JP2019085370A - Slc28又は29遺伝子異常症の治療剤又は予防剤 - Google Patents

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健介 三宅
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Abstract

【課題】TLR7及びTLR8を認識する抗体の新規用途を提供する。【解決手段】TLR7又はTLR8を認識する抗体を含む、SLC28又はSLC29遺伝子異常症の治療剤又は予防剤。【選択図】なし

Description

本発明は、SLC28又は29遺伝子異常症の治療剤又は予防剤に関する。また、本発明は、ヌクレオシド蓄積関連疾患の治療剤又は予防剤に関する。
Toll様受容体(Toll-like receptor;TLR)は病原体センサーの一つのファミリーを形成しており、病原体成分に応答して活性化シグナルを誘導し、感染防御反応を誘導する。TLRは感染防御に重要であるばかりでなく、自己免疫疾患などの病態における炎症誘導にも関わっている。
ヒトにおける約10種類のTLRのうちTLR3、TLR7、TLR8、及びTLR9は、細胞内小器官である小胞体に分布し、細菌やウイルス由来の核酸を認識する。TLR7及びTLR8は1本鎖RNAを認識し、TLR9はCpGモチーフを含む非メチル化1本鎖DNA(CpG−DNA)を認識する。しかし、ウイルス特有の2本鎖RNAとは異なり、一本鎖RNAやDNAは宿主由来の核酸と大きな違いはなく、TLRによるリガンド認識機構が厳密に制御されなければ、自己に対する反応を惹起し、自己免疫疾患に陥ってしまう。
この点、TLR7及びTLR8による自己免疫反応は、核酸を認識する場所をエンドリソソームに限定することによって調節されている(非特許文献1)。定常時、細胞外にある自己の核酸はRNaseにより急速に分解されるため、細胞内のエンドリソソームには到達せず、TLR7及びTLR8には認識されない。一方、微生物の核酸は、細菌の細胞壁やウイルス粒子に保護されているのでエンドリソソームに到達し、そこで初めて放出され、TLR7及びTLR8に認識される。
これに対し、抗微生物ペプチドや自己抗体との相互作用によって自己の核酸が分解に耐性を有するようになり、エンドリソソームに到達できるようになると、TLR7依存性自己免疫反応等が引き起こされる。実際、TLR7については、乾癬や全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)との関連が示唆されている(非特許文献2)。
したがって、TLR7は、乾癬やSLE等のTLR7依存性自己免疫疾患の治療標的と考えられ、これまでにTLR7の発現や機能を抑制する様々な方法が提案されている。具体的には、TLR7に対して拮抗作用を持つオリゴDNAや、TLR7の発現を抑制するマイクロRNA等を用いた方法が試みられている。しかしながら、一般に核酸医薬の安全性は未知数であり、また、TLR7の機能を完全に抑制すると、感染症等の危険性を招く可能性も否定できない。
安全性及び特異性の面では抗体医薬が望ましいが、上述のとおり、TLR7は、自己免疫反応を制限するためにエンドリソソームに局在し、細胞表面からは隔絶されており、細胞表面にのみ作用する抗体は使用できないと考えられており、TLR7に対する抗体医薬を使用する試みはこれまでほとんどなされていない。しかし、最近になって、TLR7やTLR9の細胞外ドメインに結合する抗体が創製され、その抗体医薬を用いて炎症性疾患を治療できることが報告されている(特許文献1)。
国際公開第2014/174704号
Barton, G.et al. d Medzhitov, R. Nat Immunol 7, 49-56. (2006). Lande, R. et al. Nature 449, 564-569 (2007).
本発明者らは、TLR7を認識する抗体の有用性について研究を重ねた。TLR7を認識する抗体について、特許文献1に記載されるような炎症性疾患を治療するだけではなく、作用機序が詳細に知られていない疾患も含めて、新たな用途の検討を行った。
そこで、本発明は、TLR7及びTLR8を認識する抗体の新規用途を提供することを課題とする。なお、ヒトにおいてTLR8は後述するようにTLR7と同様に作用するため、TLR8を認識する抗体は、TLR7を認識する抗体と同様の用途へ適用することが可能である。
ここで、ヌクレオシドをリソソームから細胞質へ輸送するトランスポーターをコードするヌクレオシドトランスポーターファミリー(SLC28又は29遺伝子)の異常により発症するSLC28又は29遺伝子異常症がアラブ家系を中心に知られている。SLC28又は29遺伝子異常症の治療等を目的として、抗炎症作用を持つステロイドや、サイトカインをターゲットとした抗体医薬が用いられているが、それらに抵抗性を有する場合があり、より有効な医薬や治療方法及び予防方法が望まれている。
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねている中で、SLC28又は29遺伝子異常症に着目し、リソソーム内へ蓄積したヌクレオシドがTLR7及びTLR8の応答を亢進することにより発症しているという仮説を立て検証した。
本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、TLR7が、RNAの存在下でヌクレオシドをリガンドとして特異的に応答することを見出し、仮説を証明することができた。
本発明は、SLC28又は29遺伝子異常症に着目し、研究を重ねた中で、TLR7又はTLR8を認識する抗体が、SLC28又は29遺伝子異常症におけるリソソーム内へのヌクレオシド蓄積に伴うTLR7又はTLR8の活性化を解消し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本願は以下の発明を包含する。
[1]
TLR7又はTLR8を認識する抗体を含む、SLC28又はSLC29遺伝子異常症の治療剤又は予防剤。
[2]
TLR7又はTLR8を認識する抗体を含む、リソソーム内へのヌクレオシド蓄積に関連する疾患の治療剤又は予防剤。
[3]
前記抗体が、TLR7又はTLR8を阻害する、[1]又は[2]に記載の治療剤又は予防剤。
[4]
前記抗体が、TLR7又はTLR8のN末端を認識する、[1]〜[3]のいずれかに記載の治療剤又は予防剤。
[5]
前記抗体が、TLR7のN末端における1位〜356位の領域を認識する、[1]〜[4]のいずれかに記載の治療剤又は予防剤。
[6]
前記抗体が、TLR7のN末端における243位〜356位の領域を認識する、[1]〜[5]のいずれかに記載の治療剤又は予防剤。
[7]
前記抗体が、以下の少なくとも1つのアミノ酸配列からなるTLR7のN末端を認識する、[1]〜[6]のいずれかに記載の治療剤又は予防剤:
(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列;
(2)配列番号:2で表されるアミノ酸配列;
(3)配列番号:1及び2のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸の欠失、置換又は付加を有するアミノ酸配列;及び
(4)配列番号:1及び2のいずれかで表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列。
[8]
前記抗体が、以下のいずれかである、[1]〜[7]のいずれかに記載の治療剤又は予防剤:
(1)配列番号:11で表されるアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号:12で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖と、を含む抗体;
(2)配列番号:11で表されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸の欠失、置換又は付加を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号:12で表されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸の欠失、置換又は付加を有するアミノ酸配列からなる軽鎖と、を含む抗体;及び
(3)配列番号:11で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号:12で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖と、を含む抗体。
[9]
TLR7又はTLR8を認識する抗体を含む、リソソーム内へのヌクレオシド蓄積に関連する疾患又はSLC28又は29遺伝子異常症の診断に用いられるキット。
本発明は、SLC28又は29遺伝子異常症に対して有効な治療剤又は予防剤を提供することができる。
SLC29A3遺伝子欠損マウスの各器官におけるヌクレオシドの量を示す図(上段)並びにマウス及びヒトTLR7のグアノシン(G)及びデオキシグアニシン(dG)に対する反応性、他のヌクレオシドに対する反応性を示す図(下段)である。 SLC29A3遺伝子欠損マウス、SLC29A3遺伝子欠損及びTLR7欠損のダブルノックアウト(dKO)マウスにおいて観察される脾臓の質量及び総細胞数の変化を示す図(左)、マクロファージ、赤芽球、好中球、B細胞、及びT細胞の割合の変化を示す図(中央)、並びに末しょう血における単球及び血小板の割合の変化を示す図(右)である。 SLC29A3遺伝子欠損マウス、SLC29A3遺伝子欠損及びTLR7欠損のダブルノックアウト(dKO)マウスにおける肝臓の炎症像、AST及びALTの変化、肝臓マクロファージの比率を示す図(左)、M-CSF、IL-12 p40、及びCXCL13の変化を示す図(右)である。 SLC29A3遺伝子欠損マウス、SLC29A3遺伝子欠損及びTLR7欠損のダブルノックアウト(dKO)マウスの脾臓におけるフローサイトメトリーの結果を示す図である。 B細胞、FcγRIVlow/highマクロファージにおけるリアルタイムPCRの結果を示す図である。 SLC29A3遺伝子欠損マウスにおけるファゴサイトーシスアッセイの結果を示す図(左)、腹腔マクロファージおよび骨髄由来マクロファージにおけるヌクレオシドの蓄積を示す図(右)である。 SLC29A3遺伝子欠損マウス、SLC29A3遺伝子欠損及びTLR7欠損のダブルノックアウト(dKO)マウスにおける電子顕微鏡解析(左)および超解像顕微鏡解析(右)の結果を示す図である。 SLC29A3遺伝子欠損マウス、SLC29A3遺伝子欠損及びTLR7欠損のダブルノックアウト(dKO)マウスにおけるTLR7反応の亢進を示す図である。 J774細胞においてTLR7およびSLC29A3が同一のファゴソームに集積することを示す図である。 SLC29A3遺伝子欠損マウスのpDCsにおいてTLR7反応は亢進されないことを示す図(左)、自己抗体産生は起こらないことを示す図(右)である。 SLC29A3欠損細胞におけるTLR7反応亢進がH症候群患者で認められた変異を持つSLC29A3の補完では回復しないことを示す図である。 G208R患者における末梢血におけるヒスチオサイトーシスを示す図(上)、G/dGの蓄積及びTLR7反応の亢進性を示す図(下)である。 4から8週令のSLC29A3遺伝子欠損マウスに抗TLR7抗体および対照抗体を週に一回200マイクログラムずつ2か月にわたって投与し、処置したマウスにおける脾臓細胞数、末梢血中の血小板数、IL-12の濃度、及びCXCL13の濃度を示す図である。マウスの数はそれぞれ15。**p<0.01, ***p<0.001. n.s.有意差無し
〔SLC28又は29遺伝子異常症或いはリソソーム内へのヌクレオシド蓄積に関連する疾患の治療剤又は予防剤〕
本発明に係る治療剤又は予防剤は、TLR7又はTLR8を認識する抗体(以下、「抗TLR7抗体」又は「抗TLR8抗体」ともいい、これらを併せて「本発明に係る抗体」ともいう。)を含む。また、本発明に係る治療剤又は予防剤は、SLC28又は29遺伝子異常症の治療又は予防或いはリソソーム内へのヌクレオシド蓄積に関連する疾患(以下、「ヌクレオシド蓄積関連疾患」ともいう。)の治療又は予防に用いられる。TLR7の機能を発現するために、主としてTLR7のC末端側が重要であると考えられていたところ、本発明に係る抗体は、具体的にはTLR7又は8のN末端、特にエンドリソソーム内で切断される細胞外メイン及びその周辺を認識し得る。
本明細書において、「ヌクレオシド」とは、リボヌクレオシド、デオキシリボヌクレオシド、及びこれらの誘導体を意味し、具体的には、アデノシン(以下、単に「A」とも示す。)、グアノシン(以下、単に「G」とも示す。)、5−メチルウリジン、ウリジン(以下、単に「U」とも示す。)、シチジン(以下、単に「C」とも示す。)、デオキシアデノシン(以下、単に「dA」とも示す。)、デオキシグアノシン(以下、単に「dG」とも示す。)、チミジン(以下、単に「T」とも示す。)、デオキシウリジン(以下、単に「dU」とも示す。)、及びデオキシシチジン(以下、単に「dC」とも示す。)、並びにこれらの誘導体が挙げられる。誘導体としては、例えば、8−OHG(8−ヒドロキシグアノシン)、8−OHdG(8−ヒドロキシ−2’―デオキシグアノシン)、7−MetG(7−メチルグアノシン)、5−MetU(5−メチルウリジン)が挙げられる。
(抗TLR7抗体)
以下、抗TLR7抗体について詳細に説明する。
本明細書において、「TLR7のN末端」とは、TLR7のタンパク質において、アミノ基が結合しておらず、かつカルボキシル基が結合しているアミノ酸単位側の構造、特に、エンドリソソーム内で切断される細胞外ドメインのうち、TLR7のN末端における440位又は454位の領域より前半を意味する。なお、細胞外ドメインとは、TLR7のN末端から1位〜818位の領域を意味する。また、「TLR7のC末端」とは、TLR7のタンパク質において、カルボキシル基が結合しておらず、かつアミノ基が結合しているアミノ酸単位側の構造、特に、TLR7から細胞外ドメインを除いた構造を意味する。
TLR7のタンパク質において、アミノ基が結合しておらず、かつカルボキシル基が結合しているアミノ酸単位を1位として、TLR7のN末端からTLR7のC末端へ向けて、2位、3位という。
抗TLR7抗体は、例えば、TLR7のN末端における1位〜166位、1位〜242位、1位〜306位、1位〜356位、1位〜440位、1位〜454位の領域を認識し、好ましくは1位〜356位の領域を認識し、より好ましくは167位〜356位の領域を認識し、さらに好ましくは243位〜356位の領域を認識する。
抗TLR7抗体は、具体的に、以下の少なくとも1つのアミノ酸配列からなるTLR7のN末端を認識する:
(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列;
(2)配列番号:2で表されるアミノ酸配列;
(3)配列番号:1及び2のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸の欠失、置換又は付加を有するアミノ酸配列;及び
(4)配列番号:1及び2のいずれかで表されるアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列。
TLRは、マウスで12種類、ヒトで10種類のファミリーが知られている。TLR1、TLR2、TLR4、TLR5、及びTLR6は細胞表面に分布し、細菌膜成分であるリポタンパク質、LPS等の糖脂質、フラジェリン等のタンパク質を認識する。TLR3、TLR7、TLR8、及びTLR9は細胞内小器官である小胞体に分布し、細菌やウイルス由来の核酸を認識する。また、TLRはI型の膜タンパク質で細胞外にLeucine rich repeat(LRR)を有する。
本発明に係る抗体は、マウスTLR7やヒトTLR7、マウス/ヒトのキメラTLR7のN末端を認識するが、TLR7のN末端であれば特に限定されない。
本明細書において、「アミノ酸」は、その最も広い意味で用いられ、天然のアミノ酸のみならずアミノ酸変異体及び誘導体といったような非天然アミノ酸を含むものを意味する。アミノ酸の例としては、天然タンパク原性L−アミノ酸;D−アミノ酸;アミノ酸変異体及び誘導体等の化学修飾されたアミノ酸;ノルロイシン、β−アラニン、オルニチン等の天然非タンパク原性アミノ酸;アミノ酸の特徴である当業界で公知の特性を有する化学的に合成された化合物等が挙げられるがこれらに限定されない。非天然アミノ酸の例としては、α−メチルアミノ酸(α−メチルアラニン等)、D−アミノ酸、ヒスチジン様アミノ酸(2−アミノ−ヒスチジン、β−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、α−フルオロメチル−ヒスチジン、α−メチル−ヒスチジン等)、側鎖に余分のメチレンを有するアミノ酸(「ホモ」アミノ酸)及び側鎖中のカルボン酸官能基アミノ酸がスルホン酸基で置換されるアミノ酸(システイン酸等)が挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において、「1又は複数のアミノ酸の欠失、置換又は付加を有する」という場合、欠失、置換等されるアミノ酸の個数は、結果として得られるCDRのセットが抗原認識機能を保持する限り特に限定されない。また、ここでの「複数」は、2以上の整数を意味し、好ましくは、数個例えば2〜5個、より好ましくは2個、3個、4個である。各CDRにおける欠失、置換又は付加の位置は、結果として得られるCDRのセットが抗原認識機能を保持する限り、各CDRにおけるN末端でも、C末端でも、その中間であってもよい。
本明細書において、「配列番号:Xで表されるアミノ酸配列とY%以上の同一性を有する」とは、2つのポリペプチドのアミノ酸配列の一致が最大になるように整列(アライメント)させたときに、共通するアミノ酸残基数の、配列番号:Xに示す全アミノ酸数に対する割合が、Y%以上であることを意味する。
本発明に係る抗体は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。また、本発明に係る抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEのいずれのアイソタイプであってもよい。
本発明に係る抗体は、細胞表面のTLR7にそれぞれ結合してその機能を阻害する限り、マウス抗体、ヒト型CDR移植抗体、ヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体、又は完全ヒト抗体であってもよく、低分子抗体であってもよいが、これらに限定されない。
ヒト型CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体のCDRを、ヒト抗体のCDRで置換した抗体である。ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体に由来する可変領域と、ヒト抗体に由来する定常領域からなる抗体である。また、ヒト化抗体とは、ヒト以外の動物の抗体において、安全性の高い一部の領域を残して、ヒトの抗体に由来する部分を組み込んだものをいい、ヒト型キメラ抗体、及びヒト型CDR移植抗体を含む概念である。
本明細書において「低分子抗体」とは、抗体の断片又は抗体の断片に任意の分子を結合させたものであって、もとの抗体と同一のエピトープを認識するものを意味する。具体的には、VL、VH、CL及びCH1領域からなるFab;2つのFabがヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結されているF(ab′)2;VL及びVHからなるFv;VL及びVHを人工のポリペプチドリンカーで連結した一本鎖抗体であるscFvのほか、sdFv、Diabody、sc(Fv)2が挙げられるが、これらに限定されない。
(抗TLR7抗体の作製方法)
抗TLR7抗体の作製方法は限定されないが、例えば、モノクローナル抗体は、TLR7又はその断片で免疫した非ヒト哺乳動物から抗体産生細胞を単離し、これを骨髄腫細胞等と融合させてハイブリドーマを作製し、このハイブリドーマが産生した抗体を精製することによって得ることができる。また、ポリクローナル抗体は、TLR7はその断片で免疫した動物の血清から得ることができる。免疫に用いるTLR7の断片は、得られる抗体が細胞表面のTLR7に結合してその機能を阻害する限り特に限定されない。
特定のアミノ酸配列を有する抗体を作製する場合は、例えば、抗体をコードする核酸を含む発現ベクターで適当な宿主を形質転換し、この形質転換体を適当な条件で培養して抗体を発現させ、公知の方法に従って単離精製することによって、抗体を作製することができる。単離精製方法としては、例えば、プロテインA等を用いたアフィニティカラム、その他のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等が挙げられ、これらを適宜組み合わせることができる。
また、「ある抗体Xと同一のエピトープに特異的に結合する抗体Y」は、下記のようにエピトープの配列を決定してから作製することができる。
例えば、多数のランダムな配列のペプチドを固相担体に固定してアレイ化し、抗体Xと反応させ、酵素標識2次抗体で結合を検出して、抗体Xが特異的に結合するペプチドのアミノ酸配列を調べ、このアミノ酸配列と抗原タンパク質のアミノ酸配列の相同性を検索することによって、抗原タンパク質上のエピトープを決定することが可能である。固相担体に固定するペプチドを、予め、抗原タンパク質の部分ペプチド群としてもよい。また、抗原タンパク質の種々の部分ペプチドの存在下で、抗体Xと抗原タンパク質との結合をELISA法で検出し、競合活性の有無を調べることによっても、抗原タンパク質上のエピトープを決定することが可能である。
エピトープの配列を決定することができれば、これに特異的に結合する抗体Yは、公知の方法にしたがって当業者が作製することができる。例えば、エピトープ配列を含むペプチドを固相担体に固定し、当該ペプチドと種々の抗体の結合を検出することにより、同エピトープに特異的に結合する抗体を得ることができる。
ここで、「種々の抗体」としては、動物を抗原タンパク質又はその部分ペプチドで免疫することによって得たものを用いてもよいし、ファージディスプレイ法によって作製した抗体ライブラリ又は抗体フラグメントライブラリを用いてもよい。ファージディスプレイ法によるライブラリを用いる場合、エピトープ配列を含むペプチドを固相担体に固定しパニングを繰り返すことによって、同エピトープに特異的に結合する抗体Yを得ることもできる。
また、ヒトキメラ抗体及びヒトCDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体を産生するハイブリドーマのmRNAから抗体遺伝子をクローン化し、これをヒト抗体遺伝子の一部と遺伝子組換え技術で連結することによって作製することができる。
例えば、ヒト型キメラ抗体の場合、マウス抗体を産生するハイブリドーマのmRNAから逆転写酵素によりcDNAを合成し、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(LH)をPCRでクローニングして配列を解析する。次に、一致率の高い抗体塩基配列から、リーダー配列を含む5’プライマーを作製し、5’プライマーと可変部3’プライマーによって上記cDNAから、シグナル配列から可変領域の3’末端までをPCRでクローニングする。一方で、ヒトIgG1の重鎖及び軽鎖の定常領域をクローニングし、重鎖と軽鎖それぞれについて、マウス抗体由来可変領域と、ヒト抗体由来定常領域とをPCRによるOverlapping Hanging法で連結し、増幅する。得られたDNAを適当なベクターに挿入し、これを形質転換して、ヒト型キメラ抗体を得ることができる。
CDR移植抗体の場合、使用するマウス抗体可変部と最も相同性の高いヒト抗体可変部を選択してクローン化し、メガプライマー法を用いた部位選択的突然変異導入により、CDRの塩基配列を改変する。なお、フレームワーク領域を構成するアミノ酸配列をヒト化すると抗原との特異的な結合ができなくなる場合には、フレームワークの一部のアミノ酸をヒト型からラット型に変換してもよい。
「配列番号:Xに示されるアミノ酸配列において1又は複数のアミノ酸の欠失、置換又は付加を有するアミノ酸配列」からなるCDRや、「配列番号:Xで表されるアミノ酸配列とY%以上の同一性を有するアミノ酸配列」からなるCDRは、部位特異的変異導入法、ランダム変異導入法、チェーンシャフリング法、CDRウォーキング法などの公知の方法を用いて作製され得る。
これらの方法により、ファージディスプレイ法によってCDRに種々の変異を有する抗体又は抗体断片をファージ表面に提示させ、抗原を使用してスクリーニングすることにより、より親和性が成熟したCDRを得られることが当業者によく知られている(例えば、Wu et al., PNAS, 95:6037-6042(1998); Schier, R. et al., J. Mol. Bio. 263:551-567(1996); Schier, R. et al., J.Mol. Biol. 255:28-43(1996); Yang, W.P. et al., J. Mol. Biol., 254:392-403(1995))。本発明は、このような方法で成熟させたCDRを含む抗体も包含する。
その他の抗体の製造方法として、トリコスタチンA処理ニワトリB細胞由来DT40細胞株から抗体産生株を取得するAdlib法(Seo, H. et al., Nat. Biotechnol., 6:731-736, 2002)、マウス抗体遺伝子が破壊されヒト抗体遺伝子が導入されたマウスであるKMマウスを免疫してヒト抗体を作製する方法(Itoh,K. et al., Jpn. J. Cancer Res., 92:1313-1321, 2001;Koide, A. et al., J. Mol. Biol., 284:1141-1151, 1998)等があり、これらもN末端認識抗体の産生に応用することができる。
抗TLR7抗体が低分子抗体である場合、該低分子抗体をコードするDNAを用いて上記方法で発現させてもよいし、また、全長の抗体をパパイン、ペプシン等の酵素で処理して作製してもよい。
抗TLR7抗体は、作製方法や精製方法により、アミノ酸配列、分子量、等電点、糖鎖の有無、形態などが異なり得る。しかしながら、得られた抗体が、抗TLR7抗体と同等の機能を有している限り、その抗体は本発明に含まれる。例えば、抗TLR7抗体を、大腸菌等の原核細胞で発現させた場合、元の抗体のアミノ酸配列のN末端にメチオニン残基が付加される。しかし、本発明は、かかる抗体も包含する。
(抗TLR8抗体)
TLR8は、TLR7と同様に、RNAの存在下でヌクレオシドを認識する。また、TLR8は、TLR7と同様の構造や機能が様々に共通する。よって、抗TLR8抗体を含む治療剤又は予防剤は、抗TLR7を含む治療剤又は予防剤と同様に、SLC28又はSLC29遺伝子異常症或いはリソソーム内へのヌクレオシド蓄積に関連する疾患の治療又は予防に用いられる。また、TLR7及び抗TLR7抗体の説明を、TLR8及び抗TLR8抗体の説明として適用可能である。
抗TLR8抗体は、マウスTLR8やヒトTLR8、マウス/ヒトのキメラTLR8のN末端を認識し、TLR8のN末端であれば特に限定されないが、ヒトTLR8、マウス/ヒトのキメラTLR8のN末端を認識することが好ましく、ヒトTLR8のN末端を認識することがより好ましい。
本発明に係る治療剤又は予防剤として、抗TLR7抗体と抗TLR8抗体とを併用してもよい。TLR7がヌクレオシドの中でも特にG及びdGを認識することに対して、TLR8は特にUを認識し、その際にはORN(oligoribonucleotide)の存在が必要である。
本発明に係る抗体は、TLR7又はTLR8を阻害することが好ましい。これにより、ヌクレオシドがリガンドとしてTLR7又はTLR8を亢進することを抑制し、リソソーム内へのヌクレオシド蓄積に関連する疾患を治療又は予防する。
ヌクレオシド蓄積関連疾患としては、特に限定されず、リソソーム内へのヌクレオシド蓄積に基づく、色素過剰症、多毛症、肝脾腫、心奇形、難聴、性腺機能低下症、低身長、高血糖等の疾患(以下、これらをまとめて「H症候群」ともいう。)が挙げられる。
SLC28又は29遺伝子異常症としては、代表的にはSLC29A3遺伝子異常症が挙げられるが特に限定されず、SLC28又は29遺伝子異常に基づくH症候群が挙げられる。
例えば、理論に拘束されることを意図するものではないが、抗TLR7抗体又は抗TLR8抗体は、細胞表面のTLR7又はTLR8を認識し、当該細胞のTLR7又はTLR8応答を阻害することにより、リソソーム内にヌクレオシドが蓄積されていたとしても、免疫の異常な活性化を抑制してヌクレオシド蓄積関連疾患或いはSLC28又は29遺伝子異常症の治療又は予防に寄与すると考えられる。
本発明に係る抗体は、特に限定されないが、具体的には以下のいずれかが挙げられる。
(1)配列番号:11で表されるアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号:12で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖と、を含む抗体;
(2)配列番号:11で表されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸の欠失、置換又は付加を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号:12で表されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸の欠失、置換又は付加を有するアミノ酸配列からなる軽鎖と、を含む抗体;及び
(3)配列番号:11で表されるアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号:12で表されるアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖と、を含む抗体。
本発明に係る治療剤又は予防剤は、抗TLR7抗体又は抗TLR8抗体を有効成分として含み、薬学的に許容できる担体や添加物をさらに含んでいてもよい。
担体及び添加物の例として、水、食塩水、リン酸緩衝液、デキストロース、グリセロール、エタノール等の薬学的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ぺクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、界面活性剤等が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明に係る治療剤又は予防剤は、様々な形態、例えば、液剤(例えば注射剤)、分散剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、粉末剤、坐剤等とすることができる。好ましい態様は、注射剤であり、それを非経口(例えば、静脈内、経皮、腹腔内、筋内)で投与することが好ましい。
本明細書において、「治療又は予防」とは、疾患の治癒や寛解に加え、発症の防止又は遅延、疾患の進行の防止又は遅延、及び疾患に関連する少なくとも1つの症状の緩和のうち、少なくとも1つを生じさせることを意味する。
本発明に係る治療剤又は予防剤を、哺乳類(例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ウマ、サル、ブタ等)、特にヒトに投与する場合の投与量は、症状、患者の年齢、性別、体重、感受性差、投与方法、投与間隔、有効成分の種類、製剤の種類によって異なり、特に限定されないが、例えば、30μg〜1000mg、100μg〜500mg、100μg〜100mgを1回又は数回に分けて投与することができる。注射投与の場合、患者の体重により、1μg/kg〜5000μg/kg、3μg/kg〜3000μg/kgを1回又は数回に分けて投与してもよい。
(キット)
本発明に係るキットは、抗TLR7抗体又は抗TLR8抗体を含む。SLC28又は29遺伝子異常症或いはヌクレオシド蓄積関連疾患の診断に用いられる。また、本発明に係るキットは、好適には、SLC29A3遺伝子異常症の診断に用いられる。
キットは、その用途に応じて試薬や、治療剤又は予防剤と同様に担体や添加物を含んでいてもよく、更には緩衝液、容器、使用説明書等を含んでいてもよい。
(方法)
本発明に係る方法は、抗TLR7抗体又は抗TLR8抗体を、対象に投与する工程を含む。
本発明に係る方法においては、抗TLR7抗体又は抗TLR8抗体を含む治療剤又は予防剤を投与してもよい。
本発明に係る方法によれば、対象であるヒト又はその他の哺乳類等において、SLC28又は29遺伝子異常症或いはヌクレオシド蓄積関連疾患を治療又は予防することができる。あるいは、本発明の方法を他の用途、例えば診断方法として用いてもよい。
本明細書において引用されるすべての特許文献及び非特許文献の開示は、全体として本明細書に参照により組み込まれる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。当業者は、本発明の意義を逸脱することなく様々な態様に本発明を変更することができ、かかる変更も本発明の範囲に含まれる。
SLC29A3およびTLR7ノックアウトマウスの作製
SLC29A3ノックアウトマウスおよびTLR7ノックアウトマウスはCRISPR/CASシステムを用いて作製した。それぞれの遺伝子におけるgRNAのターゲット配列の検索はCRISPRdirect(http://crispr.dbcls.jp/)を利用して行い、SLC29A3ノックアウトマウスの作製には5'-agcttcttgatggttactcg-3'を、TLR7ノックアウトマウスの作製には5'-gaacagttggccaatctctc-3'をgRNAのターゲット配列として用いた。これらのgRNAターゲット配列をpKLV-U6gRNA(BbsI)-PGKpuro2ABFP Vector(Addgene plasmid 50946)にクローニングし、同ベクターを鋳型としてMEGAshortscript T7 Transcription Kit(ThermoFisher Scientific, USA)によりgRNAを合成した。また、pX458(Addgene plasmid 48138)内のhCAS9配列を鋳型とし、mMESSAGE mMACHIN T7 ULTRA Transcription Kit(ThermoFisher Scientific, USA)によりhCAS9 mRNAを合成した。SLC29A3およびTLR7ノックアウトマウスは、C57BL/6の胚にSLC29A3遺伝子およびTLR7遺伝子を標的とする両gRNAとhCAS9 mRNA、およびSLC29A3 遺伝子に対するgRNAにおける Repair Donorとなる一本鎖DNA(5'-tgcctctgaggacaatgtataccacagctccaatgctgtctacagagcccTGATAGCGTAAAGCACTGAGGAAGcgagtaaccatcaagaagctgaccaggaagccctgctggggaaactacta-3'、小文字はHomology Armを示し、大文字はノックイン配列を表す)をInjectionすることで作製した。Injection後の胚は偽妊娠雌マウスの卵管に戻し、得られた仔マウスをPCR法によりタイピングをすることでSLC29A3/TLR7ダブルノックアウト(dKO)マウスを同定した。具体的には、SLC29A3遺伝子用タイピングプライマー(Fw : 5'-CCAGCATGGACGAGAGATGTCTTC-3', Rv : 5'-GCACCATTGAAGCGATCCTCTGG-3') およびTLR7遺伝子用タイピングプライマー(Fw : 5'- GAGGGTATGCCGCCAAATCTAAAGAATC-3', Rv : 5'- CTGATGTCTAGATAGCGCAATTGC-3')を用いてPCRを行い、DNA/RNA分析用マイクロチップ電気泳動装置MultiNA(SHIMAZU、日本)を用いてPCR産物の解析を行った。Repair Donorがノックインされたアレルを有するマウスの選択を行った。その後、1匹のSLC29A3/TLR7 dKOマウスと野生型C57BL/6マウスを交配し、得られたF1マウスを用いて最終的にSLC29A3ノックアウトマウスおよびSLC29A3/TLR7 dKOマウスを作製した。
マウスおよびTLR
野生型C57BL/6マウスおよび野生型Balb/cマウスはJapan SLC、Inc.(Shizuoka、Japan)から購入した。SLC29a3-/-およびTLR7-/-(dKO)マウスはC57BL/6マウスに少なくとも2回の戻し交配した後に実験で用いた。C末端側にFlag-His6を付加させたマウスおよびヒトTLR7は福井竜太郎助教から分与して頂いた(Fukui, R. et al., J Exp Med 2009)。全てのマウスは東京大学医科学研究所(IMSUT)のSPF施設にて維持し、すべての動物実験はIMSUTにおける実験動物委員会の許可の下に行われた。他に、国際公開第2014/174704号公報で、特にその実施例で開示するマウス、試薬、抗体等は、本実施例においても適宜用いた。
試薬
グアノシン(G)、ウリジン(U)、アデノシン(A)、イノシン(I)、シチジン(C)、2'-デオキシグアノシン(dG)、2'-デオキシウリジン(dU)、2'-デオキシアデノシン(dA)、2'-デオキシイノシン(dI)、2'-デオキシシチジン(dC)およびチミジン(T)は、MP Biomedicals(Santa Ana, USA)、Sigma-Aldrich Japan(東京、日本)または和光純薬工業(大阪、日本)から購入した。R848はInvivogen(San Diego、USA)から購入した。 酵母由来tRNAおよび鮭精子ゲノムDNAは、それぞれInvitrogenおよびTREVIGENから購入した。貪食実験に用いたヒツジ赤血球(SRBC)は、コスモ・バイオ(東京、日本)より購入した。RNA9.2s(UsGsUsCsCsUsUsCsAsAsUsGsUsCsCsUsUsCsAsA)、ssRNA40(GsCsCsCsGsUsCsUsGsUsUsGsUsGsUsGsAsCsUsC)、polyU(UsUsUsUsUsUsUsUsUsUsUsUsUsUsUsUsUsUsU)およびODN1668(TsCsCsAsTsGsAsCsGsTsTsCsCsTsGsAsTsGsCsT)はファスマック(神奈川県、日本)に合成を依頼した。配列中の小文字のsはデオキシヌクレオチドのホスホロチオエート化を表す。
抗TLR7モノクローナル抗体の作製
抗マウスTLR7抗体A94B10は以下のように作製した。
免疫動物にはC57BL/6バックグラウンドのTLR7欠損マウスをBalb/cマウスへ6回戻し交配を行い、Balb/cバックグラウンドのTLR7欠損マウスを用いた。抗原には、Flag-His6エピトープを付加したマウスTLR7(mTLR7-fH)を遺伝子導入したBa/F3細胞を使用した。
免疫は、免疫原をマウスの腹腔内に投与することで行った。免疫初日にCFAと混合した抗原を、免疫8日目にIFAと混合した抗原を、更に1週間毎に1 x PBSで希釈した抗原を3回免疫した。最終免疫日から5日目に脾臓を摘出し、得られた脾臓細胞をマウスミエローマ由来のSp2/o細胞と細胞融合させた。このハイブリドーマから得られるモノクローナル抗体を、A94B10抗体と呼ぶ場合もある。
マウスTLR7を特異的に認識する抗体を培養上清中に産生するハイブリドーマのクローンを選択するために、抗原であるmTLR7-fHを強制発現させたBa/F3細胞に対し、0.1%サポニン含有FACS溶液(1 x PBS、2.5%FBS、0.1%NaN3)を用いて細胞内染色を行い、フローサイトメトリーにより選別した。得られたハイブリドーマ細胞の中から抗マウスTLR7抗体を産生するモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株A94B10を樹立した。
病理標本解析
マウスより採材した組織は10%中性緩衝ホルマリン液にて24時間固定し、パラフィン包埋および薄切を経て切片を作製した。作製した切片はヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、切片の観察および明視野画像の取得にはEVOS FL Auto Cell Imaging System(ThermoFisher Scientific)を用いた。
Proteome Profiler抗体アレイ
111種類のマウス血清中サイトカイン量を評価する為、Proteome Profiler Mouse XL Cytokine Array(R&D Systems、Minneapolis、USA)を用いた。解析はプロトコルに従って行い、アッセイ感度を最大化にするためにメンブレンと200μLの血清サンプルとの反応を一晩のインキュベーションにより行った。サンプルとのインキュベーションの後、メンブレンはDetection Antibody CocktailおよびStreptacidin-HRPと反応させ、最終的にECL Select Western blotting detection Reagent(GE Healthcare)とインキュベートを行った。化学発光シグナルはImageQuant LAS 500(GE Healthcare)により検出し、ImageJソフトウェア(National Institutes of Health)を用いて得られた各スポットの強度を定量した。更に、Proteome Profilerにおいて血清中濃度が上昇していたIL-12p40およびCXCL13に関してはELISA法を用いて再検証を行い、同様の結果が得られることを確認した。
細胞増殖解析
in vivoにおけるマクロファージの増殖解析にはClick-iT EdU Alexa Fluor 488 Imaging Kit(Invitrogen)を用い、プロトコルに従って使用した。具体的には、1×PBS中に溶解した1mgのEdU(5-ethynyl-2'-deoxyuridine)をマウスに血中投与し、EdU注射後1または7日に採血を行った。 末梢血単核細胞(PBMC)を回収するため、全血中の赤血球(RBC)をBD Pharm Lyse溶解緩衝液(BD Biosciences)を用いて完全に溶解した後、1500gで5分間遠心することでPBMCを回収した。PBMCを抗CD16/32抗体(95)によりブロッキングした後、PBMCは蛍光色素を結合した抗Ly6G抗体(1A8)、抗CD11b抗体(M1 / 70)および抗FcγRIV抗体(9E9)モノクローナル抗体で染色した。次いで、染色されたPBMCの固定および穴開けをそれぞれBD Cytofix(BD Biosciences)とClick-iT saponin-based permeabilization and wash reagentにより行った後、Click-iT EdU reaction cocktailsによりゲノムDNAに取り込まれたEdUを染色した。EdU陽性マクロファージ細胞の検出は、BD LSRFortessaセルアナライザー(BD Biosciences)を用いて行った。
リアルタイムPCR
RNeasy Mini kit(Qiagen)により精製したtotal RNA 1μgをReverTra Ace qPCR RT Master Mix(TOYOBO)を用いてcDNAに逆転写した。 逆転写したcDNA中の各遺伝子量はStepOnePlus Real-Time PCR System(Applied Biosystems、USA)を用いたリアルタイムPCRにより定量した。リアルタイムPCRのプローブにはTaqMan 遺伝子発現アッセイを用い、マウスSLC29A3(Mm00469915)、マウスIL-12b(IL-12p40、Mm01288989)、マウスCXCL13(Mm01208154)、マウスCXCL13(Mm01208154)、マウスCsf1(M-CSF、Mm00432686)およびマウスNr4a1(Mm01300401)の各プローブを使用した。また、各サンプルの標準化はマウスβ-アクチン(Mm00607939)により行った(図5)。
フローサイトメトリーおよび細胞ソーティング
マウスの末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄および脾臓細胞における免疫細胞の染色は蛍光色素標識済みの抗CD11b抗体(M1 / 70)、抗FcγRIV抗体(9E9)、抗CD3ε抗体(145-2c11)、抗CD19抗体(6D5)、抗CD11c抗体(N418)、抗CD71抗体(R17217)、抗赤血球抗体(Ter119)、抗Ly6C抗体(HK1.4)および抗Ly6G抗体(1A8)により行った(図4)。また、ヒトPBMCの染色は蛍光色素標識済み抗HLA-DR抗体(G46-6)、抗CD14抗体(M5E2)、抗CD16抗体(3G8)、抗CD15抗体(W603)、抗CD56抗体(B159)、抗CD3ε抗体(SK7)及び抗CD19抗体(HIB19)により行った。以上の抗体はeBioscience、Biolegend、BD BiosciencesまたはTONBO biosciencesより購入した。TLR7の検出に関しては、我々の研究室で樹立したビオチン化抗マウスTLR7抗体(A94B10)を用いた。
フローサイトメトリーにより解析する細胞は全てFACSバッファー(2.5%FBS、10mM HEPEおよび0.1%アジ化ナトリウムを含む1 × PBS)中で染色および解析を行った。脾細胞はRPMI1640中でスライドガラス2枚を用いて脾臓をすり潰すことで取り出し、脾細胞の懸濁液はナイロンメッシュを通して組織片を取り除いた。全てのサンプルは1×BD Pharm Lyse Lysing Buffer(BD Biosciences)により処理することで赤血球を除去し、CD16/32抗体(clone : 95)によるブロッキングを行った後に細胞染色に供した。細胞染色は、蛍光色素標識済み抗体を加えたFACSバッファーに懸濁した細胞を氷上で20分間インキュベートすることで行った。ビオチン化抗体を使用する際は、ビオチン化抗体による1次抗体反応の後にPEストレプトアビジン(Biolegend)により氷上15分間のインキュベートを行った。染色細胞はBD LSRFortessa X-20セルアナライザー(BD Biosciences、USA)により解析した。また、エンドリソソーム内のTLR7を検出する際は、細胞表面分子染色後にFixation/Permeabilization Solution Kit(BD Biosciences、USA)を用いて細胞の固定および穴開けを行った後に抗TLR7抗体を用いた染色を行った。最後に、脾臓より調整したソーティング用免疫細胞はFACSバッファー中で染色し、FACSAria(BD Biosciences、USA)を用いた解析およびソーティングに供した。
血小板数および細胞数の測定
末梢血中の血小板数および白血球数は自動血算計Celltacα(日本光電)を用いて測定した。 脾臓および骨髄における細胞数は自動細胞カウンターTC20(Bio-rad、USA)を用いて測定した(図2)。
マウス骨髄由来マクロファージおよび樹状細胞の誘導
骨髄細胞は、野生型マウスまたはノックアウトマウスの大腿骨、脛骨および骨盤から回収した。骨髄由来マクロファージ(BM-Mf)/骨髄由来形質細胞様樹状細胞(BM-pDC)/骨髄由来通常型樹状細胞(BM-cDC)の誘導にはペニシリン - ストレプトマイシン - グルタミン(Gibco、Paisley、UK)、50μM 2-ME(ナカライテスク、京都、日本)および10%FBSを添加したRPMI培地(Gibco、Paisley、UK)を用いた。BM-Mf誘導には、RPMI培地に100ng/mLの組換え型マウスマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF、PeproTech Inc.、Rocky Hill、USA)を添加した培地を用い、7 × 106個の骨髄細胞を含む10mLの培養培地を94mmペトリディッシュ(Greiner Bio-One、Frickenhausen、Germany)に容れて6日間培養した。BM-pDCの誘導には、RPMI培地に100ng/mLの組換え型マウスFlt3 Ligand(PeproTech Inc.、Rocky Hill、USA)を添加した培地を用い、3 × 107個の骨髄細胞を含む10mlの培養培地を10cm細胞培養皿(Greiner Bio-One、Frickenhausen、Germany)に容れて7日間培養した。培養後、抗CD16/32抗体によりブロッキングされた細胞を抗CD11c抗体および抗B220抗体により染色し、CD11c/B220ダブルポジティブとなる細胞をFACSAria(BD Biosciences、San Jose、USA)によりソーティングした後にpDCとして実験に用いた。pDCのソーティングの際の細胞染色は、10%FBS、10mM HEPESおよび1mMピルビン酸ナトリウムを含む1 × PBSを用いて行った。BM-cDCの誘導には、RPMI培地に10ng/mLの組換え型マウス顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF、PeproTech Inc.、Rocky Hill、USA)を添加した培地を用い、1 × 106個の骨髄細胞を含む1mLの培養培地を24ウェルプレート(Greiner Bio-One、Frickenhausen、Germany)に容れて7日間培養した。BM-cDCの培養中は、2日おきに培地を半量ずつ交換した。
ヒト末梢血白血球およびヒトマクロファージ
ヒト末梢血由来白血球(hPBMC)の調製は以下の手法により行った。14mLの血液を86mLの1 × BD Pharm Lyse赤血球溶解バッファー(BD Biosciences)で処理し、赤血球を完全に溶解させた。その後、2000gで10分間の遠心を行い、沈殿物を再度5mLの1 × BD Pharm Lyse赤血球溶解バッファーで処理した。最後に2000gで10分間の遠心を行い、白いペレットとして見えるhPBMCをFACS分析、質量分析およびヒトマクロファージ誘導に供した。 ヒトマクロファージの誘導には、RPMI培地に100ng/mLの組換え型ヒトマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF、PeproTech Inc.、Rocky Hill、USA)、20ng/mL組換え型ヒトIL-4(PeproTech Inc.、Rocky Hill、USA)10%FBS、ペニシリン - ストレプトマイシン、50μM 2-MEを添加した培地を用い、1×107個のhPBMCを含む10mLの培養培地を94mmペトリディッシュ(Greiner Bio-One、Frickenhausen、Germany)に容れて7日間培養した。培養後、1xPBSによる洗浄で浮遊細胞を除去し、付着細胞を細胞剥離液Accutase(Thermo Fisher Scientific)を用いて回収した後に実験に供した。
ELISA
ヒトhPBMC由来マクロファージは平底96ウェルプレート(BD Falcon、Durham、NC、USA)中で1 × 104/ウェルで培養した。またマウスBM-MfおよびBM-cDCは平底96ウェルプレート中で1 × 105/ウェルで培養した。マウスBM-pDCは丸底96ウェルプレート(BD Falcon、Durham、USA)で5 × 104/ウェルで培養した。全ての免疫細胞を指定されたリガンドにより16〜20時間刺激し、培養上清中のサイトカイン濃度はELISAにより測定した。また、マウスの血清サイトカインおよび抗体濃度もELISAによって測定した。血液サンプルは室温で1時間程度凝固させた後、2000gで10分間の遠心を行った。遠心後に上清の血清を回収し、ELISAに供した。ヒトTNF-αおよびマウスIL-12p40の測定には、Ready-Set-Go! ELISAキット(eBioscience、USA)を用いた。マウスM-CSF、マウスCXCL-13の測定にはQuantikine ELISA Kits(R&D Systems、USA)を用いた。マウスIFN-αはIFN-α ELISA Kit(PBL Assay Science、USA)により測定した。抗Sm抗体および抗SSA抗体のELISAにはAlpha Diagnostic International(USA)のELISAキットを用いた(図3、図8)。抗dsDNA抗体はシバヤギ(日本)ELISAキットを用いた。
血清中AST/ALT濃度の測定
マウスのASTおよびALTの血清中濃度はNagahama LSL(滋賀、日本)に依頼して測定を行った(図3)。
ルシフェラーゼレポーターアッセイ
HEK293T細胞は10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン(Gibco、UK)および50μM 2-MEを添加したRPMI1640(ナカライテスク、日本)を用いて培養した。マウスまたはヒトTLR7の活性測定のため、HEK293T細胞を用いて以下の条件でトランスフェクションおよびレポーターアッセイを行った。コラーゲンコーティングを施した6ウェルプレートに1 × 106/ウェルの細胞密度でHEK293T細胞を播種し、pMX-puro-IRES-rat CD2ベクターに組み込んだマウスまたはヒトTLR7 cDNA(1μg)およびヒトUnc93B1 cDNA(1μg)を25ngのNF-κBレポータープラスミドpNL3.2.NF-κB-RE [NlucP/NF-κB-RE/Hygro] Vector(Promega、USA)とともにPEI(Polyethylenimine "Max"、MW40,000; Polysciences、USA)を用いてHEK293T細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションの20時間後にHEK293T細胞をコラーゲンコート済平底96ウェルプレート(Corning、USA)に1 × 105/ウェルの密度で播種し直し、更に4時間培養した後に30μL/mL DOTAP存在下で種々のリガンドで刺激した。刺激から4〜6時間経過後、HEK293T細胞におけるNanoluc活性をNano-Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega、USA)により測定した。Nanolucの生物発光により得られるrelative light unit(RLU)は、GloMax Explorer(Promega、USA)を用いて測定した(図1下段)。
ファゴサイトーシスアッセイ
死細胞は胸腺または脾臓の細胞を47℃で20分間処理することで誘導し、37℃で3時間培養した後に貪食実験に供した。死細胞はマウスへの投与前にPKH26 Red Fluorescent Cell Linker Kit for General Cell Membrane Labeling (Sigma-Aldrich)を用いて常法に従い染色を施した。5 × 106個の染色済死細胞をマウスに静注により投与し、投与後0.5または2時間後に脾臓を採材して各免疫細胞サブセットにおけるPKH26陽性死細胞の取り込みをフローサイトメトリーにより解析した(図6)。
SLC29A3ノックアウトJ774細胞の作製およびComplementation Assay
SLC29A3ノックアウトJ774細胞はCRISPR/CASシステムおよびレンチウイルスを用いたトランスダクションシステムを組み合わせて作製した。J774細胞に感染させるレンチウイルスの作製にはViraPowe Lentiviral Packaging Mix(ThermoFisher Scientific)を用い、プロトコル通りに使用した。hCAS9発現には(Addgene plasmid 50946)を改変して使用し、U6gRNA(BbsI)およびpuro2ABFPを除いたpKLV-PGK VectorにpX458ベクター由来のhCAS9 cDNAをクローニングすることでpKLV-PGKhCAS9 Vectorを構築した。同ベクターを用いたレンチウイルストランスダクションによりJ774細胞にhCAS9を発現させ、限界希釈(Limitting Dilution)によりhCAS9を強制発現するJ774/hCAS9細胞を樹立した。またSLC29A3遺伝子におけるgRNAターゲット配列には5'-agcttcttgatggttactcg-3'を用いた。同gRNAターゲット配列をpKLV-U6gRNA(BbsI)-PGKpuro2ABFP Vector(Addgene plasmid 50946)にクローニングし、レンチウイルストランスダクションによりJ774/hCAS9に感染させた。感染から一週間後にBFP陽性細胞をFACSAri(BD Biosciences、USA)によりソーティングし、そのままLimitting Dilutionに供した。その後、PolyUに対する応答が顕著に上昇しているクローン細胞にSLC29A3遺伝子の変異が導入されていることを確認した。
SLC29A3ノックアウトJ774細胞におけるComplementation Assayもレンチウイルストランスダクションにより行った。pKLV-PGK Vectorに野生型および変異型のマウスSLC29A3(mSLC29A3)にP2A-Cherry配列をつなげたcDNAをクローニングしてpKLV-PGKmSLC29A3-P2A-Cherry Vectorを構築し、レンチウイルストランスダクションによりSLC29A3ノックアウトJ774細胞させた。感染3日後にCherry陽性細胞をFACSAriによりソーティングし、Complementation Assayに供した(図9)。
超解像顕微鏡解析
骨髄マクロファージおよびJ774細胞はコラーゲンコート済カバースリップに付着させた。任意の刺激後、細胞を4%パラホルムアルデヒドにより10分間の固定を行い、0.2%サポニン入り1 × PBSによる穴開けの後に2.5%BSA入りBlocking One(Nacalai tesque、日本)を用いて30分間のブロッキング反応を行った。1次抗体反応は37℃で90分間行い、洗浄後にAlexaFluor-488 or -568(Invitrogen)で標識された二次抗体による反応を37℃で90分間行った。カバースリップ上で抗体染色を行った細胞の観察は超解像顕微鏡N-SIM(ニコン、日本)にて行い、対物レンズにはCFI Apochromat TIRF 60XC Oilを使用した。また、画像データは3D-SIMモードを用いて取得した。ファゴソームに集積するTLR7量の検証は、蛍光強度を画像統合ソフトウェアNIS-Elementにより解析することで行った(図7)。
電子顕微鏡解析
5×106個の骨髄マクロファージを10cm細胞培養皿(Greiner Bio-One、Germany)において培養し、熱ショックで細胞死を誘導した5×107個の胸腺細胞を加えた。死細胞を加えてから1時間後、5mlの前固定液(2.5%グルタールアルデヒドおよび2% パラホルムアルデヒドを含む0.1Mリン酸緩衝液)を加えて室温で10分間固定し、プラスチック製のヘラを用いて細胞をエッペンチューブに回収してから14000rpmで遠心することでペレット化した。更に前固定液を1ml加え、室温で2時間固定した。 前固定後にペレットを洗浄し、2%オスミウム酸水溶液を用いた後固定を氷上で2時間行った。その後、エタノール上昇系列による脱水を氷上にて行い、Epon 812 resin mixture (TAAB、UK)に細胞ペレットを包埋した。準超薄切(semi-thin section)切片はReichert Ultracut N ultramicrotomeを用いて約0.7μmの厚さで 作製し、切片を載せたスライドグラスを0.2%トルイジンブルー液で染色した後にZeiss Axioskop microscopeで観察した。超薄切切片の作製もReichert Ultracut N ultramicrotomeを用いて行い、金属メッシュ上の切片を酢酸ウラン染色液およびクエン酸鉛染色液による電子染色の後にHITACHI H-7500透過電子顕微鏡により観察した。
LC/MS/MS Analysis (Cell Preparation)
定量的ヌクレオシド解析はQ Exactive Hybrid Quadrupole-Orbitrap Mass Spectrometer (Thermo Fisher Scientific)を利用した液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)を用いて行った。サンプルとなる1×107または100mgの組織は、安定同位体ヌクレオシドを含む(各ヌクレオシドの終濃度は1nmol/400μL)400μL のD溶液(7M グアニジン塩酸塩を含むpH8.5の0.5M Tris-HCl/10mM EDTANa2)の添加およびPrecellys Minilys Personal Tissue Homogenizer(Bertin、France)およびCKMix 2mL Tubeを用いたビーズ破砕により短時間で完全に溶解させた. 細胞溶解液は10000gで30分間遠心し、上清を10mM 酢酸アンモニウム緩衝液(pH 6.0)を用いて40〜200倍希釈した後にLC-MSによる解析に供した。The mass spectra were acquired at a mass resolution of 35,000 from m/z 200 to 305. サンプル中における各々のヌクレオシドの定量は、濃度既知である同位体ヌクレオシドによるマススペクトルのピークの高さを基に算出した(図1上段)。
統計解析
全ての実験ではガウス分布を仮定し、Welchの補正を用いた対応のないt検定による有意差検定を行った。p値<0.05となった場合に有意差があると結論付けた。
B細胞及びpDCsにおけるTLR7反応は亢進されないことを検証した(図10)。また、SLC29A3変異細胞がTLR7反応亢進を回復しないことを検証した(図11)。
G208R患者のG/dGの蓄積及びTLR7反応の亢進性を示す(図12)。
抗TLR7抗体
SLC29A3遺伝子欠損マウスに阻害活性を有する抗TLR7抗体(A94B10抗体)を投与した。この抗体投与によって、様々な病態が軽減した。増加していた脾臓の細胞数は減少し、血小板減少症は改善し、血小板数は増加した。さらに、血清中のサイトカイン、IL-12p40、CXCL13も減少した(図13)。これらの結果はTLR7が、SLC29A3障害における治療標的として有望であることを示している。
配列番号:1は、マウスTLR7のアミノ酸配列を表す。
配列番号:2は、ヒトTLR7上のアミノ酸配列を表す。
配列番号:3は、マウスTLR8上のアミノ酸配列を表す。
配列番号:4は、ヒトTLR8上のアミノ酸配列を表す。
配列番号:5は、A94B10抗体の重鎖CDR1のアミノ酸配列を表す。
配列番号:6は、A94B10抗体の重鎖CDR2のアミノ酸配列を表す。
配列番号:7は、A94B10抗体の重鎖CDR3のアミノ酸配列を表す。
配列番号:8は、A94B10抗体の軽鎖CDR1のアミノ酸配列を表す。
配列番号:9は、A94B10抗体の軽鎖CDR2のアミノ酸配列を表す。
配列番号:10は、A94B10抗体の軽鎖CDR3のアミノ酸配列を表す。
配列番号:11は、A94B10抗体の重鎖のアミノ酸配列を表す。
配列番号:12は、A94B10抗体の軽鎖のアミノ酸配列を表す。

Claims (9)

  1. TLR7又はTLR8を認識する抗体を含む、SLC28又はSLC29遺伝子異常症の治療剤又は予防剤。
  2. TLR7又はTLR8を認識する抗体を含む、リソソーム内へのヌクレオシド蓄積に関連する疾患の治療剤又は予防剤。
  3. 前記抗体が、TLR7又はTLR8を阻害する、請求項1又は2に記載の治療剤又は予防剤。
  4. 前記抗体が、TLR7又はTLR8のN末端を認識する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の治療剤又は予防剤。
  5. 前記抗体が、TLR7のN末端における1位〜356位の領域を認識する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の治療剤又は予防剤。
  6. 前記抗体が、TLR7のN末端における243位〜356位の領域を認識する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の治療剤又は予防剤。
  7. 前記抗体が、以下の少なくとも1つのアミノ酸配列からなるTLR7のN末端を認識する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の治療剤又は予防剤:
    (1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列;
    (2)配列番号:2で表されるアミノ酸配列;
    (3)配列番号:1及び2のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸の欠失、置換又は付加を有するアミノ酸配列;及び
    (4)配列番号:1及び2のいずれかで表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列。
  8. 前記抗体が、以下のいずれかである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の治療剤又は予防剤:
    (1)配列番号:11で表されるアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号:12で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖と、を含む抗体;
    (2)配列番号:11で表されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸の欠失、置換又は付加を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号:12で表されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において、1又は複数のアミノ酸の欠失、置換又は付加を有するアミノ酸配列からなる軽鎖と、を含む抗体;及び
    (3)配列番号:11で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号:12で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖と、を含む抗体。
  9. TLR7又はTLR8を認識する抗体を含む、リソソーム内へのヌクレオシド蓄積に関連する疾患又はSLC28又は29遺伝子異常症の診断に用いられるキット。
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