以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[シートの構造]
本開示で説明するシートは、表面および裏面を有するフィルム層と、フィルム層の裏面の少なくとも一部に取り付けられた第1の面ファスナ部材を備えるファスナ層とを備え、第1の面ファスナ部材がループ材とフック材との少なくとも一方を備え、フック材の厚みが600μm以下であり、ループ材が、フック材と係合し得る不織布またはニットを含む。
面ファスナ部材が設けられるので、シートを容易に貼り付けまたは取り外しすることができる。加えて、フック材は厚みが600μm以下と薄く、ループ材はこのフック材と係合しうる不織布またはニットを使用できるため、軽量で、携帯が容易で、且つ柔軟に変形可能な面ファスナ部材を得ることができる。また、面ファスナ部材の係合部の厚みを比較的薄くできるため、シートを支持面に取り付けた後のシートの嵩高さを抑えることができる。そのため、外見的に不自然さのない良好なシートの貼り付けを実現できる。
本開示のシートは、以下の様々な実施形態で示すように、シートの用途は何ら限定されない。例えば、シートはグラフィックシート、プロジェクタスクリーン、ホワイトボードシート、付箋用シート、または、建築での内外装用装飾シートとして用いられてもよい。
シート1は任意の有体物に貼られてよい。本開示において「シートを貼る」および「シートを貼り付ける」とは、いずれも、任意の有体物にシートを取り付けることを意味する。シート1が有体物に貼られた際に、シート1の全体が有体物で支持されてもよいし、シート1の一部のみが有体物で支持されてもよい。したがって、シート1が有体物から垂れ下がるようにシート1が該有体物に貼られてもよい。シート1が貼られる期間は限定されず、短期間でも長期間でもよい。
図1は、一実施形態に係るシート1の断面図である。シート1は、フィルム層2、ファスナ層12、および接着層13を備える。接着層13を介してフィルム層2とファスナ層12とが接合される。
フィルム層2は、表面(おもてめん)2aおよび裏面2bを有するシート状の部材である。シート1の用途が何ら限定されないことに対応して、フィルム層2の属性は何ら限定されない。例えば、フィルム層2の構造、材料、および機能はシートの用途によって任意に設計されてよい。フィルム層2は透明であっても不透明であってもよく、着色されていてもよい。フィルム層2は、エンボス加工またはデボス加工により形成された凹凸を有してもよい。
フィルム層2は単層であってもよく、複数の層の積層体であってもよい。フィルム層2が複数の層を有する場合には、フィルム層2は薄い支持層を含んでもよい。図2は、複数の層から成るフィルム層2の一例の断面図である。この例では、フィルム層2は、表面を形成するフィルム111と、支持層112と、接着層113とを備える。接着層113を介してフィルム111と支持層112とが接合される。支持層112の材料は限定されない。例えば、ポリエステルを支持層に用いた場合には、フィルム層2を補強できると共に、溶剤インクを用いた印刷の際にもフィルム層2の表面の平滑性を維持することができる。支持層112の厚さの下限は25μm、35μm、または38μmでもよく、その上限は100μm、80μm、または60μmでもよい。接着層113の材料は限定されず、例えば、感圧接着剤または感熱接着剤が接着層113として用いられてもよい。接着層113の構成は、後述する接着層13と同じでもよいし異なってもよい。
フィルム層2の厚さは限定されない。フィルム層2の厚さはシートの用途に合わせて変更可能である。例えば、シートがグラフィックシートまたは内外装用装飾シートとして使用される場合は、フィルム層2の厚さの下限は0.05mmであってもよく、その厚さの上限は、例えば0.4mm、0.35mm、0.3mm、または0.2mmでもよい。このようなフィルム層2の厚さは、シート1またはフィルム層2の取扱いの容易性を考慮して決めてもよい。
ファスナ層12は、任意の有体物にシート1を貼るためのシート状の部材である。ファスナ層12は第1の面ファスナ部材を備える。この第1の面ファスナ部材が、有体物に取り付けられた第2の面ファスナ部材と係合することで、シート1が有体物に貼られる。第2の面ファスナ部材と係合可能である限り、第1の面ファスナ部材の具体的な構成は限定されない。例えば、第1の面ファスナ部材はループ材、すなわち、雌材でもよく、この場合には第2の面ファスナ部材はフック材、すなわち、雄材であり得る。あるいは、第1の面ファスナ部材はフック材でもよく、この場合には第2の面ファスナ部材はループ材であり得る。第1および第2の面ファスナ部材はデュアルロック(登録商標)ファスナであってもよく、この場合には、第1および第2の面ファスナ部材は共に茸型のフック材であり得る。あるいは、第1および第2の面ファスナ部材の双方が、同一面上にフック材およびループ材の双方を有してもよい。
ファスナ層12は第1の面ファスナ部材としてループ材21を備える。ループ材21は、図1に示すように、ベース21aと、該ベース21aの第1面上に形成されたループ層21bとを備えてもよい。あるいは、ループ材21は、不織布のようにループ層21bのみで構成されてもよい。ループ材21がベース21aおよびループ層21bを有する場合は、ループ層21bが存在する側の面がループ材21の係合面である。ループ材21は、フック材と係合しやすいニットまたは不織布を含んでもよい。
ベース21aの厚みの下限は、良好な機械強度を維持して良好な係合強度を得る観点から、5μm、10μm、15μm、または20μmでもよい。その厚みの上限は、低コスト化および柔軟性の観点から、100μm、85μm、70μm、または55μmでもよい。ループ層21bの厚みの下限は、良好な機械強度を維持して良好な係合強度および繰り返し脱着時のその持続性を得る観点から、0.5mm、1.0mm、または1.5mm以上であってもよい。その厚みの上限は、低コスト化および良好な柔軟性の観点から、20mm、10mm、または2.0mmであってもよい。
ループ材21の坪量の下限は例えば10g/m2、15g/m2、または17g/m2でもよく、その上限は例えば80g/m2、50g/m2、30g/m2、25g/m2、または22g/m2でもよい。この坪量は、第2の面ファスナ部材との係合力の維持、第2の面ファスナ部材からの取り外しの容易性、製造コストなどの様々な観点に基づいて決定されてもよい。
ループ材21がニットである場合には、ステッチの密度は1ステッチ/1mmでもよい。ループ材21の作製に使用される繊維状材料は、単一フィラメントストランド、マルチフィラメントストランド、またはそれらの組み合わせでもよい。ここで、マルチフィラメントストランドは、例えば、2以上のストランドを共に巻いて単一のスレッドを作ることで得られる。ループパイルの高さは限定されないが、その高さの下限は例えば0.5mmでもよく、その上限は例えば0.8mmまたは0.7mmでもよい。ループパイルの高さとは、ベース21aの第1面からループの頂点までの寸法である。このループパイルの高さは、第2の面ファスナ部材との係合力の維持、第2の面ファスナ部材からの取り外しの容易性などの様々な観点に基づいて決定されてもよい。
ニットの材料は限定されず、例えばポリ(テトラフルオロエチレン)(TEFLON(登録商標)のようなPTFE)、アラミド(例えば、KEVLAR(登録商標))、ポリエステル、ポリプロピレン、およびナイロンから成る群より選択される少なくとも1種であってもよい。所望のニットを作製するために、制限のあるエラストマー特性を有する繊維材料を用いてもよい。エラストマーコーティング組成物は、1以上の溶剤中に溶解した1以上のエラストマーポリマーを含む。エラストマーポリマーの代表的な例は、KRATON(商標)ポリマー(例えば、スチレン)、ウレタン、アクリル、シリコーン、オレフィン、並びにそれらのコポリマー、ブロックコポリマー、および他の組み合わせから成る群から選択される少なくとも1種であってもよい。
ループ材21が不織布である場合には、その不織布は短繊維不織布でもよいし長繊維不織布でもよい。短繊維不織布とは、少なくとも主要部(構成繊維の50質量%超)がステープル(すなわち短繊維)で構成される不織布を意図し、フィラメント(すなわち長繊維)で構成される不織布とは区別される。短繊維不織布は、カーデッド不織布、エアレイド不織布、湿式不織布などを包含する。一方、長繊維不織布は、一般的にスパンボンド不織布などを包含する。ステープルは一般的には数百mm以下の繊維長を有してもよいが、その長さはこれに限定されない。
ループ材21に不織布を用いた場合には、その不織布に通気性を持たせることができる。不織布は、例えば、SB(スパンボンド)、MB(メルトブロー)、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)、スパンレースなどの周知の製法により形成された合成繊維でもよいし、天然繊維でもよい。例えば、不織布の材料は、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン、EVA(エチレン・ビニルアセテート)、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ乳酸、レーヨン、これらのコポリマーおよび混合物の繊維、および天然繊維から成る群から選択される少なくとも1種であってもよい。第2の面ファスナ部材との係合によるループ層21bの破壊(例えば、繊維の抜け)を防ぐという観点から、ループ層21bには高強度であるポリアミドが用いられてもよい。あるいは、材料コストまたは環境安定性を考慮すると、ベース21aおよび/またはループ層21bにおいてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどが用いられてもよい。
ループ材21の種類および材料にかかわらず、ループ材21の係合面は、ループを有しない領域を含んでもよい。本開示では、便宜上、ループを有しない領域を「無ループ領域」という。無ループ領域の形成方法は限定されないが、例えばヒートシールが用いられてもよい。なお、ヒートシールとは、例えば加熱ローラ等で部分的に熱溶着や熱プレスでループの立ち上がりを抑えることをいう。ループ材21の全面積に対する無ループ領域の面積の比率は、第2の面ファスナ部材との係合力の維持、第2の面ファスナ部材からの取り外しの容易性、製造コストなどの様々な観点に基づいて決定されてもよい。例えば、その比率の下限は5%、10%、15%、20%、25%、または30%でもよく、その上限は50%、45%、40%、35%、または30%でもよい。無ループ領域の形状および配置も限定されない。例えば、無ループ領域は、並行に延びる複数の線状を呈してもよいし、格子状を呈してもよいし、規則的にまたは不規則に点在してもよいし、ランダムに配されてもよい。
接着層13は、フィルム層2とファスナ層12とを接合する層である。接着層13は、フィルム層2の裏面2bの少なくとも一部に設けられ、ファスナ層12がこの接着層13によりその裏面2bに取り付けられることで、フィルム層2とファスナ層12とが一体となったシート1が形成される。接着層13はフィルム層2の裏面2bの一部にのみ設けられてもよく、この場合には、接着層13は裏面2b上の一または複数の箇所に設けられてもよい。接着層13がフィルム層2の裏面2bの一部にのみ設けられる場合には、ファスナ層12は裏面2bの一部に設けられてもよく、例えば、周縁の一部または全体のみに設けられてもよい。あるいは、ファスナ層12は裏面2bの全体に設けられてもよい。接着層13はフィルム層2の裏面2bの全体に設けられてもよく、この場合には、ファスナ層12は裏面2bの全体に設けられる。
接着層13の材料は限定されない。例えば、感圧接着剤または感熱接着剤が接着層13として用いられてもよい。
接着層13に用いられる感圧接着剤として、例えば、アクリル系感圧接着剤が挙げられる。アクリル系感圧接着剤は、粘着性アクリル系ホモポリマーおよびコポリマーから成る群より選択される少なくとも1種の粘着性アクリル系ポリマーを含む。例えば、アクリル系感圧接着剤は、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、およびエタクリロニトリルから成る群より選択されるモノマーの粘着性ホモポリマーまたは2種以上のこれらモノマーの粘着性コポリマーを含む。
粘着性ホモポリマーおよびコポリマーは、上記モノマー、または上記モノマーの混合物を、通常のラジカル重合方法、例えば溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などを用いて重合することにより得ることができる。重合開始剤として、過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどの有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(AVN)などのアゾ系重合開始剤などを用いることができる。
一実施態様では、粘着性ホモポリマーまたはコポリマーの重量平均分子量の下限は約20万または約40万でもよく、その上限は約100万または約70万でもよい。粘着性ホモポリマーまたはコポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)法により標準ポリスチレンを用いて決定される。
粘着性アクリル系ポリマーは架橋剤で架橋されてもよい。架橋剤として、イソシアネート化合物、メラミン化合物、ポリ(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、アミド化合物、ビスアミド化合物、例えば、1,1’−イソフタロイル−ビス(2−メチルアジリジン)などの二塩基酸のビスアジリジン誘導体などが使用できる。架橋剤として、イソシアネート化合物(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート)を用いてもよいし、ビスアミド化合物(例えば、1,1’−イソフタロイル−ビス(2−メチルアジリジン)を用いてもよい。架橋剤の添加量は架橋剤の種類にもよるが、アクリル系感圧接着剤100質量部に対して、通常0.1質量部以上10質量部以下である。
接着層13の厚さは、薄いほど不燃性に有利であり、厚いほど接着力が上がる。不燃性と接着力とのバランスをとる観点から、接着層13の厚さの下限は、例えば10μmまたは20μmでもよく、その上限は200μmまたは100μmでもよい。
シート1のファスナ層12は第1の面ファスナ部材としてループ材21を備える。このファスナ層12(ループ材21)に対応して、有体物の支持面90にはフック材22が第2の面ファスナ部材として取り付けられる。支持面90における第2の面ファスナ部材の取り付け場所は限定されない。フック材22は、シート1に対応する形状および面積の一部にのみ設けられてもよく、例えば、シート1の周縁の一部または全体に対応する位置にのみ設けられてもよい。あるいは、フック材22は、シート1に対応する形状および面積の全体にわたって設けられてもよい。シート1の第1の面ファスナ(ループ材21)の形状および面積は、支持面90上の第2の面ファスナ(フック材22)の形状および面積と一致しなくてもよい。したがって、シート1を支持面90上に貼った際に、第1の面ファスナ(ループ材21)の一部が第2の面ファスナ(フック材22)と係合しなくてもよい。また、その貼付の際に、第2の面ファスナ(フック材22)の一部が第1の面ファスナ(ループ材21)と係合しなくてもよい。なお、図1では示していないが、フック材22は接着層などにより支持面90に固定されてもよい。
第1および第2の面ファスナを採用することで、支持面90に貼られたシート1を容易に取り外すことができ、さらに、その取り外したシート1を再び支持面90に貼ることもできる。すなわち、図1の矢印Aで示すように、シート1を自由に貼り付けおよび取り外しすることができる。図3に示すように、シート1の外縁の周辺に第2の面ファスナ部材(フック材22)を配することで、支持面90上でシート1を広げる操作とシート1を丸めて固定する操作とを繰り返すことができる。また、或る有体物に貼っていたシート1を取り外して、そのシート1を別の有体物に貼ったり、後で同じ場所に再び貼ったりすることができる。言い換えると、シート1の品質を損なうことなくシート1を再利用することができる。
シート1の90°引き剥がし粘着力(90°剥離力)を適切に設定することで、シート1を貼っている際の係合力の維持と、シート1の取り外しの容易性とを両立させることができる。90°引き剥がし粘着力は、第2の面ファスナ部材からシート1を取り外す際に測定される力であり、例えば、JIS Z 0237で規定されている方法で測定することができる。係合力の維持の観点から、90°引き剥がし粘着力の下限は、例えば0.5N/25.4mmまたは1.0N/25.4mmであってもよい。取り外しの容易性の観点から、90°引き剥がし粘着力の上限は、例えば、8N/25.4mm、6N/25.4mm、4N/25.4mm、または2N/25.4mmであってもよい。
図4は、一実施形態に係るシート1Aの断面図である。シート1Aは、フィルム層2、ファスナ層12A、および接着層13を備える。接着層13を介してフィルム層2とファスナ層12Aとが接合される。シート1Aは、第1の面ファスナ部材としてループ材ではなくフック材を備える点でシート1と異なる。以下では、シート1と異なるファスナ層12Aについて特に説明する。
ファスナ層12Aは、任意の有体物にシート1Aを貼るためのシート状の部材であり、フック材22を第1の面ファスナ部材として備える。ファスナ層12Aはフィルム層2の裏面2bの一部に設けられてもよいし、裏面2bの全体に設けられてもよい。
図4の例では、ファスナ層12A(フック材22)に対応して、有体物の支持面90にはループ材21が第2の面ファスナ部材として取り付けられる。支持面90における第2の面ファスナ部材の取り付け場所を任意に設定できることは、シート1と同じである。シート1Aの第1の面ファスナ(フック材22)の形状および面積は、支持面90上の第2の面ファスナ(ループ材21)の形状および面積と一致しなくてもよい。したがって、シート1Aを支持面90上に貼った際に、第1の面ファスナ(フック材22)の一部が第2の面ファスナ(ループ材21)と係合しなくてもよい。また、その貼付の際に、第2の面ファスナ(ループ材21)の一部が第1の面ファスナ(フック材22)と係合しなくてもよい。いずれにしても、図4の矢印Aに示すように、シート1Aを自由に貼り付けおよび取り外しすることができる。なお、図4では示していないが、ループ材21は接着層などにより支持面90に固定されてもよい。
フック材22の材料は限定されない。例えば、その材料は熱可塑性樹脂であり、具体的には、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、塩化ビニル樹脂(PVC)、エチル・メチル・メタクリレート樹脂(EMMA)、エチル・アクリレート樹脂(EA)、およびエチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)樹脂、またはこれら2種以上の混合物(例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)とポリエチレン樹脂(PE)との混合物、ポリプロピレン樹脂(PP)とエチル・メチル・メタクリレート樹脂(EMMA)との混合物、ポリプロピレン樹脂(PP)とエチル・アクリレート樹脂(EA)との混合物、ポリプロピレン樹脂(PP)とエチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)樹脂との混合物、ポリエチレン樹脂(PE)とエチル・メチル・メタクリレート樹脂(EMMA)との混合物、ポリエチレン樹脂(PE)とエチル・アクリレート樹脂(EA)との混合物、ポリエチレン樹脂(PE)とエチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)樹脂との混合物)などでもよい。なお、PEの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが挙げられる。必要に応じて、これらの樹脂には添加剤などを添加することができる。
フック材22は、ベース22aと、該ベース22aの第1面上に設けられた多数のフック22bとを備える。フック22bが存在する側の面がフック材22の係合面である。フック22bの形状は、係合力を満足できるものであれば何ら限定されないが、例えば、茸状、鉤状、T字状、またはJ字状であってもよい。
フック材22の寸法は、シートの軽量化、第2の面ファスナ部材との係合力の維持、第2の面ファスナ部材からの取り外しの容易性、製造コストなどの様々な観点に基づいて決定されてもよい。
フック材22の厚さの下限は60μm、90μm、または115μmでもよく、その上限は600μm、550μm、500μm、350μm、320μm、または300μmでもよい。このようにフック材22を薄くすることで、支持面90に取り付けられたシート1Aの嵩高さを抑えることができる。そのフック材22を第1の面ファスナ部材として用いる場合には、シート1Aが薄く且つ軽くなる。したがって、シート1Aの柔軟性を確保でき、シート1Aの携帯性および取扱性をさらに向上させることもできる。
ベース22aの厚さの下限は20μm、30μm、または35μmでもよく、その厚さの上限は100μm、80μm、70μm、または60μmでもよい。フック22bの高さの下限は40μm、60μm、または80μmでもよく、その高さの上限は500μm、400μm、300μm、280μm、または260μmでもよい。
フック22bが茸状である場合に、茎部(ステム)の最大幅および最小幅は限定されない。例えば、茎部の最大幅の下限は70μmまたは100μmであってもよく、その上限は250μm、200μm、または190μmであってもよい。茎部の最小幅の下限は50μmまたは80μmであってもよく、その上限は210μm、200μm、195μm、または185μmであってもよい。傘部(キャップ)の最大幅も限定されず、その下限は70μm、100μm、または200μmであってもよく、その上限は500μm、450μm、400μm、350μm、または300μmであってもよい。茎部の先端からの傘部の張出し量の下限は5μmでも10μmでもよく、その上限は90μm、85μm、80μm、または75μmであってもよい。
フック材22の種類および材料にかかわらず、フック材22の係合面は、フック22bを有しない領域を含んでもよい。本開示では、便宜上、フックを有しない領域を「無フック領域」という。フック材22の全面積に対する無フック領域の面積の比率は、第2の面ファスナ部材との係合力の維持、第2の面ファスナ部材からの取り外しの容易性、製造コストなどの様々な観点に基づいて決定されてもよい。例えば、その比率の下限は5%、10%、15%、20%、25%、または30%でもよく、その上限は50%、45%、40%、35%、または30%でもよい。無フック領域の形状および配置も限定されない。例えば、無フック領域は、並行に延びる複数の線状を呈してもよいし、格子状を呈してもよいし、規則的にまたは不規則に点在してもよいし、ランダムに配されてもよい。
シート1と同様に、シート1Aの90°引き剥がし粘着力を適切に設定することで、シート1Aを掲示している際の係合力の維持と、シート1Aの取り外しの容易性とを両立させることができる。シート1Aについての90°引き剥がし粘着力の数値範囲(上限および下限)はシート1と同様に設定されてよい。
図1に示すシート1に対応する第2の面ファスナ部材としてフック材22を用いる場合にも、シート1Aの場合と同様にフック材22の寸法を決定することができる。例えば、第1および第2の面ファスナ部材の間の係合力の維持、第2の面ファスナ部材からのシート1Aの取り外しの容易性、または製造コストを考慮してフック材22の寸法が決定されてもよい。例えば、フック材22の厚さの下限は60μm、90μm、または115μmでもよく、その上限は600μm、550μm、500μm、350μm、または320μmでもよい。フック材22のベースの厚さの下限は20μm、30μm、または35μmでもよく、その厚さの上限は100μm、80μm、70μm、または60μmでもよい。個々のフックの高さの下限は40μm、60μm、または80μmでもよく、その高さの上限は500μm、400μm、300μm、280μm、または260μmでもよい。
シート1,1Aのそれぞれについて提供方法は限定されない。例えば、シート1,1Aのそれぞれは、単独で提供されてもよいし、第2の面ファスナ部材と共にシート用キットとして提供されてもよい。シート用キットは、少なくともシート1および第2の面ファスナ部材を含む物品、または少なくともシート1Aおよび第2の面ファスナ部材を含む物品である。
シート1,1Aは様々な用途に用いることができる。以下では、いくつかの実施形態を例として示しながら、本開示に係るシートについてさらに説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態では、本開示に係るシートをグラフィックシートに適用する。図5を参照しながらグラフィックシート10の構成を説明する。図5は、グラフィックシート10の断面図である。グラフィックシート10は、任意の視覚表現であるグラフィックを人に視認させるための印刷媒体である。グラフィックの内容は限定されず、例えば文字、記号、図形、絵、写真、またはこれらの中の任意の2以上の要素から成る組合せであってもよい。グラフィックの目的も何ら限定されず、例えば広告、娯楽、美術、教育、注意、警告、またはこれらの中の任意の2以上の目的の組合せであってもよい。
グラフィックシート10は印刷フィルム層11、ファスナ層12、および接着層13を備える。図5では、印刷フィルム層11上に印刷されたグラフィックパターン(印刷層)80を模式的に示す。
印刷フィルム層11は、グラフィックパターン80が印刷される印刷面11aを有するシート状の部材である。印刷フィルム層11はフィルム層2の一例であり、印刷面11aは表面(おもてめん)2aの一例である。印刷フィルム層11の裏面11bは、裏面2bの一例である。印刷フィルム層11に含まれる材料は限定されない。例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むアクリル樹脂、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、フッ素樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)などの共重合体またはこれらの混合物を含むフィルムが使用できる。
強度、耐衝撃性などの観点から、印刷フィルム層11としてポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体またはポリカーボネートを含むフィルムが使用できる。印刷フィルム層11は、印刷インクのレセプタ層として、および/または外部からの穿刺、衝撃などから基材表面を保護する保護層として機能することもできる。印刷フィルム層11を印刷インクのレセプタ層として機能させる場合、印刷適性、耐溶剤性(例えば耐アルコール性)などの点から、印刷フィルム層11がポリ塩化ビニルまたはポリウレタンを含むフィルムであってもよい。グラフィックシート10を難燃性とするために、印刷フィルム層11はポリ塩化ビニルを含んでもよい。
印刷フィルム層11は透明であっても不透明であってもよく、着色されていてもよい。一実施態様では、印刷フィルム層の上に直接または間接的に配置される印刷層によって作られる画像の鮮明さ、発色などの点から、印刷フィルム層11は白色に着色されてもよい。
印刷フィルム層11は単層であってもよく、複数の層の積層体であってもよい。印刷フィルム層11が複数の層を有する場合には、印刷フィルム層11は図2に示す構成、すなわち、支持層を含む構成を有してもよい。印刷フィルム層11は、可塑剤、充填材、ガラス繊維などの強化剤、酸化亜鉛、酸化チタンなどの顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、不燃性添加剤などの添加剤を含んでもよい。
印刷フィルム層11は光輝層を有してもよい。光輝層は、印刷フィルム層11に真空蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、めっきなどによって形成されたアルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛、ゲルマニウムなどの金属、これらの合金または化合物を含む金属薄膜を含んでもよい。
印刷フィルム層11は、印刷面11aを覆う表面保護層を有してもよい。表面保護層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などの樹脂のフィルムを印刷面11a上に直接または接合層を介して積層することによって、あるいは樹脂組成物を印刷面11aに塗布して乾燥することによって形成することができる。表面保護層には、目的とする用途に応じて光沢仕上げまたは艶消し仕上げを施してもよい。
印刷フィルム層11は、エンボス加工またはデボス加工により形成された凹凸を有してもよい。凹凸のパターンまたは模様は規則的でも不規則であってもよく、特に限定されないが、例えば、万線状、木目、砂目、石目、布目、梨地、皮絞、マット、ヘアライン、スピン、文字、記号、幾何学図形などでもよい。
印刷フィルム層11の厚さは限定されない。例えば、その厚さの下限は0.05mmであってもよく、その厚さの上限は、例えば0.4mm、0.35mm、0.3mm、または0.2mmでもよい。このような印刷フィルム層11の厚さは、グラフィックシート10または印刷フィルム層11の取扱いの容易性を考慮して決めてもよい。
グラフィックパターン80は印刷面11a上にトナー、インクなどの着色剤を用いて形成することができる。グラフィックパターン80を印刷する手法および装置は限定されず、例えば、インクジェット印刷、グラビア印刷、静電印刷、スクリーン印刷、またはオフセット印刷であってもよい。印刷インクとして、溶剤系インクまたはUV硬化型インクを用いることができる。印刷層の厚みは様々であってよく、一般に溶剤系インクを用いた場合は、厚みの下限は約1μmまたは約2μmでもよく、厚みの上限は約10μmまたは約5μmでもよい。UV硬化型インクを用いた場合は、厚みの下限は約1μmまたは約5μmでもよく、厚みの上限は約50μmまたは約30μmでもよい。
ファスナ層12および接着層13のそれぞれの構成はシート1と同じである。ファスナ層12により、グラフィックパターン80の掲示場所にグラフィックシート10を貼ることができる。ここで、掲示場所は、シートが貼られる有体物の一例である。印刷されたグラフィックシート10は屋内および屋外を問わず、任意の有体物の表面に貼られてよく、例えば、外壁、内壁、天井、床、柱、ガラス、掲示板、または他の工作物の表面に貼られてもよい。グラフィックシート10の掲示期間は限定されず、短期間でも長期間でもよい。
グラフィックシート10についても、支持面90における第2の面ファスナ部材の取り付け場所は限定されない。また、第1の面ファスナ(ループ材21)および第2の面ファスナ(フック材22)のそれぞれについて形状および面積は何ら限定されない。さらに、第1の面ファスナ(ループ材21)と第2の面ファスナ(フック材22)との位置関係も限定されない。いずれにしても、図5の矢印Aに示すように、グラフィックシート10を自由に貼り付けおよび取り外しすることができる。グラフィックシート10の90°引き剥がし粘着力(90°剥離力)はシート1,1Aと同様に設定される。
グラフィックシート10の提供方法は限定されない。例えば、グラフィックシート10は単独で提供されてもよいし、第2の面ファスナ部材(フック材22)と共にグラフィックキットとして提供されてもよい。グラフィックキットは、少なくともグラフィックシート10および第2の面ファスナ部材(フック材22)を含む物品である。
[第2実施形態]
第2実施形態でも、本開示に係るシートをグラフィックシートに適用する。図6を参照しながらグラフィックシート10Aの構成を説明する。図6は、グラフィックシート10Aの断面図である。グラフィックシート10Aは、第1の面ファスナ部材としてループ材ではなくフック材を備える点で、第1実施形態に係るグラフィックシート10と異なる。
グラフィックシート10Aは印刷フィルム層11、ファスナ層12A、および接着層13を備える。図6でも、印刷フィルム層11の印刷面11aに印刷されたグラフィックパターン80を模式的に示す。
ファスナ層12Aおよび接着層13のそれぞれの構成はシート1Aと同じである。グラフィックシート10Aについても、第1の面ファスナ(フック材22)および第2の面ファスナ(ループ材21)のそれぞれについて形状および面積は何ら限定されない。さらに、第1の面ファスナ(フック材22)と第2の面ファスナ(ループ材21)との位置関係も限定されない。いずれにしても、図6の矢印Aに示すように、グラフィックシート10Aを自由に貼り付けおよび取り外しすることができる。グラフィックシート10Aの90°引き剥がし粘着力はシート1,1Aと同様に設定される。
グラフィックシート10Aの提供方法は限定されない。例えば、グラフィックシート10Aは単独で提供されてもよい。あるいは、少なくともグラフィックシート10Aおよび第2の面ファスナ部材(ループ材21)を含むグラフィックキットが提供されてもよい。
[第3実施形態]
第3実施形態では、本開示に係るシートをプロジェクタスクリーンに適用する。図7は、本実施形態に係るプロジェクタスクリーン31の利用の一例を示す図である。プロジェクタスクリーン31はプロジェクタ200から投影された画像を映すための物品である。プロジェクタスクリーン31に映される画像は動画でもよいし静止画でもよい。画像の内容は何ら限定されない。プロジェクタスクリーン31はシート1またはシート1Aと同じ構成を備え、支持面90に貼られる。一例として、フィルム層2は、表面がマット処理された白のPVCフィルムと、このPVCフィルムを支持するためのPET製の支持層とを備えてもよい。PVCフィルムとしてスリーエム社製のスコッチカル(登録商標)フィルムが用いられてもよい。もちろん、上述したように、フィルム層2の構成は、プロジェクタスクリーン31として機能するための光反射特性などを有するフィルムであればよく、何ら限定されない。プロジェクタ200から照射された画像は、フィルム層2の表面2aに映される。
[第4実施形態]
第4実施形態では、本開示に係るシートをホワイトボードシートに適用する。図8は、本実施形態に係るホワイトボードシート32の利用の一例を示す図である。ホワイトボードシート32はマーカなどの筆記具による記述を記録することができる物品である。ホワイトボードシート32に書かれた記述は消去可能である。ホワイトボードシート32はシート1またはシート1Aと同じ構成を備え、支持面90に貼られる。フィルム層2の例として、スリーエム社製のホワイトボードフィルムPWF−500およびWH−200が挙げられるが、上述したように、フィルム層2の構成は、ホワイトボードシート32として使用できる程度の筆記性、消去性、防眩性などを備えたフィルムであればよく、何ら限定されない。フィルム層2の表面2aに記述が記録される。
[第5実施形態]
第5実施形態では、本開示に係るシートを付箋用シートに適用する。図9は付箋用シート33の利用の一例を示す図である。付箋用シート33は付箋を掲示するための物品である。付箋用シート33はシート1またはシート1Aと同じ構成を備え、支持面90に貼られる。フィルム層2の例として、スリーエム社製のスコッチカル(登録商標)グラフィックフィルムIJ1220Nが挙げられるが、上述したように、フィルム層2の構成は、スリーエム社製の各種ポスト・イット(登録商標)ノートなどの付箋が貼付できるフィルムであればよく、何ら限定されない。フィルム層2の表面2aは、付箋を貼るための面として機能する。
本開示に係るシートはホワイトボードシート32および付箋用シート33の双方の機能を有してもよい。すなわち、1枚のシート1またはシート1Aが、筆記具による記述の記録と付箋の掲示との双方を行うために用いられてもよい。
[第6実施形態]
第6実施形態では、裁縫可能な支持面90上にグラフィックシート10を貼る例を示す。より具体的には、グラフィックシート10は衣類または布地に貼られる。図10は、グラフィックシート10の利用の一例を示す図である。この例では、支持面90は、衣服220を構成する布地である。第2の面ファスナ部材として機能するフック材22は、縫われることで支持面90上に、すなわち衣類または布地に取り付けられる。グラフィックシート10はフック材22上に貼られる。図10の例ではグラフィックシート10はゼッケン(race bib)として機能するが、グラフィックシート10の役割は何ら限定されない。フィルム層2の例として、スリーエム社製のスコッチライト(登録商標)反射グラフィックフィルム780mC−10Rが挙げられるが、上述したように、フィルム層2の構成はこれに限定されない。
本開示に係るシートを衣類または布地に着脱可能に取り付けることで、安全ピンを用いる場合よりもシートを簡単に貼り付けおよび取り外すことができる。また、安全ピンを用いないので、着心地の低下を避けることができる。さらに、本開示に係るシートを用いることで、布地に貼ったシートを再利用することができる。
図10ではグラフィックシート10を示すが、グラフィックシート10Aが用いられてもよい。
[第7実施形態]
第7実施形態では、本開示に係るシートを、建築物の内装および外装の少なくとも一方に利用可能な装飾シートである内外装用装飾シート34に適用する。この内外装用装飾シート34は、建物の内側または外側の面の少なくとも一部を装飾するシートとして使用できる。内外装用装飾シート34は、内装にまたは外装に形成された凹凸の少なくとも一部を隠すためのカバーとしても機能し得る。図11は内外装用装飾シート34をカバーとして利用する場合の一例を示す図である。この例では、支持面90は凹部91および凸部92を有する。内外装用装飾シート34はシート1またはシート1Aと同じ構成を備え、壁などの支持面90に貼られる。内外装用装飾シート34は、凹部91または凸部92を覆うために必要な大きさを有してもよい。凹部91および凸部92の周縁部の少なくとも一部に第2の面ファスナ部材を取り付け、該第2の面ファスナ部材上に内外装用装飾シート34を貼ることで、凹部91および凸部92を隠すことができる。内外装用装飾シートのフィルム層2の例として、スリーエム社製のダイノック(登録商標)フィルムが挙げられるが、フィルム層2の構成はこれに限定されない。例えば、フィルム層2は、塩化ビニル系樹脂層またはオレフィン系樹脂層上にスクリーン印刷またはグラビア印刷により装飾印刷を施して表面にエンボス加工などを施した装飾フィルムでもよい。
図12は、凹部91および凸部92の隠蔽を示す図であり、図11のXII−XII線断面に対応する。図12は、シート1を内外装用装飾シート34として用い、第2の面ファスナ部材としてフック材22を用いる例を示す。第1および第2の面ファスナ部材により、内外装用装飾シート34が凹部91の形状に沿って凹まないように、内外装用装飾シート34を支持面90に貼ることができる。支持面90に貼られた内外装用装飾シート34は平坦な状態を維持するので、内外装用装飾シート34によって凹部91の存在が隠される。さらに、第1および第2の面ファスナ部材により支持面90とカバーとの間に空間が形成される。したがって、この空間内に凸部92を収めつつ、内外装用装飾シート34が凸部92の形状に沿って隆起しないように、内外装用装飾シート34を支持面90に貼ることができる。支持面90に貼られた内外装用装飾シート34は平坦な状態を維持するので、内外装用装飾シート34によって凸部92の存在が隠される。
図11および図12は、支持面90の凹凸を隠す目的で内外装用装飾シート34を使用する例を示すが、内外装用装飾シート34は凹凸のない支持面90に貼り付けられてもよい、この場合には、支持面90のほぼ全面に第2の面ファスナ部材が取り付けられてもよい。
[第8実施形態]
上述したように、本開示に係るシートと第2の面ファスナ部材とを備えるシート用キットが提供されてもよい。このシート用キットは、第2の面ファスナ部材と支持面との間に設けられる低粘着性の粘着剤層をさらに備えてもよい。第8実施形態では、低粘着性の粘着剤層を含む粘着シートを備えるシート用キットについて説明する。
支持面に取り付けた第2の面ファスナ部材を使用後に取り外すことが要求される場合がしばしばある。しかし、支持面が、発泡塩ビ材などの壁紙が貼られた壁面である場合、支持面が非常に脆弱であるため、第2の面ファスナを剥がすと、壁紙が一緒に剥がれて、壁面に傷をつけてしまうことが多い。第8実施形態は、このような脆弱な支持面に傷をつけずに第2の面ファスナ部材を剥離できる、低粘着性の粘着剤層を含む粘着シートを備えるシート用キットの構成に関する。
第8実施形態に係るシート用キット100は、シート1と、第2の面ファスナ部材であるフック材22と、低粘着性の粘着剤層40bを持つ粘着シート40とを備える。図13はシート用キット100の構成の一例を示す図である。
低粘着性の粘着剤層40bは、第2の面ファスナ部材の、支持面90に接する面に設けられるということができる。「低粘着性」は、粘着剤層40bが支持面90から剥がされるときに、粘着シート40によって支持面90を傷めないこと、すなわち、粘着シート40と共に支持面90が剥がれない程度に低い接着力を有することを示す。
粘着シート40は、基材層40aと、その基材層40aの第1主面に設けられる低粘着性の粘着剤層40bと、基材層40aの第2主面に設けられる接着層40cとを備える。粘着剤層40bはシート用キット100の使用時に支持面90に接する。接着層40cにはフック材22が取り付けられる。
基材層40aの材料は限定されない。例えば、基材層40aはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン、EVA(Ethylene−vinyl acetate)、ポリエチレン(無延伸)、OPP(Oriented PolyPropylene)、紙、または布で作製されてもよい。
粘着剤層40bの材料も限定されない。例えば、粘着剤層40bはアクリル系、ゴム系、またはシリコーン系の粘着剤で形成されてもよい。このうち、シリコーン系の粘着剤は、接着力が低くても高い濡れ性によって必要な保持性能を得られる一方で、接着力自体が小さい。そのため、シリコーン系の粘着剤で粘着剤層40bを形成することで、支持面90を傷めることなく支持面90から粘着シート40を剥がすことが可能になる。
粘着シート40の作製方法の例を説明する。例えば、粘着シート40の作製にあたり、プライマーとして、水系ポリエーテルウレタンプライマー、または溶剤系ポリエーテルウレタンプライマーが用いられる。水系ポリエーテルウレタンプライマーは、ハイドランWLI−602(DIC株式会社製)を超純水で10重量パーセント濃度に希釈することで用いられる。溶剤系ポリエーテルウレタンプライマーは、Polyurethane3552(荒川化学工業株式会社製)をメチルエチルケトンで10重量パーセント濃度に希釈することで用いられる。
粘着剤層40bの材料として、US8,541,481に示されるような、末端に官能基を有する、あるいは末端に官能基を有さないPDMSと、MQ構造を有するシリコーンレジンとが用いられる。一例として、トリメチルシリル末端PDMSとして、例えばTSF451−100M(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)を使用でき、MQ構造を有するシリコーンレジンとして、例えばMQ803TF(ワッカー社製)を使用できる。
例えば、30重量部のシリコーンレジンを100重量部のトリメチルシリル末端PDMSに溶解させることで、シリコーン粘着剤が調製される。プライマーが塗布された基材層40aにシリコーン粘着剤が塗工されることで粘着剤層40bが作製される。一例として、粘着剤層40bの厚さは50μmである。基材層40aの上に塗工された粘着剤層40bは電子線照射(40kGy、加速電圧210KeV)によって硬化される。
上述した粘着剤層40bの材料、基材層40aの材料、および粘着シート40の作製方法はいずれも一例である。別の材料または別の作製方法を用いて粘着剤層40bおよび基材層40aが作製されてもよい。
接着層40cの材料も限定されない。例えば、感圧接着剤または感熱接着剤が接着層40cとして用いられてもよい。接着層40cの構成は、上記の接着層13と同じでもよいし異なってもよい。
なお、第8実施形態では、第2の面ファスナ部材であるフック材22と粘着シート40とを備えるシート用キット100を示すが、第2の面ファスナ部材であるフック材22の裏面に低粘着性の粘着剤層40bが設けられてもよい。すなわち、基材層40aを有する粘着シート40の利用は必須ではない。
粘着シート40の形状および寸法は、第2の面ファスナ部材の全体が基材層40a上に位置し、且つ、第2の面ファスナ部材の周囲の少なくとも一部の外側に粘着シート40が広がるように設定されてもよい。例えば、粘着シート40の形状および寸法は、第2の面ファスナの全周の外側に粘着シート40が広がるように設定されてもよい。このように粘着シート40を作製することで、第2の面ファスナ部材が貼られている粘着シート40を支持面90から簡単に剥がすことができる。
図14はシート用キット100の利用の一例を示す。作業者は粘着シート40の粘着剤層40bを支持面90に向けた状態で粘着シート40を支持面90に貼る。この作業により、粘着シート40の基材層40a上に貼られているフック材22が支持面90上に取り付けられる。なお、フック材22は粘着シート40に予め貼られていなくてもよく、この場合には、作業者がフック材22を粘着シート40に貼ってもよい。作業者は支持面90上のフック材22にシート1を取り付けることで、支持面90上にシート1を貼ることができる。上述したように、作業者はシート1をフック材22から取り外すこともできる。
支持面90からフック材22を取り外す場合には、作業者は粘着シート40を支持面90から剥がせばよい。これにより、支持面90を傷つけることなくシート用キット100を支持面90から取り外すことができる。
シート用キットの構成は本実施形態に限定されない。例えば、シート用キットはシート1A、第2の面ファスナ部材であるループ材21、および粘着シート40を備えてもよい。接着層40cは、粘着シートの構成要素ではなく、第2の面ファスナ部材の構成要素であってもよい。
以上説明したように、本発明の一側面に係るシートは、表面および裏面を有するフィルム層と、フィルム層の裏面の少なくとも一部に取り付けられた第1の面ファスナ部材を備えるファスナ層とを備え、第1の面ファスナ部材がループ材とフック材との少なくとも一方を備え、フック材の厚みが600μm以下であり、ループ材が、フック材と係合し得る不織布またはニットを含む。
このような側面においては、フィルム層の裏面に面ファスナ部材が設けられるので、シートを容易に貼り付けまたは取り外しすることができる。例えば、作業者は、シートを支持面に最初に貼り付けた際にシートに皺または弛みが発生した場合でも、そのシートの一部または全体をいったん剥がして貼り直すことができる。シートの貼り付けおよび取り外しを繰り返すことができるため、少ない数の作業者によりシートを掲示することができる。また、ある場所に貼ったシートを別の場所に貼るなどの再利用も容易に為し得る。
フック材の厚さを600μm以下に設定することで、支持面に取り付けられたシートの嵩高さを抑えることができる。そのフック材を第1の面ファスナ部材として用いる場合には、面ファスナ部材が薄く且つ軽くなるので、シートも薄く且つ軽くなる。したがって、シートの携帯性および取扱性をさらに向上させることができる。
他の側面に係るシートでは、第1の面ファスナ部材に係合可能な第2の面ファスナ部材に対する90°引き剥がし粘着力が0.5N/25.4mm〜8N/25.4mmであってもよい。シートの90°引き剥がし粘着力をこのように設定することで、シートを掲示している際の係合力の維持と、シートを取り外しの容易性とを両立させることができる。
他の側面に係るシートでは、フィルム層が、ポリエステルを含む支持層を有してもよい。この構成によりフィルム層およびシートの強度を上げることができる。
他の側面に係るシートでは、第1の面ファスナ部材がフィルム層の裏面の全体に取り付けられてもよい。このように第1の面ファスナ部材を設けることで、作業者は、シートの支持面に設けられる第2の面ファスナ部材との位置関係をあまり気にすることなく簡単にシートを支持面に貼ることができる。
他の側面に係るシートでは、ループ材の係合面が、ループを有しない領域を含んでもよい。この領域を設けることで、シートの引き剥がし粘着力を抑制して、取り外しを容易にすることができる。加えて、シートを取り外す際にループ層の一部が剥がれてフック材などの第2の面ファスナ部材に移る現象、すなわち転写を回避または抑制しつつ、シートを支持面に確実に貼ることができる。
他の側面に係るシートは、フィルム層が印刷フィルム層であり、シートがグラフィックシートとして用いられてもよい。この場合には、グラフィックシートを容易に貼り付けまたは取り外しすることができる。また、グラフィックシートの再利用も容易に為し得る。
他の側面に係るシートでは、第1の面ファスナ部材が、衣類または布地に取り付けられた第2の面ファスナ部材と係合してもよい。この場合には、衣類または布地に対して、グラフィックシートを容易に貼り付けまたは取り外しすることができる。また、グラフィックシートの再利用も容易に為し得る。
他の側面に係るシートは、プロジェクタスクリーンとして用いられてもよい。この場合には、プロジェクタスクリーンを容易に貼り付けまたは取り外しすることができる。また、プロジェクタスクリーンの再利用も容易に為し得る。
他の側面に係るシートは、ホワイトボードシートとして用いられてもよい。この場合には、ホワイトボードシートを容易に貼り付けまたは取り外しすることができる。また、ホワイトボードシートの再利用も容易に為し得る。
他の側面に係るシートは、付箋用シートとして用いられてもよい。この場合には、付箋用シートを容易に貼り付けまたは取り外しすることができる。また、付箋用シートの再利用も容易に為し得る。
他の側面に係るシートは、内外装用装飾シートとして用いられてもよい。この場合には、内外装用装飾シートを容易に貼り付けまたは取り外しすることができる。また、内外装用装飾シートの再利用も容易に為し得る。
他の側面に係るシートは、内外装用装飾シートが、内装にまたは外装に形成された凹凸の少なくとも一部を隠すためのカバーとして用いられてもよい。この場合には、凹凸を容易に隠蔽または露出させることができる。また、カバーの再利用も容易に為し得る。
本発明の一側面に係るシート用キットは、上記のシートと、第1の面ファスナ部材に係合可能であり、且つ支持面上に取り付け可能な第2の面ファスナ部材とを備える。このような側面においては、フィルム層の裏面に面ファスナ部材が設けられるので、シートを容易に貼り付けまたは取り外しすることができる。例えば、作業者は、シートを支持面に最初に貼り付けた際にシートに皺または弛みが発生した場合でも、そのシートの一部または全体をいったん剥がして貼り直すことができる。シートの貼り付けおよび取り外しを繰り返すことができるため、少ない数の作業者によりシートを掲示することができる。また、ある場所に貼ったシートを別の場所に貼るなどの再利用も容易に為し得る。
他の側面に係るシート用キットは、第2の面ファスナ部材と支持面との間に低粘着性の粘着剤層を有してもよい。低粘着性の粘着剤層が第2の面ファスナ部材と支持面との間に介在することによって、その粘着剤層が支持面から剥がされるときに支持面を傷めないようにすることができる。例えば、これは特に、支持面が脆弱な壁紙の場合などで有効である。
他の側面に係るシート用キットでは、低粘着性の粘着剤層がシリコーン系粘着剤層であってもよい。シリコーン系の粘着剤は、接着力が低くても高い濡れ性によって必要な保持性能を得られる一方で、接着力自体が小さい。したがって、そのため、シリコーン系の粘着剤で粘着剤層を形成することで、支持面を傷めることなく粘着剤層を剥がすことができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(グラフィックシートの作製、および印刷)
n−ブチルアクリレート(BA)が55%、2エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)が25%、酢酸ビニル(VAc)が12.5%、そしてアクリル酸(AA)が7.5%というモノマー組成を有するアクリル系粘着剤が酢酸エチル中に固形分で35%含まれる溶液を準備した。この溶液100gに1gのビスアミド架橋剤(5%固形分)を添加して撹拌した後に、その溶液を、シリコーンが塗布された紙ライナー上に塗布した。そして、その塗布された溶液を65℃で3分間乾燥させ、さらに95℃で2分間乾燥させることで、厚さが20ミクロンの粘着層を得た。次いで、厚さが90ミクロンであるカレンダー成形された白のPVCフィルム(龍田化学株式会社製のJP−90P)をその粘着層に積層させた。この一連の工程で得られた部材を「Part A」という。
一方、タケラックA−969VおよびタケネートA−5(いずれも三井化学株式会社製)という2種類のポリウレタン接着剤を質量比3:1で酢酸エチル中に含ませた溶液を用意した。この溶液を、コロナ処理された厚さ12ミクロンの二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルム(双良社製)上に、乾燥塗布質量が5.2g/m2になるように塗布することで接着層を形成した。そして、ループ材として用意したニット(丸羽経編株式会社製のBMWV−001)をその接着層に積層させた。この一連の工程で得られた部材を「Part B」という。このニットに関し、坪量は21.5g/m2、ウェール数は3.7W/cm、コース数は8C/cmであった。ここで、ウェール数は編地の縦方向のループの集積度を示し、コース数は編地の横方向のループの集積度を示す。
続いて、二軸延伸ポリプロピレンフィルムをPVCフィルムの粘着層に貼り合わせることでPart AとPart Bとを合体させ、これによりグラフィックシートを得た。
このグラフィックシートのフィルムの面に、インクジェットプリンタ(株式会社ミマキエンジニアリング製のJV5。インクは同社製のソルベントインク、SS21)で任意のグラフィックを印刷した。
印刷されたグラフィックシートを貼り付けるために、寸法が210mm×150mm×1mmであるアルミニウム板を用意し、このアルミニウム板の周縁に、粘着剤を備えるフック材(スリーエム社製のNC−2141。25mm幅)を貼った。そして、印刷されたグラフィックシートをそのアルミニウム板上にハンドローラで貼り付けた。印刷されたグラフィックシートの寸法(長さおよび幅)はアルミニウム板と同じとした。
(90°引き剥がし粘着力)
グラフィックシートを25mm幅でカットすることでサンプル片を準備した。また、寸法が30mm×150mm×1mmであるアルミニウム板にフック材(スリーエム社製のNC−2141。25mm幅)をハンドローラで貼り付けた。次いで、JIS Z 0237で規定されている方法でサンプル片をアルミニウム板に貼り付けて、一晩放置した。この一連の作業を二つのサンプル片について実施した。そして、2片のサンプルの90°引き剥がし粘着力をJIS Z 0237で規定されている方法で測定し、その平均値(単位はN/25.4mm)を求めた。
(フック材へのループ材の転写面積)
グラフィックシートを25mm幅でカットすることでサンプル片を準備した。また、寸法が30mm×150mm×1mmであるアルミニウム板にフック材(スリーエム社製のNC−2141。25mm幅)をハンドローラで貼り付けた。このフック材に関し、ベースの厚みは85μm、フックの高さは285μm、フック材の厚さは370μm、フックの傘部(キャップ)の最大幅は420μmであった。
サンプル片をアルミニウム板に貼り付けて剥がす工程を10回繰り返し、フック材へのループ材(実施例1ではニット)の転写面積(単位は%)を求めた。例えば、転写面積が90%であるということは、フック材の全面積の90%の領域にループ材が移ったことを意味する。
[実施例2]
(グラフィックシートの作製、および印刷)
実施例1と異なる点はPart Bの構成である。ループ材として不織布(Fibervision Suzhou社製のLaurel2)を用意した。この不織布は、全面積の33%が加熱プレスでヒートシールされたものであり、ヒートシールにより形成された無ループ領域は、並行に延びる複数の線状を呈していた。この不織布の坪量は35g/m2であった。ヒートシールされた面と反対側の面をPart Aの粘着層に積層させた。
[実施例3]
実施例3は、グラフィックシートがフック材を含み、アルミニウム板上にループ材を貼り付けた点で、実施例1,2と異なる。Part Aについて実施例1と異なる点は、BOPPフィルムを含まないことである。Part Bを得るために、600mm幅のフック材(スリーエム社製のNC−2141)を用意し、実施例1と同じ手法で形成した接着層にそのフック材を積層させた。そして、Part Aの粘着層とPart Bの接着層とを貼り合わせることでグラフィックシートを得た。このグラフィックシートのPVCフィルムの面に実施例1と同じ手法で任意のグラフィックを印刷した。
印刷されたグラフィックフィルムを貼り付けるために、寸法が210mm×150mm×1mmであるアルミニウム板を用意し、このアルミニウム板の周縁に、粘着剤を備えるループ材(スリーエム社製のNC−2841。25mm幅)を貼った。このループ材に関し、坪量は78g/m2、ウェール数は14.6W/cm、コース数は15.7C/cmであった。印刷されたグラフィックシートをそのアルミニウム板上にハンドローラで貼り付けた。印刷されたグラフィックシートの寸法(長さおよび幅)はアルミニウム板と同じとした。
(90°引き剥がし粘着力)
寸法が30mm×150mm×1mmであるアルミニウム板にループ材(スリーエム社製のNC−2841。25mm幅)をハンドローラで貼り付けた以外の点は実施例1と同じ手法で、90°引き剥がし粘着力を求めた。
(フック材へのループ材の転写面積)
寸法が30mm×150mm×1mmであるアルミニウム板にループ材(スリーエム社製のNC−2841。25mm幅)をハンドローラで貼り付けた以外の点は実施例1と同じ手法で、フック材へのループ材の転写面積を求めた。
[比較例1]
厚さ70ミクロンのポリエチレン/ポリプロピレン混合樹脂をTダイで押し出しながら、不織布(服部猛株式会社製のPRX−40)とのインライン貼り合わせを行うことで、厚さ200ミクロンのシートをPart Bとして得た。不織布にはヒートシールを施さず、したがって、ヒートシールの適用面積は0%であった。Part Bのポリエチレン/ポリプロピレン混合樹脂を、実施例1と同様に作製したPart Aの粘着剤と貼り合わせることでグラフィックシートを得た。
[比較例2]
厚さ70ミクロンのポリエチレン/ポリプロピレン混合樹脂をTダイで押し出しながら、不織布(ユニチカ株式会社製のエルベス(登録商標)T0403WDO)とのインライン貼り合わせを行うことで、厚さ140ミクロンのシートをPart Bとして得た。使用した不織布は、全面積の85%がヒートシールされてループ部分が格子状に点在するようなものであった。Part Bのポリエチレン/ポリプロピレン混合樹脂を、実施例1と同様に作製したPart Aの粘着剤と貼り合わせることでグラフィックシートを得た。
[実験結果]
上記の三つの実施例および二つの比較例のそれぞれについての90°引き剥がし粘着力(N/25.4mm)とフック材へのループ材の転写面積(%)との結果を表1に示す。
以上、本発明をその実施形態および実施例に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
本開示に関連して、本発明は以下のように規定されてもよい。
(項目1)
印刷面および裏面を有する印刷フィルム層と、
前記印刷フィルム層の前記裏面の少なくとも一部に取り付けられた第1の面ファスナ部材を備えるファスナ層と
を備え、
前記第1の面ファスナ部材が、不織布またはニットを含むループ材と、フック材との少なくとも一方を備える、
グラフィックシート。
(項目2)
前記第1の面ファスナ部材に係合可能な第2の面ファスナ部材に対する90°引き剥がし粘着力が0.5N/25.4mm〜8N/25.4mmである、
項目1に記載のグラフィックシート。
(項目3)
前記第1の面ファスナ部材が前記印刷フィルム層の前記裏面の全体に取り付けられた、
項目1または2に記載のグラフィックシート。
(項目4)
前記ループ材の係合面が、ループを有しない領域を含む、
項目1〜3のいずれか一項に記載のグラフィックシート。
(項目5)
項目1〜4のいずれか一項に記載のグラフィックシートと、
前記第1の面ファスナ部材に係合可能な第2の面ファスナ部材と
を備えるグラフィックキット。
本発明の一側面に係るグラフィックシートは、印刷面および裏面を有する印刷フィルム層と、印刷フィルム層の裏面の少なくとも一部に取り付けられた第1の面ファスナ部材を備えるファスナ層とを備え、第1の面ファスナ部材が、不織布またはニットを含むループ材と、フック材との少なくとも一方を備える。
本発明の一側面に係るグラフィックキットは、上記のグラフィックシートと、第1の面ファスナ部材に係合可能な第2の面ファスナ部材とを備える。
このような側面においては、印刷フィルム層を採用することで、グラフィック印刷について一定以上の品質が確保される。また、印刷フィルム層の裏面に接着層を介して面ファスナ部材が設けられるので、グラフィックシートを容易に貼り付けまたは取り外しすることができる。例えば、作業者は、グラフィックシートを支持面に最初に貼り付けた際にグラフィックシートに皺または弛みが発生した場合でも、そのグラフィックシートの一部または全体をいったん剥がして貼り直すことができる。グラフィックシートの貼り付けおよび取り外しを繰り返すことができるため、少ない数の作業者によりグラフィックシートを掲示することができる。また、ある場所に貼ったグラフィックシートを別の場所に貼るなどの再利用も容易に為し得る。
他の側面に係るグラフィックシートでは、第1の面ファスナ部材に係合可能な第2の面ファスナ部材に対する90°引き剥がし粘着力が0.5N/25.4mm〜8N/25.4mmであってもよい。グラフィックシートの90°引き剥がし粘着力をこのように設定することで、グラフィックシートを掲示している際の係合力の維持と、グラフィックシートを取り外しの容易性とを両立させることができる。
他の側面に係るグラフィックシートでは、第1の面ファスナ部材が印刷フィルム層の裏面の全体に取り付けられてもよい。このように第1の面ファスナ部材を設けることで、作業者は、グラフィックシートの支持面に設けられる第2の面ファスナ部材との位置関係をあまり気にすることなく簡単にグラフィックシートを支持面に貼ることができる。
他の側面に係るグラフィックシートでは、ループ材の係合面が、ループを有しない領域を含んでもよい。この領域を設けることで、グラフィックシートの引き剥がし粘着力を抑制して、取り外しを容易にすることができる。加えて、グラフィックシートを取り外す際にループ層の一部が剥がれてフック材などの第2の面ファスナ部材に移る現象、すなわち転写を回避または抑制しつつ、グラフィックシートを支持面に確実に貼ることができる。