JP2019089048A - 含油スカムの油水分離方法、及び油水分離剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】含油スカムの性状にかかわらず、十分な油水分離効果を発揮することが可能な油水分離方法及び油水分離剤を提供する。【解決手段】本発明の方法は、N,N−ジポリオキシアルキレン−N,N−ジアルキルアンモニウム塩)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、分子量が200以上1000以下のポリエチレンイミン、及びアルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩から選択される1種類以上を含有する材料を用いて、含油スカムを油相と水相とに分離することを含む。この方法は、例えば、金属を圧延することによって生じる含油排水に由来する含油スカムに好適である。【選択図】なし
Description
本発明は、含油スカムの油水分離方法、及び油水分離剤に関する。
金属を圧延する際、圧延による金属及びロールの温度上昇を防ぐため、冷却水が使用される。加えて、金属とロールとの間の摩擦を軽減するため、潤滑油(圧延油)が使用される。そのため、冷却水を使用した後の排水は、潤滑油(圧延油)を含有する含油排水となる。
含油排水については、含油排水に含まれる油成分を除去し、水成分を冷却水として再利用することが好ましい。そこで、含油排水は、油水分離槽に供給される。油水分離槽では、水と油の比重差を利用して含油排水が水相と油相とに分離される。そして、水相は、回収され、金属を圧延する際の冷却水として再利用される。あるいは、水相は、排水処理設備に送られる。それに対し、油相は、含油スカムと称される。
しかしながら、含油スカムは、油成分のほか、不純物である水成分を無視できないほどに含んでおり、燃料等として有効活用されることなく、産業廃棄物として焼却処分される。
これまで、部品・治具類等の固体表面に存在する油脂、機械油等の汚れを洗浄した洗浄後の洗浄後液からなる含油廃水を水相と油相とに分離する油水分離性向上剤として、特定の化学式(R−O−(AO)n−R’)で表される化合物が提案されている(特許文献1参照)。
また、含油スカムの粘度を低減し、油水分離槽からのポンプでの送液にかかる負荷を抑えるため、含油スカムに対して、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩から選ばれる1種以上のスルホン酸塩及び/又は硫酸エステル塩を添加することが提案されている(特許文献2参照)。
ところで、金属を圧延する際に用いられる潤滑油(圧延油)は、界面活性剤を用いて水中に油を乳化させた水中油滴型潤滑油組成物である一方、潤滑油成分(圧延油成分)及び界面活性剤の種類によって、含油排水を油水分離することによって得られる含油スカムの性状(エマルション径、粘度、比重)は、さまざまであり、含油スカムの形態についても、例えば、W/O型エマルション、W/O/W型エマルション、濃縮された油の中に水が挟まっているような状態等、一様ではない。
特許文献1は、部品・治具類等の固体表面に存在する油脂、機械油等の汚れを洗浄した洗浄後の洗浄後液からなる含油廃水を対象としている。特許文献1に記載の技術によって生成される含油スカムは、水中油滴型(O/Wエマルション)であり、油中水滴型(W/Oエマルション)ではないため、特許文献1に記載の油水分離性向上剤を、金属を圧延した後の含油排水から得られる含油スカムの油水分離に用いても、適切に油水分離できるとはいえない。
また、特許文献2は、含油スカムの粘度の低減を目的としており、含油スカムに対して、特許文献2に記載の材料を用いても、含油スカムを確実に油水分離できるとはいえない。
さらには、含油スカムに含まれる水成分を除去し、含油スカムを燃料等として有効活用できることが望ましい。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、含油スカムの性状にかかわらず、十分な油水分離効果を発揮することが可能な油水分離方法及び油水分離剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、油水分離剤として特定のカチオン系界面活性剤を使用することで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明では、以下のようなものを提供する。
(1)本発明は、N,N−ジポリオキシアルキレン−N,N−ジアルキルアンモニウム塩)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、重量平均分子量が200以上1000以下のポリエチレンイミン、及びアルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩から選択される1種類以上を含有する材料を用いて、含油スカムを油相と水相とに分離する、含油スカムの油水分離方法である。
(2)また、本発明は、前記含油スカムが、金属を圧延することによって生じる含油排水に由来する、(1)に記載の油水分離方法である。
(3)また、本発明は、カチオン系又は両性界面活性剤を用いて、含油スカム中の水粒子に対して荷電中和を行うことで、含油スカムを油相と水相とに分離することを含み、前記界面活性剤を用いて前記含油スカムを油相と水相とに分離した後の油相に含まれる水分は、分離前の前記含油スカムに含まれる水分に比べ30体積%以上少ない、油水分離方法である。
(4)また、本発明は、N,N−ジポリオキシアルキレン−N,N−ジアルキルアンモニウム塩)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、重量平均分子量が200以上1000以下のポリエチレンイミン、及びアルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩から選択される1種類以上を含有する、含油スカム用の油水分離剤である。
本発明によると、含油スカムの油成分が、界面活性剤を用いて水中に油を乳化させた水中油滴型潤滑油組成物であり、含油スカムが、油中水滴型(W/Oエマルション)であっても、含油スカムを油相と水相とに好適に分離することの可能な油水分離方法を提供できる。
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
<含油スカムの油水分離方法>
本実施形態における含油スカムの油水分離方法は、カチオン系又は両性界面活性剤を用いて含油スカムを油相と水相とに分離することを含む。
本実施形態における含油スカムの油水分離方法は、カチオン系又は両性界面活性剤を用いて含油スカムを油相と水相とに分離することを含む。
〔含油スカム〕
本実施形態において、含油スカムとは、含油排水を油水分離槽で水相と油相とに分離したときの油相をいう。排水処理の効率化の観点から、回収される水相に不純物(油成分)が含まれないことも重要である。しかしながら、油相は燃料として有効活用されるため、より多くの熱量を得る観点から、回収される油相に水成分ができる限り含まれないことの方がより重視される。通常、含油スカムは、油成分のほか、不純物である水成分を無視できないほどに含んでいる。
本実施形態において、含油スカムとは、含油排水を油水分離槽で水相と油相とに分離したときの油相をいう。排水処理の効率化の観点から、回収される水相に不純物(油成分)が含まれないことも重要である。しかしながら、油相は燃料として有効活用されるため、より多くの熱量を得る観点から、回収される油相に水成分ができる限り含まれないことの方がより重視される。通常、含油スカムは、油成分のほか、不純物である水成分を無視できないほどに含んでいる。
本実施形態に記載の油水分離方法に適用可能な含油スカムの種類は、カチオン系又は両性界面活性剤を用いることで油相と水相とに分離されるものであれば、特に限定されない。中でも、これまで知られた含油排水の油水分離剤では分離できない場合があったことから、含油スカムは、水中油滴型潤滑油組成物と水とが混合されて生成した含油排水を油水分離して得られる油相であることが好ましい。このようなスカムとして、例えば、金属の圧延処理によって排出された含油排水(冷却水と潤滑油(圧延油)との混合物)を油水分離槽で分離した後の油相が挙げられる。
含油スカムに含まれる油相と水相との比は特に限定されないが、通常、質量比で20:80〜80:20である。
〔界面活性剤〕
界面活性剤は、カチオン系であってもよいし、両性であってもよい。カチオン系であること、あるいは両性の界面活性剤を酸性下で使用することから、含油スカムが水中油滴型潤滑油組成物を含有する場合であっても、含油スカムに対して界面活性剤を用いることで、マイナスに帯電している油中の水粒子に対して荷電中和することができ、油中の水粒子の合一が促進され、含油スカムを油水分離できるものと予想される。
界面活性剤は、カチオン系であってもよいし、両性であってもよい。カチオン系であること、あるいは両性の界面活性剤を酸性下で使用することから、含油スカムが水中油滴型潤滑油組成物を含有する場合であっても、含油スカムに対して界面活性剤を用いることで、マイナスに帯電している油中の水粒子に対して荷電中和することができ、油中の水粒子の合一が促進され、含油スカムを油水分離できるものと予想される。
それに対し、界面活性剤がアニオン系であると、含油スカムが水中油滴型潤滑油組成物を含有する場合、上記の荷電中和がなされず、結果として、含油スカムを油水分離できないため、好ましくない。
カチオン系界面活性剤として、N,N−ジポリオキシアルキレン−N,N−ジアルキルアンモニウム塩)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、及び重量平均分子量(Mw)が200以上1000以下のポリエチレンイミンから選択される1種類以上が挙げられる。
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。そして、重量平均分子量は、重量分率による分子量の平均で定義される。
カチオン系界面活性剤の中では、カチオン強度が強い方が好ましく、例えば、ポリエチレンイミンが好ましい。カチオン強度が強いポリエチレンイミンが好適であることから、本実施形態に記載の界面活性剤は、含油スカムの油成分が水中油滴型潤滑油組成物であり、含油スカムが油中水滴型(W/Oエマルション)であっても、マイナスに帯電している油中の水粒子に対して荷電中和することができ、油中の水粒子の合一が促進され、含油スカムを油水分離できるものと予想される。
なお、より短時間で含油スカムを油水分離できるようにするため、ポリエチレンイミンの重量平均分子量は、200以上であり、300以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましく、500以上であることがよりさらに好ましく、600以上であることが特に好ましい。
また、含油スカムを油相と水相とに好適に相分離できるようにするため、ポリエチレンイミンの重量平均分子量は、1000以下であり、800以下であることが好ましい。
両性界面活性剤としては、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩が挙げられる。
〔界面活性剤の使用形態等〕
本実施形態に記載の界面活性剤の使用形態として、例えば、含油スカムに対して上記界面活性剤を加え、強撹拌し、その後静置することにより油相と水相とに分離することが挙げられる。
本実施形態に記載の界面活性剤の使用形態として、例えば、含油スカムに対して上記界面活性剤を加え、強撹拌し、その後静置することにより油相と水相とに分離することが挙げられる。
その他、含油排水を、水相と、含油スカムを含む油相とに分離する前の段階で、含油排水に上記界面活性剤を加えること、例えば、含油排水が油水分離槽に到達する前の段階、あるいは油水分離槽の中にある含油排水に対して上記界面活性剤を加えることも考えられる。しかしながら、含油排水の分離濃縮前に界面活性剤を加えると、加えた油水分離剤が水相に多く分配し、無駄になり得る。そのため、界面活性剤は、含油排水の分離濃縮後である含油スカムに加えることが好ましい。
また、界面活性剤の使用量は特に限定されないが、含油スカムを油相と水相とにより好適に分離できるようにするため、含油スカムに含まれる油成分1リットルに対して、0.2g以上であることが好ましく、0.5g以上であることがより好ましい。また、相分離によって得られる分離後液に含まれる界面活性剤の量が多量になるのを抑えるため、界面活性剤の使用量は、含油スカムに含まれる油成分1リットルに対して、20g以下であることが好ましく、10g以下であることがより好ましく、5g以下であることがさらに好ましい。
本実施形態に記載の油水分離方法を使用することで、分離後の油相に含まれる水分を、分離前の含油スカムに含まれる水分に比べて30体積%以上減らすことができる。これにより、分離後の含油スカムの体積が減ることから、含油スカムを焼却処分する場合、焼却処分する際の助燃剤の添加量を削減できる。
また、分離後の油相(含油スカム)に含まれる水分が減少することにより、油水分離後の含油スカム(油相)の比熱が小さくなるため、上記の油水分離方法を使用して含油スカムを油相と水相とに分離することで、分離後の油相を燃料等として有効活用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
はない。
<試験例1>
金属を冷間圧延することによって経られた含油排水を油水分離槽に送った。そして、油水分離槽で含油排水を油水分離し、分離後の油相を含油スカムとして採取した。含油スカムの成分を分析したところ、水分が70質量%であり、油分が30質量%であった。
金属を冷間圧延することによって経られた含油排水を油水分離槽に送った。そして、油水分離槽で含油排水を油水分離し、分離後の油相を含油スカムとして採取した。含油スカムの成分を分析したところ、水分が70質量%であり、油分が30質量%であった。
上記含油スカムが入った缶を30〜40回程度撹拌し、攪拌後の含油スカム100gを試験管に注いだ。そして、試験管に注がれた含油スカムに対し、表1に記載の油水分離剤を0.5g/L対スカムの濃度になるよう添加した。そして、試験管内の試料をスパチュラで30秒攪拌し、室内常温の条件で3時間静置した。
その際、1時間毎に、油水分離率を測定するとともに、3時間静置後の水相の色を目視で評価した。油水分離率は、試験管内の水相の高さ÷試験管内の液相全体の高さ×100によって求めた。判定は、含油スカムが油相と水相とに明確に分離し、かつ、分離後の水相が透明である場合を「○」とし、含油スカムが油相と水相とに明確に分離するものの、分離後の水相が透明でなく、懸濁する場合を「△」とし、そもそも含油スカムが油相と水相とに分離しない場合を「×」とした。結果を表1に示す。
表1から、含油スカム用の油水分離剤として、N,N−ジポリオキシアルキレン−N,N−ジアルキルアンモニウム塩、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、ポリエチレンイミン、及びアルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩から選択される1種類以上を含有する材料を用いることで、含油スカムの油成分が、界面活性剤を用いて水中に油を乳化させた水中油滴型潤滑油組成物であっても、含油スカムを油相と水相とに好適に分離できることが確認された。また、これらの材料を用いて含油スカムを油相と水相とに分離することで、分離前に比べて水分を30体積%以上減らせることが確認された。
<試験例2>
含油スカムの成分が水分47質量%、油分53質量%であり、油水分離剤を表2に記載にものにしたこと以外は、試験例1と同じ手法にて試験を行った。結果を表2に示す。
含油スカムの成分が水分47質量%、油分53質量%であり、油水分離剤を表2に記載にものにしたこと以外は、試験例1と同じ手法にて試験を行った。結果を表2に示す。
表2から、含油スカム用の油水分離剤がポリエチレンイミンである場合、重量平均分子量が300以上800以下であると、含油スカムの油成分が、界面活性剤を用いて水中に油を乳化させた水中油滴型潤滑油組成物であっても、含油スカムを油相と水相とに好適に分離できることが確認された。また、これらの材料を用いて含油スカムを油相と水相とに分離することで、3時間後には、分離前に比べて水分を30体積%以上減らせることが確認された。
中でも、重量平均分子量が600以上800以下であると、相分離を開始してから1時間後には、分離前に比べて水分を約30体積%程度減らせることが確認された。
Claims (4)
- N,N−ジポリオキシアルキレン−N,N−ジアルキルアンモニウム塩)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、分子量が200以上1000以下のポリエチレンイミン、及びアルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩から選択される1種類以上を含有する材料を用いて、含油スカムを油相と水相とに分離する、含油スカムの油水分離方法。
- 前記含油スカムは、金属を圧延することによって生じる含油排水に由来する、請求項1に記載の油水分離方法。
- カチオン系又は両性界面活性剤を用いて、含油スカム中の水粒子に対して荷電中和を行うことで、含油スカムを油相と水相とに分離することを含み、
前記界面活性剤を用いて前記含油スカムを油相と水相とに分離した後の油相に含まれる水分は、分離前の前記含油スカムに含まれる水分に比べ30%以上少ない、油水分離方法。 - N,N−ジポリオキシアルキレン−N,N−ジアルキルアンモニウム塩)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、分子量が200以上1000以下のポリエチレンイミン、及びアルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩から選択される1種類以上を含有する、含油スカム用の油水分離剤。
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