以下、図面を参照しながら、通信システムの複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分及び/又は関連付けられる部分には同一の参照符号が付す。対応する部分及び/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照できる。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の通信システム1の概略構成を示す。通信システム1は、予め相互に対応付けられた親機100と子機200とを備える。親機100は、車両に搭載された車載器である。子機200は、ユーザが携帯可能な携帯機である。親機100と子機200とは、互いに電波信号を送受信して、車両ドアの施開錠や車両エンジン始動許可といった様々な処理を協働して実施する車両用電子キーシステムの機能を備える。
本実施形態の通信システム1は、親機100と子機200とが協働して様々な処理を実施するにあたり、子機200が受信した電波信号が親機100から送信された電波信号であるかを検出する信号判別処理を行う。以下、信号判別処理を行うための通信システム1の構成を説明する。
<親機100の構成の説明>
図1に示すように、親機100は、第1親機側送信アンテナ110Lと、第2親機側送信アンテナ110Rと、親機側受信アンテナ120と、親機側送信部130と、親機側制御部140と、親機側受信部150と、を備える。
親機側送信部130は、親機側制御部140の制御の下で、所定周波数のLF波或いはVLF波で送信信号を変調及び増幅して、第1親機側送信アンテナ110L及び第2親機側送信アンテナ110Rから送信させる。所定周波数は、LF波の周波数帯30kHz〜300kHz或いはVLF波の周波数帯3kHz〜30kHzから適宜設定される。なお、LFは、Low Frequencyの略称であり、VLFは、Very Low Frequencyの略称である。本明細書ではVLFを含めた概念としてLFという用語を用いる。
各親機側送信アンテナ110L、110Rは、例えばバーアンテナである。第1親機側送信アンテナ110Lと、第2親機側送信アンテナ110Rと、は相互に離間する車両の所定位置に設けられる。例えば図2に示すように、第1親機側送信アンテナ110Lは、車両の助手席側ドアに設けられる。第2親機側送信アンテナ110Rは、車両の運転席側ドアに設けられる。第1親機側送信アンテナ110Lは、第1送信アンテナに対応する。第2親機側送信アンテナ110Rは、第2送信アンテナに対応する。
図2に示すように、第1親機側送信アンテナ110L及び第2親機側送信アンテナ110Rはそれぞれ周囲に、第1検知エリア301及び第2検知エリア302を形成する。ここで検知エリア301、302とは例えば、各親機側送信アンテナ110L、110Rから送信された電波信号を子機200が所定閾値以上の受信信号強度(以下、RSSI)で受信可能なエリアとして定義できる。検知エリア301、302の大きさは、例えば各親機側送信アンテナ110L、110Rの送信出力及び子機200の電波受信感度等を設定する等により、所望の大きさ(例えば10m等)にできる。
第1検知エリア301及び第2検知エリア302はそれぞれ、車内外に亘って形成できる。さらに第1検知エリア301及び第2検知エリア302は、これらが重なる検知エリア310が車内外に亘るように形成できる。このような車内外に亘って形成される検知エリア301、302、310は、例えば車両ボディを樹脂で形成する等により車両ボディの電磁シールド機能を制限することで実現される。
なお、各検知エリア301、302の大きさは、各親機側送信アンテナ110L、110Rから送信されるLF波の波長と比べて十分に小さい。即ち本明細書で言う子機200が親機100から送信された電波信号を受信する状況とは、子機200から各親機側送信アンテナ110L、110Rまでの距離がLF波の波長よりも十分に小さい状況である。また、この状況では、第1親機側送信アンテナ110Lから子機200までの距離と、第2親機側送信アンテナ110Rから子機200までの距離と、の距離差が、各親機側送信アンテナ110L、110Rから送信されるLF波の波長よりも十分に小さい。
図1の説明に戻る。親機側受信部150は、子機200からRF波で送信された電波信号を、親機側受信アンテナ120を介して受信する。親機側受信部150は、親機側受信アンテナ120から取得した電気信号を増幅し、かつ、その電気信号から電波信号を復調し、出力する。RF波とは、例えば300Hz〜3GHzの高周波の周波数帯の電波である。RFは、Radio Frequencyの略称である。
親機側受信アンテナ120は、車両において適宜設計される位置に設けられる。例えば、親機側受信アンテナ120は、車室内において車両の中央付近となる位置に設けられる。
親機側制御部140は、マイクロコンピュータを主体として構成される。親機側制御部140は、例えばROM等の記憶装置に記憶されたプログラムをCPU等のプロセッサが実行することにより、上記した車両ドアの施開錠などの処理及び後述する信号判別処理を含む各種処理を子機200と協働して実行する機能を有する。親機側制御部140の機能の少なくとも一部は、専用のIC等によって提供されてもよい。
信号判別処理のために親機側制御部140は、親機側送信部130を制御して、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから電波信号を所定時間差で逐次送信させる機能を備える。ここで言う逐次送信とは、第1親機側送信アンテナ110Lからの電波送信期間と、第2親機側送信アンテナ110Rからの電波送信期間と、が重複しないことである。
さらに親機側制御部140は、親機側送信部130を制御して、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから同期電波信号として、同位相の電波信号を同時送信させる機能を備える。
親機側制御部140は、複数の電波信号を同時送信していることを示す情報を同期電波信号に含ませて送信する機能を備える。これにより、子機200は、電波信号を受信した場合に複数の電波信号を同時受信したことを検出可能となる。
なお、電波信号を同時送信していることを示す情報を子機200に送信する方法は、これに限定されない。例えば、親機側制御部140は、同期電波信号の送信前後に所定タイミングに親機側送信アンテナ110L及び110Rの何れか一方から、同期電波信号を送信した或いは送信することを示す電波信号を送信してもよい。
後述する信号判別処理では、子機200は、電波信号を受信した際に検出した磁界の方向に基づいて、受信した電波信号が親機100から送信された電波信号であるかを判定する。そこで次に、親機側送信アンテナ110L、110Rから電波信号が送信される際に形成される磁界について説明する。
<親機100からの電波信号により形成される磁界の説明>
図3は、第2親機側送信アンテナ110Rから電波信号が送信されずに、第1親機側送信アンテナ110Lから所定周波数のLF波で電波信号が送信されている場合の検知エリア310内の磁界ベクトルB1を示す。この場合、第1親機側送信アンテナ110Lは、磁界ベクトルB1の方向(振動方向)が時間変化せずに一定であり、その大きさがLF波の所定周波数と同じ周波数で時間変化する磁界を検知エリア310に形成する。
図4は、第1親機側送信アンテナ110Lから電波信号が送信されずに、第2親機側送信アンテナ110Rから所定周波数のLF波で電波信号が送信されている場合の検知エリア310内の磁界ベクトルB2を示す。この場合、第2親機側送信アンテナ110Rは、磁界ベクトルB1の方向が時間変化せずに一定であり、その大きさがLF波の所定周波数と同じ周波数で時間変化する磁界を検知エリア310に形成する。
図3及び図4に示すように、相互に離間した親機側送信アンテナ110L、110Rの各々から送信された電波信号が検知エリア310内の子機側三軸受信アンテナ210の位置に形成する磁界ベクトルB1、B2の方向は通常異なる。
図5は、所定周波数のLF波で第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから同時に同位相の電波信号が送信されている場合の検知エリア310内の磁界ベクトルB1+B2を示す。この場合、任意位置での磁界は、第1親機側送信アンテナ110Lが形成する磁界ベクトルB1と第2親機側送信アンテナ110Rが形成する磁界ベクトルB2とを重ね合わせた磁界ベクトルB1+B2で表される。
さらに、同時送信される電波信号が同位相であるので、重ね合せた磁界ベクトルB1+B2は、その方向(振動方向)が回転せずに一定となり、且つ、その大きさが同時送信されたLF波の所定周波数と同じ周波数で時間変化する。
なお、厳密には、検知エリア310内の任意位置での磁界ベクトルB1の位相と磁界ベクトルB2の位相は、第1親機側送信アンテナ110Lからの距離と第2親機側送信アンテナ110Rからの距離との距離差に応じて同位相からずれる。しかし、この位相のずれは、上記したように距離差がLF波の波長よりも十分に小さいことに応じて無視できるほど小さい。
図6は、所定周波数のLF波で第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから同時に位相差を持つ電波信号が送信されている場合の検知エリア310内の磁界ベクトルB1+B2を示す。この場合も、検知エリア310内の任意位置での磁界は、第1親機側送信アンテナ110Lが形成する磁界ベクトルB1と第2親機側送信アンテナ110Rが形成する磁界ベクトルB2とを重ね合わせたものB1+B2となる。
さらに、所定周波数のLF波で同時送信される電波信号が位相差を持つので、重ね合せた磁界ベクトルB1+B2の方向と大きさは、位相差に対応する態様で時間変化する。位相差に対応する時間変化の具体例は、以下の通りである。
磁界ベクトルB1とB2の方向が直交し振幅が等しい場合を考える。この場合、同時送信される電波信号の位相差が90°であれば、重ね合せた磁界ベクトルB1+B2は、その先端が真円を描くように時間変化する。同時送信される電波信号の位相差が0°よりも大きくて90°よりも小さい場合を考える。この場合、位相差が小さいほど、重ね合せた磁界ベクトルB1+B2は、その先端がより扁平した楕円を描くように時間変化する。このように、重ね合せた磁界ベクトルB1+B2は、その方向及び大きさが位相差に対応する態様で時間変化する。
<子機200の構成の説明>
図1の説明に戻る。子機200は、図1に示すように、子機側三軸受信アンテナ210と、子機側送信アンテナ220と、子機側受信部230と、三軸磁界検出部231と、子機側制御部240と、子機側送信部250と、を備える。
子機側三軸受信アンテナ210は、親機側送信アンテナ110L、110RからLF波で送信された電波信号を受信する3軸アンテナである。子機200の受信アンテナとして3軸アンテナを用いる理由は、次の通りである。
後述する信号判別処理において子機200は、電波信号を受信した際の子機側三軸受信アンテナ210での磁界の方向に基づいて、受信した電波信号が親機100から送信された電波信号であるかを判定する。このため、電波信号を受信した際の子機側三軸受信アンテナ210での磁界の方向を測定可能とすべく、子機側三軸受信アンテナ210として3軸アンテナを用いている。
子機側三軸受信アンテナ210は、互いに直交したX軸アンテナとY軸アンテナとZ軸アンテナとを備える。X軸アンテナ、Y軸アンテナ及びZ軸アンテナの各々は、例えばコイルアンテナで構成される。
子機側受信部230は、子機側三軸受信アンテナ210で受信した電波信号を示す電気信号を取得する。子機側受信部230は、その電気信号を変調及び復調して、子機側制御部240に出力する。
三軸磁界検出部231は、子機側受信部230に設けられる。三軸磁界検出部231は、子機側三軸受信アンテナ210で電波信号を受信している際の子機側三軸受信アンテナ210のX軸、Y軸、Z軸の三軸各々の磁界強度を検出して、子機側制御部240に出力する。
電波信号受信時の三軸各々での磁界強度は、子機側三軸受信アンテナ210のX軸アンテナ、Y軸アンテナ及びZ軸アンテナの各々に流れる電流に基づいて検出される。本明細書では、子機側三軸受信アンテナ210の三軸各々での磁界強度を、三軸磁界強度とも呼ぶ。
三軸磁界検出部231で検出された三軸磁界強度は、子機側三軸受信アンテナ210の位置での3次元空間における磁界の向きと磁界の強さを示す磁界ベクトルを表す。具体的には、X軸の磁界強度とY軸の磁界強度とZ軸の磁界強度との比は、磁界の向き、即ち磁界ベクトルの方向を表す。X軸磁界強度の2乗とY軸磁界強度の2乗とZ軸磁界強の2乗との和の平方根は、磁界の強さ、即ち磁界ベクトルの大きさを表す。本明細書では、三軸磁界検出部231で検出された磁界ベクトルを検出磁界ベクトルという。
子機側送信部250は、子機側制御部240の制御の下で、RF波で子機送信信号を変調及び増幅して子機側送信アンテナ220から送信させる。子機側送信アンテナ220から送信される電波信号としては、例えば、検出磁界ベクトルを示す検出磁界情報を含む電波信号がある。
子機側制御部240は、マイクロコンピュータを主体として構成される。子機側制御部240は、例えばROM等の記憶装置に記憶されたプログラムをCPU等のプロセッサが実行することにより、上記した車両ドアの施開錠などの処理及び後述する信号判別処理を親機100と協働して実行する機能を有する。子機側制御部240の機能の少なくとも一部は、専用のIC等によって提供されてもよい。
子機側制御部240が信号判別処理を実行する機能は、子機側制御部240の機能ブロックとしての信号判定部300により実行される。信号判定部300は、子機側三軸受信アンテナ210で電波信号を受信している間の検出磁界ベクトルを三軸磁界検出部231から取得して、一時的に信号判定部300のメモリ等に記憶する機能を備える。
詳しくは、信号判定部300は、子機側三軸受信アンテナ210で電波信号を逐次受信した場合、各電波信号を受信している間の検出磁界ベクトルを取得してメモリに記憶する。この場合、逐次受信した回数に対応する複数の検出磁界ベクトルが取得され記憶される。また、信号判定部300は、子機側三軸受信アンテナ210で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルを取得して記憶する。
子機側三軸受信アンテナ210で電波信号を受信している間の検出磁界ベクトルは時間変化する。よって、信号判定部300は、検出磁界ベクトルを時間変化する物理量として取得して記憶する。例えば、信号判定部300は、LF波の周期よりも十分短い周期で、三軸磁界検出部231で検出された磁界ベクトルを標本化により取得することで、検出磁界ベクトルを時間変化する物理量として取得して記憶する。
さらに信号判定部300は、子機側三軸受信アンテナ210で電波信号を逐次受信した場合に、各電波信号の検出磁界ベクトルを合成することにより合成ベクトルを算出して記憶する機能を有する。合成ベクトルを算出する際には、各電波信号の検出磁界ベクトルの位相を揃えて合成する。即ち合成ベクトルとは、逐次受信した複数の電波信号を同時且つ同位相で受信した場合に検出されると期待される磁界ベクトルを表す。
信号判定部300は、記憶した検出磁界ベクトルの方向が時間変化するか、即ち、回転するか否かを判定する機能を備える。具体的には信号判定部300は、子機側三軸受信アンテナ210で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの方向が回転せずに一定であるかを判定する機能を備える。
なお、ここで言う検出磁界ベクトルの方向が回転せずに一定とは、厳密に検出磁界ベクトルの方向が回転しないことを意味しない。誤差等を考慮した上で予め定められた範囲内で、検出磁界ベクトルの方向が略回転せずに略一定と言う意味である。
考慮される誤差とは、例えば、図5の説明で記載した、第1親機側送信アンテナ110Lからの距離と第2親機側送信アンテナ110Rからの距離との距離差に応じて子機200の位置で生じる磁界ベクトルの位相差に起因する誤差である。また、第1親機側送信アンテナ110L及び第2親機側送信アンテナ110Rの各々の位置で発生する磁界もアンテナや送信回路の要求仕様範囲内で同位相からずれ得る。これらを考慮して、検出磁界ベクトルの方向が略回転せずに略一定とする範囲を予め定める。
また、信号判定部300は、記憶した検出磁界ベクトルと合成ベクトルを比較して一致するか否かを判定する機能を備える。具体的には信号判定部300は、子機側三軸受信アンテナ210で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの方向が合成ベクトルの方向と一致しているかを判定する機能を備える。
なお、ここで言う検出磁界ベクトルの方向が合成ベクトルの方向と一致するとは、厳密な一致を意味しない。誤差等を考慮した上で予め定められた範囲内で略一致するという意味である。
次に信号判別処理を説明する。信号判定処理とは、子機200で受信された電波信号が親機100から送信された電波信号であるかを判定する処理である。信号判別処理は、親機側制御部140により実行される親機側信号判定処理と、子機側制御部240の信号判定部300により実行される子機側制御処理とに分けることができる。親機側判定処理は、所定周期で繰り返し実行される。子機側信号判定処理は、常時実行される。
以下、親機側信号判別処理を図7を参照して説明し、続けて、子機側制御処理を図8を参照して説明する。
<親機側信号判別処理の説明>
図7に示すように、親機側制御部140は、親機側信号判別処理を開始すると、S11で親機側送信部130を制御して、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから電波信号を逐次送信させる。
なお、S11では、第1親機側送信アンテナ110Lから電波信号を送信し、その後、第2親機側送信アンテナ110Rから電波信号を送信してもよいし、逆の順番で送信してもよい。
S13で親機側制御部140は、S11での逐次送信完了後の所定時間以内に親機側送信部130を制御して、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから、同期電波信号として、同位相の電波信号を同時送信させる。なお、所定時間は、親機側制御部140と信号判定部300に予め記憶されている。また、S11と13とで第1親機側送信アンテナ110Lは同じ送信強度で電波信号を送信する。さらにS11と13とで第2親機側送信アンテナ110Rは同じ送信強度で電波信号を送信する。
S13が完了すると、親機側制御部140は、親機側信号判定処理を終了する。
<子機側信号判別処理の説明>
図8に示すように、S51で信号判定部300は、子機側三軸受信アンテナ210で電波信号を逐次受信したか否かを判定し、肯定判定がなされるとS53に進む。S51は、肯定判定がなされるまで繰り返される。
S53で信号判定部300は、S51で逐次受信した複数の電波信号間で検出磁界ベクトルB1、B2の方向が異なるか否かを判定する。S53で否定判定がなされると、処理はS55に進む。S53で肯定判定がなされると、処理はS57に進む。
S55で信号判定部300は、S51で逐次受信した複数の電波信号は親機100から逐次送信された電波信号ではないと判定して、S51に戻る。S55でこのように判定する理由は次の通りである。
図3及び図4の説明で記載したとおり、相互に離間した第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rの各々から送信された電波信号が子機側三軸受信アンテナ210の位置に形成する磁界ベクトルの方向は通常異なる。よって、子機200が逐次受信した複数の電波信号間で検出磁界ベクトルの方向が一致する場合には、親機側送信アンテナ110L、110Rから逐次送信された電波信号を子機200が逐次受信しなかったと判定する。
S57で信号判定部300は、S51で逐次受信した複数の電波信号の各々について検出磁界ベクトルB1、B2を合成した合成ベクトルB1+B2を算出してメモリ等に記憶する。
S59で信号判定部300は、S51で逐次受信を完了してから所定時間以内に子機側三軸受信アンテナ210で複数の電波信号を同時受信したか否かを判定する。S59で肯定判定がなされると処理はS61に進み、否定判定がなされるとS51に戻る。
S61で信号判定部300は、S59で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの方向が回転せずに一定であったか否かを判定する。S61で肯定判定がなされるとS63に進み、否定判定がなされるとS67に進む。
S67で信号判定部300は、S59で同時受信した電波信号は、親機100から送信された同期電波信号ではないと判定して、S51に戻る。このように判定する理由は次の通りである。
図5の説明で記載したとおり、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rから同時送信された同位相の電波信号が子機側三軸受信アンテナ210の位置に形成する磁界ベクトルの方向は、回転せずに一定である。また、図6の説明で記載したように、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rから同時送信された電波信号が位相差を有する場合、子機側三軸受信アンテナ210の位置に形成する磁界ベクトルの方向は回転する、即ち時間変化する。
よって、子機200が複数の電波信号を同時受信している間に検出磁界ベクトルの方向が回転する即ち時間変化する場合には、同時受信した複数の電波信号は親機100から同時送信された同位相の電波信号ではない、即ち同期電波信号ではないと判定できる。
S63で信号判定部300は、S59で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの方向がS57で算出した合成ベクトルの方向と一致するか否かを判定する。S63で肯定判定がなされるとS65に進み、否定判定がなされるとS67に進む。
S65で信号判定部300は、S59で同時受信した複数の電波信号は親機100から送信された同期電波信号であると判定する。この場合、子機200は、同期電波信号を受信した旨を子機側送信アンテナ220から親機100に送信して、車両ドアの施開錠や車両エンジン始動許可といった親機100との協働処理をさらなる電波信号の送受信を通じて実行する。そして協働処理が完了するとS51に戻る。
一方、S63で否定判定がなされて実行されるS67で信号判定部300は、S59で同時受信した複数の電波信号は親機100から送信された同期電波信号でないと判定して、S51に戻る。S67で上記の判定を行う理由は次の通りである。
図5の説明で記載したとおり、2つの親機側送信アンテナ110L及び110Rとから同時に電波信号が送信されている場合に子機200で検出される磁界は、磁界ベクトルB1及びB2とを重ね合わせた磁界ベクトルのB1+B2で表される。この重ね合せた磁界ベクトルB1+B2は、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとが別個に別時刻に逐次送信した電波信号により形成される磁界ベクトルB1、B2を合成した合成ベクトルと等しくなる。
よって、逐次受信した電波信号の検出磁界ベクトルを合成した合成ベクトルと、同時受信した電波信号の検出磁界ベクトルと、を比較して一致するか否かをS67で判定する。これにより、子機200で同時受信した電波信号が親機100から同時送信された電波信号であるかの検出精度を高めている。
<第1実施形態のまとめ>
以上の通信システム1では、親機側送信部130は、相互に離間した第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110から、同期電波信号として、同位相の電波信号を同時送信させる。信号判定部300は、子機側三軸受信アンテナ210で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの方向が回転せずに一定である場合に、同時受信した複数の電波信号は親機100から送信された同期電波信号であると判定する。
この構成により、子機200で同時受信した電波信号が親機100から送信された同期電波信号であるかを検出可能としている。
また、以上の通信システム1では、親機側送信部130は、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rの各々から、電波信号を逐次送信させる電波信号逐次送信を行う。
信号判定部300は、子機側三軸受信アンテナ210で複数の電波信号を逐次受信した場合に、逐次受信した各電波信号について検出された検出磁界ベクトルを合成することにより合成ベクトルを算出する。
信号判定部300は、子機側三軸受信アンテナ210で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの方向が回転せず且つ合成ベクトルの方向と一致する場合に、同時受信した電波信号は親機100から送信された同期電波信号であると判定する。
この構成によれば、子機200で同時受信した複数の電波信号が親機100から送信された同期電波信号であるかを信号判定部300が判定する際に、子機200で電波信号を逐次受信した際の検出磁界ベクトルを合成した合成ベクトルの方向を考慮する。即ち、合成ベクトルと、これと等しくなる期待される電波信号同時受信時の検出磁界ベクトルと、を比較する。
したがって、子機200で同時受信した複数の電波信号が親機100から送信された同期電波信号であるかを、より高精度に判定可能となる。
また、以上の通信システム1では、信号判定部300は、子機側三軸受信アンテナ210で逐次受信した電波信号間で検出磁界ベクトルの方向が異なる場合、逐次受信した複数の電波信号は親機100から逐次送信された電波信号であると判定する。
この構成は、相互に離間した第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rの各々から送信された電波信号が子機200の位置に形成する磁界ベクトルの方向が通常異なるという、図3及び図4の説明で記載した知見に基づく。この知見に基づいて、以上の構成は、子機200で逐次受信した複数の電波信号が親機100から逐次送信された電波信号であるかを検出可能としている。
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態の信号判別処理を変形した実施形態である。以下、変形点を中心に第2実施形態を説明する。
第1実施形態の信号判別処理では、親機100は電波信号の同時送信を一回行った。子機200は、同時受信した電波信号の検出磁界ベクトルの方向が回転せずに一定であるか否かに基づいて、同時受信した電波信号が親機100からの同期電波信号であるかを判定した。
これに対して第2実施形態の信号判別処理では、親機100は、電波信号の同時送信を2回行う。詳しくは、各電波信号同時送信における、第1親機側送信アンテナ110Lの電波送信強度と、第2親機側送信アンテナ110Rの電波送信強度と、の比を送信強度比とすると、親機100は異なる送信強度比で電波信号同時送信を2回行う。2回の電波信号同時送信のうち少なくとも一回の電波信号同時送信では、第1親機側送信アンテナ110Lの電波送信強度と第2親機側送信アンテナ110Rの電波送信強度が異なる。
子機200は、2回の電波信号同時受信の各々において磁界ベクトルの方向が回転せずに一定であるか否かに基づいて、2回の同時受信の電波信号の何れもが親機100からの同期電波信号であるかを判定する。詳しくは、子機200は、2回の電波信号同時受信のうち少なくとも一回の電波同時受信時に磁界ベクトルの方向が回転した場合、2回の同時受信の電波信号の何れもが親機100からの同期電波信号ではないと判定する。この構成は、次に点に着目して採用されている。
図5の説明で記載したとおり、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rから同時送信された同位相の電波信号が子機側三軸受信アンテナ210の位置に形成する磁界ベクトルの方向は、回転せずに一定となる。ここで、磁界ベクトルの方向が回転せずに一定となることは、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rの送信強度比によらない。
したがって、子機200で2回同時受信した電波信号が共に親機100から送信された同期電波信号であれば、親機100が同期電波信号を異なる送信強度比で送信していても、2回の同時受信の各々において検出磁界ベクトルの方向は回転せずに一定となる。
以下、以上の点を考慮した第2実施形態の信号判別処理を、親機側信号判別処理を示す図9と、子機側制御処理を示す図10と、を参照して説明する。
<親機側信号判別処理の説明>
図9に示すように、S111で親機側制御部140は、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから、同期電波信号として、第1送信強度比で同位相の電波信号を同時送信させる第1同時送信を行う。
S113で親機側制御部140は、第1同時送信完了後の所定時間以内に、第2同時送信を行う。第2同時送信では、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから、同期電波信号として、第1送信強度比とは異なる第2送信強度比で同位相の電波信号が同時送信される。
なお、親機側制御部140は、第1同時送信及び第2同時送信の少なくとも一方で、第1親機側送信アンテナ110Lの電波送信強度と第2親機側送信アンテナ110Rの電波送信強度を、例えば以下の方法で異ならせる。
一の方法では、2つの親機側送信アンテナ110L、110Rのうち何れか一方の電波送信強度を通常時よりも低下させる。低下させる程度は、例えば、電波送信強度の低下時に車両外部に形成される検知エリア310(図2参照)の外縁を車両から1m〜2m程度に位置させる低下程度とする。車両から1m〜2m程度以内で子機200が電波信号を受信して車両ドア開錠等の協働処理を実施できれば十分な場合があるからである。この観点から、電波送信強度を低下させることで電波送信強度を異ならせる処理は、通常時の電波送信強度での検知エリア310の外縁が車両から数m以上である場合に行うことが好ましい。
反対に、いずれか一方の親機側送信アンテナ110L、110Rの電波送信強度を通常時よりも増加させてもよい。電波送信強度を通常時よりも増加させることで電波送信強度を異ならせる処理は、通常時の電波送信強度では検知エリア310の外縁が車両から1〜2m程度にある場合に行うことが好ましい。その理由は、電波送信強度増加後の検知エリア310の外縁が車両から1〜2m以上とするためである。
また、送信電波強度を低下させる場合でも、増加させる場合でも、送信電波強度を変化させる側の親機側送信アンテナ110L、110Rを交互に切り替えて同時送信を複数回行ってもよい。さらに、各同時送信において両方の親機側送信アンテナ110L、110Rの送信電波強度を通常時に対して変化させてもよい。
以上をまとめると、2つの親機側送信アンテナ110Lと110Rの電波送信強度を異ならせる場合には、これらアンテナの検知エリア301、302の重なり領域である検知エリア310の外縁が車両から所定距離以上となるようにすると好適である。所定距離は、例えば上記の1m〜2m程度である。
親機側制御部140は、S113の第2同時送信が完了すると、親機側信号判別処理を終了する。
<子機側信号判別処理の説明>
図10に示すように、S151で子機側制御部240の信号判定部300は、子機側三軸受信アンテナ210で複数の電波信号を同時受信したか否かを判定する。S151で肯定判定がなされると処理はS153に進む。S151は、肯定判定がなされるまで繰り返される。
S153で信号判定部300は、S151で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの方向が回転せずに一定であったか否かを判定する。S153で肯定判定がなされるとS155に進む。否定判定がなされるとS161に進み、S151で同時受信した電波信号は、親機100が送信した同期電波信号でないと判定して、S151に戻る。
S155で信号判定部300は、S151で電波信号の同時受信を完了してから所定時間以内に、子機側三軸受信アンテナ210で新たに複数の電波信号を同時受信したか否かを判定する。S155で肯定判定がなされると処理はS157に進み、S157で否定判定がなされるとS161に進む。
S155で否定判定がなされた場合に進むS161で信号判定部300は、S151で同時受信した電波信号は、親機100から送信された同期電波信号ではないと判定してS151に戻る。
S157で信号判定部300は、S155で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの方向が回転せずに一定であったか否かを判定する。S157で肯定判定がなされるとS159に進み、否定判定がなされるとS161に進む。
S159で信号判定部300は、S151で同時受信した電波信号及びS155で同時受信した電波信号が共に親機100から送信された同期電波信号であると判定する。この場合、子機200は、第1実施形態のS65と同様に、同期電波信号を受信した旨を親機100に送信して、車両ドアの施開錠などの親機100との協働処理を実行する。協働処理が完了するとS151に戻る。
一方、S157で否定判定がなされた場合に進むS161で信号判定部300は、S151で同時受信した電波信号及びS155で同時受信した電波信号の何れもが親機100から送信された同期電波信号ではないと判定して、S151に戻る。
<第2実施形態のまとめ>
第2実施形態の信号判別処理では、少なくとも一回の電波信号同時送信において、第1親機側送信アンテナ110Lの電波送信強度と第2親機側送信アンテナ110Rの電波送信強度とを異ならせる。
この構成は、親機100以外の送信元が相互に離間した2つの送信アンテナから異なる電波送信強度で同位相の電波信号を同時送信することは考え難いことに着目している。
また、第2実施形態の信号判別処理では、親機側送信部130は、送信強度比が異なる電波信号同時送信を所定時間内に2回行う。
子機200の信号判定部300は、所定時間以内に2回、子機側三軸受信アンテナ210で電波信号を同時受信した場合に、次のようにして同時受信した電波信号は親機100からの同期電波信号であるかを判定する。信号判定部300は、少なくとも一回の電波信号同時受信の間に検出磁界ベクトルの方向が回転した場合は、2回同時受信した電波信号の何れもが親機100から送信された同期電波信号ではないと判定する。信号判定部300は、2回の電波信号同時受信の各々で検出磁界ベクトルの方向が回転せず一定のときは、2回同時受信した電波信号の何れもが親機100から送信された同期電波信号であると判定する。
この構成によれば、子機200で同時受信した電波信号が親機100から送信された同期電波信号であるかを、より高精度に判定可能となる。
(第3実施形態)
第3実施形態は、第1実施形態の信号判別処理を変形した実施形態である。以下、変形点を中心に第3実施形態を説明する。
第1実施形態の信号判別処理では、親機100は、電波信号の逐次送信を一回行い、電波信号の同時送信を一回行った。子機200は、逐次受信し各電波信号の磁界ベクトルを合成して合成ベクトルを算出した。子機200は、電波信号を同時受信した際の検出磁界ベクトルの方向が合成ベクトルの方向に一致した場合、同時受信した電波信号が親機100からの同期電波信号であると判定した。
これに対して第3実施形態の信号判別処理は、子機200で同時受信した電波信号が親機100から送信された同期電波信号であるかをより高精度に判定可能とするために、次のように構成される。
親機100は、電波信号の逐次送信を一回行い、電波信号の同時送信を2回行う。子機200は、1回目の同時受信時の検出磁界ベクトルの方向が合成ベクトルの方向に一致するか否か判定する。さらに子機200は、2回目の同時受信時の検出磁界ベクトルの方向が1回目の同時受信時の検出磁界ベクトルの方向と一致するか否かを判定する。
以下、第3実施形態の親機側信号判別処理を図11を参照して説明し、続けて、子機側制御処理を図12を参照して説明する。
<親機側信号判別処理の説明>
図11に示すように、S211で親機側制御部140は、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから電波信号を逐次送信させる。S211は、第1実施形態のS11と同様の処理である。
S213で親機側制御部140は、S11で逐次送信を完了してから所定時間以内に、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから、同期電波信号として、同位相の電波信号を同時送信させる第1同時送信を行う。
S215で親機側制御部140は、第1同時送信完後の所定時間以内に、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから、同期電波信号として、S213と同じ送信強度比で同位相の電波信号を同時送信させる第2同時送信を行う。S215が終了すると、親機側制御部140は、親機側信号判定処理を終了する。
<子機側信号判別処理の説明>
図12に示す子機側信号判別処理におけるS251、S253、S257、S259、S261、S263は、第1実施形態のS51、S53、S57、S59、S61、S63と同様であるので、第1実施形態の説明を参照されたい。
S265で子機側制御部240の信号判定部300は、S259で電波信号同時受信を完了してから所定時間以内に、新たに子機側三軸受信アンテナ210で複数の電波信号を同時受信したか否かを判定する。S265で肯定判定がなされるとS267に進み、否定判定がなされるとS273に進む。
S267で信号判定部300は、S265で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの方向が回転せずに一定であったか否かを判定し、肯定判定した場合はS269に進み、否定判定した場合はS273に進む。
S269で信号判定部300は、S265で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの方向が、S259で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの方向と一致するか否か判定する。S269で肯定判定がなされるとS271に進み、否定判定がなされるとS273に進む。
S271で信号判定部300は、S259及びS265で同時受信した電波信号の何れもが、親機100から送信された同期電波信号であると判定する。この場合、子機200は、第1実施形態のS65と同様に、同期電波信号を受信した旨を親機100に送信して、車両ドアの施開錠などの親機100との協働処理を実行して、S251に戻る。
S269で否定判定がなされて実行されるS271で信号判定部300は、S259及びS265で同時受信した電波信号の何れもが、親機100から送信された同期電波信号ではないと判定して、S251に戻る。
なお、以上のS269、S271、S273の構成は次の点に着目したものである。
図5の説明で記載したとおり、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rから同時送信された同位相の電波信号が子機側三軸受信アンテナ210の位置に形成する磁界ベクトルの方向は、回転しない。ここで、磁界ベクトルの方向は、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rの送信強度比が同じならば、同じ方向となる。
したがって、親機100が同じ送信強度比で2回同時送信を行った場合には、2回の同時受信時の検出磁界ベクトルの方向は同じ方向となり、異なる方向となることは通常ないと考えられる。
このようにして、第3実施形態は、子機200で同時受信した電波信号が親機100から送信された同期電波信号であるかをより高精度に判定可能としている。
(第4実施形態)
第4実施形態の通信システム2は、第1実施形態を拡張した実施形態である。以下、拡張点を中心に第4実施形態を説明する。
第4実施形態の通信システム2は、親機100から同期電波信号として同時送信される電波信号の位相を同位相に補正する同期補正処理を行う機能を備える。同期補正処理は、親機100と子機200が通信している状態で、即ち親機100から送信された同期電波信号を子機200が受信可能と確認されている状態で行われる。
第4実施形態の通信システム2は、同期補正処理を実現するために、図13に示すように、親機側制御部140に設けられた通信成立判定部500及び同期補正部600と、子機側制御部240に設けられた位相乖離推定部400と、をさらに備える。
通信成立判定部500は、親機100から送信された同期電波信号を子機200が受信可能な状態であることを確認する機能を備える。この確認は、例えば次のように行う。
通信システム2のユーザが子機200を検知エリア310内、例えば車両内に持ち込んでいる場合に操作されるべき親機100又は子機200の所定スイッチが操作されたことを通信成立判定部500は検出する。この検出に基づいて、通信成立判定部500は、同期電波信号を子機200が受信可能な状態であることを確認する。
或いは、整備工場等で車両に接続される診断ツールを用いる。例えば、親機100から送信された同期電波信号を子機200が受信できる状況であることを示す確認情報を診断ツールから親機100に送信する。この確認情報に基づいて、通信成立判定部500は、同期電波信号を子機200が受信可能な状態であることを確認する。
位相乖離推定部400は、子機側三軸受信アンテナ210で同期電波信号を受信している間の検出磁界ベクトルの向きが回転したか否かに基づいて、親機100から同期電波信号として同時送信された電波信号の位相が同位相であるかを判定する。同位相ではないと判定した場合、位相乖離推定部400は、同期電波信号として同時送信された電波信号間の位相差について同位相からの乖離を推定する。この乖離の推定は、次のようにして行うことができる。
図6の説明で記載したとおり、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから同時に位相差を持つ電波信号が送信されている場合、検出磁界ベクトルの先端は、位相差に対応する形状を持つ楕円を描くように時間変化する。具体的には、位相差が小さいほど、検出磁界ベクトルの先端はより扁平な楕円を描くように時間変化する。この点に着目して、検出磁界ベクトルの先端が描く楕円の形状から、同期電波信号として同時送信された電波信号間の位相差について同位相からの乖離を推定する。
位相乖離推定部400は、推定した位相の乖離を示す位相乖離情報を、子機側送信アンテナ220から親機100に送信する。
同期補正部600は、子機200から送信された位相乖離情報に基づいて、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから同期電波信号として同時送信される電波信号間の位相差を同位相に補正する。この補正は、例えば第1親機側送信アンテナ110L及び第2親機側送信アンテナ110Rの各々に対して設けられている位相調整器(図示なし)を調整することで行われる。
以上の通信成立判定部500、同期補正部600及び位相乖離推定部400を用いた同期補正処理を、親機100により実行される親機側同期補正処理と、子機200により実行される子機側同期補正処理と、に分けて以下説明する。
<親機側同期補正処理の説明>
図14に示す親機側同期補正処理は、通信成立判定部500によって親機100が子機200と通信している状態であることが確認されているときに、親機側制御部140が同期補正処理の開始コマンドを取得した場合に実行される。同期補正処理の開始コマンドは、車両又は子機200の所定スイッチが操作されたとき、或いは診断ツール等から発せられる。
親機側同期補正処理を開始すると、S411で親機側制御部140は、第1親機側送信アンテナ110Lと第1親機側送信アンテナ110Lとから同期電波信号として電波信号を同時送信する。
S413で親機側制御部140は、子機200から送信された位相乖離情報を親機側受信アンテナ120を介して取得する。
S415で親機側制御部140は、取得した位相乖離情報に基づいて、2つの親機側送信アンテナ110L、110Rとから同期電波信号として同時送信される電波信号間の位相差を同位相に補正する。この補正は、親機側制御部140の機能ブロックである同期補正部600が行う。
<子機側同期補正処理の説明>
図15に示す子機側同期補正処理は、例えば同期補正処理を開始することを子機200が親機100から受信した場合に開始される。
子機側同期補正処理を開始すると、S451で子機側制御部240は、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rから同期電波信号として同時送信された電波信号を子機側三軸受信アンテナ210を介して受信する。
S453で子機側制御部240は、S451で電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの時間変化に基づいて、2つの親機側送信アンテナ110L、110Rから同時送信された電波信号の位相について同位相からの乖離を推定する。S453は、子機側制御部240の機能ブロックとしての上記位相乖離推定部により行われる。
S455で子機側制御部240は、S453で推定した位相乖離を示す位相乖離情報を、子機側送信アンテナ220から親機100に送信する。
<第4実施形態のまとめ>
以上の第4実施形態では、親機100から同期電波信号として同時送信された複数の電波信号を子機200が受信可能なことが確認されている状態で位相乖離推定部400は、位相乖離推定を行う。位相乖離推定で位相乖離推定部400は、子機200で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの時間変化に基づいて、複数の電波信号の実際の位相差を推定する。この複数の電波信号の実際の位相差は、同期電波信号として同時送信された複数の電波信号の位相差が同位相から乖離している程度を示す。同期補正部600は、位相乖離推定部400により推定された実際の位相差に基づいて、同期電波信号として第1親機側送信アンテナ110L及び第2親機側送信アンテナ110Rから同時送信される電波信号の位相差を同位相に補正する。
この構成によれば、信号判別処理における誤判定を抑制できる。即ち、親機100から送信された同期電波信号を子機200が受信した場合において、子機200は、受信した電波信号が親機100からの同期電波信号ではないと誤判定することを抑制できる。
(第5実施形態)
第5実施形態は、第1実施形態を変形した実施形態である。以下、変形点を中心に第5実施形態を説明する。
第1実施形態では、親機100から送信された電波信号を子機200が受信した否かを検出磁界ベクトルに基づいて判定する信号判定部300が子機側制御部240に設けられていた。
これに対して第5実施形態では、図16に示すように、信号判定部300が、親機側制御部140に設けられる。これに伴い、子機側制御部240は、検出磁界ベクトルを示す検出磁界情報を子機側送信アンテナ220から親機100に送信する。親機100に設けられた信号判定部300は、子機200から送信された検出磁界情報を取得して、親機100から送信された電波信号を子機200が受信した否かを判定する。
以下、第5実施形態の同期電波信号処理を実現するための、親機側信号判別処理を図17を参照して説明し、続けて、子機側制御処理を図18を参照して説明する。
<親機側信号判別処理の説明>
図17に示すように、親機側信号判別処理を開始すると、S511で親機側制御部140の信号判定部300は、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから電波信号を逐次送信させる。この処理は、第1実施形態のS11と同様の処理である。
S513で信号判定部300は、子機200から送信された検出磁界情報を親機側受信アンテナ120で受信したか否かを判定する。S513で否定判定がなされると、信号判定部300は親機側信号判定処理を終了する。S513で肯定判定がなされるとS515に進む。
なお、S513でいう検出磁界情報とは、子機200が電波信号を逐次受信した場合における各電波信号の受信時の検出磁界ベクトルを示す情報である。
S515で信号判定部300は、S513で受信した検出磁界情報を用いて、子機200が逐次受信した電波信号間で検出磁界ベクトルの方向が異なるか否かを判定する。S515で肯定判定がなされるとS517に進み、否定判定がなされるとS529に進む。なお、S515は、第1実施形態のS53と同様の処理である。
S515で否定判定がなされて進むS529で信号判定部300は、異常が発生したと判定して親機側信号判別処理を終了する。ここで言う異常とは、何らかの理由で、S511で逐次送信した電波信号を、子機200が検知エリア310外で受信した等の異常である。見方を変えると、子機200は、親機100が逐次送信した電波信号を検知エリア310内で直接受信しなかったと言える。
S517で信号判定部300は、S513で受信した検出磁界情報を用いて、子機200が逐次受信した各電波信号についての検出磁界ベクトルを合成することにより合成ベクトルを算出する。なお、S517は、第1実施形態のS55と同様の処理である。
S519で信号判定部300は、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから、同期電波信号として、同位相の電波信号を同時送信させる。S519は、第1実施形態のS13と同様の処理である。
S521で信号判定部300は、子機200から送信された検出磁界情報を親機側受信アンテナ120で受信したか否かを判定する。S521でいう検出磁界情報とは、S519で親機100から同期電波信号として同時送信した同位相の電波信号を子機200が同時受信している間の検出磁界ベクトルを示す情報である。
S521で否定判定がなされると、信号判定部300はS529に進み、異常が発生している判定して、親機側信号判別処理を終了する。一方、S521で肯定判定がなされると、S523に進む。
S523で信号判定部300は、S521で受信した検出磁界情報が示す検出磁界ベクトルの方向が回転せず一定であるか否かを判定する。この判定、第1実施形態のS61と同様の判定である。
S523で肯定判定がなされるとS525に進む。S523で否定判定がなされると、S529に進み、異常が発生したと判定して親機側信号判別処理を終了する。ここで言う異常とは、何らかの理由で、S519で送信した同期電波信号を子機200が検知エリア310外で受信した等の異常である。見方を変えると、子機200は、親機100が送信した同期電波信号を検知エリア310内で受信しなかったと言える。
S525で信号判定部300は、S521で受信した検出磁界情報が示す検出磁界ベクトルの方向が回転せず且つS517で算出した合成ベクトルの向きと一致するか否かを判定する。この判定は、第1実施形態のS63と同様の処理である。S525で肯定判定がなされるとS527に進む。S525で否定判定がなされると、S529に進み、異常が発生したと判定して、親機側信号判別処理を終了する。ここで言う異常とは、何らかの理由で、S511で逐次送信した電波信号及びS519で送信した同期電波信号を子機200が検知エリア310外で受信した等の異常である。
S527で信号判定部300は、S511で逐次送信した電波信号及びS519で送信した同期電波信号を子機200が正常に受信したと判定する。ここで言う正常とは、子機200が検知エリア310内で電波信号を受信したことである。この場合、親機100は、車両ドアの施開錠や車両エンジン始動許可といった子機200の協働処理をさらなる電波信号の送受信を通じて実行する。そして協働処理が完了すると親機側信号判別処理を終了する、
<子機側同期補判定処理の説明>
図18に示すように、子機側信号判別処理を開始すると、S551で子機側制御部240は、子機側三軸受信アンテナ210で電波信号を逐次受信したか否かを判定し、肯定判定がなされるとS553に進む。S551は、肯定判定がなされるまで繰り返される。なお、S551は、第1実施形態のS51と同様の処理である。
S553で子機側制御部240は、S551で逐次受信した複数の電波信号について各電波信号の受信時の検出磁界ベクトルを示す検出磁界情報を子機側送信アンテナ220から送信する。S553で送信される検出磁界情報が、親機100がS513で受信する検出磁界情報である。
S555で子機側制御部240は、子機側三軸受信アンテナ210で複数の電波信号を同時受信したか否かを判定する。S555は、第1実施形態のS59と同様の処理である。
S557で子機側制御部240は、S555で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルを示す検出磁界情報を子機側送信アンテナ220から送信する。S557で送信される検出磁界情報が、親機100がS521で受信する検出磁界情報である。S557が完了すると、子機側信号判定処理を終了する。
<第5実施形態のまとめ>
以上の第5実施形態では、子機200は、三軸磁界検出部231で検出された検出磁界ベクトルを示す検出磁界情報を親機100に送信するように構成される。親機100に設けられた信号判定部300は、子機200から送信された検出磁界情報を用いて、子機200が受信した電波信号は親機100から送信された電波信号であるかの同期信号判定を第1実施形態と同様に行う。
このように親機100に信号判定部300を設ける構成でも第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第5実施形態では親機100に信号判定部300を設けているので、子機200の処理負荷を低減できる。
(第6実施形態)
第6実施形態は、第1実施形態の信号判別処理を変形した実施形態である。以下、変形点を中心に第6実施形態を説明する。
第1実施形態では、親機100は、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから、同期電波信号として、同位相の電波信号を同時送信した。子機200の信号判定部300は、子機側三軸受信アンテナ210で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの方向から、同時受信した電波信号は親機100から同時送信された同位相の電波信号であるかを判定した。
これに対して第6実施形態では、親機100は、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから、同期電波信号として、所定位相差の電波信号を同時送信する。子機200の信号判定部300は、子機側三軸受信アンテナ210で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの時間変化に基づいて、同時受信した電波信号は親機100から同時送信された所定位相差の電波信号であるかを判定する。
以下、第6実施形態の親機側信号判別処理を図19を参照して説明し、続けて、子機側制御処理を図20を参照して説明する。
<親機側信号判別処理>
図19に示すS611は、第1実施形態のS11と同様の処理であるので、説明を省略する。
S613で親機側制御部140は、S611での逐次送信完了後の所定時間以内に、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから、同期電波信号として、所定位相差の電波信号を同時送信させる。親機側制御部140は、S613を完了すると、親機側信号判別処理を終了する。
なお、同期電波信号の所定位相差は、予め定められた位相差であり、親機側制御部140のメモリ等及び子機側制御部240のメモリ等に予め記憶されることにより、親機100と子機200とで共有されている。所定位相差は、同位相である0°以外であれば、その値は特に限定されず、例えば90°としてもよい。
<子機側信号判別処理>
図20に示すS651、S653、S655は、第1実施形態のS51、S53、S55と同様の処理であるので、これらの説明を省略する。
S657で信号判定部300は、S51で逐次受信した複数の電波信号の各々の検出磁界ベクトルをメモリ等に記憶する。具体的には、S51で2つの電波信号を逐次受信した場合、2の検出磁界ベクトルをメモリ等に記憶される。
S659で信号判定部300は、S651で逐次受信を完了してから所定時間以内に子機側三軸受信アンテナ210で複数の電波信号を同時受信したか否かを判定する。S659で肯定判定がなされると処理はS661に進み、否定判定がなされるとS651に戻る。なお、S659は、第1実施形態のS59と同様の処理である。
S661で信号判定部300は、S659で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルが、メモリに記憶されている所定位相差及びS657で記憶した2つの検出磁界ベクトルに対応する態様で時間変化したか否かを判定する。
S661の判定のために、信号判定部300は、複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの時間変化態様と、所定位相差及び逐次受信される電波信号の各検出磁界ベクトルと、間の関係を記憶している。この関係を、以下、説明する。
所定位相差90°の場合を考える。この場合、逐次受信した2つの電波信号の検出磁界ベクトルの方向が直交し振幅が等しいとき、この2つ検出磁界ベクトルに対応する磁界ベクトルの時間変化態様として真円が定まる。
ここで、子機200の位置によっては、逐次受信した2つの電波信号の検出磁界ベクトルの方向が斜交し振幅が異なる場合がある。この場合でも、2つの検出磁界ベクトルに対応する磁界ベクトルの時間変化態様として、扁平率等で定める楕円形状を予め定めることができる。
所定位相差が90°以外の他の値の場合でもあっても、同様な考え方で、複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの時間変化態様と、所定位相差及び逐次受信される電波信号の各検出磁界ベクトルと、間の関係を予め定めることができる。
S661の判定に関し、親機側送信アンテナ110L、110Rが設けられる位置及び形成する磁界によっては、同時受信した2つの電波信号の各々により形成される磁界ベクトルを子機200が逐次受信電波信号以外から推定可能な場合も考えられる。この場合、同期電波信号を受信したかを判定するために、S661で信号判定部300は、電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルが所定位相差に対応する態様で時間変化したか否かを判定してもよい。
S661で肯定判定がなされた場合、S663に進み、信号判定部300は、S659で同時受信した電波信号は、親機100が同時送信した所定位相差の電波信号、即ち同期電波信号であると判定する。この場合、子機200は、車両ドアの施開錠といった親機100との協働処理をさらなる電波信号の送受信を通じて実行する。そして協働処理が完了するとS651に戻る。
一方、S661で否定判定がなされた場合、S665に進み、信号判定部300は、親機100が同時送信した所定位相差の電波信号、即ち同期電波信号を受信しなかったと判定して、S651に戻る。
<第6実施形態のまとめ>
以上の第6実施形態では、親機側送信部130は、相互に離間した第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rから、同期電波信号として、所定位相差の電波信号を同時送信させる電波信号同時送信を行う。
子機200の信号判定部300は、複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルが、所定位相差に基づいた態様で時間変化した場合に、同時受信した複数の電波信号は、親機100から送信された同期電波信号であると判定する。
このように構成すれば、同期電波信号として所定位相差の電波信号を同時送信させる場合であっても、子機200で同時受信した電波信号は親機100から送信された同期電波信号であるかを検出可能となる。
また、以上の第6実施形態は、親機側送信部130は、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側の各々から、電波信号を逐次送信させる電波信号逐次送信を行う。信号判定部300は、子機側三軸受信アンテナ210で複数の電波信号を逐次受信した場合に、逐次受信した各電波信号について検出された検出磁界ベクトルを記憶する。
信号判定部300は、複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルが所定位相差及びで逐次受信した各電波信号の検出磁界ベクトルに対応する態様で時間変化した場合に、同時受信した電波信号は親機100からの同期電波信号であると判定する。
この構成によれば、子機200で同時受信した複数の電波信号が親機100から送信された同期電波信号であるかを信号判定部300が判定する際に、子機200で電波信号を逐次受信した際の検出磁界ベクトルを考慮する。よって、子機200で同時受信した複数の電波信号が親機100から送信された同期電波信号であるかを、より高精度に判定可能となる。
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態を説明したが、開示した技術は上記の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も開示した範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
上記実施形態では、予め相互に対応付けられた親機100と子機200とを備える通信システム1、2、3として、車載器と電子キーとを備えた車両用電子キーシステムを示した。
しかし、通信システム1、2、3は、車両用電子キーシステムに限定されない。例えば、通信システム1、2、3は、親機100である建物側設置装置と、子機200である携帯機と、を備え、建物のドアの施開錠など親機100と子機200との間の電波送受信を通じて実施する建物用電子キーシステムに適用可能である。
第1実施形態の信号判別処理のS11で親機100は、第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから電波信号を逐次送信した。しかし、S11は省略してもよい。この場合、逐次受信した電波信号に処理に関する子機200のS51、S53、S55、S57、S63も省略すればよい。
第2実施形態の信号判別処理において、第1実施形態と同様に親機100は第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから電波信号を逐次送信してもよい。この場合、子機200は、逐次受信した電波信号に関するS51、S53、S55、S57、S63を実行すればよい。
第3実施形態の信号判別処理から、親機100が第1親機側送信アンテナ110Lと第2親機側送信アンテナ110Rとから電波信号を逐次送信するS211を省略してもよい。この場合、逐次受信した電波信号に処理に関する子機200のS251、S253、S255、S257、S263も省略すればよい。
第4実施形態において子機側制御部240に設けられた位相乖離部400を、親機側制御部240に設けてもよい。この場合、位相乖離部400が位相の乖離を推定するために必要な検出磁界ベクトルの情報を、子機200は親機100に送信すると構成とすればよい。また、第4実施形態において通信成立判定部500を子機側制御部240に設けてもよい。この場合、子機200は、親機100と通信しており親機100からの同期電波信号を受信可能な状態であることを、親機100に送信する構成とすればよい。
第5実施形態では、信号判定部300を親機側制御部140に設ける構成を第1実施形態に信号判定処理に適用した。しかし、信号判定部300を親機側制御部140に設ける構成は、第2実施形態及び第3実施形態の信号判定処理に適用してもよい。
<第6実施形態の変形例1>
第6実施形態では、親機側送信アンテナ110L及び110Rから同期電波信号として所定位相差の電波信号を同時送信させる構成を第1実施形態の信号判定処理に適用した。同期電波信号として所定位相差の電波信号を同時送信させる構成は、第2実施形態の信号判定処理にも適用できる。
この場合、親機側送信アンテナ110L及び110Rから、異なる電波送信強度で、所定位相差の電波信号を同時送信させる。
さらに第2実施形態と同様に、親機側制御部140は、第1送信強度比で、親機側送信アンテナ110L及び110Rから同期電波信号として所定位相差の電波信号を同時送信させる第1同時送信を行う。さらに親機側制御部140は、第1同時送信完了後の所定時間以内に、第1送信強度比とは異なる第1送信強度比で、親機側送信アンテナ110L及び110Rから同期電波信号として所定位相差の電波信号を同時送信させる第2同時送信を行う。
子機200の信号判定部300は、所定時間以内に2回、子機側三軸受信アンテナ210で電波信号を同時受信した場合に、次のようにして同時受信した電波信号が親機100から送信された同期電波信号であるかを判定する。信号判定部300は、少なくとも一回の電波信号同時受信の間に検出磁界ベクトルが所定位相差に対応する態様で時間変化しなかったときは、2回同時受信した電波信号の何れもが親機100から送信された同期電波信号ではないと判定する。信号判定部300は、2回の電波信号同時受信の各々で検出磁界ベクトルが所定位相差に対応する態様で時間変化したときは、2回同時受信した電波信号の何れもが親機100から送信された同期電波信号であると判定する。
この構成によれば、第2実施形態と同様に、子機200で同時受信した複数の電波信号が親機100から送信された同期電波信号であるかを、より高精度に判定可能となる。
<第6実施形態の変形例2>
上記変形例1と同様に、親機側送信アンテナ110L及び110Rから同期電波信号として所定位相差の電波信号を同時送信させる構成は、第3実施形態の信号判定処理にも適用可能である。
<第6実施形態の変形例3>
親機側送信アンテナ110L及び110Rから同期電波信号として所定位相差の電波信号を同時送信させる構成は、第4実施形態の同期補正処理にも適用可能である。
詳しくは、位相乖離推定部400は、子機200で複数の電波信号を同時受信している間の検出磁界ベクトルの時間変化に基づいて、複数の電波信号の実際の位相差を推定する。この複数の電波信号の実際の位相差は、同期電波信号として同時送信された複数の電波信号の位相差が所定位相差から乖離している程度を示す。
同期補正部600は、位相乖離推定部400により推定された実際の位相差に基づいて、同期電波信号として第1親機側送信アンテナ110L及び第2親機側送信アンテナ110Rから同時送信される電波信号の位相差を所定位相差に補正する。
この構成によれば、第4実施形態と同様に、信号判別処理における誤判定を抑制できる。
<第6実施形態の変形例4>
親機側送信アンテナ110L及び110Rから同期電波信号として所定位相差の電波信号を同時送信させる構成は、第5実施形態の同期補正処理にも適用可能である。
即ち、子機200は、三軸磁界検出部231で検出された検出磁界ベクトルを示す検出磁界情報を親機100に送信するように構成される。親機100に設けられた信号判定部300は、子機200から送信された検出磁界情報を用いて、子機200が受信した電波信号は親機100から送信された電波信号であるかの同期信号判定を行う。
このように親機100に信号判定部300を設ける構成でも第6実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第6実施形態の変形例4では親機100に信号判定部300を設けているので、子機200の処理負荷を低減できる。