JP2019104790A - ランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴム、及びランフラットタイヤ - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、ランフラット性能を改善するランフラットタイヤ用ゴム組成物として、天然ゴムを含むゴム成分と、カーボンブラックと、酸化亜鉛とを含有し、上記ゴム成分100質量%中の上記天然ゴムの割合が95質量%以上であり、上記カーボンブラックは、ヨウ素吸着量が82mg/g以上、ジブチルフタレート吸油量が69ml/100g以上であり、上記ゴム成分100質量部に対して、上記カーボンブラックの含有量が60質量部以上であり、上記酸化亜鉛の含有量が10質量部以上であるゴム組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
本発明は、低発熱性を損なわずに、耐久性に優れるランフラットタイヤ用サイド補強ゴム、これを製造することができるランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物、並びに、低発熱性を損なわずに、耐久性に優れるランフラットタイヤを提供することを課題とする。
<4> 前記合成ジエン系ゴムが、スズ原子、酸素原子及び窒素原子からなる群から選択される少なくとも一種を含む変性官能基を有する変性ゴムを含む<3>に記載のランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物である。
<5> 前記ゴム成分中の天然ゴムの含有量が20〜99質量%であり、ポリブタジエンゴムが1〜80質量%である<1>〜<4>のいずれか1つに記載のランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物である。
<7> 前記チウラム化合物は、側鎖炭素数が4以上である<6>に記載のランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物である。
本発明のランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物は、
ジエン系ゴムを含むゴム成分と、
加硫剤と、
窒素吸着法比表面積が10〜40m2/g、ジブチルフタレート吸油量が100〜180mL/100g、かつ圧縮ジブチルフタレート吸油量が36〜110ml/100gであるカーボンブラックと
を含有し、
下記式(1)で表される前記カーボンブラックの粒子間距離Sが40〜150nmであり、下記式(2)で表される前記カーボンブラックと前記カーボンブラックに吸蔵されたオクルードラバーからなる凝集体の体積比率φβが0.25〜0.45である。
以下、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物を、単に「ゴム組成物」と称することがある。
オクルードラバーを多く吸蔵し易い高ストラクチャーのカーボンブラックを用いることで、ゴム組成物の耐久性を向上することができるが、連鎖した粒子が多いほど、粒子間の摩擦が大きくなり加硫ゴムの発熱を高め易かった。
本発明者は、カーボンブラックに吸蔵されたオクルードラバーの存在状態に着眼し、ゴム成分中のカーボンブラックと吸蔵されたオクルードラバーからなる凝集体の体積比率φβと、カーボンブラックの粒子間距離Sを制御することで、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの発熱を抑制しつつ、耐久性を向上することを見出した。
式(1)において、Dstは、カーボンブラックの凝集体の大きさを表し、exp[(ΔD50/2Dst)2]は、カーボンブラックの凝集体の分布を表し、「[(0.86/(φβ)1/3)−1]」は、ゴム組成物中のカーボンブラックの含有量に相当する。
カーボンブラックの粒子間距離Sは、ゴム組成物中のカーボンブラックの含有量に依存し、含有量が多いほど粒子間距離Sは小さくなり、粒子同士が近づき、含有量が少ないほど粒子間距離Sが大きくなり、粒子同士が離れ易い傾向にあるが、カーボンブラックのストラクチャーがどれほど発達しているかという凝集体の大きさにも影響すると考えられる。
粒子間距離Sは、40〜150nmであり、40nmよりも小さいと、粒子同士の接触が多くなり、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの低発熱性を損なう。150nmよりも大きいと、カーボンブラックの粒子が離れ、カーボンブラック粒子同士のネットワーク構造を構成することが困難になるため、補強性が小さくなるため、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの耐久性が優れない。
粒子間距離Sは、上記観点から、45〜135nmであることが好ましい。
体積比率φβは、ゴム成分とカーボンブラックとの体積比、及びカーボンブラックのストラクチャーの発達度合に依存し、φを大きくするかβを大きくすればφβは大きくなる。φは、ゴム成分中のカーボンブラックの体積比が増すほど大きくなる傾向にある。βは、カーボンブラックに吸蔵可能なオクルードラバー量が増すほど大きくなる傾向にある。言い換えれば、カーボンブラックのストラクチャーを複雑化するほど、更に言い換えれば24M4DBPが大きいほど、βは大きくなる傾向にある。
体積比率φβは、0.25〜0.45であり、0.25よりも小さいとランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの耐久性を損ない、0.45よりも大きいとランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの低発熱性を損なう。
ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの低発熱性を損なわずに、耐久性を向上する観点から、体積比率φβは、0.3〜0.4であることが好ましく、0.35〜0.4であることがより好ましい。
本発明のランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物は、少なくとも、ジエン系ゴムを含むゴム成分を含有する。
ジエン系ゴムは、天然ゴム(NR)及び合成ジエン系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種が用いられる。
合成ジエン系ゴムとして、具体的には、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム(BIR)、スチレン−イソプレン共重合体ゴム(SIR)、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム(SBIR)等が挙げられる。
ジエン系ゴムは、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、及びイソブチレンイソプレンゴムが好ましく、天然ゴム及びポリブタジエンゴムがより好ましい。ジエン系ゴムは、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの耐久性をより向上する観点から、ゴム成分中の天然ゴムの含有量が20〜99質量%であり、合成ジエン系ゴムが1〜80質量%であることが好ましく、天然ゴムの含有量が20〜99質量%であり、ポリブタジエンゴムが1〜80質量%であることがより好ましく、天然ゴムの含有量が30〜70質量%であり、ポリブタジエンゴムが30〜70質量%であることが更に好ましく、天然ゴムの含有量が35〜65質量%であり、ポリブタジエンゴムが35〜65質量%であることがより更に好ましい。
ゴム成分は、本発明の効果を損なわない限度において非ジエン系ゴムを含んでいてもよい。
スズ原子、酸素原子及び窒素原子からなる群から選択される少なくとも一種を含む変性官能基は、カーボンブラックと相互作用する官能基として機能し、変性官能基は、具体的には、スズ含有官能基、酸素素含有官能基及び窒素含有官能基からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
ブタジエンゴムの重合活性部位を変性剤で変性するにあたって、使用する変性剤としては、窒素含有化合物、酸素含有化合物及びスズ含有化合物が好ましい。この場合、変性反応により、窒素含有官能基、酸素含有官能基又はスズ含有官能基を導入することができる。
このような変性用官能基は、ポリブタジエンの重合開始末端、主鎖及び重合活性末端のいずれかに存在すればよい。
R1 aZXb (I)
[式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基からなる群から選択され;Zは、スズ又はケイ素であり;Xは、それぞれ独立して塩素又は臭素であり;aは0〜3で、bは1〜4で、但し、a+b=4である]で表される変性剤も好ましい。なお、式(I)の変性剤で変性して得られる変性ブタジエンゴムは、少なくとも一種のスズ−炭素結合又はケイ素−炭素結合を有する。
また、アミン変性ブタジエンゴムは、変性用アミン系官能基として、脱離可能基で保護された第1級アミノ基又は脱離可能基で保護された第2級アミノ基を導入したものが好ましく、さらにケイ素原子を含む官能基を導入したものが好ましい。
脱離可能基で保護された第1級アミノ基(保護化第1級アミノ基ともいう。)の例としては、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ基を挙げることができ、脱離可能基で保護された第2級アミノ基の例としてはN,N−(トリメチルシリル)アルキルアミノ基を挙げることができる。このN,N−(トリメチルシリル)アルキルアミノ基含有基としては、非環状残基、及び環状残基のいずれであってもよい。
上記のアミン変性ブタジエンゴムのうち、保護化第1級アミノ基で変性された第1級アミン変性ブタジエンゴムが更に好適である。
前記酸素原子を含む官能基としては、ケイ素原子にヒドロカルビルオキシ基及び/又はヒドロキシ基が結合してなるヒドロカルビルオキシシリル基及び/又はシラノール基を挙げることができる。
このような変性用官能基は、好ましくはブタジエンゴムの重合末端、より好ましくは同一重合活性末端に、脱離可能基で保護されたアミノ基と、ヒドロカルビルオキシ基及びヒドロキシ基が結合したケイ素原子を1以上(例えば、1又は2)とを有するものである。
これらのリチウムアミド化合物は、一般に、第2級アミンとリチウム化合物とから、予め調製したものを重合に使用することができるが、重合系中(in−Situ)で調製することもできる。また、この重合開始剤の使用量は、好ましくは単量体100g当たり、0.2〜20ミリモルの範囲で選定される。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を、前記リチウム化合物を重合開始剤として、所望により、用いられるランダマイザーの存在下にアニオン重合させることにより、目的の活性末端を有するブタジエンゴムが得られる。
また、有機リチウム化合物を重合開始剤として用いた場合には、前述のランタン系列希土類元素化合物を含む触媒を用いた場合に比べ、活性末端を有するブタジエンゴムのみならず、活性末端を有する共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体も効率よく得ることができる。
また、溶媒中の単量体濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。尚、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、仕込み単量体混合物中の芳香族ビニル化合物の含量は55質量%以下の範囲が好ましい。
本発明においては、上記のようにして得られた活性末端を有するブタジエンゴムの活性末端に、変性剤として、保護化第1級アミン化合物を反応させることにより、第1級アミン変性ブタジエンゴムを製造することができ、保護化第2級アミン化合物を反応させることにより、第2級アミン変性ブタジエンゴムを製造することができる。上記保護化第1級アミン化合物としては、保護化第1級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が好適であり、保護化第2級アミン化合物としては、保護化第2級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が好適である。
これらの変性剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。またこの変性剤は部分縮合物であってもよい。
ここで、部分縮合物とは、変性剤のSiOR(Rはアルキル基等)の一部(全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。
なお、前記変性剤の添加方法は、特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、あるいは、連続的に添加する方法等が挙げられるが、一括して添加する方法が好ましい。
また、変性剤は、重合開始末端や重合終了末端以外に重合体主鎖や側鎖のいずれに結合させることもできるが、重合体末端からエネルギー消失を抑制して低発熱性を改良しうる点から、重合開始末端あるいは重合終了末端に導入されていることが好ましい。
本発明では、前記した変性剤として用いる保護化第1級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が関与する縮合反応を促進するために、縮合促進剤を用いることが好ましい。
このような縮合促進剤としては、第三アミノ基を含有する化合物、又は周期律表(長周期型)の3族、4族、5族、12族、13族、14族及び15族のうちのいずれかの属する元素を一種以上含有する有機化合物を用いることができる。さらに縮合促進剤として、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも一種以上の金属を含有する、アルコキシド、カルボン酸塩、又はアセチルアセトナート錯塩であることが好ましい。
ここで用いる縮合促進剤は、前記変性反応前に添加することもできるが、変性反応の途中及び又は終了後に変性反応系に添加することが好ましい。変性反応前に添加した場合、活性末端との直接反応が起こり、活性末端に保護された第一アミノ基を有するヒドロカルビロキシ基が導入されない場合がある。
縮合促進剤の添加時期としては、通常、変性反応開始5分〜5時間後、好ましくは変性反応開始15分〜1時間後である。
この縮合促進剤の使用量としては、前記化合物のモル数が、反応系内に存在するヒドロカルビロキシ基総量に対するモル比として、0.1〜10となることが好ましく、0.5〜5が特に好ましい。縮合促進剤の使用量を前記範囲にすることによって縮合反応が効率よく進行する。
なお、縮合反応時間は、通常、5分〜10時間、好ましくは15分〜5時間程度である。縮合反応時間を前記範囲にすることによって縮合反応を円滑に完結することができる。
また、縮合反応時の反応系の圧力は、通常、0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜10MPaである。
カーボンブラックは、窒素吸着法比表面積が10〜40m2/g、ジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量)が100〜180mL/100g、かつ圧縮ジブチルフタレート吸油量(24M4DBP)が36〜110ml/100gである。
本発明では、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの低発熱性を損なわずに、耐久性を向上することができる。
具体的には、窒素吸着法比表面積が10〜40m2/gであることで、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの補強性と低発熱性のバランスに優れる。窒素吸着法比表面積は、15〜35m2/gであることが好ましく、17〜32m2/gであることがより好ましい。
DBP吸油量は、カーボンブラックの凝集体構造の発達度合(ストラクチャー)を表す指標として用いられ、DBP吸油量が大きいほど凝集体が大きくなる傾向にある。カーボンブラックのDBP吸油量が、100〜180ml/100gであることで、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの補強性と低発熱性のバランスに優れる。DBP吸油量は、105〜160ml/100gであることが好ましく、108〜145ml/100gであることがより好ましい。
圧縮ジブチルフタレート吸油量が36〜110ml/100gであることで、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムの補強性と低発熱性のバランスに優れる。圧縮ジブチルフタレート吸油量は、50〜95ml/100gであることが好ましく、65〜90ml/100gであることがより好ましい。
式(1)を満たし易くする観点から、カーボンブラックのDstは210〜310nmであることが好ましく、220〜300nmであることがより好ましい。同様の観点から、カーボンブラックのΔD50は180〜500nmであることが好ましく、190〜480nmであることがより好ましい。
本発明のゴム組成物は、本発明の規定を逸脱しない範囲で他の補強性充填材を含有してよい。例えば、シリカ等の補強性充填剤を含有していてもよい。
ゴム組成物は、加硫剤を含む。加硫剤としては、通常、硫黄が用いられる。
ゴム組成物は、また、ゴム成分の加硫を促進するために、加硫促進剤を含有することが好ましく、チウラム化合物を含むことが好ましい。
チウラム化合物は、側鎖炭素数が4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、8以上であることが更に好ましい。側鎖炭素数が4以上であることで、ゴム組成物中でのチウラム化合物の分散が優れ、均一な架橋網目が構成され易い。
側鎖炭素数が4以上のチウラム化合物としては、例えば、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラキス(n−ドデシル)チウラムジスルフィド、テトラキス(ベンジル)チウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド等が挙げられ、中でも、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドが好ましい。
また、所望の加硫トルク、加硫速度を得るために、チウラム化合物以外の加硫促進剤、加硫遅延剤等を合わせて用いてもよい。
本発明のゴム組成物は、ムーニー粘度(ML1+4,130℃)が、好ましくは40〜100、より好ましくは50〜90、更に好ましくは60〜85である。ムーニー粘度が上記範囲であることで、製造加工性を損なわずに、耐破壊特性を始めとする加硫ゴム物性が十分に得られる。ゴム組成物のムーニー粘度は、JIS K 6300−1:2001に準拠し、L形ロータを用いて測定することができる。
本発明のランフラットタイヤ用サイド補強ゴムは、本発明のランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物を用いてなり、また、本発明のランフラットタイヤは、本発明のランフラットタイヤ用サイド補強ゴムを用いてなる。
以下、サイド補強ゴム層を有するランフラットタイヤの構造の一例について、図1を用いて説明する。
図1は、本発明のランフラットタイヤ(以下、単にタイヤと称することがある)の一実施態様の断面を示す模式図であり、本発明のランフラットタイヤを構成するサイド補強ゴム層8等の各部材の配置を説明するものである。
このタイヤのサイド補強ゴム層8に本発明のランフラットタイヤ用サイド補強ゴムを用いた本発明のランフラットタイヤは、低発熱性を損なわずに耐久性に優れる。
本発明のランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物をサイド補強ゴム層8に用いて、通常のランフラットタイヤの製造方法の手順を踏むことで、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムを供えたランフラットタイヤが得られる。
すなわち、各種薬品を含有させたゴム組成物が未加硫の段階で各部材に加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴム及びランフラットタイヤが得られる。
〔ゴム組成物の調製〕
下記表1に示す配合組成で各成分を混練し、ゴム組成物を調製した。
なお、ゴム組成物の調製に用いた変性ブタジエンゴム(変性BR)は、次の方法により製造した。
(1)未変性ポリブタジエンの製造
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素下、シクロヘキサン1.4kg、1,3−ブタジエン250g、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン(0.285mmol)シクロヘキサン溶液として注入し、これに2.85mmolのn−ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、攪拌装置を備えた50℃温水浴中で4.5時間重合を行なった。1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。この重合体溶液の一部を、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り重合を停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、変性前のポリブタジエンを得た。得られた変性前のポリブタジエンについて赤外法(モレロ法)によりミクロ構造(ビニル結合量)を測定した結果、ビニル結合量は30質量%であった。
上記(1)で得られた重合体溶液を、重合触媒を失活させることなく、温度50℃に保ち、第1級アミノ基が保護されたN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1129mg(3.364mmol)を加えて、変性反応を15分間行った。
この後、縮合促進剤であるテトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン8.11gを加え、更に15分間攪拌した。
最後に反応後の重合体溶液に、金属ハロゲン化合物として四塩化ケイ素242mgを添加し、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒及び保護された第1級アミノ基の脱保護を行い、110℃に調温された熟ロールによりゴムを乾燥し、第1級アミン変性ポリブタジエンゴム(変性BR)を得た。
得られた変性ポリブタジエンについて赤外法(モレロ法)によりミクロ構造(ビニル結合量)を測定した結果、ビニル結合量は30質量%であった。
(1)天然ゴム(NR):RSS#1
(2)カーボンブラック(旭#65):
旭カーボン社製「旭#65」〔窒素吸着法比表面積=42m2/g、DBP吸油量=120ml/100g、圧縮ジブチルフタレート吸油量=85ml/100g、Dst=164nm、ΔD50=134nm〕
(3)カーボンブラック(旭#52):
旭カーボン社製「旭#52」〔窒素吸着法比表面積=28m2/g、DBP吸油量=128ml/100g、圧縮ジブチルフタレート吸油量=80ml/100g、Dst=231nm、ΔD50=207nm〕
(4)カーボンブラック(Orion S204):
Orion Engineered Carbons社製「ECORAX S204」〔窒素吸着法比表面積=19m2/g、DBP吸油量=138ml/100g、圧縮ジブチルフタレート吸油量=76ml/100g、Dst=246nm、ΔD50=466nm〕
(5)カーボンブラック(旭#50HG):
旭カーボン社製「旭#50HG」〔窒素吸着法比表面積=21m2/g、DBP吸油量=112ml/100g、圧縮ジブチルフタレート吸油量=78ml/100g、Dst=298nm、ΔD50=287nm〕
(6)カーボンブラック(旭F200):
旭カーボン社製「旭F200」〔窒素吸着法比表面積=53m2/g、DBP吸油量=180ml/100g、圧縮ジブチルフタレート吸油量=104ml/100g、Dst=180nm、ΔD50=140nm〕
(7)カーボンブラック(旭#8):
旭カーボン社製「旭#8」〔窒素吸着法比表面積=16m2/g、DBP吸油量=31ml/100g、圧縮ジブチルフタレート吸油量=31ml/100g、Dst=202nm、ΔD50=277nm〕
(9)ステアリン酸:新日本理化社製「ステアリン酸50S」
(10)亜鉛華:ハクスイテック社製「3号亜鉛華」
(11)老化防止剤(6C):N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製「ノクラック 6C」
(12)加硫促進剤 CZ:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製「ノクセラーCZ−G」
(13)加硫促進剤 TOT:テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、大内新興化学工業社製「ノクセラー TOT−N」
(14)硫黄:鶴見化学社製「粉末硫黄」
次いで、得られたゴム組成物を、図1に示すサイド補強ゴム層8に配設し、それぞれタイヤサイズ205/65 R16の乗用車用ラジアルランフラットタイヤを定法に従って製造した。なお、タイヤのサイド補強ゴム層の最大厚みは12mmとした。
製造したゴム組成物について、下記方法でムーニー粘度を測定し、また、製造したランフラットタイヤのタイヤ性能として、低発熱性とランフラット走行距離を評価した。それらの結果を表1に示す。
ゴム組成物のムーニー粘度は、JIS K 6300−1:2001に準拠し、L形ロータを用い、130℃にて測定した。
製造したランフラットタイヤのサイド補強ゴム層から切り出した加硫ゴム試験片について、損失正接(tanδ)を、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を用い、温度50℃、歪み3%、周波数15Hzの条件で測定した。比較例1のtanδの逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、サイド補強ゴム及びそれを備えたランフラットタイヤの低発熱性に優れることを示す。
内圧非充填状態でドラム走行(速度80km/h)させ、タイヤが走行不能になるまでのドラム走行距離をランフラット走行距離とした。比較例1のランフラットタイヤのランフラット走行距離を100とした指数で表わした。指数が大きいほど、サイド補強ゴム及びそれを備えたランフラットタイヤの耐久性に優れることを示す。
一方、実施例のランフラットタイヤは、低発熱性を損ねずに、ランフラット走行距離を延ばすことができ、耐久性に優れることがわかる。
2 カーカス層
3 サイドゴム層
4 トレッドゴム層
5 ベルト層
6 インナーライナー
7 ビードフィラー
8 サイド補強ゴム層
10 ショルダー区域
Claims (9)
- ジエン系ゴムを含むゴム成分と、
加硫剤と、
窒素吸着法比表面積が10〜40m2/g、ジブチルフタレート吸油量が100〜180mL/100g、かつ圧縮ジブチルフタレート吸油量が36〜110ml/100gであるカーボンブラックと
を含有し、
下記式(1)で表される前記カーボンブラックの粒子間距離Sが40〜150nmであり、下記式(2)で表される前記カーボンブラックと前記カーボンブラックに吸蔵されたオクルードラバーからなる凝集体の体積比率φβが0.25〜0.45であるランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物。
〔式(1)中、Dstはストークス相当径の分布曲線の最多頻度値(nm)、ΔD50は前記Dstに対する分布曲線の半値幅(nm)を表す。φβは前記カーボンブラックと前記カーボンブラックに吸蔵されたオクルードラバーからなる凝集体の体積比率を表し、下記式(2)で求められる。〕
〔式(2)中、φは、ゴム組成物の全体積VG(ml)に対するカーボンブラックの全体積VCB(ml)の比(VCB/VG)を表し、Voccはオクルードラバー体積を表し、Vaはカーボンブラック凝集体の体積を表す。24M4DBPは、カーボンブラックの圧縮ジブチルフタレート吸油量(ml/100g)を表す。〕 - 前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対し、40〜100質量部である請求項1に記載のランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物。
- 前記ジエン系ゴムが、合成ジエン系ゴムを含む請求項1又は2に記載のランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物。
- 前記合成ジエン系ゴムが、スズ原子、酸素原子及び窒素原子からなる群から選択される少なくとも一種を含む変性官能基を有する変性ゴムを含む請求項3に記載のランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物。
- 前記ゴム成分中の天然ゴムの含有量が20〜99質量%であり、ポリブタジエンゴムが1〜80質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物。
- チウラム化合物を含む加硫促進剤を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物。
- 前記チウラム化合物は、側鎖炭素数が4以上である請求項6に記載のランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のランフラットタイヤ用サイド補強ゴム組成物を用いたランフラットタイヤ用サイド補強ゴム。
- 請求項8に記載のランフラットタイヤ用サイド補強ゴムを用いたランフラットタイヤ。
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