本発明の吸収性積層体は、尿等の体液を吸収するために用いられるものであり、尿パッド(失禁パッドを含む)、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品に設けられるものである。吸収性積層体は吸収性物品が受けた尿等の体液を吸収し固定し、例えば、吸収性物品のトップシートとバックシートの間に設けられる。
吸収性積層体は、肌面側と非肌面側を有する。肌面側とは、吸収性積層体を備えた吸収性物品を着用者が着用した際の着用者側を意味し、吸収性積層体を基準にとるとトップシート側に相当する。非肌面側とは、吸収性物品を着用した際の着用者とは反対側、すなわち外側を意味し、吸収性積層体を基準にとるとバックシート側に相当する。また、肌面側から非肌面側に延びる方向を、上下方向と規定する。
吸収性積層体は、長手方向と幅方向を有する。長手方向とは、吸収性積層体を備えた吸収性物品を着用者が着用した際、着用者の股間の前後方向に延びる方向を意味し、幅方向とは、吸収性積層体と同一面上にあり、長手方向と直交する方向を意味する。また、長手方向と幅方向から形成される面上の方向を、平面方向とする。
吸収性積層体の形状(平面形状)は特に限定されない。吸収性積層体の形状は、用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、長方形、砂時計形、ひょうたん形、羽子板形等が挙げられる。
吸収性積層体は、肌面側に配された上側吸収層と、非肌面側に配された下側吸収層とを有する。上側吸収層は下側吸収層の肌面側に配され、吸収性物品ではトップシート側に配される。上側吸収層は、トップシートを通過し、吸収性積層体に移行した尿等を、下側吸収層よりも基本的に先に受ける。上側吸収層は、好ましくは吸収性積層体の最上側に配される。また上側吸収層は、下側吸収層と隣接して設けられることが好ましい。下側吸収層は上側吸収層の非肌面側に配され、吸収性物品ではバックシート側に配される。下側吸収層は、好ましくは吸収性積層体の最下側に配される。
上側吸収層と下側吸収層はそれぞれ、シート部材間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように構成される。すなわち上側吸収層と下側吸収層は、各吸収層の肌面側と非肌面側にそれぞれシート部材が配され、これらのシート部材の間に吸水性樹脂が配されるが、これらのシート部材の間にはパルプ繊維は配されない。なお、上側吸収層と下側吸収層において、製造上不可避的に混入するパルプ繊維の存在は許容される。上側吸収層と下側吸収層は、シート部材間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないため、高い吸収容量を有しつつ薄型に形成することができる。
吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸系の吸水性樹脂;デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体、デンプン−アクリルアミドグラフト共重合体等のデンプン系の吸水性樹脂;ポリビニルアルコール架橋体等のポリビニルアルコール系の吸水性樹脂等を用いることができる。吸水性樹脂としては、高い液吸収量を有する点で、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸系の吸水性樹脂を用いることが好ましい。
シート部材は液透過性であり、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたものを用いることができる。また、シート部材として、織布、編布、有孔プラスチックフィルム等を用いてもよい。好ましくは、シート部材として、不織布製シート部材(不織布シート)を用いる。
シート部材の目付は特に限定されないが、例えば10g/m2以上が好ましく、14g/m2以上がより好ましく、17g/m2以上がさらに好ましく、また50g/m2以下が好ましく、40g/m2以下がより好ましく、30g/m2以下がさらに好ましい。
上側吸収層と下側吸収層は、肌面側のシート部材と非肌面側のシート部材が別々に設けられてもよく、1つのシート部材を折り返し、折り返された一方側を肌面側のシート部材とし、他方側を非肌面側のシート部材としてもよい。また、上側吸収層の非肌面側のシート部材が下側吸収層の肌面側のシート部材を兼ねてもよい。好ましくは、上側吸収層と下側吸収層はそれぞれ、各吸収層の肌面側に配される第1シート部材と非肌面側に配される第2シート部材を有し、第1シート部材と第2シート部材の間に吸水性樹脂が配される。この場合、各吸収層が独立して(分離可能に)形成されることとなる。
上側吸収層と下側吸収層はそれぞれ、幅方向に対して、端部領域と中央領域を有する。端部領域は、各吸収層の幅方向の両側に形成され、各吸収層の幅方向の端縁を含む領域として規定される。中央領域は、各吸収層の端部領域の間(すなわち幅方向の一方側の端部領域と他方側の端部領域の間)の領域として規定される。各吸収層において、中央領域の幅方向の長さは、吸収層の幅方向の長さの60%以上であることが好ましく、70%以上がより好ましく、また95%以下が好ましく、90%以下がより好ましい。
上側吸収層と下側吸収層はそれぞれ、シート部材どうしが接合された封止部と、シート部材どうしが接合されない非封止部とを有する。封止部は、シート部材どうしを接着剤で接合したり、溶着(ヒートシールや超音波溶着等)することにより形成される。非封止部は、各吸収層においてシート部材どうしが接合されない部分として規定され、封止部以外の部分が非封止部に相当する。非封止部の少なくとも一部には吸水性樹脂が配されており、封止部にも吸水性樹脂が配されていてもよい。
上側吸収層と下側吸収層はそれぞれ、幅方向の端部領域に封止部が形成されており、これにより各吸収層から吸水性樹脂が脱落しにくくなる。封止部は、上側吸収層と下側吸収層の端部領域において、長手方向の全体にわたって形成されることが好ましい。
上側吸収層は、幅方向の中央領域に、封止部と非封止部の両方が形成されている。上側吸収層の中央領域に封止部が形成されることにより、尿等が封止部において平面方向に拡散しやすくなるとともに、封止部を透過して尿等が下側吸収層に移行しやすくなる。その結果、吸収性積層体での尿等の拡散性が高められ、尿等が吸収性積層体によって速やかに吸収されるようになる。
上側吸収層の中央領域の非封止部の配置態様は特に限定されないが、非封止部はストライプ状または島状に配置されることが好ましい。これにより、上側吸収層の中央領域において、尿等が封止部を通って平面方向へ拡散しやすくなるとともに、当該封止部を尿等が透過して下側吸収層に移行しやすくなる。なお、上側吸収層の中央領域では、非封止部は2つ以上設けられることが好ましい。
非封止部がストライプ状に配置される場合は、非封止部が一方向に延びるように少なくとも2つ設けられることが好ましい。非封止部がストライプ状に配置される場合は、封止部もストライプ状に配されることが好ましい。好ましくは、非封止部は幅方向または長手方向に延びるストライプ状に配置され、より好ましくは長手方向に延びるストライプ状に配置される。非封止部が長手方向に延びるストライプ状に配置されれば、尿等が上側吸収層の長手方向に拡散しやすくなる。また、非封止部を比較的広い面積で設けることができ、上側吸収層の吸収容量を高めやすくなる。
非封止部が島状に配置される場合は、非封止部が少なくとも2つ設けられ、それぞれの非封止部を囲むように封止部が設けられることが好ましい。非封止部が島状に配置されれば、非封止部を取り囲む封止部において尿等が平面方向に拡散しやすくなる。
上側吸収層の中央領域では、非封止部が長手方向に延びるストライプ状に設けられることが好ましい。このように非封止部が設けられれば、上側吸収層において尿等の拡散性や透過性が高まるとともに、上側吸収層の吸収容量を確保することが容易になる。
上側吸収層の中央領域における封止部と非封止部の各面積は特に限定されないが、封止部と非封止部の面積比は、封止部の面積/非封止部の面積として、5/95以上が好ましく、10/90以上がより好ましく、15/85以上がさらに好ましく、また70/30以下が好ましく、60/40以下がより好ましく、50/50以下がさらに好ましい。
一方、下側吸収層は、幅方向の中央領域において、非封止部が形成され、封止部は形成されない。これにより、下側吸収層の吸収容量を高めることができる。また、尿等が吸収性積層体の非肌面側へ移行しにくくなり、吸収性積層体を備えた吸収性物品において、尿等のバックシート側からの漏れが起こりにくくなる。なお下側吸収層の中央領域では、封止部が形成されないことにより、尿等の平面方向への拡散性が低下し、下側吸収層での尿等の吸収速度が低下するおそれがあるが、吸収性積層体は下側吸収層の肌面側に上側吸収層が存在するため、下側吸収層での吸収速度が低下した場合でも、尿等が吸収性積層体の肌面側に戻る心配が不要となる。
下側吸収層の中央領域は、上側吸収層の中央領域の封止部と重なるように設けられることが好ましく、より好ましくは、下側吸収層の中央領域は、上側吸収層の中央領域の封止部よりも幅方向の外方(幅方向に対して最も外方に位置する封止部よりも幅方向の外方)に延在するように設けられる。下側吸収層の中央領域の幅方向の長さは、上側吸収層の中央領域の幅方向の長さの0.7倍以上が好ましく、0.8倍以上がより好ましく、0.9倍以上がさらに好ましく、また1.5倍以下が好ましく、1.3倍以下がより好ましく、1.2倍以下がさらに好ましい。
封止部は、各吸収層が吸水しても、シート部材どうしの接合が維持されることが好ましい。吸収層が吸水すると、シート部材の間に配された吸水性樹脂が膨潤して、封止部においてシート部材どうしの接合が解けるおそれがある。この場合、吸水性樹脂が各吸収層から脱落したり、封止部における尿等の拡散性が低下することが想定される。従って、封止部は、吸収層が吸水しても、シート部材どうしの接合が維持されることが好ましい。なお、このように吸収層が構成されるために、各吸収層は、封止部においてシート部材どうしが溶着されていることが好ましい。
封止部でシート部材どうしが溶着される場合、シート部材は、封止部において部分的に溶着されることが好ましい。すなわち封止部には、シート部材どうしが溶着された溶着部と、シート部材どうしが溶着していない非溶着部が設けられることが好ましい。このように封止部に溶着部と非溶着部が設けられることにより、溶着部においてシート部材どうしが強固に接合されるとともに、非溶着部においては尿等の透過性が高められる。また、溶着部と非溶着部の代わりに、シート部材どうしが強固に溶着された強溶着部と、シート部材どうしが弱く溶着された弱溶着部を設けてもよい。溶着部と非溶着部、あるいは強溶着部と弱溶着部は、シート部材どうしを所定のパターンでヒートシールや超音波溶着することにより形成することができる。
上側吸収層と下側吸収層では、吸水性樹脂は接着剤によりシート部材に固定されていることが好ましい。すなわち、各吸収層のシート部材には接着剤が塗布されて接着剤層が設けられ、吸水性樹脂は当該接着剤層でシート部材に固定されていることが好ましい。接着剤層は、肌面側のシート部材と非肌面側のシート部材の少なくとも一方に設けられればよいが、好ましくは、接着剤層は両方のシート部材に設けられる。吸水性樹脂は、少なくとも一部が接着剤層に固定されていればよく、例えば、接着剤層に接する吸水性樹脂が接着剤層に固定されていればよい。吸水性樹脂が接着剤層によりシート部材に固定されていれば、吸水性樹脂の吸収前においては、吸水性樹脂がシート部材間で移動しにくくなり、吸収層における尿等の吸収能力が確保されやすくなる。吸水性樹脂の吸収後においても、ゲル化した吸水性樹脂がシート部材間で移動しにくくなる結果、吸水性樹脂が塊になって着用者に違和感を与えにくくなる。
接着剤層は、吸水性樹脂を固定しつつ、吸水性樹脂による吸水や膨潤を阻害しないことが好ましい。接着剤層を形成する方法としては、カーテンスプレー法、スパイラルコーティング法、オメガコーティング法、コーター法等を採用すればよい。
接着剤層に用いる接着剤としては、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム系、ポリイソプレン等のゴム系接着剤;スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等のスチレン系エラストマー;エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA);ポリオレフィン系エラストマー、ポリオレフィン系ワックス等を用いることができる。これらの接着剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ゴム系接着剤やスチレン系エラストマーを用いることが好ましい。
吸収性積層体の構成例について、図1〜図3を参照して説明する。図1は吸収性積層体の幅方向断面図を表し、図2は上側吸収層の一部切欠き平面図を表し、図3は下側吸収層の一部切欠き平面図を表す。矢印x、y、zはそれぞれ吸収性積層体の幅方向、長手方向、上下方向を表し、上下方向zにおいて、z1は肌面側を表し、z2は非肌面側を表す。図1〜図3には、上側吸収層の非封止部がストライプ状に配置された吸収性積層体の例を示したが、封止部や非封止部の配置や大きさは適宜調整可能であり、また上側吸収層と下側吸収層の大きさや配置も適宜調整可能である。
吸収性積層体10は、肌面側z1に配された上側吸収層11と、非肌面側z2に配された下側吸収層21とを有する。上側吸収層11は、シート部材12の間に吸水性樹脂13を有しパルプ繊維を有しないように構成され、下側吸収層21は、シート部材22の間に吸水性樹脂23を有しパルプ繊維を有しないように構成されている。吸収性積層体10では、シート部材12,22に接着剤が塗布されて接着剤層14,24が形成され、吸水性樹脂13,23が接着剤層14,24によりシート部材12,22に固定されている。
上側吸収層11は、シート部材12どうしが接合された封止部17,18と、シート部材12どうしが接合されない非封止部19とを有する。図2に示すように、上側吸収層11は、幅方向xの両側に端部領域15とこれらの間に位置する中央領域16を有し、端部領域15に封止部17が形成され、中央領域16に封止部18と非封止部19が形成されている。
下側吸収層21は、シート部材22どうしが接合された封止部27と、シート部材22どうしが接合されない非封止部29とを有する。図3に示すように、下側吸収層21は、幅方向xの両側に端部領域25とこれらの間に位置する中央領域26を有し、端部領域25に封止部27が形成され、中央領域26に非封止部29が形成され、封止部は形成されていない。
本発明の吸収性積層体は、上記のように構成された上で、上側吸収層の中央領域の非封止部における吸水性樹脂の量をA(g/m2)、下側吸収層の中央領域の非封止部における吸水性樹脂の量をB(g/m2)、上側吸収層の中央領域の封止部における吸水性樹脂の量をC(g/m2)としたときに、A>B>Cの関係を満たすように構成されている。このように吸収性樹脂が配されることにより、上側吸収層と下側吸収層で好適に尿等が吸収されるようになる。これについて下記に詳しく説明する。
上側吸収層の中央領域の封止部における吸水性樹脂の量Cが、上側吸収層の中央領域の非封止部における吸水性樹脂の量Aよりも少ないことにより、上側吸収層で受けた尿等が封止部において平面方向に拡散しやすくなるとともに、封止部を通って下側吸収層に移行しやすくなる。上側吸収層の封止部で平面方向に拡散した尿等は、より多くの吸水性樹脂が配された上側吸収層の非封止部において好適に吸収・固定されることとなる。
一方、下側吸収層の中央領域の非封止部における吸水性樹脂の量Bは、上側吸収層の中央領域の非封止部における吸水性樹脂の量Aよりも少なく、かつ上側吸収層の中央領域の封止部における吸水性樹脂の量Cよりも多くなっている。このように下側吸収層に吸水性樹脂が配されることにより、下側吸収層の吸収容量を高めることができるとともに、下側吸収層の中央領域に封止部が形成されなくても、尿等の下側吸収層の平面方向への拡散性を確保しやすくなる。また、下側吸収層の非封止部に配される吸水性樹脂の量が過剰とならない(すなわちB<Aとの関係を満たす)ことにより、吸水性樹脂の吸水によってゲル形成し、尿等の拡散や吸水性樹脂への浸透を阻害しても、尿等の吸収に寄与しない吸水性樹脂の量を極力減らすことができる。
上側吸収層の中央領域の非封止部に配される吸水性樹脂の量Aは、上側吸収層の吸収容量を高める観点から、200g/m2以上が好ましく、250g/m2以上がより好ましく、300g/m2以上がさらに好ましい。上側吸収層の中央領域の非封止部に配される吸水性樹脂の量Aの上限は特に限定されないが、例えば1000g/m2以下が好ましく、800g/m2以下がより好ましく、600g/m2以下がさらに好ましく、これにより、上側吸収層の非封止部の吸水性樹脂が吸水しても封止部が好適に維持されやすくなる。
下側吸収層の中央領域の非封止部に配される吸水性樹脂の量Bは、下側吸収層の吸収容量を高める観点から、70g/m2以上が好ましく、100g/m2以上がより好ましく、150g/m2以上がさらに好ましい。一方、下側吸収層の中央領域の非封止部に配される吸水性樹脂の量Bの上限としては、下側吸収層における尿等の拡散性を確保し、また尿等の吸収に有効に寄与する吸水性樹脂の割合を増やす観点から、400g/m2以下が好ましく、350g/m2以下がより好ましく、300g/m2以下がさらに好ましい。
上側吸収層の中央領域の非封止部に配される吸水性樹脂の量A(g/m2)と下側吸収層の中央領域の非封止部に配される吸水性樹脂の量B(g/m2)の比A/Bは、例えば1.2以上が好ましく、1.3以上がより好ましく、1.4以上がさらに好ましく、また4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.5以下がさらに好ましい。
上側吸収層の中央領域の封止部に配される吸水性樹脂の量Cは、上側吸収層の封止部における尿等の拡散性と透過性を確保する観点から、50g/m2以下が好ましく、40g/m2以下がより好ましく、35g/m2以下がさらに好ましい。一方、上側吸収層の中央領域の封止部に配される吸水性樹脂の量Cの下限は特に限定されないが、少量の吸水性樹脂が配されていることが好ましく、これにより上側吸収層の吸収容量を高めることができるとともに、上側吸収層の平面方向への拡散性を高めることができる。すなわち、上側吸収層の中央領域の封止部に吸水性樹脂が配されていれば、吸水性樹脂が吸水してゲル化することによって封止部における尿等の透過性が抑えられ、封止部において上側吸収層の平面方向への拡散性を高めることができる。特に本発明の吸収性積層体は、下側吸収層の中央領域に封止部が形成されないことによって、下側吸収層の平面方向への拡散性が若干低下する傾向となるため、吸収性積層体の平面方向への拡散性は上側吸収層によってできるだけ確保されるように形成されることが好ましい。その結果、上側吸収層と下側吸収層に配された吸水性樹脂のより多くを吸収に寄与させることが可能となる。上側吸収層の中央領域の封止部に配される吸水性樹脂の量Cの下限は、例えば5g/m2以上が好ましく、10g/m2以上がより好ましく、15g/m2以上がさらに好ましい。
上記に説明した吸水性樹脂の量A、B、Cは、上側吸収層または下側吸収層の封止部または非封止部における単位面積当たりの吸水性樹脂の量を表す。上側吸収層の中央領域の非封止部における吸水性樹脂の量A(g/m2)は、上側吸収層の中央領域の全ての非封止部に配された吸水性樹脂の量を、上側吸収層の中央領域の非封止部の面積で除することにより求める。下側吸収層の中央領域の非封止部における吸水性樹脂の量B(g/m2)は、下側吸収層の中央領域の非封止部に配された吸水性樹脂の量を、下側吸収層の中央領域の非封止部の面積で除することにより求める。上側吸収層の中央領域の封止部における吸水性樹脂の量C(g/m2)は、上側吸収層の中央領域の全ての封止部に配された吸水性樹脂の量を、上側吸収層の中央領域の封止部の面積で除することにより求める。
上側吸収層では尿等ができるだけ速やかに吸収・固定されることが好ましい。これにより、吸収性積層体を備えた吸収性物品において、尿等のトップシート側への液戻りを抑えることができる。このような観点から、上側吸収層の中央領域の非封止部に配される吸水性樹脂は吸水速度が速いものを用いることが好ましく、具体的には、上側吸収層の中央領域の非封止部に配される吸水性樹脂は、ボルテックス法による吸水速度が20秒以下であることが好ましく、18秒以下がより好ましく、16秒以下がさらに好ましい。当該吸水速度の下限は特に限定されないが、5秒以上が好ましく、8秒以上がより好ましい。
一方、下側吸収層では上側吸収層よりも吸収速度の遅い吸水性樹脂を用いることが好ましく、これにより下側吸収層での拡散性を高めることができる。このような観点から、下側吸収層の中央領域の非封止部に配される吸水性樹脂は、上側吸収層の中央領域の非封止部に配される吸水性樹脂よりも、ボルテックス法による吸水速度が遅いことが好ましい。例えば、下側吸収層の中央領域の非封止部に配される吸水性樹脂は、上側吸収層の中央領域の非封止部に配される吸水性樹脂よりも、ボルテックス法による吸水速度が5秒以上遅いことが好ましく、10秒以上遅いことがより好ましく、20秒以上遅いことがさらに好ましい。
吸水性樹脂のボルテックス法による吸水速度は、JIS K 7224(1996)に従って測定する。具体的には次のようにして吸水速度を求める。容量100mLのガラスビーカーに、生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水)50mLとマグネチックスターラーチップ(中央部直径8mm、両端部直径7mm、長さ30mmで、表面がフッ素樹脂コーティングされているもの)を入れ、ビーカーをマグネチックスターラー(アズワン株式会社製HPS−100)に載せる。マグネチックスターラーの回転数を600±60rpmに調整し、生理食塩水を撹拌する。吸水性樹脂2.0gを、撹拌中の食塩水の渦の中心部で液中に投入し、吸水性樹脂のビーカーへの投入が完了した時点で計時を開始し、スターラーチップが試験液に覆われた時点(渦が消え、液表面が平らになった時点)で計時を止め、その時間(秒)を吸水速度として記録する。測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とする。測定は、温度23±2℃、相対湿度50±5%で行い、測定の前に吸水性樹脂を同環境で24時間以上保持した後に測定する。
吸収性積層体において尿等が速やかに吸収されるようにする点からは、上側吸収層は次のように構成されることも好ましい。すなわち、上側吸収層は、肌面側に配されるシート部材の目付が、非肌面側に配されるシート部材の目付よりも大きいことが好ましい。上側吸収層の肌面側に配されるシート部材の目付をより大きく形成することにより、当該シート部材による毛細管効果をより奏効させることが可能となる。そのため、吸収性積層体が受けた尿等を、上側吸収層の肌面側のシート部材によって、上側吸収層の内部に速やかに引き込むことが可能となり、その結果、尿等の速やかな吸収を実現することができる。また、このように上側吸収層を構成することによって、吸収性積層体を肌面側から触れた際に、あるいは吸収性積層体を備えた吸収性物品をトップシート側から触れた際に、上側吸収層の吸水性樹脂によるざらつき感を低減することができる。
下側吸収層も、肌面側に配されるシート部材の目付が、非肌面側に配されるシート部材の目付よりも大きく形成されていてもよい。これにより、上側吸収層を透過した尿等が速やかに下側吸収層に移行しやすくなる。
上側吸収層や下側吸収層において、尿等がシート部材に速やかに引き込まれるようにする観点から、シート部材は不織布から構成されていることが好ましい。特に、比較的嵩高に形成され、尿等の引き込み力に優れた不織布として、エアスルー不織布またはスパンレース不織布をシート部材として用いることが好ましい。
不織布から構成されたシート部材は、熱融着性繊維を含有していることも好ましい。熱融着性繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維や、PET等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド繊維等が挙げられる。シート部材がこのように構成されていれば、封止部においてシート部材どうしを溶着することが容易になり、また、上側吸収層や下側吸収層が吸水しても、シート部材どうしの接合が維持されやすくなる。特に上側吸収層は、中央領域の封止部における尿等の拡散性を確保する点から、肌面側と非肌面側のシート部材が熱融着性繊維を含有する不織布から構成されていることが好ましい。
熱融着性繊維を含有する不織布は、少なくともポリエチレン樹脂を含む繊維から構成されていることが好ましい。このように構成された不織布は、封止部をヒートシールや超音波溶着で形成することにより、シート部材どうしを強固に接合することができる。また、ポリエチレン樹脂を含む繊維から構成された不織布がエアスルー不織布であれば、繊維どうしの接着も強固に形成することができ、例えば上側吸収層や下側吸収層が吸水して膨潤しても、シート部材が破断しにくくなる。
ポリエチレン樹脂を含む繊維は、樹脂としてポリエチレンのみを有していてもよく、さらに他の樹脂を有していてもよいが、ポリエチレン樹脂と当該ポリエチレン樹脂よりも高融点の樹脂とを有することが好ましい。このような複数の樹脂から構成された繊維としては、芯鞘構造やサイドバイサイド構造等の複合繊維を用いることが好ましく、ポリエチレン樹脂は複合繊維の一成分(例えば、芯鞘構造の鞘成分や、サイドバイサイド構造の一成分)を構成することが好ましい。
従って、上側吸収層および/または下側吸収層のシート部材は、ポリエチレン樹脂を含む繊維から構成されたエアスルー不織布からなることが好ましく、特に上側吸収層は、吸水して膨潤しても中央領域の封止部が維持されるようにする点から、ポリエチレン樹脂を含む繊維から構成されたエアスルー不織布からなることが好ましい。
上側吸収層は、シート部材の間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように構成された層構造を1つのみ有していてもよく、複数有していてもよい。後者の場合は、上側吸収層の中央領域の封止部が互いに重なるように複数積層されることが好ましい。
下側吸収層も、シート部材の間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように構成された層構造を1つのみ有していてもよく、複数有していてもよい。なお、下側吸収層は中央領域に封止部を有しておらず、尿等の上下方向への透過性に劣るため、下側吸収層は、シート部材の間に吸水性樹脂を有しパルプ繊維を有しないように構成された層構造を1つのみ有することが好ましい。
次に本発明の吸収性物品について説明する。本発明の吸収性物品は、本発明の吸収性積層体が設けられている点に特徴を有し、本発明の吸収性積層体がトップシートとバックシートの間に配されている。吸収性物品の態様としては、尿パッド(失禁パッドを含む)、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等が示される。本発明の吸収性物品は、上記に説明した吸収性積層体が設けられることにより、優れた吸収性能を有するものとなる。
吸収性物品の形状は特に限定されない。吸収性物品が例えば、尿パッド、生理用ナプキンである場合、吸収性物品の形状としては、長方形、砂時計形、ひょうたん形、羽子板形等が示される。
吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、左右両側に止着部材が備えられ、当該止着部材により着用時にパンツ型に形成するテープタイプの使い捨ておむつであってもよく、ウェスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツタイプの使い捨ておむつであってもよい。パンツタイプの使い捨ておむつは、本発明の吸収性積層体がトップシートとバックシートの間に配された吸収性本体が、パンツ形状に形成された外装部材の肌面側に取り付けられたものであってもよい。
トップシートは、吸収性積層体の肌面側に設けられ、液透過性である。トップシートは、吸収性物品の着用の際、着用者の肌に面するように設けられる。トップシートとしては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や;ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたもの等を用いることができる。また、トップシートとして、織布、編布、孔が形成されたプラスチックフィルムを用いてもよい。
バックシートは、吸収性積層体の非肌面側に設けられ、液不透過性である。バックシートは、吸収性物品の着用の際、着用者とは反対側、すなわち外側に面するように設けられる。バックシートとしては、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布や、プラスチックフィルム等を用いることができる。また、不織布とプラスチックフィルムとの積層体を用いてもよい。
トップシートやバックシートが不織布から構成される場合、不織布としては、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、SMS不織布等を用いることが好ましい。
吸収性物品は、肌面側の幅方向の両側に立ち上がりフラップが設けられることが好ましい。立ち上がりフラップを設けることにより、尿等の体液の横漏れが防止される。立ち上がりフラップは、例えば、トップシートの幅方向の両側に、長手方向に延在するサイドシートを接合し、サイドシートの幅方向内方(立ち上がりフラップが立ち上がったときの上端近傍)に弾性部材を設けることにより形成される。このようにサイドシートと弾性部材とを設けることにより、弾性部材の収縮力によりサイドシートの幅方向内方が着用者の肌に向かって立ち上がり、立ち上がりフラップが形成される。立ち上がりフラップまたはサイドシートは、液不透過性のプラスチックフィルムや液不透過性の不織布等により構成されることが好ましい。
本発明の吸収性物品について、尿パッドを例に挙げ、図4および図5を参照して説明する。なお、本発明の吸収性物品は、図面に示された実施態様に限定されるものではない。図4および図5には、図1〜図3に示した吸収性積層体を備えた吸収性物品を示した。図4は、吸収性物品として尿パッドをトップシート側から見た平面図を表し、図5は、図4に示した吸収性物品のV−V断面図を表す。
吸収性物品1は、液透過性のトップシート2と液不透過性のバックシート3とこれらの間に設けられた吸収性積層体10とを有する。トップシート2は、吸収性積層体10の肌面側に配され、尿等の体液を透過する。トップシート2を透過した体液は、吸収性積層体10に収容される。バックシート3は吸収性積層体10の非肌面側に配され、体液が外部へ漏れるのを防ぐ。
吸収性積層体10は、トップシート2側から上側吸収層11と下側吸収層21を有する。吸収性積層体10の詳細な構成は上記に説明した通りである。例えば図1を参照すると、上側吸収層11は、シート部材12どうしが接合された封止部17,18と、シート部材12どうしが接合されない非封止部19とを有し、幅方向xの両側の端部領域に封止部17が形成され、それらの間の中央領域に封止部18と非封止部19が形成されている。下側吸収層21は、シート部材22どうしが接合された封止部27と、シート部材22どうしが接合されない非封止部29とを有し、幅方向xの両側の端部領域に封止部27が形成され、それらの間の中央領域に非封止部29が形成され、封止部は形成されていない。そして、上側吸収層11の中央領域の非封止部19における吸水性樹脂の量をA(g/m2)、下側吸収層21の中央領域の非封止部29における吸水性樹脂の量をB(g/m2)、上側吸収層11の中央領域の封止部18における吸水性樹脂の量をC(g/m2)としたときに、A>B>Cの関係を満たすように構成されている。吸収性物品1は、このように構成された吸収性積層体10を備えることにより、優れた尿等の吸収性能を示すものとなる。
トップシート2と吸収性積層体10との間には上側台紙4が設けられることが好ましい。また、バックシート3と吸収性積層体10との間には下側台紙5が設けられることが好ましい。上側台紙4と下側台紙5は、尿等の体液の拡散性を向上させたり、吸収性物品1が形崩れしにくくするために設けられる。上側台紙4は液透過性であることが好ましく、下側台紙5は、液透過性であっても液不透過性であってもよい。上側台紙4と下側台紙5としては、ティッシュペーパーやクレープ紙等を用いることもできる。
吸収性物品1には、トップシート2の幅方向xの両側に、長手方向yに延在するサイドシート6が設けられることが好ましい。サイドシート6は、トップシート2の幅方向xの両側に接合される。図4および図5では、サイドシート6に、各々、幅方向xの内方に起立用弾性部材7が3本設けられている。吸収性物品1の使用時には、起立用弾性部材7の収縮力によりサイドシート6の内方が着用者の肌に向かって立ち上がり、これにより立ち上がりフラップ形成され、尿等の排泄物の横漏れが防止される。