以下、この発明の実施の形態に係る電力変換制御システム1について、図面に基づいて説明する。なお、各図において、同一符号は、それぞれ、同一又は相当する部分を示す。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電力変換制御システム1を搭載した車両の概略構成を示す図である。ただし、図1では、この発明に直接関与しない構成要素については、図示を省略している。
実施の形態1に係る電力変換制御システム1は、電力変換装置20とゲートウェイ装置30とを備えている。電力変換制御システム1は、少なくとも電動機を車輪の駆動力源とする車両に搭載されている。
<ゲートウェイ装置30>
ゲートウェイ装置30は、通信装置40及び無線ネットワークを介して、車両の外部のセンタ60から送信された保守データを受信する。センタ60は、各車両の電力変換装置20の状態を集中的に監視、保守するためのサーバである。保守データは、電力変換装置20を保守するためのデータでる。保守データには、電力変換装置20(電力変換制御装置22)のソフトウェアを更新するためのアップデートデータ、電力変換装置20を監視、診断するための診断データが含まれる。診断データには、電力変換装置20が電力変換を行った累積時間、電力変換装置20が充電する蓄電装置5の充電容量、電力変換装置20のスイッチング素子等の構成部品の異常情報等の電力変換装置20に関わる各種状態を返答することを要求するデータが含まれる。なお、通信装置40は、ゲートウェイ装置30と一体化されてもよいし、車内に持ち込まれた携帯電話等の情報通信装置とされ、ゲートウェイ装置30と通信可能に接続されてもよい。
図1に示すように、ゲートウェイ装置30は、保守データ受信部31、保守データ送信部32、及び応答受信部33等の機能部を備えている。保守データ受信部31は、センタ60から送信された保守データを受信する。保守データ送信部32は、受信した保守データを、複数のフレームに分割し、分割した各フレームのデータを電力変換装置20等の対象の車載機器に送信する。応答受信部33は、電力変換装置20から送信された保守データに対する応答データを受信し、センタ60に送信する。
ゲートウェイ装置30の各機能部31〜33等は、ゲートウェイ装置30が備えた処理回路により実現される。図2に示すように、ゲートウェイ装置30は、処理回路として、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置80(コンピュータ)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の演算処理装置80とデータのやり取りをする記憶装置81、演算処理装置80と通信装置40とをデータ通信可能に接続する通信インターフェイス82、電力変換制御装置22等の車両内の各電子機器と通信を行うための通信回路83等を備えている。通信回路83は、電力変換制御装置22等の車載機器と通信線を介して通信プロトコル(本例では、CAN(Controller Area Network))に基づくデータ通信を行う。CANは、CSMA/CA方式(Carrier Sense Multiple Access / Collision Avoidance)の通信プロトコルである。ゲートウェイ装置30の各機能は、演算処理装置80が、記憶装置81に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行し、記憶装置81、通信インターフェイス82、通信回路83等のゲートウェイ装置30の他のハードウェアと協働することにより実現される。
<電力変換装置20>
電力変換装置20は、交流電力を直流電力に変換する。電力変換装置20は、コネクタ41を介して、車両の外部に設けられた交流電源6に接続される。電力変換装置20は、交流電源6から供給された交流電力を直流電力に変換して、車両に設けられた蓄電装置5を充電する。
電力変換装置20は、スイッチング素子を備えた電力変換回路21と、スイッチング素子をオンオフ制御する電力変換制御装置22と、を備えている。本実施の形態では、図3に示すように、電力変換回路21は、交流電力を整流する全波整流回路23と、整流された直流電力を昇圧する昇圧チョッパ回路24とを備えている。全波整流回路23は、直列接続された2つの整流素子29(本例では整流ダイオード29)を2組備えている。昇圧チョッパ回路24は、チョークコイル25、スイッチング素子26、整流ダイオード27、及び平滑コンデンサ28を備えている。スイッチング素子26には、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が用いられる。なお、電力変換回路21には、図3の例に限らず、公知の様々な種類のものを用いることができる。
図1に示すように、電力変換制御装置22は、交流電圧検出部51、ゼロクロス検出部52、スイッチング制御部53、フロー制御情報送信部54、保守データ受信部55、及び保守データ処理部56等の機能部を備えている。
電力変換制御装置22の各機能部51〜56等は、電力変換制御装置22が備えた処理回路により実現される。電力変換制御装置22は、図4に示すように、処理回路として、CPU等の演算処理装置90(コンピュータ)、RAM、ROM等の演算処理装置90とデータのやり取りをする記憶装置91、演算処理装置90に外部の信号を入力する入力回路92、及び演算処理装置90から外部に信号を出力する出力回路93、及び演算処理装置90がゲートウェイ装置30等の車両内の各電子機器とデータ通信を行うための通信回路94等を備えている。演算処理装置90として、同じ種類のもの又は異なる種類のものが複数備えられ、各処理が分担して実行されてもよい。入力回路92は、交流電源6から入力された交流電圧を検出する電圧センサ95、交流電源6から入力された入力電流を検出する電流センサ96等の各種のセンサが接続され、これらセンサの出力信号を演算処理装置90に入力するA/D変換器等を備えている。出力回路93は、スイッチング素子26のゲート端子のオンオフ駆動信号を出力するゲート駆動回路等を備えている。通信回路94は、ゲートウェイ装置30等の車載機器と通信線を介して通信プロトコル(本例では、CAN)に基づくデータ通信を行う。
交流電圧検出部51は、電圧センサ95の出力信号に基づいて、交流電源6からコネクタ41に入力された交流電圧を検出する。そして、ゼロクロス検出部52は、交流電圧検出部51で検出した交流電圧に基づいて、交流電圧がゼロボルトに交差した時点であるゼロクロスポイントを検出する。ゼロクロス検出部52は、ゼロクロスポイントとして、タイマ機能により、交流電圧がゼロボルトに交差した時刻を検出する。
また、ゼロクロス検出部52は、検出したゼロクロスポイントに基づいて、ゼロクロスポイントの時間間隔を算出する。ゼロクロスポイントの時間間隔とは、隣り合うゼロクロスポイント間の時間間隔を指している。このゼロクロスポイント時間間隔は、交流電源6の周波数により変化する。例えば、交流電源6が50Hzの場合は、ゼロクロスポイント時間間隔は10msとなり、交流電源6が60Hzの場合は、ゼロクロスポイント時間間隔は8.33ms(小数第2以下四捨五入)となる。
スイッチング制御部53は、検出したゼロクロスポイントに基づいて、スイッチング素子をオンオフ制御する。本実施の形態では、図5に示すように、スイッチング制御部53は、検出したゼロクロスポイントに基づいて、交流電源6から入力される電流の目標電流(基準電流波形)を算出する。スイッチング制御部53は、電流センサ96の出力信号に基づいて、交流電源6から入力された電流を検出する。そして、スイッチング制御部53は、電流検出値が、目標電流に近づくように、スイッチング素子26をPWM制御(Pulse Width Modulation)によりオンオフ制御する。
本実施の形態では、スイッチング制御部53は、力率改善のために、交流電圧の波形と相似の波形になる目標電流を算出する。すなわち、スイッチング制御部53は、ゼロクロスポイントにおいてゼロになる、ゼロクロスポイントの時間間隔の周期を有する正弦波の目標電流を算出する。
ゼロクロスポイントの検出誤差が生じると、目標電流の設定誤差が生じ、力率が低下する。ゲートウェイ装置30から保守データを受信している時に、ゼロクロスポイントが生じても、受信処理が継続されるので、ゼロクスポイントの検出処理の実行が遅れる。これにより、受信処理が終了するまでの時間分、ゼロクロスポイントの検出が遅れ、ゼロクスポイントの検出誤差が生じる。そこで、保守データの受信タイミングとゼロクロスポイントとが重なることを抑制できることが望まれる。
<保守データの送受信の基本動作>
まず、保守データの送受信の基本動作について説明する。上記のように、ゲートウェイ装置30の保守データ送信部32は、受信した保守データを、複数のフレームに分割し、分割した各フレームのデータを電力変換装置20に送信する。本実施の形態では、保守データ送信部32は、保守データの伝送を開始する際に、伝送を開始する保守データの情報を含む開始フレームFFを電力変換装置20に送信する開始フレーム送信部34と、開始フレームFFに応答して電力変換装置20から送信されたフロー制御情報FCにおいて指定されたタイミングで、各フレームのデータを電力変換装置20に順番に送信するデータ送信部35と、を備えている。
一方、電力変換制御装置22は、開始フレームFFを受信した後、各フレームのデータの送信タイミングを指令するフロー制御情報FCを算出してゲートウェイ装置30に送信するフロー制御情報送信部54と、ゲートウェイ装置30から送信された各フレームのデータを受信する保守データ受信部55と、を備えている。
<CAN通信仕様に従った基本動作>
本実施の形態では、保守データの送受信は、ISO15765に規定されたCANダイアグ通信の通信仕様に従って行われる。以下で、送受信の基本動作について、詳細に説明する。
ISO15765の規定に従って、図6に示すようにデータ送信側となるゲートウェイ装置30とデータ受信側となる電力変換装置20(電力変換制御装置22)との間の通信が行われる。ISO15765では、フレーム単位でデータ通信を行う。1つの後続フレームCFには、7byte(56bit)の保守データを含ませることができる。なお、開始フレームFFには、6byteの保守データを含ませることができる。1つのフレームのデータ長は、ヘッダ等を含めて最小で108bitとなり、データの値に応じて108bitから多少延びる。本実施の形態では通信速度が500kbpsであるため、1つのフレームを送受信する時間は、最小で216μsecとなる。よって、保守データ送信部32は、受信した保守データを、1フレーム当たり7byte(開始フレームは6byte)に分割し、各フレームのデータを電力変換装置20に順番に送信する。すなわち、本実施の形態では、各フレームに分割される保守データのデータ量は、予め定まっており、各フレームの送受信時間は、予め定まっている。
まず、ゲートウェイ装置30の開始フレーム送信部34が、伝送を開始する保守データの情報を含む開始フレームFF(First Frame)を電力変換制御装置22に送信する。開始フレームFFには、送信しようとする保守データの合計データ長の情報が含まれる。また、開始フレームFFには、保守データの最初の6byteが含まれる。
電力変換制御装置22のフロー制御情報送信部54は、開始フレームFFに応答して、各フレームのデータの送信タイミングを指令するフロー制御情報FC(Flow Control)のフレームをゲートウェイ装置30へ送信する。フロー制御情報FCの算出ロジックについては後述する。図7に示すように、フロー制御情報FCには、受信可能状態FS、受信可能なフレーム数BS、フレーム間の受信間隔STminのパラメータが含まれる。
受信可能状態FSは、「0」、「1」、「2」のいずれかの値に設定される。「0」は、「連続受信可能」であり、「1」は、受信できないために送信を行わずに待機することを要求する「待機」であり、「2」は、データ量が大きすぎて受信できないことを示す「オーバーフロー」である。受信可能なフレーム数BSが「0」である場合は、無制限に連続受信可能であることを表し、「1」から「255」である場合は、設定値のフレーム数を連続受信可能であることを表す。
受信間隔STminが「0」である場合は、フレームとフレームとの時間間隔を空けずに、連続して受信可能であり、「1」から「255」である場合は、フレームとフレームとの間に設定値の時間間隔を空けて受信可能であることを表す。例えば、受信間隔STminが「100」である場合は、フレームとフレームとの間を100ms空ければ受信可能であることを表す。しかし、受信間隔STminが長くなると、送信完了までにかかる時間が長くなるため、通常は、受信間隔STmin=0(0ms)に設定されている。
ゲートウェイ装置30の保守データ送信部32は、受信したフロー制御情報FCに従って、2つ目以降の後続フレームCF(Consecutive Frame)のデータを送信する。
次に、図8を参照して、保守データの送受信の流れについて説明する。まず、フロー制御情報FCにおいて「待機」が指令される場合について説明する。ゲートウェイ装置30から電力変換制御装置22に開始フレームFFが送信された後、電力変換制御装置22のフロー制御情報送信部54が、「FS=1、BS=0、STmin=0」のフロー制御情報FCをゲートウェイ装置30へ送信する。ここで、FS=1は、「待機」である。ゲートウェイ装置30のデータ送信部35は、受信したフロー制御情報FCが「待機」の指令であるので、保守データの後続フレームCFを送信せずに、次のフロー制御情報FCを待つ。
電力変換制御装置22のフロー制御情報送信部54は、保守データを受信可能になったと判定したときに、「FS=0、BS=0、STmin=0」のフロー制御情報FCをゲートウェイ装置30へ送信する。ここで、FS=0は、「連続受信可能」であり、BS=0は、「無制限に連続受信可能」であり、STmin=0は、「フレーム間の時間間隔を空けずに受信可能」である。ゲートウェイ装置30のデータ送信部35は、「待機」の指令が解除(FS=0)されたので、BS=0とSTmin=0の指示に従い、全ての保守データの後続フレームCF#1、#2、#3・・・#nを送信間隔0msで順番に連続送信する。
次に、フロー制御情報FCにおいて連続送信回数と送信間隔が指定される場合について説明する。ゲートウェイ装置30から電力変換制御装置22へ開始フレームFFが送信されると、電力変換制御装置22のフロー制御情報送信部54が、「FS=0、BS=3、STmin=10」のフロー制御情報FCをゲートウェイ装置30へ送信する。ここで、BS=3は、「3つのフレームを連続受信可能」であり、STmin=10は、「10msのフレーム間の時間間隔を空けて受信可能」である。ゲートウェイ装置30のデータ送信部35は、BS=3とSTmin=10の指示に従い、3つの保守データの後続フレームCF#1、#2、#3を、送信間隔10msを空けて順番に連続送信した後、次のフロー制御情報FCを待つ。電力変換制御装置22のフロー制御情報送信部54は、後続フレームCFを3回受信した後、「FS=0、BS=0、STmin=5」のフロー制御情報FCをゲートウェイ装置30へ送信する。ゲートウェイ装置30のデータ送信部35は、BS=0とSTmin=5の指示に従い、残りの全ての保守データの後続フレームCF#4、#5・・・#nを、送信間隔5msを空けて順番に連続送信する。
<ゼロクロスポイントを避けるフロー制御情報FCの算出>
本実施の形態では、フロー制御情報送信部54は、開始フレームFFを受信した後、検出したゼロクロスポイント及び各フレームのデータの送信時間に基づいて、ゼロクロスポイントを検出するタイミングと各フレームのデータを受信するタイミングとが重ならないように、フロー制御情報FCを算出してゲートウェイ装置30に送信する。
このゼロクロスポイントを避けるフロー制御情報FCの算出処理の詳細について、図9のフローチャートを参照して説明する。まず、ステップS510で、電力変換制御装置22のゼロクロス検出部52は、上記のように、ゼロクロスポイント(時刻)を検出する。
保守データ受信部55は、ゲートウェイ装置30から送信された開始フレームFFを受信する。そして、ステップS520において、フロー制御情報送信部54は、開始フレームFFを受信した場合は、ステップS530に進み、開始フレームFFを受信していない場合は、処理を終了する。
フロー制御情報送信部54は、開始フレームFFを受信した場合は(ステップS520:YES)、ステップS530で、ステップS510で検出されたゼロクロスポイント及び各フレームのデータの送信時間に基づいて、次のゼロクロスポイントまでに、予め設定された判定数以上のフレーム数のデータを受信できるか否かを判定する。判定数は、1以上の自然数に設定される。
各フレームのデータの送信時間は、上述したように、予め設定されており、本実施の形態のISO15765では、最小で216μsecとなる。フロー制御情報送信部54は、過去のゼロクロスポイント(時刻)から、次のゼロクロスポイント(時刻)を予測する。フロー制御情報送信部54は、開始フレームFFを受信した現在の時刻から、次のゼロクロスポイント(時刻)までの時間間隔を算出し、算出した時間間隔からフロー制御情報FCのフレームの送信時間を減算した値を、各フレームのデータの送信時間(本例では、216μsec)にフレーム間の受信間隔STmin(本例では0)を加算した値で除算し、除算値の小数点以下を切り捨てた値を、次のゼロクロスポイントまでに受信可能なフレーム数として算出する。この時、各フレームの送信時間の変動、処理遅れ等を考慮して、受信可能なフレーム数が少なめに計算されるように、データの送信時間、又は次のゼロクロスポイント(時刻)までの時間間隔にマージンを設けてもよい。そして、フロー制御情報送信部54は、算出した受信可能なフレーム数が、判定数以上であるか否かを判定する。
フロー制御情報送信部54は、次のゼロクロスポイントまでに判定数以上のフレーム数のデータを受信できると判定した場合(ステップS530:YES)はステップS540に進み、次のゼロクロスポイントまでの時間及び各フレームのデータの送信時間に基づいて、次のゼロクロスポイントまでに受信可能なフレーム数を算出し、当該受信可能なフレーム数のデータを送信することを要求する送信指令をフロー制御情報FCとしてゲートウェイ装置30に送信する。受信可能なフレーム数の算出は、ステップS530の処理と同様であるので説明を省略する。本実施の形態では、フロー制御情報送信部54は、フロー制御情報FCにおいて、受信可能状態FSに「連続受信可能」であることを示す「0」を設定し、受信可能なフレーム数BSに「算出した受信可能なフレーム数」を設定し、フレーム間の受信間隔STminに「0」を設定する。
図9には示していないが、ゲートウェイ装置30の保守データ送信部32は、送信指令のフロー制御情報FCを受信した場合は、要求されたフレーム数のデータを順番に送信する。本実施の形態では、保守データ送信部32は、受信可能状態FSが「0」である場合に、受信可能なフレーム数BSの後続フレームCFを、受信間隔STminの間隔で、順番に送信する。そして、電力変換制御装置22の保守データ受信部55は、送信された後続フレームCFを受信する。
続くステップS560で、保守データ受信部55は、全ての保守データを受信したか否かを判定する。保守データ受信部55は、これまでに受信した各フレームに含まれる保守データの合計が、開始フレームFFに含まれていた保守データの合計データ長に到達したか否かを判定する。全ての保守データを受信した場合は、処理を終了し、全ての保守データを受信していない場合は、ステップS570に進む。
ステップS570で、保守データ受信部55は、フロー制御情報FCで指令した受信可能なフレーム数BSのフレームを受信したか否かを判定する。保守データ受信部55は、受信可能なフレーム数BSのフレームを受信した場合は、ステップS580に進み、受信可能なフレーム数BSのフレームを受信していない場合は、ステップS560へ戻り、開始フレームFFに含まれていた保守データの合計データ長に到達するか、受信可能なフレーム数BSのフレームを受信するまで繰り返す。
一方、フロー制御情報送信部54は、次のゼロクロスポイントまでに判定数以上のフレーム数のデータを受信できないと判定した場合(ステップS530:NO)はステップS550に進み、各フレームのデータの送信を行わずに待機することを要求する待機指令をフロー制御情報FCとしてゲートウェイ装置30に送信し、その後ステップS580に進む。本実施の形態では、フロー制御情報送信部54は、フロー制御情報FCにおいて、受信可能状態FSに「待機」を示す「1」を設定し、受信可能なフレーム数BS、フレーム間の受信間隔STminには、任意の値、例えば、「0」を設定する。
図9には示していないが、保守データ送信部32は、待機指令のフロー制御情報FCを受信した場合は、各フレームのデータの送信を行わずに待機する。本実施の形態では、保守データ送信部32は、受信可能状態FSが「1」である場合は、後続フレームCFを送信せずに、待機する。
ステップS580で、フロー制御情報送信部54は、ゼロクロスポイントを経過したか否かの判定を行う。フロー制御情報送信部54は、ゼロクロスポイントを経過した場合は、ステップS590に進み、ゼロクロスポイントを経過していない場合は、ゼロクロスポイントを経過するまで、ステップS580を繰り返す。
ステップS590で、フロー制御情報送信部54は、次のゼロクロスポイントまでの時間及び各フレームのデータの送信時間に基づいて、次のゼロクロスポイントまでに受信可能なフレーム数を算出し、当該受信可能なフレーム数のデータを送信することを要求する送信指令をフロー制御情報FCとしてゲートウェイ装置30に送信する。
本実施の形態では、フロー制御情報送信部54は、今回及び過去のゼロクロスポイント(時刻)に基づいて、今回のゼロクロスポイントから次のゼロクロスポイントまでの時間間隔を算出し、算出した時間間隔からフロー制御情報FCのフレームの送信時間を減算した値を、各フレームのデータの送信時間(本例では、216μsec)にフレーム間の受信間隔STmin(本例では0)を加算した値で除算し、除算値の小数点以下を切り捨てた値を、次のゼロクロスポイントまでに受信可能なフレーム数として算出する。この時、データの送信時間、又はゼロクロスポイント間の時間間隔にマージンを設けてもよい。
そして、フロー制御情報送信部54は、フロー制御情報FCにおいて、受信可能状態FSに「連続受信可能」であることを示す「0」を設定し、受信可能なフレーム数BSに「算出した受信可能なフレーム数」を設定し、フレーム間の受信間隔STminに「0」を設定する。
図9には示していないが、ゲートウェイ装置30の保守データ送信部32は、送信指令のフロー制御情報FCを受信した場合は、要求されたフレーム数のデータを順番に送信する。本実施の形態では、保守データ送信部32は、受信可能状態FSが「0」である場合に、受信可能なフレーム数BSの後続フレームCFを、受信間隔STminの間隔で、順番に送信する。そして、電力変換制御装置22の保守データ受信部55は、送信された後続フレームCFを受信する。
続くステップS600で、保守データ受信部55は、全ての保守データを受信したか否かを判定する。保守データ受信部55は、これまでに受信した各フレームに含まれる保守データの合計が、開始フレームFFに含まれていた保守データの合計データ長に到達したか否かを判定する。全ての保守データを受信した場合は、処理を終了し、全ての保守データを受信していない場合は、ステップS610に進む。
ステップS610で、保守データ受信部55は、フロー制御情報FCで指令した受信可能なフレーム数BSのフレームを受信したか否かを判定する。保守データ受信部55は、受信可能なフレーム数BSのフレームを受信した場合は、ステップS580に戻り、受信可能なフレーム数BSのフレームを受信していない場合は、ステップS600へ戻り、開始フレームFFに含まれていた保守データの合計データ長に到達するか、受信可能なフレーム数BSのフレームを受信するまで繰り返す。よって、フロー制御情報送信部54は、開始フレームFFを受信した後、全ての保守データを受信するまで、ゼロクロスポイントを経過する毎に、ステップS590で、フロー制御情報FCを算出し、ゲートウェイ装置30に送信する。
<送受信挙動の例>
図10に、図9のフローチャートの処理による、保守データの送受信挙動の例を示す。図10の例では、後続フレームCFの全フレーム数が14であり、フレーム間の受信間隔STminが1msであり、交流電源6が50Hzであり、ゼロクロスポイント間の時間間隔が10msである場合を示している。
まず、フロー制御情報送信部54は、開始フレームFF受信したとき、次のゼロクロスポイントまで4msであるため、(4−0.216)÷(0.216+1)=3.11の演算により、3つの後続フレームCFを受信できると判定し、3に設定された判定数以上であるので、フロー制御情報FCに、FS=0(連続受信可能)、BS=3(受信可能なフレーム数)、STmin=1(受信間隔)を設定してゲートウェイ装置30へ送信する。ゲートウェイ装置30の保守データ送信部32は、フロー制御情報FCに従って、3つの後続フレームCF#1、♯2、♯3を1ms間隔で順番に送信する。そして、保守データ受信部55は、送信された3つの後続フレームCF#1、♯2、♯3を受信する。
電力変換制御装置22は、後続フレームCF#3を受信したあと、ゼロクロス検出部52によるゼロクロスポイントの検出処理を受信処理による処理遅れなく実行し、ゼロクロスポイントが経過するのを待つ。フロー制御情報送信部54は、ゼロクロスポイントが経過したと判断すると、次のゼロクロスポイントまで10msであるため、(10−0.216)÷(0.216+1)=8.04の演算により、8つの後続フレームCFを受信できると判定し、フロー制御情報FCに、FS=0(連続受信可能)、BS=8(受信可能なフレーム数)、STmin=1(受信間隔)を設定してゲートウェイ装置30へ送信する。ゲートウェイ装置30の保守データ送信部32は、フロー制御情報FCに従って、8つの後続フレームCF#4から♯11を、1ms間隔で順番に送信する。そして、保守データ受信部55は、送信された8つの後続フレームCF#4から♯11を受信する。なお、フロー制御情報送信部54は、送信時間の変動、処理遅れ等に対するマージンを考慮して、7つの後続フレームCFを受信できると判定してもよい。
電力変換制御装置22は、後続フレームCF#11を受信したあと、ゼロクロス検出部52によるゼロクロスポイントの検出処理を処理遅れなく実行し、ゼロクロスポイントが経過するのを待つ。フロー制御情報送信部54は、ゼロクロスポイントが経過したと判断すると、次のゼロクロスポイントまで10msであるため、(10−0.216)÷(0.216+1)=8.04の演算により、8つの後続フレームCFを受信できると判定し、フロー制御情報FCに、FS=0(連続受信可能)、BS=8(受信可能なフレーム数)、STmin=1(受信間隔)を設定してゲートウェイ装置30へ送信する。ゲートウェイ装置30の保守データ送信部32は、フロー制御情報FCに従って、残りの3つの後続フレームCF#12から♯14を、1ms間隔で順番に送信する。そして、保守データ受信部55は、送信された3つの後続フレームCF#12から♯14を受信し、受信した保守データの合計が、開始フレームFFに含まれていた保守データの合計データ長に到達したため、保守データの受信処理を終了する。
このように、ゼロクロスポイントを検出するタイミングと各フレームのデータを受信するタイミングとが重ならないようにでき、ゼロクロスポイントの検出誤差を抑制できる。よって、検出したゼロクロスポイントに基づくスイッチング素子のオンオフ制御の制御精度が低下することができ、電力変換装置20の力率が低下することを抑制できる。
次に、図11に、別の送受信挙動の例を示す。図11の例では、後続フレームCFの全フレーム数が11であり、フレーム間の受信間隔STminが1msであり、交流電源6が60Hzであり、ゼロクロスポイント間の時間間隔が8.33msである場合を示している。
まず、フロー制御情報送信部54は、開始フレームFF受信したとき、次のゼロクロスポイントまで2msであるため、(2−0.216)÷(0.216+1)=1.46の演算により、1つの後続フレームCFを受信できると判定し、3に設定された判定数未満であるので、フロー制御情報FCにFS=1(待機)を設定してゲートウェイ装置30へ送信する。ゲートウェイ装置30の保守データ送信部32は、フロー制御情報FCの待機の指令に従って、次にフロー制御情報FCを受信するまで、後続フレームCFを送信せずに待機する。
電力変換制御装置22は、ゼロクロス検出部52によるゼロクロスポイントの検出処理を処理遅れなく実行し、ゼロクロスポイントが経過するのを待つ。フロー制御情報送信部54は、ゼロクロスポイントが経過したと判断すると、次のゼロクロスポイントまで8.33msであるため、(8.33−0.216)÷(0.216+1)=6.67の演算により、6つの後続フレームCFを受信できると判定し、フロー制御情報FCに、FS=0(連続受信可能)、BS=6(受信可能なフレーム数)、STmin=1(受信間隔)を設定してゲートウェイ装置30へ送信する。ゲートウェイ装置30の保守データ送信部32は、フロー制御情報FCに従って、6つの後続フレームCF#1から♯6を1ms間隔で順番に送信する。そして、保守データ受信部55は、送信された6つの後続フレームCF#1から♯6を受信する。
電力変換制御装置22は、後続フレームCF#6を受信したあと、ゼロクロス検出部52によるゼロクロスポイントの検出処理を処理遅れなく実行し、ゼロクロスポイントが経過するのを待つ。フロー制御情報送信部54は、ゼロクロスポイントが経過したと判断すると、次のゼロクロスポイントまで8.33msであるため、(8.33−0.216)÷(0.216+1)=6.67の演算により、6つの後続フレームCFを受信できると判定し、フロー制御情報FCに、FS=0(連続受信可能)、BS=6(受信可能なフレーム数)、STmin=1(受信間隔)を設定してゲートウェイ装置30へ送信する。ゲートウェイ装置30の保守データ送信部32は、フロー制御情報FCに従って、残りの5つの後続フレームCF#7から♯11を、1ms間隔で順番に送信する。そして、保守データ受信部55は、送信された5つの後続フレームCF#7から♯11を受信し、受信した保守データの合計が、開始フレームFFに含まれていた保守データの合計データ長に到達したため、保守データの受信処理を終了する。
なお、図10、図11の例では、フレーム間の受信間隔STminを1msとして説明したが、ゼロクロスポイントと重ならないように、受信可能なフレーム数BSを設定すればよいので、電力変換制御装置22の受信能力によってフレーム間の受信間隔STminが設定されればよい。なお、受信間隔STminを0とした場合は、後続フレームCFのビット長及びネットワークの通信速度によって定まる各フレームのデータの送信時間に基づいて、受信可能なフレーム数BSが算出される。
<保守データ処理部56>
保守データ処理部56は、受信した保守データに応じた処理を行う。なお、受信した保守データは、RAM等の記憶装置91に記憶される。例えば、保守データがアップデートデータである場合は、保守データ処理部56は、電力変換制御装置22をシャットダウンするタイミングで、アップデートデータによりEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の記憶装置91に記憶されているソフトウェアを更新する。
保守データが、上述した、累積電力変換時間、蓄電装置5の充電容量、電力変換装置20の異常情報等の電力変換装置20に関わる各種状態を返答することを要求する診断データである場合は、保守データ処理部56は、RAM等の記憶装置91に記憶されている、要求された電力変換装置20の状態の応答データをCAN通信によりゲートウェイ装置30に送信し、ゲートウェイ装置30は応答データをセンタ60に送信する。なお、保守データ処理部56は、ゼロクロスポイントを避けて、応答データのフレームをゲートウェイ装置30に送信する。
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係る電力変換制御システム1について説明する。上記の実施の形態1と同様の構成部分は説明を省略する。本実施の形態に係る電力変換制御システム1の基本的な構成は実施の形態1と同様であるが、フロー制御情報送信部54の処理が異なる。
本実施の形態でも、実施の形態1と同様に、フロー制御情報送信部54は、開始フレームFFを受信した後、検出したゼロクロスポイント及び各フレームのデータの送信時間に基づいて、ゼロクロスポイントを検出するタイミングと各フレームのデータを受信するタイミングとが重ならないように、フロー制御情報FCを算出してゲートウェイ装置30に送信する。
しかし、このゼロクロスポイントを避けるフロー制御情報FCの算出処理の詳細が、実施の形態1と異なる。図12のフローチャートを参照して説明する。まず、ステップS710で、電力変換制御装置22のゼロクロス検出部52は、ゼロクロスポイント(時刻)を検出する。
保守データ受信部55は、ゲートウェイ装置30から送信された開始フレームFFを受信する。そして、ステップS720において、フロー制御情報送信部54は、開始フレームFFを受信した場合は、ステップS730に進み、開始フレームFFを受信していない場合は、処理を終了する。
フロー制御情報送信部54は、開始フレームFFを受信した場合は(ステップS720:YES)、ステップS730で、ステップS710で検出されたゼロクロスポイント及び各フレームのデータの送信時間に基づいて、次のゼロクロスポイントまでに、予め設定された判定数(本例では、1に設定される)以上のフレーム数のデータを受信できるか否かを判定する。
実施の形態1と同様に、フロー制御情報送信部54は、開始フレームFFを受信した現在の時刻から、次のゼロクロスポイント(時刻)までの時間間隔を算出し、算出した時間間隔からフロー制御情報FCのフレームの送信時間を減算した値を、各フレームのデータの送信時間(本例では、216μsec)にフレーム間の受信間隔STmin(本例では0)を加算した値で除算し、除算値の小数点以下を切り捨てた値を、次のゼロクロスポイントまでに受信可能なフレーム数として算出する。そして、フロー制御情報送信部54は、算出した受信可能なフレーム数が、判定数(本例では、1)以上であるか否かを判定する。
フロー制御情報送信部54は、次のゼロクロスポイントまでに判定数以上のフレーム数のデータを受信できると判定した場合(ステップS730:YES)はステップS740に進み、ゼロクロスポイントの時間間隔に設定した各フレームのデータの送信間隔で1つのフレーム数のデータを送信することを要求する送信指令をフロー制御情報FCとしてゲートウェイ装置30に送信する。
本実施の形態では、フロー制御情報送信部54は、フロー制御情報FCにおいて、受信可能状態FSに「連続受信可能」であることを示す「0」を設定し、受信可能なフレーム数BSに「0」を設定し、フレーム間の受信間隔STminに「ゼロクロスポイントの時間間隔」を設定する。
ゲートウェイ装置30の保守データ送信部32は、送信指令のフロー制御情報FCを受信した場合は、ゼロクロスポイントの時間間隔で、1つのフレーム数のデータを順番に送信する。本実施の形態では、保守データ送信部32は、1つの後続フレームCFを、ゼロクロスポイントの時間間隔に設定された受信間隔STminの間隔で、順番に送信する。そして、電力変換制御装置22の保守データ受信部55は、送信された後続フレームCFを受信する。
一方、フロー制御情報送信部54は、次のゼロクロスポイントまでに判定数(本例では1)以上のフレーム数のデータを受信できないと判定した場合(ステップS730:NO)はステップS750に進み、各フレームのデータの送信を行わずに待機することを要求する待機指令をフロー制御情報FCとしてゲートウェイ装置30に送信し、その後ステップS760に進む。本実施の形態では、フロー制御情報送信部54は、フロー制御情報FCにおいて、受信可能状態FSに「待機」を示す「1」を設定し、受信可能なフレーム数BS、フレーム間の受信間隔STminには、任意の値、例えば、「0」を設定する。
ステップS760で、フロー制御情報送信部54は、ゼロクロスポイントを経過したか否かの判定を行う。フロー制御情報送信部54は、ゼロクロスポイントを経過した場合は、上述したステップS740に進み、ゼロクロスポイントの時間間隔に設定した各フレームのデータの送信間隔で1つのフレーム数のデータを送信することを要求する送信指令をフロー制御情報FCとしてゲートウェイ装置30に送信する。一方、フロー制御情報送信部54は、ゼロクロスポイントを経過していない場合は、ゼロクロスポイントを経過するまで、ステップS760を繰り返す。
続くステップS770で、保守データ受信部55は、全ての保守データを受信したか否かを判定する。保守データ受信部55は、これまでに受信した各フレームに含まれる保守データの合計が、開始フレームFFに含まれていた保守データの合計データ長に到達したか否かを判定する。全ての保守データを受信した場合は、処理を終了し、全ての保守データを受信していない場合は、全ての保守データを受信するまで、ステップS770を繰り返す。
<送受信挙動の例>
図13に、図12のフローチャートの処理による、保守データの送受信挙動の例を示す。図13の例では、後続フレームCFの全フレーム数が11であり、交流電源6が50Hzであり、ゼロクロスポイント間の時間間隔が10msである場合を示している。
まず、フロー制御情報送信部54は、開始フレームFF受信したとき、次のゼロクロスポイントまで4msであるため、(4−0.216)÷(0.216+1)=3.11の演算により、3つの後続フレームCFを受信できると判定し、1に設定された判定数以上であるので、フロー制御情報FCに、FS=0(連続受信可能)、BS=0(無制限に連続受信可能)、STmin=10(受信間隔)を設定してゲートウェイ装置30へ送信する。ゲートウェイ装置30の保守データ送信部32は、フロー制御情報FCに従って、全ての後続フレームCF#1、♯2、・・・♯11を、1つずつ10ms間隔で順番に送信する。そして、保守データ受信部55は、送信された全ての後続フレームCF#1、♯2、・・・♯11を順番に受信する。
このように、後続フレームCFを1つずつ、ゼロクロスポイント間の時間間隔で送信することで、ゼロクロスポイントを検出するタイミングと各フレームのデータを受信するタイミングとが重ならないようにでき、ゼロクロスポイントの検出誤差を抑制できる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。