JP2019106955A - 植物栽培方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光制御によって植物の花成を促進する栽培装置及び栽培方法において、低コストで十分な光強度を得ることができ、且つ、太陽光を利用する栽培方法であっても適用することができる栽培装置及び栽培方法を提供する。【解決手段】白色蛍光灯を光源として白色光を8時間照射し、その後、LEDパネル光源として青色LEDを利用して青色光(ピーク波長470nm)を6時間照射し、暗期を10時間に設定した実験区3では、苗番「24」、「28」、「27」の苗に花芽が形成された。干渉苗のうち、苗番「M」、「J」の苗にも花芽が形成された。実験区3において、光源直下の苗には花芽が形成されず、光源から比較的離れている苗に花芽が形成される傾向が示された。また、干渉苗のうち、実験区3寄りの苗に花芽が形成される傾向が示された。【選択図】図2
Description
本発明は、植物栽培方法に係り、特に、光環境の制御により植物の花成を促進する栽培技術を用いた植物栽培方法に関する。
従来から、植物を栽培する場合において、蛍光灯やLED等を光源として植物に人工的な光を照射し、光合成を促進して植物を効率良く生育させることが行われている。
特に、遠赤色光(700〜800nm)、赤色光(600〜700nm)及び青色光(400〜500nm)が光合成に有効な光であることは既に知られており、例えば、果樹に遠赤色光を照射することによって花成を促進することや(非特許文献1)、植物の花芽形成を赤色光や青色光を用いて制御すること(特許文献1)が開示されている。
特に、遠赤色光(700〜800nm)、赤色光(600〜700nm)及び青色光(400〜500nm)が光合成に有効な光であることは既に知られており、例えば、果樹に遠赤色光を照射することによって花成を促進することや(非特許文献1)、植物の花芽形成を赤色光や青色光を用いて制御すること(特許文献1)が開示されている。
非特許文献1では、バラ科ナシ亜科の果樹であるニホンナシに700〜800nmの遠赤色光を夜間照射することによって花芽形成を促進することが開示されており、特に、730nm付近の波長の光が花芽形成の促進に効果的であることが開示されている。
また、特許文献1では、光質(赤色光と青色光)、赤色光の光強度、加えて、赤色光と青色光の照射タイミングの選択を、植物種と目的に応じて選択することによって、環境負荷の問題を抱える矮化剤を一切使用することなく、主茎の伸長を制御することができ、目的に応じて自由に、花成を促進又は抑制できることが開示されている。
また、特許文献1では、光質(赤色光と青色光)、赤色光の光強度、加えて、赤色光と青色光の照射タイミングの選択を、植物種と目的に応じて選択することによって、環境負荷の問題を抱える矮化剤を一切使用することなく、主茎の伸長を制御することができ、目的に応じて自由に、花成を促進又は抑制できることが開示されている。
伊東明子、齋藤隆徳、西島隆明、森口卓哉 Tree Physiology 34, 534-546 (2014)
しかしながら、非特許文献1のように遠赤色光を利用する場合、果樹等の植物の花成を促進するために十分な光強度の光量を得るためには、出力の大きな照明装置が必要であり、多大なコストがかかるという問題がある。
また、特許文献1のような赤色光や青色光による花成制御は、環境制御された植物工場等の栽培施設内においては実施可能であるが、露地やハウス等の日中の太陽光を利用する栽培方法では適用することができない。また、非特許文献1の場合と同様、十分な光強度の光量の赤色光を得るためには、出力の大きな照明装置が必要であり、多大なコストがかかるという問題がある。
また、特許文献1のような赤色光や青色光による花成制御は、環境制御された植物工場等の栽培施設内においては実施可能であるが、露地やハウス等の日中の太陽光を利用する栽培方法では適用することができない。また、非特許文献1の場合と同様、十分な光強度の光量の赤色光を得るためには、出力の大きな照明装置が必要であり、多大なコストがかかるという問題がある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、光制御によって植物の花成を促進する栽培技術を用いた植物栽培方法において、植物の花成に十分な光強度の光量を安価に得ることができ、且つ、太陽光を利用する露地やハウス栽培であっても適用することができる植物栽培方法を提供することにある。
前記課題は、本発明の植物の栽培方法によれば、栄養成長を遂げた植物苗に対し、光強度が0.4〜5.0μmol/m2/sの光量子束密度に調整された青色光を所定時間照射する弱青色光照射工程を有すること、により解決される。
青色光は、安価であり、容易に入手できることから、低コストで十分な光強度が得やすい。そのため、赤色光や遠赤色光の場合、植物の花成を促進するために十分な光強度の光量を得るためには、出力が大きな照明装置が必要であり、多大なコストがかかるが、本発明のように光強度が0.4〜5.0μmol/m2/s程度の光量子束密度に調整されたごく弱い青色光を利用することにより、安価に植物の花成を促進することができる。
ここで、栄養成長を遂げた植物苗とは、茎、葉、根等の栄養器官を分化、形成する栄養成長がある程度終了した後、花芽をつくり、花を咲かせ、実を結んで種をつくる生殖成長の段階に転換・移行した植物苗のことをいう。また、花成とは、この転換移行期に花芽が形成され始めることをいう。
また、青色光とは、可視光線のうち約400〜500nmの青色に見える短波光のことをいう。
ここで、栄養成長を遂げた植物苗とは、茎、葉、根等の栄養器官を分化、形成する栄養成長がある程度終了した後、花芽をつくり、花を咲かせ、実を結んで種をつくる生殖成長の段階に転換・移行した植物苗のことをいう。また、花成とは、この転換移行期に花芽が形成され始めることをいう。
また、青色光とは、可視光線のうち約400〜500nmの青色に見える短波光のことをいう。
また、本発明の植物の栽培方法では、前記弱青色光照射工程の前に白色光を所定時間照射する白色光照射工程と、前記弱青色光照射工程の後に光を所定時間照射しない暗期工程と、をさらに有すること、が良い。
弱青色光と、太陽光のように各波長の光線が混合して成る白色光とを組み合わせて利用し、さらに光を照射しない暗期を設定することにより、より安価に植物の花成を促進することができる。特に、日中は白色光と同等の太陽光を利用し、夕方から夜にかけて暗期に入った直後から弱青色光を照射することとすれば、露地やハウス栽培等においても適用することができる。
ここで、白色光とは、各波長の光線が略均等に混合して色相の感覚を与えない光であり、蛍光灯やLED等による人工的な光の他、太陽光をも含むものである。
また、暗期とは、光を照射しない期間のことをいい、植物の光周性を調節する日長のうちの夜に相当する部分をいう。
ここで、白色光とは、各波長の光線が略均等に混合して色相の感覚を与えない光であり、蛍光灯やLED等による人工的な光の他、太陽光をも含むものである。
また、暗期とは、光を照射しない期間のことをいい、植物の光周性を調節する日長のうちの夜に相当する部分をいう。
また、前記白色光は、太陽光である、と良い。
白色光として太陽光を弱青色光と組み合わせて利用することにより、より安価に植物の花成を促進することができる。特に、日中は白色光と同等の太陽光を利用し、夕方から夜にかけて暗期に入った直後から弱青色光を照射することになるので、露地やハウス栽培等においても適用することができる。
また、前記青色光の波長は、450〜470nmである、と良い。
照射する弱青色光の波長を、青色光受容体タンパク質であるクリプトクロムの吸収波長領域に基づいて、450〜470nmとすれば、植物の花成をより促進することができる。特に、クリプトクロムの吸収波長に基づいて470nmの波長の青色光が最も好ましい。
また、前記植物苗は、最大茎径4.0cm以上、且つ、最大草丈50.0cm以上である、と良い。
弱青色光を照射する対象となる植物苗を、最大茎径4.0cm以上、且つ、最大草丈50.0cm以上の、十分に栄養成長を遂げた後の充実した植物苗とすることにより、植物の花成をより促進することができる。
また、前記植物苗は、花芽形成に必要な低温量が少ない品種である、と良い。
弱青色光を照射する対象となる植物苗を、花芽形成に必要な低温量が少ない品種、例えば、レモン等の柑橘類、イチジク、オリーブ、ビワ、キンカン、アセロラ、グアバ、マンゴー、パッションフルーツ、ドラゴンフルーツ、パイナップル、ザクロ、パパイヤ、ココナッツ、マンゴスチン等、温暖な気候に適した果樹や四季成り品種等とすることにより、植物の花成をより促進することができる。
本発明の植物栽培方法によれば、光制御によって植物の花成を促進する栽培技術を用いた植物栽培方法において、植物の花成に十分な光強度の光量を安価に得ることができ、且つ、太陽光を利用する露地やハウス栽培であっても適用することができる。
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)について図面を参照して説明する。
本実施形態は、光環境の制御により植物の花成を促進する栽培技術を用いた植物栽培方法に関するものである。
本実施形態は、光環境の制御により植物の花成を促進する栽培技術を用いた植物栽培方法に関するものである。
<実験の趣旨並びに実験に使用した材料及び方法>
青色光が植物体中の花成遺伝子に働きかけ、花成促進や開花促進効果があることはよく知られている。先行研究において、ニホンナシの花芽形成が遠赤色光によって促進されるという報告があり(非特許文献1)、これも同様に花成遺伝子への作用によるものと考察される。ここでは、遠赤色光だけでなく青色光によっても果樹等の植物の花成促進効果が認められるかを確認するため、以下の材料及び方法によって栽培試験を実施した。
青色光が植物体中の花成遺伝子に働きかけ、花成促進や開花促進効果があることはよく知られている。先行研究において、ニホンナシの花芽形成が遠赤色光によって促進されるという報告があり(非特許文献1)、これも同様に花成遺伝子への作用によるものと考察される。ここでは、遠赤色光だけでなく青色光によっても果樹等の植物の花成促進効果が認められるかを確認するため、以下の材料及び方法によって栽培試験を実施した。
供試植物には、バラ科キイチゴ属に属するラズベリーを採用し、ある程度栄養成長を遂げた状態の苗を利用した。
実験は2017年7月18日に開始し、1日24時間を一区切りとし、照射する光質及び照射時間の違いにより実験区を設定した。そして、供試植物である苗は、一株ずつビニールポットに鉢植えし、各実験区において光源との距離が異なる位置に配置した。これにより、それぞれの苗を異なる光質及び光強度という条件の下で栽培した。
実験は2017年7月18日に開始し、1日24時間を一区切りとし、照射する光質及び照射時間の違いにより実験区を設定した。そして、供試植物である苗は、一株ずつビニールポットに鉢植えし、各実験区において光源との距離が異なる位置に配置した。これにより、それぞれの苗を異なる光質及び光強度という条件の下で栽培した。
図1は、本実施形態の実験の設定条件を示す説明図であり、具体的には、各実験区の光質及び照射時間を比較した図である。
実験区1は、白色蛍光灯(日立アプライアンス株式会社製Hf形蛍光ランプ(3波長形昼白色)FHF32EX−D−VJ、以下同じ。)を光源として白色光を8時間照射し、暗期を16時間に設定した。
実験区2は、白色蛍光灯を光源として白色光を8時間照射し、その後、LEDパネル光源として赤色LED(レボックス株式会社製スペクトロライトSPL−25−CCに砲弾型LED(660nmを実装)を利用して赤色光を6時間照射し、暗期を10時間に設定した。
実験区3は、白色蛍光灯を光源として白色光を8時間照射し、その後、LEDパネル光源として青色LED(レボックス株式会社製スペクトロライトSPL−25−CCに砲弾型LED(470nmを実装)を利用して青色光(ピーク波長470nm)を6時間照射し、暗期を10時間に設定した。
実験区4は、白色蛍光灯を光源として白色光を8時間照射し、その後、LEDパネル光源として遠赤色LED(レボックス株式会社製スペクトロライトSPL−25−CCに砲弾型LED(730nmを実装)を利用して遠赤色光を6時間照射し、暗期を10時間に設定した。
実験区5は、LEDパネル光源として白色LED(東神電気株式会社製tecoledG)を14時間照射し、暗期を10時間に設定した。
実験区1は、白色蛍光灯(日立アプライアンス株式会社製Hf形蛍光ランプ(3波長形昼白色)FHF32EX−D−VJ、以下同じ。)を光源として白色光を8時間照射し、暗期を16時間に設定した。
実験区2は、白色蛍光灯を光源として白色光を8時間照射し、その後、LEDパネル光源として赤色LED(レボックス株式会社製スペクトロライトSPL−25−CCに砲弾型LED(660nmを実装)を利用して赤色光を6時間照射し、暗期を10時間に設定した。
実験区3は、白色蛍光灯を光源として白色光を8時間照射し、その後、LEDパネル光源として青色LED(レボックス株式会社製スペクトロライトSPL−25−CCに砲弾型LED(470nmを実装)を利用して青色光(ピーク波長470nm)を6時間照射し、暗期を10時間に設定した。
実験区4は、白色蛍光灯を光源として白色光を8時間照射し、その後、LEDパネル光源として遠赤色LED(レボックス株式会社製スペクトロライトSPL−25−CCに砲弾型LED(730nmを実装)を利用して遠赤色光を6時間照射し、暗期を10時間に設定した。
実験区5は、LEDパネル光源として白色LED(東神電気株式会社製tecoledG)を14時間照射し、暗期を10時間に設定した。
図2は、本実施形態の実験における実験区1〜実験区4の苗の配置とその実験結果を示す概略図であり、図3は、本実施形態の実験における実験区5の苗の配置をその実験結果を示す概略図である。
本実施形態の実験では、給水、排水、空調等の植物の栽培に必要な機能を有し、植物の栽培環境を制御することが可能な室を備えた植物工場ユニット(大和ハウス工業株式会社製agri−cube)内の左側内壁面に実験区1〜実験区4を設け、対向する右側内壁面に実験区5を設けた。
本実施形態の実験では、給水、排水、空調等の植物の栽培に必要な機能を有し、植物の栽培環境を制御することが可能な室を備えた植物工場ユニット(大和ハウス工業株式会社製agri−cube)内の左側内壁面に実験区1〜実験区4を設け、対向する右側内壁面に実験区5を設けた。
図2に示すように、実験区1〜実験区4となる左側内壁面の両端には、白色蛍光灯を設置した。実験区と実験区との間には、それぞれ仕切り板を設置し、上段を実験区1、中段を実験区2及び実験区3、下段を実験区4とした。実験区1と実験区2との間の仕切り板には、実験区2に向けて赤色光を照射する赤色LEDを光源として設置し、実験区2を赤色光区とした。実験区1と実験区3との間の仕切り板には、実験区3に向けて青色光を照射する青色LEDを光源として設置し、実験区3を青色光区とした。実験区2と実験区4との間の仕切り板には、実験区4に向けて遠赤色光を照射する遠赤色LEDを光源として設置し、実験区4を遠赤色光区とした。
一方、図3に示すように、実験区5となる右側内壁面には、光源として、下方向に白色光を照射する白色LEDを壁面上部に設置し、白色光14時間区とした。
一方、図3に示すように、実験区5となる右側内壁面には、光源として、下方向に白色光を照射する白色LEDを壁面上部に設置し、白色光14時間区とした。
供試植物である苗は、一株ずつ鉢植えされたビニールポットごとに、左側内壁面及び右側内壁面に所定間隔を空けて取り付けた。このとき、苗は垂直方向ではなく、植物栽培室内の中央方向に向けて成長するように、やや傾斜を付けて取り付けた。
具体的には、実験区1には、実験区2の上部領域となる領域の上段には苗番「16」、下段に苗番「15」、「14」の3株を取り付け、実験区3の上部領域となる領域の上段には苗番「I」、下段に苗番「2」、「1」の3株を取り付けた。すなわち、実験区1には、合計6株の苗を取り付けた。
実験区2には、光源に近い上段には苗番「6」、「5」、「20」の3株を取り付け、光源から遠い下段には苗番「7」、「22」、「21」の3株を取り付けた。すなわち、実験区2には、合計6株の苗を取り付けた。
実験区3には、光源に近い上段には苗番「9」、「8」の2株を取り付け、光源からやや遠い中段には苗番「24」、「10」の2株を取り付け、光源から最も遠い下段には苗番「28」、「27」の2株を取り付けた。すなわち、実験区3には、合計6株の苗を取り付けた。
実験区4には、光源に近い上段には苗番「11」、「26」の2株を取り付け、光源から遠い下段には苗番「12」、「13」の2株を取り付けた。すなわち、実験区4には、合計4株の苗を取り付けた。
実験区5には、光源に近い上段には苗番「3」、「B」、「C」、「A」、「o」、「E」の6株を取り付け、光源からやや遠い中段には苗番「18」、「D」、「17」、「P」、「g」、「s」の6株を取り付け、光源から最も遠い下段には苗番「4」、「F」、「G」、「19」、「H」、「Q」の6株を取り付けた。すなわち、実験区5には、合計18株の苗を取り付けた。
また、左側内壁面の略中央には、赤色光及び遠赤色光と青色光とを遮るための干渉苗を6株×2列、合計12株取り付けた。なお、干渉苗ではあるが、一部の苗には苗番(苗番「K」、「L」、「N」、「O」、「M」、「T」、「J」)を付与して観察及び測定を行った。
具体的には、実験区1には、実験区2の上部領域となる領域の上段には苗番「16」、下段に苗番「15」、「14」の3株を取り付け、実験区3の上部領域となる領域の上段には苗番「I」、下段に苗番「2」、「1」の3株を取り付けた。すなわち、実験区1には、合計6株の苗を取り付けた。
実験区2には、光源に近い上段には苗番「6」、「5」、「20」の3株を取り付け、光源から遠い下段には苗番「7」、「22」、「21」の3株を取り付けた。すなわち、実験区2には、合計6株の苗を取り付けた。
実験区3には、光源に近い上段には苗番「9」、「8」の2株を取り付け、光源からやや遠い中段には苗番「24」、「10」の2株を取り付け、光源から最も遠い下段には苗番「28」、「27」の2株を取り付けた。すなわち、実験区3には、合計6株の苗を取り付けた。
実験区4には、光源に近い上段には苗番「11」、「26」の2株を取り付け、光源から遠い下段には苗番「12」、「13」の2株を取り付けた。すなわち、実験区4には、合計4株の苗を取り付けた。
実験区5には、光源に近い上段には苗番「3」、「B」、「C」、「A」、「o」、「E」の6株を取り付け、光源からやや遠い中段には苗番「18」、「D」、「17」、「P」、「g」、「s」の6株を取り付け、光源から最も遠い下段には苗番「4」、「F」、「G」、「19」、「H」、「Q」の6株を取り付けた。すなわち、実験区5には、合計18株の苗を取り付けた。
また、左側内壁面の略中央には、赤色光及び遠赤色光と青色光とを遮るための干渉苗を6株×2列、合計12株取り付けた。なお、干渉苗ではあるが、一部の苗には苗番(苗番「K」、「L」、「N」、「O」、「M」、「T」、「J」)を付与して観察及び測定を行った。
<実験結果及び実験結果の分析>
上記の材料及び方法による栽培試験の結果、図2及び図3にて丸印にて強調した位置の苗に花成が確認された。
具体的には、実験区1では、苗番「1」の苗に花芽が形成された。また、実験区3では、苗番「24」、「28」、「27」の苗に花芽が形成された。また、実験区5では、苗番「P」、「4」、「Q」の苗に花芽が形成された。なお、干渉苗のうち、苗番「M」、「J」の苗にも花芽が形成された。特に、実験区3において、光源直下の苗には花芽が形成されず、光源から比較的離れている苗に花芽が形成される傾向が示された。また、干渉苗のうち、実験区3寄りの苗に花芽が形成される傾向が示された。
一方、実験区2及び実験区4では花芽は形成されなかった。
上記の材料及び方法による栽培試験の結果、図2及び図3にて丸印にて強調した位置の苗に花成が確認された。
具体的には、実験区1では、苗番「1」の苗に花芽が形成された。また、実験区3では、苗番「24」、「28」、「27」の苗に花芽が形成された。また、実験区5では、苗番「P」、「4」、「Q」の苗に花芽が形成された。なお、干渉苗のうち、苗番「M」、「J」の苗にも花芽が形成された。特に、実験区3において、光源直下の苗には花芽が形成されず、光源から比較的離れている苗に花芽が形成される傾向が示された。また、干渉苗のうち、実験区3寄りの苗に花芽が形成される傾向が示された。
一方、実験区2及び実験区4では花芽は形成されなかった。
なお、上記花芽が形成された苗についての花蕾の確認時期は、以下の通りである。
2017年8月8日に苗番「24」の苗に花蕾を確認した。同8月10日に苗番「4」の苗に花蕾を確認した。同8月17日に苗番「27」、「28」、「1」、「J」に花蕾を確認した。同9月4日に苗番「M」に花蕾を確認した。
2017年8月8日に苗番「24」の苗に花蕾を確認した。同8月10日に苗番「4」の苗に花蕾を確認した。同8月17日に苗番「27」、「28」、「1」、「J」に花蕾を確認した。同9月4日に苗番「M」に花蕾を確認した。
ここで、図4は、実験結果を示す表であって、植物苗の配置による光強度の違いを示す図である。
図4の表は、実験区ごとにブロック分けされており、それぞれの苗番について明期終了後6時間の光強度(μmol/m2/s)を示すものである。明期終了後6時間の光強度とは、実験区2であれば赤色光の光強度、実験区3であれば青色光の光強度、実験区4であれば遠赤色光の光強度、実験区5であれば、白色光の光強度を表すものである。また、花芽が形成された苗については、その欄外に星印を付けている。
図4の表は、実験区ごとにブロック分けされており、それぞれの苗番について明期終了後6時間の光強度(μmol/m2/s)を示すものである。明期終了後6時間の光強度とは、実験区2であれば赤色光の光強度、実験区3であれば青色光の光強度、実験区4であれば遠赤色光の光強度、実験区5であれば、白色光の光強度を表すものである。また、花芽が形成された苗については、その欄外に星印を付けている。
図4に示すように、実験区3で花芽が形成された苗に対する青色光の光強度(μmol/m2/s)は、苗番「24」では5.0μmol/m2/s、苗番「28」では1.9μmol/m2/s、苗番「27」では3.1μmol/m2/sであった。
一方、実験区3で花芽が形成されなかった苗に対する青色光の光強度(μmol/m2/s)は、苗番「8」では315.0μmol/m2/s、苗番「10」では128.5μmol/m2/s、苗番「9」では298.0μmol/m2/sであった。
一方、実験区3で花芽が形成されなかった苗に対する青色光の光強度(μmol/m2/s)は、苗番「8」では315.0μmol/m2/s、苗番「10」では128.5μmol/m2/s、苗番「9」では298.0μmol/m2/sであった。
また、図4に示すように、干渉苗のうち花芽が形成された苗にも実験区3から漏れた青色光が照射された結果となり、干渉苗で花芽が形成された苗に対する青色光の光強度(μmol/m2/s)は、苗番「M」では4.2μmol/m2/s、苗番「J」では0.4μmol/m2/sであった。
この結果、青色光が弱光(光強度が0.4〜5.0μmol/m2/s程度)で照射されていた苗が特に花成が促進されたことが確認された。逆に、300μmol/m2/s程度の強い青色光下の苗では花芽が形成されなかったことが確認された。
このことより、青色光による花成促進効果は、強い光強度下では生じず、弱光下において生じることが判明した。
このことより、青色光による花成促進効果は、強い光強度下では生じず、弱光下において生じることが判明した。
また、図5は、実験結果を示す表であって、植物苗の配置による植物苗の草姿特徴の違いを示す図である。
図5の表は、実験区ごとにブロック分けされており、それぞれの苗番について全草丈(cm)と最大茎径(cm)を示すものである。全草丈とは、最大草丈と同意であり、地面から一番上の葉の付け根までの茎の長さを示す。最大茎径とは、茎の最も太い部分の径の長さを示す。また、図4と同様、花芽が形成された苗については、その欄外に星印を付けている。
図5の表は、実験区ごとにブロック分けされており、それぞれの苗番について全草丈(cm)と最大茎径(cm)を示すものである。全草丈とは、最大草丈と同意であり、地面から一番上の葉の付け根までの茎の長さを示す。最大茎径とは、茎の最も太い部分の径の長さを示す。また、図4と同様、花芽が形成された苗については、その欄外に星印を付けている。
図6は、実験結果を示すグラフであって、設定条件による植物苗の草姿特徴の分散を示す図である。
具体的には、図5に示す数値をグラフ化したものであり、丸印で囲っているものは花芽が形成された苗を示す。
具体的には、図5に示す数値をグラフ化したものであり、丸印で囲っているものは花芽が形成された苗を示す。
図5及び図6に示すように、実験区3で花芽が形成された苗の全草丈(cm)と最大茎径(cm)は、苗番「24」では全草丈75cm、最大茎径6.1cm、苗番「28」では全草丈56cm、最大茎径6.2cm、苗番「27」では全草丈83cm、最大茎径6.3cmであった。
一方、実験区3で花芽が形成されなかった苗の全草丈(cm)と最大茎径(cm)は、苗番「8」では全草丈29cm、最大茎径5.2cm、苗番「10」では全草丈33cm、最大茎径4.8cm、苗番「9」では全草丈63cm、最大茎径5.8cmであった。
一方、実験区3で花芽が形成されなかった苗の全草丈(cm)と最大茎径(cm)は、苗番「8」では全草丈29cm、最大茎径5.2cm、苗番「10」では全草丈33cm、最大茎径4.8cm、苗番「9」では全草丈63cm、最大茎径5.8cmであった。
また、図5に示すように、干渉苗のうち花芽が形成された苗の全草丈(cm)と最大茎径(cm)は、苗番「M」では全草丈61cm、最大茎径5.0cm、苗番「J」では全草丈65cm、最大茎径4.2cmであった。
さらに、実験区5及び実験区1で花芽が形成された苗の全草丈(cm)と最大茎径(cm)は、苗番「P」では全草丈84cm、最大茎径6.0cm、苗番「4」では全草丈146cm、最大茎径6.5cm、苗番「Q」では全草丈62cm、最大茎径5.0cm、苗番「1」では全草丈76cm、最大茎径6.5cmであった。
さらに、実験区5及び実験区1で花芽が形成された苗の全草丈(cm)と最大茎径(cm)は、苗番「P」では全草丈84cm、最大茎径6.0cm、苗番「4」では全草丈146cm、最大茎径6.5cm、苗番「Q」では全草丈62cm、最大茎径5.0cm、苗番「1」では全草丈76cm、最大茎径6.5cmであった。
この結果、同じ青色光を照射した同じ実験区3内の苗であっても花芽を付けた苗と花芽を付けなかった苗との違いが生じた理由は、苗の全草丈と最大茎径にも関係しており、最大茎径が4.0cm以上、且つ、最大草丈50cm以上の苗について花芽が形成されることが確認された。逆に、上記以下の大きさの苗は花芽を付けていないことが確認された。
このことより、青色光による花成促進効果は、ある程度栄養成長を遂げた後の充実した苗に顕著に生じることが判明した。
このことより、青色光による花成促進効果は、ある程度栄養成長を遂げた後の充実した苗に顕著に生じることが判明した。
図7は、実験結果を示す図であって、実験区1で花芽が形成された植物苗についての説明図である。
上述したとおり、図2に示す実験結果において、実験区1の苗番「1」の苗にも花芽が形成された。しかしながら、花芽が形成された苗番「1」の苗は、図7に示すように、草丈が伸長したことにより苗の先端が下方へ項垂れ、実験区3の青色光が僅かに照射され得る状況にあった。
この結果、この苗番「1」の苗に花芽が形成された理由は、実験区3の青色光の効果である可能性が高いことが判明した。
上述したとおり、図2に示す実験結果において、実験区1の苗番「1」の苗にも花芽が形成された。しかしながら、花芽が形成された苗番「1」の苗は、図7に示すように、草丈が伸長したことにより苗の先端が下方へ項垂れ、実験区3の青色光が僅かに照射され得る状況にあった。
この結果、この苗番「1」の苗に花芽が形成された理由は、実験区3の青色光の効果である可能性が高いことが判明した。
なお、先行研究において、ニホンナシの花芽形成が遠赤色光によって促進されるという報告があったが(非特許文献1)、本実施形態の栽培試験においては、実験区4の遠赤色光を照射した苗には花芽が形成されなかった。これは、ニホンナシとラズベリーという供試植物の違いによるものと推測される。
この結果、弱い光強度の青色光による花成促進効果は、花芽形成に必要な低温量が少ない品種、例えば、レモン等の柑橘類、イチジク、オリーブ、ビワ、キンカン、アセロラ、グアバ、マンゴー、パッションフルーツ、ドラゴンフルーツ、パイナップル、ザクロ、パパイヤ、ココナッツ、マンゴスチン等、温暖な気候に適した果樹や四季成り品種等にも適用することができると考えられる。
したがって、本発明の植物栽培方法が適用できる植物としては特に制限されないが、上記に例示したような植物の栽培に適用すると特に好ましい。
この結果、弱い光強度の青色光による花成促進効果は、花芽形成に必要な低温量が少ない品種、例えば、レモン等の柑橘類、イチジク、オリーブ、ビワ、キンカン、アセロラ、グアバ、マンゴー、パッションフルーツ、ドラゴンフルーツ、パイナップル、ザクロ、パパイヤ、ココナッツ、マンゴスチン等、温暖な気候に適した果樹や四季成り品種等にも適用することができると考えられる。
したがって、本発明の植物栽培方法が適用できる植物としては特に制限されないが、上記に例示したような植物の栽培に適用すると特に好ましい。
<総括>
本実施形態の栽培試験により、以下の結論が得られた。
(1)植物苗の花成促進には、強い青色光ではなく、ごく弱い青色光を照射することが有効であり、特に、光強度が0.4〜5.0μmol/m2/sの光量子束密度に調整された青色光が有効である。
(2)植物の花成促進には、白色光を照射後、暗期に入る前に弱青色光を所定時間照射することが有効である。
(3)植物の花成促進には、最大茎径が4.0cm以上、且つ、最大草丈50cm以上のある程度栄養成長を遂げた後の充実した苗に弱青色光を照射することが有効である。
本実施形態の栽培試験により、以下の結論が得られた。
(1)植物苗の花成促進には、強い青色光ではなく、ごく弱い青色光を照射することが有効であり、特に、光強度が0.4〜5.0μmol/m2/sの光量子束密度に調整された青色光が有効である。
(2)植物の花成促進には、白色光を照射後、暗期に入る前に弱青色光を所定時間照射することが有効である。
(3)植物の花成促進には、最大茎径が4.0cm以上、且つ、最大草丈50cm以上のある程度栄養成長を遂げた後の充実した苗に弱青色光を照射することが有効である。
<効果>
光強度が0.4〜5.0μmol/m2/s程度の光量子束密度に調整されたごく弱い青色光と、太陽光のように各波長の光線が混合して成る白色光とを組み合わせて利用し、さらに光を照射しない暗期を設定することにより、出力が大きな照明装置や多数の光源を必要とすることもないので、安価に植物の花成を促進することができる。
特に、日中は白色光と同等の太陽光を照射し、夕方から夜にかけて暗期に入った直後から弱青色光を照射すれば、環境制御された植物工場等の栽培施設内に限定されず、太陽光を利用した露地やハウス栽培等においても適用することができる。
光強度が0.4〜5.0μmol/m2/s程度の光量子束密度に調整されたごく弱い青色光と、太陽光のように各波長の光線が混合して成る白色光とを組み合わせて利用し、さらに光を照射しない暗期を設定することにより、出力が大きな照明装置や多数の光源を必要とすることもないので、安価に植物の花成を促進することができる。
特に、日中は白色光と同等の太陽光を照射し、夕方から夜にかけて暗期に入った直後から弱青色光を照射すれば、環境制御された植物工場等の栽培施設内に限定されず、太陽光を利用した露地やハウス栽培等においても適用することができる。
このように、低コストで適切な光強度の弱青色光を照射して植物を栽培することにより、植物個体あたりの重量の増加、生育のばらつきの低減、正常な形態の維持等が可能となる。
また、果菜類や果樹類の栽培においては、花成を促進して花数を増加させたり、果実の成熟のタイミングを収穫に適した時期に調節したりすることにより、収穫量の増加や安定収穫が可能となる。逆に、果実の成熟のタイミングをずらせば、従来なら果実が市場に出回らない季節での出荷も可能となり、付加価値を高めることができる。
また、授粉木が必要な果実について、従来であれば同じ時期に開花する品種の雄株、雌株の花同士でしか交配することができなかったが、雄株、雌株の開花のタイミングを制御することで新しい交配の組み合せが可能となる。
また、果菜類や果樹類の栽培においては、花成を促進して花数を増加させたり、果実の成熟のタイミングを収穫に適した時期に調節したりすることにより、収穫量の増加や安定収穫が可能となる。逆に、果実の成熟のタイミングをずらせば、従来なら果実が市場に出回らない季節での出荷も可能となり、付加価値を高めることができる。
また、授粉木が必要な果実について、従来であれば同じ時期に開花する品種の雄株、雌株の花同士でしか交配することができなかったが、雄株、雌株の開花のタイミングを制御することで新しい交配の組み合せが可能となる。
上記の実施形態には、主として、光環境の制御により植物の花成を促進する植物の栽培方法について説明した。しかし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
Claims (6)
- 栄養成長を遂げた植物苗に対し、光強度が0.4〜5.0μmol/m2/sの光量子束密度に調整された青色光を所定時間照射する弱青色光照射工程を有することを特徴とする植物栽培方法。
- 前記弱青色光照射工程の前に白色光を所定時間照射する白色光照射工程と、
前記弱青色光照射工程の後に光を所定時間照射しない暗期工程と、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の植物栽培方法。 - 前記白色光は、太陽光であることを特徴とする請求項2に記載の植物栽培方法。
- 前記青色光の波長は、450〜470nmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の植物栽培方法。
- 前記植物苗は、最大茎径4.0cm以上、且つ、最大草丈50.0cm以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の植物栽培方法。
- 前記植物苗は、花芽形成に必要な低温量が少ない品種であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の植物栽培方法。
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---|---|---|---|
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110352732A (zh) * | 2019-08-21 | 2019-10-22 | 厦门通秴科技股份有限公司 | 一种火龙果促花增产增质led光谱配方及其装置与应用 |
KR102217467B1 (ko) | 2020-11-05 | 2021-02-19 | (주)지플러스생명과학 | 식물기반 바이오약품 제조를 위한 식물형질전환이 이루어진 기주식물의 재배방법 |
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2017
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CN110352732B (zh) * | 2019-08-21 | 2021-06-29 | 厦门通秴科技股份有限公司 | 一种火龙果促花增产增质led光谱配方及其装置与应用 |
KR102217467B1 (ko) | 2020-11-05 | 2021-02-19 | (주)지플러스생명과학 | 식물기반 바이오약품 제조를 위한 식물형질전환이 이루어진 기주식물의 재배방법 |
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