実施の形態1.
図1は、実施の形態1における水素ステーションの水素燃料供給システムの構成を示す構成図の一例である。図1において、水素燃料供給システム500は、水素ステーション102内に配置される。水素燃料供給システム500は、多段蓄圧器101、ディスペンサ30(水素燃料充填器)、圧縮機40、及び制御回路100を備えている。多段蓄圧器101は、複数の蓄圧器10,12,14により構成される。図1の例では、3つの蓄圧器10,12,14により多段蓄圧器101が構成される場合を示している。図1の例では、蓄圧器10が、使用下限圧力が最も低くなるまで使用する低圧バンク(1st バンク)として作用する。蓄圧器12が、使用下限圧力が中間の中圧バンク(2nd バンク)として作用する。蓄圧器14が、使用下限圧力が高い高圧バンク(3rd バンク)として作用する。水素ステーション102内には、その他、カードル302、中間蓄圧器304、及び/或いは水素製造装置308が配置される。また、水素ステーション102内には、水素を充填して配送する水素トレーラー306が到来する。
また、図1において、圧縮機40の吸込側は、バルブ322を介してカードル302と配管により接続される。同様に、圧縮機40の吸込側は、バルブ324を介して中間蓄圧器304と配管により接続される。同様に、圧縮機40の吸込側は、バルブ326を介して水素トレーラー306の充填タンクと配管により接続される。同様に、圧縮機40の吸込側は、バルブ328を介して水素製造装置308の吐出側と配管により接続される。
圧縮機40の吐出側は、バルブ21を介して蓄圧器10と配管により接続される。同様に、圧縮機40の吐出側は、バルブ23を介して蓄圧器12と配管により接続される。同様に、圧縮機40の吐出側は、バルブ25を介して蓄圧器14と配管により接続される。同様に、圧縮機40の吐出側は、バルブ28を介してディスペンサ30と配管により接続される。
また、蓄圧器10は、バルブ22を介してディスペンサ30と配管により接続される。また、蓄圧器12は、バルブ24を介してディスペンサ30と配管により接続される。また、蓄圧器14は、バルブ26を介してディスペンサ30と配管により接続される。
また、カードル302内の圧力は、圧力計312によって計測される。中間蓄圧器304内の圧力は、圧力計314によって計測される。水素トレーラー306の充填タンク内の圧力は、圧力計316によって計測される。水素製造装置308の吐出圧は、圧力計318によって計測される。
また、蓄圧器10内の圧力は、圧力計11によって計測される。蓄圧器12内の圧力は、圧力計13によって計測される。蓄圧器14内の圧力は、圧力計15によって計測される。
また、ディスペンサ30内には、流量調整弁29、流量計27、冷却器32(プレクーラー)、及び圧力計17が配置される。多段蓄圧器101或いは圧縮機40から供給される水素燃料は、流量計27によって流量が計測されると共に、流量調整弁29によって流量が調整される。そして、水素燃料は、冷却器32によって、例えば、−40℃に冷却される。よって、ディスペンサ30は、冷却された水素燃料をFCV車両200に搭載された燃料タンク202に差圧を利用して充填する。また、ディスペンサ30からFCV車両へ充填される水素燃料の充填出口の出口圧力(燃料充填出口圧力)は、圧力計17によって計測される。また、ディスペンサ30内或いは近辺には、中継器34が配置され、水素ステーション102に到来したFCV車両200(水素燃料を動力源とする燃料電池自動車(FCV))内の車載器204と通信可能に構成される。例えば、赤外線を用いて無線通信可能に構成される。
FCV車両200には、ディスペンサ30から供給された燃料が受け口(レセプタクル)から燃料通路を介して燃料タンク202に注入される。燃料タンク内の圧力と温度が燃料タンク202内、或いは燃料通路に設けた圧力計206及び温度計205によって計測される。
通常時においては、カードル302、中間蓄圧器304、或いは水素トレーラー306のタンク内に蓄圧された水素燃料は、制御回路100により制御された図示しないそれぞれのレギュレータによって低圧(例えば、0.6MPa)に減圧された状態で、圧縮機40の吸込側に供給される。同様に、水素製造装置308で製造された水素燃料は、低圧(例えば、0.6MPa)の状態で圧縮機40の吸込側に供給される。よって、圧縮機40の吸込側の1次側圧力PINは、通常時(閑散時間帯)は低圧になる。圧縮機40は、制御回路100による制御のもと、カードル302、中間蓄圧器304、水素トレーラー306、或いは水素製造装置308から低圧で供給される水素燃料を圧縮しながら多段蓄圧器101の各蓄圧器10,12,14に供給する。多段蓄圧器101からFCV車両200へ水素燃料を供給するもその供給量が不足している場合、若しくは多段蓄圧器101が復圧中である場合、圧縮機40は、制御回路100による制御のもと、カードル302、中間蓄圧器304、水素トレーラー306、或いは水素製造装置308から低圧で供給される水素燃料を圧縮しながらディスペンサ30を介して直接FCV車両200へ水素燃料を供給する場合もあり得る。
圧縮機40は、多段蓄圧器101の各蓄圧器10,12,14内が所定の高圧(例えば、82MPa)になるまで圧縮する。言い換えれば、圧縮機40は、吐出側の2次側圧力POUTが所定の高圧(例えば、82MPa)になるまで圧縮する。圧縮機40の吸込側に水素燃料を供給する相手が、カードル302、中間蓄圧器304、水素トレーラー306、及び水素製造装置308のいずれにするかは、それぞれの配管上に配置された、対応するバルブ322,324,326,328の開閉を制御回路100が制御することによっていずれかに決定されればよい。同様に、圧縮機40が水素燃料を供給する相手が蓄圧器10,12,14、及びディスペンサ30のいずれにするかは、それぞれの配管上に配置された、対応するバルブ21,23,25,28の開閉を制御回路100が制御することによっていずれかに決定されればよい。或いは、2以上の蓄圧器に同時に供給するように制御しても良い。
なお、上述した例では、圧縮機40の吸込側に水素燃料を供給する圧力PINが所定の低圧(例えば、0.6MPa)に減圧制御されている場合を示したがこれに限るものではない。カードル302、中間蓄圧器304、或いは水素トレーラー306に蓄圧された水素燃料の圧力を減圧せずに、或いは所定の低圧(例えば、0.6MPa)よりも高い圧力の状態で圧縮機40の吸込側に与えて圧縮しても良い。かかる場合には、圧縮機40として、吸込側の圧力PIN(1次側圧力)を一定の圧力(例えば、0.6MPa)に固定して使用する往復圧縮機ではなく、吸込側の圧力PIN(1次側圧力)を可変に対応可能なタイプの高圧圧縮機を採用する。例えば、吸込側の圧力PIN(1次側圧力)が例えば20MPa以下のブースター多段昇圧型の圧縮機を用いると好適である。
多段蓄圧器101に蓄圧された水素燃料は、ディスペンサ30内の冷却器32によって冷却され、ディスペンサ30から水素ステーション102内に到来したFCV車両200に供給される。
図2は、実施の形態1における制御回路の内部構成の一例を示す構成図である。図2において、制御回路100内には、通信制御回路50、メモリ51、受信部52、終了圧・温度演算部54、フロー計画部56、システム制御部58、復圧制御部61、供給制御部63、バンク圧力受信部66、ディスペンサ出口圧力受信部68、差圧演算部88、比較部89、判定部96、判定部97、切替部98、判定部99、磁気ディスク装置等の記憶装置80,82,84,90が配置される。復圧制御部61は、バルブ制御部60、及び圧縮機制御部62を有する。供給制御部63は、ディスペンサ制御部64及びバルブ制御部65を有する。受信部52、終了圧・温度演算部54、フロー計画部56、システム制御部58、復圧制御部61(バルブ制御部60、圧縮機制御部62)、供給制御部63(ディスペンサ制御部64、バルブ制御部65)、バンク圧力受信部66、ディスペンサ出口圧力受信部68、差圧演算部88、比較部89、判定部96、判定部97、切替部98、及び判定部99、といった各「〜部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「〜部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。受信部52、終了圧・温度演算部54、フロー計画部56、システム制御部58、復圧制御部61(バルブ制御部60、圧縮機制御部62)、供給制御部63(ディスペンサ制御部64、バルブ制御部65)、バンク圧力受信部66、ディスペンサ出口圧力受信部68、差圧演算部88、比較部89、判定部96、判定部97、切替部98、及び判定部99内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度メモリ51に記憶される。なお、実施の形態1では、図2に示した差圧演算部92及び比較部94を省略しても構わない。
また、記憶装置80内には、FCV車両200に搭載された燃料タンク202の圧力、温度、及び燃料タンク202の容積といったFCV情報と、FCV情報に対応する水素燃料の残量と、燃料タンク202に充填すべき最終圧、及び最終温度といった充填情報との相関関係を示す変換テーブル81が格納される。また、記憶装置80内には、変換テーブル81から得られる結果を補正する補正テーブル83が格納される。また、記憶装置80内には、後述するトップオフデータ85が格納される。
また、記憶装置90内には、FCV車両200が到来した場合に、水素燃料を充填するための複数の充填制御フロー(1),(2)のプログラム情報が格納されている。
図3は、実施の形態1における多段蓄圧器の各蓄圧器の圧力とFCV車両の燃料タンク圧力とのタイムチャートの一例を示す図である。まず、図3を用いて、例えば、1台のFCV車両200が水素ステーション102に到来し、多段蓄圧器101を用いて水素燃料の差圧充填を行う場合の充填の仕方を説明する。図3において、縦軸に圧力、横軸に時間を示す。多段蓄圧器101の各蓄圧器10,12,14は、同じ圧力P0に蓄圧されている。一方、水素ステーション102に到来したFCV車両200の燃料タンク202は圧力P1になっている。かかる状態からFCV車両200の燃料タンク202に充填を開始する場合について説明する。まずは、通常の充填制御フロー(1)に沿った充填方法について説明する。
まず、充填準備として低圧バンクとなる蓄圧器10と燃料タンク202とが配管によってつながるように各バルブ等の開閉が制御される。そして、低圧バンクとなる蓄圧器10から燃料タンク202に充填を開始する。充填する際には、流量調整弁29により予め設定された昇圧率、あるいは速度で充填する。蓄圧器10と燃料タンク202との差圧によって蓄圧器10内に蓄圧された水素燃料は燃料タンク202側へと移動し、燃料タンク202の圧力は徐々に上昇していく。それに伴い、蓄圧器10の圧力(「低」で示すグラフ)は徐々に減少する。そして、蓄圧器10と燃料タンク202との差圧が所定の値に到達する充填開始から時間T1が経過した時点で、蓄圧器10から中圧バンクとなる蓄圧器12に使用する蓄圧器が切り替えられる。これにより、蓄圧器12と燃料タンク202との差圧が大きくなるため、充填速度が速い状態を維持できる。そして、蓄圧器12と燃料タンク202との差圧によって蓄圧器12内に蓄圧された水素燃料は燃料タンク202側へと移動し、燃料タンク202の圧力は徐々にさらに上昇していく。それに伴い、蓄圧器12の圧力(「中」で示すグラフ)は徐々に減少する。そして、蓄圧器12と燃料タンク202との差圧が所定の値に到達する充填開始から時間T2が経過した時点で、蓄圧器12から高圧バンクとなる蓄圧器14に使用する蓄圧器が切り替えられる。これにより、蓄圧器14と燃料タンク202との差圧が大きくなるため、充填速度が速い状態を維持できる。そして、蓄圧器14と燃料タンク202との差圧によって蓄圧器14内に蓄圧された水素燃料は燃料タンク202側へと移動し、燃料タンク202の圧力は徐々にさらに上昇していく。それに伴い、蓄圧器14の圧力(「高」で示すグラフ)は徐々に減少する。そして、燃料タンク202内の急激な温度上昇を緩和するため、例えば、外気温度が規定の温度以上の場合、予め規定された移行圧力P2に到達して時点(充填開始から時間T3が経過した時点)で、圧力上昇率を急激な温度上昇を回避するために規定された充填速度に下げて充填(温度上昇回避トップオフ充填)を行い、後述する演算された最終圧PF(例えば65〜81MPa)になるまで充填する。このようなフローに沿って充填されるように、制御目標圧力のタイムチャートによる充填制御フロー(1)が設定される。
次に、システム制御部58は、記憶装置82から充填制御フロー計画の制御データを読み出し、かかる制御データに沿って、復圧制御部61及び供給制御部63を制御する。具体的には、システム制御部58は、バルブ制御部60、圧縮機制御部62、ディスペンサ制御部64、及びバルブ制御部65を制御する。バルブ制御部60は、通信制御回路50を介して、バルブ21,23,25,28、及びバルブ322,324,326,328に制御信号を出力し、各バルブの開閉を制御する。ディスペンサ制御部64は、通信制御回路50を介してディスペンサ30と通信し、流量調整弁29を含むディスペンサ30の動作を制御する。バルブ制御部65は、通信制御回路50を介して、バルブ22,24,26に制御信号を出力し、各バルブの開閉を制御する。
図3の例に沿う場合、バルブ制御部60は、バルブ21,23,25,28が閉じた状態に制御する。バルブ制御部65は、バルブ22,24,26を閉じた状態から、バルブ22を開にする。これにより、低圧バンクとなる蓄圧器10とディスペンサ30との間の配管内の雰囲気がつながる。そして、ディスペンサ制御部64によりディスペンサ30が制御され、蓄圧器10に蓄圧された水素燃料がFCV車両200の燃料タンク202に充填開始される。充填開始から時間T1が経過した時点で、バルブ制御部65は、バルブ22を閉じ、代わりにバルブ24を開にする。これにより、中圧バンクとなる蓄圧器12とディスペンサ30との間の配管内の雰囲気がつながる。そして、ディスペンサ制御部64により制御されたディスペンサ30によって、蓄圧器12に蓄圧された水素燃料がFCV車両200の燃料タンク202に充填開始される。充填開始から時間T2が経過した時点で、バルブ制御部65は、バルブ24を閉じ、代わりにバルブ26を開にする。これにより、高圧バンクとなる蓄圧器14とディスペンサ30との間の配管内の雰囲気がつながる。そして、ディスペンサ制御部64により制御されたディスペンサ30によって、蓄圧器14に蓄圧された水素燃料がFCV車両200の燃料タンク202に充填開始される。システム制御部58は、受信部52により受信される燃料タンク202の圧力及び図示しない外気温度を監視し、充填開始から時間T3が経過した時点で、外気温度に応じた充填速度に下げると共に、燃料タンク202の圧力が最終圧PFになった時点で充填を終了するように、バルブ制御部65、及びディスペンサ制御部64を制御する。これに伴い、ディスペンサ制御部64がディスペンサ30による水素燃料の供給を停止すると共に、バルブ制御部65がバルブ26を閉じる。
以上により、FCV車両200の燃料タンク202への水素燃料の充填(供給)は終了し、ディスペンサ30のノズルをFCV車両200の燃料タンク202の受け口(レセプタクル)から外し、ユーザは、例えば充填量に応じた料金を支払って、水素ステーション102から退場することになる。
一方、かかる充填によって、各蓄圧器10,12,14内の水素燃料は減少し、圧力が低下する。そのため、バンク圧力受信部66は、通信制御回路50を介して、常時、或いは所定のサンプリング周期で、各蓄圧器10,12,14の圧力を圧力計11,13,15から受信し、記憶装置84に記憶する。
そして、FCV車両200の燃料タンク202への充填によって、各蓄圧器10,12,14内の圧力が低下しているので、復圧機構104は、各蓄圧器10,12,14を復圧する。圧縮機40、バルブ21,23,25,28、及びバルブ322,324,326,328等が復圧機構104を構成する。まず、システム制御部58は、カードル302、中間蓄圧器304、水素トレーラー306、或いは水素製造装置308の中から圧縮機40の吸込側につなぐ水素燃料の供給元を選択する。そして、復圧制御部61は、システム制御部58による制御のもと、復圧機構104を制御して、各蓄圧器10,12,14を復圧させる。具体的には、まず、バルブ制御部60は、システム制御部58による制御のもと、カードル302、中間蓄圧器304、水素トレーラー306、或いは水素製造装置308の中から、選択された水素燃料の供給元となる1つのバルブ(バルブ322,324,326,或いは328)を閉じている状態から開の状態に制御する。これにより、圧縮機40の吸込側に低圧の水素燃料が供給される。
FCV車両200の燃料タンク202への充填に使用する蓄圧器は、低圧バンク、中圧バンク、高圧バンクの順で切り替わるが、より短時間に満充填できる状態まで復圧したいため、高圧バンクとなる蓄圧器14から復圧する。バルブ制御部60は、バルブ21,23,25,28が閉じた状態から、バルブ25を開にする。その際、バルブ26は、閉じている状態(蓄圧器10をFCV車両200の燃料タンク202への充填に使用していない状態)が望ましいが、開の状態(蓄圧器10をFCV車両200の燃料タンク202への充填に使用している状態)であっても構わない。
そして、圧縮機制御部62は、圧縮機40を駆動して、低圧(例えば0.6MPa)の水素燃料を圧縮しながら送り出し、蓄圧器14の圧力が所定の圧力P0(例えば、82MPa)になるまで蓄圧器14に水素燃料を充填することで蓄圧器14を復圧する。
次に、バルブ制御部60は、バルブ25を閉じて、代わりにバルブ23を開にする。その際、バルブ24は、閉じている状態(蓄圧器12をFCV車両200の燃料タンク202への充填に使用していない状態)が望ましいが、開の状態(蓄圧器12をFCV車両200の燃料タンク202への充填に使用している状態)であっても構わない。
そして、圧縮機制御部62は、圧縮機40を駆動して、低圧(例えば0.6MPa)の水素燃料を圧縮しながら送り出し、蓄圧器12の圧力が所定の圧力P0(例えば、82MPa)になるまで蓄圧器12に水素燃料を充填することで蓄圧器12を復圧する。
次に、バルブ制御部60は、バルブ23を閉じて、代わりにバルブ21を開にする。その際、バルブ22は、閉じている状態(蓄圧器10をFCV車両200の燃料タンク202への充填に使用していない状態)が望ましいが、開の状態(蓄圧器10をFCV車両200の燃料タンク202への充填に使用している状態)であっても構わない。
そして、圧縮機制御部62は、圧縮機40を駆動して、低圧(例えば0.6MPa)の水素燃料を圧縮しながら送り出し、蓄圧器10の圧力が所定の圧力P0(例えば、82MPa)になるまで蓄圧器10に水素燃料を充填することで蓄圧器10を復圧する。
以上により、次のFCV車両200が水素ステーション102に到来しても、同様に、水素燃料の供給が可能となる。上述したFCV車両200への充填に数分間(例えば3〜5分)、多段蓄圧器101の復圧に数分間(例えば、7〜10分)かかり、充填から復圧完了までの一連のサイクルが、例えば、10〜15分程度(例えば、12分)に間に行われる。
ここで、上述したように、FCV車両200は、複数の自動車メーカーによって開発が進められている。そのため、各車のFCV車両200に水素燃料を充填する場合に、その充填特性が車両によって異なっている。上述した温度上昇特性或いは外気温度に応じて充填後半の圧力上昇率を下げて充填を行う温度上昇回避トップオフ充填制御を含む充填制御フロー(1)により水素燃料を充填した場合、予定した最終圧まで充填できるFCV車両200が存在する一方、予定した最終圧まで達することが困難なFCV車両200が存在することがわかってきた。
図4は、実施の形態1における温度上昇回避トップオフ充填制御を含む充填制御フローにより充填した場合の複数の車両に充填される圧力の一例を説明するための図である。図4の例では、図3を用いて説明したように、多段蓄圧器101を切り替えながら、さらに、外気温度に応じて温度上昇回避トップオフ充填制御を充填期間の後半に行いながら充填する充填制御フロー(1)に沿って充填を行った場合の一例を示している。温度上昇回避トップオフ充填制御では、当初、例えば、圧力上昇率を15.3MPa/minに設定して充填を開始し、外気温度が30℃の場合、タンク圧力が70.6MPaに到達した時点或いはタンク圧力が70.6MPaに到達する予定の時間が経過した時点で圧力上昇率を6.6MPa/minに下げて、以降の充填を行う。図4の例では、かかる充填制御フロー(1)に沿って充填を行った場合、車両Aについては最終圧PFに到達するものの、別の自動車メーカーで製造された車両Bについては最終圧PFに到達できない。例えば、車両によって、充填用の配管構造が異なるのでコンダクタンス等が車種によって異なることが、かかる状況が発生する原因の1つとして考えられる。
かかる問題について、充填期間の後半における充填速度をさらに落とすことで満充填(実施的に最終圧PFまでの充填)が可能であることがわかってきた。そこで、実施の形態1では、図3に示すように、充填期間の後半における充填速度を充填制御フロー(1)よりもさらに遅くした充填制御フロー(2)を実施する。しかしながら、充填速度をさらに落とすと図3に示すように、FCV車両200の燃料タンク202の圧力が最終圧PFまで到達するまでの終了時間(充填時間)が遅くなってしまう。上述したように、1台あたりのFCV車両への充填時間をできるだけ短縮することが求められる中、すべてのFCV車両200の充填に対して、一律に充填速度をさらに遅くすると、充填制御フロー(1)でも満充填できたFCV車両200については無駄に充填時間が長くなってしまう。そこで、実施の形態1では、以下に説明する判定手法を使って、無駄に充填時間が長くなってしまうことを防ぎながら、いずれの車両についても満充填が可能なように構成する。以下、具体的に説明する。
図5は、実施の形態1における水素燃料の充填方法の要部工程の一部を示すフローチャート図である。図5において、実施の形態1における水素燃料の充填方法は、FCV情報受信工程(S102)と、充填制御フロー(1)演算工程(S104)と、充填工程(充填開始)(S106)と、差圧演算工程(S108)と、判定工程(S110)と、比較工程(S112)と、判定工程(S113)、充填制御フロー(2)演算工程(S114)と、判定工程(S116)と、切り替え工程(S118)と、いう一連の工程を実施する。
また、実施の形態1における水素燃料の充填方法では、充填工程(充填開始)(S106)による充填期間中に、差圧演算工程(S108)と、判定工程(S110)と、比較工程(S112)と、充填制御フロー(2)演算工程(S114)と、判定工程(S116)と、切り替え工程(S118)との一連の工程が実施される。
FCV情報受信工程(S102)として、受信部52は、水素燃料を動力源とするFCV車両200(燃料電池自動車)に搭載された車載器204からFCV車両200に搭載された燃料タンク202(水素貯蔵容器)に関する、圧力情報を含むFCV情報(情報)を受信する。具体的には以下のように動作する。FCV車両200が水素ステーション102内に到来し、ユーザ或いは水素ステーション102の作業員によってディスペンサ30のノズル31がFCV車両200の燃料タンク202の受け口(レセプタクル)に固定されると、車載器204と中継器34との通信が確立される。通信が確立されると、車載器204からは、燃料タンク202の現在の圧力、温度、及び燃料タンク202の容積といったFCV情報が、中継器34を介して制御回路100にリアルタイムで出力(発信)される。燃料タンク202の現在の圧力は圧力計206によって計測されている。
制御回路100内では、受信部52が、通信制御回路50を介してFCV情報を受信する。FCV情報は、車載器204と中継器34との通信が確立されている間、常時或いは所定のサンプリング間隔で、モニタリングされる。受信されたFCV情報は、受信時刻の情報と共に、記憶装置82に記憶される。また、外気温度が併せて図示しない計測器で計測される。
充填制御フロー(1)演算工程(S104)として、まず、終了圧・温度演算部54は、記憶装置80から変換テーブル81を読み出し、受信された燃料タンク202の受信初期時の圧力、温度、燃料タンク202の容積、及び外気温度に対応する最終圧PFと最終温度を演算し、予測する。また、終了圧・温度演算部54は、記憶装置80から補正テーブル83を読み出し、変換テーブル81によって得られた数値を補正する。変換テーブル81のデータだけでは、得られた結果に誤差が大きい場合に、実験或いはシミュレーション等により得られた結果に基づいて補正テーブル83を設ければよい。
次に、フロー計画部56は、多段蓄圧器101を用いて、FCV車両200の燃料タンク202に水素燃料を差圧供給(充填)するための充填制御フロー計画を作成する。フロー計画部56は、図3において説明したように、演算された燃料タンク202の圧力が最終圧PFになるための蓄圧器の選択(蓄圧器10,12,14の選択)と多段蓄圧器101の切り換えタイミングを含む充填制御フロー(1)(第1の充填制御フロー)の計画を作成する。このようにして、最終圧PFに到達する充填開始からの時間tが得られる。かかる場合に作成された充填制御フロー(1)計画の制御データは、記憶装置82に一時的に格納される。充填制御フロー(1)の計画を行う場合に、フロー計画部56は、外部温度に応じて、圧力上昇率を設定し、かかる圧力上昇率に対応する充填速度を演算する。さらに、急激な温度上昇を抑えるために充填途中からかかる外部温度に応じて決まる圧力上昇率に対応する充填速度を演算する。外部温度に応じて決まる圧力上昇率は、変換テーブル81のデータに予め組み込まれている。これらの条件で充填制御フロー(1)が計画され、最終圧PFに到達する充填開始からの時間t(終了時間1)(到達時間)が得られる。このようにして、フロー計画部56は、水素燃料を燃料タンク202(水素貯蔵容器)に充填する最終圧PFに到達する充填開始からの到達時間を演算する。上述した例では、水素ステーション102に到来するFCV車両200の燃料タンク202の圧力P1が予め設定された低圧バンクとなる蓄圧器10の使用下限圧力程度よりも十分に低い圧力であった場合を示している。一例としては、満充填(満タン)時の例えば1/2以下といった十分に低い状態の場合を示している。かかる場合には、FCV車両200の燃料タンク202の圧力を最終圧力PFに急速充填するためには、例えば3本の蓄圧器10,12,14が必要である。但し、水素ステーション102に到来するFCV車両200は、燃料タンク202の圧力が十分に低い場合に限るものではない。燃料タンク202の圧力が満充填時の例えば1/2より高い場合、例えば2本の蓄圧器10,12で足りる場合もあり得る。さらに、燃料タンク202の圧力が高い場合、例えば1本の蓄圧器10で足りる場合もあり得る。いずれにしても、蓄圧器10,12,14の間で使用する蓄圧器を切り替えることになる。
充填工程(充填開始)(S106)として、作成された充填制御フロー(1)に沿って、ディスペンサ30(水素燃料充填器)から水素燃料を動力源とするFCV車両200に搭載された燃料タンク202に水素燃料を充填する。具体的には、以下のように動作する。供給部106は、ディスペンサ30を用いて、多段蓄圧器101から燃料タンク202に水素燃料を充填する(充填を開始する)。供給部106は、充填動作に関連する、例えば、多段蓄圧器101、バルブ22,24,26,28、及びディスペンサ30により構成される。具体的には、以下のように動作する。システム制御部58は、記憶装置82から充填制御フロー計画(ここでは、充填制御フロー(1))の制御データを読み出し、かかる制御データに沿って、供給制御部63を制御する。供給制御部63は、システム制御部58による制御のもと、供給部106を制御して、FCV車両200の燃料タンク202に水素燃料を供給させる。具体的には、システム制御部58は、ディスペンサ制御部64、及びバルブ制御部65を制御する。ディスペンサ制御部64は、通信制御回路50を介してディスペンサ30と通信し、ディスペンサ30の動作を制御する。バルブ制御部65は、通信制御回路50を介して、バルブ22,24,26に制御信号を出力し、各バルブの開閉を制御する。また、多段蓄圧器101からの差圧充填を行う場合には、バルブ制御部60は、通信制御回路50を介して、バルブ28に制御信号を出力し、バルブ28を閉に制御する。
差圧演算工程(S108)として、まず、ディスペンサ出口圧力受信部68は、通信制御回路50を介して圧力計17から計測されたディスペンサ30の燃料充填出口圧力を受信(取得)する。ディスペンサ30の燃料充填出口圧力は、常時或いは所定のサンプリング間隔で、モニタリングされる。受信されたディスペンサ30の燃料充填出口圧力は、受信時刻の情報と共に、記憶装置84に記憶される。
そして、差圧演算部88は、ディスペンサ30の燃料充填出口圧力を入力し、ディスペンサ30の燃料充填出口圧力と、FCV車両200に関する所定の圧力との差圧を演算する。FCV車両200に関する所定の圧力として、例えば、FCV車両200の燃料タンク202の圧力(車両タンク圧)を用いる。
図6は、実施の形態1におけるディスペンサ出口圧(ディスペンサ30の燃料充填出口圧力)と車両タンク圧の差圧の推移の一例を示す図である。図6では、2台の車種の異なるFCV車両200(車両A,B)における充填開始から完了までのディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧の推移(時間的変位)の一例を示している。かかるディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧は、多段蓄圧器101の切り替え時に一時的に小さくなりながら徐々に小さくなっていく。ここで、図6に示しように、充填期間中のほとんどの期間において、車両Bは、車両Aに比べて、ディスペンサ出口圧からFCV車両200の燃料タンク202の圧力(車両タンク圧)を差し引いた差圧が大きい状態で推移している。これは、車両Bの充填配管構造が車両Aに比べて充填しにくい構造になっていることを示している。そこで、実施の形態1では、ディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧をパラメータとして、充填期間の後半部にさらに充填速度を落とすかどうかを判断する。ここで、誤った判断を避けるためには、車両Aと車両Bとの間で差圧の違いがはっきりとわかる状態になっていることが望ましい。そこで、車両Aと車両Bとの間で差圧の違いがはっきりとわかる状態になるまでかかる判断を待つことが好適である。
判定工程(S110)として、判定部96は、制御目標圧力PAが圧力P’を超えた(到達した)かどうかを判定する。制御目標圧力PAが圧力P’を超えたかどうかは、充填開始からの経過時間毎の制御目標圧力を用いればよい。所定のサンプリング周期で判定してもよい。図6に示すように、充填開始直後では、車両Aと車両Bとの間でディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧の状態が逆転している場合がある。そこで、制御目標圧力PAが圧力P’に到達するまで待つ。圧力P’として例えば60MPa程度が好適である。制御目標圧力PAが圧力P’に到達していない場合には、差圧演算工程(S108)に戻る。制御目標圧力PAが圧力P’に到達している場合には、比較工程(S112)に進む。
比較工程(S112)として、比較部89は、ディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧と、閾値Th”(或いは閾値Th’)とを比較する。具体的には、比較部89は、ディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧が閾値Th”(或いは閾値Th’)よりも大きいかどうかを判定する。図6に示すように、閾値として、例えば、一定の値の閾値Th”を用いる。一定の値の閾値Th”は、圧力P’以降の充填期間中において生じる、車両Aのディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧の最大値よりも大きく、かつ、車両Bのディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧の最大値よりも小さい値を用いる。これにより、圧力P’以降の充填期間中に車両Bについて、ディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧が閾値Th”よりも大きくなった状態を検出することができる。
或いは、図6に示すように、閾値として、例えば、経過時間と共に小さくなるように可変する閾値Th’を用いても良い。可変する閾値Th’は、圧力P’以降の充填期間中において生じる、車両Aのディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧曲線における複数のピーク(極大点)を繋ぐ直線上の点よりも同時期において大きく、かつ車両Bのディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧曲線と交差する線上の値を用いる。これにより、圧力P’以降の充填期間中に車両Bについて、ディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧が徐々に小さくなる場合でも、ディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧が閾値Th’よりも大きくなった状態を検出することができる。
比較の結果、ディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧が閾値Th’よりも大きい場合には充填制御フロー(2)演算工程(S114)に進む。ディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧が閾値Th’よりも大きくない場合には判定工程(S113)に進む。
判定工程(S113)として、判定部99は、制御目標圧力PAが圧力P”を超えた(到達した)かどうかを判定する。ここで圧力P”は、充填制御フロー(2)演算工程(S114)と判定工程(S116)との実施を可能とする時間を残すために、後述するトップオフ満充填制御移行圧力P3よりも若干低い圧力に設定すると好適である。制御目標圧力PAが圧力P”に到達していない場合には、比較工程(S112)に戻る。制御目標圧力PAが圧力P”に到達している場合には、現状の充填制御フロー(1)を維持する。かかる工程により、圧力P’〜 圧力P”の期間で1回でも差圧が閾値Th”(或いは閾値Th’)を超えた時点を検出できる。圧力P’〜 圧力P”の期間で1回でも差圧がTh”(或いは閾値Th’)を超えた場合には、充填制御フロー(2)に切り替えることになる。圧力P’〜 圧力P”の期間で一度も差圧がTh”(或いは閾値Th’)より大きくならない場合には、現状の充填制御フロー(1)を維持する。
充填制御フロー(2)演算工程(S114)として、ディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧が閾値Th’よりも大きい場合、フロー計画部56は、現状の充填制御フロー(1)におけるFCV車両200の燃料タンク202への充填期間の後半部において圧力上昇率が現状の充填制御フロー(1)とは異なる充填制御フロー(2)(第2の充填制御フロー)計画を作成する。具体的には、フロー計画部56は、現状の充填制御フロー(1)におけるFCV車両200の燃料タンク202への充填期間の後半部において圧力上昇率が現状の充填制御フロー(1)よりも小さい充填制御フロー(2)計画を作成する。充填制御フロー(2)を作成する上で、満充填できる圧力上昇率の値、及びどの圧力段階から圧力上昇率を下げれば満充填できるのかを示す、満充填できるための制御移行圧力P3は、予め、各社のFCV車両200を使った実験等により車種毎に求めておけばよい。また、かかるデータは外気温度の変化によって変化する場合には、外気温度毎に、満充填できる圧力上昇率の値、及び満充填できるための制御移行圧力P3を求めると良い。なお、充填制御フロー(2)の計画は、図3に示す制御目標圧力が制御移行圧力P3に到達する充填開始からの時間T4以降について作成すればよい。但し、これに限るものではなく、充填開始からの最終圧PFに到達するまので充填制御フロー計画を作成してもよい。作成された充填制御フロー(2)計画の制御データは、記憶装置82に一時的に格納される。充填制御フロー(2)計画の作成を行う場合に、フロー計画部56は、かかる充填制御フロー(1)よりも小さい圧力上昇率に対応する充填速度を演算する。車種毎に求められた満充填できる圧力上昇率の値、及び満充填できるための制御移行圧力P3を関連させたデータ(トップオフデータ)85は、記憶装置80に予め格納しておけばよい。これらの条件で充填制御フロー(2)が計画され、最終圧PFに到達する充填開始からの時間t’(終了時間2)(到達時間)が得られる。このようにして、フロー計画部56は、水素燃料を燃料タンク202(水素貯蔵容器)に充填する最終圧PFに到達する充填開始からの到達時間を演算する。図3の例では、FCV車両200の燃料タンク202が高圧バンクとなる蓄圧器14にて充填されている間の圧力がトップオフ満充填制御移行圧力P3に設定されている場合を示している。
判定工程(S116)として、判定部97は、制御目標圧力Paがトップオフ満充填制御移行圧力P3を超えた(到達した)かどうかを判定する。制御目標圧力が制御移行圧力P3を超えたかどうかは、充填開始からの経過時間毎の制御目標圧力を用いればよい。所定のサンプリング周期で判定してもよい。制御目標圧力Paがトップオフ満充填制御移行圧力P3に到達した場合には切り替え工程(S118)に進む。制御目標圧力Paがトップオフ満充填制御移行圧力P3に到達していない場合には、制御目標圧力Paがトップオフ満充填制御移行圧力P3に到達するまで判定工程(S116)を繰り返す。
切り替え工程(S118)として、切替部98は、制御目標圧力Paがトップオフ満充填制御移行圧力P3を超えた時点(充填途中)で、現状の充填制御フロー(1)から充填制御フロー(2)に切り替える。そして、切り替え以降は、充填制御フロー(2)に沿ってFCV車両200の燃料タンク202に水素燃料を充填する。
以上のように、比較工程(S112)における比較結果に応じて、充填完了まで充填制御フロー(1)に沿ったままFCV車両200の燃料タンク202に水素燃料を充填するか、若しくは、充填途中で充填制御フロー(1)から充填制御フロー(2)に切り替えて、充填完了までの残りの期間、充填制御フロー(2)に沿ってFCV車両200の燃料タンク202に水素燃料を充填する。言い換えれば、供給制御部63(制御部)は、選択された充填制御フローに沿って、FCV車両200の燃料タンク202に水素燃料を充填するように、ディスペンサ30他、供給部106の各機器を制御する。
図7は、実施の形態1におけるトップオフ満充填制御を含む充填制御フローにより充填した場合の複数の車両に充填される圧力の一例を説明するための図である。図7の例では、図3を用いて説明したように、多段蓄圧器101を切り替えながら、さらに、トップオフ満充填制御を充填期間の後半に行いながら充填する充填制御フロー(2)に沿って充填を行った場合の一例を示している。図7では、充填制御フロー(1)における温度上昇回避トップオフ充填制御については図示を省略している。図7の例では、制御目標圧力Paがトップオフ満充填制御移行圧力P3を超えた時点でトップオフ満充填制御の充填制御フロー(2)に切り替えた場合、車両A,B共に最終圧PFに到達できることが示されている。
ここで、充填制御フロー(2)に沿って圧力上昇率を実際に下げる手法として、例えば、FCV車両200の燃料タンク202の圧力計206によって計測された圧力を受信しながら受信された圧力を使って昇圧率自体を制御する手法がある。かかる場合、充填量は、圧力計206を用いて水素燃料の圧力上昇率によって制御される。もちろんかかる手法でも構わない。しかし、実施の形態1では、圧力上昇率を実際に下げる手法として、さらに効果的な流量制御を行う場合について説明する。
図8は、実施の形態1におけるトップオフ満充填制御を昇圧率で制御する場合と流量で制御する場合とを比較した圧力と時間の関係を示す図である。トップオフ満充填制御時の昇圧率は、それ以前の本充填時の昇圧率(日本国内の通常の環境下では12MPa〜28MPa/min)と比較して、大幅に低く設定(例えば6MPa/min以下)する。そのため、昇圧率は瞬時値として測定する必要がある。例えば、昇圧率6MPa/minでは、1秒(sec)あたりの圧力上昇値が0.1MPaであり、フルスケール100MPaの圧力計を選定した場合、少なくとも0.1%すなわち1/1000の分解能が必要となる。一方で、流量計の計量範囲は典型的な例として、0.1〜3.6kg/min程度であり、6MPa/minの昇圧率を得るための流量は、おおよそ0.5〜1kg/min程度の範囲である。そのため、流量計の計量範囲において十分な分解能が得られる。そのため、十分な測定精度が得られ、比較的容易に昇圧率を制御できる。その結果、図8(a)に示す昇圧率制御による圧力誤差ΔP1に比べて、図8(b)に示す流量制御による圧力誤差ΔP2を小さくできる。かかる結果から、流量制御の方が、目標昇圧率に対してより少ない偏差で、より安定的に制御されていることが読み取れる。そこで、実施の形態1では、フロー計画部56が目標圧力上昇率(昇圧率)に対応する流量を演算する。そして、供給部106は、ディスペンサ30の流量計27にて計測された値を使って流量調整弁29にて流量制御を行う。かかる流量制御は、FCV車両200の燃料タンク202への充填期間の後半部において充填流量が充填制御フロー(1)とは異なる充填制御フロー(2)を適用する。具体的には、かかる流量制御は、FCV車両200の燃料タンク202への充填期間の後半部において充填流量が充填制御フロー(1)より少ない充填制御フロー(2)を適用する。かかる場合、充填量は、流量計27を用いて水素燃料の流量によって制御される。
以上のように、実施の形態1では、FCV車両200の燃料タンク202に水素燃料を充填する場合に、ディスペンサ出口圧と車両タンク圧との差圧と、閾値との比較結果に応じて、充填制御フロー(1)を維持したまま最終圧PFまで充填するか、或いは、充填開始から充填制御フロー(1)における到達時間1に達する前に、水素燃料の充填量を予め設定された設定量よりも下げて充填するトップオフ満充填制御を含む充填制御フロー(2)を適用して残りの期間最終圧PFまで充填するか、それらのどちらか一方により充填が行われる。これにより、充填制御フロー(1)に沿った充填でも満充填される車両Aでは、充填量に大きな変化がないにも関わらず充填時間が延びるといった無駄な充填時間が生じることを防止できる。一方、充填制御フロー(1)に沿った充填では満充填されない車両Bでは、充填制御フロー(2)に沿った充填を行うことにより、充填時間は延びるが満充填まで到達できる。
以上のように、実施の形態1によれば、不必要な充填時間の増加を抑制しながら各FCV車両200について予定した最終圧PFまで充填できる。
実施の形態2.
実施の形態1では、充填制御フロー(1)から充填速度を落とした充填制御フロー(2)に切り替えるパラメータとして、ディスペンサ出口圧と車両タンク圧の差圧を用いたがこれに限るものではない。実施の形態2では、別のパラメータを用いる場合について説明する。実施の形態2における水素ステーションの水素燃料供給システム500の構成は、図1と同様である。以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
また、実施の形態2における制御回路の内部構成の一例を示す構成図は、図2と同様である。図2において、受信部52、終了圧・温度演算部54、フロー計画部56、システム制御部58、復圧制御部61(バルブ制御部60、圧縮機制御部62)、供給制御部63(ディスペンサ制御部64、バルブ制御部65)、バンク圧力受信部66、ディスペンサ出口圧力受信部68、差圧演算部92、比較部94、判定部96、判定部97、及び切替部98、といった各「〜部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「〜部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。受信部52、終了圧・温度演算部54、フロー計画部56、システム制御部58、復圧制御部61(バルブ制御部60、圧縮機制御部62)、供給制御部63(ディスペンサ制御部64、バルブ制御部65)、バンク圧力受信部66、ディスペンサ出口圧力受信部68、差圧演算部92、比較部94、判定部96、判定部97、及び切替部98内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度メモリ51に記憶される。なお、実施の形態2では、図2に示した差圧演算部88及び比較部89を省略しても構わない。
図9は、実施の形態2における水素燃料の充填方法の要部工程の一部を示すフローチャート図である。図9では、差圧演算工程(S108)の代わりに差圧演算工程(S109)が実施される点、及び比較工程(S112)の代わりに比較工程(S111)が実施される点、判定工程(S113)の配置位置が変わった点、以外は図5と同様である。
よって、実施の形態2における水素燃料の充填方法では、充填工程(充填開始)(S106)による充填期間中に、差圧演算工程(S109)と、判定工程(S110)と、比較工程(S111)と、判定工程(S113)と、充填制御フロー(2)演算工程(S114)と、判定工程(S116)と、切り替え工程(S118)との一連の工程が実施される。
FCV情報受信工程(S102)と、充填制御フロー(1)演算工程(S104)と、充填工程(充填開始)(S106)と、の各工程の内容は、実施の形態1と同様である。
差圧演算工程(S109)として、まず、ディスペンサ出口圧力受信部68は、通信制御回路50を介して圧力計17から計測されたディスペンサ30の燃料充填出口圧力を受信(取得)する点は実施の形態1と同様である。ディスペンサ30の燃料充填出口圧力は、常時或いは所定のサンプリング間隔で、モニタリングされる。受信されたディスペンサ30の燃料充填出口圧力は、受信時刻の情報と共に、記憶装置84に記憶される。
そして、差圧演算部92は、ディスペンサ30の燃料充填出口圧力を入力し、ディスペンサ30の燃料充填出口圧力と、充填制御フロー(1)の目標制御圧力Paとの差圧を演算する。充填制御フロー(1)の目標制御圧力Paは、FCV車両200に関する所定の圧力の一例となる。
図10は、実施の形態2における目標制御圧力とディスペンサ出口圧との差圧の推移の一例を示す図である。図10では、2台の車種の異なるFCV車両200(車両A,B)における充填開始から完了までの目標制御圧力とディスペンサ出口圧の差圧の推移(時間的変位)の一例を示している。かかる目標制御圧力とディスペンサ出口圧の差圧は、多段蓄圧器101の切り替え時に一時的に大きくなりながら推移していく。ここで、図10に示しように、充填期間中のほとんどの期間において、車両Bは、車両Aに比べて、目標制御圧力からディスペンサ出口圧を差し引いた差圧が大きい状態(小さくならない状態)で推移している。これは、車両Bの充填配管構造が車両Aに比べて充填しにくい構造になっていることを示している。そこで、実施の形態2では、目標制御圧力とディスペンサ出口圧の差圧をパラメータとして、充填期間の後半部にさらに充填速度を落とすかどうかを判断する。ここで、誤った判断を避けるためには、車両Aと車両Bとの間で差圧の違いがはっきりとわかる状態になっていることが望ましい。そこで、車両Aと車両Bとの間で差圧の違いがはっきりとわかる状態になるまでかかる判断を待つことが好適である。
そこで、判定工程(S110)として、判定部96は、制御目標圧力が圧力P’を超えた(到達した)かどうかを判定する。判定工程(S110)の内容は実施の形態1と同様である。制御目標圧力が圧力P’に到達していない場合には、差圧演算工程(S109)に戻る。制御目標圧力が圧力P’に到達している場合には、比較工程(S113)に進む。
比較工程(S113)として、比較部94は、充填制御フロー(1)の目標制御圧力Paとディスペンサ出口圧との差圧と、閾値Thとを比較する。具体的には、比較部94は、充填制御フロー(1)の目標制御圧力Paとディスペンサ出口圧との差圧が閾値Thよりも小さいかどうかを判定する。図10に示すように、閾値として、例えば、一定の値の閾値Thを用いる。一定の値の閾値Thは、圧力P’以降の充填期間中において生じる、車両Aの目標制御圧力Paとディスペンサ出口圧との差圧の最小値よりも小さく、かつ、車両Bの目標制御圧力Paとディスペンサ出口圧との差圧の最小値よりも大きい値を用いる。これにより、圧力P’以降の充填期間中に車両Bについて、目標制御圧力Paとディスペンサ出口圧との差圧が閾値Thよりも小さくなった状態を検出することができる。
比較の結果、目標制御圧力Paとディスペンサ出口圧との差圧が閾値Thよりも小さい場合には現状の充填制御フロー(1)を維持する。目標制御圧力Paとディスペンサ出口圧との差圧が閾値Thよりも小さくない場合には判定工程(S113)に進む。
判定工程(S113)として、判定部99は、制御目標圧力PAが圧力P”を超えた(到達した)かどうかを判定する。ここで圧力P”は、充填制御フロー(2)演算工程(S114)と判定工程(S116)との実施を可能とする時間を残すために、後述するトップオフ満充填制御移行圧力P3よりも若干低い圧力に設定すると好適である。制御目標圧力PAが圧力P”に到達していない場合には、比較工程(S112)に戻る。制御目標圧力PAが圧力P”に到達した場合には、充填制御フロー(2)演算工程(S114)に進む。かかる工程により、圧力P’〜 圧力P”の期間で1回でも差圧が閾値Thを下回った時点を検出できる。圧力P’〜 圧力P”の期間で1回でも差圧が閾値Thを下回った場合には、現状の充填制御フロー(1)を維持する。圧力P’〜 圧力P”の期間で一度も差圧が閾値Thより小さくならない場合には、充填制御フロー(2)に切り替えることになる。
以降の各工程の内容は、実施の形態1と同様である。このように、実施の形態2では、FCV車両200に関する所定の圧力として、FCV車両200の燃料タンク202に充填する充填制御フロー(1)の制御目標圧力が用いられる。そして、目標制御圧力Paとディスペンサ出口圧との差圧が閾値Thよりも小さい時点を検出した場合には、FCV車両200の燃料タンク202への充填期間の後半部において圧力上昇率が充填制御フロー(1)とは異なる充填制御フロー(2)に切り替える。具体的には、FCV車両200の燃料タンク202への充填期間の後半部において圧力上昇率が充填制御フロー(1)よりも小さい充填制御フロー(2)に切り替える。
また、実施の形態2では、充填制御フロー(2)に沿って圧力上昇率を実際に下げる手法として、上述したように、FCV車両200の燃料タンク202の圧力計206によって計測された圧力を受信しながら受信された圧力を使って昇圧率自体を制御しても構わない。かかる場合、充填量は、圧力計206を用いて水素燃料の圧力上昇率によって制御される。しかし、ディスペンサ30の流量計27によって流量を計測しながら流量調整弁29により流量を制御する方が圧力上昇率を実際に下げる手法としてさらに効果的である点は実施の形態1と同様である。かかる流量制御は、FCV車両200の燃料タンク202への充填期間の後半部において充填流量が充填制御フロー(1)とは異なる充填制御フロー(2)を適用する。具体的には、かかる流量制御は、FCV車両200の燃料タンク202への充填期間の後半部において充填流量が充填制御フロー(1)より少ない充填制御フロー(2)を適用する。言い換えれば、実施の形態2では、目標制御圧力Paとディスペンサ出口圧との差圧が閾値Thよりも小さい時点を検出した場合には、FCV車両200の燃料タンク202への充填期間の後半部において充填流量が充填制御フロー(1)よりも少ない充填制御フロー(2)に切り替える。かかる場合、かかる場合、充填量は、流量計27を用いて水素燃料の流量によって制御される。
以上のように、実施の形態2では、FCV車両200の燃料タンク202に水素燃料を充填する場合に、充填制御フロー(1)の目標制御圧力Paとディスペンサ出口圧との差圧と、閾値との比較結果に応じて、充填制御フロー(1)を維持したまま最終圧PFまで充填するか、或いは、充填開始から充填制御フロー(1)における到達時間1に達する前に、水素燃料の充填量を予め設定された設定量よりも下げて充填するトップオフ満充填制御を含む充填制御フロー(2)を適用して残りの期間最終圧PFまで充填するか、それらのどちらか一方により充填が行われる。これにより、充填制御フロー(1)に沿った充填でも満充填される車両Aでは、充填量に大きな変化がないにも関わらず充填時間が延びるといった無駄な充填時間が生じることを防止できる。一方、充填制御フロー(1)に沿った充填では満充填されない車両Bでは、充填制御フロー(2)に沿った充填を行うことにより、充填時間は延びるが満充填まで到達できる。
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
また、上述した例において、充填制御フロー(1)が作成されるが、1回作成されたら、そのままずっと固定されなくても良い。FCV車両200の燃料タンク202の温度変化に応じて適切な充填速度は変化する。そのため、制御目標圧力は刻々と変動するように構成すると好適である。言い換えれば、充填制御フロー(1)は可変するように構成すると好適である。
また、充填制御フロー(2)における、低下させた充填速度(圧力上昇率)は、一定である必要はない。可変するように設定しても構わない。例えば、充填時間の経過と共に徐々に小さくしても好適である。
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての水素燃料の充填制御方法及び水素燃料の充填制御装置は、本発明の範囲に包含される。