以下、図面を参照して本願の開示するプラズマ処理装置、温度制御方法および温度制御プログラムの実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を付すこととする。また、実施形態により開示する発明が限定されるものではない。各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
(第1実施形態)
[プラズマ処理装置の構成]
最初に、実施形態に係るプラズマ処理装置10の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図1には、第1実施形態に係るプラズマ処理装置10の縦断面における構造が概略的に示されている。図1に示すプラズマ処理装置10は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置である。このプラズマ処理装置10は、略円筒状の処理容器12を備えている。処理容器12は、例えば、アルミニウムから構成されている。また、処理容器12の表面は、陽極酸化処理が施されている。
処理容器12内には、載置台16が設けられている。載置台16は、静電チャック18および基台20を含んでいる。静電チャック18の上面は、プラズマ処理の対象となる被処理体が載置される載置面とされている。本実施形態では、被処理体としてウエハWが静電チャック18の上面に載置される。基台20は、略円盤形状を有しており、その主部において、例えばアルミニウムといった導電性の金属から構成されている。この基台20は、下部電極を構成している。基台20は、支持部14によって支持されている。支持部14は、処理容器12の底部から延びる円筒状の部材である。
基台20には、整合器MU1を介して第1の高周波電源HFSが電気的に接続されている。第1の高周波電源HFSは、プラズマ生成用の高周波電力を発生する電源であり、27〜100MHzの周波数、一例においては40MHzの高周波電力を発生する。これにより、基台20直上にプラズマが生成される。整合器MU1は、第1の高周波電源HFSの出力インピーダンスと負荷側(基台20側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有している。
また、基台20には、整合器MU2を介して第2の高周波電源LFSが電気的に接続されている。第2の高周波電源LFSは、ウエハWにイオンを引き込むための高周波電力(高周波バイアス電力)を発生して、当該高周波バイアス電力を基台20に供給する。これにより、基台20にバイアス電位が生じる。高周波バイアス電力の周波数は、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数であり、一例においては3MHzである。整合器MU2は、第2の高周波電源LFSの出力インピーダンスと負荷側(基台20側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有している。
基台20上には、静電チャック18が設けられている。静電チャック18は、クーロン力等の静電力によりウエハWを吸着し、当該ウエハWを保持する。静電チャック18は、セラミック製の本体部内に静電吸着用の電極E1を有している。電極E1には、スイッチSW1を介して直流電源22が電気的に接続されている。ウエハWを保持する吸着力は、直流電源22から印加される直流電圧の値に依存する。
基台20の上面の上、且つ、静電チャック18の周囲には、フォーカスリングFRが設けられている。フォーカスリングFRは、プラズマ処理の均一性を向上させるために設けられている。フォーカスリングFRは、実行すべきプラズマ処理に応じて適宜選択される材料から構成されており、例えば、シリコン、または石英から構成され得る。
基台20の内部には、冷媒流路24が形成されている。冷媒流路24には、処理容器12の外部に設けられたチラーユニットから配管26aを介して冷媒が供給される。冷媒流路24に供給された冷媒は、配管26bを介してチラーユニットに戻るようになっている。なお、この基台20および静電チャック18を含む載置台16の詳細については、後述する。
処理容器12内には、上部電極30が設けられている。この上部電極30は、載置台16の上方において、基台20と対向配置されており、基台20と上部電極30とは、互いに略平行に設けられている。
上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、処理容器12の上部に支持されている。上部電極30は、電極板34および電極支持体36を含み得る。電極板34は、処理空間Sに面しており、複数のガス吐出孔34aを提供している。この電極板34は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体または半導体から構成され得る。
電極支持体36は、電極板34を着脱自在に支持するものであり、例えばアルミニウムといった導電性材料から構成され得る。この電極支持体36は、水冷構造を有し得る。電極支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。このガス拡散室36aからは、ガス吐出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。また、電極支持体36にはガス拡散室36aに処理ガスを導くガス導入口36cが形成されており、このガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
ガス供給管38には、バルブ群42および流量制御器群44を介してガスソース群40が接続されている。バルブ群42は複数の開閉バルブを有しており、流量制御器群44は、マスフローコントローラといった複数の流量制御器を有している。また、ガスソース群40は、プラズマ処理に必要な複数種のガス用のガスソースを有している。ガスソース群40の複数のガスソースは、対応の開閉バルブおよび対応のマスフローコントローラを介してガス供給管38に接続されている。
プラズマ処理装置10では、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択された一以上のガスソースからの一以上のガスが、ガス供給管38に供給される。ガス供給管38に供給されたガスは、ガス拡散室36aに至り、ガス通流孔36bおよびガス吐出孔34aを介して処理空間Sに吐出される。
また、図1に示すように、プラズマ処理装置10は、接地導体12aを更に備え得る。接地導体12aは、略円筒状の接地導体であり、処理容器12の側壁から上部電極30の高さ位置よりも上方に延びるように設けられている。
また、プラズマ処理装置10では、処理容器12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。また、デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、処理容器12にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するものであり、アルミニウム材にY2O3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。
処理容器12の底部側においては、支持部14と処理容器12の内壁との間に排気プレート48が設けられている。排気プレート48は、例えば、アルミニウム材にY2O3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。この排気プレート48の下方において処理容器12には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器12内を所望の真空度まで減圧することができる。また、処理容器12の側壁にはウエハWの搬入出口12gが設けられており、この搬入出口12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
上記のように構成されたプラズマ処理装置10は、制御部100によって、その動作が統括的に制御される。この制御部100は、例えば、コンピュータであり、プラズマ処理装置10の各部を制御する。プラズマ処理装置10は、制御部100によって、その動作が統括的に制御される。
[載置台の構成]
次に、載置台16について詳細に説明する。図2は、第1実施形態に係る載置台を示す平面図である。上述したように載置台16は、静電チャック18および基台20を有している。静電チャック18は、セラミック製の本体部18mを有している。本体部18mは、略円盤形状を有している。本体部18mは、載置領域18aおよび外周領域18bを提供している。載置領域18aは、平面視において略円形の領域である。この載置領域18aの上面上には、ウエハWが載置される。すなわち、載置領域18aの上面は、ウエハWが載置される載置面として機能する。載置領域18aの直径は、ウエハWと略同一の直径であるか、或いは、ウエハWの直径よりも若干小さくなっている。外周領域18bは、この載置領域18aを囲む領域であり、略環状に延在している。本実施形態では、外周領域18bの上面は、載置領域18aの上面より低い位置にある。
図2に示すように、静電チャック18は、載置領域18a内に静電吸着用の電極E1を有している。この電極E1は、上述したように、スイッチSW1を介して直流電源22に接続されている。
また、載置領域18a内、且つ、電極E1の下方には、複数のヒーターHTが設けられている。本実施形態では、載置領域18aは、複数の分割領域に分割され、それぞれの分割領域にヒーターHTが設けられている。例えば、図2に示すように、載置領域18aの中央の円形領域内、および、当該円形領域を囲む同心状の複数の環状領域に、複数のヒーターHTが設けられている。また、複数の環状領域のそれぞれにおいては、複数のヒーターHTが周方向に配列されている。なお、図2に示す分割領域の分割手法は、一例であり、これに限定されるものではない。載置領域18aは、より多くの分割領域に分割してもよい。例えば、載置領域18aは、外周に近いほど、角度幅が小さく、径方向の幅が狭い分割領域に分割してもよい。ヒーターHTは、基台20の外周部分に設けられた不図示の配線を介して、図1に示す、ヒーター電源HPに個別に接続されている。ヒーター電源HPは、制御部100から制御の元、各ヒーターHTに個別に調整された電力を供給する。これにより、各ヒーターHTが発する熱が個別に制御され、載置領域18a内の複数の分割領域の温度が個別に調整される。
ヒーター電源HPには、各ヒーターHTへ供給する供給電力を検出する電力検出部PDが設けられている。なお、電力検出部PDは、ヒーター電源HPとは別に、ヒーター電源HPから各ヒーターHTへの電力が流れる配線に設けてもよい。電力検出部PDは、各ヒーターHTへ供給する供給電力を検出する。例えば、電力検出部PDは、各ヒーターHTへ供給する供給電力として、電力量[W]を検出する。ヒーターHTは、電力量に応じて発熱する。このため、ヒーターHTへ供給する電力量は、ヒータパワーを表す。電力検出部PDは、検出した各ヒーターHTへの供給電力を示す電力データを制御部100に通知する。
また、載置台16は、載置領域18aの各分割領域に、それぞれヒーターHTの温度が検出可能な不図示の温度センサが設けられている。温度センサは、ヒーターHTとは別に温度を測定することができる素子であってもよい。また、温度センサは、ヒーターHTへの電力が流れる配線に配置され、主な金属の電気抵抗は温度上昇に比例して増大する性質であることを利用して、ヒーターHTにかかる電圧、電流を測定することから求められる抵抗値から温度を検出してもよい。各温度センサにより検出されたセンサ値は、温度測定器TDに送られる。温度測定器TDは、各センサ値から載置領域18aの各分割領域の温度を測定する。温度測定器TDは、載置領域18aの各分割領域の温度を示す温度データを制御部100に通知する。
さらに、図示しない伝熱ガス供給機構およびガス供給ラインによって伝熱ガス、例えばHeガスが静電チャック18の上面とウエハWの裏面との間に供給されてもよい。
[制御部の構成]
次に、制御部100について詳細に説明する。図3は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置を制御する制御部の概略的な構成を示したブロック図である。制御部100は、外部インターフェース101と、プロセスコントローラ102と、ユーザインターフェース103と、記憶部104とが設けられている。
外部インターフェース101は、プラズマ処理装置10の各部と通信可能とされ、各種のデータを入出力する。例えば、外部インターフェース101には、電力検出部PDから各ヒーターHTへの供給電力を示す電力データが入力する。また、外部インターフェース101には、温度測定器TDから載置領域18aの各分割領域の温度を示す温度データが入力する。また、外部インターフェース101は、各ヒーターHTへ供給する供給電力を制御する制御データをヒーター電源HPへ出力する。
プロセスコントローラ102は、CPU(Central Processing Unit)を備えプラズマ処理装置10の各部を制御する。
ユーザインターフェース103は、工程管理者がプラズマ処理装置10を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、プラズマ処理装置10の稼動状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
記憶部104には、プラズマ処理装置10で実行される各種処理をプロセスコントローラ102の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や、処理条件データ等が記憶されたレシピ、およびプラズマ処理を行う上での装置やプロセスに関するパラメータ等が格納されている。なお、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読み取り可能なコンピュータ記録媒体(例えば、ハードディスク、DVDなどの光ディスク、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用したり、或いは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
プロセスコントローラ102は、プログラムやデータを格納するための内部メモリを有し、記憶部104に記憶された制御プログラムを読み出し、読み出した制御プログラムの処理を実行する。プロセスコントローラ102は、制御プログラムが動作することにより各種の処理部として機能する。例えば、プロセスコントローラ102は、ヒーター制御部102aと、計測部102bと、パラメータ算出部102cと、設定温度算出部102dと、アラート部102eの機能を有する。なお、本実施形態に係るプラズマ処理装置10では、プロセスコントローラ102が、ヒーター制御部102a、計測部102b、パラメータ算出部102c、設定温度算出部102dおよびアラート部102eの機能を有する場合を例に説明するが、ヒーター制御部102a、計測部102b、パラメータ算出部102c、設定温度算出部102dおよびアラート部102eの機能を複数のコントローラで分散して実現してもよい。
ところで、プラズマ処理では、ウエハWの温度によって処理の進行が変化する。例えば、プラズマエッチングでは、ウエハWの温度によってエッチングの進行速度が変化する。そこで、プラズマ処理装置10では、各ヒーターHTによって、ウエハWの温度を目標温度に制御することが考えられる。
しかし、プラズマ処理では、プラズマからウエハWに向かって入熱がある。このため、プラズマ処理装置10は、プラズマ処理中のウエハWの温度を目標温度に精度よく制御できない場合がある。
ウエハWの温度に影響を与えるエネルギーの流れを説明する。図4は、ウエハの温度に影響を与えるエネルギーの流れを模式的に示す図である。図4には、ウエハWや、静電チャック(ESC)18を含む載置台16が簡略化して示されている。図4の例は、静電チャック18の載置領域18aの1つの分割領域について、ウエハWの温度に影響を与えるエネルギーの流れを示している。載置台16は、静電チャック18および基台20を有している。静電チャック18と基台20は、接着層19により接着されている。静電チャック18の載置領域18aの内部には、ヒーターHTが設けられている。基台20の内部には、冷媒が流れる冷媒流路24が形成されている。
ヒーターHTは、ヒーター電源HPから供給される供給電力に応じて発熱し、温度が上昇する。図4では、ヒーターHTへ供給される供給電力をヒータパワーPhとして示している。また、ヒーターHTでは、ヒータパワーPhを静電チャック18のヒーターHTが設けられている領域の面積Aで割った単位面積当たりの発熱量(熱流束)qhが生じる。
また、プラズマ処理を行っている場合、ウエハWは、プラズマからの入熱により、温度が上昇する。図4では、プラズマからウエハWへの入熱量をウエハWの面積で割った単位面積当たりのプラズマからの熱流束qpとして示している。
プラズマからの入熱は、主にウエハWへの照射されるプラズマ中のイオンの量と、プラズマ中のイオンをウエハWに引き込むためのバイアス電位との積に比例することが知られている。ウエハWへの照射されるプラズマ中のイオンの量は、プラズマの電子密度に比例する。プラズマの電子密度は、プラズマの生成で印加する第1の高周波電源HFSからの高周波電力HFSのパワーに比例する。また、プラズマの電子密度は、処理容器12内の圧力に依存する。プラズマ中のイオンをウエハWに引き込むためのバイアス電位は、バイアス電位の発生で印加する第2の高周波電源LFSからの高周波電力LFSのパワーに比例する。また、プラズマ中のイオンをウエハWに引き込むためのバイアス電位は、処理容器12内の圧力に依存する。なお、高周波電力LFSが載置台12に印加されていない場合、プラズマが生成された時に生じるプラズマの電位(プラズマポテンシャル)と載置台12の電位差によって、イオンが載置台へ引き込まれる。
また、プラズマからの入熱は、プラズマの発光による加熱やプラズマ中の電子やラジカルによるウエハWへの照射、イオンとラジカルによるウエハW上の表面反応などが含まれる。これらの成分も交流電力のパワーや圧力に依存する。プラズマからの入熱は、その他、プラズマ生成に関わる装置パラメータ、例えば、載置台16と上部電極30との間隔距離や処理空間Sに供給されるガス種に依存する。
ウエハWに伝わった熱は、静電チャック18に伝わる。ここで、静電チャック18には、ウエハWの熱が全て伝わるわけではなく、ウエハWと静電チャック18との接触度合など、熱の伝わり難さに応じて静電チャック18に熱が伝わる。熱の伝わり難さ、すなわち熱抵抗は、熱の伝熱方向に対する断面積に反比例する。このため、図4では、ウエハWから静電チャック18の表面への熱の伝わり難さを、ウエハWと静電チャック18の表面間の単位面積当たりの熱抵抗Rth・Aとして示している。なお、Aは、ヒーターHTが設けられている領域の面積である。Rthは、ヒーターHTが設けられている領域全体における熱抵抗である。また、図4では、ウエハWから静電チャック18表面への入熱量を、ウエハWから静電チャック18表面への単位面積当たりの熱流束qとして示している。なお、ウエハWと静電チャック18の表面間の単位面積当たりの熱抵抗Rth・Aは、静電チャック18の表面状態、ウエハWを保持するために直流電源22から印加される直流電圧の値、および静電チャック18の上面とウエハWの裏面との間に供給される伝熱ガスの圧力に依存する。また、熱抵抗Rth・Aは、その他、熱抵抗もしくは熱伝導率に関与する装置パラメータにも依存する。
静電チャック18の表面に伝わった熱は、静電チャック18の温度を上昇させ、さらに、ヒーターHTに伝わる。図4では、静電チャック18表面からヒーターHTへの入熱量を、静電チャック18表面からヒーターHTへの単位面積当たりの熱流束qcとして示している。
一方、基台20は、冷媒流路24を流れる冷媒により冷却され、接触する静電チャック18を冷却する。このとき、図4では、接着層19を通過して静電チャック18の裏面から基台20への抜熱量を、静電チャック18の裏面から基台20への単位面積当たりの熱流束qsusとして示している。これにより、ヒーターHTは、抜熱によって冷却され、温度が低下する。
ヒーターHTの温度が一定となるように制御している場合、ヒーターHTは、ヒーターHTに伝わる熱の入熱量およびヒーターHTで発生する発熱量の総和と、ヒーターHTから抜熱される抜熱量とが等しい状態となる。例えば、プラズマを点火して無い未点火状態では、ヒーターHTで発生する発熱量と、ヒーターHTから抜熱される抜熱量とが等しい状態となる。図5Aは、未点火状態のエネルギーの流れを模式的に示す図である。図5Aの例では、基台20から冷却により、ヒーターHTから「100」の熱量が抜熱されている。例えば、ヒーターHTの温度が一定となるように制御している場合、ヒーターHTには、ヒーター電源HPからヒータパワーPhにより「100」の熱量が発生する。
一方、例えば、プラズマを点火した点火状態では、ヒーターHTに入熱する熱量およびヒーターHTで発生する熱量の総和と、ヒーターHTから抜熱される抜熱量とが等しい状態となる。図5Bは、点火状態のエネルギーの流れを模式的に示す図である。ここで、点火状態には、過度状態と定常状態とがある。過度状態は、例えば、ウエハWや静電チャック18に対する入熱量が抜熱量よりも多く、ウエハWや静電チャック18の温度が経時的に上昇傾向となる状態である。定常状態は、ウエハWや静電チャック18の入熱量と抜熱量が等しくなり、ウエハWや静電チャック18の温度に経時的な上昇傾向がなくなり、温度が略一定となった状態である。
図5Bの例でも、基台20から冷却により、ヒーターHTから「100」の熱量が抜熱されている。点火状態の場合、ウエハWは、定常状態となるまで、プラズマからの入熱により温度が上昇する。ヒーターHTには、静電チャック18を介してウエハWから熱が伝わる。上述のように、ヒーターHTの温度が一定となるように制御している場合、ヒーターHTに入熱される熱量とヒーターHTから抜熱される熱量は、等しい状態となる。ヒーターHTは、ヒーターHTの温度を一定に維持するために必要な熱量が低下する。このため、ヒーターHTへの供給電力が低下する。
例えば、図5Bにおいて、「過度状態」とした例では、プラズマからウエハWへ「80」の熱量が伝わる。ウエハWに伝わった熱は、静電チャック18に伝わる。また、ウエハWの温度が定常状態ではない場合、ウエハWに伝わった熱は、一部がウエハWの温度の上昇に作用する。ウエハWの温度上昇に作用する熱量は、ウエハWの熱容量に依存する。このため、プラズマからウエハWに伝わった「80」の熱量のうち、「60」の熱量がウエハWから静電チャック18の表面へ伝わる。静電チャック18の表面に伝わった熱は、ヒーターHTに伝わる。また、静電チャック18の温度が定常状態ではない場合、静電チャック18の表面に伝わった熱は、一部が静電チャック18の温度の上昇に作用する。静電チャック18の温度上昇に作用する熱量は静電チャック18の熱容量に依存する。このため、静電チャック18の表面に伝わった「60」の熱量のうち、「40」の熱量がヒーターHTに伝わる。このため、ヒーターHTの温度が一定となるように制御している場合、ヒーターHTには、ヒーター電源HPからヒータパワーPhにより「60」の熱量が供給される。
また、図5Bにおいて、「定常状態」とした例では、プラズマからウエハWへ「80」の熱量が伝わる。ウエハWに伝わった熱は、静電チャック18に伝わる。また、ウエハWの温度が定常状態である場合、ウエハWは、入熱量と出熱量が等しい状態となっている。このため、プラズマからウエハWに伝わった「80」の熱量がウエハWから静電チャック18の表面へ伝わる。静電チャック18の表面に伝わった熱は、ヒーターHTに伝わる。静電チャック18の温度が定常状態である場合、静電チャック18は、入熱量と出熱量が等しいとなっている。このため、静電チャック18の表面に伝わった「80」の熱量がヒーターHTに伝わる。このため、ヒーターHTの温度が一定となるように制御している場合、ヒーターHTには、ヒーター電源HPからヒータパワーPhにより「20」の熱量が供給される。
図5Aおよび図5Bに示したように、ヒーターHTへの供給電力は、未点火状態よりも点火状態の方が低下する。また、点火状態では、ヒーターHTへの供給電力が定常状態となるまで低下する。
図6は、ウエハWの温度とヒーターHTへの供給電力の変化の一例を示す図である。図6の(A)は、ウエハWの温度の変化を示している。図6の(B)は、ヒーターHTへの供給電力の変化を示している。図6の例は、ヒーターHTの温度が一定となるように制御し、プラズマを点火して無い未点火状態からプラズマを点火して、ウエハWの温度とヒーターHTへの供給電力を測定した結果の一例を示している。ウエハWの温度は、ケーエルエー・テンコール(KLA-Tencor)社から販売されているEtch Tempなどの温度計測用のウエハを用いて計測した。この温度計測用のウエハは、高価である。このため、量産現場では、プラズマ処理装置10の各ヒーターHTの温度の調整に温度計測用のウエハを使用すると、コストアップとなる。また、量産現場では、プラズマ処理装置10の各ヒーターHTの温度の調整に温度計測用のウエハを使用すると、生産性が低下する。
図6の期間T1は、プラズマを点火して無い未点火状態である。期間T1では、ヒーターHTへの供給電力が一定となっている。図6の期間T2は、プラズマを点火した点火状態であり、過渡状態である。期間T2では、ヒーターHTへの供給電力が低下する。また、期間T2では、ウエハWの温度が一定の温度まで上昇する。図6の期間T3は、プラズマを点火した点火状態である。期間T3では、ウエハWの温度は一定であり、定常状態となっている。静電チャック18も定常状態となると、ヒーターHTへの供給電力は、略一定となり、低下する傾向の変動が安定する。図6の期間T4は、プラズマを消した未点火状態である。期間T4では、ウエハWに対するプラズマから入熱が無くなるため、ウエハWの温度が低下し、ヒーターHTへの供給電力が増加している。
図6の期間T2に示される過度状態でのヒーターHTへの供給電力の低下の傾向は、プラズマからウエハWへの入熱量や、ウエハWと静電チャック18の表面間の熱抵抗などによって変化する。
図7は、点火状態のエネルギーの流れを模式的に示す図である。なお、図7は、何れも過度状態の例である。例えば、図7において、「入熱量:小、熱抵抗:小」とした例では、プラズマからウエハWへ「80」の熱量が伝わる。プラズマからウエハWに伝わった「80」の熱量のうち、「60」の熱量がウエハWから静電チャック18の表面へ伝わる。そして、静電チャック18の表面に伝わった「60」の熱量のうち、「40」の熱量がヒーターHTに伝わる。例えば、ヒーターHTの温度が一定となるように制御している場合、ヒーターHTには、ヒーター電源HPからヒータパワーPhにより「60」の熱量が供給される。
また、図7において、「入熱量:大、熱抵抗:小」とした例では、プラズマからウエハWへ「100」の熱量が伝わる。プラズマからウエハWに伝わった「100」の熱量のうち、「80」の熱量がウエハWから静電チャック18の表面へ伝わる。そして、静電チャック18の表面に伝わった「80」の熱量のうち、「60」の熱量がヒーターHTに伝わる。例えば、ヒーターHTの温度が一定となるように制御している場合、ヒーターHTには、ヒーター電源HPからヒータパワーPhにより「40」の熱量が供給される。
また、図7において、「入熱量:小、熱抵抗:大」とした例では、プラズマからウエハWへ「80」の熱量が伝わる。プラズマからウエハWに伝わった「80」の熱量のうち、「40」の熱量がウエハWから静電チャック18の表面へ伝わる。静電チャック18の表面に伝わった「40」の熱量のうち、「20」の熱量がヒーターHTに伝わる。例えば、ヒーターHTの温度が一定となるように制御している場合、ヒーターHTには、ヒーター電源HPからヒータパワーPhにより「80」の熱量が供給される。
このように、ヒーターHTの温度を一定に制御している場合、ヒータパワーPhは、プラズマからウエハWへの入熱量や、ウエハWと静電チャック18の表面間の熱抵抗よって変化する。よって、図6の(B)に示される期間T2のヒーターHTへの供給電力の低下の傾向は、プラズマからウエハWへの入熱量や、ウエハWと静電チャック18の表面間の熱抵抗などによって変化する。このため、期間T2のヒーターHTへの供給電力のグラフは、プラズマからウエハWへの入熱量や、ウエハWと静電チャック18の表面間の熱抵抗をパラメータとしてモデル化できる。すなわち、期間T2のヒーターHTへの供給電力の変化は、プラズマからウエハWへの入熱量や、ウエハWと静電チャック18の表面間の熱抵抗をパラメータとして、演算式によりモデル化できる。
本実施形態では、図6の(B)に示す、期間T2のヒーターHTへの供給電力の変化を単位面積当たりの式としてモデル化する。例えば、プラズマからの熱流束があるときの単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qh、プラズマからの熱流束がないときの定常状態での単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qh0、および、静電チャック18の表面とヒーター間の単位面積当たりの熱抵抗Rthc・Aは、以下の式(2)−(4)のように表せる。プラズマからウエハWへの単位面積当たりの熱流束qp、および、ウエハWと静電チャック18の表面間の単位面積当たりの熱抵抗Rth・Aをパラメータとし、a1、a2、a3、λ1、λ2、τ1、τ2を以下の式(5)−(11)のように表した場合、プラズマからの熱流束があるときの単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qhは、以下の式(1)のように表せる。
ここで、
Phは、プラズマからの熱流束があるときのヒータパワー[W]である。
Ph0は、プラズマからの熱流束がないときの定常状態でのヒータパワー[W]である。
qhは、プラズマからの熱流束があるときの単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量[W/m2]である。
qh0は、プラズマからの熱流束がないときの定常状態での単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量[W/m2]である。
qpは、プラズマからウエハWへの単位面積当たりの熱流束[W/m2]である。
Rth・Aは、ウエハWと静電チャック18の表面間の単位面積当たりの熱抵抗[K・m2/W]である。
Rthc・Aは、静電チャック18の表面とヒーター間の単位面積当たりの熱抵抗[K・m2/W]である。
Aは、ヒーターが設けられている領域の面積[m2]である。
ρwは、ウエハWの密度[kg/m3]である。
Cwは、ウエハWの単位面積当たりの熱容量[J/K・m2]である。
zwは、ウエハWの厚さ[m]である。
ρcは、静電チャック18を構成するセラミックの密度[kg/m3]である。
Ccは、静電チャック18を構成するセラミックの単位面積当たりの熱容量[J/K・m2]である。
zcは、静電チャック18の表面からヒーターHTまでの距離[m]である。
κcは、静電チャック18を構成するセラミックの熱伝導率[W/K・m]である。
tは、プラズマを点火してからの経過時間[sec]である。
式(5)に示したa1について、1/a1がウエハWの温まり難さを示す時定数となる。また、式(6)に示したa2について、1/a2が静電チャック18の熱の入り難さ、温まり難さを示す時定数となる。また、式(7)に示したa3について、1/a3が静電チャック18の熱の浸透し難さ、温まり難さを示す時定数となる。
ヒーターHTの面積A、ウエハWの密度ρw、ウエハWの単位面積当たりの熱容量Cw、ウエハWの厚さzw、静電チャック18を構成するセラミックの密度ρc、静電チャック18を構成するセラミックの単位面積当たりの熱容量Cc、静電チャック18の表面からヒーターHTまでの距離zc、および、静電チャック18を構成するセラミックの熱伝導κcは、ウエハWやプラズマ処理装置10の実際の構成からそれぞれ予め定まる。Rthc・Aは、熱伝導κc、距離zcから式(4)により予め定まる。
プラズマを点火してからの経過時間tごとのプラズマからの熱流束があるときのヒータパワーPh、および、プラズマからの熱流束がないときの定常状態でのヒータパワーPh0は、プラズマ処理装置10を用いて計測により求めることができる。そして、式(2)および(3)に示すように、求めたヒータパワーPh、およびヒータパワーPh0のそれぞれをヒーターHTの面積Aで除算することによって、プラズマからの熱流束があるときの単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qh、および、プラズマからの熱流束がないときの定常状態での単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qh0を求めることができる。
そして、プラズマからウエハWへの単位面積当たりの熱流束qp、および、ウエハWと静電チャック18の表面間の単位面積当たりの熱抵抗Rth・Aは、計測結果を用いて、(1)式のフィッティングを行うことにより、求めることができる。
また、図6の(A)に示される期間T2のウエハWの温度のグラフも、プラズマからウエハWへの入熱量や、ウエハWと静電チャック18の表面間の熱抵抗をパラメータとしてモデル化できる。本実施形態では、期間T2のウエハWの温度の変化を単位面積当たりの式としてモデル化する。例えば、プラズマからウエハWへの単位面積当たりの熱流束qp、および、ウエハWと静電チャック18の表面間の単位面積当たりの熱抵抗Rth・Aをパラメータとし、式(5)−(11)に示したa1、a2、a3、λ1、λ2、τ1、τ2を用いた場合、ウエハWの温度TW[℃]は、以下の式(12)のように表せる。
ここで、
TWは、ウエハWの温度[℃]である。
Thは、一定に制御したヒーターHTの温度[℃]である。
ヒーターの温度Thは、実際にウエハWの温度を一定に制御した際の条件から求めることができる。
計測結果を用いて、(1)式のフィッティングを行うことにより、熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aが求まった場合、ウエハWの温度TWは、式(12)から算出できる。
経過時間tが、式(10)、(11)によって表される時定数τ1、τ2より十分に長い場合、すなわち図6の期間T2である過渡状態から期間T3である定常状態に移行した後におけるウエハWの温度TWが目標温度となるヒーターHTの温度Thを算出する場合、式(12)は、以下の式(13)のように省略できる。
例えば、式(13)により、ヒーターの温度Th、熱流束qp、熱抵抗Rth・A、Rthc・AからウエハWの温度TWを求めることができる。
図3に戻る。ヒーター制御部102aは、各ヒーターHTの温度を制御する。例えば、ヒーター制御部102aは、各ヒーターHTへの供給電力を指示する制御データをヒーター電源HPへ出力して、ヒーター電源HPから各ヒーターHTへ供給する供給電力を制御することにより、各ヒーターHTの温度を制御する。
プラズマ処理の際、ヒーター制御部102aには、各ヒーターHTの目標とする設定温度が設定される。例えば、ヒーター制御部102aには、載置領域18aの各分割領域ごとに、目標とするウエハWの温度が、当該分割領域のヒーターHTの設定温度として設定される。この目標とするウエハWの温度は、例えば、ウエハWに対するプラズマエッチングの精度が最も良好となる温度である。
ヒーター制御部102aは、プラズマ処理の際、各ヒーターHTが設定された設定温度となるよう各ヒーターHTへの供給電力を制御する。例えば、ヒーター制御部102aは、外部インターフェース101に入力する温度データが示す載置領域18aの各分割領域の温度を、分割領域ごとに、当該分割領域の設定温度と比較し、設定温度に対して温度が低い分割領域、および、設定温度に対して温度が高い分割領域をそれぞれ特定する。ヒーター制御部102aは、設定温度に対して温度が低い分割領域に対する供給電力を増加させ、設定温度に対して温度が高い分割領域に対する供給電力を減少させる制御データをヒーター電源HPへ出力する。
計測部102bは、外部インターフェース101に入力する電力データが示す各ヒーターHTへの供給電力を用いて、各ヒーターHTへの供給電力を計測する。例えば、計測部102bは、ヒーター制御部102aにより、各ヒーターHTの温度が一定となるよう各ヒーターHTへの供給電力を制御して、プラズマを点火して無い未点火状態と、プラズマを点火してから各ヒーターHTへの供給電力が低下する傾向の変動が安定するまでの過渡状態での各ヒーターHTへの供給電力を計測する。
ヒーター制御部102aは、プラズマ処理の際、各ヒーターHTが一定の設定温度となるよう各ヒーターHTへの供給電力を制御する。計測部102bは、ヒーター制御部102aが各ヒーターHTの温度が一定の設定温度となるよう各ヒーターHTへの供給電力を制御している状態で、プラズマ処理の開始前のプラズマが未点火状態での各ヒーターHTへの供給電力を計測する。また、計測部102bは、プラズマを点火してから各ヒーターHTへの供給電力が低下する傾向の変動が安定するまでの過渡状態での各ヒーターHTへの供給電力を計測する。未点火状態での各ヒーターHTへの供給電力は、各ヒーターHTで少なくとも1つ計測されていればよく、複数回計測して平均値を未点火状態の供給電力としてもよい。過渡状態での各ヒーターHTへの供給電力は、2回以上計測されていればよい。供給電力を計測する計測タイミングは、供給電力が低下する傾向が大きいタイミングであることが好ましい。また、計測タイミングは、計測回数が少ない場合、所定期間以上離れていることが好ましい。本実施形態では、計測部102bは、プラズマ処理の期間中、所定周期(例えば、0.1秒周期)で各ヒーターHTへの供給電力を計測する。これにより、過渡状態での各ヒーターHTへの供給電力が多数計測される。
計測部102bは、所定のサイクルで、未点火状態と、過渡状態の各ヒーターHTへの供給電力を計測する。例えば、計測部102bは、ウエハWが交換され、交換されたウエハWを載置台16に載置してプラズマ処理を行う際に、毎回、未点火状態と、過渡状態の各ヒーターHTへの供給電力を計測する。なお、例えば、パラメータ算出部102cは、プラズマ処理ごとに、未点火状態と、過渡状態の各ヒーターHTへの供給電力を計測してもよい。
パラメータ算出部102cは、ヒーターHTごとに、プラズマからの入熱量およびウエハWとヒーターHT間の熱抵抗をパラメータとし、過渡状態の供給電力を算出する算出モデルに対して、計測部102bにより計測された未点火状態と過渡状態の供給電力を用いてフィッティングを行って、入熱量および熱抵抗を算出する。
例えば、パラメータ算出部102cは、ヒーターHTごとに、経過時間tごとの未点火状態のヒータパワーPh0を求める。また、パラメータ算出部102cは、ヒーターHTごとに、経過時間tごとの過渡状態のヒータパワーPhを求める。そして、パラメータ算出部102cは、求めたヒータパワーPh、およびヒータパワーPh0のそれぞれをヒーターHTごとの面積で除算することによって、経過時間tごとの未点火状態の単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qh0、および経過時間tごとの過渡状態の単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qhを求める。
そして、パラメータ算出部102cは、上記の式(1)−(11)を算出モデルとして用いて、ヒーターHTごとに、経過時間tごとの単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qh、および、単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qh0のフィッティングを行い、誤差が最も小さくなる熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aを算出する。
パラメータ算出部102cは、所定のサイクルで、測定された未点火状態と過渡状態の供給電力を用いて、熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aを算出する。例えば、パラメータ算出部102cは、ウエハWが交換されるごとに、当該ウエハWを載置台16に載置した状態で測定された未点火状態と過渡状態の供給電力を用いて、熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aを算出する。なお、例えば、パラメータ算出部102cは、プラズマ処理ごとに、未点火状態と過渡状態の供給電力を用いて、熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aを算出してもよい。
設定温度算出部102dは、ヒーターHTごとに、算出された入熱量および熱抵抗を用いて、ウエハWが目標温度となるヒーターHTの設定温度を算出する。例えば、設定温度算出部102dは、ヒーターHTごとに、算出された熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aを式(5)、(6)、(12)に代入し、式(5)−(11)に示したa1、a2、a3、λ1、λ2、τ1、τ2を用いて、式(12)からウエハWの温度TWが目標温度となるヒーターHTの温度Thを算出する。例えば、設定温度算出部102dは、経過時間tを定常状態とみなせる程度の大きい所定の値として、ウエハWの温度TWが目標温度となるヒーターHTの温度Thを算出する。算出されるヒーターHTの温度Thは、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度である。なお、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度Thは、式(13)から求めてもよい。
なお、設定温度算出部102dは、式(12)から現在のヒーターHTの温度ThでのウエハWの温度TWを算出してもよい。例えば、設定温度算出部102dは、現在のヒーターHTの温度Thで、経過時間tを定常状態とみなせる程度の大きい所定の値とした場合のウエハWの温度TWを算出する。次に、設定温度算出部102dは、算出した温度TWと目標温度との差分ΔTWを算出する。そして、設定温度算出部102dは、現在のヒーターHTの温度Thから差分ΔTWの減算を行った温度を、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度と算出してもよい。
設定温度算出部102dは、ヒーター制御部102aの各ヒーターHTの設定温度を、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度に修正する。
設定温度算出部102dは、所定のサイクルで、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度を算出し、各ヒーターHTの設定温度を修正する。例えば、設定温度算出部102dは、ウエハWが交換されるごとに、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度を算出し、各ヒーターHTの設定温度を修正する。なお、例えば、設定温度算出部102dは、プラズマ処理ごとに、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度を算出し、各ヒーターHTの設定温度を修正してもよい。
これにより、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、プラズマ処理中のウエハWの温度を目標温度に精度よく制御できる。
ところで、プラズマ処理装置10は、装置ごとに、処理容器12内の特性に差がある場合がある。このため、プラズマ処理装置10は、他のプラズマ処理装置10ではウエハWが目標温度となる各ヒーターHTの設定温度を用いても、プラズマ処理中のウエハWの温度を目標温度に精度よく制御できない場合がある。
そこで、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、自装置の処理容器12内の特性に応じた熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aを算出する。これにより、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、装置ごとに、処理容器12内の特性に差がある場合でも、プラズマ処理中のウエハWの温度を目標温度に精度よく制御できる。
また、プラズマ処理装置10は、静電チャック18の消耗などにより、載置台16の熱特性が経時的に変化する場合がある。
そこで、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、所定のサイクルで、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度を算出し、各ヒーターHTの設定温度を修正する。これにより、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、載置台16の熱特性が経時的に変化する場合であっても、プラズマ処理中のウエハWの温度を目標温度に精度よく制御できる。
また、プラズマ処理装置10は、静電チャック18の大幅な消耗やデポの付着などにより、処理容器12内の特性が変化してプラズマ処理に適さない異常な状態となる。また、プラズマ処理装置10は、異常なウエハWが搬入される場合もある。
そこで、アラート部102eは、パラメータ算出部102cにより所定のサイクルで算出される入熱量および熱抵抗の少なくとも一方の変化に基づき、アラートを行う。例えば、アラート部102eは、所定のサイクルでパラメータ算出部102cにより算出される熱流束qp、および、熱抵抗Rth・AをヒーターHTごとに比較し、熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aの少なくとも一方が所定の許容値以上変化している場合、アラートを行う。また、アラート部102eは、所定のサイクルでパラメータ算出部102cにより算出される熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aの少なくとも一方が、所定の許容範囲を外れた場合、アラートを行う。アラートは、工程管理者やプラズマ処理装置10の管理者などに異常を報知できれば、何れの方式でもよい。例えば、アラート部102eは、ユーザインターフェース103に異常を報知するメッセージを表示する。
これにより、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、処理容器12内の特性が異常な状態となった場合や、異常なウエハWが搬入された場合に、異常の発生を報知できる。
[温度制御の流れ]
次に、本実施形態に係るプラズマ処理装置10を用いた温度制御方法について説明する。図8は、第1実施形態に係る温度制御方法の流れの一例を示すフローチャートである。この温度制御方法は、所定のタイミング、例えば、プラズマ処理を開始するタイミングで実行される。
ヒーター制御部102aは、各ヒーターHTが設定温度となるよう各ヒーターHTへの供給電力を制御する(ステップS10)。
計測部102bは、ヒーター制御部102aが各ヒーターHTの温度が一定の設定温度となるよう各ヒーターHTへの供給電力を制御している状態で、未点火状態と過渡状態での各ヒーターHTへの供給電力を計測する(ステップS11)。
パラメータ算出部102cは、ヒーターHTごとに、算出モデルに対して、計測された未点火状態と過渡状態の供給電力をヒーターHTの面積で除算することによって求められる単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量を用いてフィッティングを行って、入熱量および熱抵抗を算出する(ステップS12)。例えば、パラメータ算出部102cは、上記の式(1)−(11)を算出モデルとして用いて、ヒーターHTごとに、経過時間tごとの単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qh、および、単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qh0のフィッティングを行い、誤差が最も小さくなる熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aを算出する。
設定温度算出部102dは、ヒーターHTごとに、算出された入熱量および熱抵抗を用いて、ウエハWが目標温度となるヒーターHTの温度を算出する(ステップS13)。例えば、設定温度算出部102dは、ヒーターHTごとに、算出された熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aを式(5)、(6)、(12)に代入し、式(5)−(11)に示したa1、a2、a3、λ1、λ2、τ1、τ2を用いて、式(12)からウエハWの温度TWが目標温度となるヒーターHTの温度Thを算出する。なお、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度Thは、式(13)から求めてもよい。
設定温度算出部102dは、ヒーター制御部102aの各ヒーターHTの設定温度を、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度に修正し(ステップS14)、処理を終了する。すなわち、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度が、各ヒーターHTへの供給電力を制御する工程(ステップS10)での各ヒーターHTの設定温度と乖離しているとき、ヒーター制御部102aは、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度となるように、あらためて各ヒーターHTへの供給電力を制御することとなる。また、乖離がない場合は、設定温度はそのままで制御することとなる。
このように、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、載置台16と、ヒーター制御部102aと、計測部102bと、パラメータ算出部102cと、設定温度算出部102dとを有する。載置台16は、ウエハWが載置される載置面の温度を調整可能なヒーターHTが設けられている。ヒーター制御部102aは、ヒーターHTが設定された設定温度となるようヒーターHTへの供給電力を制御する。計測部102bは、ヒーター制御部102aにより、ヒーターHTの温度が一定となるようヒーターHTへの供給電力を制御して、プラズマを点火して無い未点火状態と、プラズマを点火してからヒーターHTへの供給電力が低下する過渡状態での供給電力を計測する。パラメータ算出部102cは、プラズマからの入熱量およびウエハWとヒーターHT間の熱抵抗をパラメータとし、過渡状態の供給電力を算出する算出モデルに対して、計測部102bにより計測された未点火状態と過渡状態の供給電力を用いてフィッティングを行って、入熱量および前記熱抵抗を算出する。設定温度算出部102dは、パラメータ算出部102cにより算出された入熱量および熱抵抗を用いて、ウエハWが目標温度となるヒーターHTの設定温度を算出する。これにより、プラズマ処理装置10は、プラズマ処理中のウエハWの温度を目標温度に精度よく制御できる。
また、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、載置台16が、載置面を分割した領域毎にヒーターHTが個別に設けられている。ヒーター制御部102aは、領域毎に設けられたヒーターHTが領域毎に設定された設定温度となるようヒーターHTごとに供給電力を制御する。計測部102bは、ヒーター制御部102aにより、ヒーターHTごとに温度が一定となるよう供給電力を制御して、未点火状態と、過渡状態での供給電力をヒーターHTごとに計測する。パラメータ算出部102cは、ヒーターHTごとに、算出モデルに対して、計測部102bにより計測された未点火状態と過渡状態の供給電力を用いてフィッティングを行って、ヒーターHTごとに入熱量および熱抵抗を算出する。設定温度算出部102dは、ヒーターHTごとに、パラメータ算出部102cにより算出された入熱量および熱抵抗を用いて、ウエハWが目標温度となる設定温度を算出する。これにより、プラズマ処理装置10は、載置面を分割した領域ごとにヒーターHTが個別に設けてウエハWの温度を制御する場合でも、領域ごとにプラズマ処理中のウエハWの温度を目標温度に精度よく制御できる。
各ヒーターHTの設定温度を、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度に修正する工程(ステップS14)は、プラズマを点火した点火状態において各ヒーターHTへの供給電力を計測する工程(ステップS11の一部)から継続して、プラズマを点火した点火状態のまま、行ってもよい。これにより、プロセス処理されるウエハWごとに一定した温度にてプロセスが実行されることになる。
または、算出したウエハWが目標温度となるヒーターHTの設定温度は、プラズマ処理を終了してウエハWを入れ替えるタイミングにおいて、各ヒーターHTへの供給電力を制御する工程(ステップS10)での各ヒーターHTの設定温度に用いてもよい。すなわち、各ヒーターHTの設定温度を、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度に修正する工程(ステップS14)は、入れ替えした次のウエハWに対する処理における各ヒーターHTへの供給電力を制御する工程(ステップS10)と一致する。これにより、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度と、各ヒーターHTへの供給電力を制御する工程(ステップS10)での各ヒーターHTの設定温度との乖離が極力小さくすることが可能となる。
また、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、計測部102bが、所定のサイクルで、未点火状態と、過渡状態での供給電力を計測する。パラメータ算出部102cは、所定のサイクルごとに、計測された未点火状態と過渡状態の供給電力を用いて、入熱量および熱抵抗をそれぞれ算出する。アラート部102eは、パラメータ算出部102cにより算出される入熱量および熱抵抗の少なくとも一方の変化に基づき、アラートを行う。これにより、プラズマ処理装置10は、処理容器12内の特性が異常な状態となった場合や、異常なウエハWが搬入された場合に、異常の発生を報知できる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係るプラズマ処理装置10および載置台16の構成は、図1、図2に示した第1実施形態に係るプラズマ処理装置10および載置台16の構成と同様であるため、説明を省略する。
図9は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置を制御する制御部の概略的な構成を示したブロック図である。第2実施形態に係る制御部100の構成は、図3に示す第1実施形態に係る制御部100の構成と一部同様であるため、同様の部分には、同一の符号を付し、主に異なる点について説明をおこなう。
ところで、ヒーター制御部102aが各ヒーターHTの温度を一定となるよう各ヒーターHTへの供給電力を制御して未点火状態と、過渡状態での供給電力を計測する際、ウエハWの温度TWは、未点火状態よりも過渡状態でプラズマからの入熱により温度が上昇する。図10は、ウエハの温度の変化を模式的に示した図である。例えば、ヒーター制御部102aは、未点火状態でウエハWの温度TWが所定の目標温度Taとなるような所定の設定温度TbにヒーターHTの温度Thを制御している。このような状態でプラズマを点火した場合、ウエハWの温度は、プラズマからの入熱により温度Ta´に上昇する。このようにウエハWの温度が温度Ta´に上昇した場合、ヒーター制御部102aは、ウエハWの温度が目標温度Taとなるように、ヒーターHTの温度Thを温度Tb´に低下させる。このように、ウエハWの温度を温度Ta´に上昇させた後に目標温度Taに制御する場合、プラズマ処理装置10は、ウエハWの温度TWが目標温度Taとなるまで時間がかかる。
そこで、第2実施形態に係る制御部100は、記憶部104に、熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aの初期値を設定情報104aとして記憶する。例えば、工程管理者や管理者は、過去の経験や実験等によって求められた熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aの初期値をユーザインターフェース103から入力する。制御部100は、ユーザインターフェース103から入力された熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aの初期値を設定情報104aとして記憶部104に記憶する。
設定温度算出部102dは、プラズマ処理を開始する際、設定情報104aから熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aの初期値を読み出す。設定温度算出部102dは、読み出した熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aから、式(12)あるいは式(13)を用いて、ウエハの目標温度となる各ヒーターHTの設定温度を算出する。ヒーター制御部102aは、設定温度算出部102dにより算出された各ヒーターHTが設定温度となるよう各ヒーターHTへの供給電力を制御する。記憶部104に、適切な熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aの初期値が設定情報104aとして記憶されることにより、設定温度算出部102dは、最初のウエハWにおいておも、プラズマからの入熱があっても、ウエハWの温度が目標温度となるように、ヒーターHTの設定温度を算出できる。例えば、図10の場合、設定温度算出部102dは、最初のウエハWでも、ウエハWの温度が目標温度Taとなるように、ヒーターHTの温度Tb´を算出できる。これにより、プラズマ処理装置10は、最初のウエハWの温度TWが目標温度Taとなるまで時間を短縮できる。
計測部102bは、パラメータ算出部102cにより、各ヒーターHTが設定温度となるよう各ヒーターHTへの供給電力を制御している状態で、未点火状態と、過渡状態の各ヒーターHTへの供給電力を計測する。
パラメータ算出部102cは、ヒーターHTごとに、プラズマからの入熱量およびウエハWとヒーターHT間の熱抵抗をパラメータとし、過渡状態の供給電力を算出する算出モデルに対して、計測部102bにより計測された未点火状態と過渡状態の供給電力を用いてフィッティングを行って、実際のプラズマ処理での入熱量および熱抵抗を算出する。
例えば、パラメータ算出部102cは、ヒーターHTごとに、経過時間tごとの未点火状態のヒータパワーPh0を求める。また、パラメータ算出部102cは、ヒーターHTごとに、経過時間tごとの過渡状態のヒータパワーPhを求める。そして、パラメータ算出部102cは、求めたヒータパワーPh、およびヒータパワーPh0のそれぞれをヒーターHTごとの面積で除算することによって、経過時間tごとの未点火状態の単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qh0、および経過時間tごとの過渡状態の単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qhを求める。
そして、パラメータ算出部102cは、上記の式(1)−(11)を算出モデルとして用いて、ヒーターHTごとに、経過時間tごとの単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qh、および、単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qh0のフィッティングを行い、実際のプラズマ処理において、誤差が最も小さくなる熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aを算出する。
設定温度算出部102dは、ヒーターHTごとに、パラメータ算出部102cにより算出された、実際のプラズマ処理の熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aを用いて、ウエハWが目標温度となるヒーターHTの設定温度を算出する。
設定温度算出部102dは、実際のプラズマ処理の熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aから算出された各ヒーターHTの設定温度が、熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aの初期値から算出された各ヒーターHTの設定温度から所定以上乖離しているか判定する。設定温度算出部102dは、所定以上乖離している場合、ヒーター制御部102aの設定温度を、実際のプラズマ処理の熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aから算出された各ヒーターHTの設定温度に更新する。これにより、各ヒーターHTの設定温度が実際のプラズマ処理の熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aから求めた設定温度に更新されるため、ウエハWの温度を目標温度に精度よく制御できる。ヒーター制御部102aは、更新された設定温度となるよう各ヒーターHTへの供給電力を制御する。
設定温度算出部102dは、所定以上乖離している場合、実際のプラズマ処理の熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aを設定情報104aに格納する。例えば、設定温度算出部102dは、設定情報104aに記憶された熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aの初期値を、実際のプラズマ処理の熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aで置き換える。これにより、実際のプラズマ処理の熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aが初期値として設定情報104aに保存されて使用される。すなわち、設定温度算出部102dは、所定以上乖離している場合、予め記憶部104に保存されている熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aを常に最新の値に更新する。
[温度制御の流れ]
次に、第2実施形態に係るプラズマ処理装置10を用いた温度制御方法について説明する。図11は、第2実施形態に係る温度制御方法の流れの一例を示すフローチャートである。
設定温度算出部102dは、プラズマ処理を開始する際、設定情報104aから熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aの初期値を読み出す(ステップS20)。
設定温度算出部102dは、熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aから、式(12)あるいは式(13)を用いて、ウエハWの目標温度となる各ヒーターHTの設定温度を算出する(ステップS21)。
ヒーター制御部102aは、各ヒーターHTが設定温度となるよう各ヒーターHTへの供給電力を制御する(ステップS22)。
計測部102bは、ヒーター制御部102aが各ヒーターHTの温度が一定の設定温度となるよう各ヒーターHTへの供給電力を制御している状態で、未点火状態と過渡状態での各ヒーターHTへの供給電力を計測する(ステップS23)。
パラメータ算出部102cは、ヒーターHTごとに、算出モデルに対して、計測された未点火状態と過渡状態の供給電力をヒーターHTの面積で除算することによって求められる単位面積当たりのヒーターからの発熱量を用いてフィッティングを行って、入熱量および熱抵抗を算出する(ステップS24)。例えば、パラメータ算出部102cは、上記の式(1)−(11)を算出モデルとして用いて、ヒーターHTごとに、経過時間tごとの単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qh、および、単位面積当たりのヒーターHTからの発熱量qh0のフィッティングを行い、誤差が最も小さくなる熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aを算出する。
設定温度算出部102dは、ヒーターHTごとに、算出された入熱量および熱抵抗を用いて、ウエハWが目標温度となるヒーターHTの温度を算出する(ステップS25)。例えば、設定温度算出部102dは、ヒーターHTごとに、算出された熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aを式(5)、(6)、(12)に代入し、式(5)−(11)に示したa1、a2、a3、λ1、λ2、τ1、τ2を用いて、式(12)からウエハWの温度TWが目標温度となるヒーターHTの温度Thを算出する。なお、ウエハWの温度が目標温度となるヒーターHTの温度Thは、式(13)から求めてもよい。
設定温度算出部102dは、実際のプラズマ処理の熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aから算出された各ヒーターHTの設定温度が、熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aの初期値から算出された各ヒーターHTの設定温度から所定以上乖離しているか判定する(ステップS26)。
所定以上乖離している場合(ステップS26:Yes)、設定温度算出部102dは、ヒーター制御部102aの設定温度を、実際のプラズマ処理の熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aから算出された各ヒーターHTの設定温度に更新する(ステップS27)。
設定温度算出部102dは、設定情報104aに記憶された熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aの初期値を、実際のプラズマ処理の熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aで置き換える(ステップS28)。これにより、実際のプラズマ処理の熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aが初期値として設定情報104aに保存されて使用される。
一方、所定以上乖離していない場合(ステップS26:No)、設定温度算出部102dは、設定温度を更新せず、そのままで制御する(ステップS29)。
設定温度算出部102dは、続けて実施する次のプラズマ処理があるか否かを判定する(ステップS30)。続けて実施する次のプラズマ処理がある場合(ステップS30:Yes)、上述したステップS22へ移行する。一方、続けて実施する次のプラズマ処理がない場合(ステップS30:No)、処理を終了する。
このように、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、入熱量および熱抵抗を設定情報104aとして記憶部104に記憶する。設定温度算出部102dは、記憶部104に記憶された入熱量および熱抵抗を用いて、ウエハWが目標温度となるヒーターHTの設定温度を算出する。これにより、プラズマ処理装置10は、ウエハWの温度TWが目標温度Taとなるまで時間を短縮できる。また、プラズマ処理装置10は、予め予測されるウエハWの目標温度となるヒーターHTの温度設定を行うため、プラズマ着火後のウエハWの温度の誤差が小さくなり、プラズマ処理中のウエハWの温度を目標温度により精度の良く制御できる。
設定温度算出部102dは、算出された当該設定温度が、パラメータ算出部102cにより算出された入熱量および熱抵抗から算出された設定温度から所定以上乖離しているか判定する。設定温度算出部102dは、所定以上乖離している場合、記憶部104に記憶された入熱量および熱抵抗を、パラメータ算出部102cにより算出された入熱量および熱抵抗に更新する。これにより、次に実施されるプラズマ処理においてもウエハWの温度を目標温度により精度の高い制御できる。
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者には明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
例えば、上記の実施形態では、被処理体として半導体ウエハにプラズマ処理を行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。被処理体は、温度によってプラズマ処理の進行に影響があるものであれば何れであってもよい。
また、上記の第2実施形態では、設定情報104aに熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aの初期値を1つ記憶する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aはプラズマ処理を行う条件に依存することから、異なるプラズマ処理条件を用いるときは、予測される熱流束qp、および、熱抵抗Rth・Aも切り替える必要がある。そこで、記憶部104に熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aと共に、依存性のあるプラズマ処理のパラメータに関連付けて保存しておく。例えば、熱抵抗Rthについての依存性のあるプラズマ処理のパラメータとしては、伝熱ガス圧、静電チャック18への印加電圧、冷媒温度、静電チャック18の表面状態などがある。熱流束qpについての依存性のあるプラズマ処理のパラメータとしては、高周波電力HFS、高周波電力LFS、処理容器12内の圧力、ガス種などがある。設定温度算出部102dは、実施するプラズマ処理のプラズマ処理条件に対応した熱流束qpおよび熱抵抗Rth・Aを記憶部104から読み出すようにしてもよい。
また、上記の実施形態では、プラズマ処理としてプラズマエッチングを行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。プラズマ処理は、プラズマを用いており、温度によって処理の進行に影響があるものであれば何れであってもよい。