JP2019120098A - 免震装置 - Google Patents
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Abstract
Description
転がり支承は、球体やコロなどの転動部が下部構造体のすべり面を転がるように構成され、すべり面との摩擦係数μを非常に小さな値(例えば、μ≒0.005)で実現できる特徴がある。
すべり支承は、低摩擦材が設けられた摺動部が下部構造体のすべり面を滑るように構成され、積層ゴム支承と同等以上の大きな耐荷重を安価に実現できる特徴がある。
また、すべり支承の摩擦係数は、すべり面の面圧に依存する性質があり、支承に作用する軸力が小さく低面圧の場合には大きくなり、作用する軸力が大きく低面圧の場合には小さくなる性質がある。
例えば、現在市販されている低摩擦すべり支承の摩擦係数μは、基準面圧20MPa(20N/mm2)の場合には0.014であるが、基準面圧が1/4の5MPaの場合には0.029となり、基準面圧20MPa(20N/mm2)の場合と比べて約2倍となる。さらに、すべり支承の摩擦係数μは、基準面圧が1/20の1MPaの場合には0.07となって基準面圧20MPa(20N/mm2)の場合と比べて約5倍となり、基準面圧が1/200の0.1MPaの場合には0.24となって基準面圧20MPa(20N/mm2)の場合と比べて約17倍ともはや低摩擦とは言い難いものになってしまう。
また、転がり支承は、高精度の機械部品で構成されているため、耐荷重を大きくしようとするとコスト高になるという問題もある。
本発明では、すべり支承は、上部構造体から作用する軸力が所定の値を上回る場合には、摺動部がすべり面を摺動可能とし、上部構造体から作用する軸力が所定の値以下で小さく、面圧が小さいため摺動部とすべり面との摩擦係数が大きいときには、摺動部がすべり面と離間する構成である。このため、すべり支承は、面圧が大きくすべり面との摩擦係数を小さく維持できる場合のみすべり面を摺動することになる。
一方、転動部は、上部構造体から作用する軸力の変化によるすべり面との摩擦係数の変化は小さいため、上部構造体から作用する軸力の大きさにかかわらず、すべり面との摩擦係数を略一定の小さい値に維持することができる。
本発明では、上部構造体から作用する軸力が所定の値を超えて大きい場合には、転がり支承のみで軸力を支持しているが、上部構造体から作用する軸力が所定の値を超えて大きい場合には、転がり支承のみでなく転がり支承およびすべり支承の両方がその軸力を支持している。このため、上部構造体から作用する軸力が大きくなっても、その軸力を転がり支承およびすべり支承の両方で負担するため、転がり支承が負担する軸力を軽減させることができ、転がり支承にかかるコストを削減することができる。
このような構成とすることにより、転動部のみがすべり面を摺動可能な状態と、転動部および摺動部の両方がすべり面を摺動可能な状態と、の切り替えを、上部構造体から作用する軸力によって容易に行うことができる。
図1に示すように、本実施形態による免震装置1は、上下方向に離間し水平方向に相対変位可能な下部構造体11と上部構造体12との間の免震層13に設けられている。本実施形態では、免震層13には複数の免震装置1が設けられている。
図1および図2に示すように、免震装置1は、並列に配置された転がり支承2と、すべり支承3と、を有している。本実施形態では、すべり支承3が上下方向に貫通する筒状に形成され、転がり支承2がすべり支承3の内側に配置されてすべり支承3に囲まれている。
転がり支承2は、上部構造体12の下側に圧縮ばね(付勢部材)4を介して連結され、下部構造体11の上面11aを転動可能に構成されている。すべり支承3は、上部構造体12の下側に連結され、下部構造体11の上面11aを滑動可能に構成されている。
下部構造体11の上面11aは、水平面に形成され、例えばステンレスの板材などが設けられ、すべり面5が構成されている。
ベアリング支持部22は、ベアリング21の上方に設けられ、ベアリング21を上側から転動可能に支持している。ベアリング支持部22の側部には下部側および外側(すべり支承3側)に開口する切欠き部23が形成されている。切欠き部23を構成する面のうち、下側を向く面を下向き面23aとする。下向き面23aは、略水平面に形成されている。
本実施形態では、転がり支承2に作用する耐荷重(支持軸力)がN1の場合、ベアリング21とすべり面5との摩擦係数μ1がμ1≦0.006となるように設定されている。
摺動部支持部32の下面は、水平面に形成され、この下面に沿って摺動部31が設けられている。摺動部31は、摺動部支持部32の下面にテフロン(登録商標)のコーティングを施したり、テフロン(登録商標)テープを貼りつけたりすることで形成されている。摺動部31は、摺動部支持部32の下面の略全体に形成されている。
摺動部支持部32の下部側には、内側(転がり支承2側)に突出する顎部33が形成されている。顎部33の上面33aは、略水平面に形成されている。顎部33は、ベアリング支持部22の切欠き部23の内部に設けられていて、顎部33の上面33aが切欠き部23の下向き面23aの下側に上下方向に対向するように配置されている。
このため、圧縮ばね4が伸長し、転がり支承2が上部構造体12と離間するように下方に変位すると、切欠き部23の下向き面23aが顎部33の上面33aに近接し、圧縮ばね4が圧縮し、転がり支承2が上部構造体12と近接するように上方に変位すると、切欠き部23の下向き面23aが顎部33の上面33aと離間する。
顎部33の上面33aと切欠き部23の下向き面23aとは、近接すると当接し、離間すると間に隙間が形成される。
本実施形態では、すべり支承3に作用する耐荷重(支持軸力)がN2の場合、摺動部31とすべり面5との摩擦係数μ2が0.01≦μ2≦0.1となるように設定されている。基準面圧σ0で摺動部31とすべり面5との接触面積をAとしたときの耐荷重N2は、N2=A・σ0>10N1としている。このように、すべり支承3の耐荷重を転がり支承2の耐荷重と比較して桁違いに大きく設定している。
ベアリング支持部22の切欠き部23の下向き面23aは、圧縮ばね4が伸長してすべり支承3の顎部33の上面33aに当接すると、顎部33の上面33aよりも下側は変位できないように構成されている。このため、上部構造体12の下面12aから転がり支承2のベアリング21の下端部21aまでの寸法は、最大でh2となる。このとき、伸長した圧縮ばね4に付勢される力はN1´である。
これに対し、上方から受ける軸力Nが所定の値N1´よりも大きい場合(N>N1´)には、図3に示すように、圧縮ばね4が上方から受ける軸力Nが所定の値N1´以下の場合よりも圧縮されてベアリング支持部22の切欠き部23の下向き面23aがすべり支承3の顎部33の上面33aから離間し、すべり支承3の摺動部31の下面31aがすべり面5と当接するまで上部構造体12が下部構造体11に近接する。すべり支承3の摺動部31の下面31aがすべり面5と当接すると、上部構造体12の下面12aと下部構造体11の上面11aとの間隔が、上部構造体12の下面12aから摺動部31の下面31aまでの寸法と同じh1となるとともに、圧縮ばね4が圧縮されて、上部構造体12の下面12aから転がり支承2のベアリング21の下端部21aまでの間隔もh1となる。
この状態で上部構造体12と下部構造体11とが水平方向に相対変位すると、ベアリング21がすべり面5を転動し、摺動部31は、すべり面5を滑動しないことになる。
これにより、免震装置1とすべり面5との摩擦抵抗力は、転がり支承2のベアリング21とすべり面5との摩擦抵抗力だけとなるため、摩擦係数μ1(μ1≦0.006)によるものとなる。
このときの上方から受ける軸力N、摩擦抵抗力Q、摩擦係数μ1、見かけ上の摩擦係数μeの関係は、下記の式(1)となる。
この状態で上部構造体12と下部構造体11とが水平方向に相対変位すると、ベアリング21がすべり面5を転動し、摺動部31がすべり面5を滑動することになる。
これにより、免震装置1とすべり面5との摩擦抵抗力は、転がり支承2のベアリング21とすべり面5との摩擦抵抗力およびすべり支承3の摺動部31とすべり面5との摩擦抵抗力となるため、摩擦係数μ1(μ1≦0.006)、および摩擦係数μ2(0.01≦μ2≦0.1)によるものとなる。
このとき上方から受ける軸力N、摩擦抵抗力Q、摩擦係数μ1、摩擦係数μ2、見かけ上の摩擦係数μeの関係は、下記の式(2)となる。
図4では以下のように定義している。
α :軸力比=支承に作用する全軸力N/すべり支承の基準面圧時耐力N2
N2=A・σ0
σ0:基準面圧(本実施形態では20MPa)
A :摺動部のすべり材との接触面積
軸力比α>1/20=0.05の場合は、転がり支承2がすべり面5を転動するとともに、すべり支承3もすべり面5を摺動するため、摩擦係数は増加するが、軸力比によらず摩擦係数μeは、μe<0.04となる。
なお、免震装置1に転がり支承2を併用せずにすべり支承3のみを用いる場合は、軸力比α≦0.1では、摺動部31とすべり面5との摩擦係数が軸力の低下とともに急激に増大してしまうが、軸力比α>0.2であれば、免震装置1に転がり支承2およびすべり支承3の両方を用いる場合とほぼ同等の摩擦係数になることがわかる。
摺動部31は、上部構造体12から作用する軸力が大きく、すべり面5に対する面圧が大きくなるほど、すべり面5との摩擦係数が小さくなり、上部構造体12から作用する軸力が小さくすべり面5に対する面圧が小さくなるほど、すべり面5との摩擦係数が大きくなる性質がある。
本発明の実施形態によるすべり支承3は、上部構造体12から作用する軸力が所定の値を超えて大きく、この軸力に対する摺動部31とすべり面5との摩擦係数が小さくなる場合には、摺動部31がすべり面5を摺動可能とし、上部構造体12から作用する軸力が所定の値以下で小さく、この軸力に対する摺動部31とすべり面5との摩擦係数が大きくなる場合には、摺動部31がすべり面5と離間するため摺動しない構成である。このため、すべり支承3は、支承全体の摩擦係数を小さく維持できる場合のみすべり面5を摺動することになる。
一方、ベアリング21は、上部構造体12から作用する軸力の変化によるすべり面5との摩擦係数の変化は小さいため、上部構造体12から作用する軸力の大きさにかかわらず所定の値以下の軸力を支持し、すべり面5との摩擦係数を略一定の小さい値に維持することができる。
本発明では、上部構造体12から作用する軸力が所定の値以下で小さい場合には、転がり支承2のみで軸力を支持しているが、上部構造体12から作用する軸力が所定の値を超えて大きい場合には、転がり支承2のみでなく転がり支承2およびすべり支承3の両方でその軸力を支持している。このため、上部構造体12から作用する軸力が大きくなっても、その軸力を転がり支承2およびすべり支承3の両方で負担するため、転がり支承2が負担する軸力を頭打ちさせることができ、転がり支承2にかかるコストを削減することができる。
このような構成とすることにより、ベアリング21のみがすべり面5を摺動可能な状態と、ベアリング21および摺動部31の両方がすべり面5を摺動可能な状態と、の切り替えを、上部構造体12から作用する軸力によって容易に切り替えることができる。
例えば、上記の実施形態では、免震層13には複数の免震装置1が設けられているが、免震層13に1つの免震装置1のみが設けられていてもよいし、転がり支承やすべり支承のみで構成される免震装置と併用してもよい。
また、上記の実施形態では、ベアリング21のみがすべり面5を摺動可能な状態と、ベアリング21および摺動部31の両方がすべり面5を摺動可能な状態と、の切り替え機構に圧縮ばね4が用いられているが、圧縮ばね4以外の部材を用いた機構としてもよい。
2 転がり支承
3 すべり支承
4 圧縮ばね(付勢部材)
5 すべり面
11 下部構造体
12 上部構造体
21 ベアリング(転動部)
31 摺動部
Claims (2)
- 水平方向に相対変位可能な下部構造体と、上部構造体との間に設けられる免震装置において、
前記上部構造体の下側に連結され前記下部構造体に設けられたすべり面に沿って水平方向に転動可能な転動部を備える転がり支承と、
前記転がり支承と並列され、前記上部構造体の下側に連結され前記すべり面に沿って水平方向に摺動可能な摺動部を有するすべり支承と、を有し、
前記上部構造体から作用する軸力が所定の値以下の場合は、前記転動部が前記すべり面と当接して前記すべり面を転動可能になるとともに、前記摺動部が前記すべり面と離間し、
前記転がり支承および前記すべり支承に作用する軸力が前記所定の値を超える場合は、前記転動部が前記すべり面と当接して前記すべり面を転動可能になるとともに、前記摺動部が前記すべり面と当接して前記すべり面を滑動可能にすることを特徴とする免震装置。 - 前記転がり支承は、前記転がり支承と前記上部構造体とを互いに上下方向に離間するように付勢する付勢部材を介して前記上部構造体の下側に連結され、
前記上部構造体から作用する軸力が前記所定の値以下の場合は、前記付勢部材の付勢力によって前記摺動部が前記転動部よりも上側に配置され前記すべり面から離間し、前記上部構造体から作用する軸力が前記所定の値を超える場合は、前記付勢部材が圧縮されて前記摺動部が前記転動部と同じ高さとなり前記すべり面と当接することを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
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JP2000283220A (ja) * | 1999-03-30 | 2000-10-13 | Ohbayashi Corp | 免震展示台 |
JP2001173719A (ja) * | 1999-12-15 | 2001-06-26 | Bridgestone Corp | 滑り支承装置 |
JP2011214703A (ja) * | 2010-04-02 | 2011-10-27 | Takenaka Komuten Co Ltd | すべり支承装置 |
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2018
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