従来より、高齢者用自転車としては、大きく分けて、三輪車タイプと四輪車タイプの2種類があり、さらに三輪車タイプには前輪が2輪で後輪が1輪の形態のものと、前輪が1輪で後輪が2輪の形態のものがある。
三輪車タイプの高齢者用自転車と四輪車タイプの高齢者用自転車を比較すると、以下の相違点がある。乗車感覚に関しては、三輪タイプの高齢者用自転車の方が通常の自転車に近いものがあり、走行速度に関しては、三輪タイプの高齢者用自転車の方がより容易に速い走行速度を出すことができる。また、走行安定性に関しては、四輪タイプの高齢者用自転車の方が転倒し難く、そのため、身体の能力が特に劣る高齢者には四輪タイプの高齢者用自転車が適している。
また、高齢者用自転車には、電動アシスト自転車タイプのものと、一般自転車タイプのものがあり、当然のことに電動アシスト自転車の方が、坂道でのペダル駆動に要する体力負担が少ない点、発進が円滑である点、ハンドルのふらつきが少ない点において、高齢者に優しいと言える。
通常の二輪自転車では、ハンドル操作によって進路変更する際に、ハンドル操作とともに、変更しようとする進路方向の側に車体を傾斜させて重心移動を行うことで、車体に作用する慣性力とのバランスを保って転倒を防止している。
しかし、三輪自転車は、車体全体を傾斜させることが困難である。このため、三輪自転車は、前輪およびシートを支持する前フレームが、後二輪および荷台を支持する後フレームに対して左右に揺動可能に取り付けられている。この構造により、三輪自転車の進路方向を左方向もしくは右方向に変更する場合には、変更しようとする進路方向の側に前フレームを傾斜させて重心移動を行うことで、車体に作用する慣性力とのバランスを保って転倒を防止している。
このような、スイング機構を備えた三輪自転車には、例えば特許文献1に記載すものがある。これは、図12から図15に示すようなものである。三輪自転車51は車体フレーム52が前フレーム53と後フレーム54とに分割されている。前フレーム53には、前輪55と、シート56と、ハンドル57と、ペダル58によって回転する前部スプロケット59等が設けられている。また、前フレーム53は後方へ水平に延出する丸パイプ状のメインフレーム60を有している。
後フレーム54には、左右一対の後輪62a,62bと、いずれか片方の後輪62bの車軸に連動する後部スプロケット63と、籠64とが設けられている。前部スプロケット59と後部スプロケット63との間にはチェン65が掛け渡されており、ペダル58で加える回転力がチェン65を介して片方の後輪62bに伝達される。
また、前フレーム53と後フレーム54の間には揺動機構(スイング機構)66が介在しており、揺動機構66において前フレーム53が後フレーム54に対して相対的に揺動し、前フレーム53は鉛直中立位置Nから左右両側へそれぞれ最大傾斜角度Aまで揺動自在である。
揺動機構66において、後フレーム54は、メインフレーム60と平行をなす回動軸71を回動自在に保持しており、回転軸71は前フレーム53が鉛直中立位置Nにあるときに、メインフレーム60の真下となる位置に設けられている。
メインフレーム60は、回動軸71の前後両端部に一対のブラケット72,73で連結されており、前フレーム53は、後フレーム54に対し、回動軸71を中心にして左右両側へ揺動する。
図12、図13に示すように、揺動機構66には、前フレーム53を鉛直中立位置Nへ付勢する揺動復元装置74が設けられている。この揺動復元装置74は、X形状に交差した左右一対の復元レバー75,76と、両復元レバー75,76の下端間に設けられた引張りコイルばね77と、レバー用ストッパー部材78とからなる。
両復元レバー75,76はそれぞれ回転軸71の軸心廻りに揺動自在である。一方の復元レバー75は下端が回転軸71の右側に位置し、上端がメインフレーム60の左側に位置している。また、他方の復元レバー76の下端が回転軸71の左側に位置し、上端がメインフレーム60の右側に位置している。両復元レバー75,76の下端部は引張りコイルばね77によって互いに接近する方向へ引っ張られ、これにより、図12において実線で示すように、メインフレーム60は左右両側から両復元レバー75,76の上端部によって挟まれている。
特許文献1において、揺動復元装置は、前フレームを傾ける時に、前フレームに作用する荷重を受け止めて体制を維持する力、すなわち反力として作用し、前フレームの過剰な揺動を抑制する。そして、傾いた前フレームを鉛直中立位置に向けて復元するときには、揺動復元装置が復元を補助する助力として作用し、前フレームの復元を支援する。
この揺動復元装置において作用する力は、コイルばねによるものである。一般的なコイルばねにおいては、コイルばねに作用する荷重Pと長さの変位δとの間には、ばね定数kで規定される直線的な関係、P=δkがある。
このため、図11のa線に示すように、従来の揺動復元装置による反力は、前フレームが揺動(スイング)する時の傾きの変動量に応じて一定の増加割合で直線的に大きくなり、換言すると前フレームのスイング堅さ(反力)がスイング量(変動量)に応じて単調に増加して堅くなる。
乗り手にとっては、乗車時において前フレームのハンドルに負荷を加えたときに、前フレームが左右に傾くことなく、中立の位置を保つことが望ましい。
このため、コイルばねとして、ばね定数が大きなものを採用すると、図11のb線に示すように、スイング量の増加に対してスイング堅さの増加割合が大きくなり、前フレームの中立状態が安定する。よって、乗車時に前フレームが揺動し難くなることで、乗り手が乗り込み動作を容易に行うことができ、老人や身体の不自由な人でも容易に乗れる。
しかし、運転中にカーブ走行を行うときに、前フレームを傾けることが困難となり、老人や非力な人や体重の軽い人は前フレームと共に体が揺動復元装置の反力で押し戻されて重心移動が出来ず、操縦性が悪い三輪自転車となる。
また、コイルばねとして、ばね定数の小さなものを採用すると、図11のc線に示すように、スイング量の増加に対するスイング堅さの増加割合が小さくなり、前フレームが小さな負荷で容易に大きく傾くことになる。
このため、運転中にカーブ走行を行うときに、前フレームを傾けることが容易となり、操縦性が向上して老人や非力な人や体重の軽い人でも、揺動復元装置の反力に押し戻されることなく、スムーズに重心移動を行うことができ、カーブ走行時の走行安定性を確保できる。
しかし、前フレームが小さな負荷で大きく揺動することで、乗車時に前フレームの中立状態が安定せず、乗り手の乗り込み動作が阻害される要因となり、老人や身体の不自由な人には乗り込みが困難となる。
また、スイング堅さ(反力)は、乗り手が前フレームを傾斜させた姿勢を維持する場合に、荷重を受け止めてその体制を保持する力として作用するので、コイルばね77がばね定数の小さなものである場合には、体重の重い人の体制を保持する力としては不足し、前フレームが過剰に揺動する場合がある。さらに、前フレームを復元する時に揺動復元装置から受ける助力が小さくなる。このため、体重の重い人には操縦性の悪い三輪自転車となる。
よって、三輪自転車のスイング機構には、乗り込み動作を容易に行える乗車時の前フレームの安定性と、カーブ走行時に重心移動を容易に行える走行安定性との背反する課題が存在する。
本発明は、上記課題を解決するものであり、前フレームの安定性とカーブ走行時の走行安定性を共に実現できる操縦性に優れた三輪自転車のスイング機構を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る三輪自転車のスイング機構は、前フレームと後フレームとに分割された車体フレームと、前フレームと後フレームとの相対的な揺動を許容するスイング機構を備え、スイング機構は、前フレームの鉛直中立位置から前フレーム揺動方向の両側方向に向けてそれぞれ複数の揺動区間を有し、かつ前フレームの揺動に対する反力を生じる揺動復元装置を有し、揺動復元装置は、直列に連結した複数の弾性体からなる抵抗部と、抵抗部の一つの弾性体の作動範囲を前フレームの初期揺動区間に制限する初期制限装置を有し、初期揺動区間における抵抗部の初期ばね定数を次期揺動区間における抵抗部の次期ばね定数よりも小さく設定したことを特徴とする。
本発明に係る三輪自転車のスイング機構において、揺動復元装置は、前フレームの初期揺動区間と次期揺動区間において反力が直線的に増加し、初期揺動区間と次期揺動区間の境において反力が非直線的に変化することを特徴とする。
本発明に係る三輪自転車のスイング機構において、揺動復元装置は、抵抗部の他の一つの弾性体の作動範囲を前フレームの初期揺動区間と次期揺動区間とに亘る区間に制限する次期制限装置を有し、次期揺動区間における抵抗部の次期ばね定数を初期揺動区間における初期ばね定数よりも大きく、かつ次々期揺動区間における次々期ばね定数よりも小さく設定したことを特徴とする。
本発明に係る三輪自転車のスイング機構において、揺動復元装置は、前フレームの初期揺動区間、次期揺動区間、次々期揺動区間において反力が直線的に増加し、初期揺動区間と次期揺動区間の境および次期揺動区間と次々期揺動区間の境において反力が非直線的に変化することを特徴とする。
本発明に係る三輪自転車のスイング機構において、揺動復元装置は、相反する方向に移動可能な一対の従動部材を有し、一方の従動部材が前フレームに係合して定位置からフレーム揺動方向の一側方向に往復移動し、他方の従動部材が前フレームに係合して定位置からフレーム揺動方向の他側方向に往復移動し、抵抗部の直列に連結した複数の弾性体のうちで一側にある一つの弾性体が初期制限装置を介して一方の従動部材に連結され、抵抗部の他側にある他の一つの弾性体が他方の従動部材に連結されることを特徴とする。
本発明に係る三輪自転車のスイング機構において、揺動復元装置は、抵抗部の複数の弾性体のうちで他側にある他の一つの弾性体が次期制限装置を介して他方の従動部材に連結され、次期制限装置が前記他の一つの弾性体の作動範囲を前フレームの初期揺動区間と次期揺動区間とに亘る区間に制限することを特徴とする。
本発明に係る三輪自転車のスイング機構によれば、複数の弾性体を直列に連結すると、抵抗部としてのばね定数は何れの弾性体のばね定数よりも小さくなる。また、初期制限装置によって一つの弾性体の作動が制限されると、抵抗部としてのばね定数は、この弾性体を除いた残りの弾性体によるものとなる。
このため、初期揺動区間においては、初期ばね定数を次期揺動区間における次期ばね定数よりも小さく設定することができ、初期揺動区間において重心移動を容易に行えることでカーブ走行時の走行安定性を確保できる。
また、初期揺動区間の次の次期揺動区間においては、次期ばね定数を初期ばね定数よりも大きくすることで、次期揺動区間における前フレームの安定性を確保して乗り込み動作を容易に行うことができ、前フレームの安定性とカーブ走行時の走行安定性を共に実現できる。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態について図1〜図3、図7を参照して説明する。なお、先に説明した従来の三輪自転車と同じ部材については図12〜図15を参照して同一の符号を用いて説明する。
この第1の実施の形態においても、図12〜図15において示したように、前フレーム53と後フレーム54の間にはスイング機構(揺動機構)66が介在しており、スイング機構(揺動機構)66において前フレーム53が後フレーム54に対して相対的に揺動し、前フレーム53は鉛直中立位置Nから左右両側へそれぞれ最大傾斜角度LA、RAまで揺動自在である。
スイング機構66は、図1〜図3に示すように、前フレーム53の鉛直中立位置Nからフレーム揺動方向の左右両側方向L、Rに向けてそれぞれ複数の揺動区間LA1、LA2、RA1、RA2を有し、前フレーム53を鉛直中立位置Nへ付勢する揺動復元装置10が設けられている。
この揺動復元装置10は、一対の従動部材をなす復元レバー11、12を有しており、復元レバー11、12は前フレーム53の回動軸71の軸心廻りに回転し、相反する方向に移動可能である。双方の復元レバー11、12は、回転軸71を隔てた下端側が上端側の揺動方向と反対側に往復移動し、後フレーム53に支持されたストッパー部材13に当接して廻り止めされている。
すなわち、一方の復元レバー11は、上端側が前フレーム53のメインフレーム60に係合して定位置からフレーム揺動方向の一側方向Lに往復移動し、下端側が定位置からフレーム揺動方向の他側方向Rに往復移動する。そして、一方の復元レバー11は、下端側がストッパー部材13に当接することで、下端側が定位置からフレーム揺動方向の一側方向Lには移動せず、上端側が定位置からフレーム揺動方向の他側方向Rには移動しない。
他方の復元レバー12は、上端側が前フレーム53のメインフレーム60に係合して定位置からフレーム揺動方向の他側方向Rに往復移動し、下端側が定位置からフレーム揺動方向の一側方向Lに往復移動する。そして、他方の復元レバー12は、下端側がストパー部材13に当接することで、下端側が定位置からフレーム揺動方向の他側方向Rには移動せず、上端側が定位置からフレーム揺動方向の一側方向Lには移動しない。
双方の復元レバー11、12の下端部には直列に連結した複数の弾性体を接続している。本実施の形態では、弾性体がスプリングばね14a、14bであるが、ゴム、樹脂等のばねと同等物を採用することも可能である。
本実施の形態では、主スプリングばね14aが引張ばねからなり、副スプリングばね14bが圧縮ばねからなり、主スプリングばね14aと副スプリングばね14bが連結棒15を介して直列に連結されて抵抗部16を形成している。抵抗部16の一側にある副スプリングばね14bは、一方の復元レバー11の下端側の外側に設けた初期制限装置17に納められており、抵抗部16の他側にある主スプリングばね14aが他方の復元レバー12に連結されている。
初期制限装置17は、シリンダー状のばね箱18が一方の復元レバー11に固定されており、ばね箱18は内部に副スプリングばね14bを納めるとともに、ばね押し材19を副スプリングばね14bの軸心方向に移動自在に保持している。ばね箱18は一端に開口18aを有し、他端に底壁18bを有している。ばね押し材19は一端に開口19aを有し、副スプリングばね14bの一端に当接する他端に底壁19bを有し、開口19aの外周縁に鍔部19cを有している。鍔部19cは、ばね箱18の開口端18cに当接可能であり、主スプリングばね14aおよび副スプリングばね14bが無負荷のフリー状態にあるときに、鍔部19cとばね箱18の開口端18cとは制限距離D1だけ離間している。
連結棒15は、復元レバー11に形成した貫通穴20、ばね箱18の底壁18bに形成した貫通穴21、副スプリングばね14bの内部、ばね押し材19の底壁19bに形成した貫通穴22を通して配置している。そして、連結棒15は一端側に形成した雌ネジ部15aにナット23が装着してあり、ナット23を介してばね押し材19に係合し、他端側が主スプリングばね14aの一端に係合している。主スプリングばね14aは、他端が他方の復元レバー12の下端側に設けた連結部材24に係合している。
図8に示すように、初期制限装置17は、ばね箱18を設けない構成とすることも可能である。この場合には、副スプリングばね14bが圧縮限界まで圧縮される。
以下、上記構成の作用を説明する。ここでは、三輪自転車51の前フレーム52がフレーム揺動方向の一側方向Lに揺動する場合について説明するが、前フレーム52がフレーム揺動方向の他側方向Rに揺動する場合も同様である。
前フレーム52がフレーム揺動方向の一側方向Lに揺動すると、前フレーム52と共に揺動するメインフレーム60が揺動復元装置10の一方の復元レバー11を押圧する。図2に示すように、一方の復元レバー11は、上端側がメインフレーム60に係合してフレーム揺動方向の一側方向Lに揺動し、下端側がフレーム揺動方向の他側方向Rに揺動する。
前フレーム52の初期揺動区間LA1では、一方の復元レバー11が揺動するとき、他方の復元レバー12がストッパー部材13に係合して定位置に留まっている状態において、主スプリングばね14aが伸びるとともに、副スプリングばね14bが圧縮される。
すなわち、一方の復元レバー11の揺動にともなって初期制限装置17がフレーム揺動方向の他側方向Rに移動し、連結棒15を介して主スプリングばね14aの反力を受けるばね押し材19がフレーム揺動方向の一側方向Lに移動し、ばね箱18の底壁18bとばね押し材19の底壁19bの間で副スプリングばね14bが圧縮される。
このため、主スプリングばね14aと副スプリングばね14bがともに作用する状態で抵抗部16の反力が一方の復元レバー11に作用する。
さらに前フレーム52が揺動して初期揺動区間LA1の終端に達すると、ばね押し材19が制限距離D1を最後まで移動し、鍔部19cがばね箱18の開口端18cに当接し、ばね押し材19の移動が規制されて副スプリングばね14bの圧縮が止まる。
これ以後の前フレーム52の次期揺動区間LA2においては、図3に示すように、副スプリングばね14bは圧縮されることなく一定状態を保ったまま初期制限装置17と共に移動し、連結棒15を介して引っ張られる主スプリングばね14aのみが伸びる。
このため、主スプリングばね14aのみが作用する状態で抵抗部16の反力が一方の復元レバー11に作用する。
ここで、主スプリングばね14aと副スプリングばね14bを直列に連結した抵抗部16のばね全体のばね定数をKとし、主スプリングばね14aのばね定数をk1、副スプリングばね14bのばね定数をk2とし、前フレーム52の揺動によってばね全体に作用する荷重およびばねに生じる反力をFとし、各ばねの伸びをx1、x2、抵抗部16の全体の伸びをxtとすると、次式が成り立つ。
F/xt=(F/x1)+(F/x2)となり、
1/K=(1/k1)+(1/k2)となる。
この式を変形すると、
K=[k1/(k1+k2)]×k2もしはK=[k2/(k1+k2)]×k1となる。
したがって、抵抗部16のばね全体のばね定数Kは主スプリングばね14aのばね定数k1、副スプリングばね14bのばね定数k2よりも小さくなる。よって、主スプリングばね14aと副スプリングばね14bがともに作用する初期揺動区間LA1における抵抗部16の初期ばね定数は、主スプリングばね14aのみが作用する次期揺動区間LA2における次期ばね定数よりも小さくなる。
このため、初期揺動区間LA1においては、次期揺動区間LA2に比べて、前フレーム52の揺動を容易に行うことができ、従来のように、全揺動区間において主スプリングばね14aを単独で使用する場合に比べて、初期揺動区間LA1において前フレーム52を小さな力で大きく揺動させることができる。
この反力の変化を図9に示す。ここでは、反力の大きさを前フレーム52のスイング堅さとして表示しており、前フレーム52の揺動の大きさをスイング量として表示している。すなわち、揺動復元装置10は、線aに示す前フレーム52の初期揺動区間LA1におけるスイング堅さ(抵抗部16の反力)と、線bに示す次期揺動区間LA2におけるスイング堅さ(抵抗部16の反力)が直線的に増加し、初期揺動区間LA1と次期揺動区間LA2の境においてスイング堅さ(抵抗部16の反力)が非直線的に変化する。
そして、初期揺動区間LA1におけるスイング堅さの増加割合が次期揺動区間LA2におけるスイング堅さの増加割合よりも小さくなる。
したがって、本実施の形態によれば、初期揺動区間LA1においては、抵抗部16のばね定数を次期ばね定数より小さい初期ばね定数に抑えることで、カーブ走行時に重心移動が容易に行えて走行安定性を確保できる。また、次期揺動区間においては、抵抗部16に初期ばね定数よりも大きな次期ばね定数を確保することで、前フレーム52の安定性を確保して乗り込み動作を容易に行うことができる。初期揺動区間LA1の大きさは、初期制限装置17における制限距離D1に規定されるので、制限距離D1を適切な距離に設定することで、初期揺動区間LA1の大きさを任意の大きさに設定できる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態について図4〜図6を参照して説明する。なお、先に説明した第1の実施の形態の三輪自転車と同じ部材については同一の符号を用いて説明する。
揺動復元装置10は、双方の復元レバー11、12の下端部に、直列に連結した複数のスプリングばね14a、14b、31を有する抵抗部16を接続している。
本実施の形態では、抵抗部16の主スプリングばね14aが引張ばねからなり、第1の副スプリングばね14bが圧縮ばねからなり、第2の副スプリングばね31が圧縮ばねからなる。
主スプリングばね14aと第1の副スプリングばね14bが連結棒15を介して直列に連結されており、主スプリングばね14aと第2の副スプリングばね31が連結棒32を介して直列に連結されている。
抵抗部16の一側にある第1の副スプリングばね14bは、一方の復元レバー11の下端側の外側に設けた初期制限装置17に納められており、初期制限装置17を介して一方の復元レバー11に連結されている。抵抗部16の他側にある第2の副スプリングばね31は、他方の復元レバー12の下端側の外側に設けた次期制限装置33に納められており、次期制限装置33を介して他方の復元レバー12に連結されている。
初期制限装置17は、シリンダー状のばね箱18が一方の復元レバー11に固定されており、ばね箱18は内部に第1の副スプリングばね14bを納めるとともに、ばね押し材19を副スプリングばね14bの軸心方向に移動自在に保持している。ばね箱18は一端に開口18aを有し、他端に底壁18bを有している。ばね押し材19は一端に開口19aを有し、副スプリングばね14bの一端に当接する他端に底壁19bを有し、開口19aの外周縁に鍔部19cを有している。鍔部19cは、ばね箱18の開口端18cに当接可能であり、主スプリングばね14aおよび副スプリングばね14bが無負荷のフリー状態にあるときに、鍔部19cとばね箱18の開口端18cとは制限距離D1だけ離間している。
連結棒15は、復元レバー11に形成した貫通穴20、ばね箱18の底壁18bに形成した貫通穴21、副スプリングばね14bの内部、ばね押し材19の底壁19bに形成した貫通穴22を通して配置している。そして、連結棒15は一端側に形成した雌ネジ部15aにナット23が装着してあり、ナット23を介してばね押し材19に係合し、他端側が主スプリングばね14aの一端に係合している。
次期制限装置33は、シリンダー状のばね箱18が他方の復元レバー12に固定されており、ばね箱18は内部に第2の副スプリングばね31を納めるとともに、ばね押し材19を副スプリングばね31の軸心方向に移動自在に保持している。ばね箱18は一端に開口18aを有し、他端に底壁18bを有している。ばね押し材19は一端に開口19aを有し、副スプリングばね31の一端に当接する他端に底壁19bを有し、開口19aの外周縁に鍔部19cを有している。鍔部19cは、ばね箱18の開口端18cに当接可能であり、主スプリングばね14aおよび副スプリングばね14bが無負荷のフリー状態にあるときに、鍔部19cとばね箱18の開口端18cとは制限距離D2だけ離間している。
連結棒32は、他方の復元レバー12に形成した貫通穴20、ばね箱18の底壁18bに形成した貫通穴21、副スプリングばね31の内部、ばね押し材19の底壁19bに形成した貫通穴22を通して配置している。そして、連結棒32は一端側に形成した雌ネジ部32aにナット34が装着してあり、ナット34を介してばね押し材19に係合し、他端側が主スプリングばね14aの他端に係合している。
以下、上記構成の作用を説明する。前フレーム52がフレーム揺動方向の一側方向Lに揺動すると、前フレーム52と共に揺動するメインフレーム60が揺動復元装置10の一方の復元レバー11を押圧する。図5に示すように、一方の復元レバー11は、上端側がメインフレーム60に係合してフレーム揺動方向の一側方向Lに揺動し、下端側がフレーム揺動方向の他側方向Rに揺動する。
前フレーム52の初期揺動区間LA1では、一方の復元レバー11が揺動するとき、他方の復元レバー12がストッパー部材13に係合して定位置に留まっている状態において、主スプリングばね14aが伸びるとともに、副スプリングばね14b、31が圧縮される。
すなわち、一方の復元レバー11の揺動にともなって初期制限装置17がフレーム揺動方向の他側方向Rに移動し、連結棒15を介して主スプリングばね14aの反力を受けるばね押し材19がフレーム揺動方向の一側方向Lに移動し、ばね箱18の底壁18bとばね押し材19の底壁19bの間で第1の副スプリングばね14bが圧縮される。
さらに、次期制限装置33においては、連結棒32を介して主スプリングばね14aの反力を受けるばね押し材19がフレーム揺動方向の一側方向Lに移動し、ばね箱18の底壁18bとばね押し材19の底壁19bの間で第2の副スプリングばね31が圧縮される
。
このため、主スプリングばね14aと双方の副スプリングばね14b、31の全てが作用する状態で抵抗部16の反力が一方の復元レバー11に作用する。
さらに前フレーム52が揺動して初期揺動区間LA1の終端に達すると、初期制限装置17のばね押し材19が制限距離D1を最後まで移動し、鍔部19cがばね箱18の開口端18cに当接し、ばね押し材19の移動が規制されて第1の副スプリングばね14bの圧縮が止まる。また、次期制限装置33のばね押し材19が制限距離D3まで移動する。
これ以後の前フレーム52の次期揺動区間LA2においては、図5に示すように、第1の副スプリングばね14bは圧縮されることなく一定状態を保ったまま初期制限装置17と共に移動し、第2の副スプリングばね31が圧縮されるとともに、主スプリングばね14aが伸びる状態となり、この状態で作用する抵抗部16の反力が一方の復元レバー11に作用する。
さらに前フレーム52が揺動して次期揺動区間LA2の終端に達すると、次期制限装置33のばね押し材19が残りの制限距離D3を最後まで移動し、鍔部19cがばね箱18の開口端18cに当接し、ばね押し材19の移動が規制されて第2の副スプリングばね31の圧縮が止まる。
これ以後の前フレーム52の次々期揺動区間においては、図6に示すように、双方の副スプリングばね14b、31が圧縮されることなく一定状態を保ったままで、主スプリングばね14aだけが伸びる状態となり、この状態で作用する抵抗部16の反力が一方の復元レバー11に作用する。
このため、初期揺動区間LA1においては、次期揺動区間LA2に比べて、前フレーム52の揺動を容易に行うことができ、次期揺動区間LA2においては、次々期揺動区間に比べて、前フレーム52の揺動を容易に行うことができる。よって、従来のように、全揺動区間において主スプリングばね14aを単独で使用する場合に比べて、初期揺動区間LA1および次期揺動区間LA2において小さな力で前フレーム52を大きく揺動させることができる。
この反力の変化を図10に示す。ここでは、抵抗部16の反力の大きさを前フレーム52のスイング堅さとして表示しており、前フレーム52の揺動の大きさをスイング量として表示している。
すなわち、揺動復元装置10は、線aに示す前フレーム52の初期揺動区間LA1におけるスイング堅さ(抵抗部16の反力)と、線bに示す次期揺動区間LA2におけるスイング堅さ(抵抗部16の反力)と、線cに示す次々期揺動区間におけるスイング堅さ(抵抗部16の反力)が直線的に増加し、初期揺動区間LA1と次期揺動区間LA2の境、および次期揺動区間LA2と次々期揺動区間との境においてスイング堅さ(反力)が非直線的に変化する。
したがって、本実施の形態によれば、初期揺動区間LA1において抵抗部16のばね定数を次期ばね定数より小さい初期ばね定数に抑えることで、次期揺動区間LA2において抵抗部16のばね定数を次々期ばね定数より小さい次期ばね定数に抑えることで、カーブ走行時に重心移動が容易に行えて走行安定性を確保できる。
また、次々期揺動区間においては、抵抗部16に初期ばね定数および次期ばね定数よりも大きな次々期ばね定数を確保することで、前フレーム52の安定性を確保して乗り込み動作を容易に行うことができる。初期揺動区間LA1および次期揺動区間LA2の大きさは、制限距離D1、D2に規定されるので、制限距離D1、D2を適切な距離に設定することで、初期揺動区間LA1、次期揺動区間LA2の大きさを任意の大きさに設定できる。