本発明は、ヘミング加工用のローラを用いたローラヘミング加工において、ローラによるヘミング加工後に用いる仕上げ用の叩きツールを新規に提案するものであり、この叩きツールを用いることで、加工対象であるパネル部材の角部分において生じる局部的な反り変形(ダレ)を解消し、品質の向上を図ろうとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
本実施形態では、自動車のフード(ボンネット)を構成するパネル部材であるアウタパネルおよびインナパネルをローラヘミング加工の加工対象(ワーク)とする場合を例にとって説明する。すなわち、図1に示すように、本実施形態に係るローラヘミング加工方法は、自動車のフード20(図3参照)を構成するパネル部材としてのアウタパネル1の縁部にパネル本体部2に対して屈曲状に形成されたフランジ部3にヘミング加工用のローラ10を作用させることで、ワークの縁部(アウタパネル1の縁部)にヘミング加工を施すものである。
そして、本実施形態に係るヘミング加工は、屈曲部をなすパネル本体部2(第1の面部)とフランジ部3(第2の面部)とを含むアウタパネル1のパネル本体部2上にインナパネル4を重ねて、フランジ部3をインナパネル4の縁部であるインナ縁部4aに重なるように折り曲げて潰し加工を行う加工である。すなわち、本実施形態に係るヘミング加工は、図2(a)に示すように、アウタパネル1のパネル本体部2上にインナパネル4を載置し、図2(b)に示すように、インナ縁部4aを、アウタパネル1のパネル本体部2とフランジ部3とで挟持させるものである。
本実施形態に係るローラヘミング加工は、直接的にローラ10を作用させる対象をアウタパネル1とし、ローラ10によってフランジ部3をパネル本体部2に対して折り曲げることで(図2(b)、矢印A1参照)、パネル本体部2とフランジ部3とによりインナ縁部4aを挟み込み、アウタパネル1に対してインナパネル4を拘束し、パネル同士をかしめて接合するものである。なお、アウタパネル1とインナパネル4の接合部分、つまりヘミング加工による加工部分には、シーラ等の塗布剤が適宜塗布ないし充填されている。
ここで、本実施形態に係るフード20について、図2から図5を用いて説明する。フード20は、アウタパネル1およびインナパネル4を有する。アウタパネル1は、フード20の意匠面側となる表面側を構成し、インナパネル4は、フード20の裏面側を構成する。アウタパネル1およびインナパネル4は、それぞれ鉄製のパネル、鋼板、アルミニウムを材料としたアルミパネル等の板材に、プレス加工等の所定の成形加工を施したものである。フード20は、アウタパネル1およびインナパネル4を重ね合わせた状態でヘミング加工等によって一体化させ、塗装工程や部品の組付け工程等を経て完成する。
図3に示すように、フード20は、平面視の外形をなす辺部として、前側(図3において上側)に凸の略湾曲形状の前辺部21と、自動車における略前後方向に延伸した左右の側辺部22,22と、前側に凸の湾曲形状の後辺部23とを有し、これら4つの辺部により、略湾曲矩形状の左右対称な平面視外形を有する。フード20の平面視外形は、アウタパネル1の平面視外形に相当する。そして、フード20は、平面視外形において、後側(図3において下側)の左右両側の角部を、比較的尖鋭な鋭角部24とする(図5において破線楕円B1で囲んだ部分参照)。詳細には次のとおりである。
図3に示すように、フード20において、左右の側辺部22は、その大部分を、前側から後側にかけて左右外側に向くようにわずかに傾斜した略直線状の直線部22aとし、直線部22aよりも後側の部分である後端部を、直線部22aの後端から後側にかけて左右内側に向けて湾曲した後湾曲部22bとする。また、フード20において、全体として前側に凸の湾曲形状をなす後辺部23の左右両側の端部23aは、左右外側かつ斜め後側を向いている。そして、側辺部22の後湾曲部22bと、後辺部23の端部23aとにより、鋭角部24が形成されている。鋭角部24が平面視においてなす角度は、例えば70〜80°程度である。
アウタパネル1は、その大部分をなすパネル本体部2と、パネル本体部2の周囲に形成されたフランジ部3とを有する。フランジ部3は、アウタパネル1の縁部においてパネル本体部2に対して直角状をなすように形成された屈曲面部であり、上述のとおりヘミング加工においてローラ10からの押圧作用を受けて内側に折り曲げられる部分となる。
ヘミング加工に際し、フランジ部3は、アウタパネル1を成形するためのプレス成形等によってあらかじめ所定の形状に形成されている。ただし、フランジ部3は、ローラヘミング加工により形成されてもよい。つまり、フランジ部3は、ローラ10を用いてアウタパネル1の縁端部をフラットな状態から屈曲させることで形成された部分であってもよい。また、フランジ部3は、パネル本体部2に対して直角状に形成された部分に限らず、パネル本体部2とともに鈍角あるいは鋭角をなすようにパネル本体部2に対して屈曲形成された部分であればよい。
本実施形態に係るアウタパネル1においては、フード20の平面視外形をなす各辺部に沿って全周にわたってフランジ部3が形成されている。すなわち、アウタパネル1は、フランジ部3として、前辺部21に沿う前フランジ部31と、左右の側辺部22に沿う側フランジ部32と、後辺部23に沿う後フランジ部33とを有する。フランジ部3は、全体的に略同じ高さ(幅)を有する。
また、図4に示すように、アウタパネル1においてフード20の鋭角部24となるパネル鋭角部34には、フランジ部3として、フランジ部3の他の部分に対して局部的に高さが低い(幅が小さい)短フランジ部35が形成されている。短フランジ部35は、パネル鋭角部34の頂点部に形成されており、パネル鋭角部34をなす両辺部のフランジ部3同士の干渉を避けるためや、ワークの鋭角部24の剛性を確保するための部分である。短フランジ部35は、アウタパネル1のフランジ部3のうち、フード20の側辺部22の後湾曲部22bとなる部分と、後辺部23の端部23aとなる部分との間の部分である。
短フランジ部35は、パネル鋭角部34の縁端の湾曲形状に沿うように湾曲した形状を有し、その両側には、傾斜面部36が形成されている。傾斜面部36は、フランジ部3において、側フランジ部32あるいは後フランジ部33から短フランジ部35側にかけてフランジ部3の高さを徐々に低くする傾斜状の端面36aをなす部分である。つまり、側フランジ部32の短フランジ部35側の端部は、短フランジ部35に連続する一側の傾斜面部36となっており、後フランジ部33の短フランジ部35側の端部は、短フランジ部35に連続する他側の傾斜面部36となっている。なお、図4は、ヘミング加工を受ける前のアウタパネル1単品の一側のパネル鋭角部34近傍を示している。
図2および図5に示すように、インナパネル4は、その周縁部に、本体部4bに対して段差状に形成されたインナ縁部4aを有する。ヘミング加工に際し、インナパネル4は、インナ縁部4aをアウタパネル1のパネル本体部2の内面2aに合わせるとともに、フランジ部3の内側に縁端を位置させるように、パネル本体部2上に載置される。図2(a)に示すように、インナパネル4は、パネル本体部2上に載置された状態において、アウタパネル1のパネル本体部2とともに中空部5を形成する。インナ縁部4aの端面4cと、アウタパネル1のフランジ部3の内面3aとの間隔d1(図2(a)参照)は、例えば数ミリメートル程度である。
アウタパネル1およびインナパネル4は、図1、図2および図5に示すように、ヘミング加工に際し、略水平状の所定の支持面6aを有する加工台6上にセットされる。加工台6は、ヘミング加工において下型として機能するヘム型である。加工台6の支持面6a上における所定の位置に、アウタパネル1が保持され、アウタパネル1上における所定の位置にインナパネル4がセットされ保持される。そして、加工台6上にセットされたアウタパネル1およびインナパネル4に対し、ロボット8により、ローラ10を移動操作しながら、ローラヘミング加工が行われる。
すなわち、図1に示すように、本実施形態に係るローラヘミング加工装置7は、フランジ部3が形成されたアウタパネル1の外形に沿ってローラ10を移動させるロボット8を備える。ローラヘミング加工装置7は、加工台6上に支持されたワークとしてのアウタパネル1およびインナパネル4に対し、ローラ10を支持したロボット8の動作により、ヘミング加工が施される。
図1および図6に示すように、本実施形態に係るローラヘミング加工装置7は、ローラ10として、比較的径が大きい大径ローラ11と、比較的径が小さい小径ローラ12とを有する。これらのローラ10は、ワークの形状等によって適宜選択され使用される。
ローラ10は、鉄鋼等の金属製の部材により構成されており、全体として円柱状の外形を有し、その外周面をワークに作用するローラ面10aとする。なお、ロボット8によって移動操作されるローラ10の数は特に限定されるものではなく、ローラヘミング加工装置7は、1個のローラ10あるいは3個以上のローラ10を備えた構成であってもよい。
ロボット8は、加工台6上のワークに対して、ローラ10を支持した状態でローラ10の位置および姿勢を変化させる移動装置として機能する。図1に示すように、ロボット8は、ベース部8aと、ベース部8a上に設けられるロボットアーム部8bとを有し、様々な位置および角度に姿勢制御されるフレキシブルなロボットアーム(多関節ロボット)として構成されている。ロボットアーム部8bの動作により、その可動範囲においてローラ10が3次元的に任意の方向に移動する。ロボット8は、例えば、6つの関節を有する6軸ロボットである。
ロボット8は、ロボット8の動作等を制御する制御部としてのロボット制御部18に接続されており、ロボット制御部18からの制御信号を受けて動作する。ロボット制御部18は、例えばプログラムによって様々な数値計算、情報処理、機器制御等を行う中央処理装置(CPU)や、主記憶装置である半導体メモリ等を備えている。ロボット制御部18は、例えばティーチングにより作成された所定のプログラムに基づく動作をロボット8に行わせる。ロボット8の動作により、ワークに対するローラ10の位置や向き(姿勢)が制御されながら、フランジ部3が形成されたアウタパネル1の外形に沿ってローラ10が移動する。
ロボット8においては、ロボットアーム部8bの先端側に、シリンダ機構15を介してローラ10(大径ローラ11および小径ローラ12)が支持されている。シリンダ機構15は、エアシリンダ機構であり、ロボットアーム部8bの先端側に固定されたシリンダ本体部15aと、シリンダ本体部15aの一側(図1において下側)から突出したロッド部15bとを有する。
シリンダ本体部15aには、シリンダ機構15に対するエアの給排を行うための配管(図示略)が接続されている。ロッド部15bは、シリンダ本体部15a内において摺動可能に設けられたピストン部と一体に設けられ、シリンダ本体部15aに対するエアの給排により往復摺動し、シリンダ本体部15aからの突出量を変化させる。シリンダ機構15に対するエアの給排が図示せぬシリンダ制御部によって制御されることで、シリンダ機構15の動作が制御される。シリンダ制御部は、例えば、ロボット制御部18の一部であったり、ロボット制御部18とは別途設けられた制御装置等であったりする。シリンダ機構15の動作制御は、ヘミング加工においてワークに対するローラ10による押圧力の制御等に用いられる。
ロッド部15bの先端側に、ローラ支持部16を介して、ローラ10が支持されている。ローラ支持部16は、シリンダ機構15の伸縮方向に沿う所定の回転軸O1を中心に回転動作するように設けられている。回転軸O1を中心とするローラ支持部16の回転動作は、ワークに作用させるローラ10を選択的に切り換えるためのものである。このため、ローラ支持部16の回転動作は、ロボット8の先端部に対する回転動作であればよく、ローラ支持部16を回転軸O1回りに回転させるための構造は、特に限定されず、ロボット8、シリンダ機構15、およびローラ支持部16の少なくともいずれかに設けられる。また、ローラ支持部16の回転動作は、例えばロボット制御部18等の所定の制御部により制御される。
ローラ支持部16は、その下部に、略直方体状の外形に沿う形状を有する支持本体部17を有する。支持本体部17の一側の側面部17aに、大径ローラ11が軸受等を介して所定の回転軸を中心に回転自在に支持されている。大径ローラ11の回転軸の方向は、ローラ支持部16の回転軸O1に垂直な面に沿う方向(図1においては左右方向)である。また、支持本体部17の他側の側面部17bには、小径ローラ12が軸受等を介して所定の回転軸を中心に回転可能に支持されている。小径ローラ12の回転軸は、大径ローラ11の回転軸に対して略同一直線上に位置する。ただし、ロボット8に対するローラ10の支持構成や各ローラ10の配置構成等は本実施形態に限定されるものではない。
以上のような構成により、ロボット8の先端側において、ローラ支持部16の回転動作によってヘミング加工に用いられるローラ10がロボット8に対して所定の向きに位置するようにセットされる。そして、ロボットアーム部8bの動作およびシリンダ機構15の動作により、ローラ10が、加工台6上にセットされたワークに対して所定の経路に沿って移動しながらワークの外縁部のフランジ部3に作用し、ローラヘミング加工が行われる。
なお、ワークに対するヘミング加工等を行う設備において配備されるロボット8の数は特に限定されない。例えば、2体のロボット8を配備し、アウタパネル1において互いに反対側に位置する辺部のフランジ部3(前フランジ部31と後フランジ部33、あるいは左右の側フランジ部32)に対して2体のロボット8により同時的にヘミング加工を行う構成であってもよい。また、例えば、4体のロボット8を配備し、アウタパネル1の4つの辺部に対して4体のロボット8により同時的にヘミング加工を行う構成であってもよい。このように複数のロボット8を用いることで、ヘミング加工の工程の時間短縮を図ることができる。
以上のような構成を備えたローラヘミング加工装置7によるローラヘミング加工では、フード20の後側の左右両側の鋭角部24において、ローラ10によるフランジ部3の折曲げ加工によって、意匠面側から見て局部的にダレと呼ばれる形状的な不具合が生じる場合がある。
すなわち、アウタパネル1においてパネル鋭角部34をなす両側の辺部に沿って形成されたフランジ部3である側フランジ部32および後フランジ部33がローラ10によって折り曲げられることで、アウタパネル1の鋭角部24が加工台6の支持面6aに対して反り上がるように変形する場合がある。このようなアウタパネル1の反り変形は、アウタパネル1の意匠面側(インナパネル4側と反対側)から見れば垂れ下がるような変形となり(図7、矢印E1参照)、かかる変形が、パネル鋭角部34において局部的に生じるダレとなる。なお、図7は、ローラヘミング加工後のワークの角部分の表側を示している。
このようにアウタパネル1の鋭角部24で生じる局部的なダレは、意匠面の面品質不良を発生させ、商品価値を著しく低下させる原因となる。特に、自動車のフード20においては、鋭角部24は、フェンダに連続する部分となるため、鋭角部24で生じたダレは、フード20の後側の角部分とフェンダとの間の連続的な形状を損ない、自動車の見栄えに悪影響を及ぼす原因となる。
そこで、本実施形態に係るローラヘミング加工装置7は、上述したようなダレを解消するため、ローラヘミング加工用ツールとしての叩きツール40を備えている。そして、本実施形態に係るローラヘミング加工方法では、ローラ10によるヘミング加工を行った後、叩きツール40を用いることで、アウタパネル1の短フランジ部35の部分を叩き、ダレを解消するための仕上げ加工が行われる。
本実施形態に係る叩きツール40について、図1、図6、図8から図11を用いて説明する。叩きツール40は、ローラ10と同様にロボット8に支持されている。
具体的には、図1および図6に示すように、叩きツール40は、ロボットアーム部8bの先端側にシリンダ機構15を介して設けられたローラ支持部16の支持本体部17に固定された状態で設けられている。叩きツール40は、支持本体部17の一側の側面部であるツール支持面部17c側に固定されている。ツール支持面部17cは、大径ローラ11および小径ローラ12が支持された側面部17a,17bを左右の側面部とした場合に前面部あるいは後面部に相当する面部であり、略鉛直状の平面である支持面17dを有する。
叩きツール40は、アウタパネル1のフランジ部3にローラ10を作用させることでヘミング加工が施されたアウタパネル1の平面視外形における角部に対して叩くように作用するように用いられる。本実施形態では、叩きツール40が作用する角部は、ローラ10により側フランジ部32および後フランジ部33が折り曲げられた状態におけるアウタパネル1のパネル鋭角部34である。叩きツール40が直接的に作用する部分は、主にパネル鋭角部34に形成された短フランジ部35となる。
叩きツール40は、鉄鋼等からなる金属製の一体の部材であり、パネル鋭角部34に接触する接触面部41を含むツール本体部42と、ツール本体部42を支持するためのツール支持部43とを有する。ツール本体部42およびツール支持部43は、いずれも厚板状の外形をなす部分であり、互いに鈍角をなすように繋がった態様で一体の叩きツール40を構成している。
なお、叩きツール40においては、ツール支持部43の板厚方向のうちツール本体部42が突出した側(図9において左側)を前側(正面側)、その反対側(図9において右側)を後側(背面側)とする。同じく叩きツール40において、ツール本体部42に対してツール支持部43が設けられている側(図9において上側)を上側、その反対側(図9において下側)を下側とする。
ツール支持部43は、図8に示すような叩きツール40の正面視で矩形状をなす厚板状の外形を有する。ツール支持部43の板厚は、全体的に略一定の厚さである。詳細には、ツール支持部43の前面43aは、下側から上側にかけてわずかに後側に傾斜した後傾状の傾斜面となっており、ツール支持部43の後面43bは、鉛直状の面となっている。したがって、ツール支持部43は、上側から下側にかけて徐々に板厚を厚くした形状を有する。
また、ツール支持部43の略中央部には、叩きツール40を支持本体部17に固定する際に用いられる固定用孔部43cが形成されている。固定用孔部43cは、ツール支持部43を前後方向に貫通する円形状の孔部である。固定用孔部43cには、ボルト等の固定具が貫通する。また、ツール支持部43は、水平面状の上面43dと、鉛直面状の左右の側面43eとを有する。
ツール本体部42は、ツール支持部43の下端部から前斜め下側に向けて突出している。ツール本体部42は、ツール支持部43に繋がる後側(基部側)から前側(先端側)にかけて徐々に板厚を薄くした形状を有する。したがって、ツール本体部42の上面42aの水平面に対する傾斜角度は、ツール本体部42の下面(平面部46)の同傾斜角度よりも大きくなっている。ツール本体部42の底面部が、接触面部41となる。接触面部41は、叩きツール40がワークに作用する際のワークに対する作用面部となる。
ツール本体部42は、その板面形状として、基部側から先端側にかけて徐々に左右幅を狭くするとともに先端側をR形状とした先細りの形状を有する(図10参照)。言い換えると、ツール本体部42の板面形状は、基部側を底辺側とするとともに頂点側を丸め形状とした略二等辺三角形状となっている。したがって、ツール本体部42は、その外周側面において、左右両側の平面状の側面部42b,42bと、ツール本体部42の先端側において左右の側面部42b,42b間に形成された半円柱面状の曲面部42cとを有する。
以上のように、本実施形態に係る叩きツール40において、ツール本体部42は、接触面部41を一側(下側)の板面部とする板状の部分であり、また、ツール支持部43は、ツール本体部42の接触面部41側と反対側(上側)に設けられている。そして、叩きツール40は、ツール本体部42とツール支持部43とにより、側面視で略「L」字状をなすように構成されている(図9参照)。詳細には、叩きツール40は、側面視において、略鉛直状のツール支持部43と、その下端部から前下がりに延設されたツール本体部42とにより、靴下状の外形を有する。
叩きツール40の背面側には、下側の部分がわずかに後側に突出することで水平状の段差面44が形成されている。段差面44は、叩きツール40の左右方向の全体にわたって形成されている。段差面44は、ツール支持部43の後面43bと、鉛直状の下部背面45との間に形成されている。
また、叩きツール40においては、接触面部41に、凹状の窪み部分である凹部47が形成されている。すなわち、接触面部41は、平面状の平面部46と、平面部46に対して窪んだ部分として形成された凹部47とを含む。
本実施形態に係る叩きツール40において、凹部47をなす面は、半球状の凹面となっている。このため、凹部47の開口形状は、円周形状となっている(図10参照)。また、凹部47の開口縁部には、円周形状に沿ってR形状部49が形成されている。つまり、凹部47は、その大部分をなす半球状の凹球面48を有し、凹球面48と接触面部41の平面部46との間の角部分が、略円弧状の断面形状をなすR形状部49となっている(図11参照)。このように、凹部47は、凹球面48と、開口縁部を形成するR形状部49とを有する。
接触面部41において、凹部47は、ツール本体部42の左右の側面部42b,42b間の略中央部に形成されている。詳細には、ツール本体部42の底面視において、凹部47は、その開口形状である円周形状の中心を、円弧状をなす曲面部42bが沿う円周の中心に対して一致あるいは略一致させるように形成されている。ただし、接触面部41における凹部47の形成位置は特に限定されるものではない。
このように接触面部41に凹部47を有する叩きツール40は、凹部47をなす面をアウタパネル1のパネル鋭角部34の頂点部に接触させることで、パネル鋭角部34に押圧作用する。叩きツール40は、凹部47をなす面を、ワークに対する主な接触部分とする。本実施形態では、叩きツール40は、凹部47をなす面をパネル鋭角部34に形成された短フランジ部35に接触させることで、パネル鋭角部34に作用する。
以上のような構成を有する叩きツール40が、支持本体部17に固定されている。すなわち、ツール支持部43の固定用孔部43cを貫通するボルト等の固定具により、ツール支持部43の部分が、支持本体部17のツール支持面部17cに固定される。ここで、ツール支持部43の後面43bが、ツール支持面部17cの支持面17dに対する接触面となるとともに、叩きツール40の背面側の段差面44が、支持本体部17の下面に対する係止面となり、支持本体部17に対する叩きツール40の上側への移動が規制される。なお、支持本体部17に対する叩きツール40の固定方法は特に限定されるものではなく、叩きツール40の固定に例えば溶接等の他の固定方法が用いられてもよい。
以上のように、本実施形態に係るローラヘミング加工装置7は、ワークにヘミング加工を施すための一または複数のローラ10と、仕上げ加工を行うための叩きツール40と、ローラ10および叩きツール40を支持するロボット8とを備える。ロボット8は、ローラ10を、アウタパネル1の縁部に沿って移動させてフランジ部3に作用させ、叩きツール40を、アウタパネル1のパネル鋭角部34に作用させる移動装置として機能する。
本実施形態に係るローラヘミング加工装置7によるローラヘミング加工方法について、図12から図15を用いて説明する。本実施形態に係るローラヘミング加工方法は、ローラ10を用いたヘミング加工工程と、叩きツール40を用いた仕上げ加工工程とを含む。
まず、ヘミング加工工程について、図12を用いて説明する。ヘミング加工工程は、ローラ10により、フランジ部3をパネル本体部2に対して折り曲げてヘミング加工を行う工程である。本実施形態に係るヘミング加工工程は、図12(a)、(b)に示すように、アウタパネル1のパネル本体部2とフランジ部3とのなす角度が所定の角度(第2曲げ角度θ2)となるように、フランジ部3をパネル本体部2に対して折り曲げる予備曲げ工程と、図12(c)、(d)に示すように、予備曲げ工程により折り曲げられたフランジ部3を、パネル本体部2に対してさらに折り曲げて押圧する本曲げ工程とを有する。
すなわち、ヘミング加工工程は、予備曲げ工程により、フランジ部3を、パネル本体部2に対して直角状態からインナ縁部4aに重なるまでの間における中間の角度状態となるまで折り曲げた後、本曲げ工程により、フランジ部3をさらに折り曲げ、最終的にパネル本体部2とフランジ部3とによってインナ縁部4aを圧縮挟持させた状態とする。
ヘミング加工工程において、ローラ10は、ロボットアーム部8bの動作により移動させられ、加工台6上にセットされたワークに対し、回転軸R1をフランジ部3の板面に沿わせ、ローラ面10aをフランジ部3の外面3bに面接触させた状態で、フランジ部3に作用する。そして、ローラ10は、ロボットアーム部8bの動作およびシリンダ機構15の動作によってフランジ部3に対して押圧力を作用させながら、フランジ部3が形成されたアウタパネル1の外形に応じた所定の経路に沿って回転軸R1を中心として転動しながら移動する(矢印Q1参照)。ローラ10は、回転軸R1に対して直交する方向を、フランジ部3に対する押圧力の主な作用方向とする。
予備曲げ工程は、第1予備曲げ工程と、第2予備曲げ工程とを含む。
第1予備曲げ工程では、図12(a)に示すように、フランジ部3がパネル本体部2に対して略直角をなす状態から、パネル本体部2とフランジ部3とのなす角度が所定の第1曲げ角度θ1となるように、フランジ部3を全体的にパネル本体部2に対して折り曲げる(傾斜させる)加工が行われる。第1曲げ角度θ1は、特に限定されるものではないが、例えば60°程度である。
第2予備曲げ工程では、図12(b)に示すように、第1予備曲げ工程により折り曲げられたフランジ部3を、パネル本体部2とフランジ部3とのなす角度が所定の第2曲げ角度θ2となるように、パネル本体部2に対してさらに折り曲げる加工が行われる。第2曲げ角度θ2は、特に限定されるものではないが、例えば30°程度である。
このように、予備曲げ工程は、アウタパネル1に対し、第1予備曲げ工程および第2予備曲げ工程による段階的な(2段階の)曲げ加工を行う。各予備曲げ工程においては、ロボットアーム部8bの動作により、ローラ10が、ワークに対して所定の姿勢を維持しながら所定の経路に沿って転動移動することで、フランジ部3がローラ10の作用を受ける部分から順次屈曲加工される。
そして、第1予備曲げ工程および第2予備曲げ工程は、ロボットアーム部8bの動作による所定の経路に沿うローラ10の移動に関し、例えば、第1予備曲げ工程が所定の経路の始端から終端までの往路移動として行われ、第2予備曲げ工程が所定の経路の終端から始端までの復路移動として行われる。ただし、第1予備曲げ工程および第2予備曲げ工程のいずれもが所定の経路における始端から終端までの往路移動として行われてもよい。以上のように予備曲げ工程が行われた後、加工台6上のワークに対して本曲げ工程が行われる。
本曲げ工程は、ローラ10をフランジ部3に作用させ、フランジ部3に対して折曲げ加工および潰し加工を施す工程であり、第1本曲げ工程と、第2本曲げ工程とを含む。
第1本曲げ工程では、図12(c)に示すように、予備曲げ工程により折り曲げられたフランジ部3にローラ10を押圧作用させることで、フランジ部3をさらに折り曲げてインナ縁部4aに圧接させるとともに、フランジ部3に対して全体的に潰しの作用を加える加工が行われる。
第2本曲げ工程では、図12(d)に示すように、第1本曲げ工程により折り曲げられ潰されたフランジ部3にローラ10を追加的に押圧作用させることで、パネル本体部2とともにインナ縁部4aを挟持したフランジ部3に対して更に全体的に潰しの作用を加える。
このように、本曲げ工程は、アウタパネル1に対し、第1本曲げ工程および第2本曲げ工程による段階的な(2段階の)曲げ加工および潰し加工を行う。各本曲げ工程においては、ロボットアーム部8bの動作により、ローラ10が、ワークに対して所定の姿勢を維持しながら所定の経路に沿って転動移動することで、フランジ部3がローラ10の作用を受ける部分から順次加工される。
そして、第1本曲げ工程および第2本曲げ工程は、ロボットアーム部8bの動作による所定の経路に沿うローラ10の移動に関し、例えば、第1本曲げ工程が所定の経路の始端から終端までの往路移動として行われ、第2本曲げ工程が所定の経路の終端から始端までの復路移動として行われる。ただし、第1本曲げ工程および第2本曲げ工程のいずれもが所定の経路における始端から終端までの往路移動として行われてもよい。以上のように本曲げ工程が行われることで、本実施形態に係るヘミング加工工程が終了する。
次に、仕上げ加工工程について、図13から図15を用いて説明する。図13は、ヘミング加工の完了状態のワークに対する叩きツール40の近接工程を示している。図14は、叩きツール40による仕上げ加工の加工工程(ワークの変形)を示している。図15は、仕上げ加工の完了状態のワークに対する叩きツール40の離間工程を示している。
ヘミング加工工程終了後のワークにおいては、アウタパネル1のパネル鋭角部34の短フランジ部35は、立ったままの状態であり、立ちフランジ部となっている(図7、図13参照)。つまり、短フランジ部35は、ヘミング加工工程においてローラ10による作用を直接的には受けず、ヘミング加工工程を経た後も、ローラ10により折り曲げられた両側のフランジ部3(側フランジ部32および後フランジ部33)の間において立った状態を保持している。
そして、ヘミング加工工程が行われた後は、図13に示すように、パネル鋭角部34において、上述したようなダレが生じた状態となっている(符号F1で示す部分参照)。すなわち、パネル鋭角部34の頂点部近傍が反り上がり、短フランジ部35が形成された部分が加工台6の支持面6aに対して浮き上がった状態となっている。言い換えると、パネル鋭角部34の頂点部においてパネル本体部2の外面2bと支持面6aとの間の隙間37が広がった状態となっている。このようにパネル鋭角部34で生じたダレが、叩きツール40を用いた仕上げ加工により矯正される。
すなわち、仕上げ加工工程は、叩きツール40を、ヘミング加工が施されたアウタパネル1のパネル鋭角部34に作用させることで、パネル鋭角部34に生じた反り変形を矯正する工程である。
仕上げ加工工程は、加工台6上においてヘミング加工を受けたワークに対し、ローラ10とともに叩きツール40を支持したロボット8の動作によって、ヘミング加工工程に引き続いて行われる。つまり、ロボットアーム部8bの動作により、叩きツール40が加工台6上のワークに対してアウタパネル1のパネル鋭角部34に作用することで、仕上げ加工が行われる。
図13に示すように、仕上げ加工工程では、ヘミング加工を受けたワークに対し、叩きツール40が、ベース部8aの動作により、接触面部41側をワークに向け、ワークにおいてダレとなった部分つまり短フランジ部35が凹部47内に入るように接近する(矢印G1参照)。
図14に示すように、叩きツール40は、凹部47をなす面を短フランジ部35に接触させることで、ワークに作用する。詳細には、叩きツール40は、凹部47の後側の部分における凹球面48およびR形状部49をワークの短フランジ部35に接触させ、かかる接触部分をワークに対する主な接触部分として作用する。ここで、短フランジ部35の外側の縁端35aは、凹球面48に接触する。また、ワークの形状やアウタパネル1およびインナパネル4の板厚等によっては、叩きツール40は、凹部47の周囲の平面部46を傾斜面部36等、短フランジ部35以外の部分に接触させ、かかる接触部分をワークに対する接触部分とする。
叩きツール40は、ロボットアーム部8bの動作により、上述のとおり所定の部分をワークに接触させて押圧力を作用させる。叩きツール40によるワークに対する押圧力の向きは、短フランジ部35を下側(支持面6a側)に押し付ける方向である。このように叩きツール40がワークに作用することで、パネル鋭角部34において反り上がった部分(ダレの部分)が押圧され、この部分が加工台6の支持面6aに沿うように、つまり支持面6aに対して浮き上がった外面2bを支持面6aに接触させるように塑性変形する(矢印F2参照)。これにともない、立ちフランジ部となっている短フランジ部35は緩やかに潰され、その高さを低くするように変形する。
そして、ワークに作用した後の叩きツール40は、図15に示すように、ロボットアーム部8bの動作によってワークから離間するように移動し(矢印G2参照)、所定の位置に戻る。
以上のようにロボットアーム部8bによって行われる叩きツール40のワークに対する一連の動作は、接触面部41側を押圧面側としてパネル鋭角部34にスタンプするように瞬間的に(例えば0コンマ数秒間)押圧作用を与える動作となる。言い換えると、この叩きツール40の一連の動作は、ワークのパネル鋭角部34を接触面部41側で叩くような動作である。したがって、叩きツール40による仕上げ加工は、ワークのパネル鋭角部34に対する叩き加工として行われる。
なお、叩きツール40による仕上げ加工としては、叩きツール40によってワークに対して比較的短時間(例えば数秒間)押圧力を作用させるプレス加工のような加工であってもよい。ただし、ワークに対する仕上げ加工としては、短フランジ部35を潰し切らない成形が行われる。
図5は、図15と同様、仕上げ加工後(叩き加工後)の状態のワークを示している。図5および図15に示すように、仕上げ加工(叩き加工)完了後のワークは、ヘミング加工によってパネル鋭角部34で生じたダレが直った状態となっている。
以上のような叩きツール40による仕上げ加工工程においては、ワークにおける左右両側のパネル鋭角部34のうち、一方のパネル鋭角部34について叩き加工が行われた後、ロボットアーム部8bの動作によって叩きツール40が移動させられ、他方のパネル鋭角部34についての仕上げ加工が行われる。つまり、1つのワークに対し、叩きツール40によるスタンプする態様での仕上げ加工が2回行われる。ただし、ワークの各パネル鋭角部34に対して個別にロボット8を配備し、両方のパネル鋭角部34に対する仕上げ加工を同時的に行う構成であってもよい。
以上のような本実施形態に係る叩きツール40、それを備えたローラヘミング加工装置7、およびローラヘミング加工方法によれば、ローラヘミング加工において、アウタパネル1のフランジ部3に対するローラ10の作用によってパネル鋭角部34で生じる局部的な反り変形(ダレ)を解消することができ、品質を向上することができる。
すなわち、上述のとおりヘミング加工の後に叩きツール40を用いた仕上げ加工をワークに対して行うことにより、パネル鋭角部34で局部的な反り変形が生じた場合であっても、そのパネル鋭角部34の変形を確実に矯正することができる。また、凹部47をなす面をワークに対する接触面とすることで、凹部47の内部空間が、ダレが矯正されるワークの変形において余分な変形を逃がすための空間となり、ワークの面品質に影響する歪み等を抑えながら、ダレを解消することができる。これにより、例えば単に平面状の面を押圧面としてワークに作用させる場合と比べて、ローラヘミング加工により最終的に得られるワークの角部を綺麗に仕上げることができる。これにより、ワークの品質を向上することができ、商品価値を高めることができる。
特に、本実施形態に係るワークは自動車のフード20であり、最終的にフード20の鋭角部24において生じるダレを解消することができる。これにより、自動車におけるフード20の鋭角部24とフェンダとの間の連続的な形状を損なうことがないので、自動車の外観品質を向上することができる。
また、仕上げ加工は、ローラ10とは別途設けられた専用の叩きツール40を用いた加工として行われるものであるため、例えばローラ10によりワークを押さえることでダレを解消しようとした場合に対して、ワークにおいて歪み等の意図せぬ変形を生じさせることなく、パネル鋭角部34において生じるダレを効果的に解消することができる。すなわち、ダレを解消するためにローラ10により短フランジ部35を無理に押さえると、立ちフランジとなっている短フランジ部35が潰れてしまい、意匠面に歪みが発生することになるが、専用の叩きツール40を用いることで、無理なく効果的にダレを解消することができる。
また、本実施形態に係る叩きツール40においては、凹部47をなす面が半球状の凹面となっている。このような構成によれば、凹部47の凹球面48により、パネル鋭角部34における短フランジ部35の縁端35aの湾曲形状に沿うように、叩きツール40を短フランジ部35の縁端35aに対して全体的に接触した状態で作用させることができる。これにより、ワークにおいて生じたダレを確実に解消することができる。
また、叩きツール40を短フランジ部35の縁端35aに対して全体的に接触させるに際し、凹球面48において短フランジ部35の端部を接触させる部位(例えば凹部47の深さ等)を調整することにより、短フランジ部35の形状や大きさや湾曲部の角度範囲(パネル鋭角部34の角度)等が異なるワークに対しても容易に対応することが可能となる。これにより、叩きツール40の汎用性を向上させることができる。また、半球状の凹面は、ボールエンドミル等の切削加工によって容易に形成することができる。このため、叩きツール40の作りやすさの観点からも、凹部47をなす面は半球状の凹面であることが好ましい。
また、本実施形態に係る叩きツール40は、凹部47の開口縁部をR形状部49とする。このような構成によれば、凹部47の開口縁部がワークに接触することによっても、ワークに押圧痕が残ることを抑制ないしは防止することができ、ワークの品質を確保することができる。また、例えば叩きツール40の断面形状において凹球面48と平面部46とがなす角部分が直角状である場合と比べて、凹部47の開口縁部の欠け等の欠損を抑制することができる。
また、本実施形態に係る叩きツール40は、接触面部41を含むツール本体部42と支持本体部17に固定するためのツール支持部43とを有し、全体として側面視で略「L」字状をなすように構成されている。このような構成によれば、既存のローラヘミング加工用の装置においても空きスペースを利用して叩きツール40を容易に設けることができる。
特に、本実施形態では、ローラ10を両側の側面部17a,17bにそれぞれ支持する支持本体部17において、叩きツール40は、ツール支持部43を鉛直面状のツール支持面部17cに沿わせた状態で設けられている。このような構成によれば、ローラ10を支持する面部とは異なる面部において、ワークに対する接触部分となるツール本体部42を支持本体部17に対して突出状に設けることができる。これにより、叩きツール40をワークに作用させる際に、ローラ10がワークや加工台6等に干渉することを容易かつ確実に回避することができる。
また、本実施形態では、アウタパネル1のパネル鋭角部34には、短フランジ部35が形成されており、叩きツール40は、凹部47をなす面を短フランジ部35に接触させることでワークに作用する。このような仕上げ加工の態様によれば、ヘミング加工後において立ちフランジ部として存在する短フランジ部35は、パネル鋭角部34においてヘミング加工が施された他の縁部に対して上側に突出した部分となるため、叩きツール40をワークに対して作用させやすくなり、パネル鋭角部34で生じたダレを確実に解消することができる。また、ダレの解消とともに、短フランジ部35によってパネル鋭角部34の剛性を確保することができる。
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係る叩きツール40、ローラヘミング加工装置7およびローラヘミング加工方法は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
上述した実施形態において、ローラヘミング加工の加工対象は、自動車のフードを構成するアウタパネルおよびインナパネルであるが、本発明は、例えば、自動車の各種ドア、トランクリッド、ルーフ、フェンダ等を構成するパネル部材を加工対象として広く適用することができる。
また、上述した実施形態において、叩きツール40の凹部47をなす面は半球状の凹面であるが、これに限定されるものではない。凹部47をなす面としては、例えば、円周状の開口形状をなす円筒状や円錐状の凹面であったり、半円形状や楕円形状、あるいは四角形状や三角形状等の多角形状の開口形状をなす凹面であったりしてもよい。ただし、上述したように汎用性向上の観点からは、少なくとも短フランジ部35が接触する部分となる凹部47の後側の部分が半球状の凹面に沿う形状であることが好ましい。