以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る合わせガラスは、ヘッドアップディスプレイである合わせガラスである。本発明に係る合わせガラスは、ヘッドアップディスプレイの表示領域を有する。本発明に係る合わせガラスは、一端と、上記一端の反対側に、上記一端よりも大きい厚みを有する他端とを有する。本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、中間膜とを備える。本発明に係る合わせガラスでは、上記中間膜は、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に配置されている。
上記中間膜は、例えば、ヘッドアップディスプレイの表示領域に対応する表示対応領域を有する。上記表示対応領域は、情報を良好に表示させることができる領域である。上記中間膜は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)である合わせガラスに用いられる。上記中間膜は、HUD用中間膜である。
本発明に係る合わせガラスでは、上記第1の合わせガラス部材が、0.10mrad以上の楔角を有する。本発明に係る合わせガラスでは、上記表示領域の中央において、上記第1の合わせガラス部材の厚みが2.03mm以上である。本発明に係る合わせガラスでは、上記表示領域の中央において、上記第1の合わせガラス部材の厚みの、上記中間膜の厚みに対する比(第1の合わせガラス部材の厚み/中間膜の厚み)が、2.30以上である。
上記第1の合わせガラス部材は、一端と、上記一端の反対側に他端とを有する。上記一端と上記他端とは、上記第1の合わせガラス部材において対向し合う両側の端部である。上記第1の合わせガラス部材では、上記他端の厚みが、上記一端の厚みよりも大きい。
上記第2の合わせガラス部材は、一端と、上記一端の反対側に他端とを有する。上記一端と上記他端とは、上記第2の合わせガラス部材において対向し合う両側の端部である。
上記合わせガラスは、一端と、上記一端の反対側に他端とを有する。上記一端と上記他端とは、上記合わせガラスにおいて対向し合う両側の端部である。上記合わせガラスでは、上記他端の厚みが、上記一端の厚みよりも大きい。
上記中間膜は、一端と、上記一端の反対側に他端とを有する。上記一端と上記他端とは、上記中間膜において対向し合う両側の端部である。
上記第1の合わせガラス部材、上記第2の合わせガラス部材及び上記中間膜の一端は、上記合わせガラスの一端側である。上記第1の合わせガラス部材、上記第2の合わせガラス部材及び上記中間膜の他端は、上記合わせガラスの他端側である。
本発明では、上記の構成が備えられているので、多重像を抑えることができる。特に、上記第1の合わせガラス部材が、0.10mrad以上の楔角を有し、上記表示領域の中央において、上記第1の合わせガラス部材の厚みが2.03mm以上であり、上記表示領域の中央において、上記比(第1の合わせガラス部材の厚み/中間膜の厚み)が、2.30以上であるので、多重像を抑えることができる。本発明では、表示ユニットから表示情報を合わせガラスに反射させたときに、多重像の発生がかなり抑えられる。
上記合わせガラスでは、コントロールユニットから送信される速度などの計測情報等を、インストゥルメンタル・パネルの表示ユニットから、フロントガラスに映し出すことができる。このため、自動車の運転者が視野を下げることなく、前方の視野と計測情報とを同時に視認することができる。
本発明では、上記表示領域の中央にて、第1の合わせガラス部材自体の厚みが比較的厚くかつ第1の合わせガラス部材の厚みが中間膜の厚みよりも比較的厚いため、合わせガラスの作製時に、中間膜を第1の合わせガラス部材に良好に沿わせることができる。
さらに、本発明では、上記表示領域の中央にて、第1の合わせガラス部材自体の厚みが比較的厚く、かつ第1の合わせガラス部材の厚みが中間膜の厚みよりも比較的厚いため、合わせガラスの作製時に、第1の合わせガラス部材の過度な湾曲を抑えることができる。
結果として、本発明では、合わせガラスにおける多重像を効果的に抑制することができる。
上記第1の合わせガラス部材の厚みは2.03mm以上である。多重像をより一層抑える観点、及び耐貫通性を高める観点からは、上記第1の合わせガラス部材の厚みは、好ましくは2.10mm以上、より好ましくは2.15mm以上である。軽量にする観点からは、上記第1の合わせガラス部材の厚みは、好ましくは2.4mm以下、より好ましくは2.30mm以下である。
上記表示領域の中央において、上記比(第1の合わせガラス部材の厚み/中間膜の厚み)は、2.30以上である。多重像をより一層抑える観点からは、上記比(第1の合わせガラス部材の厚み/中間膜の厚み)は、好ましくは2.5以上、より好ましくは2.7以上である。軽量にする観点からは、上記比(第1の合わせガラス部材の厚み/中間膜の厚み)は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.8以下である。
第1の合わせガラス部材は、楔状の合わせガラス部材である。
0.10mrad以上の楔角を有する第1の合わせガラス部材における「楔角」は、第1の合わせガラス部材全体での楔角を意味する。
第2の合わせガラス部材は、0.10mrad以上の楔角を有していてもよく、0.10mrad未満の楔角を有していてもよい。第2の合わせガラス部材は、楔状の合わせガラス部材であってもよく、矩形の合わせガラス部材であってもよい。
第2の合わせガラス部材における「楔角」は、第2の合わせガラス部材全体での楔角を意味する。
中間膜は、0.10mrad以上の楔角を有していてもよく、0.10mrad未満の楔角を有していてもよい。中間膜は、楔状の中間膜であってもよく、矩形の中間膜であってもよい。多重像をより一層抑える観点からは、中間膜は、0.10mrad未満の楔角を有することが好ましく、矩形の中間膜であることが好ましい。
多重像をより一層抑える観点からは、上記第1の合わせガラス部材の楔角は、上記中間膜の楔角よりも大きいことが好ましい。多重像をより一層抑える観点からは、上記第1の合わせガラス部材の楔角は、上記中間膜の楔角よりも、好ましくは0.05mrad以上大きく、より好ましくは0.10mrad以上大きく、更に好ましくは0.15mrad以上大きく、特に好ましくは0.20mrad以上大きく、最も好ましくは0.25mrad以上大きい。
多重像をより一層抑える観点からは、上記第2の合わせガラス部材の楔角は、上記中間膜の楔角よりも大きいことが好ましい。多重像をより一層抑える観点からは、上記第2の合わせガラス部材の楔角は、上記中間膜の楔角よりも、好ましくは0.05mrad以上大きく、より好ましくは0.10mrad以上大きく、更に好ましくは0.15mrad以上大きく、特に好ましくは0.20mrad以上大きく、最も好ましくは0.25mrad以上大きい。
本発明に係る中間膜、及び本発明に係る合わせガラスにおける中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有する。上記中間膜は、1層の構造を有していてもよく、2層以上の構造を有していてもよい。上記中間膜は、2層の構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよい。上記中間膜は、単層の中間膜であってもよく、多層の中間膜であってもよい。
上記第1の合わせガラス部材の楔角は、0.10mrad以上である。本発明において多重像をより一層抑制する観点からは、上記第1の合わせガラス部材の楔角は、好ましくは0.15mrad以上、より好ましくは0.20mrad以上、更に好ましくは0.25mrad以上、好ましくは2.0mrad以下、より好ましくは1.5mrad以下である。
上記第2の合わせガラス部材の楔角は、0mrad以上(0mradのとき楔状ではない)である。本発明において多重像をより一層抑制する観点からは、上記第2の合わせガラス部材の楔角は、好ましくは0mrad以上、より好ましくは0.10mrad以上、更に好ましくは0.15mrad以上、特に好ましくは0.20mrad以上、最も好ましくは0.25mrad以上である。本発明において多重像をより一層抑制する観点からは、上記第2の合わせガラス部材の楔角は、好ましくは2.0mrad以下、より好ましくは1.5mrad以下である。
上記中間膜の楔角は、0mrad以上(0mradのとき楔状ではない)である。上記中間膜の楔角は、好ましくは0mrad以上、好ましくは2.0mrad未満、より好ましくは1.5mrad未満である。多重像より一層高める観点からは、上記中間膜の楔角は、好ましくは0.10mrad未満、より好ましくは0.50mrad以下、更に好ましくは0.03mrad以下である。上記中間膜の楔角は、0mrad(0mradのとき楔状ではない)であってもよく、0mradを超えていてもよく、0.03mrad以上であってもよく、0.05mrad以上であってもよい。
本発明において多重像をより一層抑制する観点からは、上記合わせガラスの楔角は、好ましくは0.10mrad以上、より好ましくは0.15mrad以上、更に好ましくは0.20mrad以上、最も好ましくは0.25mrad以上、好ましくは2.0mrad以下、より好ましくは1.5mrad以下である。
トラックやバス等フロントガラスの取り付け角度が大きい車に適した合わせガラスを得る観点からは、上記合わせガラスの楔角は、好ましくは0.10mrad以上、より好ましくは0.15mrad以上、更に好ましくは0.20mrad以上、特に好ましくは0.25mrad以上である。
スポーツカー等フロントガラスの取り付け角度が小さい車に適した合わせガラスを得る観点からは、上記合わせガラスの楔角は、好ましくは0.9mrad以下、より好ましくは0.8mrad以下である。
合わせガラスの楔角θは、合わせガラスにおける最大厚み部分と最小厚み部分との合わせガラスの第1の表面(一方の表面)部分を結んだ直線と、合わせガラスにおける最大厚み部分と最小厚み部分との合わせガラスの第2の表面(他方の表面)部分を結んだ直線との交点における内角である。なお、最大厚み部分が複数ある、最小厚み部分が複数ある、最大厚み部分が一定の領域にある、又は最小厚み部分が一定の領域にある場合には、楔角θを求めるための最大厚み部分及び最小厚み部分は、求められる楔角θが最も大きくなるように選択される。第1の合わせガラス部材、第2の合わせガラス部材、及び中間膜の楔角は、合わせガラスの楔角と同様に判断することができる。
なお、完全矩形の合わせガラス部材及び完全矩形の中間膜における楔角は、0mradである。楔状の合わせガラス部材ではない場合の0mradの角度、及び楔状の中間膜ではない場合の0mradの角度も、楔角と称する。
合わせガラスの透明性を高める観点からは、上記合わせガラスの可視光線透過率は、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは71%以上、特に好ましくは72%以上、最も好ましくは72.5%以上である。
上記可視光線透過率は、合わせガラスの他端から一端に向けて20cmの位置で測定される。
多重像をより一層抑える観点、及び耐貫通性を高める観点からは、合わせガラスの厚みは、好ましくは2.1mm以上、より好ましくは2.15mm以上である。軽量にする観点からは、合わせガラスの厚みは、好ましくは2.4mm以下、より好ましくは2.3mm以下である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図及び正面図である。図1(a)は、図1(b)中のI−I線に沿う断面図である。図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図である。図3は、本発明の第3の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図である。図4は、本発明の第4の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図である。
なお、図1(a)、図1(b)、図2、図3、図4及び後述する図における合わせガラスの大きさ及び寸法は、図示の便宜上、実際の大きさ及び形状から適宜変更している。図1(a)、図1(b)、図2、図3、図4及び後述の図では、図示の便宜上、合わせガラス及び合わせガラスを構成する各部材の厚み、並びに楔角(θ)は、実際の厚み及び楔角とは異なるように示されている。実際には、実施形態の合わせガラスでは、上記比(第1の合わせガラス部材の厚み/中間膜の厚み)が、2.30以上である。なお、図1(a)、図1(b)、図2、図3、図4及び後述する図において、異なる箇所は互いに置き換え可能である。
図1(a)及び図1(b)には、合わせガラス11が示されている。図2には、合わせガラス11Aが示されている。図3には、合わせガラス11Bが示されている。図4には、合わせガラス11Cが示されている。
合わせガラス11,11A,11B,11Cは、一端11aと、一端11aの反対側に他端11bとを有する。一端11aと他端11bとは対向し合う両側の端部である。合わせガラス11,11A,11B,11Cの他端11bの厚みは一端11aの厚みよりも大きい。従って、合わせガラス11,11A,11B,11Cは、厚みの薄い領域と、厚みの厚い領域とを有する。
合わせガラス11,11A,11B,11Cは、ヘッドアップディスプレイである。合わせガラス11,11A,11B,11Cは、ヘッドアップディスプレイの表示領域R1を有する。
合わせガラス11,11A,11B,11Cは、表示領域R1の隣に周囲領域R2を有する。
合わせガラス11,11A,11B,11Cは、表示領域R1と離れて、シェード領域R3を有する。シェード領域R3は、合わせガラス11,11A,11B,11Cの縁部に位置している。
図1(a)及び図1(b)に示す合わせガラス11は、第1の合わせガラス部材2と、中間膜1と、第2の合わせガラス部材3とを備える。第1の合わせガラス部材2と、中間膜1と、第2の合わせガラス部材3とは、この順で並んで配置されている。中間膜1は、第1の合わせガラス部材2と第2の合わせガラス部材3との間に配置されている。
中間膜1は、2層以上の構造を有する多層の中間膜である。具体的には、中間膜1は、3層の構造を有する。中間膜1は、第2の層22と、第1の層21と、第3の層23とを備える。第2の層22と、第1の層21と、第3の層23とは、この順で並んで配置されている。第1の層21は、第2の層22と第3の層23との間に配置されている。第2の層22は、第1の層21の第1の表面側に配置されている。第3の層23は、第1の層21の上記第1の表面とは反対の第2の表面側に配置されている。
第1の合わせガラス部材2は、楔状であり、0.10mrad以上の楔角を有する。第2の合わせガラス部材3は、楔状であり、0.10mrad以上の楔角を有する。中間膜1は、矩形であり、0.10mrad未満の楔角を有する。第1の層21、第2の層22及び第3の層23は矩形であり、0.10mrad未満の楔角を有する。表示領域R1の中央において、第1の合わせガラス部材2の厚みは2.03mm以上である。表示領域R1の中央において、上記比(第1の合わせガラス部材2の厚み/中間膜1の厚み)は、2.30以上である。
図2に示す合わせガラス11Aは、第1の合わせガラス部材2Aと、中間膜1Aと、第2の合わせガラス部材3Aとを備える。第1の合わせガラス部材2Aと、中間膜1Aと、第2の合わせガラス部材3Aとは、この順で並んで配置されている。中間膜1Aは、第1の合わせガラス部材2Aと第2の合わせガラス部材3Aとの間に配置されている。
中間膜1Aは、2層以上の構造を有する多層の中間膜である。具体的には、中間膜1Aは、3層の構造を有する。中間膜1Aは、第2の層22Aと、第1の層21Aと、第3の層23Aとを備える。第2の層22Aと、第1の層21Aと、第3の層23Aとは、この順で並んで配置されている。第1の層21Aは、第2の層22Aと第3の層23Aとの間に配置されている。第2の層22Aは、第1の層21Aの第1の表面側に配置されている。第3の層23Aは、第1の層21Aの上記第1の表面とは反対の第2の表面側に配置されている。
第1の合わせガラス部材2Aは、楔状であり、0.10mrad以上の楔角を有する。中間膜1A及び第2の合わせガラス部材3Aは、矩形であり、0.10mrad未満の楔角を有する。第1の層21A、第2の層22A及び第3の層23Aは矩形であり、0.10mrad未満の楔角を有する。表示領域R1の中央において、第1の合わせガラス部材2Aの厚みは2.03mm以上である。表示領域R1の中央において、上記比(第1の合わせガラス部材2Aの厚み/中間膜1Aの厚み)は、2.30以上である。
図3に示す合わせガラス11Bは、第1の合わせガラス部材2Bと、中間膜1Bと、第2の合わせガラス部材3Bとを備える。第1の合わせガラス部材2Bと、中間膜1Bと、第2の合わせガラス部材3Bとは、この順で並んで配置されている。中間膜1Bは、第1の合わせガラス部材2Bと第2の合わせガラス部材3Bとの間に配置されている。
中間膜1Bは、2層以上の構造を有する多層の中間膜である。具体的には、中間膜1Bは、3層の構造を有する。中間膜1Bは、第2の層22Bと、第1の層21Bと、第3の層23Bとを備える。第2の層22Bと、第1の層21Bと、第3の層23Bとは、この順で並んで配置されている。第1の層21Bは、第2の層22Bと第3の層23Bとの間に配置されている。第2の層22Bは、第1の層21Bの第1の表面側に配置されている。第3の層23Bは、第1の層21Bの上記第1の表面とは反対の第2の表面側に配置されている。
第1の合わせガラス部材2Bは、楔状であり、0.10mrad以上の楔角を有する。第2の合わせガラス部材3Bは、楔状であり、0.10mrad以上の楔角を有する。中間膜1Bは、0mradを超える楔角を有する。第1の層21Bは矩形であり、0.10mrad未満の楔角を有する。第2の層22B及び第3の層23Bは、0mradを超える楔角を有する。表示領域R1の中央において、第1の合わせガラス部材2Bの厚みは2.03mm以上である。表示領域R1の中央において、上記比(第1の合わせガラス部材2Bの厚み/中間膜1Bの厚み)は、2.30以上である。
図4に示す合わせガラス11Cは、第1の合わせガラス部材2Cと、中間膜1Cと、第2の合わせガラス部材3Cとを備える。第1の合わせガラス部材2Cと、中間膜1Cと、第2の合わせガラス部材3Cとは、この順で並んで配置されている。中間膜1Cは、第1の合わせガラス部材2Cと第2の合わせガラス部材3Cとの間に配置されている。
中間膜1Cは、2層以上の構造を有する多層の中間膜である。具体的には、中間膜1Cは、3層の構造を有する。中間膜1Cは、第2の層22Cと、第1の層21Cと、第3の層23Cとを備える。第2の層22Cと、第1の層21Cと、第3の層23Cとは、この順で並んで配置されている。第1の層21Cは、第2の層22Cと第3の層23Cとの間に配置されている。第2の層22Cは、第1の層21Cの第1の表面側に配置されている。第3の層23Cは、第1の層21Cの上記第1の表面とは反対の第2の表面側に配置されている。
第1の合わせガラス部材2Cは、楔状であり、0.10mrad以上の楔角を有する。第2の合わせガラス部材3Cは、矩形であり、0.10mrad未満の楔角を有する。中間膜1Cは、0mradを超える楔角を有する。第1の層21C及び第3の層23Cは矩形であり、0.10mrad未満の楔角を有する。第2の層22Cは、0mradを超える楔角を有する。表示領域R1の中央において、第1の合わせガラス部材2Cの厚みは2.03mm以上である。表示領域R1の中央において、上記比(第1の合わせガラス部材2Cの厚み/中間膜1Cの厚み)は、2.30以上である。
図5(a)及び(b)は、本発明の第5の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図及び正面図である。図5(a)は、図5(b)中のI−I線に沿う断面図である。図6は、本発明の第6の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図である。図7は、本発明の第7の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図である。図8は、本発明の第8の実施形態に係る合わせガラスを模式的に示す断面図である。
図5(a)及び図5(b)には、合わせガラス11Dが示されている。図6には、合わせガラス11Eが示されている。図7には、合わせガラス11Fが示されている。図8には、合わせガラス11Gが示されている。
合わせガラス11D,11E,11F,11Gは、一端11aと、一端11aの反対側に他端11bとを有する。一端11aと他端11bとは対向し合う両側の端部である。合わせガラス11D,11E,11F,11Gの他端11bの厚みは一端11aの厚みよりも大きい。従って、合わせガラス11D,11E,11F,11Gは、厚みの薄い領域と、厚みの厚い領域とを有する。
合わせガラス11D,11E,11F,11Gは、ヘッドアップディスプレイである。合わせガラス11D,11E,11F,11Gは、ヘッドアップディスプレイの表示領域R1を有する。
合わせガラス11D,11E,11F,11Gは、表示領域R1の隣に周囲領域R2を有する。
合わせガラス11D,11E,11F,11Gは、表示領域R1と離れて、シェード領域R3を有する。シェード領域R3は、合わせガラス11D,11E,11F,11Gの縁部に位置している。
図5(a)及び図5(b)に示す合わせガラス11Dは、第1の合わせガラス部材2Dと、中間膜1Dと、第2の合わせガラス部材3Dとを備える。第1の合わせガラス部材2Dと、中間膜1Dと、第2の合わせガラス部材3Dとは、この順で並んで配置されている。中間膜1Dは、第1の合わせガラス部材2Dと第2の合わせガラス部材3Dの間に配置されている。
中間膜1Dは、1層の構造を有する単層の中間膜である。
第1の合わせガラス部材2Dは、楔状であり、0.10mrad以上の楔角を有する。第2の合わせガラス部材3Dは、楔状であり、0.10mrad以上の楔角を有する。中間膜1Dは、矩形であり、0.10mrad未満の楔角を有する。表示領域R1の中央において、第1の合わせガラス部材2Dの厚みは2.03mm以上である。表示領域R1の中央において、上記比(第1の合わせガラス部材2Dの厚み/中間膜1Dの厚み)は、2.30以上である。
図6に示す合わせガラス11Eは、第1の合わせガラス部材2Eと、中間膜1Eと、第2の合わせガラス部材3Eとを備える。第1の合わせガラス部材2Eと、中間膜1Eと、第2の合わせガラス部材3Eとは、この順で並んで配置されている。中間膜1Eは、第1の合わせガラス部材2Eと第2の合わせガラス部材3Eの間に配置されている。
中間膜1Eは、1層の構造を有する単層の中間膜である。
第1の合わせガラス部材2Eは、楔状であり、0.10mrad以上の楔角を有する。中間膜1E及び第2の合わせガラス部材3Eは、矩形であり、0.10mrad未満の楔角を有する。表示領域R1の中央において、第1の合わせガラス部材2Eの厚みは2.03mm以上である。表示領域R1の中央において、上記比(第1の合わせガラス部材2Eの厚み/中間膜1Eの厚み)は、2.30以上である。
図7に示す合わせガラス11Fは、第1の合わせガラス部材2Fと、中間膜1Fと、第2の合わせガラス部材3Fとを備える。第1の合わせガラス部材2Fと、中間膜1Fと、第2の合わせガラス部材3Fとは、この順で並んで配置されている。中間膜1Fは、第1の合わせガラス部材2Fと第2の合わせガラス部材3Fの間に配置されている。
中間膜1Fは、1層の構造を有する単層の中間膜である。
第1の合わせガラス部材2Fは、楔状であり、0.10mrad以上の楔角を有する。第2の合わせガラス部材3Fは、楔状であり、0.10mrad以上の楔角を有する。中間膜1Fは、0mradを超える楔角を有する。表示領域R1の中央において、第1の合わせガラス部材2Fの厚みは2.03mm以上である。表示領域R1の中央において、上記比(第1の合わせガラス部材2Fの厚み/中間膜1Fの厚み)は、2.30である。
図8に示す合わせガラス11Gは、第1の合わせガラス部材2Gと、中間膜1Gと、第2の合わせガラス部材3Gとを備える。第1の合わせガラス部材2Gと、中間膜1Gと、第2の合わせガラス部材3Gとは、この順で並んで配置されている。中間膜1Gは、第1の合わせガラス部材2Gと第2の合わせガラス部材3Gの間に配置されている。
中間膜1Gは、1層の構造を有する単層の中間膜である。
第1の合わせガラス部材2Gは、楔状であり、0.10mrad以上の楔角を有する。第2の合わせガラス部材3Gは、矩形であり、0.10mrad未満の楔角を有する。中間膜1Gは、0mradを超える楔角を有する。表示領域R1の中央において、第1の合わせガラス部材2Gの厚みは2.03mm以上である。表示領域R1の中央において、上記比(第1の合わせガラス部材2Gの厚み/中間膜1Gの厚み)は、2.30以上である。
多重像をより一層効果的に抑える観点からは、上記合わせガラスは、上記一端から上記他端に向けて6cmの位置から、上記一端(薄い側)から他端に向けて63.8cmの位置までの領域内に、上記表示領域を有することが好ましい。上記表示領域は、上記一端から上記他端に向けて6cmの位置から、上記一端から他端に向けて63.8cmの位置までの領域内の一部に存在していてもよく、全体に存在していてもよい。
合わせガラスは、厚み方向の断面形状が楔状である部分を有することが好ましい。表示領域の厚み方向の断面形状が楔状であることが好ましい。楔状及び矩形であるか否かは、厚み方向の断面形状で判断することができる。
多重像を効果的に抑える観点からは、上記一端から上記他端に向けて6cmの位置から、上記一端から上記他端に向けて63.8cmの位置までの領域において、合わせガラスは、厚み方向の断面形状が楔状である部分を有することが好ましい。厚み方向の断面形状が楔状である部分は、上記一端から他端に向けて63.8cmの位置までの領域内の一部に存在していてもよく、全体に存在していてもよい。
上記中間膜及び上記合わせガラスは、シェード領域を有していてもよい。上記シェード領域は、上記表示対応領域と離れていてもよい。上記シェード領域は、例えば、太陽光線又は屋外照明等により、運転中のドライバーが眩しさを感じるのを防ぐことなどを目的として設けられる。上記シェード領域は、遮熱性を付与するために設けられることもある。上記シェード領域は、中間膜又は合わせガラスの縁部に位置することが好ましい。上記シェード領域は帯状であることが好ましい。
シェード領域においては、色及び可視光線透過率を変えたりするために、着色剤又は充填剤を用いてもよい。着色剤又は充填剤は、中間膜の厚み方向の一部の領域にのみ含まれていてもよく、中間膜又は合わせガラスの厚み方向の全体の領域に含まれていてもよい。
表示をより一層良好にし、視野をより一層広げる観点からは、上記表示対応領域及び上記表示領域の可視光線透過率は好ましくは80%以上、より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上である。上記表示対応領域及び上記表示領域の可視光線透過率は、上記シェード領域の可視光線透過率よりも高いことが好ましい。上記表示対応領域及び上記表示領域の可視光線透過率は、上記シェード領域の可視光線透過率よりも低くてもよい。上記表示対応領域及び上記表示領域の可視光線透過率は、上記シェード領域の可視光線透過率よりも、好ましくは50%以上高く、より好ましくは60%以上高い。
なお、例えば、表示対応領域、表示領域及びシェード領域において、可視光線透過率が変化している場合には、表示対応領域の中心位置、表示領域の中間位置及びシェード領域の中心位置にて、可視光線透過率が測定される。
分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3211(1998)に準拠して、380〜780nmにおける上記可視光線透過率を測定することができる。
上記表示対応領域及び上記表示領域は、長さ方向と幅方向とを有することが好ましい。中間膜及び合わせガラスの汎用性に優れるので、上記表示対応領域及び上記表示領域の幅方向が、上記一端と上記他端とを結ぶ方向であることが好ましい。上記表示対応領域及び上記表示領域は、帯状であることが好ましい。
上記中間膜は、MD方向とTD方向とを有することが好ましい。中間膜は、例えば、溶融押出成形により得られる。MD方向は、中間膜の製造時の中間膜の流れ方向である。TD方向は、中間膜の製造時の中間膜の流れ方向と直交する方向であり、かつ中間膜の厚み方向と直交する方向である。上記一端と上記他端とが、TD方向の両側に位置していることが好ましい。
一端と他端との間の距離をXとする。合わせガラスは、一端から内側に向かって0X〜0.2Xの距離の領域に最小厚みを有し、他端から内側に向かって0X〜0.2Xの距離の領域に最大厚みを有することが好ましい。合わせガラスは、一端から内側に向かって0X〜0.1Xの距離の領域に最小厚みを有し、他端から内側に向かって0X〜0.1Xの距離の領域に最大厚みを有することがより好ましい。合わせガラスは一端に最小厚みを有し、合わせガラスは他端に最大厚みを有することが好ましい。
合わせガラスは、厚み均一部位を有していてもよい。上記厚み均一部位とは、合わせガラスの上記一端と上記他端を結ぶ方向での10cmの距離範囲あたり、厚みが10μmを超えて変化していないことをいう。従って、上記厚み均一部位は、合わせガラスの上記一端と上記他端を結ぶ方向での10cmの距離範囲あたり、厚みが10μmを超えて変化していない部位をいう。具体的には、上記厚み均一部位は、合わせガラスの上記一端と上記他端を結ぶ方向で厚みが全く変化していないか、又は、合わせガラスの上記一端と上記他端を結ぶ方向での10cmの距離範囲あたり、厚みが10μm以下で変化している部位をいう。
合わせガラスの一端と他端との距離Xは、好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下、特に好ましくは1.5m以下であり、好ましくは0.5m以上、より好ましくは0.8m以上、特に好ましくは1m以上である。
上記中間膜は、ロール状に巻かれて、中間膜のロール体とされてもよい。ロール体は、巻き芯と、中間膜とを備えていてもよい。中間膜は、巻き芯の外周に巻かれてもよい。
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1,第2の合わせガラス部材の間に、上記中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバックに入れて減圧吸引したりする。これにより、第1の合わせガラス部材と中間膜及び第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70〜110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。
上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。上記合わせガラスは、建築用又は車両用の合わせガラスであることが好ましく、車両用の合わせガラスであることがより好ましい。上記合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記合わせガラスは、自動車のフロントガラスであることが特に好ましい。
以下、本発明に係る合わせガラスを構成する各部材の他の詳細を説明する。
(第1,第2の合わせガラス部材)
上記第1,第2の合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。上記合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間層が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間層が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。上記第1,第2の合わせガラス部材がそれぞれガラス板又はPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムであり、かつ上記合わせガラスが、上記第1,第2の合わせガラス部材として、少なくとも1枚のガラス板を含むことが好ましい。上記第1,第2の合わせガラス部材の双方がガラス板であることが特に好ましい。
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス及びグリーンガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材はそれぞれ、クリアガラス又は熱線吸収板ガラスであることが好ましい。熱線吸収板ガラスは、グリーンガラスであることが好ましい。上記熱線吸収板ガラスは、JIS R3208に準拠した熱線吸収板ガラスである。
(中間膜)
中間膜の厚みをTとする。上記第1の層の厚みは、好ましくは0.035T以上、より好ましくは0.0625T以上、更に好ましくは0.1T以上、好ましくは0.4T以下、より好ましくは0.375T以下、更に好ましくは0.25T以下、特に好ましくは0.15T以下である。上記第1の層の厚みが0.4T以下であると、曲げ剛性がより一層良好になる。
上記第2の層及び上記第3の層の各厚みは、好ましくは0.3T以上、より好ましくは0.3125T以上、更に好ましくは0.375T以上、好ましくは0.97T以下、より好ましくは0.9375T以下、更に好ましくは0.9T以下である。上記第2の層及び上記第3の層の各厚みは、0.46875T以下であってもよく、0.45T以下であってもよい。また、上記第2の層及び上記第3の層の各厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、合わせガラスの剛性と遮音性がより一層高くなる。
上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みは、好ましくは0.625T以上、より好ましくは0.75T以上、更に好ましくは0.85T以上、好ましくは0.97T以下、より好ましくは0.9375T以下、更に好ましくは0.9T以下である。また、上記第2の層及び上記第3の層の合計の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、合わせガラスの剛性と遮音性がより一層高くなる。
熱可塑性樹脂:
中間膜は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(0)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(0)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(0)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(1)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(2)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂(3)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂(1)と上記熱可塑性樹脂(2)と上記熱可塑性樹脂(3)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。遮音性がより一層高くなることから、上記熱可塑性樹脂(1)は、上記熱可塑性樹脂(2)及び上記熱可塑性樹脂(3)と異なることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)と上記ポリビニルアセタール樹脂(2)と上記ポリビニルアセタール樹脂(3)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。遮音性がより一層高くなることから、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)と異なることが好ましい。上記熱可塑性樹脂(0)、上記熱可塑性樹脂(1)、上記熱可塑性樹脂(2)及び上記熱可塑性樹脂(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記ポリビニルアセタール樹脂(0)、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、合わせガラス部材又は他の層に対するポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む層の接着力がより一層高くなる。
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)をアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.9モル%の範囲内である。
上記ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、より一層好ましくは1500以上、更に好ましくは1600以上、特に好ましくは2600以上、最も好ましくは2700以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれるアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3〜5であることが好ましく、3又は4であることがより好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数が3以上であると、中間膜のガラス転移温度が充分に低くなる。
上記アルデヒドは特に限定されない。一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ポリビニルアセタール樹脂(0)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは15モル%以上、より好ましくは18モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは17モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは22モル%以上、好ましくは28モル%以下、より好ましくは27モル%以下、更に好ましくは25モル%以下、特に好ましくは24モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の機械強度がより一層高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率が20モル%以上であると反応効率が高く生産性に優れ、また28モル%以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、好ましくは25モル%以上、より好ましくは28モル%以上、より好ましくは30モル%以上、より一層好ましくは31.5モル%以上、更に好ましくは32モル%以上、特に好ましくは33モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、好ましくは38モル%以下、より好ましくは37モル%以下、更に好ましくは36.5モル%以下、特に好ましくは36モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率よりも低いことが好ましい。遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値、及び、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率との差の絶対値は、好ましくは20モル%以下である。
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
上記ポリビニルアセタール樹脂(0)のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.3モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、より一層好ましくは7モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは24モル%以下、特に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセチル化度が0.1モル%以上、25モル%以下であると、耐貫通性に優れる。
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセチル化度は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、好ましくは10モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
上記アセチル化度は、アセチル基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセチル基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
上記ポリビニルアセタール樹脂(0)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは63モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは47モル%以上、より好ましくは60モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、好ましくは75モル%以下、より好ましくは71モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
上記アセタール化度は、主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。但し、ASTM D1396−92による測定を用いてもよい。ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
可塑剤:
中間膜の接着力をより一層高める観点からは、上記中間膜は、可塑剤(以下、可塑剤(0)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、可塑剤(以下、可塑剤(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、可塑剤(以下、可塑剤(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、可塑剤(以下、可塑剤(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。中間膜に含まれている熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である場合に、中間膜(各層)は、可塑剤を含むことが特に好ましい。ポリビニルアセタール樹脂を含む層は、可塑剤を含むことが好ましい。
上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤として、従来公知の可塑剤を用いることができる。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などの有機リン酸可塑剤等が挙げられる。有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
上記一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
上記有機エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ−2−エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
上記有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数5〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは3〜10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数6〜10の有機基であることが好ましい。
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)又はトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)を含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。
上記中間膜において、上記熱可塑性樹脂(0)100重量部に対する上記可塑剤(0)の含有量を含有量(0)とする。上記含有量(0)は、好ましくは25重量部以上、より好ましくは30重量部以上、好ましくは100重量部以下、より好ましくは60重量部以下、更に好ましくは50重量部以下である。上記含有量(0)が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記含有量(0)が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
上記第1の層において、上記熱可塑性樹脂(1)100重量部に対する上記可塑剤(1)の含有量を、含有量(1)とする。上記含有量(1)は、好ましくは50重量部以上、より好ましくは55重量部以上、更に好ましくは60重量部以上、好ましくは100重量部以下、より好ましくは90重量部以下、更に好ましくは85重量部以下、特に好ましくは80重量部以下である。上記含有量(1)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(1)が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
上記第2の層において、上記熱可塑性樹脂(2)100重量部に対する上記可塑剤(2)の含有量を、含有量(2)とする。上記第3の層において、上記熱可塑性樹脂(3)100重量部に対する上記可塑剤(3)の含有量を、含有量(3)とする。上記含有量(2)及び上記含有量(3)はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上、特に好ましくは24重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下、更に好ましくは32重量部以下、特に好ましくは30重量部以下である。上記含有量(2)及び上記含有量(3)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(2)及び上記含有量(3)が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
合わせガラスの遮音性を高めるために、上記含有量(1)は上記含有量(2)よりも多いことが好ましく、上記含有量(1)は上記含有量(3)よりも多いことが好ましい。
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上である。上記含有量(2)と上記含有量(1)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(1)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは80重量部以下、より好ましくは75重量部以下、更に好ましくは70重量部以下である。
遮熱性物質:
上記中間膜は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記第1の層は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記第2の層は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記第3の層は、遮熱性物質を含むことが好ましい。上記遮熱性物質は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記遮熱性物質は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むか、又は遮熱粒子を含むことが好ましい。この場合に、上記成分Xと上記遮熱粒子との双方を含んでいてもよい。
上記中間膜は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むことが好ましい。上記第1の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記成分Xは遮熱性物質である。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記成分Xは特に限定されない。成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。
上記成分Xとしては、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン、ナフタロシアニンの誘導体、アントラシアニン及びアントラシアニンの誘導体等が挙げられる。上記フタロシアニン化合物及び上記フタロシアニンの誘導体はそれぞれ、フタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記ナフタロシアニン化合物及び上記ナフタロシアニンの誘導体はそれぞれ、ナフタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記アントラシアニン化合物及び上記アントラシアニンの誘導体はそれぞれ、アントラシアニン骨格を有することが好ましい。
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フタロシアニン及びフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子を含有することが好ましく、銅原子を含有することも好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニン及びバナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子に酸素原子が結合した構造単位を有することが好ましい。
上記中間膜100重量%中又は上記成分Xを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上である。上記中間膜100重量%中又は上記成分Xを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.04重量%以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。例えば、可視光線透過率を70%以上にすることが可能である。
上記中間膜は、遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第1の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第2の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第3の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記遮熱粒子は遮熱性物質である。遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。上記遮熱粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
合わせガラスの遮熱性をより一層高める観点からは、上記遮熱粒子は、金属酸化物粒子であることがより好ましい。上記遮熱粒子は、金属の酸化物により形成された粒子(金属酸化物粒子)であることが好ましい。
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質に吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収可能な粒子を意味する。
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB6)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。熱線の遮蔽機能が高いため、金属酸化物粒子が好ましく、ATO粒子、GZO粒子、IZO粒子、ITO粒子又は酸化タングステン粒子がより好ましく、ATO粒子、ITO粒子又は酸化タングステン粒子が更に好ましく、ITO粒子又は酸化タングステン粒子が特に好ましい。特に、熱線の遮蔽機能が高く、かつ入手が容易であるので、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)が好ましく、酸化タングステン粒子も好ましい。
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、酸化タングステン粒子は、金属ドープ酸化タングステン粒子であることが好ましい。上記「酸化タングステン粒子」には、金属ドープ酸化タングステン粒子が含まれる。上記金属ドープ酸化タングステン粒子としては、具体的には、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子及びルビジウムドープ酸化タングステン粒子等が挙げられる。
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、セシウムドープ酸化タングステン粒子が特に好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、該セシウムドープ酸化タングステン粒子は、式:Cs0.33WO3で表される酸化タングステン粒子であることが好ましい。
上記遮熱粒子の平均粒子径は好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、熱線の遮蔽性が充分に高くなる。平均粒子径が上記上限以下であると、遮熱粒子の分散性が高くなる。
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA−EX150」)等を用いて測定できる。
上記中間膜100重量%中又は上記遮熱粒子を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記遮熱粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上である。上記中間膜100重量%中又は上記遮熱粒子を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記遮熱粒子の含有量は、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、更に好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3.5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。上記遮熱粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。
金属塩:
上記中間膜は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びマグネシウム塩の内の少なくとも1種の金属塩(以下、金属塩Mと記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記金属塩Mの使用により、中間膜とガラス板などの合わせガラス部材との接着性又は中間膜における各層間の接着性を制御することが容易になる。上記金属塩Mは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記金属塩Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。中間膜中に含まれている金属塩は、K及びMgの内の少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
また、上記金属塩Mは、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ金属塩、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ土類金属塩又は炭素数2〜16の有機酸のマグネシウム塩であることがより好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩又は炭素数2〜16のカルボン酸カリウム塩であることが更に好ましい。
上記炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩及び上記炭素数2〜16のカルボン酸カリウム塩としては、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチル酪酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム及び2−エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
上記金属塩Mを含む中間膜、又は上記金属塩Mを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)におけるMg及びKの含有量の合計は、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは20ppm以上、好ましくは300ppm以下、より好ましくは250ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。Mg及びKの含有量の合計が上記下限以上及び上記上限以下であると、中間膜とガラス板との接着性又は中間膜における各層間の接着性をより一層良好に制御できる。
紫外線遮蔽剤:
上記中間膜は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。紫外線遮蔽剤の使用により、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。上記紫外線遮蔽剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記紫外線遮蔽剤には、紫外線吸収剤が含まれる。上記紫外線遮蔽剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
上記紫外線遮蔽剤としては、例えば、金属原子を含む紫外線遮蔽剤、金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤、ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾトリアゾール化合物)、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾフェノン化合物)、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤(トリアジン化合物)、マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤(マロン酸エステル化合物)、シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤(シュウ酸アニリド化合物)及びベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤(ベンゾエート化合物)等が挙げられる。
上記金属原子を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、白金粒子、白金粒子の表面をシリカで被覆した粒子、パラジウム粒子及びパラジウム粒子の表面をシリカで被覆した粒子等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、遮熱粒子ではないことが好ましい。
上記紫外線遮蔽剤は、好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤である。上記紫外線遮蔽剤は、より好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤であり、更に好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤である。
上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウム等が挙げられる。さらに、上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤に関して、表面が被覆されていてもよい。上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤の表面の被覆材料としては、絶縁性金属酸化物、加水分解性有機ケイ素化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。
上記絶縁性金属酸化物としては、シリカ、アルミナ及びジルコニア等が挙げられる。上記絶縁性金属酸化物は、例えば5.0eV以上のバンドギャップエネルギーを有する。
上記ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等が挙げられる。紫外線を遮蔽する性能に優れることから、上記紫外線遮蔽剤は、ハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることが好ましく、塩素原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることがより好ましい。
上記ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
上記トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、ADEKA社製「LA−F70」及び2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(BASF社製「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤としては、2−(p−メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル−2,2−(1,4−フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、2−(p−メトキシベンジリデン)−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル4−ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤の市販品としては、Hostavin B−CAP、Hostavin PR−25、Hostavin PR−31(いずれもクラリアント社製)が挙げられる。
上記シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤としては、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−5−t−ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシ−フェニル)シュウ酸ジアミド、2−エチル−2’−エトキシ−オキシアニリド(クラリアント社製「SanduvorVSU」)などの窒素原子上に置換されたアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。
上記ベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(BASF社製「Tinuvin120」)等が挙げられる。
上記中間膜100重量%中又は上記紫外線遮蔽剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上である。上記中間膜100重量%中又は上記紫外線遮蔽剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。上記紫外線遮蔽剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、期間経過後の可視光線透過率の低下をより一層抑制することができる。特に、上記紫外線遮蔽剤を含む層100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量が0.2重量%以上であることにより、中間膜及び合わせガラスの期間経過後の可視光線透過率の低下を顕著に抑制できる。
酸化防止剤:
上記中間膜は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。
上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤又はリン系酸化防止剤であることが好ましい。
上記フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’−t−ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
上記リン系酸化防止剤としては、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、及び2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
上記酸化防止剤の市販品としては、例えばBASF社製「IRGANOX 245」、BASF社製「IRGAFOS 168」、BASF社製「IRGAFOS 38」、住友化学工業社製「スミライザーBHT」、堺化学工業社製「H−BHT」、並びにBASF社製「IRGANOX 1010」等が挙げられる。
中間膜及び合わせガラスの高い可視光線透過率を長期間に渡り維持するために、上記中間膜100重量%中又は酸化防止剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は0.1重量%以上であることが好ましい。また、酸化防止剤の添加効果が飽和するので、上記中間膜100重量%中又は上記酸化防止剤を含む層100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は2重量%以下であることが好ましい。
他の成分:
上記中間膜、上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層はそれぞれ、必要に応じて、カップリング剤、分散剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、金属塩以外の接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(合わせガラスの取り付け方法)
本発明に係る合わせガラスの取り付け方法は、上述した合わせガラスを、建築物又は車両において外部空間と該外部空間から熱線が入射される内部空間との間の開口部に取り付ける方法である。
具体的には、第1の合わせガラス部材及び第2の合わせガラス部材のうちの一方が、内部空間側に位置するように、かつ第1の合わせガラス部材及び第2の合わせガラス部材のうちの他方が、外部空間側に位置するように、合わせガラスを開口部に取り付ける。すなわち、内部空間/第1の合わせガラス部材(又は第2の合わせガラス部材)/中間膜/第2の合わせガラス部材(又は第1の合わせガラス部材)/外部空間の順に配置されるように、合わせガラスを取り付ける。上記の配置形態には、内部空間と第1の合わせガラス部材又は第2の合わせガラス部材との間に他の部材が配置されている場合が含まれ、外部空間と第1の合わせガラス部材又は第2の合わせガラス部材との間に他の部材が配置されている場合が含まれる。
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
用いたポリビニルアセタール樹脂では、アセタール化に、炭素数4のn−ブチルアルデヒドが用いられている。ポリビニルアセタール樹脂に関しては、アセタール化度(ブチラール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定した。なお、ASTM D1396−92により測定した場合も、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法と同様の数値を示した。
(実施例1〜5及び比較例1〜4)
(中間膜の作製方法)
第1の層を形成するための組成物の作製:
以下の成分を、ミキシングロールで充分に混練し、第1の層を形成するための組成物を得た。
ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度3000、水酸基の含有率24モル%、アセチル化度12モル%、アセタール化度64モル%)100重量部
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)60重量部
Tinuvin326(2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)を得られる中間膜中で0.2重量%となる量
BHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)0.2重量部を得られる中間膜中で0.2重量%となる量
第2の層及び第3の層を形成するための組成物の作製:
以下の成分をミキシングロールで充分に混練し、第2の層及び第3の層を形成するための組成物を得た。
ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1700、水酸基の含有率30.6モル%、アセチル化度0.9モル%、アセタール化度68.5モル%)100重量部
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)38重量部
Tinuvin326(2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)を得られる中間膜中で0.2重量%となる量
BHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)を得られる中間膜中で0.2重量%となる量
中間膜の作製:
第1の層を形成するための組成物と、第2の層及び第3の層を形成するための組成物とを、共押出機を用いて共押出した。
このようにして、第2の層/第1の層/第3の層の積層構造を有する矩形の中間膜を作製した。第2の層/第1の層/第3の層の厚み比は、3.5:1:3.5であった。
(合わせガラスの作製方法)
以下のようにして作製される合わせガラスについて、後述する評価を実施した。
下記の表1に示す形状、厚み及び楔角を有するクリアガラスを用意する。
一対のガラス板の間に、ガラス板の大きさに対応する大きさの中間膜を挟み込んで、積層体を得た。得られた積層体を、EPDM製ゴムチューブ(枠部材)にはめ込んだ。ゴムチューブの幅は15mmである。次に、EPDM製ゴムチューブにはめ込まれた積層体を真空バッグ法により、予備圧着した。予備圧着された積層体を、オートクレーブを用いて、150℃及び1.2MPaの圧力で圧着することにより、合わせガラスを得る。
(実施例6〜10及び比較例5〜8)
(中間膜の作製方法)
中間膜(第1の層)を形成するための組成物の作製:
以下の成分を、ミキシングロールで充分に混練し、中間膜を形成するための組成物を得た。
ポリビニルアセタール樹脂(平均重合度1700、水酸基の含有率30.6モル%、アセチル化度0.9モル%、アセタール化度68.5モル%)100重量部
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部
Tinuvin326(2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)を得られる中間膜中で0.2重量%となる量
BHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)0.2重量部を得られる中間膜中で0.2重量%となる量
中間膜の作製:
中間膜を形成するための組成物を、押出機を用いて押出した。
このようにして、1層の構造を有する矩形の中間膜を作製した。
(合わせガラスの作製方法)
以下のようにして、作製される合わせガラスについて、後述する評価を実施した。
下記の表2に示す形状、厚み及び楔角を有するクリアガラスを用意する。
一対のガラス板の間に、ガラス板の大きさに対応する大きさの中間膜を挟み込んで、積層体を得た。得られた積層体を、EPDM製ゴムチューブ(枠部材)にはめ込んだ。ゴムチューブの幅は15mmである。次に、EPDM製ゴムチューブにはめ込まれた積層体を真空バッグ法により、予備圧着した。予備圧着された積層体を、オートクレーブを用いて、150℃及び1.2MPaの圧力で圧着することにより、合わせガラスを得る。
(評価)
得られた合わせガラスをフロントガラスの位置に設置した。合わせガラスの下方に設置した表示ユニットから表示情報を合わせガラスに反射させ、所定の位置(表示領域の中央)で多重像の有無を目視で確認した。多重像を下記の基準で判定した。なお、多重像は、実施例及び比較例の合わせガラスの表示領域の中心を含む縦700mm、横500mm合わせガラス部分領域に対応する合わせガラス(縦700mm、横500mm)を作製して、該合わせガラスをフロントガラスの表示領域に設置して評価した。
[多重像の判定基準]
○:多重像が確認されない
×:多重像が確認される
詳細及び結果を下記の表1,2に示す。得られた合わせガラスでは、第1の合わせガラス部材、中間膜及び第2の合わせガラス部材が、表1,2中の形状、厚み及び楔角を有していた。
なお、実施例1〜5で得られた中間膜を用いた合わせガラスについて、音響透過損失により遮音性を評価した結果、遮音性に優れていることを確認した。