JP2019073750A - 親水化表面処理剤、親水性皮膜及び親水化表面処理方法 - Google Patents

親水化表面処理剤、親水性皮膜及び親水化表面処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた親水性、耐熱性、密着性及び耐ブロッキング性を有し、親水性とトレードオフの関係にある耐水性を併せ持つ、ロウ付け又はロウ付け相当の加熱が可能な持続性のある親水性皮膜を形成させるための親水化表面処理剤、その親水性皮膜、及び親水化表面処理方法を提供する。【解決手段】スルホ基含有(メタ)アクリル樹脂(A)とジルコニウム化合物(B)と気相シリカ(C)を含み、好ましくは、その(メタ)アクリル樹脂(A)の固形分質量とジルコニウム化合物(B)の固形分質量比(MA/MB)が、0.2以上1.2以下であり、気相シリカ(C)の固形分質量比{MC/(MA+MB)}がお0.05以上3.0以下であるように構成した親水化表面処理剤、その親水性皮膜、及び親水化表面処理方法により上記課題を解決する。【選択図】なし

Description

本発明は、親水化表面処理剤、親水性皮膜、及び親水化表面処理方法に関する。詳しくは、自動車ボディー、自動車部品、建材、家電用部品等の成形加工品、鋳造品、又は、シート若しくはコイル等の金属材料の表面に、優れた親水性、耐熱性、密着性及び耐ブロッキング性を有し、親水性とトレードオフの関係にある耐水性及び耐湿性を併せ持つ、ロウ付け又はロウ付け相当の加熱が可能な持続性のある親水性皮膜を形成させるための親水化表面処理剤、その親水性皮膜、及び親水化表面処理方法に関する。
シート、コイル、成形品等の各種の金属材料には、様々な性能を付与するための表面処理が施される。その性能としては、例えば、腐食を防止したり、塗料を剥がれ難くしたり、水に馴染み易くしたり、水を弾き易くしたりすること等が挙げられる。なかでも、アルミニウムやその合金材料(以下、アルミニウム含有金属材という。)は、一般的に軽量で加工性に優れることから、家電や自動車に使用されることが多い。特に、アルミニウム材が持つ熱伝導率が大きいという特徴を活かして使用される放熱フィンやフィンを有する熱交換器には、耐食性、親水性、耐湿性、及びその持続性が要求される。
このような性能が要求されるフィンを構成するアルミニウム含有金属材等には、表面処理によって親水性や耐食性を付与させることが多い。表面処理の方法としては、フィン材を目的の形に成型加工や組立て加工をした後に、表面処理剤を浸漬、スプレー、シャワー等の手段により塗布をする、いわゆるポストコート法と、予めロールコータ等の手段により板材に表面処理皮膜を形成した後に、成型加工等を施してフィン材に加工する、いわゆるプレコート法の二つの方法がある。
上記方法でフィンの表面に設けられた表面処理皮膜は、結露水によって溶解又は流失することがあり、その結果、親水性等各種の性能が失われてしまうことがある。特に、水溶性高分子を用いた親水性の表面処理皮膜は、この傾向が顕著であり、親水性と、耐水性又は親水持続性とはトレードオフの関係になりやすい。
したがって、フィンを構成するアルミニウム含有金属材には、耐食性と親水性を付与させる方法が要求されている。特に、上記結露水による問題を解決するために、優れた親水性と高耐食性を有し、なおかつ、それらの性質が長期間にわたって持続する親水性と耐水性を付与させる方法が要求されている。このように、フィンを構成するアルミニウム含有金属材に、トレードオフの関係にある親水性と耐水性を兼ね備えている表面処理皮膜を形成する表面処理方法が求められている。
そうした表面処理方法としては、例えば、コロイダルシリカ及びオルガノアルコキシシランを混合して得られる有機無機ケイ素化合物と、ジルコニウム化合物と、りん酸亜鉛粒子とを含有する水性親水化表面処理剤を用いて親水性皮膜を金属材の少なくとも片面に形成する方法(特許文献1)が提案されている。
特開2014−214368号公報
ここで、熱交換器は、冷媒を通す銅製の管材とアルミニウム製のフィンとで構成されるものが主体であり、組み立てには管材とフィンの拡管接合、管材端部とU字型部品のトーチロウ付け接合が用いられるものがあるが、ロウ付け接合の際には、600℃前後の熱によりフィン材上の表面処理皮膜に変色や変質が生じる場合があった。
また、近年、銅資源の枯渇などの背景から、アルミニウム製のチューブとフィンを用いたオールアルミの熱交換器の検討もなされている。このタイプの熱交換器の組み立てにはフィンとチューブのロウ付け接合が必要になるが、その際にも600℃前後の温度に加熱され、従来の表面処理皮膜では皮膜の焼失や変質が生じ、親水性や密着性といった機能を果たせなかった。
このような問題は、上記特許文献1においても同様に発生するものであった。すなわち、上記特許文献1に記載の親水化表面処理皮膜をプレコート法にて形成したアルミニウム含有金属材を、高温(例えば、600℃前後)で加熱する工程が含まれるロウ付けにて接合することにより熱交換器(例えば、オールアルミ扁平チューブタイプの熱交換器等)を製造すると、ロウ付け後に十分な親水性、親水持続性、耐水性及び耐湿性等を保持できない場合があった。つまり、ロウ付けのような高温の温度領域になる工程を有する方法にて製造される熱交換器(ロウ付けタイプの熱交換器)を構成するフィンの表面処理皮膜として効果的な親水性皮膜は開発されていないのが現状であった。
また、アルミニウム含有金属材以外の金属材料(例えば、鉄やその合金材料等)においても、親水化表面処理被膜が形成された後の加工時にロウ付け相当の高温領域の加熱をすることがあり、このような高温領域に加熱後に十分な親水性、親水持続性、耐水性及び耐湿性等を保持できる親水性皮膜が求められていた。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、アルミニウム含有金属材の表面に、優れた親水性、耐熱性、密着性及び耐ブロッキング性を有し、親水性とトレードオフの関係にある耐水性及び耐湿性を併せ持つ、ロウ付け又はロウ付け相当の加熱が可能な持続性のある親水性皮膜を形成させた親水化表面処理剤を提供することにある。更に、本発明の目的は、その親水化表面処理剤で処理して得られる親水性皮膜を提供すること、及びその親水化表面処理剤を用いた親水化表面処理方法を提供することにある。
(1)上記課題を解決するための本発明に係る親水化表面処理剤は、スルホ基含有(メタ)アクリル樹脂(A)とジルコニウム化合物(B)と気相シリカ(C)とを配合してなる水性表面処理剤である。
本発明に係る親水化表面処理剤において、前記スルホ基含有(メタ)アクリル樹脂(A)とジルコニウム化合物(B)の固形分質量比率(M/M)が、0.2以上1.2以下の範囲内であるように構成できる。
本発明に係る親水化表面処理剤において、前記気相シリカ(C)は、固形分質量比{M/(M+M)}が、0.05以上3.0以下の範囲内であるように構成できる。
上記課題を解決するための本発明に係る親水性皮膜は、上記本発明に係る親水化表面処理剤を塗布し、乾燥して得られることを特徴とする。
上記課題を解決するための本発明に係る親水化表面処理方法は、上記本発明に係る水性親水化表面処理剤を、金属材料の表面の一部又は全部に塗布し、乾燥して親水性皮膜を形成することを特徴とする。
本発明によれば、優れた親水性、耐熱性、密着性及び耐ブロッキング性を有し、親水性とトレードオフの関係にある耐水性及び耐湿性を併せ持つ、ロウ付け又はロウ付け相当の加熱が可能な持続性のある親水性皮膜を形成することができる。
こうした本発明によれば、自動車ボディー、自動車部品、建材、家電用部品等の成形加工品、鋳造品、シート、コイル等の金属材料の表面に、上記効果を奏する親水性皮膜を形成できるので、例えばアルミニウム材を用いて形成された熱交換器の熱交換効率を向上させるために極めて有効である。
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、以下の記載はあくまでも最良形態であり、その記載に限定されるものではない。例えば、数値範囲の上限や下限を好適範囲として記載しているが、その上限や下限を超えた場合であっても、本発明の構成要件を充足する限り、本発明の技術範囲内である。
[水性親水化表面処理剤]
本発明に係る親水化表面処理剤は、スルホ基含有(メタ)アクリル樹脂(A)とジルコニウム化合物(B)と気相シリカ(C)とを配合してなる水性表面処理剤である。
以下、親水化表面処理薬剤に含まれる各構成要素について説明する。
<スルホ基含有(メタ)アクリル樹脂(A)>
スルホ基含有(メタ)アクリル樹脂(A)は、水性親水化表面処理剤に含まれる必須の構成材料である。このスルホ基含有(メタ)アクリル樹脂(A)は、下記一般式(1−1)に示される構造を有する(メタ)アクリル酸および/又はその塩と、下記一般式(1−2)に示される構造を有するスルホ基含有(メタ)アクリルモノマーおよび/又はその塩とをモノマーとする共重合体である。なお、一般式(2−1)で示されるモノマーと一般式(2−2)で示されるモノマーとからなる(メタ)アクリル共重合体(A)は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよく、特に限定されない。また、前記(メタ)アクリル酸の塩としては、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、スルホ基含有(メタ)アクリルモノマーの塩としては、スルホ基含有(メタ)アクリルモノマーのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
Figure 2019073750
[式中、Rは水素又はメチル基であり、Xは水素原子もしくはNa原子を示す。]
Figure 2019073750
[式中、Rは水素、又はメチル基であり、Yは2価の連結基、又は単なる結合手を示し(Yで表される連結基としては、例えば、アルキレン基(炭素数1〜20が好ましい)、−O−、−S−、アリーレン基、−CO−、−NH−、−SO−、−COO−、−CONH−、又はこれらを組み合わせた基が挙げられ、Yが単なる結合手の場合、一般式(2−2)のスルホ基がC(炭素原子)と直接連結することを指す。)、Xは水素原子もしくはNa原子を示す。]
また、水性親水化表面処理剤に含まれる前記スルホ基含有(メタ)アクリル樹脂(A)を構成するモノマー全体のうちのスルホ基含有(メタ)アクリルモノマーおよび/又はその塩の割合は10モル%以上〜70モル%以下であることが好ましく、20モル%以上〜60モル%以下であることがより好ましく、30モル%以上〜50モル%以下であることが特に好ましい。スルホ基含有(メタ)アクリルモノマーおよび/又はそのナトリウム塩の割合がこの範囲にあると、ロウ付け加熱後に残存し、親水性を発現する親水基が十分となり、ロウ付け後の親水性や親水持続性が向上する。また、耐ブロッキング性を向上させる観点からは、スルホ基含有(メタ)アクリルモノマーおよび/又はその塩の割合が10モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましい。さらに、耐水性を向上させる観点からは、スルホ基含有(メタ)アクリルモノマーおよび/又はその塩の割合が20モル%以上〜60モル%以下であることが好ましい。
また、水性親水化表面処理剤に含まれる前記スルホ基含有(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量は、前記親水化表面処理剤の固形分総質量に対して、1.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上40.0質量%以下であることがより好ましい。前記(メタ)アクリル樹脂(A)の含有量がこの範囲内にあると、ロウ付け加熱後の残存状態が最適となり、ロウ付け後の親水性や親水持続性が向上する。
<ジルコニウム化合物(B)>
ジルコニウム化合物(B)は、親水化表面処理剤の必須構成材料である。ジルコニウム化合物(B)は、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、フッ化水素酸塩、アンモニウム塩、カリウム塩及びナトリウム塩から選ばれる1種又は2種以上を含む金属塩であることが更に好ましい。なかでも、耐水性と耐湿性の観点から、炭酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩及びカリウム塩から選ばれる1種又は2種以上を含むジルコニウム化合物であることが特に好ましく、炭酸塩を含むジルコニウム化合物及び/又はアンモニウム塩を含むジルコニウム化合物であることがより好ましい。
これらのジルコニウム成分(B)の具体例としては、例えば後述の実施例に示すように、フッ化ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム等を挙げることができるが、これらに限定されない。これらのジルコニウム化合物は、錯塩として水性親水化表面処理剤に含まれ、そうした錯塩を含む水性親水化表面処理剤は、耐水性が高い親水性皮膜を形成することができる。
炭酸ジルコニウムの錯塩として、例えば、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム等のジルコニウム化合物を用いた場合、そのジルコニウム化合物を含む水性親水化表面処理剤で形成された親水性皮膜には、炭酸ジルコニウムの錯塩由来のジルコニウム化合物が存在する。具体的には、形成された親水性皮膜は、炭酸ジルコニウム錯塩中の炭酸とアンモニウムの全部又は一部が乾燥により揮発して、ジルコニウム酸化物、ジルコニウム水酸化物、ジルコニウム炭酸塩等を含む複合皮膜となっている。
また、前記(メタ)アクリル樹脂(A)とジルコニウム化合物(B)の固形分質量比(M/M)が、0.2〜1.2であることが好ましく、0.2〜0.8であることがより好ましい(M:(メタ)アクリル樹脂(A)の固形分質量、M:ジルコニウム化合物(B)の固形分質量)。固形分質量比(M/M)がこの範囲であるにあると、親水持続性が向上するとともに密着性と耐水性が向上する。また、耐水性を更に高めるためには、固形分質量比(M/M)が0.2〜0.4であることが更に好ましい。
また、水性親水化表面処理剤に含まれるジルコニウム化合物(B)の含有量は、固形分総質量に対して、ジルコニウム換算で、5.0質量%以上40.0質量%以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内にあると、親水性皮膜は極めて高い耐水性や耐湿性を有するとともに、適度な硬さと柔軟性を併せ持つ密着性に優れた皮膜を形成することができる。
<気相シリカ(C)>
気相シリカ(C)は、親水化表面処理剤に含まれる必須の構成材料である。この気相シリカはケイ素塩化物を気化し高温の水素炎中において気相反応によってシリカ微粒子を合成するフュームドシリカのことをいう。
親水化表面処理剤に含まれる気相シリカ(C)は、固形分質量比{M/(M+M)}が、0.05以上3.0以下であることが好ましく、0.15以上3.0以下であることがより好ましく、0.3以上3.0以下であることがさらに好ましい(M:気相シリカ(C)の固形分質量)。水性親水化表面処理剤に含まれる気相シリカ(C)の含有量がこの範囲にあると、親水性と親水持続性が向上する。また、固形分質量比{M/(M+M)}を0.15以上3.0以下とすることで、ロウ付け加熱後の密着性もより高めることができる。
親水化表面処理剤に含まれる気相シリカ(C)は、一次粒子径が5〜50nmであることが好ましく、10〜20nmであることがより好ましい。一次粒子径がこの範囲にあると、親水性と親水持続性が向上する。さらに、気相シリカ(C)の粒径を10〜20nmとすることで、耐水性と密着性をより高めることができる。なお、気相シリカ(C)の一次粒子径は、平均一次粒子径であり、透過型電子顕微鏡上で、気相シリカ(C)のサンプルから無作為の粒子2500個以上の粒子径を測定し、個数平均により求めた値とする。
また、水性親水化表面処理剤に含まれる気相シリカ(C)の含有量は、固形分総質量に対して、10質量%以上〜40質量%以下であることが好ましく、20質量%以上〜30質量%以下であることがより好ましい。水性親水化表面処理剤に含まれる気相シリカ(C)の含有量がこの範囲にあると、耐熱性が良好であるためロウ付け加熱後の親水性や親水持続性、密着性が向上する。
<無機粒子(D)>
無機粒子(D)は、親水化表面処理剤の任意の構成材料である。無機粒子(D)は、コロイダルシリカ(E)、コロイダルシリカ(E)及びオルガノアルコキシシラン(F)を混合して得られた有機無機ケイ素化合物(G)、りん酸金属塩粒子(H)の何れかであることが好ましい。
無機粒子(D)の添加量は、前記気相シリカ(C)との固形分質量比(M/M)が、3.0以下の範囲内である(M:無機粒子(D)の固形分質量)ことが好ましい。この範囲内であれば性能を阻害することなく、各特性を向上させることが出来る。
コロイダルシリカ(E)は、親水化表面処理剤の任意の構成材料であり、SiO又はその水和物のコロイドであり、通常、ケイ酸塩に希塩酸を作用させてから透析して得られ、常温ではなかなか沈殿しないゾル状粒子である。
コロイダルシリカ(E)の平均粒子径は、4nm以上、200nm以下の範囲内であることが好ましく、各特性を高める観点からは4nm以上、100nm以下の範囲内であることがより好ましく、4nm以上、60nm以下であることが更に好ましく、親水持続性をより高める観点からは4nm以上、20nm以下の範囲内であることが特に好ましい。なお、コロイダルシリカ(E)の平均粒子径は、レーザー回析/散乱式粒子径分布測定装置(型名:LA−920、株式会社堀場製作所製)で測定した結果であり、測定数5回の粒子径の平均値を平均粒子径(体積基準)とした。
コロイダルシリカ(E)は、特に限定するものではないが、例えば、スノーテックスC、スノーテックスCS、スノーテックスCM、スノーテックスO、スノーテックスOS、スノーテックスOM、スノーテックスNS、スノーテックスN、スノーテックスNM、スノーテックスS、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40(いずれも日産化学工業株式会社の商品名)等を用いることができる。また、特殊な鎖状形状に加工されたスノーテックスUP、スノーテックスOUP、スノーテックスPS−S、スノーテックスPS−SO、スノーテックスPS−M、スノーテックスPS−MO、スノーテックスPS−L、スノーテックスPS−LO(いずれも日産化学工業株式会社の商品名)等を用いることもできる。また、アデライトAT−20N、アデライトAT−20A、アデライトAT−20Q(いずれも株式会社ADEKA社の商品名)等も用いることができる。
有機無機ケイ素化合物(G)は、親水化表面処理剤の任意の構成材料であり、コロイダルシリカ(E)及びオルガノアルコキシシラン(F)を混合して得られたものである。得られた有機無機ケイ素化合物(G)は、親水化表面処理剤中にケイ素化合物分散体として存在する。オルガノアルコキシシラン(F)は加水分解反応及び縮合反応するが、その方法は特に制限されず、加熱や撹拌等の公知の方法を採用できる。なお、水分とオルガノアルコキシシラン(F)との加水分解により、アルコール(I)が生じるが、このアルコール(I)は、親水化表面処理剤を塗布した後の乾燥時に揮発させることができる。
有機無機ケイ素化合物(G)の平均粒子径は、コロイダルシリカ(E)の平均粒子径とほぼ同じであり、4nm以上、200nm以下の範囲内であることが好ましく、各特性を高める観点からは4nm以上、100nm以下の範囲内であることがより好ましく、4nm以上、60nm以下であることが更に好ましく、親水持続性をより高める観点からは4nm以上、20nm以下の範囲内であることが特に好ましい。なお、有機無機ケイ素化合物(G)の平均粒子径は、コロイダルシリカ(E)と同様の方法で測定した結果である。
有機無機ケイ素化合物(G)を形成するために混合されるコロイダルシリカ(E)とオルガノアルコキシシラン(F)の固形分質量比(M/M)は、特に制限されないが、水性皮膜と金属材料表面との密着性をより一層向上させるためには、0.05〜1.0の範囲内であることが好ましく、0.2〜1.0であることがより好ましく、0.7〜1.0であることが更に好ましい(M:コロイダルシリカ(E)の固形分質量、M:オルガノアルコキシシラン(F)の固形分質量)。また、親水性皮膜の親水持続性をより一層向上させるためには、固形分質量比(M/M)は、0.05〜1.0以下の範囲内であることが好ましく、0.05〜0.7であることがより好ましく、0.05〜0.2であることが更に好ましい。
有機無機ケイ素化合物(G)は、それ自体、コロイダルシリカ(E)でもオルガノアルコキシシラン(F)でもないが、全有機炭素(TOC)測定(例えばLECO社の炭素分析装置等)により、炭素が測定される。この炭素は、有機無機ケイ素化合物(G)にオルガノアルコキシシラン由来の炭素が存在するためである。また、コロイダルシリカのゼータ電位が強くマイナス帯電しているのに対し、有機無機ケイ素化合物(G)のゼータ電位は、使用したオルガノアルコキシシラン(F)にも由来するが、通常、弱マイナスからプラスに帯電していることからも区別できる。
オルガノアルコキシシラン(F)は、コロイダルシリカ(E)と共に有機無機ケイ素化合物(G)を形成するためのものであり、アルコキシシラン基を有している。このアルコキシシラン基は、水と接触すると加水分解してシラノール基(Si−OH)を形成し、その後に架橋してシロキサン化合物を形成する。
オルガノアルコキシシラン(F)の種類は特に限定されるものではないが、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−トリエトキシシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−(ビニルベンジルアミン)−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、活性なアルコキシ基を3個有するトリアルコキシシランが好ましい。
オルガノアルコキシシラン(F)として、以下の一般式(2)で表わされる化合物を挙げることができる。
Figure 2019073750
一般式(2)中、オルガノアルコキシシラン(F)の末端基であるXは、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、アクリロキシ基、ウレイド基、イソシアナート基、及びビニル基から選択される1又は2以上の官能基であることが好ましい。なかでも、エポキシ基及び/又はアミノ基が好ましい。なお、nが2以上の場合は、Xは同一であってもよいし異なっていてもよい。Lは、2価の連結基、又は単なる結合手を表す。Lで表される連結基としては、例えば、アルキレン基(炭素数1〜20が好ましい)、−O−、−S−、アリーレン基、−CO−、−NH−、−SO−、−COO−、−CONH−、又はこれらを組み合わせた基が挙げられる。なかでも、アルキレン基が好ましい。単なる結合手の場合、一般式(化2)のXがSi(ケイ素原子)と直接連結することを指す。なお、nが2以上の場合は、Lは同一であってもよいし異なっていてもよい。Rは、それぞれ独立に、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4)、又は水素原子を表す。nは1〜3の整数を表す。なかでも、nは1が好ましい。
オルガノアルコキシシラン(F)が有する官能基には制限はないが、アミノ基及びエポキシ基から選ばれる1種又は2種以上の官能基を有することが好ましく、例えばアミノ基、グリシドキシ基及びN−アミノエチルアミノ基から選ばれる1種又は2種以上の官能基を有することが更に好ましい。オルガノアルコキシシラン(F)がこれらの官能基を有することにより、親水性皮膜を形成した際、親水性皮膜のバリア性が一層向上し、耐水性、耐湿性、密着性、及びブロッキング性が更に優れた親水性皮膜が得られる。これは、コロイダルシリカ(E)とオルガノアルコキシシラン(F)とのシロキサン結合がより促進され、緻密な親水性皮膜が形成されるためと考えられる。なお、オルガノアルコキシシラン(F)は、アルコキシ基の一部が加水分解した加水分解物及び/又は縮合物であってもよい。
アルコール(I)は、オルガノアルコキシシラン(F)の加水分解により生じるものであり、水性親水化表面処理剤に含まれる。なお、アルコール(I)は、水性親水化表面処理剤を金属材料の表面に塗布し、乾燥して親水性皮膜を形成する過程で揮発させることができる。したがって、アルコール(I)は、形成された親水性皮膜には実質的に含まれないようにすることができる。アルコール(I)の種類としては、使用されるオルガノアルコキシシラン(F)のアルコキシ基の種類に依存し、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。
水性親水化表面処理剤に含まれるアルコール(I)のモル濃度(mol/L)(C)と、オルガノアルコキシシラン(F)に含まれるアルコキシ基がすべて加水分解した場合に得られる親水化表面処理剤中のアルコールのモル濃度(mol/L)(C)とのモル比(C/C)は、0.05以上、0.9以下の範囲内であるように調整される。
モル比(C/C)が0.05未満の場合には、コロイダルシリカ(E)とオルガノアルコキシシラン(F)とがシロキサン結合を形成するのに必要な反応性官能基の効果が、オルガノアルコキシシラン(F)から失われることがある。そのため、有機無機ケイ素化合物(G)を含む水性親水化表面処理剤で形成された親水性皮膜が不連続になり、耐水性が劣ることがある。また、モル比(C/C)が0.9を超える場合には、コロイダルシリカ(E)とオルガノアルコキシシラン(F)とがシロキサン結合を形成するのに必要な反応性官能基の効果が高いため、オルガノアルコキシシラン(F)同士でシロキサン結合を形成してしまうようになる。その結果、親水性皮膜が緻密でなくなり、コロイダルシリカ(E)とオルガノアルコキシシラン(F)との緻密な結合を有する親水性皮膜の形成が困難になり易く、得られる親水性皮膜は密着性に劣ることがある。
オルガノアルコキシシラン(F)のアルコキシ基に由来するアルコールのモル濃度(mol/L)を調整する方法は特に限定されず、例えば、オルガノアルコキシシラン(F)にシラノール縮合触媒と水とを混合した溶液において、副生するアルコール量を制御して濃度を調整する方法、副生するアルコールと水とを除去して濃度を調整する方法等が挙げられる。なお、アルコール濃度の測定方法は特に限定されず、ガスクロマトグラフィー法、及び核磁気共鳴分光法等が挙げられる。
りん酸金属塩粒子(H)は、親水化表面処理剤の任意の構成材料であり、りん酸亜鉛粒子及び/又は難溶性のりん酸鉄粒子であるであることが好ましく、りん酸亜鉛粒子であることがより好ましい。なお、「りん酸亜鉛」とは、りん酸(PO)と亜鉛とを少なくとも含有する塩であればよく、他の金属等を含有していてもよいし水和物の形態であってもよい。好ましくは、アニオンがりん酸のみであり、カチオンが亜鉛のみであるZn(PO・4HO(例えば、ホパイト)が挙げられる。
りん酸金属塩粒子(H)の平均粒子径は、50nm以上、500nm以下の範囲内であることが好ましく、各特性を高める観点からは100nm以上、450nm以下の範囲内であることがより好ましく、親水持続性をより高める観点からは150nm以上、400nm以下の範囲内であることが特に好ましい。なお、りん酸金属塩粒子(H)の平均粒子径は、コロイダルシリカ(E)と同様の方法で測定した結果である。
<その他>
水性親水化表面処理剤は、必要に応じて、消泡剤、レベリング剤、防菌防カビ剤、着色剤等を含んでいてもよい。ただし、これらは、その水性親水化表面処理剤で得られる親水性皮膜の品質を損なわない程度に添加されるべきで、多くても水性親水化表面処理剤中に数質量%であることが好ましい。
[親水化表面処理方法]
本発明に係る親水化表面処理方法は、上記した水性親水化表面処理剤を、金属材料の表面の一部又は全部に塗布し、乾燥して、親水性皮膜を形成する方法である。
使用される金属材料としては特に限定されないが、アルミニウム、銅、鉄、チタン及びそれぞれの合金等を挙げることができる。なかでも、アルミニウム及びアルミニウム合金が好適である。
水性親水化表面処理剤は、水溶媒に上述したスルホ基含有(メタ)アクリル樹脂(A)とジルコニウム化合物(B)と気相シリカ(C)と、必要に応じて、無機粒子(D)、消泡剤、レベリング剤、防菌防カビ剤、着色剤等とを混合ミキサー等の撹拌機を用いて十分に混合することによって調製される。
この金属材料に親水化表面処理剤を塗布する前には、必要に応じて、金属材料の表面の油分や汚れを除去する目的で前処理を施してもよい。金属材料には防錆目的で防錆油が塗られている場合や作業中に加工油等の油分や汚れが付着している場合がある。前処理を施すことにより、金属材料の表面を清浄にし、親水化表面処理剤が均一に濡れやすくなる。なお、油分や汚れ等が無く、親水化表面処理剤を均一に塗布できる場合は、特に前処理を行う必要はない。前処理方法は特に限定されず、湯洗、溶剤洗浄、アルカリ脱脂洗浄、酸洗等の方法が挙げられる。
また、耐食性を向上させる目的で、金属材料に各種の耐食下地処理を施してもよい。耐食下地処理の方法としては特に限定されないが、クロム酸クロメート、りん酸クロメート、りん酸ジルコニウム等の化成処理や、クロム含有或いは非含有の塗布型耐食下地処理等が挙げられる。
こうして準備された金属材料に、親水化表面処理剤を塗布する。塗布方法としては、処理される金属材料の形状等によって適宜最適な方法が選択され、例えば、ロールコート法、浸漬法、スプレー塗布法等が挙げられる。より具体的には、例えば、金属材料がシート状であれば、ロールコート法やスプレーコート法により塗布量を調節しながら塗布することが好ましい。また、金属材料が形成品であれば、親水化表面処理剤に浸漬して引き上げ、場合によっては圧縮気体で余分な処理剤を吹き飛ばして塗布量を調節する等の方法が挙げられる。
塗布量は、加熱乾燥後の皮膜量が0.2g/m以上、1.5g/m以下の範囲内となるように塗布することが好ましく、0.3g/m以上、1.2g/m以下の範囲内となるように塗布することがより好ましく、0.3g/m以上、0.9g/m以下の範囲内となるように塗布することがより好ましい。
乾燥温度としては、親水化表面処理方法における通常の乾燥温度であればよく、金属材料の到達温度として60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが特に好ましい。乾燥温度が60℃未満であると、水性親水化表面処理剤の主溶媒である水分が残存して、親水性皮膜が金属材料表面上に固定できなくなり、耐水性や親水持続性が低下することがある。
加熱方法は特に限定されず、熱風、インダクションヒーター、赤外線、近赤外線等により加熱して、塗布された塗膜を乾燥させればよい。また、加熱時間は、水性親水化表面処理剤中の化合物の種類等によって適宜最適な条件が選択される。なかでも、生産性と皮膜形成性の点から、1秒以上、1800秒以下が好ましく、10秒以上、1200秒以下がより好ましい。
[親水性皮膜]
本発明に係る親水性皮膜は、上記した本発明に係る親水化表面処理剤を塗布し、乾燥して得られる。例えば、上記した金属材料の表面に、上記した親水化表面処理方法によって水性親水化表面処理剤を塗布し、乾燥して得ることができる。
親水性皮膜に含まれるスルホ基含有(メタ)アクリル樹脂(A)とジルコニウム化合物(B)との質量比は、上記した親水化表面処理剤に含まれるスルホ基含有(メタ)アクリル樹脂(A)とジルコニウム化合物(B)の固形分質量比(M/M)とほぼ同じ(0.2〜0.8が特に好ましい)である。また、親水皮膜に含まれる気相シリカ(C)の質量比も、上記した親水化表面処理薬剤に含まれる気相シリカ(C)の固形分質量比{M/(M+M)}と同じ(0.05以上3.0以下であることであることが好ましい)である。この範囲内であると、親水性皮膜の連続性が阻害されることなく、ロウ付けが可能で、ロウ付け後も親水性が十分に発現でき、なお且つ親水性皮膜の耐水性と密着性が向上する。
以上説明したように、本発明に係る親水化表面処理剤、親水性皮膜、及び親水化表面処理方法によれば、優れた親水性、耐熱性、密着性及び耐ブロッキング性を有し、親水性とトレードオフの関係にある耐水性を併せ持つ、ロウ付け又はロウ付け相当の加熱が可能な持続性のある親水性皮膜を形成することができる。
こうした本発明によれば、自動車ボディー、自動車部品、建材、家電用部品等の成形加工品、鋳造品、シート、コイル等の金属材料の表面に、上記効果を奏する親水性皮膜を形成できるので、例えばアルミニウム材を用いて形成された熱交換器の熱交換効率を向上させるために極めて有効である。
より具体的には、本発明は、以下のような問題を解決するのに極めて有効となる。
冷房、暖房、除湿等の機能を備えた空調機器(室外機を含む。)は、アルミニウム材で形成された熱交換器用フィンを備えている。最近の熱交換器は、放熱効果又は冷却効果の向上等の高能力化を目的とし、放熱部及び冷却部の表面積をできるだけ大きくとるように設計され、その結果、放熱部及び冷却部であるフィン総表面積を増やすためにフィン間隔が狭くなる傾向にある。現在の空調機器用熱交換器のフィン間隔は、約1〜3mmが一般的でありこれからますます狭められていく傾向にある。また、空調機器は、冷房運転時に、空気中の水分が冷却部であるフィンの表面に結露する。その結露水は、フィンの表面の疎水性が高いほど水滴になり易く、水滴の成長によりフィン間で目詰まり(ブリッジ)が発生する。ブリッジが発生すると、通風抵抗の増大、熱交換効率の低下、目詰まりした水滴の飛散等の問題を生じることがある。これらの問題は、上記のようにフィン間隔が狭いほど顕著となる。さらに、空調機器は、断続的な使用によって結露水の滞留と乾燥が繰り返され、フィンの表面が腐食して製品寿命が短くなることがある。加えて、自動車内や室内の空調機器は、フィン間等に堆積した腐食生成物が、自動車内や室内中に飛散することもある。このような問題に対して、本発明の親水化表面処理金属材を使用した熱交換器では、フィン間隔を狭めても低い通風抵抗値及び高い熱効率を維持し、目詰まりした水滴の飛散を抑制し、さらには、フィン表面の腐食や腐食生成物の飛散を抑制することが可能である。
また、上述の空調機器のほか、強制循環冷却方式の冷凍冷蔵庫においても、冷媒パイプに多数のアルミニウム製冷却フィンを嵌め合わせて形成した、多段のフィンアンドチューブタイプの熱交換器が用いられている。この熱交換器において、冷却される循環空気中の水分は熱交換器表面が0℃以下になるため結露水になり、その結露水は霜となって熱交換器表面に付着して成長する。これにより、フィン間の隙間が閉塞し、熱交換器の通風抵抗が増大し、熱交換性能が低下する。このため、ガラス管ヒーターやアルミパイプヒーター等のヒーターにより、除霜を定期的に行う必要がある。したがって、空調機器と同様に、霜が溶けた排水時に表面処理皮膜の溶解又は流出が起こるおそれがある。また、冷凍冷蔵庫においては、除霜のためのヒーターにより、フィンの表面温度が空調機器以上に変化し、熱負荷が大きい。このような冷凍冷蔵庫の熱交換器においては、本発明により、最も着霜し易い熱交換器の空気入り側のフィンでの着霜を遅延させる効果があり、着霜による閉塞のために従来10mm以上にフィン間隔をあけていたものを、フィン間隔を狭くでき、フィン枚数を増加させることができ、その結果、熱交換性能を向上させることができる。また、除霜間隔を長くすることができ、期間あたりのヒーター稼働率を下げて消費電力を低下させることができる。
また、本発明の実施形態によれば、以上の作用効果は、従来技術とは異なり、高い温度領域での処理であるロウ付けをした場合でも維持されるものである。
次に、実施例及び比較例により、本発明の効果を説明するが、本実施例はあくまで本発明を説明する一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
[試験片の作製方法]
(金属材料)
以下の市販のアルミニウム材及び鉄鋼材料を金属材料として使用した。その試験片の大きさは、縦300mm×横150mm×厚さ0.1mmである。
M1:JIS−H−4000 A−1050(下地処理:なし)、
M2:JIS−H−4000 A−1050(下地処理:りん酸クロメート、Cr付着量:5mg/m)、
M3:JIS−H−4000 A−1050(下地処理:りん酸クロメート、Cr付着量:15mg/m)、
M4:JIS−H−4000 A−1050(下地処理:りん酸クロメート、Cr付着量:20mg/m
M5:JIS−H−4000 A−1050(下地処理:りん酸クロメート、Cr付着量:40mg/m
M6:JIS−G−3141 SPCC−SD(下地処理:なし)
(前処理:洗浄)
試験片の作製方法としては、先ず、上記アルミニウム材の表面を、40℃に保たれた非エッチング型弱アルカリ脱脂剤(商品名:ファインクリーナー315E、日本パーカライジング株式会社製)の30g/L水溶液中に60秒間浸漬し、表面上の油分や汚れを取り除いた。次に、水道水で水洗し、金属材料の表面が水で100%濡れることを確認した後、更に純水を流しかけ、100℃の雰囲気で水分を除去した。これを試験片として使用した。
(前処理:りん酸クロメート)
上記A2〜A5の試験片の作製方法としては、先ず、上記と同様に金属材料の表面を洗浄し、次いで、50℃に保たれたりん酸クロメート表面処理剤(商品名:アルクロム−K702、日本パーカライジング株式会社製)の4.7g/L水溶液で、上記した所定のCr付着量になるように2〜10秒間スプレー処理し、りん酸クロメート皮膜を形成した。次に、水道水で水洗し、更に純水を流しかけ、80℃の雰囲気で3分間乾燥させた。これを試験片として使用した。
[表面処理剤]
下記の表1〜8に示した各成分を用いて、表9〜表12に示す組成となるように調製し(処理剤中の固形分質量の合計が100質量%となるように調製した。)、実施例用処理剤1〜85と比較例用処理剤1〜4を準備した。なお、有機無機ケイ素化合物(G)は、下記のコロイダルシリカ(E)と下記のオルガノアルコキシシラン(F)の加水分解反応及び縮合反応が進行することにより得られたものである。また、りん酸金属塩粒子(H)は、りん酸亜鉛(Zn(PO・4HO)を、ジルコニアビーズを用いたボールミルで粉砕し、以下の平均粒子径のりん酸亜鉛粒子を用いた。水にこのりん酸亜鉛粒子を加えて縣濁液とした後に5μmのペーパーフィルターで濾過し、りん酸亜鉛粒子の平均粒子径を粒度分布測定装置(型名:ナノトラックEX150、日機装株式会社製)で測定した。また、各処理剤のアルコール濃度の測定は、ガスクロマトグラフィー法により行った。
Figure 2019073750
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[表面処理方法]
準備した実施例用処理剤1〜85と比較例用処理剤1〜4を用い、前処理した金属材料上に、表9〜表12に示す条件で処理して、実施例1〜85及び比較例1〜4の表面処理皮膜を形成した。表面処理方法は、各表面処理剤をバーコート法で各試験片上に塗装し、その後、水洗することなく、そのままオーブンに入れて乾燥させ、所定の皮膜量の皮膜を形成させた。バーコート法での塗装は、表面処理剤を試験片に滴下して、ロッドNo.3〜No.5のバーコーターで行った。なお、このロッドNoは、旧規格のJIS K 5400の「7.5 バーコーター塗り」に記載の巻き線の直径をミル単位で示した番号である。使用したバーコーターの種類と表面処理剤の濃度とにより、所定の皮膜量となるように調整した。乾燥温度は、オーブン中の雰囲気温度とオーブンに入れている時間とで調節した。このときの乾燥温度は、試験片表面の到達温度(PMT)を示し、表中では、「PMT」と示してある。
[性能評価]
実施例1〜85及び比較例1〜4の条件で処理して得た表面処理皮膜について、以下に示すロウ付け相当加熱前後の性能評価を行った。その結果を、表面処理条件と併せて表13〜表16に示す。以下では、◎(ランク1)、○(ランク2)及び△(ランク3)が合格(使用可能範囲)とし、×(ランク4)が不合格として評価した。
(ロウ付け相当加熱)
ロウ付け相当加熱の条件は、窒素雰囲気下にて、加熱温度を600℃とし、加熱時間を600℃到達後10分とした。
(密着性:テープ剥離試験)
密着性は、JIS−K−5600に従ってテープ剥離試験を行い、皮膜の剥離の程度(面積割合)により評価した。評価基準を以下に示す。なお、面積割合は、目視で評価したものを百分率で表した。
◎(ランク1):5%以下の剥離
○(ランク2):5%超、20%以下の剥離
△(ランク3):20%超、50%以下の剥離
×(ランク4):50%超の剥離
(密着性:wetラビング試験)
耐水密着性は、塗装板上に純水で湿らせたキムワイプを乗せ、その上から2ポンドハンマーを静置して10cmの距離を5往復習動させ、習動部位の外観変化により評価した。評価基準を以下に示す。
◎(ランク1):全く変化無し
○(ランク2):習動部がかすかに分かる
△(ランク3):習動部が分かるが皮膜の剥離は見られない
×(ランク4):明らかな皮膜の剥離が見られる(素地が見える)
(耐ブロッキング性)
耐ブロッキング性は、実施例用処理剤1〜85と比較例用処理剤1〜4による処理面を重ねあわせ、100kg/cmの荷重で圧着し、所定の温度のオーブンで15分保持した時の処理面の圧着状態を確認した。評価は、圧着されない上限温度にて行った。評価基準を以下に示す。
◎(ランク1):120℃で圧着が認められないもの
○(ランク2):100℃以上120℃未満で圧着するもの
△(ランク3):80℃以上100℃未満で圧着するもの
×(ランク4):80℃未満で圧着するもの
(ロウ付け性)
Si粉末(粒径10μm)3gと、フラックス(KZnF:粒径2.0μm)6g、及び、アクリル系樹脂バインダ1g、溶剤としてのイソプロピルアルコール16gの混合物からなる溶液を、JIS−A−3003のアルミニウム材にロール塗布し、乾燥させた。次に、このアルミニウム材のチューブと各種(実施例1〜85及び比較例1〜4の条件で処理して得た表面処理皮膜を有するアルミニウム材及び鉄鋼材料を用いた)フィンを1段組み立て、窒素雰囲気の炉内に600℃×10分保持する条件でロウ付けを行った。
ロウ付け接合された各フィンをチューブからはぎ取り、チューブ表面に残存するフィン接合部跡を観察し、次式にて接合率を算出した。フィン接合部跡は100箇所測定した。
接合率=(100−未接合箇所の数/全接合箇所数)×100(%)
未接合箇所の数:容易に剥がれた箇所もしくは、接合跡が見られない箇所
全接合箇所の数:ロウ付けを行った全箇所数
◎(ランク1):95%以上の接合率
○(ランク2):80%以上95%未満の接合率
△(ランク3):50%以上80%未満の接合率
×(ランク4):50%未満の接合率
(初期親水性)
親水性は、接触角計(型名:DIGIDROP D−S、仏国 GBX社製)を用い、液滴法により測定した接触角により評価した。接触角は、水滴量を2μLとし、滴下30秒後の接触角を測定した。評価基準を以下に示す。
◎(ランク1):5°以下の接触角
○(ランク2):5°超、25°以下の接触角
△(ランク3):25°超、40°以下の接触角
×(ランク4):40°超の接触角
(親水持続性:乾湿交互繰り返し試験)
乾湿交互繰り返し試験は、流水浸漬10分(流水量:脱イオン水で0.5L/分)行った後、室温で15分乾燥させることを1サイクルとして、300サイクル実施した後の接触角により評価した。接触角の測定は上記した親水性の評価と同じ方法である。評価基準を以下に示す。
◎(ランク1):5°以下の接触角
○(ランク2):5°超、25°以下の接触角
△(ランク3):25°超、40°以下の接触角
×(ランク4):40°超の接触角
(親水持続性:加熱サイクル試験)
加熱サイクル試験は、流水浸漬6時間(流水量:脱イオン水で0.5L/分)行った後、80℃の雰囲気で18時間乾燥させることを1サイクルとして、10サイクル実施した後の接触角により評価した。接触角の測定は上記した親水性の評価と同じ方法である。評価基準を以下に示す。
◎(ランク1):5°以下の接触角
○(ランク2):5°超、25°以下の接触角
△(ランク3):25°超、40°以下の接触角
×(ランク4):40°超の接触角
(耐水性)
耐水性は、120時間の流水浸漬後の皮膜残存率から評価した。皮膜残存率は、質量(w1)を測定した試験片を流水に120時間浸漬し、30℃のオーブンで24時間乾燥させた後に、再度質量(w2)を測定し、その後、皮膜を剥離し、再び質量(w3)を測定し、(w2−w3)/(w1−w3)×100(%)の式より算出した。評価基準を以下に示す。
◎(ランク1):90%以上の残存率
○(ランク2):75%以上、90%未満の残存率
△(ランク3):50%以上、75%未満の残存率
×(ランク4):75%未満の残存率
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以上の評価結果より、本発明の親水化表面処理剤、親水性皮膜、及び親水化表面処理方法によれば、優れた親水性、耐熱性、密着性及び耐ブロッキング性を有し、親水性とトレードオフの関係にある耐水性を併せ持つ、ロウ付け又はロウ付け相当の加熱が可能な持続性のある親水性皮膜を形成することが分かった。

Claims (5)

  1. スルホ基含有(メタ)アクリル樹脂(A)とジルコニウム化合物(B)と気相シリカ(C)とを配合してなる親水化表面処理剤。
  2. 前記(メタ)アクリル樹脂(A)とジルコニウム化合物(B)の固形分質量比(M/M)が、0.2以上1.2以下である、請求項1に記載の親水化表面処理剤。
  3. 前記気相シリカ(C)の固形分質量比{M/(M+M)}が0.05以上3.0以下である、請求項1または2に記載の親水化表面処理剤。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の親水化表面処理剤を塗布し、乾燥して得られる親水性皮膜。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の親水化表面処理剤を、金属材表面の一部又は全部に塗布し乾燥することで親水性皮膜を形成する表面処理方法。
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