以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。以下の説明中の前後、左右、及び上下の方向は、図中の矢印の方向を基準とする。各矢印の方向は、図1乃至図9、図13、図16A乃至図16Dにおいて、異なる図面同士で互いに整合している。各矢印の方向は、図11及び図12同士で互いに整合している。各矢印の方向は、図14及び図15同士で互いに整合している。図面によっては、簡便な図示を目的として、回路基板CB1及びCB2の図示を省略する。
以下の説明では、一実施形態に係るコネクタ10は、リセプタクルコネクタであり、接続対象物60は、プラグコネクタであるとして説明する。すなわち、コネクタ10と接続対象物60とが接続される際に、コンタクト50の接触部が弾性変形するコネクタ10をリセプタクルコネクタとし、コンタクト90が弾性変形しない接続対象物60をプラグコネクタとして説明する。コネクタ10及び接続対象物60の種類は、これに限定されない。コネクタ10がプラグコネクタの役割を果たし、接続対象物60がリセプタクルコネクタの役割を果たしてもよい。
以下の説明では、コネクタ10及び接続対象物60は、回路基板CB1及びCB2にそれぞれ接続され、これらに対して互いに垂直方向に接続されるとして説明する。すなわち、コネクタ10及び接続対象物60は、一例として上下方向に沿って接続される。以下の説明中で使用する「嵌合方向」は、一例として上下方向を指すとする。接続方法は、これに限定されない。コネクタ10及び接続対象物60は、回路基板CB1及びCB2に対して、それぞれ平行方向に接続されてもよいし、一方が垂直方向、他方が平行方向による組み合わせで接続されてもよい。回路基板CB1及びCB2は、リジッド基板であってよいし、又はそれ以外の任意の回路基板であってもよい。例えば、回路基板CB1又はCB2は、フレキシブルプリント回路基板(FPC)であってもよい。
図1は、一実施形態に係るコネクタ10と接続対象物60とが接続された状態を上面視により示した外観斜視図である。図2は、一実施形態に係るコネクタ10と接続対象物60とが分離した状態を上面視により示した外観斜視図である。
一実施形態に係るコネクタ10は、フローティング構造を有している。コネクタ10は、接続された接続対象物60の回路基板CB1に対する相対的な移動を許容する。すなわち、接続対象物60は、コネクタ10と接続されている状態であっても、回路基板CB1に対して所定の範囲内で動くことができる。
図3は、一実施形態に係るコネクタ10を上面視により示した外観斜視図である。図4は、図3のコネクタ10の上面視による分解斜視図である。図5は、図3のV−V矢線に沿った断面斜視図である。図6は、図5のVI部の拡大図である。図7は、図3のV−V矢線に沿った断面図である。図8は、一対のコンタクト50を示した正面図である。図9は、図8のIX部の拡大図である。
図4に示すとおり、コネクタ10は、大きな構成要素として、第1インシュレータ20と、第2インシュレータ30と、金具40と、コンタクト50と、を有する。コネクタ10は、一例として以下の方法で組み立てられる。すなわち、第1インシュレータ20の下方から金具40を圧入し、金具40が圧入された第1インシュレータ20の内側に第2インシュレータ30を配置する。それぞれの下方からコンタクト50を圧入する。
コンタクト50が弾性変形しない状態におけるコネクタ10の詳しい構造について、主に図3乃至図9を参照しながら説明する。
図4及び図5に示すとおり、第1インシュレータ20は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂料を射出成形した、角筒状の部材である。第1インシュレータ20は、中空であり、上面及び下面に開口21A及び21Bをそれぞれ有する。第1インシュレータ20は、4つの側面から構成され、内部の空間を囲繞する外周壁22を有する。第1インシュレータ20は、外周壁22の左右両端部で上下方向に沿って第1インシュレータ20の内部に凹設されている金具取付溝23を有する。金具取付溝23には、金具40が取り付けられる。
第1インシュレータ20は、外周壁22の前面及び後面の下縁部から下面及び内面にわたって形成されている複数のコンタクト取付溝24を有する。複数のコンタクト取付溝24には、複数のコンタクト50がそれぞれ取り付けられる。コンタクト取付溝24の数は、コンタクト50の数と同一である。複数のコンタクト取付溝24は、左右方向に並んで凹設されている。コンタクト取付溝24は、第1インシュレータ20の内面において、上下方向に延在する。
第2インシュレータ30は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂料を射出成形した、左右方向に延在する部材である。第2インシュレータ30は、前方からの正面視において略凸字状に形成されている。第2インシュレータ30は、下部を構成する底部31と、底部31から上方に突出し、接続対象物60と嵌合する嵌合凸部32と、を有する。底部31は、左右方向において嵌合凸部32よりも長い。換言すると、底部31の左右両端部は、嵌合凸部32の左右両端部よりもそれぞれ外方に突出する。第2インシュレータ30は、嵌合凸部32の上面に凹設されている嵌合凹部33を有する。第2インシュレータ30は、嵌合凸部32の上縁部にわたって嵌合凹部33を囲むように形成されている誘い込み部34を有する。誘い込み部34は、嵌合凸部32の上縁部において上方に向けて斜め内方に傾斜する傾斜面によって構成される。
第2インシュレータ30は、左右方向に並んで形成されている複数のコンタクト取付溝35を有する。複数のコンタクト取付溝35には、複数のコンタクト50がそれぞれ取り付けられる。コンタクト取付溝35の数は、コンタクト50の数と同一である。複数のコンタクト取付溝35は、上下方向に延在する。コンタクト取付溝35の下部は、第2インシュレータ30の前面及び後面の下部が凹設されることで形成されている。コンタクト取付溝35の中央部は、第2インシュレータ30の内部に形成されている。コンタクト取付溝35の上部は、嵌合凹部33の前後方向の両内面が凹設されることで形成されている。
第2インシュレータ30は、嵌合凹部33の底面から下方に向けて内部で延在する壁部36を有する。壁部36は、前後方向に配列された状態で第2インシュレータ30に取り付けられる一対のコンタクト50の間に位置する。すなわち、壁部36は、一対のコンタクト50それぞれと対向する。壁部36の上部は、最も幅広に形成されている。壁部36の中央部は、上部よりも幅狭に形成されている。壁部36の下部は、中央部よりもさらに幅狭に形成されている。壁部36の前面及び後面は、コンタクト取付溝35の一部を構成する。第2インシュレータ30の内部に形成されているコンタクト取付溝35の中央部は、壁部36の中央部及び上部の幅の変化に伴って、下方から上方に向かうにつれて前後方向に幅狭となる。
金具40は、任意の金属材料の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図4に示す形状に成形加工したものである。金具40は金具取付溝23に圧入され、第1インシュレータ20の左右両端部それぞれに配置されている。金具40は、左右方向からの正面視において、それぞれ略H字状に形成されている。金具40は、その前後両側の下端部において、略U字状に外側に延出する実装部41を有する。金具40は、その上下方向の略中央部において、前後方向に延在する連続部42を有する。金具40は、連続部42において、前後方向略中央の下縁部から内方に向けて左右方向に突出する抜止部43を有する。抜止部43は、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の上方への抜けを抑制する。金具40は、その前後両側の上端部において、第1インシュレータ20に対して係止する係止部44を有する。
コンタクト50は、ばね弾性を備えた銅合金(例えば、リン青銅、ベリリウム銅若しくはチタン銅)又はコルソン系銅合金の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図4乃至図9に示す形状に成形加工したものである。コンタクト50は、抜き加工のみによって形成される。コンタクト50の加工方法はこれに限定されず、抜き加工を行った後に板厚方向に屈曲させる工程を含んでもよい。コンタクト50は、弾性変形に伴う形状変化が大きくなるように、弾性係数の小さい金属材料によって形成されている。コンタクト50の表面には、ニッケルめっきで下地を形成した後に、金又は錫等によるめっきが施されている。
図4に示すとおり、コンタクト50は、左右方向に沿って複数配列されている。図7に示すとおり、コンタクト50は、第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30に取り付けられている。図7及び図8に示すとおり、同一の左右位置に配列される一対のコンタクト50は、前後方向に沿って対称的に形成及び配置されている。すなわち、一対のコンタクト50は、その間の中心を通る上下軸に対して互いに略線対称となるように形成及び配置されている。
コンタクト50は、上下方向に沿って延在し、第1インシュレータ20によって支持される第1基部51を有する。第1基部51の上端部は、第1インシュレータ20に対して係止する。コンタクト50は、第1基部51の下端部と連続して形成され、第1インシュレータ20に対して係止する係止部52を有する。第1基部51及び係止部52は、第1インシュレータ20のコンタクト取付溝24に収容されている。コンタクト50は、係止部52の下端部の外側から略L字状に外方に延出する実装部53を有する。
図9に示すとおり、コンタクト50は、第1基部51から前後方向に沿って内側に延出する、弾性変形可能な第1弾性部54Aを有する。第1弾性部54Aは、第1基部51から斜め下方に向けて内側に延出した後、斜め上方に向けて屈曲し、そのまま直線的に延在する。第1弾性部54Aは、その内側の端部において下方に向けて再度屈曲し、調整部54Bの上端部と接続されている。第1弾性部54Aは、第1基部51よりも幅狭に形成されている。以上により、第1弾性部54Aは、弾性変位する部分を調整することができる。
コンタクト50は、第1弾性部54Aと連続して形成されている調整部54Bを有する。調整部54Bは、全体として第1弾性部54Aよりも幅広、すなわち断面積が大きく形成されていることで、第1弾性部54Aよりも高い電気伝導性を有する。調整部54Bは、コンタクト50が弾性変形しない状態において、接続対象物60との嵌合方向、すなわち上下方向に延在する。
調整部54Bは、上部を構成する第1調整部54B1と、中央部を構成する第2調整部54B2と、下部を構成する第3調整部54B3と、を有する。第1調整部54B1の上端部は、第1弾性部54Aと接続されている。第1調整部54B1は、第1弾性部54Aよりも断面積が大きい。第1調整部54B1は、前後方向に沿って第2調整部54B2よりも一段外側に突出する。第2調整部54B2は、第1調整部54B1よりも断面積が小さくかつ第1弾性部54Aよりも断面積が大きい。例えば、第2調整部54B2は、第1調整部54B1よりも前後方向に幅狭にかつ第1弾性部54Aよりも前後方向に幅広に形成されている。第3調整部54B3は、第2調整部54B2よりも断面積が大きい。第3調整部54B3は、前後方向に沿って第2調整部54B2よりも一段内側に突出する。このように、調整部54Bは、第1調整部54B1及び第3調整部54B3において高い電気伝導性を有し、第2調整部54B2においてこれらよりも低い電気伝導性を有する。第1調整部54B1と第3調整部54B3とは対称的に形成されている。すなわち、第1調整部54B1と第3調整部54B3とは、調整部54Bの中心に対して互いに略点対称となるように形成されている。
コンタクト50は、第3調整部54B3の下端部から第2インシュレータ30まで延出し、弾性変形可能な第2弾性部54Cを有する。第2弾性部54Cは、第3調整部54B3の下端部から斜め上方に向けて屈曲し、そのまま直線的に延在する。第2弾性部54Cは、斜め下方に向けて再度屈曲し、後述する第2基部55の外端部と接続されている。第2弾性部54Cは、第1弾性部54Aと同様に調整部54Bよりも幅狭に形成されている。以上により、第2弾性部54Cは、弾性変位する部分を調整することができる。
第1弾性部54A、調整部54B及び第2弾性部54Cは、略クランク状に一体的に形成されている。第1弾性部54A、調整部54B及び第2弾性部54Cは、嵌合方向に沿って嵌合側から順に配置されている。第1弾性部54A及び第2弾性部54Cは、調整部54Bに対して対称的に形成されている。すなわち、第1弾性部54A及び第2弾性部54Cは、調整部54Bの中心に対して互いに略点対称となるように形成されている。
第1弾性部54A及び第2弾性部54Cは、調整部54Bにおいて、嵌合方向の両端側からそれぞれ延出する。より具体的には、第1弾性部54Aは、第1調整部54B1の上縁部における内側の端部から延出する。一方で、第2弾性部54Cは、第3調整部54B3の下縁部における外側の端部から延出する。このように、第1弾性部54Aと調整部54Bとの接続点及び第2弾性部54Cと調整部54Bとの接続点は、調整部54Bの中心に対して互いに対称的な位置に形成されている。
図7及び図8に示すとおり、コンタクト50は、第2弾性部54Cと連続する第2基部55を有する。第2基部55は、その剛性を高めるために、第2弾性部54Cよりも幅広に形成されている。コンタクト50は、第2基部55から上方に向けて延出し、第2インシュレータ30の内壁に沿って配置されている、弾性変形可能な第3弾性部56を有する。第3弾性部56は、弾性変形しない状態において接続対象物60との嵌合方向、すなわち上下方向に延在する。第3弾性部56は、全体にわたって、その内側に形成されている第2インシュレータ30の壁部36と対向する。コンタクト50は、第3弾性部56が弾性変形する際の屈曲点を構成するように、第3弾性部56の表面に形成されている切欠部57を有する。切欠部57は、第3弾性部56の前後方向の外面の略中央部において、その表面が切り取られた状態で形成されている。コンタクト50は、第3弾性部56の上方に連続して形成され、第2インシュレータ30に対して係止する係止部58を有する。係止部58は、第3弾性部56よりも幅広に形成されている。コンタクト50は、係止部58の上方に連続して形成され、嵌合の際に接続対象物60のコンタクト90と接触する弾性接触部59を有する。弾性接触部59は、コンタクト50において、例えば第2調整部54B2から第1調整部54B1と反対側に連続する部分の先端に形成されている。
図7に示すとおり、第2基部55、第3弾性部56、切欠部57及び係止部58は、第2インシュレータ30のコンタクト取付溝35に収容されている。第2基部55、第3弾性部56及び係止部58は、略全体にわたって、その内側に形成されている第2インシュレータ30の壁部36と対向する。図6にも示すとおり、第2弾性部54Cと第3弾性部56とを接続する第2基部55は、壁部36の下端部と対向する位置に配置されている。
図7に示すとおり、第2基部55及び第3弾性部56の下半部は、第2インシュレータ30の前面及び後面の凹設部分として構成されるコンタクト取付溝35の下部に収容されている。第3弾性部56の上半部及び係止部58は、第2インシュレータ30の内部により構成されるコンタクト取付溝35の中央部に収容されている。切欠部57は、コンタクト取付溝35の下部と、その中央部との境界近傍に位置するように、第3弾性部56の表面に形成されている。
弾性接触部59は、第2インシュレータ30の嵌合凹部33の内面の凹設部分として構成されるコンタクト取付溝35の上部に略収容されている。弾性接触部59の先端は、コンタクト取付溝35から嵌合凹部33内に露出している。
図10は、コンタクト50の第1弾性部54A、調整部54B及び第2弾性部54Cにおけるインピーダンス変化の様子を示した模式図である。図10を参照しながら、調整部54Bの機能について説明する。図10において、縦軸はインピーダンスの大きさを示す。横軸はコンタクト50における位置を示す。実線グラフはインピーダンスの実測値を示す。二点鎖線グラフはインピーダンスの理論値を示す。それぞれのグラフに対して太線及び細線の2つのグラフを示しているが、太線は、一実施形態に係るコンタクト50のように調整部54Bが第1調整部54B1、第2調整部54B2及び第3調整部54B3の3つの構成部を有する場合のインピーダンス変化を示す。一方で、細線は、例えば調整部54Bがこれらの3つの構成部を有さず全体的に第2調整部54B2の幅と略同一である仮の場合のインピーダンス変化を示す。破線グラフはインピーダンスの理想値を示す。初めに、一実施形態に係るコンタクト50の調整部54Bの機能と比較するために、調整部54Bの幅が略同一である場合のインピーダンス変化について、細線のグラフを参照しながら説明する。
第1弾性部54A、調整部54B及び第2弾性部54C全体のインピーダンスは、調整部54Bによって調整される。各構成部におけるインピーダンスは、理論的には、その幅、すなわち断面積に合わせて離散的に変化するが、実際には連続的に変化すると考えられる。コンタクト50では、大きな弾性変形量を得るために第1弾性部54Aが幅狭に(断面積が狭く)形成されていることで、理想値に調整されたインピーダンスが第1弾性部54Aにおいて増大する。第1弾性部54Aと連続して調整部54Bを幅広に(断面積が大きく)形成することで、第1弾性部54Aにおいて増大したインピーダンスが調整部54Bにおいて意図的に理想値を下回るようにする。調整部54Bと連続する第2弾性部54Cが第1弾性部54Aと同様に幅狭に(断面積が狭く)形成されていることで、理想値を下回っていたインピーダンスが第2弾性部54Cにおいて再度理想値を上回る。このように、調整部54Bは、第1弾性部54A及び第2弾性部54Cにおけるインピーダンスの増加分を相殺してインピーダンスを全体にわたり理想値に近づける役割を果たす。
続いて、一実施形態に係るコンタクト50のように調整部54Bが3つの構成部を有する場合のインピーダンス変化について、細線のグラフと比較しながら太線のグラフに基づいて説明する。一実施形態に係るコンタクト50では、調整部54Bの幅が略同一である場合と比較して、第2調整部54B2よりも幅広に形成されている第1調整部54B1により、調整部54Bの上部においてインピーダンスがさらに減少する。これにより、第1弾性部54Aにおいて理想値から増大したインピーダンスが、意図的により早く理想値を下回るようにする。換言すると、第1弾性部54Aにおけるインピーダンスの増加幅が意図的に抑制される。コンタクト50では、調整部54Bの中央部、すなわち第2調整部54B2においてインピーダンスを増加させ、一例としてその理論値を細線で示される理論値と略同一とする。すなわち、調整部54Bにおけるインピーダンスの実測値の最小値を、調整部54Bの幅が略同一である場合のインピーダンスの実測値の最小値と略同一とする。このような設計により、第2調整部54B2におけるインピーダンスの過剰な低下、すなわち理想値と実測値との極度の乖離が抑制される。コンタクト50では、第1調整部54B1と同様に幅広に形成されている第3調整部54B3により、調整部54Bの下部においてインピーダンスがさらに減少する。これにより、調整部54Bにおいて理想値を下回っているインピーダンスが、第2弾性部54Cにおいて意図的により遅く理想値を上回るようにする。換言すると、第2弾性部54Cにおけるインピーダンスの増加幅が意図的に抑制される。以上のように、調整部54Bを3つの構成部に分けてインピーダンスを調整することで、調整部54Bは、第1弾性部54A及び第2弾性部54Cにおけるインピーダンスの増加分を相殺してインピーダンスをより理想値に近づけることができる。
以上のような構造のコネクタ10では、回路基板CB1の実装面に形成された回路パターンに対して、コンタクト50の実装部53がはんだ付けされる。当該実装面に形成された接地パターン等に対して、金具40の実装部41がはんだ付けされる。以上により、コネクタ10は、回路基板CB1に対して実装される。回路基板CB1の実装面には、コネクタ10とは別の電子部品(例えば、CPU、コントローラ又はメモリ等)が実装される。
接続対象物60の構造について主に図11及び図12を参照しながら説明する。
図11は、図3のコネクタ10と接続される接続対象物60を上面視により示した外観斜視図である。図12は、図11の接続対象物60の上面視による分解斜視図である。
図12に示すとおり、接続対象物60は、大きな構成要素として、インシュレータ70と、金具80と、コンタクト90と、を有する。接続対象物60は、インシュレータ70の下方から金具80及びコンタクト90を圧入することで組み立てられる。
インシュレータ70は、絶縁性かつ耐熱性の合成樹脂料を射出成形した、四角柱状の部材である。インシュレータ70は、上面に形成されている嵌合凹部71を有する。インシュレータ70は、嵌合凹部71の内部に形成されている嵌合凸部72を有する。インシュレータ70は、嵌合凹部71の上縁部にわたって嵌合凹部71を囲むように形成されている誘い込み部73を有する。誘い込み部73は、嵌合凹部71の上縁部において上方に向けて斜め外方に傾斜する傾斜面によって構成される。インシュレータ70は、底面の左右両端部で上下方向に沿ってインシュレータ70の内部に凹設されている金具取付溝74を有する(図2参照)。金具取付溝74には、金具80が取り付けられる。
インシュレータ70は、底部の前後両側と、嵌合凸部72の前面及び後面とに形成されている複数のコンタクト取付溝75を有する。複数のコンタクト取付溝75には、複数のコンタクト90がそれぞれ取り付けられる。コンタクト取付溝75の数は、コンタクト90の数と同一である。複数のコンタクト取付溝75は、左右方向に並んで凹設されている。
金具80は、任意の金属材料の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図12に示す形状に成形加工したものである。金具80は、インシュレータ70の左右両端部それぞれに配置されている。金具80は、その下端部において、略U字状に外側に延出する実装部81を有する。金具80は、実装部81と上方に連続して形成され、インシュレータ70に対して係止する係止部82を有する。
コンタクト90は、ばね弾性を備えた銅合金(例えば、リン青銅、ベリリウム銅若しくはチタン銅)又はコルソン系銅合金の薄板を順送金型(スタンピング)を用いて図12に示す形状に成形加工したものである。コンタクト90の表面には、ニッケルめっきで下地を形成した後に、金又は錫等によるめっきが施されている。
コンタクト90は、左右方向に沿って複数配列されている。コンタクト90は、略L字状に外側に延出する実装部91を有する。コンタクト90は、その上端に形成され、嵌合の際にコネクタ10のコンタクト50の弾性接触部59と接触する接触部92を有する。
以上のような構造の接続対象物60では、回路基板CB2の実装面に形成された回路パターンに対して、コンタクト90の実装部91がはんだ付けされる。当該実装面に形成された接地パターン等に対して、金具80の実装部81がはんだ付けされる。以上により、接続対象物60は、回路基板CB2に対して実装される。回路基板CB2の実装面には、接続対象物60とは別の電子部品(例えば、カメラモジュール又はセンサ等)が実装される。
コネクタ10に対して接続対象物60を接続するときの、フローティング構造を有するコネクタ10の動作について説明する。
図13は、図1のXIII−XIII矢線に沿った断面図である。
コネクタ10のコンタクト50は、第1インシュレータ20の内部で、第2インシュレータ30が第1インシュレータ20と離間し、かつ、浮いた状態で、第2インシュレータ30を支持している。このとき、第2インシュレータ30の下部は、第1インシュレータ20の外周壁22によって囲繞される。嵌合凹部33を含む第2インシュレータ30の上部は、第1インシュレータ20の開口21Aより上方に突出する。
コンタクト50の実装部53が回路基板CB1に対してはんだ付けされることで、第1インシュレータ20は、回路基板CB1に対して固定される。第2インシュレータ30は、コンタクト50の第1弾性部54A、第2弾性部54C及び第3弾性部56が弾性変形することで、固定された第1インシュレータ20に対して移動可能となる。
このとき、開口21Aの周縁部は、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の過剰な移動を規制する。すなわち、第2インシュレータ30がコンタクト50の弾性変形に伴い設計値を超えて大きく移動すると、第2インシュレータ30の嵌合凸部32が開口21Aの周縁部と接触する。これにより、第2インシュレータ30は、それ以上外側に移動しない。
このようなフローティング構造を有するコネクタ10に対して接続対象物60の上下方向の向きを逆にした状態で、コネクタ10及び接続対象物60の前後位置及び左右位置を略一致させながら、互いを上下方向に対向させる。その後、接続対象物60を下方に移動させる。このとき、互いの位置が例えば前後左右方向に多少ずれていても、コネクタ10の誘い込み部34と接続対象物60の誘い込み部73とが接触する。その結果、コネクタ10のフローティング構造により第2インシュレータ30が第1インシュレータ20に対して相対的に移動する。より具体的には、コネクタ10の嵌合凸部32が、接続対象物60の嵌合凹部71に誘い込まれる。
接続対象物60を下方にさらに移動させると、コネクタ10の嵌合凸部32と接続対象物60の嵌合凹部71とが嵌合する。このとき、コネクタ10の嵌合凹部33と接続対象物60の嵌合凸部72とが嵌合する。コネクタ10の第2インシュレータ30と接続対象物60のインシュレータ70とが嵌合した状態で、コネクタ10のコンタクト50と接続対象物60のコンタクト90とが互いに接触する。より具体的には、コンタクト50の弾性接触部59とコンタクト90の接触部92とが互いに接触する。このとき、コンタクト50の弾性接触部59の先端は、外側に向けて若干弾性変形し、コンタクト取付溝35の内部に向けて弾性変位する。
以上により、コネクタ10と接続対象物60とは、完全に接続される。このとき、コンタクト50及びコンタクト90を介して、回路基板CB1と回路基板CB2とが電気的に接続される。
この状態で、コンタクト50の一対の弾性接触部59は、接続対象物60の一対のコンタクト90を前後方向に沿った内側への弾性力により前後両側から挟持する。これにより生じる接続対象物60のコンタクト90への押圧力の反作用により、接続対象物60をコネクタ10から抜去する場合、第2インシュレータ30は、コンタクト50を介して抜去方向、すなわち上方向への力を受ける。これにより、仮に第2インシュレータ30が上方向に移動したとしても、図4に示す、第1インシュレータ20に圧入された金具40の抜止部43が、第2インシュレータ30の抜けを抑制する。第1インシュレータ20に圧入された金具40の抜止部43は、第1インシュレータ20内部において、第2インシュレータ30の底部31の左右両端部の直上に位置する。したがって、第2インシュレータ30が上方に移動しようとすると、外方に突出した底部31の左右両端部が抜止部43と接触する。これにより、第2インシュレータ30は、それ以上上方に移動しない。
図14は、一対のコンタクト50が弾性変形する第1例を示した模式図である。図15は、一対のコンタクト50が弾性変形する第2例を示した模式図である。
図14及び図15を参照しながら、一対のコンタクト50が弾性変形するときの各構成部の動作について、詳細に説明する。以下では説明の簡便のために、各図の右側に配置されているコンタクト50をコンタクト50Aとし、各図の左側に配置されているコンタクト50をコンタクト50Bとして説明する。図14及び図15において、コンタクト50A及び50Bが弾性変形しない状態を二点鎖線によって示す。
図14では、一例として、第2インシュレータ30が何らかの外的要因によって右方向に移動した場合を想定する。
第2インシュレータ30が右方向に移動すると、コンタクト50Aの係止部58が第2インシュレータ30の壁部36によって右方向に押される。このとき、コンタクト50Aの第3弾性部56は、切欠部57近傍を起点として内側に撓む。すなわち、コンタクト50Aの第3弾性部56は、切欠部57近傍よりも下側において、上側の部分と比較してより内側に弾性変形する。第2インシュレータ30の壁部36と接触しているコンタクト50Aの係止部58は、第2インシュレータ30との相対位置をほとんど変化させない一方で、コンタクト50Aの第2基部55は、その相対位置を内側に変化させる。
コンタクト50Aの第3弾性部56が右方向に移動すると、第2弾性部54Cが弾性変形しつつ、第2弾性部54Cと調整部54Bとの接続点も右方向に移動する。一方で、第1弾性部54Aと調整部54Bとの接続点の左右位置の変化は小さい。したがって、第1弾性部54Aが弾性変形して、その内側端部の屈曲部が外側に屈曲し、調整部54Bが上方から下方に向けて斜め右方向に傾斜する。
第2インシュレータ30が右方向に移動すると、コンタクト50Bの係止部58が第2インシュレータ30の内壁によって右方向に押される。このとき、コンタクト50Bの第3弾性部56は、切欠部57近傍を起点として外側に撓む。すなわち、コンタクト50Bの第3弾性部56は、切欠部57近傍よりも下側において、上側の部分と比較してより外側に弾性変形する。コンタクト取付溝35の内壁と接触しているコンタクト50Bの係止部58は、第2インシュレータ30との相対位置をほとんど変化させない一方で、コンタクト50Bの第2基部55は、その相対位置を外側に変化させる。
コンタクト50Bの第3弾性部56が右方向に移動すると、第2弾性部54Cが弾性変形しつつ、第2弾性部54Cと調整部54Bとの接続点も右方向に移動する。一方で、第1弾性部54Aと調整部54Bとの接続点の左右位置の変化は小さい。したがって、第1弾性部54Aが弾性変形して、その内側端部の屈曲部が内側に屈曲し、調整部54Bが上方から下方に向けて斜め右方向に傾斜する。
図15では、一例として、第2インシュレータ30が何らかの外的要因によって左方向に移動した場合を想定する。
第2インシュレータ30が左方向に移動すると、コンタクト50Aの係止部58が第2インシュレータ30の内壁によって左方向に押される。このとき、コンタクト50Aの第3弾性部56は、切欠部57近傍を起点として外側に撓む。すなわち、コンタクト50Aの第3弾性部56は、切欠部57近傍よりも下側において、上側の部分と比較してより外側に弾性変形する。コンタクト取付溝35の内壁と接触しているコンタクト50Aの係止部58は、第2インシュレータ30との相対位置をほとんど変化させない一方で、コンタクト50Aの第2基部55は、その相対位置を外側に変化させる。
コンタクト50Aの第3弾性部56が左方向に移動すると、第2弾性部54Cが弾性変形しつつ、第2弾性部54Cと調整部54Bとの接続点も左方向に移動する。一方で、第1弾性部54Aと調整部54Bとの接続点の左右位置の変化は小さい。したがって、第1弾性部54Aが弾性変形して、その内側端部の屈曲部が内側に屈曲し、調整部54Bが上方から下方に向けて斜め左方向に傾斜する。
第2インシュレータ30が左方向に移動すると、コンタクト50Bの係止部58が第2インシュレータ30の壁部36によって左方向に押される。このとき、コンタクト50Bの第3弾性部56は、切欠部57近傍を起点として内側に撓む。すなわち、コンタクト50Bの第3弾性部56は、切欠部57近傍よりも下側において、上側の部分と比較してより内側に弾性変形する。第2インシュレータ30の壁部36と接触しているコンタクト50Bの係止部58は、第2インシュレータ30との相対位置をほとんど変化させない一方で、コンタクト50Bの第2基部55は、その相対位置を内側に変化させる。
コンタクト50Bの第3弾性部56が左方向に移動すると、第2弾性部54Cが弾性変形しつつ、第2弾性部54Cと調整部54Bとの接続点も左方向に移動する。一方で、第1弾性部54Aと調整部54Bとの接続点の左右位置の変化は小さい。したがって、第1弾性部54Aが弾性変形して、その内側端部の屈曲部が外側に屈曲し、調整部54Bが上方から下方に向けて斜め左方向に傾斜する。
以上のような一実施形態に係るコネクタ10は、信号伝送における伝送特性が良好である。コネクタ10では、コンタクト50が第1調整部54B1及び第2調整部54B2を有することで、それぞれの伝送路の幅、すなわち伝送路の断面積に応じてインピーダンス、すなわち電気伝導性が調整される。例えば、第1調整部54B1の電気伝導性を第1弾性部54Aよりも高くし、第2調整部54B2の電気伝導性を第1調整部54B1よりも低くかつ第1弾性部54Aよりも高くする。これにより、第1弾性部54A、第1調整部54B1及び第2調整部54B2のインピーダンスが理想値に近付く。すなわち、コネクタ10は、インピーダンスマッチングに寄与できる。したがって、コネクタ10では、大容量かつ高速伝送においても所望する伝送特性が得られ、第1調整部54B1及び第2調整部54B2を有さない従来の電気コネクタと比較して伝送特性がより向上する。
コネクタ10では、コンタクト50が第3調整部54B3をさらに有することで、第1弾性部54A、調整部54B及び第2弾性部54C全体のインピーダンス、すなわち電気伝導性が調整される。例えば、第3調整部54B3の電気伝導性を第2調整部54B2及び第2弾性部54Cよりも高くする。これにより、第1弾性部54A、調整部54B及び第2弾性部54Cのインピーダンスが理想値に近付く。すなわち、コネクタ10は、インピーダンスマッチングに寄与できる。したがって、コネクタ10は、上記の効果をより顕著に奏する。
コネクタ10は、以下で説明するように、上述した信号伝送における良好な伝送特性に加えて、良好なフローティング構造を実現できる。
コネクタ10は、コンタクト50が第2弾性部54Cをさらに有することで、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の移動量をより大きくできる。すなわち、第1弾性部54Aの弾性変形に加えて、第2弾性部54Cの弾性変形が生じることで、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の移動量が増大する。
コネクタ10は、コンタクト50が第3弾性部56をさらに有することで、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の移動量をより大きくできる。すなわち、第1弾性部54A及び第2弾性部54Cの弾性変形に加えて、第3弾性部56の弾性変形が生じることで、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の移動量が増大する。逆に言うと、コネクタ10は、所定の移動量を得るために必要となるコンタクト50の弾性変形量の一部を第3弾性部56にも割り当てることができるので、第1弾性部54A及び第2弾性部54Cの弾性変形量を低減できる。これにより、第1弾性部54A、調整部54B及び第2弾性部54Cの全長が短くなり、コネクタ10の前後方向の幅が短縮される。したがって、コネクタ10は、必要とされる第2インシュレータ30の移動量を確保しつつ、小型化に寄与できる。
第1弾性部54A、調整部54B及び第2弾性部54Cの全長が短くなることで、コネクタ10では、伝送特性がさらに向上する。すなわち、コネクタ10は、信号伝送路が短くなることで、高周波信号であっても伝送損失を低減させた状態で伝送できる。
コネクタ10は、第2インシュレータ30が第2基部55と対向する位置に壁部36を有することで、図7の前後方向に対称的に配置されている一対のコンタクト50同士の接触を抑制できる。上述のとおり、第2弾性部54Cと第3弾性部56とを接続する第2基部55は、第2弾性部54C及び第3弾性部56の弾性変形に伴って、例えば図7の前後方向に沿って移動する。このとき、仮に第2インシュレータ30に壁部36が形成されていないとすると、それぞれの弾性変形状態に応じて、前後一対のコンタクト50の第2基部55同士が接触する可能性もある。コネクタ10は、壁部36の形成により、このような第2基部55同士の接触を抑制して、短絡等の電気的に引き起こされる不具合及び破損等の力学的に引き起こされる不具合を抑制できる。別言すると、コネクタ10は、壁部36の形成により、第3弾性部56の過剰な弾性変形を規制できる。コネクタ10は、第2弾性部54C及び第3弾性部56の弾性変形に伴って第2基部55が移動するような状況であっても、製品としての信頼性を確保できる。
コネクタ10では、第1調整部54B1が前後方向に沿って第2調整部54B2よりも一段外側に突出し、第3調整部54B3が前後方向に沿って第2調整部54B2よりも一段内側に突出する。このような形成方法により、図14及び図15に示すとおり、コンタクト50が弾性変形した場合であっても、第1調整部54B1及び第3調整部54B3のいずれも、コンタクト50の他の部分及び第2インシュレータ30に接触しない。したがって、コネクタ10は、第1調整部54B1及び第3調整部54B3の突出部分がコンタクト50の弾性変形の妨げになることなく、円滑な第2インシュレータ30の移動を実現して、良好なフローティング構造に寄与できる。
コネクタ10は、第1弾性部54A及び第2弾性部54Cが調整部54Bにおいて嵌合方向の両端側からそれぞれ延出することで、必要とされる調整部54Bの移動量を確保できる。したがって、コネクタ10は、必要とされる第2インシュレータ30の移動量を確保できる。コネクタ10は、第1弾性部54A、調整部54B及び第2弾性部54Cが略クランク状に一体的に形成されていることで、上記の効果を奏しつつ図7における前後長の短縮化にも寄与できる。例えば、第1弾性部54Aが調整部54Bの上縁部における内側の端部から延出し、第2弾性部54Cが調整部54Bの下縁部における外側の端部から延出する。これにより、コネクタ10全体の前後長が短縮化される。さらに、第1インシュレータ20内の限られた領域で第1弾性部54A及び第2弾性部54Cの弾性変形する部分を長くすることができ、良好なフローティング構造が得られる。
第1弾性部54A、調整部54B及び第2弾性部54Cが嵌合方向に沿って嵌合側から順に配置されていることで、第2弾性部54Cと接続されている第2基部55が最下方に配置されている。これにより、第3弾性部56が延伸し、より大きく弾性変形することができる。結果として、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の移動量が増大する。
コネクタ10は、コンタクト50が切欠部57をさらに有することで、第2インシュレータ30が移動した際に、第2インシュレータ30の内壁と接触する係止部58に加わる力を抑制させることができる。同様に、コネクタ10は、コンタクト取付溝35の上部に位置する弾性接触部59に加わる力を抑制させることができる。すなわち、コネクタ10は、切欠部57近傍よりも下側において、第3弾性部56を撓ませることができる。より具体的には、コネクタ10では、第3弾性部56において、係止部58の下端部から切欠部57近傍に至るまでの上半部よりも、下半部の弾性変形量がより大きくなる。以上により、係止部58の第2インシュレータ30に対する係止及び弾性接触部59の接触部92に対する接触が安定した状態で、第1インシュレータ20に対する第2インシュレータ30の移動に第3弾性部56が寄与できる。
コンタクト50が弾性係数の小さい金属材料によって形成されていることで、コネクタ10は、第2インシュレータ30にかかる力が小さい場合であっても、必要とされる第2インシュレータ30の移動量を確保できる。すなわち、第2インシュレータ30は、第1インシュレータ20に対して滑らかに移動することができる。これにより、コネクタ10は、接続対象物60と嵌合する際の位置ずれを容易に吸収できる。コネクタ10では、何らかの外的要因によって発生する振動をコンタクト50の各弾性部が吸収する。これにより、実装部53に大きな力が加わることがないので、コネクタ10は、回路基板CB1との接続部分が破損することを抑制できる。よって、コネクタ10は、接続対象物60と接続されている状態であっても、接続信頼性を保つことができる。
コネクタ10は、コンタクト50が幅広に形成された第2基部55を有することで、製品の組立性を向上できる。すなわち、第2基部55が幅広に形成されていることによって、当該部分の剛性が高まる。これにより、コンタクト50は、第2基部55を支点として、組立装置等により第1インシュレータ20及び第2インシュレータ30の下方から安定して挿入される。
金具40が第1インシュレータ20に圧入されて、実装部41が回路基板CB1にはんだ付けされることで、金具40は、第1インシュレータ20を回路基板CB1に対して安定して固定できる。すなわち、金具40により、回路基板CB1に対する第1インシュレータ20の実装強度が向上する。
本発明は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。したがって、先の記述は例示的であり、これに限定されない。発明の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含されるとする。
例えば、上述した各構成部の形状、配置及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。上述したコネクタ10及び接続対象物60の組立方法は、上記の説明の内容に限定されない。コネクタ10及び接続対象物60の組立方法は、それぞれの機能が発揮されるように組み立てることができるのであれば、任意の方法であってもよい。例えば、金具40又はコンタクト50は、圧入ではなくインサート成形によって第1インシュレータ20又は第2インシュレータ30と一体的に成形されてもよい。
コネクタ10は、フローティング構造を有するコネクタであるとして説明したがこれに限定されない。コネクタ10は、上述した構成を有するコンタクト50が取り付けられた任意のコネクタであってもよい。この場合、コネクタ10を構成するインシュレータは1つのみであってもよい。例えば、当該インシュレータは、コンタクト50の第1基部51を支持し、接続対象物60と嵌合する。
調整部54Bにおいて、伝送路の幅、すなわち伝送路の断面積が増大してインピーダンスが低下することで電気伝導性が向上するとして説明したが、電気伝導性が向上する調整部54Bの構成はこれに限定されない。調整部54Bは、電気伝導性が向上する任意の構成を有してもよい。例えば、調整部54Bは、幅が同一のまま第1弾性部54Aよりも厚く形成されていてもよい。例えば、調整部54Bは、断面積が同一のまま第1弾性部54Aよりも電気伝導性の高い材料によって形成されていてもよい。例えば、調整部54Bは、第1弾性部54Aと断面積が同一のまま表面に電気伝導性を向上させるめっきを有してもよい。
調整部54Bでは、嵌合側から順に第1調整部54B1、第2調整部54B2及び第3調整部54B3の断面積を変化させて電気伝導性を調整するとして説明したが、調整部54Bの構成はこれに限定されない。調整部54Bは、嵌後側から順に電気伝導性が高い、低い及び高い構成部を含む任意の構成を有してもよい。例えば、調整部54Bでは、上記のとおり、幅、厚さ、断面積、材料及びめっきの種類の少なくとも1つを変化させることで電気伝導性が調整されてもよい。
図16Aは、コンタクト50の調整部54Bの形状の第1例を示す模式図である。図16Bは、コンタクト50の調整部54Bの形状の第2例を示す模式図である。図16Cは、コンタクト50の調整部54Bの形状の第3例を示す模式図である。図16Dは、コンタクト50の調整部54Bの形状の第4例を示す模式図である。
調整部54Bの形状は、図9に示すような形状に限定されない。調整部54Bは、上述した機能を実現できる任意の形状を有してもよい。例えば、調整部54Bは、図16A乃至図16Dに示すような形状を有してもよい。図16Aを参照すると、調整部54Bにおいて、第1調整部54B1が第2調整部54B2から上方に突出し、第3調整部54B3が第2調整部54B2から下方に突出する。図16Bを参照すると、調整部54Bにおいて、第1調整部54B1は、第2調整部54B2から上方に突出し、かつ前後方向に沿って第2調整部54B2よりも一段外側に突出する。第3調整部54B3は、第2調整部54B2から下方に突出し、かつ前後方向に沿って第2調整部54B2よりも一段内側に突出する。図16Cを参照すると、調整部54Bは全体として矩形状に形成され、その中央部に開口を有する。図16Dを参照すると、調整部54Bは、第1調整部54B1から第2調整部54B2に向かうにつれ先細りとなり、第2調整部54B2から第3調整部54B3に向かうにつれ先太りとなるように形成されている。
調整部54Bは、第1弾性部54A及び第2弾性部54Cが弾性変形しない状態において接続対象物60との嵌合方向に延在し、第1弾性部54A及び第2弾性部54Cは調整部54Bにおいて、嵌合方向の両端側からそれぞれ延出するとして説明した。これに限定されず、第1弾性部54A、調整部54B及び第2弾性部54Cの全体形状は、必要とされる第2インシュレータ30の移動量を確保しつつ、コネクタ10の小型化に寄与できるのであれば、任意の形状であってよい。例えば、調整部54Bは、嵌合方向からずれた状態で延在してもよい。例えば、第1弾性部54A及び第2弾性部54Cは、調整部54Bにおいて、図7の前後方向の両端側からそれぞれ延出してもよい。例えば、第1弾性部54A及び第2弾性部54Cの形状は、任意であってよく、それぞれがより多くの屈曲部を有してもよい。例えば、第1弾性部54A、調整部54B及び第2弾性部54Cの全体形状は、略クランク状ではなく、略U字状であってもよい。
図8に示すとおり、第1弾性部54A、調整部54B及び第2弾性部54Cは、嵌合方向に沿って嵌合側から順に配置されているとして説明したが、これに限定されない。第1弾性部54A、調整部54B及び第2弾性部54Cは、必要とされる第2インシュレータ30の移動量を確保しつつ、コネクタ10の小型化に寄与できるのであれば、逆側から順に配置されてもよい。
第1弾性部54A及び第2弾性部54Cは、第1基部51よりも幅狭に形成されているとして説明したがこれに限定されない。第1弾性部54A及び第2弾性部54Cは、必要とされる弾性変形量を確保できる任意の構成を有してもよい。例えば、第1弾性部54A又は第2弾性部54Cは、コンタクト50の他の部分よりも弾性係数のさらに小さい金属材料によって形成されていてもよい。
コネクタ10は、必要とされる第2インシュレータ30の移動量を確保しつつ、コネクタ10の小型化に寄与できるのであれば、第2弾性部54C及び第3弾性部56を有さなくてもよい。
第2基部55は、第2弾性部54Cよりも幅広に形成されているとして説明したが、これに限定されない。第2基部55は、コネクタ10の組立性を維持できるのであれば、幅広でなくてもよい。壁部36は、嵌合凹部33の底面から下方に向けて内部で延在するとして説明したがこれに限定されない。壁部36は、一対のコンタクト50同士の接触を抑制できるのであれば、例えば、第2基部55と対向する位置にのみ形成されていてもよい。
コネクタ10は、係止部58の係止及び弾性接触部59の接触が安定した状態で第3弾性部56が第2インシュレータ30の移動に寄与できるのであれば、切欠部57を有さなくてもよい。
コンタクト50は、弾性係数の小さい金属材料によって形成されているとして説明したが、これに限定されない。コンタクト50は、必要とされる弾性変形量を確保できるのであれば、任意の弾性係数を有する金属材料によって形成されていてもよい。
接続対象物60は、回路基板CB2に接続されるプラグコネクタであるとして説明したが、これに限定されない。接続対象物60は、コネクタ以外の任意の対象物であってもよい。例えば、接続対象物60は、FPC、フレキシブルフラットケーブル(FFC)又はリジッド基板等であってもよい。
以上のようなコネクタ10は、電子機器に搭載される。電子機器は、例えば、カメラ、レーダ、ドライブレコーダ又はエンジンコントロールユニット等の任意の車載機器を含む。電子機器は、例えば、カーナビゲーションシステム、先進運転支援システム又はセキュリティシステム等の車載システムにおいて使用される任意の車載機器を含む。電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、コピー機、プリンタ、ファクシミリ又は複合機等の任意の情報機器を含む。その他、電子機器は、任意の産業機器を含む。
このような電子機器は、信号伝送における良好な伝送特性を有する。コネクタ10の良好なフローティング構造により基板間の位置ずれが吸収されるので、電子機器の組み立て時の作業性が向上する。すなわち、電子機器の製造が容易になる。コネクタ10により回路基板CB1との接続部分の破損が抑制されるので、電子機器の製品としての信頼性が向上する。