JP2019081362A - レーザー溶着体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリブチレンテレフタレート系材料のレーザー溶着において押圧力を下げレーザーの照射回数を減らし走査速度を高め生産性向上させる製造方法を提供する。【解決手段】部材Iはポリエステル系樹脂Aと当該ポリエステル系樹脂A100質量部に対して0.0005〜5.0質量部のレーザー光透過吸収色素材とを含みポリエステル系樹脂Aはポリブチレンテレフタレートホモポリマー及び/又はポリブチレンテレフタレート共重合樹脂を含む樹脂であり部材IIは部材Iと当接する面のレーザー光を照射する位置に沿って1つ又は2つの凸条部を設けポリエステル系樹脂Bと当該ポリエステル系樹脂B100質量部に対して0.15〜10.00質量部のレーザー光を透過せずに吸収し得るレーザー光吸収色素材とを含み前記ポリエステル系樹脂Bはポリブチレンテレフタレートホモポリマー及び芳香族ビニル系樹脂を含む樹脂組成物であることを特徴とする製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、ポリブチレンテレフタレート系材料からなる2つの部材をレーザー溶着によって接合一体化してなる構成を備えたレーザー溶着体の製造方法に関する。
レーザー溶着は、2つの樹脂部材の重なり部分にレーザービームを樹脂部材の厚さ方向に照射し、当該レーザービームが一方の樹脂部材を透過して、樹脂部材の境目付近で樹脂部材を溶かして樹脂部材間に溶融プールを形成し、この溶融プールが冷却固化して樹脂部材間を接合する方法である。
このようなレーザー溶着は、接合部品や接着剤を使用せずに効率良く接合できるばかりか、複雑な形状の部材の接合も容易に行うことができ、局所加熱であるため周辺部への熱影響がごく僅かであり、振動によってダメージを与えることなく接合することができ、接合強度も高く、さらに気密性の高い接合をすることができるため、自動車部品や電気・電子部品などの接合において広く利用されている。
この種のレーザー溶着に関しては、例えば特許文献1(特開2007−112127号公報)において、ニグロシンのみからなる着色剤0.001〜0.3重量%及び熱可塑性樹脂を含有するレーザー光透過吸収性成形部材と、ニグロシンおよび/またはカーボンブラックを含む別な着色剤0.1〜5重量%及び熱可塑性樹脂を含有するレーザー光吸収性成形部材とが、重ねられたまま、該レーザー光の照射による発熱で溶着されて一体化されてなるレーザー溶着体が開示されている。
また、特許文献2(特開2013−155277号公報)には、レーザー光による溶着に用いる樹脂組成物として、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂100質量部に対し、(B)強化充填材5〜150質量部、(C)耐衝撃改良剤0〜20質量部、(D)エポキシ化合物0〜5質量部、(E)流動改質剤0〜10質量部、および、(F)ニグロシン、アニリンブラック、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィリン、ペリレン、クオテリレン、アゾ染料、アントラキノン、スクエア酸誘導体及びインモニウムから選ばれる1つ以上のレーザー光吸収性染料0.001〜0.2質量部を含有するレーザー溶着用樹脂組成物が開示されている。
ところで、ポリブチレンテレフタレート系樹脂は、耐熱性、機械的強度、寸法安定性、電気的性質、耐油性、耐溶剤性、表面光沢性、着色性、難燃性などに優れているばかりか、結晶化速度が大きく、流動性も良好で、成形性に優れているため、電気・電子分野や自動車分野などの分野で広く利用されている。
しかしながら、ポリブチレンテレフタレート系樹脂は、ポリカーボネート樹脂やポリスチレン系樹脂等に比べて、レーザー透過性が比較的低く、しかも反りが生じ易いため、レーザー溶着による接合強度が不十分になり易いという課題を抱えていた。
そこで、レーザー溶着に用いるポリブチレンテレフタレート系材料に関して、例えば共重合ポリブチレンテレフタレートを使用する方法(特許文献3(特許第3510817号公報))や、ポリブチレンテレフタレートにポリカーボネート樹脂又はスチレン系樹脂をアロイ化する方法(特許文献4(特開2003−292752号公報)及び特許文献5(特許第4641377号公報))などが開示されている。
また、特許文献6(特開2013−155278号公報)には、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、特定のその他樹脂、特定のレーザー光吸収性染料、さらに必要に応じて、強化充填材、エポキシ化合物、流動改質剤等を配合した樹脂組成物を用いることにより、成形性に優れ、極めて優れたレーザー溶着加工性を有する樹脂組成物として、
レーザー光による溶着に用いる樹脂組成物であって、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂、及び(B)以下の(B−1)〜(B−5)から選ばれる少なくとも1つの樹脂を、(A)及び(B)の合計100質量部基準で、(A)50〜95質量部、(B)50〜5質量部含有し、
さらに、(A)及び(B)の合計100質量部に対し、(D)強化充填材を0〜120質量部、(E)エポキシ化合物を0〜5質量部、(F)流動改質剤を0〜10質量部、及び、(G)ニグロシン、アニリンブラック、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィリン、ペリレン、クオテリレン、アゾ染料、アントラキノン、スクエア酸誘導体及びインモニウムから選ばれる1つ以上のレーザー光吸収性染料を0.001〜0.2質量部含有するレーザー溶着用樹脂組成物が開示されている。
(B−1)ポリエチレンテレフタレート系樹脂
(B−2)ポリカーボネート系樹脂
(B−3)芳香族ビニル系樹脂
(B−4)アクリル系樹脂
(B−5)ポリアミド系樹脂
特開2007−112127号公報 特開2013−155277号公報 特許第3510817号公報 特開2003−292752号公報 特許第4641377号公報 特開2013−155278号公報
上述の特許文献1のように、ニグロシンのみからなる着色剤を含有するレーザー光透過吸収性成形部材と、ニグロシンおよび/またはカーボンブラックを含む着色剤を含有するレーザー光吸収性成形部材とをレーザー溶着によって一体化してなるレーザー溶着体は、レーザー光透過吸収性成形部材を厚み方向に貫いてレーザー光吸収性成形部材に至るまで縦長の溶融プールが形成されるため、レーザー光透過吸収性成形部材とレーザー光吸収性成形部材との間に隙間があっても、比較的しっかりと溶着することができるという特徴を有している。
ところが、レーザー光透過吸収性成形部材及びレーザー光吸収性成形部材の双方の部材がポリブチレンテレフタレートホモポリマーである場合、それぞれ反りが生じ易いため、反りによって生じた隙間によって溶着強度にムラが出来て、上記のような構成のレーザー溶着体であっても、溶着強度を高めることが難しかった。そこで、この反りを抑える目的でレーザー溶着時に大きな押し力を加えて反りを矯正することが行われている。
しかし、この際の押し力が大きいと、溶着体に残留応力が残り、経時劣化し易くなるため、このような押し力を軽減することが求められる。
また、従来は、同じ個所にレーザーを複数回繰り返し照射して、溶着強度を高めていたが、製造効率を高める観点から、レーザーの照射回数を軽減することが求められている。
そこで本発明は、ポリブチレンテレフタレート系材料からなるレーザー光透過吸収性成形部材と、ポリブチレンテレフタレート系材料からなるレーザー光吸収性成形部材とをレーザー溶着によって一体化してなるレーザー溶着体の製造方法に関し、レーザー溶着の際に接合部材を押さえる押し力を軽減することができ、しかも、レーザーの照射回数を減らし、またレーザーの走査速度を高めて生産性を向上させることができる、新たなレーザー溶着体の製造方法を提供するものである。
なお、ポリブチレンテレフタレート系材料とは、その材料を構成する樹脂成分の50質量%以上をポリブチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート共重合体が占める材料をいう。
本発明は、部材Iと部材IIとを重ねて、部材I側がレーザー光の光源側となるように配置し、部材Iと部材IIとが当接する面に対して両側から押し力を掛けつつ、部材Iと部材IIの重なり部分にレーザー光を照射して、部材Iと部材IIとを溶着して積層一体化するレーザー溶着体の製造方法において、
部材Iは、ポリエステル系樹脂Aと、当該ポリエステル系樹脂A100質量部に対して0.0005〜5.0質量部のレーザー光を透過し且つ吸収し得る色素材(「レーザー光透過吸収色素材」と称する)とを含み、且つ、前記ポリエステル系樹脂Aは、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー及び/又はポリブチレンテレフタレート共重合樹脂を含む樹脂であり、
部材IIは、部材Iと当接する面のレーザー光を照射する位置に沿って1つ又は2つの凸条部を設けてなる構成を備えると共に、ポリエステル系樹脂Bと当該ポリエステル系樹脂B100質量部に対して0.15〜10.00質量部のレーザー光を透過せずに吸収し得る色素材(「レーザー光吸収色素材」と称する)とを含み、且つ、前記ポリエステル系樹脂Bは、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー及び芳香族ビニル系樹脂を含む樹脂組成物であることを特徴とするレーザー溶着体の製造方法を提案する。
本発明が提案するレーザー溶着体の製造方法において、部材Iは、レーザー光を透過し且つ吸収し得るレーザー光透過吸収色素材を含み、レーザー溶着時には、レーザー光を透過しつつ吸収し、発熱・溶融するため、部材Iの透過率を5〜90%にすることができるポリブチレンテレフタレートホモポリマー及び/又はポリブチレンテレフタレート共重合樹脂を採用し、他方、部材IIについては、部材IIのベース樹脂であるポリエステル系樹脂Bとして、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー及び芳香族ビニル系樹脂を含む樹脂組成物を選択することによって、部材IIの反りを低減して部材IとIIの間の隙間を小さくし、溶着強度を高めることができる。これにより、本発明が提案するレーザー溶着体の製造方法によれば、レーザー溶着に接合部材を押さえる押し力を軽減することができ、しかも、レーザーの照射回数を減らしたり、またレーザーの走査速度を高めたりすることができるから、品質の高いレーザー溶着体をより一層効率的に製造することができる。
部材IIに設ける凸条部の一例を示した図である。 部材IIに設ける凸条部の断面形状を例示した図である。 実施例で作製した部材Iを示した図である。 実施例で作製した部材IIを示した図である。 実施例で作製した部材I及びIIをレーザー溶着する状態の一例を示した斜視図である。 実施例における溶着強度の測定方法の説明図である。 実施例における反りの測定方法の説明図である。
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
[本レーザー溶着体の製造方法]
本発明の実施形態の一例に係るレーザー溶着体の製造方法(「本レーザー溶着体の製造方法」と称する)は、部材Iと部材IIとを重ねて、部材I側がレーザー光の光源側となるように配置し、部材I及び部材IIに対して部材Iと部材IIとが当接する面に対して両側から押し力を掛けつつ、部材Iと部材IIの重なり部分にレーザー光を照射して、部材Iと部材IIとを溶着して積層一体化するレーザー溶着体の製造方法である。
以下、部材I及び部材IIについて説明した後、レーザー溶着の方法について説明する。
<<部材I>>
部材Iは、ポリエステル系樹脂Aと、レーザー光を透過し且つ吸収し得るレーザー光透過吸収色素材とを含む樹脂組成物Aから成形された部材であればよい。
部材Iは、後述するようにポリエステル系樹脂A及びレーザー光透過吸収色素材以外の成分を適宜含有することができる。
<ポリエステル系樹脂A>
前記ポリエステル系樹脂Aは、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー(「ホモPBT」とも称する)及び/又はポリブチレンテレフタレート共重合樹脂(「共重合PBT」とも称する)を含む樹脂であることが好ましい。
(ホモPBT)
ホモPBTは、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有する高分子であり、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位からなる重合体である。
ホモPBTの末端カルボキシル基量は、好ましくは60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることがより好ましく、30eq/ton以下であることがより好ましい。
なお、ポリブチレンテレフタレートホモポリマーの末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLに樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定することにより、求めることができる。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
ホモPBTの固有粘度は0.5〜2.0dl/gであるものが好ましい。
当該固有粘度が0.5dl/g以上であれば、溶着体の機械的強度が低くなり過ぎることがなく、2.0dl/g以下であれば、流動性が低下して成形性が悪化したりレーザー溶着性が低下したりするのを防ぐことができる。
かかる観点から、ホモPBTの固有粘度は、0.5〜2dl/gであるものが好ましく、中でも0.6dl/g以上或いは1.5dl/g以下、その中でも0.7dl/g以上或いは1.2dl/g以下であることがさらに好ましい。
なお、固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定される値である。
(共重合PBT)
ポリエステル系樹脂Aとして共重合PBTを含有することにより、部材Iの反りがより少なくなりやすく、そのため溶着時の部材Iの押し圧が小さくても溶着時の隙間が小さくなり、溶着強度が高くなる、かつ残留応力が小さくなるという効果を得ることができる。
共重合PBTは、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体である。
テレフタル酸以外の他のジカルボン酸単位の具体例としては、例えばイソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸類などを挙げることができる。
1,4−ブタンジオール以外の他のジオール単位としては、炭素原子数2〜20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類などを挙げることができる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオぺンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノ一ルAのエチレンオキシド付加ジオールなどを挙げることができる。
共重合PBTは、機械的性質、耐熱性の観点から、ジカルボン酸単位中のテレフタル酸の割合が、70モル%以上であることが好ましく、中でも90モル%以上であることがさらに好ましい。
また、ジオール単位中の1,4−ブタンジオールの割合が、70モル%以上であることが好ましく、中でも90モル%以上であることがさらに好ましい。
共重合PBTは、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するため、例えばトリカルバリル酸、トリメリシン酸、トリメリット酸等の三官能、もしくはピロメリット酸等の四官能のエステル形成能を有する酸、またはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の三官能もしくは四官能のエステル形成能を有するアルコール等の多官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
共重合PBTは、共重合成分により変性することができる。
例えば当該共重合成分として、ポリアルキレングリコール類(特にはポリテトラメチレングリコール(PTMG))を共重合したポリブチレンテレフタレート樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、特にはイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂を挙げることができる。
ポリテトラメチレングリコール(PTMG)を共重合した共重合PBTにおいては、共重合体中のテトラメチレングリコール成分の割合が3〜40質量%であることが好ましく、中でも5質量%以上或いは30質量%以下、その中でも10質量%以上或いは25質量%以下であることがさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、レーザー溶着性と耐熱性とのバランスに優れる傾向となり好ましい。
他方、ダイマー酸を共重合した共重合PBTの場合は、全カルボン酸成分に占めるダイマー酸成分の割合は、カルボン酸基として0.5〜30モル%であることが好ましく、中でも1モル%以上或いは20モル%以下、その中でも3モル%以上或いは15モル%以下であることがさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、レーザー溶着性、長期耐熱性及び靭性のバランスに優れる傾向となり好ましい。
また、イソフタル酸を共重合した共重合PBTの場合には、全カルボン酸成分に占めるイソフタル酸成分の割合は、カルボン酸基として1〜30モル%であることが好ましく、中でも2モル%以上或いは20モル%以下、その中でも3モル%以上或いは15モル%以下であることがさらに好ましい。このような共重合割合とすることにより、レーザー溶着性、耐熱性、射出成形性及び靭性のバランスに優れる傾向となり好ましい。
共重合PBTとしては、成形性の観点から、ポリテトラメチレングリコールを共重合した共重合PBT若しくはイソフタル酸を共重合した共重合PBTが特に好ましい。
共重合PBTの固有粘度は0.5〜2.0dl/gであるものが好ましい。
当該固有粘度が0.5dl/g以上であれば、溶着体の機械的強度が低くなり過ぎることがなく、2.0dl/g以下であれば、流動性が低下して成形性が悪化したりレーザー溶着性が低下したりするのを防ぐことができる。
かかる観点から、共重合PBTの固有粘度は、0.5〜2.0dl/gであるものが好ましく、中でも0.6dl/g以上或いは1.5dl/g以下、その中でも0.8dl/g以上或いは1.3dl/g以下であることがさらに好ましい。
なお、固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定される値である。
共重合PBTの末端カルボキシル基量は、60eq/ton以下であることが好ましい。
当該末端カルボキシル基量が60eq/ton以下であれば、樹脂組成物の溶融成形時にガスの発生を抑えることができる。
かかる観点から、共重合PBTの末端カルボキシル基量は、60eq/ton以下であることが好ましく、中でも50eq/ton以下、その中でも30eq/ton以下であることがさらに好ましい。
他方、末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではない。通常は5eq/ton以上である。
なお、共重合PBTの末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLに樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定することにより、求めることができる。
末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
(ホモPBT+共重合PBT)
ポリエステル系樹脂AとしてホモPBT及び共重合PBTを含有することにより、部材Iの反りが少なくなることで、溶着強度が高くなり、かつ溶着体の残留応力が少なくなるという効果を得ることができる。
ポリエステル系樹脂AとしてホモPBT及び共重合PBTを含有する場合、共重合PBTの含有割合は、ホモPBT及び共重合PBTの合計100質量%中、10〜90質量%であることが好ましい。
共重合PBTの当該含有割合が10質量%以上であれば、レーザー溶着性能が高くなるため好ましく、当該含有割合が90質量%以下であれば、成形性が良くなるため好ましい。
かかる観点から、ホモPBT及び共重合PBTの合計100質量%中、共重合PBTの含有割合は10〜90質量%であることが好ましく、中でも15質量%以上或いは85質量%以下、その中でも20質量%以上或いは80質量%以下であることがさらに好ましい。
(ポリエステル樹脂Aを構成する樹脂)
部材Iを構成するポリエステル樹脂Aは、ホモPBT及び/又は共重合PBT以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で「他の樹脂」を含有してもよい。但し、ホモPBT及び/又は共重合PBTが、部材Iを構成するポリエステル樹脂Aの主成分樹脂であることが好ましく、部材Iを構成する樹脂のうち、ホモPBT及び/又は共重合PBTが50質量%以上を占めるのが好ましく、中でも60質量%以上、その中でも70質量%以上を占めるのがさらに好ましい。
部材Iを構成するポリエステル樹脂Aが、ホモPBT及び/又は共重合PBT以外に「他の樹脂」を含有する場合、後述する部材IIを構成するポリエステル系樹脂Bとは異なる組成とする必要がある。異なる組成とは、含有する樹脂の種類が異なる場合、含有する樹脂の種類は同じであってもその配合割合が異なる場合、樹脂を構成する共重合成分や共重合割合が異なる場合を包含する意味である。
ポリエステル樹脂Aが含有し得る「他の樹脂」としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、芳香族ビニル系樹脂等を挙げることができる。
<レーザー光透過吸収色素材>
部材Iが含有する上記レーザー光透過吸収色素材としては、例えばニグロシンやアニリンブラックなどのアジン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ポルフィリン系、クオテリレン系、アゾ系、アゾメチン系、アントラキノン系、スクエア酸誘導体及びインモニウム、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリドン系、イソインドリノン系、インダンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、キノリン系、トリフェニルメタン系などの各種有機染顔料を挙げることができる。これらのうちの一種を選択して使用することも、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
なお、本発明において「染顔料」とは、染料乃至顔料の意味である。
部材Iが含有する上記レーザー光透過吸収色素材としては、以上の中でも、黒色度を高めるために、レーザー光波長において主に吸収する染顔料(X)とレーザー光を主に透過する染顔料(Y)とを組合せて使用することが好ましい。
上記レーザー光波長において主に吸収する染顔料(X)としては、アジン(Azine)骨格を有するアジン系化合物の縮合混合物を含むのが好ましい。
アジン骨格を有するアジン系化合物の縮合混合物として、ニグロシンが好ましい。
ニグロシンは、レーザー光吸収性を有する染顔料として働き、800nm〜1200nmのレーザー光の範囲に、緩やかな吸収を有している。
ニグロシンは、C.I.Solvent Black 5やC.I.Solvent Black 7として、Color Indexに記載されているような、黒色のアジン系縮合混合物である。
ニグロシンは、例えばアニリン、アニリン塩酸塩及びニトロベンゼンを、塩化鉄の存在下、反応温度160〜190℃で酸化及び脱水縮合することにより合成することができる。ニグロシンの市販品としては、例えば、「NUBIAN(登録商標) BLACK シリーズ」(商品名、オリヱント化学工業社製)等を挙げることができる。
他方、レーザー光を主に透過する染顔料(Y)としては、例えばアントラキノン系染顔料、ペリノン系染顔料及びアゾメチン系染顔料を挙げることができる。
これら染顔料は、光線の吸収波長により呈する色が決まるが、黒色度を高めるためには、具体的には、青色を呈する染顔料(以下、青色染料と言うことがある)と、黄色を呈する染顔料(以下、黄色染料と言うことがある)と、赤色を呈する染顔料(以下、赤色染料と言うことがある)の組合せ、紫色を呈する染顔料(以下、紫色染料と言うことがある)と、黄色染料の組合せ、緑色を呈する染顔料(以下、緑色染料と言うことがある)と、赤色染料、青色染料と、茶色を呈する染顔料(以下、茶色染料と言うことがある)などの染顔料の組合せを挙げることができる。
好ましい青色染料は、最大吸収波長が590〜635nmの範囲のアントラキノン染顔料である。アントラキノン染顔料は通常青色の油溶性染顔料である。
部材Iが含有する上記レーザー光透過吸収色素材として、この染顔料を組み合わせることにより、例えば、緑色アントラキノン染顔料より、視認性が高く、黒色混合染顔料を組み合わせる場合にも、減法混色で、赤色染料、黄色染料を組み合わせることにより、着色力の高い黒色を示す着色剤を得ることができる。
最大吸収波長が590〜635nmの範囲であるアントラキノン染顔料としては、空気存在下における熱重量分析計TG/DTAの測定値(分解開始温度)が300℃以上のものを選択することが好ましい。
好ましいアントラキノン染顔料は、COLOR INDEXに記載されているようなC.I.ソルベントブルー97(分解開始温度320℃)、C.I.ソルベントブルー104(分解開始温度320℃)等が例示される。それらは、1種または2種以上使用されてもよい。但し、配合量が多くなると高温雰囲気下で成形体からブリードしやすくなり、耐熱変色特性が悪化する傾向がある。
市販されているアントラキノン染顔料としては、例えば、「NUBIAN(登録商標)BLUE シリーズ」、「OPLAS(登録商標) BLUE シリーズ」(いずれも商品名、オリヱント化学工業社製)等が挙げられる。
好ましい赤色染料としては、耐熱性が良好なペリノン染顔料が選ばれ、最大吸収波長が460〜480nmの範囲である赤色ペリノン染顔料が挙げられる。このようなペリノン染顔料の具体例は、C.I.ソルベント レッド 135、162、178、179等を使用することができる。それらは、1種または2種以上使用されてもよい。但し、配合量が多くなると高温雰囲気下で成形体からブリードしやすくなり、耐熱変色特性が悪化する傾向がある。
赤色ペリノン染顔料の市販品としては、例えば、「NUBIAN(登録商標) RED シリーズ、OPLAS(登録商標) RED シリーズ」(いずれも商品名、オリヱント化学工業社製)等が挙げられる。
好ましい黄色染料としては、耐熱性が良好なアントラキノン染顔料が選ばれ、最大吸収波長が435〜455nmの範囲のアントラキノン染顔料が好適である。最大吸収波長が435〜455nmの範囲にあるアントラキノン染顔料は、通常黄色の油溶性染顔料である。
黄色アントラキノン染顔料の具体例は、C.I.ソルベント イエロー 163、C.I.バット イエロー 1、2、3等を使用することができる。それらは、1種または2種以上使用されてもよい。それらは、1種または2種以上使用されてもよい。但し、配合量が多くなると高温雰囲気下で成形体からブリードしやすくなり、耐熱変色特性が悪化する傾向がある。黄色アントラキノン染顔料の市販品としては、例えば、「NUBIAN(登録商標) YELLOW シリーズ、OPLAS(登録商標) YELLOW シリーズ」(いずれも商品名、オリヱント化学工業社製)等が挙げられる。
好ましい茶色染料として、アゾメチン系染顔料が選ばれる。例えば、下記式(1)に示す1:1型アゾメチンニッケル錯体を少なくとも含有する染顔料を挙げることができる。
Figure 2019081362
[式(1)中、R〜Rは、互いに同一又は異なるものであり、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基またはハロゲン原子である。]
式(1)におけるR〜R中の炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、neo−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基等が好ましく挙げられ、炭素数1〜18のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、neo−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基等が好ましく、アルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ、ジエチルアミノ等を好ましく挙げることができ、ハロゲン原子は、例えばF、Cl、Br等である。
1:1型アゾメチンニッケル錯体に用いるアゾメチン色素は、公知の方法で製造出来る。例えば、以下の反応式で示すようなジアミノマレオニトリルと置換基を有しても良いサリチルアルデヒドを反応させることで得られる。
Figure 2019081362
式(2)中のR〜Rは、前記式(1)中のR〜Rと同義である。
このアゾメチン色素をニッケル化剤、例えば、酢酸ニッケルを用いて金属化することにより、下記に示すように、1:1型アゾメチンニッケル錯体が得られる。
Figure 2019081362
式(3)中のR〜Rは、前記式(1)中のR〜Rと同義である。
得られたニッケル錯体は、アゾメチン色素がキレート性の4配位子として働き、安定な錯体を構成する。
1:1型アゾメチンニッケル錯体は、耐熱性、耐光性等の堅牢性が良好であるため、屋外の部材や熱にさらされる部材用樹脂組成物に有用であり、レーザー溶着時の溶融時に熱変化が起こりにくく、レーザー溶着部材用の着色剤として好適である。
前記式(1)に示す1:1型アゾメチンニッケル錯体の具体例としては、R〜Rが以下のとおりである下記表1の化合物例1〜7等を好ましく挙げることができる。
なお、部材Iが含有する上記レーザー光透過吸収色素材として用いるアゾメチンニッケル錯体はこれらに限定されるものではない。
Figure 2019081362
部材Iが含有する上記レーザー光透過吸収色素材として用いるレーザー光を主に透過する染顔料(Y)は、最大吸収波長が590〜635nmの範囲であるアントラキノン染顔料(C1)と、最大吸収波長が460〜480nmの範囲であるペリノン染顔料(C2)と、最大吸収波長が435〜455nmの範囲であるアントラキノン染顔料(C3)を用いることが好ましい。
熱可塑性ポリエステル樹脂Aとの相溶性によって、レーザー光波長において主に吸収する染顔料(X)であるニグロシン及レーザー光を主に透過する染顔料(Y)を構成する油溶性染顔料の色相が変化するため、黒色色相として好適な漆黒の成形板を得るためには、染顔料(Y)を構成する油溶性染顔料の割合を調整する必要がある。そのため、C1〜C3の含有割合は、質量比で(C1、C2、C3の合計100質量部基準で)C1:C2:C3=24〜42:24〜48:22〜46であることが好ましい。更に好ましいC1:C2:C3の比率は、24〜41:24〜39:22〜46である。
更に、部材Iが含有する上記レーザー光透過吸収色素材として用いるレーザー光を主に透過する染顔料(Y)は、最大吸収波長が460〜480nmの範囲であるペリノン染顔料C2及び最大吸収波長が590〜635nmの範囲であるアントラキノン染顔料C1を、両者の質量比C2/C1が0.4〜2の割合で含有する着色剤であることが好ましい。本発明の樹脂組成物による発色性や、ブリードアウト抑制を考慮すると、より好ましくは0.4〜1.5、更に好ましくは0.6以上或いは1.5以下である。
併用してよいその他の染顔料としては、アゾ染料、キナクリドン染料、ジオキサジン染料、キノフタロン染料、ペリレン染料、ペリノン染料(上記したC2とは異なる波長の化合物)、イソインドリノン染料、トリフェニルメタン染料、アントラキノン染料(上記したC1、C3とは異なる波長の化合物)、アゾメチン染料等の染料を挙げることができる。ただし、ニッケルを含まないほうが好ましい。
レーザー光透過吸収色素材の含有量は、ポリエステル系樹脂材料A100質量部に対し、0.0005〜5.0質量部であるのが好ましい。透過吸収色素材の含有量が0.0005質量部以上であればレーザー光を樹脂が吸収し溶融するので好ましい。他方、当該含有量が5.0質量部以下であれば染顔料のブリードアウトを抑制でき、かつ発熱量をコントロールできるため好ましい。
かかる観点から、レーザー光透過吸収色素材の含有量は、ポリエステル系樹脂Aに対して、0.0005〜5.0質量部であることが好ましく、中でも0.001質量部以上或いは4.0質量部以下、その中でも0.005質量部以上或いは3.0質量部以下であることがさらに好ましい。
上記したように、レーザー光透過吸収色素材として、レーザー光波長において主に吸収する染顔料(X)とレーザー光を主に透過する染顔料(Y)とを組み合わせる場合には、染顔料(X)はポリエステル系樹脂A100質量部に対して0.0005〜0.6質量部であることが好ましい。
レーザー光を主に吸収する洗顔料(X)の含有量が0.0005質量部以上であれば吸収洗顔料がむらなく分散し、レーザー光を樹脂が吸収しむらなく溶融するので好ましい。他方、当該含有量が0.6質量部以下であれば、レーザー光を透過し、樹脂の分解による発泡が起こり難いため、好ましい。
かかる観点から、レーザー光吸収する洗顔料(X)含有量は、ポリエステル系樹脂A100質量部に対して、0.0005〜0.6質量部であることが好ましく、中でも0.001質量部以上或いは0.3質量部以下、その中でも0.003質量部以上或いは0.1質量部以下であることがさらに好ましい。
染顔料(Y)はポリエステル系樹脂A100質量部に対して0.0005〜5質量部であることが好ましい。
レーザー光を主に透過する染顔料(Y)の含有量が5.0質量部以下であれば、染顔料のブリードアウトが起こり難いため、好ましい。
かかる観点から、レーザー光を主に透過する染顔料(Y)の含有量は、ポリエステル系樹脂A100質量部に対して、0.0005〜5質量部であることが好ましく、中でも0.05質量部以上或いは4質量部以下、その中でも0.1質量部以上或いは3質量部以下であることがさらに好ましい。
染顔料(X)含有量に対する、染顔料(Y)含有量の比率(Y/X)は、1〜100であるのが好ましく、中でも10以上或いは90以下、その中でも20以上或いは80以下であるのがさらに好ましい。
<他の含有成分>
部材Iは、所望に応じ、種々の添加剤を含有することが可能である。このような添加剤としては、例えば、強化充填材、耐衝撃改良剤、流動改質剤、助色剤、分散剤、安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、潤滑剤、離型剤、結晶促進剤、結晶核剤、難燃剤、及びエポキシ化合物等を挙げることができる。
<部材Iの形状>
部材Iの形状は任意である。例えば板状であっても、矩形状であっても、その他の複雑な形状であってもよい。例えば端部突き合わせて溶着に供するような異形押出品(棒、パイプ等)でもよく、また高い防水性、気密性が必要とされる通電部品、電子部品等に用いられる金属インサートされた成形品であってもよい。
部材Iの成形方法も任意である。例えば射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等を挙げることができる。
部材Iは、その全厚さに渡ってレーザー光を透過する必要があるから、厚過ぎるのは好ましくない。他方、薄過ぎると、溶着体の強度が低下するから好ましくない。
かかる観点から、部材Iのレーザー溶着する接合部の厚さは、0.2mm〜4mmであることが好ましく、中でも0.3mm以上或いは3.5mm以下、その中でも0.5mm以上或いは3mm以下であることがさらに好ましい。
部材Iの透過率は、限定されるものではない。但し、部材Iの透過率は、高ければ高いほど、レーザー光を透過しやすく、それにより成形品の接合強度が高くなる傾向がある。そのため、部材Iの透過率は、波長940nmの光線を用いて測定する場合、部材Iが厚み1.5mm以上において、10〜80%であるのが好ましく、中でも10%以上或いは70%以下、その中でも15%以上或いは60%以下、その中でも20%以上或いは50%以下であるのが特に好ましい。
また、部材Iの反射率も、限定されるものではない。但し、部材Iの反射率は、低ければ低いほど、レーザー光の損失が少なく、より多くのレーザー光が部材Iに入射される傾向がある。そのため、部材Iの反射率は、波長940nmの光線を用いて測定する場合、部材Iの厚み1.5mm以上において、1〜90%であるのが好ましく、中でも5%以上或いは80%以下、その中でも10%以上或いは70%以下、その中でも10%以上或いは60%以下であるのが特に好ましい。
<<部材II>>
部材IIは、ポリエステル系樹脂Bとレーザー光を透過せずに吸収し得るレーザー光吸収色素材を含む樹脂組成物を成形してなる部材であればよい。
部材IIは、後述するようにポリエステル系樹脂B及びレーザー光吸収色素材以外の成分を適宜含有することができる。
<ポリエステル系樹脂B>
ポリエステル系樹脂Bは、ホモPBT及び芳香族ビニル系樹脂を含む樹脂であることが好ましい。
ポリエステル系樹脂BとしてホモPBT及び芳香族ビニル系樹脂を含有することにより、部材IIの反りが小さくなることで溶着時の隙間が小さくなり、溶着強度が高くなる、かつ残留応力が小さくなるという効果を得ることができる。
(ホモPBT)
ポリエステル系樹脂Bとして含むホモPBTは、ポリエステル系樹脂AのホモPBTと同様である。
(芳香族ビニル系樹脂)
芳香族ビニル系樹脂は、芳香族ビニル構造を主成分とする重合体であり、芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等を挙げることができる。
また、芳香族ビニル系樹脂として、芳香族ビニル化合物に他の単量体を共重合させた共重合体も用いることができる。代表的なものとしては、例えばスチレンとアクリロニトリルを共重合させたアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、スチレンと無水マレイン酸を共重合させた無水マレイン酸−スチレン共重合体(無水マレイン酸変性ポリスチレン樹脂)を挙げることができる。
芳香族ビニル系樹脂としては、例えばポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−スチレン(AS)、メチルメタクリレート−スチレン(MS)、スチレン−マレイン酸共重合体などが代表的なものである。
芳香族ビニル系樹脂には、ゴム成分を共重合することができる。ゴム成分の例としては、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどの共役ジエン系炭化水素を挙げることができる。ゴム成分を共重合する場合、共重合するゴム成分の量は、芳香族ビニル系樹脂全セグメント中の1質量%以上50質量%未満とする。ゴム成分の量は、好ましくは3〜40質量%、さらに好ましくは、5〜30質量%である。
ゴム成分共重合芳香族ビニル系樹脂としては、例えばゴム変性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸(ASA)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS)、およびその水素化物(SEBS)、スチレン−イソプレン共重合体(SIS)、およびその水素化物(SEPS)等を挙げることができる。
共重合可能な他の単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸などのα,β−不飽和カルボン酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステル類、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸無水物類、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミドなどのα,β−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物類などを挙げることができる。
芳香族ビニル系樹脂としては、GPCにより測定した質量平均分子量が50000〜500000であることが好ましい。
当該分子量が50000以上であれば、ブリードアウトを抑制することができ、成形時の分解ガス発生によるウエルド強度の低下を抑えることができる。他方、当該分子量が500000以下であれば、流動性及びレーザー溶着強度を高めることができる。
かかる観点から、芳香族ビニル系樹脂としては、GPCにより測定した質量平均分子量が50000〜500000であることが好ましく、中でも100000以上或いは400000以下、その中でも150000以上或いは300000以下であることがさらに好ましい。
芳香族ビニル系樹脂は、アクリロニトリル−スチレン共重合体の場合、220℃、98Nで測定されたメルトフローレート(MFR)が、0.1〜50g/10分であることが好ましい。
当該MFRが0.1g/10分以上であれば、ポリブチレンテレフタレート樹脂と相溶性がよく、射出成形時に層剥離などの外観不良が生じるのを抑えることができる。他方、当該MFRが50g/10分以下であれば、耐衝撃性の低下を抑えることができる。
かかる観点から、芳香族ビニル系樹脂の上記メルトフローレート(MFR)は、0.1〜50g/10分であることが好ましく、中でも0.5g/10分以上或いは30g/10分以下、その中でも1g/10分以上或いは20g/10分以下であることがさらに好ましい。
また、芳香族ビニル系樹脂がポリスチレンである場合は、200℃、48Nで測定されたMFRが1〜50g/10分であることが好ましく、3〜35g/10分であることがより好ましく、5〜20g/10分であることが更に好ましい。
芳香族ビニル系樹脂がブタジエンゴム含有ポリスチレンである場合は、200℃、49Nで測定されたMFRが0.1〜40g/10分であることが好ましく、0.5〜30g/10分であることがより好ましく、0.8〜20g/10分であることが更に好ましい。
(ホモPBT+芳香族ビニル系樹脂)
ポリエステル系樹脂Bが、ホモPBTと芳香族ビニル系樹脂とを含有する場合、ホモPBTと芳香族ビニル系樹脂の含有割合は、限定されるものではない。
芳香族ビニル系樹脂の含有割合が5質量%以上であれば、レーザー溶着性能が高くなるため好ましく、当該含有割合が50質量%以下であれば、成形性が良くなるため好ましい。
かかる観点から、ホモPBT及び芳香族ビニル系樹脂の合計100質量%中、芳香族ビニル系樹脂の含有割合は5〜50質量%であることが好ましく、中でも10質量%以上或いは45質量%以下、その中でも15質量%以上或いは40質量%以下であることがさらに好ましい。
(ポリエステル系樹脂Bを構成する樹脂)
部材IIを構成するポリエステル樹脂Bは、上記ホモPBT及び芳香族ビニル系樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲で「他の樹脂」を含有してもよい。但し、上記ホモPBT及び芳香族ビニル系樹脂が、部材IIを構成するポリエステル樹脂Bの主成分樹脂であることが好ましく、部材IIを構成する樹脂のうちホモPBT及び芳香族ビニル系樹脂が50質量%以上を占めるのが好ましく、中でも60質量%以上、その中でも70質量%以上を占めるのがさらに好ましい。
部材IIを構成するポリエステル樹脂Bが、上記「他の樹脂」を含有する場合、前述した部材Iを構成するポリエステル系樹脂Aとは異なる組成とする必要がある。異なる組成とは、含有する樹脂の種類が異なる場合、含有する樹脂の種類は同じであってもその配合割合が異なる場合、樹脂を構成する共重合成分や共重合割合が異なる場合を包含する意味である。
ポリエステル樹脂Bが含有し得る「他の樹脂」としては、例えば共重合PBT、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。
<レーザー光吸収色素材>
部材IIが含有する上記レーザー光吸収色素材としては、カーボンブラックなどの黒色系着色剤、酸化チタンや硫化亜鉛等の白色系着色剤などを挙げることができ、これらのうちの少なくとも一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、カーボンブラックを含むものが好ましい。
カーボンブラックとしては、例えばファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック及びアセチレンブラックなどのうちの少なくとも一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
カーボンブラックは、分散を容易にするため予めマスターバッチ化されたものを使用することも好ましい。
カーボンブラックの一次粒子径は、分散性の観点から、10nm〜30nmであることが好ましく、中でも15nm以上或いは25nm以下であることがさらに好ましい。分散性が良いと、レーザー溶着時の溶着ムラが減少する。
また、カーボンブラックは、漆黒性の観点から、JIS K6217で測定した窒素吸着比表面積が30〜400m/gのものが好ましく、中でも50m/g以上或、その中でも80m/g以上であることがさらに好ましい。
さらに、カーボンブラックは、分散性の観点から、JIS K6221で測定したDBP吸収量が20〜200cm/100gであることが好ましく、中でも40cm/100g以上或いは170cm/100g以下、その中でも50cm/100g以上或いは150cm/100g以下であることがさらに好ましい。分散性が良いと、レーザー溶着時の溶着ムラが減少する。
レーザー光吸収色素材の含有量は、ポリエステル系樹脂B100質量部に対して0.15〜10.00質量部であることが好ましい。
レーザー光吸収色素材の含有量が0.15質量部以上であれば、レーザー照射時に発熱して樹脂がむらなく溶融し、10.00質量部以下であれば、樹脂が急激かつ過剰に発熱し発泡することを防ぐことができるから、好ましい。
かかる観点から、レーザー光吸収色素材の含有量は、ポリエステル系樹脂B100質量部に対して0.15〜10.00質量部であることが好ましく、中でも5質量部以下、その中でも1質量部以下であることがさらに好ましい。
<他の含有成分>
部材IIは、所望に応じ、種々の添加剤を含有することが可能である。このような添加剤としては、例えば、強化充填材、耐衝撃改良剤、流動改質剤、助色剤、分散剤、安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、潤滑剤、離型剤、結晶促進剤、結晶核剤、難燃剤、及びエポキシ化合物等を挙げることができる。
<部材IIの形状>
部材IIの形状は任意である。例えば板状であっても、矩形状であっても、箱状であっても、その他の複雑な形状であってもよい。例えば端部突き合わせて溶着に供するような異形押出品(棒、パイプ等)でもよく、また高い防水性、気密性が必要とされる通電部品、電子部品等に用いられる金属インサートされた成形品であってもよい。
部材IIの成形方法も任意である。例えば射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等を挙げることができる。
部材IIの透過率は、溶着体の製造効率及び溶着強度を高める観点から、波長940nmの光線を用いて測定する場合、その厚みが1.5mm以上において、10%以下であるのが好ましく、中でも5%以下、その中でも0%であるのが特に好ましい。
また、部材IIの反射率は、特に限定されるものではない。
部材IIは、図1に示すように、部材Iと当接する面のレーザー光を照射する位置に沿って1つ又は2つ以上の凸条部を設けてなる構成を備えたものであることが好ましい。
このような凸条部を設けることにより、部材の反りや変形によって部材I、II間に隙間が生じたとしても、部材IIの凸条部を部材Iと接触させやすいから、安定した高い溶着強度でレーザー溶着することが可能である。
凸条部は、溶着部に沿って伸びるように設けるのが好ましい。例えば図4に示すように、吸収側の部材IIの上面の周縁全周を1周するように設けることができ、この際、1列、2列、3列以上設けることができる。
また、凸条部の断面形状は、図2に示すように、先端部が半円形、三角形、台形状などの矩形状、その他の形状でもよい。
上記凸条部の幅aは、0.05mm〜10mmであることが好ましい。
上記凸条部の高さb、すなわち部材IIの厚さ方向の突出高さbは、0.005mm〜5mmであることが好ましい。
部材IIは、2つの凸条部からなる場合、2つの凸条部間のピッチcは0.1mm〜10mmであることが好ましい。尚、ピッチcは、頂点を有する形状の凸条部の場合には、その頂点間の距離をいい、台形状等の単一の頂点を有しない形状の凸条部の場合には、それぞれの幅の中心地点間の距離を言う。
<部材I、IIの作製>
部材I又は部材IIの製造方法としては、通常の方法により樹脂組成物を作成し、通常の方法により樹脂組成物を成形すればよい。
先ずは、部材I又はIIを構成する原料を混合し、一軸または二軸押出機で溶融混練すればよい。また、各成分を予め混合することなく、若しくはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して樹脂組成物を調製してもよい。
また、部材I又はIIを構成する樹脂の一部に他の樹脂の一部を配合したものを溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りの樹脂や他の成分を配合して溶融混練してもよい。
なお、ガラス繊維等の繊維状の強化充填材を用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220〜300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
部材I及び部材IIの成形方法は、任意の方法を採用することができる。
例えば射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等を挙げることができる。
<部材Iと部材IIとの関係>
溶着強度及び耐圧強度の観点から、部材Iと部材IIとの関係に関して、部材Iの融点Tm−Aと結晶化温度Tc−Aとの差((Tm−A)−(Tc−A))が、部材IIの融点Tm−Bと結晶化温度Tc−Bとの差((Tm−B)−(Tc−B))よりも大きいことがさらに好ましい。特に、吸収側部材に用いる樹脂に影響を強く受けるものの、両者の差(((Tm−A)−(Tc−A))−((Tm−B)−(Tc−B))、「部材I−部材IIの(Tm−Tc)の差」とも称する)は、0〜30℃であるのが好ましく、その中でも2℃以上或いは20℃以下であるのがより好ましく、その中でも3℃以上或いは15℃以下、その中でも4℃以上或いは10℃以下であるのがさらに好ましい。
このようにするには、例えば部材IIに用いられるポリエステル樹脂Bの混合比率の調整、各種添加材の選択ならびに配合量の調整、部材Iに用いられるポリエステル樹脂Aのレーザー光透過吸収染顔料の選択および配合量の調整などをすればよい。但しこれらの調整方法に限定するものではない。
また、溶着強度及び耐圧強度の観点から、部材Iの融解エンタルピーΔHm−Aと部材IIの融解エンタルピーΔHm−Bとは、部材Iの融解エンタルピーΔHm−Aが、ポリエステル系樹脂Bの融解エンタルピーΔHm−Bよりも高いことがさらに好ましい。部材Iの融解エンタルピーΔHm−Aと部材IIの融解エンタルピーΔHm−Bの差(ΔHm−A)−(ΔHm−B)は、0〜20J/gであるのが好ましく、中でも0.5J/g以上或いは10J/g以下であるのがさらに好ましく、その中でも2J/g以上或いは9J/g以下であるのがさらに好ましい。
このようにするには、例えば部材IIに用いられるポリエステル樹脂Bの混合比率の調整、各種添加材の選択ならびに配合量の調整、部材Iに用いられるポリエステル樹脂Aのレーザー光透過吸収染顔料の選択および配合量の調整をすればよい。但しこれらの調整方法に限定するものではない。
なお、融点Tm、結晶化温度Tc及び融解エンタルピーΔHmは、射出成形により成形された部材I及び部材IIの、射出成形金型のゲートからの距離が5mm以上離れた箇所からサンプルを切り出して測定することが好ましい。
<レーザー溶着>
本レーザー溶着体の製造方法では、上記部材Iと部材IIとを重ねて、部材I側がレーザー光の光源側となるように配置し、部材I及び部材IIに対して厚み方向両側から内側方向に押し力を掛けつつ、部材Iと部材IIの重なり部分にレーザー光を照射すればよい。
照射されたレーザー光は、部材Iを厚み方向に貫いて部材IIに至るまで縦長の溶融プールを形成し、この溶融プールが冷却固化することで、部材Iと部材IIとを接合することができる。
部材Iと部材IIとを重ねる場合、例えば面接触または突合せ接触させることができる。部材IIの凸条部を部材Iに重ねるのが好ましい。
部材IIの凸条部が1つである場合、当該凸条部にレーザー光を照射することが好ましい。
他方、部材IIの凸条部が2つである場合、当該凸条部と凸条部の間にレーザー光を照射することが好ましい。
好ましいレーザー溶着条件については、以下に詳述する。
(レーザー溶着条件)
次に、好ましいレーザー溶着条件について説明する。但し、下記に説明する溶着条件に制限する趣旨ではない。
レーザー溶着条件は、例えば装置の仕様、レーザー種類、レーザー径、レーザー出力、走査速度の組み合わせにより、好ましい条件を適宜選択することが好ましい。
照射するレーザー光の種類としては、例えば固体レーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザー、気体レーザー、液体レーザー等を挙げることができる。例えばYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶)レーザー(波長1064nm、1070nm)、LD(レーザーダイオード)レーザー(波長808nm、840nm、940nm、980nm)等を好ましく用いることができる。中でも、波長940nm、980nm、1070nmのレーザー光が好ましい。
発振形態はCWまたはパルスのいずれでもよい。
照射方式も特に制限はない。例えばレーザーヘッドをロボットにより移動させるものや、レーザー光をミラーで反射させてスキャンするガルバノスキャン方式、多数のレーザーヘッドを装備し、溶着面に同時に照射する方式等から適宜選択できる。
レーザースポット径は、0.1mm以上30mm以下であることが好ましく、中でも0.2mm以上或いは10mm以下、その中でも0.7mm以上或いは3.0mm以下であることがさらに好ましい。
レーザースポット径が0.1mm以上であれば、所望の溶着強度を得るための溶着を行いやすくなり、30mm以下であれば、容易に溶着幅を制御することが可能となる。なお、溶着面の幅、高さに合わせて、レーザー光のスポット径を選択することができる。
また、レーザー光は、接合面にフォーカスしてもよいし、デフォーカスしてもよく、求める溶着体に応じて適宜選択することが好ましい。
レーザー出力は、1W〜1000Wであることが好ましく、中でも10W以上或いは500W以下、その中でも15W以上或いは200W以下であることがさらに好ましい。
レーザー出力が1000W以下であれば、レーザー溶着設備費用が高くなりすぎるのを抑えることができ、1W以上であれば、十分な溶着強度を得やすくなる。
レーザー走査速度は、0.1mm/s〜20000mm/sであることが好ましく、中でも1mm/s以上或いは10000mm/s以下、その中でも10mm/s以上或いは1000mm/s以下であることがさらに好ましい。
また、レーザー走査方法に関しては、溶着効率、溶着強度、溶着外観および装置負荷の観点から、接合面の形状に合わせて、レーザーの出力、溶着予定ライン、走査速度、及び/又は走査方法を調整することが好ましい。
レーザー溶着を行うに当たっては、まず、部材Iと、部材IIを重ね合わせ、部材Iと部材IIが重ね合わされた状態を維持する。重ね合わされた状態を維持する際、透過側部材Iの上、つまりレーザー照射側にガラス板、石英板、アクリル板などの透明板材を配置してもよい。特にガラス板、または石英板を配置する場合は、レーザー溶着時に発生する熱の放熱を促進し、良好な外観を得るのに適している。
次いで、部材Iの上方から、部材IIの周縁に対応する溶着予定箇所の上に、レーザー光を走査し照射する。このとき、レーザー光の殆ど或いは大部分が部材Iを透過及び一部吸収する。そして、レーザー光は、部材Iと部材IIの接合面に吸収され、該接合面の表面付近が発熱し、溶融する。
このようにすることで、部材IIの接合面と部材Iとが溶け合い、レーザー光の照射が停止された後には、部材Iと部材IIの溶融した部分が冷却され、固化して両部材が高い強度で溶着でき一体化することができる。
この際、少なくとも両部材のレーザー溶着の接合時には、両部材に治具或いは加圧手段によって押し力(N/mm)をかけるのが好ましい。
この押し力(N/mm)は、0.0002N/mm以上160N/mm以下であることが好ましく、中でも80N/mm以下、その中でも50N/mm以下、その中でも40N/mm以下、その中でも30N/mm以下、その中でも20N/mm以下であるのが特に好ましい。この範囲の押し力をかけることによって、成形品に残留応力が残りにくくなり、反り変形が小さくなり、十分な溶着強度を得やすくなる。
他方、下限としては、0.4N/mm以上であるのが好ましい。0.4N/mm以上とすることにより、接合面の密着が十分に保ちやすく、溶着を十分に行うことが可能となりやすい。
但し、レーザー走査距離が長い部材、例えばレーザー走査距離が200mm以上となる部材を溶着する際には、前記押し力(N/mm)は、10N/mm以下であることが好ましく、特には9N/mm以下であることが好ましく、より特には5N/mm以下であることが好ましく、最も好ましくは3N/mm以下である。
なお、上記の押し力(N/mm)は、単位距離当たりの押し力であり、一例として加圧用シリンダー(SMC製エアシリンダー(φ100mm))を取り付けた加圧ステージ上にコイン型ロードセル(株式会社イマダ、LM−20M)をセットし、実際の押し力(N)を計測する。そして、得られた当該実際の押し力(N)を溶着予定ラインの1周の長さ(mm)で除した値を単位距離当たりの押し力(N/mm)として求めることができる。
上記のようにすることで、部材IIの接合面と部材Iとが溶け合い、レーザー光の照射が停止された後には、部材Iと部材IIの溶融した部分が冷却され、固化して両部材が高い強度で溶着でき一体化することができる。
本レーザー溶着体の耐圧強度(溶着条件は以下のコップ形状時の溶着条件。押し力 15.8N/mm。)は、400kPa以上であることが好ましく、より好ましくは600kPa以上であり、更に好ましくは850kPa以上である。
なお、上記各種強度の測定において、試験片は、記載した押し力で溶着できる大きさのものを用いることとする。
(レーザー溶着条件)
波長 ;940nm
出力 ;140W
スポット径 ;2.1mmφ
走査速度 ;93mm/s
照射エネルギー;1.51J/mm
走査距離 ;137mm
走査周数 ;1
本レーザー溶着体は、その形状、大きさ、厚み等は任意であり、様々な用途に用いることができる。例えば、自動車等の輸送機器用の電装部品、電気電子部品、産業機械用部品、その他民生用部品等が挙げられ、中でも、溶着強度が高く、また、耐圧強度も高いため、内部に電子基盤、回路、センサー、ソレノイド、モーター、トランス、電池等の電気電子部品を内蔵するための容器等、気密性が必要な用途に用いるのが特に好ましい。
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
<光学特性:透過率、反射率の測定>
下記実施例・比較例で得られた樹脂組成物ペレット、すなわち下記表3に示された部材I形成用の樹脂組成物ペレット又は下記表4に示された部材II形成用の樹脂組成物ペレットを、120℃で7時間乾燥した後、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80−9E」)を用いてシリンダー温度260℃、金型温度60℃、及び、以下の射出条件で、透過率、反射率測定用の60mm×60mm×厚さ1.5mmの平板状の試験片を射出成形した。
(射出条件)
保圧時間:15sec
冷却時間:15sec
射出速度:120mm/sec
背圧:4MPa
スクリュー回転数:80rpm
上記で得られた試験片(60mm×60mm×厚さ1.5mm)のうち、ゲート側部より35mmの地点から、幅10mm、縦20mmで、かつ、試験片の幅の中心部において、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製「UV−3100PC」)を用いて、波長940nmにおける透過率(%)及び反射率(%)を求め、部材I及び部材IIの透過率及び反射率として下記表に示した。
<色調の測定方法>
下記実施例・比較例で得られた樹脂組成物ペレット、すなわち下記表3に示された部材I形成用の樹脂組成物ペレット又は下記表4に示された部材II形成用の樹脂組成物ペレットを、120℃で7時間乾燥した後、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80−9E」)を用いてシリンダー温度260℃、金型温度60℃、及び、上記した透過率、反射率測定用の試験片を成形した時と同じ射出条件にて、色調測定用の60mm×60mm×厚さ3mmの平板状の試験片を射出成形した。
上記で得られた平板状試験片について、L*値(SCE)を測定し、部材I又はIIのL値として下記表に示した。測定は、ISO7724/1に準拠した分光測色色差計(コニカミノルタオプティクス社製、CM−3600d)を用い、D65/10(反射照明・10°方向受光)、SCE(正反射光除去)測色法にて、ターゲットマスクCM−A(φ8mm)を用いて測定した。
<反り量の測定方法>
下記実施例・比較例で得られた樹脂組成物ペレット、すなわち下記表3に示された部材I形成用の樹脂組成物ペレット又は下記表4に示された部材II形成用の樹脂組成物ペレットを、120℃で7時間乾燥した後、住友重機械工業社製「型式SE−50D」射出成形機を使用し、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の条件で、図7に示す直方体状の箱型成形体を成形した。
図7は、反り性の評価のために使用した箱型成形体の斜視図であり、底面を下にした状態を示す。箱型成形体は、横25mm、縦30mm、高さ25mm、肉厚は底面が1mm、その他の側面は0.5mmである。ゲートは長径2.0mm、短径1.5mmの略楕円形の1点ゲートで、図7の手前側の側面の中央のサブマリンゲート(図7中、GATE)である。
成形後の成形品を箱底面が下になるよう置き、図7中の奥側の側面が箱の内側方向に内反りした際の奥側側面の頂部の内反り長さLを測定(単位:mm)し、部材I又はIIの反り量として下記表に示した。
この値が小さい程、成形品の内反り量が小さいため寸法精度が良いことを示す。
<融点Tm、結晶化温度Tc、融解エンタルピーΔHmの測定方法>
下記実施例・比較例で得られた樹脂組成物ペレット、すなわち下記表3に示された部材I形成用の樹脂組成物ペレットを120℃で7時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55」)を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度60℃で成形して、図3に示すような、厚さ1.5mmの黒色または乳白色の成形体(部材I)を作製した。
作製した部材Iの成形体の溶着予定部(ゲートからの距離:33mm部)を切削し、示差走査熱量測定(DSC)機(パーキンエルマー社製「Pyris Diamond」)を用いて、窒素雰囲気下、30℃から300℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、300℃で3分保持した後、降温速度20℃/分にて降温し、融点Tm、融解エンタルピーΔHm、結晶化温度Tcを測定し、下記表において、部材IのTm、Tc、Tm−Tc及びΔHmとして示した。
<部材Iの作製>
部材Iの作製に当たっては、下記表2に示した成分を表2に示した割合で配合された染顔料を使用した。
Figure 2019081362
下記表3に示した成分を表3に示した配合割合で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、30mmのベントタイプ2軸押出機(日本製鋼所社製、「TEX30α」)のメインホッパーに投入し、ガラス繊維はホッパーからサイドフィーダーより供給し、押出機バレル設定温度を260℃、ダイを250℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量40kg/時間の条件で混練してストランド状に押し出し、樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを120℃で7時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55」)を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度60℃で成形して、図3に示すような、厚さ1.5mmの黒色または乳白色の成形体(部材I)を作製した。
Figure 2019081362
<部材IIの作製>
下記表4に示した成分を表4に示した配合割合で、ステンレス製タンブラーに入れ、1時間攪拌混合した。得られた混合物を、30mmのベントタイプ2軸押出機(日本製鋼所社製、「TEX30α」)のメインホッパーに投入し、ガラス繊維はホッパーからサイドフィーダーより供給し、押出機バレル設定温度を260℃、ダイを250℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量40kg/時間の条件で混練してストランド状に押し出し、樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを120℃で7時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55」)を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度60℃で成形して、図4に示すような鍔付き円形カップ状の黒色または乳白色の成形体(部材II)を作製した。凸条部は、円形カップの鍔部の上面上に周縁に沿って1条又は2条の凸条部として設け、成形体の作製時に一体成形により付与した。これらの大きさは、凸条部が1つの場合(表中ではシングルと記載)、高さ0.7mm、幅1.5mm、凸条部が2つの場合(表中ではダブルと記載)、高さ0.7mm、幅0.46mm、ピッチ0.5mmの同形状の凸条部とした。
尚、光学特性、色調、及び、反り量、融点Tm、融解エンタルピーΔHm、結晶化温度Tcについては、部材Iにて説明したのと同様の方法で測定した。また、融点Tm、融解エンタルピーΔHm、結晶化温度Tcについては、作製した部材IIの成形体の溶着予定部(ゲートからの距離:42mm部)を測定した。
Figure 2019081362
下記表5及び6に示した組み合わせの部材I及び部材IIを選択し、図5に示すように、それぞれ穴21、22をあけて、溶着力測定用の冶具23,24を内部に入れた状態で、箱状の部材IIに蓋状の部材Iを重ね、部材I及び部材IIの重なり部分である鍔部の垂直上方位置にレーザー光源を配置し、ガラス板を用いて部材I及び部材IIの重なり部分すなわち両者の当接面に対して厚み方向両側から内側方向に押し力(溶着時押し圧)を掛けつつ、レーザー溶着機として「ファインディバイス社製 FD−2330」を使用して、下記レーザー溶着条件1〜6で、レーザー光を走査し照射し冷却してレーザー溶着体を得た。
溶着条件は以下のレーザー溶着条件1〜6を採用した。
(レーザー溶着条件1)
波長 ;940nm
出力 ;140W
スポット径 ;2.1mmφ
走査速度 ;93mm/s
照射エネルギー;1.51J/mm
走査距離 ;137mm
走査周数 ;1
押し力 ;15.8N/mm
(レーザー溶着条件2)
波長 ;940nm
出力 ;100W
スポット径 ;2.1mmφ
走査速度 ;100mm/s
照射エネルギー;1.00J/mm
走査距離 ;137mm
走査周数 ;2
押し力 ;15.8N/mm
(レーザー溶着条件3)
波長 ;940nm
出力 ;100W
スポット径 ;2.1mmφ
走査速度 ;80mm/s
照射エネルギー;1.25J/mm
走査距離 ;137mm
走査周数 ;2
押し力 ;15.8N/mm
(レーザー溶着条件4)
波長 ;940nm
出力 ;140W
スポット径 ;2.1mmφ
走査速度 ;20mm/s
照射エネルギー;7.00J/mm
走査距離 ;137mm
走査周数 ;1
押し力 ;15.8N/mm
(レーザー溶着条件5)
波長 ;940nm
出力 ;140W
スポット径 ;2.1mmφ
走査速度 ;93mm/s
照射エネルギー;1.51J/mm
走査距離 ;137mm
走査周数 ;1
押し力 ;25.5N/mm
(レーザー溶着条件6)
波長 ;940nm
出力 ;140W
スポット径 ;2.1mmφ
走査速度 ;40mm/s
照射エネルギー;4.67J/mm
走査距離 ;137mm
走査周数 :2
押し力 ;15.8N/mm
<溶着強度の評価>
図6に示すように、部材I及び部材IIからなる箱体の上面及び下面からそれぞれに測定用冶具25,26を挿入して、内部に収納した冶具23,24とそれぞれ結合させ、上下に引っ張って(引張速度:5mm/min)、部材I及び部材IIが離れる強度(溶着強度)を測定した。但し、試験前に部材Iと部材IIが剥離した場合には、試験は行うことができなかった(表中、不可と表記した)。
尚、装置はインストロン社製5544の万能型試験機を使用した。
<耐圧強度の評価>
15.8N/mmの押し力下で溶着された溶着体の部材I中央の凸部の場所にφ3.5mmの穴を開けた後、水注入用カプラを接合する。まず溶着体内部を水で満たした後、25℃水中に浸漬させる。次に溶着体内部に送水を開始し、溶着体内部圧力を196kPa刻みで昇圧し、溶着部から圧力が抜けた時点(圧力低下した時点)を破壊最大圧力とする。但し、試験前に部材Iと部材IIが剥離した場合には、試験は行うことができなかった(表中、不可と表記した)。
尚、装置は株式会社東洋精機製「ボトル耐圧試験機」を使用した。
<耐ブリード性能>
上記作製した溶着体を、部材IIが下部になるように、PBTホモポリマー樹脂(NOVADURAN(登録商標) 5010R5ナチュラル)プレート(以下、ナチュラプレートと言う)上に置き、オーブンに入れて120℃で8時間加熱し、部材IIが接しているナチュラルプレートへ色素材が移行しているかを観察し、次の基準で評価した。
〇(good):ブリードアウトは観察されなかった。
×(poor):ブリードアウトが観察された。
Figure 2019081362
Figure 2019081362
上記実施例及びこれまで本発明者が行ってきた試験結果から、部材Iは、レーザー光を透過し且つ吸収し得るレーザー光透過吸収色素材を含み、レーザー溶着時には、レーザー光を透過しつつ吸収し、発熱溶融するため、部材Iの透過率を5〜90%に調整することができるポリブチレンテレフタレートホモポリマー及び/又はポリブチレンテレフタレート共重合樹脂を、部材Iのベース樹脂とすることが好ましいと考えることができる。
他方、部材IIのベース樹脂であるポリエステル系樹脂Bとして、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー及び芳香族ビニル系樹脂を含む樹脂を選択することにより、部材IIの反りが小さくなることで、溶着時に部材IとIIの間の隙間が減少するので溶着強度が高くなり、かつ残留応力が減少することが分かった。部材IIは、レーザー光を透過せずに吸収し得るレーザー光吸収色素材を含み、レーザー溶着時には、レーザー光を吸収し、発熱溶融して熱を透過材に伝えるため、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー及び芳香族ビニル系樹脂を含む樹脂であることが好ましいと考えることができる。
これにより、レーザー溶着に接合部材を押さえる押し力を軽減することができ、しかも、レーザーの照射回数を減らし、またレーザーの走査速度を高めて生産性を向上させることができる。

Claims (9)

  1. 部材Iと部材IIとを重ねて、部材I側がレーザー光の光源側となるように配置し、部材Iと部材IIとが当接する面に対して両側から押し力を掛けつつ、部材Iと部材IIの重なり部分にレーザー光を照射して、部材Iと部材IIとを溶着して積層一体化するレーザー溶着体の製造方法において、
    部材Iは、ポリエステル系樹脂Aと、当該ポリエステル系樹脂A100質量部に対して0.0005〜5.0質量部のレーザー光を透過し且つ吸収し得る色素材(「レーザー光透過吸収色素材」と称する)とを含み、且つ、前記ポリエステル系樹脂Aは、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー及び/又はポリブチレンテレフタレート共重合樹脂を含む樹脂であり、
    部材IIは、部材Iと当接する面のレーザー光を照射する位置に沿って1つ又は2つの凸条部を設けてなる構成を備えると共に、ポリエステル系樹脂Bと当該ポリエステル系樹脂B100質量部に対して0.15〜10.00質量部のレーザー光を透過せずに吸収し得る色素材(「レーザー光吸収色素材」と称する)とを含み、且つ、前記ポリエステル系樹脂Bは、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー及び芳香族ビニル系樹脂を含む樹脂組成物であることを特徴とするレーザー溶着体の製造方法。
  2. 部材Iと部材IIとが当接する面に対して両側から0.0002〜160N/mmの押し力を掛けることを特徴とする請求項1に記載のレーザー溶着体の製造方法。
  3. 波長800〜1200nmのレーザー光を1〜10000Wの出力で1〜10000mm/secの速度で走査させながら照射することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザー溶着体の製造方法。
  4. 部材IIの凸条部はそれぞれ、幅が0.05mm〜10mmであり、高さが0.05mm〜5mmであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のレーザー溶着体の製造方法。
  5. 部材IIは、2つの凸条部を0.1mm〜10mmのピッチで設けることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のレーザー溶着体の製造方法。
  6. 部材Iの上記ポリブチレンテレフタレートホモポリマーは、固有粘度0.5〜2dl/gであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のレーザー溶着体の製造方法。
  7. 部材IIの上記ポリエステル系樹脂Bが、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー50〜95質量%及び芳香族ビニル系樹脂5〜50質量%からなることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のレーザー溶着体の製造方法。
  8. 上記レーザー光透過吸収色素材は、アジン骨格を有するアジン系化合物の混合物であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のレーザー溶着体の製造方法。
  9. 上記レーザー光吸収色素材は、カーボンブラックを含むことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載のレーザー溶着体の製造方法。
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