JP2019123805A - ブロックコポリマー、ミセル組成物、及び医薬組成物 - Google Patents

ブロックコポリマー、ミセル組成物、及び医薬組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】正常組織のpH環境(pH7.4)における分解が低減された、新規のpH感受性ブロックコポリマー、前記ブロックコポリマーを含むミセル組成物、及び前記ミセル組成物を含む医薬組成物を提供する。【解決手段】親水性ポリマーセグメント及び疎水性ポリマーセグメントを含むブロックコポリマーであって、前記親水性ポリマーセグメントと前記疎水性ポリマーセグメントとが、下記一般式(I)で表される構造を含む2価の連結基で連結されている、ブロックコポリマー(式中、X1〜X4は、それぞれ独立に、水素原子又は電子吸引性基である。ただし、X1〜X4の少なくとも1つは電子吸引性基である。*は結合手を表す。)。[化1]【選択図】なし

Description

本発明は、ブロックコポリマー、ミセル組成物、及び医薬組成物に関する。
親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとを有するブロックコポリマーは、水性溶媒中で、親水性ポリマーセグメントのシェルと疎水性ポリマーセグメントのコアからなるミセルを形成する。このようなミセルは、コア部分に疎水性薬物を封入可能なことから、薬物送達のキャリアとして注目されている。
一方、薬物送達技術においては、疾患部位の細胞特異的に、薬物が取り込まれることが重要である。例えば、親水性ポリマーセグメントとしては、ポリエチレングリコール(PEG)が用いられることが多いが、PEGにより形成されるシェルは、ミセルの細胞への取り込みを低下させる。そのため、PEGを用いたブロックコポリマーミセルにおいて、pH依存的にPEGを脱離させることにより、がん細胞への取り込みを改善する試みが提案されている(非特許文献1)。
Xu Y. et al., Nanomicelles based on a boronate ester-linked diblock copolymer as the carrier of doxorubicin with enhanced cellular uptake. Colloids Surf B Biointerfaces. 2016 May 1;141:318-326.
しかしながら、非特許文献1のブロックコポリマーでは、正常組織のpH環境(pH7.4)においても、PEGセグメントが脱離してしまい、正常細胞にも薬物が取り込まれるという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、正常組織のpH環境(pH7.4)における分解が低減された、新規のpH感受性ブロックコポリマー、前記ブロックコポリマーを含むミセル組成物、及び前記ミセル組成物を含む医薬組成物を提供することを課題とする。
本発明は、以下の態様を含む。
[1]親水性ポリマーセグメント及び疎水性ポリマーセグメントを含むブロックコポリマーであって、
前記親水性ポリマーセグメントと前記疎水性ポリマーセグメントとが、下記一般式(I)で表される構造を含む2価の連結基で連結されている、ブロックコポリマー。
[式中、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又は電子吸引性基である。ただし、X〜Xの少なくとも1つは電子吸引性基である。*は結合手を表す。]
[2]前記一般式(I)中、X及びXの少なくとも1つが電子吸引性基である、[1]に記載のブロックコポリマー。
[3]前記疎水性ポリマーセグメントが、アミノ酸から誘導される繰り返し単位を有する、[1]又は[2]に記載のブロックコポリマー。
[4]前記電子吸引性基がフッ素原子である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
[5][1]〜[4]のいずれか一項に記載のブロックコポリマーのミセルを含む、ミセル組成物。
[6]さらに、薬物を含む、[5]に記載のミセル組成物。
[7]前記薬物が、前記ミセル内に封入されている、[6]に記載のミセル組成物。
[8]前記薬物が抗腫瘍剤である、[6]又は[7]に記載のミセル組成物。
[9][5]〜[8]のいずれか一項に記載のミセル組成物を含む、医薬組成物。
[10]腫瘍を治療又は予防するための医薬組成物である、[9]に記載の医薬組成物。
本発明によれば、正常組織のpH環境(pH7.4)における分解が低減された、新規のpH感受性ブロックコポリマー、前記ブロックコポリマーを含むミセル組成物、及び前記ミセル組成物を含む医薬組成物が提供される。
本発明の1実施形態にかかるブロックコポリマーのミセルを示す模式図である。 PEG−FPBA−CAT−P(Asp)の合成スキームの概略を示す。 PEG−FPBA−CAT−P(Asp)の沈降係数とグルコース濃度との関係を示すグラフである。 蛍光スペクトル解析により、PEG−FPBA−CAT−P(Asp)のpH感受性及びグルコース感受性を評価した結果を示すグラフである。図4Aは、HEPESバッファー(pH7.4)中で、PEG−FPBA−CAT−P(Asp)又はPEG−FPBAの蛍光スペクトルを測定した結果である。図4Bは、異なるpHのHEPSバッファー中で、PEG-FPBA-CAT-P(Asp)の蛍光スペクトルを測定した結果である。図4Cは、異なる濃度のグルコースを含むHEPSバッファー中で、PEG-FPBA-CAT-P(Asp)の蛍光スペクトルを測定した結果である。図4Dは、図4Bにおける結果を、pHとPEG-FPBA-CAT-P(Asp)の残存量の関係として示したグラフである。図4Eは、図4Cにおける結果に、さらにグルコース濃度10mM及び30mMにおける結果を加えて、グルコース濃度とPEG-FPBA-CAT-P(Asp)の残存量の関係として示したグラフである。 5mMグルコースを含むPBS(pH7.4)中で、PEG-FPBA-CAT-PBLAミセルを24時間インキュベートする前と後の、ミセルのサイズ分布を比較した結果を示すグラフである。 5mMグルコースを含むPBS(pH7.4、pH7、又はpH6.5)中で、PEG-FPBA-CAT-PBLAミセルのZ平均粒子径を経時的に測定した結果を示すグラフである。図6Bは、図6Aのグラフにおける、横軸1〜4時間の範囲を拡大したグラフである。 二重標識PEG-FPBA-CAT-PBLAミセルの調製方法の概略を示す。 図8Aは、B16−F10マウスメラノーマ細胞を、二重標識PEG-FPBA-CAT-PBLAとともに、pH7.4又はpH6.5で、6時間インキュベートした後の、細胞の蛍光顕微鏡画像を示す。図8Bは、インキュベーション後の細胞内のAlexa545シグナルからの蛍光強度を定量化したグラフである。図8Bのグラフ中のデータは、平均±S.D.で示した(n=20)。 図9Aは、二重標識PEG−FPBA−CAT−PBLAミセルを投与した直後のマウスの耳たぶにおいて、FRETシグナルを検出した蛍光顕微鏡画像である。図9Bは、二重標識PEG−FPBA−CAT−PBLAミセルを投与したマウスの耳たぶにおいて、血管及び皮膚の所定領域(図9Aにおける四角形で囲まれた領域)内におけるFRETシグナル強度の経時変化を示したグラフである。投与直後の正常組織血管中の強度に対する相対値として示した。図8Cは、二重標識PEG−FPBA−CAT−PBLAミセルを投与した直後のマウスの耳たぶにおいて、Alexa545シグナルを検出した蛍光顕微鏡画像である。図9Dは、二重標識PEG−FPBA−CAT−PBLAミセルを投与したマウスの耳たぶにおいて、血管及び皮膚の所定領域(図9Cにおける四角形で囲まれた領域)内におけるAlexa545シグナル強度の経時変化を示したグラフである。投与直後の正常組織血管中の強度に対する相対値として示した。 図10Aは、二重標識PEG−FPBA−CAT−PBLAミセルを蝶よした直後のマウスの腫瘍組織において、FRETシグナルを検出した蛍光顕微鏡画像である。図10Bは、二重標識PEG−FPBA−CAT−PBLAミセルを投与したマウスの腫瘍組織において、血管及び腫瘍間質組織の所定領域(図10Aにおける四角形で囲まれた領域)内におけるFRETシグナル強度の経時変化を示したグラフである。投与直後の正常組織血管中の強度に対する相対値として示した。図10Cは、二重標識PEG−FPBA−CAT−PBLAミセルを投与したマウスの腫瘍組織において、Alexa545シグナルを検出した蛍光顕微鏡画像である。図10Dは、二重標識PEG−FPBA−CAT−PBLAミセルを静脈注射したマウスの腫瘍組織において、血管及び腫瘍間質組織の所定領域(図10Cにおける四角形で囲まれた領域)内におけるAlexa545シグナル強度の経時変化を示したグラフである。投与直後の正常組織血管中の強度に対する相対値として示した。 図11Aは、二重標識PEG−PBLAミセルを静脈注射した直後のマウスの耳たぶにおいて、血管内におけるFRETシグナル強度の経時変化を示したグラフである。投与直後の正常組織血管中の強度に対する相対値として示した。図11Bは、二重標識PEG−PBLAミセルを静脈注射したマウスの腫瘍組織において、血管内及び腫瘍間質組織におけるFRETシグナル強度の経時変化を示したグラフである。投与直後の正常組織血管中の強度に対する相対値として示した。
[ブロックコポリマー]
1実施形態において、本発明は、親水性ポリマーセグメント及び疎水性ポリマーセグメントを含むブロックコポリマーであって、前記親水性ポリマーセグメントと前記疎水性ポリマーセグメントとが、下記一般式(I)で表される構造を含む2価の連結基で連結されている、ブロックコポリマーを提供する。
[式中、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又は電子吸引性基である。ただし、X〜Xの少なくとも1つは電子吸引性基である。X〜Xの2つ以上が電子吸引性基である場合、複数の電子吸引性基は、同じであってもよく、異なっていてもよい。*は結合手を表す。]
前記一般式(I)中、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又は電子吸引性基である。ただし、X〜Xの少なくとも1つは電子吸引性基である。好ましくは、X及びXの少なくとも1つが電子吸引性基である。
〜Xにおける電子吸引性基には、薬学的に許容される置換基を用いる。
そのような電子吸引性基としては、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
中でも、ハロゲン原子又はハロゲン化アルキル基が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
ハロゲン化アルキル基は、炭素素数1〜5のハロゲン化アルキル基が好ましい。炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基である。ハロゲン化アルキル基におけるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。ハロゲン化アルキル基は、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基がより好ましく、炭素数1又は2のハロゲン化アルキル基がさらにこのましい。ハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
上記の中でも、X〜Xにおける電子吸引性基としては、フッ素原子が最も好ましい。
〜Xは、少なくとも1つが電子吸引性基であれば、残りは水素原子であっても電子吸引性基であってもよい。X〜Xの2つ以上が電子吸引性基である場合、複数の電子吸引性基は、同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。好ましくは、X及びXの少なくとも1つが電子吸引性基であり、X及びXは水素原子である。より好ましくは、X〜Xのうち、X及びXのいずれか1つのみが電子吸引性基であり、その他は水素原子である。さらに好ましくは、Xが電子吸引性基であり、X、X及びXは水素原子である。
上記一般式(I)で表される構造は、pHに依存して、フェニルボロン酸カテコールエステルが開裂する。すなわち、正常組織のpH環境(pH7.4程度)下では、フェニルボロン酸カテコールエステルは開裂しないが、腫瘍組織のpH環境(pH6.2〜7.2程度)下では、フェニルボロン酸カテコールエステルが開裂する。本実施形態のブロックコポリマーにおいては、上記一般式(I)中のX〜Xの少なくとも1つを電子吸引性基とすることにより、正常組織のpH範囲(pH7.4程度)では、フェニルボロン酸カテコールエステルが開裂しないという性質を有する。
本実施形態のブロックコポリマーでは、親水性ポリマーセグメント及び疎水性ポリマーセグメントとが、上記一般式(I)で表される構造を含む2価の連結基で連結されている。
なお、本実施形態のブロックポリマーにおいて、ポリマーセグメントの「親水性」及び「疎水性」は、相対的なものである。すなわち、上記(I)で表される構造を含む2価の連結基で連結されるポリマーセグメントのうち、より親水性の高いポリマーセグメントが親水性ポリマーセグメントであり、より親水性の低いポリマーセグメントが疎水性ポリマーセグメントである。ポリマーの親水性/疎水性は、例えば、logP値によって規定することができる。logP値は、オクタノール/水分配係数(Pow)の対数値であり、広範囲の化合物に対し、その親水性/疎水性を特徴づけることのできる有効なパラメータである。logP値が0をはさんでプラス側に大きくなると疎水性が増すことを意味し、マイナス側に大きくなると親水性が増すことを意味する。
親水性ポリマーセグメント及び疎水性ポリマーセグメントは、1種の繰り返し単位を有するポリマーであってもよく、2種以上の繰り返し単位を有するポリマーであってもよい。
親水性ポリマーセグメントの繰り返し単位数は、例えば、1個以上、5個以上、10個以上、20個以上、又は45個以上であってよい。また、親水性ポリマーセグメントの繰り返し単位数は、例えば、1000個以下、700個以下、又は450個以下であってよい。親水性ポリマーセグメントの分子質量は、例えば、1,000Da以上、2,000Da以上、又は5,000Da以上であってよい。また、親水性ポリマーセグメントの分子質量は、例えば、40,000Da以下、30,000Da以下、又は20,000Da以下であってよい。
疎水性ポリマーセグメントの繰り返し単位数は、例えば、5個以上、10個以上、又は20個以上であってよい。また、疎水性ポリマーセグメントの繰り返し単位数は、例えば、200個以下、100個以下、又は60個以下であってよい。疎水性ポリマーセグメントの分子質量は、例えば、1,000Da以上、又は2,000Da以上であってよい。また、疎水性ポリマーセグメントの分子質量は、例えば、30,000Da以下、16,000Da以下、又は10,000Da以下であってよい。
親水性ポリマーセグメントの具体例としては、例えば、ポリアルキレングリコール、ポリ(2−オキサゾリン)、ポリサッカライド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ(2−メタクロイルオキシエチルホスホリルコリン)、ポリ(N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(PHPMA)及びそれらの誘導体等が挙げられる。中でも、ポリアルキレングリコール、ポリ(2−オキサゾリン)等が好ましく、ポリアルキレングリコールがより好ましい。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールのコポリマー等が挙げられ、ポリエチレングリコール特にが好ましい。
疎水性ポリマーセグメントの具体例としては、例えば、アミノ酸及び/又はその誘導体から誘導される繰り返し単位を有するポリマーが挙げられる。より具体的には、ポリアミノ酸又はその誘導体が挙げられる。ポリアミノ酸及びその誘導体としては、例えば、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリジン、ポリ(ベンジルアスパラギン酸)、ポリ(ベンジルグルタミン酸)等が挙げられる。
また、疎水性ポリマーセグメントは、例えば、アルキル基側鎖又はアラルキル基側鎖を有するアミノ酸から誘導される繰り返し単位を含んでいてもよい。アルキル基側鎖を有するアミノ酸としては、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンが挙げられる。また、アラルキル基側鎖を有するアミノ酸としては、フェニルアラニンが挙げられる。2以上のアルキル基側鎖アミノ酸及び/又はアラルキル基側鎖アミノ酸から誘導される繰り返し単位を有する場合、それらの側鎖は同一であってもよく、異なっていてもよい。疎水性ポリマーセグメントの全繰り返し単位に対するアルキル基側鎖アミノ酸又はアラルキル基側鎖アミノ酸から誘導される繰り返し単位の比率は、特に限定されず、例えば、20%以上、35%以上、40%以上、50%以上、80%以上、95%以上、99%以上、又は100%であってよい。
本実施形態のブロックコポリマーにおいて、上記一般式(I)で表される構造を含む2価の連結基は、1個であっても複数個であってもよいが、1個であることが好ましい。また、親水性ポリマーセグメントは、1個であっても複数個であってもよいが、1個であることが好ましい。同様に、疎水性ポリマーセグメントは、1個であっても複数個であってもよいが、1個であることが好ましい。
本実施形態のブロックコポリマーとしては、例えば、下記一般式(II)又は(III)で表されるブロックコポリマーが挙げられる。
[一般式(II)及び(III)中、X〜Xは、一般式(I)におけるX〜Xと同様である。R及びRは、それぞれ独立に、1価の基であり、L及びLは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基であり、Pは親水性ポリマーセグメントであり、Pは疎水性ポリマーセグメントである。]
一般式(II)及び(III)中、X〜Xは、一般式(I)におけるX〜Xと同様である。
一般式(II)及び(III)中、R及びRは、それぞれ独立に、1価の基である。R及びRにおける1価の基は、特に限定されないが、本実施形態のブロックコポリマーのミセル形成を妨げないものであることが好ましい。R及びRにおける1価の基の具体例としては、例えば、水素原子、C1−6アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールC1−3オキシ基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C2−7アシルアミド基、トリ−C1−6アルキルシロキシ基、シロキシ基、シリルアミノ基、飽和若しくは不飽和のC〜C29脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、水酸基、飽和若しくは不飽和のC〜C30脂肪族オキシ基、アリール−低級アルキルオキシ基等が挙げられる。
一般式(II)及び(III)中、L及びLは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基である。L及びLにおける2価の連結基は、特に限定されないが、本実施形態のブロックコポリマーのミセル形成を妨げないものであることが好ましい。L及びLにおける2価の連結基の具体例としては、例えば、−NH−、−Z−NH−、−NH−Z−、−Z−、−Z−S−Z−NH−、−NH−Z−S−Z−、−CO−Z−CO−、−Z−CO−Z−CO−、−CO−Z−CO−Z−、−NH−CO−Z−CO−、−CO−Z−CO−NH−、−Z−NH−CO−Z−CO−、−CO−Z−CO−NH−Z−、−Z−S−Z−NH−、−Z−NH−Z−S−、−NH−CO−、−CO−NH−、−Z−NH−CO−、−CO−NH−Z−、−Z−NH−CO−Z−、−Z−CO−NH−Z−(Zはそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキレン基である。)等が挙げられる。
一般式(II)及び(III)中、Pは親水性ポリマーセグメントであり、Pは疎水性ポリマーセグメントである。Pにおける親水性ポリマーセグメントとしては、上記に挙げたものが挙げられる。Pにおける疎水性ポリマーセグメントとしては、上記に挙げたものが挙げられる。
上記一般式(II)で表されるブロックコポリマーの具体例としては、下記一般式(II−1)で表されるブロックコポリマーが挙げられる。
[式中、X〜Xは、一般式(I)におけるX〜Xと同様である。R及びRは、それぞれ独立に、1価の基であり、L及びLは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基であり、Pは親水性ポリマーセグメントである。Rは、アミノ酸の側鎖又はその誘導体を表す。mは、5以上の整数である。]
また、上記一般式(III)で表されるブロックコポリマーの具体例としては、下記一般式(III−1)で表されるブロックコポリマーが挙げられる。
[式中、X〜Xは、一般式(I)におけるX〜Xと同様である。R及びRは、それぞれ独立に、1価の基であり、L及びLは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基であり、Pは親水性ポリマーセグメントである。Rは、アミノ酸の側鎖又はその誘導体を表す。mは、5以上の整数である。]
上記一般式(II−1)又は(III−1)で表されるブロックコポリマーは、一般式(II)又は(III)で表されるブロックコポリマーにおいて、疎水性ポリマーセグメントとして、ポリアミノ酸又はその誘導体を有するものである。
一般式(II−1)及び(III−1)中、X〜Xは、一般式(I)におけるX〜Xと同様である。
一般式(II−1)及び(III−1)中、R及びRは、それぞれ独立に、1価の基である。Rの具体例としては、C1−6アルコキシ基、アリールオキシ基、アリールC1−3オキシ基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C2−7アシルアミド基、トリ−C1−6アルキルシロキシ基、シロキシ基、シリルアミノ基等が挙げられる。中でも、Rとしては、水素原子、C1−6アルコキシ基が好ましく、水素原子又はメトキシ基がより好ましい。また、Rの具体例としては、水素原子、飽和若しくは不飽和のC〜C29脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基等が挙げられる。中でも、Rとしては、水素原子が好ましい。
一般式(II−1)及び(III−1)中、L及びLは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基である。Lの具体例としては、−NH−、−Z−NH−、−NH−Z−、−Z−、−Z−S−Z−NH−、−NH−Z−S−Z−、−CO−Z−CO−、−Z−CO−Z−CO−、−CO−Z−CO−Z−、−NH−CO−Z−CO−、−CO−Z−CO−NH−、−Z−NH−CO−Z−CO−、−CO−Z−CO−NH−Z−、−Z−S−Z−NH−、−Z−NH−Z−S−、−NH−CO−、−CO−NH−、−Z−NH−CO−、−CO−NH−Z−、−Z−NH−CO−Z−、−Z−CO−NH−Z−(Zはそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキレン基である。)等が挙げられる。Lの具体例としては、−NH−、−Z−NH−、−NH−Z−、−Z−、−Z−S−Z−NH−、−NH−Z−S−Z−(Zはそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキレン基である。)等が挙げられる。
一般式(II−1)及び(III−1)中、Pは親水性ポリマーセグメントである。Pにおける親水性ポリマーセグメントとしては、上記に挙げたものが挙げられる。
一般式(II−1)及び(III−1)中、Rは、アミノ酸の側鎖又はその誘導体を表す。m個のRは、各々独立に選択することができ、全て同じであってもよく、複数種類からなるものであってもよい。Rの具体例としては、アスパラギン酸の側鎖(カルボキシメチル基)、グルタミン酸の側鎖(カルボキシエチル基)、リジンの側鎖(4−アミノブチル基)、それらの誘導体(ベンジルオキシカルボニルメチル基、ベンジルオキシカルボニルエチル基など)等が挙げられる。また、Rは、アラニンの側鎖(メチル基)、バリンの側鎖(イソプロピル基)、ロイシンの側鎖(イソブチル基)、イソロイシンの側鎖(sec−ブチル基)、フェニルアラニンの側鎖(ベンジル基)、オルニチンの側鎖(3−アミノプロピル基)、セリンの側鎖(ヒドロキシメチル基)、又はヒスチジンの側鎖(イミダゾイルメチル基)であってもよい。
一般式(II−1)及び(III−1)中、mは、5以上の整数を表す。mは、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。mの上限は特に限定されないが、例えば、200以下、100以下、又は60以下が挙げられる。
上記一般式(II−1)で表されるブロックコポリマーの好ましい例としては、例えば、下記一般式(II−2)で表されるブロックコポリマーが挙げられる。
[式中、X〜Xは、一般式(I)におけるX〜Xと同様である。R〜R、P、及びmは、一般式(II−1)におけるR〜R、P、及びmと同様である。L1’及びL2は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキレン基を表す。]
また、上記一般式(III−1)で表されるブロックコポリマーの好ましい例としては、例えば、下記一般式(III−2)で表されるブロックコポリマーが挙げられる。
[式中、X〜Xは、一般式(I)におけるX〜Xと同様である。R〜R、P、及びmは、一般式(III−1)におけるR〜R、P、及びmと同様である。L1’及びL2は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキレン基を表す。]
一般式(II−2)及び(III−2)中、X〜Xは、一般式(I)におけるX〜Xと同様である。
一般式(II−2)及び(III−2)中、R〜R、並びにm及びnは、一般式(II−1)及び(III−1)におけるR〜R、並びにm及びnと同様である。
一般式(II−2)及び(III−2)中、L1’及びL2’は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキレン基を表す。L1’及びL2’におけるアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。L1’及びL2’は、炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1又は2のアルキレン基であることがより好ましい。
上記一般式(II−2)で表されるブロックコポリマーの好ましい例としては、例えば、下記一般式(II−3)で表されるブロックコポリマーが挙げられる。
[式中、X〜Xは、一般式(I)におけるX〜Xと同様である。R〜R、P、及びmは、一般式(II−1)におけるR〜R、P、及びmと同様である。L1’及びL2は、一般式(II−2)におけるL1’及びL2と同様である。nは、1以上の整数を表す。]
また、上記一般式(III−2)で表されるブロックコポリマーの好ましい例としては、例えば、下記一般式(III−3)で表されるブロックコポリマーが挙げられる。
[式中、X〜Xは、一般式(I)におけるX〜Xと同様である。R〜R、P、及びmは、一般式(III−1)におけるR〜R、P、及びmと同様である。L1’及びL2は、一般式(III−2)におけるL1’及びL2と同様である。nは、1以上の整数を表す。]
上記一般式(II−3)又は(III−3)で表されるブロックコポリマーは、一般式(II−2)又は(III−2)で表されるブロックコポリマーにおいて、親水性ポリマーセグメントとして、ポリエチレングリコールを有するものである。
一般式(II−3)及び(III−3)中、X〜Xは、一般式(I)におけるX〜Xと同様である。
一般式(II−3)及び(III−3)中、R〜R、P、及びmは、一般式(III−1)及び(III−1)におけるR〜R、P、及びmと同様である。
一般式(II−3)及び(III−3)中、L1’及びL2’は、一般式(II−2)及び一般式(III−2)におけるL1’及びL2と同様である。
一般式(II−3)及び(III−3)中、nは、1以上の整数を表す。nは、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましく、45以上であることが特に好ましい。nの上限は特に限定されないが、例えば、700以下、又は450以下が挙げられる。
また、上記一般式(II)で表されるブロックコポリマーは、疎水性ポリマーセグメントPが、下記一般式(P−1)〜(P−3)のいずれかで表される繰り返し単位(以下、それぞれ「繰り返し単位(P−1)」、「繰り返し単位(P−2)」、「繰り返し単位(P−3)」と記載する。)を少なくとも1種を含むものであってもよい。
[式中、Rは、アミノ酸の側鎖又はその誘導体を表す。R及びRは、それぞれ独立に、−O−又は−NH−であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、ベンジル基、−(CH−フェニル基、アミノ基若しくはカルボニル基で置換されていてもよい炭素数4〜16のアルキル基、又はステロール誘導体の残基である。yは1又は2である。]
また、上記一般式(III)で表されるブロックコポリマーは、疎水性ポリマーセグメントPが、下記一般式(P−4)〜(P−6)のいずれかで表される繰り返し単位(以下、それぞれ「繰り返し単位(P−4)」、「繰り返し単位(P−5)」、「繰り返し単位(P−6)」と記載する。)を少なくとも1種を含むものであってもよい。
[式中、R、R、R、及びyは、上記一般式(P−1)〜(P−3)におけるR、R、R、及びyと同様である。]
上記一般式(P−1)及び(P−4)中、Rは、アミノ酸の側鎖又はその誘導体を表し、一般式(II−1)又は(III−1)におけるRと同様である。上記一般式(II)で表されるブロックコポリマーにおいて、疎水性ポリマーセグメントPは、繰り返し単位(P−1)を1個以上含むことが好ましく、5個以上含むことがより好ましく、10個以上含むことがさらに好ましく、20個以上含むことが特に好ましい。上記一般式(III)で表されるブロックコポリマーにおいて、疎水性ポリマーセグメントPは、繰り返し単位(P−4)」を1個以上含むことが好ましく、5個以上含むことがより好ましく、10個以上含むことがさらに好ましく、20個以上含むことが特に好ましい。
疎水性ポリマーセグメントPにおいて、繰り返し単位(P−1)又は(P−4)で表される繰り返し単位の個数のは特に限定されないが、例えば、200個以下、100個以下、又は60個以下が挙げられる。疎水性ポリマーセグメントPが、繰り返し単位(P−1)又は(P−4)を2個以上含む場合、各繰り返し単位におけるRは、各々独立に選択することができ、全て同じであってもよく、複数種類からなるものであってもよい。
疎水性ポリマーセグメントPが繰り返し単位(P−1)又は(P−4)を複数含む場合、各繰り返し単位におけるRのうち、50%以上が炭素数1〜8のアルキル基又はアラルキル基を含むアミノ酸側鎖又はその誘導体であることが好ましい。前記割合は、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、又は100%であってもよい。
上記一般式(P−2)及び(P−5)中、Rは、−O−又は−NH−である。Rは水素原子、フェニル基、ベンジル基、−(CH−フェニル基、アミノ基若しくはカルボニル基で置換されていてもよい炭素数4〜16のアルキル基、又はステロール誘導体の残基である。yは1又は2である。上記一般式(II)で表されるブロックコポリマーにおいて、疎水性ポリマーセグメントPは、繰り返し単位(P−2)を1個以上含むことができ、5個以上、10個以上、又は20個以上含んでいてもよい。上記一般式(III)で表されるブロックコポリマーにおいて、疎水性ポリマーセグメントPは、繰り返し単位(P−5)を1個以上含むことができ、5個以上、10個以上、又は20個以上含んでいてもよい。
疎水性ポリマーセグメントPにおいて、繰り返し単位(P−2)又は(P−5)で表される繰り返し単位の個数のは特に限定されないが、例えば、200個以下、100個以下、又は60個以下が挙げられる。疎水性ポリマーセグメントPが、一般式(P−2)又は(P−5)で表される繰り返し単位を2個以上含む場合、各繰り返し単位におけるRは、各々独立に選択することができ、全て同じであってもよく、複数種類からなるものであってもよい。同様に、各繰り返し単位におけるR及びyも、各々独立に選択することができる。
上記一般式(P−3)及び(P−6)中、Rは、O−又は−NH−である。Rは水素原子、フェニル基、ベンジル基、−(CH−フェニル基、アミノ基若しくはカルボニル基で置換されていてもよい炭素数4〜16のアルキル基、又はステロール誘導体の残基である。上記一般式(II)で表されるブロックコポリマーにおいて、疎水性ポリマーセグメントPは、繰り返し単位(P−3)を1個以上含むことができ、5個以上、10個以上、又は20個以上含んでいてもよい。上記一般式(III)で表されるブロックコポリマーにおいて、疎水性ポリマーセグメントPは、繰り返し単位(P−6)を1個以上含むことができ、5個以上、10個以上、又は20個以上含んでいてもよい。
疎水性ポリマーセグメントPにおいて、繰り返し単位(P−3)又は(P−6)で表される繰り返し単位の個数のは特に限定されないが、例えば、200個以下、100個以下、又は60個以下が挙げられる。疎水性ポリマーセグメントPが、一般式(P−3)又は(P−6)で表される繰り返し単位を2個以上含む場合、各繰り返し単位におけるRは、各々独立に選択することができ、全て同じであってもよく、複数種類からなるものであってもよい。同様に、各繰り返し単位におけるRも、各々独立に選択することができる。
上記一般式(II)で表されるブロックコポリマーにおいて、疎水性ポリマーセグメントPが、繰り返し単位(P−2)及び(P−3)のいずれかを有する場合、R又はRが水素原子である繰り返し単位は、繰り返し単位(P−2)及び(P−3)の合計の75%以下である。
上記一般式(III)で表されるブロックコポリマーにおいて、疎水性ポリマーセグメントPが、繰り返し単位(P−5)及び(P−6)のいずれかを有する場合、R又はRが水素原子である繰り返し単位は、繰り返し単位(P−5)及び(P−6)の合計の75%以下である。
上記一般式(II)で表されるブロックコポリマーにおいて、疎水性ポリマーセグメントPは、繰り返し単位(P−1)〜(P−3)のいずれかからなるものであってもよく、これら以外の繰り返し単位を含むものであってもよい。疎水性ポリマーセグメントPが、繰り返し単位(P−1)〜(P−3)のいずれかを2種以上含む場合、それらは疎水性ポリマーセグメントP中でランダムに存在してもよく、ブロックとして存在してもよい。
一般式(II)で表されるブロックコポリマーにおける疎水性ポリマーセグメントPは、繰り返し単位(P−1)及び(P−2)のいずれかを有することが好ましい。疎水性ポリマーセグメントPの具体例としては、繰り返し単位(P−1)、繰り返し単位(P−2)及び繰り返し単位(P−3)からなるランダムコポリマー;繰り返し単位(P−1)のブロック、繰り返し単位(P−2)のブロック及び繰り返し単位(P−3)のブロックからなるブロックコポリマー;繰り返し単位(P−1)のブロック、並びに繰り返し単位(P−2)及び繰り返し単位(P−3)から構成されるブロックからなるブロックコポリマー;繰り返し単位(P−1)及び繰り返し単位(P−2)からなるランダムコポリマー;繰り返し単位(P−1)のブロック及び繰り返し単位(P−2)のブロックからなるブロックコポリマー;繰り返し単位(P−2)及び繰り返し単位(P−3)からなるランダムコポリマー;繰り返し単位(P−2)のブロック及び繰り返し単位(P−3)のブロックからなるブロックコポリマー;繰り返し単位(P−1)及び繰り返し単位(P−3)からなるランダムコポリマー;繰り返し単位(P−1)位のブロック及び繰り返し単位(P−3)のブロックからなるブロックコポリマー;繰り返し単位(P−1)のポリマー;繰り返し単位(P−2)のポリマー:等が挙げられる。前記例示中、疎水性ポリマーセグメントPが、繰り返し単位(P−1)のブロック、繰り返し単位(P−2)のブロック及び繰り返し単位(P−3)のブロックのいずれかを含む場合、当該ブロックは、1個であってもよく、複数個であってもよい。
一般式(II)で表されるブロックコポリマーにおける疎水性ポリマーセグメントPにおいて、疎水性ポリマーセグメントPが有する繰り返し単位全体に対する繰り返し単位(P−1)の割合は、例えば、20〜100%である。好ましくは、35〜100%、40〜100%、50〜100%、80〜100%、又は90〜100%である。
疎水性ポリマーセグメントPが有する繰り返し単位全体に対する繰り返し単位(P−2)の割合は、例えば、10〜100%である。好ましくは、20〜100%、35〜100%、40〜100%、50〜100%、80〜100%、又は90〜100%である。
疎水性ポリマーセグメントPが有する繰り返し単位全体に対する繰り返し単位(P−3)の割合は、例えば、0〜90%である。好ましくは、0〜80%、0〜65%、0〜50%、0〜20%、又は0〜10%ある。
上記一般式(III)で表されるブロックコポリマーにおいて、疎水性ポリマーセグメントPは、繰り返し単位(P−4)〜(P−6)のいずれかからなるものであってもよく、これら以外の繰り返し単位を含むものであってもよい。疎水性ポリマーセグメントPが、繰り返し単位(P−4)〜(P−6)のいずれかを2種以上含む場合、それらは疎水性ポリマーセグメントP中でランダムに存在してもよく、ブロックとして存在してもよい。
一般式(III)で表されるブロックコポリマーにおける疎水性ポリマーセグメントPは、繰り返し単位(P−4)及び(P−5)のいずれかを有することが好ましい。疎水性ポリマーセグメントPの具体例としては、繰り返し単位(P−4)、繰り返し単位(P−5)及び繰り返し単位(P−6)からなるランダムコポリマー;繰り返し単位(P−4)のブロック、繰り返し単位(P−5)のブロック及び繰り返し単位(P−6)のブロックからなるブロックコポリマー;繰り返し単位(P−4)のブロック、並びに繰り返し単位(P−5)及び繰り返し単位(P−6)から構成されるブロックからなるブロックコポリマー;繰り返し単位(P−4)及び繰り返し単位(P−5)からなるランダムコポリマー;繰り返し単位(P−4)のブロック及び繰り返し単位(P−5)のブロックからなるブロックコポリマー;繰り返し単位(P−5)及び繰り返し単位(P−6)からなるランダムコポリマー;繰り返し単位(P−5)のブロック及び繰り返し単位(P−6)のブロックからなるブロックコポリマー;繰り返し単位(P−4)及び繰り返し単位(P−6)からなるランダムコポリマー;繰り返し単位(P−4)位のブロック及び繰り返し単位(P−6)のブロックからなるブロックコポリマー;繰り返し単位(P−4)のポリマー;繰り返し単位(P−5)のポリマー:等が挙げられる。前記例示中、疎水性ポリマーセグメントPが、繰り返し単位(P−4)のブロック、繰り返し単位(P−5)のブロック及び繰り返し単位(P−6)のブロックのいずれかを含む場合、当該ブロックは、1個であってもよく、複数個であってもよい。
一般式(III)で表されるブロックコポリマーにおける疎水性ポリマーセグメントPにおいて、疎水性ポリマーセグメントPが有する繰り返し単位全体に対する繰り返し単位(P−4)の割合は、例えば、20〜100%である。好ましくは、35〜100%、40〜100%、50〜100%、80〜100%、又は90〜100%である。
疎水性ポリマーセグメントPが有する繰り返し単位全体に対する繰り返し単位(P−5)の割合は、例えば、10〜100%である。好ましくは、20〜100%、35〜100%、40〜100%、50〜100%、80〜100%、又は90〜100%である。
疎水性ポリマーセグメントPが有する繰り返し単位全体に対する繰り返し単位(P−6)の割合は、例えば、0〜90%である。好ましくは、0〜80%、0〜65%、0〜50%、0〜20%、又は0〜10%ある。
<ブロックコポリマーの製造方法>
本実施形態のブロックコポリマーは、公知の方法を組み合わせて合成することができる。例えば、親水性ポリマーセグメントを含む化合物、及び疎水性ポリマーセグメントを含む化合物をそれぞれ合成し、必要に応じて分子質量分布を狭くするように精製する。その後親水性ポリマーセグメントを含む化合物又は疎水性ポリマーセグメントを含む化合物を、ホウ素原子のメタ位の少なくとも1つが電子吸引性基で置換されたフェニルボロン酸誘導体とカップリングさせる。次に、前記フェニルボロン酸誘導体とカップリングさせなかったポリマーセグメントを含む化合物を、カテコール誘導体とカップリングさせる。次に、一方のポリマーセグメントを含む化合物とカップリングさせたフェニルボロン酸誘導体と、他方のポリマーセグメントを含む化合物とカップリングさせたカテコール誘導体との、エステル化反応を行うことにより、本実施形態のブロックコポリマーを製造することができる。
あるいは、疎水性ポリマーセグメントが、ポリアミノ酸又はアミノ酸誘導体のポリマーである場合には、親水性ポリマーセグメントを含む化合物をホウ素原子のメタ位の少なくとも1つが電子吸引性基で置換されたフェニルボロン酸誘導体とカップリングさせ、次いでカテコール誘導体を反応させて、フェニルボロン酸とカテコールとのエステル化反応を行った後、N−カルボキシアミノ酸無水物又はN−カルボキシアミノ酸誘導体無水物を用いて、ポリアミノ酸又はその誘導体の合成を行ってもよい。
あるいは、親水性ポリマーセグメントを含む化合物をカテコール誘導体とカップリングさせ、次いでホウ素原子のメタ位の少なくとも1つが電子吸引性基で置換されたフェニルボロン酸誘導体を反応させて、フェニルボロン酸とカテコールとのエステル化反応を行った後、N−カルボキシアミノ酸無水物又はN−カルボキシアミノ酸誘導体無水物を用いて、ポリアミノ酸又はその誘導体の合成を行ってもよい。
一例として、上記一般式(II−2)で表されるブロックコポリマーの合成方法の具体例を下記スキームIに例示する。なお、下記スキームIにおけるX〜X、R〜R、P、L、L、m及びnは、上記と同様である。
上記合成スキームIでは、まず、親水性ポリマーセグメントPを含む化合物(1)とフェニルボロン酸誘導体(2)とのカップリング反応(A)を行い、化合物(3)を得る。反応(A)は、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒を用いて行うことができる。
次に、化合物(3)とカテコール誘導体(4)とのエステル化反応(B)を行い、化合物(5)を得る。反応(B)は、例えば、トルエン溶媒を用いて行うことができる。
次に、化合物(5)のアミノ基を起点として、N−カルボキシアミノ酸(誘導体)無水物の重合反応(C)を行うことにより、化合物(7)(一般式(II−2)で表されるブロックコポリマー)を得ることができる。反応(C)は、例えば、DMF、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン(THF)等の溶媒を用いて行うことができる。反応温度としては、例えば、25〜40℃、反応時間としては、例えば、1〜5日が挙げられる。
また、上記一般式(III−2)で表されるブロックコポリマーの合成方法の具体例を下記スキームIIに例示する。なお、下記スキームIIにおけるX〜X、R〜R、P、L、L、m及びnは、上記と同様である。
上記スキームIIでは、まず、親水性ポリマーセグメントPを含む化合物(1)とカテコール誘導体(8)とのカップリング反応(D)を行い、化合物(9)を得る。反応(D)は、例えば、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)等の溶媒を用いて行うことができる。
次に、化合物(9)とフェニルボロン酸誘導体(10)とのエステル化反応(E)を行い、化合物(11)を得る。反応(E)は、例えば、トルエン溶媒を用いて行うことができる。
次に、化合物(11)のアミノ基を起点として、N−カルボキシアミノ酸(誘導体)無水物の重合反応(F)を行うことにより、化合物(12)(一般式(III−2)で表されるブロックコポリマー)を得ることができる。反応(F)は、例えば、DMF、ジクロロメタン、THF等の溶媒を用いて行うことができる。反応温度としては、例えば、25〜40℃、反応時間としては、例えば、1〜5日が挙げられる。
本実施形態のブロックコポリマーは、一般式(I)で表される構造を含む2価の連結基により、親水性ポリマーセグメントと疎水性ポリマーセグメントとが連結されている。一般式(I)で表される構造中のフェニルボロン酸カテコールエステルは、pHの低下に伴い開裂する。これにより、親水性ポリマーセグメントと、疎水性ポリマーセグメントとが、分離する。そのため、本実施形態のブロックコポリマーにより形成したミセルでは、pH依存的に、親水性ポリマーセグメントを脱離させることができる。
本実施形態のブロックコポリマーでは、フェニルボロン酸のメタ位の少なくとも1つに電気吸引性基を有することにより、正常組織におけるpH環境(pH7.4程度)下では、フェニルボロン酸カテコールエステルの開裂が生じない。一方、腫瘍組織等の低pH環境(pH6.2〜7.2程度)下では、フェニルボロン酸カテコールエステルの開裂が生じる。そのため、腫瘍組織特異的に、親水性ポリマーセグメントと、疎水性ポリマーセグメントとを分離させることができる。これにより、腫瘍細胞に対する、本実施形態のブロックコポリマーの取り込みを促進させることができる。
[ミセル組成物]
1実施形態において、本発明は、上記実施形態のブロックコポリマー(以下、「本ブロックコポリマー」という。)のミセルを含むミセル組成物を提供する。
本実施形態のミセル組成物は、本ブロックコポリマーにより形成されるミセルを含む。例えば、本ブロックコポリマーを親油性溶媒に溶解又は懸濁し、当該溶解液又は懸濁液を親水性溶媒に分散させると、疎水性ポリマーセグメントからなるコアと、親水性ポリマーセグメントからなるシェルを有するミセルを形成する(以下、「水中油型ミセル」という。)。当該ミセルにおいて、本ブロックコポリマーは、疎水性ポリマーセグメントを内側に向けるとともに、親水性ポリマーセグメントを外側に向けた状態で、放射状に配列している。
一方、本ブロックコポリマーを親水性溶媒に溶解又は懸濁し、当該溶解液又は懸濁液を親油性溶媒に分散させると、親水性ポリマーセグメントからなるコアと、疎水性ポリマーセグメントからなるシェルとを有するミセルを形成する(以下、「油中水型ミセル」という。)。当該ミセルにおいて、本ブロックコポリマーは、親水性ポリマーセグメントを内側に向けるとともに、疎水性ポリマーセグメントを外側に向けた状態で、放射状に配列している。
本実施形態のミセル組成物が含むミセルは、水中油型ミセル及び油中水型ミセルのいずれであってもよいが、水中油型ミセルであることが好ましい。
図1は、本ブロックコポリマーのミセルの一例を示す図である。図1において、本ブロックコポリマー1は、親水性ポリマーセグメント2と、疎水性ポリマーセグメント3とが、電子吸引性基を有するフェニルボロン酸4及びカテコール5のエステルにより、連結された構造をしている。本ブロックコポリマー1は、水性媒体中で、自己組織化により、ミセル10を形成する。ミセル10では、親水性ポリマーセグメント2からなるシェル20と、疎水性ポリマーセグメント3からなるコア30とが、フェニルボロン酸層40及びカテコール層50を介して連結されている。なお、図1の例では、フェニルボロン酸層40は、カテコール層50の外側にあるが、この逆であってもよい。すなわち、カテコール層が、フェニルボロン酸層の外側にあってもよい。例えば、上記一般式(II)で表されるブロックコポリマーは、水性媒体中で、図1のように、フェニルボロン酸層がカテコール層の外側にあるミセルを形成する。一方、上記一般式(III)で表されるブロックコポリマーは、水性媒体中で、カテコール層がフェニルボロン酸層の外側にあるミセルを形成する。
図1に示すように、フェニルボロン酸層40及びカテコール層50を形成するフェニルボロン酸カテコールエステルは、腫瘍組織等の低pH環境(pH6.2〜7.2程度)下において開裂する。これにより、疎水性ポリマーセグメント3からなるコア30から、親水性ポリマーセグメント2が脱離する。親水性ポリマーセグメント2が脱離することにより、疎水性ポリマーセグメント3のコア30の腫瘍細胞への取り込みが促進される。
本実施形態のミセル組成物は、本ブロックコポリマーのミセルに加えて、薬物を含んでいてもよい。薬物は、本ブロックコポリマーのミセル内に封入されてていることが好ましい。例えば、薬物が疎水性化合物である場合、水中油型ミセルの疎水性ポリマーセグメントからなるコアに、容易に薬物を封入することができる。ミセル内への薬物の封入は、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。例えば、本ブロックコポリマーと薬物とを有機溶媒に溶解し、任意に超音波処理化で水性溶媒を加えることにより、薬物が封入されたミセルを得ることができる。
また、薬物が荷電性化合物である場合には、本ブロックコポリマーの疎水性ポリマーセグメントに、当該薬物と逆の電荷を有する側鎖を導入し、静電相互作用を利用して、水中油型ミセル内に薬物を封入してもよい。
また、本ブロックコポリマーの疎水性ポリマーセグメントに、薬物を結合可能な官能基を導入し、薬物を当該官能基に結合させて、本ブロックコポリマーと薬物との薬物複合体作製し、当該薬物複合体により水中油型ミセルを形成してもよい。疎水性ポリマーセグメントに導入する官能基は、特に限定されないが、例えば、芳香族若しくは脂肪族のケトン基、又は芳香族若しくは脂肪族のアルデヒド基等が挙げられる。
薬物は、特に限定されず、任意のものであってもよい。薬物は、医薬品の有効成分として公知の化合物が有する生理活性や、体内に投与されて使用される診断薬が有する化学的又は生理学的活性を含み得る。薬物としては、例えば、抗腫瘍剤、シグナル伝達阻害剤、代謝拮抗剤、鎮痛剤、抗炎症剤、造影剤等が挙げられる。
これらの中でも、薬物は、抗腫瘍剤が好ましい。本ブロックコポリマーの水中油型ミセルは、正常組織のpH環境(pH7.4程度)では安定であるが、腫瘍組織等の低pH環境(pH6.2〜7.2程度)下において、親水性ポリマーセグメントが脱離する。そのため、本ブロックコポリマーのミセルに抗腫瘍剤を封入して、がん患者に投与した場合、腫瘍組織に送達されるまで、抗腫瘍剤はミセル内に安定して存在する。ミセルが腫瘍組織に到達すると、腫瘍組織の低pHに応答して、親水性ポリマーセグメントが脱離し、抗腫瘍剤の細胞内への取り込みが促進されるようになる。したがって、腫瘍細胞特異的に、抗腫瘍剤を送達することができる。
抗腫瘍剤としては、特に限定されないが、ビンブラスチンなどのビンカアルカロイド;OSU−03012などのCOX−2選択的非ステロイド性抗炎症剤;(+)−JQ1などのBETブロモドメイン阻害剤;K252Aなどのスタウロスポリン類縁体;ヒドララジンなどの脱メチル化剤;ベンダムスチン及びクロラムブシルなどのアルキル化剤;AZD39などのファシネルトランスフェラーゼ阻害剤;フルルビプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症剤等を挙げることができる。また、疎水性抗腫瘍剤としては、例えば、パクリタキセル、トポテカン、カンプトテシン、シスプラチン、塩酸ダウノルビシン、メトトレキサート、マイトマイシンC、ドセタキセル、硫酸ビンクレスチン、及びこれらの誘導体等が挙げられる。また、薬剤は、siRNA、アンチセンスRNAなどの抗腫瘍性核酸;抗腫瘍性ペプチド等であってもよい。
本実施形態のミセル組成物は、公知のミセル調製方法を用いて製造することができる。例えば、本ブロックコポリマーを有機溶媒に溶解する。必要に応じて、得られた溶液を風乾、例えば窒素気流雰囲気下でフィルム状に乾固し、さらに必要であれば減圧下で乾固することで有機溶媒を除去してもよい。このようにして処理した本ブロックコポリマーに、内包すべき薬物の溶液を添加し、混合する。次いで、得られた混合液から薬物を内包させながらミセルを形成させる。
上記において、本ブロックコポリマーを溶解する有機溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の非水混和性有機溶媒、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン等の水混和性有機溶媒、および、これらの混合溶媒等が挙げられる。
また、本実施形態のミセル組成物は、本ブロックコポリマーと薬物との混合液を攪拌することにより製造してもよい。混合液の撹拌は、超音波等のエネルギーをかけて行うことが好ましい。
また、本実施形態のミセル組成物は、乳鉢等を用いて乾燥状態の本ブロックコポリマーを均一の粉体とし、そこへ粉末の薬物又は少量の溶液に溶解した薬物を添加した後に穏やかに混合し、適切な緩衝液を添加して撹拌し、氷冷しながら超音波処理することによっても行うことができる。
本実施形態のミセル組成物は、適切な緩衝液を本ブロックコポリマーに添加し、上記と同様に超音波処理して空ミセルを調製し、そこへ同じ緩衝液に溶解した薬物、又は当該緩衝液で希釈した薬物を添加し、穏やかに撹拌するか静置することによっても行うことができる。
上記の緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、クエン酸緩衝液、Tris緩衝液、TAPS緩衝液、MES緩衝液、HEPES緩衝液等が挙げられる。
本実施形態のミセル組成物は、薬物送達のキャリアとして好適に用いることができる。本ブロックコポリマーの水中油型ミセルは、腫瘍組織の低pH環境下で親水性ポリマーセグメントが脱離して、腫瘍細胞に対する取り込みが促進されるため、抗腫瘍剤の薬物送達キャリアとして、特に適している。
[医薬組成物]
1実施形態において、本発明は、上記実施形態のミセル組成物を含む医薬組成物を提供する。
上記実施形態のミセル組成物のうち、薬物を含むミセル組成物は、医薬組成物として利用可能である。ミセル組成物は、そのまま生体に投与することもできるが、公知の手法により、適宜他の成分と混合して製剤化されてもよい。本実施形態の医薬組成物の剤型は特に限定されず、乳剤、エマルション剤、液剤、ゲル状剤、カプセル剤、軟膏剤、貼付剤、バップ剤、顆粒剤、錠剤、造影剤等とすることができるが、エマルション剤、液剤、カプセル剤等が好ましい。
本実施形態の医薬組成物は、上記ミセル組成物に加えて、他の成分を含んでもよい。他の成分は、本ブロックコポリマーのミセル構造が維持される限り、医薬品分野において一般的に使用される成分を特に制限なく使用することができる。例えば、前記医薬組成物は、本ブロックコポリマーのミセルを薬学的に許容される担体に溶解又は懸濁したものであってもよい。薬学的に許容される担体としては、医薬分野において常用されるものを特に制限なく使用することができ、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝液、DMSO、ジメチルアセトアミド、エタノール、グリセロール、ミネラルオイル等を挙げることができる。また、他の成分としては、その他に、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、pH調整剤、賦形剤、安定剤、抗酸化剤、浸透圧調整剤、防腐剤、着色剤、香料等が挙げられる。
本実施形態の医薬組成物の投与経路は、特に限定されず、経口又は非経口経路で投与することができる。なお、非経口経路は、経口以外の全ての投与経路、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、鼻腔内、皮内、点眼、脳内、直腸内、腟内及び腹腔内等への投与を包含する。また、投与は、局所投与であっても全身投与であってもよい。
本実施形態の医薬組成物は、単回投与又は複数回投与を行うことが可能であり、その投与期間及び間隔は、薬物の種類、疾患の種類及び状態等、投与経路、投与対象の年齢、体重及び性別等によって、適宜選択することができる。
本実施形態の医薬組成物の投与量は、薬物の種類、疾患の種類及び状態等、投与経路、投与対象の年齢、体重及び性別等によって、適宜選択することができる。本実施形態の医薬組成物の投与量は、医薬組成物に含まれる薬物の治療的有効量とすることができ、例えば、1回につき体重1kgあたり0.01〜1000mg程度、0.1〜500mg程度、0.1〜100mg程度等とすることができる。
本実施形態の医薬組成物の投与間隔は、薬物の種類、疾患の種類及び状態等、投与経路及び投与量、投与対象の年齢、体重及び性別等によって、適宜選択することができる。本実施形態の医薬組成物の投与間隔は、例えば、1日1〜3回、3日毎、1週間毎等とすることができる。
本実施形態の医薬組成物は、薬物の種類に応じて、適用疾患を選択すればよい。例えば、薬物が抗腫瘍剤である場合、本実施形態の医薬組成物は、腫瘍を治療又は予防するために使用される。上述のように、本実施形態の医薬組成物が含有する水中油型ミセルは、正常組織のpH環境(pH7.4程度)下では安定であるが、腫瘍組織のような低pH環境(pH6.2〜7.2程度)下では、親水性ポリマーセグメントの脱離が生じる。そのため、腫瘍細胞に対する抗腫瘍剤を含むミセルの取り込みが促進される。したがって、本実施形態の医薬組成物は、抗腫瘍剤の腫瘍細胞内に効率的に送達することができる。好ましい態様において、本実施形態の医薬組成物は、腫瘍を治療又は予防するための医薬組成物である。
別の態様において、本発明は、本ブロックコポリマー及び抗腫瘍剤を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、腫瘍を治療又は予防する方法を提供する。
別の態様において、本発明は、腫瘍を治療又は予防するための医薬組成物の製造のための、本ブロックコポリマー及び抗腫瘍剤の使用を提供する。
本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明の実施態様は、これら実施例の記載に限定されるものではない。
[合成例]PEG−FPBA−CAT−P(Asp)の合成
以下の手順に従って、ポリエチレングリコール−フルオロフェニルボロン酸カテコールエステル−ポリアスパラギン酸(PEG−FPBA−CAT−P(Asp))を合成した。PEG−FPBA−CAT−P(Asp)の合成手順の概略を図2に示す。
(PEG−FPBAの合成)
ポリエチレングリコール(PEG)−NH(1.55g、0.129mmol、1Eq.)及びトリエチルアミン(TEA;0.05mL、0.375.mmol、3Eq.)を、不活性雰囲気下で、75mLの脱水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に完全に溶解するまで攪拌した。別のフラスコで、4−カルボキシ−3−フルオロフェニルボロン酸(FPBA;0.23g、1.25mmol、10Eq.)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS;0.216g、1.88mmol、15Eq.)及びN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC;0.386g、1.87mmol、15Eq.)を、75mLの乾燥DMFに溶解し、不活性雰囲気下で、10分間攪拌した。これを、前記PEG−NHのDMF溶液と混合した。不活性雰囲気下、室温で、前記混合物を一晩攪拌した。生成した修飾PEGをジエチルエーテルで沈殿させ、得られた沈殿を、酸性pHの水で、1日透析した。ポリマーを回収するために、透析溶液を凍結乾燥した。最終産物は、白色粉末であり、収率は97%であった。PEG−FPBAの割合を、DOを用いたH−NMR解析により求めた。H−NMR(DO,400MHz):δ(ppm)7.7−7.56(m,phenyl 3H),3.71(m,PEG),3.40(s,CH
(PEG−FPBA−CATの合成)
上上記で合成したPEG−FPBA(0.2g、0.0165mmol、1Eq.)及びドーパミン塩酸塩(5.8mg、0.0306mmol、1.85Eq.)を、それぞれ、2つの異なるフラスコに入れたベンゼンを用いて凍結乾燥し、微量水分を除去した。その後、不活性雰囲気下で20mLのトルエンにPEG−FPBAを溶解し、不活性雰囲気下でドーパミンを含むフラスコに移した。前記混合溶液を1時間攪拌した。その後、トルエンを減圧化で除去した。次いで、過剰なドーパミンを除去するために、生成物を、あらかじめアルゴンガスを吹き込んだメタノールで、1日透析した。その後、溶媒をロータリーエバポレーションにより除去した。最後に、生成ポリマーを、ベンゼンを用いて凍結乾燥し、白色粉末を得た(収率85%)。PEG−FPBA−CATの割合を、DOを用いたH−NMR解析により求めた。PEGに対するドーパミンの付加率は、ドーパミンのフェニル基とPEGのエチレン単位との比から、約92%と確認された。H NMR(DO,400MHz):δ(ppm)7.69−7.27(m,FPBA 3H),6.9−6.65(m,catechol 3H)3.71(m,PEG),3.39(s,CH),3.23(t,CH,2H),2.87(t,CH,2H)
(PEG−FPBA−CAT−PBLAの合成)
PEG−FPBA−CAT−ポリ(β−ベンジル−L−アスパラギン酸)(PEG−FPBA−CAT−PBLA)を、PEG−FPBA−CATをイニシエーターとして用いたβ−ベンジル−L−アスパラギン酸−N−カルボン酸無水物(BLA−NCA)の開環重合により合成した。まず、BLA−NCA(0.17g、0.68mmol、47Eq.)を、不活性雰囲気下で、DMF(1mL)に溶解した。脱水CHCl(4mL)溶液にPEG−FPBA−CAT(0.172g、0.014mmol、1Eq.)を添加し、35℃で3日間攪拌した。生成物をジエチルエーテルで沈殿させ、真乾燥した(0.177g、収率64%)。ポリマーにおけるBLA単位数は、ジメチルスルホキシドーd(DMSO−d)を用いたH−NMR解析により求めた。ポリマーにおけるBLA単位数は、PEGにおけるエチレン単位(−OCHCH−,δ=3.5ppm)と、PBLAにおけるフェニル基(C−,δ=7.3ppm)との比から求めた。
(PEG−FPBA−CAT−P(Asp)の合成)
上記のように合成したPEG−FPBA−CAT−PBLA(0.16g)をNaOH水溶液(0.5M、3.2mL)に添加し、一晩攪拌することにより脱保護し、PEG−FPBA−CAT−P(Asp)を調製した。最後に、生成物を、塩基性pHの水で透析した。DOを用いたH−NMRにより、完全な脱保護が確認された。
[実験例1]PEG−FPBA−CAT−P(Asp)の超遠心分析
PEG−FPBA−CAT−P(Asp)を200μg/mLとなるようにPBS(10mM、pH=7.4、150mM NaCl)に溶解し、一晩攪拌した。この濃度は、λ=210nmで吸光度約1に達することができる。次いで、分析用超遠心システム(Berkman Coulter Optima XL-I Analytical Ultracentrifugation)を用いて、超遠心分析を行った(一晩、λ=210nm)。
PEG−FPBA−CAT−P(Asp)を1mg/mLとなるようにPBSバッファー(10mM、pH=7.4、150mM NaCl)に溶解し、図3に示す濃度でグルコースを添加して、一晩攪拌した。この濃度は、λ1=225nm及びλ2=250nmで吸光度約1に達することができ、静脈内投与することが可能な最大濃度に相当する。次いで、分析用超遠心システム(Berkman Coulter Optima XL-I Analytical Ultracentrifugation)を用いて、超遠心分析を行った(一晩)。
結果を図3に示す。図3中、各グルコース濃度における沈降係数は、グルコース濃度0mMのときの沈降係数を1としたときの相対値で示した。5mMグルコース存在下における沈降係数は、グルコース非存在下における沈降係数と変わらなかった。この結果は、5mMグルコース存在下では、PEG-FPBA-CAT-P(Asp)が分解されないことを示す。これにより、血中グルコース濃度の正常値の範囲では、PEG−FPBA−CAT−P(Asp)が安定であることが確認された。
[実験例2]蛍光スペクトルによるPEG−FPBA−CAT−P(Asp)の安定性評価
分光蛍光光度計(JASCO FP-6500)を用いて、PEG−FPBA−CAT−P(Asp)の蛍光スペクトル解析を行った。PEG−FPBA−CAT−P(Asp)(1mg/mL)を、異なるpH(pH7.4、pH7.14、pH6.88pH6.82、pH6.5)又は異なるD(+)−グルコース濃度(0〜100mM)のPBSバッファー(10mM、150mM NaCl)に溶解した。次いで、各サンプルを一晩攪拌し、蛍光スペクトルを測定した。蛍光スペクトルは、302nmの励起光(バンド幅=5nm)を用い、25℃で測定した。放射スキャンは、分光蛍光光度計を用いて、310〜480nm(バンド幅=6nm)の範囲で行った。
結果を図4A〜4Eに示す。図4Aは、HEPESバッファー(pH7.4)中で、PEG−FPBA−CAT−P(Asp)又はPEG−FPBAの蛍光スペクトルを測定した結果である。PEG-FPBA-CAT-P(Asp)では、フェニルボロン酸カテコールエステルのピークが検出された。
図4Bは、異なるpHのHEPSバッファー中で、PEG-FPBA-CAT-P(Asp)の蛍光スペクトルを測定した結果である。バッファーのpHが低くなるほど、フェニルボロン酸カテコールエステルのピークが小さくなった。pH6.82以下では、フェニルボロン酸カテコールエステルのピークは、ほとんど検出されなかった。この結果は、pHの低下により、PEG-FPBA-CAT-P(Asp)中のフェニルボロン酸カテコールエステルが分解することを示す。なお、図4Dは、図4Bにおける結果を、pHとPEG-FPBA-CAT-P(Asp)の残存量の関係として示したグラフである。
図4Cは、異なる濃度のグルコースを含むHEPSバッファー中で、PEG-FPBA-CAT-P(Asp)の蛍光スペクトルを測定した結果である。図4Cには、グルコースを含まないHEPSバッファー中で、PEG−FPBAの蛍光スペクトルを測定した結果も示している。グルコース濃度が高くなるほど、フェニルボロン酸カテコールエステルのピークが小さくなった。この結果は、グルコース濃度の上昇により、PEG-FPBA-CAT-P(Asp)中のフェニルボロン酸カテコールエステルが分解することを示す。なお、図4Eは、図4Cにおける結果に、さらにグルコース濃度10mM及び30mMにおける結果を加えて、グルコース濃度とPEG-FPBA-CAT-P(Asp)の残存量の関係として示したグラフである。
[実験例3]PEG−FPBA−CAT−PBLAミセルの安定性評価
(PEG−FPBA−CAT−PBLAミセルの調整)
PEG−FPBA−CAT−PBLA(20mg)を0.5mLのCHClに溶解した。次いで、この溶液を、PBS(pH=8、10mM、150mM NaCl)に滴加した。混合溶液を24時間混合して有機溶媒を蒸発させた後、ろ過(0.45μm)した。PEG−FPBA−CAT−PBLAの最終濃度は、1.4mg/mLであった。
(多分散性評価)
上記のようにPEG−FPBA−CAT−PBLAミセルを調製し、サイズ分布及びZ平均粒子径を、動的光散乱(DLS)手法により測定した。測定は、入射ビームとして緑色レーザー(532nm)を用い、173°の検出角度で、Zetasizer nano ZS(Malvern instruments,UK)を使用して、25℃の温度条件で行った。
<グルコース存在下でのサイズ分布の安定性>
5mMのグルコースを含むPBS(pH7.4)中で、PEG-FPBA-CAT-PBLAミセルをインキュベートする前と24時間インキュベートした後に、ミセルのサイズ分布を測定した。
結果を図5に示す。5mMグルコース存在下での24時間インキュベーションの前後で、ミセルのサイズ分布に大きな差はなかった。この結果は、5mMグルコース存在下では、PEG-FPBA-CAT-PBLAミセルが安定であることを示す。これにより、血中グルコース濃度の正常値の範囲では、PEG−FPBA−CAT−PBLAミセルが安定であることが確認された。
<Z平均粒子径のpH依存性>
5mMグルコースを含むPBS(pH7.4、pH7、又はpH6.5)中で、PEG-FPBA-CAT-PBLAミセルのZ平均粒子径を経時的に測定した。
結果を図6A及び図6Bに示す。図6Bは、図6Aのグラフにおける、横軸1〜4時間の範囲を拡大したグラフである。pH7及びpH6.5では、2時間インキュベーション後に、沈殿が確認された。一方、pH7.4では、24時間インキュベーション後も、沈殿は確認されなかった。この結果は、pH7及びpH6.5では、2時間のインキュベーションの間に、PEG-FPBA-CAT-PBLAミセルが分解したことを示す。
[実験例4]二重標識PEG-FPBA-CAT-PBLAミセルの調製
PEG−NHに替えてN−PEG−NHを用いたこと以外は、上記合成例1(PEG−FPBAの合成)と同様の操作により、N−PEG−FPBAを得た。次いで、DBCO−ローダミン110(1mg、1Eq.)及びN−PEG−FPBA(13.6mg、1Eq.)を、1mLのDMF中で混合し、−80℃で一晩凍結した。4℃で解凍した後、標識ポリマー(Rhod−PEG−FPBA)を酸性pHの水で透析して精製し、凍結乾燥した。これをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)に10g/Lとなるように溶解し、ストック溶液とした。
PEG−FPBA−CATの替わりにN−PEG−NHをイニシエーターとして用いたことを以外は、上記合成例1(PEG−FPBA−CAT−PBLAの合成)と同様の操作により、BLA−NCAの開環重合を行い、N−PEG−PBLAを合成した。N−PEG−PBLA(21.4mg、1Eq.)をAlexa545(1mg、1E1.)で標識し、標識ポリマー(Alexa545−PEG−PBLA)を得た。Alexa545−PEG−PBLAは、カラム(Sephadex L20,eluent:DMF)精製を行った。これをDMACに4g/Lとなるように溶解し、ストック溶液とした。
Rhod−PEG−FPBA(5mg)を、DMAC中でPEG−FPBA−CAT−PBLA(8.5mg)と一晩混合し、Rhod−PEG−FPBA−CAT−PBLA及びPEG−FPBA−CAT−PBLAを同率で含む混合物を得た。次いで、Alexa545−PEG−PBLA(8mg)を添加し、DMAC(21.5mL)中で一晩攪拌した。DMACを蒸発させた後、標識ポリマー混合物をCHClに溶解した。この溶液をPBS(pH=8、10mM、150mM NaCl)に滴加し、一晩攪拌した。ミセル溶液を超遠心により洗浄し、濃縮して、ろ過(0.45μm)した。ミセル内のAlexa545−PEG−PBLA及びRhod−PEG−FPBA−CAT−PBLAの濃度は、蛍光測定により、それぞれ、1.80mg/mL及び0.2mg/mLと求められた。
上記に記載した二重標識PEG-FPBA-CAT-PBLAミセルの調製方法の概略を図7に示す。図7に示すように、ミセル表面において、ローダミン110とAlexaFluor545とが隣接した場合には、蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence resonance energy transfer:FRET)シグナルが検出される。二重標識PEG-FPBA-CAT-PBLAミセルでは、ローダミン110標識PEG-FPBA-CAT-PBLAにおいて、ローダミン110標識PEGが脱離すると、FRETシグナルが減少する。そのため、FRETシグナルの検出により、ローダミン110標識PEGの脱離を確認することができる。
[実験例5]二重標識PEG-FPBA-CAT-PBLAミセルの安定性評価
(マウスメラノーマ細胞への取り込み評価)
B6−F10メラノーマ細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)及び1%抗生物質(ペニシリン及びスプレぷトマイシン)を含むRPMI1640培地(pH7.4)(Sigma Chemical Co., Inc.)中で、5%COを含む加湿雰囲気下、37℃で維持した。B16−F10細胞は、35mmガラス皿(Asahi Techno glass)に入れたRPMI培地(pH6.5又はpH7.4)で、1×10細胞を培養した。24時間培養後、50μLの二重標識ミセルを添加し、6時間培養した。細胞をHoechstで標識し、共焦点レーザー顕微鏡(Zeiss LSM 510 META)を用いて撮像した。Hoechstの励起用に2−photon Mai−Taiレーザーを用い、ミセル内のAlexa545の励起用にHe−Neレーザーを用いた。
結果を図8A及び8Bに示す。図8Aは、6時間インキュベーション後のマウスメラノーマ細胞の蛍光顕微鏡画像である。図8Bは、細胞内のAlexa545シグナルからの蛍光強度を定量化したグラフである。図8Bのグラフ中のデータは、平均±S.D.で示した(n=20)。
pH6.5では、pH7.4と比較して、二重標識ミセルの細胞内への取り込み量が増加することが確認された。
(血液循環中の安定性評価)
血液循環中の二重標識PEG-FPBA-CAT-PBLAミセルの安定性を、生体内リアルタイム共焦点レーザー顕微鏡(IVRTCLSM)を用いて、マウス生体内でFRETシグナルを検出することにより評価した。全ての画像の撮像は、20倍対物レンズを備えた直立ECLIPSE FN1 (NIKON)、640nmダイオードレーザー及び488/525−50nmバンドパス励起/放射フィルターを装備したNIKON A1R共焦点レーザー顕微鏡システムを用いて行った。
<健常組織におけるローダミン110標識PEGの脱離評価>
Univenter 400 Anesthesia unit(Univentor Ltd., Zejtun, Malta)を用いて、C57BL6/Jマウス(雌、6週齢)を2.0〜3.0%のイソフルラン(Ablott JapanCo., Ltd., Tokyo Japan)で麻酔した。次いで、マウスに、1.8mg/mLのAlexa545−PEG−PBLA及び0.2mg/mLのRhod−PEG−FPBA−CAT−PBLAからなる二重標識ミセルを尾静脈カテーテルにより投与した(200μL;ミセル2mg/mL)。二重標識ミセルの血液循環及び安定性を評価するために、1滴の液浸油を滴下してカバースリップで耳たぶを固定し、耳たぶ真皮を観察した。FRET及びAlexa545のシグナルデータは、8時間にわたって、10分毎にスナップショットをビデオモードで撮像することにより取得した。FRETシグナルの検出は、励起光488nm、放出光570nmで行った。
結果を図9A〜9Dに示す。図9Aは、二重標識ミセルを静脈注射した直後のマウスの耳たぶにおいて、FRETシグナルを検出した蛍光顕微鏡画像である。図9Bは、血管及び皮膚の所定領域(図9Aにおける四角形で囲まれた領域)内におけるFRETシグナル強度の経時変化を、正常組織の血管中の強度に対する相対値として表したグラフである。図9Cは、二重標識ミセルを投与した直後のマウスの耳たぶにおいて、Alexa545シグナルを検出した蛍光顕微鏡画像である。図9Dは、血管及び皮膚の所定領域(図9Cにおける四角形で囲まれた領域)内におけるAlexa545シグナル強度の経時変化を示したグラフである。投与直後の正常組織血管中の強度に対する相対値として示した。
FRETシグナル及びAlexa545シグナルの強度は、同様の経時変化を示した。この結果は、正常組織では、ローダミン110標識PEGの脱離が生じないことを示す。
<腫瘍組織におけるローダミン110標識PEGの脱離評価>
C57BL6/Jマウス(雌、6週齢)に、B16F10マウスメラノーマ細胞(100,000/100μL/マウス)を皮下接種した。1週間後、上記と同様に麻酔した後、マウスに二重標識ミセルを尾静脈カテーテルにより投与した(200μL;ミセル2mg/mL)。二重標識ミセルの腫瘍血管系での安定性及び腫瘍環境での分解を評価するために、IVRCLSにより腫瘍組織を観察した。FRET及びAlexa545のシグナルデータは、4時間にわたって、30分毎にスナップショットをビデオモードで撮像することにより取得した。FRETシグナルの検出は、励起光488nm、放出光570nmで行った。
結果を図10A〜10Dに示す。図10Aは、二重標識PEG−FPBA−CAT−PBLAミセルを静脈注射した直後のマウスの腫瘍組織において、FRETシグナルを検出した蛍光顕微鏡画像である。図10Bは、血管及び腫瘍間質組織の所定領域(図10Aにおける四角形で囲まれた領域)内におけるFRETシグナル強度の経時変化を、正常組織の血管中の強度に対する相対値として表したグラフである。図10Cは、二重標識PEG−FPBA−CAT−PBLAミセルを投与したマウスの腫瘍組織において、Alexa545シグナルを検出した蛍光顕微鏡画像である。図10Dは、血管及び腫瘍間質組織の所定領域(図10Cにおける四角形で囲まれた領域)内におけるAlexa545シグナル強度の経時変化を示したグラフである。投与直後の正常組織血管中の強度に対する相対値として示した。
ALEXA545シグナルは経過時間とともに上昇したが、FRETシグナルは経過時間とともに減少した。この結果は、腫瘍組織では、ローダミン110標識PEGの脱離が生じていることを示す。
<二重標識PEG-PBLAミセル(ネガティブコントロール)のPEG脱離評価>
FPBA−CATエステル構造が、ローダミン110標識PEGの脱離に寄与していることを確認するために、二重標識PEG-PBLAミセルを用いて、上記と同様の試験を行った。二重標識PEG-PBLAミセルは、PEG-FPBA-CAT-PBLAに替えてPEG-PBLAを用いたこと以外は、実験例4と同様の方法により調製した。
二重標識PEG-FPBA-CAT-PBLAに替えて二重標識PEG-PBLAミセルを用いたこと以外は、上記<健常組織におけるローダミン110標識PEGの脱離評価>
及び<腫瘍組織におけるローダミン110標識PEGの脱離評価>と同様の方法で、FRETシグナルを観察した。
結果を図11A及び図11Bに示す。図11Aは、血管内におけるFRETシグナル強度の経時変化を、正常組織の血管中の強度に対する相対値として表したグラフである。図11Bは、血管内及び腫瘍間質組織におけるFRETシグナル強度の経時変化を示したグラフである。投与直後の正常組織血管中の強度に対する相対値として示した。
図11A及び11Bに示す結果から、二重標識PEG-PBLAミセルは、健常組織及び腫瘍組織のいずれにおいても、ローダミン110標識PEGの脱離の生じないことが確認された。
1…本ブロックコポリマー、2…親水性ポリマーセグメント、3…疎水性ポリマーセグメント、4…フェニルボロン酸、5…カテコール、10…ミセル、20…親水性ポリマーセグメントのシェル、30…疎水性ポリマーセグメントのコア、40…フェニルボロン酸層、50…カテコール層

Claims (10)

  1. 親水性ポリマーセグメント及び疎水性ポリマーセグメントを含むブロックコポリマーであって、
    前記親水性ポリマーセグメントと前記疎水性ポリマーセグメントとが、下記一般式(I)で表される構造を含む2価の連結基で連結されている、ブロックコポリマー。
    [式中、X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又は電子吸引性基である。ただし、X〜Xの少なくとも1つは電子吸引性基である。*は結合手を表す。]
  2. 前記一般式(I)中、X及びXの少なくとも1つが電子吸引性基である、請求項1に記載のブロックコポリマー。
  3. 前記疎水性ポリマーセグメントが、アミノ酸から誘導される繰り返し単位を有する、請求項1又は2に記載のブロックコポリマー。
  4. 前記電子吸引性基がフッ素原子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のブロックコポリマーのミセルを含む、ミセル組成物。
  6. さらに、薬物を含む、請求項5に記載のミセル組成物。
  7. 前記薬物が、前記ミセル内に封入されている、請求項6に記載のミセル組成物。
  8. 前記薬物が抗腫瘍剤である、請求項6又は7に記載のミセル組成物。
  9. 請求項5〜8のいずれか一項に記載のミセル組成物を含む、医薬組成物。
  10. 腫瘍を治療又は予防するための医薬組成物である、請求項9に記載の医薬組成物。
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