JP2019094490A - ポリビニルアルコール系水溶性フィルム及びその製造方法、ならびに薬剤包装体 - Google Patents

ポリビニルアルコール系水溶性フィルム及びその製造方法、ならびに薬剤包装体 Download PDF

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Abstract

【課題】 カールが抑制され、シール不良の発生が少なく、水溶解性にも優れる水溶性フィルムを提供すること。【解決手段】 フィルムの幅方向における水分率x(重量%)の最大値xmaxと最小値xminの差が0.2〜3であり、かつフィルムの幅方向の平均水分率Mが6〜15重量%であることを特徴とするポリビニルアルコール系水溶性フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性フィルムに関し、更に詳しくは、カールが抑制され、かつ薬剤を包装して個包装体を製造する際に、シール不良の発生が少なく、溶解性にも優れる水溶性フィルムおよびその製造方法、ならびにこれを用いてなる薬剤包装体に関するものである。
従来より、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶性を生かして、農薬や洗浄剤等の各種薬剤をポリビニルアルコール系樹脂のフィルムからなる袋に入れた薬剤の分包が提案され、幅広い用途に用いられている。
かかる薬剤包装用途に用いる水溶性フィルムには、優れた溶解性に加えて、包装体とした際に、シール性が良好である、破袋しない、歪みが生じない、張りの低減が生じないといった、機械特性や外観特性など種々の特性を満足することが要求される。
かかる用途に用いる水溶性フィルムとして、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂と特定の融点を有する2種類の可塑剤をポリビニルアルコール系樹脂に対して特定量含有させることで、引張強度や引張伸度が高く機械特性に優れており、液体を包装した状態であっても経時で水溶性フィルムの張りが損なわれない外観特性が良好な包装体を成形し得る水溶性フィルムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
国際公開第WO2017/043508号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示の水溶性フィルムは、機械特性と経時的な張りの低下が生じない外観特性に優れた包装体を得ることができるものであるが、一方で、ポリビニルアルコール系水溶性フィルムは吸湿しやすいこともあり、フィルムがカールしてしまうことがあり、水溶性フィルムにカールが発生してしまうと、例えば、水溶性フィルムを用いて包装体を製造する際に、ハンドリングが困難であったり、シール時に位置ずれが起こったりしやすいため、包装体の生産効率が低下するという問題が懸念され、さらなる改善が望まれるものであった。
そこで、本発明ではこのような背景下において、カールが抑制され、シール不良の発生が少なく、水溶解性にも優れる水溶性フィルムを提供することを目的とするものである。
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み鋭意研究した結果、ポリビニルアルコール系水溶性フィルムにおいて、通常はフィルムの水分率をフィルム全体で均一にすることが品質面の観点からは好ましいものであるところ、フィルムの幅方向における水分率の濃度分布を特定範囲に制御することにより、カールが大きく抑制され、包装体の生産性にも優れた効果を有することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、フィルムの幅方向における水分率x(重量%)の最大値xmaxと最小値xminの差が0.2〜3であり、かつフィルムの幅方向の平均水分率Mが6〜15重量%であることを特徴とするポリビニルアルコール系水溶性フィルムに関するものである。
更に、本発明では、前記水溶性フィルムを用いてなる薬剤包装体、および前記水溶性フィルムの製造方法も提供するものである。
本発明のポリビニルアルコール系水溶性フィルムは、カールが抑制されるため、包装体を成形する際にシール時の位置ずれが起こりにくいためシール不良の発生が少なく、溶解性にも優れており、包装体の生産性に優れたものとなる。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のポリビニルアルコール系水溶性フィルムは、フィルムの幅方向における水分率x(重量%)の最大値xmaxと最小値xminの差が0.2〜3であり、かつフィルムの幅方向の平均水分率Mが6〜15重量%であることを特徴とする。
以下、ポリビニルアルコールを「PVA」、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性フィルムを「PVA系水溶性フィルム」と略記することがある。
フィルムの幅方向における水分率x(重量%)の最大値xmaxと最小値xminの差が小さすぎると、包装体を製造する際にカールによる位置ずれが起こりやすくなることで包装体の生産効率が低下することとなり、差が大きすぎると、フィルムのシール強度不足や溶解性低下によって包装体にした際に不良品が増加することとなる。
上記PVA系水溶性フィルムの水分率x(重量%)の最大値xmaxと最小値xminの差は、0.3〜2であることが特に好ましく、更に好ましくは0.5〜1.5である。
また、水分率の最大値xmaxと最小値xminを示す位置については、最大値xmaxは幅方向の中心側に存在することが好ましく、最小値xminは幅方向の端部側に存在することが好ましい。
また、フィルムの幅方向の平均水分率Mが低すぎるとフィルムが硬くなりすぎて、包装体とする際の成形性や包装体の耐衝撃性が低下することとなり、高すぎるとブロッキングが生じやすくなる。
上記PVA系水溶性フィルムの幅方向の平均水分率Mは、6.5〜12重量%であることが特に好ましく、更に好ましくは7〜10重量%である。
かかる幅方向における水分率の最大値と最小値の差および平均水分率が特定範囲のPVA系水溶性フィルムは、例えば、製造工程において特定の熱処理を施すことにより製造することができる。
上記のPVA系水溶性フィルムの幅方向における水分率x(重量%)の最大値xmaxと最小値xminの差は、次のようにして測定、算出される。
フィルムを流れ方向の任意の位置で、フィルムの一方の端部から他方の端部に向けて50mm間隔で50mm×50mmサイズにして計n個切り出し、それぞれの区画の水分率x(i=1、2、3、・・・、n)をカールフィッシャー水分計を用いて測定する。測定される水分率x(i=1、2、3、・・・、n)全体における最大値をxmax、最小値をxminとして、最大値xmaxと最小値をxminの差を求めることができる。
また、PVA系水溶性フィルムの幅方向における水分率(重量%)の平均水分率Mは、次のようにして算出される。
n: フィルム幅方向に沿って50mm×i区画ごとに測定した区画総数
i: フィルム幅方向に沿って50mm×i区画ごとに測定したi区画目の
水分率(重量%)
また、本発明のPVA系水溶性フィルムは、幅方向における水分率(重量%)の標準偏差Sが0.05〜1.0であることが好ましく、特に好ましくは0.07〜0.8であり、更に好ましくは0.1〜0.5である。
かかる標準偏差Sが大きすぎるとフィルムのシール強度不足や溶解性低下によって包装体にした際に不良品が増加する傾向があり、小さすぎると包装体を製造する際にカールによる位置ずれが起こりやすくなることで包装体の生産効率が低下する傾向がある。
上記のPVA系水溶性フィルムの幅方向における水分率(重量%)の標準偏差Sは、次のようにして算出される。
n: フィルム幅方向に沿って50mm×i区画ごとに測定した区画総数
i: フィルム幅方向に沿って50mm×i区画ごとに測定したi区画目の
水分率(重量%)
M: フィルム幅方向における平均水分率(重量%)
本発明のPVA系水溶性フィルムは、PVA系樹脂を主成分とする。
ここでPVA系樹脂を主成分とするとは、水溶性フィルム全体に対して、PVA樹脂系樹脂を通常、50重量%以上、好ましくは55重量%以上、特に好ましくは60重量%以上含有することを意味する。
まず、本発明で用いられるPVA系樹脂(A)について説明する。
本発明で用いられるPVA系樹脂(A)としては、未変性PVAや変性PVA系樹脂が挙げられる。
未変性PVAは、ビニルエステル系化合物を重合して得られるビニルエステル系重合体をケン化することにより製造することができる。
かかるビニルエステル系化合物としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が挙げられるが、酢酸ビニルを用いることが好ましい。上記ビニルエステル系化合物は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
変性PVA系樹脂は、上記ビニルエステル系化合物と、ビニルエステル系化合物と共重合可能な不飽和単量体とを共重合させた後、ケン化することにより製造することができる。
上記ビニルエステル系化合物と共重合可能な不飽和単量体としては、例えば、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類およびそのアシル化物などの誘導体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩等が挙げられる。
また、変性PVA系樹脂として、側鎖に一級水酸基を有するもので、例えば、側鎖の一級水酸基の数が、通常1〜5個、好ましくは1〜2個、特に好ましくは1個であるものも挙げられ、さらには、一級水酸基以外にも二級水酸基を有することが好ましい。かかる変性PVAとしては、例えば、側鎖にヒドロキシアルキル基を有するPVA系樹脂、側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂等があげられる。側鎖に1,2−ジオール構造単位を有するPVA系樹脂は、例えば、(ア)酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(イ)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(ウ)酢酸ビニルと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(エ)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により製造することができる。
上記、ビニルエステル系化合物と、ビニルエステル系化合物と共重合可能な不飽和単量体との共重合方法としては、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等、公知の重合方法を任意に用いることができるが、通常、メタノール、エタノールあるいはイソプロピルアルコール等のアルコールを溶媒とする溶液重合法により行われる。
重合触媒としては、重合方法に応じて、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系触媒、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物触媒等の公知の重合触媒を適宜選択することができる。又、重合の反応温度は50℃〜沸点程度の範囲から選択される。
ケン化は公知の方法で行うことができ、通常、得られた共重合体をアルコールに溶解してケン化触媒の存在下で行なわれる。アルコールとしてはメタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコール中の共重合体の濃度は、溶解率の観点から20〜50重量%の範囲から選択される。
ケン化触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることができ、酸触媒を用いることも可能である。ケン化触媒の使用量はビニルエステル系化合物に対して1〜100ミリモル当量にすることが好ましい。
本発明で用いる変性PVA系樹脂としては、溶解性の点で、アニオン性基変性PVA系樹脂を用いることが好ましい。アニオン性基の種類としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられるが、耐薬品性及び経時安定性の点で、カルボキシル基、スルホン酸基が好ましく、特にはカルボキシル基が好ましい。
上記カルボキシル基変性PVA系樹脂は、任意の方法で製造することができ、例えば、(I)カルボキシル基を有する不飽和単量体とビニルエステル系化合物を共重合した後にケン化する方法、(II)カルボキシル基を有するアルコールやアルデヒドあるいはチオール等を連鎖移動剤として共存させてビニルエステル系化合物を重合した後にケン化する方法等を挙げることができる。
(I)または(II)の方法におけるビニルエステル系化合物としては、前述のものを用いることができるが、酢酸ビニルを用いることが好ましい。
上記(I)の方法におけるカルボキシル基を有する不飽和単量体としては、エチレン性不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等)、又はエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル(マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等)、又はエチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル(マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル等)〔但し、これらのジエステルは共重合体のケン化時に加水分解によりカルボキシル基に変化することが必要である〕、又はエチレン性不飽和カルボン酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)、あるいはエチレン性不飽和モノカルボン酸((メタ)アクリル酸、クロトン酸等)等の単量体、及びそれらの塩が挙げられる。
なかでもマレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、マレイン酸塩、無水マレイン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、(メタ)アクリル酸等を用いることが好ましく、特には、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、マレイン酸塩、無水マレイン酸を用いることが好ましく、更にはマレイン酸モノアルキルエステルを用いることが好ましい。
上記(II)の方法においては、特に連鎖移動効果の大きいチオールに由来する化合物が有効であり、以下の化合物及びそれらの塩が挙げられる。
[但し、上記一般式(1)、(2)において、nは0〜5の整数で、R1、R2、R3はそれぞれ水素原子又は低級アルキル基(置換基を含んでもよい)を示す。]
[但し、上記一般式(3)において、nは0〜20の整数である。]
具体的にはメルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトステアリン酸等が挙げられる。
なお、上記カルボキシル基を有する不飽和単量体、ビニルエステル系化合物以外に、その他の一般の単量体を、水溶性を損なわない範囲で含有させて重合を行なっても良く、これらの単量体としては、例えば、飽和カルボン酸のアリルエステル、α−オレフィン、アルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、その他、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニル等を用いることができる。
また、上記カルボキシル基変性PVA系樹脂の製造方法としては、上記方法に限らず、例えばポリビニルアルコール(部分ケン化物又は完全ケン化物)にジカルボン酸、アルデヒドカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸等の水酸基と反応性のある官能基をもつカルボキシル基含有化合物を後反応させる方法等も実施可能である。
また、スルホン酸基で変性されたスルホン酸変性PVA系樹脂を用いる場合は、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の共重合成分を、ビニルエステル系化合物と共重合した後、ケン化する方法、ビニルスルホン酸もしくはその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸もしくはその塩等をPVAにマイケル付加させる方法等により製造することができる。
一方、上記未変性PVAを後変性する方法としては、未変性PVAをアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等が挙げられる。
本発明のPVA系樹脂(A)の平均ケン化度は、80モル%以上であることが好ましく、更に好ましくは82〜99.9モル%、特に好ましくは85〜99.5モル%、殊に好ましくは90〜99.0モル%である。かかる平均ケン化度が小さすぎると、包装対象の薬剤のpHによっては経時的にフィルムの溶解性が低下する傾向がある。
特に、本発明において、PVA系樹脂(A)として未変性PVAを用いる場合には、その平均ケン化度は、80モル%以上であることが好ましく、更に好ましくは82〜99モル%、特に好ましくは85〜90モル%である。かかる平均ケン化度が小さすぎると、水溶性が低下する傾向がある。なお、平均ケン化度が大きすぎても水溶性が低下する傾向がある。
一方、PVA系樹脂(A)として変性PVA系樹脂を用いる場合には、その平均ケン化度は、80モル%以上であることが好ましく、更に好ましくは85〜99.9モル%、特に好ましくは90〜99.0モル%である。かかる平均ケン化度が小さすぎると、包装対象の薬剤のpHによっては経時的にフィルムの溶解性が低下する傾向がある。なお、平均ケン化度が大きすぎると製膜時の熱履歴により水への溶解性が大きく低下する傾向がある。
さらに、PVA系樹脂(A)として、アニオン性基変性PVA系樹脂を用いる場合には、その平均ケン化度は、85モル%以上であることが好ましく、更に好ましくは88〜99.9モル%、特に好ましくは90〜99.5モル%、殊に好ましくは90〜99.0モル%である。
また、本発明のPVA系樹脂(A)の20℃における4重量%水溶液粘度は10〜50mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは15〜45mPa・s、特に好ましくは20〜40mPa・sである。かかる粘度が小さすぎると、包装材料としてのフィルムの機械的強度が低下する傾向があり、大きすぎると製膜時の水溶液粘度が高く生産性が低下する傾向がある。
本発明において、上記アニオン性基変性PVA系樹脂の変性量は、1〜10モル%であることが好ましく、更に好ましくは2〜9モル%、特に好ましくは2〜8モル%である。かかる変性量が少なすぎると、水に対する溶解性が低下する傾向があり、多すぎるとPVA系樹脂の生産性が低下したり、生分解性が低下する傾向があり、また、ブロッキングを引き起こしやすくなる傾向がある。
本発明において、上記のPVA系樹脂(A)はそれぞれ単独で用いることもできるし、また、未変性PVA同士を併用すること、変性PVA系樹脂同士を併用すること、未変性PVAと変性PVA系樹脂を併用すること、更に、ケン化度、粘度、変性種、変性量等が異なる2種以上を併用することなどもできる。
本発明においては、PVA系樹脂(A)が、溶解性を長く保持できる点で、変性PVA系樹脂であることが好ましく、更にはアニオン性基変性PVA系樹脂であることが好ましく、特にはカルボキシル基変性PVA系樹脂であることが好ましい。また、フィルム強度の点からは、アニオン性基変性PVA系樹脂と未変性PVAを含有することが好ましく、特にはカルボキシル基変性PVA系樹脂と未変性PVAを含有することが好ましい。
変性PVA系樹脂と未変性PVAを併用する場合における含有割合(重量比)については、変性PVA系樹脂/未変性PVA=95/5〜60/40であることが好ましく、更に好ましくは94/6〜70/30、特に好ましくは93/7〜80/20である。未変性PVAの含有割合が少なすぎると水シール性が低下する傾向があり、変性PVA系樹脂の含有割合が小さすぎると溶解性が低下する傾向がある。
また、変性PVA系樹脂と未変性PVAを併用する場合において、未変性PVAは、特に20℃における4重量%水溶液粘度が、5〜50mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは10〜45mPa・s、特に好ましくは12〜40mPa・s、殊に好ましくは15〜35mPa・sである。かかる粘度が小さすぎると、包装材料としてのフィルムの機械的強度が低下する傾向があり、一方、大きすぎると製膜時の水溶液粘度が高く生産性が低下する傾向がある。
上記の平均ケン化度は、JIS K 6726 3.5に準拠して測定され、4重量%水溶液粘度は、JIS K 6726 3.11.2に準じて測定される。
〔可塑剤(B)〕
本発明のPVA系水溶性フィルムにおいては、さらに可塑剤(B)を含有させることがフィルムに柔軟性や、成形容易性を付与する点で好ましい。可塑剤(B)は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、2種以上を併用することが、包装体として用いる場合のフィルム自身の強靭さや、特に液体洗剤を包装した際の包装体の経時的な形状安定性の点で好ましい。
かかる可塑剤(B)を2種以上併用する場合、融点が80℃以上である多価アルコール(B1)(以下、「可塑剤(B1)」と略記することがある。)、および融点が50℃以下である多価アルコール(B2)(以下、「可塑剤(B2)」と略記することがある。)の2種の可塑剤を用いることが、水溶性フィルム製造時や包装体製造時の強靭さ及び液体薬剤用の包装体とした際の経時的な形状安定性の点で好ましい。
上記の融点が80℃以上である多価アルコール(B1)、すなわち可塑剤(B1)としては、糖アルコール、単糖類、多糖類の多くが適用可能であるが、なかでも、例えば、サリチルアルコール(83℃)、カテコール(105℃)、レゾルシノール(110℃)、ヒドロキノン(172℃)、ビスフェノールA(158℃)、ビスフェノールF(162℃)、ネオペンチルグリコール(127℃)等の2価アルコール、フロログルシノール(218℃)等の3価アルコール、エリスリトール(121℃)、トレイトール(88℃)、ペンタエリスリトール(260℃)等の4価アルコール、キシリトール(92℃)、アラビトール(103℃)、フシトール(153℃)、グルコース(146℃)、フルクトース(104℃)等の5価アルコール、マンニトール(166℃)、ソルビトール(95℃)、イノシトール(225℃)等の6価アルコール、ラクチトール(146℃)、スクロース(186℃)、トレハロース(97℃)等の8価アルコール、マルチトール(145℃)等の9価以上のアルコールがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、上記( )内は、各化合物の融点を示す。
上記のなかでも、水溶性フィルムの引張強度の点で融点が85℃以上、特には90℃以上のものが好ましい。なお、融点の上限は通常300℃、特には200℃が好ましい。
更に、本発明では、可塑剤(B1)のなかでも、1分子中の水酸基の数が4個以上であることがPVA系樹脂との相溶性の点で好ましく、特に好ましくは5〜10個、更に好ましくは6〜8個であり、具体的には、例えば、ソルビトール、スクロース、トレハロース等が好適なものとしてあげられる。
また、本発明においては、水溶性フィルムの張りの点で、可塑剤(B1)の分子量が150以上であることが好ましく、特に好ましくは160〜500、更に好ましくは180〜400であり、具体的には、例えば、ソルビトール、スクロース等が好適なものとしてあげられる。
一方、融点が50℃以下である多価アルコール(B2)、すなわち可塑剤(B2)としては、脂肪族系アルコールの多くが適用可能であり、例えば、好ましくはエチレングリコール(−13℃)、ジエチレングリコール(−11℃)、トリエチレングリコール(−7℃)、プロピレングリコール(−59℃)、テトラエチレングリコール(−5.6℃)、1,3−プロパンジオール(−27℃)、1,4−ブタンジオール(20℃)、1,6−ヘキサンジオール(40℃)、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール等の2価アルコール、グリセリン(18℃)、ジグリセリン、トリエタノールアミン(21℃)等の3価以上のアルコールがあげられる。そして、水溶性フィルムの柔軟性の点で融点が30℃以下、特には20℃以下のものが好ましい。なお、融点の下限は通常−80℃であり、好ましくは−10℃、特に好ましくは0℃である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、上記( )内は、各化合物の融点を示す。
更に、本発明では、可塑剤(B2)のなかでも、1分子中の水酸基の数が4個以下、特には3個以下であることが室温(25℃)近傍での柔軟性を制御しやすい点で好ましく、具体的には、例えば、グリセリン等が好適である。
また、本発明においては、可塑剤(B2)として、柔軟性を制御しやすい点で、分子量が100以下であることが好ましく、特には50〜100、更には60〜95であることが好ましく、具体的には、例えば、グリセリン等が好適である。
本発明においては、上記の可塑剤(B1)や(B2)以外の可塑剤(B3)を併用することもでき、かかる可塑剤(B3)としては、例えば、トリメチロールプロパン(58℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、カルビトール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類、ジブチルエーテル等のエーテル類、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ソルビン酸、クエン酸、アジピン酸等のカルボン酸類、シクロヘキサノン等のケトン類、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、イミダゾール化合物等のアミン類、アラニン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、システイン等のアミノ酸類等があげられる。
耐カール性に優れる点や強度と柔軟性のバランスが良い点からは、可塑剤(B1)と(B2)に加えて、さらに可塑剤(B3)として融点が50℃により大きく80℃未満である多価アルコールの3種類の可塑剤を用いることが好ましく、特には可塑剤(B3)としてトリメチロールプロパンを用いることが好ましい。
本発明において、可塑剤(B)の含有量は、PVA系樹脂(A)100重量部に対して、5重量部以上であることが好ましく、特に好ましくは5〜70重量部、更に好ましくは8〜60重量部、殊に好ましくは10〜50重量部である。かかる可塑剤(B)の含有量が少なすぎると液体洗剤などの液体を包装して包装体とした場合に経時的な形状安定性が低下する傾向がある。なお、多すぎると機械強度が低下したり、ブロッキングが生じやすくなる傾向がある。
また、上記の可塑剤(B1)と可塑剤(B2)について、その含有重量割合(B1/B2)が0.1〜5であることが好ましく、特に好ましくは0.2〜4.5、更に好ましくは0.5〜4、殊に好ましくは0.7〜3である。かかる含有割合が小さすぎると水溶性フィルムが柔らかくなり過ぎて、ブロッキングが生じやすくなる傾向があり、大きすぎると水溶性フィルムが硬くなりすぎる傾向があり、低湿環境下で脆くなる傾向がある。
また、上記の可塑剤(B1)と可塑剤(B2)の含有量としては、PVA系樹脂(A)100重量部に対して、可塑剤(B1)が5〜40重量部であることが好ましく、特に好ましくは8〜30重量部、更に好ましくは10〜25重量部であり、また可塑剤(B2)が5〜40重量部であることが好ましく、特に好ましくは10〜35重量部、更に好ましくは15〜30重量部である。
かかる可塑剤(B1)が少なすぎると水溶性フィルムが硬くなりすぎる傾向があり、多すぎると水溶性フィルムが柔らかくなりすぎる傾向がある。また、可塑剤(B2)が少なすぎると水溶性フィルムが硬くなりすぎる傾向があり、低湿環境下で脆くなる傾向があり、多すぎると水溶性フィルムが柔らかくなり過ぎて、ブロッキングが生じやすくなる傾向がある。
更に、可塑剤(B)全体に対して、可塑剤(B1)及び可塑剤(B2)の合計量が70重量%以上であることが好ましく、特には80重量%以上、更には85重量%以上であることが好ましい。かかる可塑剤(B1)と(B2)の合計量が少なすぎると機械強度が低下する傾向がある。
また、上記の可塑剤(B1)と可塑剤(B2)に加えて、可塑剤(B3)を併用する場合において、可塑剤(B1)、(B2)、(B3)の相互の割合については、可塑剤(B1)、(B2)、(B3)の合計量に対する可塑剤(B3)の含有割合が、20重量%以下であることが好ましく、特には、成形容易性、耐ピンホール性および耐破袋性の点から0.5〜18重量%であることが好ましく、更に好ましくは2〜15重量%、殊に好ましくは4〜13重量%である。可塑剤(B3)の含有割合が大きすぎると、常温時と高温時のフィルムの状態変化が大きくなり耐ピンホール性および耐破袋性が低下するおそれがある。
本発明においては、必要に応じて、更に、フィラー(C)や界面活性剤(D)等を含有させることができる。
上記フィラー(C)は、耐ブロッキング性の目的で含有されるものであり、有機フィラー(C1)や無機フィラー(C2)があげられるが、なかでも有機フィラー(C1)が好適に用いられる。また、包装体作製時の水シール性改良の点からは、有機フィラー(C1)と無機フィラー(C2)の両方を併用することが好ましい。
本発明で用いられる有機フィラー(C1)とは、有機化合物で構成された針状・棒状、層状、鱗片状、球状などの任意の形状からなる粒子状物質(1次粒子)、もしくはその粒子状物質の集合体(2次粒子)のことを示す。
かかる有機フィラー(C1)としては、主に高分子化合物の中から選択され、例えば、メラミン系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂の他、澱粉、ポリ乳酸等の生分解性樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、ポリメチル(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、澱粉、等の生分解性樹脂が好ましく、特にはPVAに対する分散性の点から澱粉が好ましい。
上記の澱粉としては、例えば、生澱粉(トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、コムギ澱粉、キッサバ澱粉、サゴ澱粉、タピオカ澱粉、モロコシ澱粉、コメ澱粉、マメ澱粉、クズ澱粉、ワラビ澱粉、ハス澱粉、ヒシ澱粉等)、物理的変性澱粉(α−澱粉、分別アミロース、湿熱処理澱粉等)、酵素変性澱粉(加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロース等)、化学分解変性澱粉(酸処理澱粉、次亜塩素酸酸化澱粉、ジアルデヒド澱粉等)、化学変性澱粉誘導体(エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン化澱粉、架橋澱粉等)等が挙げられる。なかでも入手の容易さや経済性の点から、生澱粉、とりわけトウモロコシ澱粉、コメ澱粉を用いることが好ましい。
有機フィラー(C1)の平均粒子径は、5〜50μmであることが好ましく、更に好ましくは10〜40μm、特に好ましくは15〜35μmである。かかる平均粒子径が小さすぎるとフィルムのブロッキング性が高くなる傾向があり、大きすぎるとフィラー同士が凝集しやすくなり分散性が低下したり、フィルムを成形加工時に引き伸ばした際にピンホールとなる傾向がある。
なお、有機フィラー(C1)の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した値であり、得られた累計体積分布のD50値(累積50%の粒子径)より算出したものである。
本発明で用いられる無機フィラー(C2)とは、無機化合物で構成された針状・棒状、層状、鱗片状、球状などの任意の形状からなる粒子状物質(1次粒子)、もしくはその粒子状物質の集合体(2次粒子)のことを示す。
無機フィラー(C2)としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、珪藻土、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化亜鉛等の酸化物系無機化合物や、タルク、クレー、カオリン、雲母、アスベスト、石膏、グラファイト、ガラスバルーン、ガラスビーズ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ウイスカー状炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドーソナイト、ドロマイト、チタン酸カリウム、カーボンブラック、ガラス繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、加工鉱物繊維、炭素繊維、炭素中空球、ベントナイト、モンモリロナイト、銅粉、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アルミニウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、クロム酸カリウム等が挙げられる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
なかでも、PVA系樹脂との水素結合作用に優れ、水シール性の向上効果が高くなる点から、酸化物系無機化合物、タルクを用いることが好ましく、特に好ましくは酸化チタン、タルク、シリカを用いることが好ましく、更には、シリカを用いることが好ましい。
無機フィラー(C2)の平均粒子径は、1〜20μmであることが好ましく、特に好ましくは2〜15μm、更に好ましくは3〜10μmである。かかる平均粒子径が小さすぎるとフィルムのブロッキング性が高くなる、フィルムの柔軟性や靭性が低下するなどの傾向があり、大きすぎると水シール性向上の作用効果が得られにくい傾向がある。
なお、無機フィラー(C2)の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した値であり、得られた累計体積分布のD50値(累積50%の粒子径)より算出したものである。
上記フィラー(C)の含有量は、PVA樹脂(A)100重量部に対して1〜30重量部であることが好ましく、特に好ましくは2〜25重量部、更に好ましくは2.5〜20重量部である。かかる含有割合が少なすぎるとブロッキング性が高くなる傾向があり、多すぎるとフィルムの柔軟性や靱性が低下する傾向がある。
有機フィラー(C1)と無機フィラー(C2)を併用する場合においては、有機フィラー(C1)と無機フィラー(C2)の含有比率(重量比:C1/C2)が2〜15であることが好ましく、特に好ましくは3〜13、更に好ましくは4〜10である。無機フィラー(C2)に対する有機フィラー(C1)の含有量が小さすぎると、フィルムの柔軟性や靱性が低下して、良好な包装体が得られにくくなる傾向があり、無機フィラー(C2)に対する有機フィラー(C1)の含有量が大きすぎると水シール性が低下する傾向がある。
本発明で用いられる界面活性剤(D)としては、水溶性フィルム製造時のキャスト面からの剥離性改善の目的で含有されるものであり、通常、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が挙げられる。例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なかでも、製造安定性の点でポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルが好適である。
かかる界面活性剤(D)の含有量については、PVA系樹脂(A)100重量部に対して0.01〜3重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜2.5重量部、更に好ましくは0.5〜2重量部である。かかる含有量が少なすぎると製膜装置のキャスト面と製膜した水溶性フィルムとの剥離性が低下して生産性が低下する傾向があり、多すぎると水溶性フィルムを包装体とする場合に実施するシール時の接着強度が低下する等の不都合を生じる傾向がある。
なお、発明の目的を阻害しない範囲で、更に他の水溶性高分子(例えば、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キトサン、キチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)や、香料、防錆剤、着色剤、増量剤、消泡剤、紫外線吸収剤、流動パラフィン類、蛍光増白剤、苦味成分(例えば、安息香酸デナトニウム等)等を含有させることも可能である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
また、本発明においては、黄変抑制の点で酸化防止剤を配合することが好ましい。かかる酸化防止剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム等の亜硫酸塩、酒石酸、アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、テコール、ロンガリット等が挙げられ、なかでも亜硫酸塩、特には亜硫酸ナトリウムが好ましい。かかる配合量はPVA系樹脂(A)100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.2〜5重量部、更に好ましくは0.3〜3重量部である。
<PVA系水溶性フィルムの製造>
本発明のPVA系水溶性フィルムは、例えば下記の方法で製造することができる。
まず、上記のPVA系樹脂(A)、好ましくは更に可塑剤(B)、必要に応じて更に、フィラー(C)及び界面活性剤(D)等を含有してなるPVA系樹脂組成物を得て、かかるPVA系樹脂組成物を、[I]溶解工程、[II]製膜工程、[III]巻取工程、の順序で製造してPVA系水溶性フィルムとする。
〔[I]溶解工程〕
溶解工程では、上記PVA系樹脂組成物を水で溶解または分散して、PVA系樹脂水溶液(製膜原料)を調製する。
上記PVA系樹脂組成物を水に溶解する際の溶解方法としては、通常、常温溶解、高温溶解、加圧溶解等が採用され、なかでも、未溶解物が少なく、生産性に優れる点から高温溶解、加圧溶解が好ましい。
溶解温度としては、高温溶解の場合には、通常80〜100℃、好ましくは90〜100℃であり、加圧溶解の場合には、通常80〜130℃、好ましくは90〜120℃である。
溶解時間としては、溶解温度、溶解時の圧力により適宜調整すればよいが、通常1〜20時間、好ましくは2〜15時間、特に好ましくは3〜10時間である。溶解時間が短すぎると未溶解物が残る傾向にあり、長すぎると生産性が低下する傾向にある。
また、溶解工程において、撹拌翼としては、例えば、パドル、フルゾーン、マックスブレンド、ツイスター、アンカー、リボン、プロペラ等が挙げられる。
更に、溶解した後、得られたPVA系樹脂水溶液に対して脱泡処理が行われるが、かかる脱泡方法としては、例えば、静置脱泡、真空脱泡、二軸押出脱泡等が挙げられる。なかでも静置脱泡、二軸押出脱泡が好ましい。
静置脱泡の温度としては、通常50〜100℃、好ましくは70〜95℃であり、脱泡時間は、通常2〜30時間、好ましくは5〜20時間である。
かかる製膜原料の固形分濃度は、10〜50重量%であることが好ましく、特に好ましくは15〜40重量%、更に好ましくは20〜35重量%である。かかる濃度が低すぎるとフィルムの生産性が低下する傾向があり、高すぎると粘度が高くなりすぎ、製膜原料の脱泡に時間を要したり、フィルム製膜時にダイラインが発生したりする傾向がある。
〔[II]製膜工程〕
製膜工程では、溶解工程で調製した製膜原料を膜状に賦形し、必要に応じて乾燥処理を施すことで、水分率を15重量%以下にしたPVA系水溶性フィルムに調整する。
製膜に当たっては、例えば、溶融押出法や流延法等の方法を採用することができ、膜厚の精度の点で流延法が好ましい。
流延法を行うに際しては、例えば、上記製膜原料を、(i)アプリケーター、バーコーター等を用いてギャップ間に通過させて金属表面等のキャスト面に流延する方法、(ii)T型スリットダイ等のスリットから吐出させ、エンドレスベルトやドラムロールの金属表面等のキャスト面に流延する方法、などにより製膜原料を流延し、乾燥することにより本発明のPVA系水溶性フィルムを製造することができる。
T型スリットダイ等の製膜原料吐出部における製膜原料の温度は、60〜98℃であることが好ましく、特に好ましくは70〜95℃である。かかる温度が低すぎると製膜原料の粘度が増加してPVA系水溶性フィルムの生産性が低下する傾向があり、高すぎると発泡等が生じる傾向がある。
流延後、キャスト面上で製膜原料を乾燥させるのであるが、乾燥にあたっては、通常、エンドレスベルトやドラムロールの金属表面等のキャスト面を加熱することにより行う。上記キャスト面の表面温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に好ましくは60〜140℃である。かかる表面温度が低すぎると、乾燥不足でフィルムの含水率が高くなり、ブロッキングしやすくなる傾向があり、高すぎると製膜原料が発泡し、製膜不良となる傾向がある。
また、製膜時の乾燥においては、熱ロールによる乾燥、フローティングドライヤーを用いてフィルムに熱風を吹き付ける乾燥や遠赤外線装置、誘電加熱装置による乾燥等を併用することもできる。
上記の乾燥処理で製膜原料を水分率が15重量%以下になるまで乾燥した後、キャスト面から剥離すること(キャスト面から剥離後に更に熱ロールによる乾燥を行う場合は、乾燥熱ロールから剥離すること)でPVA系水溶性フィルムが得られる。キャスト面(または、乾燥熱ロール)から剥離されたPVA系水溶性フィルムは、10〜35℃の環境下で冷却されながら搬送される。
また、本発明の水溶性フィルムの表面はプレーンであってもよいが、耐ブロッキング性、加工時の滑り性、製品同士の密着性軽減、及び外観の点から、水溶性フィルムの片面或いは両面にエンボス模様や微細凹凸模様、特殊彫刻柄等の凹凸加工を施しておくことも好ましい。
かかる凹凸加工に際しては、加工温度は、通常60〜150℃であり、好ましくは80〜140℃である。加工圧力は、通常2〜8MPa、好ましくは3〜7MPaである。加工時間は、上記加工圧力、製膜速度にもよるが、通常0.01〜5秒であり、好ましくは0.1〜3秒である。
また、必要に応じて、凹凸加工処理の後に、熱によるフィルムの意図しない延伸を防止するために、冷却処理を施してもよい。
〔[III]巻取工程〕
巻取工程では、製膜工程でキャスト面等から剥離したPVA系水溶性フィルムを搬送して巻き取り、芯管(S1)に巻き取ることによりフィルムロールに調製する。
得られたフィルムロールは、そのまま製品として供給することもできるが、好ましくは巻き取ったPVA系水溶性フィルムを所望のサイズ幅にスリットした後、フィルム幅に見合った長さの芯管(S2)に巻き取り直し、所望のサイズのフィルムロールとして供給することもできる。
PVA系水溶性フィルムを巻き取る芯管(S1)は円筒状のもので、その材質は金属、プラスチック等、適宜選択できるが、堅牢性、強度の点で金属であることが好ましい。
芯管(S1)の内径は、3〜30cmが好ましく、特に好ましくは10〜20cmである。
芯管(S1)の肉厚は、1〜30mmが好ましく、特に好ましくは2〜25mmである。
芯管(S1)の長さは、PVA系水溶性フィルムの幅より長くすることが必要で、フィルムロールの端部から1〜50cm突出するようにするのが好ましい。
また、芯管(S2)は円筒状のもので、その材質は紙や金属、プラスチック等、適宜選択できるが、軽量化及び取扱いの点で紙であることが好ましい。
芯管(S2)の内径は、3〜30cmが好ましく、特に好ましくは10〜20cmである。
芯管(S2)の肉厚は、1〜30mmが好ましく、特に好ましくは3〜25mmである。
芯管(S2)の長さは、製品のPVA系水溶性フィルム幅と同等或いはそれ以上の長さのものであればよく、好ましくは同等〜50cm長いものである。
芯管(S2)に巻き取る際には、PVA系水溶性フィルムは所望の幅にスリットされる。
かかるスリットに当たっては、シェア刃やレザー刃などを用いてスリットされるが、好ましくはシェア刃でスリットすることがスリット断面の平滑性の点で好ましい。
本発明の特定の水分率の規定を満たすPVA系水溶性フィルムは、かかるフィルムの製造工程において、[III]巻取工程で所望の幅にフィルムをスリットした後に、フィルムに対して特定の熱処理を行うことにより製造することができる。
フィルムの幅方向における水分率x(重量%)の最大値xmaxと最小値xminの差を調整するに際しては、[III]巻取工程で所望の幅にフィルムをスリットした後で、フィルムの幅方向の両端部に対して、熱処理温度80〜130℃、熱処理幅を端部から10〜150mmとして、局部的に熱処理を行うことで調整される。
以下、フィルム両端部を局部的に熱処理する方法について説明する。
本発明におけるフィルム両端部への熱処理は、製膜時の乾燥とは別に[III]巻取工程で行うものであり、フィルム両端部から特定範囲にのみ適度な熱履歴を与えることによって、薬剤包装体に用いた際の製品得率を維持しつつ、かつ幅方向の残留応力を取り除くことでカール抑制効果を得ることが可能となる。
本発明においては、フィルム両端部から特定範囲にのみ熱履歴を与えることが重要である。
フィルム両端部の熱処理幅としては、端部から10〜150mmの範囲であることが好ましく、特に好ましくは30〜140mm、更に好ましくは60〜130mmである。フィルム両端部の熱処理幅が長すぎるとフィルム巻取時にシワやたるみが発生しやすくなる傾向があり、フィルム両端部の熱処理幅が短すぎるとフィルムへの熱処理範囲が少なくなり十分なカール抑制効果が得られない傾向にある。
フィルム両端部の熱処理温度としては、80〜130℃であることが好ましく、特に好ましくは85〜120℃、更に好ましくは90〜110℃である。フィルム両端部の熱処理温度が高すぎると熱処理領域でのシール強度不足やフィルム溶解性の低下が生じる傾向があり、フィルム両端部の熱処理温度が低すぎるとフィルムへの供給熱量が少なくなり十分なカール抑制効果が得られない傾向にある。
フィルム両端部の熱処理時間としては、1〜60秒であることが好ましく、特に好ましくは2〜20秒、更に好ましくは3〜10秒である。フィルム両端部の熱処理温度が長すぎると熱処理領域でシール強度不足やフィルム溶解性の低下が生じる傾向があり、フィルム両端部の熱処理温度が短すぎるとフィルムへの供給熱量が少なくなり十分なカール抑制効果が得られない傾向にある。
かかるフィルム両端部の熱処理温度と時間は、フィルム溶解性低下の抑制と生産性を向上させる観点から高温で短時間の熱処理を行うことが好ましく、好ましくは90〜130℃で1〜15秒、特に好ましくは95〜120℃で3〜10秒である。
フィルム両端部を局部的に熱処理する方法としては、(a)フィルム両端部にのみ加熱した金属ロール(熱ロール)を接触させる方法、(a)フィルム両端部にのみ加熱した金属板に接触させる方法、(c)フィルム両端部にのみ熱風を吹き付ける方法、(d)フィルム両端部にのみ赤外線照射、遠赤外線照射、高周波誘電によって加熱する方法、などを適用できるが、(a)の熱ロールを用いて行うことが簡便かつフィルム生産性に優れる点で好ましい。なお、熱ロールは複数本用いることもできる。
本発明において、フィルム両端部を局部的に熱処理する際には、2面あるフィルムのうち、キャスト面(エンドレスベルトやドラムロールの金属表面等)と接触するフィルム面側(β面側)とは反対のフィルム面側(α面側)に熱処理を施すことが好ましく、特に好ましくはフィルムのα面が熱ロール(熱処理装置部分)と接触することが、フィルムのカール抑制の点で好ましい。
本発明において、上記PVA系水溶性フィルムの製造は、10〜35℃、特には15〜30℃の環境下にて行うことが好ましく、湿度については、通常70%RH以下であることが好ましい。
このようにして、本発明のPVA系水溶性フィルムを製造することができる。
本発明のPVA系水溶性フィルムの厚みは、好ましくは10〜120μmであり、特に好ましくは30〜110μm、更に好ましくは60〜100μmである。かかる厚みが薄すぎるとフィルムの機械的強度が低下する傾向があり、厚すぎると水への溶解速度が遅くなる傾向があり、製膜効率も低下する傾向がある。
また、本発明のPVA系水溶性フィルムの幅は、好ましくは100〜5000mmであり、特に好ましくは200〜2000mm、更に好ましくは300〜1000mmである。かかる幅が狭すぎると生産効率が低下する傾向があり、広すぎると弛みや膜厚の制御が困難になる傾向がある。
さらに、本発明のPVA系水溶性フィルムの長さとしては、用途等により適宜選択されるものであるが、好ましくは100〜20000m、特に好ましくは800〜15000m、更に好ましくは1000〜10000mである。かかる長さが短すぎるとフィルムの切り替えに手間を要する傾向があり、長すぎると巻き締まりによる外観不良や重量が重くなりすぎる傾向がある。
本発明のPVA系水溶性フィルムを芯管に巻き取って得られたフィルムロールは、水蒸気バリア性樹脂の包装フィルムで包装することが好ましく、かかるフィルムとしては特に限定されないが、透湿度が10g/m/日(JIS Z 0208に準じて測定)以下のものが使用可能である。具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデンコートポリブロピレン、ガラス蒸着ポリエステル、等の単層フィルム、あるいはこれらの積層フィルム、または割布、紙、不織布との積層フィルム等が挙げられる。積層フィルムとしては、例えば、ガラス蒸着ポリエステルとポリエチレンの積層フィルム、ポリ塩化ビニリデンコートポリブロピレンとポリエチレンの積層フィルム等が例示される。
かかるフィルムは、帯電防止処理しておくことも異物の混入を防ぐ点で好ましく、帯電防止剤はフィルムに練り込まれていても、表面にコーティングされていても良い。練り込みの場合は樹脂に対して0.01〜5重量%程度、表面コーティングの場合は0.01〜1g/m程度の帯電防止剤が使用される。
帯電防止剤としては、例えば、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、高級脂肪酸アルカノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル等が使用される。
また、フィルムロールを水蒸気バリア性樹脂の包装フィルムで包装した上から、更にアルミニウム素材からなる包装フィルムを包装することが好ましく、かかるフィルムとしては、アルミニウム箔、アルミニウム箔と耐湿性プラスチックフィルムの積層フィルム(例えばアルミニウム箔とポリエチレンフィルムの積層フィルム)、アルミニウム蒸着フィルムと耐湿性プラスチックフィルムの積層フィルム(例えばアルミニウム蒸着ポリエステルフィルムとポリエチレンフィルムの積層フィルム)、アルミナ蒸着フィルムと耐湿性プラスチックフィルムの積層フィルム(例えばアルミナ蒸着ポリエステルフィルムとポリエチレンフィルムの積層フィルム)等が挙げられ、本発明では特に、アルミニウム箔とポリオレフィンフィルムの積層フィルム、アルミニウム蒸着フィルムとポリオレフィンフィルムの積層フィルムが有用で、特には延伸ポリプロピレンフィルム/ポリエチレンフィルム/アルミニウム箔/ポリエチレンフィルムの構成よりなる積層フィルム、延伸ポリプロピレンフィルム/低密度ポリエチレンフィルム/アルミニウム箔の構成よりなる積層フィルム等が有用である。
包装に当たっては内側の水蒸気バリア性樹脂の包装フィルム、外側のアルミニウム素材からなる包装フィルムで順次包装を行い、幅方向に余った部分を芯管に押し込むことが好ましい。
フィルムロールには、端部の傷付きやゴミ等の異物の付着を防止するため、直接、あるいは包装の後、フィルムロールの両端部に芯管貫通孔をもつ保護パッドを装着させることができる。
保護パッドの形状は、フィルムロールにあわせて、円盤状のシート、フィルムが実用的である。保護効果を顕著にするため発泡体、織物状、不織布状等の緩衝機能を付加させるが好ましい。また、湿度からフィルムロールを守るため乾燥剤を別途封入したり、前記保護パッドに積層または混入したりしておくこともできる。
保護パッドの素材はプラスチックが好ましく、その具体例としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
また、上記乾燥剤入りの保護パッドとしては、例えば、塩化カルシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブス、糖類、特に浸透圧の高い糖類、吸水性樹脂等の乾燥剤または吸水剤を天然セルロース類、合成セルロース類、ガラスクロス、不織布等の成形可能な材料に分散、含浸、塗布乾燥した吸湿層としたもの、これらの吸湿剤または吸水剤を上記の成形可能な材料やポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、テフロン(登録商標)フィルム等の熱可塑性樹脂フィルムでサンドイッチ状に挟んだりしたものが挙げられる。
市販されているシート状乾燥剤の例としては、アイディ社製の「アイディシート」や品川化成社製の「アローシート」、「ゼオシート」、ハイシート工業社製の「ハイシートドライ」等がある。
かかる手段によって包装されたフィルムロールは、芯管の両端突出部にブラケット(支持板)を設けたり、該両端突出部を架台に載置したりして支えられ、接地することなく、いわゆる宙に浮いた状態で保管や輸送が行われることが好ましい。フィルムの幅が比較的小さい場合はブラケットが使用され、フィルムの幅が比較的大きい場合は架台が使用される。
ブラケットはベニヤ板やプラスチック板からなるものであり、その大きさは通常ブラケットの4辺がフィルムロールの直径より大きいものである。
そして、前記フィルムロールの両端の芯管突出部に一対のブラケットを互いに向かい合うように直立して配置、嵌合させフィルムロールにブラケットが設けられる。嵌合は、通常ブラケットの中央部に芯管直径よりやや大きめのくりぬき穴を設けたり、芯管が挿入し易いようにブラケットの上部から中心部までU字型にくりぬかれている。
ブラケットで支持されたフィルムロールは段ボール箱等のカートンに収納されて保管や輸送がされるが、収納時の作業を円滑にするため矩形のブラケットを使用するときはその四隅を切り落としておくことが好ましい。
また、上記一対のブラケットがぐらつかないように、両者を結束テープで固定することが好ましく、そのときテープの移動や弛みが起こらないようにブラケットの側面(厚み部分)にテープ幅と同程度のテープズレ防止溝を設けて置くのも実用的である。
包装したフィルムロールの保管または輸送にあたっては、極端な高温や低温、低湿度、高湿度条件を避けるのが望ましく、具体的には温度10〜30℃、湿度40〜75%RHであることが好ましい。
かくして得られる本発明のPVA系水溶性フィルムは冷水溶解性に優れ、機械特性も良好であるため薬剤等の個包装用途に有用である。
<薬剤包装体>
本発明の薬剤包装体は、本発明のPVA系水溶性フィルムで薬剤を内包してなる包装体である。水溶性のPVA系フィルムで包装されているため、包装体ごと水に投入し、PVA系水溶性フィルムが溶解した後に、薬剤が水に溶解または分散して、薬剤の効果を発現するため、1回分などの比較的少量の薬剤が包装されている薬剤包装体に好適である。
内包する薬剤としては、例えば、殺虫剤、殺菌剤、除草剤等の農薬、肥料、洗剤等が挙げられ、特に洗剤が好ましい。
薬剤の形状は、液体であっても固体であってもよく、液体の場合は、液状であり、固体の場合は、顆粒状、錠剤状、粉状等が挙げられる。薬剤は、水に溶解または分散させて用いる薬剤が好ましく、本発明においては、とりわけ液体洗剤を内包することが好ましい。
また、薬剤のpHは、アルカリ性、中性、酸性のいずれであっても良い。
上記薬剤包装体は、その表面は、通常平滑であることがあげられるが、耐ブロッキング性、加工時の滑り性、製品(包装体)同士の密着性軽減、及び外観の点から、包装体(PVA系水溶性フィルム)の外表面にエンボス模様や微細凹凸模様、特殊彫刻柄、等の凹凸加工が施されたものであってもよい。
以下、本発明の薬剤包装体の一例である液体洗剤包装体について述べる。
液体洗剤包装体は、保存の際には液体洗剤を内包した形状が保持されている。そして、使用時(洗濯時)には、包装体(水溶性フィルム)が水と接触することにより、包装体が溶解して内包されている液体洗剤が包装体から流出することとなる。
液体洗剤包装体の大きさは、通常長さ10〜50mm、好ましくは20〜40mmである。
また、PVA系水溶性フィルムからなる包装体のフィルムの厚みは、通常10〜120μm、好ましくは15〜110μm、特に好ましくは20〜100μmである。
内包される液体洗剤の量は、通常5〜50mL、好ましくは10〜40mLである。
本発明のPVA系水溶性フィルムを用いて、液体洗剤を包装して薬剤包装体とするに際しては、公知の方法を採用することができる。
例えば、2枚のPVA系水溶性フィルムを用いて貼り合わせることにより製造され、成型装置の下部にある金型の上に、フィルム(ボトムフィルム)を固定し、装置の上部にもフィルム(トップフィルム)を固定する。ボトムフィルムをドライヤーで加熱し、金型に真空成型し、その後、成型されたフィルムに液体洗剤を投入した後、トップフィルムとボトムフィルムを圧着する。圧着した後は真空を解放し、包装体を得ることができる。
フィルムの圧着方法としては、例えば、(1)熱シールする方法、(2)水シールする方法、(3)糊シールする方法などが挙げられ、なかでも(2)水シールする方法が汎用的で生産性に優れる点で好ましい。
液体洗剤としては制限はなく、アルカリ性、中性、酸性のいずれであってもよいが、フィルムの水溶性の点から、水に溶解または分散させた時のpH値が6〜14であることが好ましく、特には7〜11が好ましい。なお、上記pH値は、JIS K 3362 8.3に準拠して測定される。また、水分量は、JIS K 3362 7.21.3に準じて測定される。
また、液体洗剤の水分量が15重量%以下であることが好ましく、特には0.1〜10重量%、更には0.1〜7重量%であるものが好ましく、水溶性フィルムがゲル化したり不溶化することがなく水溶性に優れることとなる。
液体薬剤は、流動性で、容器に合わせて形を変える液状の薬剤であれば、その粘度は特に限定されないが、好ましくは10〜200mPa・sである。なお、かかる液体薬剤の粘度は、常温(20℃)下におけるB型回転粘度計にて測定される。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
<実施例1>
PVA系樹脂(A)として、20℃における4%水溶液粘度22mPa・s、平均ケン化度97モル%、マレイン酸モノメチルエステルによる変性量2.0モル%のカルボキシル基変性PVA(A1)を90部、20℃における4%水溶液粘度40mPa・s、平均ケン化度88モル%の未変性PVA(A2)を7部、20℃における4%水溶液粘度5mPa・s、平均ケン化度88モル%の未変性PVA(A3)を3部、可塑剤(B)としてソルビトール(b1)を20部及びグリセリン(b2)を20部、フィラー(C)として澱粉(平均粒子径20μm)を8部、界面活性剤(D)としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩を2部、及び水を混合して、固形分濃度25%の樹脂組成物の水分散液である製膜原料を得た。
そして、上記製膜原料を、ステンレス製のエンドレスベルトを備えたベルト製膜機のベルト上に流延し、110℃で乾燥させて、厚み87μm、幅1400mmのPVA系水溶性フィルムを得た。その後、得られたPVA系水溶性フィルムを搬送して内径15.24cm、長さ1.5mの芯管S1に巻き取り、長さ500mのフィルムロールとした。
ついで、スリッター機を用いて、フィルム幅を650mmにスリット加工した後、スリット後のPVA系水溶性フィルムの両端部にのみ幅100mmの範囲で表面温度を100℃にした熱ロールを5秒間接触させた。そして、局部的に熱処理したフィルムを搬送して内径15.24cm、長さ650mmの芯管S2に巻き取り、長さ500mのフィルムロールとした。
芯管S2に巻き取って得られたPVA系水溶性フィルムについて、フィルムの一方の端部から他方の端部までの幅方向に50mm間隔で水分率x(i=1〜13)を測定した結果、幅方向における水分率の最大値xmaxは9.5重量%、幅方向における水分率の最小値xminは8.6重量%、平均水分率Mは9.2重量%、標準偏差Sは0.44であった。
<実施例2>
実施例1においてフィルム両端部の熱処理幅を50mm、熱ロールの表面温度を110℃に変えた以外は同様にして、PVA系水溶性フィルムを得た。
得られたPVA系水溶性フィルムの幅方向における水分率の最大値xmaxは9.5重量%、幅方向における水分率の最小値xminは7.9重量%、平均水分率Mは9.3重量%、標準偏差Sは0.57であった。
<比較例1>
実施例1において、熱処理しなかった以外は同様にして、PVA系水溶性フィルムを得た。
得られたPVA系水溶性フィルムの幅方向における水分率の最大値xmaxは9.5重量%、幅方向における水分率の最小値xminは9.4重量%、平均水分率Mは9.5重量%、標準偏差Sは0.04であった。
<比較例2>
実施例1において、熱ロールの接触時間を30秒に変えた以外は同様にして、PVA系水溶性フィルムを得た。
得られたPVA系水溶性フィルムの幅方向における水分率の最大値xmaxは9.5重量%、幅方向における水分率の最小値xminは5.7重量%、平均水分率Mは8.3重量%、標準偏差Sは1.77であった。
<比較例3>
実施例1においてフィルム両端部の熱処理幅を5mmに変えた以外は同様にして、PVA系水溶性フィルムを得た。
得られたPVA系水溶性フィルムの幅方向における水分率の最大値xmaxは9.5重量%、幅方向における水分率の最小値xminは9.4重量%、平均水分率Mは9.5重量%、標準偏差Sは0.04であった。
<比較例4>
実施例1において熱処理幅をフィルム幅650mm全面に対して表面温度を100℃にした熱ロールを10秒間接触させた以外は同様にして、PVA系水溶性フィルムを得た。
得られたPVA系水溶性フィルムの幅方向における水分率の最大値xmaxは7.9重量%、幅方向における水分率の最小値xminは7.8重量%、平均水分率Mは7.9重量%、標準偏差Sは0.04であった。
上記実施例1,2、比較例1,2,3,4で得られたPVA系水溶性フィルムを用いて、下記に示す方法に従って、フィルムの物性を測定し、評価した。結果を下記の表1に示す。
〔PVA系水溶性フィルムの幅方向における水分率x〕
(評価方法)
得られたフィルム幅650mmのPVA系水溶性フィルムから、一方の端部から他方の端部まで幅方向に50mm間隔で50mm×50mmサイズにして水分率測定用の試料を計13個切り出した。切り出した各フィルム試料について、フィルム重量(W)を電子天秤で秤量したのち、フィルム試料を水分率0.03%以下の脱水メタノール15ml(S)内に浸漬させて室温,1時間の条件でフィルム内の水分を抽出した。カールフィッシャー水分計(京都電子工業社製、「MKA−610」)を用いて、容量滴定法によって抽出液10ml(E)の水分量を測定し、以下の式からフィルム水分率x(重量%)を算出した。
F: カールフィッシャー試薬の力価(mg/ml)
V: 抽出液10mlの滴定に用いたカールフィッシャー試薬量(ml)
B: 脱水メタノール10mlの滴定に用いたカールフィッシャー試薬量(ml)
W: 50mm×50mmサイズにしたフィルム試料の重量(g)
E: カールフィッシャー測定に使用した抽出液の量(ml)
S: フィルム試料の水分抽出に使用した脱水メタノールの量(ml)
〔耐カール性〕
(評価方法)
得られたフィルム幅650mmのPVA系水溶性フィルムを流れ方向300mmに切り出して、下(図1)のようにフィルムの幅方向の一辺を固定して、フィルムを23℃、50%RHの環境下に24時間ぶら下げた時に、下部から見たときのフィルムのカール径の長さ(A)を測定し、評価した。なお、両端でカール径が異なる場合は、数値の小さい方をカール径の長さ(A)として採用した。
カール形状が真円である場合には、真円の直径長さをカール径の長さ(A)とし、カール形状が楕円である場合には、楕円の長径長さ、短径長さを平均化した数値((長径長さ+短径長さ)/2で算出)をカール径の長さ(A)とした。
(図1)
(評価基準)
○・・・カール径の長さ(A)が15mm以上であり、
カールに伴うフィルム曲線変形が緩い
×・・・カール径の長さ(A)が15mm未満であり、
カールに伴うフィルム曲線変形が強い
〔水溶解性〕
(評価方法)
得られたフィルム幅650mmのPVA系水溶性フィルムから、一方の端部から他方の端部まで幅方向に50mm間隔で50mm×50mmサイズに計13個切り出した。切り出したフィルムをそれぞれ治具に固定した。リットルビーカーに水(1リットル)を入れ、スターラーにより撹拌(回転子長3cm、回転数200〜300rpm)しながら水温を20℃に保ちつつ、治具に固定したフィルムを水中に浸漬し、フィルムが溶解するまでの時間(秒)を測定し、下記の基準で評価した。なお、「溶解」の基準としては直径1mm以上の不溶微粒子の分散が見られない場合を溶解とした。
そして、フィルムの幅方向の水溶解性の全評価結果に対し溶解遅延を示した検体数の割合を算出し、溶解不良率(%)を求めた。
(評価基準)
易溶解性 ・・・溶解時間≦90秒
溶解遅延 ・・・溶解時間>90秒
溶解不良率(%)= 溶解遅延を示した検体数 /13 ×100
〔水シール性〕
(評価方法)
得られたフィルム幅650mmのPVA系水溶性フィルムから、一方の端部から他方の端部まで幅方向に50mm間隔で50mm×50mmサイズのPVA系水溶性フィルム(I)および、PVA系水溶性フィルム(I)と同一の区画から流れ方向と平行な一辺が70mm、幅方向と平行な一辺が15mmの長方形となるPVA系水溶性フィルム(II)をそれぞれ計13個づつ切り出した。
30cm角のガラス板上に、上記で切り出したPVA系水溶性フィルム(I)のキャスト面を上側にして載せ、水を充分に含ませた綿棒(ジャストネオ社製抗菌綿棒)でPVA系水溶性フィルム(I)に直径1cmの円形に水を1g/cm塗布した。その後、もう1枚の上記PVA系水溶性フィルム(II)のキャスト面側を、水で濡らした後5秒後のPVA系水溶性フィルム(I)の上に載せ、85gの重りをゆっくりのせてPVA系フィルム2枚を水シール(接着)した。
〔水シール部分の剥離強度測定〕
上記で水シールしたPVA系水溶性フィルムを5秒間放置したものについて、下部のPVA系水溶性フィルム(I)は基板ガラスに固定し、上部のPVA系水溶性フィルム(II)の端面に、ばねばかりを取り付け、上方に2mm/秒の速さで引っ張ることで、剥離強度(g/15mm)を測定し、下記の通り評価した。なお、測定は、23℃、40%RH環境下で行った。
そして、フィルムの幅方向の水シール性の全評価結果に対しシール性不良を示した検体数の割合を算出し、シール不良率(%)を求めた。
(評価基準)
シール性良好・・・剥離強度(g/15mm)が120g/15mm以上
シール性不良・・・剥離強度(g/15mm)が120g/15mm未満
シール不良率(%)= シール性不良を示した検体数 /13 ×100
上記表1の結果より、実施例1、2の水溶性フィルムは、フィルムの幅方向における水分率が特定条件を満足するものであるため、カールが抑制され、個包装体を製造する際のシール不良の発生が少なく、水溶解性も良好であることがわかる。
これに対して、フィルムの幅方向における水分率(重量%)の最大値xmaxと最小値xminの差が小さく、特定範囲を満足しない比較例1、3の水溶性フィルムにおいては、カールが大きく、包装体を成形する際に支障があり、生産性に劣るものであることがわかる。
また、フィルムの幅方向における水分率(重量%)の最大値xmaxと最小値xminの差が大きすぎる比較例2の水溶性フィルムにおいては、カールは抑制されているものの、シール不良率が大きくなり、また水溶解不良率も大きいため、包装体を形成する際に支障があり、生産性に劣るものであることがわかる。
また、フィルム幅方向全体に均質に熱処理してフィルムの幅方向における水分率(重量%)の最大値xmaxと最小値xminの差を小さくした比較例4の水溶性フィルムにおいては、カールは抑制されて水溶解性も良好であるが、シール不良率が高く包装体での破袋を起こしやすいことから、包装体を形成する際に支障があることがわかる。
本発明の水溶性フィルムは、カールが抑制された水溶性フィルムであり、シール不良の発生が少なく、水溶解性にも優れる水溶性フィルムであり、包装体の生産性に優れたものである。このため、各種薬剤の包装に用いることができ、特に液体薬剤の個包装用途に有用である。

Claims (8)

  1. フィルムの幅方向における水分率x(重量%)の最大値xmaxと最小値xminの差が0.2〜3であり、かつフィルムの幅方向の平均水分率Mが6〜15重量%であることを特徴とするポリビニルアルコール系水溶性フィルム。
  2. フィルムの幅方向における水分率(重量%)の標準偏差Sが0.05〜1.0であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系水溶性フィルム。
  3. 薬剤包装に用いることを特徴とする請求項1または2記載のポリビニルアルコール系水溶性フィルム。
  4. 請求項1〜3いずれか記載のポリビニルアルコール系水溶性フィルムを張り合わせてなる包装体と、前記包装体に内包された薬剤とを含有することを特徴とする薬剤包装体。
  5. 薬剤が洗剤であることを特徴とする請求項4記載の薬剤包装体。
  6. 薬剤が液体洗剤であることを特徴とする請求項4または5記載の薬剤包装体。
  7. ポリビニルアルコール系フィルムの幅方向の両端部を、温度80〜130℃、端部から10〜150mmの範囲で、局部的に熱処理することを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系水溶性フィルムの製造方法。
  8. 熱処理時間が1〜60秒であることを特徴とする請求項7記載のポリビニルアルコール系水溶性フィルムの製造方法。
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