JP2019116917A - ハブユニット軸受の製造方法 - Google Patents

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ナンシー尚子 横山
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Abstract

【課題】転動体として円すいころを備えたハブユニット軸受に関して、完成後の予圧の適性判断を精度良く行える製造方法を実現する。【解決手段】かしめ型23を、主軸αを中心として回転させると共に、ハブ輪11zおよび内輪12a、12bに対して外輪2を回転させながら、かしめ型23を円筒部14に押し付けた状態で、かしめ型23を下降させることにより、円筒部14を、概ね目標の最終形状を有するかしめ部15に成形する、粗かしめ工程を行う。その後、かしめ型23の下降を停止させ、かしめ型23の回転と外輪2の回転とを継続することにより、かしめ部15の形状を、目標の最終形状に仕上げる、仕上かしめ工程を行う。仕上かしめ工程での外輪2の回転トルクを測定し、該測定した回転トルクを利用して、完成後のハブユニット軸受1の予圧の適正判断を行う。【選択図】図2

Description

本発明は、自動車の車輪を懸架装置に対して回転可能に支持するためのハブユニット軸受の製造方法に関する。
一般に、小型乗用車や中型乗用車などの比較的重量が嵩まない自動車用のハブユニット軸受は、転動体として玉を備えており、大型乗用車やトラックなどの比較的重量が嵩む自動車用のハブユニット軸受は、転動体として円すいころを備えている。
何れのハブユニット軸受も、通常、予圧を付与された状態で使用されるが、予圧が適正範囲に収まっていないと、剛性や寿命の確保が不十分になったり、低トルク化を十分に図れなくなったりするなどの不都合を生じる。また、これらの不都合は、自動車の操縦安定性や乗り心地性などに影響を及ぼす場合がある。このため、ハブユニット軸受では、予圧が適正範囲に収まっていることが求められる。
一方、特開2006−342877号公報には、転動体として円すいころを備えたハブユニット軸受の予圧管理を行うために、このハブユニット軸受の組立時に、負の軸受アキシアル隙間を測定し、測定した負の軸受アキシアル隙間が所定範囲に収まっているか否かを確認する技術が記載されている。
特開2006−342877号公報
しかしながら、特開2006−342877号公報に記載された技術には、次のような問題がある。
すなわち、上述のように負の軸受アキシアル隙間を測定した後、ハブ輪の軸方向端部に設けられた円筒部を径方向外方に塑性変形させてなるかしめ部を形成し、このかしめ部により、ハブ輪に外嵌された内輪の軸方向端面を抑え付けると、この抑え付けの力によって、負の軸受アキシアル隙間が変化する(具体的には、負の軸受アキシアル隙間の絶対値が増大する)。また、この際の変化量(増大量)は、かしめ部を形成する前の円筒部の寸法や形状のばらつきに起因して、必ずしも一定にはならず、比較的大きくばらつく場合がある。したがって、このような場合には、上述のように測定した負の軸受アキシアル隙間に基づいて、完成後のハブユニット軸受の予圧の適性判断を精度良く行う(信頼性の高い適性判断を行う)ことができない。
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、転動体として円すいころを備えたハブユニット軸受に関して、完成後の予圧の適性判断を精度良く行える製造方法を実現することにある。
本発明の製造対象となるハブユニット軸受は、外輪と、ハブと、複数個の円すいころとを備えている。
前記外輪は、内周面に複列の外輪軌道を有している。
前記ハブは、外周面に複列の内輪軌道を有している。
前記複数個の円すいころは、前記複列の内輪軌道と前記複列の外輪軌道との間に配置されている。
前記ハブは、ハブ輪と、前記複列の内輪軌道のうちの軸方向一方側の内輪軌道が外周面に設けられた内輪とを備え、かつ、前記ハブ輪に前記内輪を外嵌すると共に、前記ハブ輪の軸方向一方側の端部に設けられた円筒部を径方向外方に塑性変形させてなるかしめ部により、前記内輪の軸方向一方側の端面を抑え付けている。
また、該抑え付けの力によって変化する予圧が付与されている。
本発明のハブユニット軸受の製造方法は、かしめ前組立工程と、粗かしめ工程と、仕上かしめ工程と、判断工程とを備えている。
かしめ前組立工程では、前記かしめ部を形成する前の前記ハブ輪に前記内輪を外嵌すると共に、前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に前記複数個の円すいころを配置する。
前記粗かしめ工程では、前記かしめ前組立工程の終了後、前記ハブ輪の軸方向一方側に配置され、かつ、前記ハブ輪の中心軸に対して傾斜した自転軸を中心とする自転を自在に設けられたかしめ型を、前記ハブ輪の中心軸を中心として回転(揺動回転)させると共に、前記ハブ輪および前記内輪に対して前記外輪を回転させながら、前記かしめ型を前記円筒部に押し付けた状態で、前記ハブ輪の軸方向に関して前記ハブ輪と前記かしめ型とを互いに近づける方向に相対移動させることにより、前記円筒部を、概ね目標の最終形状を有する前記かしめ部に成形する。
前記仕上かしめ工程では、前記粗かしめ工程の終了後、前記ハブ輪の軸方向に関する前記ハブ輪と前記かしめ型との相対位置を、前記粗かしめ工程の終了時の位置に保持したまま、前記ハブ輪の中心軸を中心とする前記かしめ型の回転(揺動回転)と、前記ハブ輪および前記内輪に対する前記外輪の回転とを継続することにより、前記かしめ部の形状を、前記目標の最終形状に仕上げる。
前記判断工程では、前記仕上かしめ工程での前記外輪の回転トルクを測定し、該測定した回転トルクを利用して、完成後のハブユニット軸受の予圧の適性判断を行う。
本発明のハブユニット軸受の製造方法では、次のような構成を採用することができる。
すなわち、前記判断工程において、前記仕上かしめ工程で測定した前記外輪の回転トルクが所定範囲に収まっている場合にのみ、完成後のハブユニット軸受の予圧が適正であると判断する。
本発明のハブユニット軸受の製造方法では、次のような構成を採用することができる。
すなわち、ハブユニット軸受が、前記外輪と前記ハブとの間に組み付けられた摺接型のシール装置を備えている。
前記仕上かしめ工程の終了後、前記かしめ部から前記かしめ型を退避させた状態で、前記外輪の回転を継続させる、かしめ後工程を備えている。
前記かしめ前組立工程において、前記外輪と前記ハブとの間に前記シール装置を組み付ける。
前記判断工程において、前記かしめ後工程での前記外輪の回転トルクを測定し、かつ、前記仕上かしめ工程で測定した前記外輪の回転トルクと、前記かしめ後工程で測定した前記外輪の回転トルクとの差を求め、該差が所定範囲に収まっている場合にのみ、完成後のハブユニット軸受の予圧が適正であると判断する。
本発明のハブユニット軸受の製造方法によれば、転動体として円すいころを備えたハブユニット軸受に関して、完成後の予圧の適性判断を精度良く行える。
図1は、本発明の実施の形態の第1例の対象となるハブユニット軸受を示す断面図である。 図2(a)および図2(b)は、本発明の実施の形態の第1例の対象となるハブユニット軸受に関して、かしめ部の形成作業を工程順に示す断面図である。 図3は、本発明の実施の形態の第1例に関して、かしめ部を形成する際のかしめ型のストロークSと回転トルクTAと油圧Pとの、それぞれの時間変化を例示したグラフである。 図4は、本発明の実施の形態の第1例に関して、かしめ部を形成する際の外輪の回転トルクの時間変化を例示したグラフである。
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例について、図1〜図4を用いて説明する。
図1は、本例の製造対象となるハブユニット軸受1を示している。このハブユニット軸受1は、従動輪用であり、外輪2と、ハブ3と、複数個の円すいころ4とを備えている。
なお、ハブユニット軸受1に関して、軸方向外側は、車両への組み付け状態で車体の幅方向外側となる、図1の左側および図2の下側であり、軸方向内側は、車両への組み付け状態で車体の幅方向中央側となる、図1の右側および図2の上側である。
外輪2は、内周面に複列の外輪軌道5a、5bを有し、かつ、軸方向中間部に、径方向外方に突出した静止フランジ6を有している。複列の外輪軌道5a、5bはそれぞれ、軸方向に関して互いに離れる方向に向かう程、直径が大きくなる方向に傾斜した部分円すい面状である。静止フランジ6は、円周方向複数箇所に取付孔7を有している。外輪2は、取付孔7に挿通あるいは螺合されたボルトを用いて、懸架装置のナックルに結合固定される。
ハブ3は、外輪2の内径側に、この外輪2と同軸に配置されており、外周面に複列の内輪軌道8a、8bを有し、かつ、外輪2の軸方向外端面よりも軸方向外方に突出した軸方向外側部に、径方向外方に突出した回転フランジ9を有している。複列の内輪軌道8a、8bはそれぞれ、軸方向に関して互いに離れる方向に向かう程直径が大きくなる方向に傾斜した部分円すい面状である。回転フランジ9は、円周方向複数箇所に取付孔10を有している。車輪および制動用回転体は、取付孔10に圧入固定あるいは螺合されたハブボルトを用いて、回転フランジ9に支持固定される。
円すいころ4は、複列の外輪軌道5a、5bと複列の内輪軌道8a、8bとの間に、それぞれの列ごとに複数個ずつ配置されている。また、円すいころ4は、それぞれの列ごとに、保持器20a、20bにより保持されている。
また、ハブ3は、ハブ輪11と、1対の内輪12a、12bとにより構成されている。複列の内輪軌道8a、8bは、1対の内輪12a、12bの外周面に1つずつ設けられている。ハブ輪11は、軸方向外側部に回転フランジ9を有し、かつ、軸方向中間部および内端部の外周面に円筒状の嵌合面部13を有している。1対の内輪12a、12bは、ハブ輪11の嵌合面部13に圧入(締り嵌め)により外嵌されている。また、この状態で、ハブ輪11の軸方向内端部に設けられた円筒部14を径方向外方に塑性変形させてなるかしめ部15により、軸方向内側の内輪12aの軸方向内端面を抑え付け、ハブ輪11の嵌合面部13の軸方向外端部に存在する段差面19との間に挟み込むことによって、1対の内輪12a、12bとハブ輪11との分離防止が図られている。また、この状態で、ハブユニット軸受1に適正範囲の予圧が付与されている。
また、外輪2の軸方向内端部の内周面と、軸方向内側の内輪12aの軸方向内端部の外周面との間には、シール装置17が組み付けられている。また、外輪2の軸方向外端部内周面と、軸方向外側の内輪12bの軸方向外端部の外周面との間には、シール装置18が組み付けられている。すなわち、外輪2の内周面とハブ3の外周面との間に存在する内部空間16の軸方向両端開口は、シール装置17、18により塞がれている。これらのシール装置17、18は、たとえば組み合わせシールリングなどの摺接型のもの(シールリップの先端部を相手面となるシール摺接面に摺接させる構成を有するもの)である。
上述のような本例のハブユニット軸受1を製造すべく、複数の構成部品同士を組み立てる場合には、まず、かしめ前組立工程を行う。かしめ前組立工程では、図2(a)に示すように、かしめ部15を形成する前のハブ輪11zの嵌合面部13の周囲に、内輪12a、12bと、列ごとの円すいころ4および保持器20a、20bと、外輪2と、シール装置17、18とを組み付ける。
この際の組み付け手順は、特に問わない。何れにしても、組み付けが終了した状態で、次のような状態になっていれば良い。すなわち、複列の外輪軌道5a、5bと複列の内輪軌道8a、8bとの間に、保持器20a、20bにより保持された列ごとの円すいころ4が配置されている。また、ハブ輪11zの嵌合面部13に1対の内輪12a、12bが圧入により外嵌された状態で、軸方向外側の内輪12bの軸方向外端面が、嵌合面部13の軸方向外端部に存在する段差面19に当接すると共に、軸方向内側の内輪12aの軸方向外端面が、軸方向外側の内輪12bの軸方向内端面に当接している。また、この状態で、ハブユニット軸受1の軸受アキシアル隙間が負となっている。すなわち、ハブユニット軸受1に予圧(完成後の予圧よりも小さい予圧)が付与されている。なお、本例では、このような予圧が付与されるようにするために、外輪2と、ハブ輪11zと、1対の内輪12a、12bと、複数個の円すいころ4との、それぞれの形状および寸法を規制している。また、内部空間16の軸方向両端開口部にシール装置17、18が組み付けられている。
上述したようなかしめ前組立工程が終了したならば、次に、図2に示すような揺動かしめ装置を用いて、かしめ部15を形成する。この揺動かしめ装置は、支持台21と、外輪駆動手段22と、かしめ型23と、かしめ型駆動手段24とを備えている。
支持台21は、上下方向の基準軸Cを有している。このような支持台21は、ハブ輪11(11z)の軸方向外端部を下側に向け、かつ、ハブ輪11(11z)の中心軸を基準軸Cと同軸に配置した状態で、その上面にハブ輪11(11z)を支持可能である。
外輪駆動手段22は、電動モータなどの外輪回転駆動源により、ハブ輪11(11z)および内輪12a、12bに対して外輪2を回転駆動することが可能である。また、外輪駆動手段22は、前記外輪回転駆動源の電流値に基づいて、あるいは、トルクセンサにより、外輪2の回転トルク(回転抵抗)TBを測定する機能を有している(後述する図4参照)。
かしめ型23は、支持台21の上方に配置されている。また、かしめ型23は、基準軸Cと同軸である主軸αと、この主軸αに対し所定角度θだけ傾斜した自転軸βとを有し、かつ、先端部(下端部)に、自転軸βを中心とする円環状の加工面部25を有している。このようなかしめ型23は、かしめ型駆動手段24により、基準軸Cに沿った昇降(移動)、および、主軸αを中心とする回転駆動(揺動回転駆動)を可能に支持されており、かつ、自転軸βを中心とする自転を自在に支持されている。
かしめ型駆動手段24は、油圧機構によって、かしめ型23を基準軸Cに沿って昇降させることが可能であり、かつ、電動モータなどのかしめ型回転駆動源によって、かしめ型23を、主軸αを中心として揺動回転駆動することが可能である。また、かしめ型駆動手段24は、前記かしめ型回転駆動源の電流値に基づいて、あるいは、トルクセンサにより、かしめ型23の回転トルク(揺動回転の回転抵抗)TAを測定する機能を有している(後述する図3参照)。また、かしめ型駆動手段24は、変位センサにより、上下方向に関するかしめ型23のストローク(非加工時の基準位置からの下降量)Sを測定する機能を有している(後述する図3参照)。
このような揺動かしめ装置を用いて、かしめ部15を形成する際には、まず、図2(a)に示すように、ハブ輪11zの軸方向外端部を下側に向け、かつ、ハブ輪11zの中心軸を基準軸Cと同軸に配置した状態で、ハブ輪11zを支持台21の上面に支持する。なお、この際に、かしめ型23は、上方に退避させておく。
次に、ハブ輪11zおよび内輪12a、12bに対して外輪2を回転駆動すると共に、かしめ型23を、主軸αを中心として揺動回転駆動する。そして、この状態で、かしめ型23を下降させ、かしめ型23の加工面部25を、ハブ輪11zの円筒部14に押し付ける。これにより、かしめ型23から円筒部14の円周方向一部に、上下方向に関して下方に、かつ、径方向に関して外方に向いた荷重を加える。このようにして円筒部14に荷重を加える位置は、主軸αを中心とするかしめ型23の回転に伴って、円筒部14の円周方向に関して連続的に変化する。これにより、円筒部14を径方向外方に塑性変形させてかしめ部15を形成し、このかしめ部15により、軸方向内側の内輪12aの軸方向内端面を抑え付ける。また、この抑え付けの力、すなわち、かしめ部15から軸方向内側の内輪12aに加わる軸力によって、ハブユニット軸受1の予圧を増大させる。なお、上述のようにかしめ部15を形成する際に、かしめ型23は、円筒部14(かしめ部15)との接触部に作用する摩擦力に基づいて、自転軸βを中心として自転しながら、主軸αを中心として揺動回転する。すなわち、円筒部14(かしめ部15)に対するかしめ型23の接触は、転がり接触となる。このため、この接触部の摩耗や発熱を十分に抑えられる。
また、本例では、この際のかしめ部15の形成作業を、粗かしめ工程と、仕上かしめ工程とに分けて行う。
粗かしめ工程では、ハブ輪11zおよび内輪12a、12bに対して外輪2を回転駆動すると共に、主軸αを中心としてかしめ型23を揺動回転駆動しながら、かしめ型23を下降させることにより、かしめ型23の加工面部25を円筒部14に押し付けることで、円筒部14を径方向外方に塑性変形させる作業を、かしめ型23が、予め設定しておいた下降終了位置に達するまで継続する。そして、この粗かしめ工程によって、概ね目標の最終形状を有するかしめ部15を形成する。
次に、仕上かしめ工程では、かしめ型23の下降を停止して、かしめ型23を下降終了位置に保持したまま、ハブ輪11に対する外輪2の回転駆動と、主軸αを中心とするかしめ型23の揺動回転駆動とを、所定時間継続する。これにより、かしめ部15のスプリングバックを徐々に減少させ、かしめ部15の形状を、目標の最終形状に仕上げる。なお、この際に、かしめ部15の形状は、巨視的には変化しないが、微視的に変化し、目標の最終形状に仕上がる。この結果、かしめ部15から軸方向内側の内輪12aに加わる軸力がより安定し、完成後のハブユニット軸受1の予圧がより安定する。
なお、転動体として円すいころ4を備えたハブユニット軸受1では、予圧の状態により、円すいころ4の着座位置が異なる。その一方で、すでに予圧が付与されている状態では、単にかしめ部15から軸方向内側の内輪12aに軸力を加えても、円すいころ4を軸方向へ移動させる(軸方向へ転動させたり、軸方向へ滑らせたりする)こと、すなわち、円すいころ4の着座位置を移動させることができない。そこで、本例では、上述したかしめ部15の形成作業を、ハブ輪11(11z)および内輪12a、12bに対して外輪2を回転させながら行うことにより、外輪軌道5a、5bと内輪軌道8a、8bとの間で円すいころ4を円周方向に転動させながら、これらの円すいころ4を、予圧の状態に応じた着座位置へ移動させることができるようにしている。
上述したような仕上かしめ工程が終了したならば、次に、かしめ型23を上方に退避させる。そして、外輪2の回転駆動、および、かしめ型23の揺動回転駆動を停止させた後、ハブユニット軸受1を支持台21から取り出す。
また、本例では、以上のように揺動かしめ装置を用いてかしめ部15を形成する作業を、かしめ型23のストロークSと、かしめ型23の回転トルクTAと、外輪2の回転トルクTBとを、それぞれ測定しながら行う。これらの測定対象S、TA、TBの大きさは、かしめ部15を形成する作業中、たとえば、図3および図4のグラフに示すように変化する。なお、図3のグラフ中の油圧Pは、かしめ型23の昇降位置を制御するための油圧機構内の油圧である。
図3および図4のグラフ中の時間帯(1)〜時間帯(4)は、それぞれ次の状態を示す。
時間帯(1)は、主軸αを中心とするかしめ型23の揺動回転駆動と、ハブ輪11zおよび内輪12a、12bに対する外輪2の回転駆動と、かしめ型23の下降とが、順次開始され、かつ、かしめ型23の加工面部25が、未だ円筒部14に接触していない時間帯である。
時間帯(1)では、かしめ型23の回転トルクTA(図3)は、回転開始直後に、回転速度を所定の回転速度まで上昇させるために上昇し(2秒〜5秒位置)、その後、所定の回転速度に達すると低下して、ほぼ一定の大きさになる(5秒〜13秒位置)。
時間帯(2)は、粗かしめ工程が行われている時間帯、すなわち、かしめ型23の加工面部25が円筒部14に接触し、円筒部14の加工が開始され、かつ、かしめ型23の下降が継続している時間帯である。
時間帯(2)では、かしめ型23によるかしめ荷重が徐々に内輪12aに負荷されて、かしめ型23の回転トルクTA(図3)が徐々に上昇する。
時間帯(3)は、仕上かしめ工程が行われている時間帯、すなわち、かしめ型23の下降を停止して、かしめ型23を下降終了位置に保持したまま、かしめ部15の仕上げ加工を所定時間継続している時間帯である。
時間帯(3)では、かしめ荷重が低下することに伴い、かしめ型23の回転トルクTA(図3)が低下する。
時間帯(4)は、かしめ型23を上方に退避させることにより、かしめ型23をかしめ部15から離隔し、かつ、かしめ型23の揺動回転駆動および外輪2の回転駆動を継続している時間帯である。
時間帯(4)では、かしめ型23をかしめ部15から離隔することによって、かしめ荷重がなくなるため、かしめ型23の回転トルクTA(図3)がさらに低下する。
また、時間帯(1)〜時間帯(4)では、外輪2の回転トルクTB(図4)も、かしめ型23の挙動に伴って変化する。
特に、かしめ部15が概ね目標の最終形状になった時間帯(3)での外輪2の回転トルクTB、および、かしめ部15が目標の最終形状に仕上がった時間帯(4)での外輪2の回転トルクTBは、完成後のハブユニット軸受1の予圧に応じた大きさになる。このため、時間帯(3)で測定した外輪2の回転トルクTBや、時間帯(4)で測定した外輪2の回転トルクTBを利用して、完成後のハブユニット軸受1の予圧の適性判断を行うのが好ましい。
ただし、時間帯(4)での外輪2の回転トルクTBを正確に測定するためには、時間帯(4)の長さを、ある程度長くする必要がある。その一方で、製造ラインのタクトを上げるためには、時間帯(4)の長さを、できるだけ短くするのが望ましいといった事情がある。これに対し、時間帯(3)の長さ、すなわち、かしめ部15の仕上かしめ工程の所要時間は、かしめ部15の形状を目標の最終形状に仕上げる都合上、ある程度長く確保されており、また、時間帯(3)での外輪2の回転トルクTBは、比較的安定している。このため、時間帯(3)での外輪2の回転トルクTBを正確に測定することは容易である。
そこで、本例では、製造ラインのタクトを上げるために、次のような判断工程を行う。すなわち、仕上かしめ工程である時間帯(3)での外輪2の回転トルクTBを測定し、この測定した回転トルクTBを利用して、完成後のハブユニット軸受1の予圧の適性判断を行う。具体的には、時間帯(3)で測定した外輪2の回転トルクTB(たとえば、この回転トルクTBの平均値など)が所定範囲に収まっているか否かを確認する。その結果、この回転トルクTBが所定範囲に収まっている場合にのみ、完成後のハブユニット軸受1の予圧が適正である、すなわち、適正範囲に収まっていると判断する。なお、このような判断を行うために、これらの所定範囲と適正範囲との関係を予め調べておく。
上述したように、本例では、時間帯(3)での外輪2の回転トルクTBを正確に測定することは容易であるため、この測定した回転トルクTBを利用して、完成後のハブユニット軸受1の予圧の適性判断を精度良く行える。また、時間帯(4)での外輪2の回転トルクTBを正確に測定する必要がないため、時間帯(4)の長さをできるだけ短くして、製造ラインのタクトを上げることができる。
なお、完成後のハブユニット軸受1の予圧の適性判断は、時間帯(4)で測定した外輪2の回転トルクTBのみを利用して行うこともできる。
また、完成後のハブユニット軸受1の予圧の適性判断(又は、かしめ部15を形成する作業の各工程の良否の判断)は、時間帯(1)〜時間帯(4)で測定した外輪2の回転トルクTBを適宜組み合わせた結果を利用して行うこともできる。
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例について、図1〜図4を用いて説明する。
本例では、判断工程において、仕上かしめ工程である時間帯(3)での外輪2の回転トルクTB(図4)と、かしめ後工程である時間帯(4)での外輪2の回転トルクTB(図4)とを測定する。そして、時間帯(3)で測定した外輪2の回転トルクTB(図4)と、時間帯(4)で測定した外輪2の回転トルクTB(図4)との差を利用して、完成後のハブユニット軸受1の予圧の適性判断を行う。この点について、以下、具体的に説明する。
時間帯(3)で測定した外輪2の回転トルクTBは、下記のトルクTB1〜TB4の和(TB1+TB2+TB3+TB4)であり、また、時間帯(4)で測定した外輪2の回転トルクTBは、下記のトルクTB1〜TB3の和(TB1+TB2+TB3)である。
TB1 : かしめ部15を形成する前の予圧(負の軸受アキシアル隙間)に起因する、軸受部分(外輪軌道5a、5b、内輪軌道8a、8b、円すいころ4)での回転トルク。
TB2 : シール装置17、18の摺接抵抗であるシールトルク。
TB3 : かしめ部15の軸力による予圧の上昇分に起因する、軸受部分での回転トルク。
TB4 : かしめ型23のかしめ荷重による予圧の上昇分{かしめ荷重は、軸受部分に対する負荷分と、ハブ輪11(11z)に対する負荷分とに分かれるが、このうちの軸受部分に対する負荷分による、予圧の上昇分}に起因する、軸受部分での回転トルク。
したがって、時間帯(3)で測定した外輪2の回転トルクTB(TB1+TB2+TB3+TB4)と、時間帯(4)で測定した外輪2の回転トルクTB(TB1+TB2+TB3)との差を取れば、回転トルクTB4だけが残る。
ここで、回転トルクTB4の発生原因となる、かしめ荷重のうちの軸受部分に対する負荷分は、時間帯(3)での軸受部分の予圧(かしめ部15が概ね目標の最終形状になった状態での予圧であり、完成後のハブユニット軸受1の予圧に応じた予圧)が大きい程大きくなる。したがって、回転トルクTB4も、時間帯(3)での軸受部分の予圧が大きいほど大きくなる。
そこで、本例では、時間帯(3)で測定した外輪2の回転トルクTBと、時間帯(4)で測定した外輪2の回転トルクTBとの差を取ることによって、回転トルクTB4を求める。そして、この回転トルクTB4が所定範囲に収まっているか否かを確認する。その結果、この回転トルクTB4が所定範囲に収まっている場合にのみ、完成後のハブユニット軸受1の予圧が適正範囲に収まっていると判断する。なお、このような判断を行うために、これらの所定範囲と適正範囲との関係を予め調べておく。
上述したように、本例では、完成後のハブユニット軸受1の予圧の適性判断を、時間帯(3)で測定した外輪2の回転トルクTBと、時間帯(4)で測定した外輪2の回転トルクTBとの差を利用して行うが、この差には、シールトルクTB2が含まれていない。このため、シール装置17、18の製造誤差や組み付け誤差、さらにはシール摺接面の性状などに起因して、シールトルクTB2にばらつきが生じた場合でも、完成後のハブユニット軸受1の予圧の適性判断を精度良く行うことができる。
なお、本例では、この適性判断の精度を上げる(信頼性を高める)ために、時間帯(4)の長さをある程度長くして、時間帯(4)での外輪2の回転トルクTBを正確に測定するのが好ましい。
その他の構成および作用は、実施の形態の第1例と同様である。
なお、時間帯(1)で測定した外輪2の回転トルクTBは、回転トルクTB1と、シールトルクTB2との和(TB1+TB2)である。このため、時間帯(1)で測定した外輪2の回転トルクTB(TB1+TB2)と、時間帯(4)で測定した外輪2の回転トルクTB(TB1+TB2+TB3)との差を取れば、回転トルクTB3を求められる。したがって、この回転トルクTB3からかしめ部15の軸力を把握し、かしめ部15の出来栄えを確認することができる。
本発明は、従動輪用に限らず、駆動輪用のハブユニット軸受にも適用することができる。
また、本発明は、ハブ輪と軸方向外側の内輪とが一体になった構造、すなわち、軸方向外側の内輪軌道がハブ輪の外周面に直接形成された構造のハブユニット軸受にも適用することができる。
また、本発明を実施する場合で、適用対象となるハブユニット軸受が、内部空間の軸方向内端開口を塞ぐシール装置を有している場合、このシール装置の組み付け作業は、かしめ部を形成した後に行うこともできる。
1 ハブユニット軸受
2 外輪
3 ハブ
4 円すいころ
5a、5b 外輪軌道
6 静止フランジ
7 取付孔
8a、8b 内輪軌道
9 回転フランジ
10 取付孔
11、11z ハブ輪
12a、12b 内輪
13 嵌合面部
14 円筒部
15 かしめ部
16 内部空間
17 シール装置
18 シール装置
19 段差面
20a、20b 保持器
21 支持台
22 外輪駆動手段
23 かしめ型
24 かしめ型駆動手段
25 加工面部

Claims (2)

  1. 内周面に複列の外輪軌道を有する外輪と、
    外周面に複列の内輪軌道を有するハブと、
    前記複列の内輪軌道と前記複列の外輪軌道との間に配置された複数個の円すいころと、を備え、
    前記ハブは、ハブ輪と、前記複列の内輪軌道のうちの軸方向一方側の内輪軌道が外周面に設けられた内輪とを備え、かつ、前記ハブ輪に前記内輪を外嵌すると共に、前記ハブ輪の軸方向一方側の端部に設けられた円筒部を径方向外方に塑性変形させてなるかしめ部により、前記内輪の軸方向一方側の端面を抑え付けており、
    該抑え付けの力によって変化する予圧が付与されている、
    ハブユニット軸受の製造方法であって、
    前記かしめ部を形成する前の前記ハブ輪に前記内輪を外嵌すると共に、前記複列の外輪軌道と前記複列の内輪軌道との間に前記複数個の円すいころを配置する、かしめ前組立工程と、
    前記かしめ前組立工程の終了後、前記ハブ輪の軸方向一方側に配置され、かつ、前記ハブ輪の中心軸に対して傾斜した自転軸を中心とする自転を自在に設けられたかしめ型を、前記ハブ輪の中心軸を中心として回転させると共に、前記ハブ輪および前記内輪に対して前記外輪を回転させながら、前記かしめ型を前記円筒部に押し付けた状態で、前記ハブ輪の軸方向に関して前記ハブ輪と前記かしめ型とを互いに近づける方向に相対移動させることにより、前記円筒部を、概ね目標の最終形状を有する前記かしめ部に成形する、粗かしめ工程と、
    前記粗かしめ工程の終了後、前記ハブ輪の軸方向に関する前記ハブ輪と前記かしめ型との相対位置を、前記粗かしめ工程の終了時の位置に保持したまま、前記ハブ輪の中心軸を中心とする前記かしめ型の回転と、前記ハブ輪および前記内輪に対する前記外輪の回転とを継続することにより、前記かしめ部の形状を、前記目標の最終形状に仕上げる、仕上かしめ工程と、
    前記仕上かしめ工程での前記外輪の回転トルクを測定し、該測定した回転トルクを利用して、完成後のハブユニット軸受の予圧の適性判断を行う、判断工程と、を備えている、
    ハブユニット軸受の製造方法。
  2. ハブユニット軸受が、前記外輪と前記ハブとの間に組み付けられた摺接型のシール装置を備えており、
    前記仕上かしめ工程の終了後、前記かしめ部から前記かしめ型を退避させた状態で、前記外輪の回転を継続させる、かしめ後工程を備えており、
    前記かしめ前組立工程において、前記外輪と前記ハブとの間に前記シール装置を組み付け、
    前記判断工程において、前記かしめ後工程での前記外輪の回転トルクを測定し、かつ、前記仕上かしめ工程で測定した前記外輪の回転トルクと、前記かしめ後工程で測定した前記外輪の回転トルクとの差を求め、該差が所定範囲に収まっている場合にのみ、完成後のハブユニット軸受の予圧が適正であると判断する、
    請求項1に記載のハブユニット軸受の製造方法。
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