JP2019091674A - プレスフィット端子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】回路基板に圧入した際のスルーホールによる高い保持安定性と、スルーホールとの確実な電気的接続とを実現する。【解決手段】回路基板9のスルーホール11の内径以上の直径Rを有する金属線100の中心Cを通る中心軸方向Aに沿って、金属線100の周面101の2箇所を平行な直線状に切除する。そして、周面101の2箇所を切除した後に形成される一対の平面間の打ち抜き加工によって、プレスフィット部13の当接部23を除くプレスフィット端子1の外形に対応する輪郭に加工する。また、周面101の2箇所を切除した後に形成される一対の平面間に、打ち抜き加工によってスリット19を貫設する。これにより、スルーホール11の内径よりも大きい寸法を幅方向Yに有するプレスフィット部13を形成し、プレスフィット部13の両端部に、スルーホール11の内壁よりも曲率が小さい金属線100の周面101をそのまま残した当接部23を形成する。【選択図】図3
Description
本発明は、回路基板のスルーホールに圧入されて接触圧によりスルーホールとの電気的接続を果たすプレスフィット端子に関する。
プレスフィット端子は、回路基板のスルーホールに圧入されて接触圧によりスルーホールとの電気的接続を果たす。即ち、プレスフィット端子と回路基板との電気接続には半田付けを必要としない。
このため、プレスフィット端子は、端子を有するコネクタ等の部品を回路基板に実装する際の工程の簡素化や鉛フリー化、あるいは、端子間距離の短縮による回路基板上での端子配列の細密化に貢献するものとして、従来から注目されている。
このような事情から、プレスフィット端子には、基板のスルーホールとの接触面積を大きくし、スルーホールの内壁とプレスフィット端子との金属結合部分を増やすことで、スルーホールに圧入したプレスフィット端子の保持安定性を高くすることが重要視される。そこで、スルーホールによる保持安定性を高くするものとして、次のようなプレスフィット端子が提案されている。
このプレスフィット端子では、導電性の金属線を径方向へのプレス加工により角棒状に形成して、プレス方向の両側に形成されたプレス加工面にダイにより凹部をそれぞれ形成し、両凹部の底面間の薄肉部を打ち抜くことでスリットを貫設している。そして、スリットを形成した部分を、スルーホールに圧入されるプレスフィット部としている。
このプレスフィット端子では、金属線がプレス加工される際に、金属線のプレス加工されない周面部分が塑性変形によりプレス方向と直交する方向に膨出し、スリットの貫設によって、スルーホールの直径を超える幅を有するプレスフィット部に加工される。加工されたプレスフィット部の幅方向の両端面は、プレスフィット端子をスルーホールに圧入した際に、スルーホールの内壁に接触する当接部となる。
プレスフィット端子は、プレスフィット部の幅方向の寸法よりも小さい孔径のスルーホールに挿入される。このため、スルーホールに挿入されたプレスフィット端子は圧入状態となる。スルーホールに圧入されたプレスフィット端子のプレスフィット部は、スリットの存在により、幅方向の寸法がスルーホールの孔径以下となるように幅方向の中心側に変形する。そして、プレスフィット部の当接部には、スルーホールの内壁からの応力が加わる。
ところで、プレスフィット部の当接部は、金属線のプレス加工の際に荷重が加わらない部分で構成されるので、プレス加工の際に金属線の外方に膨出変形して、金属線の外方に凸状の曲面となる。
このため、プレスフィット端子のスルーホールへの圧入によりスルーホールの内壁とプレスフィット部の当接部との曲面同士が圧接する構成とし、スルーホールの内壁に倣う形状にプレスフィット端子の当接部を変形させやすくして、両者の接触面積を増やしスルーホールによる保持安定性を高くすることができる(以上、特許文献1)。
ところで、上述した提案のプレスフィット端子では、金属線をプレス加工する際の膨出変形によって、プレスフィット部の当接部が塑性変形している。塑性変形したプレスフィット部の当接部は、スルーホールへの圧入によりスルーホールの内壁から加わる応力に対する靱性が低くなる。
このため、上述した提案のプレスフィット端子では、スルーホールに圧入されたプレスフィット部を十分に弾性変形又は塑性変形させて、プレスフィット部の当接部をスルーホールの内壁に十分な接触圧で圧接させることができない可能性がある。
このように、プレスフィット部のスルーホールに対する接触圧が十分でないことは、プレスフィット端子とスルーホールとの確実な電気的接続を実現する上で不利である。
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、回路基板に圧入した際の接触圧を高くしてスルーホールによる高い保持安定性を実現しつつ、回路基板に圧入した際の接触面積を増やしてスルーホールとの確実な電気的接続を実現することができるプレスフィット端子とその製造方法とを提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様によるプレスフィット端子は、
回路基板のスルーホールに圧入されて、該スルーホールへの圧入方向と直交する幅方向に変形するプレスフィット部と、
前記プレスフィット部を前記圧入方向及び前記幅方向と直交する径方向に貫通して形成されたスリットと、
前記プレスフィット部の前記幅方向における両端にそれぞれ形成され、前記プレスフィット部の前記スルーホールへの圧入により該スルーホールの内壁に当接する当接部と、
を備える。
回路基板のスルーホールに圧入されて、該スルーホールへの圧入方向と直交する幅方向に変形するプレスフィット部と、
前記プレスフィット部を前記圧入方向及び前記幅方向と直交する径方向に貫通して形成されたスリットと、
前記プレスフィット部の前記幅方向における両端にそれぞれ形成され、前記プレスフィット部の前記スルーホールへの圧入により該スルーホールの内壁に当接する当接部と、
を備える。
本発明の第1の態様によるプレスフィット端子は、スリットを形成したプレスフィット部が、回路基板のスルーホールに対するプレスフィット端子の挿入方向と直交する幅方向において、スルーホールの内径よりも大きい寸法を有している。
このため、プレスフィット端子はスルーホールに対して、スルーホールの内径と同じ寸法までプレスフィット部の幅方向の寸法が小さくなるように変形した状態で圧入されることになる。
プレスフィット端子がスルーホールに圧入されると、変形したプレスフィット部の幅方向における両端の当接部は、当接部よりも幅方向における寸法が小さいスルーホールの内壁に圧接される。スルーホールの内壁に圧接されたプレスフィット部の当接部は、スルーホールの内壁から受ける応力により、スルーホールの内壁に深さ方向において倣う形状に弾性変形又は塑性変形する。
よって、プレスフィット部の当接部とスルーホールの内壁との接触面積が増えてスルーホールによる保持安定性が高くすることができる。また、スルーホールへの圧入により変形したプレスフィット部の当接部がスルーホールの内壁に十分な接触圧で圧接させて、プレスフィット端子とスルーホールとの確実な電気的接続を実現することができる。
したがって、回路基板に圧入した際の接触圧を高くしてスルーホールによる高い保持安定性を実現しつつ、回路基板に圧入した際の接触面積を増やしてスルーホールとの確実な電気的接続を実現することができる。
また、本発明の第2の態様によるプレスフィット端子は、本発明の第1の態様によるプレスフィット端子において、前記当接部は、前記圧入方向に沿った軸を中心とした前記スルーホールの内壁よりも小さい曲率の曲面を有している。
本発明の第2の態様によるプレスフィット端子によれば、スルーホールに圧入されて変形したプレスフィット部の当接部が、当接部よりも曲率が大きいスルーホールの内壁に圧接される。スルーホールの内壁に圧接されたプレスフィット部の当接部は、スルーホールの内壁から受ける応力により、スルーホールの内壁にその周方向において倣う形状に弾性変形又は塑性変形する。
よって、プレスフィット部の当接部とスルーホールの内壁との接触面積を、スルーホールの周方向においても増やし、スルーホールによる保持安定性をより一層高くすることができる。
さらに、本発明の第3の態様によるプレスフィット端子の製造方法は、
本発明の第1又は第2の態様によるプレスフィット端子を製造する方法であって、
前記スルーホールの孔径よりも大きい直径の丸棒で構成された金属線に、前記金属線を径方向に貫通する前記スリットを、前記金属線の打ち抜き加工により形成するスリット形成工程と、
前記プレスフィット部の前記当接部を除く部分の輪郭に沿った、前記径方向への前記金属線の打ち抜き加工により、前記プレスフィット部の外形を形成するプレスフィット部外形形成工程と、
を含む。
本発明の第1又は第2の態様によるプレスフィット端子を製造する方法であって、
前記スルーホールの孔径よりも大きい直径の丸棒で構成された金属線に、前記金属線を径方向に貫通する前記スリットを、前記金属線の打ち抜き加工により形成するスリット形成工程と、
前記プレスフィット部の前記当接部を除く部分の輪郭に沿った、前記径方向への前記金属線の打ち抜き加工により、前記プレスフィット部の外形を形成するプレスフィット部外形形成工程と、
を含む。
また、本発明の第4の態様によるプレスフィット端子の製造方法は、
本発明の第1の態様によるプレスフィット端子を製造する方法であって、
前記スルーホールの孔径よりも長径が大きく短径が小さい断面楕円形の棒体で構成された金属線に、前記金属線を前記径方向としての短軸方向に貫通する前記スリットを、前記金属線の打ち抜き加工により形成するスリット形成工程と、
前記プレスフィット部の前記当接部を除く部分の輪郭に沿った、前記短軸方向への前記金属線の打ち抜き加工により、前記プレスフィット部の外形を形成するプレスフィット部外形形成工程と、
を含む。
本発明の第1の態様によるプレスフィット端子を製造する方法であって、
前記スルーホールの孔径よりも長径が大きく短径が小さい断面楕円形の棒体で構成された金属線に、前記金属線を前記径方向としての短軸方向に貫通する前記スリットを、前記金属線の打ち抜き加工により形成するスリット形成工程と、
前記プレスフィット部の前記当接部を除く部分の輪郭に沿った、前記短軸方向への前記金属線の打ち抜き加工により、前記プレスフィット部の外形を形成するプレスフィット部外形形成工程と、
を含む。
本発明の第3及び第4の態様によるプレスフィット端子の製造方法によれば、スルーホールの孔径以上の直径や長径を有する金属線の周面の一部が、回路基板のスルーホールの孔径よりも大きい幅方向の寸法を有するプレスフィット部の当接部となる。
そして、スリット形成工程やプレスフィット部外形形成工程では、金属線をプレスフィット部の径方向や短軸方向に打ち抜き加工することから、各工程の際に金属線の内部にプレスフィット部の径方向や短軸方向への圧縮方向の応力が蓄積されない。よって、スリット形成工程及びプレスフィット部外形形成工程の後に、プレスフィット部の幅方向の両端に残って当接部となる金属線の周面の一部が、膨出による塑性変形を起こすことがない。
このため、金属線を加工する際にプレスフィット部の当接部となる部分に膨出変形による塑性変形が生じないようにして、金属線の塑性変形により靱性が低下した部分が、スルーホールへの圧入によりプレスフィット部の当接部としてスルーホールの内壁に圧接することがない。
したがって、塑性変形による靱性の低下がない部分が、スルーホールにプレスフィット端子を圧入した際にスルーホールの内壁に圧接する当接部となるようにして、当接部を十分に弾性変形又は塑性変形させることができる。
よって、プレスフィット部の当接部がスルーホールの内壁に深さ方向において倣う形状に弾性変形又は塑性変形しやすく、十分な接触圧でプレスフィット部の当接部をスルーホールの内壁に圧接させることができる構造のプレスフィット端子を、製造することができる。
特に、本発明の第2の態様によるプレスフィット端子を本発明の第3の態様によるプレスフィット端子の製造方法で製造した場合は、プレスフィット部の塑性変形による靱性の低下がない当接部を、さらに、スルーホールの内壁に周方向において倣う形状にも十分に弾性変形又は塑性変形させることができる。
よって、プレスフィット部の当接部がスルーホールの内壁に周方向において倣う形状に弾性変形又は塑性変形しやすく、十分な接触圧でプレスフィット部の当接部をスルーホールの内壁に圧接させることができる構造のプレスフィット端子を、製造することができる。
さらに、本発明の第5の態様によるプレスフィット端子の製造方法は、本発明の第3の態様によるプレスフィット端子の製造方法において、前記金属線の中心軸方向に沿ってそれぞれ延在し、前記金属線の前記径方向に間隔をおいて平行な、前記プレスフィット部の両表面を、前記金属線の周面を平面状に切除することで形成する表面形成工程をさらに含む。
また、本発明の第6の態様によるプレスフィット端子の製造方法は、本発明の第4の態様によるプレスフィット端子の製造方法において、前記金属線の中心軸方向に沿ってそれぞれ延在し、前記金属線の前記短軸方向に間隔をおいて平行な、前記プレスフィット部の両表面を、前記短軸方向における前記金属線の両端の周面部分を平面状に切除することで形成する表面形成工程をさらに含む。
本発明の第5及び第6の態様によるプレスフィット端子の製造方法によれば、スルーホールの孔径以上の直径や長径を有する金属線の周面を平面状に切除する表面形成工程後の金属線に残る周面の一部が、回路基板のスルーホールの孔径よりも大きい幅方向の寸法を有するプレスフィット部の当接部となる。
そして、表面形成工程では、金属線の周面を平面状に切除することから、切除後の金属線に残る金属線の周面の一部は、金属線を径方向にプレス加工する場合のような膨出変形を起こさず、塑性変形していない状態に保たれる。
したがって、塑性変形による靱性の低下がなく十分に弾性変形又は塑性変形が可能な部分をスルーホールに対する当接部として、十分な接触圧で当接部がスルーホールの内壁に圧接するプレスフィット端子を製造することができる。
本発明によれば、回路基板に圧入した際の接触圧を高くしてスルーホールによる高い保持安定性を実現しつつ、回路基板に圧入した際の接触面積を増やしてスルーホールとの確実な電気的接続を実現することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1(a)は本発明の一実施形態に係るプレスフィット端子の要部を示す正面図、(b)は(a)のプレスフィット端子の端子ピン先端側から見た平面図、図2は図1のプレスフィット端子の使用状態例を示す斜視図である。
図1(a)に示す本実施形態のプレスフィット端子1は、例えば図2に示すように、コネクタ3のハウジング5の外側に導出された端子ピン7の先端部分に適用される。そして、プレスフィット端子1は、コネクタ3が実装される回路基板9のスルーホール11に圧入方向Xに向けて圧入される。
図1(a)に示す本実施形態のプレスフィット端子1は、端子ピン7の先端付近に設けられており、回路基板9のスルーホール11に圧入されるプレスフィット部13を有している。プレスフィット部13は、スルーホール11への圧入方向Xと直交する幅方向Yに沿って延在する平面で構成された一対の表面15,17を有している。一対の表面15,17は、図1(b)に示すように、プレスフィット部13の幅方向Yと直交するの厚み方向Zに間隔をおいて平行に配置されている。
プレスフィット部13の幅方向Yにおける中心には、一対の表面15,17を厚み方向Zに貫通する長手方向とするスリット19が形成されている。
スリット19は、圧入方向Xを長手方向とする長孔状に形成されている。スリット19は、回路基板9のスルーホール11に圧入されたプレスフィット部13の幅方向Yへの変形を可能とするスペースを提供する。
プレスフィット部13は、端子ピン7の各輪郭から幅方向Yの外方にそれぞれ張り出した膨出部21,21を有している。各膨出部21の先端(請求項中のプレスフィット部の幅方向の端面に相当)には当接部23がそれぞれ形成されている。各当接部23は、スルーホール11の内壁よりも曲率が小さい曲面で構成されている。
各当接部23は、直線部25によって端子ピン7の各輪郭にそれぞれ接続されている。各直線部25は、スリット19の長手方向(圧入方向X)における中心から圧入方向Xに遠ざかるにつれて、幅方向Yにおける寸法が短くなるように、スリット19に対して傾斜している。各当接部23は、スリット19から幅方向Yに遠ざかる側に凸状の円弧によって形成されている。
したがって、プレスフィット部13は、膨出部21の当接部23の部分において、幅方向Yにおける寸法が最大となる輪郭で形成されている。なお、プレスフィット部13の当接部23の部分は、幅方向Yにおいて、回路基板9のスルーホール11の孔径以上の寸法を有している。
このように構成された本実施形態のプレスフィット端子1は、図3の斜視図に示す丸棒状の金属線100を加工することで製造することができる。この金属線100は、回路基板9のスルーホール11の内壁よりも小さい曲率(スルーホール11の孔径よりも大きい直径R)の周面101を有している。
次に、金属線100からプレスフィット端子1を製造する方法の一例を、図4のフローチャートを参照して説明する。
図4に示す本実施形態の製造方法では、表面形成工程(ステップS1)と、プレスフィット部外形及びスリット形成工程(ステップS3)とによって、金属線100からプレスフィット端子1を製造する。
まず、ステップS1の表面形成工程においては、図5の斜視図に示すように、金属線100の周面101を一部切除して金属板110を形成する。具体的には、金属線100の中心Cを通る中心軸方向Aに沿って、金属線100の周面101の2箇所を平行な直線状に切除する。
表面形成工程により形成される金属板110は、金属線100の中心Cを通る直径方向R(以下、「径方向R」という。)に間隔をおいて平行する2つの平面111,113を有している。また、2つの平面111,113の間には、金属板110の周面101がそのまま曲面115,117となって残る。
ここで、表面形成工程では金属線100の周面101を平面状に切除することから、切除後の金属板110に曲面115,117となって残る金属線100の周面101の一部は、金属線100を径方向Rにプレス加工する場合のような膨出変形を起こさず、塑性変形していない状態に保たれる。
次に、図4に示すステップS3のプレスフィット部外形及びスリット形成工程においては、図6の斜視図に示すように、図5の金属板110の平面111,113間を、金属線100の径方向Rへの打ち抜き加工によって、プレスフィット部13の当接部23を除くプレスフィット端子1の外形に対応する輪郭に加工する。
また、金属板110の平面111,113間に、プレスフィット端子1の外形に対応する輪郭に加工する際と向きが同じ、金属線100の径方向Rへの打ち抜き加工によって、スリット19を貫設する。
これらの打ち抜き加工により、金属板110からプレスフィット端子1が形成される。プレスフィット部外形及びスリット形成工程により形成されるプレスフィット端子1には、金属板110の曲面115,117(金属線100の周面101)がそのまま当接部23となって残る。
そして、プレスフィット部外形及びスリット形成工程では、金属板110を径方向Rに打ち抜き加工することから、打ち抜き加工の際に金属板110の両平面111,113間に圧縮方向の応力が蓄積されず、金属板110の曲面115,117(金属線100の周面101)の一部が膨出による塑性変形を起こすことがない。
以上の工程を経て金属線100から形成されたプレスフィット端子1は、スルーホール11の孔径以上の直径Rの金属線100を加工して形成され、金属線100の周面101が金属板110の曲面115,117を経てプレスフィット部13の当接部23となって残る。
このため、プレスフィット端子1を製造する工程中にプレスフィット部13を厚み方向Zへのプレスにより塑性変形させなくても、プレスフィット部13の当接部23における幅方向Yの寸法が、回路基板9のスルーホール11の内径以上の寸法となる。
よって、図7(a)の説明図に示すように、本実施形態のプレスフィット端子1を回路基板9のスルーホール11に挿入すると、プレスフィット部13が塑性変形及び弾性変形により、幅方向Yにおいてスリット19側に変形し、プレスフィット部13がスルーホール11に圧入された状態となる。
したがって、プレスフィット部13の変形により当接部23をスルーホール11の内壁に十分な接触圧で面接触させて、スルーホール11によるプレスフィット端子1の保持安定性を高くすることができる。
また、スルーホール11の孔径以上の直径Rを有する金属線100を加工して製造したプレスフィット端子1のプレスフィット部13の当接部23が、金属線100の周面101によって構成されるので、当接部23はスルーホール11の内壁よりも小さい曲率の曲面となる。
このため、プレスフィット端子1の圧入によりスルーホール11の内壁に圧接されるプレスフィット部13の当接部23が、図7(b)の説明図に示すように、スルーホール11の内壁に面接触されるようになる。よって、スルーホール11とプレスフィット端子1との接触面積を大きくし、プレスフィット端子1とスルーホール11との確実な電気的接続を実現することができる。
しかも、スルーホール11の内壁に圧接するプレスフィット部13の当接部23が、金属線100の周面101によって構成されるので、錫めっきされた金属線100を打ち抜き加工してプレスフィット端子1を製造すれば、加工後のプレスフィット端子1を錫めっきしなくても、接触抵抗を減らすための錫めっきを当接部23に施したプレスフィット端子1を製造することができる。
なお、図4のステップS3におけるプレスフィット部外形及びスリット形成工程は、プレスフィット部13の外形を形成するプレスフィット部外形形成工程とスリット19を形成するスリット形成工程との2つの工程に分けてもよい。その場合、どちらの工程を先に行ってもよい。
また、図4のステップS3におけるプレスフィット部外形及びスリット形成工程、あるいは、上述したプレスフィット部外形形成工程及びスリット形成工程は、図4のステップS1における表面形成工程よりも先に行ってもよい。
その場合は、表面形成工程よりも先に行うプレスフィット部外形及びスリット形成工程、あるいは、プレスフィット部外形形成工程及びスリット形成工程により、図8の斜視図に示すように、プレスフィット部13の外形やスリット19の形状に合わせて、金属線100を径方向Rに打ち抜き加工する。
その後、表面形成工程により、金属線100の周面101を一部切除して金属板110を形成する。具体的には、金属線100の中心Cを通る中心軸方向Aに沿って、金属線100の周面101の2箇所を、スリット19の貫通方向と直交する平行な直線状に切除する。これにより、プレスフィット端子1を製造することができる。また、表面形成工程を省略して、図8に示す状態でプレスフィット端子の完成としてもよい。
以上の実施形態では、断面が正円の金属線100を加工してプレスフィット端子1を製造する場合について説明したが、断面が楕円形の金属線を加工してプレスフィット端子を製造することもできる。
図9は本発明の他の実施形態に係るプレスフィット端子の材料となる金属線を示す斜視図である。図9に示す金属線200は、図7(b)に示すスルーホール11の孔径よりも長径(長軸方向の長さ)Dが大きく短径(短軸方向の長さ)Eが小さい楕円形の断面を有している。
この金属線200からプレスフィット端子を製造する際にも、図4に示す工程が実施される。
即ち、ステップS1の表面形成工程においては、図9に示すように、金属線200の周面201のうち短軸方向Eの両端部分を一部切除して金属板210を形成する。つまり、金属線200の長軸と短軸との交点である中心Cを通る中心軸方向Aに沿って、金属線200の周面201の2箇所を平行な直線状に切除する。
表面形成工程により形成される金属板210は、金属線200の中心Cを通る短軸方向Eに間隔をおいて平行する2つの平面211,213を有している。また、2つの平面211,213の間には、金属板210の周面201のうち長軸方向Dの両端部分がそのまま曲面215,217となって残る。
ここで、表面形成工程では金属線200の周面201を平面状に切除することから、切除後の金属板210に曲面215,217となって残る金属線200の周面201の一部は、金属線200を短軸方向Eにプレス加工する場合のような膨出変形を起こさず、塑性変形していない状態に保たれる。
次に、図4のステップS3のプレスフィット部外形及びスリット形成工程においては、図9に示すように、金属板210の平面211,213間を、金属線200の短軸方向Eへの打ち抜き加工によって、図1のプレスフィット部13の当接部23を除くプレスフィット端子1の外形に対応する輪郭に加工する。また、金属板210の平面211,213間に、金属線200の短軸方向Eへの打ち抜き加工によって、スリット19を貫設する。
以上の工程で、楕円状の断面の金属線200から短軸方向Eへの打ち抜き加工によって形成されるプレスフィット端子1には、金属板210の曲面215,217(金属線200の周面201)がそのまま当接部23となって残る。このため、錫めっきされた金属線200を打ち抜き加工してプレスフィット端子1を製造すれば、加工後のプレスフィット端子1を錫めっきしなくても、錫めっきを当接部23に施したプレスフィット端子1を製造することができる。
なお、本実施形態においても、図4のステップS3におけるプレスフィット部外形及びスリット形成工程は、プレスフィット部外形形成工程及びスリット形成工程に分けて行ってもよく、ステップS1における表面形成工程との実行順を入れ替えてもよい。
表面形成工程よりもプレスフィット部外形及びスリット形成工程を先に実行する場合は、図11の斜視図に示すように、プレスフィット部13の外形やスリット19の形状に合わせて、金属線200を短軸方向Eに打ち抜き加工する。その後、表面形成工程により、金属線200の周面201を一部切除して金属板210を形成する。なお、表面形成工程を省略して、図11に示す状態でプレスフィット端子の完成としてもよい。
本発明は、回路基板のスルーホールに圧入されて接触圧によりスルーホールとの電気的接続を果たすプレスフィット端子に用いて、極めて有用である。
1 プレスフィット端子
3 コネクタ
5 ハウジング
7 端子ピン
9 回路基板
11 スルーホール
13 プレスフィット部
15,17 プレスフィット部表面
19 スリット
21 膨出部
23 当接部
25 直線部
100,200 金属線
101,201 金属線周面
110,210 金属板
111,113,211,213 金属板平面
115,117,215,217 金属板曲面
A 金属線中心軸方向
C 金属線中心
D 長軸方向(長径)
E 短軸方向
R 金属線径方向(金属線直径、金属線直径方向)
X 圧入方向
Y 幅方向
Z 厚み方向
3 コネクタ
5 ハウジング
7 端子ピン
9 回路基板
11 スルーホール
13 プレスフィット部
15,17 プレスフィット部表面
19 スリット
21 膨出部
23 当接部
25 直線部
100,200 金属線
101,201 金属線周面
110,210 金属板
111,113,211,213 金属板平面
115,117,215,217 金属板曲面
A 金属線中心軸方向
C 金属線中心
D 長軸方向(長径)
E 短軸方向
R 金属線径方向(金属線直径、金属線直径方向)
X 圧入方向
Y 幅方向
Z 厚み方向
Claims (6)
- 回路基板のスルーホールに圧入されて、該スルーホールへの圧入方向と直交する幅方向に変形するプレスフィット部と、
前記プレスフィット部を前記圧入方向及び前記幅方向と直交する径方向に貫通して形成されたスリットと、
前記プレスフィット部の前記幅方向における両端にそれぞれ形成され、前記プレスフィット部の前記スルーホールへの圧入により該スルーホールの内壁に当接する当接部と、
を備えるプレスフィット端子。 - 前記当接部は、前記圧入方向に沿った軸を中心とした前記スルーホールの内壁よりも小さい曲率の曲面を有している請求項1記載のプレスフィット端子。
- 請求項1又は2記載のプレスフィット端子を製造する方法であって、
前記スルーホールの孔径よりも大きい直径の丸棒で構成された金属線に、前記金属線を径方向に貫通する前記スリットを、前記金属線の打ち抜き加工により形成するスリット形成工程と、
前記プレスフィット部の前記当接部を除く部分の輪郭に沿った、前記径方向への前記金属線の打ち抜き加工により、前記プレスフィット部の外形を形成するプレスフィット部外形形成工程と、
を含むプレスフィット端子の製造方法。 - 前記金属線の中心軸方向に沿ってそれぞれ延在し、前記金属線の前記径方向に間隔をおいて平行な、前記プレスフィット部の両表面を、前記金属線の周面を平面状に切除することで形成する表面形成工程をさらに含む請求項3記載のプレスフィット端子の製造方法。
- 請求項1記載のプレスフィット端子を製造する方法であって、
前記スルーホールの孔径よりも長径が大きく短径が小さい断面楕円形の棒体で構成された金属線に、前記金属線を前記径方向としての短軸方向に貫通する前記スリットを、前記金属線の打ち抜き加工により形成するスリット形成工程と、
前記プレスフィット部の前記当接部を除く部分の輪郭に沿った、前記短軸方向への前記金属線の打ち抜き加工により、前記プレスフィット部の外形を形成するプレスフィット部外形形成工程と、
を含むプレスフィット端子の製造方法。 - 前記金属線の中心軸方向に沿ってそれぞれ延在し、前記金属線の前記短軸方向に間隔をおいて平行な、前記プレスフィット部の両表面を、前記短軸方向における前記金属線の両端の周面部分を平面状に切除することで形成する表面形成工程をさらに含む請求項5記載のプレスフィット端子の製造方法。
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JP2016139552A (ja) * | 2015-01-28 | 2016-08-04 | 株式会社デンソー | プレスフィット端子の製造方法および電子装置 |
JP2017145458A (ja) * | 2016-02-17 | 2017-08-24 | 住友電気工業株式会社 | めっきされた線状の金属材料の製造方法およびめっき装置 |
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