以下、本発明に係るオイルジェット装置を具体化した第1実施形態乃至第4実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本発明に係るオイルジェット装置を具体化した第1実施形態について図1乃至図11に基づいて説明する。尚、図1に示されるX軸、Y軸、Z軸は、互いに直交している。そして、図1では、Z軸方向は、シリンダ軸線に平行で、紙面の上方向を示し、Y軸方向は、クランク軸線に平行で、紙面の奥行き方向を示し、X軸方向は、シリンダ軸線とクランク軸線の双方に直交し、紙面の右方向を示している。
[第1実施形態]
内燃機関の一例であるディーゼルエンジン10に、第1実施形態に係るオイルジェット装置21を適用した一例について図1乃至図11に基づいて説明する。先ず、ディーゼルエンジン10の概略構成について図1に基づいて説明する。図1に示すように、ディーゼルエンジン10は、シリンダ11、クランクケース12、ピストン13、コンロッド14、クランクシャフト15、吸気バルブ16V、排気バルブ17V、オイルジェット装置21、オイルポンプ41、シリンダヘッド19等を有している。そして、シリンダ11、ピストン13、シリンダヘッド19、吸気バルブ16V、排気バルブ17Vに囲まれた空間が燃焼室18とされている。
吸気バルブ16Vは、燃焼室18と吸気通路16Kとを連通または閉鎖するように動作し、排気バルブ17Vは、燃焼室18と排気通路17Kとを連通または閉鎖するように動作する。クランクシャフト15は、クランク軸線15J回りに回転し、クランク15Aが設けられている。また、コンロッド14の下方端は、クランクピン15Pにてクランク15Aに取り付けられており、コンロッド14の上方端は、ピストンピン13Pにてピストン13に取り付けられている。そして、クランク15Aとコンロッド14とシリンダ11は、ピストン13の往復直線運動(シリンダ軸線11Jに沿った往復直線運動)を、クランクシャフト15の回転運動(クランク軸線15J回りの回転運動)に変換する。
オイルジェット装置21は、シリンダ11の下端近傍の位置、又は、クランクケース12の上端近傍の位置に設けられている。オイルジェット装置21は、オイルを導くオイル通路42を介してオイルポンプ41に接続される略円筒状の本体部23を備えている。また、オイルジェット装置21からのオイル噴射は、本体部23の側壁部からシリンダ11内に向けて延出された第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けて噴射される。つまり、第1ノズル管部25の先端部25Aは、ピストン13の裏側に向かって開口している。
第1ノズル管部25の先端部25Aから噴射されたオイルは、所定タイミング(例えば、ピストン13が下死点近傍に到達したタイミング)にて、オイル供給口13Lとオイル入力通路13Kを経由して、ピストン13の内部に設けられた空洞部であるクーリングチャネル13C内に一時的に蓄えられる。そしてクーリングチャネル13C内に蓄えられたオイルは、ピストン13を冷却した後、新たなオイルが入力されると、クーリングチャネル13Cに設けられたオイル排出口13Gから排出されて、コンロッド14やピストン13とシリンダ11との間の潤滑及び冷却に利用される。
オイルポンプ41は、ディーゼルエンジン10の運転で駆動されてオイルをオイル通路42に吐出するポンプである。例えば、機械式のオイルポンプの場合、オイルポンプ41は、ディーゼルエンジン10が運転中はオイルを吐出し、ディーゼルエンジン10が停止するとオイルの吐出を停止する。オイル通路42は、一方端がオイルポンプ41に接続されて、他方端がオイルジェット装置21の本体部23に接続されている。
次に、オイルジェット装置21の概略構成について図2乃至図5に基づいて説明する。図2乃至図5に示すように、オイルジェット装置21の本体部23は、軸方向一端側(図2中、上側)に、オイル通路42の他方端側が接続されてオイルが流入する円筒状のオイル通路23Aが同軸に形成されて、軸方向他端側(図2中、下側)が閉塞される有底円筒状に形成されている。
本体部23の内部には、オイル通路23Aに連続して、オイル通路23Aの内径よりも大きい外径を有する略円形の平面状の弁座26が設けられ、この弁座26の下側に弁体27と、弾性体である圧縮コイルバネ28とを収容する断面略円形状の弁体収容部23Bが形成されている。また、本体部23の側壁部、つまり、弁体収容部23Bの内周面の軸方向中央部よりも少し上側の位置には、第1ノズル管部25の基端部が接続される第1連通孔29が貫通して形成されている。
また、図3及び図4に示すように、弁体収容部23Bの内周面には、一対の案内リブ30が、第1連通孔29の中心軸に対して径方向略直交するように弁体収容部23Bの軸方向全長に渡って半径方向内側へ突出している(図4参照)。一対の案内リブ30の半径方向内側の先端部間の距離は、オイル通路23Aの内径にほぼ等しい寸法に形成されている。
また、図4及び図5に示すように、弁体27は、弁座26の外径よりも小さく、且つ、オイル通路23Aの内径よりも大きい直径を有する略円板状に形成された円板部27Aと、この円板部27Aの下面から同軸に突出する円柱状の突出軸部27Bとから構成されている。円板部27Aの外周部には、断面コの字状の一対の溝部31が、径方向に相対向するように形成されている。この一対の溝部31には、弁体収容部23Bの内周面から半径方向内側へ突出する一対の案内リブ30がそれぞれ摺動可能に嵌入され、弁体27が上下方向(軸方向)へ移動可能に案内される。
また、突出軸部27Bは、図3及び図5に示すように、一対の案内リブ30間に挿入されている圧縮コイルバネ28の内径よりも小さい直径で、先端部が先細りに形成されている。そして、図2及び図3に示すように、弁体27は、突出軸部27Bが圧縮コイルバネ28に挿入された状態で、弁座26側(図2中、上側方向)へ付勢されて、円板部27Aの上端面が弁座26に当接され、オイル通路23Aを閉塞している。従って、弁体27と弁座26との当接により、オイル通路23Aを開閉可能にする逆止弁32が構成される。
また、弁体収容部23Bのオイル通路23Aに対して反対側の底面部23Cの中央位置(最下端位置)には、第1連通孔29と同じ内径の第2連通孔33が貫通して形成されている。また、この第2連通孔33は、弁体27の突出軸部27Bの直径よりも小さい径に形成されている。そして、図1乃至図3に示すように、第1ノズル管部25の管径と同じ管径に形成された側面視略U字状の第1接続管部35の一方端が、第2連通孔33に接続されている。また、第1接続管部35の他方端は、第1ノズル管部25に接続されている。
従って、オイル通路23Aに高油圧のオイルがオイルポンプ41から供給されて、弁体27が圧縮コイルバネ28の付勢力に抗して、最下端位置まで移動した場合には、突出軸部27Bの先端部が第2連通孔33に接続された第1接続管部35の一方端に当接して、第1接続管部35の一方端を閉塞する(図7参照)。また、第1連通孔29は、最下端位置まで移動した弁体27の円板部27Aよりも上側に位置するように、弁体収容部23Bの内周面に貫通して形成されるのが好ましい。
ここで、第1ノズル管部25の管径は、従来のオイルジェット装置のノズル管部の管径の約1/2の径に形成されているため、第1連通孔29の内径も、従来のオイルジェット装置のノズル管部の基端部が接続される連通孔の内径の約1/2の径に形成されている。同様に、第1接続管部35の管径も、従来のオイルジェット装置のノズル管部の管径の約1/2の径に形成されている。
このため、第2連通孔33の内径も、従来のオイルジェット装置のノズル管部の基端部が接続される連通孔の内径の約1/2の径に形成されている。従って、第1連通孔29と第2連通孔33は、ほぼ等しい流量のオイルが流れるように形成され、それぞれのオイルの流量は、従来のオイルジェット装置のノズル管部のオイルの流量の約1/2に設定される。
また、図2及び図3に示すように、オイル通路23Aの下端部近傍には、第1ノズル管部25に対して直径方向において相対向する外周面から径方向外側に延出された平板状で平面視略矩形状の支持部37が設けられている。支持部37の略中央部には不図示のボルトが挿入されるボルト挿入孔37Aが形成されている。そして、オイルジェット装置21は、支持部37のボルト挿入孔37Aに挿通された不図示のボルトによって、クランクケース12の所定位置にボルト止めにて固定され、オイル通路23Aがオイル通路42の他方端側に接続される。
次に、上記のように構成されたオイルジェット装置21の動作について図2、図6〜図11に基づいて説明する。先ず、ディーゼルエンジン10の暖機運転時におけるオイルジェット装置21の動作について説明する。ディーゼルエンジン10の暖機運転時には、オイルの油温が低いため、図10に示すように、暖機運転時にオイルポンプ41から供給される低温のオイルの油圧は高油圧(例えば、350kPa以上)である。このため、図7及び図8に示すように、オイル通路23A内に高油圧(例えば、350kPa以上)のオイルが供給された場合には、弁体27が圧縮コイルバネ28の付勢力に抗して、弁座26から離れ、弁体収容部23Bの最下端位置まで移動して、押し当てられる。
その結果、弁体27の突出軸部27Bの先端部が、第2連通孔33に接続された第1接続管部35の一方端に当接して、第1接続管部35の一方端を閉塞するため、第1接続管部35から第1ノズル管部25へのオイルの供給が停止される。一方、弁体27が弁座26から離れるため、オイル通路23Aから弁体収容部23B内に供給されたオイルは、第1連通孔29に接続された第1ノズル管部25の基端部に流入する(矢印F1方向)。そして、第1ノズル管部25に流入した高油圧のオイルは、第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けて噴射される。
従って、図9に示すように、オイル通路23Aに高油圧(例えば、350kPa以上)のオイルが供給された場合に、第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けて噴射されるオイル噴射流量(吐出油量)、つまり、第1ノズル管部25と第1接続管部35による「2系統オイル噴射」のオイル噴射流量(図9中、実線で示されるオイル噴射流量である。)は、従来のオイルジェット装置のノズル管部のみによる「1系統オイル噴射」のオイル噴射流量(図9中、破線で示されるオイル噴射流量である。)の約1/2の流量に設定される。
これにより、ディーゼルエンジン10の暖機運転時に、オイルジェット装置21の第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13に向けて噴射される低温のオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)の約1/2の流量に設定することが可能となり、ピストン13の冷却を抑止して冷却損失の改善を図ることができる。その結果、図11に示すように、ディーゼルエンジン10の温度上昇が従来よりも早くなると共に、オイルの油温上昇も従来より早くなり、暖機運転時におけるオイルジェット装置21による冷却損失の改善を図ることができる。
次に、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、高速運転時におけるオイルジェット装置21の動作について説明する。図10に示すように、高速運転時にオイルポンプ41から供給されるオイルの油圧は中間油圧(例えば、150kPa以上〜350kPa未満)である。このため、図6及び図8に示すように、オイル通路23A内に中間油圧(例えば、150kPa以上〜350kPa未満)のオイルが供給された場合には、弁体27が圧縮コイルバネ28の付勢力に抗して、弁座26から離れ、且つ、弁体収容部23Bの最下端位置よりも上側の位置に移動する。
その結果、弁体27の円板部27Aが弁座26から離れるため、オイル通路23Aから弁体収容部23B内に供給されたオイルは、第1連通孔29に接続された第1ノズル管部25の基端部に流入する(矢印F2方向)。また、弁体27の突出軸部27Bの先端部は、弁体収容部23Bの最下端位置よりも上側に位置するため、オイル通路23Aから弁体収容部23B内に供給されたオイルは、第2連通孔33に接続された第1接続管部35の一方端に流入して(矢印F3方向)、この第1接続管部35の他方端が接続された第1ノズル管部25に流入する(矢印F4方向)。
従って、図9に示すように、オイル通路23Aに中間油圧(例えば、150kPa以上〜350kPa未満)のオイルが供給された場合に、第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けて噴射されるオイル噴射流量(吐出油量)、つまり、第1ノズル管部25と第1接続管部35による「2系統オイル噴射」のオイル噴射流量(図9中、実線で示されるオイル噴射流量である。)は、従来のオイルジェット装置のノズル管部のみによる「1系統オイル噴射」のオイル噴射流量とほぼ等しい流量に設定される。
これにより、図11に示すように、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、高速運転時に、オイルジェット装置21の第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13に向けて噴射される油温の上昇したオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)とほぼ同じ流量(吐出油量)に設定することが可能となり、ピストン13を効果的に冷却することが可能となる。
次に、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、低速運転時におけるオイルジェット装置21の動作について説明する。図10に示すように、低速運転時にオイルポンプ41から供給されるオイルの油圧は低油圧(例えば、150kPa未満)である。このため、図2及び図8に示すように、オイル通路23A内に低油圧(例えば、150kPa未満)のオイルが供給された場合には、弁体27が圧縮コイルバネ28の付勢力によって弁座26に当接され、オイル通路23Aが閉塞される。
その結果、オイル通路23Aから弁体収容部23B内にオイルが供給されないため、第1連通孔29に接続された第1ノズル管部25の基端部と、第2連通孔33に接続された第1接続管部35の一方端とが閉塞された状態となり、第1ノズル管部25と第1接続管部35が閉鎖される。つまり、第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けてオイルが噴射されない。
従って、図9に示すように、オイル通路23Aに低油圧(例えば、150kPa未満)のオイルが供給された場合に、第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けて噴射されるオイル噴射流量(吐出油量)は、「0(L/min)」である。つまり、第1ノズル管部25と第1接続管部35による「2系統オイル噴射」のオイル噴射流量(図9中、実線で示されるオイル噴射流量である。)は、従来のオイルジェット装置のノズル管部のみによる「1系統オイル噴射」のオイル噴射流量と同じ流量「0(L/min)」に設定される。
これにより、図11に示すように、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、低速運転時に、オイルジェット装置21の第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13に向けて噴射されるオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)と同じ流量「0(L/min)」に設定することが可能となり、ピストン13の冷却を抑止することができる。その結果、ディーゼルエンジン10の温度低下を抑止して、オイルの油温低下を防止することができる。
以上詳細に説明した通り、第1実施形態に係るオイルジェット装置21では、ディーゼルエンジン10の暖機運転時に、オイルジェット装置21の第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13に向けて噴射される低温のオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)の約1/2の流量に設定することが可能となり、ピストン13の冷却を抑止して冷却損失の改善を図ることができる。
また、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、高速運転時に、オイルジェット装置21の第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13に向けて噴射される油温の上昇したオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)とほぼ同じ流量(吐出油量)に設定することが可能となり、ピストン13を効果的に冷却することが可能となる。
また、オイルジェット装置21の弁体収容部23Bの底面部23Cに第2連通孔33を形成し、オイルポンプ41から高油圧(例えば、350kPa以上)のオイルが供給される時に、圧縮コイルバネ28の付勢力に抗して弁体27の突出軸部27Bによって第2連通孔33を閉塞すればよい。これにより、オイルジェット装置21を従来のオイルジェット装置と同等のサイズで構成することが可能となり、既存のディーゼルエンジン等へ容易に置き換えることができる。
また、第1ノズル管部25の管径と同じ管径に形成された側面視略U字状の第1接続管部35の一方端を第2連通孔33に接続し、この第1接続管部35の他方端を第1ノズル管部25に接続すればよいため、部品点数の増加を抑止し、製造コストの低減化を図ることができる。また、第1ノズル管部25を介してピストン13の1個所にオイルを噴射することが可能となり、既存のディーゼルエンジンへ容易に置き換えることができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るオイルジェット装置51の構成について図12に基づいて説明する。尚、図1乃至図11に示す上記第1実施形態に係るオイルジェット装置21の構成と同一符号は、上記第1実施形態に係るオイルジェット装置21の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
この第2実施形態に係るオイルジェット装置51の構成は、第1実施形態に係るオイルジェット装置21とほぼ同じ構成である。但し、第2実施形態に係るオイルジェット装置51は、第1接続管部35に替えて、第2ノズル管部52を備えている点で異なっている。その他の点は、第1実施形態に係るオイルジェット装置21と同一であり、同一の部分についての再度の説明は省略する。
図12に示すように、オイルジェット装置51の本体部23は、弁体収容部23Bのオイル通路23Aに対して反対側の底面部23Cの中央位置(最下端位置)に、第1連通孔29と同じ内径の第2連通孔33が貫通して形成されている。そして、第1ノズル管部25の管径と同じ管径に形成された第2ノズル管部52の基端部(一方端)が、第2連通孔33に接続されている。また、第2ノズル管部52は、第2連通孔33からシリンダ11内に向けて延出されて、先端部52Aがピストン13の裏側に向かって開口している。そして、オイルポンプ41から第2ノズル管部52に供給されたオイルが、ピストン13の裏側に向けて噴射される。
次に、上記のように構成されたオイルジェット装置51の動作について図9、図10、図12に基づいて説明する。先ず、ディーゼルエンジン10の暖機運転時におけるオイルジェット装置51の動作について説明する。ディーゼルエンジン10の暖機運転時には、オイルの油温が低いため、図10に示すように、暖機運転時にオイルポンプ41から供給される低温のオイルの油圧は高油圧(例えば、350kPa以上)である。このため、第1実施形態に係るオイルジェット装置21と同様に、オイル通路23A内に高油圧(例えば、350kPa以上)のオイルが供給された場合には、弁体27が圧縮コイルバネ28の付勢力に抗して、弁座26から離れ、弁体収容部23Bの最下端位置まで移動して、押し当てられる(図7参照)。
その結果、弁体27の突出軸部27Bの先端部が、第2連通孔33に接続された第2ノズル管部52の基端部(一方端)に当接して、第2ノズル管部52の一方端が閉塞されるため、第2ノズル管部52へのオイルの供給が停止される。一方、弁体27が弁座26から離れるため、オイル通路23Aから弁体収容部23B内に供給されたオイルは、第1連通孔29に接続された第1ノズル管部25の基端部に流入する。そして、第1ノズル管部25に流入した高油圧のオイルは、第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けて噴射される。
従って、オイル通路23Aに高油圧(例えば、350kPa以上)のオイルが供給された場合には、第1ノズル管部25の先端部25Aのみからピストン13の裏側に向けてオイルが噴射される。その結果、図9に示すように、第1ノズル管部25と第2ノズル管部52による「2系統オイル噴射」のピストン13の裏面へのオイル噴射流量(図9中、実線で示されるオイル噴射流量である。)は、従来のオイルジェット装置の1個のノズル管部のみによる「1系統オイル噴射」のオイル噴射流量(図9中、破線で示されるオイル噴射流量である。)の約1/2の流量に設定される。
これにより、ディーゼルエンジン10の暖機運転時に、オイルジェット装置51からピストン13の裏面に向けて噴射される低温のオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)の約1/2の流量に設定することが可能となり、ピストン13の冷却を抑止して冷却損失の改善を図ることができる。その結果、ディーゼルエンジン10の温度上昇が従来よりも早くなると共に、オイルの油温上昇も従来より早くなり、暖機運転時におけるオイルジェット装置51による冷却損失の改善を図ることができる。
次に、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、高速運転時におけるオイルジェット装置51の動作について説明する。図10に示すように、高速運転時にオイルポンプ41から供給されるオイルの油圧は中間油圧(例えば、150kPa以上〜350kPa未満)である。このため、オイル通路23A内に中間油圧(例えば、150kPa以上〜350kPa未満)のオイルが供給された場合には、弁体27が圧縮コイルバネ28の付勢力に抗して、弁座26から離れ、且つ、弁体収容部23Bの最下端位置よりも上側の位置に移動する。
その結果、弁体27の円板部27Aが弁座26から離れるため、オイル通路23Aから弁体収容部23B内に供給されたオイルは、第1連通孔29に接続された第1ノズル管部25の基端部に流入する(図6参照)。そして、第1ノズル管部25に流入した中間油圧のオイルは、第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けて噴射される。
また、弁体27の突出軸部27Bの先端部は、弁体収容部23Bの最下端位置よりも上側に位置するため、オイル通路23Aから弁体収容部23B内に供給されたオイルは、第2連通孔33に接続された第2ノズル管部52の基端部に流入する。そして、第2ノズル管部52に流入した中間油圧のオイルは、第2ノズル管部52の先端部52Aからピストン13の裏側に向けて噴射される。
従って、図9に示すように、オイル通路23Aに中間油圧(例えば、150kPa以上〜350kPa未満)のオイルが供給された場合に、第1ノズル管部25と第2ノズル管部52とからピストン13の裏側に向けて噴射されるオイル噴射流量(吐出油量)、つまり、第1ノズル管部25と第2ノズル管部52による「2系統オイル噴射」のオイル噴射流量(図9中、実線で示されるオイル噴射流量である。)は、従来のオイルジェット装置の1個のノズル管部のみによる「1系統オイル噴射」のオイル噴射流量とほぼ等しい流量に設定される。
これにより、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、高速運転時に、オイルジェット装置51の第1ノズル管部25の先端部25Aと、第2ノズル管部52の先端部52Aとからピストン13の裏面に向けて噴射される油温の上昇したオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)とほぼ同じ流量(吐出油量)に設定することが可能となり、ピストン13を効果的に冷却することが可能となる。
次に、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、低速運転時におけるオイルジェット装置51の動作について説明する。図10に示すように、低速運転時にオイルポンプ41から供給されるオイルの油圧は低油圧(例えば、150kPa未満)である。このため、図12に示すように、オイル通路23A内に低油圧(例えば、150kPa未満)のオイルが供給された場合には、弁体27が圧縮コイルバネ28の付勢力によって弁座26に当接され、オイル通路23Aが閉塞される。
その結果、オイル通路23Aから弁体収容部23B内にオイルが供給されないため、第1連通孔29に接続された第1ノズル管部25の基端部と、第2連通孔33に接続された第2ノズル管部52の基端部とが閉塞された状態となり、第1ノズル管部25と第2ノズル管部52が閉鎖される。つまり、第1ノズル管部25の先端部25Aと、第2ノズル管部52の先端部52Aとからピストン13の裏側に向けてオイルが噴射されない。
従って、図9に示すように、オイル通路23Aに低油圧(例えば、150kPa未満)のオイルが供給された場合に、第1ノズル管部25の先端部25Aと、第2ノズル管部52の先端部52Aとからピストン13の裏側に向けて噴射されるオイル噴射流量(吐出油量)は、「0(L/min)」である。つまり、第1ノズル管部25と第2ノズル管部52による「2系統オイル噴射」のオイル噴射流量(図9中、実線で示されるオイル噴射流量である。)は、従来のオイルジェット装置の1個のノズル管部のみによる「1系統オイル噴射」のオイル噴射流量と同じ流量「0(L/min)」に設定される。
これにより、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、低速運転時に、オイルジェット装置51の第1ノズル管部25の先端部25Aと、第2ノズル管部52の先端部52Aとからピストン13に向けて噴射されるオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)と同じ流量「0(L/min)」に設定することが可能となり、ピストン13の冷却を抑止することができる。その結果、ディーゼルエンジン10の温度低下を抑止して、オイルの油温低下を防止することができる。
以上詳細に説明した通り、第2実施形態に係るオイルジェット装置51では、ディーゼルエンジン10の暖機運転時に、オイルジェット装置51の第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13に向けて噴射される低温のオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)の約1/2の流量に設定することが可能となり、ピストン13の冷却を抑止して冷却損失の改善を図ることができる。
また、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、高速運転時に、オイルジェット装置51の第1ノズル管部25の先端部25Aと、第2ノズル管部52の先端部52Aとからピストン13に向けて噴射される油温の上昇したオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)とほぼ同じ流量(吐出油量)に設定することが可能となり、ピストン13を効果的に冷却することが可能となる。
また、オイルジェット装置51の弁体収容部23Bの底面部23Cに第2連通孔33を形成し、オイルポンプ41から高油圧(例えば、350kPa以上)のオイルが供給される時に、圧縮コイルバネ28の付勢力に抗して弁体27の突出軸部27Bによって第2連通孔33を閉塞すればよい。これにより、オイルジェット装置51を従来のオイルジェット装置と同等のサイズで構成することが可能となり、既存のディーゼルエンジン等へ容易に置き換えることができる。
また、第1ノズル管部25の管径と同じ管径に形成された第2ノズル管部52の基端部(一方端)を第2連通孔33に接続し、この第2ノズル管部52の他方端に形成された先端部52Aをピストン13の裏面に向けて配置すればよいため、部品点数の増加を抑止し、製造コストの低減化を図ることができる。尚、第2ノズル管部52の先端部52Aは、第1ノズル管部25の先端部25Aと異なる特定箇所に向かうように適宜設定されていてもよい。これにより、例えば、ピストン13及びコンロッド14を冷却することが可能となり、ガソリンエンジン等へ容易に置き換えることが可能となる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係るオイルジェット装置61の構成について図13に基づいて説明する。尚、図1乃至図11に示す上記第1実施形態に係るオイルジェット装置21の構成と同一符号は、上記第1実施形態に係るオイルジェット装置21の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
この第3実施形態に係るオイルジェット装置61の構成は、第1実施形態に係るオイルジェット装置21とほぼ同じ構成である。但し、図13に示すように、第3実施形態に係るオイルジェット装置61は、本体部23のオイル通路23Aに対して軸方向反対側(図13中、下側)に、有底円筒状のオイル貯留部62が連続して形成されている点で異なっている。このオイル貯留部62は、弁体収容部23Bの底面部23Cの周縁部から全周に渡って軸方向外側に延出されると共に、軸方向外側端部が閉塞された有底円筒状に形成されている。従って、本体部23の弁体収容部23Bとオイル貯留部62は、第2連通孔33を介して連通している。
また、オイル貯留部62の側壁部には、本体部23の側壁部に形成された第1連通孔29の下方(図13中、下側)の軸方向略中央位置に、第1連通孔29と同じ内径の第3連通孔63が貫通して形成されている。そして、第1接続管部35に替えて、第1ノズル管部25の管径と同じ管径に形成された側面視略L字状の第2接続管部65の一方端が、第3連通孔63に接続されている。また、第2接続管部65の他方端は、第1ノズル管部25に接続されている点で異なっている。従って、オイル貯留部62の軸方向高さは、第2接続管部65の管径の約1.5倍〜3倍の高さに形成されている。
ここで、第1ノズル管部25の管径は、従来のオイルジェット装置のノズル管部の管径の約1/2の径に形成されているため、第2接続管部65の管径も、従来のオイルジェット装置のノズル管部の管径の約1/2の径に形成されている。また、第3連通孔63の内径も、従来のオイルジェット装置のノズル管部の基端部が接続される連通孔の内径の約1/2の径に形成されている。
次に、上記のように構成されたオイルジェット装置61の動作について図9、図10、図13に基づいて説明する。先ず、ディーゼルエンジン10の暖機運転時におけるオイルジェット装置61の動作について説明する。ディーゼルエンジン10の暖機運転時には、オイルの油温が低いため、図10に示すように、暖機運転時にオイルポンプ41から供給される低温のオイルの油圧は高油圧(例えば、350kPa以上)である。このため、第1実施形態に係るオイルジェット装置21と同様に、オイル通路23A内に高油圧(例えば、350kPa以上)のオイルが供給された場合には、弁体27が圧縮コイルバネ28の付勢力に抗して、弁座26から離れ、弁体収容部23Bの最下端位置まで移動して、押し当てられる(図7参照)。
その結果、弁体27の突出軸部27Bの先端部が、第2連通孔33に当接して、この第2連通孔33が閉塞されるため、オイル貯留部62へのオイルの供給が停止される。このため、第3連通孔63に接続された第2接続管部65から第1ノズル管部25へのオイルの供給が停止される。一方、弁体27が弁座26から離れるため、オイル通路23Aから弁体収容部23B内に供給されたオイルは、第1連通孔29に接続された第1ノズル管部25の基端部に流入する。そして、第1ノズル管部25に流入した高油圧のオイルは、第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けて噴射される。
従って、オイル通路23Aに高油圧(例えば、350kPa以上)のオイルが供給された場合には、第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けて噴射されるオイル噴射流量(吐出油量)、つまり、第1ノズル管部25と第2接続管部65による「2系統オイル噴射」のオイル噴射流量(図9中、実線で示されるオイル噴射流量である。)は、従来のオイルジェット装置のノズル管部のみによる「1系統オイル噴射」のオイル噴射流量(図9中、破線で示されるオイル噴射流量である。)の約1/2の流量に設定される。
これにより、ディーゼルエンジン10の暖機運転時に、オイルジェット装置61からピストン13の裏面に向けて噴射される低温のオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)の約1/2の流量に設定することが可能となり、ピストン13の冷却を抑止して冷却損失の改善を図ることができる。その結果、ディーゼルエンジン10の温度上昇が従来よりも早くなると共に、オイルの油温上昇も従来より早くなり、暖機運転時におけるオイルジェット装置61による冷却損失の改善を図ることができる。
次に、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、高速運転時におけるオイルジェット装置61の動作について説明する。図10に示すように、高速運転時にオイルポンプ41から供給されるオイルの油圧は中間油圧(例えば、150kPa以上〜350kPa未満)である。このため、オイル通路23A内に中間油圧(例えば、150kPa以上〜350kPa未満)のオイルが供給された場合には、弁体27が圧縮コイルバネ28の付勢力に抗して、弁座26から離れ、且つ、弁体収容部23Bの最下端位置よりも上側の位置に移動する。
その結果、弁体27の円板部27Aが弁座26から離れるため、オイル通路23Aから弁体収容部23B内に供給されたオイルは、第1連通孔29に接続された第1ノズル管部25の基端部に流入する(図6参照)。また、弁体27の突出軸部27Bの先端部は、弁体収容部23Bの最下端位置よりも上側に位置するため、オイル通路23Aから弁体収容部23B内に供給されたオイルは、第2連通孔33を介してオイル貯留部62に流入する。そして、オイル貯留部62に流入したオイルは、第3連通孔63に接続された第2接続管部65の一方端に流入して、この第2接続管部65の他方端が接続された第1ノズル管部25に流入する。
従って、図9に示すように、オイル通路23Aに中間油圧(例えば、150kPa以上〜350kPa未満)のオイルが供給された場合に、第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けて噴射されるオイル噴射流量(吐出油量)、つまり、第1ノズル管部25と第2接続管部65による「2系統オイル噴射」のオイル噴射流量(図9中、実線で示されるオイル噴射流量である。)は、従来のオイルジェット装置のノズル管部のみによる「1系統オイル噴射」のオイル噴射流量とほぼ等しい流量に設定される。
これにより、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、高速運転時に、オイルジェット装置61の第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13に向けて噴射される油温の上昇したオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)とほぼ同じ流量(吐出油量)に設定することが可能となり、ピストン13を効果的に冷却することが可能となる。
次に、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、低速運転時におけるオイルジェット装置61の動作について説明する。図10に示すように、低速運転時にオイルポンプ41から供給されるオイルの油圧は低油圧(例えば、150kPa未満)である。このため、図13に示すように、オイル通路23A内に低油圧(例えば、150kPa未満)のオイルが供給された場合には、弁体27が圧縮コイルバネ28の付勢力によって弁座26に当接され、オイル通路23Aが閉塞される。
その結果、オイル通路23Aから弁体収容部23B内にオイルが供給されないため、第1連通孔29に接続された第1ノズル管部25の基端部と、第3連通孔63に接続された第2接続管部65の一方端とが閉塞された状態となり、第1ノズル管部25と第2接続管部65が閉鎖される。つまり、第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けてオイルが噴射されない。
従って、図9に示すように、オイル通路23Aに低油圧(例えば、150kPa未満)のオイルが供給された場合に、第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けて噴射されるオイル噴射流量(吐出油量)は、「0(L/min)」である。つまり、第1ノズル管部25と第2接続管部65による「2系統オイル噴射」のオイル噴射流量(図9中、実線で示されるオイル噴射流量である。)は、従来のオイルジェット装置のノズル管部のみによる「1系統オイル噴射」のオイル噴射流量と同じ流量「0(L/min)」に設定される。
これにより、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、低速運転時に、オイルジェット装置61の第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13に向けて噴射されるオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)と同じ流量「0(L/min)」に設定することが可能となり、ピストン13の冷却を抑止することができる。その結果、ディーゼルエンジン10の温度低下を抑止して、オイルの油温低下を防止することができる。
以上詳細に説明した通り、第3実施形態に係るオイルジェット装置61では、ディーゼルエンジン10の暖機運転時に、オイルジェット装置61の第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13に向けて噴射される低温のオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)の約1/2の流量に設定することが可能となり、ピストン13の冷却を抑止して冷却損失の改善を図ることができる。
また、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、高速運転時に、オイルジェット装置61の第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13に向けて噴射される油温の上昇したオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)とほぼ同じ流量(吐出油量)に設定することが可能となり、ピストン13を効果的に冷却することが可能となる。
また、オイルジェット装置61は、本体部23のオイル通路23Aに対して軸方向反対側に、有底円筒状のオイル貯留部62を連続して形成し、このオイル貯留部62の側壁部に形成された第3連通孔63に第2接続管部65の一方端を接続し、第2接続管部65の他方端を第1ノズル管部25に接続している。これにより、第2接続管部65の一方端をオイル貯留部62の側壁部から略垂直に引き出すことができ、オイルジェット装置61の配置スペースの小型化を図ることができる。従って、オイルジェット装置61を従来のオイルジェット装置と同等のサイズで構成することが可能となり、既存のディーゼルエンジン等へ容易に置き換えることができる。
また、第1ノズル管部25の管径と同じ管径に形成された側面視略L字状の第2接続管部65の一方端を第3連通孔63に接続し、この第2接続管部65の他方端を第1ノズル管部25に接続すればよいため、部品点数の増加を抑止し、製造コストの低減化を図ることができる。また、第1ノズル管部25を介してピストン13の1個所にオイルを噴射することが可能となり、既存のディーゼルエンジンへ容易に置き換えることができる。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係るオイルジェット装置71の構成について図14に基づいて説明する。尚、図1乃至図11に示す上記第1実施形態に係るオイルジェット装置21の構成、及び、図13に示す上記第3実施形態に係るオイルジェット装置61の構成と同一符号は、上記第1実施形態に係るオイルジェット装置21の構成、及び、上記第3実施形態に係るオイルジェット装置61の構成と同一あるいは相当部分を示すものである。
この第4実施形態に係るオイルジェット装置71の構成は、第3実施形態に係るオイルジェット装置61とほぼ同じ構成である。但し、第4実施形態に係るオイルジェット装置71は、第2接続管部65に替えて、第3ノズル管部72を備えている点で異なっている。その他の点は、第3実施形態に係るオイルジェット装置61と同一であり、同一の部分についての再度の説明は省略する。
図14に示すように、オイルジェット装置71のオイル貯留部62の側壁部には、本体部23の側壁部に形成された第1連通孔29の下方(図14中、下側)の軸方向略中央位置に、第1連通孔29と同じ内径の第3連通孔63が貫通して形成されている。そして、第1ノズル管部25の管径と同じ管径に形成された第3ノズル管部72の基端部(一方端)が、第3連通孔63に接続されている。また、第3ノズル管部72は、第3連通孔63からシリンダ11内に向けて延出されて、先端部72Aがピストン13の裏側に向かって開口している。そして、オイルポンプ41から第3ノズル管部72に供給されたオイルが、ピストン13の裏側に向けて噴射される。
次に、上記のように構成されたオイルジェット装置71の動作について図9、図10、図14に基づいて説明する。先ず、ディーゼルエンジン10の暖機運転時におけるオイルジェット装置71の動作について説明する。ディーゼルエンジン10の暖機運転時には、オイルの油温が低いため、図10に示すように、暖機運転時にオイルポンプ41から供給される低温のオイルの油圧は高油圧(例えば、350kPa以上)である。このため、第1実施形態に係るオイルジェット装置21と同様に、オイル通路23A内に高油圧(例えば、350kPa以上)のオイルが供給された場合には、弁体27が圧縮コイルバネ28の付勢力に抗して、弁座26から離れ、弁体収容部23Bの最下端位置まで移動して、押し当てられる(図7参照)。
その結果、弁体27の突出軸部27Bの先端部が、第2連通孔33に当接して、この第2連通孔33が閉塞されるため、オイル貯留部62へのオイルの供給が停止される。このため、第3連通孔63に基端部(一方端)が接続された第3ノズル管部72へのオイルの供給が停止される。一方、弁体27が弁座26から離れるため、オイル通路23Aから弁体収容部23B内に供給されたオイルは、第1連通孔29に接続された第1ノズル管部25の基端部に流入する。そして、第1ノズル管部25に流入した高油圧のオイルは、第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けて噴射される。
従って、オイル通路23Aに高油圧(例えば、350kPa以上)のオイルが供給された場合には、第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けて噴射されるオイル噴射流量(吐出油量)、つまり、第1ノズル管部25と第3ノズル管部72による「2系統オイル噴射」のオイル噴射流量(図9中、実線で示されるオイル噴射流量である。)は、従来のオイルジェット装置の1個のノズル管部のみによる「1系統オイル噴射」のオイル噴射流量(図9中、破線で示されるオイル噴射流量である。)の約1/2の流量に設定される。
これにより、ディーゼルエンジン10の暖機運転時に、オイルジェット装置71からピストン13の裏面に向けて噴射される低温のオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)の約1/2の流量に設定することが可能となり、ピストン13の冷却を抑止して冷却損失の改善を図ることができる。その結果、ディーゼルエンジン10の温度上昇が従来よりも早くなると共に、オイルの油温上昇も従来より早くなり、暖機運転時におけるオイルジェット装置71による冷却損失の改善を図ることができる。
次に、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、高速運転時におけるオイルジェット装置71の動作について説明する。図10に示すように、高速運転時にオイルポンプ41から供給されるオイルの油圧は中間油圧(例えば、150kPa以上〜350kPa未満)である。このため、オイル通路23A内に中間油圧(例えば、150kPa以上〜350kPa未満)のオイルが供給された場合には、弁体27が圧縮コイルバネ28の付勢力に抗して、弁座26から離れ、且つ、弁体収容部23Bの最下端位置よりも上側の位置に移動する。
その結果、弁体27の円板部27Aが弁座26から離れるため、オイル通路23Aから弁体収容部23B内に供給されたオイルは、第1連通孔29に接続された第1ノズル管部25の基端部に流入する(図6参照)。そして、第1ノズル管部25に流入した中間油圧のオイルは、第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13の裏側に向けて噴射される。
また、弁体27の突出軸部27Bの先端部は、弁体収容部23Bの最下端位置よりも上側に位置するため、オイル通路23Aから弁体収容部23B内に供給されたオイルは、第2連通孔33を介してオイル貯留部62に流入する。そして、オイル貯留部62に流入したオイルは、第3連通孔63に接続された第3ノズル管部72の基端部に流入する。そして、第3ノズル管部72に流入した中間油圧のオイルは、第3ノズル管部72の先端部72Aからピストン13の裏側に向けて噴射される。
従って、図9に示すように、オイル通路23Aに中間油圧(例えば、150kPa以上〜350kPa未満)のオイルが供給された場合に、第1ノズル管部25と第3ノズル管部72とからピストン13の裏側に向けて噴射されるオイル噴射流量(吐出油量)、つまり、第1ノズル管部25と第3ノズル管部72による「2系統オイル噴射」のオイル噴射流量(図9中、実線で示されるオイル噴射流量である。)は、従来のオイルジェット装置の1個のノズル管部のみによる「1系統オイル噴射」のオイル噴射流量とほぼ等しい流量に設定される。
これにより、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、高速運転時に、オイルジェット装置71の第1ノズル管部25の先端部25Aと、第3ノズル管部72の先端部72Aとからピストン13の裏面に向けて噴射される油温の上昇したオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)とほぼ同じ流量(吐出油量)に設定することが可能となり、ピストン13を効果的に冷却することが可能となる。
次に、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、低速運転時におけるオイルジェット装置71の動作について説明する。図10に示すように、低速運転時にオイルポンプ41から供給されるオイルの油圧は低油圧(例えば、150kPa未満)である。このため、図14に示すように、オイル通路23A内に低油圧(例えば、150kPa未満)のオイルが供給された場合には、弁体27が圧縮コイルバネ28の付勢力によって弁座26に当接され、オイル通路23Aが閉塞される。
その結果、オイル通路23Aから弁体収容部23B内にオイルが供給されないため、第1連通孔29に接続された第1ノズル管部25の基端部と、第3連通孔63に接続された第3ノズル管部72の基端部とが閉塞された状態となり、第1ノズル管部25と第3ノズル管部72が閉鎖される。つまり、第1ノズル管部25の先端部25Aと、第3ノズル管部72の先端部72Aとからピストン13の裏側に向けてオイルが噴射されない。
従って、図9に示すように、オイル通路23Aに低油圧(例えば、150kPa未満)のオイルが供給された場合に、第1ノズル管部25の先端部25Aと、第3ノズル管部72の先端部72Aとからピストン13の裏側に向けて噴射されるオイル噴射流量(吐出油量)は、「0(L/min)」である。つまり、第1ノズル管部25と第3ノズル管部72による「2系統オイル噴射」のオイル噴射流量(図9中、実線で示されるオイル噴射流量である。)は、従来のオイルジェット装置の1個のノズル管部のみによる「1系統オイル噴射」のオイル噴射流量と同じ流量「0(L/min)」に設定される。
これにより、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、低速運転時に、オイルジェット装置71の第1ノズル管部25の先端部25Aと、第3ノズル管部72の先端部72Aとからピストン13に向けて噴射されるオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)と同じ流量「0(L/min)」に設定することが可能となり、ピストン13の冷却を抑止することができる。その結果、ディーゼルエンジン10の温度低下を抑止して、オイルの油温低下を防止することができる。
以上詳細に説明した通り、第4実施形態に係るオイルジェット装置71では、ディーゼルエンジン10の暖機運転時に、オイルジェット装置71の第1ノズル管部25の先端部25Aからピストン13に向けて噴射される低温のオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)の約1/2の流量に設定することが可能となり、ピストン13の冷却を抑止して冷却損失の改善を図ることができる。
また、ディーゼルエンジン10の暖機運転後、高速運転時に、オイルジェット装置71の第1ノズル管部25の先端部25Aと、第3ノズル管部72の先端部72Aとからピストン13に向けて噴射される油温の上昇したオイルのオイル噴射流量(吐出油量)を、従来のオイルジェット装置のオイル噴射流量(吐出油量)とほぼ同じ流量(吐出油量)に設定することが可能となり、ピストン13を効果的に冷却することが可能となる。
また、オイルジェット装置71は、本体部23のオイル通路23Aに対して軸方向反対側に、有底円筒状のオイル貯留部62を連続して形成し、このオイル貯留部62の側壁部に形成された第3連通孔63に第3ノズル管部72の基端部(一方端)が接続されている。第3ノズル管部72は、第3連通孔63からシリンダ11内に向けて延出されて、先端部72Aがピストン13の裏側に向かって開口している。
これにより、第3ノズル管部72の基端部(一方端)をオイル貯留部62の側壁部から略垂直に引き出すことができ、オイルジェット装置71の配置スペースの小型化を図ることができる。従って、オイルジェット装置71を従来のオイルジェット装置と同等のサイズで構成することが可能となり、既存のディーゼルエンジン等へ容易に置き換えることができる。
また、第1ノズル管部25の管径と同じ管径に形成された第3ノズル管部72の基端部(一方端)を第3連通孔63に接続し、この第3ノズル管部72の他方端に形成された先端部72Aをピストン13の裏面に向けて配置すればよいため、部品点数の増加を抑止し、製造コストの低減化を図ることができる。尚、第3ノズル管部72の先端部72Aは、第1ノズル管部25の先端部25Aと異なる特定箇所に向かうように適宜設定されていてもよい。これにより、例えば、ピストン13及びコンロッド14を冷却することが可能となり、ガソリンエンジン等へ容易に置き換えることが可能となる。
本発明のオイルジェット装置は、前記第1実施形態乃至第4実施形態で説明した構成、構造、外観、形状、処理手順等に限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変更、改良、追加、削除が可能である。尚、以下の説明において上記図1〜図14の前記第1実施形態乃至第4実施形態に係る各オイルジェット装置21、51、61、71の構成等と同一符号は、前記第1実施形態乃至第4実施形態に係る各オイルジェット装置21、51、61、71の構成等と同一あるいは相当部分を示すものである。
例えば、各オイルジェット装置21、51の本体部23、及び、各オイルジェット装置61、71の本体部23及びオイル貯留部62は、有底円筒状に限らず、有底四角筒状等、断面多角形状の有底筒状に構成してもよい。これにより、ディーゼルエンジン10等の内燃機関に容易に配置することが可能となる。