以下図面を参照して、複数巻線バッファ用サーボモータを有するモータ駆動システムについて説明する。各図面において、同様の部材には同様の参照符号が付けられている。また、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。また、理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。図面に示される形態は本発明を実施するための一つの例であり、本発明は図示された形態に限定されるものではない。また、「ドライブ用サーボモータの出力」には「ドライブ用サーボモータの消費電力量」及び「ドライブ用サーボモータの回生電力量」が含まれ、「バッファ用サーボモータの出力」には「バッファ用サーボモータの消費電力量」及び「バッファ用サーボモータの回生電力量」が含まれるものとする。また、ドライブ用サーボモータ及びバッファ用サーボモータの回転角速度については単に「回転速度」と称する。
本開示の実施形態によるモータ駆動システムは、工作機械やロボットなどを含む機械において駆動軸を駆動するためのドライブ用サーボモータが複数設けられ、これに対応してドライブ用サーボモータを駆動する交流電力を供給するドライブ用インバータ及びコンバータが複数設けられるようなシステムに用いられる。本開示の実施形態によるモータ駆動システムでは、フライホイールを回転させるためのバッファ用サーボモータを複数の独立した巻線を有するものとした蓄電装置を用いる。バッファ用サーボモータの各巻線に接続された各バッファ用インバータの電力変換を、個別に制御することでバッファ用サーボモータを駆動制御する。以下、本開示の実施形態を列記する。
図1は、第1の実施形態によるモータ駆動システムのブロック図である。第1の実施形態及び後述する第2の実施形態において、一例として、電源2に接続されたモータ駆動システム1により3個のドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bを制御する場合について説明する。図1及び後述する図8では、一例として、ドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2を駆動するためにドライブ用インバータ15−A1及び15−A2、コンバータ14−A、並びにバッファ用インバータ13−Aが直流リンク4−Aを介して接続され、また、ドライブ用サーボモータ3−Bを駆動するためにドライブ用インバータ15−B、コンバータ14−B、及びにバッファ用インバータ13−Bが直流リンク4−Bを介して接続されている。なお、直流リンク4−A及び4−Bの個数を2個としたが、直流リンクの個数は図1に示す2個に特に限定されるわけではなく、2個以上あればよい。また、各直流リンクに接続されるドライブ用サーボモータの個数は、図1に示す3個に特に限定されるわけではなく、2個以上あればよい。また、ドライブ用サーボモータの個数は、直流リンク間で同じ個数であってもよく、異なる個数であってもよい。また、各直流リンク4−A及び4−Bにはそれぞれコンバータ14−A及び14−Bが1個接続されるので、直流リンクの個数はコンバータの個数と対応する。また、電源2、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−B、並びにバッファ用サーボモータ12の相数は本実施形態を特に限定するものではなく、例えば三相であっても単相であってもよい。ここでは一例として電源2、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−B、並びにバッファ用サーボモータ12の相数をいずれも三相としている。また、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−B、並びにバッファ用サーボモータ12の種類についても本実施形態を特に限定するものではなく、例えば誘導モータであっても同期モータであってもよい。ここで、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bが設けられる機械には、工作機械、ロボット、鍛圧機械、射出成形機、産業機械、各種電化製品、電車、自動車、航空機などが含まれる。
図1に示すように、第1の実施形態によるモータ駆動システム1は、フライホイール11と、バッファ用サーボモータ12と、バッファ用インバータ13−A及び13−Bと、コンバータ14−A及び14−Bと、ドライブ用インバータ15−A1、15−A2及び15−Bと、バッファ用モータ制御部16と、消費電力量計算部17と、蓄電供給電力量計算部18と、トルク制限値計算部19と、比較部20とを備える。また、モータ駆動システム1は、一般的なモータ駆動システムと同様、ドライブ用インバータ15−A1、15−A2及び15−Bを制御するためのドライブ用モータ制御部21を有する。
まず、第1の実施形態によるモータ駆動システム1の各回路構成要素について説明する。
ドライブ用インバータ15−A1、15−A2及び15−Bは、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bごとに設けられる。ドライブ用インバータ15−A1及び15−A2は直流リンク4−Aに接続され、ドライブ用インバータ15−Bは、直流リンク4−Bに接続される。ドライブ用インバータ15−A1、15−A2及び15−Bは、それぞれ、直流リンク4−A及び4−Bにおける直流電力を交流電力に変換しこれをドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bの駆動電力として出力するサーボアンプを構成する。一般に、ドライブ用サーボモータには1巻線以上の巻線が設けられているが、このドライブ用サーボモータを駆動するためには当該ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−B内の1巻線あたり1個のドライブ用インバータ15−A1、15−A2及び15−Bが必要である。図1では、説明を簡明にするために、一例としてドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bを1巻線タイプとしており、したがって、各ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bには各ドライブ用インバータ15−A1、15−A2及び15−Bが接続される。
各ドライブ用インバータ15−A1、15−A2及び15−Bは、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなり、例えば三角波比較方式のPWMスイッチング制御に基づいて各スイッチング素子がオンオフ制御される。各ドライブ用インバータ15−A1、15−A2及び15−Bは、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bが三相モータである場合は三相ブリッジ回路で構成され、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bが単相モータである場合は単相ブリッジ回路で構成される。スイッチング素子の例としては、FETなどのユニポーラトランジスタ、バイポーラトランジスタ、IGBT、サイリスタ、GTOなどがあるが、スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他のスイッチング素子であってもよい。
各ドライブ用インバータ15−A1、15−A2及び15−Bは、後述するドライブ用サーボモータ制御部21から受信した駆動指令に基づき各スイッチング素子がオンオフ制御されることにより、直流リンク4−A及び4−Bの直流電力とドライブ用サーボモータ3の駆動電力または回生電力である交流電力との間で電力変換する。より詳細には、ドライブ用インバータ15−A1及び15−A2は、ドライブ用サーボモータ制御部21から受信した駆動指令に基づき内部のスイッチング素子をスイッチング動作させ、直流リンク4−Aを介してコンバータ14−Aから供給される直流電力を、ドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2を駆動するための所望の電圧及び所望の周波数を有する交流電力に変換する(逆変換動作)。これにより、各ドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2は、例えば電圧可変及び周波数可変の交流電力に基づいて動作することになる。また、各ドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2の減速時には回生電力が発生することがあるが、ドライブ用サーボモータ制御部21から受信した駆動指令に基づき内部のスイッチング素子をスイッチング動作させ、ドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2で発生した交流の回生電力を直流電力へ変換して直流リンク4−Aへ戻す(順変換動作)。同様に、ドライブ用インバータ15−Bは、ドライブ用サーボモータ制御部21から受信した駆動指令に基づき内部のスイッチング素子をスイッチング動作させ、直流リンク4−Bを介してコンバータ14−Bから供給される直流電力を、ドライブ用サーボモータ3−Bを駆動するための所望の電圧及び所望の周波数を有する交流電力に変換する(逆変換動作)。これにより、ドライブ用サーボモータ3−Bは、例えば電圧可変及び周波数可変の交流電力に基づいて動作することになる。また、各ドライブ用サーボモータ3−Bの減速時には回生電力が発生することがあるが、ドライブ用サーボモータ制御部21から受信した駆動指令に基づき内部のスイッチング素子をスイッチング動作させ、ドライブ用サーボモータ3−Bで発生した交流の回生電力を直流電力へ変換して直流リンク4−Bへ戻す(順変換動作)。
ドライブ用モータ制御部21はドライブ用インバータ15−A1、ドライブ用インバータ15−A2、及びドライブ用インバータ15−Bを制御する。ドライブ用モータ制御部21は、速度検出器31により検出された各ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bの(回転子の)速度(速度フィードバック)、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bの巻線に流れる電流(電流フィードバック)、所定のトルク指令、並びにドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bの動作プログラムなどに基づいて、各ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bの速度、トルク、または回転子の位置を制御するための各駆動指令を生成する。ドライブ用モータ制御部21により作成された駆動指令に基づいて、ドライブ用インバータ15−A1、15−A2及び15−Bによる各電力変換動作が制御される。なお、ここで定義したドライブ用モータ制御部21の構成はあくまでも一例であって、例えば、位置指令作成部、トルク指令作成部、及びスイッチング指令作成部などの用語を含めてドライブ用モータ制御部21の構成を定義してもよい。
コンバータ14−A及び14−Bは、直流リンク4−A及び4−Bに各々接続され、電源2側の交流電力と各直流リンク4−A及び4−Bにおける直流電力との間で電力変換を行う順変換器である。コンバータ14−A及び14−Bは、電源2から三相交流が供給される場合は三相ブリッジ回路で構成され、電源2から単相交流が供給される場合は単相ブリッジ回路で構成される。コンバータ14−A及び14−Bは、例えば、120度通電型整流回路及びPWMスイッチング制御方式の整流回路などのような、電源2側から入力された交流電力を直流電力に変換して直流側へ出力し、電力回生時には直流リンク4−A及び4−Bの直流電力を交流電力に変換して電源2側へ出力するような、交直双方向に変換可能である電力変換器として実現される。例えば、コンバータ14−A及び14−BがPWMスイッチング制御方式の整流回路である場合は、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなり、上位制御装置(図示せず)から受信した駆動指令に応じて各スイッチング素子がオンオフ制御されて交直双方向に電力変換を行う。スイッチング素子の例としては、FETなどのユニポーラトランジスタ、バイポーラトランジスタ、IGBT、サイリスタ、GTOなどがあるが、スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他のスイッチング素子であってもよい。
各コンバータ14−A及び14−Bについては、交流電力から直流電力への電力変換可能な最大電力量及び直流電力から交流電力への電力変換可能な最大電力量として、「最大電力変換量」がそれぞれ規定されている。最大電力変換量は、コンバータ14−A及び14−Bの変換容量に関する諸元データとして一般的に規定されるものであり、例えばコンバータ14−A及び14−Bの規格表や取扱説明書などに記載されている。
このように、直流リンク4−Aには、ドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2を駆動するためにドライブ用インバータ15−A1及び15−A2並びにコンバータ14−Aが接続され、直流リンク4−Bには、ドライブ用サーボモータ3−Bを駆動するためにドライブ用インバータ15−B及びコンバータ14−Bが接続される。これに加え、直流リンク4―A及び4−Bには、直流リンクコンデンサ(平滑コンデンサとも称する)が設けられるが、ここでは図示を省略している。直流リンクコンデンサは、直流リンク4―A及び4−Bにおいて直流電力を蓄積する機能、及びコンバータ14−A及び14−Bの直流出力の脈動分を抑える機能を有する。
コンバータ14−A及び14−Bの最大電力変換量を超えた出力でドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bを駆動することできるようにするために、モータ駆動システム1には、フライホイール型の蓄電装置10が設けられる。蓄電装置10は、フライホイール11と、バッファ用サーボモータ12と、バッファ用インバータ13−A及び13−Bとで構成される。
フライホイール11は、回転エネルギーを蓄積し得るものであり、イナーシャとも称される。
バッファ用サーボモータ12は、フライホイール11を回転させるためのものであり、フライホイール11はバッファ用サーボモータ12の回転軸に接続される。バッファ用サーボモータ12を回転させることによってフライホイール11に回転エネルギーを蓄積することができる。バッファ用サーボモータ12は、複数の独立した巻線を有する。図1では、一例として、バッファ用サーボモータ12を2巻線タイプとしている。また、バッファ用サーボモータ12の独立した巻線ごとに、バッファ用インバータ(図1の例では2個)が設けられる。より詳細に説明すると次の通りである。
図2は、複数の独立した巻線を有するバッファ用サーボモータを説明する図であって、(A)はバッファ用サーボモータの巻線構造を例示する断面図であり、(B)はバッファ用サーボモータとバッファ用インバータとの接続関係を例示する回路図である。図2(A)では、一例として、2巻線タイプのバッファ用サーボモータ12を示している。バッファ用サーボモータ12のステータ121には、複数の巻線(U1,U2,V1,V2,W1,W2,U3,U4,V3,V4,W3,W4)が配置されるが、2巻線タイプの場合、複数の巻線(U1,U2,V1,V2,W1,W2,U3,U4,V3,V4,W3,W4)は、一方の組の巻線(U1,U2,V1,V2,W1,W2)と、他方の組の巻線(U3,U4,V3,V4,W3,W4)とに分けられる。また、複数の独立した巻線を有するバッファ用サーボモータ12を駆動するために、巻線ごとにバッファ用インバータ13−A及び13−Bが設けられる。すなわち、図2(B)に示すように、上記の複数の巻線のうち一方の組の巻線(U1,U2,V1,V2,W1,W2)が一方のバッファ用インバータ13−Aに接続され、上記の複数の巻線のうち他方の組の巻線(U3,U4,V3,V4,W3,W4)が他方のバッファ用インバータ13−Bに接続される。このように、バッファ用インバータ13−A及び13−Bは、バッファ用サーボモータ12の独立した巻線ごとに設けられる。図2では、バッファ用サーボモータ12は2巻線タイプであるので2個のバッファ用インバータ13−A及び13−Bが設けられる。例えば、バッファ用サーボモータは3巻線タイプであれば3個のバッファ用インバータが設けられ、バッファ用サーボモータは4巻線タイプであれば4個のバッファ用インバータが設けられることになる。
このように、バッファ用インバータ13−A及び13−Bは、バッファ用サーボモータ12の独立した巻線ごとに設けられる。バッファ用インバータ13−Aは、バッファ用モータ制御部16から受信した駆動指令に基づき各スイッチング素子がオンオフ制御されることにより、バッファ用サーボモータ12の駆動電力または回生電力である交流電力とバッファ用インバータ13−Aが接続された直流リンク4−Aにおける直流電力との間で電力変換を行う。また、バッファ用インバータ13−Bは、バッファ用モータ制御部16から受信した駆動指令に基づき各スイッチング素子がオンオフ制御されることにより、バッファ用サーボモータ12の駆動電力または回生電力である交流電力とバッファ用インバータ13−Bが接続された直流リンク4−Bにおける直流電力との間で電力変換を行う。
バッファ用インバータ13−A及び13−Bは、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなる。バッファ用インバータ13−A及び13−Bは、バッファ用サーボモータ12が三相モータである場合は三相ブリッジ回路で構成され、バッファ用サーボモータ12が単相モータである場合は単相ブリッジ回路で構成される。スイッチング素子の例としては、FETなどのユニポーラトランジスタ、バイポーラトランジスタ、IGBT、サイリスタ、GTOなどがあるが、スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他のスイッチング素子であってもよい。例えば、受信した駆動指令を三角波搬送波(キャリア)と比較することで得られるPWMスイッチング信号に基づいて、バッファ用インバータ13−A及び13−B内の各スイッチング素子がオンオフ制御される。
バッファ用モータ制御部16によりバッファ用インバータ13−A及び13−Bの電力変換が制御されることで、フライホイール11が接続されたバッファ用サーボモータ12が加速もしくは減速しながら回転しまたは一定速度で回転し、フライホイール11の回転エネルギーと直流リンク4−A及び4−Bにおける電気エネルギーとの間で変換され、蓄電装置10が蓄積または供給すべき直流電力量(蓄電装置10が直流リンク4−A及び4−Bに対して出し入れする直流電力量)が調整される。蓄電装置10による直流電力の蓄電及び供給をより詳細に説明すると次の通りである。
バッファ用インバータ13−A及び13−Bが、バッファ用モータ制御部16から受信した駆動指令に基づき、直流リンク4−A及び4−Bにおける直流電力を交流電力へ変換する逆変換動作を行うと、直流リンク4−A及び4−Bからの電気エネルギーがバッファ用サーボモータ12側へ取り込まれ、この電気エネルギーにより、フライホイール11が接続されたバッファ用サーボモータ12が回転する。このようにフライホイール型の蓄電装置10では、直流リンク4−A及び4−Bから流入した電気エネルギーが、フライホイール11の回転エネルギーに変換されて蓄積される。また、バッファ用インバータ13−A及び13−Bは、バッファ用モータ制御部16から受信した駆動指令に基づき、フライホイール11が接続されたバッファ用サーボモータ12を減速させて交流の回生電力を発生させ、この交流電力を直流電力へ変換する順変換動作を行うことで、フライホイール11に蓄積された回転エネルギーは電気エネルギーに変換されて直流リンク4−A及び4−Bへ供給される。
モータ駆動システム1では、例えばドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bの加速時にはコンバータ14−Aから供給されるエネルギーに加えて蓄電装置10に蓄積されたエネルギーが直流リンク4−A及び4−Bを介してドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bに供給され、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bの加速のための動力として利用される。図3は、モータ駆動システム内の蓄電装置から供給される直流電力とコンバータから供給される直流電力の関係を例示する図である。コンバータ14−Aから直流リンク4−Aへ供給される電力は、ドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2の駆動電力(すなわちドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2の出力が対応)として消費されるほかに、ドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2における巻線損失とコンバータ14−Aにおける損失とドライブ用インバータ15−A1及び15−A2における損失として消費される。また、コンバータ14−Bから直流リンク4−Bへ供給される電力は、ドライブ用サーボモータ3−Bの駆動電力(すなわちドライブ用サーボモータ3−Bの出力が対応)として消費されるほかに、ドライブ用サーボモータ3−Bにおける巻線損失とコンバータ14−Bにおける損失とドライブ用インバータ15−Bにおける損失として消費される。ここで、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−B、ドライブ用インバータ15−A1、15−A2及び15−B、並びにコンバータ14−A及び14−Bで消費される電力の総和を「総消費電力」と称し、これを図3では実線で示す。また、一点鎖線は、コンバータ14−A及び14−Bの順変換動作における最大電力変換量を示す。図3に示すように、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び/または3−Bの加速時において、総消費電力のうちのコンバータ14−A及び/または14−Bの最大供給電力を超える分(図中、斜線で示す領域)については、蓄電装置10から直流リンク4−A及び/または4−Bへ出力(供給)される直流電力によって補うことができれば、電力ピークを低減することができる。また、図3には示していないが、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び/または3−Bの減速時においては、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び/または3−Bからから回生されたエネルギーのうちコンバータ4−A及び/または4−Bが電源2側へ戻せない分については、蓄電装置10に取り込む(蓄積する)ことができれば、電力ピークを低減することができる。このように、蓄電装置10に蓄積されたエネルギーは、コンバータ14−Bが供給する電力と併せてドライブ用サーボモータ3−Bの駆動に再利用することができるので、コンバータ14−Bの最大電力変換量を超えた出力でドライブ用サーボモータ3−Bを駆動することでき、電力ピークを低減することができる。電力ピークの低減により、電源2の容量やモータ駆動システム1の運用コストを抑えることができ、また、電源2側の停電やフリッカを回避することができる。
本実施形態では、消費電力量計算部17及び蓄電供給電力量計算部18にて各種電力量を計算し、この計算結果に基づいてバッファ用サーボモータ12の駆動を制御することで、蓄電装置10が蓄積または供給すべき直流電力量を調整する。
消費電力量計算部17は、直流リンク4−A及び4−Bごとに、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3Bを駆動する際に消費または回生される総消費電力量を計算する。総消費電力量には、「ドライブ用サーボモータの出力」としての「ドライブ用サーボモータの消費電力量」及び「ドライブ用サーボモータの回生電力量」が含まれる。より具体的には次の通りである。すなわち、消費電力量計算部17は、直流リンク4−Aに関して、直流リンク4−Aに接続されたコンバータ14−A並びにドライブ用インバータ15−A1及び15−A2における損失と、直流リンク4−Aにドライブ用インバータ15−A1及び15−A2を介して各々接続されたドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2の出力並びに巻線損失と、の和として得られる総消費電力量を計算する。また、消費電力量計算部17は、直流リンク4−Bに関して、直流リンク4−Bに接続されたコンバータ14−B及びドライブ用インバータ15−Bにおける損失と、直流リンク4−Bにドライブ用インバータ15−Bを介して接続されたドライブ用サーボモータ3−Bの出力及び巻線損失と、の和として得られる総消費電力量を計算する。
蓄電供給可能電力量計算部18は、バッファ用インバータ13−A及び13−Bごとに、蓄電供給可能電力量を計算する。すなわち、蓄電供給可能電力量計算部18は、バッファ用インバータ13−Aに関して、直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量とコンバータ14−Aにより電力変換可能な最大電力量として規定された最大電力変換量とに基づいて、バッファ用インバータ13−Aが直流リンク4−Aから取り込み可能なまたは直流リンク4−Aへ出力可能な直流電力量として規定される蓄電供給可能電力量を計算する。また、蓄電供給可能電力量計算部18は、バッファ用インバータ13−Bに関して、直流リンク4−Bについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量とコンバータ14−Bにより電力変換可能な最大電力量として規定された最大電力変換量とに基づいて、バッファ用インバータ13−Aが直流リンク4−Bから取り込み可能なまたは直流リンク4−Bへ出力可能な直流電力量として規定される蓄電供給可能電力量を計算する。なお、本実施形態では、蓄電供給可能電力量計算部18により計算される蓄電供給可能電力量は、あくまでも「直流リンクから取り込み可能な」または「直流リンクへ出力可能な」電力量を示すものであって、後述するバッファ用モータ制御部16の制御内容如何によっては、「直流リンクから実際に取り込まれる」または「直流リンクへ実際に出力される」電力量とは異なることがある。
トルク制限値計算部19は、蓄電供給可能電力量計算部18により計算された蓄電供給可能電力量と速度検出器32により検出されたバッファ用サーボモータ12の回転速度とに基づいて、バッファ用サーボモータ12に対するトルク制限値を計算する。トルク制限値は、バッファ用サーボモータ12に対するトルク指令に対して設定されるものであるが、詳細については後述する。
比較部20は、バッファ用インバータ13−A及び13−Bが直流リンク4−A及び4−Bから取り込み可能な直流電力量を示す蓄電供給可能電力量の総和の絶対値の大きさと、バッファ用インバータ13−A及び13−Bが直流リンク4−A及び4−Bへ出力可能な直流電力量を示す蓄電供給可能電力量の総和の絶対値の大きさとを比較する。比較部20による比較処理の詳細については後述する。
バッファ用モータ制御部16は、蓄電供給可能電力量計算部18により計算された蓄電供給可能電力量に基づいて、巻線ごとに接続された各バッファ用インバータ13−A及び13−Bに対して駆動指令を出力して各々の電力変換を制御することで、バッファ用サーボモータ12の駆動を制御し、蓄電装置10が蓄積または供給すべき直流電力量を調整する。バッファ用インバータ13−A及び13−Bは、受信した駆動指令により、直流リンク4−A及び4−Bにおける直流電力を交流電力に変換してバッファ用サーボモータ12へ供給する逆変換動作(力行動作)、またはバッファ用サーボモータ12から回生された交流電力を直流電力に変換して直流リンク4−A及び4−Bへ戻す順変換動作(回生動作)を行う。第1の実施形態では、バッファ用モータ制御部16は、バッファ用インバータ13−A及び13−Bごとに、トルク制限値計算部19により計算されたトルク制限値にてトルク指令の上限値及び下限値を変更しながらバッファ用サーボモータ12に対するトルク制御を行うことで、各バッファ用インバータ13−A及び13−Bが直流リンク4−A及び4−Bから取り込む直流電力量または直流リンク4−A及び4−Bへ出力する直流電力量を調整する。バッファ用モータ制御部16による各バッファ用インバータ13−A及び13−Bの制御の詳細については後述する。
続いて、第1の実施形態におけるトルク制限値を用いたトルク制御及び比較部による比較処理について、より詳細に説明する。
上述のように、フライホイール型の蓄電装置10による蓄電は、バッファ用インバータ13−A及び13−Bによる直流電力から交流電力への変換動作(逆変換)により直流リンク4−A及び4−Bからバッファ用サーボモータ12側へ取り込まれた電気エネルギーを、フライホイール11が接続されたバッファ用サーボモータ12の回転エネルギーとして蓄積することで実現される。また、フライホイール型の蓄電装置10による電力供給は、フライホイール11が接続されたバッファ用サーボモータ12を減速させて交流の回生電力を発生させ、バッファ用インバータ13−A及び13−Bによる交流電力から直流電力への変換動作(順変換)により、フライホイール11に蓄積された回転エネルギーを電気エネルギーに変換し、直流リンク4−A及び4−Bへ供給することで実現される。つまり、蓄電装置10が直流リンク4−A及び4−Bから蓄電または直流リンク4−A及び4−Bへ供給する直流電力量は、蓄電装置10内のバッファ用サーボモータ12の出力が対応する。
一般にサーボモータの出力は、サーボモータの回転速度(回転角速度)及びサーボモータのトルクに基づいて式1のように表される。
サーボモータの出力[W]=回転速度[rad/s]×トルク[Nm] ・・・(1)
上記式1は、バッファ用サーボモータ12についても成り立つ。バッファ用サーボモータ12に関して式1を変形すると式2が得られる。
バッファ用サーボモータ12のトルク[Nm]=バッファ用サーボモータ12の出力[W]/バッファ用サーボモータ12の回転速度[rad/s] ・・・(2)
上述のように、蓄電装置10が直流リンク4−A及び4−Bから蓄電または直流リンク4−A及び4−Bへ供給する直流電力量は、蓄電装置10内のバッファ用サーボモータ12の出力が対応する。そこで、本実施形態では、式2で表されるバッファ用サーボモータ12のトルクを、トルク指令に対するトルク制限値として用いてトルク制御を行い、蓄電装置10が直流リンク4−A及び4−Bから蓄電または直流リンク4−A及び4−Bへ供給する直流電力量を調整する。
図4は、第1の実施形態によるモータ駆動システム内の蓄電装置におけるバッファ用サーボモータに対する制御ループを示すブロック図である。図1のバッファ用モータ制御部16は、図4ではバッファ用モータ制御部16−A及び16−Bが対応する。図4に示すように、バッファ用モータ制御部16−Aは、バッファ用サーボモータ12の回転速度を速度指令に追従させる速度フィードバック制御を実行する速度制御部41−Aと、速度制御部41−Aで生成されたトルク指令及びトルク制限値計算部19により計算されたバッファ用インバータ13−Aについてのトルク制限値を用いてトルク制御を実行するトルク制御部42−Aと、トルク制御部42−Aで生成された電流指令に基づいて電流制御を実行する電流制御部43−Aとを備える。また、バッファ用モータ制御部16−Bは、バッファ用サーボモータ12の回転速度を速度指令に追従させる速度フィードバック制御を実行する速度制御部41−Bと、速度制御部41−Bで生成されたトルク指令及びトルク制限値計算部19により計算されたバッファ用インバータ13−Bについてのトルク制限値を用いてトルク制御を実行するトルク制御部42−Bと、トルク制御部42−Bで生成された電流指令に基づいて電流制御を実行する電流制御部43−Bとを備える。
消費電力量計算部17は、直流リンク4−Aに関して、直流リンク4−Aに接続されたコンバータ14−A並びにドライブ用インバータ15−A1及び15−A2における損失と、直流リンク4−Aにドライブ用インバータ15−A1及び15−A2を介して各々接続されたドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2の出力並びに巻線損失と、の和として得られる総消費電力量を計算する。また、消費電力量計算部17は、直流リンク4−Bに関して、直流リンク4−Bに接続されたコンバータ14−B及びドライブ用インバータ15−Bにおける損失と、直流リンク4−Bにドライブ用インバータ15−Bを介して接続されたドライブ用サーボモータ3−Bの出力及び巻線損失と、の和として得られる総消費電力量を計算する。ここで、ドライブ用サーボモータ3−A1の出力は、式1に従い、速度検出器31により検出されたドライブ用サーボモータ3−A1の回転速度とドライブ用サーボモータ3のトルクとの乗算により得られる。ドライブ用サーボモータ3−A2の出力は、式1に従い、速度検出器31により検出されたドライブ用サーボモータ3−A2の回転速度とドライブ用サーボモータ3のトルクとの乗算により得られる。ドライブ用サーボモータ3−Bの出力は、式1に従い、速度検出器31により検出されたドライブ用サーボモータ3−Bの回転速度とドライブ用サーボモータ3のトルクとの乗算により得られる。
例えばドライブ用サーボモータ3−A1が加速する際は、ドライブ用サーボモータ3−A1は、それぞれドライブ用インバータ15−A1から供給された交流電力を消費するが、この電力消費時のドライブ用サーボモータ3−A1の出力を「正」とする。したがって、ドライブ用サーボモータ3−A1が減速することにより電力が回生されることきは、ドライブ用サーボモータ3−A1の出力は「負」となる。ドライブ用サーボモータ3−A2とドライブ用インバータ15−A2、及びドライブ用サーボモータ3−Bとドライブ用インバータ15−Bも同様の関係がある。
直流リンク4−Aに関して、コンバータ14−A並びにドライブ用インバータ15−A1及び15−A2における損失とドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2における巻線損失は、ドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2の出力の絶対値に比べて一般的には小さいので、ドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2の出力の影響が総消費電力量に対して支配的となる。したがって、消費電力量計算部17が算出する直流リンク4−Aに関する総消費電力量についての正負は、ドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2の出力の正負(消費または回生)にほぼ対応する。同様に、消費電力量計算部17が算出する直流リンク4−Bに関する総消費電力量についての正負は、ドライブ用サーボモータ3−Bの出力の正負(消費または回生)にほぼ対応する。
なお、直流リンク4−Aに関して、バッファ用インバータ13−Aにも損失が存在することから、消費電力量計算部17は、コンバータ14−Aにおける損失及びドライブ用インバータ15−A1及び15−A2における損失とドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2における巻線損失との和に、さらにバッファ用インバータ13−Aにおける損失を加算したものを、総消費電力量として計算してもよい。同様に、直流リンク4−Bに関して、消費電力量計算部17は、コンバータ14−Bにおける損失及びドライブ用インバータ15−Bにおける損失とドライブ用サーボモータ3−Bにおける巻線損失との和に、さらにバッファ用インバータ13−Bにおける損失を加算したものを、総消費電力量として計算してもよい。
蓄電供給電力量計算部18は、バッファ用インバータ13−A及び13−Bごとに、蓄電供給可能電力量を計算する。より詳細には、バッファ用インバータ13−Aに関して、蓄電供給可能電力量計算部18は、コンバータ14−Aにより電力変換可能な最大電力量として規定された最大電力変換量と直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量との差(すなわち最大電力変換量から総消費電力量を減算した値)を計算する。コンバータ14−Aの最大電力変換量と直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量との差は、バッファ用インバータ13−Aが直流リンク4−Aから取り込み可能なまたは直流リンク4−Aへ出力可能な直流電力量である「蓄電供給可能電力量」に対応する。例えば、コンバータ14−Aの順変換動作についての最大電力変換量と直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量との差である「蓄電供給可能電力量」が負のときは、総消費電力がコンバータ14−Aの順変換時の最大供給電力を超えていることを意味し、この場合はコンバータ14−Aが電源2側から直流リンク4−Aへ取り込むエネルギーだけでは総消費電力量の全てを賄いきれないので、その不足分については、バッファ用インバータ13−Aから直流リンク4−Aへ出力することで対応する必要がある。逆に言えば、バッファ用インバータ13−Aが、上記不足分に対応する「蓄電供給可能電力量」を、直流リンク4−Aへ出力することができれば、コンバータ14−Aの最大電力変換量の範囲内にてドライブ用サーボモータ3−A1及び/または3−A2を駆動することができるということである。また例えば、コンバータ14−Aの逆変換動作についての最大電力変換量の絶対値と直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量の絶対値との差である「蓄電供給可能電力量」が負のときは、総消費電力がコンバータ14−Aの逆変換時の最大回生電力を超えていることを意味し、この場合は、コンバータ14−Aが直流リンク4−Aから電源2へエネルギーを戻すだけではドライブ用サーボモータ3−A1及び/または3−A2から回生されたエネルギーを回収しきれないので、その超過分については、バッファ用インバータ13−Aが直流リンク4−Aから取り込むことで対応する必要がある。逆に言えば、バッファ用インバータ13−Aが、上記超過分に対応する「蓄電供給可能電力量」を、直流リンク4−Aから取り込むことができれば、コンバータ14−Aの最大電力変換量の範囲内にてドライブ用サーボモータ3−A1及び/または3−A2を駆動することができるということである。なお、蓄電供給可能電力量について、ここではバッファ用インバータ13−Aについて説明したが、バッファ用インバータ13−Bについても同様のことがいえる。
なお、一般にサーボモータには駆動効率(サーボモータに供給される駆動電力に対するサーボモータの出力の割合)が存在するが、バッファ用サーボモータ12の駆動効率を考慮して蓄電供給可能電力量を計算してもよい。すなわち、例えばバッファ用インバータ13−Aに関して、蓄電供給電力量計算部18は、直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量とコンバータ14−Aの最大電力変換量とバッファ用サーボモータ12の駆動効率とに基づいて、蓄電供給可能電力量を計算してもよい。例えば駆動効率が90%であるバッファ用サーボモータ12を有する蓄電装置10にて直流リンク4−Aへ直流電力を供給する場合、蓄電供給電力量計算部18は、コンバータ14−Aの最大電力変換量と消費電力量計算部17により計算された総消費電力量との差をさらに「100/90」倍して得られる値を、バッファ用インバータ13−Aについての蓄電供給可能電力量(直流リンク4−Aへ出力可能な直流電力量)として計算してもよい。また、駆動効率が90%であるバッファ用サーボモータ12を有する蓄電装置10にて直流リンク4−Aからの直流電力を蓄電する場合、蓄電供給電力量計算部18は、コンバータ14−Aの最大電力変換量と消費電力量計算部17により計算された総消費電力量との差をさらに「90/100」倍して得られる値を、バッファ用インバータ13−Aについての蓄電供給可能電力量(直流リンク4−Aから取り込み可能な直流電力量)として計算してもよい。バッファ用インバータ13−Bについても同様のことがいえる。
トルク制限値計算部19は、蓄電供給可能電力量計算部18により計算された蓄電供給可能電力量と速度検出器32により検出されたバッファ用サーボモータ12の回転速度とに基づいて、バッファ用サーボモータ12に対するトルク制限値を計算する。トルク制限値は、バッファ用インバータ13−A及び13−Bごとに計算される。上述のように、バッファ用インバータ13−Aについての蓄電供給可能電力量は、コンバータ14−Aの最大電力変換量と直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量との差が対応する。また、バッファ用インバータ13−Aについての蓄電供給可能電力量は、蓄電装置10内のバッファ用サーボモータ12の出力が対応する。そこで、トルク制限値計算部19は、蓄電供給電力量計算部18により計算された「コンバータ14−Aの最大電力変換量と直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量との差」である蓄電供給可能電力量を、速度検出器32により検出されたバッファ用サーボモータ12の回転速度で除算することで、バッファ用モータ制御部16−Aで用いられるトルク制限値を計算する。トルク制限値は、バッファ用モータ制御部16−A内のトルク制御部42−Aにおいて、トルク指令に対するトルク制限値として用いられる。同様に、トルク制限値計算部19は、蓄電供給電力量計算部18により計算された「コンバータ14−Bの最大電力変換量と直流リンク4−Bについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量との差」である蓄電供給可能電力量を、速度検出器32により検出されたバッファ用サーボモータ12の回転速度で除算することで、バッファ用モータ制御部16−Bで用いられるトルク制限値を計算する。トルク制限値は、バッファ用モータ制御部16−B内のトルク制御部42−Bにおいて、トルク指令に対するトルク制限値として用いられる。トルク制限値を用いたトルク制御は、バッファ用インバータ13−A及び13−Bごとの蓄電供給可能電力量の内容に応じて実行されるが、その詳細については後述する。
バッファ用モータ制御部16−Aにおいて、速度制御部41−Aは、制御対象であるバッファ用サーボモータ12の回転速度を、速度指令切換部51−Aにより設定された速度指令に追従させる速度フィードバック制御を実行する。コンバータ14−Aの最大電力変換量と直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量との大小関係が分かれば(換言すれば、蓄電供給可能電力量が分かれば)、バッファ用サーボモータ12を加速して直流リンク4−Aからエネルギーを取り込む(蓄電装置10に直流電力を蓄積する)べきか、あるいはバッファ用サーボモータ12を減速して直流リンク4−Aへエネルギーを出力する(蓄電装置から直流電力を供給する)べきかについて判別することができる。第1の実施形態では、第1の閾値である供給閾値として、コンバータ14−Aが交流電力を直流電力に電力変換する順変換動作についての最大電力変換量に設定する。また、第2の閾値である蓄電閾値として、コンバータ14−Aが直流電力を交流電力に電力変換する逆変換動作についての最大電力変換量を設定する。同様に、バッファ用モータ制御部16−Bにおいて、速度制御部41−Bは、制御対象であるバッファ用サーボモータ12の回転速度を、速度指令切換部51−Bにより設定された速度指令に追従させる速度フィードバック制御を実行する。第1の閾値である供給閾値として、コンバータ14−Bが交流電力を直流電力に電力変換する順変換動作についての最大電力変換量に設定する。また、第2の閾値である蓄電閾値として、コンバータ14−Bが直流電力を交流電力に電力変換する逆変換動作についての最大電力変換量を設定する。なお、蓄電閾値は、供給閾値よりも小さい値に設定される。あるいは、コンバータ14−A及び14−Bに対する安全性を考慮して、供給閾値として順変換動作についての最大電力変換量よりも小さい値を設定し、蓄電閾値として逆変換動作についての最大電力変換量よりも大きい値を設定してもよい。
バッファ用モータ制御部16−Aは、直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が供給閾値(第1の閾値)を超えた場合、バッファ用サーボモータ12が予め規定されたベース回転速度よりも小さい電力供給用回転速度で回転するよう、バッファ用インバータ13−Aの電力変換を制御する。また、バッファ用モータ制御部16−Aは、直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が蓄電閾値(第2の閾値)を下回った場合、バッファ用サーボモータ12がベース回転速度よりも大きい蓄電用回転速度で回転するよう、バッファ用インバータ13−Aの電力変換を制御する。また、バッファ用モータ制御部16−Aは、直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が供給閾値(第1の閾値)と蓄電閾値(第2の閾値)との間にある場合、バッファ用サーボモータ12がベース回転速度で回転するよう、バッファ用インバータ13−Aの電力変換を制御する。このため、第1の実施形態では、バッファ用モータ制御部16−A内の速度指令切換部51−Aは、直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が供給閾値(第1の閾値)を超えた場合、バッファ用サーボモータ12を電力供給用回転速度で回転させるための速度指令として、供給用速度指令を出力する。また、バッファ用モータ制御部16−A内の速度指令切換部51−Aは、直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が蓄電閾値(第2の閾値)を下回った場合、バッファ用サーボモータ12を蓄電用回転速度で回転させるための速度指令として、蓄電用速度指令を出力する。また、バッファ用モータ制御部16−A内の速度指令切換部51−Aは、直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が供給閾値(第1の閾値)と蓄電閾値(第2の閾値)との間にある場合、バッファ用サーボモータ12をベース回転速度で回転させるための速度指令として、ベース用速度指令を出力する。同様に、バッファ用モータ制御部16−Bにおいても、速度指令切換部51−Bは、直流リンク4−Bについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が供給閾値(第1の閾値)を超えた場合、バッファ用サーボモータ12を電力供給用回転速度で回転させるための速度指令として、供給用速度指令を出力する。また、バッファ用モータ制御部16−B内の速度指令切換部51−Bは、直流リンク4−Bについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が蓄電閾値(第2の閾値)を下回った場合、バッファ用サーボモータ12を蓄電用回転速度で回転させるための速度指令として、蓄電用速度指令を出力する。また、バッファ用モータ制御部16−B内の速度指令切換部51−Bは、直流リンク4−Bについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が供給閾値(第1の閾値)と蓄電閾値(第2の閾値)との間にある場合、バッファ用サーボモータ12をベース回転速度で回転させるための速度指令として、ベース用速度指令を出力する。
このように、第1の実施形態では、速度指令切換部51−A及び51−Bにより設定される速度指令は、上述のような供給用速度指令、蓄電用速度指令及びベース用速度指令の3種類のみに単純化されるので、制御が容易である。また、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bの稼働状態や消費電力に合わせた速度指令の作成が不要であり、バッファ用サーボモータ12の駆動プログラムを単純化することができる。供給用速度指令、蓄電用速度指令及びベース用速度指令は、予め定めた一定値として設定しておけばよい。またあるいは、ドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bの出力を事前に測定しておき、この測定結果から蓄電供給に必要な電力を計算して供給用速度指令、蓄電用速度指令及びベース用速度指令を規定してもよい。
バッファ用モータ制御部16−A内の速度制御部41−Aは、バッファ用サーボモータ12の回転速度を、速度指令切換部51−Aにより設定された速度指令に追従させるためのトルク指令を生成する。バッファ用モータ制御部16−B内の速度制御部41−Bは、バッファ用サーボモータ12の回転速度を、速度指令切換部51−Bにより設定された速度指令に追従させるためのトルク指令を生成する。
バッファ用モータ制御部16−A及び16−B(図1ではバッファ用モータ制御部16)は、バッファ用インバータ13−A及び13−Bごとに、トルク制限値計算部19により計算されたトルク制限値にてトルク指令の上限値及び下限値を変更しながらバッファ用サーボモータ12に対するトルク制御を実行し、各バッファ用インバータ13−A及び13−Bに対する電流指令値を生成する。このため、速度制御部41−Aに続くトルク制御部42−Aは、トルク制限値にてトルク指令を制限するリミッタとしてトルク制限部52−Aを有する。また、速度制御部41−Bに続くトルク制御部42−Bは、トルク制限値にてトルク指令を制限するリミッタとしてトルク制限部52−Bを有する。
上述のように、直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が供給閾値(第1の閾値)を超えた場合、バッファ用モータ制御部16−Aは、バッファ用サーボモータ12をベース回転速度で回転させるためのベース用速度指令から電力供給用回転速度で回転させるための供給用速度指令へ切り換える。この場合、トルク制限値計算部19は、下記式3を用いて、バッファ用サーボモータ12に対するトルク制限値を計算する。直流リンク4−Bについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が供給閾値(第1の閾値)を超えた場合についても同様である。なお、式3において、供給閾値から総消費電力量を減算した値の絶対値は、蓄電供給可能電力量を示す。式3に従って計算されたベース用速度指令から供給用速度指令へ切り換えるときに用いられるトルク制限値は0以下の値となる。
トルク制限値[Nm]=(供給閾値[W]−総消費電力量[W])/バッファ用サーボモータ12の回転速度[rad/s] ・・・(3)
また、直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が蓄電閾値(第2の閾値)を下回った場合、バッファ用モータ制御部16−Aは、バッファ用サーボモータ12をベース回転速度で回転させるためのベース用速度指令から蓄電用回転速度で回転させるための蓄電用速度指令へ切り換える。この場合、トルク制限値計算部19は、下記式4を用いて、バッファ用サーボモータ12に対するトルク制限値を計算する。直流リンク4−Bについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が蓄電閾値(第2の閾値)を超えた場合についても同様である。なお、式4において、蓄電閾値から総消費電力量を減算した値の絶対値は、蓄電供給可能電力量を示す。式4に従って計算されたベース用速度指令から蓄電用速度指令へ切り換えるときに用いられるトルク制限値は0以上の値となる。
トルク制限値[Nm]=(蓄電閾値[W]−総消費電力量[W])/バッファ用サーボモータ12の回転速度[rad/s] ・・・(4)
また、直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が供給閾値を超えていた状態から供給閾値を下回った場合、バッファ用モータ制御部16−Aは、バッファ用サーボモータ12を電力供給用回転速度で回転させるための供給用速度指令からベース回転速度で回転させるためのベース用速度指令へ切り換える。この場合、トルク制限値計算部19は、下記式5を用いて、バッファ用サーボモータ12に対するトルク制限値を計算する。直流リンク4−Bについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が供給閾値を超えていた状態から供給閾値を下回った場合についても同様である。なお、式5において、供給閾値から総消費電力量を減算した値の絶対値は、蓄電供給可能電力量を示す。式5に従って計算された供給用速度指令からベース用速度指令へ切り換えるときに用いられるトルク制限値は0以上の値となる。
トルク制限値[Nm]=(供給閾値[W]−総消費電力量[W])/バッファ用サーボモータ12の回転速度[rad/s] ・・・(5)
また、直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が蓄電閾値を下回っていた状態から蓄電閾値を超えた場合、バッファ用モータ制御部16−Aは、バッファ用サーボモータ12を蓄電用回転速度で回転させるための蓄電用速度指令からベース回転速度で回転させるためのベース用速度指令へ切り換える。この場合、トルク制限値計算部19は、下記式6を用いて、バッファ用サーボモータ12に対するトルク制限値を計算する。直流リンク4−Bについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が蓄電閾値を下回っていた状態から蓄電閾値を超えた場合についても同様である。なお、式6において、蓄電閾値から総消費電力量を減算した値の絶対値は、蓄電供給可能電力量を示す。式6に従って計算された蓄電用速度指令からベース用速度指令へ切り換えるときに用いられるトルク制限値は0以下の値となる。
トルク制限値[Nm]=(蓄電閾値[W]−総消費電力量[W])/バッファ用サーボモータ12の回転速度[rad/s] ・・・(6)
なお、式3〜式6において、バッファ用サーボモータ12の回転速度[rad/s]を正数としている。
第1の実施形態では、上述のように計算されたトルク制限値を用いたトルク制御の実行の有無は、蓄電供給電力量計算部18により計算されたバッファ用インバータ13−A及び13−Bごとの蓄電供給可能電力量の内容に応じて決定される。トルク制御の内容には、次の4通りのパターンがある。いずれのパターンに該当するかについては、各トルク制御部42−A及び42−Bが、蓄電供給電力量計算部18による計算結果及び比較部20による比較結果に基づいて判定する。バッファ用サーボモータ12の各巻線に接続されたバッファ用インバータ13−A及び13−Bの電力変換を一様に制御すると、各バッファ用インバータ13−A及び13−Bによる直流電力の取り込み及び出力が過剰となる場合が生じるので、バッファ用モータ制御部16−A及び16−Bでは、巻線ごとに接続された各バッファ用インバータ13−A及び13−Bの電力変換を、個別に制御することでバッファ用サーボモータ12を駆動制御する。
トルク制限値を用いたトルク制御が実行される場合、バッファ用モータ制御部16−A及び16−B内のトルク制御部42−A及び42−Bは、トルク制限値計算部19によって式3〜式6に従って計算されたトルク制限値にてトルク指令の上限値及び下限値を変更しながらバッファ用サーボモータ22に対するトルク制御を実行し、電流指令を生成する。すなわち、トルク制御部42−A及び42−B内のトルク制限部52−A及び52−Bは、下記式7に示すようにトルク指令の上限値及び下限値を、トルク制限値にて制限する。
−|トルク制限値|≦トルク指令≦|トルク制限値| ・・・(7)
第1のパターンは、バッファ用インバータについての蓄電供給可能電力量の全てが、直流リンクから取り込み可能な直流電力量(すなわち蓄電装置10が蓄電可能な直流電力量)を示している場合におけるトルク制御である。バッファ用モータ制御部のトルク制御部は、第1のパターンに該当すると判定した場合、バッファ用インバータごとに、トルク制限値にてトルク指令の上限値及び下限値を変更しながらバッファ用サーボモータに対するトルク制御を行うことで、当該バッファ用インバータが直流リンクから取り込む直流電力量を調整する。図1及び図4に示す例では、バッファ用インバータ13−Aについての蓄電供給可能電力量及びバッファ用インバータ13−Bについての蓄電供給可能電力量が、それぞれ直流リンク4−A及び4−Bから取り込み可能な直流電力量を示している場合において、バッファ用モータ制御部16−A内のトルク制御部42−Aは、トルク制限部52−Aにおいてトルク制限値にてトルク指令の上限値及び下限値を変更しながらバッファ用サーボモータ12に対するトルク制御を行うことで、バッファ用インバータ13−Aが直流リンク4−Aからバッファ用サーボモータ12側へ取り込む直流電力量を調整し、バッファ用インバータ13−Bが直流リンク4−Bからバッファ用サーボモータ12側へ取り込む直流電力量を調整する。なお、第1のパターンでは、バッファ用インバータ13−A及び13−Bは直流リンク4−A及び4−Bからバッファ用サーボモータ12側へ直流電力を取り込む制御が行われるが、既に説明したように、バッファ用モータ制御部16−Aは、直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が供給閾値(第1の閾値)を超えた場合には、バッファ用サーボモータ12が予め規定されたベース回転速度よりも小さい電力供給用回転速度で回転するよう供給用速度指令を生成し、バッファ用モータ制御部16−Bは、直流リンク4−Bについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が供給閾値(第1の閾値)を超えた場合には、バッファ用サーボモータ12が予め規定されたベース回転速度よりも小さい電力供給用回転速度で回転するよう供給用速度指令を生成することになる。
第2のパターンは、バッファ用インバータについての蓄電供給可能電力量の全てが直流リンクへ出力可能な直流電力量(すなわち蓄電装置10が供給可能な直流電力量)を示している場合におけるトルク制御である。バッファ用モータ制御部のトルク制御部は、第2のパターンに該当すると判定した場合、バッファ用インバータごとに、トルク制限値にてトルク指令の上限値及び下限値を変更しながらバッファ用サーボモータに対するトルク制御を行うことで、当該バッファ用インバータが直流リンクへ出力する直流電力量を調整する。図1及び図4に示す例では、バッファ用インバータ13−Aについての蓄電供給可能電力量及びバッファ用インバータ13−Bについての蓄電供給可能電力量が、それぞれ直流リンク4−A及び4−Bへ出力可能な直流電力量を示している場合において、バッファ用モータ制御部16−A内のトルク制御部42−Aは、トルク制限部52−Aにおいてトルク制限値にてトルク指令の上限値及び下限値を変更しながらバッファ用サーボモータ12に対するトルク制御を行うことで、バッファ用インバータ13−Aがバッファ用サーボモータ12側から直流リンク4−Aへ出力する直流電力量を調整し、バッファ用インバータ13−Bがバッファ用サーボモータ12側から直流リンク4−Bへ出力する直流電力量を調整する。なお、第2のパターンでは、バッファ用インバータ13−A及び13−Bは直流リンク4−A及び4−Bへ直流電力を出力する制御が行われるが、既に説明したように、バッファ用モータ制御部16−Aは、直流リンク4−Aについて消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が蓄電閾値(第2の閾値)を下回った場合には、バッファ用サーボモータ12が予め規定されたベース回転速度よりも大きい蓄電用回転速度で回転するよう、蓄電用速度指令を生成することになる。
また、上述の第1のパターン及び第2のパターンに該当しない場合として、バッファ用インバータごとに、当該バッファ用インバータについての蓄電供給可能電力量が示す内容が、直流リンクから取り込み可能な直流電力量(すなわち蓄電装置10が蓄電可能な直流電力量)と直流リンクへ出力可能な直流電力量(すなわち蓄電装置10が供給可能な直流電力量)とに分かれる場合がある。この場合は、比較部20にて、バッファ用インバータが直流リンクから取り込み可能な直流電力量を示す蓄電供給可能電力量の総和の絶対値の大きさと、バッファ用インバータが直流リンクへ出力可能な直流電力量を示す蓄電供給可能電力量の総和の絶対値の大きさとを比較し、トルク制御部42−A及び42−Bは、比較部20による比較結果に応じて、速度制御部41−A及び41−Bが生成したトルク指令を用いて、以下の第3のパターンまたは第4のパターンに基づくトルク制御を実行する。
第3のパターンは、比較部20により絶対値が大きいと判定された蓄電供給可能電力量が、直流リンクから取り込み可能な直流電力量(すなわち蓄電装置10が蓄電可能な直流電力量)を示している場合におけるトルク制御である。バッファ用モータ制御部のトルク制御部は、第3のパターンに該当すると判定した場合、直流リンクから直流電力を取り込み可能であるバッファ用インバータに対しては、トルク制限値にてトルク指令の上限値及び下限値を変更しながらバッファ用サーボモータに対するトルク制御を行うことで当該バッファ用インバータがバッファ用サーボモータ側へ直流リンクから取り込む直流電力量を調整する一方、直流リンクへ直流電力を出力可能であることを示すバッファ用インバータに対しては、バッファ用サーボモータに対するトルク制御は行わない。例えば、図1及び図4において、バッファ用インバータ13−Aが直流リンク4−Aから取り込み可能な直流電力量を示す蓄電供給可能電力量が40[kW]であり、バッファ用インバータ13−Bが直流リンク4−Bへ出力可能な直流電力量を示す蓄電供給可能電力量が20[kW]である場合、各蓄電供給可能電力量の絶対値を比較すると、バッファ用インバータ13−Aが直流リンク4−Aから取り込み可能な直流電力量を示す蓄電供給可能電力量である40[kW]の方が大きい。そこで、バッファ用モータ制御部16−A内のトルク制御部42−Aは、直流リンク4−Aから直流電力を取り込み可能であるバッファ用インバータ13−Aに対しては、トルク制限部52−Aにおいてトルク制限値にてトルク指令の上限値及び下限値を変更しながらバッファ用サーボモータ12に対するトルク制御を行うことでバッファ用インバータ1−Aが直流リンク4−Aからバッファ用サーボモータ12側へ取り込む直流電力量を調整する一方、直流リンク4−Bへ直流電力を出力可能であることを示すバッファ用インバータ13−Bに対しては、バッファ用モータ制御部16−B内のトルク制御部42−Bは、トルク制限値をゼロに設定することでバッファ用サーボモータ12に対するトルク制御が行われないようにし、バッファ用インバータ13−Bが直流電力を直流リンク4−Bへ出力しないようにする。
第4のパターンは、比較部20により絶対値が大きいと判定された蓄電供給可能電力量が、直流リンクへの出力可能な直流電力量(すなわち蓄電装置10が供給可能な直流電力量)を示している場合におけるトルク制御である。バッファ用モータ制御部のトルク制御部は、第4のパターンに該当すると判定した場合、直流リンクへ直流電力を出力可能であるバッファ用インバータに対しては、トルク制限値にてトルク指令の上限値及び下限値を変更しながらバッファ用サーボモータに対するトルク制御を行うことで当該バッファ用インバータが直流リンクへ出力する直流電力量を調整する一方、直流リンクから直流電力を取り込み可能であることを示すバッファ用インバータに対しては、バッファ用サーボモータに対するトルク制御を行わない。例えば、図1及び図4において、バッファ用インバータ13−Aが直流リンク4−Aから取り込み可能な直流電力量を示す蓄電供給可能電力量が10[kW]であり、バッファ用インバータ13−Bが直流リンク4−Bへ出力可能な直流電力量を示す蓄電供給可能電力量が30[kW]である場合、各蓄電供給可能電力量の絶対値を比較すると、バッファ用インバータ13−Bが直流リンク4−Bへ出力可能な直流電力量を示す蓄電供給可能電力量が30[kW]の方が大きい。そこで、バッファ用モータ制御部16−B内のトルク制御部42−Bは、トルク制限部52−Bにおいてトルク制限値にてトルク指令の上限値及び下限値を変更しながらバッファ用サーボモータ12に対するトルク制御を行うことでバッファ用インバータ13−Bが直流リンク4−Bへ出力する直流電力量を調整する一方、バッファ用モータ制御部16−A内のトルク制御部42−Aは、直流リンク4−Aから直流電力を取り込み可能であることを示すバッファ用インバータ13−Aに対しては、トルク制限値をゼロに設定することでバッファ用サーボモータ12に対するトルク制御が行われないようにし、バッファ用インバータ13−Aが直流電力を直流リンク4−Aからバッファ用サーボモータ12側へ取り込まないようにする。
なお、第3のパターン及び第4のパターンについては、図1及び図4に示した2巻線タイプのバッファ用サーボモータ12を例にとり説明したが、3巻線以上の場合は、バッファ用インバータが直流リンクから取り込み可能な直流電力量を示す蓄電供給可能電力量の総和の絶対値の大きさとバッファ用インバータが直流リンクへ出力可能な直流電力量を示す蓄電供給可能電力量の総和の絶対値の大きさとの比較結果に基づいて、上記処理が行われる。例えば、4巻線タイプのバッファ用サーボモータ(図示せず)で蓄電装置を構成する場合において、4つのバッファ用インバータについての蓄電供給可能電力量が、それぞれ「直流リンクから取り込み(蓄電)可能な直流電力量が10[kW]」、「直流リンクへ出力(供給)可能な直流電力量が20[kW]」、「直流リンクから取り込み(蓄電)可能な直流電力量が15[kW]」、「直流リンクへ出力(供給)可能な直流電力量が10[kW]」であるとすると、直流リンクから取り込み(蓄電)可能な直流電力量の総和は25(=10+15)[kW]であり、直流リンクへ出力(供給)可能な直流電力量の総和は30(=20+10)[kW]である。よって、比較部20による比較処理により、直流リンクへ出力(供給)可能な直流電力量の総和が大きいと判定されるので、バッファ用モータ制御部16は、第4のパターンに従った制御を行う。また例えば4つのバッファ用インバータについての蓄電供給可能電力量が、それぞれ「直流リンクから取り込み(蓄電)可能な直流電力量が10[kW]」、「直流リンクから取り込み(蓄電)可能な直流電力量が20[kW]」、「直流リンクから取り込み(蓄電)可能な直流電力量が15[kW]」、「直流リンクへ出力(供給)可能な直流電力量が10[kW]」であるとすると、直流リンクから取り込み(蓄電)可能な直流電力量の総和は45(=10+20+15)[kW]であり、直流リンクへ出力(供給)可能な直流電力量の総和は10[kW]である。よって、比較部20による比較処理により、直流リンクから取り込み(蓄電)可能な直流電力量の総和が大きいと判定されるので、バッファ用モータ制御部16は、第3のパターンに従った制御を行う。
上述のトルク制御部42−Aに続く電流制御部43−Aは、バッファ用インバータ13−Aに流れる電流をトルク制御部42−Aにより生成された電流指令に追従させるための駆動指令を生成する。電流制御部43−Aにより生成された駆動指令は、バッファ用インバータ13−Aに送られ、バッファ用インバータ13−Aは、この駆動指令に基づき各スイッチング素子がオンオフ制御され、直流リンク4−Aの直流電力とバッファ用サーボモータ12の駆動電力または回生電力である交流電力との間で電力変換する。また、上述のトルク制御部42−Bに続く電流制御部43−Bは、バッファ用インバータ13−Bに流れる電流をトルク制御部42−Bにより生成された電流指令に追従させるための駆動指令を生成する。電流制御部43−Bにより生成された駆動指令は、バッファ用インバータ13−Bに送られ、バッファ用インバータ13−Bは、この駆動指令に基づき各スイッチング素子がオンオフ制御され、直流リンク4−Bの直流電力とバッファ用サーボモータ12の駆動電力または回生電力である交流電力との間で電力変換する。図2を参照して説明したように、バッファ用サーボモータ12は複数の巻線を有し、複数の巻線のうち一方の組の巻線(図2(B)ではU1,U2,V1,V2,W1,W2)がバッファ用インバータ13−Aに接続され、上記の複数の巻線のうち他方の組の巻線(図2(B)ではU3,U4,V3,V4,W3,W4)がバッファ用インバータ13−Bに接続される。バッファ用サーボモータ12には、これら2つのバッファ用インバータ13−A及び13−Bを介して交流電力の入出力が行われることになるが、多くの場合、交流電力の量及びその入出力方向についてはバッファ用インバータ13−A及び13−Bで異なる。したがってバッファ用サーボモータ12内の各巻線にて発生するトルクは異なったものとなるが、バッファ用サーボモータ12は、大きい方のトルクの支配を受けて回転することになる。つまり、バッファ用サーボモータ12の回転状態については、各バッファ用インバータ13−A及び13−Bの交流電力の量及びその入出力方向に応じて一意に決まる。バッファ用モータ制御部16−A及び16−B(図1ではバッファ用モータ制御部16)によりバッファ用インバータ13−A及び13−Bの電力変換が制御されることで、フライホイール11が接続されたバッファ用サーボモータ12が加速もしくは減速しながら回転しまたは一定速度で回転し、フライホイール11の回転エネルギーと直流リンク4−A及び4−Bにおける電気エネルギーとの間で変換されることで、蓄電装置10が蓄積または供給すべき直流電力量(蓄電装置10が直流リンク4−A及び4−Bに対して出し入れする直流電力量)が調整される。
このように、第1の実施形態では、式2に従って計算されるバッファ用サーボモータ12に対して、速度指令切換部51−A及び51−Bにより設定された速度指令にて速度制御が行われ、さらに、バッファ用インバータごとの蓄電供給可能電力量の内容に応じてトルク制限値を用いたトルク制御が行われる。トルクの制限値は、消費電力量計算部17により計算された総消費電力量を用いて設定され、このトルク制限値を用いたトルク制御によりバッファ用サーボモータ12は駆動するので、蓄電装置10の応答性は高くなる。
図5は、第1の実施形態によるモータ駆動システムにおける速度指令の切換例を説明する図であって、(A)は各速度指令間でステップ状に切り換える例を示し、(B)は各速度指令間で直線形時定数にて変化させながら切り換える例を示し、(C)は各速度指令間でベル形時定数にて変化させながら切り換える例を示し、(D)は各速度指令間で指数形時定数にて変化させながら切り換える例を示す。上述のように、速度制御部41―A及び41−Bで用いられる速度指令は、供給用速度指令、蓄電用速度指令及びベース用速度指令の3種類であり、消費電力量計算部17により計算された総消費電力と各閾値との大小関係に応じて、バッファ用モータ制御部16−A及び16−B(図1ではバッファ用モータ制御部16)内の速度制御部41−A及び41−Bに設けられた各速度指令切換部51−A及び51−Bは、これら速度指令間で切り換えを行う。図5では、説明を簡明なものとするために、速度指令切換部51−Aについてのベース用速度指令から蓄電用速度指令への切換えについて図示するが、蓄電用速度指令からベース用速度指令への切換え、ベース用速度指令から供給用速度指令への切換え、供給用速度指令からベース用速度指令への切換えについても同様に適用可能である。また、速度指令切換部51−Bについても同様に適用可能である。
例えば、速度指令切換部51−Aは、バッファ用サーボモータ12を電力供給用回転速度、ベース回転速度及び蓄電用回転速度のそれぞれで回転させるための各速度指令を、各速度指令間でステップ状に切り換えてもよい。各速度指令間でステップ状に切り換えると、蓄電装置10の蓄電及び電力供給の応答性がより高まる。例えば、図5(A)に示すように、速度指令切換部51−Aは、バッファ用サーボモータ12をベース回転速度で回転させるためのベース用速度指令を、蓄電用速度指令にステップ状に切り換える。
また例えば、図5(B)〜図5(D)に示すように、速度指令切換部51−Aは、バッファ用サーボモータ12を電力供給用回転速度、ベース回転速度及び蓄電用回転速度のそれぞれで回転させるための各速度指令を、各速度指令間で切れ目なく連続的に変化させながら切り換えてもよい。各速度指令間の切り換えをステップ状ではなく切れ目なく連続的に変化させると、速度指令が急激に変化しないので、バッファ用サーボモータ12に対する負荷が小さくなる利点がある。例えば、図5(B)に示すように、速度指令切換部51−Aは、バッファ用サーボモータ12をベース回転速度で回転させるためのベース用速度指令を、直線形時定数にて変化させながら蓄電用速度指令にステップ状に切り換える。例えば図5(C)に示すように、速度指令切換部51−Aは、バッファ用サーボモータ12をベース回転速度で回転させるためのベース用速度指令を、ベル形時定数にて変化させながら蓄電用速度指令にステップ状に切り換える。例えば図5(D)に示すように、速度指令切換部51−Aは、バッファ用サーボモータ12をベース回転速度で回転させるためのベース用速度指令を、指数形時定数にて変化させながら蓄電用速度指令にステップ状に切り換える。
なお、第1の実施形態では、総消費電力量に応じてバッファ用サーボモータ12の速度を電力供給用回転速度、蓄電用回転速度またはベース回転速度に切り換えるために、バッファ用モータ制御部16−A及び16−B(図1ではバッファ用モータ制御部16)内に速度指令切換部51−A及び51−Bを設け、この速度指令切換部51−A及び51−Bにより総消費電力量に応じて供給用速度指令、蓄電用速度指令またはベース用速度指令に切り換えるようにした。総消費電力量に応じてバッファ用サーボモータ12の速度を電力供給用回転速度、蓄電用回転速度またはベース回転速度に切り換えるための指令に関する変形例として、バッファ用モータ制御部16−A及び16−B(図1ではバッファ用モータ制御部16)内に位置指令切換部(図示せず)を設け、この位置指令切換部により総消費電力量に応じて供給用位置指令、蓄電用位置指令またはベース用位置指令に切り換えるようにしてもよい。例えば、供給用位置指令、蓄電用位置指令、及びベース用位置指令を、「供給用位置指令の変化量<ベース用位置指令の変化量<蓄電用位置指令の変化量」の関係を満たすようなランプ指令としてそれぞれ設定し、総消費電力量に応じて位置指令切換部にてこれら指令を切り換えればよい。一例を挙げると次の通りである。
供給用位置指令[mm]=実位置[mm]+供給用速度指令[mm/s]/ポジションゲイン[1/s]
蓄電用位置指令[mm]=実位置[mm]+蓄電用速度指令[mm/s]/ポジションゲイン[1/s]
ベース用位置指令[mm]=実位置[mm]+ベース用速度指令[mm/s]/ポジションゲイン[1/s]
このように、総消費電力量に応じて供給用位置指令、蓄電用位置指令またはベース用位置指令に切り換えても、供給用速度指令、蓄電用速度指令またはベース用速度指令を切り換えることと同様の効果を得ることができる。
速度指令の切り換え及び位置指令の切り換えのいずれの実施形態においても、トルク制御部42−A及び42−Bは、蓄電供給電力量計算部18により計算されたバッファ用インバータ13−A及び13−Bごとの蓄電供給可能電力量の内容に応じて、トルク制限値計算部19により計算されたトルク制限値にてトルク指令の上限値及び下限値を変更しながらバッファ用サーボモータ12に対するトルク制御を実行し、電流指令を生成する。
図6は、第1の実施形態によるモータ駆動システムにおける総消費電力量とバッファ用サーボモータの回転速度との関係を例示する図である。図6では、説明を簡明なものとするために、ドライブ用サーボモータ3−Bの減速及び加速を繰り返し実行した場合について図示するが、ドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2についても同様に適用可能である。図6では、ドライブ用サーボモータ3−Bの減速及び加速を繰り返し実行した場合における、消費電力量計算部17により計算された総消費電力量(破線)及びコンバータ14−Bの出力(実線)を上段に示し、バッファ用サーボモータ12の回転速度(実線)及び速度指令(破線)を下段に示している。
図6において、時刻t1までの間、ドライブ用サーボモータ3−Bを減速させると、回生電力が発生し、消費電力量計算部17により計算された総消費電力量(すなわち、ドライブ用サーボモータ3−Bの出力とドライブ用サーボモータ3−Bにおける巻線損失とコンバータ14−Bにおける損失とドライブ用インバータ15−Bにおける損失との和)が減少する。総消費電力量が蓄電閾値を下回ると、電力ピークを低減(カット)すべく、速度指令切換部51−Bは、バッファ用サーボモータ12を蓄電用回転速度で回転させるために、蓄電用速度指令を出力する。バッファ用モータ制御部16−Bは、速度指令切換部51−Bにより設定され蓄電用速度指令とトルク制限値計算部19により計算されたトルク制限値とを用いて、バッファ用インバータ13−Bの電力変換動作を制御し、これにより、バッファ用サーボモータ12の回転速度は徐々に上昇し、フライホイール11の回転エネルギーとして蓄積される。
時刻t1で、消費電力量計算部17により計算された総消費電力量が蓄電閾値を上回ると、速度指令切換部51−Bは、バッファ用サーボモータ12をベース回転速度で回転させるために、ベース用速度指令を出力する。その結果、バッファ用サーボモータ12は減速し、回生電力が発生する。バッファ用サーボモータ12がベース回転速度に戻るまで(時刻t2)、直流リンク4−Bへ供給された直流電力は、発生した交流の回生電力はバッファ用インバータ13−Bにより直流電力に変換されて直流リンク4−Bへ供給され、さらにコンバータ14−Bにより交流電力に変換されて電源2側へ戻される。
その後、ドライブ用サーボモータ3−Bを加速させると、総消費電力が徐々に上昇する。総消費電力が供給閾値を超えると(時刻t3)、電力ピークを低減(カット)すべく、速度指令切換部51−Bは、バッファ用サーボモータ12を供給用回転速度で回転させるために、供給用速度指令を出力する。バッファ用モータ制御部16−Bは、速度指令切換部51−Bにより設定され供給用速度指令とトルク制限値計算部19により計算されたトルク制限値とを用いて、バッファ用インバータ13−Bの電力変換動作を制御し、これにより、バッファ用サーボモータ12の回転速度は徐々に低下し、回生電力が発生する。発生した交流の回生電力はバッファ用インバータ13−Bにより直流電力に変換されて直流リンク4−Bへ供給される。直流リンク4−Bへ供給された直流電力は、ドライブ用インバータ15−Bにより交流電力に変換され、ドライブ用サーボモータ3−Bの駆動電力として消費される。
その後、例えばドライブ用サーボモータ3−Bが減速すると、回生電力が発生し、総消費電力は徐々に低下する。総消費電力が徐々に低下し、供給閾値を下回ると(時刻t4)、速度指令切換部51−Bは、バッファ用サーボモータ12をベース回転速度で回転させるために、ベース用速度指令を出力する。バッファ用モータ制御部16−Bは、速度指令切換部51−Bにより設定されベース用速度指令とトルク制限値計算部19により計算されたトルク制限値とを用いて、バッファ用インバータ13−Bの電力変換動作を制御する。バッファ用サーボモータ12がベース回転速度に戻るまで(時刻t5)、コンバータ14−Bを介して電源2側から供給されたエネルギーにより、バッファ用サーボモータ12の回転速度は徐々に上昇する。
時刻t5で、バッファ用サーボモータ12が一定のベース回転速度で回転することになると、蓄電装置10による蓄電は終わり、ドライブ用サーボモータ22で回生された電力により、総消費電力量は徐々に減少する。総消費電力量が蓄電閾値を下回ると(時刻t6)、電力ピークを低減(カット)すべく、速度指令切換部51−Bは、バッファ用サーボモータ12を蓄電用回転速度で回転させるために、蓄電用速度指令を出力する。バッファ用モータ制御部16−Bは、速度指令切換部51−Bにより設定され蓄電用速度指令とトルク制限値計算部19により計算されたトルク制限値とを用いて、バッファ用インバータ13−Bの電力変換動作を制御し、これにより、バッファ用サーボモータ12の回転速度は徐々に上昇し、フライホイール11の回転エネルギーとして蓄積される。以後、この動作が実行される。
上述の実施形態では、速度指令切換部51−Bは、総消費電力量が蓄電閾値を下回ったときはベース速度指令から蓄電用速度指令に切り換えて蓄電装置10に蓄電した後、総消費電力量が蓄電閾値を上回った時点で、蓄電装置10による直流電力の蓄電が必要なくなったと判断して蓄電用速度指令からベース速度指令に切り換えていた。同様に、速度指令切換部51−Bは、総消費電力量が供給閾値を超えたときはベース速度指令から供給用速度指令に切り換えて蓄電装置10から直流リンク4−Bへ直流電力を供給した後、総消費電力量が供給閾値を下回った時点で、蓄電装置10による直流電力の供給が必要なくなった判断として供給用速度指令からベース速度指令に切り換えていた。
上記実施形態を変形して、蓄電装置10による直流電力の蓄電または供給が必要なくなった時点ですぐに蓄電用速度指令または供給用速度指令からベース速度指令へ切り換えるのではなく、蓄電装置10による直流電力の蓄電または供給が必要なくなった時点からある程度時間的に余裕を持たせてベース速度指令へ切り換えるようにしてもよい。この実施形態について図7を参照して説明する。
図7は、さらなる実施形態によるモータ駆動システムにおける総消費電力量とバッファ用サーボモータの回転速度との関係を例示する図である。図7では、説明を簡明なものとするために、ドライブ用サーボモータ3−Bの減速及び加速を繰り返し実行した場合について図示するが、ドライブ用サーボモータ3−A1及び3−A2についても同様に適用可能である。図7において、ドライブ用サーボモータ3−Bの減速及び加速を繰り返し実行した場合における、消費電力量計算部17により計算された総消費電力量(破線)及びコンバータ14−Bの出力(実線)を上段に示し、バッファ用サーボモータ12の回転速度(実線)及び速度指令(破線)を下段に示している。さらなる実施形態では、バッファ用サーボモータ12の回転速度を電力供給用回転速度からベース回転速度に戻すための第3の閾値として、供給閾値(第1の閾値)より小さくかつ蓄電閾値(第2の閾値)よりも大きい上側ベース回復閾値を設定する。また、バッファ用サーボモータ12の回転速度を蓄電用回転速度からベース回転速度に戻すための第4の閾値として、蓄電閾値(第2の閾値)より大きくかつ上側ベース回復閾値(第3の閾値)より小さい下側ベース回復閾値を設定する。すなわち、本実施形態では、バッファ用モータ制御部16−Bは、バッファ用サーボモータ12が電力供給用回転速度で回転するようバッファ用インバータ13−Bの電力変換を制御しているときにおいて、総消費電力量が上側ベース回復閾値(第3の閾値)を下回った場合、バッファ用サーボモータ12がベース回転速度で回転するよう、バッファ用インバータ13−Bの電力変換を制御する。このため、バッファ用モータ制御部16−B内の速度指令切換部51−Bは、バッファ用サーボモータ12が電力供給用回転速度で回転するようバッファ用インバータ13−Bの電力変換を制御しているときにおいて、総消費電力量が上側ベース回復閾値(第3の閾値)を下回った場合、供給用速度指令からベース用速度指令に切り換える。また、バッファ用モータ制御部16−Bは、バッファ用サーボモータ12が蓄電用回転速度で回転するようバッファ用インバータ13−Bの電力変換を制御しているときにおいて、総消費電力量が下側ベース回復閾値(第4の閾値)を超えた場合、バッファ用サーボモータ12がベース回転速度で回転するよう、バッファ用インバータ13−Bの電力変換を制御する。このため、バッファ用モータ制御部16−B内の速度指令切換部51−Bは、バッファ用サーボモータ12が蓄電用回転速度で回転するようバッファ用インバータ13−Bの電力変換を制御しているときにおいて、総消費電力量が下側ベース回復閾値(第4の閾値)を超えた場合、蓄電用速度指令からベース用速度指令に切り換える。
例えば図7において、時刻t1より前の、速度指令切換部51−Bで設定された蓄電用速度指令に従いバッファ用サーボモータ12は蓄電用回転速度で回転しているときにおいて、総消費電力量が徐々に増加して蓄電閾値を超えても、速度指令切換部51−Bで設定された蓄電用速度指令は維持される。総消費電力量がさらに増加して時刻t1で下側ベース回復閾値(第4の閾値)を超えたとき、速度指令切換部51−Bは、蓄電用速度指令からベース用速度指令に切り換える。その結果、バッファ用サーボモータ12は減速し、回生電力が発生する。バッファ用サーボモータ12がベース回転速度に戻るまで(時刻t2)、直流リンク4−Bへ供給された直流電力は、発生した交流の回生電力はバッファ用インバータ13−Bにより直流電力に変換されて直流リンク4−Bへ供給され、さらにコンバータ14−Bにより交流電力に変換されて電源2側へ戻される。
また、時刻t3から時刻t4までの間の、速度指令切換部51−Bで設定された供給用速度指令に従いバッファ用サーボモータ12は電力供給用回転速度で回転しているときにおいて、総消費電力量が徐々に低下して供給閾値を下回っても、速度指令切換部51−Bで設定された供給用速度指令は維持される。総消費電力量がさらに低下して時刻t4で上側ベース回復閾値(第3の閾値)を下回ったとき、速度指令切換部51−Bは、供給用速度指令からベース用速度指令に切り換える。その結果、バッファ用サーボモータ12は、バッファ用サーボモータ12がベース回転速度に戻るまで(時刻t5)、コンバータ14−Bを介して電源2側から供給されたエネルギーを用いてバッファ用サーボモータ12の回転速度は徐々に上昇する。
続いて、第2の実施形態によるモータ駆動システムについて説明する。上述の第1の実施形態では、バッファ用インバータごとに、消費電力量計算部により計算される総消費電力量に応じて速度指令を切り換えて速度制御を行い、蓄電供給電力量計算部により計算される蓄電供給可能電力量の内容に応じてトルク制限値にてトルク指令の上限値及び下限値を変更しながらトルク制御を行った。これに対し、第2の実施形態では、バッファ用インバータごとに、蓄電供給可能電力量計算部により計算される当該バッファ用インバータについての蓄電供給可能電力量とバッファ用モータの回転速度とに基づいて生成されたバッファ用サーボモータに対するトルク指令を生成し、このトルク指令を用いてトルク制御を行う。
図8は、第2の実施形態によるモータ駆動システムのブロック図である。第1の実施形態同様、一例として、電源2に接続されたモータ駆動システム1により3個のドライブ用サーボモータ3−A1、3−A2及び3−Bを制御する場合について説明する。
図8に示すように、第2の実施形態によるモータ駆動システム1は、フライホイール11と、バッファ用サーボモータ12と、バッファ用インバータ13−A及び13−Bと、コンバータ14−A及び14−Bと、ドライブ用インバータ15−A1、15−A2及び15−Bと、バッファ用モータ制御部16’と、消費電力量計算部17と、蓄電供給電力量計算部18とを備える。また、モータ駆動システム1は、一般的なモータ駆動システムと同様、ドライブ用インバータ15−A1、15−A2及び15−Bを制御するためのドライブ用モータ制御部21を有する。
フライホイール11、バッファ用サーボモータ12、バッファ用インバータ13−A及び13−B、コンバータ14−A及び14−B、ドライブ用インバータ15−A1、15−A2及び15−B、消費電力量計算部17、及び蓄電供給電力量計算部18については、第1の実施形態と同様であるので、当該回路構成要素についての詳細な説明は省略する。
第2の実施形態では、バッファ用モータ制御部16’は、バッファ用インバータ13−A及び13−Bごとに、蓄電供給可能電力量計算部18により計算される当該バッファ用インバータについての蓄電供給可能電力量と速度検出器32により検出されるバッファ用サーボモータ12の回転速度とに基づいて生成されたバッファ用サーボモータ12に対するトルク指令を用いてトルク制御を行うことで、当該バッファ用インバータが直流リンクから取り込む直流電力量または直流リンクへ出力する直流電力量を調整する。図9を参照してより詳細に説明すると次の通りである。
図9は、第2の実施形態によるモータ駆動システム内の蓄電装置におけるバッファ用サーボモータに対する制御ループを示すブロック図である。
図8のバッファ用モータ制御部16’は、図9ではバッファ用モータ制御部16’−A及び16’−Bが対応する。バッファ用モータ制御部16’−A内のトルク制御部42’−Aは、蓄電供給可能電力量計算部18により計算されるバッファ用インバータ13−Aについての蓄電供給可能電力量と速度検出器32により検出されるバッファ用サーボモータ12の回転速度とに基づいて、下記式8を用いて、バッファ用インバータ13−Aのトルク制御で用いられるトルク指令を作成する。また、バッファ用モータ制御部16’−B内のトルク制御部42’−Bは、蓄電供給可能電力量計算部18により計算されるバッファ用インバータ13−Bについての蓄電供給可能電力量と速度検出器32により検出されるバッファ用サーボモータ12の回転速度とに基づいて、下記式8を用いて、バッファ用インバータ13−Bのトルク制御で用いられるトルク指令を作成する。
バッファ用サーボモータ12に対するトルク指令[Nm]=蓄電供給可能電力量[W]/バッファ用サーボモータ12の回転速度[rad/s] ・・・(8)
バッファ用モータ制御部16’−A内のトルク制御部42’−Aは、バッファ用インバータ13−Aについて式8に従って作成されたトルク指令を用いてバッファ用インバータ13−Aのトルク制御を行い、バッファ用インバータ13−Aに対する電流指令を作成する。バッファ用モータ制御部16’−B内のトルク制御部42’−Bは、バッファ用インバータ13−Bについて式8に従って作成されたトルク指令を用いてバッファ用インバータ13−Bのトルク制御を行い、バッファ用インバータ13−Bに対する電流指令を作成する。
上述のトルク制御部42’−Aに続く電流制御部43−Aは、バッファ用インバータ13−Aに流れる電流をトルク制御部42’−Aにより生成された電流指令に追従させるための駆動指令を生成する。電流制御部43−Aにより生成された駆動指令は、バッファ用インバータ13−Aに送られ、バッファ用インバータ13−Aは、この駆動指令に基づき各スイッチング素子がオンオフ制御され、直流リンク4−Aの直流電力とバッファ用サーボモータ12の駆動電力または回生電力である交流電力との間で電力変換する。また、上述のトルク制御部42’−Bに続く電流制御部43−Bは、バッファ用インバータ13−Bに流れる電流をトルク制御部42’−Bにより生成された電流指令に追従させるための駆動指令を生成する。電流制御部43−Bにより生成された駆動指令は、バッファ用インバータ13−Bに送られ、バッファ用インバータ13−Bは、この駆動指令に基づき各スイッチング素子がオンオフ制御され、直流リンク4−Bの直流電力とバッファ用サーボモータ12の駆動電力または回生電力である交流電力との間で電力変換する。
なお、バッファ用インバータ13−Aまたは13−Bが直流リンク4−Aまたは4−Bから直流電力をバッファ用サーボモータ12側に取り込む必要が無い場合及びバッファ用サーボモータ13−Aまたは13−Bが直流リンク4−Aまたは4−Bへ直流電力を出力する必要が無い場合は、蓄電供給可能電力量計算部18により計算された蓄電供給可能電力量がゼロとなる。この場合、式8によればトルク指令はゼロになるので、バッファ用モータ制御部16’−A及び16’−Bは、トルク制御を行わず、予め規定されたベース回転速度にてバッファ用サーボモータ12を回転させる速度制御のみを実行するようにする。
また、第2の実施形態では、トルク制御のみ行い、速度制御は行っていないので、バッファ用サーボモータ12の回転速度が際限なく上昇または下降し続ける可能性がある。そこで、速度上限値及び速度下限値を予め規定しておき、速度検出器32により検出されたバッファ用サーボモータ12の回転速度が速度上限値を上回った場合及び速度下限値を下回った場合は、バッファ用モータ制御部16’−A及び16’−Bは、トルク制御を行わず、予め規定されたベース回転速度にてバッファ用サーボモータ12を回転させる速度制御のみを実行するようにしてもよい。
上述したバッファ用モータ制御部16、16−A、16−B、16’、16’−A及び16’−B(速度制御部41−A及び41−B、トルク制御部42−A、42−B、42’−A及び42’−B、電流制御部43−A及び43−B、速度指令切換部51−A及び51−B、並びにトルク制限部52−A及び52−Bを含む。以下同様。)、消費電力量計算部17、蓄電供給電力量計算部18、トルク制限値計算部19、並びに比較部20は、例えばドライブ用モータ制御部21とともに数値制御装置100内に設けられる。バッファ用モータ制御部16、16−A、16−B、16’、16’−A及び16’−B、消費電力量計算部17、蓄電供給電力量計算部18、トルク制限値計算部19、並びに比較部20は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。上述の各実施形態では、バッファ用モータ制御部16、16−A、16−B、16’、16’−A及び16’−B、消費電力量計算部17、蓄電供給電力量計算部18、トルク制限値計算部19、並びに比較部20をソフトウェアプログラム形式で構築し、数値制御装置100内の演算処理装置にこのソフトウェアプログラムを動作させて各部の機能を実現している。
またあるいは、バッファ用モータ制御部16、16−A、16−B、16’、16’−A及び16’−B、消費電力量計算部17、蓄電供給電力量計算部18、トルク制限値計算部19、並びに比較部20の機能を実現するソフトウェアプログラム媒体に従って動作するコンピュータを、数値制御装置100とは別個に設けてもよい。またあるいは、バッファ用モータ制御部16、16−A、16−B、16’、16’−A及び16’−B、消費電力量計算部17、蓄電供給電力量計算部18、トルク制限値計算部19、並びに比較部20を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラム媒体を書き込んだ半導体集積回路として実現してもよく、この場合は、当該半導体集積回路を例えば既存の数値制御装置に取り付けることによって、各部の機能が実現される。
本開示の実施形態によれば、フライホイールを回転させるためのバッファ用サーボモータを複数の独立した巻線を有するものとした蓄電装置を用いるので、1巻線タイプのバッファ用サーボモータを用いて蓄電装置を構成する場合に比べて、小型で低コストのモータ駆動システムを実現することができる。ドライブ用サーボモータが設けられた機械(工作機械やロボット)などが大型である場合であっても、小型で低コストのモータ駆動システムを当該機械に組み込むことができる。また、バッファ用サーボモータの巻線ごとに接続された各バッファ用インバータの電力変換を個別に制御するので、各バッファ用インバータによる直流電力の直流リンクからの取り込み(蓄電)及び直流リンクへの出力(給電)を効率よく行うことができ、損失を低減することができる。また、バッファ用サーボモータの回線制御は、速度指令が逐次生成されて行われる速度制御ではなく、蓄電供給可能電力量の内容に応じたトルク制御に基づいて行われるので、制御が容易であり、応答性が高い。また、ドライブ用サーボモータの稼働状態や消費電力に合わせた速度指令の作成が不要であり、バッファ用サーボモータの駆動プログラムを単純化することができる。