JP2019119941A - 紡績機及び紡績方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】糸の糸端に形成される繊維束部の寸法を調整できる紡績機及び紡績方法を提供する。【解決手段】紡績機1は、ドラフト装置6と、空気紡績装置7と、巻取装置13と、制御部10と、を備え、制御部10は、繊維束Fを分断する場合に、ドラフト装置6及び空気紡績装置7の動作を制御して、繊維束Fの分断によって糸Yの糸端に形成される繊維束部y1の寸法を調整する調整モードを有しており、巻取装置13によってパッケージPに糸Yが規定量巻かれた満巻時と、当該満巻時以外の通常時とにおいて、調整モードの実施の有無を切り替え可能であり、通常時においては調整モードで繊維束Fを分断させ、満巻時においては調整モードで繊維束Fを分断させない。【選択図】図1
Description
本発明は、紡績機及び紡績方法に関する。
従来の紡績機として、繊維束をドラフトするドラフト装置と、紡績室に空気を噴射することにより、ドラフト装置でドラフトされた繊維束に撚りを与えて糸を生成する空気紡績装置と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような紡績機では、例えば糸欠陥が検出された場合において、ドラフト装置によるドラフト動作が停止させられたときに、糸の糸端に、撚りが与えられていない繊維束部(穂先)が形成される。
上述したような紡績機においては、繊維束部の長さが長すぎると、例えば糸貯留ローラを用いた糸貯留装置に糸を貯留する場合に、繊維束部が糸貯留ローラに残留するおそれがある。繊維束部の長さが短すぎると、糸継動作を行う場合に、巻取装置のパッケージから糸の糸端を確実に捕捉することができないおそれがある。そのため、紡績機では、糸の糸端に形成される繊維束部の寸法を調整できることが求められている。しかしながら、パッケージが満巻(規定量の糸が巻き取られた状態)になった場合には、パッケージから糸端を捕捉する必要がないため、繊維束部の寸法の調整を行う必要がない。そのため、パッケージが満巻になった場合においても繊維束部の寸法の調整のための動作を行うと、稼働効率が低下するおそれがある。
本発明の一側面は、糸の糸端に形成される繊維束部の寸法を調整できると共に、稼働効率の低下を抑制できる紡績機及び紡績方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面に係る紡績機は、複数の回転可能なローラ対を有し、ローラ対によって繊維束をドラフトするドラフト装置と、空気を噴射することにより、ドラフト装置でドラフトされた繊維束に撚りを与えて糸を生成する空気紡績装置と、空気紡績装置により生成された糸をボビンに巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、ドラフト装置及び空気紡績装置の動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、繊維束を分断する場合に、ドラフト装置及び空気紡績装置の動作を制御して、繊維束の分断によって糸の糸端に形成される繊維束部の寸法を調整する調整モードを有しており、巻取装置によってパッケージに糸が規定量巻かれた満巻時と、当該満巻時以外の通常時とにおいて、調整モードの実施の有無を切り替え可能であり、通常時においては調整モードで繊維束を分断させ、満巻時においては調整モードで繊維束を分断させない。
本発明の一側面に係る紡績機では、制御部は、繊維束の分断によって糸の糸端に形成される繊維束部の寸法を調整する調整モードを有している。したがって、本紡績機では、繊維束部(撚りが適切に与えられていない部分)の寸法(太さ及び/又は長さ)を適切に調整することができる。また、本紡績機では、制御部は、満巻時においては調整モードで繊維束を分断させない。すなわち、本紡績機では、パッケージが満巻になったときには、繊維束部の寸法を調整する動作を行わない。したがって、本紡績機では、不要な動作を行わないため、稼働効率の低下を抑制できる。なお、繊維束の分断は、糸の分断と言うことができる。
一実施形態においては、糸の糸欠陥を検出する糸検出装置を備え、制御部は、糸検出装置が糸欠陥を検出した場合、通常時として調整モードで繊維束を分断させてもよい。この構成では、糸欠陥により繊維束を分断する場合、糸の糸端に繊維束部を形成することができる。
一実施形態においては、糸のテンションを検出するテンションセンサを備え、制御部は、テンションセンサがテンションの異常を検出した場合、通常時として調整モードで繊維束を分断させてもよい。この構成では、テンション異常により繊維束を分断する場合、糸の糸端に繊維束部を形成することができる。
一実施形態においては、空気紡績装置は、糸を生成するときの紡績位置と、紡績位置よりもドラフト装置から遠い退避位置と、に移動可能に設けられており、制御部は、調整モードでは、ドラフト装置において、繊維束をドラフトする第1ドラフト動作のドラフト比とは異なる比率のドラフト比に変更して繊維束をドラフトする第2ドラフト動作を実施させた後に、少なくとも一つのローラ対の回転の停止、空気紡績装置における空気の噴射の停止、及び、空気紡績装置の紡績位置から退避位置への移動、の少なくとも一つの分断動作を実施させてもよい。この構成では、調整モードにおいて、ドラフト装置において第2ドラフト動作を実施させた後に、分断動作を実施させる。第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束は、第1ドラフト動作によりドラフトされた繊維束と状態が異なる。第1ドラフト動作のドラフト比よりも比率を大きくして第2ドラフト動作を実施した場合、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束は、第1ドラフト動作によりドラフトされた繊維束よりも引き伸ばされる。そのため、第2ドラフト動作後の繊維束は、第1ドラフト動作後の繊維束に比べて繊維量(ドラフト方向に垂直な断面積における繊維量)が少なくなる。第1ドラフト動作のドラフト比よりも比率を小さくして第2ドラフト動作を実施した場合、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束は、第1ドラフト動作によりドラフトされた繊維束よりも短くなる。そのため、第2ドラフト動作後の繊維束は、第1ドラフト動作後の繊維束に比べて繊維量が多くなる。このように、本紡績機では、第1ドラフト動作のドラフト比と第2ドラフト動作のドラフト比とを変更することによって繊維束の繊維量を調整できる。したがって、本紡績機では、繊維束部の寸法を適切に調整することができる。
一実施形態においては、制御部は、満巻時には、第1ドラフト動作の実施中に少なくとも一つのローラ対の回転を停止させて繊維束を分断すると共に、分断された繊維束の少なくとも一部が空気紡績装置に流入するまで空気紡績装置における空気の噴射を継続させてもよい。この構成では、分断された繊維束に撚りが与えられるため、繊維束部が形成されない。
一実施形態においては、調整モードにおいて空気の噴射を停止させるタイミングを紡績条件に基づいて求める算出部を備え、制御部は、通常時では、調整モードにおいて、算出部によって求められたタイミングに基づいて、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束の少なくとも一部が空気紡績装置に流入するのと同時に又は流入した後に空気紡績装置における空気の噴射を停止させ、満巻時では、算出部によって求められたタイミングと同じ長さの時間が少なくとも経過するまで、空気紡績装置における空気の噴射を継続させてもよい。この構成では、通常時において、繊維束部を確実に形成できると共に、満巻き時において、繊維束部が形成されない。
一実施形態においては、ドラフト装置は、繊維束のドラフト経路に沿って配置された少なくとも3つのローラ対を有し、制御部は、少なくとも3つのローラ対のうち、ドラフト経路の最下流側に配置されたローラ対以外の1つ又は複数のローラ対の回転速度を変更することにより第2ドラフト動作を実施させると共に、第2ドラフト動作が実施された時点で、回転速度が変更されたローラ対のうちのドラフト経路の最下流側に配置されたローラ対である先行ローラ対と、当該先行ローラ対の1つ下流側に配置されたローラ対である後続ローラ対との間に位置する繊維束であって、後続ローラ対に挟持されていなかった繊維束の少なくとも一部が空気紡績装置に流入するのと同時に又は流入した後に、空気紡績装置における空気の噴射を停止させてもよい。この構成では、適切なタイミングで空気の噴射を停止させることができる。これにより、本紡績機では、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束の全てに撚りが与えられることを回避でき、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束において繊維束部が形成される。したがって、本紡績機では、繊維束部の寸法を適切に調整することができる。
一実施形態においては、制御部は、算出部によって求められたタイミングに基づいて、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束の少なくとも一部が空気紡績装置の紡績部の出口から排出されたときに、空気紡績装置における空気の噴射を停止させてもよい。この構成では、適切なタイミングで空気の噴射を停止させることができる。
一実施形態においては、紡績機は、空気紡績装置よりも糸の走行経路の下流側に設置され、糸の糸欠陥を検出する糸検出装置を備え、制御部は、算出部によって求められたタイミングに基づいて、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束の少なくとも一部が糸検出装置を通過したときに、空気紡績装置における空気の噴射を停止させてもよい。この構成では、適切なタイミングで空気の噴射を停止させることができる。
一実施形態においては、紡績機は、紡績装置よりも糸の走行経路の下流側に設置され、空気紡績装置において生成された糸を引き出す引出装置を備え、制御部は、算出部によって求められたタイミングに基づいて、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束の少なくとも一部が引出装置に到達したときに、空気紡績装置における空気の噴射を停止させてもよい。この構成では、適切なタイミングで空気の噴射を停止させることができる。
一実施形態においては、紡績機は、空気紡績装置において生成された糸を引き出す引出装置と、糸の走行経路において空気紡績装置と引出装置との間に配置され、糸の糸欠陥を検出する糸検出装置と、を備え、ドラフト装置は、繊維束のドラフト経路において下流側から上流側に向かって、少なくとも第1ローラ対、第2ローラ対、第3ローラ対及び第4ローラ対をこの順番で有し、制御部は、第2ドラフト動作において第3ローラ対及び第4ローラ対のドラフト比の比率を第1ドラフト動作から変更しており、算出部は、第1ローラ対と第2ローラ対との間のドラフト経路における距離と、第2ローラ対と第3ローラ対との間のドラフト経路における距離と、引出装置が糸を引き出す引出速度を第2ローラ対の回転速度で除算した値と、第2ローラ対の回転速度を第3ローラ対の回転速度で除算した値と、引出速度を第1ローラ対の回転速度で除算した値と、空気紡績装置と第1ローラ対との間の繊維束及び糸の走行経路における距離、又は、糸検出装置と第1ローラ対との間の繊維束及び糸の走行経路における距離、又は、引出装置と第1ローラ対との間の繊維束及び糸の走行経路における距離と、引出速度と、に基づいてタイミングとして時間を算出し、制御部は、糸検出装置によって糸の糸欠陥が検出されてから時間が経過したときに、空気紡績装置における空気の噴射を停止させさせてもよい。この構成では、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束が空気紡績装置から排出されるまでの時間を適切に算出できる。これにより、本紡績機では、第1ドラフト動作によりドラフトされた繊維束で繊維束が形成されることなく、また、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束の全てに撚りが与えられることなく、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束において繊維束部が形成される。したがって、本紡績機では、繊維束部の寸法を適切に調整することができる。
一実施形態においては、制御部は、ドラフト装置において第1ドラフト動作のドラフト比よりも比率を大きくして第2ドラフト動作を実施させてもよい。この構成では、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束は、第1ドラフト動作によりドラフトされた繊維束よりも引き伸ばされる。そのため、第2ドラフト動作後の繊維束は、第1ドラフト動作後の繊維束に比べて繊維量が少なくなる。例えば、番手が小さい(太い)糸を生成する場合、空気紡績装置に供給される単位時間当たりの繊維束の繊維量が多い。この場合、分断動作において繊維束を分断したときに、繊維束が適切に分断されず、糸の糸端に形成される繊維束部が太く長くなることがある。本紡績機では、繊維束が分断されるときに、繊維束の繊維量が第2ドラフト動作により少なくなっているため、分断動作において繊維束を分断したときに、繊維束部が太く長くなることを抑制できる。したがって、本紡績機では、糸の糸端に形成される繊維束部の寸法を適切に調整することができる。
一実施形態においては、制御部は、空気紡績装置により生成される糸の番手がNe15以下である場合に、ドラフト装置に第2ドラフト動作を実施させてもよい。番手がNe15以下の糸を生成する場合、繊維束の繊維量が比較的多く、このまま繊維束の分断を実施すると、繊維束部が太く長くなる傾向がある。そのため、本紡績機では、番手がNe15以下の糸を生成する場合に第2ドラフト動作を実施させることにより、繊維束部が太く長くなることを抑制でき、繊維束部の寸法を適切に調整することができる。
一実施形態においては、制御部は、ドラフト装置において第1ドラフト動作のドラフト比よりも比率を小さくして第2ドラフト動作を実施させてもよい。この構成では、第2ドラフト動作後の繊維束は、第1ドラフト動作後の繊維束に比べて繊維量が多くなる。したがって、分断動作において繊維束を分断したときに繊維束部が細くなりすぎて次の糸継動作での糸捕捉装置による糸端の捕捉が難しくなるという状況を回避することができる。
一実施形態においては、制御部は、第2ドラフト動作において、空気紡績装置により生成される糸の番手がNe15以上Ne45以下の範囲となるドラフト比で繊維束をドラフトさせてもよい。このように、糸の番手がNe15以上Ne45以下の範囲となる繊維束にドラフトすることで、分断するときの繊維束の繊維量を適切な量にすることができる。したがって、本紡績機では、繊維束部が太過ぎたり、細過ぎたり、長過ぎたり、短過ぎたりたりすることを防止できる。そして、繊維束部が太く長いために繊維が周囲に飛散し易くなるという状況を回避したり、繊維束部が細すぎるために糸捕捉装置による糸端の捕捉が難しくなるという状況を回避したりすることができる。
一実施形態においては、紡績機は、複数の紡績ユニットを備え、紡績ユニットがそれぞれ、少なくとも3つのローラ対と、空気紡績装置と、を備え、少なくとも3つのローラ対のうちの少なくとも1つのローラ対が紡績ユニットごとに独立して回転駆動が可能に設けられており、制御部は、独立して回転駆動が可能であるローラ対の回転速度を変更することにより第2ドラフト動作を実施させてもよい。この構成により、紡績ユニットごとに独立して回転駆動するローラ対を利用して、第2ドラフト動作においてドラフト比を変更することができる。そのため、紡績ユニットごとに、所望のタイミングで第2ドラフト動作を実施することができる。
本発明の一側面に係る紡績方法は、ローラ対を有し、ローラ対によって繊維束をドラフトするドラフト装置と、空気を噴射することにより、ドラフト装置でドラフトされた繊維束に撚りを与えて糸を生成する空気紡績装置と、空気紡績装置により生成された糸をボビンに巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、ドラフト装置及び空気紡績装置の動作を制御する制御部と、を備える紡績機において実施される紡績方法であって、繊維束を分断する場合に、ドラフト装置及び空気紡績装置の動作を制御して、繊維束の分断によって糸の糸端に形成される繊維束部の寸法を調整する調整モードを有しており、巻取装置によってパッケージに糸が規定量巻かれた満巻時と、当該満巻時以外の通常時とにおいて、調整モードの実施の有無を切り替え可能であり、通常時においては調整モードで繊維束を分断させ、満巻時においては調整モードで繊維束を分断させない。
本発明の一側面に係る紡績方法では、糸が分断されて糸の糸端に形成される繊維束部の寸法を調整する調整モードを有している。したがって、本紡績方法では、繊維束部の寸法を適切に調整することができる。また、本紡績方法では、満巻時においては調整モードで繊維束を分断させない。すなわち、本紡績方法では、パッケージが満巻になったときには、繊維束部の寸法を調整する動作を行わない。したがって、本紡績方法では、不要な動作を行わないため、稼働効率の低下を抑制できる。
本発明の一側面によれば、糸の糸端に形成される繊維束部の寸法を調整できると共に、稼働効率の低下を抑制できる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1に示されるように、紡績機1は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、玉揚台車(図示省略)と、第1エンドフレーム4と、第2エンドフレーム5と、を備えている。複数の紡績ユニット2は、一列に配列されている。各紡績ユニット2は、糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。糸継台車3は、ある紡績ユニット2で糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2で糸継動作を行う。玉揚台車は、ある紡績ユニット2でパッケージPが満巻になった場合、パッケージPを玉揚げし、新しいボビンBを当該紡績ユニット2に供給する。
第1エンドフレーム4には、紡績ユニット2で発生した繊維屑及び糸屑等を回収する回収装置等が収容されている。第2エンドフレーム5には、紡績機1に供給される圧縮空気(空気)の空気圧を調整して紡績機1の各部に空気を供給する空気供給部、及び紡績ユニット2の各部に動力を供給するための駆動モータ等が収容されている。第2エンドフレーム5には、機台制御装置100と、表示画面102と、入力キー104と、が設けられている。機台制御装置100は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。表示画面102は、紡績ユニット2の設定内容及び/又は状態に関する情報等を表示することができる。オペレータが入力キー104を用いて適宜の操作を行うことにより、紡績ユニット2の設定作業を行うことができる。
図1及び図2に示されるように、各紡績ユニット2は、糸Yの走行方向において上流側から順に、ドラフト装置6と、空気紡績装置7と、糸監視装置(糸検出装置)8と、テンションセンサ9と、糸貯留装置11と、ワキシング装置12と、巻取装置13と、を備えている。ユニットコントローラ(制御部、算出部)10は、所定数の紡績ユニット2ごとに設けられており、紡績ユニット2の動作を制御する。なお、ユニットコントローラ10は、1つの紡績ユニット2に1つずつ設けられていてもよい。
ドラフト装置6は、繊維束(スライバ)Fをドラフトする。ドラフト装置6は、繊維束Fの走行方向において上流側から順に、バックローラ対(第4ローラ対)14と、サードローラ対(第3ローラ対)15と、ミドルローラ対(第2ローラ対)16と、フロントローラ対(第1ローラ対)17と、を有する。言い換えれば、ドラフト装置6では、繊維束Fのドラフト経路において下流側から上流側に向かって、フロントローラ対17、ミドルローラ対16、サードローラ対15及びバックローラ対14がこの順番で配置されている。
バックローラ対14は、トップローラ14aと、ボトムローラ14bと、を有する。サードローラ対15は、トップローラ15aと、ボトムローラ15bと、を有する。ミドルローラ対16は、トップローラ16aと、ボトムローラ16bと、を有する。フロントローラ対17は、トップローラ17aと、ボトムローラ17bと、を有する。ボトムローラ14b,15b,16b,17bは、第2エンドフレーム5に設けられた駆動モータ又は各紡績ユニット2に設けられた駆動モータにより回転駆動される。本実施形態では、ボトムローラ14b,15bは、各紡績ユニット2に設けられた駆動モータにより回転駆動される。ボトムローラ16b,17bは、第2エンドフレーム5に設けられた駆動モータにより回転駆動される。ミドルローラ対16のトップローラ16aに対しては、エプロンベルト18aが設けられている。ミドルローラ対16のボトムローラ16bに対しては、エプロンベルト18bが設けられている。
空気紡績装置7は、ドラフト装置6でドラフトされた繊維束Fに旋回空気流によって撚りを与えて糸Yを生成する。図3に示されるように、空気紡績装置7は、紡績位置において、ドラフト装置6でドラフトされた繊維束Fに空気を噴射し、撚りを与えて糸Yを生成する。紡績位置とは、紡績時に空気紡績装置7がドラフト装置6(具体的にはフロントローラ対17)に接近して配置され、ドラフト装置6から空気紡績装置7に繊維束Fが供給されるときの空気紡績装置7の位置である。空気紡績装置7は、ノズルブロック70と、中空ガイド軸体80と、を有している。中空ガイド軸体80は、下流側からノズルブロック70に挿入される。このとき、ノズルブロック70及び中空ガイド軸体80で形成される内部空間が、紡績室73である。
ノズルブロック70は、繊維案内部71と、旋回流発生部72と、を有している。繊維案内部71には、ドラフト装置6から供給される繊維束Fを紡績室73に案内する案内孔71aが設けられている。繊維案内部71には、ニードル75が設けられている。ニードル75の先端部75aは、紡績室73に位置している。ニードル75は、紡績室73よりも上流側に撚りが伝播することを抑制する機能を有している。旋回流発生部72には、紡績室73に連通する複数のノズル74が設けられている。複数のノズル74は、空気を噴射した際に紡績室73に旋回流が発生するように、配置されている。旋回流発生部72には、中空ガイド軸体80が挿入される穴部72aが設けられている。穴部72aは、上流側に向かって先細りとなる円錐台状に形成され、紡績室73と連通している。
中空ガイド軸体80は、旋回流発生部72の穴部72aに挿入可能である。中空ガイド軸体80の上端部80aは、上流側に向かって先細りとなる円錐台状に形成されている。中空ガイド軸体80には、中空ガイド軸体80の中心軸に沿って延在する通路81が設けられている。通路81の上流側は紡績室73と連通しており、通路81は下流側の出口83に向かって広がるように形成されている。回収部77は、中空ガイド軸体80の上端部80aと旋回流発生部72の穴部72aとの間に形成された隙間を介して、紡績室73と連通する。本実施形態では、紡績室73と通路81とを合わせて紡績部という。紡績部では、繊維束Fが糸Yへ変わる。
空気紡績装置7は、支軸(図示省略)によって移動(回動)可能に支持されている。図4及び図5に示されるように、空気紡績装置7は、紡績位置よりもドラフト装置6から遠い退避位置に移動可能である。中空ガイド軸体80は、退避位置において、ノズルブロック70から更に移動可能である。紡績位置から退避位置へ空気紡績装置7が移動する場合、図4に示されるように、ノズルブロック70及び中空ガイド軸体80が、一体となってドラフト装置6から離間する。その後、図5に示されるように、ノズルブロック70のみが、所定の位置で停止する。中空ガイド軸体80は、移動を継続してノズルブロック70から離間する。その後、ノズルブロック70から離間した中空ガイド軸体80は、所定の位置で停止する。
図1及び図2に示されるように、糸監視装置8は、空気紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yの情報を監視して、監視した情報に基づいて糸欠陥の有無を検出する。糸監視装置8は、糸欠陥を検出した場合、糸欠陥検出信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8は、糸欠陥として、例えば、糸Yの太さ異常及び/又は糸Yに含有されている異物を検出する。糸監視装置8は、糸切れ等も検出する。テンションセンサ9は、空気紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yのテンションを測定し、テンション測定信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8及び/又はテンションセンサ9の検出結果に基づきユニットコントローラ10が異常有りと判断した場合、紡績ユニット2において、糸Yが切断(分断)される。
ワキシング装置12は、糸貯留装置11と巻取装置13との間において、糸Yにワックスを付与する。
糸貯留装置11は、空気紡績装置7と巻取装置13との間において、糸Yの弛みを取る。糸貯留装置11は、空気紡績装置7から糸Yを安定して引き出す機能、糸継台車3による糸継動作時等に空気紡績装置7から送り出される糸Yを滞留させて糸Yが弛むのを防止する機能、及び糸貯留装置11よりも下流側の糸Yのテンションの変動が空気紡績装置7に伝わるのを防止する機能を有している。
巻取装置13は、糸YをボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。巻取装置13は、クレードルアーム21と、巻取ドラム22と、トラバースガイド23と、を有している。クレードルアーム21は、ボビンBを回転可能に支持する。
糸継台車3は、ある紡績ユニット2において糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2まで走行して、糸継動作を行う。糸継台車3は、糸継装置26と、サクションパイプ(糸捕捉装置)27と、サクションマウス(糸捕捉装置)28と、を有している。サクションパイプ27は、支軸31によって回動可能に支持されており、空気紡績装置7からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。サクションパイプ27は、糸Yの糸端を捕捉すると、糸端に形成された繊維束部Y1を切除し、繊維束部Y1を切除した糸Yの糸端を糸継装置26に案内する。サクションマウス28は、支軸32によって回動可能に支持されており、巻取装置13からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。サクションマウス28は、糸Yの糸端を捕捉すると、糸端に形成された繊維束部Y1を切除し、繊維束部Y1を切除した糸Yの糸端を糸継装置26に案内する。糸継装置26は、案内された糸Y同士の糸継ぎを行う。糸継装置26は、圧縮空気を用いるスプライサ、又は糸Yを機械的に継ぐノッター等である。糸継台車3が糸継ぎ動作を行うとき、パッケージPを反巻取方向に回転(逆回転)させる。
次に、糸Yの糸端に形成される繊維束部Y1の長さの調整に関する動作(紡績方法)について説明する。なお、繊維束部Y1とは、図5に示されるように、パッケージPに連なる糸Yの糸端において撚りが与えられていない領域をいう。
ユニットコントローラ10は、繊維束Fを分断する場合に、ドラフト装置6及び空気紡績装置7の動作を制御して、繊維束Fの分断によって糸Yの糸端に形成される繊維束部Y1の寸法を調整する調整モードを有している。ユニットコントローラ10は、巻取装置13によってパッケージPに糸Yが規定量巻かれた満巻時と、満巻時以外の通常時とにおいて、調整モードの実施の有無を切り替え可能である。ユニットコントローラ10は、通常時においては調整モードで繊維束Fを分断させる。ユニットコントローラ10は、満巻時においては調整モードで繊維束Fを分断させない。なお、満巻時は玉揚時と言うこともできる。
最初に、通常時の動作について説明する。すなわち、ユニットコントローラ10が、調整モードの実施「有り」を選択して、調整モードで繊維束Fを分断させる動作について説明する。本実施形態では、通常時として、糸欠陥が検出されて紡績を停止する場合を一例に説明する。ユニットコントローラ10は、糸監視装置8が糸欠陥を検出した場合、通常時として調整モードで繊維束Fを分断させる。
調整モードにおける繊維束部Y1の長さの調整の動作は、紡績する糸Yの番手(太さ)により異なる。最初に、番手がNe30以上(第1番手範囲)の糸Yを紡績する場合の繊維束部Y1の長さの調整方法について、図6(a)を参照して説明する。
紡績中、複数のノズル74は、紡績室73に空気を噴射して、紡績室73内に空気の旋回流を発生させる。これにより、紡績室73に供給された繊維束Fに撚りが与えられ、糸Yが生成される。生成された糸Yは、通路81を通って出口83から排出される。糸Yとならなかった繊維は、回収部77に回収される。紡績中、空気紡績装置7は、紡績位置に位置している。
紡績中に糸監視装置8によって糸欠陥が検出されると、糸欠陥検出信号がユニットコントローラ10に送信される。ユニットコントローラ10は、糸欠陥検出信号を受信すると、バックローラ対14の回転(ドラフト装置6によるドラフト動作)が停止するように、ドラフト装置6を制御する(分断動作)。フロントローラ対17はバックローラ対14とは異なる駆動源(他の紡績ユニット2のフロントローラ対17と共通の駆動源)に接続されているため、フロントローラ対17の駆動は継続される。この結果、繊維束Fは、バックローラ対14とフロントローラ対17との間で分断される。上記のように、ユニットコントローラ10がドラフト装置6を制御するタイミングを「ドラフト装置6によるドラフト動作を停止させるタイミングK」という。
その後、ユニットコントローラ10は、複数のノズル74による空気の噴射を停止させるように、空気紡績装置7を制御する(分断動作)。複数のノズル74による空気の噴射が停止させられると、紡績室73の旋回流が消失し、糸Yの糸端に撚りが与えられなくなる。この結果、糸Yの糸端に、撚りが与えられていない繊維束部Y1が形成される。上記のように、ユニットコントローラ10が空気紡績装置7を制御するタイミングを「空気の噴射を停止させる第1タイミングL」という。当該第1タイミングLは、ユニットコントローラ10によって、ドラフト装置6によるドラフト動作を停止させるタイミングKに連動するように、タイミングKから所定時間の経過時に設定されている。
その後、ユニットコントローラ10は、紡績位置から退避位置への空気紡績装置7の移動を開始させるように、空気紡績装置7を制御する(分断動作)。上記のように、ユニットコントローラ10が空気紡績装置7を制御するタイミングを「紡績位置から退避位置への空気紡績装置7の移動を開始させる第2タイミングN」という。当該第2タイミングNは、ユニットコントローラ10によって、空気の噴射を停止させる第1タイミングLに連動するように、第1タイミングLから所定時間の経過時に設定されている。以上の動作により、糸Yが分断されて糸Yの糸端に繊維束部Y1が形成される。
次に、番手がNe15以上Ne30未満(第2番手範囲)の糸Yを紡績する場合の繊維束部Y1の長さの調整方法について、図6(b)を参照して説明する。糸Yの番手がNe15以上Ne30未満である場合には、糸Yの番手がNe30以上のである場合と同じ動作が実施される。
続いて、番手がNe15未満(第3番手範囲)の糸Yを紡績する場合の繊維束部Y1の長さの調整方法について、図6(c)を参照して説明する。
紡績中に糸監視装置8によって糸欠陥が検出されると、糸欠陥検出信号がユニットコントローラ10に送信される。ユニットコントローラ10は、糸欠陥検出信号を受信すると、ドラフト装置6の動作を制御する。
ユニットコントローラ10は、スライバSを分断する場合、ドラフト装置6において、空気紡績装置7で生成される糸Yの番手となるスライバSをドラフトする第1ドラフト動作のドラフト比とは異なる比率のドラフト比に変更してスライバSをドラフトする第2ドラフト動作を実施させると共に、第2ドラフト動作を実施させた後に空気紡績装置7における空気の噴射を停止させる。
ユニットコントローラ10は、空気紡績装置7における空気の噴射を停止させるタイミングを紡績条件に基づいて求める。紡績条件は、紡績速度、ドラフト比、ドラフトゲージ等を含み得る。ユニットコントローラ10は、スライバSを分断する場合、上記タイミングに基づいて、第2ドラフト動作によりドラフトされたスライバSの少なくとも一部が空気紡績装置7に流入するのと同時に又は流入した後に、空気紡績装置7における空気の噴射を停止させる。
本実施形態では、ユニットコントローラ10は、バックローラ対14の回転速度を変更する、すなわちフロントローラ対17以外のローラ対の回転速度を変更することにより、第2ドラフト動作を実施させる。ユニットコントローラ10は、第2ドラフト動作が実施された時点で、回転速度が変更されたローラ対(ローラ対14、15及び16のうちの1又は複数)のうちのドラフト経路の最下流側に配置されたローラ対である先行ローラ対と、先行ローラ対の1つ下流側に配置されたローラ対(ローラ対14,16及び17のうちの1つ)である後続ローラ対との間に位置する繊維束Fであって、後続ローラ対に挟持されていなかった繊維束Fの少なくとも一部が空気紡績装置7に流入した後に、空気紡績装置7における空気の噴射を停止させる。例えば、回転速度が変更されたローラ対がバックローラ対14である場合には、バックローラ対14とサードローラ対15との間に位置し、且つ、サードローラ対15に挟持されていなかった繊維束Fの少なくとも一部が空気紡績装置7に流入した後に、空気紡績装置7における空気の噴射を停止させる。
ユニットコントローラ10は、糸監視装置8から送信された糸欠陥検出信号を受信してから空気紡績装置7における空気の噴射を停止させるまでの時間Tを算出する。本実施形態では、第2ドラフト動作として、バックローラ対14(ボトムローラ14b)の回転速度を変更する場合について説明する。この場合、ユニットコントローラ10は、以下の式(1)に基づいて上記時間T[msec]を算出する。
T={(D1×M×I/F)+(D2×M/F)+D3}/(S/60)+K …(1)
D1[mm]は、サードローラ対15とミドルローラ対16との間のドラフト経路における距離(サードローラ対15とミドルローラ対16との中心間の距離)である。D1は、サードローラ対15とミドルローラ対16のドラフトゲージともいう。
T={(D1×M×I/F)+(D2×M/F)+D3}/(S/60)+K …(1)
D1[mm]は、サードローラ対15とミドルローラ対16との間のドラフト経路における距離(サードローラ対15とミドルローラ対16との中心間の距離)である。D1は、サードローラ対15とミドルローラ対16のドラフトゲージともいう。
Mは、メインドラフト比である。Mは、紡績速度[m/min]をミドルローラ対16の回転速度[m/min]で除算した値(紡績速度/ミドルローラ回転速度)である。本実施形態では、紡績速度は、糸貯留装置11が糸Yを引き出す引出速度に相当する。
Iは、インターミディエイトドラフト比である。Iは、ミドルローラ対16の回転速度[m/min]をサードローラ対15の回転速度[m/min]で除算した値(ミドルローラ回転速度/サードローラ回転速度)である。
Fは、フィード比である。Fは、紡績速度[m/min]をフロントローラ対17の回転速度[m/min]で除算した値(紡績速度/フロントローラ回転速度)である。
D2[mm]は、ミドルローラ対16とフロントローラ対17との間のドラフト経路における距離(ミドルローラ対16とフロントローラ対17との中心間の距離)である。D2は、ミドルローラ対16とフロントローラ対17のドラフトゲージともいう。
D3[mm]は、中空ガイド軸体80の出口83とフロントローラ対17との間の繊維束F及び糸Yの走行経路における距離である。
S[m/min]は、紡績速度である。
Kは、紡績機1の環境に基づいて設定される定数である。Kは、例えば、糸監視装置8とユニットコントローラ10との間の通信環境(信号遅れ)、空気紡績装置7における空気抜け遅れなどを考慮した定数である。Kは、例えば、「−10」である。「60」は、時間Tの単位を[msec]に換算するための数値である。
上記時間Tは、糸監視装置8において糸欠陥が検出されてから(糸欠陥信号がユニットコントローラ10において受信されてから)、バックローラ対14とサードローラ対15との間の繊維束F(第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束F)の一部(先頭)が空気紡績装置7の出口83から排出されるまでの時間(第1時間)に相当する。
ユニットコントローラ10は、記憶部(図示省略)に予め設定されている情報(紡績条件等)に基づいて、上記時間Tを算出する。具体的には、ユニットコントローラ10は、機台制御装置100の入力キー104において紡績条件(生産ロット)の入力が行われた場合、当該紡績条件に基づいて、時間Tを算出する。
紡績中に糸監視装置8によって糸欠陥が検出されると、糸欠陥検出信号がユニットコントローラ10に送信される。ユニットコントローラ10は、糸欠陥検出信号を受信すると、ドラフト装置6の動作を制御する。具体的には、ユニットコントローラ10は、糸欠陥検出信号を受信すると、空気紡績装置7で生成されるべき糸Yの番手となる繊維束Fをドラフトする第1ドラフト動作のドラフト比よりも比率を大きくして繊維束Fをドラフトする第2ドラフト動作を実施させる。すなわち、ユニットコントローラ10は、糸欠陥検出信号を受信すると、ドラフト装置6のトータルドラフト比を変更する。
詳細には、ユニットコントローラ10は、現在紡績している糸Yの番手よりも細番手化されるように、ドラフト装置6のトータルドラフト比を変更する。具体的には、ユニットコントローラ10は、バックローラ対14とサードローラ対15との間のドラフト比(ブレークドラフト比)を変更する。ユニットコントローラ10は、例えば、番手がNe10の糸Yを紡績している場合には、番手がNe35の糸Yを紡績するときのドラフト比に変更する。詳細には、ユニットコントローラ10は、バックローラ対14の回転速度を変更し、ブレークドラフト比を変更することにより、トータルドラフト比を、番手がNe10の場合の例えば3.5倍とする。これにより、ドラフト装置6におけるトータルドラフト比が変更され、Ne35の糸Yを紡績するための繊維束Fにドラフトされる。
ユニットコントローラ10は、記憶部(図示省略)に予め設定されている情報に基づいて、ドラフト装置6において第2ドラフト動作を実施するためのドラフト比を設定する。記憶部には、糸の番手と、当該番手における第2ドラフト動作のドラフト比と、が対応付けられて記憶されている。第2ドラフト動作のドラフト比は、空気紡績装置7により生成される糸Yの番手がNe15以上大きくNe45以下の範囲となるように設定されている。すなわち、ユニットコントローラ10は、第2ドラフト動作において、空気紡績装置7により生成される糸Yの番手がNe15以上Ne45以下の範囲となるドラフト比で繊維束Fをドラフトさせる。なお、糸Yの番手がNe30以上Ne40以下の範囲となるように設定されていることがより好ましい。ユニットコントローラ10は、例えば、入力キー104において紡績条件の入力が行われた場合、当該紡績条件の1つとして入力された糸Yの番手(生産する糸Yの番手)に対応する第2ドラフト動作のドラフト比を、記憶部から取得する。なお、第2ドラフト動作におけるドラフト比は、例えば、オペレータにより、入力キー104において入力されることで設定されてもよい。
続いて、ユニットコントローラ10は、トータルドラフト比を変更させた後に所定時間だけドラフト装置6で繊維束Fをドラフト(第2ドラフト動作を実施)させると、バックローラ対14の回転が停止するように、ドラフト装置6を制御する(分断動作を実施させる)。所定時間は、糸監視装置8から送信された糸欠陥検出信号を受信してから、細番手化された繊維束Fが空気紡績装置7から排出されるまでの上記時間Tである。すなわち、ユニットコントローラ10は、細番手化された繊維束Fが空気紡績装置7に流入した後であって空気紡績装置7から排出されたときに、バックローラ対14の回転が停止するようにドラフト装置6を制御する。フロントローラ対17はバックローラ対14とは異なる駆動源に接続されているため、フロントローラ対17の駆動は継続される。この結果、繊維束Fは、バックローラ対14とフロントローラ対17との間で分断される。
また、ユニットコントローラ10は、複数のノズル74による空気の噴射を停止させるように、空気紡績装置7を制御する。そして、ユニットコントローラ10は、紡績位置から退避位置への空気紡績装置7の移動を開始させるように、空気紡績装置7を制御する。以上の動作により、糸Yが分断されて糸Yの糸端に繊維束部Y1が形成される。
続いて、満巻時の動作について説明する。すなわち、ユニットコントローラ10が、調整モードの実施「無し」を選択して、調整モードで繊維束Fを分断させない動作について、図7を参照して説明する。
ユニットコントローラ10は、巻取装置13において形成されるパッケージPが満巻になると、ドラフト装置6の動作を制御する。ユニットコントローラ10は、パッケージPに巻かれた糸Yの長さに基づいて、パッケージPが満巻になったと判断する。ユニットコントローラ10は、パッケージPが満管になったと判断すると、空気紡績装置7で生成される糸Yの番手となるスライバSをドラフトするドラフト動作(第1ドラフト動作)の実施中に、ドラフト装置6のバックローラ対14の回転(ドラフト装置6によるドラフト動作)を停止させて繊維束Fを分断すると共に、分断された繊維束Fの少なくとも一部が空気紡績装置7に流入するまで空気紡績装置7における空気の噴射を継続させる。フロントローラ対17はバックローラ対14とは異なる駆動源(他の紡績ユニット2のフロントローラ対17と共通の駆動源)に接続されているため、フロントローラ対17の駆動は継続される。この結果、繊維束Fは、バックローラ対14とフロントローラ対17との間で分断される。
ユニットコントローラ10は、複数のノズル74による空気の噴射を停止させるように、空気紡績装置7を制御する。具体的には、ユニットコントローラ10は、分断された繊維束Fの少なくとも一部が空気紡績装置7に流入するまでの上記時間Tを算出し、当該時間Tに基づいて、空気紡績装置7における空気の噴射を停止させる。具体的には、ユニットコントローラ10は、上記時間Tが少なくとも経過するまで、空気紡績装置7における空気の噴射を継続させる。上記時間Tは、図7においては、ドラフト装置6によるドラフト動作を停止させるタイミングKと、空気の噴射を停止させる第1タイミングLとの間の時間に相当する。
その後、ユニットコントローラ10は、紡績位置から退避位置への空気紡績装置7の移動を開始させるように、空気紡績装置7を制御する。以上の動作により、糸Yの糸端に繊維束部Y1を形成せずに、繊維束Fを分断する。
以上説明したように、本実施形態に係る紡績機1では、ユニットコントローラ10は、繊維束Fの分断によって糸Yの糸端に形成される繊維束部Y1の寸法を調整する調整モードを有している。したがって、紡績機1では、繊維束部Y1の寸法を適切に調整することができる。また、紡績機1では、ユニットコントローラ10は、満巻時においては調整モードで繊維束Fを分断させない。すなわち、紡績機1では、パッケージPが満巻になったときには、繊維束部Y1の寸法を調整する動作を行わない。したがって、紡績機1では、不要な動作を行わないため、稼働効率の低下を抑制できる。
本実施形態に係る紡績機1では、繊維束部Y1が長くなることを抑制できるので、繊維がフロントローラ対17等の周辺に飛散し、フロントローラ対17等に付着することを抑制できる。
本実施形態に係る紡績機1は、糸Yの糸欠陥を検出する糸監視装置8を備える。ユニットコントローラ10は、糸監視装置8が糸欠陥を検出した場合、通常時として調整モードで繊維束Fを分断させる。この構成では、糸欠陥により繊維束Fを分断する場合、糸Yの糸端に繊維束部Y1を形成することができる。
本実施形態に係る紡績機1では、空気紡績装置7は、糸Yを生成するときの紡績位置と、紡績位置よりもドラフト装置6から遠い退避位置と、に移動可能に設けられている。ユニットコントローラ10は、調整モードでは、ドラフト装置6において、繊維束Fをドラフトする第1ドラフト動作のドラフト比とは異なる比率のドラフト比に変更して繊維束Fをドラフトする第2ドラフト動作を実施させた後に、分断動作を実施させる。この構成では、調整モードにおいて、ドラフト装置6において第2ドラフト動作を実施させた後に、分断動作を実施させる。第2ドラフト動作によりドラフトされたスライバSは、第1ドラフト動作によりドラフトされたスライバSよりも引き伸ばされる。そのため、第2ドラフト動作後の繊維束Fは、第1ドラフト動作後の繊維束Fに比べて繊維量が少なくなる。例えば、番手が小さい(太い)糸Yを生成する場合、空気紡績装置7に供給される繊維束Fの繊維量が多い。この場合、分断動作において繊維束Fを分断したときに、繊維束Fが適切に分断されず、糸Yの糸端に形成される繊維束部(撚りが適切に与えられていない部分)Y1が長くなることがある。紡績機1では、繊維束Fが分断されるときに、繊維束Fの繊維量が第2ドラフト動作により少なくなっているため、分断動作において繊維束Fを分断したときに、繊維束部Y1が長くなることを抑制できる。したがって、紡績機1では、分断動作によって糸Yの糸端に形成される繊維束部Y1の長さを適切に調整することができる。
本実施形態に係る紡績機1では、ユニットコントローラ10は、満巻時には、第1ドラフト動作の実施中にバックローラ対14の回転を停止させて繊維束Fを分断すると共に、分断された繊維束Fの少なくとも一部が空気紡績装置7に流入するまで空気紡績装置7における空気の噴射を継続させる。この構成では、分断された繊維束Fに撚りが与えられるため、繊維束部Y1が形成されない。
本実施形態に係る紡績機1では、ユニットコントローラ10は、調整モードにおいて空気の噴射を停止させるタイミングを紡績条件に基づいて求める。ユニットコントローラ10は、通常時では、調整モードにおいて、求めたタイミングに基づいて、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fの少なくとも一部が空気紡績装置7に流入するのと同時に又は流入した後に空気紡績装置7における空気の噴射を停止させ、満巻時では、求めたタイミングと同じ長さの時間が少なくとも経過するまで、空気紡績装置7における空気の噴射を継続させる。この構成では、通常時において、繊維束部Y1を確実に形成できると共に、満巻き時において、繊維束部Y1が形成されない。
本実施形態に係る紡績機1では、ユニットコントローラ10は、第2ドラフト動作において、空気紡績装置7により生成される糸Yの番手がNe15以上大きくNe45以下の範囲となるドラフト比で繊維束Fをドラフトさせる。このように、糸Yの番手がNe15以上Ne45以下の範囲となる繊維束Fにドラフトすることで、分断するときの繊維束Fの繊維量を適切な量にすることができる。したがって、紡績機1では、繊維束部Y1が太過ぎたり、細過ぎたり、長過ぎたり、短過ぎたりたりすることを防止できる。そして、繊維束部Y1が太く長いために繊維が周囲に飛散し易くなるという状況を回避したり、繊維束部Y1が細すぎるためにサクションパイプ27及びサクションマウス28による糸端の捕捉が難しくなるという状況を回避したりすることができる。
本実施形態に係る紡績機1では、ユニットコントローラ10は、空気紡績装置7により生成される糸Yの番手がNe15未満である場合に、ドラフト装置6に第2ドラフト動作を実施させる。番手がNe15未満の糸Yを生成する場合、繊維束Fの繊維量が比較的多い。そのため、紡績機1では、番手がNe15未満の糸Yを生成する場合に第2ドラフト動作を実施させることにより、繊維束部Y1が長くなることを抑制でき、繊維束部Y1の長さを適切に調整することができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
上記実施形態では、糸監視装置8が糸欠陥を検出した場合、通常時として調整モードで繊維束Fを分断させる形態を一例に説明した。しかし、ユニットコントローラ10は、テンションセンサ9がテンションの異常を検出した場合、通常時として調整モードで繊維束Fを分断させてもよい。
上記実施形態では、紡績機1において、現在紡績している糸Yの番手よりも細番手化されるように、ドラフト装置6のトータルドラフト比を変更する形態を一例に説明した。しかし、紡績機では、現在紡績している糸Yの番手よりも太番手化されるように、ドラフト装置6のトータルドラフト比を変更してもよい。具体的には、ユニットコントローラ10は、ドラフト装置6において、第1ドラフト動作のドラフト比よりも比率を小さくして第2ドラフト動作を実施させた後に、分断動作を実施させる。
このように、ユニットコントローラ10は、「ドラフト装置6において、空気紡績装置7で生成される糸Yの番手となる繊維束Fをドラフトする第1ドラフト動作のドラフト比とは異なる比率のドラフト比に変更して繊維束Fをドラフトする第2ドラフト動作を実施させた後に、空気紡績装置7における空気の噴射を停止させる」糸端制御モード(穂先制御モード)を有する。第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fは、第1ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fと状態が異なる。第1ドラフト動作のドラフト比よりも比率を大きくして第2ドラフト動作を実施した場合、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fは、第1ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fよりも引き伸ばされる。そのため、第2ドラフト動作後の繊維束Fは、第1ドラフト動作後の繊維束Fに比べて繊維量が少なくなる。第1ドラフト動作のドラフト比よりも比率を小さくして第2ドラフト動作を実施した場合、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fは、第1ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fよりも短くなる。そのため、第2ドラフト動作後の繊維束Fは、第1ドラフト動作後の繊維束Fに比べて繊維量が多くなる。このように、紡績機では、第1ドラフト動作のドラフト比と第2ドラフト動作のドラフト比とを変更することによって繊維束Fの繊維量を調整できる。したがって、紡績機では、糸Yの糸端に形成される繊維束部Y1の寸法を適切に調整することができる。これにより、紡績機では、繊維束Fの分断には望ましくない番手で糸Yが生成されている場合であっても、分断動作のときには、適切な番手で分断することができる。
第2ドラフト動作のドラフト比によって生成され得る糸Yの番手、すなわち分断するために好ましい糸Yの番手は、品質と、操業性と、に基づいて設定することができる。ここでの品質とは、繊維束部Y1における風綿飛散量である。ここでの操業性とは、糸継台車3における口出し成功率である。上記の品質は、番手が小さく(糸Yが太く)なると低下し、番手が大きく(糸Yが細く)なると向上する傾向がある。つまり、風綿飛散量は、番手が小さくなると多くなり、番手が大きくなると少なくなる。上記の操業性は、番手が小さくなると高くなり、番手が大きくなると低くなる傾向がある。つまり、口出し成功率は、番手が小さくなると高くなり、番手が大きくなると低くなる。品質と操業性とのバランスの観点からは、例えば、番手を15〜45とすることが好ましい。しかしながら、番手は15〜45に限られない。
上記の番手は、品質と操業性の何れを重視するかによって、ユーザーが自由に設定してもよい。ユーザーが操作部(入力キー104又は後述のタッチパネル等)を操作することによって、上述の糸端制御を実施する場合の所定番手範囲(例えば「○番〜○番」の範囲以外/より具体的には例えば15番〜45番以外)と、第2ドラフト動作によって達成する目標分断番手(例えば○番/より具体的には例えば30番)とを予め設定できるようにしてもよい。そして、ユニットコントローラ10は、所定番手範囲で紡績されている場合に例えば糸欠陥が検出されたとき、目標分断番手になるドラフト比で第2ドラフト動作を実施させた後に、分断動作を実施させてもよい。
上記実施形態では、ボトムローラ14b,15bが各紡績ユニット2に設けられた駆動モータにより回転駆動され、ボトムローラ16b,17bが第2エンドフレーム5に設けられた駆動モータにより回転駆動される形態を一例に説明した。この構成において、ドラフト装置6のバックローラ対14及びサードローラ対15のドラフト比を変更することにより、第2ドラフト動作を実施する形態を一例に説明した。しかし、ボトムローラ14b,15b,16b,17bが各紡績ユニット2に設けられた駆動モータにより回転駆動される形態であってもよい。この構成では、バックローラ対14、サードローラ対15及びミドルローラ対16のいずれかのローラ対のドラフト比を変更することにより、第2ドラフト動作を実施させてもよい。本発明は、紡績ユニット2ごとに独立して回転駆動されるドラフトローラ対の回転速度を変更することにより、第2ドラフト動作を実施させると好ましい。
具体的には、例えば、ユニットコントローラ10は、サードローラ対15及びミドルローラ対16のドラフト比を変更する。詳細には、ユニットコントローラ10は、サードローラ対15の回転速度を変更し、インターミディエイトドラフト比(サードローラ対15とミドルローラ対16との間のドラフト比)を変更することにより、トータルドラフト比を変更する。このような構成では、ユニットコントローラ10は、以下の式(2)に基づいて時間T[msec]を算出する。
T={(D2×M/F}+D3}/(S/60)+K …(2)
T={(D2×M/F}+D3}/(S/60)+K …(2)
また、例えば、ユニットコントローラ10は、ミドルローラ対16及びフロントローラ対17のドラフト比を変更する。詳細には、ユニットコントローラ10は、ミドルローラ対16の回転速度を変更し、ドラフト比(ミドルローラ対16とフロントローラ対17との間のドラフト比)を変更することにより、トータルドラフト比を変更する。このような構成では、ユニットコントローラ10は、以下の式(3)に基づいて時間T[msec]を算出する。
T=D3/(S/60)+K …(3)
T=D3/(S/60)+K …(3)
以上のように、ユニットコントローラ10では、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fが空気紡績装置7から排出される時間を適切に算出できる。したがって、紡績機1では、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fの全てに撚りが与えられることを回避し得るため、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fにおいて繊維束部Y1が形成される。そのため、紡績機1では、繊維束部の寸法を適切に調整することができる。
また、上記の数式(1)、(2)及び(3)において、D3は、「中空ガイド軸体80の出口83(紡績部の出口)とフロントローラ対17との間の繊維束F及び糸Yの走行経路における距離」ではなく、「紡績室73の入口(紡績部の入口)とフロントローラ対17との間の繊維束F及び糸Yの走行経路における距離」であってもよい。この場合、ユニットコントローラ10では、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fが空気紡績装置7に流入するまでの時間を適切に算出できる。したがって、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束の少なくとも一部(先頭部分)が空気紡績装置に流入するのと同時に空気紡績装置7における空気の噴射を停止させることができる。この場合でも、紡績機1では、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fの全てに撚りが与えられることを回避し得るため、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fにおいて繊維束部Y1が形成される。そのため、紡績機1では、繊維束部の寸法を適切に調整することができる。D3は、「空気紡績装置7(空気紡績装置7における任意の位置)とフロントローラ対17との間の繊維束F及び糸Yの走行経路における距離」であってもよい。空気紡績装置7における任意の位置は、上述の紡績部の入口及び出口に限らず、紡績部の中間点、例えば繊維束Fが糸Yに変わる変化点であってもよい。
また、上記の数式(1)、(2)及び(3)において、D3は、「糸監視装置8とフロントローラ対17との間の繊維束F及び糸Yの走行経路における距離」であってもよい。この場合、ユニットコントローラ10では、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fが糸監視装置8を通過するまでの時間(第2時間)を適切に算出できる。したがって、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束の少なくとも一部(先頭部分)が糸監視装置8を通過するのと同時に又は通過する前に、空気紡績装置7における空気の噴射を停止させることができる。この場合でも、紡績機1では、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fの全てに撚りが与えられることを回避し得るため、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fにおいて繊維束部Y1が形成される。そのため、紡績機1では、繊維束部の寸法を適切に調整することができる。
また、上記の数式(1)、(2)及び(3)において、D3は、「糸貯留装置11とフロントローラ対17との間の繊維束F及び糸Yの走行経路における距離」であってもよい。この場合、ユニットコントローラ10では、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fが糸貯留装置11に到達するまでの時間(第3時間)を適切に算出できる。したがって、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束の少なくとも一部(先頭部分)が糸貯留装置11に到達する前に、空気紡績装置7における空気の噴射を停止させることができる。この場合でも、紡績機1では、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fの全てに撚りが与えられることを回避し得るため、第2ドラフト動作によりドラフトされた繊維束Fにおいて繊維束部Y1が形成される。そのため、紡績機1では、繊維束部の寸法を適切に調整することができる。
上記実施形態では、ドラフト装置6が、バックローラ対14と、サードローラ対15と、ミドルローラ対16と、フロントローラ対17と、を有する形態を一例に説明した。しかし、ドラフト装置は、少なくとも3つのローラ対を有していればよい。この構成では、ユニットコントローラ10は、少なくとも3つのローラ対のうち、ドラフト経路の最下流側に配置されたローラ対以外の1つ又は複数のローラ対の回転速度を変更することにより第2ドラフト動作を実施させる。
上記実施形態では、オペレータは入力キー104を用いて設定作業等の適宜の操作を行う例を説明したが、表示画面102をタッチパネルディスプレイとして、オペレータは、入力キー104の代わりに又は入力キー104とともにタッチパネルを操作可能な構成としてもよい。
上記実施形態に加えて、紡績機1は、噴射装置と、吸引装置と、を更に備えていてもよい。噴射装置は、紡績位置から退避位置へ空気紡績装置7の移動が開始された後に、ドラフト装置6と空気紡績装置7との間の領域に空気を噴射する。噴射装置は、領域における繊維通路(繊維束Fが走行する経路)を横切るように空気を噴射するように配置されている。噴射装置は、好ましくは繊維通路に垂直な方向に沿って空気を噴射するように配置されている。噴射装置は、所望のタイミングで空気を噴射するように、ユニットコントローラ10によって制御される。吸引装置は、領域を挟んで噴射装置と対向するように配置されており、領域及びその周辺に残留する繊維を吸引する。噴射装置は、例えば、領域に対してトップローラ17a側に位置しており、吸引装置は、領域に対してボトムローラ17b側に位置している。なお、噴射装置と吸引装置との位置を入れ替えてもよい。
噴射装置を備える構成では、通常時に調整モードで繊維束Fを分断させる動作において、紡績する糸Yの番手(太さ)に基づいて、噴射装置から空気の噴射の有無、及び、空気を噴射するタイミングを変更してもよい。具体的には、例えば、糸Yの番手がNe30(第1番手範囲)の場合には、噴射装置から空気を噴射させない。糸Yの番手がNe15以上Ne30未満(第2番手範囲)及びNe15未満の場合には、紡績位置から退避位置への空気紡績装置7の移動を開始した後に空気を噴射する。
上記実施形態では、糸Yの番手をNe(英国式番手)で示しているが、糸Yの番手は他の方法で示されてもよい。
糸継装置26は、種糸を用いるピーサーであってもよい。
空気紡績装置7は、上記ニードル75に代えて、繊維案内部の下流側糸端によって、繊維束の撚りが空気紡績装置の上流側に伝わるのを防止するものであってもよい。空気紡績装置は、上記の構成に代えて、互いに反対方向に繊維束に撚りを掛ける一対のエアージェットノズルを備えていてもよい。紡績機は、オープンエンド紡績機であってもよい。
紡績ユニット2では、糸貯留装置11が空気紡績装置7から糸Yを引き出す機能を有していたが、デリベリローラとニップローラとで空気紡績装置7から糸Yが引き出されてもよい。デリベリローラとニップローラとで空気紡績装置7から糸Yを引き出す場合、糸貯留装置11の代わりに、吸引空気流で糸Yの弛みを吸収するスラックチューブ又は機械的なコンペンセータ等を設けてもよい。
紡績機1では、高さ方向において、上側で供給された糸Yが下側で巻き取られるように各装置が配置されていた。しかし、下側で供給された糸が上側で巻き取られるように各装置が配置されていてもよい。
紡績機1では、ドラフト装置6のボトムローラの少なくとも一つ及びトラバースガイド23が、第2エンドフレーム5からの動力によって(すなわち、複数の紡績ユニット2共通で)駆動されていた。しかし、紡績ユニット2の各部(例えば、ドラフト装置、空気紡績装置、巻取装置等)が紡績ユニット2ごとに独立して駆動されてもよい。
糸Yの走行方向において、テンションセンサ9が糸監視装置8の上流側に配置されてもよい。ユニットコントローラ10は、紡績ユニット2ごとに設けられてもよい。紡績ユニット2において、ワキシング装置12、テンションセンサ9及び糸監視装置8は、省略されてもよい。
図1では、紡績機1は、チーズ形状のパッケージPを巻き取るように図示されているが、コーン形状のパッケージを巻き取ることも可能である。コーン形状のパッケージの場合、糸のトラバースにより糸の弛みが発生するが、当該弛みは、糸貯留装置11で吸収することができる。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。
1…紡績機、6…ドラフト装置、7…空気紡績装置、8…糸監視装置(糸検出装置)、9…テンションセンサ、10…ユニットコントローラ(制御部)、14…バックローラ対(第4ローラ対)、15…サードローラ対(第3ローラ対)、16…ミドルローラ対(第2ローラ対)、17…フロントローラ対(第1ローラ対)、F…繊維束、Y…糸。
Claims (17)
- 複数の回転可能なローラ対を有し、前記ローラ対によって繊維束をドラフトするドラフト装置と、
空気を噴射することにより、前記ドラフト装置でドラフトされた前記繊維束に撚りを与えて糸を生成する空気紡績装置と、
前記空気紡績装置により生成された前記糸をボビンに巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、
前記ドラフト装置及び前記空気紡績装置の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記繊維束を分断する場合に、前記ドラフト装置及び前記空気紡績装置の動作を制御して、前記繊維束の分断によって前記糸の糸端に形成される繊維束部の寸法を調整する調整モードを有しており、
前記巻取装置によって前記パッケージに前記糸が規定量巻かれた満巻時と、当該満巻時以外の通常時とにおいて、前記調整モードの実施の有無を切り替え可能であり、
前記通常時においては前記調整モードで前記繊維束を分断させ、
前記満巻時においては前記調整モードで前記繊維束を分断させない、紡績機。 - 前記糸の糸欠陥を検出する糸検出装置を備え、
前記制御部は、前記糸検出装置が前記糸欠陥を検出した場合、前記通常時として前記調整モードで前記繊維束を分断させる、請求項1に記載の紡績機。 - 前記糸のテンションを検出するテンションセンサを備え、
前記制御部は、前記テンションセンサが前記テンションの異常を検出した場合、前記通常時として前記調整モードで前記繊維束を分断させる、請求項1に記載の紡績機。 - 前記空気紡績装置は、前記糸を生成するときの紡績位置と、前記紡績位置よりも前記ドラフト装置から遠い退避位置と、に移動可能に設けられており、
前記制御部は、前記調整モードでは、
前記ドラフト装置において、前記繊維束をドラフトする第1ドラフト動作のドラフト比とは異なる比率のドラフト比に変更して前記繊維束をドラフトする第2ドラフト動作を実施させた後に、
少なくとも一つの前記ローラ対の回転の停止、前記空気紡績装置における前記空気の噴射の停止、及び、前記空気紡績装置の前記紡績位置から前記退避位置への移動、の少なくとも一つの分断動作を実施させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の紡績機。 - 前記制御部は、前記満巻時には、前記第1ドラフト動作の実施中に少なくとも一つの前記ローラ対の回転を停止させて前記繊維束を分断すると共に、分断された前記繊維束の少なくとも一部が前記空気紡績装置に流入するまで前記空気紡績装置における前記空気の噴射を継続させる、請求項4に記載の紡績機。
- 前記調整モードにおいて前記空気の噴射を停止させるタイミングを紡績条件に基づいて求める算出部を備え、
前記制御部は、
前記通常時では、前記調整モードにおいて、前記算出部によって求められたタイミングに基づいて、前記第2ドラフト動作によりドラフトされた前記繊維束の少なくとも一部が前記空気紡績装置に流入するのと同時に又は流入した後に前記空気紡績装置における前記空気の噴射を停止させ、
前記満巻時では、前記算出部によって求められたタイミングと同じ長さの時間が少なくとも経過するまで、前記空気紡績装置における前記空気の噴射を継続させる、請求項5に記載の紡績機。 - 前記ドラフト装置は、前記繊維束のドラフト経路に沿って配置された少なくとも3つのローラ対を有し、
前記制御部は、
少なくとも3つの前記ローラ対のうち、前記ドラフト経路の最下流側に配置された前記ローラ対以外の1つ又は複数の前記ローラ対の回転速度を変更することにより前記第2ドラフト動作を実施させると共に、
前記第2ドラフト動作が実施された時点で、前記回転速度が変更された前記ローラ対のうちの前記ドラフト経路の最下流側に配置された前記ローラ対である先行ローラ対と、当該先行ローラ対の1つ下流側に配置された前記ローラ対である後続ローラ対との間に位置する前記繊維束であって、前記後続ローラ対に挟持されていなかった前記繊維束の少なくとも一部が前記空気紡績装置に流入するのと同時に又は流入した後に、前記空気紡績装置における前記空気の噴射を停止させる、請求項6に記載の紡績機。 - 前記制御部は、
前記算出部によって求められた前記タイミングに基づいて、
前記第2ドラフト動作によりドラフトされた前記繊維束の少なくとも一部が前記空気紡績装置の紡績部の出口から排出されたときに、前記空気紡績装置における前記空気の噴射を停止させる、請求項6又は7に記載の紡績機。 - 前記空気紡績装置よりも前記糸の走行経路の下流側に設置され、前記糸の糸欠陥を検出する糸検出装置を備え、
前記制御部は、
前記算出部によって求められた前記タイミングに基づいて、
前記第2ドラフト動作によりドラフトされた前記繊維束の少なくとも一部が前記糸検出装置を通過したときに、前記空気紡績装置における前記空気の噴射を停止させる、請求項6〜8のいずれか一項に記載の紡績機。 - 前記空気紡績装置よりも前記糸の走行経路の下流側に設置され、前記空気紡績装置において生成された前記糸を引き出す引出装置を備え、
前記制御部は、
前記算出部によって求められた前記タイミングに基づいて、
前記第2ドラフト動作によりドラフトされた前記繊維束の少なくとも一部が前記引出装置に到達したときに、前記空気紡績装置における前記空気の噴射を停止させる、請求項6〜8のいずれか一項に記載の紡績機。 - 前記空気紡績装置において生成された前記糸を引き出す引出装置と、
前記糸の走行経路において前記空気紡績装置と前記引出装置との間に配置され、前記糸の糸欠陥を検出する糸検出装置と、を備え、
前記ドラフト装置は、前記繊維束のドラフト経路において下流側から上流側に向かって、少なくとも第1ローラ対、第2ローラ対、第3ローラ対及び第4ローラ対をこの順番で有し、
前記制御部は、前記第2ドラフト動作において前記第3ローラ対及び前記第4ローラ対のドラフト比の比率を第1ドラフト動作から変更しており、
前記算出部は、
前記第1ローラ対と前記第2ローラ対との間の前記ドラフト経路における距離と、
前記第2ローラ対と前記第3ローラ対との間の前記ドラフト経路における距離と、
前記引出装置が前記糸を引き出す引出速度を前記第2ローラ対の回転速度で除算した値と、
前記第2ローラ対の回転速度を前記第3ローラ対の回転速度で除算した値と、
前記引出速度を前記第1ローラ対の回転速度で除算した値と、
前記空気紡績装置と前記第1ローラ対との間の前記繊維束及び前記糸の走行経路における距離、又は、前記糸検出装置と前記第1ローラ対との間の前記繊維束及び前記糸の走行経路における距離、又は、前記引出装置と前記第1ローラ対との間の前記繊維束及び前記糸の走行経路における距離と、
前記引出速度と、
に基づいて前記タイミングとして時間を算出し、
前記制御部は、前記糸検出装置によって前記糸の糸欠陥が検出されてから前記時間が経過したときに、前記空気紡績装置における前記空気の噴射を停止させる、請求項6〜10のいずれか一項に記載の紡績機。 - 前記制御部は、前記ドラフト装置において前記第1ドラフト動作のドラフト比よりも比率を大きくして前記第2ドラフト動作を実施させる、請求項4〜11のいずれか一項に記載の紡績機。
- 前記制御部は、前記空気紡績装置により生成される前記糸の番手がNe15以下である場合に、前記ドラフト装置に前記第2ドラフト動作を実施させる、請求項12に記載の紡績機。
- 前記制御部は、前記ドラフト装置において前記第1ドラフト動作のドラフト比よりも比率を小さくして前記第2ドラフト動作を実施させる、請求項4〜11のいずれか一項に記載の紡績機。
- 前記制御部は、前記第2ドラフト動作において、前記空気紡績装置により生成される前記糸の番手がNe15以上Ne45以下の範囲となるドラフト比で前記繊維束をドラフトさせる、請求項4〜14のいずれか一項に記載の紡績機。
- 複数の紡績ユニットを備え、
前記紡績ユニットがそれぞれ、少なくとも3つの前記ローラ対と、前記空気紡績装置と、を備え、少なくとも3つの前記ローラ対のうちの少なくとも1つの前記ローラ対が前記紡績ユニットごとに独立して回転駆動が可能に設けられており、
前記制御部は、独立して回転駆動が可能である前記ローラ対の回転速度を変更することにより前記第2ドラフト動作を実施させる、請求項4〜15のいずれか一項に記載の紡績機。 - ローラ対を有し、前記ローラ対によって繊維束をドラフトするドラフト装置と、空気を噴射することにより、前記ドラフト装置でドラフトされた前記繊維束に撚りを与えて糸を生成する空気紡績装置と、前記空気紡績装置により生成された前記糸をボビンに巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、前記ドラフト装置及び前記空気紡績装置の動作を制御する制御部と、を備える紡績機において実施される紡績方法であって、
前記繊維束を分断する場合に、前記ドラフト装置及び前記空気紡績装置の動作を制御して、前記繊維束の分断によって前記糸の糸端に形成される繊維束部の寸法を調整する調整モードを有しており、
前記巻取装置によって前記パッケージに前記糸が規定量巻かれた満巻時と、当該満巻時以外の通常時とにおいて、前記調整モードの実施の有無を切り替え可能であり、
前記通常時においては前記調整モードで前記繊維束を分断させ、
前記満巻時においては前記調整モードで前記繊維束を分断させない、紡績方法。
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