JP2019119946A - 耐熱性不織布薄膜、その製造方法およびその用途 - Google Patents

耐熱性不織布薄膜、その製造方法およびその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】高温条件下における熱収縮率を低く維持すると共に薄膜化しても通気性を維持することができ、電解液吸液性能、電解液保液性能に優れた耐熱性メルトブロー不織布薄膜を提供する。【解決手段】耐熱性樹脂を原料としてメルトブロー法により製造されたメルトブロー不織布原反を、金属ロール/金属ロールによる高温カレンダ加工処理工程に供し、原料樹脂のガラス転移点以上の温度でカレンダ加工処理を行い、得られたカレンダ加工処理中間体を弾性ロール/金属ロールによる特殊カレンダ加工処理工程に供することによりカレンダ加工処理工程から得られる耐熱性メルトブロー不織布薄膜。【選択図】なし

Description

本発明は、耐熱性不織布薄膜、耐熱性不織布薄膜の製造方法および耐熱性不織布薄膜の用途に関するものであり、さらに詳しくは、耐熱性樹脂を原料としてメルトブロー法により製造された不織布(以下、「メルトブロー不織布」ということがある。)原反を薄膜化してなる耐熱性メルトブロー不織布薄膜、その製造方法およびその用途に関するものである。
特に、本発明は、耐熱性メルトブロー不織布薄膜の用途として、電気二重層キャパシタ(EDLC)用セパレータならびにリチウムイオン二次電池およびリチウムイオンポリマー二次電池等のリチウムイオン二次電池用セパレータを提供するものである。
従来から不織布を電池用セパレータに使用することについては、不織布は、空隙率が高いことから、電解液保液性能が高く、電気容量が出やすい点および電解液吸液性能が良好であり、電池の生産性が高く、低価格となる点等のメリットに着目されて、その利用が図られてきた。しかしながら、メルトブロー不織布は、引張強度が不足することから、低目付での不織布を製造することが困難であり、ある程度の大きさの目付を有する不織布しか製造することができず、その結果、厚みも比較的大きくなることから、電池用薄膜型セパレータとして適用することは不向きとされてきた。
そこで、かかる状況下において、メルトブロー不織布原反の厚みを熱ロールプレスを用いるカレンダ加工処理により調整することが試みられてきた。不織布原反のカレンダ加工処理によれば、薄膜化によりメルトブロー不織布薄膜からなるセパレータまたは一定の厚みのセパレータを製造することは可能であり、電池の小型化に寄与することは可能であるが、所望の厚みのセパレータを得るために必要な加圧処理により不織布を構成する繊維が潰れ、通気性が低下するという問題点の生ずることが指摘されてきた。従って、メルトブロー不織布原反の厚みを薄くするほど不織布の構成繊維の重なり部分および塊部分が部分的にフィルム化することにより内部抵抗が上昇し、また、電解液の吸液性能および保液性能も劣り、電池性能が低下すると共に、フィルム化により透明斑を形成するに至り、外観上、商品価値を著しく低下させるという問題点が指摘されてきた。
また、異なる物性を有する二層以上の不織布層からなる積層体についてもカールの問題、積層密着性の不足により電池生産性に影響し、また、安全性にも欠ける点がある。一方、合成樹脂を原料とするメルトブロー不織布とは異なる材料であり、従来から使用されている紙製セパレータにおいても通気性および電解液の保液性能が十分ではなく、内部抵抗が高く、長期サイクル特性に欠けるという欠点がある。
前記の理由からメルトブロー不織布原反のカレンダ加工処理による薄膜化には限度があり、フィルム化による透明班の形成なしには40μm程度までの薄膜化しかできないという状況にあった。
従って、メルトブロー不織布原反を用いて、厚みが5〜30μm程度に制限されるリチウムイオン電池用セパレータおよび厚みが40μm程度に制限される電気二重層キャパシタ(EDLC)用セパレータを提供することが極めて困難な状況にあった。
さらに、近年の電池ではセパレータとして耐熱性が要求され、特に高温において収縮性の低いものが求められている。また、電池の作製前にセパレータを高温乾燥する工程も採用されており、高温収縮率の低いものが求められている。
以上の観点から、メルトブロー不織布からなる電池用セパレータとして、薄膜化されたものであり、同時に高温において低収縮率を示すものが切望されてきた。
かかる状況下において、本出願人により電池用セパレータとして耐熱性樹脂を用いた不織布が開発されており、特開2002−50335号公報(以下、「特許文献1」という。)には、ポリブチレンテレフタレートのメルトブロー不織布からなる耐熱性セパレータが提案されている。同公報によれば、100℃〜180℃までの周波数10KHzにおけるインピーダンスの最大値が常温での実部インピーダンスの100倍以下で、かつ絶対値が2000Ωcm以下であり、高温で放置してもセパレータが融解せず、電極がショートすることのない低抵抗耐熱性セパレータが記載されている。しかし、メルトブロー不織布の厚みが0.01〜1.0mmであり、40μm以下に薄膜化したようなものについては開示がない。
さらに、特開2002−170540号公報(以下、「特許文献2」という。)には、異なる融点を有する2種類以上の樹脂からなるメルトブロー不織布の積層体からなる耐熱性セパレータが記載されている。かかる特許文献2によれば、低温で透過性を遮断する機能についても記載されているが、厚みが40μm以下になる薄膜化されたセパレータについては開示がない。
また、特開2014−222706号公報(以下、「特許文献3」という。)には、α―セルロース繊維からなるアルミ電解コンデンサ用セパレータが記載されている。アルミ電解コンデンサは、陽極アルミ箔と陰極アルミ箔との間に、セパレータとして電解紙を介在させてコンデンサ素子を作成し、このコンデンサ素子に電解液を含浸させ、封口して製作したものであることが記載されている。また、セパレータの厚みは25〜100μmであることが記載されている。
かかる状況下において、薄膜化された不織布であって、かつ通気性に優れると共に高温条件下における安定性に優れたリチウム電池用セパレータ、電気二重層キャパシタ用セパレータとして使用可能な耐熱性メルトブロー不織布薄膜の開発が切望されてきた。
特開2002−50335号公報 特開2002−170540号公報 特開2014−222706号公報
従って、本発明の課題は、第1に高い開孔度を維持すると共に特定のガーレー透気度および高温条件下における安定性に優れた耐熱性メルトブロー不織布薄膜を提供することにある。
また、第2にかかる耐熱性メルトブロー不織布薄膜であって、リチウム二次電池用セパレータまたは電気二重層キャパシタ用セパレータ(EDLC)に適用可能な耐熱性メルトブロー不織布薄膜を提供することにある。
さらに、第3にカレンダ加工処理により薄膜化しても不織布薄膜を構成する繊維の潰れが抑制され、かつ、フィルム化による透明斑の形成が抑制された耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法を提供することにある。
そこで、本発明者は、前記の発明の課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、
耐熱性樹脂からなる耐熱性メルトブロー不織布薄膜であって、厚みが50μm以下であり、高い開孔度を維持することにより通気度が高く、ガーレー透気度(JIS P8117ガーレー法による透気度をいう。以下同じ。)が1〜40s/φ10/300ccの範囲に特定され、かつ熱収縮率が低く、高温安定性の維持が可能な耐熱性メルトブロー不織布薄膜により、前記課題を解決できる点に着目すると共に、かかる物性を有する耐熱性メルトブロー不織布薄膜は、メルトブロー不織布原反の原料樹脂として耐熱性樹脂を用いると共に、メルトブロー不織布原反に対するカレンダ加工処理を、金属ロールによる高温カレンダ加工処理と弾性ロールを備えた特殊カレンダ加工処理の加工処理条件の異なる二段階で行うことにより、薄膜化を達成することができ、かつ、不織布原反の構成繊維の形態をそのまま維持すると共に、繊維の交絡部分および塊部分のフィルム化による透明班の形成を抑制することができる点に着目し、かかる知見に基いて、前記課題を解決することができ、本発明の完成に想到するに至った。
かくして、本発明の要旨は、次の(1)〜(15)に示す通りのものである。
尚、本明細書において、(1)〜(6)に係る発明を第1の発明、(7)〜(13)に係る発明を第2の発明、(15)〜(16)に係る発明を第3の発明ということがある。
(1)耐熱性樹脂
からなる耐熱性メルトブロー不織布薄膜であって、
厚みが50μm以下であり、
目付が5〜100g/mであり、
平均繊維径が0.5〜15μmであり、
ガーレー透気度が1〜40s/φ10/300ccであり、
熱収縮率が、150℃で1時間の加熱条件下(本明細書において「150℃×1Hr環境下」と省略することがある。)における熱処理後においても、MD方向(長さ方向。以下、同じ。)およびCD方向(幅方向。以下、同じ。)をそれぞれ寸法変化率で表していずれかが1.2%以下であることを特徴とする耐熱性メルトブロー不織布薄膜。

(2)前記耐熱性樹脂が、融点200℃以上の熱可塑性樹脂である前記1に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜。

(3)前記耐熱性メルトブロー不織布薄膜が、少なくとも二層の不織布層が積層され、貼り合せられてなる不織布加工体である前記(1)に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜。

(4)前記耐熱性メルトブロー不織布薄膜が、平均繊維径が互いに異なる繊維を有する少なくとも二層の不織布層が積層され、貼り合せられてなる不織布加工体である前記(1)に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜。

(5)前記厚みが1〜45μmである前記(1)に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜。

(6)前記ガーレー透気度が5〜30s/φ10/300ccである前記(1)に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜。

(7)前記熱収縮率が、150℃で1時間の加熱条件下における熱処理後において、MD方向およびCD方向を、それぞれ寸法変化率で表わしていずれも1.2%以下である前記(1)に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜。
(8)耐熱性樹脂からなるメルトブロー不織布原反を薄膜化してなる耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法であって、
1.前記メルトブロー不織布原反を、少なくとも二個の金属ロールの間に挟持し前記耐熱性樹脂のガラス転移点以上の加工温度条件および前記不織布原反の構成繊維の潰れが抑制され、かつ、薄膜化が可能な条件に調整された加圧条件下においてカレンダ加工に供する高温カレンダ加工処理工程と、
2.前記高温カレンダ加工処理工程により得られた加工処理中間体を、少なくとも1個のロールが弾性ロールである少なくとも二個のロールを備えた特殊カレンダ加工処理により、130℃以下の加工温度条件および前記不織布原反の構成繊維の潰れが防止されるように調整され、かつ、薄膜化が可能な条件に調整された加圧条件下においてカレンダ加工に供する特殊カレンダ加工処理工程と
を含有してなることを特徴とする耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法。

(9)前記メルトブロー不織布原反が、少なくとも二層の不織布層からなる積層体である前記(8)に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法。

(10)前記メルトブロー不織布原反が、その構成繊維の平均繊維径が互いに異なる繊維を有する少なくとも二層の不織布層からなる積層体である前記(8)に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法。

(11)前記ガラス転移点以上の加工処理温度条件が130℃以上の温度である前記(8)に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法。

(12)前記高温カレンダ加工処理工程における前記不織布原反の構成繊維の潰れが抑制されるように調整された加圧条件のうち、ロールの線圧が200N/mm以下である前記(8)に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法。

(13)前記特殊カレンダ加工処理工程は、少なくとも一個の弾性ロールと少なくとも一個の金属ロールとから構成された
カレンダ装置が設置されてなる前記(8)に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法。

(14)前記特殊カレンダ加工処理工程において、弾性ロールの弾性材料は、合成樹脂である前記(8)または(13)に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法。
(15)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜からなる電気二重層キャパシタ(EDLC)用セパレータ。
(16)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜からなるリチウムイオン二次電池用セパレータ。
本発明は、前記の通りの構成からなるものであり、本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜は、厚みが小さいにも拘らず、不織布の構成繊維に変形が少なく、また交絡部分のフィルム化による透明班の形成もなく、ガーレー透気度が良好な範囲にあり、高温における熱収縮率も小さいという効果を奏する。また、メルトブロー不織布原反を少なくとも二層の不織布層に積層化し高温カレンダ加工処理により貼り合せることにより、得られた不織布薄膜は引張強度の向上を果たすと共に、不織布特有の外観ムラを改善することができる。
さらに、異なる平均繊維径の繊維を有する不織布層の積層組み合わせにより高い透気性を維持することができ、電解液の吸液性能および保液性能を改善することができる。かかる特性を有する耐熱性メルトブロー不織布薄膜をセパレータとして用いることによりリチウム二次電池および電気二重層キャパシタ(EDLC)への適用に成功したものであり、これにより、安定した電池特性を示し、安全性を確保することができ、電池の生産性向上を図ることができる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
A.第1の発明
1.耐熱性メルトブロー不織布薄膜
第1の発明は、耐熱性樹脂からなる耐熱性メルトブロー不織布薄膜を提供するものであり、かかる耐熱性メルトブロー不織布薄膜は、少なくとも次の物性値を有するものである。
すなわち、
・厚みが50μm以下であり、
・目付が5〜100g/mであり、
・平均繊維径が0.5〜15μmであり、
・ガーレー透気度が1〜40s/φ10/300ccであり、
・熱収縮率が、150℃で1時間の加熱条件下における熱処理後においても、MD方向およびCD方向を、それぞれ寸法変化率で表していずれかが1.2%以下である。
さらに、前記の通り、厚みが50μm以下に薄膜化されたにも拘らず電解液吸液性能および電解液保液性能に優れたものであり、具体的には後述の実施例および表1で示す通り、電解液吸液速度15秒以下、電解液保液率250%以上に達するものも製造が可能である。
また、本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜の開孔度は、SEMで観察された不織布を構成する繊維の隙間の存在により十分維持されたものである。
2.耐熱性メルトブロー不織布薄膜の構成成分
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜の構成成分は、耐熱性樹脂を含有する成分であり、2種以上の耐熱性樹脂の混合体のものでもよく、メルトブロー不織布原反の成分に由来する。具体例としては、次の通りである。
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布原反の原料樹脂としては、高温安定性を維持する観点から耐熱性樹脂が選択される。
耐熱性樹脂としては、融点200℃以上の熱可塑性合成樹脂が好適であり、具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアリーレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリフタルアミド、ポリオレフィン等を挙げることができる。
前記ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略すことがある。)、ポリブチレンイソフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリ(1,6−ヘキサメチレンテレフタレート、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンメチレンテレフタレート)等が挙げられる。これらは単独重合体でもよく、または、共重合体、またはこれらの混合物でもよい。これらのポリエステルの中では、特にポリブチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートとポリブチレンイソフタレートとの混合物等が本発明に関する耐熱性メルトブロー不織布薄膜の原料樹脂として好ましく、これらを用いることにより、メルトブロー紡糸性を向上し、不織布の引張強度を増大させることができる。また、ポリブチレンテレフタレートの数平均分子量は、5,000〜20,000のものが好ましく用いられる。さらに、IV値0.6〜0.9のものが好適である。
前記ポリアミド(以下、PAと略すことがある。)としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−66共重合体、ナイロン12、ナイロン6−12共重合体、ナイロン46等が挙げられる。メルトブロー不織布では、なるべく低い分子量のものが紡糸性がよく、細い繊維が得られるので好ましく、例えば、10,000〜25,000の数平均分子量のPAが好ましい。
前記ポリアリーレンスルフィドとしては、耐熱性、耐薬品性に優れた樹脂で、構成単位の90モル%以上が[CS]で構成される重合体が挙げられ、特に、溶融粘度(V)が200〜500ポイズのポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すことがある。)が好ましい。
ポリフタルアミドとしては、特に限定されるものではないが、テレフタルアミド単位およびイソフタルアミド単位等を含有するものであり、例えばヘキサメチレンテレフタルアミド―イソフタルアミド―アジポアミドターポリマー(モル比65:25:10)等を例示することができる。耐熱性メルトブロー不織布薄膜の原料樹脂として溶融粘度が、100〜1000Pasであるものを挙げることができる。
また、前記ポリオレフィンとしては、ポリメチルペンテン,環状オレフィンポリマー等が挙げられる。
3.耐熱性メルトブロー不織布薄膜の構造
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜は、単層の不織布層からなる不織布加工体または少なくとも二層の不織布層が積層され貼り合せられてなる不織布加工体である。特に、少なくとも二層以上の不織布層が積層され貼り合せられてなる不織布加工体が、単層に比較して下記の如く特色を有する効果を奏する点から用途に応じて採用することが好ましい。かかる耐熱性メルトブロー不織布薄膜としては、(A)同一物性の不織布層が貼り合せられてなるものと、(B)物性のうち、少なくとも繊維径の異なる繊維を有する不織布層が貼り合せられてなるものを挙げることができる。
前記の「貼り合せられてなる不織布加工体」は、後述の通り、例えば、高温カレンダ加工処理及び特殊カレンダ加工処理により不織布層が互いに圧着形成されることにより得られた加工品を包含するものである。
(A)同一物性の不織布層が貼り合せられてなる不織布加工体は、少なくとも二層の各層の不織布層の構成繊維の平均繊維径の値が実質的に同一の場合であり、その他の物性値、例えば、目付、引張強度、引張伸度等の少なくとも二種以上の物性値が実質的に同一のものでもよい。かかる構成によれば、例えば、平均繊維径が同一の場合、特に細繊維同士の積層体の貼り合せにより、単層と比較して物性値のバラツキが均一化され、電池に使用した場合短絡を防止することができると共に、引張強度の向上および電解液吸液速度の改善を図ることができる。
一方、(B)異なる平均繊維径の繊維を有する少なくとも二層からなる不織布層の積層貼り合わせによれば、得られた耐熱性メルトブロー不織布薄膜は、実施例にも示すように引張強度およびガーレー透気度が改善され、また、電解液の吸液性能および保液性能も良好とすることができる。特に、細繊維と太繊維をそれぞれ有する不織布層の組み合せにより得られる貼り合せによる不織布加工体は、引張強度、ガーレー透気度、電解液吸液性能および保液性能を改善することができる。
前記細繊維としては、具体的には、平均繊維径0.5〜10μm、好ましくは1〜5μm、さらに好ましくは、1.5〜4μmのものであり、一方、前記太繊維としては具体的には、平均繊維径1〜15μm、好ましくは、1.5〜10μm、さらに好ましくは、2〜5μmであり、これらの平均繊維径が互いに重複することがない細繊維と太繊維を有する不織布層の組合せが好ましい。

4.耐熱性メルトブロー不織布薄膜の物性
次に、本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜が具備すべき物性値について、説明する。
尚、かかる物性値は、耐熱性メルトブロー不織布薄膜が、二層以上の物性値の異なる不織布層から構成されるものである場合は、かかる不織布層全部の平均値である。
(1)平均繊維径
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜を構成する不織布層の繊維の平均繊維径は、0.5〜15μm、好ましくは1.0〜10μm、さらに好ましくは1.5〜8μmである。平均繊維径が0.5μm未満では、引張強度が弱くなるばかりではなく、電池用セパレータとして使用した場合は、電池の内部抵抗が大きくなりすぎるという難点が生ずる。一方、平均繊維径が15μmを超えると、電池用セパレータに用いた際には、内部短絡の危険性が高まるおそれが生ずる。
(2)目付
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜の目付は、5〜100g/m、好ましくは7〜50g/m、さらに好ましくは10〜40g/mである。目付が5g/m未満では、引張強度が不足することから、電池のアセンブリでの信頼性が低下し、電池用セパレータとしては、ショ−トが起こりやすいため好ましくない。一方、目付が100g/mを超えると、電池用セパレータとして使用する場合は、内部抵抗が上昇するおそれがある。
(3)厚み
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜の厚みは、電気二重層キャパシタ用セパレータおよびリチウム二次電池用セパレータとしての用途に鑑みて50μm以下であり、好ましくは1〜45μm、特に好ましくは、5〜40μm、さらに好ましくは10〜35μmである。厚みが1μmを超えると、電池用セパレータに用いた場合、内部短絡の危険性が抑制され、一方、50μmを超えると、電池容量が低下するおそれがある。
(4)ガーレー透気度
本発明に係るメルトブロー不織布薄膜のガーレー透気度は、1〜40s/φ10/300cc、好ましくは5〜30s/φ10/300ccである。ガーレー透気度が1s/φ10/300cc未満であると、電池用セパレータとして内部短絡の危険性が高まり、一方40s/φ10/300ccを超えると電池セパレータとして内部抵抗が大きくなるという問題が生ずる。
尚、「ガーレー透気度」は、後述のように、JIS P8117(2009)「紙及び板紙一透気度及び透気抵抗度試験方法」(中間領域)一ガーレー法」に準じた測定方法により得られる結果を意味するものである。
(5)引張強度
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜の引張強度は、2〜50N/25mm幅であり、好ましくは5〜40N/25mm幅である。引張強度が2N/25mm幅未満であれば、電池のアセンブリ時に切れが生じ易くなる。一方、引張強度が50N/25mm幅を超えると、極端に伸度が低下し、アセンブルの際に自由度の低下から不具合が生じやすくなるおそれがある。
(6)引張伸度
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜の引張伸度は、1〜100%であり、好ましくは5〜80%である。引張伸度が1%未満であれば、アセンブリ時に切れが生じ易くなる。一方、引張伸度が100%以上であると、ネッキングが起こりやすく、安定してアセンブルすることができにくくなるおそれが生ずる。
(7)熱収縮率
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜の高温下での熱収縮率は、120℃で1時間の加熱環境下で1.0%以下、好ましくは0.5%以下であり、150℃で1時間加熱環境下では1.2%以下、好ましくは1.0%以下である。この値は少なくともMD方向またはCD方向の片方、より好ましくは両方を満たすことが望ましい。熱収縮率が高いと高温環境下での電池の異常発生時による電池内部の昇温により電池端部のセパレータが収縮し、正極、負極の接触により、内部短絡などの問題が生じることがある。
以上説明したように第1の発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜は、耐熱樹脂からなる耐熱性メルトブロー不織布薄膜であって、
少なくとも次の物性;
・厚みが50μm以下、
・目付が5〜100g/m
・平均繊維径が0.5〜15μm、
・ガーレー透気度が1〜40s/φ10/300cc、
・熱収縮率が、150℃で1時間の加熱条件下における熱処理後においても、MD方向およびCD方向をそれぞれ寸法変化率で表わしていずれかが1.2%以下である
耐熱性メルトブロー不織布薄膜であり、
かかる耐熱性メルトブロー不織布薄膜は、一つの方法として、次のカレンダ加工処理工程を経て製造することができる。
すなわち、(1)メルトブロー不織布原反を、少なくとも二個の金属ロールの間に挟持し前記耐熱性樹脂のガラス転移点以上の加工温度条件および前記メルトブロー不織布原反の構成繊維の潰れが抑制されるように調整された加圧条件下においてカレンダ加工に供する高温カレンダ加工処理工程と、
(2)前記高温カレンダ加工処理工程により得られたカレンダ加工処理中間体を、少なくとも一個のロールが弾性ロールである少なくとも二個のロールを備えた特殊カレンダ加工処理により、130℃以下の加工温度条件および前記不織布原反の構成繊維の潰れが抑制されるように調整された加圧条件下においてカレンダ加工に供する特殊カレンダ加工処理工程とからなるカレンダ加工により、少なくとも前記物性を有する耐熱性メルトブロー不織布薄膜を得ることができる。
B.第2の発明
第2の発明によれば、耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法が提供される。
すなわち、耐熱性樹脂からなるメルトブロー不織布原反を薄膜化してなる耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法であって、
前記メルトブロー不織布原反を、少なくとも
(1)高温カレンダ加工処理工程
および
(2)特殊カレンダ加工処理工程
に供することを特徴とする耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法が提供される。
尚、ここで、「メルトブロー不織布原反」とは、メルトブロー法により製造された不織布であって、不織布薄膜に薄膜化される対象の不織布を意味する。
1.メルトブロー不織布原反
不織布は、従来の布のように糸を織り、また編んで作るものとは異なり、繊維集合体から糸の段階を経ず直接布状としたものである。
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造原料であるメルトブロー不織布原反の物性値および製造方法について以下に説明する。
本発明に係るメルトブロー不織布原反は、耐熱性樹脂を原料樹脂としてメルトブロー法により製造される。
耐熱性樹脂としては、前記の通りであり、かかる耐熱性樹脂から適宜選択して使用することができるが、本発明の目的には前記の通りポリブチレンテレフタレートが好適であり、以下に説明するメルトブロー不織布原反の製造条件は耐熱性樹脂としてポリブチレンテレフタレートを使用する場合をベースとしたものである。
メルトブロー不織布原反は、本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造にとって重要な要素であり、少なくとも次の物性を有していることが好ましい。
(1)目付
本発明に係るメルトブロー不織布原反の目付は、5〜100g/mであり、好ましくは、7〜50g/mであり、さらに好ましくは10〜40g/mである。目付が5g/mに達しないとカレンダ加工処理後に得られる耐熱性メルトブロー不織布薄膜の引張強度が不足し、一方、目付が100g/mを超えると、ケバ立ちが多くなり、安定的に不織布薄膜を製造することが困難となるなどの問題が生ずるおそれがある。
(2)通気度
本発明に係るメルトブロー不織布原反の通気度は、10〜200cc/cm/sであり、好ましくは、20〜150cc/cm/sである。通気度が10cc/cm/s未満の場合は、高温カレンダ加工処理後に得られる耐熱性メルトブロー不織布薄膜のガーレー透気度が高くなり、40s/φ10/300ccを超え、一方、通気度が200cc/cm/sを超えると、耐熱性メルトブロー不織布薄膜のガーレー透気度が低下し、1s/φ10/300cc未満となるなど、前記の如く、特定範囲のガーレー透気度を有する耐熱性メルトブロー不織布薄膜を製造することができないおそれが大きくなるという問題が生ずる。
(3)引張強度
本発明に係るメルトブロー不織布原反の引張強度は、2〜50N/25mm幅の引張強度を有する耐熱性メルトブロー不織布薄膜が提供されるように、少なくとも1N/25mm幅以上であり、好ましくは、3N/25mm幅以上である。引張強度が1N/25mm幅に達しないと、十分な引張強度を有する耐熱性メルトブロー不織布薄膜を得ることができないという問題が生ずる。
(4)引張伸度
本発明に係るメルトブロー不織布原反の引張伸度は、1〜150%、好ましくは、10〜100%である。
(5)平均繊維径
本発明に係るメルトブロー不織布原反を構成する繊維の平均繊維径は、単層および二層以上の不織布層のいずれにおいても、0.5〜15μmであり、好ましくは、1〜10μmである。
2.メルトブロー法
本発明に係るメルトブロー不織布原反を製造するためのメルトブロー方法については、特に限定されたものではなく、例えば、米国特許第3650866号,米国特許第3978185号(エクソンモービル社)に記載の方法を用いることが好ましく、これらに準じた方法として以下に記載のメルトブロー方法を採用することができる。
メルトブロー法として、溶融した原料樹脂を、一列に配列した複数のノズル孔から溶融ポリマーとして吐出させ、オリフィスダイに隣接して設置された噴射ガス口から高温高速空気を噴射させて吐出された溶融ポリマーを細繊維化し、繊維流を捕集する方法が採用される。具体的には、次の方法が採用される。
原料樹脂を260〜380℃の押出機温度で溶融した後、300〜380℃に設定したダイに送り込み、ダイノズルから吐出させると同時に、260〜380℃の高温エアブローガスにより、延伸して微細繊維化しノズルから離れた位置に設置したコレクタに補集する。
メルトブロー装置ダイにおいて、ノズル孔は、0.1〜1mmφが好ましく、0.2〜0.8mmφがさらに好ましい。ノズル個数は、5〜20個/cmであるのが好ましく、10〜15個/cmがさらに好ましい。ノズル孔径が0.1mmφ未満では、吐出樹脂圧力が高くなり、一方、ノズル孔径が1mmφを超えると、繊維を細くすることが出来ない。また、ノズル個数が5個/cm未満では、原料樹脂の吐出圧力が高くなり、一方、ノズル個数が20個/cmを超えると、繊維同士が融着しすぎて、不織布の均一性を失うこととなる。
また、メルトブロー法の製造条件としては、耐熱性樹脂、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂を原料とするメルトブロー不織布の製造において、押出温度は、260〜380℃、好ましくは300〜350℃、また、ダイの温度は、300〜380℃、好ましくは320〜350℃、さらに、高速空気温度は、260℃〜380℃、好ましくは300〜350℃である。押出機・ダイおよびエア温度が前記範囲を下回ると、吐出樹脂圧力が高くなり、また、細い繊維が得られない。一方、前記範囲を超えると、樹脂のゲル化が促進され、劣化する。また、コンベアネットを傷つけるばかりでなく、できた不織布のコンベアネットからの剥離性が悪く、安定的に生産することが困難である。樹脂吐出量は、0.05〜3g/min/hole、好ましくは0.1〜1g/min/holeである。樹脂吐出量が少ないと、吐出樹脂圧力が前記範囲を下回るとともに、均一な不織布が得られず、一方、樹脂吐出量が前記範囲を超えると、吐出樹脂圧力が高くなるとともに、細い繊維が得られない。
3.カレンダ加工処理
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜は、次に示す二段階からなるカレンダ加工処理工程により製造される。かかる耐熱性メルトブロー不織布薄膜の物性値は、下記の通り各加工処理工程の加工温度条件、加工圧力条件(ロール線圧・ロール間クリアランスを含む。)および加工速度条件を選択することにより調整することができる。
(1)高温カレンダ加工処理工程
高温カレンダ加工処理工程においては、少なくとも二個の金属ロールの組み合わせからなるカレンダ機構を利用するものであり、具体的には耐熱性樹脂を原料としてメルトブロー方法で製造されたメルトブロー不織布原反を二個の金属ロールの間に挟持し、前記耐熱性樹脂のガラス転移点以上の温度条件および前記不織布の構成繊維の潰れが抑制されるように調整された加圧条件下においてカレンダ加工処理される。前記金属カレンダロールとしては、通常使用されるものを採用することができるが、特に鋼および鋼と同等の合金材料のものが好ましい。カレンダの形式とロールの配列として、逆L形、Z形、直立2本形等(実用プラスチック用語辞典第151頁((株)プラスチックス・エージ発行))を採用することもできる。
耐熱性樹脂のガラス転移点以上の温度としては、耐熱性樹脂の種類にもよるが、ポリエステル系樹脂については130℃以上、好ましくは140℃以上の温度が採用される。温度条件は、組み合わせる二個の金属ロールの両者の加熱温度をそれぞれ設定することにより調整される。
高温カレンダ加工処理における加工温度の上限は、当該耐熱性樹脂の融点以下の温度であり、具体的には融点から30〜100℃低い温度を採用することが好ましい。高温カレンダ加工処理により、不織布原反製造時の残留歪が緩和されると共に、原料樹脂の結晶化が促進されるものと推定される。その結果、高温安定性が改善され、高温収縮性の改善を図ることができる。結晶化の定量的な測定は困難であり、測定することは、非実際的でもある。また、加圧条件としては、ロール線圧の他、ロール間に設けられるクリアランスも薄膜化に影響を与える要素として包含される。クリアランスの大きさは高温カレンダ加工処理後のカレンダ加工処理中間体の厚みが所定のレベルになるように、設定されると共に、メルトブロー不織布原反中の繊維の潰れまたは変形が抑制可能なように調整されたものである。ロールの線圧としては、200N/mm以下、好ましくは30〜170N/mm、さらに好ましくは50〜150N/mmの加工圧力が採用されることが好ましい。
かかるカレンダ加工条件により、耐熱性メルトブロー不織布薄膜の高温条件下での収縮率が小さく、ガーレー透気度も小さく、内部抵抗の小さい耐熱性メルトブロー不織布薄膜を得ることができる。ロール間のクリアランスとしては、単層のメルトブロー不織布原反の薄膜化および少なくとも二層のメルトブロー不織布原反層の密着と結晶化促進可能な温度の伝達に必要な範囲で選択することができる。
また、加工速度条件としては1〜50m/minであり、好ましくは、2〜30m/min、さらに好ましくは、3〜20m/minである。1m/min未満では生産性が低く、一方50m/minを超えると歪の緩和・結晶化促進のための熱が十分に伝わらないという問題が生ずる。
(2)特殊カレンダ加工処理工程
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造工程の一つの要素である特殊カレンダ加工処理工程においては、カレンダ機構として、金属ロールと弾性ロールとの組合せを利用するものである。金属ロールと弾性ロールとの組合せについては一対の組合せのほか4個〜6個の複数の組合せも利用することができる。カレンダの形式およびロールの配置については、前記高温カレンダ加工処理工程にて使用可能な形式と同一の形式を採用することができ、金属ロールと弾性ロールを適宜組み合わせればよい。金属ロールとしては、前記の高温カレンダ加工処理工程で使用されるものと同一のものを使用することができ、鋼および鋼と同等の合金材料のものが好ましい。金属ロールと組合せる弾性ロールとしては硬質の合成樹脂を材料とするものが好ましい。かかるロールの硬度としては、本発明のメルトブロー不織布原反の厚み調整と平滑性の目的からショアD硬度60以上であり、70〜90のものが好ましい。
特殊カレンダ加工処理工程においては、高温カレンダ加工処理工程にて得られたカレンダ加工処理中間体を前記金属ロールと弾性ロールとの間に挟持し、130℃以下、好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下の加工、温度条件および前記中間体中の繊維の潰れを制御可能な加圧条件において加工処理する。特殊カレンダ加工処理工程において、加工温度の下限値としては、ガラス転移点以上であって、原料樹脂によるが、例えば60℃以上の温度が好ましく、さらに好ましくは80℃以上の温度である。
加圧条件としては、ロールの線圧のほか、ロール間のクリアランスも包含されるが、特殊カレンダ加工処理工程においては、形成される不織布薄膜の厚みが調整されるようにロール同士がピンチされた状態とすることが好ましい。ロールの線圧としては、15〜130N/mmであり、好ましくは20〜100N/mm、さらに好ましくは30〜70N/mmの加工圧力が採用される。
また、加工速度条件は、高温加工処理工程における加工速度条件と同一条件を採用することができる。具体的には、1〜50m/minであり、好ましくは2〜30m/min、さらに好ましくは3〜20m/minである。
本発明に係る特殊カレンダ加工処理工程において、加熱は金属ロールに対して供され、常温の弾性ロールと加熱された金属ロールとの組合せ加工処理が提供される。
かかる弾性ロールを用いた特殊カレンダ加工処理によりメルトブロー不織布薄膜の厚み調整のほか厚みの均一性および表面平滑性の効果を奏する。
前記の高温カレンダ加工処理工程および特殊カレンダ加工処理工程を経て得られた耐熱性メルトブロー不織布薄膜は高い開孔度を維持して超薄型であることが可能であり、高温条件下での熱収縮も改善できると共にガーレー透気度も低度となり、引張強度においても優れた効果を奏する。
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法としてのカレンダ加工処理は、前記の通り高温カレンダ加工処理工程を前段とし、特殊カレンダ加工処理工程を後段に設定することにより、前記の通りの効果を奏するものであり、特殊カレンダ加工処理工程を前段とし、高温カレンダ加工処理工程を後段としたのでは、最初の加工段階で、不織布薄膜の厚みが設定されてしまい、後段の金属ロール間に隙間のある加工処理においては加工処理対象物が薄すぎてロールへの接触がゆるやかになり、高温の熱による結晶化を十分に促進させることができず、また、残留歪の緩和も後段にて行われることから、加工製品たる不織布薄膜が幅方向において緩和して縮むという難点が生じ、形状の問題から製品として使用することができないという問題があり、本発明が求める品質の耐熱性メルトブロー不織布薄膜を得ることができない。
C.第3の発明
第3の発明によれば、前記耐熱性メルトブロー不織布薄膜の電気二重層キャパシタ用セパレータおよびリチウムイオン二次電池用セパレータが提供される。
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜がセパレータとして使用可能な電気二重層キャパシタは、従来の電気二重層キャパシタの構造を有するものでよいが、特に、薄型構成の形態を有するものであり、厚みの小さいセパレータを要求し、本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜を構成要素としている以外、他の構成要素については特に限定されるものではない。
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜がセパレータとして使用可能なリチウムイオン二次電池としては、特に限定されるものではなく、従来のリチウム二次電池であり、セパレータの厚みが小さく薄膜上であることを要求するリチウム二次電池に対しても本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜は十分対応することができる。
本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜は、前記の電気二重層キャパシタ用セパレータおよびリチウム二次電池用セパレータとしての用途のほか、液体フィルター用部材、エアフィルター用部材、マスク用部材、雑貨用部材等を挙げることができるなど、本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜が有する物性を利用できる用途であれば、特に限定されるものではない。
以下、本発明について実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は、これらの実施例等により限定されるものではない。
なお、実施例および比較例中に記載の各物性値は、それぞれ下記の方法により測定して求めたものである。
1.各種物性値測定方法
(1)目付:試料長さ方向から、100mm×100mmの試験片を採取し、水分平衡状態の重さを測定し、1m当たりの目付重量に換算して求めた。
(2)厚み:試料長さ方向より、100mm×100mmの試験片を採取し、ダイヤルシックネスゲージで測定した。
(3)通気度:試料長さ方向から、100mm×100mmの試験片を採取し、JIS L1096「一般織物試験方法」の「通気性A法(フラジール形法)」に準拠し、フラジール型試験機を用いて測定した。
(4)ガーレー透気度:JIS P8117(2009)+に準拠し、測定した。測定装置としてガーレーデンソーメータ(東洋精機社製)を使用し、試料片を直径10mm、面積78.5mmの円孔に締め付ける。内筒質量567gにより、筒内の空気を試験円筒部から筒外へ通過させる。空気300ccが通過する時間を測定しガーレー値とした。
(5)引張強度、引張伸度:JIS L1085「不織布しん地試験方法」の「引張強さ及び伸び率」に準拠し、サンプル幅25mm、つかみ間隔100mm、引張速度300mm/分にて測定した。
(6)平均繊維径:試験片の任意な5箇所について電子顕微鏡で5枚の写真撮影を行い、1枚の写真につき20本の繊維の直径を測定し、これら5枚の写真について行い、合計100本の繊維径を平均して求めた。
(7)熱収縮率;200mm角の試料の中心および端部にMD方向(長さ方向)、CD方向(幅方向)に100mmの線を引き、120℃および150℃にそれぞれ設定したオーブンで1時間加熱後、線長を測定し、その寸法変化率を求めた。
(8)電解液吸液性能:JIS L1907「繊維製品の吸水性試験方法」に準拠し、試験片上に10mmの高さからPC(プロピレンカーボネート)を1滴摘下し、液滴が試験片に到達してから液滴の鏡面反射が完全になくなるまでの時間をストップウォッチで測定し、その測定値を電解液の吸液速度とした。
(9)電解液保液性能:100mm×100mmの試験片を採取し、60分間PC(プロピレンカーボネート)中に浸漬させた後、試験片を取り出し、10分間吊るし放置する。その保液した試験片を天秤にて重量測定し、下記計算式にて保液率を計算した。
保液率計算式:(B)−(A)/(A)×100=保液率(%)
(ただし、式中、(A):試料重量 (B):浸漬後の試料重量)
(10)外観:
試料片100cm中に直径0.5mm以上の透明班の形成の有無によりフィルム化の有無を判定した。
2.メルトブロー不織布原反の製造用原料樹脂
メルトブロー不織布原反の製造用原料樹脂等は、下記のものを使用した。
・ポリブチレンテレフタレート(PBT);融点225℃(ポリプラスチックス社製) ・ポリスチレン(PS);融点270℃(出光興産社製)
・ポリプロピレン(PP);融点165℃(日本ポリプロ社製)
・ポリメチルペンテン(PMP);融点232℃(三井化学社製)
・セルロース;(ニッポン高度紙工業社製)

実施例1
前記ポリブチレンテレフタレート(PBT)を原料樹脂としてメルトブロー法により製造された下記の物性を有するメルトブロー不織布原反単層品

PBTメルトブロー不織布原反(単層品)

目付(g/m): 20
厚み(μm): 175
通気度(cc/cm/s): 38.7
引張強度(N/25mm幅): 9.6
引張伸度(%): 15.8
平均繊維径(μm): 1.8

を、カレンダ加工温度150℃にそれぞれ加熱された金属ロール/金属ロール(形式:直立2本形)の間に挟持し、加圧条件は、ロール圧をロールの線圧として130N/mmに設定して高温カレンダ加工処理に供した。尚、金属ロール間には、高温カレンダ加工処理後の不織布薄膜中間体の厚みが約50〜70μmのレベルとなるように調整されたクリアランスを設けた。
前記の如く、金属ロール/金属ロールによる高温カレンダ加工処理により得られたメルトブロー不織布薄膜中間体を、弾性ロールと、カレンダ加工温度100℃に加熱された金属ロールの間にロール同士がピンチされた状態において挟持し、加圧条件のうちロール圧を線圧として30N/mmに設定した特殊カレンダ加工処理に供し、次の物性を有するPBT耐熱性メルトブロー不織布薄膜(単層品)を得た。
PBTメルトブロー不織布薄膜(単層品)
目 付(g/m): 20
厚 み(μm): 35
ガーレー透気度(s/φ10/300cc): 12.4
引張強度(N/25mm幅): 11.3
引張伸度(%): 22.9
外 観(透明斑の形成によるフィルム化): なし
電解液吸液速度(秒): 11.15
電解液保液率(%): 286
熱収縮率(%):120℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率 MD:0.5
CD:0.5
150℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率 MD:1.0
CD:0.5
前記の二段階のカレンダ加工処理により得られた耐熱性メルトブロー不織布薄膜は厚み35μmに薄膜化されたにも拘らず、不織布薄膜中の繊維の潰れが抑制された。また、繊維の交絡部分のフィルム化による透明班が100cm2中1つも形成していないことが観察された。ガーレー透気度が下記の通り12.4s/φ10/300ccと小さく、SEMで示す開孔度の高い性能の耐熱性メルトブロー不織布薄膜が得られた。また、強度についても、引張強度11.3N/25mm幅)と大きく、引張伸度22.9%の十分な結果が得られた。さらに、熱収縮率についても、120℃×1 Hr,150℃×1 Hrの各加熱条件下においてMD方向およびCD方向のいずれにおいても1.0%以下の結果を得た。
実施例2
前記ポリブチレンテレフタレート(PBT)を原料樹脂としてメルトブロー法で製造した平均繊維径1.8μmの繊維を有するメルトブロー不織布原反(A)と、平均繊維径2.6μmの繊維を有するメルトブロー不織布原反(B)の二種類のメルトブロー不織布原反を二層体に積層した。
二層の積層化に使用されたメルトブロー
不織布原反(A)およびメルトブロー不織布原反(B)の物性は次の通りである。

Tメルトブロー不織布原反(A) PBTメルトブロー不織布原反(B)目付(g/m): 10 10
厚み(μm): 95 145
通気度(cc/cm/s): 83.1 131.2
引張強度(N/25mm幅): 5.3 4.9
引張伸度(%): 34.8 49.6
平均繊維径(μm): 1.8 2.6

前記二層品を、それぞれ150℃に加熱された二種の金属ロール/金属ロールの間に挟持し、加圧条件のうち、ロール圧をロールの線圧として130N/mmの圧力条件下で高温カレンダ加工処理に供した。金属ロール間には、実施例1と同様にクリアランスを設けた。
前記の高温カレンダ加工処理により、得られた二層の密着層からなるカレンダ加工処理中間体を、弾性ロールと100℃に加熱された金属ロールとの間に挟持し、ロール圧をロールの線圧として30N/mmの圧力条件下でさらに特殊カレンダ加工処理に供し、
二種の不織布原反からなる積層品の耐熱性メルトブロー不織布薄膜を得た。弾性ロールとしては、前記の硬度(ショアD硬度80)を有するポリアミド系合成樹脂製のものを用いた。得られたPBT耐熱性メルトブロー不織布薄膜(二層品(1))の物性は、次の通りである。

PBT耐熱性メルトブロー不織布薄膜(二層品(1))

目付(g/m): 20
厚み(μm): 35
ガーレー透気度(s/φ10/300cc):6.5
引張強度(N/25mm幅): 9.3
引張伸度(%): 21.7
外観(透明斑の形成によるフィルム化): なし
電解液吸液速度(秒): 9.80
電解液保液率(%): 340
熱収縮率(%):(120℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:0.5
CD:0.5
(150℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:1.2
CD:0.5

前記の結果に示す通り、構成繊維の平均繊維径が互いに異なる二層の不織布を積層し貼り合せることにより、厚み35μmの薄膜でありながら。ガーレー透気度が6.5s/φ10/300ccであり、高い開孔度を維持し、繊維の潰れを抑制し、フィルムの透明班の形成も抑制することができ、高温条件下における熱収縮率についても120℃に設定したオーブンで1時間加熱後、MD、CD共にそれぞれ寸法変化率0.5%であり、150℃に設定したオーブンで1時間加熱後も寸法変化率はMD方向1.2%、CD方向0.5%であり、良好な結果が得られた。また、電解液吸液速度については、9秒80であり、電解液保液率についても340%という顕著な効果を奏し、リチウム二次電池用セパレータとして極めて高い優位性が示された。
実施例3
実施例2において用いた平均繊維径が2.6μmの繊維を有するPBTメルトブロー不織布原反(B)の代わりに、次に示す平均繊維径1.8μmの繊維を有するPBTメルトブロー不織布原反(A)

PBTメルトブロー不織布原反(A)
目付(g/m): 10
平均繊維径(μm): 1.8
厚み(μm): 95
通気度(cc/c/s): 83.1
引張強度(N/25mm幅): 5.3
引張伸度(%): 34.8

を用い、PBTメルトブロー不織布原反(A)を二層積層し、得られた二層品(2)を用いたこと以外すべて実施例2と同一の条件および操作により、高温カレンダ加工処理および特殊カレンダ加工処理に供し、PBT耐熱性メルトブロー不織布薄膜(二層品(2))を得た。得られたPBT耐熱性メルトブロー不織布薄膜(二層品(2))の物性は次の通りである。

PBT耐熱性メルトブロー不織布薄膜(二層品(2)
目付(g): 20
厚み(μm): 35
ガーレー透気度(s/φ10/300cc):11.5
引張強度(N/25mm幅): 12.8
引張伸度(%): 21.1
外観(透明斑の形成によるフィルム化): なし
電解液吸液速度(秒): 9.72
電解液保液率(%): 365
熱収縮率(%):(120℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:0.5
CD:0.5
(150℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:1.2 CD:0.5

前記の結果に示す通り、同一の平均繊維径の構成繊維を有するメルトブロー不織布原反(A)を二層積層することにより得られた耐熱性メルトブロー不織布薄膜(二層品(2))は、異なる平均繊維径の繊維を有する二層の不織布層からなる耐熱性メルトブロー不織布薄膜二層品(1)と比較して、厚み35μmの薄膜でありながら、引張強度が12.8N/25mm幅に向上した。熱収縮率については、150℃に設定されたオーブンで1時間加熱後もまた変化率はMD方向1.2%、CD方向0.5%であり、同様に良好な結果が得られた。また、電解液吸液速度については、9.72秒と向上し、電解液保持率について365%の顕著な効果を奏した。
実施例4
ポリスチレン(PS)を原料としてメルトブロー法により製造されたPSメルトブロー不織布原反単層を用いたこと以外すべて実施例1と同一条件で同様に高温カレンダ加工処理および特殊カレンダ加工処理に供した。PSメルトブロー不織布原反は、平均繊維径が3.8μmであり、他の物性は下記の通りであった。得られたPS耐熱性メルトブロー不織布薄膜の性状を下表および表1に示す。
厚みが35μmと薄膜化されたが、ガーレー透気度が15.5s/φ10/300ccと低く、引張強度および引張伸度に優れ、熱収縮率も軽減され、次に示す結果を得た。また、繊維潰れもなく、フィルム化による透明班の形成も生じなかった。

PSメルトブロー不織布原反

目付(g/m): 20
平均繊維径(μm): 3.8
厚み(μm): 184
通気度(cc/c/cc): 32.2
引張強度(N/25mm幅): 12.2
引張伸度(%): 11.7
PS耐熱性メルトブロー不織布薄膜(単層品

目付(g): 20
厚み(μm): 35
ガーレー透気度(s/φ10/300cc):15.5
引張強度(N/25mm幅): 11.8
引張伸度(%): 16.9
外観(透明斑の形成によるフィルム化): なし
電解液吸液速度(秒): 13.22
電解液保液率(%): 264
熱収縮率(%):(120℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:0
CD:0
(150℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:0
CD:0
実施例5
ポリメチルペンテン(PMP)を原料樹脂としてメルトブロー法により製造された下記の物性値を有するメルトブロー不織布原反(a)および(b)からなる二層品を用いた。

PMPメルトブロー不織布原反(a) PMPメルトブロー不織布原反(b)

目付(g/m): 15 15
厚み(μm): 207 207
繊維径(μm): 3.5 3.5
通気度(cc//s): 86.6 86.6
引張強度(N/25mm幅): 6.9 6.9
引張伸度(%): 14.2 14.2
前記PMPメルトブロー不織布原反(a)および同(b)の積層体を実施例1と同一条件で、金属ロール/金属ロールによる高温カレンダ加工処理および弾性ロール/金属ロールによる特殊カレンダ加工処理に供し、次の物性値を有するPMP耐熱性メルトブロー不織布薄膜を得た。

PMP耐熱性メルトブロー不織布薄膜(二層品)
目付(g/m): 30
厚み(μm): 45
ガーレー透気度(s/φ10/300cc): 28.6
引張強度(N/25mm幅): 14.5
引張伸度(%): 19.8
外観(透明斑の形成によるフィルム化): なし
電解液吸液速度(秒): 30
電解液保液率(%): 57
熱収縮率(%):(120℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率) MD:0
CD:0
(150℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率 )MD:0
CD:0
比較例1
実施例1で用いたポリブチレンテレフタレート(PBT)のPBTメルトブロー不織布原反単層品と同一のPBTメルトブロー不織布原反単層品のカレンダ加工処理を実施例1の高温カレンダ加工処理の条件および操作と同一の条件および操作の金属ロール/金属ロールによる高温カレンダ加工処理のみとし、特殊カレンダ加工処理に供しなかったところ、下記に示す物性値を有するメルトブロー不織布薄膜(単層比較品(1))を得た。

PBTメルトブロー不織布薄膜(単層比較品(1)
目付(g/m): 20
厚み(μm): 55
ガーレー透気度(s/φ10/300cc): 0.8
引張強度(N/25mm幅): 16.7
引張伸度(%): 26.6
外観(透明斑の形成によるフィルム化): なし
電解液吸液速度(秒): 12.05
電解液保液率(%): 275
熱収縮率(%):(120℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:1.0
CD:0.5
(150℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:1.5
CD:1.0

高温カレンダ加工処理後のPBTメルトブロー不織布薄膜(単層比較品(1))の厚みが55μmとなり、50μm以下に達し得なかったので、リチウム二次電池、電気二重層キャパシタ等への適用が困難となる。また、ガーレー透気度が0.8s/φ10/300ccとなり、本発明に係る耐熱性メルトブロー不織布薄膜が有するべきガーレー透気度の下限値を逸脱する結果となった。電解液吸液速度は12秒05であり、電解液保液率は275%であった。また、熱収縮率については、前記の通りであり、高温カレンダ加工処理に供しているにも拘らず、高温安定性の高い不織布薄膜は得られなかった。
比較例2
比較例1と同一のポリブチレンテレフタレートのメルトブロー不織布原反単層品を用い、150℃にそれぞれ加熱された二個の金属ロールによる高温カレンダ加工処理工程において圧力条件のうち、ロール線圧を130N/mmに設定すると共に、ロール間のクリアランスを変更し、カレンダ加工処理後の薄膜の厚みが35μmになるように調整したところ、得られた薄膜のガーレー透気度が98s/φ10/300ccと著しく増大し、通気性が低下した結果、セパレータとして内部抵抗が増大したものとなった。また、交絡部のフィルム化により、透明班が形成した。透明班によりセパレータ中に孔部が形成されているかのように観察され、商品価値を著しく低下させるものとなった。熱収縮率については、比較例1の結果と差がなかったが、電解液吸液性能および電解液保液性能については低下したものとなった。

PBTメルトブロー不織布薄膜(単層比較品(2))
目付(g/m): 20
厚み(μm): 35
ガーレー透気度(s/φ10/300cc): 98
引張強度(N/25mm幅): 24.5
引張伸度(%): 12.7
外観(透明斑の形成によるフィルム化): あり
電解液吸液速度(秒): 14.50
電解液保液率(%): 150
熱収縮率(%):(120℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:1.0
CD:0.5
(150℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:1.5
CD:1.0
比較例3
比較例1のポリブチレンテレフタレートを原料としてメルトブロー法により製造されたメルトブロー不織布原反単層品と同一のメルトブロー不織布原反単層品を弾性ロールと100℃に加熱した金属ロールとの弾性ロール/金属ロールによる特殊カレンダ加工処理のみに供し、ロール圧をロールの線圧として65N/mmに設定し、厚み40μmの不織布薄膜を得たところ、下記に示すように熱収縮率が著しく増加した。フィルム化は生じなかった。

PBTメルトブロー不織布薄膜(単層比較品(3))
目付(g/m): 20
厚み(μm): 40
ガーレー透気度(s/φ10/300cc): 9.3
引張強度(N/25mm幅): 12.5
引張伸度(%): 28.8
外観(透明斑の形成によるフィルム化): なし
電解液吸液速度(秒): 12
電解液保液率(%): 268
熱収縮率(%):(120℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:2.5
CD:1.5
(150℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:5.8
CD:4.0
比較例4
金属ロール/弾性ロールとの組合わせを用いる特殊カレンダ加工処理において、加工温度を150℃に加熱した金属ロールを用い、設定したこと以外すべて比較例3と同様の条件および操作によりカレンダ加工処理を行ったところ下記に示すように熱収縮率に著しい改善が見られたが、ガーレー透気度が84s/φ10/300ccと著しく増加し、通気性が低下し、電池用セパレータとしては内部抵抗が増大するものとなった。

PBTメルトブロー不織布薄膜(単層比較品(4))
目付(g/m): 20
厚み(μm): 30
ガーレー透気度(s/φ10/300cc): 84
引張強度(N/25mm幅): 20.5
引張伸度(%): 235
外観(透明斑の形成によるフィルム化): なし
電解液吸液速度(秒): 12.18
電解液保液率(%): 243
熱収縮率(%):(120℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:1.0
CD:0.5
(150℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:1.5
CD:0.5
比較例5
ポリプロピレンを原料としてメルトブロー法により製造されたメルトブロー不織布原反を、加工温度110℃において金属ロール/金属ロール組合せによる高温カレンダ加工処理工程のみに供し、特殊カレンダ加工処理には供しなかった。前記加工処理により、厚み40μmの薄膜セパレータを得たが、下記に示すように透明班が形成され、フィルム化が生じた。
PPメルトブロー不織布薄膜(単層比較品(5))
目付(g/m): 14
厚み(μm): 40
ガーレー透気度(s/φ10/300cc):6.5
引張強度(N/25mm幅): 6.9
引張伸度(%): 15.4
外観(透明斑の形成によるフィルム化): なし
電解液吸液速度(秒): 30.00
電解液保液率(%): 70
熱収縮率(%):(120℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:7.5
CD:6.0
(150℃のオーブンにて1時間加熱後の寸法変化率)MD:14.0
CD:11.2
比較例6
厚み40μmのセルロースをセパレータとして評価したところ、表1に示すようにガーレー透気度が著しく大きく、通気性を欠如し、電池セパレータとしては内部抵抗が高いことが示されている。また、水溶性であり、電解液の保液性能が十分でない。
以上の実施例および比較例の結果から、高温カレンダ加工処理工程のみでは、耐熱性メルトブロー不織布薄膜の厚みを50μm以下にすることができず、また、加圧条件を変更して厚みを35μmにまで薄膜化するとフィルム化が発生し、一方、特殊カレンダ加工処理工程のみでは、熱収縮率が著しく増加し、特殊カレンダ加工処理工程の加工温度を上昇させると、熱収縮率は低下するが、ガーレー透気度が増加し、通気性の低下により内部抵抗が増加するという難点が生ずる。
以上の結果から高温カレンダ加工処理工程と特殊カレンダ加工処理工程の2種の工程を備えることにより通気性を高く維持しながら薄膜化が可能であり、高温条件下での熱収縮率も改善することができることが明らかにされた。
前記実施例および比較例による評価結果を表1にまとめて示す。
表中、「カレンダ加工条件」欄の「第一段階加工」は、「高温カレンダ加工処理」であり、「第二段階加工」は、「特殊カレンダ加工処理」である。


Figure 2019119946

Claims (16)

  1. 耐熱性樹脂からなる耐熱性メルトブロー不織布薄膜であって、
    厚みが50μm以下であり、
    目付が5〜100g/mであり、
    平均繊維径が0.5〜15μmであり、
    ガーレー透気度が1〜40s/φ10/300ccであり、
    熱収縮率が、150℃で1時間の加熱条件下における熱処理後において、MD方向およびCD方向を、それぞれ寸法変化率で表わして、いずれかが1.2%以下である
    ことを特徴とする耐熱性メルトブロー不織布薄膜。
  2. 前記耐熱性樹脂が、融点200℃以上の熱可塑性樹脂である請求項1に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜。
  3. 前記耐熱性メルトブロー不織布薄膜が、少なくとも二層の不織布層が積層され、貼り合わせられてなる不織布加工体である請求項1に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜。
  4. 前記耐熱性メルトブロー不織布薄膜が、平均繊維径が互いに異なる繊維を有する少なくとも二層の不織布層が積層され、貼り合せられてなる不織布加工体である請求項1に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜。
  5. 前記厚みが1〜45μmである請求項1に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜。
  6. 前記ガーレー透気度が5〜30s/φ10/300ccである請求項1に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜。
  7. 前記熱収縮率が、150℃で1時間の加熱条件下における熱処理後において、MD方向およびCD方向を、それぞれ寸法変化率で表わして、いずれも1.2%以下である請求項1に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜。
  8. 耐熱性樹脂からなるメルトブロー不織布原反を薄膜化してなる耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法であって、
    (1)前記メルトブロー不織布原反を、少なくとも二個の金属ロールの間に挟持し前記耐熱性樹脂のガラス転移点以上の加工温度条件および前記メルトブロー不織布原反の構成繊維の潰れが抑制され、かつ薄膜化が可能な条件に調整された加圧条件下においてカレンダ加工に供する高温カレンダ加工処理工程と、
    (2)前記高温カレンダ加工処理工程により得られたカレンダ加工処理中間体を、少なくとも一個のロールが弾性ロールである少なくとも二個のロールを備えた特殊カレンダ加工処理により、130℃以下の加工温度条件および前記不織布原反の構成繊維の潰れが抑制され、かつ、薄膜化が可能な条件に調整された加圧条件下においてカレンダ加工に供する特殊カレンダ加工処理工程と
    を少なくとも含有してなることを特徴とする耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法。
  9. 前記メルトブロー不織布原反が、少なくとも二層の不織布層からなる積層体である請求項8に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法。
  10. 前記メルトブロー不織布原反が、その構成繊維の平均繊維径が互いに異なる繊維を有する少なくとも二層の不織布層からなる積層体である請求項8に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法。
  11. 前記ガラス転移点以上の加工処理温度条件が130℃以上の温度である請求項8に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法。
  12. 前記高温カレンダ加工処理工程における前記メルトブロー不織布原反の構成繊維の潰れが抑制されるように調整された加圧条件のうち、金属ロールの線圧が200N/mm以下である請求項8に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法。
  13. 前記特殊カレンダ加工処理工程は、少なくとも一個の弾性ロールと少なくとも一個の金属ロールとから構成されたカレンダ装置が設置されてなる請求項8に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法。
  14. 前記特殊カレンダ加工処理工程において、前記弾性ロールの弾性材料が合成樹脂である請求項8または13に記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜の製造方法。
  15. 請求項1〜7のいずれかに記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜からなる電気二重層キャパシタ(EDLC)用セパレータ。
  16. 請求項1〜7のいずれかに記載の耐熱性メルトブロー不織布薄膜からなるリチウムイオン二次電池用セパレータ。
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