JP2019127475A - 口腔内殺菌剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】口腔内の歯周病原菌等の殺菌剤として、殺菌力に優れているだけでなく、口腔内の粘膜組織にダメージを与えることがなく、生体への金属アレルギー反応を惹き起こすことがない、安全性に優れた洗口剤や歯磨剤や歯周病殺菌剤等として用いられる口腔内殺菌剤の提供。【解決手段】主成分として、(A)5.0〜500ppmの亜鉛イオン、(B)1.0〜300ppmの銅イオン及び/又は1.0〜300ppmの鉄イオンを含む水、を含む口腔内殺菌剤。さらに0.01〜2.0%のカルシウムイオンが含まれることが好ましい、口腔内殺菌剤。洗口剤又は歯磨剤として用いられる口腔内殺菌剤。【選択図】なし
Description
本発明は、例えば口腔内の齲蝕菌や歯周病原菌などを殺菌し、歯周病の予防や治療に有効で安全性に優れた口腔内殺菌剤に関し、更に詳しくは、歯周病原菌を殺菌し、しかも口腔内の粘膜組織へのダメージがない殺菌性洗口剤や殺菌性歯磨剤や歯周病殺菌剤等として使用されることを特徴とする口腔内殺菌剤に関する。
歯周病は歯周病原菌Porphyromonas gingivalisやAggregatibacter actinomycetemcomitansが原因とされる。成人の歯周病罹患率は約80%以上と非常に高い。一方、胃潰瘍や胃がんは、その原因菌ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori:ピロリ菌と略す)の殺菌により劇的に治癒又は予防されることが臨床的にほぼ確立されている。しかしながら、同じ消化器系の粘膜でなる口腔内に巣食う歯周病原菌に対して、ピロリ菌殺菌剤の様な特効薬がないのが実情である。更に、歯周病は呼吸器系疾患、心疾患、脳梗塞、あるいは糖尿病などの全身疾患との深刻で深い関わりが指摘されており、今や歯周病は医療分野全体で解決すべき重大な課題となっている。
ところが、2005年、歯周病原菌の殺菌剤として、次亜塩素酸電解水のパーフェクトペリオ(登録商標、以下同様)が上市され、日本歯周病学会やマスコミなどで注目された。非特許文献1には、次亜塩素酸電解水のパーフェクトペリオは、10秒間うがいすることにより、口腔内の虫歯菌や歯周病原菌を破裂させて溶かす(溶菌)効果があると報告されている。しかしながら、非特許文献2には、「日本歯周病学会の見解」として、次亜塩素酸電解水「パーフェクトペリオ」は次亜塩素酸(HClO)を主体とし、高い有効塩素濃度(600ppm)を作用させると細菌を破裂させて溶かす(溶菌)効果があるが、次亜塩素酸は同時に口腔内の粘膜などの生体への安全性が課題であり、毒性試験や臨床試験が不十分と懸念を表明している。
また、特許文献1には、L−システィン、L-アスコルビン酸及び抗菌作用を有する金属イオンである3価の鉄イオン(Fe3+)、2価の鉄イオン(Fe2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、銅イオン(Cu2+)、コバルトイオン(Co2+)、ニッケルイオン(Ni2+)又は銀イオン(Ag+)が主成分であり、非イオン系を除く界面活性剤を含む組成液を万能殺菌消毒液として提案し、本液でのうがいを長期にわたって続ける内に慢性化していた歯周炎や歯周病が軽減又は完治したという報告がある。
更に、特許文献1の消毒液を改良した特許文献2には、持続性口腔用殺菌消毒液が開示されている。すなわち、L−システィン、L-アスコルビン酸、抗菌作用を有する金属イオン(上記の金属イオン)、非イオン系を除く界面活性剤、増粘剤及び収斂剤を含有する。金属イオンとしては、コバルトイオン、ニッケルイオンなどが用いられている。しかしながら、特許文献1及び2に例示された金属イオンの内、コバルトイオンおよびニッケルイオンは金属アレルギーを惹起する可能性が高く、口腔内などの生体接触部位での使用は避けたい。
以上のように、特許文献1及び2の提案では、主成分としてL−システィン、L-アスコルビン酸と共に含有する金属イオンの単なる全般的な例示列挙はあるが、これらの金属の殺菌メカニズム及び相乗効果、金属アレルギーへの個々の特徴などの詳細な検討もなく、すなわちL−システィン、L-アスコルビン酸と共に含有される当該金属イオンなどが全く特定されていないため何が有効なのか明確でない。そのため、口腔内で使用するにあたり、その要件として殺菌性と生体安全性への関係が不十分であり、金属アレルギーを排除し、金属イオンの選定やさらにそれらの濃度についてさらなる検討が必要である。
また、非特許文献3には、銅金属から銅イオン水を作る「銅しましょ」(有限会社エルアンドアール製)について記載されている。そして、銅イオン水には抗菌作用と殺菌作用があり、「歯磨き粉の代わりに銅イオン水を歯ブラシにつけると歯槽膿漏に効果あり。」との記載が認められる。しかし、銅イオンのみのイオン水を洗口剤や歯周病殺菌剤として口腔内に使用した場合、銅イオン濃度が高い場合、殺菌作用では優れた効果を示すものの、うがいの時の感触で粘膜への違和感とえぐみがあるなど、口腔内の生体組織の安全性に不安と懸念があった。
更に、特許文献3には、抗菌性金属イオンを担持させた無機物系担体又は有機物系担体を水道水やミネラルウォーター等の原水に溜水接触させて、イオン濃度を高めて得られたイオン水の抗菌、殺菌作用などで口腔内の虫歯、歯周病、胃腸炎などの予防又は改善や治療することを特徴とした「口腔洗滌イオン水」が開示されている。
しかし、この場合、特許文献4に示された、従来、純銅製容器による銅イオン水で口をすすぐ口腔洗浄イオン水は、水へのイオン移行は少なくとも24時間水と接触させておく必要があるという欠点があったため、特許文献3の技術では銅を担持させた無機物系担体を水道水の原水に溜水接触させると8時間以下(従来の3分の1の時間)で殺菌性のあるイオン水になるとしている。
これはすなわち、特許文献3は、従来から公知の抗菌性金属イオン(亜鉛イオン、銀イオン、銅イオン)を担持させた無機物系担体を水道水の原水に溜水接触させてなる、従来技術に比べて時間短縮となる口腔洗滌イオン水を発明の主訴としており、単なる抗菌性金属イオン水の製造方法にすぎない。
更に、特許文献3では、数値などを含む具体的な実施例によって発明を演繹的に実証しようという作業が一切ない。また、非常に重要なことであるが、口腔内における殺菌効果がある金属イオン、口腔内の粘膜などへの安全性については全く言及がなされていない。すなわち、これら金属イオンの口腔内の歯周病原菌などの殺菌作用、及びそれらイオンの相乗効果、またこれら金属イオン濃度が高い場合は口腔内粘膜への刺激やえぐみがあり、生体安全性に問題が発生するが、これらの観点からの生体安全性におけるより適切なる濃度範囲の精査は全くなされていない。
このように、実際に歯周病殺菌剤を口腔内に使用するにあたり、歯周病原菌の殺菌効果に加えて、口腔粘膜への刺激がなく、金属アレルギー反応を惹き起こさず、生体に安全であることが非常に重要である。しかして、これら従来の技術においては、生体安全性に関する十分なる精査が為されていない。
次亜塩素酸電解水パーフェクトペリオ殺菌水治療について、 http://amanodental.com/perfect-perio.htm
「パーフェクトペリオ」について日本歯周病学会の見解、 http://www.perio.jp/file/about_perfect_perio.pdf
株式会社ロングリーチの製品「銅しましょ」の「お客様の声」http://www.l-r.co.jp/cgi-bin/tesuto/sitemaker.cgi?mode=page&page=page2&category=4
「亜鉛イオンとカルシウムイオンの動態分析からみた脳機能解析」(ぶんせき(第10巻)、451〜454頁、2016年)
従来、市販の口腔内殺菌剤(パーフェクトペリオの場合)について、非特許文献2で「日本歯周病学会の見解」として指摘したのは、口腔内粘膜などの生体安全性についてである。すなわち、高い有効塩素濃度(600ppm)で細菌を破裂させて溶かす溶菌効果が報告されているが、細菌を溶解する次亜塩素酸は同時に口腔内の粘膜などの生体への安全性が課題と考えられている。
すなわち、本発明は、上記の「日本歯周病学会の見解」を十分検討して、口腔内の歯周病原菌等の殺菌剤として、「高い殺菌力と優れた生体安全性」を本発明の主訴として、上記課題を解決するためになされたもので、殺菌力に優れているだけでなく、口腔内の粘膜組織にダメージを与えることがなく、生体への金属アレルギー反応を惹き起こすことがない、安全性に優れた口腔内殺菌剤を提供することを目的としている。
本発明者は、口腔内殺菌剤について、殺菌力が高く生体安全性の高い金属イオンを精査した結果、特定の金属イオンを主成分として含むことにより、さらには特定の濃度範囲に設定することによる水を含む口腔内殺菌剤が、歯周病原菌を殺菌するとともに口腔内の粘膜組織にダメージを与えることなく、また生体へのアレルギー反応を惹起させないという優れた効果が得られるという知見を得て本発明に到達した。本発明の殺菌性洗口剤や殺菌性歯磨剤や歯周病殺菌剤によって、歯周病を完治もしくは予防することが可能となり、歯周病原菌由来の心筋梗塞や心臓疾患及び脳梗塞などが将来的に激減することにもなり、健康寿命の向上に大きく貢献できる。
即ち、本発明は上記知見に基づいてなされた以下の発明である。
1.主成分として、
(A)亜鉛イオン、
(B)銅イオン及び/又は鉄イオン
を含む水、を含むことを特徴とする口腔内殺菌剤。
2.前記水にさらにカルシウムイオンが含まれることを特徴とする上記1.に記載の口腔内殺菌剤。
3.亜鉛イオンの濃度が5.0〜500ppm、銅イオンの濃度が1.0〜300ppm及び/又は鉄イオンの濃度が1.0〜300ppmであることを特徴とする上記1.に記載の口腔内殺菌剤。
4.亜鉛イオンの濃度が5.0〜500ppm、銅イオンの濃度が1.0〜300ppm及び/又は鉄イオンの濃度が1.0〜300ppm、カルシウムイオンの濃度が0.01〜2.0%であることを特徴とする上記2.に記載の口腔内殺菌剤。
5.洗口剤として用いられることを特徴とする上記1.ないし4.に記載の口腔内殺菌剤。
6.歯磨剤として用いられることを特徴とする上記1.ないし4.に記載の口腔内殺菌剤。
7.前記歯磨剤が液体歯磨剤、ゲル状歯磨剤及び練歯磨剤から選択されるいずれか一つの歯磨剤であることを特徴とする上記6.に記載の口腔内殺菌剤。
8.歯周病殺菌剤として用いられることを特徴とする上記1.ないし4.に記載の口腔内殺菌剤。
1.主成分として、
(A)亜鉛イオン、
(B)銅イオン及び/又は鉄イオン
を含む水、を含むことを特徴とする口腔内殺菌剤。
2.前記水にさらにカルシウムイオンが含まれることを特徴とする上記1.に記載の口腔内殺菌剤。
3.亜鉛イオンの濃度が5.0〜500ppm、銅イオンの濃度が1.0〜300ppm及び/又は鉄イオンの濃度が1.0〜300ppmであることを特徴とする上記1.に記載の口腔内殺菌剤。
4.亜鉛イオンの濃度が5.0〜500ppm、銅イオンの濃度が1.0〜300ppm及び/又は鉄イオンの濃度が1.0〜300ppm、カルシウムイオンの濃度が0.01〜2.0%であることを特徴とする上記2.に記載の口腔内殺菌剤。
5.洗口剤として用いられることを特徴とする上記1.ないし4.に記載の口腔内殺菌剤。
6.歯磨剤として用いられることを特徴とする上記1.ないし4.に記載の口腔内殺菌剤。
7.前記歯磨剤が液体歯磨剤、ゲル状歯磨剤及び練歯磨剤から選択されるいずれか一つの歯磨剤であることを特徴とする上記6.に記載の口腔内殺菌剤。
8.歯周病殺菌剤として用いられることを特徴とする上記1.ないし4.に記載の口腔内殺菌剤。
而して、本発明の口腔内殺菌剤の要件として、本発明の主訴である「高い殺菌力と優れた生体安全性」を満たすため、本発明の構成が非常に重要となる。すなわち、本発明の口腔内殺菌剤は、含まれる水に主成分として亜鉛イオン、及び銅イオン及び/又は鉄イオンを含む構成、更に当該水にカルシウムイオンが含まれる構成、当該水にこれらイオンを特定の濃度で含むことを特徴としているが、このような口腔内殺菌剤は全く開示されていない。
従来から、亜鉛イオン水(特許文献3に記載)や銅イオン水(非特許文献3に記載)の製造法など、抗菌性金属の金属イオン水を製造する方法は種々知られている。しかしながら、口腔内殺菌剤としては、特定の金属イオンの組み合わせ、さらにはその濃度範囲が重要であり、また口腔内殺菌剤では、非特許文献2の「日本歯周病学会の見解」で指摘されたように、殺菌力だけでなく口腔内粘膜などの生体安全性が重要である。従って、本発明は、「高い殺菌力と優れた生体安全性」を主訴として、各発明構成による特定の抗菌性金属、さらにはそれらの濃度範囲を追求した。
口腔内に生息する歯周病原菌は800種類とされているが、Porphyromonas gingivalisやAggregatibacter actinomycetemcomitansはその代表的存在とされている。殺菌のメカニズムについて、銅イオン(Cu2+)が細胞内のATPの産生回路を阻害することにより、細胞の生命活動(代謝)をかく乱して死滅させると考えられる。本発明では、亜鉛イオン(Zn2+)、銅イオン(Cu2+)及び/又は鉄イオン(Fe2+)の金属イオンが本来持つ殺菌メカニズムが相乗的に作用してさらに殺菌力を増すと考えられる。すなわち、主成分として(A)亜鉛イオン(Zn2+)、(B)銅イオン(Cu2+)及び/又は鉄イオン(Fe2+)を含む水の場合、更にこれにカルシウムイオンを加えた場合、これらを成分とする水を含む本発明の口腔内殺菌剤は、上記金属イオンそれぞれの異なる殺菌メカニズムで殺菌効果が相乗的に作用してさらに幅広く殺菌力を増すと考えられる。また、本発明の主訴である「高い殺菌力と優れた生体安全性」を追求した口腔内殺菌剤における亜鉛イオン(Zn2+)は、銅イオン(Cu2+)や鉄イオン(Fe2+)と相俟って生体への負荷が少なく歯周病原菌等の細菌を効率よく殺菌することができる。更に、これら金属の特定の濃度により、さらに本発明の主訴を達成することができる。一方、これら亜鉛イオン(Zn2+)、銅イオン(Cu2+)、鉄イオン(Fe2+)、カルシウムイオン(Ca2+)は、金属アレルギー原因金属でもなく、本発明の規定する特定な濃度において、口腔内の粘膜組織を刺激しないし、生体に安全である。
本発明の口腔内殺菌剤の亜鉛イオン(Zn2+)は、人間の生命維持に必要不可欠なミネラルである。更に、成人の亜鉛の含有量は約2.3gであり、極めて多数のタンパク質との相互作用を介して生体機能に関与し、生体ホメオスタシスは健康を維持する上で不可欠である。
本発明の口腔内殺菌剤の亜鉛イオンは、水に亜鉛化合物を溶解して得られる。生体に安全な亜鉛化合物であれば全て使用できる。例えば、酸化亜鉛(ZnO)は、毒性がないことと,硫化水素で黒変しない等の特徴から,白色顔料として使用された。水酸化亜鉛Zn(OH) 2も両性化合物で酸や塩基と反応する。塩化亜鉛ZnCl2(融点283℃,沸点732℃)は潮解性の無色粉末結晶で,歯科用セメントはZnCl2の濃溶液にZnOを加えて作り,充填用としている。これは,ZnCl2+ZnO+H2O ―→ 2ZnCl(OH)の反応により、塩基性塩化亜鉛ZnCl(OH)が生じて硬化する性質を利用したものである。硫酸亜鉛ZnSO4は無色の結晶で,水溶液は加水分解して酸性を示す。これらの化合物の中で塩化亜鉛及び硫酸亜鉛が特に好ましい。更に、例えば特許文献3(特許第5102749号公報)によれば、亜鉛イオンを担持させたアパタイト担持材(株式会社サンギ製「アパサイダー(登録商標)Z」)を、水に溜水接触させることにより、水中に亜鉛イオンを放出することで亜鉛イオン水を製造できるとしている。
主成分として、(A)亜鉛イオン、(B)銅イオン及び/又は鉄イオンを含む水を含むことを特徴とする口腔内殺菌剤でなる本発明構成において、更に本発明の主成分の各金属イオンにカルシウムイオン(Ca2+)を加えて含む水を含むことを特徴とする口腔内殺菌剤でなる発明構成において、本発明の亜鉛イオンの濃度は5.0〜500ppmが好ましく、10〜350ppmがより好ましく、30〜150ppmが更に好ましい。
本発明の銅イオン(Cu2+)は、体のミネラル成分を構成する金属イオンであり、体内での生体アレルギーを惹き起こすことがなく、体に優しく、安全性に優れている。本発明の銅イオンは、例えば、硫酸銅・5水和物、銅線を水中に浸漬し、銅線に通電することによって得ることができる。銅イオン造水機として例えば非特許文献3に記載の「銅しましょ」(株式会社ロングリーチ製)を用いることができる。
主成分として、(A)亜鉛イオン、(B)銅イオン及び/又は鉄イオンを含む水、を含むことを特徴とする口腔内殺菌剤でなる発明構成において、更に本発明の主成分の各金属イオンにカルシウムイオンを加えて含む水、を含むことを特徴とする口腔内殺菌剤でなる発明構成において、本発明の銅イオン(Cu2+)の濃度は、1.0〜300ppmが好ましく、30〜200ppmがより好ましく、50〜150ppmが更に好ましい。銅イオン濃度が高い場合は、青い藻状物質が沈降するが、本発明の主訴の特別な妨げにはならない。また、カルシウムイオンの共存で収斂効果が得られる。
本発明の鉄イオンは、体のミネラル成分を構成する金属イオンであり、体に優しく、安全性に優れている。鉄イオンは、2価の鉄イオン(Fe2+)及び3価の鉄イオン(Fe3+)を採用しうるが、本発明では2価の鉄イオン(Fe2+)がより好ましく、例えば、塩化第二鉄、塩化第二鉄四水和物、塩化第二鉄六水和物、硫酸鉄(2価)七水和物、硝酸第二鉄六水和物、硝酸第二鉄九水和物、リン酸第二鉄n水和物、クエン酸第二鉄三水和物を用いることができる。特に、クエン酸第二鉄三水和物は高リン血症治療薬として、慢性腎臓病患者における高リン血症の改善の効能が知られている。更に、例えば鉄釘や鉄線を精製水に浸して放置すること等によって得られる。
主成分として、(A)亜鉛イオン、(B)銅イオン及び/又は鉄イオンを含む水、を含むことを特徴とする口腔内殺菌剤の発明構成において、これらのイオンに加えて、カルシウムイオンを含む水を含むことを特徴とする口腔内殺菌剤でなる発明構成において、鉄イオン濃度がより高い場合は、褐色液体になるが、特定した濃度範囲では、本発明の主訴の特別な妨げになっていない。また、カルシウムイオンの共存で収斂効果が得られる。すなわち、本発明の鉄イオン(Fe2+)の濃度は、1.0〜300ppmが好ましく、30〜200ppmがより好ましく、50〜150ppmが更に好ましい。鉄イオンの濃度は1.0ppm未満では殺菌力が低下し、逆に300ppmを超えると、えぐみが強く出てしまうおそれがある。
本発明の口腔内殺菌剤に用いられるカルシウムイオン(Ca2+)は、ヒトを含む動物の代表的なミネラル(必須元素)成分である。カルシウムイオンは、水溶性カルシウムを用いることが好ましい。水溶性カルシウムは、水に混ぜるとイオン化し、水と一緒に体に染み渡るため、吸収率が高くなる。水溶性カルシウムは、自律神経を正常に維持すること、及び骨を強化することによる骨粗鬆症の予防効果があるとされている。更に、成人のカルシウムと亜鉛の含有量はそれぞれ約1kgと約2.3gである。カルシウムと亜鉛は極めて多数のタンパク質との相互作用を介して生体機能に関与し、両金属のホメオスタシスは健康を維持する上で不可欠である(非特許文献4、武田厚志「亜鉛イオンとカルシウムイオンの動態分析からみた脳機能解析」(ぶんせき(第10巻)、451−454頁、2016年))。
本発明に用いられるカルシウムイオン(Ca2+)は上記特性を損なわないカルシウム塩を広く採用しうるが、例えば、当該カルシウム塩が乳酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、アスパラギン酸カルシウムが特に好ましい。これらのカルシウム塩から生成されるカルシウムイオン(Ca2+)は、ヒトを含む動物の代表的なミネラル(必須元素)成分である。特に、乳酸カルシウムは、低カルシウム血症や骨粗鬆症の治療のカルシウム補給などに使用される。更に例えば、亜鉛イオンと銅イオンにカルシウムイオンを加えて洗口剤や液体歯磨剤として用いると、カルシウムイオンは亜鉛イオンと銅イオンとの相乗効果により洗口剤や液体歯磨剤に収斂効果を付与し、口当たりも滑らかとなり、口腔内使用に適した一層効果的なものになる。
上記本発明に用いられるカルシウムイオンの濃度は、0.01〜2.0%が好ましく、0.05〜1.5%がより好ましく、0.1〜1.0%が更に好ましい。カルシウムイオンの濃度は、0.01%未満では液の収斂効果が悪くなる。しかし、2.0%を超えると、液の状態が白色のヨーグルト状になる虞がある。
上記これらイオンを含ませる本発明に用いられる水は、医療用に許容できる水であれば特に制限されるものではなく、例えば精製水、純水、蒸留水、イオン交換水、市販品のミネラルウォーター、水道水などを用いることができるが、精製水、蒸留水やイオン交換水が特に好ましい。
本発明の口腔内殺菌剤は、上述の主成分として亜鉛イオン、及び銅イオン及び/又は鉄イオンを含んだ水を含んでいることで所望の効果を発揮する。当該水が更にカルシウムイオンを含むことを特徴とする口腔内殺菌剤においては、亜鉛は口腔内の歯垢を減らす効果があり、銅イオン及び/又は鉄イオン、カルシウムイオンを歯肉に浸透させて定着させて殺菌作用を持続させることができる。更に、本発明の効果を阻害しない範囲で、従来公知の添加剤、例えば増粘剤、収斂剤、研磨剤、粘稠剤、界面活性剤、粘結剤、湿潤剤、香料、甘味料、殺菌剤、防腐剤、水溶性フッ化物、pH調整剤、各種薬効成分、着色剤等の化合物や材料を必要・用途に応じて本発明の口腔内殺菌剤に一種類以上適宜・適量を配合できる。
例えば、WO2015/060426 A1及び特開2004−122号公報等に記載されている化合物や材料を、任意に選択して使用できる。本発明の口腔内殺菌剤の用途の一つは歯磨剤であり、歯磨剤としては、液体歯磨剤、ゲル状歯磨き、ゼリー状歯磨き、練歯磨き、潤製歯磨剤等の歯磨剤を挙げることができる。歯磨剤として用いる場合、剤型に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、当該水に加えて、従来公知の添加剤、例えば上述の増粘剤及び収斂剤の他、研磨剤、粘稠剤、界面活性剤、粘結剤、湿潤剤、香料、甘味料、殺菌剤、防腐剤、水溶性フッ化物、pH調整剤、各種薬効成分等を必要に応じて適宜配合できる。以下に上記公報に記載の任意成分の化合物や材料の具体例を示すが、本発明の殺菌剤に配合可能な任意成分は、何らこれらに限定されるものではない。
このような化合物や材料は、例えば、ポリエチレングリコール等のグリコール類、メチルセルロース等のセルロース類、ビタミンB1やビタミンC等のビタミン類、硝酸カリウム等のカリウム類、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム等のナトリウム類、無水ケイ酸、シリカ系物質、アニオン界面活性剤(アルキル硫酸塩等)、ノニオン界面活性剤(脂肪酸エステル等)、キシリトール類、天然香料、合成香料、調合香料、コーンスターチ、ソルビン酸塩等を任意に選択して配合できる。
本発明の口腔内殺菌剤は、殺菌性の機能を有することを特徴としている。亜鉛イオンを必須とし、更に銅イオン、鉄イオンから選ばれる1つ以上のイオン、またこれらにカルシウムイオンを加えて成ることにより、その特徴から殺菌性の洗口剤、上記歯磨剤特に液体歯磨剤、歯周病殺菌剤等として用いられることが可能となる。
本発明は、主訴として「高い殺菌力と優れた生体安全性」の口腔内殺菌剤を追求した。すなわち、本発明によれば、特定の金属イオンの組み合わせ、更にはこれらの特定の濃度構成により、口腔内の歯周病原菌等を強力に殺菌し、口腔内でえぐみなどの違和感がなく、口腔内の粘膜組織へのダメージをなくすことができ、しかも生体にアレルギー反応を惹き起こす虞がなく安全性に優れた口腔内殺菌剤を提供することができる。これにより、歯科臨床の課題である歯周病の予防や治癒、及び歯周病原菌と大きく関わっているとされる心筋梗塞や脳梗塞や糖尿病などの病気の予防が可能となり、健康寿命の向上と医療費の軽減に貢献することができる。
本発明の口腔内殺菌剤は、その発明構成を実施するための形態として、以下殺菌性の洗口剤、歯磨剤及び歯周病殺菌剤を例に挙げて説明する。尚、本発明は本実施形態に何ら限定されるものではないことは云うまでもない。
製造例1
本発明の実施例に使用する亜鉛イオン水A〜Cの製造例を示す。硫酸亜鉛七水和物(ZnSO4・7H2O、分子量287.56)0.784gを精密に計量し、精製水1Lに溶解して、亜鉛イオン水A(178ppm)を調製した。これはすなわち、硫酸亜鉛七水和物(分子量287.56) 0.784g/L中の亜鉛(分子量65.4)は0.178g/Lとなり、これは0.0178%であるため178ppmの亜鉛イオン水となる。また、塩化亜鉛(ZnCl2、分子量136.32)0.647gを精密に計量し、精製水1Lに溶解して、亜鉛イオン水B(310ppm)を調製した。これはすなわち、塩化亜鉛(ZnCl2、分子量136.32)0.647g/L中の亜鉛(分子量65.4)は0.310g/Lとなり、これは0.0310%であるため亜鉛イオン濃度は310ppmとなる。更に、塩化亜鉛1.15gを精密に計量し、精製水1Lに溶解して、亜鉛イオン水C(551ppm)を調製した。これも上記と同様に塩化亜鉛1.15g/Lが亜鉛イオンとして0.0551%であるため亜鉛イオン濃度は551ppmとなる。
本発明の実施例に使用する亜鉛イオン水A〜Cの製造例を示す。硫酸亜鉛七水和物(ZnSO4・7H2O、分子量287.56)0.784gを精密に計量し、精製水1Lに溶解して、亜鉛イオン水A(178ppm)を調製した。これはすなわち、硫酸亜鉛七水和物(分子量287.56) 0.784g/L中の亜鉛(分子量65.4)は0.178g/Lとなり、これは0.0178%であるため178ppmの亜鉛イオン水となる。また、塩化亜鉛(ZnCl2、分子量136.32)0.647gを精密に計量し、精製水1Lに溶解して、亜鉛イオン水B(310ppm)を調製した。これはすなわち、塩化亜鉛(ZnCl2、分子量136.32)0.647g/L中の亜鉛(分子量65.4)は0.310g/Lとなり、これは0.0310%であるため亜鉛イオン濃度は310ppmとなる。更に、塩化亜鉛1.15gを精密に計量し、精製水1Lに溶解して、亜鉛イオン水C(551ppm)を調製した。これも上記と同様に塩化亜鉛1.15g/Lが亜鉛イオンとして0.0551%であるため亜鉛イオン濃度は551ppmとなる。
製造例2
本発明の実施例に使用する銅イオン水A〜Cの製造例を示す。市販の「銅しましょ」(株式会社ロングリーチ製)を用いて、「銅しましょ」の処方に従い、銅線の先端部を精製水中に入れる。次いで、当該水中の銅線に通電することにより水中の銅線の先端部から銅イオンが微量に溶出した。1Lの精製水中の銅線に1分通電すると3.5ppmの銅イオン水が得られる。そこで、40分通電で銅イオン水A(140ppm)、60分通電で銅イオン水B(210ppm)及び90分通電で銅イオン水C(315ppm)の各1Lを調製した。
本発明の実施例に使用する銅イオン水A〜Cの製造例を示す。市販の「銅しましょ」(株式会社ロングリーチ製)を用いて、「銅しましょ」の処方に従い、銅線の先端部を精製水中に入れる。次いで、当該水中の銅線に通電することにより水中の銅線の先端部から銅イオンが微量に溶出した。1Lの精製水中の銅線に1分通電すると3.5ppmの銅イオン水が得られる。そこで、40分通電で銅イオン水A(140ppm)、60分通電で銅イオン水B(210ppm)及び90分通電で銅イオン水C(315ppm)の各1Lを調製した。
実施例1〜7
ここで、これら亜鉛イオン水A〜Cと上記記載の銅イオン水A〜Cを、本発明の規定する濃度範囲で、無作為の組み合わせで混合して洗口剤A〜Hを調製した。
すなわち、実施例1として、亜鉛イオン水C(551ppm)/銅イオン水C(315ppm)を90.6/9.4で正確に混合・溶解して、洗口剤A(亜鉛イオン499.2ppm、銅イオン29.6ppm)を調製した。また、実施例2として、亜鉛イオン水A(178ppm)/銅イオン水A(140ppm)を2.81/97.19で正確に混合・溶解して、洗口剤B(亜鉛イオン5.0ppm、銅イオン136.1ppm)を調製した。また、実施例3として、亜鉛イオン水B(310ppm)/銅イオン水C(315ppm)を5/95で正確に混合・溶解して、洗口剤C(亜鉛イオン15.5ppm、銅イオン299.3ppm)を調製した。また、実施例4として、亜鉛イオン水A(178ppm)/銅イオン水A(140ppm)を99.28/0.72で正確に混合・溶解して、洗口剤D(亜鉛イオン176.7ppm、銅イオン1.01ppm)を調製した。また、実施例5として、亜鉛イオン水A(178ppm)/銅イオン水A(140ppm)/精製水+ポリエチレングリコール=2.81/0.72/96.47で正確に混合・溶解して、洗口剤E(亜鉛イオン5.0ppm、銅イオン1.01ppm)を調製した。また、実施例6として、洗口剤D(亜鉛イオン176.7ppm、銅イオン1.01ppm)/アスパラギン酸カルシウム三水和物(分子量358.31)=99.2/0.8で精密に計量し、混合・溶解して、洗口剤F(亜鉛イオン175.3ppm、銅イオン1.00ppm、カルシウムイオン0.09%)を調製した。ここで、アスパラギン酸カルシウム三水和物(分子量358.31)0.8%のカルシウム含量は40.1であるため、洗口剤F中のカルシウムイオン濃度は0.09%であった。以下、カルシウムイオン濃度は同様に計算できる。ここで、「+ポリエチレングリコール」はポリエチレングリコールを添加材として本発明の口腔内殺菌剤に適宜・適量を配合したことを意味している。
ここで、これら亜鉛イオン水A〜Cと上記記載の銅イオン水A〜Cを、本発明の規定する濃度範囲で、無作為の組み合わせで混合して洗口剤A〜Hを調製した。
すなわち、実施例1として、亜鉛イオン水C(551ppm)/銅イオン水C(315ppm)を90.6/9.4で正確に混合・溶解して、洗口剤A(亜鉛イオン499.2ppm、銅イオン29.6ppm)を調製した。また、実施例2として、亜鉛イオン水A(178ppm)/銅イオン水A(140ppm)を2.81/97.19で正確に混合・溶解して、洗口剤B(亜鉛イオン5.0ppm、銅イオン136.1ppm)を調製した。また、実施例3として、亜鉛イオン水B(310ppm)/銅イオン水C(315ppm)を5/95で正確に混合・溶解して、洗口剤C(亜鉛イオン15.5ppm、銅イオン299.3ppm)を調製した。また、実施例4として、亜鉛イオン水A(178ppm)/銅イオン水A(140ppm)を99.28/0.72で正確に混合・溶解して、洗口剤D(亜鉛イオン176.7ppm、銅イオン1.01ppm)を調製した。また、実施例5として、亜鉛イオン水A(178ppm)/銅イオン水A(140ppm)/精製水+ポリエチレングリコール=2.81/0.72/96.47で正確に混合・溶解して、洗口剤E(亜鉛イオン5.0ppm、銅イオン1.01ppm)を調製した。また、実施例6として、洗口剤D(亜鉛イオン176.7ppm、銅イオン1.01ppm)/アスパラギン酸カルシウム三水和物(分子量358.31)=99.2/0.8で精密に計量し、混合・溶解して、洗口剤F(亜鉛イオン175.3ppm、銅イオン1.00ppm、カルシウムイオン0.09%)を調製した。ここで、アスパラギン酸カルシウム三水和物(分子量358.31)0.8%のカルシウム含量は40.1であるため、洗口剤F中のカルシウムイオン濃度は0.09%であった。以下、カルシウムイオン濃度は同様に計算できる。ここで、「+ポリエチレングリコール」はポリエチレングリコールを添加材として本発明の口腔内殺菌剤に適宜・適量を配合したことを意味している。
また、実施例7として、亜鉛イオン水A(178ppm)/銅イオン水A(140ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)/精製水+ビタミンB1=2.81/0.72/0.077/96.393で精密に計量し、混合・溶解して、洗口剤G(亜鉛イオン5.0ppm、銅イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.01%)を調製した。ここで、乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)0.077%のカルシウム含量は40.1であるため、洗口剤G中のカルシウムイオン濃度は0.01%であった。また、実施例8として、洗口剤C(亜鉛イオン15.5ppm、銅イオン299.3ppm)/アスコルビン酸カルシウム二水和物(分子量426.34)/精製水=32.3/21.2/46.5で精密に計量し、混合・溶解して、洗口剤H(亜鉛イオン5.0ppm、銅イオン96.7ppm、カルシウムイオン1.99%)を調製した。ここで、アスコルビン酸カルシウム二水和物(分子量426.34)のカルシウム含量は40.1であるため、洗口剤H中のカルシウムイオン濃度は1.99%であった。更に、「+ビタミンB1」はビタミンB1を添加材として本発明の口腔内殺菌剤に適宜・適量を配合したことを意味している。これらの組成を表1に示す。
比較例1〜6
比較例1として、亜鉛イオン水C(551ppm)/精製水=91/9で正確に混合・溶解して、洗口剤I(亜鉛イオン501.4ppm)を調製した。また、比較例2として、亜鉛イオン水A(178ppm)/精製水=2.8/97.2で正確に混合・溶解して、洗口剤J(亜鉛イオン4.98ppm)を調製した。更に、比較例3として、銅イオン水A(140ppm)/精製水+ビタミンC+ポリエチレングリコール=0.71/99.29で正確に混合・溶解して、洗口剤K(銅イオン0.99ppm)を調製した。更に、比較例4として、1Lの精製水入りペットボトルに市販の「銅しましょ」を用いて、その処方に従い、通電時間を88分通電して、洗口剤L(銅イオン308ppm)とした。比較例5として市販のヨード系うがい薬を洗口剤Mとして準備した。また、比較例6として水道水を洗口剤Nとして準備した。ここで、「+ビタミンC+ポリエチレングリコール」はビタミンCとポリエチレングリコールを添加材として本発明の口腔内殺菌剤に適宜・適量を配合したことを意味している。これらの組成を表1に示す。
比較例1として、亜鉛イオン水C(551ppm)/精製水=91/9で正確に混合・溶解して、洗口剤I(亜鉛イオン501.4ppm)を調製した。また、比較例2として、亜鉛イオン水A(178ppm)/精製水=2.8/97.2で正確に混合・溶解して、洗口剤J(亜鉛イオン4.98ppm)を調製した。更に、比較例3として、銅イオン水A(140ppm)/精製水+ビタミンC+ポリエチレングリコール=0.71/99.29で正確に混合・溶解して、洗口剤K(銅イオン0.99ppm)を調製した。更に、比較例4として、1Lの精製水入りペットボトルに市販の「銅しましょ」を用いて、その処方に従い、通電時間を88分通電して、洗口剤L(銅イオン308ppm)とした。比較例5として市販のヨード系うがい薬を洗口剤Mとして準備した。また、比較例6として水道水を洗口剤Nとして準備した。ここで、「+ビタミンC+ポリエチレングリコール」はビタミンCとポリエチレングリコールを添加材として本発明の口腔内殺菌剤に適宜・適量を配合したことを意味している。これらの組成を表1に示す。
製造例3
本発明に使用した鉄イオン水A〜Cの製造例を示す。鉄釘10gを精製水2Lペットボトルに浸して24時間放置した。これにより、十分な量の薄い茶色の鉄錆が析出した。この上澄み液の鉄イオン濃度は150ppmであった。この溶液を鉄イオン水A(150ppm)とした。同様に、20gの鉄釘を2Lのイオン交換水に浸して24時間放置して、上澄み液を鉄イオン水B(300ppm)とした。更に、20gの鉄釘を2Lのイオン交換水に浸して36時間放置して、上澄み液を鉄イオン水C(450ppm) とした。
本発明に使用した鉄イオン水A〜Cの製造例を示す。鉄釘10gを精製水2Lペットボトルに浸して24時間放置した。これにより、十分な量の薄い茶色の鉄錆が析出した。この上澄み液の鉄イオン濃度は150ppmであった。この溶液を鉄イオン水A(150ppm)とした。同様に、20gの鉄釘を2Lのイオン交換水に浸して24時間放置して、上澄み液を鉄イオン水B(300ppm)とした。更に、20gの鉄釘を2Lのイオン交換水に浸して36時間放置して、上澄み液を鉄イオン水C(450ppm) とした。
実施例9〜20
本実施例は、まず、製造例1に従って、亜鉛イオン水A〜Cの各5Lを調製した。更に、製造例3に従って、鉄イオン水A〜Cの各5Lを調製した。亜鉛イオン水A〜Cと鉄イオン水A〜Cを、本発明の規定する濃度範囲で、無作為の組み合わせで混合して液体歯磨剤a〜lを調製した。すなわち、実施例9として、亜鉛イオン水C(551ppm)/鉄イオン水C(450ppm)を90.6/9.4で正確に混合・溶解して、液体歯磨剤a(亜鉛イオン499.2ppm、鉄イオン42.3ppm)を調製した。また、実施例10として、亜鉛イオン水A(178ppm)/鉄イオン水A(150ppm)を2.81/97.19で正確に混合・溶解して、液体歯磨剤b(亜鉛イオン5.00ppm、鉄イオン145.8ppm)を調製した。また、実施例11として、亜鉛イオン水B(310ppm)/鉄イオン水C(450ppm)を33.5/66.5で正確に混合・溶解して、液体歯磨剤c(亜鉛イオン103.9ppm、鉄イオン299.3ppm)を調製した。これらの組成を表2に示す。
本実施例は、まず、製造例1に従って、亜鉛イオン水A〜Cの各5Lを調製した。更に、製造例3に従って、鉄イオン水A〜Cの各5Lを調製した。亜鉛イオン水A〜Cと鉄イオン水A〜Cを、本発明の規定する濃度範囲で、無作為の組み合わせで混合して液体歯磨剤a〜lを調製した。すなわち、実施例9として、亜鉛イオン水C(551ppm)/鉄イオン水C(450ppm)を90.6/9.4で正確に混合・溶解して、液体歯磨剤a(亜鉛イオン499.2ppm、鉄イオン42.3ppm)を調製した。また、実施例10として、亜鉛イオン水A(178ppm)/鉄イオン水A(150ppm)を2.81/97.19で正確に混合・溶解して、液体歯磨剤b(亜鉛イオン5.00ppm、鉄イオン145.8ppm)を調製した。また、実施例11として、亜鉛イオン水B(310ppm)/鉄イオン水C(450ppm)を33.5/66.5で正確に混合・溶解して、液体歯磨剤c(亜鉛イオン103.9ppm、鉄イオン299.3ppm)を調製した。これらの組成を表2に示す。
また、実施例12として、亜鉛イオン水A(178ppm)/鉄イオン水A(150ppm)を99.33/0.67で正確に混合・溶解して、液体歯磨剤d(亜鉛イオン176.8ppm、鉄イオン1.01ppm)を調製した。実施例13として、亜鉛イオン水A(178ppm)/鉄イオン水A(150ppm)/イオン交換水+メチルセルロース=2.81/0.67/96.52で正確に混合・溶解して、液体歯磨剤e(亜鉛イオン5.00ppm、鉄イオン1.01ppm)を調製した。本実施例9〜13の液体歯磨剤a〜eの組成及び実験結果を表2に示す。更に、実施例14として、亜鉛イオン水A(178ppm)/鉄イオン水A(150ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)/蒸留水+メチルセルロース=2.81/0.67/0.077/96.443で精密に計量し混合・溶解して、液体歯磨剤f(亜鉛イオン5.00ppm、鉄イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.01%)を調製した。これらの組成を表2に示す。
ここでさらに、実施例15として、亜鉛イオン水A及び鉄イオン水Aを正確に各2L再調製して、亜鉛イオン水A(178ppm)/鉄イオン水A(150ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)/蒸留水=2.81/59.923/0.077/37.19で精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤g(亜鉛イオン5.00ppm、鉄イオン89.9ppm、カルシウムイオン0.01%)を調製した。また、実施例16として、亜鉛イオン水A(178ppm)/鉄イオン水A(150ppm)/銅イオン水C(315ppm)/アスコルビン酸カルシウム二水和物(分子量426.34)=2.81/30/45.99/21.2で精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤h(亜鉛イオン5.00ppm、鉄イオン45.0ppm、銅イオン144.9ppm、カルシウムイオン1.99%)を調製した。更に、実施例17として、亜鉛イオン水C(551ppm)/鉄イオン水C(450ppm)/銅イオン水C(315ppm)/アスコルビン酸カルシウム二水和物(分子量426.34)=90.6/1.4/1/7.0で精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤i(亜鉛イオン499.2ppm、鉄イオン6.3ppm、銅イオン3.15ppm、カルシウムイオン0.66%)を調製した。これらの組成を表2に示す。
また、実施例18として、亜鉛イオン水A(178ppm)/鉄イオン水C(450ppm)/銅イオン水C(315ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)=2.81/2.113/95/0.077で正確に混合・溶解して、液体歯磨剤j(亜鉛イオン5.00ppm、鉄イオン9.51ppm、銅イオン299.3ppm、カルシウムイオン0.01%)を調製した。また、実施例19として、亜鉛イオン水C(551ppm)/鉄イオン水C(450ppm)/銅イオン水A(140ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)=33.347/66.5/0.072/0.081の割合で精密に計量し、混合・溶解して液体歯磨剤k(亜鉛イオン183.7ppm、鉄イオン299.3ppm、銅イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.01%)を調製した。更に、実施例20として、亜鉛イオン水A(178ppm)/鉄イオン水A(150ppm)/銅イオン水A(140ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)/蒸留水=2.81/0.67/0.72/0.077/95.723で精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤l(亜鉛イオン5.00ppm、鉄イオン1.01ppm、銅イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.01%)を調製した。これらの組成を表2に示す。
比較例7〜13
比較例7として、鉄イオン水C(450ppm)/精製水=67/33を精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤m(鉄イオン301.5ppm)を調製した。比較例8として、鉄イオン水A(150ppm)/精製水=0.66/99.34を精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤n(鉄イオン0.99ppm)を調製した。比較例9として、乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)/精製水+ポリエチレングリコール=0.07/99.93を精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤o(カルシウムイオン0.009%)を調製した。比較例10として、アスコルビン酸カルシウム二水和物(分子量426.34)/精製水=21.5/78.5を精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤p(カルシウムイオン2.02%)を調製した。比較例11として、鉄イオン水C(450ppm)/銅イオン水A(140ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)/精製水=67/0.72/0.07/32.21を精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤q(鉄イオン301.5ppm、銅イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.009%)を調製した。比較例12として、鉄イオン水A(150ppm)/銅イオン水C(315ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)/精製水=0.66/96.0/0.07/3.27を精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤r(鉄イオン0.99ppm、銅イオン302.4ppm、カルシウムイオン0.009%)を調製した。比較例13として、鉄イオン水C(450ppm)/銅イオン水A(140ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)/精製水=66.5/0.72/0.077/32.703の割合で精密に計量し、混合・溶解して液体歯磨剤s(鉄イオン299.3ppm、銅イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.01%)を調製した。これらの組成を表2に示す。
比較例7として、鉄イオン水C(450ppm)/精製水=67/33を精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤m(鉄イオン301.5ppm)を調製した。比較例8として、鉄イオン水A(150ppm)/精製水=0.66/99.34を精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤n(鉄イオン0.99ppm)を調製した。比較例9として、乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)/精製水+ポリエチレングリコール=0.07/99.93を精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤o(カルシウムイオン0.009%)を調製した。比較例10として、アスコルビン酸カルシウム二水和物(分子量426.34)/精製水=21.5/78.5を精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤p(カルシウムイオン2.02%)を調製した。比較例11として、鉄イオン水C(450ppm)/銅イオン水A(140ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)/精製水=67/0.72/0.07/32.21を精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤q(鉄イオン301.5ppm、銅イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.009%)を調製した。比較例12として、鉄イオン水A(150ppm)/銅イオン水C(315ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)/精製水=0.66/96.0/0.07/3.27を精密に計量し、混合・溶解して、液体歯磨剤r(鉄イオン0.99ppm、銅イオン302.4ppm、カルシウムイオン0.009%)を調製した。比較例13として、鉄イオン水C(450ppm)/銅イオン水A(140ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)/精製水=66.5/0.72/0.077/32.703の割合で精密に計量し、混合・溶解して液体歯磨剤s(鉄イオン299.3ppm、銅イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.01%)を調製した。これらの組成を表2に示す。
試験例1
本試験例では、実施例及び比較例で調製した洗口剤A〜N及び液体歯磨剤a〜sの33種を使用した。口腔内に存在する細菌に対する殺菌作用を検証する試験を行った。本試験例では、洗口剤及び液体歯磨剤であるが、実際に使用するにあたり、以下の要領で液体歯磨剤の手法で行い、その前後の口腔内の唾液中の生菌数を測定し、各洗口剤A〜N及び液体歯磨剤a〜sの殺菌作用を観察した。本試験に33名の試験者に参加いただいた。1日3回、食後に、それぞれ1回15〜30秒間洗口剤又は、液体歯磨きとして歯ブラシを使用して歯磨き後、うがいまたは洗口を行った。その後、15分後と3時間後に口腔内の唾液0.5mlを採取し、0.5ml中に存在する生菌数を顕微鏡下20倍の倍率で正確に計測して、それぞれの測定値を1.0ml中の生菌数に換算した。測定結果を表1及び2に示した。表1及び2には、洗口剤及び液体歯磨剤に対する33名の試験者それぞれの測定値の平均値を示した。測定時間中、試験者は飲食物を一切口にすることが禁止された。表1及び2中、うがい直前の生菌数、うがい15分後の生菌数、及びうがい3時間後の生菌数の測定結果の平均値を示している。
本試験例では、実施例及び比較例で調製した洗口剤A〜N及び液体歯磨剤a〜sの33種を使用した。口腔内に存在する細菌に対する殺菌作用を検証する試験を行った。本試験例では、洗口剤及び液体歯磨剤であるが、実際に使用するにあたり、以下の要領で液体歯磨剤の手法で行い、その前後の口腔内の唾液中の生菌数を測定し、各洗口剤A〜N及び液体歯磨剤a〜sの殺菌作用を観察した。本試験に33名の試験者に参加いただいた。1日3回、食後に、それぞれ1回15〜30秒間洗口剤又は、液体歯磨きとして歯ブラシを使用して歯磨き後、うがいまたは洗口を行った。その後、15分後と3時間後に口腔内の唾液0.5mlを採取し、0.5ml中に存在する生菌数を顕微鏡下20倍の倍率で正確に計測して、それぞれの測定値を1.0ml中の生菌数に換算した。測定結果を表1及び2に示した。表1及び2には、洗口剤及び液体歯磨剤に対する33名の試験者それぞれの測定値の平均値を示した。測定時間中、試験者は飲食物を一切口にすることが禁止された。表1及び2中、うがい直前の生菌数、うがい15分後の生菌数、及びうがい3時間後の生菌数の測定結果の平均値を示している。
表1及び2に示す結果によれば、実施例1〜8の洗口剤A〜H及び実施例9〜20の液体歯磨剤a〜lは、うがい後の口腔内の殺菌作用が高いことが判った。また、実施例1〜8の洗口剤A〜H及び実施例9〜20の液体歯磨剤a〜lは、比較的マイルドであり、口腔内の上皮細胞(粘膜)への刺激はないか軽微であった。これに対して、比較例1〜13の洗口剤I〜N及び液体歯磨剤m〜sは、実施例と比べ、殺菌作用が低いことが判った。なお、表中の「うがい後の3時間後の生菌数(個/ml)」は、処理3時間後の残存生菌数を意味し、処理液剤の殺菌力の具体的な指標であるが、本発明ではこれ以降、単に「3HR生菌数」と略称する。
ここで、実施例1〜8の洗口剤A〜H及び実施例9〜20の液体歯磨剤a〜lより、本発明を構成する特定の金属イオン、更にはそれらの濃度について、殺菌性及び生体への反応などを詳細に検証する。まず、亜鉛イオン濃度について、実施例1の洗口剤A、実施例9及び17の液体歯磨剤a及びiは、それぞれ亜鉛イオン濃度の上限(500ppm)の近傍濃度である499.2ppmを含み、「3HR生菌数」で、それぞれ2.3〜2.4×106を示し、高い殺菌力を示した。また、口腔内粘膜への刺激やえぐみもないか軽微であった。一方、実施例2、5、7、8、10、13、14,15、16、18、及び20の洗口剤B、E、G及びH、液体歯磨剤b、e、f、g、h、j及びlは、それぞれ亜鉛イオン濃度の下限濃度(5ppm)の5ppmを示し、「3HR生菌数」で、それぞれ2.3〜2.8×106を示し、高い殺菌力を示した。すなわち、亜鉛イオン濃度で高濃度においても低濃度であっても、本発明の洗口剤及び液体歯磨剤の口腔内殺菌剤として高い殺菌力を示した。また、口腔内粘膜への刺激やえぐみもないか軽微であった。
また、銅イオン濃度について、実施例3及び18の洗口剤C及び液体歯磨剤jは、それぞれ銅イオンの上限(300ppm)に近い299.3ppmを含み、「3HR生菌数」で、それぞれ2.2×106及び2.3×106を示し、高い殺菌力を示した。また、口腔内粘膜への刺激やえぐみもないか軽微であった。一方、実施例4〜7の洗口剤D〜G及び実施例19〜20の液体歯磨剤k〜lは、それぞれ銅イオン濃度の下限(1ppm)の近傍濃度である1.00〜1.01ppmを含み、それぞれ「3HR生菌数」で、それぞれ2.4〜2.6×106を示し、高い殺菌力を示した。また、口腔内粘膜への刺激やえぐみもないか軽微であった。すなわち、銅イオン濃度で高濃度においても低濃度であっても、本発明の洗口剤及び液体歯磨剤の口腔内殺菌剤として高い殺菌力を示した。また、口腔内粘膜への刺激やえぐみもないか軽微であった。
また、鉄イオン濃度について、実施例11及び19の液体歯磨剤c及びkは、それぞれ鉄イオンの上限(300ppm)に近い299.3ppmを含み、「3HR生菌数」で、それぞれ2.5×106及び2.4×106を示し、高い殺菌力を示した。また、口腔内粘膜への刺激やえぐみもないか軽微であった。一方、実施例12〜14及び20の液体歯磨剤d〜f及びlは、それぞれ鉄イオン濃度の下限(1ppm)の近傍濃度である1.01ppmを含み、「3HR生菌数」で、それぞれ2.5〜2.6×106を示し、高い殺菌力を示し、口腔内粘膜への刺激やえぐみもないか軽微であった。すなわち、鉄イオン濃度で高濃度においても低濃度であっても、本発明の洗口剤及び液体歯磨剤の口腔内殺菌剤として高い殺菌力を示した。また、口腔内粘膜への刺激やえぐみもないか軽微であった。
更に、カルシウムイオン濃度について、実施例8の洗口剤H及び実施例16の液体歯磨剤hは、カルシウムイオン濃度の上限(2.0%)の近傍である1.99%を含み、「3HR生菌数」で、いずれも2.5×106を示し、他の金属イオンとの相乗効果により高い殺菌力を示した。また、口腔内粘膜への刺激やえぐみもないか軽微であった。実施例7、14、15、18、19及び20の洗口剤G、液体歯磨剤f、g、j、k及びlは、カルシウムイオン濃度の下限(0.01%)の0.01%を含み、「3HR生菌数」で、それぞれ2.3〜2.6×106を示し、他の金属イオンとの相乗効果により高い殺菌力を示した。すなわち、カルシウムイオン濃度で高濃度においても低濃度であっても、本発明の洗口剤及び液体歯磨剤の口腔内殺菌剤として高い殺菌力を示した。また、口腔内粘膜への刺激やえぐみもないか軽微であった。更に、本発明の規定する濃度範囲において、カルシウムイオンの収斂効果も有効に発現された。
一方、各金属イオンの下限濃度のみからなる本発明の口腔内殺菌剤についても殺菌能力を検証した。まず、実施例5の洗口剤Eは亜鉛イオンの下限濃度の5.0ppm、及び銅イオンの下限濃度の1.0ppmから成り、「3HR生菌数」で、2.6×106を示し、高い殺菌力を示し、喉などへの刺激やえぐみもほとんどなかった。実施例7の洗口剤Gは亜鉛イオン5.0ppm、銅イオン1.0ppm、カルシウムイオン0.01%のいずれの下限濃度を含み、「3HR生菌数」で、2.6×106を示し、高い殺菌力を示し、喉などへの刺激やえぐみもほとんどなかった。実施例13の液体歯磨剤eは亜鉛イオン5.0ppm、鉄イオン1.01ppmを含み、実施例14の液体歯磨剤fは亜鉛イオン5.0ppm、鉄イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.01%を含み、「3HR生菌数」で、それぞれ2.6×106及び2.5×106を示し、いずれも高い殺菌力を示した。また、喉などへの刺激やえぐみもほとんどなかった。実施例20の液体歯磨剤lは亜鉛イオン5.0ppm、鉄イオン1.01ppm、銅イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.01%を含み、「3HR生菌数」で、2.5×106を示し、高い殺菌力を示した。口腔内粘膜への刺激やえぐみもないか軽微であった。以上の検討結果より、下限濃度のみからなる本発明の口腔内殺菌剤は、高い殺菌能力に加えて、口腔内粘膜への刺激やえぐみもなく、喉などへの刺激やえぐみもほとんどなかった。
ここで、比較例1〜4及び7〜10の洗口剤及び液体歯磨剤は全て亜鉛イオン、銅イオン、鉄イオン、及びカルシウムイオンの単独使用であり、かつ本発明の好ましい濃度範囲外の組成液である。これらの結果を精査して本発明の有効性を検証する。まず、亜鉛イオン単独の比較例1の洗口剤I(亜鉛イオン501.4ppm)は、「3HR生菌数」で、3.1×106を示し、銅イオンを含めた場合と比べ殺菌力は低いものとなった。また亜鉛イオン濃度の好ましい上限(500ppm)を超えている為、口腔内で使用するのに喉や舌などへの刺激やえぐみが少し出ることとなった。同様に亜鉛イオン単独の比較例2の洗口剤J(亜鉛イオン:4.98ppm)は、「3HR生菌数」で、5.5×106を示し、銅イオンを含めた場合と比べ殺菌力は低いものとなった。また、亜鉛イオン濃度の好ましい下限(5.0ppm)未満であることも低い殺菌力の要因となった。更に、銅イオン単独の比較例3の洗口剤K(銅イオン:0.99ppm)は、「3HR生菌数」で、5.7×106を示し、亜鉛イオンを含めた場合と比べ殺菌力は低いものとなった。また、銅イオン濃度の好ましい下限(1.0ppm)未満であることも低い殺菌力の要因となった。また、比較例4の洗口剤L(銅イオン308ppm)は、「3HR生菌数」で、3.4×106を示し、銅イオン濃度の好ましい上限(300ppm)を超えている為、喉や舌などへの刺激やえぐみが少し出ることとなった。
更に、比較例7の液体歯磨剤m(鉄イオン301.5ppm)は、「3HR生菌数」で、4.9×106を示し、亜鉛イオン及び鉄イオンを含むものと比較して殺菌力は低く、また鉄イオン濃度の好ましい上限(300ppm)を超えている為、喉や舌などへの刺激やえぐみが少し出ることとなった。比較例8の液体歯磨剤n(鉄イオン0.99ppm)は、「3HR生菌数」で、5.6×106を示し、殺菌力は比較的低いものであった。鉄イオン濃度の好ましい下限(1.0ppm)未満であることも低い殺菌力の要因となった。また、カルシウムイオン単独で成る比較例9の液体歯磨剤o(カルシウムイオン0.009%)は、「3HR生菌数」で、5.8×106を示し、亜鉛イオン、銅イオン及び/又は鉄イオンを含むものと比較して殺菌力は低く、カルシウムイオン濃度の好ましい下限(0.01%)未満であることも低い殺菌力の要因となった。カルシウムイオン単独で成る比較例10の液体歯磨剤p(カルシウムイオン2.02%)は、「3HR生菌数」で、5.7×106を示し、亜鉛イオン、銅イオン及び/又は鉄イオンを含むものと比較して殺菌力は有意に低く、カルシウムイオン濃度の好ましい上限(2.0%)を超えている為、液の状態が懸濁状(白色のヨーグルト状)となった。
また、比較例4の洗口剤L(銅イオン308ppm)は、「3HR生菌数」で、3.4×106を示し、喉などへの刺激やえぐみも多少感じた。対応する実施例3の洗口剤C(亜鉛イオン15.5ppm、銅イオン299.3ppm)は、「3HR生菌数」で、2.2×106を示した。更に、実施例18の液体歯磨剤j(亜鉛イオン5.00ppm、鉄イオン9.51ppm、銅イオン299.3ppm、カルシウムイオン0.01%)は、「3HR生菌数」で、2.3×106を示した。また、口腔内粘膜への刺激やえぐみもないか軽微であった。以上の結果より、銅イオン単独の場合(洗口剤L)に比べて、亜鉛イオン及び銅イオンから成る場合(洗口剤C)、亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、及びカルシウムイオンから成る場合(液体歯磨剤j)は、「3HR生菌数」で比較的少ない数値を示し、本発明の複数の金属イオンの相乗効果により高い殺菌効果を示した。また、洗口剤C及び液体歯磨剤jは、口腔内粘膜への刺激やえぐみもなく、喉などへの刺激やえぐみもほとんどなかった。
更に、比較例7の液体歯磨剤m(鉄イオン301.5ppm)は、「3HR生菌数」で、4.9×106を示した。対応する実施例11の液体歯磨剤c(亜鉛イオン103.9ppm、鉄イオン299.3ppm)は、「3HR生菌数」で、2.5×106を示した。実施例19の液体歯磨剤k(亜鉛イオン183.7ppm、鉄イオン299.3ppm、銅イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.01%)は、「3HR生菌数」で、2.4×106を示し、口腔内粘膜への刺激やえぐみもないか軽微であった。以上の結果より、鉄イオン単独の場合(液体歯磨剤m)に比べて、亜鉛イオン及び鉄イオンから成る場合(液体歯磨剤c)、及び亜鉛イオン、鉄イオン、銅イオン、カルシウムイオンから成る場合(液体歯磨剤k)は、「3HR生菌数」で比較的少ない数値を示し、本発明の複数の金属イオンの相乗効果による強い殺菌力が明らかとなった。また、液体歯磨剤c及びkは、口腔内粘膜への刺激やえぐみもなく、喉などへの刺激やえぐみもほとんどなかった。
また、比較例1の洗口剤I(亜鉛イオン501.4ppm)、比較例4の洗口剤L(銅イオン308ppm)、及び比較例7の液体歯磨剤m(鉄イオン301.5ppm)は、それぞれ各金属イオンの単独で、好ましい上限を超える濃度から成るが、それぞれ「3HR生菌数」で、3.1×106、3.4×106、及び4.9×106を示した。一方、実施例3の洗口剤C(亜鉛イオン15.5ppm、銅イオン299.3ppm)、実施例9の液体歯磨剤a(亜鉛イオン499.2ppm、鉄イオン42.3ppm)、実施例19の液体歯磨剤k(亜鉛イオン183.7ppm、鉄イオン299.3ppm、銅イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.01%)は、それぞれ「3HR生菌数」で、2.2×106、2.4×106、及び2.4×106を示した。また、洗口剤C、液体歯磨剤a及びkは、口腔内粘膜への刺激やえぐみもなく、喉などへの刺激やえぐみもほとんどなかった。
また、実施例20の液体歯磨剤l(亜鉛イオン5.00ppm、鉄イオン1.01ppm、銅イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.01%)の場合、亜鉛イオン、銅イオン、鉄イオン、カルシウムイオンがすべて、本発明で規定する好ましい低濃度で構成されているが、「3HR生菌数」で、2.5×106を示した。また、口腔内粘膜への刺激やえぐみもなく、喉などへの刺激やえぐみもほとんどなかった。以上の結果から明らかなように、亜鉛イオン、銅イオン、鉄イオンはそれぞれ単独の場合よりも、本発明の構成である(A)亜鉛イオンを必須として、(B)銅イオン及び鉄イオンを1以上選択して成る混合系において、有意に高い殺菌効果を示した。
一方、銅イオン、鉄イオン、カルシウムイオンから成るが、亜鉛イオンのみを含まない比較例11〜13の液体歯磨剤q〜sは、「3HR生菌数」で、3.5〜4.2×106を示した。これに対し、亜鉛イオンを必須として、銅イオン及び/又は鉄イオンの場合、更にカルシウムイオンを加えた場合の本発明の構成から成る実施例1〜20の洗口剤A〜H及び液体歯磨剤a〜lは、「3HR生菌数」で、2.2〜2.8×106を示し、有意に強い殺菌性を示した。ここで、比較例11及び比較例12の液体歯磨剤q(鉄イオン301.5ppm、銅イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.009%)及びr(鉄イオン0.99ppm、銅イオン302.5ppm、カルシウムイオン0.009%)は低い殺菌力、及びそれぞれ鉄イオン、銅イオン濃度が本発明の好ましい上限を超える濃度から成り、口腔内でのえぐみを多少感じるなど、本発明の主訴を満たすものではなかった。
更に、亜鉛イオンを含まない、比較例13の液体歯磨剤s(鉄イオン299.3ppm、銅イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.01%)は、「3HR生菌数」で4.2×106を示した。これに対して、亜鉛イオンを含む実施例19の液体歯磨剤k(亜鉛イオン183.7ppm、鉄イオン299.3ppm、銅イオン1.01ppm、カルシウムイオン0.01%)は、「3HR生菌数」で、2.4×106を示した。また、口腔内粘膜への刺激やえぐみもなく、喉などへの刺激やえぐみもほとんどなかった。すなわち、亜鉛イオンを含む実施例19の液体歯磨剤kは、亜鉛イオンを含まない液体歯磨剤sに対して、「3HR生菌数」で有意に低い値を示し、強い殺菌性が明らかになった。以上の結果より、亜鉛イオンを必須として、銅イオン及び/又は鉄イオンの場合、更にカルシウムイオンを加えた本発明の構成により、亜鉛イオンを含む複数の金属イオンの相乗効果による強い殺菌力が示された。更に、喉や舌や口腔内粘膜などへの刺激も軽減できた。
亜鉛イオンを必須とする、本発明の構成により、「高い殺菌力と優れた生体安全性」を本発明の主訴に到達することができた。これは、800種類ともいわれる口腔内に生息する歯周病原菌の代表的存在である、Porphyromonas gingivalisやAggregatibacter actinomycetemcomitansに対して、亜鉛イオンを中心に、銅イオン等をそれぞれ殺菌メカニズムが異なる複数の抗菌性金属イオンによる相乗効果が高いことを示唆している。すなわち、殺菌のメカニズムについて、例えば銅イオンは細胞内のATPの産生回路を阻害することにより、細胞の生命活動(代謝)をかく乱して死滅させると考えられる。上記の亜鉛イオン、銅イオン及び/又は鉄イオンの各金属イオンが本来持つ殺菌メカニズムが相乗的に作用してさらに殺菌力を増すと考えられる。
一方、比較例5は、市販のヨード系うがい薬の洗口剤Mですら、殺菌作用が弱く、短時間でほぼ元の生菌数に戻ることが判った。また水道水の洗口剤Nでは、うがい3時間後の細菌数がうがい直前とほぼ同数となり、殺菌効果が全くなかった。
以上の検証結果より、本発明の口腔内殺菌剤として、「亜鉛イオンを必須として、銅イオン及び/又は鉄イオン、更にカルシウムイオンを含むことを特徴とする口腔内殺菌剤」である発明構成が重要であり、また更にこれら「金属イオンの特定の濃度」により、本発明の主訴とする「殺菌力が強く、生体に安全である。」により到達していることが確認できた。
以上の検証結果より、本発明の口腔内殺菌剤として、「主成分として、(A)亜鉛イオン、(B)銅イオン、鉄イオンから選ばれる一つ以上のイオンを含む水、を含むことを特徴とし、更に、前記水にカルシウムイオンが含まれることを特徴とする口腔内殺菌剤」である発明構成が重要であり、また更にこれら「金属イオンの特定の濃度」により、本発明が主訴とする「殺菌力が強く、生体に安全である。」により到達していることが確認できた。
試験例2
本試験例では、実施例2の洗口剤Bを使用し、歯周病が進行した6名(患者A〜F:年齢64歳〜75歳;男性)に対して毎日3回、口腔内のうがいまたは洗口を2か月継続して行った。患者6名の歯周病進行はかなり深刻で、いずれも歯周病原菌のPoryphromonas gingivalis、Prevotella intermedia及びActinobcillusantinomycetemcomitansが多数存在し程度の差こそあれ歯肉が腫れて口臭が強く歯のぐらつきがみられた。更に、洗口剤Bで患者6名の口腔内を上記処置した後、口腔内の発疹などをチェックした。
本試験例では、実施例2の洗口剤Bを使用し、歯周病が進行した6名(患者A〜F:年齢64歳〜75歳;男性)に対して毎日3回、口腔内のうがいまたは洗口を2か月継続して行った。患者6名の歯周病進行はかなり深刻で、いずれも歯周病原菌のPoryphromonas gingivalis、Prevotella intermedia及びActinobcillusantinomycetemcomitansが多数存在し程度の差こそあれ歯肉が腫れて口臭が強く歯のぐらつきがみられた。更に、洗口剤Bで患者6名の口腔内を上記処置した後、口腔内の発疹などをチェックした。
本試験では、実施例2の洗口剤Bの殺菌力を便宜上、歯周病原菌数の多少及び歯のぐらつきの程度で以下の通り評価した。代表例の3名(患者A〜C:年齢66歳〜72歳;男性)の試験結果を表3に示した。ここで、菌数は試験例1と同様の方法で求めた。
<評価法>
表3に示す結果から、実施例2の洗口剤Bが歯周病原菌の殺菌除去に有効であることが判った。患者3人の歯周病原菌は、治療前の数多い歯周病原菌が2か月後は殆どいない(−)。更に、歯のぐらつきも歯周病原菌の減衰に伴い、殆どなくなった(−)。患者6名に洗口剤Bで口腔内を処置した後、口腔内の発疹などをチェックしたが、全員の処置前の歯周組織は赤みの発疹があったが、2か月後はほぼきれいなピンク色の歯茎に変化した。更に、本試験例では他の3名の患者も上記の3名の患者と同様な良好な結果を示した。また、その他の洗口剤A、C〜Hにも洗口剤Bと同等な歯周病原菌の殺菌効果があることが判った。更に、液体歯磨剤a〜lにも洗口剤Bと同等な歯周病原菌の殺菌効果があることが判った。
製造例4
本製造例では、まず硫酸亜鉛七水和物(ZnSO4・7H2O、分子量287.56)1.65gを精密に計量し、精製水1Lに溶解して、亜鉛イオン水D(375ppm)を調製した。これはすなわち、硫酸亜鉛七水和物(分子量287.40)1.65g/L中の亜鉛(分子量65.4)は0.375g/Lとなり、これは0.0375%であるため亜鉛イオン濃度は375ppmとなる。更に、塩化亜鉛(ZnCl2)1.145gを精密に計量し、1Lの市販の蒸留水に混合溶解し、亜鉛イオン水E(亜鉛イオン:549ppm)を調製した。これはすなわち、塩化亜鉛(ZnCl2、分子量136.32)1.145g/L中の亜鉛(分子量65.4)は0.549g/Lとなり、これは0.0549%であるため亜鉛イオン濃度は549ppmとなる。
本製造例では、まず硫酸亜鉛七水和物(ZnSO4・7H2O、分子量287.56)1.65gを精密に計量し、精製水1Lに溶解して、亜鉛イオン水D(375ppm)を調製した。これはすなわち、硫酸亜鉛七水和物(分子量287.40)1.65g/L中の亜鉛(分子量65.4)は0.375g/Lとなり、これは0.0375%であるため亜鉛イオン濃度は375ppmとなる。更に、塩化亜鉛(ZnCl2)1.145gを精密に計量し、1Lの市販の蒸留水に混合溶解し、亜鉛イオン水E(亜鉛イオン:549ppm)を調製した。これはすなわち、塩化亜鉛(ZnCl2、分子量136.32)1.145g/L中の亜鉛(分子量65.4)は0.549g/Lとなり、これは0.0549%であるため亜鉛イオン濃度は549ppmとなる。
実施例21〜28
本実施例では、製造例4で得られた亜鉛イオン水D及び亜鉛イオン水E、製造例1〜3で製造した亜鉛イオン水A〜C、銅イオン水A〜C及び鉄イオン水A〜Cを各種用意した。まず、実施例21として、亜鉛イオン水E(549ppm)/銅イオン水C(315ppm)を91/9で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤A(亜鉛イオン499.6ppm、銅イオン28.4ppm)を調製した。同様に、実施例22として、亜鉛イオン水D(375ppm)/銅イオン水A(140ppm)を1.34/98.66で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤B(亜鉛イオン5.03ppm、銅イオン138.1ppm)を調製した。また、実施例23として、亜鉛イオン水E(549ppm)/銅イオン水C(315ppm)を5/95で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤C(亜鉛イオン27.5ppm、銅イオン299.3ppm)を調製した。同様に、実施例24として、亜鉛イオン水D(375ppm)/銅イオン水A(140ppm)を99.25/0.75で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤D(亜鉛イオン:372.0ppm、銅イオン:1.05ppm)を調製した。また、実施例25として、亜鉛イオン水D(375ppm)/銅イオン水B(210ppm)/鉄イオン水C(450ppm)を24.5/9/66.5で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤E(亜鉛イオン:91.9ppm、銅イオン:18.9ppm、鉄イオン299.3ppm)を調製した。これらの組成を表4に示す。
本実施例では、製造例4で得られた亜鉛イオン水D及び亜鉛イオン水E、製造例1〜3で製造した亜鉛イオン水A〜C、銅イオン水A〜C及び鉄イオン水A〜Cを各種用意した。まず、実施例21として、亜鉛イオン水E(549ppm)/銅イオン水C(315ppm)を91/9で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤A(亜鉛イオン499.6ppm、銅イオン28.4ppm)を調製した。同様に、実施例22として、亜鉛イオン水D(375ppm)/銅イオン水A(140ppm)を1.34/98.66で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤B(亜鉛イオン5.03ppm、銅イオン138.1ppm)を調製した。また、実施例23として、亜鉛イオン水E(549ppm)/銅イオン水C(315ppm)を5/95で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤C(亜鉛イオン27.5ppm、銅イオン299.3ppm)を調製した。同様に、実施例24として、亜鉛イオン水D(375ppm)/銅イオン水A(140ppm)を99.25/0.75で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤D(亜鉛イオン:372.0ppm、銅イオン:1.05ppm)を調製した。また、実施例25として、亜鉛イオン水D(375ppm)/銅イオン水B(210ppm)/鉄イオン水C(450ppm)を24.5/9/66.5で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤E(亜鉛イオン:91.9ppm、銅イオン:18.9ppm、鉄イオン299.3ppm)を調製した。これらの組成を表4に示す。
更に、実施例26として、亜鉛イオン水A(178ppm)/銅イオン水A(140ppm)/鉄イオン水A(150ppm)を0.57/98.71/0.72で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤F(亜鉛イオン:1.01ppm、銅イオン:138.2ppm、鉄イオン1.08ppm)を調製した。同様に、実施例27として、亜鉛イオン水A(178ppm)/銅イオン水C(315ppm)/鉄イオン水A(150ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)=30/10/59.923/0.077で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤G(亜鉛イオン53.4ppm、銅イオン31.5ppm、鉄イオン89.88ppm、カルシウムイオン0.01%)を調製した。更に、実施例28として、亜鉛イオン水E(549ppm)/銅イオン水C(315ppm)/鉄イオン水C(450ppm)/アスコルビン酸カルシウム二水和物(分子量426.34)=25/9/44.8/21.2で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤H(亜鉛イオン137.3ppm、銅イオン28.4ppm、鉄イオン201.6ppm、カルシウムイオン1.99%)を調製した。以上、本発明の口腔内殺菌剤としての態様として、歯周病殺菌剤A〜Hを調製した。これらの組成を表4に示す。
本比較例では、まず、製造例1の亜鉛イオン水A(178ppm) を正確に3L再度調製した。更に、市販の「銅しましょ」(株式会社ロングリーチ製)を用いて、その処方に従い、通電時間(7ppm/分)を正確に1分にして製造例2の銅イオン水D(7ppm)を調製した。比較例14として、亜鉛イオン水A(178ppm) と銅イオン水D(7ppm)を86/14で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤I(亜鉛イオン:153.1ppm、銅イオン:0.98ppm)を調製した。比較例15として、亜鉛イオン水C(551ppm)/銅イオン水C(315ppm)を4/96で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤J(亜鉛イオン:22.0ppm、銅イオン:302.4ppm)を調製した。これらの組成を表4に示す。
ここで、実施例23の歯周病殺菌剤Cを再度正確に2L調製した。比較例16として、歯周病殺菌剤C(亜鉛イオン:27.5ppm、銅イオン:299.3ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)を99.93/0.07で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤K(亜鉛イオン27.5ppm、銅イオン299.1ppm、カルシウムイオン0.009%)を調製した。比較例17として、歯周病殺菌剤J(亜鉛イオン:22.0ppm、銅イオン:302.4ppm)/アスコルビン酸カルシウム二水和物(分子量426.34)を77.6/22.4で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤L(亜鉛イオン17.1ppm、銅イオン234.7ppm、カルシウムイオン2.1%)を調製した。これらの組成を表4に示す。
ここで、比較例18として、亜鉛イオン水E(549ppm)/銅イオン水C(315ppm)/鉄イオン水C(450ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)=91.5/3/2.5/3で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤M(亜鉛イオン502.3ppm、銅イオン9.5ppm、鉄イオン11.3ppm、カルシウムイオン0.39%)を調製した。比較例19として、亜鉛イオン水A(178ppm)/銅イオン水C(315ppm)/鉄イオン水A(150ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)=2.7/50/45.3/2で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤N(亜鉛イオン4.8ppm、銅イオン157.5ppm、鉄イオン68.0ppm、カルシウムイオン0.26%)を調製した。これらの組成を表4に示す。
試験例3
本試験例では、実施例21〜28及び比較例14〜19の歯周病殺菌剤A〜Nを用いて試験例2と同様の試験を行い、これらの14種の歯周病殺菌剤の口腔内での殺菌作用及び為害作用を検証した。歯周病が進行した14名に、14種の歯周病殺菌剤A〜Nを使用し、毎日3回、食後に、それぞれ1回15〜30秒間、液体歯磨きのように歯ブラシを使用してうがいまたは洗口を行った。患者14名の歯周病進行はかなり深刻で、いずれも歯周病原菌のPoryphromonas gingivalis、Prevotella intermedia及びActinobcillusantinomycetemcomitansが多数存在し程度の差こそあれ歯肉が腫れて口臭が強く歯のぐらつきがみられた。更に、歯周病殺菌剤で患者14名の口腔内を処置した後、口腔内の発疹などをチェックした。
本試験例では、実施例21〜28及び比較例14〜19の歯周病殺菌剤A〜Nを用いて試験例2と同様の試験を行い、これらの14種の歯周病殺菌剤の口腔内での殺菌作用及び為害作用を検証した。歯周病が進行した14名に、14種の歯周病殺菌剤A〜Nを使用し、毎日3回、食後に、それぞれ1回15〜30秒間、液体歯磨きのように歯ブラシを使用してうがいまたは洗口を行った。患者14名の歯周病進行はかなり深刻で、いずれも歯周病原菌のPoryphromonas gingivalis、Prevotella intermedia及びActinobcillusantinomycetemcomitansが多数存在し程度の差こそあれ歯肉が腫れて口臭が強く歯のぐらつきがみられた。更に、歯周病殺菌剤で患者14名の口腔内を処置した後、口腔内の発疹などをチェックした。
本試験では、実施例の歯周病殺菌剤の殺菌力を便宜上、細菌数の多少及び歯のぐらつきの程度で以下の通り評価した。ここで、菌数は試験例1と同様の方法で求めた。代表的な4名の試験結果は表5に示す通りであった。
<評価法>
表5に示す結果から以下のことが判った。即ち、本発明の実施例21〜28の歯周病殺菌剤A〜Hの歯周病原菌の殺菌力は、治療前の細菌が非常に多い(+++)状態から治療2か月後で「細菌が殆どいない」結果(−)になり、有意に少ない結果を示した。更に歯のぐらつきも同様に治療2か月後に殆どない結果(−)を示した。歯周病殺菌剤B、D、E、Hの結果も表5と同様な結果を示した。以上の結果より、本発明組成物の歯周病殺菌剤の処置により、口腔内に生息する歯周病菌が効果的に殺菌除去されることが明らかとなった。
表4に示す比較例14及び15では、本発明の亜鉛イオンと銅イオンから成る口腔内殺菌剤における好ましい銅イオン濃度の下限(1ppm)及び上限(300ppm)を検証した結果を以下に記す。比較例14の歯周病殺菌剤I(銅イオン0.98ppm)では実施例23及び28と比較し、殺菌効果が低かった。比較例15の歯周病殺菌剤J(銅イオン302.4ppm)では殺菌力は優れるものの、銅イオン濃度が少し高めな為、実際に口腔内で使用した時、えぐみや粘膜への刺激が出るおそれがある。いずれも、本発明の要件「殺菌力が強く、生体安全性に優れる」をより満たすものではなかった。
表4に示す比較例16及び17では、本発明の亜鉛イオンと銅イオン及びカルシウムイオンから成る口腔内殺菌剤における好ましいカルシウムイオン濃度の下限(0.01%)及び上限(2.0%)を検証した結果である。比較例16の歯周病殺菌剤K(カルシウムイオン0.009%)では液剤の収斂効果が実施例27と比べると少し低かった。比較例17の歯周病殺菌剤L(カルシウムイオン2.1%)では実施例28と比較し、液が少し青色ヨーグルト状を呈した。
表4に示す比較例18及び19では、本発明の亜鉛イオンと銅イオンと鉄イオン及びカルシウムイオンから成る口腔内殺菌剤における好ましい亜鉛イオン濃度の上限(500ppm)及び下限(5.0ppm)を検証した結果である。比較例18の歯周病殺菌剤M(亜鉛イオン502.3ppm)では殺菌力は優れるものの、実際に口腔内で使用した時、えぐみや粘膜への刺激があった。比較例19の歯周病殺菌剤N(亜鉛イオン4.8ppm)では実施例と比較して殺菌効果が低かった。結果として、比較例18及び19の歯周病殺菌剤M及びNはいずれも、本発明の要件「殺菌力が強く、生体安全性に優れる」をより満たすものではなかった。
すなわち、実施例21〜28及び比較例14〜19で詳細に検証したように、本発明の構成する特定の金属イオン、及び更にこれらの特定の濃度で構成される口腔内殺菌剤は、本発明の主訴とする「歯周病原菌に強力な殺菌性を示し、口腔内などの生体安全性に優れる」ことが明らかになった。
本実施例21〜28の歯周病殺菌剤A〜Hをあらゆる歯磨きに混ぜ合わせて使用すると口臭がなくなり歯茎のひき締まり感が得られた。1か月後、3か月後と継続使用により、口腔内は清潔に保たれ、歯肉の締まり感がよく、歯周病には全く縁のないきれいな歯肉色を呈した。即ち、本実施例21〜28の歯周病殺菌剤A〜Hは、殺菌効果が高く、しかも口腔内の上皮細胞(粘膜)に刺激が少なく、しかもコバルトイオンやニッケルイオンのような生体アレルギー反応を惹起するようなこともなく、極めて安全な口腔内殺菌剤であることが明らかになった。
製造例5
まず、3種類の銅イオン水を製造した。500mLの市販のミネラルウォーターを3本用意して、それぞれのペットボトルの口から、「銅しましょ」の銅線部を直接投入して10分、15分、及び42分の3種類の通電をした。500mLの水中に1分通電すると7ppmの銅イオンが発生するので3種類の銅イオン水はそれぞれ上記3種類の通電時間により、銅イオン水E(10分:70ppm)、銅イオン水F(15分:105ppm)、銅イオン水G(42分:294ppm)を製造した。
まず、3種類の銅イオン水を製造した。500mLの市販のミネラルウォーターを3本用意して、それぞれのペットボトルの口から、「銅しましょ」の銅線部を直接投入して10分、15分、及び42分の3種類の通電をした。500mLの水中に1分通電すると7ppmの銅イオンが発生するので3種類の銅イオン水はそれぞれ上記3種類の通電時間により、銅イオン水E(10分:70ppm)、銅イオン水F(15分:105ppm)、銅イオン水G(42分:294ppm)を製造した。
実施例29〜36
本実施例29〜36では、製造例5の銅イオン水E〜Gのペットボトルのそれぞれに塩化亜鉛(分子量136.32)0.45gを投入・溶解した。更に、この銅イオン水E〜Gのペットボトルのそれぞれに乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)2.0gを投入混合して完全溶解させて本発明の歯周病殺菌剤O〜Qを調製した。ここで、塩化亜鉛の配合量は0.09%となり、亜鉛イオン濃度は432ppmとなった。また、乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)2.0gはカルシウム(分子量40.1)を含むため、各調製液中に投入された2.0gはカルシウムイオン濃度で0.05%となった。
本実施例29〜36では、製造例5の銅イオン水E〜Gのペットボトルのそれぞれに塩化亜鉛(分子量136.32)0.45gを投入・溶解した。更に、この銅イオン水E〜Gのペットボトルのそれぞれに乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)2.0gを投入混合して完全溶解させて本発明の歯周病殺菌剤O〜Qを調製した。ここで、塩化亜鉛の配合量は0.09%となり、亜鉛イオン濃度は432ppmとなった。また、乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)2.0gはカルシウム(分子量40.1)を含むため、各調製液中に投入された2.0gはカルシウムイオン濃度で0.05%となった。
以上の結果、実施例29の歯周病殺菌剤Oは(亜鉛イオン431ppm、銅イオン70ppm、カルシウムイオン0.05%)、実施例30の歯周病殺菌剤Pは(亜鉛イオン431ppm、銅イオン105ppm、カルシウムイオン0.05%)、及び実施例31の歯周病殺菌剤Qは(亜鉛イオン431ppm、銅イオン294ppm、カルシウムイオン0.05%)をそれぞれ調製した。本実施例32〜36では、更に、製造例1、2及び3に従って、亜鉛イオン水B(310ppm)、亜鉛イオン水C(551ppm)、銅イオン水B(210ppm)、銅イオン水C(315ppm)、鉄イオン水A(150ppm)、鉄イオン水B(300ppm)、及び鉄イオン水C(450ppm)を精密に計量し、混合・溶解して、各3Lを調製した。これらを組み合わせて歯周病殺菌剤R〜Vを調製した。実施例32として、亜鉛イオン水B(310ppm)/銅イオン水C(315ppm)/鉄イオン水A(150ppm)=30/30/40で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤R(亜鉛イオン93ppm、銅イオン94.5ppm、鉄イオン60ppm)を調製した。実施例33として、亜鉛イオン水B(310ppm)/銅イオン水C(315ppm)/鉄イオン水B(300ppm)=35/35/30で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤S(亜鉛イオン108.5ppm、銅イオン110.3ppm、鉄イオン90ppm)を調製した。調製した歯周病殺菌剤の組成を表6に示す。
更に、実施例34として、亜鉛イオン水B(310ppm)/銅イオン水B(210ppm)/鉄イオン水C(450ppm)/アスコルビン酸カルシウム二水和物(分子量426.34)=35/35/20/10で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤T(亜鉛イオン108.5ppm、銅イオン73.5ppm、鉄イオン90ppm、カルシウムイオン0.94%)を調製した。実施例35として、亜鉛イオン水B(310ppm)/銅イオン水G(294ppm)/鉄イオン水C(450ppm)/乳酸カルシウム五水和物(分子量308.29)=30/44/24/2で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤U(亜鉛イオン93ppm、銅イオン129.4ppm、鉄イオン108.0ppm、カルシウムイオン0.26%)を調製した。実施例36として、亜鉛イオン水C(551ppm)/銅イオン水C(315ppm)/鉄イオン水B(300ppm)/アスコルビン酸カルシウム二水和物(分子量426.34)=23/30/43/4で精密に計量し、混合・溶解して、歯周病殺菌剤V(亜鉛イオン126.7ppm、銅イオン94.5ppm、鉄イオン129.0ppm、カルシウムイオン0.38%)を調製した。調製した歯周病殺菌剤の組成を表6に示す。
試験例4
本試験では、歯科医院における歯科医師及び/又は衛生士の管理下における、歯周病の治療または処置及びインプラント埋植歯のケアを想定した試験を実施した。本実施例29〜36の歯周病殺菌剤O〜Vを用いて以下の試験を行った。試験者はこれまでとは別の8名の試験者の協力を得た。8名の試験者は歯周病の患者であり、年齢は68歳〜74歳であった。本発明の歯周病殺菌剤O〜Vから8名の試験者に1人に1種を無作為に選択して処置した。試験者8名のうち3名はインプラントを埋植した試験者であった。
本試験では、歯科医院における歯科医師及び/又は衛生士の管理下における、歯周病の治療または処置及びインプラント埋植歯のケアを想定した試験を実施した。本実施例29〜36の歯周病殺菌剤O〜Vを用いて以下の試験を行った。試験者はこれまでとは別の8名の試験者の協力を得た。8名の試験者は歯周病の患者であり、年齢は68歳〜74歳であった。本発明の歯周病殺菌剤O〜Vから8名の試験者に1人に1種を無作為に選択して処置した。試験者8名のうち3名はインプラントを埋植した試験者であった。
本実施例の試験者は、超音波スケーラー(株式会社松風のEMS社製ピエゾンマスター700)を用いて、上下顎の各歯肉縁下の歯周のポケットを含む歯根部周辺をスケーリングしながら歯周病殺菌剤O〜Vを処置した。超音波スケーラーではインプラントでない歯根は通常の金属チップで行った。人工歯根のスケーリングでは、通常のチップに換えてインプラント用のチップを使用した。しかし、3名のインプラントを埋植した試験者のうち2名はインプラントの歯根がチタン製であったため、超音波スケーラーはプラスチックのチップに置き換えてスケーリング処置をした。スケーリング処置後に患者が歯周病殺菌剤でうがいするように指示した。インプラントのない試験者にはスケーリング直後に歯周病殺菌剤を注入するような手法で処置をした。スケーリングのチップと並列に噴射用のノズルをつけ、スケーリングと同時に水などを注水噴射するような手法が歯科医院でなされている。そのうちの一つの方法として、その水に換えて、噴射用のノズルに歯周病殺菌剤を大量に入れたドラムを接続させておき、スケーリングの作動と同時にスケーリングチップのそばから同時に歯周病殺菌剤を噴射する方式は処置をスムーズにできる。
試験期間として、初期、1か月後、及び3か月後に口腔内を観察した。歯周病殺菌剤O〜Vの注入処置は歯科医院のみで使用した。また初期から1か月後、及び1か月から3か月後は、自宅にて1日3回の食後のブラッシングに、本実施例の歯周病殺菌剤O〜Vをそのまま使用した。その結果、試供した8名の試験者が口臭もなく歯肉の引き締まり感が得られた。1か月後、3か月後と継続使用により、口腔内は清潔に保たれ、歯肉の締まり感がよく、歯周病は3か月後にはほぼ完治した。すなわち、歯周病には全く縁のないきれいな歯肉歯色を呈した。
以上のことから、本実施例29〜36の歯周病殺菌剤O〜Vは、歯科医院における歯科医師または衛生士の管理下での歯周病の治療または処置をするにあたり、歯ブラシによる機械的除去に加えて、超音波スケーラーを併用することにより、歯周ポケットの雑菌の殺菌・除去も効果的であった。更に、本実施例は、インプラント埋設歯の管理上、歯周病による重篤な事態に至る臨床課題を解決しうるという、重要な示唆を与えた。
実際の口腔内では、歯周病菌の多くは歯垢の中に生息しているので、スケーリングによって歯垢を削り出しながら、その中の歯周病菌を本発明の口腔内殺菌剤で殺菌するのが好ましい手法と言える。そこで、口腔内の歯肉縁上と縁下の歯周病原菌を考えると、ブラッシングでは歯肉縁上の菌は歯周病殺菌剤O〜Vで機械的に殺菌・除去されるが、歯肉縁下は歯周病原菌の残存があり得る。そこで、歯肉縁下や歯周ポケットを超音波スケーラーの機械的振動により歯垢などを除去する時に本実施例のように歯周病殺菌剤O〜Vを併用するか、もしくは、スケーリングの後に処置することで歯周病原菌を殺菌、除去することができる。
本実施例29〜36の歯周病殺菌剤O〜Vを用いて歯科医院で超音波スケーラーすることおよび、自宅にて当該殺菌剤を用いてブラッシングすることにより、口腔内の歯周ポケットなどの歯周病の原因菌を殺菌、除去することができ、歯周病から解放された歯肉の締まり感が得られ、健全な歯肉歯色を獲得することができる。本実施例の歯周病殺菌剤O〜Vの結果は歯周病原菌を除去し、歯茎をきれいに保つ効果が明確となった。
本発明では、口腔内殺菌剤としての発明の態様として、洗口剤、液体歯磨剤、及び歯周病殺菌剤について、実施例1〜36及び比較例1〜18を実施した。その検証結果を精査することにより、「主成分として、(A)亜鉛イオン、(B)銅イオン及び/又は鉄イオンを含む水、を含むことを特徴とする口腔内殺菌剤」の発明構成が重要であること、また更に、「金属イオンの特定の濃度」が重要であることが判った。すなわち、本発明の主訴とする「殺菌力が強く、生体に安全である。」を達成していることが確認できた。これにより、本発明の口腔内殺菌剤は、口腔内を歯周病から解放することができ、更には歯周病原菌由来の心筋梗塞や脳梗塞を未然に予防することができるため、健康寿命向上に期待できる。
尚、本発明の口腔内殺菌剤は、上述の特徴から、殺菌性洗口剤、殺菌性歯磨剤、歯周病殺菌剤の他、抗菌性手洗い、抗菌性風呂水、抗菌性洗濯水、抗菌性園芸水、等の抗菌剤や予防剤、更には循環器科や整形外科等を含む医療分野全般、抗菌性の医療用器具やその原材料、および児童用玩具やその原材料への応用、及び繊維業界における抗菌性繊維へ応用することにより、例えば生体に接触する肌着等へ応用することができる。
本発明の口腔内殺菌剤は、口腔内の歯周病原菌などを含む細菌への殺菌作用を有する洗口剤や歯磨剤や歯周病殺菌剤等に好適に利用することができる。
Claims (8)
- 主成分として、
(A)亜鉛イオン、
(B)銅イオン及び/又は鉄イオン
を含む水、を含むことを特徴とする口腔内殺菌剤。 - 前記水にさらにカルシウムイオンが含まれることを特徴とする請求項1に記載の口腔内殺菌剤。
- 亜鉛イオンの濃度が5.0〜500ppm、銅イオンの濃度が1.0〜300ppm及び/又は鉄イオンの濃度が1.0〜300ppmであることを特徴とする請求項1に記載の口腔内殺菌剤。
- 亜鉛イオンの濃度が5.0〜500ppm、銅イオンの濃度が1.0〜300ppm及び/又は鉄イオンの濃度が1.0〜300ppm、カルシウムイオンの濃度が0.01〜2.0%であることを特徴とする請求項2に記載の口腔内殺菌剤。
- 洗口剤として用いられることを特徴とする請求項1ないし4に記載の口腔内殺菌剤。
- 歯磨剤として用いられることを特徴とする請求項1ないし4に記載の口腔内殺菌剤。
- 前記歯磨剤が液体歯磨剤、ゲル状歯磨剤及び練歯磨剤から選択されるいずれか一つの歯磨剤であることを特徴とする請求項6に記載の口腔内殺菌剤。
- 歯周病殺菌剤として用いられることを特徴とする請求項1ないし4に記載の口腔内殺菌剤。
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JP2018011858A JP2019127475A (ja) | 2018-01-26 | 2018-01-26 | 口腔内殺菌剤 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR20210125125A (ko) * | 2020-04-07 | 2021-10-18 | 엠제이하이테크(주) | 포그 노즐을 이용한 소독부가 구비되는 이동용 화장실 |
WO2023219639A1 (en) * | 2022-05-12 | 2023-11-16 | Helix Science LLC | Composition for the control of oral malodor compounds |
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- 2018-01-26 JP JP2018011858A patent/JP2019127475A/ja active Pending
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