった:シクロホスファミド(CPA),ドキソルビシン(DXR),及びCDDPは80人;パクリタキセル(PTX)とカルボプラチン(CBDCA)は30人;イリノテカン(CPT−11)とCDDPは8人;エトポシド(VP−16)とCDDPは7人;ドセタキセル(DOC)とCDDPは6人;CPAとCDDPは3人;CPT−11とCBDCAは1人;及び,CPAとCDDPは1人。
[NCC−評価TMA]
1983年から2001年の間にNCC病院の婦人科で手術を受けたステージIII又はIVの原発性卵巣癌患者47人
1983年から2001年の間にNCC病院の婦人科で手術を受けたステージIII又はIVの原発性卵巣癌患者47人
[TMU−評価TMA]
1998年から2010年の間にTMU病院の婦人科で手術を受けたステージIII又はIVの原発性卵巣癌患者57人
1998年から2010年の間にTMU病院の婦人科で手術を受けたステージIII又はIVの原発性卵巣癌患者57人
[抗体]
Abnoba社の施設(台北,台湾)において,全部で1012種類のマウスモノクローナル抗体を作製した。全ての抗体の対応する抗体への特異性はイムノブロッティング及びIHCにより検証した。全てのデータがhttp://www.abnova.comで入手可能である。
Abnoba社の施設(台北,台湾)において,全部で1012種類のマウスモノクローナル抗体を作製した。全ての抗体の対応する抗体への特異性はイムノブロッティング及びIHCにより検証した。全てのデータがhttp://www.abnova.comで入手可能である。
[組織マイクロアレイ]
FFPEコア生検(直径2.0mm)を組織学的採点に用いたホストブロックから採取し,Tissue Microarrayer(Beecher Instrument,Silver Spring,MD)を用いてレシピエントブロックに移植した。
FFPEコア生検(直径2.0mm)を組織学的採点に用いたホストブロックから採取し,Tissue Microarrayer(Beecher Instrument,Silver Spring,MD)を用いてレシピエントブロックに移植した。
[蛍光画像の取得]
トリプル蛍光フィルターを実装したVirtual Slide Scanner(NanoZoomer 2.0−HT;浜松ホトニクス,浜松,日本)を用いて染色したTMAをスキャンした。スキャナーソフトウェア(Nanozoomer Digical Pathology Virtual Slide Viewer version 2.2;浜松ホトニクス)を用いて,バーチャル顕微鏡画像を構築した。上に白丸のスポットテンプレートを等間隔で割り当てた黒四角アレイテンプレートをTMAのバーチャル画像と一致させ,その後,スポット画像と対応するスポットテンプレート画像との間の相関係数を用いて,アレイテンプレート上の各スポットテンプレートの位置を各スポット画像と調節した。
トリプル蛍光フィルターを実装したVirtual Slide Scanner(NanoZoomer 2.0−HT;浜松ホトニクス,浜松,日本)を用いて染色したTMAをスキャンした。スキャナーソフトウェア(Nanozoomer Digical Pathology Virtual Slide Viewer version 2.2;浜松ホトニクス)を用いて,バーチャル顕微鏡画像を構築した。上に白丸のスポットテンプレートを等間隔で割り当てた黒四角アレイテンプレートをTMAのバーチャル画像と一致させ,その後,スポット画像と対応するスポットテンプレート画像との間の相関係数を用いて,アレイテンプレート上の各スポットテンプレートの位置を各スポット画像と調節した。
[イムノペルオキシダーゼ染色]
比色免疫ペルオキシダーゼ染色は,DABを色原体として用いて手動で行うか,Ventana Discovery自動免疫染色システム(Ventana)を用いて製造者のプロトコルに従って行った。
比色免疫ペルオキシダーゼ染色は,DABを色原体として用いて手動で行うか,Ventana Discovery自動免疫染色システム(Ventana)を用いて製造者のプロトコルに従って行った。
[統計分析]
OSは手術から最後のフォローアップまでの期間又は死亡までの期間として定義した。生存曲線はKaplan−Meier法に基づいてプロットし,有意差は層別log−rank検定を用いて分析した。カイ二乗検定,フィッシャーの正確確率検定,スチューデントのt検定,及びCox比例ハザード回帰モデルはStatFlex統計パッケージ(バージョン5.0;Atiteck,大阪,日本)又はR−Projectが提供するツール(http:///.r−project.org/)を用いて行った。
OSは手術から最後のフォローアップまでの期間又は死亡までの期間として定義した。生存曲線はKaplan−Meier法に基づいてプロットし,有意差は層別log−rank検定を用いて分析した。カイ二乗検定,フィッシャーの正確確率検定,スチューデントのt検定,及びCox比例ハザード回帰モデルはStatFlex統計パッケージ(バージョン5.0;Atiteck,大阪,日本)又はR−Projectが提供するツール(http:///.r−project.org/)を用いて行った。
[細胞及び化合物]
卵巣癌細胞(OVISAHO,OVTOKO,OVISE,KURAMOCHI,RMUG−S,TYK−nu,Cp−r,TYK−nu,ES−2,及びOVCAR3)はアメリカンタイプカルチャーコレクション(Manassa,VA)又はJapanese Collection of Research Bioresources(大阪,日本)から入手し,サプライヤーの推奨する方法で培養した。
卵巣癌細胞(OVISAHO,OVTOKO,OVISE,KURAMOCHI,RMUG−S,TYK−nu,Cp−r,TYK−nu,ES−2,及びOVCAR3)はアメリカンタイプカルチャーコレクション(Manassa,VA)又はJapanese Collection of Research Bioresources(大阪,日本)から入手し,サプライヤーの推奨する方法で培養した。
CDDP(Randa)は日本化薬株式会社(東京,日本)から購入した。細胞生存アッセイに用いたDL−PPG,及び(S)−トランス−2−アミノ−4−(2−アミノエトキシ)−3−ブテン酸塩酸塩(AVG)、サラゾスルファピリジン(SASP)エラスチン(ERASTIN)、及びフェロスタチン、並びに硫化水素ナトリウム(NaHS)はシグマアルドリッチ社(St.Louis,MO)から購入した。
[細胞生存アッセイ]
不透明壁96ウェルプレート(コーニング,Corning,NY)の各ウェルに細胞(1×104個)をトリプリケートで播種し,播種から18月後に化合物を添加した。96時間後にCell Titer−Glo Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ,Madison,WI)を用いて細胞生存を定量した。発光活性をGloMAX96 Microplate Luminometer(プロメガ)を用いて測定した。
不透明壁96ウェルプレート(コーニング,Corning,NY)の各ウェルに細胞(1×104個)をトリプリケートで播種し,播種から18月後に化合物を添加した。96時間後にCell Titer−Glo Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ,Madison,WI)を用いて細胞生存を定量した。発光活性をGloMAX96 Microplate Luminometer(プロメガ)を用いて測定した。
[予測細胞傷害メカニズムのアッセイ]
不透明壁96ウェルプレートの各ウェルに細胞(2×104個)をクアドルプリケートで播種し,播種の18時間後に化合物を添加した。24時間後にApoTox−Glo Triplexアッセイ法により細胞傷害性を測定した。
不透明壁96ウェルプレートの各ウェルに細胞(2×104個)をクアドルプリケートで播種し,播種の18時間後に化合物を添加した。24時間後にApoTox−Glo Triplexアッセイ法により細胞傷害性を測定した。
[細胞内H2Sの測定]
不透明壁96ウェルプレートの各ウェルに細胞(2×104個)をクアドルプリケートで播種し,播種の18時間後に化合物を添加した。24時間後,SM−7プローブを用いて,Linらの方法(Lin VSら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2013)110(18):7131−5)に従い硫化水素を測定した。
不透明壁96ウェルプレートの各ウェルに細胞(2×104個)をクアドルプリケートで播種し,播種の18時間後に化合物を添加した。24時間後,SM−7プローブを用いて,Linらの方法(Lin VSら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2013)110(18):7131−5)に従い硫化水素を測定した。
[RNAインターフェアランス及び過剰発現]
安定的ノックダウンは,Missionショートヘアピン(sh)RNAレンチウイルストランスダクションシステム(シグマ−アルドリッチ社)を用いて行った。以下の2種類のCSEを標的とするshRNA構築物と空ベクターコントロール構築物をOVISE細胞に感染させた。
5’−CCGGGCACCTCATTATCTTTCATAACTCGAGTTATGAAAGATAATGAGGTGCTTTTTG−3’(TRCN0000078263)(配列番号1),及び
5’−CCGGCCTTCATAATAGACTTCGTTTCTCGAGAAACGAAGTCTATTATGAAGGTTTTTG−3’(TRCN0000078264)(配列番号2)
8μg/mlの臭化ヘキサジメトリン(シグマ−アルドリッチ社)を感染効率向上のため用いた。2μg/mlのピューロマイシン(インビトロゲン社)を用いて細胞を選択した。pcDNA3.1のコンストラクトを過剰発現に用いた。
安定的ノックダウンは,Missionショートヘアピン(sh)RNAレンチウイルストランスダクションシステム(シグマ−アルドリッチ社)を用いて行った。以下の2種類のCSEを標的とするshRNA構築物と空ベクターコントロール構築物をOVISE細胞に感染させた。
5’−CCGGGCACCTCATTATCTTTCATAACTCGAGTTATGAAAGATAATGAGGTGCTTTTTG−3’(TRCN0000078263)(配列番号1),及び
5’−CCGGCCTTCATAATAGACTTCGTTTCTCGAGAAACGAAGTCTATTATGAAGGTTTTTG−3’(TRCN0000078264)(配列番号2)
8μg/mlの臭化ヘキサジメトリン(シグマ−アルドリッチ社)を感染効率向上のため用いた。2μg/mlのピューロマイシン(インビトロゲン社)を用いて細胞を選択した。pcDNA3.1のコンストラクトを過剰発現に用いた。
[動物実験]
すべての動物実験は国立がん研究センター動物実験委員会のガイドラインに従って行われた。細胞(2×107個)をメスのヌードマウス(BALB/c slc−nu/nu; SLC,静岡,日本)の皮下に注入した。マウスをCDDP(10μM/kg/日,腹腔内投与)及び/又はPPG(1000 10μM/kg/日,皮下投与)で治療し,あるいは未治療とした。
すべての動物実験は国立がん研究センター動物実験委員会のガイドラインに従って行われた。細胞(2×107個)をメスのヌードマウス(BALB/c slc−nu/nu; SLC,静岡,日本)の皮下に注入した。マウスをCDDP(10μM/kg/日,腹腔内投与)及び/又はPPG(1000 10μM/kg/日,皮下投与)で治療し,あるいは未治療とした。
[代謝分析]
シスタチオニン及び関連する分子の量は,LabSolutions LCMS version5.4ソフトウェア(株式会社島津製作所)で制御された超高速液体クロマトグラフィータンデム型質量分析計(Nexera;MS:LCMS−8030トリプル四重極質量分析計;株式会社島津製作所,京都,日本)を用いて決定した。代謝物を抽出するため,クロロホルム,メタノール,及び水の混合物からなる溶媒で10mgの腫瘍組織を抽出した。UHPLC分析条件は以下の通りとした:
カラム:ガードカラム(2.1×20mm,粒子径3μm;Supelco)装着Discovery HSF5カラム(2.1×150mm,粒子サイズ3μm;Supelco,Bellefonte,PA)。質量分析は,ポジティブイオンモードで,衝突誘起解離の多重反応モニタリング(MRM)しながら行った。分子の標準混合物は0.01,0.05,0.1,0.5,1,5,10,及び50μMの濃度で調製した。MRMの検定曲線は,各分子のロマトグラフピーク領域の50μM内部標準に対する比を用いて,これらの標準溶液を分析することにより作製した。
シスタチオニン及び関連する分子の量は,LabSolutions LCMS version5.4ソフトウェア(株式会社島津製作所)で制御された超高速液体クロマトグラフィータンデム型質量分析計(Nexera;MS:LCMS−8030トリプル四重極質量分析計;株式会社島津製作所,京都,日本)を用いて決定した。代謝物を抽出するため,クロロホルム,メタノール,及び水の混合物からなる溶媒で10mgの腫瘍組織を抽出した。UHPLC分析条件は以下の通りとした:
カラム:ガードカラム(2.1×20mm,粒子径3μm;Supelco)装着Discovery HSF5カラム(2.1×150mm,粒子サイズ3μm;Supelco,Bellefonte,PA)。質量分析は,ポジティブイオンモードで,衝突誘起解離の多重反応モニタリング(MRM)しながら行った。分子の標準混合物は0.01,0.05,0.1,0.5,1,5,10,及び50μMの濃度で調製した。MRMの検定曲線は,各分子のロマトグラフピーク領域の50μM内部標準に対する比を用いて,これらの標準溶液を分析することにより作製した。
[SDB測定]
細胞播種してから46時間培養後,86μMのPPGを添加して1時間培養した。その後,10〜50μMのNaHSを添加して更に1時間培養した。内部標準としてパペリン100nM及びチオール特異的誘導体化剤であるモノ−ブロモビマン100nMを含有する500μMメタノールに細胞を回収した。細胞懸濁液に500μlのイオン交換水を添加した後,氷水内で細胞を超音波処理し,15,000rpmで10分間遠心分離した。高分子水湿潤性リバースフェーズ溶媒(Oasis HLBカートリッジ;Waters,Milford,MA)含有カラムから抽出された上清を遠心フィルター(Ultra free−MC,5−kDaカットオフ,ミリポア社,Billerica,MA)でろ過した。500μMのアリコートをLCMS−8030(株式会社島津製作所)によるSDBの定量分析に用いた。アッセイ結果は細胞タンパク質濃度で正規化した。
細胞播種してから46時間培養後,86μMのPPGを添加して1時間培養した。その後,10〜50μMのNaHSを添加して更に1時間培養した。内部標準としてパペリン100nM及びチオール特異的誘導体化剤であるモノ−ブロモビマン100nMを含有する500μMメタノールに細胞を回収した。細胞懸濁液に500μlのイオン交換水を添加した後,氷水内で細胞を超音波処理し,15,000rpmで10分間遠心分離した。高分子水湿潤性リバースフェーズ溶媒(Oasis HLBカートリッジ;Waters,Milford,MA)含有カラムから抽出された上清を遠心フィルター(Ultra free−MC,5−kDaカットオフ,ミリポア社,Billerica,MA)でろ過した。500μMのアリコートをLCMS−8030(株式会社島津製作所)によるSDBの定量分析に用いた。アッセイ結果は細胞タンパク質濃度で正規化した。
(実施例1)抗体ライブラリーを用いたTMAsの新規ハイスループットスクリーニング
抗体ライブラリーをスクリーニングするため,免疫蛍光染色法を利用してTMAsからの抗原の発現レベルを半定量的に測定するハイスループットシステムとして,本発明者らが開発した自動定量仮想免疫蛍光病理学(automated quantitative virtual immunofluorescence pathology:AQVIP)を用いた。サイトケラチン(CK)19で染色された癌領域を検出し,癌標識を作成するため,標的スポット画像は緑色成分のみを用いて2値画像データに変換し,白い領域を癌として区別した。2値画像データによって標識された癌領域における抗原の発現レベルは,赤色蛍光の強度により定量した。TMAsから割り当てられた患者の各抗原の最終定量値をコンピューター・ストレージに格納した。
抗体ライブラリーをスクリーニングするため,免疫蛍光染色法を利用してTMAsからの抗原の発現レベルを半定量的に測定するハイスループットシステムとして,本発明者らが開発した自動定量仮想免疫蛍光病理学(automated quantitative virtual immunofluorescence pathology:AQVIP)を用いた。サイトケラチン(CK)19で染色された癌領域を検出し,癌標識を作成するため,標的スポット画像は緑色成分のみを用いて2値画像データに変換し,白い領域を癌として区別した。2値画像データによって標識された癌領域における抗原の発現レベルは,赤色蛍光の強度により定量した。TMAsから割り当てられた患者の各抗原の最終定量値をコンピューター・ストレージに格納した。
(実施例2)OSによる抗体スクリーニング
腫瘍減量手術後の卵巣癌における白金製剤のアジュバント化学療法の有効性予測バイオマーカーを同定するため,AQVIPから評価されるTMAsの予後的意義ついて,1012種類のマウスモノクローナル抗体のライブラリーをスクリーニングした。
腫瘍減量手術後の卵巣癌における白金製剤のアジュバント化学療法の有効性予測バイオマーカーを同定するため,AQVIPから評価されるTMAsの予後的意義ついて,1012種類のマウスモノクローナル抗体のライブラリーをスクリーニングした。
卵巣癌のTMAsは,腫瘍減量手術後の白金製剤による化学療法がおこなわれた卵巣癌患者のサンプルによって指定した。最初に,少なくとも50種類の防衛医科大学校(NDMC)において切除された手術生検を含むTMAsにより抗体ライブラリーをスクリーニングした。候補バイオマーカーは次の二つの基準を用いて抗体ライブラリーから選択した:1)抗原発現レベルから全生存期間(OS)への意義のある予後インパクトを示す抗体(P<0.05);及び,2)仮想免疫蛍光病理学画像で癌細胞における明確な抗原発現が観察される抗体。これらの2種類の基準で選択された抗体の予後的意義を改めて139人の腫瘍減量手術後の白金製剤による化学療法をNDMCで受けた卵巣癌患者(トレイニングコホート−NDMC)で確認した。予後的意義(p<0.05)と関連付けられた抗体の発現パターンを第一スクリーニングで選択した。その後,卵巣癌における予測バイオマーカーの臨床インパクトを評価するため,国立がん研究センター中央病院で腫瘍減量手術後の白金製剤による化学療法を受けた卵巣癌患者から得られた他のTMAsを調製した。このコホートをコホート−NCCと名づけた。第一及び第二スクリーニングで選択された,卵巣癌患者のOSにインパクトのある(p<0.05)抗体を選んだ。カットオフ値はX−tileアルゴリズム(Camp RL,Clin Cancer Res.(2004)1;10(21):7252−9.)を用いて決定した。
CSE,F−box−onlyタンパク質11(FBXO11),及びPCTAIREタンパク質キナーゼ1(PCTK1)に対する抗体選択され,これらの3種類の抗原が卵巣癌の予後不良と関連する高発現抗原として同定された。CSE,FBXO11,PCTKについて,免疫染色によるタンパク質の発現状況(図1)と患者の全生存期間について,防衛医科大学,国立がん研究センターで治療された2個のコホートで検討した結果,CSE,FBXO11,PCTK1の強発現患者は,タンパク質低発現患者に比較して,統計学的な有意差を持って全生存期間が短かった。全ての抗体の特異性は,ウェスタンブロット分析により確認した。ウェスタンブロット分析により,各抗体は各分子の理論的分子量の位置にシングルバンドを示した(非図示)。
(実施例3)選択された抗原を発現する腫瘍の臨床病理学的特性
トレイニング及び評価コホートにおいて,CSE高発現発生率は,それぞれ13.3%(18/135)及び9.5%(4/42)であった。Kaplan−Meier分析から,トレイニングコホート−NDMC(p=1.35×10−7Logランクテスト)と評価コホートNCC(p=0.0029)(logランクテスト)の両方において,CSE高発現患者と低発現患者のOSに有意な差があることが示された。トレイニングコホート−NDMCでは,CSEの発現は組織型(p<0.01,Mann−Whitneyテスト),及び白金製剤による化学療法の奏効性(p<0.01,Fisher’s exactテスト)と有意に相関し,FBXO11の発現レベルは組織型と有意に相関した。
トレイニング及び評価コホートにおいて,CSE高発現発生率は,それぞれ13.3%(18/135)及び9.5%(4/42)であった。Kaplan−Meier分析から,トレイニングコホート−NDMC(p=1.35×10−7Logランクテスト)と評価コホートNCC(p=0.0029)(logランクテスト)の両方において,CSE高発現患者と低発現患者のOSに有意な差があることが示された。トレイニングコホート−NDMCでは,CSEの発現は組織型(p<0.01,Mann−Whitneyテスト),及び白金製剤による化学療法の奏効性(p<0.01,Fisher’s exactテスト)と有意に相関し,FBXO11の発現レベルは組織型と有意に相関した。
トレイニングコホート−NDMCのCox単変量分析において,CSE及びPTCK1を過剰発現していた死亡のハザード比(HRs)は,それぞれ,4.55(95%信頼区間(CI),2.22−8.00)及び1.80(95%CI,1.02−3.5)であった。Coxの比例ハザードモデルを用いた多変量解析では,CSEとPCTK1の高発現が,腫瘍減量手術後の白金製剤による化学療法を受けた卵巣癌患者の死亡についての独立した予後因子であることが示された。CSE,FBXO11,PCTK1タンパク質発現状況と患者死亡に関するリスク比をCox比例ハザード法を利用して計算した結果,CSE,FBXO11,PCTK1ともにタンパク質高発現は,単変量,多変量解析ともに死亡に対するリスク因子としてあげられた。多変量解析でも有意性を示したことから,同タンパク質の高発現は死亡に対する独立した予後因子として有意性を示した。
(実施例4)白金製剤による化学療法への反応性との相関
NDMCにおいて腫瘍減量手術後の白金製剤による化学療法を受けた患者を奏効群と非奏効群の2群に分類した。奏効群は,固形癌の反応評価基準(RECIST)ガイドラインに従い,完全奏効(CR)又は部分奏効(PR)を示すものと定義し,非奏効群は,安定(SD)又は進行(PD)を示すものとして定義した。腫瘍の蛍光画像から得られた候補バイオマーカーのタンパク質発現レベルを確認し,タンパク質発現と白金製剤による化学療法の奏効性との統計的相関を調べた。CSE,HMGB1及びGTF2Iの発現は奏効群と非奏効群の間で有意に異なっていた。CSEの発現は奏効群よりも非奏効群において有意に高かった(p=0.0071,スチューデントのt検定)。HMGB1及びGTF2Iの発現は奏効群よりも非奏効群において優位に低かった(HMGB1,p=0.026;GTF2I,p=0.031)。白金抗腫瘍剤の効果を増強させる標的分子としてCSEが選択された。
NDMCにおいて腫瘍減量手術後の白金製剤による化学療法を受けた患者を奏効群と非奏効群の2群に分類した。奏効群は,固形癌の反応評価基準(RECIST)ガイドラインに従い,完全奏効(CR)又は部分奏効(PR)を示すものと定義し,非奏効群は,安定(SD)又は進行(PD)を示すものとして定義した。腫瘍の蛍光画像から得られた候補バイオマーカーのタンパク質発現レベルを確認し,タンパク質発現と白金製剤による化学療法の奏効性との統計的相関を調べた。CSE,HMGB1及びGTF2Iの発現は奏効群と非奏効群の間で有意に異なっていた。CSEの発現は奏効群よりも非奏効群において有意に高かった(p=0.0071,スチューデントのt検定)。HMGB1及びGTF2Iの発現は奏効群よりも非奏効群において優位に低かった(HMGB1,p=0.026;GTF2I,p=0.031)。白金抗腫瘍剤の効果を増強させる標的分子としてCSEが選択された。
(実施例5)免疫組織化学(IHC)によるCSEタンパク質発現評価
AQVIPによるタンパク質発現の評価を確認するため,トレイニングコホート−NDMCのTMAを抗CSE抗体で染色し,標準法として3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)を基質として用いて反応を検討した。強度及びDAB染色の程度を,盲検下認定病理専門医によりカテゴリー1〜6に等級分けし,AQVIPにより計算された反応強度(RI)スコアと比較した。名目分類はRIスコアとよく相関することが示された。カテゴリー6の腫瘍患者は陽性RIスコアに対応し,コホート−NDMC(p=0.006)及び台北医科大学で治療された他のコホート(コホート−3)(p=0.021)におけるカテゴリー1〜5腫瘍の患者よりも顕著に悪いOSを示した。コホート3の単変量及び多変量Cox比例ハザード回帰モデリングから,CSEの過剰発現が独立したOSの予後因子であることが明らかとなった。
AQVIPによるタンパク質発現の評価を確認するため,トレイニングコホート−NDMCのTMAを抗CSE抗体で染色し,標準法として3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)を基質として用いて反応を検討した。強度及びDAB染色の程度を,盲検下認定病理専門医によりカテゴリー1〜6に等級分けし,AQVIPにより計算された反応強度(RI)スコアと比較した。名目分類はRIスコアとよく相関することが示された。カテゴリー6の腫瘍患者は陽性RIスコアに対応し,コホート−NDMC(p=0.006)及び台北医科大学で治療された他のコホート(コホート−3)(p=0.021)におけるカテゴリー1〜5腫瘍の患者よりも顕著に悪いOSを示した。コホート3の単変量及び多変量Cox比例ハザード回帰モデリングから,CSEの過剰発現が独立したOSの予後因子であることが明らかとなった。
(実施例6)免疫組織化学(IHC)によるCSEタンパク質発現評価
抗CSE抗体による卵巣癌細胞株パネルのウェスタンブロット分析から,OVISE細胞株においてのみCSE(CTH)が強く発現することが示された(図2)。OVTOKO細胞株はCSEを弱く発現し,他の卵巣癌細胞株ではCSEの発現は認められなかった。CSEを強く発現するOVISE,CSEを弱く発現するOVTOKO,及びCSEを発現していないOVCAR3におけるCDDPの50%阻害濃度(IC50)を測定した。OVISE,OVTOKO,及びOVCAR3におけるCDDPのIC50は,それぞれ,3.1μM,2.5μM,及び0.8μMであった。プロパルギルグリシン(PPG)はCSE特異的な低分子阻害剤である。OVISE,OVTOKO,及びOVCAR3の培養培地への0.8〜89μMのPPG単剤添加は,これらの細胞株の増殖には影響を及ぼさなかった。PPG89μM添加条件下でのCDDPのIC50は,PPG非添加におけるCDDPによる処理と比較して,OVISE(p=8.16×10−12)及びOVTOKO(p=0.00136)において優位に低下した。しかし,OVCAR3におけるPPG89μM添加条件下でのCDDPのIC50は,PPG非添加におけるCDDP添加と差がなかった(p=0.949)。マススペクトルの多重反応モニタリング(MRM)を用いた酵素活性アッセイにより阻害効率を調べた。CSEの基質であるシスタチオニンにin vitroでCSEを添加した場合,PPGが添加されていないとCSEの活性によりほぼ全てのシスタチオニンがシステインに変化した。シスタチオニンはPPGの濃度に応じて容量依存的に増加した。
抗CSE抗体による卵巣癌細胞株パネルのウェスタンブロット分析から,OVISE細胞株においてのみCSE(CTH)が強く発現することが示された(図2)。OVTOKO細胞株はCSEを弱く発現し,他の卵巣癌細胞株ではCSEの発現は認められなかった。CSEを強く発現するOVISE,CSEを弱く発現するOVTOKO,及びCSEを発現していないOVCAR3におけるCDDPの50%阻害濃度(IC50)を測定した。OVISE,OVTOKO,及びOVCAR3におけるCDDPのIC50は,それぞれ,3.1μM,2.5μM,及び0.8μMであった。プロパルギルグリシン(PPG)はCSE特異的な低分子阻害剤である。OVISE,OVTOKO,及びOVCAR3の培養培地への0.8〜89μMのPPG単剤添加は,これらの細胞株の増殖には影響を及ぼさなかった。PPG89μM添加条件下でのCDDPのIC50は,PPG非添加におけるCDDPによる処理と比較して,OVISE(p=8.16×10−12)及びOVTOKO(p=0.00136)において優位に低下した。しかし,OVCAR3におけるPPG89μM添加条件下でのCDDPのIC50は,PPG非添加におけるCDDP添加と差がなかった(p=0.949)。マススペクトルの多重反応モニタリング(MRM)を用いた酵素活性アッセイにより阻害効率を調べた。CSEの基質であるシスタチオニンにin vitroでCSEを添加した場合,PPGが添加されていないとCSEの活性によりほぼ全てのシスタチオニンがシステインに変化した。シスタチオニンはPPGの濃度に応じて容量依存的に増加した。
OVISEの皮下異種移植マウスモデルを用いて,PPGとCDDPの併用療法の効果を調べた。OVISE細胞を免疫不全マウスの皮下に接種し,10日後(腫瘍が約100mm3まで成長)に,PPG単剤,CDDP単剤,PPGとCDDPの併用を接種マウスに毎日投与した。PPG単剤投与では,生理食塩水を投与したコントロール群と比較して腫瘍体積に有意な減少は認められなかった。CDDP単剤投与では,接種8日後に有意な腫瘍体積が減少した(p=1.24×10−3,スチューデントのt検定)。しかし,CDDP単剤投与は,CDDP開始日と比較して8日後の腫瘍体積の増加を完全には阻害できなかった。PPGとCDDPの併用投与は,CDDP投与開始時の腫瘍体積と比較して腫瘍体積の増加をより良く阻害した(p=1.53×10−7)。PPCとCDDPの併用における最終腫瘍体積は,PPG単剤投与(p=5.06×10−10),CDDP(p=7.08×10−6),又は生理食塩水(p=1.53×10−7)と比較して,有意に減少した。
PPG単剤投与後のマウス体重と生理食塩水を投与したコントロールマウスの体重との間に有意な差はなかった。更に,CDDP単剤投与,CDDPとPPGの併用との間にマウス体重の有意差は認められなかった。血中尿素窒素(BUN),アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST),及びアラニントランスアミナーゼ(ALT)についてのマウス血液の生化学的検査により,PPG単剤投与が生理食塩水投与と比較して肝臓及び腎臓への顕著な影響がないことが示された。PPGとCDDP併用投与されたマウス血清中の白金濃度は,CDDP単剤投与後と比較して顕著に減少していた(p=3.60×10−6)。
CSEの発現をCSEに対するRNA干渉(RNAi)により減少させたOVISEの2細胞株(OVISE−CSE−KD1及びOVISE−CSE−KD2),及び,空ベクターをトランスフェクトしたコントロール細胞株(OVISE−Cont)を樹立した。OVISE−CSE−KD1,OVISE−CSE−KD2,及びOVISE−Contをヌードマウスに移植し,CDDP及び生理食塩水を投与した。OVISE−CSE−KD1,OVISE−CSE−KD2,及びOVISE−Contを移植した異種移植マウスモデルの実験から,CDDPを投与することにより,OVISE−CSE−KD1及びOVISE−CSE−KD2の腫瘍体積がOVISE−Contと比較して有意に減少することが示された。
新たにCSEベクターをトランスフェクトすることにより,CSEを過剰発現する大腸癌細胞株HST116(HST116−OE−CSE)を作製した。また,空ベクターをトランスフェクトして,コントロールHCT116−Contを作製した。IC50分析により,CDDPのHCT116−OE−CSEに対するIC50は,HCT116−Contに対するIC50よりも有意に高いことが示された。
(実施例7)抗癌剤への化学療法感受性
いくつかの細胞傷害性薬剤に対する卵巣癌の化学療法感受性を予測するバイオマーカーとしての特異性を確認するため,CSEの発現レベルが明らかに異なるOVISEとOVCAR3の間での各薬剤のIC50の違いを検討した。イリノテカンの活性代謝物である7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(SN38)のOVISEに対するIC50は0.62μMであり,OVCAR3に対するIC50(0.14μM)よりも有意に高かった(p<0.0001)。OVISEに対するSN38のIC50は,0.22〜0.62μMのPPGを培養培地に添加することにより有意に減少した(p<0.001)。しかし,4−ヒドロペルオキシシクロフォスファミド(4HC)又はアルブミン結合パクリタキセル(ABI−007)を用いた実験では,OVCAR3と比べたOVISEにおけるIC50の有意な増加は認められなかった。4HCの場合,OVCAR3のIC50はOVISEよりも有意に高かった。このことから,CSEの発現は白金製剤による化学療法と,SN38の奏効性の予測バイオマーカーとなることが示された。
いくつかの細胞傷害性薬剤に対する卵巣癌の化学療法感受性を予測するバイオマーカーとしての特異性を確認するため,CSEの発現レベルが明らかに異なるOVISEとOVCAR3の間での各薬剤のIC50の違いを検討した。イリノテカンの活性代謝物である7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(SN38)のOVISEに対するIC50は0.62μMであり,OVCAR3に対するIC50(0.14μM)よりも有意に高かった(p<0.0001)。OVISEに対するSN38のIC50は,0.22〜0.62μMのPPGを培養培地に添加することにより有意に減少した(p<0.001)。しかし,4−ヒドロペルオキシシクロフォスファミド(4HC)又はアルブミン結合パクリタキセル(ABI−007)を用いた実験では,OVCAR3と比べたOVISEにおけるIC50の有意な増加は認められなかった。4HCの場合,OVCAR3のIC50はOVISEよりも有意に高かった。このことから,CSEの発現は白金製剤による化学療法と,SN38の奏効性の予測バイオマーカーとなることが示された。
(実施例8)移植腫瘍におけるメチオニン,システイン及びグルタチオン代謝へのPPGの影響
マウス皮下に移植された腫瘍におけるメチオニン,システイン,及びグルタチオン代謝の変化を調べるため,CDDP単剤またはCDDPとPPGを併用投与されたマウスの移植腫瘍におけるメチオニンからグルタチオンへの代謝の変化を分析した(図3)。CDDP単剤投与マウスと比較して,CDDPとPPGを併用投与したマウスにおいて,統計的に有意なシスタチオニンの集積が認められた。CDDPとPPGを併用投与したマウスにおいて,システインの有意な増加が認められなかったにもかかわらず,CDDPとPPGの併用投与では,CDDP単剤と比較してシスチンの有意な増加が観察された。CDDP単剤と比較して,CDDPとPPGの併用において,酸化型グルタチオン(GSSG)及び還元型グルタチオンの比(GSH)/2×GSSGが有意に増加していた。CDDPとPPGを併用しても,グルタチオンの総量は,CDDP単剤と変わらなかった。これらの結果から,PPGの効果はグルタチオンの総量には関与しないことが示された,更に,また,PPGとの併用療法は,CDDP単剤投与と比較して,CDDP投与による酸化ストレスを誘導することが示された。
マウス皮下に移植された腫瘍におけるメチオニン,システイン,及びグルタチオン代謝の変化を調べるため,CDDP単剤またはCDDPとPPGを併用投与されたマウスの移植腫瘍におけるメチオニンからグルタチオンへの代謝の変化を分析した(図3)。CDDP単剤投与マウスと比較して,CDDPとPPGを併用投与したマウスにおいて,統計的に有意なシスタチオニンの集積が認められた。CDDPとPPGを併用投与したマウスにおいて,システインの有意な増加が認められなかったにもかかわらず,CDDPとPPGの併用投与では,CDDP単剤と比較してシスチンの有意な増加が観察された。CDDP単剤と比較して,CDDPとPPGの併用において,酸化型グルタチオン(GSSG)及び還元型グルタチオンの比(GSH)/2×GSSGが有意に増加していた。CDDPとPPGを併用しても,グルタチオンの総量は,CDDP単剤と変わらなかった。これらの結果から,PPGの効果はグルタチオンの総量には関与しないことが示された,更に,また,PPGとの併用療法は,CDDP単剤投与と比較して,CDDP投与による酸化ストレスを誘導することが示された。
(実施例9)PPGによるH2S産生の阻害,及びH2SによるCDDPの細胞傷害作用の阻害
CSEはシステイン及びホモシステインからH2Sを産生する酵素である。H2Sは酸化ストレスのスカベンジャー能を有する生物学的ガスとして知られている。CSEにより過剰産生されたH2Sが,細胞傷害性抗癌剤から生じる酸化ストレスから保護しているかを検討した。CDDP単剤及びCDDPと硫化水素ナトリウム(NaHS)との併用で得られたIC50カーブから,OVISEに対するCDDPの細胞傷害性は,それに続くNaHSの培養培地への添加により増加することが明らかとなった(CDDP単剤,3.9μNM;CDDP+NaHS,6.6μM;p=7.79×10−18,スチューデントのt検定)。CDDP単剤(8.3μM),及びCDDP(8.3μM)とNaHS(10μM)の併用への暴露条件下での細胞傷害性の阻害はPPGの添加により有意に改善した。更に,CDDP(10μM)の添加条件下での細胞生存率は,25μM〜150μMのNaHSにより濃度依存的に統計的に増加した。生存可能な条件でH2Sの濃度を測定するため,H2Sに対する蛍光プローブ(SF7−AM)でOVISE及びOVCAR3における生存細胞内のH2Sの画像測定アッセイを行った。画像測定アッセイから,H2S濃度はOVCAR3よりもOVISEにおいて有意に高かった。OVISEのサイトゾル中のsulfide dibimane(SDB)でラベルされたH2Sの濃度はPPGの添加により有意に減少した(p=0.029)。これらの結果から,H2SがOVISEにおけるCDDPの細胞傷害性からの回避に関与していることが示された。
CSEはシステイン及びホモシステインからH2Sを産生する酵素である。H2Sは酸化ストレスのスカベンジャー能を有する生物学的ガスとして知られている。CSEにより過剰産生されたH2Sが,細胞傷害性抗癌剤から生じる酸化ストレスから保護しているかを検討した。CDDP単剤及びCDDPと硫化水素ナトリウム(NaHS)との併用で得られたIC50カーブから,OVISEに対するCDDPの細胞傷害性は,それに続くNaHSの培養培地への添加により増加することが明らかとなった(CDDP単剤,3.9μNM;CDDP+NaHS,6.6μM;p=7.79×10−18,スチューデントのt検定)。CDDP単剤(8.3μM),及びCDDP(8.3μM)とNaHS(10μM)の併用への暴露条件下での細胞傷害性の阻害はPPGの添加により有意に改善した。更に,CDDP(10μM)の添加条件下での細胞生存率は,25μM〜150μMのNaHSにより濃度依存的に統計的に増加した。生存可能な条件でH2Sの濃度を測定するため,H2Sに対する蛍光プローブ(SF7−AM)でOVISE及びOVCAR3における生存細胞内のH2Sの画像測定アッセイを行った。画像測定アッセイから,H2S濃度はOVCAR3よりもOVISEにおいて有意に高かった。OVISEのサイトゾル中のsulfide dibimane(SDB)でラベルされたH2Sの濃度はPPGの添加により有意に減少した(p=0.029)。これらの結果から,H2SがOVISEにおけるCDDPの細胞傷害性からの回避に関与していることが示された。
(実施例10)CSEを過剰発現している卵巣癌へのシステイン枯渇
メチオニン経路からシステインの合成を阻害したにもかかわらず,PPGの使用前と比較して検体中の総システイン濃度の顕著な変化は認められなかった。シスチントランスポーターであるxCTは,細胞外環境からシスチンを輸送する。また,Ishimotoらは最近CD44バリアントがxCTサブユニットを安定化させて癌細胞内の酸化還元状態を調節することを見出している。よって,シスチントランスポーターであるxCT,及びxCTに関与する分子としてCD44バリアント(CD44v)のタンパク質発現レベルをウェスタンブロット分析により確認した(図2)。xCTのタンパク質発現は卵巣癌細胞株に一様に認められたが,xCT介在シスチン輸送の調節因子であるCD44vのタンパク質発現は,CSEが過剰発現したOVISEにおいてしか認められなかった。これらの結果から,メチオニンからシステインの合成が阻害されたことにより,細胞外からシスチンの輸送が増加していることが示唆された。CSEを過剰発現している卵巣癌細胞において,それを発現していない細胞と比較してよりシステイン要求性が高まっているとしたら,細胞外からのシスチンの輸送とメチオニン経路からのシステインの合成の両方を阻害する枯渇戦術が,CSEを過剰発現している卵巣がんの新しい治療戦略として考えられた。スルファサラジン(SASP)はxCTのシスチントランスポーターとしての生物学的機能を阻害する化合物である。OVISEに対する枯渇戦術を,SASPとPPGの併用により行った。OVISEへの100μMのSASP単剤投与は,SASP非投与と比較して10%以内というわずかな細胞生存阻害を示した。OVISEに対してPPG単剤を88〜352μMで投与しても,濃度依存的な細胞生存阻害は認められなかった。しかし,100μMのSASPと352μMのPPGは,SASP単剤投与と比較して87%も細胞生存率を有意に低下させた。CSEを過剰発現していない卵巣癌細胞株であるOVCAR3では,100μMSASP暴露下でも,88〜352μMのPPGは細胞生存に影響を及ぼさなかった(図4A)。
メチオニン経路からシステインの合成を阻害したにもかかわらず,PPGの使用前と比較して検体中の総システイン濃度の顕著な変化は認められなかった。シスチントランスポーターであるxCTは,細胞外環境からシスチンを輸送する。また,Ishimotoらは最近CD44バリアントがxCTサブユニットを安定化させて癌細胞内の酸化還元状態を調節することを見出している。よって,シスチントランスポーターであるxCT,及びxCTに関与する分子としてCD44バリアント(CD44v)のタンパク質発現レベルをウェスタンブロット分析により確認した(図2)。xCTのタンパク質発現は卵巣癌細胞株に一様に認められたが,xCT介在シスチン輸送の調節因子であるCD44vのタンパク質発現は,CSEが過剰発現したOVISEにおいてしか認められなかった。これらの結果から,メチオニンからシステインの合成が阻害されたことにより,細胞外からシスチンの輸送が増加していることが示唆された。CSEを過剰発現している卵巣癌細胞において,それを発現していない細胞と比較してよりシステイン要求性が高まっているとしたら,細胞外からのシスチンの輸送とメチオニン経路からのシステインの合成の両方を阻害する枯渇戦術が,CSEを過剰発現している卵巣がんの新しい治療戦略として考えられた。スルファサラジン(SASP)はxCTのシスチントランスポーターとしての生物学的機能を阻害する化合物である。OVISEに対する枯渇戦術を,SASPとPPGの併用により行った。OVISEへの100μMのSASP単剤投与は,SASP非投与と比較して10%以内というわずかな細胞生存阻害を示した。OVISEに対してPPG単剤を88〜352μMで投与しても,濃度依存的な細胞生存阻害は認められなかった。しかし,100μMのSASPと352μMのPPGは,SASP単剤投与と比較して87%も細胞生存率を有意に低下させた。CSEを過剰発現していない卵巣癌細胞株であるOVCAR3では,100μMSASP暴露下でも,88〜352μMのPPGは細胞生存に影響を及ぼさなかった(図4A)。
細胞内システイン枯渇におけるシスチン輸送抑制の役割を確認するために、SASP以外のxCT阻害化合物、エラスチン、を用いて同様の実験を行ったところ、上記実験と同じく、PPGとエラスチンを同時に投与した時にのみ効率的に細胞死が誘発された(図4B)。そしてこの現象は、CSEを高発現する細胞(OVISE)特有に観察され、CSEの発現が低い細胞(OVCAR3)では、PPGとエラスチンが存在している環境でも多くの細胞が生き残っていた。これにより,CSE過剰発現細胞に対する、細胞内のシステイン合成と細胞外からのシスチン輸送の同時阻害メカニズムにより細胞生存を阻害するというシステイン枯渇療法というコンセプトを確立した。
システイン枯渇戦術の治療コンセプトを確認するため,他のCSE阻害化合物を用いて、システイン枯渇ががん細胞の生存に与える影響についてさらに検討を行った。アミノエトキシビニルグリシン(AVG)はCSE特異的阻害剤として報告されている。AVGとSASPとの併用治療は,AVGの容量依存的にCSE過剰発現細胞(OVISE)の生存を低下させた。反対に,AVGとSASPの併用療法は、CSE低発現細胞(OVCAR3)に対し同様の効果をもたらさなかった(図4C)。したがってこれらの結果は、システイン枯渇療法がCSE過剰発現がん細胞に対する有効な治療方法となり得ることを示している。
上記実験において、CSE阻害剤及びxCT阻害剤を投与した場合、つまり細胞死が誘発されている状況にもかかわらず、カスパーゼ3/7シグナルの増加は観察されなかった。このことから、システイン枯渇によって誘発される細胞死は、アポトーシスではないと考えられる。近年、新たな細胞死のメカニズムとして、フェロトーシスが明らかとなってきた。フェロトーシスは、鉄依存的な細胞内活性酸素発生に起因する細胞死あり、エラスチンは、フェロトーシス誘発作用を有することが知られている。そこで、上記実験で使用した濃度の10倍濃度のエラスチンを培地に添加したところ、CSE過剰発現細胞の増殖が97%以下に抑制された一方で、CSEの発現が低い細胞の増殖は14%程度しか抑制されなかった(図5A)。さらに、エラスチンによるCSE過剰発現細胞の増殖抑制効果は、フェロトーシス拮抗剤であるフェロスタチンを添加することで消失した(図5B)。よって、システイン枯渇による細胞死のメカニズムがフェロトーシスである事が証明され、がん細胞におけるCSEの発現は、フェロトーシスを介したがん治療の効果を予測するバイオマーカーとなり得る。
Claims (11)
- がん患者であって,組織中及び/または体液中にシスタチオニンγ−リアーゼを発現し、及び/または硫化水素を発生している患者をシステイン枯渇療法に奏効性を示す患者と判定することを含む,システイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者を選別する方法。
- 前記がん患者の組織中及び/または体液中のシスタチオニン及び/または硫化水素を測定することを含む,請求項1に記載のシステイン枯渇療法に奏効性を示すがん患者を選別する方法。
- シスタチオニンγ−リアーゼ阻害剤及びxCT阻害剤を含む,シスタチオニンγ−リアーゼを過剰発現しているがんの治療薬。
- シスタチオニンγ−リアーゼ阻害剤が,シスタチオニンγ−リアーゼに特異的に結合する抗体,シスタチオニンγ−リアーゼに対するアンチセンス,シスタチオニンγ−リアーゼに対するsiRNA又はshRNA,シスタチオニンγ−リアーゼに特異的に結合するアプタマーまたは化合物である,請求項3記載の治療薬。
- シスタチオニンγ−リアーゼ阻害剤が,プロパルギルグリシン,又は(S)−トランス−2−アミノ−4−(2−アミノエトキシ)−3−ブテン酸塩酸塩である,請求項4記載の治療薬。
- シスタチオニンγ−リアーゼに対するshRNAが,5’−CCGGGCACCTCATTATCTTTCATAACTCGAGTTATGAAAGATAATGAGGTGCTTTTTG−3’(TRCN0000078263)(配列番号1),又は5’−CCGGCCTTCATAATAGACTTCGTTTCTCGAGAAACGAAGTCTATTATGAAGGTTTTTG−3’(TRCN0000078264)(配列番号2)の配列を有する,請求項3記載の治療薬。
- xCT阻害剤が,xCTに特異的に結合する抗体,xCTに対するアンチセンス,xCTに対するsiRNA又はshRNA,xCTに特異的に結合するアプタマー,又は化合物である,請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の治療薬。
- xCT阻害剤が,サラゾスルファピリジン、又はエラスチンである請求項7に記載の治療薬。
- xCT阻害剤が,シスチントランスポーターとしての生物学的機能を阻害する,請求項7に記載の治療薬。
- シスタチオニンγ−リアーゼ阻害剤とxCT阻害剤が同時に又は別々に投与されることを特徴とする,請求項3〜請求項9のいずれか1項に記載の治療薬。
- 更に,同時又は別々に投与される白金製剤,イリノテカン,又はSN38を含有することを特徴とする,請求項3〜請求項10のいずれか1項に記載の治療薬。
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CN113421613A (zh) * | 2021-06-08 | 2021-09-21 | 吴安华 | 一种基于铁死亡水平评价胶质母细胞瘤患者免疫治疗反应性的系统及分析方法 |
WO2023080210A1 (ja) * | 2021-11-05 | 2023-05-11 | 学校法人東海大学 | 劇症型nk白血病に対する治療標的の同定 |
-
2018
- 2018-02-22 JP JP2018029589A patent/JP2019144152A/ja active Pending
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WO2023080210A1 (ja) * | 2021-11-05 | 2023-05-11 | 学校法人東海大学 | 劇症型nk白血病に対する治療標的の同定 |
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