以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1を参照しながら、走行制御装置10について説明する。走行制御装置10には、周辺認知センサ21、速度センサ22、及び受信装置23から出力される情報が入力される。
周辺認知センサ21は、走行制御装置10が搭載されている自車両周辺の状況を認知するための認知デバイスであって、カメラ、LIDAR、ミリ波レーダ、ソナー等を含むものである。自車両周辺の状況とは、道路や白線の状況や、道路を走行中の他車両の状況を含むものである。周辺認知センサ21は、認知した自車両周辺の状況を認知し、その情報を走行制御装置10に出力する。
速度センサ22は、自車両の速度を検出するためのセンサである。速度センサ22は、検出した自車両の速度女王を走行制御装置10に出力する。
受信装置23は、ネットワークを経由して送信される情報を受信する装置である。受信装置23は、短距離無線通信による車車間通信で情報を受信してもよい。受信装置23は、受信した情報を走行制御装置10に出力する。
走行制御装置10は、EPS31、EPB32、ECB33、MG34、トランスミッション35、発信装置36、報知装置37、及び外部表示装置38に指示信号を出力する。
EPS31は、電動パワーステアリング(Electric Power Steering)である。EPS31は、走行制御装置10から出力される指示信号に応じて操舵補助力を発生させる。EPB32は、電動パーキングブレーキ(Electric Parking Brake)である。EPB32は、走行制御装置10から出力される指示信号に応じてパーキングブレーキのロックやリリースを行う。ECB33は、電子制御ブレーキ(Electronically Controlled Brake System)である。ECB33は、走行制御装置10から出力される指示信号に応じて制動力を発生させる。
MG34は、モータジェネレータである。MG34は、走行制御装置10から出力される指示信号に応じて駆動力を発生させる一方で、発電を行うこともできる。トランスミッション35は、走行制御装置10から出力される指示信号に応じて変速機の制御を行う。
発信装置36は、ネットワークを経由して送信される情報を発信する装置である。発信装置36は、短距離無線通信による車車間通信で情報を発信してもよい。発信装置36は、走行制御装置10から出力される情報を発信する。
報知装置37は、自車両内の乗員に音声や映像で警報を発する装置である。報知装置37は、走行制御装置10から出力される情報を発信する。
外部表示装置38は、車外に向けて情報を表示する装置である。外部表示装置38は、走行制御装置10から出力される情報に基づいた表示を行う。
走行制御装置10は、ハードウェア的な構成要素として、CPUといった演算部、RAMやROMといった記憶部、データの授受を行うためのインターフェイス部を備えるコンピュータとして構成されている。
続いて、制御装置の機能的な構成要素について説明する。走行制御装置10は、機能的な構成要素として、運転状態取得部101と、車間距離変更部102と、被害抑制部103と、を備えている。
運転状態取得部101は、自車両の周囲所定範囲内にいる確認対象車両の自動運転状態を取得する部分である。確認対象車両は、自車両の前後左右において最も近い位置に存在する車両を含み、必要に応じてそれらの車両よりも遠い位置に存在する車両を含む。
自動運転状態とは、確認対象車両が自動運転可能な車両であるか否か、自動運転可能な車両であれば自動運転機能が正常に働いているかの状態を表すものであって、未確認状態と確認済状態とを含む。未確認状態とは、確認対象車両が自動運転車両であって適正な自動運転状態にあるものと確認できないである。未確認状態は、確認対象車両が自動運転可能な車両でない場合を含み、確認対象車両が自動運転可能であっても自動運転機能が何らかの要因で機能していない場合も含む。確認済状態は、確認対象車両が適正な自動運転状態にあるものと確認できる場合を含む。本実施形態では、確認対象車両が適正な自動運転状態にあるものとして、自車両と正常に自動で連携する車両も含むものとする。これは、自車両と隊列走行を組んで走行する他車両であって、自車両が隊列の先頭である場合に、追従して隊列走行する他車両を含むものである。
運転状態取得部101は、受信装置23が受信した情報に基づいて確認対象車両の自動運転状態を取得する。運転状態取得部101は、確認対象車両の自動運転状態を車間距離変更部102に出力する。
車間距離変更部102は、運転状態取得部101が取得する自動運転状態に基づいて、他車両との車間距離を変更する部分である。他車両とは、自車両の前後左右において最も近い位置に存在する車両を含む。他車両には、確認対象車両が含まれる場合もある。車間距離変更部102は、自動運転状態が、確認対象車両が自動運転車両であって適正な自動運転状態にあるものと確認できない未確認状態と、適正な自動運転状態にあるものと確認できる確認済状態とで、車間距離を変更する。
このように、本実施形態における走行制御装置10は、車両の自動運転システムに適用される走行制御装置であって、自車両の周囲所定範囲内にいる確認対象車両の自動運転状態を取得する運転状態取得部101と、運転状態取得部101が取得する自動運転状態に基づいて、他車両との車間距離を変更する車間距離変更部102と、を備えている。車間距離変更部102は、自動運転状態が、確認対象車両が自動運転車両であって適正な自動運転状態にあるものと確認できない未確認状態と、適正な自動運転状態にあるものと確認できる確認済状態とで、車間距離を変更する。
本実施形態では、車間距離変更部102が未確認状態と確認済状態とで車間距離を変更するので、自車両に他車両が衝突するおそれがある場合に十分な車間距離を確保することができる。確認対象車両が自動運転車両であって適正な自動運転状態にあるものと確認できない場合は自車両に対して他車両が衝突するおそれがあると判断できるので、車間距離を十分に確保して衝突回避できる余地を形成することができる。
本実施形態において、車間距離変更部102は、自動運転状態が未確認状態である場合に、自車両に対して確認対象車両が存在する方向に応じて車間距離を変更することができる。車間距離変更部102は、自車両に対して未確認状態の確認対象車両が前方又は後方に存在する場合には、前方に存在する他車両との車間距離を広げる。車間距離変更部102は、自車両に対して未確認状態の確認対象車両が左方に存在する場合には、左方に存在する確認対象車両との車間距離を広げる。車間距離変更部102は、自車両に対して未確認状態の確認対象車両が右方に存在する場合には、右方に存在する確認対象車両との車間距離を広げる。
未確認状態である確認対象車両が自車両に衝突する可能性は、確認済状態である確認対象車両が自車両に衝突する可能性よりも高い。未確認状態である確認対象車両が存在する方向に応じて車間距離を変更することで、未確認状態である確認対象車両が自車両に接近した場合にも回避の余地を広げることができ、衝突回避できる可能性を高めることができる。
本実施形態において、車間距離変更部102は、自動運転状態が未確認状態である場合であって、自車両に対して確認対象車両が相対的に所定速度以上で近づく場合に、確認対象車両が近づく方向に応じて車間距離を広げることができる。
未確認状態である確認対象車両は自車両に衝突する可能性が確認済状態である確認対象車両よりも高く、未確認状態である確認対象車両が相対的に所定速度以上で近づく場合はその可能性がより高まる。高まった衝突可能性を低減するため、未確認状態である確認対象車両が近づく方向に応じて車間距離を広げることで、衝突回避するための制御を実行する余地を広げることができる。車間距離変更部102は、自車両に対して未確認状態且つ相対的高速度走行中の確認対象車両が後方に存在する場合には、前方に存在する他車両との車間距離を広げる。車間距離変更部102は、自車両に対して未確認状態且つ相対的高速度走行中の確認対象車両が左方に存在する場合には、左方に存在する確認対象車両との車間距離を広げる。車間距離変更部102は、自車両に対して未確認状態且つ相対的高速度走行中の確認対象車両が右方に存在する場合には、右方に存在する確認対象車両との車間距離を広げる。
本実施形態において、車間距離変更部102は、自動運転状態が未確認状態であり、自車両に対して確認対象車両が存在する方向が前方又は後方である場合には、前方の車間距離を広げ、自動運転状態が未確認状態であり、自車両に対して確認対象車両が存在する方向が左方又は右方である場合には、左右方向の車間距離を広げる。
未確認状態である確認対象車両は自車両に衝突する可能性が高いので、確認対象車両が存在する方向が前方又は後方である場合には、前方の車間距離を広げることで衝突回避するための制御を実行する余地を広げることができる。確認対象車両が存在する方向が左方又は右方である場合には、左右方向の車間距離を広げることで衝突回避するための制御を実行する余地を広げることができる。前方に正常に機能発揮をしている自動運転車両が他車両として存在していれば、自車両と連携して衝突回避行動をとることができる。例えば、後方から高速で接近する車両がいれば、前方の自動運転車両が回避のための加速や操舵を行い、自車両がそれに追随して加速や操舵を行うことで衝突回避することができる。しかしながら、自動運転車両であっても自動運転機能を発揮できていない車両や、そもそも自動運転機能を搭載していない車両が自車両の前方に存在する場合は、連携した衝突回避行動をとることができない。そこで、確認対象車両の存在方向に応じて車間距離を変更し、車間距離を拡張することで、自車両のみでの衝突回避行動をとる余地を広げることができる。
本実施形態において、車間距離変更部102は、自動運転状態が未確認状態であり、自車両が確認対象車両に対して所定の位置関係になる場合には、その位置関係を変更する。例えば、自車両が確認対象車両の死角領域に入っている場合など、確認対象車両が自動運転車両でない場合や相応の危険性がある場合には、位置関係を変更して死角領域から脱することで安全性を高めることができる。
本実施形態において、車間距離変更部102は、自車両が停止する場合に前方の車間距離を広げることができる。自車両が停止している状態になると、接近する他車両との速度差が大きくなり衝突する可能性が高まる。そこで、自車両が停止する場合に前方の車間距離を広げることで、衝突回避するための制御を実行する余地を広げることができる。
本実施形態において、車間距離変更部102は、前方の他車両に車間距離を広げるように要請することができる。前方の他車両に車間距離を広げるように要請することで、自車両を後退させることなく車間距離を確保できる可能性が高まり、衝突回避するための制御を実行する余地を広げることができる。車間距離変更部102は、発信装置36を通じて他車両に車間距離を広げるように要請する情報を発信する。
本実施形態の走行制御装置10は、更に、自車両に他車両が所定の速度差以上で接近した場合に被害抑制制御を実行する被害抑制部103を備えている。被害抑制部103は、被害抑制制御として、自車両に他車両が衝突した場合に自車両や乗員への被害を抑制するように自車両の挙動を制御する。車間距離変更部102による制御によって周囲の他車両との車間距離が確保できているので、被害抑制部103はその車間距離を利用して被害抑制制御を実行することができる。
被害抑制部103は、被害抑制制御において乗員の乗車状況に応じて制動力を変更する。被害抑制部103は、乗員が乗車している場合は乗員への影響を極力抑制するように被害抑制制御を実行し、乗員が乗車していない場合は自車両へ加わる損傷を低減するように被害抑制制御を実行することができる。
本実施形態において、被害抑制部103は、自車両に乗員が乗っていない場合に、自車両に他車両が衝突する際に制動力を緩和する。被害抑制部103は、自車両に他車両が衝突する際に制動力を緩和することで、車間距離変更部が確保した車間距離を利用して自車両を移動させることができ、この移動によって他車両が衝突した衝撃を吸収することができる。
本実施形態において、被害抑制部103は、自車両に他車両が衝突した後に、制動力を徐々に増加させる。車間距離を利用して他車両が衝突した衝撃を吸収しつつ、制動力を徐々に増加させることで制動力による衝撃を緩和しつつ自車両を停止させることができる。被害抑制部103は衝突前から制動力を強化しても良い。車両ができるだけ動かないようにしておくことで、前方の他車両への玉突き事故を抑制できる。
本実施形態において、被害抑制部103は、被害抑制制御において自車両を加速させる。車間距離変更部102が確保した車間距離を利用し、自車両を加速させて他車両との衝突を回避することができ、他車両が衝突した場合でも受ける被害を低減することができる。
本実施形態において、被害抑制部103は、自車両に他車両が衝突すると予測される衝突予測箇所に応じて自車両が移動する方向を変更する。衝突予測箇所に応じて自車両が移動する方向を変更するので、例えば衝突予測箇所の近傍に乗員が乗車している場合には、衝突予測箇所とは異なる箇所に他車両が衝突するように自車両の移動方向を変更することができ、乗員への被害を低減することができる。
被害抑制部103は、被害抑制制御において、自車両に近づいてくる他車両の方向に応じた操舵を行う。自車両を加速させながら操舵することで、車間距離変更部102が確保した車間距離をより有効に活用して他車両が衝突する衝撃を緩和することができる。
本実施形態において、 被害抑制部103は、自車両が加速する方向に存在する他車両に対して移動を要請する情報を出力する。自車両が加速する方向に存在する他車両に対して移動を要請することで、車間距離をより多く確保することができ、加速による回避の余地を広げることができる。
本実施形態において、被害抑制部103は、自車両に他車両が衝突する前に乗員に通知する。乗員に衝突することを通知することで、乗員が身構えることができ、鞭打ち等の症状を緩和することができる。
続いて、図2を参照しながら走行制御装置10の動作について説明する。ステップS101では、車間距離変更部102が、道路や道路標識や信号機を含む周囲環境情報を取得する。ステップS101に続くステップS102では、運転状態取得部101が後方車両の自動運転状態を取得する。
ステップS102に続くステップS103では、車間距離変更部102が、自車両からみて全方向に他車両が存在するか否かを判断する。全方向に他車両が存在するとは、自車両の前後方向及び左右方向の4方向全てに他車両が存在することである。自車両からみて全方向に他車両が存在する場合(ステップS103でYES)は、ステップS104の処理に進み、自車両からみて全方向に他車両が存在しない場合(ステップS103でNO)は、ステップS111の処理に進む。
ステップS104では、運転状態取得部101が、自車両の周囲に通信不可車両が無いか有るかを判断する。自車両の周囲に通信不可車両が無ければ(ステップS104でYES)、ステップS105の処理に進み、自車両の周囲に通信不可車両が有れば(ステップS104でNO)、ステップS111の処理に進む。
ステップS105では、運転状態取得部101が、自車両の周囲に自動運転未確認車が無いか有るかを判断する。自動運転未確認車とは、自動運転機能を搭載していない車両、自動運転機能を搭載しているけれども正常に機能していない車両、自動運転機能を搭載しているけれども正常に機能していることを確認できない車両を含むものである。自車両の周囲に自動運転未確認車が無ければ(ステップS105でYES)、ステップS106の処理に進み、自車両の周囲に自動運転未確認車が有れば(ステップS105でNO)、ステップS111の処理に進む。
ステップS106では、運転状態取得部101が、自車両の周辺の車両情報を取得する。自車両の周辺の車両情報とは、自車両の周辺に存在する他車両の挙動を示す情報であって、進行方向や走行速度を含むものである。
ステップS106に続くステップS107では、衝突回避が予測できるか否かを判断する。衝突回避の予測は、一例として、他車両の進行方向が自車両と衝突する方向であり、他車両の走行速度が自車両の走行速度よりも高く、他車両と自車両との距離からみて衝突すると見込まれる場合に衝突回避できないものと予測する。衝突回避が予測できれば(ステップS106でYES)、ステップS108の処理に進み、衝突回避が予測できなければ(ステップS106でNO)、ステップS111の処理に進む。
ステップS108では、車間距離変更部102が、通常の車間距離を確保するための走行制御を実行する。ステップS108の処理が終了するとリターンする。
ステップS111では、車間距離変更部102が車間距離を確保する方向を判断する処理を実行する。ステップS111の処理は、ステップS103の判断処理でNOの場合であるので、前後左右いずれかに車両の無い方向が存在する場合である。ステップS111の処理は、ステップS104の判断処理でNOの場合であるので、周囲に通信不可の車両が存在している場合である。ステップS111の処理は、ステップS105の判断処理でNOの場合であるので、周囲に自動運転未確認車が存在している場合である。ステップS111の処理は、ステップS107の判断処理でNOの場合であるので、他車両と自車両とが衝突回避できないと予測される場合である。
この車間距離を確保する方向を判断する処理については、図3、図4及び図5を参照しながら説明する。図3のステップS131において、車間距離変更部102が、該当方向が前又は後であるか否かを判断する。該当方向とは、車両の無い方向、通信不可の車両が存在する方向、正常な自動運転車両ではない車両が存在する方向、自車両に衝突が予測される他車両が存在する方向、のいずれかの方向である。該当方向が前又は後である場合には、ステップS132の処理に進み、該当方向が前又は後でない場合には、ステップS133の処理に進む。
ステップS132において、車間距離変更部102が、車間距離を広げる方向を自車両の前方に設定する。図4に示される例では、自車両が他車両Aとの車間距離を広げる。
ステップS133において、車間距離変更部102が、左右いずれかの所定範囲内に他車両が存在しないか又は左右いずれの所定範囲内にも他車両が存在するかを判断する。図5に示される例では、自車両からみて左側の所定領域ARLには他車両が存在せず、自車両からみて右側の所定領域ARRには他車両が存在する。図5の状態は、自車両からみて左所定範囲内に他車両が存在せず、自車両からみて右所定範囲内に他車両が存在しているので、ステップS133の判断結果は、左右いずれかの所定範囲内に他車両が存在していないものとなる。左右いずれかの所定範囲内に他車両が存在していない場合には、ステップS134の処理に進む。左右いずれの所定範囲内に他車両が存在する場合には、ステップS135の処理に進む。
ステップS134では、車間距離変更部102が、他車両が存在していない方向に自車両を寄せる処理を実行する。図5の状態であれば、自車両を左側に寄せる処理を実行する。ステップS134の処理が終了すると、ステップS135の処理に進む。
ステップS135において、車間距離変更部102が、該当方向が左であるか否かを判断する。該当方向が左である場合には、ステップS136の処理に進み、該当方向が左でない場合には、ステップS137の処理に進む。
ステップS136において、車間距離変更部102が、車間距離を広げる方向を自車両の左方に設定する。図4に示される例では、自車両が他車両Bとの車間距離を広げる。図示されるように、自車両と他車両Bとの間にある車線との距離を広げてもよい。
ステップS137において、車間距離変更部102が、該当方向が右であるか否かを判断する。該当方向が右である場合には、ステップS138の処理に進み、該当方向が右でない場合には、ステップS139の処理に進む。
ステップS138において、車間距離変更部102が、車間距離を広げる方向を自車両の右方に設定する。ステップS138の処理が終了すると、ステップS139の処理に進む。
ステップS139において、車間距離変更部102が、該当する他車両に対して自車両が所定範囲内に入っているか否かを判断する。該当する他車両の所定範囲の考え方について、図6及び図7を参照しながら説明する。
図6において、自車両は、他車両Aの所定範囲ARAにも他車両Bの所定範囲ARBにも入っている。他車両Aの所定範囲ARAは、他車両Aの左側における死角領域となっている他車両Bの所定範囲ARBは、他車両Bの右側における死角領域となっている。
図7を参照しながら、死角領域について説明する。自車両の運転者は、前方を直接目視することができるので、自車両の前方には前方視界領域が形成される。自車両の運転者は、後方を直接目視することができないので、バックミラー及びサイドミラーを介して後方を確認する。サイドミラーによって確認ができる領域よりも外側は、運転者が前方を見ている限りにおいては死角であり、運転者が顔をそちらに向けて確認する必要がある。そこで本実施形態では、図7に示される右方死角領域及び左方死角領域を所定範囲とし、自車両が他車両の死角に入らないようにしている。または、死角に入っても、長時間死角に居続けないようにしている。例えば死角に入った状態で同じ速度で走ると長時間死角に入り続けることになるため、死角に入らないように位置関係を変える。混み合った道路において隣接レーンの車両に対し、自車両は死角に入っても、加減速により死角から入ったり出たりすることになる。その場合は死角からすぐに出る制御は行わない。所定の時間より死角滞在時間が長ければ死角から出る、短ければ制御しなくても良い。
図3に戻って説明を続ける。ステップS139において、該当する他車両に対して自車両が所定範囲内に入っていると判断すると、ステップS140の処理に進む。該当する他車両に対して自車両が所定範囲内に入っていないと判断すると、車間距離を確保する方向を判断する処理を終了して図2に戻る。
ステップS140では、車間距離変更部102が、他車両の死角である所定範囲から抜け出すように加速又は減速することを決定する。図6に示される例では、同一車線の前後に他車両がいないので、加速して離脱しても減速して離脱してもよい。ステップS140の処理が終了すると、車間距離を確保する方向を判断する処理を終了して図2に戻る。
図2に戻って説明を続ける。ステップS111の車間距離確保方向判断処理に続くステップS112では、車間距離変更部102が拡大した車間距離を確保する制御を実行する。ステップS112に続くステップS113では、前方を走行する他車両に車間距離を拡大する要請を発信する。この要請は、前方を走行する他車両に自車両よりも速度を上げてもらう要請としてもよい。速度を上げてもらう要請は、前方を走行する複数の他車両に発信してもよい。前方を走行する複数の他車両に要請を発信する場面としては、前方を走行する他車両との間に別の他車両が割り込んだ場面が想定される。後方の他車両との距離が開いて、衝突のおそれが無くなった場合には、要請を取り消す情報を発信してもよい。要請を取り消す情報は、後方の他車両との距離が開いてから所定の時間経過後に発信してもよい。
図2から図7を参照しながら説明した例は、自車両が走行中の場合を想定しているが、自車両が停車する場合に前方車両との車間距離を広げて停車するようにしてもよい。このような車間距離を拡大して停車する制御は、前方に停車中の他車両が自動運転車両でない場合や、前方に停車中の他車両が自動運転車両であるものの自動運転機能が機能していいない場合に特に有効である。
続いて、図8を参照しながら、拡大した車間距離を利用した衝突緩和制御について説明する。ステップS151では、車間距離変更部102が、道路や道路標識や信号機を含む周囲環境情報を取得する。ステップS151に続くステップS152では、運転状態取得部101が前方車両及び後方車両の自動運転状態を取得する。
ステップS152に続くステップS153では、後方車両との衝突が予測されるか否かを判断する。衝突の予測は、一例として、他車両の進行方向が自車両と衝突する方向であり、他車両の走行速度が自車両の走行速度よりも高く、他車両と自車両との距離からみて衝突すると見込まれる場合に衝突するものと予測する。衝突が予測できれば(ステップS153でYES)、ステップS154の処理に進み、衝突が予測できなければ(ステップS153でNO)、ステップS160の処理に進む。
ステップS154では、被害抑制部103が記録を開始する。被害抑制部103は、接近してくる他車両の情報や、自車両の内部や周囲の情報を記録する。
ステップS154に続くステップS155では、被害抑制部103が乗員へ報知する。被害抑制部103は、報知装置37に対して乗員へ音声通知を行うように指示情報を出力すること;報知装置37に対して乗員へランプや画面装置を報知動作させるように指示情報を出力すること;報知装置37に匂いによる警報動作させるように指示情報を出力することの少なくとも一つを実行する。この報知によって、乗員は他車両の衝突に備えた防御姿勢を取ることが可能になり、鞭打ちといった身体的な被害を軽減することができる。
ステップS155に続くステップS156では、被害抑制部103が周辺車両へ報知する。被害抑制部103は、発信装置36や外部表示装置38に対して周辺車両への報知動作を行うように指示情報を出力する。発信装置36は、周辺車両に衝突予告の情報を発信する。外部表示装置38は、周辺車両に衝突予告が伝わるようにハザードランプを点灯させたり、衝突予告の文言を表示させたりする。
ステップS156に続くステップS157では、車間距離変更部102が衝突予測時の車間距離を設定する。車間距離変更部102は、通常よりも短い車間距離を許容することで、自車両が前方の他車両に接近することを可能とする。この車間距離の設定により、自車両の退避動作の余地を広げることができる。
ステップS157に続くステップS158では、異常接近する他車両に対応する処理を実行する。異常接近する他車両に対応する処理については、図9を参照しながら説明する。
図9のステップS181では、車間距離変更部102が、移動方向及び操舵方向を判断する処理を実行する。移動方向及び操舵方向を判断する処理については、図12から図17を参照しながら説明する。
図12のステップS221では、被害抑制部103が、他車両が自車両に接触する部位を予測する。ステップS221に続くステップS222では、接触すると予測される部位が前方か否かを判断する。接触すると予想される部位が前方であれば(ステップS222でYES)、ステップS223の処理に進む。接触すると予想される部位が前方でなければ(ステップS222でNO)、図16のステップS241に進む。
ステップS223では、車間距離変更部102が、自車両よりも後方にいる他車両に移動を要請する情報を発信する。ステップS223に続くステップS224では、被害抑制部103が、自車両が後方移動可能か否かを判断する。自車両が後方移動可能であれば(ステップS224でYES)、ステップS225の処理に進む。自車両が後方移動可能でなければ(ステップS224でNO)、ステップS226の処理に進む。
ステップS225では、被害抑制部103が、自車両を後方に加速させることを決定する。ステップS226では、被害抑制部103が、自車両を前方に加速させることを決定する。
ステップS225及びステップS226に続くステップS227では、被害抑制部103が、接近してくる他車両が進行する方向に対して、自車両が操舵することによって描く回転円弧が接するか、接するに極力近づく回転円弧を描くように操舵することを決定する。具体的には、接近してくる他車両が左後方から接近してくる場合は右側に操舵(ステアリングを時計回りに回転する操舵と同じ方向)し、接近してくる他車両が右後方から接近してくる場合は左側に操舵(ステアリングを反時計回りに回転する操舵と同じ方向)することを決定する。
図18に示される例では、自車両の前方に他車両Bが衝突すると予測される場合であって、後方に移動可能な状態を示している。この場合は、後方に加速することを決定する。他車両Bは、左後方から接近してくるので、右側に操舵(ステアリングを時計回りに回転する操舵と同じ方向)する。後方に移動不可の場合は前方に加速することになるが、この場合も操舵方向は後方に加速する場合と同じである。
図19に示されるように、左側方から自車両の前方に他車両Bが衝突すると予測される場合にも、後方に加速することを決定する。自車両の進行方向に対する他車両Bの進行角度が90度に近い場合であっても、右側に操舵(ステアリングを時計回りに回転する操舵と同じ方向)する。
ステップS227の同方向操舵処理の具体的な一例について、図13を参照しながら説明する。ステップS231では、被害抑制部103が、接近車両と同方向に操舵可能か否かを判断する。上記したように接近車両と同方向に操舵可能であれば、ステップS232の処理に進む。接近車両と同方向に操舵可能でなければ、ステップS233の処理に進む。ステップS232では、上記したように接近車両と同方向に操舵することを決定する。
ステップS233では、被害抑制部103が、操舵可能方向があるか否かを判断する。接近車両と同方向に操舵できない場合であっても、その他の方向に操舵可能であれば操舵可能方向があると判断する。
図14に示される例では、自車両は前方の他車両Aがいるため前方には移動できず、後方にのみ移動できる。右後方から接近する接近車両Cの進行方向と同方向に操舵しようとすると、他車両Dの存在によって自車両は右側に操舵(ステアリングを時計回りに回転する操舵)できない。この場合には、被害抑制部103が、左側に操舵可能方向があると判断する。図15に示される例では、自車両は後方の他車両Bがいるため後方には移動できず、前方にのみ移動できる。右後方から接近する接近車両Cの進行方向と同方向に操舵しようとすると、他車両Dの存在によって自車両は左側に操舵(ステアリングを反時計回りに回転する操舵)できない。この場合には、被害抑制部103が、右側に操舵可能方向があると判断する。
ステップS233において、操舵可能方向があると判断するとステップS234の処理に進み、操舵可能方向が無いと判断するとステップS236の処理に進む。
ステップS234では、被害抑制部103が、操舵可能方向に操舵する前提で、自車両が加速して衝突を回避できるか否かを判断する。
図14に示される例では、自車両が左側に操舵しながら後方に加速することで接近車両Cとの衝突が回避できるか否かを、自車両と接近車両Cとの位置関係や、接近車両Cの速度、自車両の加速可能な速度を総合的に勘案して判断する。図15に示される例では、自車両が右側に操舵しながら前方に加速することで接近車両Cとの衝突が回避できるか否かを、自車両と接近車両Cとの位置関係や、接近車両Cの速度、自車両の加速可能な速度を総合的に勘案して判断する。
ステップS234において、加速により衝突回避可能であると判断するとステップS235の処理に進み、加速により衝突回避可能ではないと判断するとステップS236の処理に進む。
ステップS235では、被害抑制部103が、操舵可能な方向に操舵し、加速する個を決定する。ステップS235の処理が終了すると、同方向操舵処理を終了して図12の処理に戻る。
ステップS236では、被害抑制部103が、道なりに加速することを決定する。図14に示される例において、接近車両Cの進行方向と逆方向に操舵しながら後方に加速し、衝突回避ができない場合は、操舵せずに又は道なりに後退する場合よりも衝突の衝撃が大きくなる。図15に示される例において、接近車両Cの進行方向と逆方向に操舵しながら前方に加速し、衝突回避ができない場合は、操舵せずに又は道なりに前進する場合よりも衝突の衝撃が大きくなる。そこで、被害抑制部103は、道なりに加速することを決定する。ステップS236の処理が終了すると、同方向操舵処理を終了して図12の処理に戻る。
図12のステップS227の処理が終了すると、移動操舵方向判断処理が完了し、図9のステップS182の処理に進む。
図12のステップS222でNOの場合、上記したように図16のステップS241に進む。図16のステップS241では、被害抑制部103が、自車両を前方に加速させることを決定する。
ステップS241に続くステップS242では、被害抑制部103が、左右双方の隣接レーン(左右いずれかにしかなければ存在する方の隣接レーン)を走行する他車両の情報を取得する。
ステップS242に続くステップS243では、被害抑制部103が、他車両が存在していない他車両不存在領域が周辺にあるか否かを判断する。他車両不存在領域が周辺にあれば(ステップS243でYES)、ステップS244の処理に進む。他車両不存在領域が周辺になければ(ステップS243でNO)、ステップS245の処理に進む。
ステップS244では、被害抑制部103が、他車両不存在領域に向けて操舵することを決定する。ステップS244の処理が終了すると、移動操舵方向判断処理が完了し、図9のステップS182の処理に進む。
ステップS245では、被害抑制部103が、後方から接近してくる他車両の進行方向と自車両の進行方向との角度である接近車両角度が、角度閾値2よりも小さいか否かを判断する。角度閾値2は、自車両と接近してくる他車両とが同方向に進行していると見做せるか否かの閾値である。
接近車両角度が角度閾値2よりも小さい場合(ステップS245でYES)、ステップS246の処理に進む。接近車両角度が角度閾値2よりも小さくない場合(ステップS245でNO)、図17のステップS261に進む。
ステップS246では、被害抑制部103が、自車両の進行方向と後方から接近してくる他車両の進行方向との左右ずれ量が所定以上であるか否かを判断する。左右ずれ量が所定以上とは、自車両に対して他車両が右側又は左側に半分以上偏って衝突する可能性がある場合である。左右ずれ量が所定以上であれば(ステップS246でYES)、ステップS247の処理に進む。左右ずれ量が所定以上でなければ(ステップS246でNO)、ステップS248の処理に進む。
ステップS247では、被害抑制部103が、左右ずれとは逆方向に操舵することを決定する。図20に示されるように、破線に沿って進行する他車両Bが後方から接近すると、自車両の進行方向に向かって左後方に衝突する可能性が高いので、操舵は逆方向である右側に行う。一方、一点鎖線に沿って進行する他車両Bが後方から接近すると、自車両の進行方向に向かって右後方に衝突する可能性が高いので、操舵は逆方向である左側に行う。
ステップS248では、被害抑制部103が、操舵の変更をせずに前方の他車両を避けるような方向に操舵方向を決定する。ステップS247,248の処理が終了すると、移動操舵方向判断処理を完了し、図9のステップS182の処理に進む。
図17のステップS261では、被害抑制部103が、後方から接近してくる他車両の進行方向と自車両の進行方向との角度である接近車両角度が、角度閾値3よりも小さいか否かを判断する。角度閾値3は、退避する際に接近してくる他車両と逆方向に操舵すべきか同方向に操舵すべきかの閾値である。
後方から接近してくる他車両の進行方向と自車両の進行方向との角度である接近車両角度が角度閾値3よりも小さい場合(ステップS261でYES)、ステップS262の処理に進む。後方から接近してくる他車両の進行方向と自車両の進行方向との角度である接近車両角度が角度閾値3よりも小さくない場合(ステップS261でNO)、ステップS263の処理に進む。
ステップS262では、被害抑制部103が、接近してくる他車両と逆方向に操舵することを決定する。ステップS263では、被害抑制部103が、接近してくる他車両と同方向に操舵することを決定する。
図21に示される例は、接近車両角度が角度閾値3よりも小さく、退避する際に接近してくる他車両と逆方向に操舵すべき場合の例である。逆方向への操舵とは、他車両の進行方向から自車両の進行方向がより速く離隔する方向への操舵である。図21に示される例の場合、他車両Bが左後方から接近してくるので、自車両が右方向に操舵すると自車両の進行方向が他車両Bの進行方向に近づいてしまうことになる。そこで、自車両を左方向に操舵することで、自車両の進行方向を他車両Bの進行方向から離隔させる。
図22に示される例は、接近車両角度が角度閾値2よりも大きく、退避する際に接近してくる他車両と同方向に操舵すべき場合の例である。同方向への操舵とは、他車両の進行方向に自車両の進行方向がより速く近づく方向への操舵である。図22に示される例の場合、他車両Bが左側方から接近してくるので、自車両が左方向に操舵すると自車両の進行方向が他車両Bの進行方向から離隔してしまうことになる。そこで、自車両を右方向に操舵することで、自車両の進行方向を他車両Bの進行方向へ近づける。
ステップS262及びステップS263の処理が終了すると、移動操舵方向判断処理を完了し、図9のステップS182の処理に進む。
ステップS182では、被害抑制部103が、自車両の進行方向にいる他車両に移動を要請する情報を発信する。自車両が前方に進行し加速する場合は前方の他車両に移動を要請し、自車両が後方に進行し加速する場合は後方の他車両に移動を要請する。
ステップS182に続くステップS183では、被害抑制部103が、自車両から対象までの距離が距離閾値1より大きいか否かを判断する。自車両から対象までの距離とは、自車両と他車両や障害物までの距離である。距離閾値1は、自車両が加速して回避するのに必要な距離に相当する閾値として設定することができる。距離閾値1は、自車両が制動力を緩和して他車両と衝突した後に、制動力を増加させて停止するのに必要な距離に相当する閾値として設定することもできる。
距離閾値1は、接近してくる他車両のタイプ、重量、速度差に応じて変更することもできる。例えば、他車両のタイプとして、トラックやバスであれば距離閾値1を大きくすることができる。他車両の重量の情報が車車間通信等で取得できる場合は、自車両と衝突した後に停止するまでの距離と自車両の速度から、衝突時の自車両の予定速度を算出し、この算出結果に基づいて距離閾値1を設定することもできる。また、例えば、他車両と自車両との速度差に応じて、距離閾値1を設定することもできる。
自車両から対象までの距離が距離閾値1より大きい場合(ステップS183でYES)、ステップS184の処理に進む。自車両から対象までの距離が距離閾値1より大きくない場合(ステップS183でNO)、ステップS186の処理に進む。
ステップS184では、被害抑制部103が、自車両が乗員無しの状態か否かを判断する。自車両が乗員無しの状態であれば(ステップS184でYES)、ステップS185の処理に進む。自車両が乗員無しの状態でなければ(ステップS184でNO)、ステップS186の処理に進む。
ステップS185では、被害抑制部103が、制動力を緩和する。ステップS186では、被害抑制部103が、制動力を強化する。ステップS185及びステップS186の処理が終了すると、異常接近する他車両に対応する処理を終了し、図8のステップS159の処理に進む。
異常接近する他車両に対応する処理の別例について、図10を参照しながら説明する。 図10のステップS201では、車間距離変更部102が、移動方向及び操舵方向を判断する処理を実行する。移動方向及び操舵方向を判断する処理については、図12から図17を参照しながら説明したので、その説明を省略する。
ステップS202では、被害抑制部103が、自車両の進行方向にいる他車両に移動を要請する情報を発信する。自車両が前方に進行し加速する場合は前方の他車両に移動を要請し、自車両が後方に進行し加速する場合は後方の他車両に移動を要請する。
ステップS202に続くステップS203では、被害抑制部103が、自車両から対象までの距離が距離閾値1より大きいか否かを判断する。自車両から対象までの距離とは、自車両と他車両や障害物までの距離である。距離閾値1については説明済であるので、その説明を省略する。
自車両から対象までの距離が距離閾値1より大きい場合(ステップS203でYES)、ステップS204の処理に進む。自車両から対象までの距離が距離閾値1より大きくない場合(ステップS203でNO)、ステップS205の処理に進む。
ステップS204では、被害抑制部103が、自車両を加速させる。自車両の加速度合いを決定する考え方について、図11を参照しながら説明する。図11の(A)は、自車両と接近してくる他車両との速度差である相対速度を示している。相対速度が正の値であれば他車両が接近してくる状態であり、相対速度が負の値であれば他車両が離れていく状態である。図11の(B)は、自車両と接近してくる他車両との距離を示している。距離が0になると、他車両が自車両に衝突することになる。
図11に実線で示されている例は、自車両と他車両との速度差が比較的大きい場合の例である。図11の(A)に実線で示されている通り、時刻t5までは自車両を急加速させており、時刻t4において相対速度が0となっているので、時刻t4以降において自車両の速度が他車両を上回ることになる。時刻t5から時刻t6までは相対速度を維持しているので、自車両の速度が他車両を上回る状態を維持している。その結果、図11の(B)に実線で示されている通り、時刻t4から時刻t6まで自車両と他車両との距離を広げることができる。
図11に破線で示されている例は、自車両と他車両との速度差が比較的小さい場合の例である。図11の(A)に破線で示されている通り、時刻t4までは自車両を実線の例よりは緩やかに加速させており、時刻t3において相対速度が0となっているので、時刻t3以降において自車両の速度が他車両を上回ることになる。時刻t4から時刻t6までは相対速度を維持しているので、自車両の速度が他車両を上回る状態を維持している。その結果、図11の(B)に破線で示されている通り、時刻t3から時刻t6まで自車両と他車両との距離を広げることができる。
図11に一点鎖線で示されている例は、速度差によらずに常に同じ加速度を設定する例であり、実線の例と同様の加速度を設定している例である。相対速度は、スタート時点において破線の例と同じものとしている。
図10に戻って説明を続ける。ステップS205では、被害抑制部103が、制動力を強化する。ステップS204及びステップS205の処理が終了すると、異常接近する他車両に対応する処理を終了し、図8のステップS159の処理に進む。
ステップS159では、被害抑制部103が、ステップS227,S244,S247,S248,S262,S263において決定された方向に操舵する。ステップS160では、通常制御を継続する。ステップS159及びステップS160の処理が終了すると、衝突緩和制御を終了し、リターンする。
続いて、図23を参照しながら、自車両を加速させた後に制動力を制御する態様について説明する。ステップS301では、運転状態取得部101が自車両の周辺に存在する他車両の情報を取得する。運転状態取得部101は、自車両と前方の他車両との間の距離を示す情報を取得する。
ステップS301に続くステップS302では、被害抑制部103が、自車両が衝突したか否かを示す衝突情報を取得する。ステップS302に続くステップS303では、被害抑制部103が、自車両が衝突したか否かを判断する。自車両が衝突していない場合(ステップS303でYES)、ステップS304の処理に進む。自車両が衝突している場合(ステップS303でNO)、ステップS307の処理に進む。
ステップS304では、被害抑制部103が、前方の他車両の手前で自車両が停車可能か否かを判断する。この判断は、自車両と前方の他車両との距離が停車可能な距離よりも長いか否かで判断することができる。
他車両の手前で自車両が停車可能であれば(ステップS304でYES)、ステップS305の処理に進む。他車両の手前で停車不可能であれば(ステップS304でNO)、ステップS306の処理に進む。
ステップS305では、被害抑制部103が制動力をかけて自車両を停止させる。ステップS306では、被害抑制部103が自車両を加速させる。ステップS307では、被害抑制部103が制動力を制御する。ステップS305,S306,S307の処理が終了するとリターンする。このように制動力と加速を組み合わせることで、様々な被害抑制が可能となる。
図24に示される例では、ステップS306の加速後に衝突し、ステップS307の制動力制御で制動力を最大化している。加速することで後方から他車両に衝突される際の衝撃を緩和することができる。加速と制動力最大化との組み合わせにより、玉突き事故を防ぎ、前方の他車両に衝突した場合の衝撃を緩和することができる。
図25に示される例では、後方から他車両に衝突された後に制動力を徐々に上げていっている。制動力の上昇度合いは、前方の他車両との距離に応じて調整することができる。制動力の急変を抑制することができるので、揺れ戻しの衝撃を緩和することができる。
図26に示される例では、ステップS306の加速により後方の他車両Bとの衝突を回避し、ステップS307の制動により前方の他車両Aとの衝突を回避している。図27に示される例は、ステップS306の加速により後方の他車両Bとの衝突を回避する動作をしたものの、衝突が回避できない場合の例である。後方の他車両Bの速度に近づけ、衝突の衝撃を緩和させる。図26に示される例では、後方の他車両Bの速度に達する前に衝突しているが、後方の他車両Bの速度と一致するまで加速させることが望ましい。衝突後に自車両と他車両Bとが接触状態で走行し、衝突と同時にステップS306による制動をかけている。
図28に示される例は、ステップS306の加速により後方の他車両Bとの衝突を回避する動作をしたものの、衝突が回避できない場合の別例である。ステップS306の加速により衝突回避と衝突時の衝撃の軽減を図っているが、もし後方の他車両Bが自車両との衝突を回避できた場合、前方の他車両Aと衝突する可能性がある。それを避けるため、自車の可能な制動距離に応じて前方の他車両Aと衝突しない距離で制動力をかける。図28に示される例では、衝突後に自車両と他車両Bとが接触状態で走行し、衝突と同時にステップS306による制動をかけている。もし後方の他車両Bとの衝突を回避できた場合には、自車両は前方の他車両Aに衝突することなく停止することができる。前述のどちらの場合においても、前方の他車両Aに対して衝突を避けるように要請する情報を発信したり、ホーンを鳴らしたりしてもよい。他車両への衝突を避ける他に停止線や交差点、踏切、陥没した道路や工事等の障害物への侵入、壁等の障害物との衝突を避けるために制動力をかける。
図29に示される例は、ステップS306の加速により後方の他車両Bとの衝突を回避する動作をしたものの、衝突が回避できない場合の別例である。ステップS306の加速により衝突回避と後方の他車両Bの速度に近づけることで衝突時の衝撃の軽減を図ったものの衝突してしまった場合であって、前方の他車両Aとの間に十分な車間距離がある場合に、徐々に制動力を増加させる。衝突後の制動力の効き具合は、他車両Bの重量も影響するため、衝突後の制動力と速度との関係から制動力を調整してもよい。
図30に示される例は、ステップS306の加速により後方の他車両Bとの衝突を回避する動作をしたものの、衝突が回避できない場合の別例である。ステップS306の加速により衝突が避けられないと判断した場合に、前方の他車両Aとの距離、後方の他車両Bとの速度差に応じて、自車両を前方の他車両Aの後ろで停車可能な範囲で決められたパターンで加減速し、前方の他車両Aに衝突することなく止まる制御をする。図20に示される例では所定の速度まで加速し、一定速度を保った後減速し、前方の他車両Aの後方に停まる制御をしている。衝突を検知したら複雑な処理が無く、早い速度で回避処理ができ、一定速で走行することで、図28に示される例のパターンより急制動によるスリップが起きにくく、衝突タイミングが推定より遅れても、後方の他車両Bとの衝突を回避できた場合に確実に前方の他車両Aに衝突しないように停車できる。図30に示される例では加減速パターンの途中で衝突後に自車両と他車両Bとが接触状態で走行し、衝突と同時にステップS306による制動をかけている。
続いて、図31を参照しながら、自動運転車として先頭に位置し、その前方には自動運転車がいない場合の走行制御装置10の動作について説明する。ステップS321では、車間距離変更部102が、道路や道路標識や信号機を含む周囲環境情報を取得する。ステップS321に続くステップS322では、運転状態取得部101が前方車両の情報を取得する。前方車両の情報とは、前方に他車両がいるか否か、前方に他車両がいる場合は自動運転車であるか否かを含む情報である。
ステップS322に続くステップS323では、車間距離変更部102が、前方に他車両が存在するか否かを判断する。自車両からみて全方向に他車両が存在しない場合(ステップS323でYES)、ステップS324の処理に進む。自車両からみて前方に他車両が存在する場合(ステップS323でNO)、ステップS325の処理に進む。
ステップS324では、車間距離変更部102が、通常車間距離を確保する。ステップS325では、車間距離変更部102が、前方の他車両が正常状態の自動運転車両であるか否かを判断する。
前方の他車両が正常状態の自動運転車両でない場合(ステップS325でYES)、ステップS326の処理に進む。 前方の他車両が正常状態の自動運転車両である場合(ステップS325でNO)、ステップS327の処理に進む。
ステップS326では、車間距離変更部102が前方の他車両との車間距離を広く確保する。ステップS327では、図2を参照しながら説明した車間距離確保制御を実行する。ステップS326及びステップS327の処理が終了するとリターンする。
尚、障害物又は前方に他車両がいない状態や、前方の他車両までの距離が長い状態で、後方から他車両が接近してきた場合、加速余地があれば、加速して衝突時の衝撃を緩和し、その後制動力をかけることもできる。加速から制動により衝突が回避できる場合、接近してくる車両とは別の他の車両と衝突しないように制御する。自車両の進行方向と衝突しようと迫る他車両が同じ車線上にあり、左右が塞がれている場合は、自車両は走れるところまで走ることができる。その間、左右の車線に退避できるならば車線変更して接近してくる他車両を回避する。
例えば、自車両が低速から高速に車線変更した場合、後方から自車両より高速で他車両が接近してくる場合。自車両の前方が空いていれば加速し、行ける所まで前進する。左右の車線で空いているところがあれば、空いている所に退避することができる。加速した車両は回避した後、回避後の進行方向に車両が無い場合には接近車両から回避し続けると、接近車両から追われる状態になる可能性があるが、隣接車線が空いていれば、隣接する車線や路肩に退避しても良い。また、交差点における回避では交差点を横切ることは危険であるため、停止線を越えて隣接する車線や路肩に退避しても良い。
一時的に後方から接近する他車両の車速を自車両が上回っても良い。主に、自車両が回避できる距離が長く、後方車両が居眠り等でブレーキを踏まない場合が想定される。レーンキープが働くと車線内にいる限り減速せずに追ってくる可能性がある。距離が一時的には離れる。その間隣接車線に回避等できればよいができない場合は速度を減速して、後方から接近する他車両との距離を徐々に縮めて衝突する。その際、一時的に減速して衝突位置を調節しても良い。減速して他車両との距離を縮め、他車両の車速を上回らない範囲に自車両の車速が収まるように加速して衝突してもよい。衝突位置を調整することで、前方の他車両から十分離れた位置で、後方から接近する他車両の車速に合わせて衝突し、減速できる。バックしてもよい。
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。