JP2019123794A - サーモクロミック膜および積層体 - Google Patents

サーモクロミック膜および積層体 Download PDF

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克一 町田
則之 荒川
Noriyuki Arakawa
則之 荒川
紘史 星野
Hiroshi Hoshino
紘史 星野
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Abstract

【解決手段】網目状構造を有するポリマーとフッ化ビニリデン系共重合体と(メタ)アクリル系共重合体とを含むサーモクロミック膜。前記サーモクロミック膜およびフィルムを含む積層体の製造方法であって、有機溶媒中で、前記フッ化ビニリデン系共重合体の存在下で、重合により前記(メタ)アクリル系共重合体を得るモノマーを重合し、前記フッ化ビニリデン系共重合体および前記(メタ)アクリル系共重合体を含む重合体混合溶液を得る重合工程と、前記重合体混合溶液に、重合により前記網目構造を有するポリマーを得るモノマーおよび紫外線重合開始剤を添加する添加工程と、前記添加工程により得られた、前記モノマーおよび紫外線重合開始剤を含有する重合体混合溶液を透明フィルムに塗布し、有機溶媒を留去して製膜を行う製膜工程と、 前記製膜工程により得られた膜に紫外線を照射し、該モノマーを重合させて前記網目構造を有するポリマーを形成して、サーモクロミック膜を作製する後重合工程とを含む積層体の製造方法。【効果】本発明のサーモクロミック膜は、膜の垂れ落ちが生じることがない。本発明のサーモクロミック膜は、膜の垂れ落ちが生じないことから、垂直条件下および傾斜が存在する条件下で使用することができる。本発明のサーモクロミック膜は、他のフィルムに積層させて積層体として利用することができる。本発明の積層体の製造方法は、前記特徴を有するサーモクロミック膜を含む積層体を効率的に製造することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、サーモクロミック膜および積層体に関し、膜の垂れ落ちのないサーモクロミック材料および該サーモクロミック材料を含む積層体に関する。
近年、温度変化に応じて色が可逆的に変化する材料、すなわちサーモクロミズムを示すサーモクロミック材料が注目されている。
サーモクロミズム材料としては、2種以上のポリマーがブレンドされたポリマーブレンドの相溶−相分離現象を利用したサーモクロミック材料が知られている。このようなポリマーブレンド系では、相溶状態ではブレンドされたポリマー同士が分子レベルで均一に混合されることにより透明であるが、相分離状態ではミクロ相分離構造を形成するので光は散乱され、白濁(不透明)になる。低温臨界共溶温度型(LCST型)の相転移を示すポリマーブレンドでは、低温側では相溶状態(1相)となり透明であるが、相転移温度よりも高温側では、相分離状態(2相)となり不透明になる。
低温臨界共溶温度型(LCST型)の相転移を示すポリマーブレンドとしては、例えば、低粘度フッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体と、メタクリル酸エステル系重合体との混合物からなり、100℃以下の曇点を有するサーモクロミック樹脂組成物が知られている(特許文献1、2)。
しかしながら、特許文献1のサーモクロミック樹脂組成物は相転移を生じさせるためにある程度の流動性が必要となる反面、サーモクロミック樹脂組成物の流動性を高めると、窓等の垂直面にサーモクロミック膜として使用する場合、窓等に付着されたサーモクロミック膜が次第に垂れ落ちる、膜の垂れ落ちという現象が生じるという課題があった。一方で特許文献2のサーモクロミック樹脂組成物は光重合により架橋構造を形成して流動性を抑制できる膜を作成している。しかし、過度な架橋構造の形成は相転移を抑制するといった課題を有し、更に紫外線重合によって作成されたサーモクロミック樹脂組成物は耐光性が良くないという課題があった。
特開平6−192525号公報 特開平8−183893号公報
本発明は、膜の垂れ落ちが生じることがなく、可逆的に相転移によって透明、不透明が変化し、さらに耐光性に優れたサーモクロミック材料を提供することを目的とする。
本発明は以下の[1]〜[9]に関する。
[1] 網目状構造を有するポリマーとフッ化ビニリデン系共重合体と(メタ)アクリル系共重合体とを含むサーモクロミック膜。
[2] 前記網目構造を有するポリマーは、下記式(1)で示されるモノマーを重合して得られるポリマーであることを特徴とする[1]に記載のサーモクロミック膜。
Figure 2019123794
(式中、X は炭素原子数5〜26の脂肪族炭化水素基または酸素原子であり、Rは水素またはメチル基である。)
[3] 前記網目状構造を有するポリマーの含有量は、前記フッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体の合計に対して1質量%以上、15質量%以下である[1]または[2]に記載のサーモクロミック膜。
[4] 前記(メタ)アクリル系共重合体は、下記式(1)で示される第一の(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位、および下記式(2)で示される第二の(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を含む[1]から[3]のいずれかに記載のサーモクロミック膜。
Figure 2019123794
(式中、R1は水素またはメチル基を示し、R2は炭素数2〜20のアルキル基である。)
Figure 2019123794
(式中、R3は水素またはメチル基を示し、R4は炭素数2〜4のアルキレン基、R5は炭素数1〜4のアルキル基、nは2〜23の整数である。)
[5] [1]から[4]のいずれかに記載のサーモクロミック膜およびフィルムを含む積層体。
[6] [1]に記載のサーモクロミック膜およびフィルムを含む積層体の製造方法であって、
有機溶媒中で、前記フッ化ビニリデン系共重合体の存在下で、重合により前記(メタ)アクリル系共重合体を得るモノマーを重合し、前記フッ化ビニリデン系共重合体および前記(メタ)アクリル系共重合体を含む重合体の混合溶液を得る重合工程と、
前記重合体混合溶液に、重合により前記網目構造を有するポリマーを得るモノマーおよび紫外線重合開始剤を添加する添加工程と、
前記添加工程により得られた、前記モノマーおよび紫外線重合開始剤を含有する重合体混合溶液を透明フィルムに塗布し、有機溶媒を留去して製膜を行う製膜工程と、
前記製膜工程により得られた膜に紫外線を照射し、該モノマーを重合させて前記網目構造を有するポリマーを形成して、サーモクロミック膜を作製する後重合工程とを含む積層体の製造方法。
[7] 前記重合により前記網目構造を有するポリマーを得るモノマーは、下記式(1)で示されるモノマーである[6]に記載の積層体の製造方法。
Figure 2019123794
(式中、X は炭素原子数5〜26の脂肪族炭化水素または酸素原子であり、Rは水素またはメチル基である。)
[8] 前記サーモクロミック膜における前記網目状構造を有するポリマーの含有量は、前記フッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体の合計に対して1質量%以上、15質量%以下である[6]または[7]に記載の積層体の製造方法。
[9] 前記重合により前記(メタ)アクリル系共重合体を得るモノマーは、下記式(1)で示される第一の(メタ)アクリル酸エステル、および下記式(2)で示される第二の(メタ)アクリル酸エステルである[6]から[8]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
Figure 2019123794
(式中、R1は水素またはメチル基を示し、R2は炭素数2〜20のアルキル基である。)
Figure 2019123794
(式中、R3は水素またはメチル基を示し、R4は炭素数2〜4のアルキレン基、R5は炭素数1〜4のアルキル基、nは2〜23の整数である。)
本発明のサーモクロミック膜は、膜の垂れ落ちが生じることがなく耐光性に優れる。本発明のサーモクロミック膜は、膜の垂れ落ちが生じないことから、垂直条件下および傾斜が存在する条件下で使用することができる。また、本発明のサーモクロミック膜は、他のフィルムに積層させて積層体として利用することができる。本発明のサーモクロミック膜は耐光性に優れることから窓などに貼って使用することが可能である。
本発明の積層体の製造方法は、前記特徴を有するサーモクロミック膜を含む積層体を効率的に製造することができる。
<サーモクロミック膜>
本発明のサーモクロミック膜は、従来のサーモクロミック材料において使用されるフッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体とともに、網目状構造を有するポリマー(以下、網目状重合体と略記する。)を含有する点に特徴を有する。
本発明のサーモクロミック膜は、網目状重合体にフッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体の分子鎖が絡みあう、いわゆる相互侵入高分子網目(IPN)構造が形成されていると考えられる。このため、本発明のサーモクロミック膜は、網目状重合体によってフッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体の高分子鎖の動きが抑制され、膜の垂れ落ちが発生せず、サーモクロミック膜自体の形状も変化しないと考えられる。このような特徴を有するサーモクロミック膜は、膜の垂れ落ちが生じないことから、垂直条件下および傾斜が存在する条件下で使用することができる。また、本発明のサーモクロミック膜は、他のフィルムに積層させて積層体として利用することができる 。
〔網目状重合体〕
網目状重合体は、前述のように、その網目構造によってフッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体の高分子鎖の動きを抑制することができるポリマーであれば特に制限されるものではない。
前記網目状重合体としては、重合することにより網目状構造を有するポリマーを構築するモノマー(以下、架橋モノマーと略記する。)、例えば、下記式(1)で示されるモノマーを重合して得られる網目状構造を有するポリマーを挙げることができる。
Figure 2019123794
式(1)中、X は炭素原子数5〜26の脂肪族炭化水素基、または該脂肪族炭化水素基に含まれる水素原子を酸素原子で置き換えてなる基である。
Xが脂肪族炭化水素基である場合、その炭素原子数が5〜26であることが好ましく、6〜14であることがより好ましい。炭素数が上記範囲であることにより、式(1)で示されるモノマーを重合して得られるポリマーはフッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体の高分子鎖の動きを有効に抑制し、膜の垂れ落ちを効果的に防止することができるとともに、少量の網目状重合体でもサーモクロミズムを損なう事のないサーモクロミック膜を得ることができる。前期炭素原子数が5より少ないと網目の大きさが小さくなり(架橋点が密になり)、高温時にサーモクロミック膜が白濁しにくくなったり、低温時に透明にならなくなる、透明になる速度が著しく低下するなどの問題が生じやすい。また、前期炭素数が26を超えると網目構造が疎となり、膜の垂れ落ちを抑制するために多量に添加する必要が出てくるために、サーモクロミック性が低下したり、耐光性が低下することがある。
式(1)中、Rは水素またはメチル基である。Rは、耐光性などの観点ではメチル基であることが好ましく、光硬化性の観点では水素であることが好ましい。
式(1)で示されるモノマーとしては、具体的には、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートおよび1,9−ノナンジオールジメタクリレート等を挙げることができる。
サーモクロミック膜における網目状重合体の含有量は、前記サーモクロミック性を示すフッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体の混合物に対して1質量%以上、15質量%以下であることが好ましく、3質量%以上、10質量%以下であることがより好ましい。前記含有量とすることで、サーモクロミズムを損なわず、かつ、膜の垂れ落ちをより確実に生じさせないサーモクロミック膜を得ることができる。
〔フッ化ビニリデン系共重合体〕
本実施形態におけるフッ化ビニリデン系共重合体は、特に制限されるものではなく、従来サーモクロミック材料に用いられるフッ化ビニリデン系共重合体を用いることができる。
フッ化ビニリデン系共重合体は、フッ化ビニリデンと、フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとを共重合することにより得られる。本発明のサーモクロミック膜には、組成の異なる2種以上のフッ化ビニリデン系共重合体が含まれていてもよい。
フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、2−クロロ−1,1−ジフルオロエチレン(CDFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロアセトン(HFA)が挙げられ、HFP、HFAが好ましく、重合性等の観点からHFPが特に好ましい。フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとしてこれらのモノマーを用いることにより、サーモクロミック膜においてサーモクロミズムが好適に発現する。
フッ化ビニリデン系共重合体の重量平均分子量は、好ましくは2,000〜20,000であり、より好ましくは4,000〜15,000である。重量平均分子量が前記範囲にあると、フッ化ビニリデン系共重合体と(メタ)アクリル系共重合体との相溶性が良好であり、耐熱性に優れたサーモクロミック膜を得ることができるとともに、サーモクロミック膜のサーモクロミズムが好適に発現するので好ましい。
本実施形態におけるフッ化ビニリデン系共重合体に含まれるフッ化ビニリデン由来の構造単位の含有量は、特に限定されないが、フッ化ビニリデン系共重合体が有する全構造単位100質量%中に、40質量%以上、90質量%以下であることが好ましく、50質量%以上、80質量%以下であることがより好ましい。フッ化ビニリデン系共重合体におけるフッ化ビニリデン由来の構造単位の含有量が前記範囲内であることにより、サーモクロミック膜においてフッ化ビニリデン系共重合体の結晶性を抑制でき、透明性が向上するので好ましい。
前記フッ化ビニリデン系共重合体は、フッ化ビニリデンと、フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとを共重合することにより得られる。フッ化ビニリデン系共重合体の重合方法としては特に限定は無く、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、塊状重合法および溶液重合法等が挙げられ、懸濁重合法および乳化重合法が好ましい。共重合モノマーの導入率の上げ易さ、および、フッ化ビニリデン系共重合体の反応器からの取り出しやすさの観点から、乳化重合法がより好ましい。
なお、本実施形態におけるフッ化ビニリデン系共重合体は、市販のフッ化ビニリデン系共重合体を用いてもよい。
〔(メタ)アクリル系共重合体〕
本発明のサーモクロミック材料は、(メタ)アクリル系共重合体を含む。前記(メタ)アクリル系共重合体は、下記の第一の(メタ)アクリル酸エステルおよび第二の(メタ)アクリル酸エステルを単量体とする(メタ)アクリル系共重合体であることが好ましい。本発明のサーモクロミック材料には、組成の異なる2種以上の(メタ)アクリル系共重合体が含まれていてもよい。
本発明において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの両方または一方を示すために用いられる。
(第一の(メタ)アクリル酸エステル)
本発明における第一の(メタ)アクリル酸エステルは下記式(1)で示される。
Figure 2019123794
式(1)において、R1は水素またはメチル基であり、サーモクロミック膜の耐候性、耐湿性が向上することから、R1はメチル基であることが好ましい。すなわち、第一の(メタ)アクリル酸エステルは、メタクリル酸エステルであることが好ましい。
式(1)において、R2は炭素数2〜20のアルキル基であり、好ましくは炭素数4〜18のアルキル基である。
2が炭素数2以上のアルキル基であると、サーモクロミック膜を構成する共重合体が吸湿することで生じるポリマー変質が少なくなるので、サーモクロミック膜は好適にサーモクロミズムを示す。更に、R2が炭素数4以上のアルキル基であると、サーモクロミック膜の白濁時の全光線透過率がより低下する傾向にあるので好ましい。また、R2で表されるアルキル基の炭素数が大きいと、(メタ)アクリル系共重合体の疎水性が高くなり、サーモクロミック膜の耐湿性をより向上させることができ、更にガラス転移温度が下がるので室温でのサーモクロミズム現象が生じやすくなる。
2は炭素数2〜20のアルキル基であれば特に制限されるものではないが、R2は分岐を有するアルキル基であることが、サーモクロミック膜の耐湿性の観点から好ましい。
第一の(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、イソステアリルアクリレート、イソステアリルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、イソペンチルアクリレート、へキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、n−トリデシルアクリレート、n−トリデシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメチルアクリレート、シクロヘキシルメチルメタクリレートが挙げられる。これらの中でも、t−ブチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、イソステアリルアクリレート、イソステアリルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートが好ましく、t−ブチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートがより好ましい。
第一の(メタ)アクリル酸エステルは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(第二の(メタ)アクリル酸エステル)
本発明における第二の(メタ)アクリル酸エステルは下記式(2)で示される。
Figure 2019123794
式(2)において、R3は水素またはメチル基であり、サーモクロミック膜の耐候性、耐湿性が向上することから、R3はメチル基であることが好ましい。すなわち、第二の(メタ)アクリル酸エステルは、メタクリル酸エステルであることが好ましい。
式(2)において、R4は炭素数2〜4のアルキレン基であり、好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基である。R4が示すアルキレン基の炭素数は、前記範囲であることが原料の汎用性の観点から好ましい。前記R4は、直鎖状のアルキレン基であっても、分岐を有するアルキレン基であってもよい。
式(2)において、R5は炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜2のアルキル基である。R5の炭素数は、前記範囲であることが原料の汎用性の観点から好ましい。前記R5は、直鎖状のアルキル基であっても、分岐を有するアルキル基であってもよい。
式(2)において、nは2〜23の整数であり、好ましくは2〜13の整数である。nは、前記範囲であることが、室温での透明性および曇点の温度範囲の観点から好ましい。nが23より大きいと、特にR4がエチレンの場合、融点が上昇し、室温でワックス状になって不透明となりやすく、サーモクロミック性を損なう可能性がある。
第二の(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=2〜23)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(n=2〜23)、メトキシポリプロピレングリコールメタクリレート(n=2〜10)、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート(n=2〜10)が挙げられ、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=2〜13)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(n=2〜13)が好ましく、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=2〜13)がより好ましい。なお、第二の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例における括弧内のnは、式(2)におけるnと同義であり、アルキレングリコール単位の数を表す。
第二の(メタ)アクリル酸エステルは、一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記(メタ)アクリル系共重合体において、(メタ)アクリル系共重合体が有する全構造単位100質量%中に、第一の(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位と、第二の(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位との合計量は60〜95質量%であることが好ましく、70〜92質量%であることがより好ましい。
なお、(メタ)アクリル系共重合体を製造する際に用いられるモノマー同士は重合性が高い。このため、(メタ)アクリル系共重合体における各モノマー由来の構造単位の割合は、共重合体合成時の各モノマーの全モノマーに対する仕込み割合(質量%)とすることができる。
本実施形態における(メタ)アクリル系共重合体は、高屈折率化合物をモノマーとする構造を含む共重合体であってもよい。高屈折率化合物とは、温度25℃、587.56nm(ヘリウムd線)で測定した屈折率が1.5以上の化合物を意味する。
高屈折率化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルおよびビニルモノマーを挙げることができるが、(メタ)アクリル酸エステルであることが、他のモノマーとの共重合性の観点から好ましい。高屈折率化合物としては、例えば、アリールオキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アリールアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、メトキシスチレン、メチルスチレン、イソプロピルスチレン、メトキシメチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ビニルピロリドン等が挙げられる。
サーモクロミック材料が耐候性、耐湿性に優れる観点から、(メタ)アクリル酸エステルの中でも、メタクリル酸エステルが好ましく、具体的には、アリールオキシアルキレングリコールメタクリレート、アリールアルキルメタクリレートが好ましい。
本実施形態における(メタ)アクリル系共重合体は、(メタ)アクリル系共重合体を形成するモノマー、例えば上記第一の(メタ)アクリル酸エステルおよび第二の(メタ)アクリル酸エステル、必要に応じて高屈折率のモノマーを共重合することにより得られる。
(メタ)アクリル系共重合体の重合方法としては、特に限定は無く、例えば、(メタ)アクリル系共重合体を形成するモノマーをフッ化ビニリデン系共重合体の存在下で共重合を行う方法および、フッ化ビニリデン系共重合体の非存在下で共重合を行う方法により得ることができる。
フッ化ビニリデン系共重合体の存在下で共重合を行う場合には、(メタ)アクリル系共重合体を形成するモノマーおよび、フッ化ビニリデン系共重合体を溶媒に溶解し、重合開始剤を用いて(メタ)アクリル系共重合体を形成するモノマーを共重合する溶液重合法が挙げられる。
(メタ)アクリル系共重合体の重合方法としては、例えば、従来公知の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に従えばよく、例えば懸濁重合や乳化重合、溶液重合による方法を採用することができる。また、(メタ)アクリル系共重合体は、市販の(メタ)アクリル系共重合体を用いてもよい。
溶液重合の場合に使用する溶媒としては、(メタ)アクリル系共重合体を形成するモノマーを共重合することが可能であれば特に限定は無く、例えば、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、酢酸n-ブチル、酢酸イソプロピル、トルエン、キシレン等を用いることができる。また、フッ化ビニリデン系共重合体の存在下で共重合を行う場合には、フッ化ビニリデン系共重合体を溶解することが可能な溶媒を用いることが好ましく、そのような溶媒としては、例えば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸n-ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル類等が用いられる。また、キャスト等により、重合と塗膜の形成とを同時に行う場合には、溶媒として、例えばメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸n-ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル類等を用いることが好ましい。
溶媒は、共重合を好適に行う観点から、モノマー100質量部に対して、通常は50質量部以上、2000質量部以下、好ましくは100質量部以上、1000質量部以下用いられる。
本実施形態における(メタ)アクリル系共重合体を重合する際には、重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物類、2,2'−アゾビス(イソブチルニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物など通常のラジカル重合開始剤を用いることができる。
〔サーモクロミック膜の製造方法〕
本実施形態におけるサーモクロミック膜の製造方法としては、例えば、フッ化ビニリデン系共重合体と(メタ)アクリル系共重合体の混合溶液に、架橋モノマーおよび重合開始剤を混合し、架橋モノマーを重合して網目状重合体を得ることにより製造することができる。
サーモクロミック膜の製造方法については、下記の積層体の製造方法において詳述する。
<積層体>
本発明の積層体は、サーモクロミック膜およびフィルムを含む。例えば、本発明の積層体は、フィルムに前記サーモクロミック膜を積層してなる。本発明の積層体においては、サーモクロミック膜がフィルムで挟まれていてもよい。
本発明の積層体は、サーモクロミック膜/フィルムの構造、またはフィルム/サーモクロミック膜/フィルムの構造を含む。前記フィルムは、一層でも、二層またはそれ以上の層からなっていてもよい。例えば、本発明の積層体がサーモクロミック膜/フィルムの構造を含む場合に、該フィルムが一層からなっているときは、本発明の積層体は、サーモクロミック膜/フィルムの二層構造を含み、該フィルムがフィルム2/フィルム1の二層からなっているときは、本発明の積層体は、例えばサーモクロミック膜/フィルム2/フィルム1の三層構造を含む。なお、前記フィルム1、フィルム2は同じフィルムであっても異なるフィルムであってもよい。
本発明の積層体がフィルム/サーモクロミック膜/フィルムの構造を含む場合に、該2つのフィルムがともに一層からなっているとき、例えば一方のフィルムがフィルム1、他方のフィルムがフィルム2であるときは、本発明の積層体は、フィルム2/サーモクロミック膜/フィルム1の三層構造を含み、該2つのフィルムがともに二層からなっているとき、例えば一方のフィルムがフィルム2/フィルム1の二層構造を有し、他方のフィルムがフィルム4/フィルム3の二層構造を有するときは、本発明の積層体は、フィルム4/フィルム3/サーモクロミック膜/フィルム2/フィルム1の五層構造を含む。なお、前記フィルム1、フィルム2、フィルム3およびフィルム4は、それぞれ同じフィルムであっても異なるフィルムであってもよい。
本実施形態において、積層体に含まれるフィルムは、サーモクロミック膜を積層、またはサーモクロミック膜に積層することができる限り特に制限はない。後述の積層体の製造方法においては、紫外線硬化によりサーモクロミック膜を作製することから、フィルムとして、紫外線が透過可能な透明フィルムを用いることが好ましい。前記フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン等のフィルムを挙げることができる。
本発明の積層体がサーモクロミック膜/フィルムの構造を含み、該フィルムがPET製のフィルムである場合には、本発明の積層体は、サーモクロミック膜/PET製フィルムの構造を含む。本発明の積層体がフィルム/サーモクロミック膜/フィルムの構造を含み、該2つのフィルムがともにPET製のフィルムである場合には、本発明の積層体は、PET製フィルム/サーモクロミック膜/PET製フィルムの構造を含む。
本発明の積層体がサーモクロミック膜/フィルムの構造を含み、該フィルムが二層からなり、その二層がPET製フィルムおよびPP製フィルムである場合には、本発明の積層体は、例えば、サーモクロミック膜/PP製フィルム/PET製フィルムの構造を含む。本発明の積層体がフィルム/サーモクロミック膜/フィルムの構造を含み、該2つのフィルムがともに二層からなり、その二層がPET製フィルムおよびPP製フィルムである場合には、本発明の積層体は、例えば、PET製フィルム/PP製フィルム/サーモクロミック膜/PP製フィルム/PET製フィルムの構造を含む。
また、サーモクロミック膜とフィルムとの間などにおいて、例えば前記フィルム上に離型剤等が塗布されていても構わない。この場合、サーモクロミック膜/離型剤塗布フィルムのような構造を含む積層体となり、離型剤塗布フィルムを剥がして使用することが可能となる。
本発明の積層体において、前記サーモクロミック膜およびフィルムの厚みは、特に制限はないが、通常30〜250mmであることが好ましく、50mm以上、200mm以下であることが、特に好ましい。
<積層体の製造方法>
前記積層体は、例えば下記の製造方法により好適に製造することができる。
該製造方法は、有機溶媒中で、前記フッ化ビニリデン系共重合体の存在下で、重合により前記(メタ)アクリル系共重合体を得るモノマーを重合し、前記フッ化ビニリデン系共重合体および前記(メタ)アクリル系共重合体を含む重合体の混合溶液を得る重合工程と、
前記重合体混合溶液に、架橋モノマーおよび紫外線重合開始剤を添加する添加工程と、
前記添加工程により得られた、前記架橋モノマーおよび紫外線重合開始剤を含有する重合体混合溶液を透明フィルムに塗布し、有機溶媒を留去して製膜を行う製膜工程と、
前記製膜工程により得られた膜に紫外線を照射し、該モノマーを重合させて網目状重合体を形成して、サーモクロミック膜を作製する後重合工程とを含む。以下、各工程について詳細に説明する。
〔重合工程〕
重合工程では、有機溶媒中で、前記フッ化ビニリデン系共重合体の存在下で、重合により前記(メタ)アクリル系共重合体を得るモノマーを重合し、前記フッ化ビニリデン系共重合体および前記(メタ)アクリル系共重合体を含む重合体の混合溶液を得る。
重合工程は、前述の「((メタ)アクリル系共重合体の重合方法)」において述べた方法に準じて行うことができる。
有機溶媒としては、前述の「((メタ)アクリル系共重合体の重合方法)」において述べた有機溶媒を挙げることができる。溶液重合後に留去して後工程の製膜をしやすい溶媒に置換することも可能である。
重合により前記(メタ)アクリル系共重合体を得るモノマーとしては、前述の「〔(メタ)アクリル系共重合体〕」において述べたモノマーを挙げることができる。
前記重合体混合溶液に含まれるフッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体の合計の濃度は、通常10〜70質量%、好ましくは20〜60質量%である。
〔添加工程〕
添加工程では、前記重合体混合溶液に、架橋モノマーおよび紫外線重合開始剤を添加する。
架橋モノマーとしては、前述の〔網目状重合体〕において述べたモノマーを挙げることができ、例えば、前記式(1)で示されるモノマーを挙げることができる。
架橋モノマーの重合体混合溶液への添加量は、網目状重合体の量が、前記フッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体の総量に対して、1質量%以上、15質量%以下となる量であることが好ましく、2.0質量%以上、12質量%以下となる量であることがより好ましい。
前記紫外線重合開始剤としては、架橋モノマーの重合を生じさせることができれば特に制限はなく、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等を挙げることができる。
前記紫外線重合開始剤の重合体混合溶液への添加量は、架橋モノマーに対して、0.5質量%以上、10.0質量%以下となる量であることが好ましく、1.0質量%以上、7.0質量%以下となる量であることがより好ましい。
〔製膜工程〕
製膜工程では、前記添加工程により得られた、架橋モノマーおよび紫外線重合開始剤を含有する重合体混合溶液を透明フィルムに塗布し、有機溶媒を留去して製膜を行う。
本製造方法では、フィルムとして透明フィルムを使用する。これは、後述する硬化工程において、重合体混合溶液を紫外線照射することにより硬化させることから、フィルムが紫外線透過性を有することが要求されるからである。透明フィルムは本製造方法において、積層体の基材としても機能する。
前記モノマーおよび紫外線重合開始剤を含有する重合体混合溶液を透明フィルムに塗布する方法としては、前記重合体混合溶液を透明フィルム上に均一に塗布できる方法であれば特に制限はなく、通常の塗工方法、例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、ダイコート法、バーコート塗布法、インクジェット法等を挙げることができる。
透明フィルム上に製膜された前記重合体混合溶液の膜の厚みは、通常50〜400μm、好ましくは60〜300μmである。
塗布後に溶媒を留去することによりサーモクロミック膜が形成される。使用する溶媒に応じて50〜200℃で加熱することで溶媒を除くことが可能である。
〔後重合工程〕
後重合工程では、前記製膜工程により得られた膜に紫外線を照射し、架橋モノマーを重合させて網目状重合体を形成して、サーモクロミック膜を作製する。
紫外線を照射は、既知の装置を用いて行うことができる。
紫外線の照射量は、紫外線重合開始剤の種類、添加量、重合させるモノマーの種類、量等に応じて適宜決定することができ、特に制約はないが、例えば100〜2000mJ/cm2とすることができる。
紫外線の照射は、前期透明フィルム上のサーモクロミック膜に直接行っても良いが、酸素による重合阻害を防ぎ、より少ない紫外線量でも重合が進行するように窒素雰囲気下で行っても良い。
基板として紫外線が透過可能な透明フィルムが用いられるので、後重合工程において、透明フィルムに塗布された前記重合体に、透明フィルムを通して紫外線を照射することが可能であり、前記製膜工程により得られた膜を固定させることが可能となる。
上記のように、紫外線重合開始剤の存在の下、製膜工程により得られた膜に紫外線を照射することにより、前記架橋モノマーが重合すなわち架橋し、網目状重合体が合成され、製膜工程により得られた膜は固定され、垂れ落ちしにくいサーモクロミック膜となる。以上により、サーモクロミック膜および透明フィルムを含む積層体が得られる。
前記製膜工程により得られた膜中では、フッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体と前記架橋モノマーとが均一に分散された状態にあるので、この状態の下で架橋モノマーを重合させると、フッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体の分子鎖が、網目状重合体の網目構造に絡みあった態様で、網目状重合体が形成される。すなわち、前記後重合工程によって形成されたサーモクロミック膜においては、フッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体と網目状重合体とが、いわゆる相互侵入高分子網目(IPN)構造を形成していると考えられる。このため、このサーモクロミック膜においては、フッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体の高分子鎖の動きが、網目状重合体によって抑制され、膜の垂れ落ちが発生せず、サーモクロミック膜自体の形状も変化しないと考えられる。
前記製造方法により、サーモクロミック膜/フィルムの構造を有する積層体が得られる。得られる積層体については、<積層体>の項で述べたとおりである。
前記製造方法において、製膜工程の後、硬化工程の前に、前記透明フィルムに塗布された、前記モノマーおよび紫外線重合開始剤を含有する重合体の上に、さらに透明フィルムを積層する積層工程を行うことができる。この積層工程を行えば、フィルム/サーモクロミック膜/フィルムの構造を有する積層体が得られる。このように、重合体を2枚の透明フィルムで挟んだ状態で重合させると、酸素の影響を受けにくい積層体を得ることができるという利点がある。積層工程において二層以上からなる透明フィルムを用いることができるのは前記と同様である。
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(フッ化ビニリデン系共重合体)
フッ化ビニリデン系共重合体として、重量平均分子量が10,000、フッ化ビニリデン由来の構造単位を60質量%有し、ヘキサフルオロプロピレン由来の構造単位を40質量%有する、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、P(VDF+HFP)とも記す)を使用した。
前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下の条件で測定した。
標準物質:St945、5400、9500(東ソー製)
装置:島津製作所製、商品名:Prominence
カラム:昭和電工製、商品名:Shodex K−802.5×1本
溶媒:THF
サンプル濃度:2.1質量%
流速:0.7mL/min
前記フッ化ビニリデン由来の構造単位および、ヘキサフルオロプロピレン由来の構造単位の量は、F19−NMRにより、測定した。
(評価)
1.戻り速度
定温恒温器と濁度計(日本電色工業社製、濁度計NDH2000)を用いて20℃から70℃までヘイズおよび全光線透過率を測定した。測定は評価用サンプルを定温恒温器の中に入れ、測定ごとに、5℃ずつ昇温して20分経過したのちに取り出して速やかに濁度計を用いて行った。測定後室温で3時間放置し、ヘイズが1%を切るものを、戻り速度が良好として「○」と評価し、3時間後にはヘイズが1%を切らないが、1日後にヘイズが1%を切ったサンプルを「△」と評価し、1日経ってもヘイズが1%を切らないサンプルを「×」と評価した。
2.固定効果
戻り速度を評価した後の評価サンプルの膜の端部に印をつけ、30℃、50%の恒温恒湿器に立てて入れた。2週間後、その印より下に膜の端部が垂れ落ちていないものを「○」と評価し、膜が垂れ落ちているものを「×」と評価した。
3.耐光性
評価サンプルに対して、試験機社製スーパーキセノンウェザーメーターSX―75(照射強度180W/m2)を使用し、1000時間照射でイエローインデックス(JIS K 7373)を測定し、イエローインデックスの変化が+2以内のものを「○」と評価し、+2を超えるものを「×」と評価した。
〔比較例1〕
(1.サーモクロミック材料の製造、キャスト溶液の調製)
6.0gのP(VDF+HFP)を、25.0gのメチルイソブチルケトン(以下、MIBKとも記す)に溶解した。得られた溶液に、3.0gのラウリルメタクリレート、1.5gのベンジルメタクリレート、6.0gのメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=9)を添加、混合し、ドデシルメタクリレートおよびメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(n=9)を溶解した後、重合開始剤として0.25gの1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサンを添加、混合した。
重合は窒素気流下で撹拌しながら、70℃で4時間、80℃で2時間、90℃で2時間、100℃で1.5時間、昇温しながら行った。重合後、ロータリーエバポレーターを用い、MIBKを留去し、フッ化ビニリデン系共重合体と、(メタ)アクリル系共重合体とを含むサーモクロミック材料を得た。
得られたサーモクロミック材料を4.5gのメチルエチルケトン(以下、MEKとも記す)に溶解して、サーモクロミック材料の溶液(キャスト溶液1)を得た。この溶液の固形分は78.6%である。
(2.キャスト、評価用サンプルの調製)
前記(1.サーモクロミック材料の製造、キャスト溶液の調製)で得たキャスト溶液1を、大判スライドガラス上に滴下することでコートした後、真空乾燥機で室温6時間、40℃で1時間の乾燥を行い、キャスト溶液1中のMEKを除き、キャスト溶液1から形成された層を得た。
次いで厚さ150μmのPETフィルムを短冊状にしたものを型枠として置き、キャスト溶液1から形成された層の上にさらにもう1枚の大判スライドガラスを重ねて、4辺をテープで封じて、層構成が、大判スライドガラス/サーモクロミック材料から形成される層/大判スライドガラスの三層構造である評価用サンプル1を得た。評価用サンプル1に対する評価結果を表1に示す。
〔実施例1〕
(1.架橋モノマー入りキャスト溶液の調製)
架橋モノマーであるトリエチレングリコールジメタクリレート15gに対して紫外線重合開始剤2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン 0.5gを溶解して架橋モノマー溶液Aを作成した。
ついで比較例1で作成したキャスト溶液1の固形分に対してトリエチレングリコールジメタクリレートの濃度が5.0%になるように、架橋モノマー溶液Aをキャスト溶液1に添加、攪拌を行って均一にし、キャスト溶液2を得た。
(2.キャスト、評価用サンプルの調製)
(1.架橋モノマー入りキャスト溶液の調製)で得たキャスト溶液2を、大判スライドガラス上に滴下することでコートした後、真空乾燥機で室温6時間、40℃で1時間の乾燥を行い、キャスト溶液2中のMEKを除き、キャスト溶液2から形成された層を得た。次いで厚さ150μmのPETフィルムを短冊状にしたものを型枠として置き、キャスト溶液2から形成された層の上にさらにもう1枚の大判スライドガラスを重ねて、4辺をテープで封じて、層構成が、大判スライドガラス/キャスト溶液2から形成されたから形成される層/大判スライドガラスの三層構造であるサンプルを得た。ただし紫外線が当たらないように作業は黄色フィルターをかけた蛍光灯下で行った。
次いでこのサンプルを20℃に30分放置したのちに、ウシオ電機社製スポットキュアMD250を用いて紫外線を30秒、ひっくり返して30秒照射し、大判スライドガラス/サーモクロミック材料から形成される層/大判スライドガラスの三層構造である評価用サンプル2を得た。この時の照射強度は7.5mW/cm2であった。評価用サンプル2に対する評価結果を表1に示す。
〔実施例2〜7、比較例2〜5〕
架橋モノマーの添加量または架橋モノマーの種類を表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様に行い、評価用サンプルを作製した。各評価用サンプルに対する評価結果を表1に示す。表1における「添加量」は、キャスト溶液1の固形分に対する架橋モノマーの添加量(質量%)を示す。
なお、比較例1、2および4においては、耐光性測定の初期にスライドガラスで挟んだ膜が耐光性評価の初期に垂れ落ちたので、耐光性測定は行えなかった。
Figure 2019123794
NPGA:ネオペンチルグリコールジアクリレート
2G:ジエチレングリコールジメタクリレート
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
3GA:トリエチレングリコールジアクリレート
4G:テトラエチレングリコールジメタクリレート
ND:1,9−ノナンジオールジメタクリレート
9G:ポリエチレングリコール(n=9)ジメタクリレート
本発明のサーモクロミック膜は、膜の垂れ落ちが生じることがないので、窓等の垂直面に付着させて利用することができる。本発明のサーモクロミック膜を他のフィルムに積層させて積層体とすることにより、さらに幅広いサーモクロミック材料の活用が期待できる。例えば、PET製フィルム/サーモクロミック膜/PET製フィルムの構造を有する積層体の一方のPET製フィルムの外側に糊剤を塗布し、該積層体を窓などに貼付して使用することができる。また、本発明のサーモクロミック膜自体にも粘着性があるので、例えば、PET製フィルム/サーモクロミック膜/離型剤塗布PET製フィルムの構造を有する積層体を製造し、使用に際して、該積層体から離型剤塗布PETを剥がして、サーモクロミック膜部を窓などに付着させ、該積層体を窓などに貼付するという使用方法も考えられる。

Claims (9)

  1. 網目状構造を有するポリマーとフッ化ビニリデン系共重合体と(メタ)アクリル系共重合体とを含むサーモクロミック膜。
  2. 前記網目構造を有するポリマーは、下記式(1)で示されるモノマーを重合して得られるポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のサーモクロミック膜。
    Figure 2019123794
    (式中、X は炭素原子数5〜26の脂肪族炭化水素基または酸素原子であり、Rは水素またはメチル基である。)
  3. 前記網目状構造を有するポリマーの含有量は、前記フッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体の合計に対して1質量%以上、15質量%以下である請求項1または2に記載のサーモクロミック膜。
  4. 前記(メタ)アクリル系共重合体は、下記式(1)で示される第一の(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位および下記式(2)で示される第二の(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を含む請求項1から3のいずれか1項に記載のサーモクロミック膜。
    Figure 2019123794
    (式中、R1は水素またはメチル基を示し、R2は炭素数2〜20のアルキル基である。)
    Figure 2019123794
    (式中、R3は水素またはメチル基を示し、R4は炭素数2〜4のアルキレン基、R5は炭素数1〜4のアルキル基、nは2〜23の整数である。)
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のサーモクロミック膜およびフィルムを含む積層体。
  6. 請求項1に記載のサーモクロミック膜およびフィルムを含む積層体の製造方法であって、
    有機溶媒中で、前記フッ化ビニリデン系共重合体の存在下で、重合により前記(メタ)アクリル系共重合体を得るモノマーを重合し、前記フッ化ビニリデン系共重合体および前記(メタ)アクリル系共重合体を含む重合体の混合溶液を得る重合工程と、
    前記重合体混合溶液に、重合により前記網目構造を有するポリマーを得るモノマーおよび紫外線重合開始剤を添加する添加工程と、
    前記添加工程により得られた、前記モノマーおよび紫外線重合開始剤を含有する重合体混合溶液を透明フィルムに塗布し、有機溶媒を留去して製膜を行う製膜工程と、
    前記製膜工程により得られた膜に紫外線を照射し、該モノマーを重合させて前記網目構造を有するポリマーを形成して、サーモクロミック膜を作製する後重合工程とを含む積層体の製造方法。
  7. 前記重合により前記網目構造を有するポリマーを得るモノマーは、下記式(1)で示されるモノマーである請求項6に記載の積層体の製造方法。
    Figure 2019123794
    (式中、X は炭素原子数5〜26の脂肪族炭化水素または酸素原子であり、Rは水素またはメチル基である。)
  8. 前記サーモクロミック膜における前記網目状構造を有するポリマーの含有量は、前記フッ化ビニリデン系共重合体および(メタ)アクリル系共重合体の合計に対して1質量%以上、15質量%以下である請求項6または7に記載の積層体の製造方法。
  9. 前記重合により前記(メタ)アクリル系共重合体を得るモノマーは、下記式(1)で示される第一の(メタ)アクリル酸エステル、および下記式(2)で示される第二の(メタ)アクリル酸エステルである請求項6から8のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
    Figure 2019123794
    (式中、R1は水素またはメチル基を示し、R2は炭素数2〜20のアルキル基である。)
    Figure 2019123794
    (式中、R3は水素またはメチル基を示し、R4は炭素数2〜4のアルキレン基、R5は炭素数1〜4のアルキル基、nは2〜23の整数である。)
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