JP2019114587A - 絶縁油の絶縁性能維持方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 絶縁油の酸化劣化を防止しつつ、切換開閉器のタップ切換動作時に発生するガスに起因して絶縁油の絶縁性能が劣化することを防止した絶縁油の絶縁性能維持方法を提供する。【解決手段】 切換開閉器2の容器2b内において、不活性ガスからなる気層部7で絶縁油5を密封し、絶縁油5の酸化劣化を防止する。また、切換開閉器2のタップ切換動作によって発生したガスを気層部7へ移行させることで、絶縁油5中でガス濃度が上昇することを抑制し、絶縁油5に対して溶解度の低い水素や酸素、窒素が絶縁油5中で気泡化することを防止する。ガスが絶縁油5中で気泡化することがないので、絶縁油5の絶縁性能の劣化を防止できる。【選択図】 図1
Description
本発明は、負荷時タップ切換装置の切換開閉器内に充填する絶縁油の絶縁性能を維持する方法に関する。
油膨張室(コンサベータ)内の袋体(ゴム袋)によって、油膨張室に接続される負荷時タップ切換装置の容器内に充填した絶縁油が空気と接触して酸化することを防止する構造の変圧器は従来から知られている(下記特許文献1参照)。
このような負荷時タップ切換装置では、切換開閉器によるタップ切換動作に伴って絶縁油中に分解ガスが発生すると、絶縁油に対して溶解度の低い水素や酸素、窒素が絶縁油中で気泡化する。気泡化したこれらのガスは絶縁油の絶縁性能に支障をきたすため、特許文献1のように絶縁油が袋体(ゴム袋)によって完全に密封されていることは好ましくない。
つまり、上記特許文献2記載のように、コンサベータにゴム膜やゴム袋を設けない開放型とし、絶縁油中で気泡化したガスを外部へ放出する必要がある。
しかし、開放型の負荷時タップ切換装置では、絶縁油が空気と接触し酸化劣化する問題が生じる。
そこで、本発明では、絶縁油が空気と接触して酸化劣化することを抑制しつつ、絶縁油中で気泡化した分解ガスが絶縁油の絶縁性能を悪化させることを防止する絶縁油の絶縁性能維持方法を開示する。
請求項1記載の発明は、負荷時タップ切換装置を構成する切換開閉器の容器内の絶縁油面上に不活性ガスを封入して気層部を設け、かつ、該絶縁油を不活性ガス飽和油として前記容器内に密封し、前記切換開閉器のタップ切換えに伴って発生した可燃性ガスや二酸化炭素を前記気層部に移行させ、前記容器内の圧力が基準圧以上に上昇した場合に放圧することに特徴を有する。
請求項2記載の発明は、負荷時タップ切換装置を構成する切換開閉器の容器内の絶縁油面上に不活性ガスを封入して気層部を設け、かつ、該絶縁油を不活性ガス飽和油として前記容器内に密封し、前記切換開閉器のタップ切換えに伴って発生した可燃性ガスや二酸化炭素を前記気層部に移行させ、前記気層部の不活性ガス濃度が基準値以下に低下した場合に前記容器内を放圧することに特徴を有する。
請求項3記載の発明は、負荷時タップ切換装置を構成する切換開閉器の容器内の絶縁油面上に不活性ガスを封入して気層部を設け、かつ、該絶縁油を不活性ガス飽和油として前記容器内に密封し、前記切換開閉器のタップ切換えに伴って発生した可燃性ガスや二酸化炭素を前記気層部に移行させ、前記容器内の圧力が基準圧以上に上昇した場合若しくは前記気層部の不活性ガス濃度が基準値以下に低下した場合に前記容器内を放圧することに特徴を有する。
請求項4記載の発明は、負荷時タップ切換装置を構成する切換開閉器の容器内の絶縁油面上に空気による気層部を設けて絶縁油を前記容器内に密封し、前記切換開閉器のタップ切換えに伴って発生した可燃性ガスや二酸化炭素を前記気層部に移行させることに特徴を有する。
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の発明において、前記切換開閉器が真空バルブ式の接点を採用していることに特徴を有する。
請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の発明において、前記絶縁油が植物系絶縁油であることに特徴を有する。
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記植物系絶縁油がパームヤシ脂肪酸エステル油等、鉱油と同等か、より粘度の低い植物系油であることに特徴を有する。
請求項1記載の発明によれば、絶縁油は不活性ガスによって密封されているので、酸化劣化を防止できる。また、絶縁油中で気泡化した分解ガスは、絶縁油面上の不活性ガスからなる気層部へ移行するので、気泡化した分解ガスが絶縁油の絶縁性能に悪影響を及ぼすことを防止できる。さらに、分解ガスの発生によって切換開閉器容器内の圧力が過度に上昇した場合は、容器内圧を放圧により低下させることができる。
請求項2記載の発明によれば、絶縁油は不活性ガスによって密封されているので、酸化劣化を防止できる。また、絶縁油中で気泡化した分解ガスは、絶縁油面上の不活性ガスからなる気層部へ移行するので、気泡化した分解ガスが絶縁油の絶縁性能に悪影響を及ぼすことを防止できる。さらに、分解ガスの発生によって切換開閉器容器内の気層部の不活性ガス濃度が低下した場合は、容器内圧を放圧により低下させることができる。
請求項3記載の発明によれば、絶縁油は不活性ガスによって密封されているので、酸化劣化を防止できる。また、絶縁油中で気泡化した分解ガスは、絶縁油面上の不活性ガスからなる気層部へ移行するので、気泡化した分解ガスが絶縁油の絶縁性能に悪影響を及ぼすことを防止できる。さらに、分解ガスの発生によって切換開閉器容器内の圧力が過度に上昇した場合、若しくは、分解ガスの発生によって切換開閉器容器内の気層部の不活性ガス濃度が低下した場合は、容器内圧を放圧により低下させることができる。
請求項4記載の発明によれば、絶縁油は密封されているので、酸化劣化を抑制することができる。また、気層部の空気は絶縁油の酸化によって消費されるので、絶縁油中で気泡化した分解ガスをより多く気層部へ移行させることができる。
請求項5記載の発明によれば、切換開閉器に真空バルブ式の接点を採用したので、接点開閉時のアークによって生成したスラッジが絶縁油を汚損することを防止することができる。
請求項6記載の発明によれば、万一漏油等の事故が発生した場合でも、環境に与える負荷を低減することができる。
請求項7記載の発明によれば、菜種油等と比較して粘度の低いパームヤシ脂肪酸エステル油を使用したので、切換開閉器の性能を損なうことはない。
図1は変圧器に付属した負荷時タップ切換装置1の拡大図である。図1において、2は変圧器タンク3に取り付けられた負荷時タップ切換装置1を構成する切換開閉器部であり、4はタップ選択器部である。
2aは切換開閉器部2の容器2b内に収納される切換開閉器であり、切換開閉器2aには、タップ切換用の接点として、例えば、真空バルブ式の切換開閉器が採用される。真空バルブ式の切換開閉器はその接点部分が絶縁油と接触しない構造であるため、接点切換時のアークによって発生するスラッジが絶縁油を汚すことがない利点を有する。
5は切換開閉器部2の容器2b内に充填される絶縁油であり、漏油時の環境負荷を低減する場合は植物系油が使用される。植物系油としては、パームヤシ脂肪酸エステル油等、粘度の低い植物系油を使用することで、切換開閉器2aの性能に悪影響を与えることを防止できる。
6は切換開閉器部2の容器2bの上部開口部を閉塞する蓋体であり、7は蓋体6と絶縁油5上の空間に形成される気層部である。8,9は蓋体6を介して容器2b内と外部を連通可能とする給気管と排気管であり、各々の中途位置にはバルブ8a、9aが設けられている。
10は、容器2a内の圧力や、気層部7における不活性ガスの濃度を測定する測定器(センサを含む)である。なお、測定器10は切換開閉器部2に必ずしも常設する必要はなく、測定時に設置しても良い。
以上のように構成された負荷時タップ切換装置1は、変圧器タンク3内に収納する図示しない変圧器本体と電気的に接続される。
前記気層部7には窒素等の不活性ガスが封入される。ガス封入手順は、図示しないガス供給源から不活性ガスを、給気管8を通して容器2b内に供給し、気層部7内の空気を排気管9を通して外部へ放出することにより行う。
この不活性ガスの封入は、容器2b内の絶縁油が不活性ガスで飽和し、気層部7が窒素のみに置換されるまで行われ、バルブ8a、9aを閉じることにより終了する。この結果、絶縁油5が空気と接触することがなくなるので、絶縁油5の酸化劣化を防止することができる。
絶縁油5中に浸漬された切換開閉器2aは、タップの切換動作によって水素やエタン等の可燃性ガスや二酸化炭素を発生する。負荷時タップ切換用の接点に真空バルブ式の接点を採用した場合は、製品仕様や運転条件によっても異なるが、タップ切換動作1回当たり、例えば、0.01〜0.1[ppm]のガスが発生する。
従来技術で説明したような、絶縁油が袋体(ゴム袋)によって完全に密封されている場合、この発生ガスが絶縁油5中に溶解し、絶縁油5中のガス濃度が増加することで、絶縁油5に対して溶解度の低い水素や酸素、窒素が絶縁油5中で気泡化し、絶縁油5の絶縁性能に支障をきたすが、本件発明では、発生ガスを気層部7へ移行させることができる。
したがって、絶縁油5に対して溶解度の低いガスが、絶縁油5中で気泡化することはなく、絶縁油の絶縁性能に支障をきたすことはない。
発生ガスを気層部7へ移行させることにより、容器2bの内圧の上昇、気層部7内の不活性ガスの濃度低下が生じる。
そこで、本発明では、内圧の上昇や不活性ガス濃度の低下を測定器10で計測(検出)することにより、計測(検出)した気圧が基準圧を超えた場合や,不活性ガス濃度が基準濃度を下回った場合は、バルブ9aを開放操作することで、排気管9を通して容器2b外へガスを排気し、容器2b内の圧力を減少させる。
前記基準圧は、例えば、図2に示すように、絶縁油温度(油温)との関係によって決定される。図2は周囲温度が20℃の場合の油温の変化に対する窒素圧力(基準圧)の関係を示しており、油温が60℃であれば基準圧は15[kPa]となる。
また、前記基準濃度としては例えば、95[%]が例示できるが、これに限定されるものではない。
上記基準圧を超えた場合、または、基準濃度を下回った場合、バルブ9aの開放操作によって容器2b内の圧力を減少、または、不活性ガス濃度を上昇させるが、放圧操作は手作業によるバブル操作によらなくてもよく、自動復帰型の放圧装置や自動開閉可能な弁を用いて自動的に放圧操作してもよい。
容器2bの内圧が低下した後は、切換開閉器2aのタップの切換動作によって発生したガスを再び気層部7へ移行させることが可能となる。
次に、本発明の他の実施例について説明する。他の実施例においては、図1の気層部7には空気が密封されている。
この場合、絶縁油5が空気と接触して酸化劣化するが、接触する空気量が少ないので劣化度合いを極力抑制することができる。
切換開閉器2aのタップの切換動作によって発生したガスは、第1実施例同様、気層部7へ移行させることができるので、絶縁油5に対して溶解度の低い水素や酸素、窒素が絶縁油5中で気泡化し、絶縁油5の絶縁性能に支障をきたすことはない。
また、気層部7の空気中の酸素が絶縁油5による酸化によって消費させるので、消費された分に相当するガスを気層部7へ移行させることが可能となる。
なお、発生ガスが気層部7へ移行することで、容器2bの内圧が基準圧(図2参照)を超えた場合には、第1実施例同様、バルブ9aを開放操作(または自動放圧)して、排気管9からガスを容器2b外へ排気してもよい。
また、上記実施例では切換開閉器部2の絶縁油面上に気層部7を設ける場合について説明したが、図3に示すように、切換開閉器部2の上部に挿通管11で連結されたコンサベータ12を取り付け、コンサベータ12内の絶縁油面上に気層部7を設けることで、絶縁油5の膨張収縮をコンサベータ12で吸収する構成としても良い。
以上説明したように、本発明によれば、切換開閉器部2の容器2b内の絶縁油5を不活性ガスで密封することにより、絶縁油5の酸化劣化を防止し、或いは、容器2b内の絶縁油5を空気で密封することにより、絶縁油5の酸化劣化を極力抑制し、そのうえで、切換開閉器2aのタップの切換動作によって発生したガスを絶縁油5の油面上の気層部7へ移行させることができるので、絶縁油5中のガス濃度が上昇し、絶縁油5に対して溶解度の低い水素や酸素、窒素等が絶縁油5中で気泡化して、絶縁油5の絶縁性能に支障をきたすことを防止できる。
絶縁油を密封した各種電気機器に利用可能である。
1 負荷時タップ切換装置
2 切換開閉器部
2a 切換開閉器
2b 切換開閉器部の容器
3 変圧器タンク
4 タップ選択器部
5 絶縁油
6 蓋体
7 気層部
8 給気管
8a,9a バルブ
9 排気管
10 測定器
2 切換開閉器部
2a 切換開閉器
2b 切換開閉器部の容器
3 変圧器タンク
4 タップ選択器部
5 絶縁油
6 蓋体
7 気層部
8 給気管
8a,9a バルブ
9 排気管
10 測定器
Claims (7)
- 負荷時タップ切換装置を構成する切換開閉器の容器内の絶縁油面上に不活性ガスを封入して気層部を設け、かつ、該絶縁油を不活性ガス飽和油として前記容器内に密封し、前記切換開閉器のタップ切換えに伴って発生した可燃性ガスや二酸化炭素を前記気層部に移行させ、前記容器内の圧力が基準圧以上に上昇した場合に放圧することを特徴とする絶縁油の絶縁性能維持方法。
- 負荷時タップ切換装置を構成する切換開閉器の容器内の絶縁油面上に不活性ガスを封入して気層部を設け、かつ、該絶縁油を不活性ガス飽和油として前記容器内に密封し、前記切換開閉器のタップ切換えに伴って発生した可燃性ガスや二酸化炭素を前記気層部に移行させ、前記気層部の不活性ガス濃度が基準値以下に低下した場合に前記容器内を放圧することを特徴とする絶縁油の絶縁性能維持方法。
- 負荷時タップ切換装置を構成する切換開閉器の容器内の絶縁油面上に不活性ガスを封入して気層部を設け、かつ、該絶縁油を不活性ガス飽和油として前記容器内に密封し、前記切換開閉器のタップ切換えに伴って発生した可燃性ガスや二酸化炭素を前記気層部に移行させ、前記容器内の圧力が基準圧以上に上昇した場合若しくは前記気層部の不活性ガス濃度が基準値以下に低下した場合に前記容器内を放圧することを特徴とする絶縁油の絶縁性能維持方法。
- 負荷時タップ切換装置を構成する切換開閉器の容器内の絶縁油面上に空気による気層部を設けて該絶縁油を前記容器内に密封し、前記切換開閉器のタップ切換えに伴って発生した可燃性ガスや二酸化炭素を前記気層部に移行させることを特徴とする絶縁油の絶縁性能維持方法。
- 前記切換開閉器は、真空バルブ式の接点を採用していることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の絶縁油の絶縁性能維持方法。
- 前記絶縁油は、植物系絶縁油であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の絶縁油の絶縁性能維持方法。
- 前記植物系絶縁油は、パームヤシ脂肪酸エステル油等、鉱油と同等かより粘度の低い植物系油であることを特徴とする請求項6記載の絶縁油の絶縁性能維持方法。
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JP2017244654A JP2019114587A (ja) | 2017-12-21 | 2017-12-21 | 絶縁油の絶縁性能維持方法 |
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JP (1) | JP2019114587A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113161116A (zh) * | 2021-03-26 | 2021-07-23 | 合肥齐兴电器有限责任公司 | 一种基于自辅助补偿介入式升压器 |
-
2017
- 2017-12-21 JP JP2017244654A patent/JP2019114587A/ja active Pending
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