JP2019100714A - 免疫学的測定デバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】検体が移動する流路を多孔質体によって構成することなく、検体及び標識試薬を確実に移動・進行させる流路を備えるマイクロ流体デバイスにおいて、標識物質の粒径を大きくしても捕捉試薬が流路から剥離・離脱せず、標識物質の視認性・シグナル強度を向上させつつ、迅速な検体検出が行えるようにする。【解決手段】免疫学的測定が行われる検体が移動する流路を備えたマイクロ流体デバイスからなり、流路が、標識試薬と結合するアナライトを捕捉する検出流路を備え、当該検出流路の表面に、アナライトを特異的結合により捕捉する捕捉試薬を有するコーティング層を積層させる構成としてある。【選択図】 図4
Description
本発明は、抗原抗体反応による免疫学的測定に用いられる免疫学的測定デバイスに関し、特に、免疫学的測定の対象となる検体が移動する流路を備えたマイクロ流体デバイスによって構成された免疫学的測定デバイスに関する。
一般に、抗原抗体反応による免疫学的測定に用いられる免疫学的測定デバイスが知られている。この種の免疫学的測定デバイスとしては、例えばイムノクロマトデバイスと呼ばれるデバイスが知られている。イムノクロマトデバイスとは、抗原抗体反応を利用した免疫学的測定が行えるデバイスであり、主として細菌やウイルスなどの病原体の検出に用いられるものである。
具体的には、イムノクロマトデバイスでは、予め検体に含まれるアナライト(抗原又は抗体、その他のタンパク質)と反応する(抗体又は抗原を標識物質(大径ビーズその他の粒子)に固相化した試薬)を含浸させたグラスファイバー等の不織布や繊維から成るコンジュゲートパッドに、例えば血液や体液など、アナライトが含まれた検体を滴下させることで、そのアナライトが予めコンジュゲートパッドに含浸された標識試薬と抗原抗体反応によって複合体を形成し標識され、その複合体がコンジュゲートパッドと当接したニトロセルロース発泡体からなるメンブレンを移動していき、下流の検体捕捉部分に線状に配置された捕捉試薬(捕捉抗体,捕捉抗原,その他のタンパク質)に捕捉されて、標識物質が線状(ライン状)に発色し、視認可能となる。
これによって、標識試薬の濃度や線の位置(種類)によってアナライトの有無や種類等を検出・測定できるものである。この種のデバイスとしては、インフルエンザ等の感染症やアレルギー用の診断キット、市販の妊娠検査キット等として広く用いられている。
これによって、標識試薬の濃度や線の位置(種類)によってアナライトの有無や種類等を検出・測定できるものである。この種のデバイスとしては、インフルエンザ等の感染症やアレルギー用の診断キット、市販の妊娠検査キット等として広く用いられている。
ここで、このようなインフルエンザの検査キット等に使用されるイムノクロマトデバイスは、取り扱いが容易で使い捨てができる簡易な構成のものが好ましく、抗原抗体反応を発生させるために検体及び標識試薬を混合しつつ移動させる流路となる媒体として、例えばニトロセルロース発泡体などの多孔質体からなるメンブレンが使用され、多孔質体の毛細管現象に基づく毛管力によって、外部からのポンプ力を必要とすることなく、検体及び標識試薬を移動・進行させることができるようになっている。
また、検体の流路としてニトロセルロース等の発泡体を用いるイムノクロマトデバイスでは、検体の流路となる発泡体の多孔質部分に標識物質が目詰まりする可能性を排除するために、標識物質を多孔質体の孔(間隔)よりも十分に小さい粒径にする必要があった。例えば、ニトロセルロース発泡体の平均孔径は約10μm程度となっており、孔径にバラツキのある発泡体の特性等も考慮すると、標識物質の粒径は、40nm程度にする必要があった。このため、イムノクロマトデバイスでは、粒径が40nm以下の金コロイドなどが標識物質として用いられている。
また、検体の流路としてニトロセルロース等の発泡体を用いるイムノクロマトデバイスでは、検体の流路となる発泡体の多孔質部分に標識物質が目詰まりする可能性を排除するために、標識物質を多孔質体の孔(間隔)よりも十分に小さい粒径にする必要があった。例えば、ニトロセルロース発泡体の平均孔径は約10μm程度となっており、孔径にバラツキのある発泡体の特性等も考慮すると、標識物質の粒径は、40nm程度にする必要があった。このため、イムノクロマトデバイスでは、粒径が40nm以下の金コロイドなどが標識物質として用いられている。
ところが、このような粒径40nm以下の金コロイドを標識物質として用いた場合、抗原抗体反応の結果、標識試薬と複合化したアナライトが捕捉試薬に捕捉されても、標識物質の粒径が小さいためにデバイスの検体捕捉部分が十分に発色せず、視認性(シグナル強度)が低下(悪化)するという問題があった。
特に、ウイルス等のアナライトの濃度が低い場合などは、検体捕捉部分が視認可能な程度に発色せず、検体にアナライトが含まれていても発色が不十分なために陰性と判定されてしまい、例えばインフルエンザの初期感染が見落とされてしまうことがあった。このため、イムノクロマトデバイスを用いる場合には、高濃度のアナライトを含む検体を採取する必要があり、被験者に侵襲を与えると共にそれによる強い痛みを伴うという問題があった。
特に、ウイルス等のアナライトの濃度が低い場合などは、検体捕捉部分が視認可能な程度に発色せず、検体にアナライトが含まれていても発色が不十分なために陰性と判定されてしまい、例えばインフルエンザの初期感染が見落とされてしまうことがあった。このため、イムノクロマトデバイスを用いる場合には、高濃度のアナライトを含む検体を採取する必要があり、被験者に侵襲を与えると共にそれによる強い痛みを伴うという問題があった。
そこで、このようなイムノクロマトデバイスにおける問題を解決するために、検体及び標識試薬が移動・進行する流路を、多孔質体によって構成することなく、例えばガラス製やプラスチック製の基板に形成した微小な流路空間によって構成したマイクロ流体デバイスが活用されている。
このように基板上に流路を形成したマイクロ流体デバイスでは、標識物質が多孔質体に目詰まりするようなことがなく、標識試薬に固定化された検体を流路内で滑らかに移動・進行させることができることから、標識物質の大径化が可能となる。このため、標識物質として、粒径100nm以上(例えば粒径400nm程度)の粒子を用いることが可能となり、検体捕捉部分の視認性・シグナル強度を高めることができるようになる。
このように基板上に流路を形成したマイクロ流体デバイスでは、標識物質が多孔質体に目詰まりするようなことがなく、標識試薬に固定化された検体を流路内で滑らかに移動・進行させることができることから、標識物質の大径化が可能となる。このため、標識物質として、粒径100nm以上(例えば粒径400nm程度)の粒子を用いることが可能となり、検体捕捉部分の視認性・シグナル強度を高めることができるようになる。
但し、標識物質の粒径を大きくすると、捕捉試薬によって捕捉された標識試薬の標識物質に対して、流路内を移動する流体から抗力が加わり、捕捉試薬が、基板表面から剥離・離脱してしまうことが起こり得る。
マイクロ流体デバイスにおいては、検体は、標識試薬とともにデバイスの流路内を移動・進行するため、検体捕捉部分でアナライトが捕捉されると、標識物質に、流路内を移動・進行している流体から抗力が加わり、捕捉試薬にはシェアストレス(剪断応力)が加わることになる。
そして、検体捕捉部分の視認性を高めるために標識物質の粒径を大きくすると、粒径が大きくなればなる程、標識物質に加わる抗力も大きくなり、捕捉試薬に加わるシェアストレスも増大することになる。
このようなマイクロ流体デバイスにおける捕捉試薬の剥離・流出の問題について、これまで有効な技術や提案はなされていない。
マイクロ流体デバイスにおいては、検体は、標識試薬とともにデバイスの流路内を移動・進行するため、検体捕捉部分でアナライトが捕捉されると、標識物質に、流路内を移動・進行している流体から抗力が加わり、捕捉試薬にはシェアストレス(剪断応力)が加わることになる。
そして、検体捕捉部分の視認性を高めるために標識物質の粒径を大きくすると、粒径が大きくなればなる程、標識物質に加わる抗力も大きくなり、捕捉試薬に加わるシェアストレスも増大することになる。
このようなマイクロ流体デバイスにおける捕捉試薬の剥離・流出の問題について、これまで有効な技術や提案はなされていない。
なお、マイクロ流体デバイスの流路内における捕捉試薬の固定方法に関する技術として、例えば特許文献1には、捕捉試薬を含む特異的結合試薬(抗原,抗体,その他のタンパク質)を混合した親水性樹脂を流路内で光硬化させることで、捕捉試薬が架橋により保持された樹脂構造体を流路内に形成・構築することが提案されている。
この特許文献1で提案されているマイクロ流体デバイスによれば、捕捉試薬を含有したゲル状の樹脂構造体を流路内に形成することで、流路内に検体を注入・充填して、検体をゲル状の樹脂構造体にインキュベートさせ、その後、検体を洗浄後、蛍光標識によって標識された二次抗体・三次抗体を流路に注入してインキュベートさせることにより、樹脂構造体の表面に標識した検体を検出できるというものである。
この特許文献1で提案されているマイクロ流体デバイスによれば、捕捉試薬を含有したゲル状の樹脂構造体を流路内に形成することで、流路内に検体を注入・充填して、検体をゲル状の樹脂構造体にインキュベートさせ、その後、検体を洗浄後、蛍光標識によって標識された二次抗体・三次抗体を流路に注入してインキュベートさせることにより、樹脂構造体の表面に標識した検体を検出できるというものである。
しかしながら、引用文献1で提案されているような、捕捉試薬を含む樹脂構造体を流路内に形成・構築するマイクロ流体デバイスでは、流路内に形成・構築された樹脂構造体に検体をインキュベートさせる必要があり、さらに、その後検体を洗浄し、二次抗体・三次抗体を順次、流路内に注入・構造体へのインキュベート・洗浄を繰り返す必要があり、最終的に検体を捕捉した樹脂構造体を標識・検出できるまでに一定の時間(例えば1時間程度)がかかるという問題があった。
マイクロ流体デバイスの活用が期待される医療等の分野において、例えばインフルエンザ検査が行われる現場では、検体となるインフルエンザ抗原の有無は、一刻も早く検出・判定されることが要請される。このため、最終的な検体の検出・判定までに1時間もかかる検査キットでは、捕捉試薬の剥離の問題が解決できたとしても、現実には実用に耐えないものとなってしまう。
このように、医療用の検査キット・診断キットなどに用いられるマイクロ流体デバイスでは、視認性・シグナル強度を高めて確実な検出・判定が行えると同時に、1分1秒でも早く検出結果が得られることが強く求められているところ、上述したような標識物質の大径化に起因する、視認性の向上と捕捉試薬の剥離・流出というトレードオフの課題を有効に解決できる技術は、これまでには有効な提案はなされていない。
このように、医療用の検査キット・診断キットなどに用いられるマイクロ流体デバイスでは、視認性・シグナル強度を高めて確実な検出・判定が行えると同時に、1分1秒でも早く検出結果が得られることが強く求められているところ、上述したような標識物質の大径化に起因する、視認性の向上と捕捉試薬の剥離・流出というトレードオフの課題を有効に解決できる技術は、これまでには有効な提案はなされていない。
本発明は、以上のような従来の技術が有する課題を解決するために提案されたものであり、検体が移動する流路を多孔質体によって構成することなく、検体及び標識試薬を確実に移動・進行させることができる流路を備えたマイクロ流体デバイスにおいて、標識物質の粒径を大きくしても捕捉試薬が流路から剥離・離脱せず、標識物質の視認性・シグナル強度を向上させつつ迅速・確実な検体検出が行える、免疫学的測定デバイスの提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の免疫学的測定デバイスは、免疫学的測定が行われる検体が移動する流路を備えたマイクロ流体デバイスからなり、前記流路が、標識試薬と結合するアナライトを捕捉する検出流路を備え、前記検出流路の表面に、前記アナライトを特異的結合により捕捉する捕捉試薬を有するコーティング層を積層させる構成としてある。
本発明の免疫学的測定デバイスによれば、検体及び標識試薬を確実に移動・進行させる流路を備えたマイクロ流体デバイスにおいて、標識物質の粒径を大きくしても捕捉試薬が流路から剥離・離脱しないようにすることができる。
これによって、標識物質の視認性・シグナル強度を向上させつつ、迅速な検体検出が行えるようになり、特に迅速・確実な検出・判定が求められる、インフルエンザ用の診断キットなどに用いられるマイクロ流体デバイスに好適な免疫学的測定デバイスを提供することができる。
これによって、標識物質の視認性・シグナル強度を向上させつつ、迅速な検体検出が行えるようになり、特に迅速・確実な検出・判定が求められる、インフルエンザ用の診断キットなどに用いられるマイクロ流体デバイスに好適な免疫学的測定デバイスを提供することができる。
以下、本発明に係る免疫学的測定デバイスの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る免疫学的測定デバイスを構成するマイクロ流体デバイス1を示す外観斜視図であり、図2は、その分解斜視図である。
同図に示すように、本実施形態に係る免疫学測定デバイスは、マイクロ流体デバイス1によって構成されている。
図1は、本発明の一実施形態に係る免疫学的測定デバイスを構成するマイクロ流体デバイス1を示す外観斜視図であり、図2は、その分解斜視図である。
同図に示すように、本実施形態に係る免疫学測定デバイスは、マイクロ流体デバイス1によって構成されている。
[マイクロ流体デバイス]
図1,2に示すように、本実施形態に係るマイクロ流体デバイス1は、毛管力を発生させるキャピラリーポンプ流路6と、キャピラリーポンプ流路に接続・連通する、流体を混合しつつ移動させるミキサ流路7と、ミキサ流路7に接続・連通する、検体の抗原抗体反応を測定する検出流路8とからなる流路を備え、流路に対して外部からのポンプ力を付与する加圧手段を必要とすることなく、流路内の毛管力によって流体を移動させることができる自己送液型の流路を備えたパッシブ型のマイクロ流体デバイスを構成している。
この種のパッシブ型のマイクロ流体デバイスは、ポンプ等の加圧手段を必要とせず、デバイス自体の構成を小型化・簡素化できるもので、例えば簡易なインフルエンザ用の迅速診断キットとして構成されるマイクロ流体デバイスである。
図1,2に示すように、本実施形態に係るマイクロ流体デバイス1は、毛管力を発生させるキャピラリーポンプ流路6と、キャピラリーポンプ流路に接続・連通する、流体を混合しつつ移動させるミキサ流路7と、ミキサ流路7に接続・連通する、検体の抗原抗体反応を測定する検出流路8とからなる流路を備え、流路に対して外部からのポンプ力を付与する加圧手段を必要とすることなく、流路内の毛管力によって流体を移動させることができる自己送液型の流路を備えたパッシブ型のマイクロ流体デバイスを構成している。
この種のパッシブ型のマイクロ流体デバイスは、ポンプ等の加圧手段を必要とせず、デバイス自体の構成を小型化・簡素化できるもので、例えば簡易なインフルエンザ用の迅速診断キットとして構成されるマイクロ流体デバイスである。
具体的には、本実施形態のマイクロ流体デバイス1を、抗原抗体反応を用いたインフルエンザ診断デバイスとして構成しており、基板2と、基板2の表面を覆うカバー体(蓋部材)3とを備えたマイクロ流体デバイスによって構成されている。
本実施形態では、このようなマイクロ流体デバイス上に、上述したキャピラリーポンプ流路6,ミキサ流路7,検出流路8からなる流路が形成されるとともに、流路の最上流部には、検体が滴下される標識試薬供給部となるコンジュゲートパッド4が、また、流路の最下流部には、分析後の残液を吸収させる吸収パッド5とが備えられている。
本実施形態では、このようなマイクロ流体デバイス上に、上述したキャピラリーポンプ流路6,ミキサ流路7,検出流路8からなる流路が形成されるとともに、流路の最上流部には、検体が滴下される標識試薬供給部となるコンジュゲートパッド4が、また、流路の最下流部には、分析後の残液を吸収させる吸収パッド5とが備えられている。
そして、本実施形態のマイクロ流体デバイス1では、流路の上流部に配置される標識試薬供給部となるコンジュゲートパッド4に、滴下される検体に含まれるアナライトを抗原抗体反応により標識する抗原又は抗体が固相化された標識物質を有する標識試薬が含浸され、標識物質が、所定以上の直径(例えば100nm以上の直径)を有する構成となっている。
本実施形態では、インフルエンザの診断キットで測定される検体に含まれるアナライトとしてインフルエンザ抗原を対象としており、コンジュゲートパッド4には、インフルエンザ抗原と結合する標識試薬が含浸されるようになっている。
本実施形態では、インフルエンザの診断キットで測定される検体に含まれるアナライトとしてインフルエンザ抗原を対象としており、コンジュゲートパッド4には、インフルエンザ抗原と結合する標識試薬が含浸されるようになっている。
本実施形態では、標識試薬に含まれる標識物質として、所定以上の直径を有する粒子を備えるようになっている。
本実施形態のマイクロ流体デバイス1では、検体及び標識試薬が移動・液送される各流路6,7,8が、各流路の機能を維持したまま、標識物質の粒径を大きくしても流路に目詰まり等が生じない十分な流路幅及び流路深さを備える構成となっている。
そして、本実施形態のマイクロ流体デバイス1は、検出流路8において検体を捕捉する捕捉試薬が、後述するコーティング層10を介して検出流路8を構成する基板表面に固定化されるようになっている。
本実施形態のマイクロ流体デバイス1では、検体及び標識試薬が移動・液送される各流路6,7,8が、各流路の機能を維持したまま、標識物質の粒径を大きくしても流路に目詰まり等が生じない十分な流路幅及び流路深さを備える構成となっている。
そして、本実施形態のマイクロ流体デバイス1は、検出流路8において検体を捕捉する捕捉試薬が、後述するコーティング層10を介して検出流路8を構成する基板表面に固定化されるようになっている。
これによって、本実施形態のマイクロ流体デバイス1では、標識物質として大径の粒子を用いることによっても、捕捉試薬が検出流路8から剥離・流出することなく、標識試薬によって標識された対象アナライト(インフルエンザ抗原)を、検出流路8において確実に捕捉・保持できるようになっている。
したがって、大径の標識物質によって、検体の抗原抗体反応の視認性・シグナル強度を大幅に向上させることができ、検体の抗原抗体反応を容易かつ確実に測定できるようになる。
以下、大径の標識物質の利用を可能とする本実施形態のマイクロ流体デバイス1の各部の構成について説明する。
したがって、大径の標識物質によって、検体の抗原抗体反応の視認性・シグナル強度を大幅に向上させることができ、検体の抗原抗体反応を容易かつ確実に測定できるようになる。
以下、大径の標識物質の利用を可能とする本実施形態のマイクロ流体デバイス1の各部の構成について説明する。
[基板及びカバー体]
基板2は、図2に示すように、その表面に、コンジュゲートパッド当接部4a、第1キャピラリーポンプ流路6a、ミキサ流路7、検出流路8、第2キャピラリーポンプ流路6b、及び吸収パッド当接部5aの各部が形成されている。
具体的には、ガラス製やプラスチック製(例えばPDMS:ポリジメチルシロキサン)からなる基板2に、所定の幅・深さ(例えば幅100μm程度,深さ50μm程度)の微小な流路空間である流路(キャピラリーポンプ流路6,ミキサ流路7,検出流路8)が転写や刻設等によって形成され、その上面に蓋部材となるカバー体3が接合され、抗原抗体反応の反応場となるマイクロ流路が形成される。なお、基板に形成される流路6,7,8の流路の大きさ(幅・深さ)や流路長,流路形状等は、マイクロ流体デバイス1の使用用途や流体の種類などに応じて任意に設定することができる。
そして、本実施形態では、大径の標識物質が移動・液送可能となるように、各流路6,7,8の大きさ(流路幅及び流路深さ)が、標識物質の直径よりも大きくなるように形成されるようになっている。
基板2は、図2に示すように、その表面に、コンジュゲートパッド当接部4a、第1キャピラリーポンプ流路6a、ミキサ流路7、検出流路8、第2キャピラリーポンプ流路6b、及び吸収パッド当接部5aの各部が形成されている。
具体的には、ガラス製やプラスチック製(例えばPDMS:ポリジメチルシロキサン)からなる基板2に、所定の幅・深さ(例えば幅100μm程度,深さ50μm程度)の微小な流路空間である流路(キャピラリーポンプ流路6,ミキサ流路7,検出流路8)が転写や刻設等によって形成され、その上面に蓋部材となるカバー体3が接合され、抗原抗体反応の反応場となるマイクロ流路が形成される。なお、基板に形成される流路6,7,8の流路の大きさ(幅・深さ)や流路長,流路形状等は、マイクロ流体デバイス1の使用用途や流体の種類などに応じて任意に設定することができる。
そして、本実施形態では、大径の標識物質が移動・液送可能となるように、各流路6,7,8の大きさ(流路幅及び流路深さ)が、標識物質の直径よりも大きくなるように形成されるようになっている。
図3は、基板2の概略平面図である。なお、図中網点で示す部位は、キャピラリーポンプ流路6を構成する微細液送構造体である。
基板2は、流路を構成する微細形状が転写形成等によって成形できるもので、例えば、PDMS等の紫外線硬化性、熱硬化性又は二液硬化性樹脂を用いてキャスト成形により成形することができる。また、ポリメチルメタアクリレート(PMMA),ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー(COP)等の熱可塑性樹脂を用いて射出成形、ナノインプリント等により成形してもよい。
また、ガラスやシリコンを用いてエッチング、超精密機械加工等によって成形してもよい。
基板2は、流路を構成する微細形状が転写形成等によって成形できるもので、例えば、PDMS等の紫外線硬化性、熱硬化性又は二液硬化性樹脂を用いてキャスト成形により成形することができる。また、ポリメチルメタアクリレート(PMMA),ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート、シクロオレフィンコポリマー、シクロオレフィンポリマー(COP)等の熱可塑性樹脂を用いて射出成形、ナノインプリント等により成形してもよい。
また、ガラスやシリコンを用いてエッチング、超精密機械加工等によって成形してもよい。
カバー体3は、樹脂製又はガラス製とすることができ、基板2の表面に形成された検出流路8を透視できる程度に透明であるのが好ましい。
このカバー体3は、図2に示すように、一端側に形成された切欠き部4b,5bに、コンジュゲートパッド4と吸収パッド5のそれぞれを保持しつつ、第1キャピラリーポンプ流路6a、ミキサ流路7、検出流路8(テスト流路8a及びコントロール流路8b)、第2キャピラリーポンプ流路6bを密閉するようにして基板2に接合される。
このカバー体3は、図2に示すように、一端側に形成された切欠き部4b,5bに、コンジュゲートパッド4と吸収パッド5のそれぞれを保持しつつ、第1キャピラリーポンプ流路6a、ミキサ流路7、検出流路8(テスト流路8a及びコントロール流路8b)、第2キャピラリーポンプ流路6bを密閉するようにして基板2に接合される。
このとき、カバー体3で密閉された第1キャピラリーポンプ流路6aが、コンジュゲートパッド当接部4a側に開口するように、コンジュゲートパッド当接部4aは、第1キャピラリーポンプ流路6aの底面と同じ深さか、それよりも若干深くなるように形成する。これにより、当該開口を介して、コンジュゲートパッド4と第1キャピラリーポンプ流路6aとが接続される。
同様に、吸収パッド当接部5aは、カバー体3で密閉された第2キャピラリーポンプ流路6bが、吸収パッド当接部5a側に開口するように、第2キャピラリーポンプ流路6bの底面と同じ深さか、それよりも若干深くなるように形成する。これにより、当該開口を介して、吸収パッド5と第2キャピラリーポンプ流路6bとが接続される。
なお、樹脂製の基板2とカバー体3の接合方法について、図13を参照しつつ後述する。
同様に、吸収パッド当接部5aは、カバー体3で密閉された第2キャピラリーポンプ流路6bが、吸収パッド当接部5a側に開口するように、第2キャピラリーポンプ流路6bの底面と同じ深さか、それよりも若干深くなるように形成する。これにより、当該開口を介して、吸収パッド5と第2キャピラリーポンプ流路6bとが接続される。
なお、樹脂製の基板2とカバー体3の接合方法について、図13を参照しつつ後述する。
[キャピラリーポンプ流路]
キャピラリーポンプ流路6は、コンジュゲートパッド4に連続する上流側の第1キャピラリーポンプ流路6aと、吸収パッド5に連続する下流側の第2キャピラリーポンプ流路6bの2つが備えられている。
この第1キャピラリーポンプ流路6a及び第2キャピラリーポンプ流路6bは、分析対象となる検体及び標識試薬を含む調製液を液送する推進力として毛細管現象を利用する微細液送構造体によって構成される。
キャピラリーポンプ流路6は、コンジュゲートパッド4に連続する上流側の第1キャピラリーポンプ流路6aと、吸収パッド5に連続する下流側の第2キャピラリーポンプ流路6bの2つが備えられている。
この第1キャピラリーポンプ流路6a及び第2キャピラリーポンプ流路6bは、分析対象となる検体及び標識試薬を含む調製液を液送する推進力として毛細管現象を利用する微細液送構造体によって構成される。
これによって、検体及び標識試薬を含む流体は、外部ポンプ等の加圧手段を必要とすることなく、キャピラリーポンプ流路6の推進力のみによって、流路内を移動・液送されることになり、インフルエンザ用の診断キット等に好適なパッシブ型のマイクロ流体デバイスを構成することができる。
そして、本実施形態では、キャピラリーポンプの機能は維持したまま、標識試薬が移動・液送可能となるように、キャピラリーポンプ流路6の流路幅及び流路深さが、標識物質の直径(例えば100nm以上)よりも十分に大きくなるように、例えば30μm以上の幅・深さに形成される。
そして、本実施形態では、キャピラリーポンプの機能は維持したまま、標識試薬が移動・液送可能となるように、キャピラリーポンプ流路6の流路幅及び流路深さが、標識物質の直径(例えば100nm以上)よりも十分に大きくなるように、例えば30μm以上の幅・深さに形成される。
[ミキサ流路]
ミキサ流路7は、第1キャピラリーポンプ流路6aと検出流路8との間を接続・連通させる流路で、キャピラリーポンプ流路6の推進力によって液送される検体及び標識試薬を含む流体を、効率よく混合させるための流路空間を構成する。
このミキサ流路7内を移動する間に、流体は効率良く、迅速かつ確実に混合が行われ、検出流路8に至るまでに、検体及び標識試薬を確実に結合・反応させることができる。
また、本実施形態に係るミキサ流路7は、流路内の損失ヘッド・圧力損失の増加を、ミキサ流路を付設せずストレート流路を付設した場合と同等量に抑えながら流体を移動させることが可能で、キャピラリーポンプ流路6による推進力以外の外部ポンプ等の加圧手段を必要とすることなく、流体を混合させつつ流路内を通過・移動させることができる。
ミキサ流路7は、第1キャピラリーポンプ流路6aと検出流路8との間を接続・連通させる流路で、キャピラリーポンプ流路6の推進力によって液送される検体及び標識試薬を含む流体を、効率よく混合させるための流路空間を構成する。
このミキサ流路7内を移動する間に、流体は効率良く、迅速かつ確実に混合が行われ、検出流路8に至るまでに、検体及び標識試薬を確実に結合・反応させることができる。
また、本実施形態に係るミキサ流路7は、流路内の損失ヘッド・圧力損失の増加を、ミキサ流路を付設せずストレート流路を付設した場合と同等量に抑えながら流体を移動させることが可能で、キャピラリーポンプ流路6による推進力以外の外部ポンプ等の加圧手段を必要とすることなく、流体を混合させつつ流路内を通過・移動させることができる。
これによって、インフルエンザ用の診断キット等を構成するパッシブ型のマイクロ流体デバイスに最適な流路として利用することができる。
そして、このミキサ流路7についても、本実施形態に係る標識試薬が移動・液送可能となるように、ミキサ流路7の流路幅及び流路深さが、標識物質の直径(例えば100nm以上)よりも十分に大きくなるように、例えば30μm以上の幅・深さに形成されるようになっている。
そして、このミキサ流路7についても、本実施形態に係る標識試薬が移動・液送可能となるように、ミキサ流路7の流路幅及び流路深さが、標識物質の直径(例えば100nm以上)よりも十分に大きくなるように、例えば30μm以上の幅・深さに形成されるようになっている。
[検出流路]
検出流路8は、ミキサ流路7の下流側の流路上に形成された流路空間で、抗原抗体反応により検体に含まれるアナライトの濃度を目視により視認・測定する検出部である。
本実施形態の検出流路8は、抗原抗体反応により標識試薬の抗体と結合したインフルエンザ抗原を捕捉する捕捉試薬が配置・固定されたテスト流路8aと、インフルエンザ抗原が結合していない標識試薬を捕捉する捕捉試薬が配置・固定されたコントロール流路8bが設けられている。
図4は、本実施形態に係るマイクロ流体デバイス1の検出流路8のテスト流路8a(又はコントロール流路8b)の説明図であり、(a)は流路の平面図、(b)は検出流路8に付設された微細円柱構造体の断面図である。
検出流路8は、ミキサ流路7の下流側の流路上に形成された流路空間で、抗原抗体反応により検体に含まれるアナライトの濃度を目視により視認・測定する検出部である。
本実施形態の検出流路8は、抗原抗体反応により標識試薬の抗体と結合したインフルエンザ抗原を捕捉する捕捉試薬が配置・固定されたテスト流路8aと、インフルエンザ抗原が結合していない標識試薬を捕捉する捕捉試薬が配置・固定されたコントロール流路8bが設けられている。
図4は、本実施形態に係るマイクロ流体デバイス1の検出流路8のテスト流路8a(又はコントロール流路8b)の説明図であり、(a)は流路の平面図、(b)は検出流路8に付設された微細円柱構造体の断面図である。
同図に示すように、検出流路8のテスト流路8aは、広幅に形成され、その底面(基板表面)に、微細円柱構造体が並設され、その表面に捕捉試薬CAを含むコーティング層10が積層・形成されるようになっており、複合体(標識試薬の標識抗体と結合したインフルエンザ抗原)LAが、抗原抗体反応により捕捉されるようになっている。特に図示しないが、コントロール流路8bも同様の構成となっている。
この検出流路8において、コーティング層10の捕捉試薬CAによって捕捉された複合体LAの標識物質が、図4(b)に示すように、目視により視認・確認されて、その濃度の判定・検出等が行われることになる。
この検出流8についても、上述したミキサ流路7と同様に、本実施形態に係る大径(例えば100nm以上)の標識物質が移動・液送できるように、流路幅及び流路深さが標識物質の直径よりも十分に大きい、例えば30μm以上の幅・深さに形成される。
この検出流路8において、コーティング層10の捕捉試薬CAによって捕捉された複合体LAの標識物質が、図4(b)に示すように、目視により視認・確認されて、その濃度の判定・検出等が行われることになる。
この検出流8についても、上述したミキサ流路7と同様に、本実施形態に係る大径(例えば100nm以上)の標識物質が移動・液送できるように、流路幅及び流路深さが標識物質の直径よりも十分に大きい、例えば30μm以上の幅・深さに形成される。
そして、本実施形態では、検出流路8において検体を捕捉する捕捉試薬が、上述したコーティング層10を介して検出流路8を構成する基板表面に固定化されるようになっている。
これによって、標識物質として大径の粒子を用いることによっても、捕捉試薬が検出流路8から剥離・流出することなく、大径の標識物質によって標識された対象抗原(インフルエンザ抗原)を、検出流路8において確実に捕捉・保持できるようになる。
このように検出流路8に積層・形成されるコーティング層の詳細については、図5〜11を参照しつつ後述する。
これによって、標識物質として大径の粒子を用いることによっても、捕捉試薬が検出流路8から剥離・流出することなく、大径の標識物質によって標識された対象抗原(インフルエンザ抗原)を、検出流路8において確実に捕捉・保持できるようになる。
このように検出流路8に積層・形成されるコーティング層の詳細については、図5〜11を参照しつつ後述する。
[インフルエンザ抗原の捕捉・検出]
以上のようなマイクロ流体デバイス1を用いて被験者がインフルエンザに感染しているか否かを診断するには、まず、被験者から採取した鼻拭い液などの検体(分析対象)を含む検体調製液をコンジュゲートパッド4に滴下する。
この際、コンジュゲートパッド4の上部に当接するように、図示していないサンプルパッドを配置し、検体調整液はサンプルパッドに滴下され、サンプルパッドを介してコンジュゲートパッド4に供給されて良い。サンプルパッドは、例えばグラスファイバー製の濾紙であり、検体調整液に含まれる不純物の濾過や、緩衝能の高いバッファを含浸させた場合は、検体調整液のpH調整を目的に設置する。
以上のようなマイクロ流体デバイス1を用いて被験者がインフルエンザに感染しているか否かを診断するには、まず、被験者から採取した鼻拭い液などの検体(分析対象)を含む検体調製液をコンジュゲートパッド4に滴下する。
この際、コンジュゲートパッド4の上部に当接するように、図示していないサンプルパッドを配置し、検体調整液はサンプルパッドに滴下され、サンプルパッドを介してコンジュゲートパッド4に供給されて良い。サンプルパッドは、例えばグラスファイバー製の濾紙であり、検体調整液に含まれる不純物の濾過や、緩衝能の高いバッファを含浸させた場合は、検体調整液のpH調整を目的に設置する。
コンジュゲートパッド4に滴下された検体調製液は、コンジュゲートパッド4に含浸された標識試薬と共に浸み出して第1キャピラリーポンプ流路6aに浸入する。そして、検体調製液は、毛細管現象を推進力として第1キャピラリーポンプ流路6a内を進行してミキサ流路7に送られる。
ミキサ流路7に送られた検体調製液と標識試薬は、ミキサ流路7内で混合・混練されつつ一部が反応し複合体を形成しながら、キャピラリーポンプ流路6の推進力により移動・液送され、その下流側の流路上に形成された検出流路8に送られる。
検出流路8では、ミキサ流路7内で形成された複合体が捕捉され、標識試薬で現れるアナライトの有無が目視により視認・測定される。
ミキサ流路7に送られた検体調製液と標識試薬は、ミキサ流路7内で混合・混練されつつ一部が反応し複合体を形成しながら、キャピラリーポンプ流路6の推進力により移動・液送され、その下流側の流路上に形成された検出流路8に送られる。
検出流路8では、ミキサ流路7内で形成された複合体が捕捉され、標識試薬で現れるアナライトの有無が目視により視認・測定される。
検出流路8を通過した検体調製液の残液は、第2キャピラリーポンプ流路6bに達すると、その毛細管現象を推進力として第2キャピラリーポンプ流路6b内を進行する。
このようにして、本実施形態のマイクロ流体デバイス1では、外部ポンプ等を使用することなく、検体調製液を一定の流量で液送することができ、再現性の高い分析(診断)が可能になる。
検体調製液の残液は、第2キャピラリーポンプ流路6b内を進行した後に吸収パッド5に吸収される。
このようにして、本実施形態のマイクロ流体デバイス1では、外部ポンプ等を使用することなく、検体調製液を一定の流量で液送することができ、再現性の高い分析(診断)が可能になる。
検体調製液の残液は、第2キャピラリーポンプ流路6b内を進行した後に吸収パッド5に吸収される。
以上により、患者がインフルエンザに感染していれば、検体調製液には、インフルエンザ抗原が含まれており、コンジュゲートパッド4に検体調製液を滴下すると、コンジュゲートパッド4に含浸された標識試薬が検体調製液に溶出し、その一部が抗原抗体反応によりインフルエンザ抗原と結合して、ミキサ流路7の下流の流路上に形成された検出流路8に送られる。
上述したように、検出流路8には、インフルエンザ抗原を捕捉する捕捉試薬を保持または固定化したコーティング層が形成されたテスト流路8aと、インフルエンザ抗原が結合していない標識試薬を捕捉する捕捉試薬を保持または固定化したコーティング層が形成されたコントロール流路8bが設けられている。したがって、検体調製液が検出流路8を通過した後に、コントロール流路8bにだけ標識物質による発色が視認されれば、被験者はインフルエンザに感染していないと診断でき、テスト流路8aにも標識物質による発色が視認されれば、被験者はインフルエンザに感染していると診断できる。
上述したように、検出流路8には、インフルエンザ抗原を捕捉する捕捉試薬を保持または固定化したコーティング層が形成されたテスト流路8aと、インフルエンザ抗原が結合していない標識試薬を捕捉する捕捉試薬を保持または固定化したコーティング層が形成されたコントロール流路8bが設けられている。したがって、検体調製液が検出流路8を通過した後に、コントロール流路8bにだけ標識物質による発色が視認されれば、被験者はインフルエンザに感染していないと診断でき、テスト流路8aにも標識物質による発色が視認されれば、被験者はインフルエンザに感染していると診断できる。
そして、本実施形態では、検体及び標識試薬を移動・液送させる各流路6,7,8の流路幅及び流路深さが、各流路の性能を維持したまま、標識物質の直径よりも十分に大きくなるように設定されており、かつ、大径の標識物質を用いることによっても、捕捉試薬が検出流路8から剥離・流出しないように構成されている。
したがって、滴下される検体に含まれるインフルエンザ抗原と結合する標識試薬として、所定以上の直径を有する標識物質を用いることができるようになっている。
その結果、イムノクロマトデバイスで標識物質として用いられる金コロイド等と比較して十分に大きな大径の標識物質によって、良好な視認性・シグナル強度が得られ、インフルエンザ感染の判定精度を向上させることができるようになる。
したがって、滴下される検体に含まれるインフルエンザ抗原と結合する標識試薬として、所定以上の直径を有する標識物質を用いることができるようになっている。
その結果、イムノクロマトデバイスで標識物質として用いられる金コロイド等と比較して十分に大きな大径の標識物質によって、良好な視認性・シグナル強度が得られ、インフルエンザ感染の判定精度を向上させることができるようになる。
なお、本実施形態では、標識試薬供給部としてコンジュゲートパッド4を用いた例を示したが、これに限定されるものではなく、検出流路8よりも上流の流路、例えば、ミキサ流路7もしくはミキサ流路7より上流の流路の壁面に標識試薬を塗布、乾燥させ、固定化し、当該部分を標識試薬供給部としても良い。
その場合、デバイスの上流に設けられた検体取り入れ口から流入した検体調整液が該部を通過する際、標識試薬が溶解し、検体調整液と共に下流に流れて行く。
その場合、デバイスの上流に設けられた検体取り入れ口から流入した検体調整液が該部を通過する際、標識試薬が溶解し、検体調整液と共に下流に流れて行く。
[コーティング層]
次に、上記のような本実施形態に係るマイクロ流体デバイス1において、検体を捕捉して対象アナライト(インフルエンザ抗原)の有無を検出する検出流路8に形成されるコーティング層10の詳細について、図5〜11を参照しつつ説明する。
コーティング層10は、上述した検出流路8の表面に形成される、対象となるアナライトを特異的結合により捕捉する捕捉試薬を含む積層体である。
このようなコーティング層10を備えることで、捕捉試薬は、コーティング層を介して、検出流路8の基板表面に固定化されることになる。
次に、上記のような本実施形態に係るマイクロ流体デバイス1において、検体を捕捉して対象アナライト(インフルエンザ抗原)の有無を検出する検出流路8に形成されるコーティング層10の詳細について、図5〜11を参照しつつ説明する。
コーティング層10は、上述した検出流路8の表面に形成される、対象となるアナライトを特異的結合により捕捉する捕捉試薬を含む積層体である。
このようなコーティング層10を備えることで、捕捉試薬は、コーティング層を介して、検出流路8の基板表面に固定化されることになる。
具体的には、コーティング層10は、図5及び6に示すように、検出流路8を構成する基板の表面に積層される、ストレプトアビジンを含む光硬化性樹脂と、光硬化性樹脂に添加される、ビオチンが固定化された捕捉試薬(ビオチン修飾抗体)を含んでいる。
本実施形態では、図5及び6に示すように、検出流路8の表面には、凸部又は凹部を備えることができ、コーティング層10が、このような凸部又は凹部を含む、検出流路8の表面に積層されるようになっている。
そして、検出流路8の基板表面に積層される光硬化性樹脂に含まれるストレプトアビジンとビオチンが結合することにより、ビオチン修飾抗体が検出流路8の表面に固定化されるようになる。
本実施形態では、図5及び6に示すように、検出流路8の表面には、凸部又は凹部を備えることができ、コーティング層10が、このような凸部又は凹部を含む、検出流路8の表面に積層されるようになっている。
そして、検出流路8の基板表面に積層される光硬化性樹脂に含まれるストレプトアビジンとビオチンが結合することにより、ビオチン修飾抗体が検出流路8の表面に固定化されるようになる。
ストレプトアビジンとビオチンは、相互に極めて高い親和性を示すタンパク質であり、特異的に結合するアビジン−ビオチン相互作用が生起される。
また、ストレプトアビジンは、最大4個のビオチン分子に結合する能力があるため、アビジン−ビオチン相互作用は捕捉試薬の固定化に好ましいものとなる。
そこで、本実施形態では、ストレプトアビジンを含む光硬化性樹脂を検出流路8の表面に積層・固定化し、そこにビオチン修飾抗体を添加(滴下)させることで、アビジン−ビオチン相互作用によりストレプトアビジンとビオチンを特異的結合させ、ビオチン修飾抗体をコーティング層10に固定化して、捕捉試薬を、コーティング層10を介して検出流路8の基板表面に固定化させるようにしている。
また、ストレプトアビジンは、最大4個のビオチン分子に結合する能力があるため、アビジン−ビオチン相互作用は捕捉試薬の固定化に好ましいものとなる。
そこで、本実施形態では、ストレプトアビジンを含む光硬化性樹脂を検出流路8の表面に積層・固定化し、そこにビオチン修飾抗体を添加(滴下)させることで、アビジン−ビオチン相互作用によりストレプトアビジンとビオチンを特異的結合させ、ビオチン修飾抗体をコーティング層10に固定化して、捕捉試薬を、コーティング層10を介して検出流路8の基板表面に固定化させるようにしている。
[固定化方法の原理]
図5又は図6に示すように、マイクロ流体デバイス1を構成する基板2は、例えばPDMS,PMMA,COP等の樹脂からなり、この基板2の表面に、ストレプトアビジンを混合した光硬化性樹脂を充填・塗布し、所定エネルギーの光を照射して硬化させる。
これによって、基板表面には光硬化性樹脂からなるコーティング層10が形成され、ストレプトアビジンは、光硬化性樹脂が基板表面に積層・硬化されることで、基板2に固定化されることになる。
図5又は図6に示すように、マイクロ流体デバイス1を構成する基板2は、例えばPDMS,PMMA,COP等の樹脂からなり、この基板2の表面に、ストレプトアビジンを混合した光硬化性樹脂を充填・塗布し、所定エネルギーの光を照射して硬化させる。
これによって、基板表面には光硬化性樹脂からなるコーティング層10が形成され、ストレプトアビジンは、光硬化性樹脂が基板表面に積層・硬化されることで、基板2に固定化されることになる。
そして、このように光硬化性樹脂によってコーティング層10が硬化・形成された基板2の表面に、ビオチン修飾抗体を添加させる。
ビオチン修飾抗体が添加されると、図5又は図6に示すように、アビジン−ビオチン相互作用により、光硬化性樹脂に含まれるストレプトアビジンとビオチンが特異的に結合することになる。ストレプトアビジンは、最大4個のビオチン分子と結合して、ビオチン修飾抗体が固定化されることになる。
ビオチン修飾抗体が添加されると、図5又は図6に示すように、アビジン−ビオチン相互作用により、光硬化性樹脂に含まれるストレプトアビジンとビオチンが特異的に結合することになる。ストレプトアビジンは、最大4個のビオチン分子と結合して、ビオチン修飾抗体が固定化されることになる。
このようにして、捕捉試薬は、光硬化性樹脂によって形成されたコーティング層10を介して、検出流路8の基板表面に固定化されることになる。
そのため、単に基板表面に捕捉試薬が塗布されて物理吸着される場合と比較して、ビオチン修飾抗体が堅固に特異的な結合をすることにより、捕捉試薬は、マイクロ流体デバイス1の流路内を移動・通過する流体によるシェアストレスが加わっても、剥離・流出することがなくなる。
そのため、単に基板表面に捕捉試薬が塗布されて物理吸着される場合と比較して、ビオチン修飾抗体が堅固に特異的な結合をすることにより、捕捉試薬は、マイクロ流体デバイス1の流路内を移動・通過する流体によるシェアストレスが加わっても、剥離・流出することがなくなる。
具体的には、図7に示すように、まず単なる物理吸着により基板表面に固定化された捕捉試薬は、粒径の小さい標識物質、例えば粒径0.5μm(図7(a))の小粒径のPSビーズであれば、流体の移動・通過によるシェアストレスが小さく、捕捉試薬は基板表面から剥離することはないが、例えば粒径3.0μm(図7(b))の大粒径のPSビーズの場合には、流体のシェアストレスに抗しきれず、捕捉試薬が剥離・離脱して検出流路8から流出してしまう。
これに対して、本実施形態の場合には、図7(c)に示すように、捕捉試薬は、アビジン−ビオチン相互作用の特異的な結合により基板表面に堅固に結合・固定化されるため、大粒径(例えば3.0μm以上)の標識物質を用いても、流体のシェアストレスによって剥離・離脱することがなくなる。
その結果、大粒径の標識物質を使用しても、捕捉試薬は標識物質を含む対象抗原を確実に捕捉して、検出流路8において保持することができるようになる。
これに対して、本実施形態の場合には、図7(c)に示すように、捕捉試薬は、アビジン−ビオチン相互作用の特異的な結合により基板表面に堅固に結合・固定化されるため、大粒径(例えば3.0μm以上)の標識物質を用いても、流体のシェアストレスによって剥離・離脱することがなくなる。
その結果、大粒径の標識物質を使用しても、捕捉試薬は標識物質を含む対象抗原を確実に捕捉して、検出流路8において保持することができるようになる。
また、本実施形態では、図5及び6に示すように、検出流路8の表面に、凸部(ピラー)や、凹部(ディンプル)を備えるようにしてあるため、コーティング層10を構成する光硬化性樹脂と基板表面の接触・積層面積をより大きくすることができ、コーティング層10自体も、基板表面に堅固に固定化されることになり、捕捉試薬が検出流路8から剥離・流出することが、より確実に防止されるようなる。
また、検出流路8の基板表面に凸部や凹部を備えることで、捕捉試薬が配置される面積も大きくなり、捕捉試薬によって捕捉される対象アナライト・標識物質の捕捉量も増大し、検出流路8における、検体の抗原抗体反応の視認性・シグナル強度を向上させることができる。
また、検出流路8の基板表面に凸部や凹部を備えることで、捕捉試薬が配置される面積も大きくなり、捕捉試薬によって捕捉される対象アナライト・標識物質の捕捉量も増大し、検出流路8における、検体の抗原抗体反応の視認性・シグナル強度を向上させることができる。
なお、このように検出流路8に形成される凸部又は凹部は、上述のとおり、樹脂製などの基板2の表面に転写・刻設等によって形成することができる。
また、検出流路8に形成する凸部や凹部は、その形状や大きさ,数,密度(ピッチ)などは、マイクロ流体デバイス1の大きさや用途などに応じて、任意に設定・変更することができ、また、凸部や凹部を設けず、フラットな検出流路8としても良い。
また、検出流路8に形成する凸部や凹部は、その形状や大きさ,数,密度(ピッチ)などは、マイクロ流体デバイス1の大きさや用途などに応じて、任意に設定・変更することができ、また、凸部や凹部を設けず、フラットな検出流路8としても良い。
[コーティング層の積層方法]
以下、図8〜11を参照して、本実施形態に係るマイクロ流体デバイス1の検出流路8にコーティング層10を積層・固定化する製造方法(製造工程)を説明する。
なお、図8〜11の右上に示す(1)〜(4)は、それぞれ対応する図のA−A線断面図を示している。
まず、図8に示すように、検出流路8が形成された基板2を用意する。同図に示す例では、基板2の表面に円柱状のピラー(凸部)が形成された検出流路8となっている。
次に、図9に示すように、検出流路8に、ストレプトアビジンを混合した光硬化性樹脂を充填・塗布する。このとき、光硬化性樹脂は、検出流路8の全体に行き渡るように、また、検出流路8に形成されたピラーの表面が全て覆われるように、十分な量を充填・塗布する(図10参照)。
以下、図8〜11を参照して、本実施形態に係るマイクロ流体デバイス1の検出流路8にコーティング層10を積層・固定化する製造方法(製造工程)を説明する。
なお、図8〜11の右上に示す(1)〜(4)は、それぞれ対応する図のA−A線断面図を示している。
まず、図8に示すように、検出流路8が形成された基板2を用意する。同図に示す例では、基板2の表面に円柱状のピラー(凸部)が形成された検出流路8となっている。
次に、図9に示すように、検出流路8に、ストレプトアビジンを混合した光硬化性樹脂を充填・塗布する。このとき、光硬化性樹脂は、検出流路8の全体に行き渡るように、また、検出流路8に形成されたピラーの表面が全て覆われるように、十分な量を充填・塗布する(図10参照)。
その後、図10に示すように、光硬化性樹脂を充填した検出流路8に、所定エネルギーの光を照射してUV露光して、光硬化性樹脂を硬化させる。
光硬化性樹脂が硬化した後は、所定時間乾燥させる。
光硬化性樹脂は、乾燥させることにより、図11に示すように、基板及びピラーの表面に沿って収縮し、積層・硬化して、ピラーとピラーの間には流路空間が形成される。
これによって、検出流路8の表面にコーティング層10が形成される。
そして、このように形成されたコーティング層10の表面に、ビオチン修飾抗体を添加させると、アビジン−ビオチン相互作用により、光硬化性樹脂に混合されたストレプトアビジンにビオチンが特異的に結合し、ビオチン修飾抗体がコーティング層表面に固定化される。
また、ビオチン修飾抗体を光硬化性樹脂に含有させた後に硬化を行い、コーティング層にビオチン修飾抗体が固定化されるものでも良い。
光硬化性樹脂が硬化した後は、所定時間乾燥させる。
光硬化性樹脂は、乾燥させることにより、図11に示すように、基板及びピラーの表面に沿って収縮し、積層・硬化して、ピラーとピラーの間には流路空間が形成される。
これによって、検出流路8の表面にコーティング層10が形成される。
そして、このように形成されたコーティング層10の表面に、ビオチン修飾抗体を添加させると、アビジン−ビオチン相互作用により、光硬化性樹脂に混合されたストレプトアビジンにビオチンが特異的に結合し、ビオチン修飾抗体がコーティング層表面に固定化される。
また、ビオチン修飾抗体を光硬化性樹脂に含有させた後に硬化を行い、コーティング層にビオチン修飾抗体が固定化されるものでも良い。
[光硬化性樹脂]
本実施形態に係るコーティング層10を構成する光硬化性樹脂としては、親水性光硬化性樹脂であればどのようなものを用いてもよい。
例えば、アジド系感光基を有するものや、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有するものなどを用いることができる。1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する水溶性光硬化性樹脂は、一般に、300〜30000、好ましくは500〜20000の範囲内の数平均分子量を有し、水性媒体中に均一に分散する十分なイオン性または非イオン性の親水性基、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、エーテル結合などを含み、かつ波長が約250〜約600nmの範囲内の光を照射したとき、硬化して水に不溶性の樹脂に変わるものが好適に使用される。
本実施形態に係るコーティング層10を構成する光硬化性樹脂としては、親水性光硬化性樹脂であればどのようなものを用いてもよい。
例えば、アジド系感光基を有するものや、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有するものなどを用いることができる。1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する水溶性光硬化性樹脂は、一般に、300〜30000、好ましくは500〜20000の範囲内の数平均分子量を有し、水性媒体中に均一に分散する十分なイオン性または非イオン性の親水性基、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、エーテル結合などを含み、かつ波長が約250〜約600nmの範囲内の光を照射したとき、硬化して水に不溶性の樹脂に変わるものが好適に使用される。
ポリアルキレングリコールの両末端に光重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば下記の化合物を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
代表的な親水性光硬化性樹脂としては以下のようなものが挙げられる。
(1)分子量400〜6000のポリエチレングリコール1モルの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸2モルでエステル化したポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類
(2)分子量200〜4000のポリプロピレングリコール1モルの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸2モルでエステル化したポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類
(3)分子量400〜6000のポリエチレングリコール1モルの両末端水酸基をトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物2モルでウレタン化し、次いで(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの不飽和モノヒドロキシエチル化合物2モルを付加した不飽和ポリエチレングリコールウレタン化物
(4)分子量200〜4000のポリプロピレングリコール1モルの両末端水酸基をトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物2モルでウレタン化し、次いで(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの不飽和モノヒドロキシエチル化合物2モルを付加した不飽和ポリプロピレングリコールウレタン化物
(1)分子量400〜6000のポリエチレングリコール1モルの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸2モルでエステル化したポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類
(2)分子量200〜4000のポリプロピレングリコール1モルの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸2モルでエステル化したポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類
(3)分子量400〜6000のポリエチレングリコール1モルの両末端水酸基をトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物2モルでウレタン化し、次いで(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの不飽和モノヒドロキシエチル化合物2モルを付加した不飽和ポリエチレングリコールウレタン化物
(4)分子量200〜4000のポリプロピレングリコール1モルの両末端水酸基をトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物2モルでウレタン化し、次いで(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの不飽和モノヒドロキシエチル化合物2モルを付加した不飽和ポリプロピレングリコールウレタン化物
また、親水性光硬化性樹脂には必要に応じて、光重合開始剤を含ませる。
この光重合開始剤は、重合開始種となって重合性不飽和基を有する樹脂間に架橋反応を起こさせるものであり、例えば、ベンゾインなどのα−カルボニル類、ベンゾインエチルエーテルなどのアシロインエーテル類、ナフトールなどの多環芳香族化合物類、メチルベンゾインなどのα−置換アシロイン類、2−シアノ−2−ブチルアゾホルムアミドなどのアゾアミド化合物などを挙げることができる。この場合、親水性光硬化性樹脂と光重合開始剤との使用割合は厳密に制限されるものではなく、各成分の種類などに応じて広範囲にわたって変えることができる。一般的には、親水性光硬化性樹脂100質量部に対し、光重合開始剤は0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜3質量部の割合で使用するのが適当である。
この光重合開始剤は、重合開始種となって重合性不飽和基を有する樹脂間に架橋反応を起こさせるものであり、例えば、ベンゾインなどのα−カルボニル類、ベンゾインエチルエーテルなどのアシロインエーテル類、ナフトールなどの多環芳香族化合物類、メチルベンゾインなどのα−置換アシロイン類、2−シアノ−2−ブチルアゾホルムアミドなどのアゾアミド化合物などを挙げることができる。この場合、親水性光硬化性樹脂と光重合開始剤との使用割合は厳密に制限されるものではなく、各成分の種類などに応じて広範囲にわたって変えることができる。一般的には、親水性光硬化性樹脂100質量部に対し、光重合開始剤は0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜3質量部の割合で使用するのが適当である。
本実施形態に係るコーティング層は、光硬化性樹脂としてAWP(Aside-unit Pendant Water-soluble Photopolymer 東洋合成工業製)を用いている。但し、光硬化性樹脂としては、親水性光硬化性樹脂であればどのようなものを用いてもよい。
以下、光硬化性樹脂としてAWPを用いる場合について詳述する。
AWPを用いる場合は、特異的結合試薬との体積比33〜100%で用いることができる。樹脂濃度が高い方が流失しにくい構造物を作ることができる。
特異的結合試薬の対象に対する親和性によって、最適なAWP濃度を選択すればよい。
以下、光硬化性樹脂としてAWPを用いる場合について詳述する。
AWPを用いる場合は、特異的結合試薬との体積比33〜100%で用いることができる。樹脂濃度が高い方が流失しにくい構造物を作ることができる。
特異的結合試薬の対象に対する親和性によって、最適なAWP濃度を選択すればよい。
また、特異的結合試薬として抗体を用いる場合には、抗体濃度1μg/ml〜10mg/mlで樹脂と混合する。抗体濃度が高いほど、検出感度の高いデバイスを作成できる。抗体濃度は抗体の親和性や、検出感度によって適宜選択すればよい。
また、通常、抗体とAWPは、体積比2:1で混合すればよいが、混合割合も用いる抗体や抗体の検出対象に対する感度に応じて適宜選択することができる。
硬化の時間はAWP、特異的結合試薬や検体の濃度に依存する。AWP濃度が高いほど短時間で硬化する。
また、通常、抗体とAWPは、体積比2:1で混合すればよいが、混合割合も用いる抗体や抗体の検出対象に対する感度に応じて適宜選択することができる。
硬化の時間はAWP、特異的結合試薬や検体の濃度に依存する。AWP濃度が高いほど短時間で硬化する。
[標識物質]
以上のように、本実施形態のマイクロ流体デバイス1では、検体及び標識試薬を移動・液送させる各流路6,7,8の流路幅及び流路深さを、従来のイムノクロマトデバイス等と比較して非常に大きく設定することができ、その結果、流路断面の大きさを標識物質の直径よりも十分に大きく(太く)なるように形成することできる。
また、そのように標識物質を大径化して流体のシェアストレスを受けても、検出流路8の捕捉試薬が剥離・離脱してしまうことがない。
その結果、本実施形態では、そのような流路特性を利用して、コンジュゲートパッド4に滴下される検体に含まれるインフルエンザ抗原と結合する標識試薬として、所定以上の直径を有する標識物質を用いることができる。
そこで、本実施形態では、抗原抗体反応の視認性・シグナル強度を考慮して、標識物質として必要かつ十分な大きさとなるように、標識物質の大きさを設定するようにしてある。
以上のように、本実施形態のマイクロ流体デバイス1では、検体及び標識試薬を移動・液送させる各流路6,7,8の流路幅及び流路深さを、従来のイムノクロマトデバイス等と比較して非常に大きく設定することができ、その結果、流路断面の大きさを標識物質の直径よりも十分に大きく(太く)なるように形成することできる。
また、そのように標識物質を大径化して流体のシェアストレスを受けても、検出流路8の捕捉試薬が剥離・離脱してしまうことがない。
その結果、本実施形態では、そのような流路特性を利用して、コンジュゲートパッド4に滴下される検体に含まれるインフルエンザ抗原と結合する標識試薬として、所定以上の直径を有する標識物質を用いることができる。
そこで、本実施形態では、抗原抗体反応の視認性・シグナル強度を考慮して、標識物質として必要かつ十分な大きさとなるように、標識物質の大きさを設定するようにしてある。
具体的には、標識物質として、直径100nm以上、より好ましくは400nm以上の粒子を用いることができる。
このような粒子、例えば平均粒径3μmPSビーズを用いることで、マイクロ流体デバイス1の検出流路における視認性・シグナル強度を十分に高めることができ、かつ、基板2上に形成される各流路6,7,8の大きさ(流路幅・深さ)を、約30μm程度に形成すれば、流路内で、標識物質の目詰まりや滞留等が生じることを確実に防止することができる。
このような粒子、例えば平均粒径3μmPSビーズを用いることで、マイクロ流体デバイス1の検出流路における視認性・シグナル強度を十分に高めることができ、かつ、基板2上に形成される各流路6,7,8の大きさ(流路幅・深さ)を、約30μm程度に形成すれば、流路内で、標識物質の目詰まりや滞留等が生じることを確実に防止することができる。
従来のイムノクロマトデバイスでは、検体の流路としてニトロセルロース等の発泡体や繊維質を用いることから、流路となる発泡体等の多孔質部分への標識物質が目詰まりすることを防止するために、標識物質を十分に小さい粒径にする必要があった。例えば、ニトロセルロース発泡体の平均孔径は約10μm程度となっており、発泡体の孔径のバラツキを考慮すると、標識物質の大きさは、最大でも直径100nm以下としなければならず、通常は直径40nm程度の金コロイド等が標識物質として使用されていた。そのため、粒径40nm程度の標識物質では、粒径が小さいためにデバイスの検体捕捉部分が十分に発色せず、視認性・シグナル強度が悪く、特に検体に含まれるアナライトの濃度が低い場合にはデバイスが発色せず、見落としや誤判定の原因となっていた。
本実施形態では、上述した強力な推進力と流体混合性能を有する流路構造を採用するとともに、検出流路8の捕捉試薬を流路表面に固定化することで、標識物質として、従来のイムノクロマトデバイスでは使用が不可能であった直径100nm以上、好ましくは400nm以上の大径粒子を用いるようにしてある。
これによって、イムノクロマトデバイスの金コロイド等の標識物質と比較して、直径比で10倍、面積比で100倍の大きな大径の標識物質を使用することができ、良好な視認性・シグナル強度が得られ、インフルエンザ感染の判定精度を向上させることができるようになる。
これによって、イムノクロマトデバイスの金コロイド等の標識物質と比較して、直径比で10倍、面積比で100倍の大きな大径の標識物質を使用することができ、良好な視認性・シグナル強度が得られ、インフルエンザ感染の判定精度を向上させることができるようになる。
ここで、本実施形態に係る標識物質を構成する大径粒子としては、例えば、ポリスチレン、セルロース、ウレタン、シリカ、アクリル、石英、キトサン、デキストラン、アルブミン、アガロース、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンイミン、酸化アルミニウム、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、PLGA、酸化鉄、パラジウムなどを使用することができる。
なお、以上のような大径粒子は、良好な視認性・シグナル強度が得られることに加えて、流体の混合性能の向上にも寄与するという効果もある。
図12(a)に示すように、マイクロ流体デバイス1の各流路内では、非圧縮性の完全流体の定常な流れ(定常流)があるとき、流体には流路軸線方向に沿って進行方向に膨出する放物線状の速度成分が生じる。
図12(a)に示すように、マイクロ流体デバイス1の各流路内では、非圧縮性の完全流体の定常な流れ(定常流)があるとき、流体には流路軸線方向に沿って進行方向に膨出する放物線状の速度成分が生じる。
このように定常流では、流路中心の速度が最も速く、流路中心から遠ざかる程、速度が遅くなるため、400nm以上の大径粒子のように流路幅に対して一定以上の大きさを有する粒体の場合、図12(b)に示すように、粒体の部位によって流体の速度が異なることになる。その結果、粒体が回転して、流体の流れ方向と交差する方向に揚力が発生する。
このような回転及び揚力が発生することにより、流体中の粒体は、流体の流れ方向に進行しつつ、流体の流れ方向と交差する方向(図面上下方向)にも移動を繰り返すことになり、結果として、流体の混合が発生・促進されることになる。
これに対して、一般のイムノクロマトデバイスで使用される金コロイドのように、40nm程度の微小な粒体の場合には、図12(c)に示すように、流路幅に対して非常に小さいために、上記のような流体の速度成分の違いが粒体に作用せず、粒体には回転力も揚力も発生しない。したがって、流体の混合に寄与することも起こり得ない。
このような回転及び揚力が発生することにより、流体中の粒体は、流体の流れ方向に進行しつつ、流体の流れ方向と交差する方向(図面上下方向)にも移動を繰り返すことになり、結果として、流体の混合が発生・促進されることになる。
これに対して、一般のイムノクロマトデバイスで使用される金コロイドのように、40nm程度の微小な粒体の場合には、図12(c)に示すように、流路幅に対して非常に小さいために、上記のような流体の速度成分の違いが粒体に作用せず、粒体には回転力も揚力も発生しない。したがって、流体の混合に寄与することも起こり得ない。
このように、本実施形態に係る大径粒子を採用することによって、抗原抗体反応の視認性・シグナル強度を向上させることができるだけでなく、流体の混合を促進することもできるようになり、免疫学的測定デバイスに用いる標識物質としてより好適である。
したがって、大径粒子を使用することで、上述した本実施形態に係るミキサ流路7の混合性能を更に向上させることができるようになり、図心変動や複数の溝部等を備えない通常のストレート流路を用いた場合でも、標識物質自体によって流体を混合させることが可能となる。
したがって、大径粒子を使用することで、上述した本実施形態に係るミキサ流路7の混合性能を更に向上させることができるようになり、図心変動や複数の溝部等を備えない通常のストレート流路を用いた場合でも、標識物質自体によって流体を混合させることが可能となる。
[接合方法]
次に、以上のようなマイクロ流体デバイス1において、基板2及びカバー体3を樹脂製の基材によって構成する場合の基材同士の接合方法について図13を参照しつつ説明する。
樹脂製の基板2及びカバー体3は、以下のような接合方法を用いて接合することができる。
すなわち、本実施形態では、基板2及びカバー体3を構成する2つの樹脂基材を接合してマイクロ流体デバイス1を製造する場合に、2つの樹脂基材のうち少なくとも1つの樹脂基材の接合面に、高エネルギー照射を行うことにより当該接合面を平坦化及び軟化する工程と、2つの樹脂基材を積層した後、その2つの樹脂基材を、加熱及び/又は加圧して接合する工程とからなる方法により接合することができる。
次に、以上のようなマイクロ流体デバイス1において、基板2及びカバー体3を樹脂製の基材によって構成する場合の基材同士の接合方法について図13を参照しつつ説明する。
樹脂製の基板2及びカバー体3は、以下のような接合方法を用いて接合することができる。
すなわち、本実施形態では、基板2及びカバー体3を構成する2つの樹脂基材を接合してマイクロ流体デバイス1を製造する場合に、2つの樹脂基材のうち少なくとも1つの樹脂基材の接合面に、高エネルギー照射を行うことにより当該接合面を平坦化及び軟化する工程と、2つの樹脂基材を積層した後、その2つの樹脂基材を、加熱及び/又は加圧して接合する工程とからなる方法により接合することができる。
具体的には、本実施形態に係る接合方法では、まず、図13(a)に示すように、マイクロ流体デバイス1の流路6,7,8が形成された基板2と、基板2に積層される蓋部材であるカバー体3のそれぞれの接合面となる基材表面に高エネルギー照射を行う。
樹脂基材の表面に高エネルギー照射を行うことで、基材表面を改質することができ、具体的には基材表面を平坦化及び軟化することができる。
平坦化及び軟化することにより、基材表面同士の接触性・密着性が高まり、より低温の接合温度によっても、両者をファンデルワールス力及び/又は水素結合により強固に接合させることが可能となる。
樹脂基材の表面に高エネルギー照射を行うことで、基材表面を改質することができ、具体的には基材表面を平坦化及び軟化することができる。
平坦化及び軟化することにより、基材表面同士の接触性・密着性が高まり、より低温の接合温度によっても、両者をファンデルワールス力及び/又は水素結合により強固に接合させることが可能となる。
ここで、本実施形態では、図13(a)に示すように、高エネルギー照射として、樹脂基材の接合面にアルゴンプラズマを照射するようにしてある。
アルゴンプラズマは、原子量が大きく、プラズマ化し易いアルゴンガスを原料ガスとして導入して放電を行うことで、アルゴンの活性種であるArイオンやArラジカルがプラズマによって生成されるもので、原子量が大きくアタック力の強いアルゴン活性種を樹脂基材の表面に衝突させることで、樹脂基材の分子間を切断させることができるものである。
これによって、樹脂基材の表面を改質することができ、具体的には、基材表面が平坦化されるとともに、基材表面が低分子量化、すなわち軟化されることになる。
また、上記処理によりカルボキシル基、水酸基などの極性官能基が基材表面に導入され、すなわち、酸化されることになる。
アルゴンプラズマは、原子量が大きく、プラズマ化し易いアルゴンガスを原料ガスとして導入して放電を行うことで、アルゴンの活性種であるArイオンやArラジカルがプラズマによって生成されるもので、原子量が大きくアタック力の強いアルゴン活性種を樹脂基材の表面に衝突させることで、樹脂基材の分子間を切断させることができるものである。
これによって、樹脂基材の表面を改質することができ、具体的には、基材表面が平坦化されるとともに、基材表面が低分子量化、すなわち軟化されることになる。
また、上記処理によりカルボキシル基、水酸基などの極性官能基が基材表面に導入され、すなわち、酸化されることになる。
このように平坦化及び軟化(低分子量化)、及び/又は酸化された表面を接合面とすることで、基材表面同士の接触性・密着性が高まり、より低温の接合温度によっても、両者を強固に融着・接合させることが可能となる。
これによって、図13(b)に示すように、樹脂基材(基板2・カバー体3)はガラス転移点以下もしくは融点以下の温度においても接合が可能となり、例えば、接合温度約30℃程度の低温でも、2つの基材を接合することができるようになる。
そして、ガラス転移点以下もしくは融点以下の温度で接合が行われることで、基板2に形成された流路6,7,8の形状が変形等することがなく、信頼性の高いマイクロ流体デバイス1の製造方法として好適に用いることができる。
これによって、図13(b)に示すように、樹脂基材(基板2・カバー体3)はガラス転移点以下もしくは融点以下の温度においても接合が可能となり、例えば、接合温度約30℃程度の低温でも、2つの基材を接合することができるようになる。
そして、ガラス転移点以下もしくは融点以下の温度で接合が行われることで、基板2に形成された流路6,7,8の形状が変形等することがなく、信頼性の高いマイクロ流体デバイス1の製造方法として好適に用いることができる。
なお、図13(b)に示すように、本実施形態の接合方法によれば約30℃の接合温度での接合が可能であることから、加熱及び加圧は、少なくともいずれかを行えばよく、例えば加熱を行うことなく加圧するだけで、樹脂基材を接合することもでき、あるいは、加熱のみを行って加圧することなく樹脂基材を接合することも可能である。
但し、より強固に確実に樹脂基材同士を接合するためには、適切な温度及び圧力で加熱及び加圧することが望ましい。
但し、より強固に確実に樹脂基材同士を接合するためには、適切な温度及び圧力で加熱及び加圧することが望ましい。
ここで、本実施形態において樹脂基材の接合面に対して行われる高エネルギー照射としては、上述したアルゴンプラズマが好ましいが、これに限定されるものではない。
例えば、アルゴンプラズマ以外の高エネルギー照射としては、酸素プラズマ,アルゴンと酸素などの混合プラズマ,真空紫外線,低酸素濃度下での真空紫外線のうち、いずれかを照射する場合であってもよい。
これらは、プラズマ化し易く、アタック力のあるエネルギー照射であり、上述したアルゴンプラズマ照射の場合と同様に、樹脂基材の表面の改質、すなわち、基材表面の平坦化及び軟化(低分子量化)、及び/又は酸化に好ましいものであり、アルゴンプラズマに代えて採用することができる。
また、これらの高エネルギー照射は、接合する2つの樹脂基材の、少なくとも一方の接合面に対して行えば良い。但し、より強固な接合強度を得るためには、接合する2つの樹脂基材の各接合面に対して高エネルギー照射を行うことが望ましい。
例えば、アルゴンプラズマ以外の高エネルギー照射としては、酸素プラズマ,アルゴンと酸素などの混合プラズマ,真空紫外線,低酸素濃度下での真空紫外線のうち、いずれかを照射する場合であってもよい。
これらは、プラズマ化し易く、アタック力のあるエネルギー照射であり、上述したアルゴンプラズマ照射の場合と同様に、樹脂基材の表面の改質、すなわち、基材表面の平坦化及び軟化(低分子量化)、及び/又は酸化に好ましいものであり、アルゴンプラズマに代えて採用することができる。
また、これらの高エネルギー照射は、接合する2つの樹脂基材の、少なくとも一方の接合面に対して行えば良い。但し、より強固な接合強度を得るためには、接合する2つの樹脂基材の各接合面に対して高エネルギー照射を行うことが望ましい。
このような本実施形態の接合方法によれば、接合する樹脂基材の接合面を平坦化・軟化・酸化する改質を行うことで、ガラス転移点もしくは融点以下の接合温度で、より低温の接合温度で樹脂からなる接合面同士を熱融着させることができる。
このような低温接合によって、樹脂製の基板2に形成される微細なマイクロ流路が高温加熱により変形等することなく、所望の流路空間を備えた精密なマイクロ流体デバイス1を製造することができる。
このような低温接合によって、樹脂製の基板2に形成される微細なマイクロ流路が高温加熱により変形等することなく、所望の流路空間を備えた精密なマイクロ流体デバイス1を製造することができる。
以上説明したように、本実施形態に係るマイクロ流体デバイス1からなる免疫学的測定デバイスによれば、検体を移動・液送する流路を、従来のイムノクロマトデバイスのように多孔質体によって構成することなく、また、流路長を過大に長く複雑にすることなく、流路自体に強い毛管力を付与して、検体及び標識試薬を確実に移動及び混合させることができる。
これによって、マイクロ流体デバイス1の各流路6,7,8は、流路幅及び深さを十分な大きさに設定することができ、標識物質の粒径を大きくしても流路に目詰まりや滞留等が生じることがなくなる。
これによって、マイクロ流体デバイス1の各流路6,7,8は、流路幅及び深さを十分な大きさに設定することができ、標識物質の粒径を大きくしても流路に目詰まりや滞留等が生じることがなくなる。
そして、本実施形態のマイクロ流体デバイス1では、検出流路8において検体を捕捉する捕捉試薬が、コーティング層10を介して検出流路8を構成する基板表面に固定化されるようになる。
これによって、標識物質として大径の粒子を用いることによっても、捕捉試薬が検出流路8から剥離・流出することなく、大径の標識物質によって標識された対象アナライト(インフルエンザ抗原)を、検出流路8において確実に捕捉・保持することができる。
したがって、大径の標識物質によって、検体の抗原抗体反応の視認性・シグナル強度を確実かつ効果的に向上させることができ、検体の抗原抗体反応を容易かつ確実に測定できるようになる。
これによって、標識物質として大径の粒子を用いることによっても、捕捉試薬が検出流路8から剥離・流出することなく、大径の標識物質によって標識された対象アナライト(インフルエンザ抗原)を、検出流路8において確実に捕捉・保持することができる。
したがって、大径の標識物質によって、検体の抗原抗体反応の視認性・シグナル強度を確実かつ効果的に向上させることができ、検体の抗原抗体反応を容易かつ確実に測定できるようになる。
これによって、マイクロ流体デバイス1の検出流路8における判定が確実に行えるようになり、ウイルス等の検体に含まれるアナライトの濃度が低い場合であっても、従来のイムノクロマトデバイスにおけるような誤判定は生ぜず、インフルエンザ感染の早期発見等が可能となる。
また、低濃度のアナライトでも確実な判定・検出が行えることから、被験者の侵襲や痛みを伴う検体採取方法を取らなくても、例えば低濃度のアナライトしか含まない鼻かみ液を検体として使用することが可能となり、低侵襲で使い易い免疫学的測定デバイスを実現することができる。
また、低濃度のアナライトでも確実な判定・検出が行えることから、被験者の侵襲や痛みを伴う検体採取方法を取らなくても、例えば低濃度のアナライトしか含まない鼻かみ液を検体として使用することが可能となり、低侵襲で使い易い免疫学的測定デバイスを実現することができる。
さらに、本実施形態に係るマイクロ流体デバイス1は、特徴的な構造を有するキャピラリーポンプ流路6及びミキサ流路7(検出流路8)を備えることで、外部からのポンプ力を必要とすることなく、流路内の毛管力によって流体を移動させることができる自己送液型のデバイスとなっている。
これによって、本実施形態のマイクロ流体デバイス1は、ポンプ等の外部装置を必要とせず、デバイス自体の構成を可能な限り小型化・簡素化することができる。
したがって、本実施形態のマイクロ流体デバイス1によれば、簡易な構成でありながら、信頼性が高く、かつ、被験者にも優しいインフルエンザ用の診断キット等に好適な免疫学的測定デバイスを提供することができる。
これによって、本実施形態のマイクロ流体デバイス1は、ポンプ等の外部装置を必要とせず、デバイス自体の構成を可能な限り小型化・簡素化することができる。
したがって、本実施形態のマイクロ流体デバイス1によれば、簡易な構成でありながら、信頼性が高く、かつ、被験者にも優しいインフルエンザ用の診断キット等に好適な免疫学的測定デバイスを提供することができる。
以下、本発明に係る免疫学的測定デバイスの実施例を説明する。
なお、本発明を以下の実施例により更に説明するが、本発明は下記実施例により何らかの制限を受けるものではない。
[実施例1]
PDMS(SILPOT184:東レ・ダウコーニング株式会社製)を用いてキャスト成形により、検出流路の表面にピラーアレイ(直径:30μm,深さ:30μm,ピラー間隔:30μm)を有するPDMS製マイクロ流体デバイスを作製した。続いて、該検出流路に対してストレプトアビジンを含有する光硬化性樹脂(AWP:東洋合成株式会社製)を滴下し、UV照射機にてUV光(波長:200〜400nm,照射強度:20mW/cm2)を8秒照射した。その後、室温下において2時間乾燥を行う事により、AWPをシュリンクさせ、ピラーアレイ表面にAWPをコーティングした。そして、ビオチン修飾anti−h−alpha subunit抗体を前記検出流路に滴下し、アビジン-ビオチン反応により、前記コーティング層に捕捉抗体を導入し、hCG抗原測定用マイクロ流体デバイスを得た。
その後、該デバイスに対して、標識物質(平均粒径3μm青色PSビーズ)表面にanti−hCG抗体を固定化した標識抗体と、hCG抗原によるサンドイッチアッセイ試験を行った結果、検出流路においてhCG抗原の視認判定が可能となった。
なお、本発明を以下の実施例により更に説明するが、本発明は下記実施例により何らかの制限を受けるものではない。
[実施例1]
PDMS(SILPOT184:東レ・ダウコーニング株式会社製)を用いてキャスト成形により、検出流路の表面にピラーアレイ(直径:30μm,深さ:30μm,ピラー間隔:30μm)を有するPDMS製マイクロ流体デバイスを作製した。続いて、該検出流路に対してストレプトアビジンを含有する光硬化性樹脂(AWP:東洋合成株式会社製)を滴下し、UV照射機にてUV光(波長:200〜400nm,照射強度:20mW/cm2)を8秒照射した。その後、室温下において2時間乾燥を行う事により、AWPをシュリンクさせ、ピラーアレイ表面にAWPをコーティングした。そして、ビオチン修飾anti−h−alpha subunit抗体を前記検出流路に滴下し、アビジン-ビオチン反応により、前記コーティング層に捕捉抗体を導入し、hCG抗原測定用マイクロ流体デバイスを得た。
その後、該デバイスに対して、標識物質(平均粒径3μm青色PSビーズ)表面にanti−hCG抗体を固定化した標識抗体と、hCG抗原によるサンドイッチアッセイ試験を行った結果、検出流路においてhCG抗原の視認判定が可能となった。
[比較例1]
前記実施例のうち、検出流路に対して疎水性相互作用等の物理吸着を用いて捕捉抗体を導入する以外は、同じ条件でhCG抗原測定用マイクロ流体デバイスを得た。
その後、該デバイスに対して、標識物質(平均粒径3μm青色PSビーズ)表面にanti−hCG抗体を固定化した標識抗体と、hCG抗原によるサンドイッチアッセイ試験を行った結果、検出流路においてhCG抗原の視認判定は困難だった。
前記実施例のうち、検出流路に対して疎水性相互作用等の物理吸着を用いて捕捉抗体を導入する以外は、同じ条件でhCG抗原測定用マイクロ流体デバイスを得た。
その後、該デバイスに対して、標識物質(平均粒径3μm青色PSビーズ)表面にanti−hCG抗体を固定化した標識抗体と、hCG抗原によるサンドイッチアッセイ試験を行った結果、検出流路においてhCG抗原の視認判定は困難だった。
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、マイクロ流体デバイス1の検出流路8に設けたテスト流路8aとコントロール流路8bを広幅浅底に形成して、その底面に捕捉試薬を塗布した例について説明したが、これに限定されない。例えば、検出流路8に設けたテスト流路8aとコントロール流路8bにも、キャピラリーポンプ流路6におけるような微細液送構造体を形成して、これらの流路8a,8bを通過する検体調製液の液送方向を制御するようにしてもよい。このとき、微細構造体にも捕捉試薬CAを塗布しておくことで、例えば、テスト流路8aにあっては、標識試薬と結合したインフルエンザ抗原LAをより捕捉し易くなるとともに、標識試薬と結合したインフルエンザ抗原LAが微細構造体の高さ方向に沿っても捕捉されるため、標識物質による発色がより視認し易くなる。
例えば、上述した実施形態では、マイクロ流体デバイス1の検出流路8に設けたテスト流路8aとコントロール流路8bを広幅浅底に形成して、その底面に捕捉試薬を塗布した例について説明したが、これに限定されない。例えば、検出流路8に設けたテスト流路8aとコントロール流路8bにも、キャピラリーポンプ流路6におけるような微細液送構造体を形成して、これらの流路8a,8bを通過する検体調製液の液送方向を制御するようにしてもよい。このとき、微細構造体にも捕捉試薬CAを塗布しておくことで、例えば、テスト流路8aにあっては、標識試薬と結合したインフルエンザ抗原LAをより捕捉し易くなるとともに、標識試薬と結合したインフルエンザ抗原LAが微細構造体の高さ方向に沿っても捕捉されるため、標識物質による発色がより視認し易くなる。
また、上述した実施形態では、本発明に係るマイクロ流体デバイスとして、インフルエンザ用の診断キットを例にとって説明したが、本発明に係るマイクロ流体デバイスの適用対象は特にインフルエンザ診断キットに限定されるものではない。
さらに、上記実施形態では、マイクロ流体デバイスの構成として、流路内の流体を移動させるためのポンプ等の加圧手段を備えないパッシブ型のマイクロ流体デバイスを例にとって説明したが、ポンプ等の加圧手段を備えるアクティブ形のマイクロ流体デバイスに適用することも勿論可能である。
すなわち、本発明は、微小なマイクロ流路空間において複数の流体を効率よく迅速かつ確実に混合・混錬させつつ移動させる必要があるマイクロ流体デバイスであれば特に限定されるものではなく、デバイスの構成や形態,使用目的,流体の種類や分量などを問わず、広く本発明を適用することができる。
すなわち、本発明は、微小なマイクロ流路空間において複数の流体を効率よく迅速かつ確実に混合・混錬させつつ移動させる必要があるマイクロ流体デバイスであれば特に限定されるものではなく、デバイスの構成や形態,使用目的,流体の種類や分量などを問わず、広く本発明を適用することができる。
1 マイクロ流体デバイス
2 基板
3 カバー体(蓋部材)
4 コンジュゲートパッド
5 吸収パッド
6 キャピラリーポンプ流路
6a 第一キャピラリーポンプ流路
6b 第二キャピラリーポンプ流路
7 ミキサ流路(液送流路部)
8 検出流路
8a テスト流路
8b コントロール流路
10 コーティング層
2 基板
3 カバー体(蓋部材)
4 コンジュゲートパッド
5 吸収パッド
6 キャピラリーポンプ流路
6a 第一キャピラリーポンプ流路
6b 第二キャピラリーポンプ流路
7 ミキサ流路(液送流路部)
8 検出流路
8a テスト流路
8b コントロール流路
10 コーティング層
Claims (4)
- 免疫学的測定が行われる検体が移動する流路を備えたマイクロ流体デバイスからなり、
前記流路が、
標識試薬と結合するアナライトを捕捉する検出流路を備え、
前記検出流路の表面に、前記アナライトを特異的結合により捕捉する捕捉試薬を有するコーティング層が積層されている
ことを特徴とする免疫学的測定デバイス。 - 前記検出流路の表面に凹部又は凸部を備え、
前記コーティング層が、
前記凹部又は凸部を含む前記検出流路の表面に積層される
ことを特徴とする請求項1記載の免疫学的測定デバイス。 - 前記コーティング層が、
前記検出流路の表面に積層される、特異的結合試薬を含む光硬化性樹脂からなる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の免疫学的測定デバイス。 - 前記標識試薬が、
直径100nm以上の粒子からなる請求項1〜3のいずれか一項記載の免疫学的測定デバイス。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017228145A JP2019100714A (ja) | 2017-11-28 | 2017-11-28 | 免疫学的測定デバイス |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017228145A JP2019100714A (ja) | 2017-11-28 | 2017-11-28 | 免疫学的測定デバイス |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2019100714A true JP2019100714A (ja) | 2019-06-24 |
Family
ID=66976706
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017228145A Pending JP2019100714A (ja) | 2017-11-28 | 2017-11-28 | 免疫学的測定デバイス |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2019100714A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022203025A1 (ja) * | 2021-03-26 | 2022-09-29 | デンカ株式会社 | 検査デバイス及び検査方法 |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009544043A (ja) * | 2006-07-19 | 2009-12-10 | バイオセプト インコーポレイティッド | マイクロチャネル装置を用いた標的分子の検出または単離 |
WO2016152702A1 (ja) * | 2015-03-24 | 2016-09-29 | 国立大学法人名古屋大学 | 分析デバイス |
JP2017078664A (ja) * | 2015-10-21 | 2017-04-27 | 東洋製罐グループホールディングス株式会社 | 免疫学的測定デバイス |
-
2017
- 2017-11-28 JP JP2017228145A patent/JP2019100714A/ja active Pending
Patent Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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