JP2019143221A - 電解処理用電極及びその製造方法 - Google Patents

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Atsushi Iida
淳 飯田
清和 中根
Kiyokazu Nakane
清和 中根
智行 宮崎
Satoyuki Miyazaki
智行 宮崎
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Abstract

【課題】被処理部材の製造コストを低減することができる電解処理用電極及びその製造方法を提供する。【解決手段】本発明に係る電解処理用電極及びその製造方法によれば、電極部に相当する電極構成体41の一部が、いわゆるバルブ金属によって形成されている。具体的には、電極構成体41が、電極部材413を1対の保持プレートである第1、第2保持プレート411,412で挟み込むかたちで形成されている。このため、電極構成体41の全体を白金のような不溶性金属(貴金属)によって形成する場合に比べて、不溶性金属の使用量を削減することができ、被処理部材であるピストン1の製造コストを低減することができる。【選択図】図8

Description

本発明は、電解処理用電極及びその製造方法に関する。
従来の電解処理用電極としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
すなわち、ピストンのトップリング溝に陽極酸化処理を施す従来の電解処理用電極は、ピストンの外径よりも大きな内径を有する円環状に形成されている。そして、この電解処理用電極は、電解液中において、トップリング溝に対して径方向に対向して配置され、通電によって、トップリング溝に陽極酸化皮膜を形成する。
特開2010−163672号公報
近年、陽極酸化皮膜の空隙中に金属を析出させて皮膜を強化する方法が採用されている。通常のめっきでは、陽極に溶解性の金属電極を用いるのが通常であるが、上記の皮膜強化方法では、溶解により電極面積が変化することから、溶解性の電極の使用は、好ましくない。
しかし、従来の電解処理用電極を、陽極に使用される一般的な不溶性金属である白金のような貴金属を使用した場合、被処理部材の製造コストが増大してしまう問題がある。
そこで、本発明は、前記従来の電解処理用電極の技術的課題に鑑みて案出されたものであり、被処理部材の製造コストを低減することができる電解処理用電極及びその製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、その一態様として、電極部は、バルブ金属によって被処理部材の溝部を包囲するリング板状に形成され、前記電極部の内周面に、不溶性金属又は不溶性化合物からなる電極面が、前記電解液に露出可能に設けられている。
本発明によれば、被処理部材の製造コストを低減することができる。
本発明に係る電解処理用電極を適用して電解処理を施すピストンを収容するシリンダの縦断面図である。 (a)は図1に示すピストンを部分断面した正面図、(b)は同図(a)の要部拡大図、(c)は図1(b)に示すトップリング溝上面の拡大図である。 図1に示すピストンの製造工程を表したフローチャートである。 図3に示す電解処理工程において電解析出処理を行う電解処理装置の概略図である。 図3に示す電極析出工程の流れを表したフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る電解処理用電極の分解斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る電解処理用電極の斜視図である。 図7のA−A線断面図である。 図8の要部拡大図である。 図8に示す電極部材の他例を表した断面図である。 (a)は、図5に示す通電時の状態を表した従来の電解処理装置の要部拡大図、(b)は、同図(a)に示す装置によって電解処理されたトップリング溝の要部拡大断面図である。 (a)は、図5に示す通電時の状態を表した図4の電解処理装置の要部拡大図、(b)は、同図(a)に示す電解処理装置によって電解処理されたトップリング溝の要部拡大断面図である。 電極の幅違いによる金属析出部の厚さ比率を表したグラフである。 図3に示す過析出除去工程において過析出除去処理を行う過析出除去装置の概略図を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。 図3に示す過析出除去工程の流れを表したフローチャートである。 図3に示す過析出除去工程を表した図14(b)の要部拡大図である。 図3に示す過析出除去工程の前後におけるトップリング溝を走査電子顕微鏡で観察した画像であって、(a)は溝開口を表した斜視図、(b)は同図(a)の溝内面の拡大図である。 本発明の第2実施形態に係る電解処理用電極の図8相当図である。 図18に示す電解処理用電極の分解斜視図である。 図18に示す電解処理用電極の平面図である。 図18の要部拡大図である。 図21に示す電極部材の他例を表した断面図である。 本発明の第3実施形態に係る電解処理用電極の図8相当図である。 図23の要部拡大図である。 図23に示す電極部材の他例を表した断面図である。 本発明の第4実施形態に係る電解処理用電極の斜視図である。 図26のB−B線断面図である。 図27の要部拡大図である。 図28に示す電極部の形成工程を表した図であって、(a)は基部形成工程、(b)はマスキング工程、(c)は皮膜形成工程、(d)はマスキング除去工程、(e)はテーパ形成工程を表した図28に相当する拡大断面図である。 (a)は、図28に示す電解処理用電極に通電して電解処理を行う電解処理装置の要部拡大図、(b)は、同図(a)に示す電解処理装置によって電解処理されたトップリング溝の要部拡大断面図である。
以下に、本発明に係る電解処理用電極及びその製造方法の実施形態について、図面に基づいて詳述する。なお、下記の各実施形態では、当該電極を内燃機関のピストンにおけるトップリング溝の電解処理に適用した例を基に説明する。
(ピストンの構成)
図1は、エンジン2のシリンダブロック21における所定のシリンダ20の軸方向に沿った断面図を示している。
図1に示すように、ピストン1は、エンジン2のシリンダブロック21を貫通する横断面ほぼ円形状のシリンダ20内を軸方向に沿って移動(摺動)可能に設けられていて、この摺接するシリンダ20の周壁と共にシリンダ20内に燃焼室Cを形成する。また、このピストン1は、ピストンピン23を介して連結されるコンロッド24を介して図示外のクランクシャフトに連係されている。
なお、図1中において、符号22は、シリンダブロック21上に載置されるシリンダヘッドを示す。また、このシリンダヘッド22の内部には、燃焼室C内に混合気を導入する吸気ポート22aが、吸気バルブ25によって開閉可能に設けられると共に、燃焼室C内のガスを排出する排気ポート22bが、排気バルブ26によって開閉可能に設けられている。
図2は、本発明に係る電解処理用電極を適用して電解処理を施す内燃機関のピストンを示し、(a)は部分断面した正面図、(b)は同図(a)の要部拡大図、(c)は、同図(b)に示すトップリング溝の拡大図である。なお、本図の説明では、ピストン1の中心軸線Zに沿う方向を「軸方向」、ピストン1の中心軸線Zに直交する方向を「径方向」、ピストン1の中心軸線Z周りの方向を「周方向」として説明する。
図2(a)に示すように、ピストン1は、シリコンを含有するアルミニウム合金材料を母材とするAl−Si系のアルミニウム合金材料、例えばAC8Aを鋳造することによってほぼ有蓋円筒状に形成されている。具体的には、ピストン1は、冠面10aの上に燃焼室Cを形成する冠部10と、この冠部10の下端側の外周に一体に形成された1対の第1、第2スカート部11,12と、この第1、第2スカート部11,12の周方向の両端部を接続する1対の第1、第2エプロン部13,14と、を有する。
冠部10は、比較的厚肉に形成された円盤状を呈し、冠面10aには、吸気バルブ25及び排気バルブ26(図1参照)との干渉を回避する凹状のバルブリセス(図示外)が形成されている。また、冠部10の外周部には、溝深さDxが溝幅Wxよりも大きく設定され、コンプレッションリングやオイルリングなどほぼ環状をなす3つのピストンリングPR1〜PR3(図1参照)を保持するピストンリング溝に相当するリング溝15〜17が形成されている。
そして、これら各リング溝15〜17のうち、燃焼室Cにおける燃焼の影響を受けやすい、当該燃焼室Cに最も近接して設けられたトップリング溝15の内部及び側縁部の表面には、図2(b)に示すように、周知の陽極酸化処理を施してなる陽極酸化皮膜18が形成されている。さらに、この陽極酸化皮膜18には、図2(c)に示すように、例えば特開2014−77194号に開示されるような電解析出処理(例えば電解ニッケルめっき処理)が重ねて施されていて、陽極酸化皮膜18の表面及び内部のシリコン粒子の周囲にニッケルや亜鉛等の金属を析出させてなる金属析出部19が形成されている。
ここで、図2(c)に示すように、金属析出部19は、トップリング溝15の奥側から開口端側に向かって徐々に厚くなるように形成されている。また、前記開口端側の金属析出部19には、トップリング溝15の開口端からトップリング溝15の深さDxの1/2未満の領域Axに、前記電解析出処理により過析出した金属(図2(c)中に二点鎖線で表した部分)を除去してなる1対の平坦部19aが形成されている。なお、この1対の平坦部19aは、その間隔Wyが、トップリング溝15内に嵌め込まれる図示外のピストンリングの幅と同等となるように形成されている。
(ピストンの製造方法)
図3は、ピストン1の製造工程の概要を表したフローチャートを示している。
図3に示すように、前記アルミニウム合金の素材を鋳造することによりピストン1を形成し(ステップS1)、この鋳造したものを熱処理した後(ステップS2)、リング溝形成工程において、リング溝15〜17を加工する(ステップS3)。次に、陽極酸化工程において、前記各リング溝15〜17のうちトップリング溝15の内面に陽極酸化処理を施した後(ステップS4)、電解析出工程において、前記陽極酸化処理によって形成された陽極酸化皮膜18に電解析出処理を施す(ステップS5)。その後、この電解析出処理によって過析出した金属を除去し(ステップS6)、ピストン1が完成する。
(電解析出工程の説明)
図4は、図3中の電解析出工程で電解析出処理を行う電解処理装置の概略図を示している。
図4に示すように、電解処理装置は、電解液を貯留するほぼ有底円筒状の容器3と、この容器3に貯留される電解液に浸漬される陽極側の電極である陽極電極(以下、単に「電極」と略称する。)4と、容器3の外部に設けられた陰極側の電極である陰極電極5と、を有する。なお、図4中の符号6は、容器3内の電解液の漏出を抑制するシール部材である。
容器3は、ピストン1の外径よりも大きな内径を有し、底部には、ピストン1を逆さ(冠部10が下側)に支持する台座部31を有する。台座部31は、中央部が凹状に凹み、外周側には、ピストン1の冠面10aに当接支持するほぼ平坦状の支持面31aが形成されている。また、容器3の側部(周壁)には、電極4の電気接続に供する電線が導入されている。さらに、容器3の側部には、電解液の導入に供する導入口32が開口されると共に、電解液の排出に供する排出口33が開口されている。
電極4は、ピストン1の外径よりも僅かに大きな内径を有するリング板状を呈し、外周部の厚さT2に対して内周部の厚さT1が相対的に小さくなるように形成されている。すなわち、この電極4は、外周側に設けられ、比較的厚肉に形成された外周側厚肉部4aと、内周側に設けられ、外周側厚肉部4aよりも相対的に薄肉に形成された内周側薄肉部4bと、を有する。そして、外周側厚肉部4aと内周側薄肉部4bとは、外周側から内周側に向かって厚さが徐々に薄くなる円錐テーパ部4cによって接続されている。この円錐テーパ部4cによって、電解液が内周側に導入容易となっている。
以上のような電解処理装置を用いて、電解析出処理が行われる。具体的には、まず、冠部10を下方に向けた状態でピストン1の冠面10aを台座部31の支持面31aに載置した後、シール部材6を潰すことによって処理範囲のみを露出させてシールし、前記処理範囲を電解液に浸漬させる。その後、ピストン1のうち電解液に浸漬していない部分、例えば第1スカート部11の先端部に陰極電極5を接触させ、通電することにより、電解析出処理が行われる。
図5は、電極析出工程の流れを表したフローチャートを示している。
図5に示すように、まず、ピストン配置工程として、ワークであるピストン1を、トップリング溝15が電極面413aと対向するように電解処理装置にセットする(ステップS11)。そして、ピストン1を固定(クランプ)した後(ステップS12)、陰極電極5を下降させて、この陰極電極5をピストン1の第1スカート部11に接触させる(ステップS13)。続いて、電解液の吐出を開始し(ステップS14)、通電工程において、陽極電極5から電解液を介してピストン1に所定時間通電を行った後(ステップS15)、電解液の吐出を停止させる(ステップS16)。その後、陰極電極5を上昇させ(ステップS17)、ピストン1のクランプを解除した後(ステップS18)、このピストン1を取り出して(ステップS19)、電解析出工程が完了する。
〔第1実施形態〕
以下、図6〜図17に基づき、本発明に係る電解処理用電極の第1実施形態を示す。
(電極の構成)
図6は、電極4の分解斜視図を示し、図7は、図6に示す電極4を組み立ててなる電極4の斜視図を示している。また、図8は、図7のA−A線に沿って切断した電極4の縦断面図を示している。なお、各図の説明においては、電極4の中心軸線Xに沿う方向を「軸方向」、電極4の中心軸線Xに直交する方向を「径方向」、電極4の中心軸線X周りの方向を「周方向」として説明する。
図6〜図8に示すように、電極4は、ピストン1の外径Rxよりも僅かに大きな内径R1を有するほぼリング状に形成され、電極を構成する電極部としての電極構成体41と、1対のリング状に形成され、電極構成体41を支持する電極支持部としての電極ホルダ42と、有する。すなわち、本実施形態では、電極4が、電極を構成する電極構成体41と、この電極構成体41とは別体に形成され、当該電極構成体41を支持する電極ホルダ42と、に分割して構成されている。
電極構成体41は、ほぼリング板状に形成された1対の保持プレートである第1、第2保持プレート411,412と、該第1、第2保持プレート411,412に挟み込まれるかたちで保持され、電極本体を構成するほぼリング板状の電極部材413と、を有する。第1、第2保持プレート411,412と電極部材413とは、所定の固定手段、例えばスポット溶接により固定(接合)される。なお、このスポット溶接は、周方向の複数箇所(本実施形態では16箇所)に、ほぼ等間隔で実施される。
第1、第2保持プレート411,412は、後述する電極部材413の厚さW3よりも厚い所定の厚さW1,W2(本実施形態では0.3mm厚)のいわゆるバルブ金属、例えばチタン(Ti)により、電極部材413とほぼ同形の円環状に形成されていて、電極部材413を上下から挟み込むように保持する。すなわち、電極構成体41は、電極部材413の内側端面により構成される電極面413aを露出させるように、電極部材413を第1、第2保持プレート411,412で挟み込んで保持することにより構成される。また、この際、第1、第2保持プレート411,412の内径は、それぞれ電極部材413の内径と同じか、又は電極部材413の内径よりも僅かに大きく形成されていて、少なくとも内周側に電極部材413の端部が突出しないように構成されている。なお、第1、第2保持プレート411,412については、上記の一例として例示したチタン(Ti)に限定されるものではなく、Al,Ta,Nb,W,Mo,V,Bi,Zr,Hf,Siなど、他のバルブ金属で形成されていてもよい。
電極部材413は、その厚さ(幅)W3が被処理対象であるトップリング溝15の溝幅Wx(図2参照)の1/2以下で、かつ溝幅Wxの1/10以上となる極薄(本実施形態では0.2mm厚)の不溶性金属、例えば白金(Pt)により、ほぼ円環状に形成されている。なお、電極部材413は、上記一例として例示した白金(Pt)に限定されるものではなく、他の不溶性金属により形成されていてもよい。また、この電極部材413は、必ずしも不溶性金属により単体で形成されている必要はなく、例えば所定の基材の表面に不溶性金属もしくは不溶性化合物を被覆することによって形成されてもよい。具体的には、図10を参照して後述する。
電極ホルダ42は、電極構成体41の第1保持プレート411側を支持する第1ホルダ421と、電極構成体41の第2保持プレート412側を支持する第2ホルダ422と、を有する。第1ホルダ421と第2ホルダ422とは、所定の固定手段により固定(接合)される。なお、本実施形態では、この固定手段は、第1ホルダ421に形成される後述の第1プレート嵌合溝421cに嵌め込まれ、第1ホルダ421と共に第2ホルダ422を挟み込む複数のクランププレート423と、これらクランププレート423を第1ホルダ421に固定するスクリュ424と、で構成される。
第1ホルダ421は、電極構成体41の外径D1よりも大きな外径D2に設定されると共に、電極構成体41の厚さT1よりも大きな厚さT2に設定されている。第1ホルダ421は、外周側に比較的厚肉に形成された円環状の基部421aと、この基部421aの内周側に段差状に形成され、電極構成体41を受容する電極受容部421bと、を有する。基部421aには、周方向にほぼ90°間隔で、各クランププレート423が嵌合する断面が矩形凹状の4つの第1プレート嵌合溝421cが、径方向に沿って形成されている。そして、この第1プレート嵌合溝421cには、後述のクランププレート423の固定に供するスクリュ424がねじ込まれる雌ねじ孔421dが形成されている。電極受容部421bは、上方に開口する凹状を呈し、電極構成体41の厚さT1よりも大きな深さT3に形成されている。すなわち、電極受容部421bにおいて、電極構成体41が第2ホルダ422により挟み込まれると共に、これら電極構成体41及び第2ホルダ422が第1プレート嵌合溝421cに嵌め込まれたクランププレート423により挟み込まれる。
第2ホルダ422は、ほぼ円環状を呈し、電極構成体41の内径R1よりも大きい内径R2に設定されると共に、一般部422aが、外周側から内周側に向かって厚さが徐々に減少するように形成されている。すなわち、第2ホルダ422の一般部422aは、下側に、水平かつ平坦状に形成された水平面422bを有すると共に、上側に、内周側へ向かって下り傾斜する円錐テーパ状に形成された傾斜面422cを有する。また、第2ホルダ422は、第1ホルダ421の第1プレート嵌合溝421cに対応する周方向位置に、それぞれ第1プレート嵌合溝421cと共にクランププレート423を受容する4つの第2プレート嵌合溝422dが、径方向に沿って形成されている。すなわち、第2プレート嵌合溝422dは、第1プレート嵌合溝421cと段差なく接続可能な平坦状に形成されていて、それぞれ第1プレート嵌合溝421cと協働してクランププレート423を受容する。
クランププレート423は、第1プレート嵌合溝421cに受容される基部423aと、基部423aの内側に延長され、第2プレート嵌合溝422dに嵌合して第2ホルダ422をクランプするクランプ部423bと、が一体に形成されている。すなわち、クランププレート423は、それぞれ第1プレート嵌合溝421cと第2プレート嵌合溝422dとに跨るように配置され、電極受容部421bに延出したクランプ部423bにより第2ホルダ422をクランプした状態で、スクリュ424により第1ホルダ421に共締め固定される。基部423aには、ほぼ中央位置に、スクリュ424の軸部が貫通する貫通孔423cが、厚さ方向に沿って貫通形成されている。クランプ部423bは、縦断面が第2ホルダ422の一般部422aと相似形状を呈し、第2プレート嵌合溝422dに嵌め込まれて第2ホルダ422をクランプした状態で、第2ホルダ422の一般部422aと周方向に段差なく連続可能に構成されている。
(電極構成体の製造方法)
電極構成体41は、以下の工程に基づいて製造される。まず、プレート形成工程において、チタン(Ti)により第1、第2保持プレート411,412が形成される。また、電極形成工程において、不溶性金属である白金(Pt)により電極部材413が形成される。次に、電極挟み工程において、電極部材413の内側端部を外部に露出させた状態で、電極部材413が、第1、第2保持プレート411,412によって挟み込まれる。その後、電極固定工程において、これら第1、第2保持プレート411,412と電極部材413とがスポット溶接によって接合され、電極構成体41が完成する。
(電極構成体の他例)
図10は、図7のA−A線に沿って切断した断面に相当する図であり、電極部材413を変更してなる電極構成体41の他例を表した当該電極構成体41の縦断面図を示している。
前述のように、電極構成体41の電極部材413は、不溶性金属単体で形成されている必要はなく、例えば図10に示すように、所定の材料(本実施形態ではチタン(Ti))により形成される基材413bを不溶性金属又は不溶性化合物の皮膜413cで被覆することにより形成することも可能である。換言すれば、電極部材413は、第1、第2保持プレート411,412との当接面が、不溶性金属又は不溶性化合物の皮膜413cにより被覆され、この被覆を介して第1、第2保持プレート411,412と溶接によって接合されていてもよい。なお、不溶性金属の皮膜としては、例えば白金めっきが挙げられる。この白金めっきの膜厚については、2〜5μmに設定されることが望ましい。また、不溶性化合物の皮膜としては、酸化イリジウム皮膜や酸化ルテニウム皮膜などが挙げられる。この酸化イリジウム皮膜や酸化ルテニウム皮膜の膜厚については、2〜10μmに設定されることが望ましい。
(従来の電解析出処理)
図11は、従来の電解処理装置を用いて電解析出処理を行った際の通電時の状態を表した図であり、(a)は電解処理装置の電極面近傍を拡大して表示した電解処理装置の要部拡大図、(b)は電解析出処理が施されたトップリング溝を拡大して表示した同図(a)の拡大図を示している。
図11(a)に示すように、従来の電解処理装置では、電極40の厚さTxが、被処理対象であるトップリング溝15の溝幅Wxとほぼ同等に設定されていた。このため、当該電極を、代表的な不溶性金属である白金により形成した場合、被処理製品の製造コストが増大してしまう問題があった。
また、従来は、電極40の電極面40aの幅W0がトップリング溝15の溝幅Wxと同等に設定されていた。このため、通電によって電極40の電極面40aから放射される電流密度ベクトルIが、トップリング溝15の奥まで届かず、トップリング溝15の開口部の近傍に集中してしまっていた。その結果、図11(b)に示すように、電解析出処理により形成される金属析出部19がトップリング溝15の開口部に集中してしまい、トップリング溝15内に嵌め込まれるピストンリングの保持性が悪化してしまう問題があった。
(本実施形態に係る電解析出処理)
図12は、本実施形態に係る電極4を用いて電解析出処理を行った際の通電時の状態を表した図であり、(a)は電解処理装置の電極面413a近傍を拡大して表示した電解処理装置の要部拡大図、(b)は電解析出処理が施されたトップリング溝を拡大して表示した同図(a)の拡大図を示している。
図12(a)に示すように、本実施形態に係る電解処理装置では、電極4のうち電極本体を構成する電極部材413の厚さW3、すなわち電極面413aの幅W3が、トップリング溝15の溝幅Wxの1/2以下に設定されている。このように、トップリング溝15の溝幅Wxに対して十分に小さい厚さW3に設定された電極部材413により、電極面413aからトップリング溝15への電流密度ベクトルIが、図12(a)に示すように、トップリング溝15の奥まで達する。この際、トップリング溝15における電流分布は、開口部から徐々に低下して、奥まで至る。したがって、図12(b)に示すように、電流密度ベクトルIが、トップリング溝15の奥まで届くようになり、開口部の近傍に集中してしまうおそれがなくなる。換言すれば、トップリング溝15に形成される金属析出部19の厚さW4が、トップリング溝15の奥側から開口側に向かって徐々に厚く形成されることになり、当該金属析出部19が開口部の近傍に集中してしまうおそれがなくなる。これにより、金属析出部19の偏った分布が解消され、トップリング溝15内に嵌め込まれるピストンリングの保持性やシール性を向上させることができる。
図13は、電極4の厚さ(電極面413aの厚さ)の違いによる皮膜(金属析出部19)の厚さの比率を表したグラフであり、(a)は溝開口からの距離と膜厚比との関係、(b)は溝開口(同図(a)の溝開口からの距離がゼロ)電極4の厚さと膜厚比との関係を示している。
ここで、「膜厚比」とは、溝開口から溝奥までの膜厚の平均値と、任意の位置の膜厚との比を示す。
図13に示すように、従来の電極の厚さ1.2mmに対し、電極部材413の厚さを0.8mm(従来比67%)では、溝開口の膜厚比が25%と比較的大きくなる。その結果、溝内部において、金属析出部の膜厚が急激に減少してしまう。一方、電極部材413の厚さを0.6mm(従来比50%)以下に設定した場合には、溝開口の膜厚比が12〜13%程度となり、溝内部においても、金属析出部の膜厚が緩やかに減少するものとなる。換言すれば、この解析結果により、金属析出部の膜厚の減少分布が比較的緩やかなものとなる臨界点は、電極部材413の厚さが従来比50%以下、すなわちトップリング溝15の溝幅の1/2以下であることが確認された。
なお、上記解析結果によれば、金属析出部の膜厚という観点では、電極部材413の厚さがトップリング溝15の溝幅の1/2以下であればよく、特に下限はないと考えられる。しかし、電極部材413の厚さを従来比10%以下、すなわちトップリング溝15の溝幅の1/10以下に設定する場合、特に後述する第4実施形態において、加工が困難となるおそれがある。そこで、全てを総合的に勘案すると、電極部材413の厚さは、トップリング溝15の溝幅の1/2以上かつ1/10以下であることが望ましいと考えられる。
(過析出除去工程の説明)
図14は、図3中の過析出除去工程で過析出除去処理を行う過析出除去装置の概略図であって、(a)は平面図、(b)は正面図を示している。
図14に示すように、過析出除去装置は、ピストン1を回転可能に支持するピストン支持台71と、このピストン支持台71上に載置されたピストン1のトップリング溝15内に過析出した金属を除去するほぼ円板状の工具72と、この工具72を回転可能に支持する工具支持台73と、を有する。すなわち、この過析出除去装置は、トップリング溝15内に工具72の先端部を挿入し、ピストン1と工具72を互いに反対方向へほぼ同じ回転速度で相対回転させることで、工具72の外周縁部(エッジ)によりトップリング溝15内に過析出した金属をこそぎ落とすように除去する。
ピストン支持台71は、ピストン1の回転支持のベースとなる台座部711と、この台座部711の上部に回転可能に設けられ、ピストン1を一方向へ回転させる回転軸712と、を有する。回転軸712は、ピストン1の内周部、例えば第1、第2エプロン部13、14の二面幅に嵌合可能に形成され、当該ピストン1の内周部に嵌合することによって、当該ピストン1と一体回転する。
工具72は、所定の金属材料によって全体がほぼ円板状に形成されていて、トップリング溝15の溝幅とほぼ同等の厚さに形成されてなる一般部721と、一部の周方向領域の外周縁部に一般部721よりも薄肉に形成され、加工前の工具72の挿入に供する薄肉部722と、を有する。一般部721は、後述のバニッシングによりトップリング溝15の1対の平坦部19aの形成に供するほぼ平坦状の平行面721a,721aを有する。すなわち、一般部721は、平行面721a,721a間の距離である厚さがトップリング溝15の適正な溝幅、つまりトップリング溝15に嵌め込まれるピストンリングの幅と同等の厚さに設定され、加工後のトップリング溝15の溝幅が、当該一般部721の厚さに形成されるようになっている。また、一般部721の周長は、ピストン1のトップリング溝15の周長よりも長く設定されていて、当該一般部721でもってトップリング溝15の全周の加工が可能となっている。薄肉部722は、工具72の一部の周方向領域に接線方向へ沿って直線状に設けられ、かつ電解析出処理後のトップリング溝15の最小の溝幅よりも小さい厚さに設定されていて、加工前にトップリング溝15内に径方向外側から挿入される。また、薄肉部722と一般部721とは、一般部721側から薄肉部722側に傾斜するテーパ部723によって接続されている(図14(b)参照)。これにより、加工開始時において、薄肉部722から一般部721へスムーズに移行すると共に、テーパ部723のエッジによって析出金属の除去が開始される。
工具支持台73は、工具72の回転支持のベースとなる台座部731と、この台座部731の上部に回転可能に設けられ、工具72を他方向へ回転させる回転軸732と、を有する。工具支持台73は、ピストン支持台71に対して径方向に相対移動可能に設けられている。すなわち、この工具支持台73は、加工開始時においてトップリング溝15内への工具72の挿入に伴いピストン支持台71に接近し、加工完了後においてトップリング溝15からの工具72の離脱に伴いピストン支持台71から退避する。回転軸732は、工具72の中央部に形成された貫通孔724に固定されることによって、当該工具72と一体回転する。
図15は、過析出除去処理工程の流れを表したフローチャートを示している。
図14、図15に示すように、まず、過析出除去装置のピストン支持台71にワークであるピストン1をセットした後(ステップS21)、工具支持台73を前進(ピストン支持台71に接近)させて、工具72の薄肉部722をピストン1のトップリング溝15内に挿入する(ステップS22)。続いて、工具72とピストン1との相対回転を開始し(ステップS23)、規定回数だけ相対回転させた後(ステップS24)、工具72の回転を停止させる(ステップS25)。その後、工具支持台73を後退(ピストン支持台71から退避)させて、工具72をピストン1のトップリング溝15から離脱させた後(ステップS26)、ピストン支持台71からピストン1を取り出して(ステップS19)、過析出除去工程が完了する。
図16は、過析出除去処理工程における具体的な加工内容を表した図であり、図14中のトップリング溝15と工具72との接触部を拡大して表示した要部拡大図を示している。図16のうち、(a)は工具72の挿入前、(b)は工具72の薄肉部722を挿入した状態、(c)は工具72の回転を開始してトップリング溝15と一般部721とが摺接した状態、(d)は加工が完了してトップリング溝15から工具72を離脱させた状態、をそれぞれ示している。
図16(a)に示すように、まず、工具72の薄肉部722をピストン1のトップリング溝15に対向させ、図16(b)に示すように、当該工具72の薄肉部722をトップリング溝15内に挿入する。続いて、図16(c)に示すように、ピストン1と工具72とを同じ周速度となる回転速度で相対回転させて、一般部721の端縁(エッジ)によって、金属析出部19において過析出した金属をこそぎ落とすように除去すると共に、この金属を除去した面を工具72の平行面721a,721aによりバニッシングして、平坦部19a,19aを形成する。その後、図16(d)に示すように、ピストン1が一周し、工具72の一般部721によってトップリング溝15の過析出除去が完了したところで、トップリング溝15から工具72を離脱させ、過析出除去処理が完了する。
図17は、過析出除去処理工程の前後でトップリング溝15を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した画像であって、(a)は溝開口を表した斜視図、(b)は同図(a)の溝内面の拡大図を示している。
図17(a)に示すように、電解析出処理後のトップリング溝15の溝内面には、金属析出部19において析出した金属の大小によって凹凸状に形成されている。すなわち、電解析出処理後のトップリング溝15の内側面には、過析出の金属によって溝幅が規定値より狭くなる凸部19bが形成され、この凸部19b以外の部分(金属が析出していない部分)が凹部19cとなる。
一方、図17(b)に示すように、過析出除去処理後のトップリング溝15の溝内面には、図17(a)に示す複数の凸部19bが、ほぼ平坦状の複数の平坦部19aとして構成されると共に、この平坦部19a以外の部分に、当該平坦部19aよりも低い凹部19cが残存する。すなわち、工具72によって過析出の金属が除去され、かつバニッシングされることで、ほぼ平坦状に形成され、かつ対向面がほぼ平行となる複数の平坦部19aが形成される。ここで、平坦部19aは、トップリング溝15の開口部から溝深さの1/2未満となる径方向範囲に形成される。また、平坦部19aにおけるトップリング溝15の溝幅は、当該トップリング溝15内に嵌め込まれる図示外のピストンリングの厚さと同等に形成されている。
このように、トップリング溝15の溝内面に複数の平坦部19aが形成されることで、トップリング溝15内において図示外のピストンリングが溝内面に密着可能となり、このピストンリングとトップリング溝15の溝内面との接触面積を増大させることができる。その結果、トップリング溝15内に嵌め込まれるピストンリングによるシール性が向上し、シリンダ内においてブローバイガスを低減することができる。
(本実施形態の作用効果)
前述したように、従来の電解処理装置では、電極の厚さがトップリング溝の溝幅とほぼ同等に設定されていたため、電解析出処理のために当該電極を白金のような貴金属で形成すると、被処理部材の製造コストが増大してしまう問題があった。
これに対し、本実施形態に係る電極4及びその製造方法では、以下の効果が奏せられることにより、前記従来の電解処理用電極の課題を解決することができる。
前記電極4は、陽極に配置され、円筒形状の被処理部材であるピストン1の外周面に円周方向に沿って環状に形成されてなる被処理部としての溝部であるトップリング溝15に対し、電解液を介して電解処理を施す電解処理用電極であって、電解液の中でトップリング溝15に放電可能な電極部としての電極構成体41と、電極構成体41を支持するリング状の電極支持部としての電極ホルダ42と、を有し、電極構成体41は、バルブ金属によってトップリング溝15を包囲するリング状に形成され、電極構成体41の内周面に、不溶性金属又は不溶性化合物からなる電極面413aが、電解液に露出可能に設けられている。
このように、本実施形態では、電極4を構成する電極構成体41の一部が、バルブ金属によって形成されている。このため、電極構成体41の全体を白金のような不溶性金属(貴金属)で形成する場合に比べて、不溶性金属の使用量を削減することができ、被処理部材であるピストン1の製造コストを低減することができる。
また、本実施形態では、電極構成体41と電極ホルダ42とは別体に構成され、電極構成体41は、リング板状に形成された1対の保持プレートである第1、第2保持プレート411,412と、第1、第2保持プレート411,412に挟み込まれ、第1、第2保持プレート411,412の内径とほぼ同じ内径に形成された電極部材413と、を有する。
このように、本実施形態では、電極部材413を1対の保持プレート(第1、第2保持プレート411,412)で挟み込むことによって電極構成体41が形成されている。このため、不溶性金属(貴金属)、例えば白金で形成する電極本体としての電極部材413をより薄く形成することが可能となって、不溶性金属の使用量を削減できることは勿論、電極面413aの幅をより小さく設定することができる。これにより、電極面413aから放射された電流密度ベクトルIが、トップリング溝15に対して奥まで届くようになり、金属析出部19の偏った分布を抑制することができる。その結果、トップリング溝15に嵌め込まれるピストンリングの保持性やシール性を向上させることができる。
また、本実施形態では、電極部材413は、不溶性金属によってリング板状に形成され、又は、リング板状の基材413bに不溶性金属もしくは不溶性化合物を被覆して形成されている。
このように、電極部材413が不溶性金属単体で形成されていることにより、電極部材413の耐久性(耐衝撃性)が向上し、電極4の耐久性を向上させることができる。
一方、本実施形態の他例のように、電極部材413が、リング板状の基材413bに不溶性金属もしくは不溶性化合物を被覆することによって形成されている場合は、基材413bの厚さ分だけさらに不溶性金属(貴金属)の使用量を削減することができ、被処理部材であるピストン1の製造コストを低減することができる。
また、本実施形態では、1対の保持プレートは、第1保持プレート411と第2保持プレート412とを有し、電極部材413の厚さは、第1、第2保持プレート411,412の厚さよりも小さく設定されている。
すなわち、第1、第2保持プレート411,412を相対的に厚く形成することにより、電極部材413の支持性を向上させることができる。一方、電極部材413を相対的に薄く形成することで、不溶性金属(貴金属)によって形成される電極部材413の使用量を削減でき、被処理部材であるピストン1の製造コストを低減することができる。
また、本実施形態では、第1、第2保持プレート411,412と電極部材413とは、互いに溶着(本実施形態ではスポット溶接)されている。
このように、第1、第2保持プレート411,412と電極部材413とを溶着することで、電極部材413への通電をより確実なものとし、被処理部材であるピストン1の品質を向上させることができる。
また、本実施形態の他例では、電極構成体41と電極ホルダ42とは別体に構成され、電極構成体41は、第1保持プレート411と第2保持プレート412に分割して形成されたリング板状の保持プレートと、第1保持プレート411と第2保持プレート412とに挟み込まれ、第1保持プレート411及び第2保持プレート412との当接面に不溶性金属又は不溶性化合物が被覆された電極部材413と、を有する。
このように、本実施形態の他例としては、電極部材413の第1、第2保持プレート411,412との当接面が、不溶性金属又は不溶性化合物によって被覆されていてもよい。かかる構成の場合、不溶性金属(貴金属)の使用量を削減でき、被処理部材であるピストン1の製造コストを低減することができる。
また、本実施形態に係る電極4(電極構成体41)の製造方法は、1対の保持プレートである第1、第2保持プレート411,412を形成するプレート形成工程と、不溶性金属で形成され、第1、第2保持プレート411,412の内径とほぼ同じ内径に形成された電極部材413を形成する電極形成工程と、電極部材413の内側端部を外部へと露出させた状態で、電極部材413を第1、第2保持プレート411,412によって挟み込む電極挟み工程と、第1、第2保持プレート411,412と電極部材413とを固定する電極固定工程と、を含む。
このように、本実施形態では、電極部材413を1対の保持プレート(第1、第2保持プレート411,412)で挟み込む構成となっている。このため、不溶性金属(貴金属)、例えば白金で形成する電極本体としての電極部材413をより薄く形成することが可能となり、不溶性金属の使用量を削減できることは勿論、電極面413aの幅をより小さく設定することができる。これにより、電極面413aから放射された電流密度ベクトルIがトップリング溝15に対して奥まで届くようになり、金属析出部19における偏った分布を抑制することができる。その結果、トップリング溝15に嵌め込まれるピストンリングの保持性やシール性を向上させることができる。
また、本実施形態では、電極固定工程において、第1、第2保持プレート411,412と電極部材413とを溶接(本実施形態ではスポット溶接)により固定する。
このように、第1、第2保持プレート411,412と電極部材413とを溶接により固定することで、電極部材413への通電をより確実なものとし、被処理部材であるピストン1の品質を向上させることができる。
また、本実施形態に係る電極4は、陽極に配置され、被処理部材であるピストン1に形成された被処理部としての溝部であるトップリング溝15に対して、電解液を介して電解処理を施す電解処理用電極であって、電解液の中でトップリング溝15に放電可能な電極部としての電極構成体41と、電極構成体41を支持する電極支持部としての電極ホルダ42と、を有し、電極構成体41は、バルブ金属によってトップリング溝15に対応する板状に形成され、電極構成体41の端面に、不溶性金属又は不溶性化合物からなる電極面413aが、電解液に露出可能に設けられている。
このように、本実施形態では、電極4を構成する電極構成体41の一部が、バルブ金属により形成されている。このため、電極構成体41の全体を白金のような不溶性金属(貴金属)で形成する場合に比べて、不溶性金属の使用量を削減でき、被処理部材であるピストン1の製造コストを低減することができる。
加えて、本実施形態では、被処理部材の一例としてピストン1が例示され、被処理部としての溝部が環状に形成されているため、これに対応して、電極4がほぼリング状に形成されている。しかし、例えば被処理部である溝部が直線状に形成されている場合、電極4は、溝部に対向可能となる真っ直ぐな板状に形成されていればよく、本実施形態のように、リング状に形成されている必要はない。換言すれば、本発明に係る電解処理用電極は、本実施形態で例示したような環状の溝部のみならず、非環状の溝部の電解処理にも適用可能である。
〔第2実施形態〕
図18〜図21は本発明に係る電解処理用電極及び製造方法の第2実施形態を示し、前記第1実施形態に係る電極構成体41の構成を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については前記第1実施形態と同様であるため、該第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を省略する。
(電極構成体の構成)
図18は、図7のA−A線に沿って切断した電極4の縦断面図に相当する図である。図19は、本実施形態に係る電極4の分解斜視図を示し、図20は、図19に示す電極4を組み立ててなる電極4の平面図を示している。また、図21は、図18の要部拡大図を示している。なお、各図の説明では、電極4の中心軸線Xに沿う方向を「軸方向」、電極4の中心軸線Xに直交する方向を「径方向」、電極4の中心軸線X周りの方向を「周方向」として説明する。
図18〜図21に示すように、本実施形態においては、電極構成体41が、ほぼリング板状の電極部材413と、該電極部材413の外周側に配置されるほぼリング板状のスペーサ414と、電極部材413とスペーサ414を上下から挟み込む第1、第2保持プレート411,412と、で構成される。電極部材413は、第1、第2保持プレート411,412の外径よりも小さい外径に設定されると共に、第1、第2保持プレート411,412の内径とほぼ同等の内径に設定されている。一方、スペーサ414は、いわゆるバルブ金属、例えばチタン(Ti)により形成されていて、電極部材413の外径と同等な内径を有すると共に、第1、第2保持プレート411,412の外径と同等な外径を有し、かつ電極部材413の厚さと同等な厚さに設定されている。そして、図20に示すように、第1、第2保持プレート411,412と電極部材413とは、第1実施形態と同様に、スポット溶接によって溶着されている。すなわち、第1、第2保持プレート411,412と電極部材413とは、周方向に沿ってほぼ等間隔に設けられる複数(本実施形態では16箇所)の溶接部415を介して接合されている。また、第1、第2保持プレート411,412とスペーサ414とは、第1、第2保持プレート411,412と電極部材413と同様に、スポット溶接によって溶着されている。すなわち、第1、第2保持プレート411,412とスペーサ414とは、周方向に沿ってほぼ等間隔に設けられる複数(2箇所)の溶接部415を介して接合されている。
(電極構成体の製造方法)
本実施形態に係る電極構成体41は、以下の工程により製造される。まず、プレート形成工程において、いわゆるバルブ金属であるチタン(Ti)により、第1、第2保持プレート411,412が形成される。また、電極形成工程において、不溶性金属である白金(Pt)により、電極部材413が形成される。また、スペーサ形成工程において、バルブ金属であるチタン(Ti)により、スペーサ414が形成される。その後、電極挟み工程において、スペーサ414を外周側に配置すると共に、電極部材413を内周側に配置して、かつ電極部材413の内側端部を外部に露出させた状態で、電極部材413とスペーサ414とが、第1、第2保持プレート411,412によって挟み込まれる。最後に、電極固定工程において、電極部材413及びスペーサ414と第1、第2保持プレート411,412とがスポット溶接により接合され、電極構成体41が完成する。なお、電極固定工程では、第1溶接工程において、第1、第2保持プレート411,412とスペーサ414とがスポット溶接によって接合され、第2溶接工程において、第1、第2保持プレート411,412と電極部材413とがスポット溶接によって接合される。
図22は、図7のA−A線に沿って切断した断面に相当する図であり、電極部材413を変更してなる電極構成体41の他例を表した当該電極構成体41の縦断面図を示している。
前記第1実施形態と同様、電極構成体41の電極部材413は、不溶性金属単体で形成されている必要はなく、例えば図22に示すように、所定の材料(本実施形態ではチタン(Ti))により形成される基材413bを不溶性金属又は不溶性化合物の皮膜413cで被覆することにより形成することも可能である。換言すれば、電極部材413は、第1、第2保持プレート411,412との当接面が、不溶性金属又は不溶性化合物の皮膜413cにより被覆され、この被覆を介して第1、第2保持プレート411,412と溶接によって接合されていてもよい。なお、不溶性金属の皮膜としては、例えば白金めっきが挙げられる。この白金めっきの膜厚については、2〜5μmに設定されることが望ましい。また、不溶性化合物の皮膜としては、酸化イリジウム皮膜や酸化ルテニウム皮膜などが挙げられる。この酸化イリジウム皮膜や酸化ルテニウム皮膜の膜厚については、2〜10μmに設定されることが望ましい。
(本実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態では、電極形成工程において形成される電極部材413は、第1、第2保持プレート411,412の外径よりも小さい外径に設定され、電極挟み工程よりも前に、電極部材413の外径と同等な内径を有すると共に、第1、第2保持プレート411,412の外径と同等な外径を有し、かつ電極部材413の厚さと同等な厚さに設定されたスペーサを形成するスペーサ形成工程が設けられている。
このように、本実施形態に係る電極構成体41は、電極部材413の外周側にスペーサ414が設けられていて、この電極部材413及びスペーサ414を第1、第2保持プレート411,412により挟み込む構成となっている。これにより、スペーサ414の分だけ不溶性金属の使用量を削減でき、被処理部材であるピストン1の製造コストを低減することができる。
〔第3実施形態〕
図23、図24は本発明に係る電解処理用電極及び製造方法の第3実施形態を示し、前記第1実施形態に係る電極構成体41の構成を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については前記第1実施形態と同様であるため、該第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を省略する。
(電極構成体の構成)
図23は、図7のA−A線に沿って切断した電極4の縦断面図に相当する図である。また、図24は、図23の要部拡大図を示している。なお、本図の説明では、電極4の中心軸線Xに沿う方向を「軸方向」、電極4の中心軸線Xに直交する方向を「径方向」、電極4の中心軸線X周りの方向を「周方向」として説明する。
図23、図24に示すように、本実施形態に係る電極構成体41では、前記第2実施形態に係るスペーサ414が、第1保持プレート411と一体に形成されている。すなわち、本実施形態では、第1保持プレート411の第2保持プレート412との対向端部であって電極部材413の外周側の領域に、前記第2実施形態に係るスペーサ414に相当するスペーサ部416が、第1保持プレート411と一体に設けられている。このスペーサ部416は、電極部材413の外径と同等な内径を有すると共に、第1、第2保持プレート411,412の外径と同等な外径を有し、かつ電極部材413の厚さと同等な厚さを有する。また、このスペーサ部416が設けられることで、スペーサ部416の内周側には、電極部材413を受容する凹状の電極受容部417が、径方向内側に向かって開口形成されている。
(電極構成体の製造方法)
本実施形態に係る電極構成体41は、以下の工程により製造される。まず、プレート形成工程において、いわゆるバルブ金属であるチタン(Ti)により、第1、第2保持プレート411,412が形成される。また、電極形成工程において、不溶性金属である白金(Pt)により、電極部材413が形成される。その後、電極挟み工程において、第1保持プレート411の電極受容部417に電極部材413が配置され、電極部材413の内側端部を外部に露出させた状態で、電極部材413が第1、第2保持プレート411,412により挟み込まれる。最後に、電極固定工程において、第1、第2保持プレート411,412と電極部材413とがスポット溶接により接合され、電極構成体41が完成する。
図25は、図7のA−A線に沿って切断した断面に相当する図であり、電極部材413を変更してなる電極構成体41の他例を表した当該電極構成体41の縦断面図を示している。
前記第1実施形態と同様、電極構成体41の電極部材413は、不溶性金属単体で形成されている必要はなく、例えば図25に示すように、所定の材料(本実施形態ではチタン(Ti))により形成される基材413bを不溶性金属又は不溶性化合物の皮膜413cで被覆することにより形成することも可能である。換言すれば、電極部材413は、第1、第2保持プレート411,412との当接面が、不溶性金属又は不溶性化合物の皮膜413cにより被覆され、この被覆を介して第1、第2保持プレート411,412と溶接によって接合されていてもよい。なお、不溶性金属の皮膜としては、例えば白金めっきが挙げられる。この白金めっきの膜厚については、2〜5μmに設定されることが望ましい。また、不溶性化合物の皮膜としては、酸化イリジウム皮膜や酸化ルテニウム皮膜などが挙げられる。この酸化イリジウム皮膜や酸化ルテニウム皮膜の膜厚については、2〜10μmに設定されることが望ましい。
(本実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態では、前記第2実施形態に係るスペーサ414と第1保持プレート411とが一体に形成されている。これにより、電極構成体41の構成部品点数が削減され、電極構成体41の製造工程においてスペーサ形成工程や第1溶接工程を省略することができ、被処理部材であるピストン1の製造コストをさらに低減することができる。
〔第4実施形態〕
図26〜図29は本発明に係る電解処理用電極及び製造方法の第4実施形態を示し、前記第1実施形態に係る電極4の構成を変更したものである。なお、かかる変更点以外の基本的な構成については前記第1実施形態と同様であるため、該第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を省略する。
(電極の構成)
図26は、本実施形態に係る電極4の斜視図を示している。図27は、図26のB−B線に沿って切断した電極4の縦断面図を示し、図27は、図26の要部拡大図を示している。なお、各図の説明では、電極4の中心軸線Xに沿う方向を「軸方向」、電極4の中心軸線Xに直交する方向を「径方向」、電極4の中心軸線X周りの方向を「周方向」として説明する。
図26、図27に示すように、本実施形態に係る電極4では、前記第1実施形態に係る電極構成体41と電極ホルダ42とが一体に形成されている。すなわち、本実施形態では、電極ホルダ42の内周側の端部に、電極構成体41が一体に設けられている。
電極ホルダ42は、外周側に環状に形成される比較的厚肉の厚肉部425と、この厚肉部425の内周側に環状に形成される比較的薄肉の薄肉部426と、この薄肉部426と厚肉部425との間を接続する接続部427と、を有する。接続部427は、上下両側において厚肉部425側から薄肉部426側へ向かって厚さが徐々に小さくなる円錐テーパ状に形成されている。
電極構成体41は、図28に示すように、薄肉部426の内周側の端部に軸方向断面が内周側に向かって先細るように設けられた基部418と、この基部418の内周側の端面に設けられた電極部材413と、を有する。基部418は、薄肉部426と一体に形成され、基部418の内側端部には、上下両側において外周側から内周側へ向かって断面の厚さが徐々に小さくなる円錐テーパ状の1対のテーパ部419,419が形成されている。そして、このテーパ部419,419よりも内周側の端面に、不溶性金属又は不溶性化合物を被覆してなる電極部材413の電極面413aが、外部に露出するように一体に設けられている。
なお、第1実施形態と同様に、不溶性金属の皮膜には、例えば白金めっきが挙げられ、不溶性化合物の皮膜には、酸化イリジウム皮膜及び酸化ルテニウム皮膜などが挙げられる。また、第1実施形態と同様に、白金めっきの膜厚は、2〜5μmに設定されることが望ましく、酸化イリジウム皮膜及び酸化ルテニウム皮膜の膜厚は、2〜10μmに設定されることが望ましい。
(電極の製造方法)
図29は、本実施形態に係る電極4の製造工程を表した図であって、(a)は基部形成工程、(b)はマスキング工程、(c)は皮膜形成工程、(d)はマスキング除去工程、(e)はテーパ形成工程を表した図28に相当する拡大断面図を示している。
本実施形態に係る電極4は、図29に示す以下の工程に基づいて製造される。まず、基部形成工程において、電極ホルダ42の内周側の端部に、リング状の基部418を一体に形成した後、マスキング工程において、基部418の内周側の端部を残した状態で、基部418の表面をマスキングしてなるマスキング部410を形成する。続いて、被覆工程において、マスキング部410が形成されていない基部418の表面を不溶性金属又は不溶性化合物により被覆して、基部418の内側端部に電極部材413を一体に設ける。その後、基部418の内周側の端部の上下両側縁に、1対のテーパ部419,419を形成し、このテーパ部419,419の内周側に電極部材413を残存させることにより、電極4が完成する。
(本実施形態に係る電解析出処理)
図30は、本実施形態に係る電極4を用いて電解析出処理を行った際の通電時の状態を表した図であり、(a)は電解処理装置の電極面413a近傍を拡大して表示した電解処理装置の要部拡大図、(b)は同図(a)に示す電解処理装置によって電解析出処理が施されたトップリング溝を拡大して表示した同図(a)の拡大図を示している。
図30(a)に示すように、本実施形態に係る電解処理装置でも、前記第1実施形態と同様に、電極4のうち電極本体を構成する電極部材413の厚さW3、すなわち電極面413aの厚さW3が、トップリング溝15の溝幅Wxの1/2以下に設定されている。このように、トップリング溝15の溝幅Wxに対し十分に小さい厚さW3に設定された電極部材413の電極面413aから放射された電流密度ベクトルIは、図30(b)に示すように、トップリング溝15の奥まで届くようになり、開口部の近傍に集中してしまうおそれがなくなる。換言すれば、トップリング溝15に形成される金属析出部19が、トップリング溝15の奥側から開口側に向かって徐々に厚く形成されることになり、当該金属析出部19が開口部の近傍に集中してしまうおそれがなくなる。これにより、金属析出部19の偏った分布が解消され、トップリング溝15内に嵌め込まれるピストンリングの保持性やシール性を向上させることができる。
(本実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態では、電極構成体41は、内周側に向かって断面が先細りとなる基部418を有し、基部418の内側端面には、不溶性金属又は不溶性化合物からなる電極面413aが形成されている。
このように、本実施形態では、電極構成体41と電極ホルダ42とが一体的に設けられていて、基部418の内側端面に不溶性金属又は不溶性化合物を被覆することによって電極構成体41が形成されている。このため、電極構成体41と電極ホルダ42とを別体に形成する場合に比べて、電極4の製造工程を削減でき、電極4の生産性の向上が図れる。また、電極面413aについても、基部418の内側端面に形成した不溶性金属又は不溶性化合物の皮膜によって形成されることから、電極構成体41の全体を白金のような不溶性金属(貴金属)で形成する場合に比べて、不溶性金属の使用量を削減でき、被処理部材であるピストン1の製造コストを低減することができる。
また、本実施形態に係る電極4の製造方法は、リング状の基部418を形成する基部形成工程と、基部418の少なくとも内周面を残した状態で、基部418の表面をマスキングするマスキング工程と、マスキングがされていない基部418の表面を不溶性金属又は不溶性化合物によって被覆する被覆工程と、基部418の内周側の端部に、内周側に向かって断面が先細りとなるテーパ部を形成するテーパ形成工程と、を含む。
このように、本実施形態によれば、電極面413aの形成にあたって、基部418の内側端面に形成した不溶性金属又は不溶性化合物の皮膜により形成されることから、電極構成体41の全体を白金のような不溶性金属(貴金属)で形成する場合に比べて、不溶性金属の使用量を削減でき、被処理部材であるピストン1の製造コストを低減することができる。
本発明に係る電極4は前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の作用効果を奏し得る形態であれば、適用対象である被処理部材の仕様等に応じて自由に変更可能である。
特に、前記実施形態においては、電極4の適用の一例として、ピストン1のトップリング溝15の電解処理への適用を例示したが、当該電極4は、環状に形成されたピストン1のトップリング溝15のみならず、例えば直線状に形成された溝部など、種々の態様の溝部について適用可能であることは言うまでもない。
以上説明した実施形態に基づく電解処理用電極としては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
すなわち、当該電解処理用電極は、その1つの態様において、陽極に配置され、円筒形状の被処理部材の外周面に円周方向に沿って環状に形成されてなる被処理部としての溝部に対し、電解液を介して電解処理を施す電解処理用電極であって、前記電解液の中で前記溝部に放電可能な電極部と、前記電極部を支持するリング状の電極支持部と、を有し、前記電極部は、バルブ金属によって前記溝部を包囲するリング状に形成され、前記電極部の内周面に、不溶性金属又は不溶性化合物からなる電極面が、前記電解液に露出可能に設けられている。
前記電解処理用電極の好ましい態様において、前記電極部と前記電極支持部とは別体に構成され、前記電極部は、リング板状に形成された1対の保持プレートと、前記1対の保持プレートに挟み込まれ、前記1対の保持プレートの内径とほぼ同じ内径に形成された電極部材と、を有する。
別の好ましい態様では、前記電解処理用電極の態様のいずれかにおいて、前記電極部材は、不溶性金属によってリング板状に形成され、又は、リング板状の基材に不溶性金属もしくは不溶性化合物を被覆して形成されている。
さらに別の好ましい態様では、前記電解処理用電極の態様のいずれかにおいて、前記電極部材は、白金で形成されている。
さらに別の好ましい態様では、前記電解処理用電極の態様のいずれかにおいて、前記電極部の厚さは、前記電極支持部の厚さよりも薄く形成されている。
さらに別の好ましい態様では、前記電解処理用電極の態様のいずれかにおいて、前記1対の保持プレートは、第1保持プレートと第2保持プレートとを有し、前記電極部材の厚さは、前記第1、第2保持プレートの厚さよりも小さく設定されている。
さらに別の好ましい態様では、前記電解処理用電極の態様のいずれかにおいて、前記第1、第2保持プレートと前記電極部材とは、互いに溶着されている。
さらに別の好ましい態様では、前記電解処理用電極の態様のいずれかにおいて、前記電極部と前記電極支持部とは別体に構成され、前記電極部は、第1保持プレートと第2保持プレートに分割して形成されたリング板状の保持プレートと、前記第1保持プレートと前記第2保持プレートとに挟み込まれ、前記第1保持プレート及び前記第2保持プレートとの当接面に不溶性金属又は不溶性化合物が被覆された電極部材と、を有する。
さらに別の好ましい態様では、前記電解処理用電極の態様のいずれかにおいて、前記第1保持プレートと前記第2保持プレートとは、前記被覆を介して溶着されている。
さらに別の好ましい態様では、前記電解処理用電極の態様のいずれかにおいて、前記電極部は、内周側に向かって断面が先細りとなる基部を有し、前記基部の内側端面には、不溶性金属又は不溶性化合物からなる電極面が形成されている。
また、前述した実施形態に基づく電解処理用電極の製造方法としては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
すなわち、当該電解処理用電極の製造方法は、前記1対の保持プレートを形成するプレート形成工程と、不溶性金属で形成され、前記1対の保持プレートの内径とほぼ同じ内径に形成された前記電極部材を形成する電極形成工程と、前記電極部材の内側端部を外部へと露出させた状態で、前記電極部材を前記1対の保持プレートによって挟み込む電極挟み工程と、前記1対の保持プレートと前記電極部材とを固定する電極固定工程と、を含む。
前記電解処理用電極の製造方法の好ましい態様において、前記電極固定工程では、前記1対の保持プレートと前記電極部材とを溶接によって固定する。
別の好ましい態様では、前記電解処理用電極の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記溶接は、スポット溶接である。
さらに別の好ましい態様では、前記電解処理用電極の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記電極形成工程で形成される前記電極部材は、前記1対の保持プレートの外径よりも小さい外径に設定され、前記電極挟み工程よりも前に、前記電極部材の外径と同等な内径を有すると共に、前記1対の保持プレートの外径と同等な外径を有し、かつ前記電極部材の厚さと同等な厚さに設定されたスペーサを形成するスペーサ形成工程を含む。
さらに別の好ましい態様では、前記電解処理用電極の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記電極固定工程は、前記1対の保持プレートと前記スペーサとを溶接により固定する第1溶接工程と、前記1対の保持プレートと前記電極部材とを溶接により固定する第2溶接工程と、を含む。
さらに別の好ましい態様では、前記電解処理用電極の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記電極支持部及び前記スペーサは、チタンによって形成され、前記電極部材は、白金によって形成されている。
さらに別の好ましい態様では、前記電解処理用電極の製造方法の態様のいずれかにおいて、リング状の前記基部を形成する基部形成工程と、前記基部の少なくとも内周面を残した状態で、前記基部の表面をマスキングするマスキング工程と、前記マスキングがされていない前記基部の表面を不溶性金属又は不溶性化合物によって被覆する被覆工程と、前記基部の内周側の端部に、内周側に向かって断面が先細りとなるテーパ部を形成するテーパ形成工程と、を含む。
さらに別の好ましい態様では、前記電解処理用電極の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記基部は、バルブ金属によって形成され、前記不溶性金属は、白金である。
さらに別の好ましい態様では、前記電解処理用電極の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記基部は、バルブ金属によって形成され、前記不溶性化合物は、酸化イリジウム又は酸化ルテニウムである。
また、別の観点から、前述した実施形態に基づく電解処理用電極は、その一態様として、陽極に配置され、被処理部材に形成された被処理部としての溝部に対して、電解液を介して電解処理を施す電解処理用電極であって、前記電解液の中で前記溝部に放電可能な電極部と、前記電極部を支持する電極支持部と、を有し、前記電極部は、バルブ金属によって前記溝部に対応する板状に形成され、前記電極部の端面に、不溶性金属又は不溶性化合物からなる電極面が、前記電解液に露出可能に設けられている。
1…ピストン(被処理部材)、15…トップリング溝(溝部)、41…電極構成体(電極部)、42…電極ホルダ(電極支持部)、411…第1保持プレート、412…第2保持プレート、413…電極部材、413a…電極面、414…スペーサ、

Claims (12)

  1. 陽極に配置され、円筒形状の被処理部材の外周面に円周方向に沿って環状に形成されてなる被処理部としての溝部に対し、電解液を介して電解処理を施す電解処理用電極であって、
    前記電解液の中で前記溝部に放電可能な電極部と、
    前記電極部を支持するリング状の電極支持部と、
    を有し、
    前記電極部は、バルブ金属によって前記溝部を包囲するリング状に形成され、
    前記電極部の内周面に、不溶性金属又は不溶性化合物からなる電極面が、前記電解液に露出可能に設けられている、
    ことを特徴とする電解処理用電極。
  2. 前記電極部と前記電極支持部とは別体に構成され、
    前記電極部は、リング板状に形成された1対の保持プレートと、前記1対の保持プレートに挟み込まれ、前記1対の保持プレートの内径とほぼ同じ内径に形成された電極部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載の電解処理用電極。
  3. 前記電極部材は、不溶性金属によってリング板状に形成され、又は、リング板状の基材に不溶性金属もしくは不溶性化合物を被覆して形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電解処理用電極。
  4. 前記1対の保持プレートは、第1保持プレートと第2保持プレートとを有し、
    前記電極部材の厚さは、前記第1、第2保持プレートの厚さよりも小さく設定されていることを特徴とする請求項2に記載の電解処理用電極。
  5. 前記第1、第2保持プレートと前記電極部材とは、互いに溶着されていることを特徴とする請求項4に記載の電解処理用電極。
  6. 前記電極部と前記電極支持部とは別体に構成され、
    前記電極部は、第1保持プレートと第2保持プレートに分割して形成されたリング板状の保持プレートと、前記第1保持プレートと前記第2保持プレートとに挟み込まれ、前記第1保持プレート及び前記第2保持プレートとの当接面に不溶性金属又は不溶性化合物が被覆された電極部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載の電解処理用電極。
  7. 前記電極部は、内周側に向かって断面が先細りとなる基部を有し、
    前記基部の内側端面には、不溶性金属又は不溶性化合物からなる電極面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電解処理用電極。
  8. 請求項2に記載の電解処理用電極の製造方法であって、
    前記1対の保持プレートを形成するプレート形成工程と、
    不溶性金属で形成され、前記1対の保持プレートの内径とほぼ同じ内径に形成された前記電極部材を形成する電極形成工程と、
    前記電極部材の内側端部を外部へと露出させた状態で、前記電極部材を前記1対の保持プレートによって挟み込む電極挟み工程と、
    前記1対の保持プレートと前記電極部材とを固定する電極固定工程と、
    を含むことを特徴とする電解処理用電極の製造方法。
  9. 前記電極固定工程では、前記1対の保持プレートと前記電極部材とを溶接によって固定することを特徴とする請求項8に記載の電解処理用電極の製造方法。
  10. 前記電極形成工程で形成される前記電極部材は、前記1対の保持プレートの外径よりも小さい外径に設定され、
    前記電極挟み工程よりも前に、前記電極部材の外径と同等な内径を有すると共に、前記1対の保持プレートの外径と同等な外径を有し、かつ前記電極部材の厚さと同等な厚さに設定されたスペーサを形成するスペーサ形成工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の電解処理用電極の製造方法。
  11. リング状の前記基部を形成する基部形成工程と、
    前記基部の少なくとも内周面を残した状態で、前記基部の表面をマスキングするマスキング工程と、
    前記マスキングがされていない前記基部の表面を不溶性金属又は不溶性化合物によって被覆する被覆工程と、
    前記基部の内周側の端部に、内周側に向かって断面が先細りとなるテーパ部を形成するテーパ形成工程と、
    を含むことを特徴とする請求項7に記載の電解処理用電極の製造方法。
  12. 陽極に配置され、被処理部材に形成された被処理部としての溝部に対して、電解液を介して電解処理を施す電解処理用電極であって、
    前記電解液の中で前記溝部に放電可能な電極部と、
    前記電極部を支持する電極支持部と、
    を有し、
    前記電極部は、バルブ金属によって前記溝部に対応する板状に形成され、
    前記電極部の端面に、不溶性金属又は不溶性化合物からなる電極面が、前記電解液に露出可能に設けられている、
    ことを特徴とする電解処理用電極。
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