JP2019071342A - 薄膜太陽電池の製造方法 - Google Patents

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陸 杉山
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カトリ イズール
Khatri Ishwor
カトリ イズール
純平 松浦
Junpei Matsuura
純平 松浦
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Abstract

【課題】製造時間が短縮化された、且つ、変換効率に優れた薄膜太陽電池の製造方法を提供すること。【解決手段】裏面電極と、前記裏面電極上に形成され、第11族元素と第13族元素と第16族元素とを含む第一化合物半導体層と、前記第一化合物半導体層における下記バッファ層側の表層に設けられた第二化合物半導体層と、からなる光吸収層と、前記光吸収層上に形成され、第12族元素を含む化合物半導体層からなるバッファ層と、前記バッファ層上に形成され、第12族元素を含む酸化物半導体層からなる透明電極とを有する太陽電池構造を準備する工程と、前記太陽電池構造に対して、加熱しつつ、前記裏面電極から前記透明電極に向かう外部電界を印加する処理工程と、を有する薄膜太陽電池の製造方法を提供すること。【選択図】図1

Description

本発明はCIGS系材料の薄膜を光吸収層に用いた薄膜太陽電池の製造方法に関する。
安価で高効率な薄膜太陽電池として、銅とインジウムとガリウムとセレンとイオウの5種の元素を原料として生成されたCu(In1−xGa)(Se1−m)z組成を有する薄膜を光吸収層に用いた薄膜太陽電池(以下、CIGS系薄膜太陽電池、又は、素子とも称す)の研究開発が行われている。
最近では、CIGS系薄膜太陽電池の製造工程において、加熱と光照射を併用する熱・光照射処理によって、高いエネルギー変換効率を示すことが報告されている。CIGS系太陽電池のようなpn接合太陽電池では、プラスとマイナスの両端子を開放した状態で、光照射すると電子正孔対が発生して、電子(マイナス)はCIGS系光吸収層の表面側に、また正孔(プラス)は裏面Mo電極側に移動、蓄積することで、開放電圧が発生する。このとき、加熱することで、Naなどのアルカリイオンが活性化し、裏面電極側から表面側に向う内部電界によって、ソーダライムガラス基板からMo電極を介してCIGS系光吸収層に注入されたNaがInCu(ドナー性欠陥)などと置換しNaCu(中性)となることでCIGS系光吸収層のキャリア濃度が増加し、これに伴い開放電圧が向上する。
例えば、非特許文献1では、「ZnS(O,OH)バッファ層を用いたCIGS系太陽電池において、加熱(130℃)と光照射(AM1.5, 100mW/cm)を同時に行う熱・光照射処理により、変換効率が大幅に改善されること」が開示されている。また、「その原因がZn系バッファ層内のS/(S+O)比が変化し、伝導帯オフセットが最適化された結果であること」も記載されている。
ごく最近では、CIGS系薄膜を製膜した後に、Na、K、Rb、Csなどのアルカリ金属フッ化物を真空蒸着法等によって堆積して、CIGS系薄膜の表面層にアルカリ金属を添加することで、CIGS系太陽電池の変換効率を改善できることが報告されている。
例えば、非特許文献2では、「Cu(InGa)(SSe)光吸収層を用いたCIGS系太陽電池において、KF後処理工程を付加することで、バッファ層と光吸収層の界面における光生成キャリアの再結合が低減され、多結晶シリコン太陽電池を凌ぐ変換効率が得られること」が開示されている。
最近、アルカリ金属処理を施したCIGS系薄膜太陽電池において、熱・光照射処理を行うことで、更に変換効率を改善できることが報告されている。
例えば、非特許文献3では、「CIGS製膜後にフッ化カリウム(KF)を基板温度350℃で真空蒸着し、その後で純水で余分なKFを除去する方法でKF処理したCIGS系光吸収層を用いたCIGS系太陽電池において、大気中で130℃に加熱した状態で、ソーラーシミュレータ光(AM1.5、100mW/cm)を30分間、光照射すると、キャリア濃度が増加し、それに伴ない変換効率が向上すること」が開示されている。
例えば、非特許文献4では、「CdSバッファ層を用いたKF処理したCIGS系太陽電池において、熱・光照射処理を、窒素ガス雰囲気中で90℃に加熱した状態で、ハロゲンランプを用い、50,000luxで光照射を、500時間行うと、短絡電流の低下なしで変換効率を1.07倍に改善できること」が開示されている。
光照射がCIGS系太陽電池に及ぼす効果は、開放状態での光照射によって生じた内部電界がNaイオンの活性化に寄与することが基本である。この内部電界の代わりに外部電界(バイアス電圧)を付与することで、光照射と同様な状態にする事ができ、その結果、CIGS系太陽電池の変換効率が向上する。
例えば、特許文献1には、「Zn化合物系バッファ層を用いたCIGS系太陽電池に関して、暗時順方向に開放電圧以下のバイアス電圧を印加することで、開放電圧(Voc)と曲線因子(FF)が改善され変換効率が向上する製造工程」が開示されている。
特開平9−36409号
T. Kobayashi, H. Yamaguchi, T. Nakada: "Effects of combined heat and light soaking on device performance of Cu(In,Ga)Se2 solar cells with ZnS(O,OH) buffer layer", Progress in Photovoltaics: Research and Applications, 2014, Vol.22, Issue 1, pp115-121. K. F. Tai, R. Kamada, T. Yagioka, T. Kato, H. Sugimoto: "From 20.9 to 22.3% Cu(In,Ga)(S,Se)2 solar cell: Reduced recombination rate at the heterojunction and the depletion region due to K-treatment",Japanese Journal of Applied Physics, 2017, Vol.56, 08MC03. 松浦純平, 首藤晃佑, Ishwor Khatri, 杉山陸, 中田時夫, "KF処理CIGS/CdS太陽電池の熱・光照射効果", 第77回応用物理学会秋季学術講演会予稿集, 2016, 14p-P21-18. J. Nishinaga, T. Koida, S. Ishizuka, Y. Kamikawa, H. Takahashi, M. Iioka, H. Higuchi, Y. Ueno, H. Shibata, S. Niki: "Effects of long-term heat-light soaking on Cu(In,Ga)Se2 solar cells with KF postdeposition treatment", Applied Physics Express, 2017, 10, pp092301.
従来、CIGS系太陽電池における高変換効率化の技術として、外部からバイアスを印加する処理が開示されている。しかし、この方法は、CIGS系太陽電池に対し、室温で、外部からバイアス電圧を印加する製造方法であって、加熱した状態でバイアス電圧を印加する方法でない。すなわち、CIGS系薄膜中のNa等のアルカリイオンの活性が低く変換効率の改善は限定的であった。また最近のアルカリ金属処理を施したCIGS系光吸収層にはそのまま適用できないなどの難点があった。
さらに、発明者らの実験によれば、アルカリ金属処理を施していない最新の高効率CIGS系薄膜太陽電池では、加熱の有無にも関わらず、室温でバイアス電圧を印加すると逆に変換効率が低下し、高い変換効率を得ることはできない。これは、特許文献1の実施例とは異なる実験結果である。この原因は最近の高効率CIGS系太陽電池では2重傾斜禁制帯構造を有する光吸収層が一般に用いられており、禁制帯幅の最小となる位置(ノッチ)や伝導帯下端の傾斜角度などの最適化技術が進展しており、特許文献1で用いられた当時の比較的、変換効率の低いCIGS系太陽電池のバンド構造とは異なるためである。
このほか、従来のCIGS系太陽電池の高効率化技術として、アルカリ金属処理と熱・光照射処理との複合処理が開示されている。この方法では、光照射によってCIGS光吸収層内に発生する内部電界と熱エネルギーによってソーダライムガラス基板からMo裏面電極膜を介してCIGS系光吸収層に注入されるNa等のアルカリ金属イオン、あるいはCIGS系薄膜の表面から注入されるアルカリ金属が活性し、Cu位置のInやGa(InCuやGaCu)などのドナー性欠陥をNaが補償することで、CIGS系光吸収層内のキャリア濃度が高くなり、開放電圧が向上すると考えられている。しかし光照射により発生する内部電界は、開放電圧以上にはなり得ない。したがって、キャリア濃度の増加は限定的となり、ひいては太陽電池の開放電圧も限定的となる。また、非特許文献4によれば、処理時間は500時間と報告されており、熱・光照射では処理時間が長く、製造時間がかかるという問題もあった。
そこで、本発明の目的は、製造時間が短縮化された、且つ、変換効率に優れた薄膜太陽電池の製造方法を提供することにある。
上記課題は、以下の手段により解決される。
<1> 裏面電極と、
前記裏面電極上に形成され、第11族元素と第13族元素と第16族元素とを含む第一化合物半導体層と、前記第一化合物半導体層における下記バッファ層側の表層に設けられた第二化合物半導体層と、からなる光吸収層と、前記光吸収層上に形成され、第12族元素を含む化合物半導体層からなるバッファ層と、前記バッファ層上に形成され、第12族元素を含む酸化物半導体層からなる透明電極とを有する太陽電池構造を準備する工程と、
前記太陽電池構造に対して、加熱しつつ、前記裏面電極から前記透明電極に向かう外部電界を印加する処理工程と、
を有する薄膜太陽電池の製造方法。
<2> 太陽電池構造に対する、加熱温度が50℃以上200℃以下であり、外部電界強度が0.1V/μm以上10V/μm以下であり、加熱及び外部電界印加時間が1分以上100分以下である<1>に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
<3> 前記第二化合物半導体層は、アルカリ金属、第11族元素、第13族元素および第16族元素を含む化合物半導体層である<1>又は<2>に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
<4> 第二化合物半導体層は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択される少なくとも1種を含むアルカリ金属化合物を前記第一化合物半導体層の表面に堆積させ、前記第一化合物半導体層の表層にアルカリ金属を拡散することにより形成されている<1>〜<3>のいずれか1つに記載の薄膜太陽電池の製造方法。
<5> 第二化合物半導体層は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択される少なくとも1種を含むアルカリ金属を前記第一化合物半導体層の表面にイオン注入することにより形成されている<1>〜<3>のいずれか1つに記載の薄膜太陽電池の製造方法。
<6> 前記光吸収層において、単傾斜禁制帯構造、又は、前記光吸収層の空乏層の幅が、伝導帯下端が最小となる位置より広い2重傾斜禁制帯構造を有する<1>〜<5>に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
<7> 前記外部電界の印加は、前記裏面電極を正極、前記透明電極を負極として、前記裏面電極および前記透明電極の間に電圧を印加することで行う<1>〜<6>のいずれか1つに記載の薄膜太陽電池の製造方法。
<8> 前記裏面電極および前記透明電極の間に印加する電圧が、0.5V〜2.0Vである<7>に記載の太陽電池の製造方法。
<9> 前記裏面電極および前記透明電極の間に印加する電圧が、太陽電池の開放電圧Voc以上である<7>又は<8>に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
本発明によれば、製造時間が短縮化された、且つ、変換効率に優れた薄膜太陽電池の製造方法が提供される。
本実施形態に係る薄膜太陽電池の層構成を示す概略斜視図である。 実施例1及び比較例1の電流密度と電圧の関係を示すグラフである。 比較例2〜比較例4の電流密度と電圧の関係を示すグラフである。 実施例1及び比較例1の、容量−電圧測定(CV測定)から求められたキャリア濃度と空乏層幅の関係を示すグラフである。 実施例4〜実施例6及び比較例7の変換効率と加熱及び外部電界の印加処理の際の加熱温度との関係を示すグラフである。 実施例7〜実施例8及び比較例8の短絡電流を示すグラフである。 実施例7〜実施例8及び比較例8の変換効率を示すグラフである。 実施例9〜実施例11及び比較例9〜比較例10の変換効率を示すグラフである。 本実施形態に係るバンドギャップ分布を表すグラフである。 本実施形態に係る空乏層とキャリアの関係を表すグラフである。
以下に、本発明の一例である実施形態について説明する。
本実施形態に係る薄膜太陽電池の製造方法は、
「裏面電極と、前記裏面電極上に形成され、第11族元素と第13族元素と第16族元素とを含む第一化合物半導体層と、前記第一化合物半導体層における下記バッファ層側の表層に設けられた第二化合物半導体層と、からなる光吸収層と、前記光吸収層上に形成され、第12族元素を含む化合物半導体層からなるバッファ層と、前記バッファ層上に形成され、第12族元素を含む酸化物半導体層からなる透明電極とを有する太陽電池構造を準備する」工程と、「前記太陽電池構造に対して、加熱しつつ、前記裏面電極から前記透明電極に向かう外部電界を印加する」処理工程と、を有する。本実施形態に係る薄膜太陽電池の製造方法は、その他の工程を含んでいてもよい。
本実施形態に係る薄膜太陽電池は、上述した工程を経て製造されることで、製造時間が短縮化された、且つ、変換効率に優れた薄膜太陽電池が提供される。
製造時間が短縮化された薄膜太陽電池が得られる作用としては、以下の様に推定される。
熱・光照射処理工程を経て製造した薄膜太陽電池では、定量的な光吸収のために、長期の製造時間を必要とされていた。しかし、本実施形態に係る熱及び外部電界の印加の処理工程を経て製造した薄膜太陽電池の場合は、光吸収に必要な時間を要さず、外部電界を印加するだけであるため、製造時間の短縮化が見込める。製造時間が短縮化されると、製造コストも安価になり易い。
また、変換効率に優れた薄膜太陽電池が得られる作用としては、以下の様に推定される

例えば、光吸収層における第二化合物半導体層に、アルカリ金属、第11族元素、第13族元素および第16族元素を含む場合、層形成時に、第一化合物半導体層に大量のアルカリ金属を拡散する。このときアルカリ金属が第一化合物半導体層中に存在するドナー性欠陥であるCu原子位置のIn(InCu)やGa(GaCu)と置換することで、NaCu(中性)などを形成し、相対的に第一化合物半導体層中のアクセプタ濃度が増加し易くなる。第一化合物半導体層中のアクセプタ濃度が増加すると、Vocが向上し易くなる。ここまではアルカリ金属処理による効果であるが、この状態で、前記太陽電池に加熱と共に外部から電圧を印加すると、アルカリ金属が活性化し、InCuやGaCu (ドナー性欠陥)を中性化して相対的にアクセプタ濃度を増加することで、更にVocが向上し易くなる。また、上述の熱・光照射処理の場合と同様に、第一化合物半導体層の内部に、電界が発生する。第一化合物半導体層の内部に電界が発生すると、第一化合物半導体層の内部に存在する正電荷を帯びたアルカリ金属イオンは、第二化合物半導体層とバッファ層界面側に移動する。このとき、第一化合物半導体層および第二化合物半導体層では、アクセプタ性欠陥であるCu空孔に、アルカリ金属イオンが入り、中性化するため、相対的にドナー濃度が増加する傾向にある。ドナー濃度が増加すると、光吸収層のフェルミ準位が伝導帯下端に近づくため、光吸収層とバッファ層の界面に存在するアクセプタ性欠陥が電子で充満され、不活性化され易くなる。このため、光吸収層とバッファ層の界面でのキャリア再結合が低下し、開放電圧Vocが向上し易くなる。
特に、本発明では、熱・光照射処理を用いたCIGS系薄膜太陽電池において、光起電力に限られていた内部電界を、外部電界にまで広げ、内部電界よりも大きな電界を印加する。そしてこの際、外部電界の印加を、加熱と共に行うことで、第一化合物半導体層および第二化合物半導体層における、アルカリ金属の活性が、熱・光照射処理の場合よりも、大きくなる。また、アルカリ金属イオンの移動度が高くなるため、光吸収層とバッファ層の界面側へと移動する、アルカリ金属イオンの総量も増加する。その結果、第二化合物半導体層内におけるバッファ層との界面付近のキャリア濃度が高くなり易い。第二化合物半導体層内におけるバッファ層との界面付近のキャリア濃度が高くなると、界面付近に存在するアクセプタ性欠陥を不活性化し、開放電圧および曲線因子(以下、FFと称する)が改善され、変換効率が向上し易くなる。
以下、本実施形態に係る薄膜太陽電池の層構成、及び、その製造方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態に係る薄膜太陽電池の製造方法は、下記態様に限られるわけではない。
[薄膜太陽電池]
(薄膜太陽電池の層の構成)
本実施形態に係る薄膜太陽電池は、裏面電極と、光吸収層と、バッファ層と、透明電極と、を有する。なお、薄膜太陽電池は、その他の層を含んで構成されてもよい。
図1は、本実施形態に係る薄膜太陽電池の層構成の一例を示す概略部分断面図である。
図1に示す薄膜太陽電池20は、基板10と、裏面電極11と、第一化合物半導体層12a及び第二化合物半導体層12bからなる光吸収層12と、低抵抗バッファ層13a及び高抵抗バッファ層13bからなるバッファ層13と、透明電極14と、表面電極15と、を有している。裏面電極11、第一化合物半導体層12a及び第二化合物半導体層12bからなる光吸収層12、低抵抗バッファ層13a及び高抵抗バッファ層13bからなるバッファ層13、透明電極14、表面電極15は、この順で、基板10の上に設けられている。
ただし、外部電界を印加する薄膜太陽電池構造としては、裏面電極11と、第一化合物半導体層12a及び第二化合物半導体層12bからなる光吸収層12と、低抵抗バッファ層13aと、透明電極15と、を有するのみでよい。
薄膜太陽電池の製造方法は、太陽電池構造を準備する工程(裏面電極の形成工程、光吸収層の形成工程、バッファ層の形成工程、及び透明電極の形成工程)と、熱及び外部電界の印加の処理工程を有している。また、その他の工程を含んで製造されてもよい。
薄膜太陽電池は、上述した構成を備え、熱及び外部電界の印加の処理工程を施せるものであれば、市販品であってもよく、また上述した手法で製造したものでもよい。
本実施形態の薄膜太陽電池は、必要に応じて、配線材料を介して複数の薄膜太陽電池構造(以下、素子とも称する)を連結していてもよい。なお、配線材料及び封止材としては特に制限されず、当該技術分野で通常用いられているものから適宜選択することができる。
以下、薄膜太陽電池におけるバンドギャップ、及び空乏層について説明する。なお、符号は省略する。
本実施形態に係る薄膜太陽電池は、In及びGa等の第13族元素の組成比などにより、禁制帯(以下、バンドギャップと称することもある)の構造を制御することが好ましい。具体的に、光吸収層の厚さ方向での、InとGa等の第13族元素の組成分布を調整する等を行うことで、バンドギャップ分布に傾斜をつける事が好ましい。
バンドギャップ分布の傾斜の種類としては、単傾斜禁制帯構造と、2重傾斜禁制帯構造が挙げられる。
単傾斜禁制帯構造とは、図9(A)に示すように、裏面電極側から光吸収層と低抵抗バッファ層との界面側へ向かってバンドギャップが単調に狭くなる分布を表す。つまり、価電子帯上端のエネルギー準位は変化せず、伝導帯下端のエネルギー準位が次第に下がるバンドギャップ分布を表す。
単傾斜禁制帯構造を有する光吸収層の形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、光吸収層に含まれる第13族元素の内、ガリウムとインジウムの原子比、Ga/(In+Ga)が、裏面電極側からバッファ層側の界面側へ向かって小さくなるように調整して製膜する等の手法が挙げられる。
2重傾斜禁制帯構造とは、図9(B)に示すように、裏面電極側から光吸収層と低抵抗バッファ層との界面側へ向かって伝導帯下端のエネルギー準位が次第に下がり、バンドギャップが狭くなり、再度、伝導帯下端のエネルギー準位が上がり、バンドギャップが広がる分布を表す。つまり、伝導帯下端が最小となる位置(以下、ノッチと称することもある)を有するバンドギャップ分布を表す。
2重傾斜禁制帯構造を有する光吸収層の形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、光吸収層に含まれる第13族元素の内、ガリウムとインジウムの原子比、Ga/(In+Ga)が、裏面電極側からバッファ層側の界面側へ向かって小さくなるように調整していき、その後、バッファ層側の界面付近で、再度、光吸収層に含まれる第13族元素の内のガリウムとインジウムの原子比、Ga/(In+Ga)が大きくなるように調整し製膜する等の手法が挙げられる。
2重傾斜禁制帯構造におけるノッチの位置は、光吸収層の断面を、SIMS(二次イオン質量分析法:Secondary Ion Mass Spectrometry)又はTEM−EDX(透過電子顕微鏡−エネルギー分散X線分光分析:Transmission Electron Microscopy−Energy Dispersive X‐Ray Spectroscopy)を用いて、各組成の定量分析をすることで、得られた第13族元素の濃度比により知ることができる。また、光吸収層の厚さ方向に連続して定量分析を行うことで、ノッチの位置を確認することができる。
一般に、薄膜太陽電池は、外部電界を印加すると、バッファ層と光吸収層との境界面から裏面電極側の厚み方向にかけて、空乏層と呼ばれる、ドナー・アクセプターがイオン化し、電子と正孔が殆ど存在しない領域が発生することが知られている。
本実施形態に係る薄膜太陽電池おける空乏層の幅は、特に限定されるものではないが、例えば、薄膜太陽電池が2重傾斜型のバンドギャップ分布を有する場合、図10(A)に示すように、空乏層の中にノッチが含まれることが好ましい。
空乏層の幅が広く空乏層中にノッチが含まれると、空乏層の幅が狭く空乏層中にノッチが含まれない場合と比べ(図10(B))、熱及び外部電界の印加処理により生成されたキャリアがノッチに溜まることなく移動するため、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池が得られ易くなる。
空乏層の幅は、容量−電圧測定(CV測定)により求められる。
以下、薄膜太陽電池の各層について、詳細に説明する。なお、符号は省略する。
[基板]
基板としては、特に制限はなく、目的に応じて市販品、又は公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、ソーダライムガラス等のガラス板、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅等の金属板等が挙げられる。
上記の中でも、ソーダライムガラス(SLG)であることが好ましい。
[裏面電極]
裏面電極は、例えば、モリブデン、クロム、又はタングステン、およびこれらを組み合わせたものにより構成されることが好ましく、モリブデンがより好ましい。この裏面電極は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造でもよい。
裏面電極の形成方法は、直流電源を用いるDCスパッタリング法により室温にて形成することができる。
裏面電極の膜厚としては、0.2μm以上1.0μm以下が好ましく、0.5μm以上1.0μm以下がより好ましく、0.6μm以上1.0μmがさらに好ましい。
[光吸収層]
(第一化合物半導体層)
第一化合物半導体層は、第11族元素、第13族元素、及び第16族元素を含んで構成される。第一化合物半導体層は、必要に応じて、その他の材料を含んで構成されてもよい。
第一化合物半導体層に含まれる第11族元素としては、例えば、銅、及び銀が挙げられる。これらの中でも、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池を得る観点から、銅が好ましい。これらは、1種類単独でも、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。
第一化合物半導体層に含まれる第13族元素としては、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、及びインジウムが挙げられる。これらの中でも、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池を得る観点から、ガリウム又はインジウムがより好ましい。これらは、2種類以上を組み合わせて含むことが好ましい。
第一化合物半導体層に含まれる第16族元素としては、例えば、酸素、硫黄、セレン、及びテルルが挙げられる。これらの中でも、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池を得る観点から、セレン、硫黄、又はテルルが好ましく、セレン、及び硫黄がより好ましい。これらは、2種類以上を組み合わせて含むことが好ましい。
第一化合物半導体層に含まれるその他の元素としては、例えば、酸素、亜鉛、マグネシウム、カドミウム、ビスマス、又はアンチモンが挙げられる。これらは、1種類単独でも、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。
第11族元素、第13族元素、第16族元素とを含んで構成される第一化合物半導体層としては、例えば、CuInS、CuGaSe、CuInSe(CIS)、AgInSe、AgGaTe、AgInTe、Cu(In1−xGa)Se(CIGS)、Cu(In1−xAl)Se、Cu(In1−xGa)(S、Se)(CIGSSe)、AgCu(In1−xGa)(S、Se)、Ag(In1−xGa)Se、およびAg(In1−xGa)(S、Se)等が挙げられる。
上記の中でも、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池を得る観点から、CuInSe(CIS)、Cu(In1−xGa)Se(CIGS)、又はCu(In1−xGa)(Sy、Se1-y(CIGSSe)が好ましい。
また、市販品、例えば、ソーラーフロンティア社製のセレン化及び硫化法で製造下CIGSSe等を用いてもよい。
これらは、1種類単独でも、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。
CISおよびCIGSはカルコパイライト結晶構造を有する半導体であり、光吸収率が高く、高い光電変換効率が報告されている。また、光照射等による変換効率の劣化が少なく、耐久性に優れている。
第一化合物半導体層の形成方法としては、1)多源同時蒸着法、2)セレン化法等が挙げられる。
多源同時蒸着法としては、3段階法(J. R. Tuttle et.al, Mat. Res. Soc. Symp. Proc., Vol.426 (1996) p.143等)と、ECグループの同時蒸着法(L. Stolt et al.:Proc. 13th ECPVSEC (1995, Nice) 1451等)とが知られている。
3段階法では、In、Ga、及びSe等の蒸気圧が高い元素が、膜の付着量が極端に減少する事を避けるために、高真空中で最初に、蒸気圧の高い元素を基板温度300℃〜400℃で同時に蒸着する。次に、500〜560℃に昇温し、(Cu及びSe等の)第11族元素と第16族元素とを同時蒸着する。その後、(In、Ga、及びSe等の)第13族元素と第16族元素とを、さらに同時蒸着する。3段階法はMBE装置を用いて連続的に行うことが好ましい。ただし、量産化には不向きであり、小面積セルの研究用に用いている。後者のECグループの同時蒸着法は、蒸着初期にCu過剰CIGS、後半でIn過剰CIGSを蒸着する方法である。なお、多源同時蒸着法は、インライン装置を用いて連続的に行うことが好ましい。
CIGS膜の結晶性を向上させるため、上記方法に改良を加えた方法として、
a)イオン化したGaを使用する方法(H. Miyazaki, et.al, phys. stat. sol. (a), Vol. 203(2006)p.2603等)、
b)クラッキングしたSeを使用する方法(第68回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007秋 北海道工業大学)7P−L−6等)、
c)ラジカル化したSeを用いる方法(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集
(2007春 青山学院大学)29P−ZW−10等)、
d)光励起プロセスを利用した方法(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007春 青山学院大学)29P−ZW−14等)等が知られている。
セレン化法は、2段階法とも呼ばれ、最初に(Cu−Ga合金層)/In層等の積層膜の金属プリカーサをスパッタ法、蒸着法、または電着法などで成膜し、これをセレン蒸気またはセレン化水素中で450〜500℃程度に加熱することにより、熱拡散反応によってCu(In1−xGa)Se等のセレン化合物を生成する方法である。この方法を気相セレン化法と呼ぶ。さらに光吸収層の高品質化を図るため、HSガス中で550℃程度に加熱することによりCu(In1−xGa)(Sy、Se1-y(CIGSSe)等の化合物を生成する方法である。このほか、金属プリカーサ膜の上に固相セレンを堆積し、この固相セレンをセレン源とした固相拡散反応によりセレン化させる固相セレン化法がある。
また、グレーデッドバンドギャップCIGS膜の成膜方法として、最初に(Cu−Ga)合金膜を堆積し、その上にIn膜を堆積し、これをセレン化する際に、自然熱拡散を利用してGa濃度を膜厚方向で傾斜させる方法も報告されている(K.Kushiya et.al, Tech.Digest 9th Photovoltaic Science and Engineering Conf. Miyazaki, 1996(Intn.PVSEC-9,Tokyo,1996)p.149.等)。
上記の1)〜2)に示す第一化合物半導体層の形成方法の中でも、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池を得る観点から、多源同時蒸着法を用いることが好ましい。
第一化合物半導体層の膜厚としては、1.0μm以上3.0μm以下が好ましく、1.5μm以上3.0μm以下がより好ましく、1.5μm以上2.0μm以下がさらに好ましい。
(第二化合物半導体層)
第二化合物半導体層は、第一化合物半導体層と、バッファ層の間に狭持される、光吸収層である。
第二化合物半導体層に含まれる元素としては、特に限定されるわけではないが、例えば、第11族元素、第13族元素、第16族元素、アルカリ金属、酸素、亜鉛、又はカドミウムが挙げられる。また、一価の陽イオンとなる元素及び化合物等も挙げられる。
セシウムが挙げられる。これらの中でも、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池を得る観点から、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択され
第二化合物半導体層に含まれるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、又はルビジウム、から少なくとも1種を含むことが好ましい。
第二化合物半導体層に含まれる第11族元素、第13族元素、第16族元素、としては、第一化合物半導体層が示す第11族元素、第13族元素、第16族元素と同様のものが挙げられる。
第二化合物半導体層に含まれる第11族元素としては、例えば、銅、及び銀が挙げられる。これらの中でも、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池を得る観点から、銅が好ましい。これらは、1種類単独でも、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。
第二化合物半導体層に含まれる第13族元素としては、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、及びインジウムが挙げられる。これらの中でも、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池を得る観点から、ガリウム又はインジウムがより好ましい。これらは、2種類以上を組み合わせて含むことが好ましい。
第二化合物半導体層に含まれる第16族元素としては、例えば、酸素、硫黄、セレン、及びテルルが挙げられる。これらの中でも、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池を得る観点から、セレン、硫黄、又はテルルが好ましく、セレン、及び硫黄がより好ましい。これらは、2種類以上を組み合わせて含むことが好ましい。
第二化合物半導体層に含まれるその他の元素としては、例えば、酸素、亜鉛、カドミウム、又はマグネシウムが挙げられる。これらは、1種類単独でも、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。
上述した元素の中でも、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池を得る観点から、第二化合物半導体層には、第一化合物半導体層と同じ材料(第11族元素、第13族元素、第16族元素)と、アルカリ金属が含まれることが好ましい。
第二化合物半導体層に、第一化合物半導体層と同じ材料(第11族元素、第13族元素、第16族元素)が含まれると、第一化合物半導体層とあわせてホモ接合型の光吸収層となるため、過度な結晶欠陥が抑制され、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池が得られ易くなる。
第二化合物半導体層に、アルカリ金属が含まれると、熱及び外部電界の印加の処理によるキャリア濃度の増加が促進されるため、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池が得られ易くなる。
第二化合物半導体層の形成方法としては、第一化合物半導体層を形成後に、第一化合物半導体層に対し、アルカリ金属後処理を施す。アルカリ金属処理は、アルカリ金属を、第一化合物半導体層の表層に導入する方法である。
アルカリ金属後処理としては、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択される少なくとも1種を含むアルカリ金属化合物を第一化合物半導体層の表面に堆積させ、第一化合物半導体層の表層にアルカリ金属を拡散する方法が挙げられる。
堆積させるアルカリ金属化合物としては、フッ化アルカリ金属(NaF、KF、RbF、CsF)、セレン化アルカリ金属、硫化アルカリ金属、アルカリ金属−第13属元素−第16属元素からなる化合物(例えばNaInSe、KInGaSe)等が挙げられる。これらの中でも、フッ化アルカリ金属が好ましい。
第一化合物半導体層の表面へ、アルカリ金属化合物を堆積する方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。
第一化合物半導体層を多源同時蒸着法(例えば3段階法等)で形成する場合、第一化合物半導体層を製膜する真空蒸着装置を利用し、同装置内で、アルカリ金属化合物(例えば、フッ化アルカリ金属等)を蒸着する。蒸着条件は、特に制限はないが、例えば、真空環境、基板温度300〜400℃、蒸着時間0.5〜5分とする。アルカリ金属化合物の蒸着(堆積)により、第一化合物半導体層の表層にアルカリ金属が熱拡散する。
そして、アルカリ金属化合物を蒸着した後、蒸留水やアンモニア水等による洗浄により、第一化合物半導体層の表面に堆積した余分なアルカリ金属化合物を除去する。
これら工程を経ることで、第一化合物半導体層上に、第二化合物半導体層が形成できる。具体的には、第一化合物半導体層の表層に、アルカリ金属を含む第二化合物半導体層が形成できる。
なお、アルカリ金属化合物を堆積する方法は、上記方法に限られず、スパッタリング法(DCスパッタリング、RFスパッタリング、イオンビームスパッタリング、マグネトロンスパッタリング等)、真空蒸着法、イオンプレーティング法等を利用すればよい。
一方、アルカリ金属後処理としては、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択される少なくとも1種を含むアルカリ金属を第一化合物半導体層の表面にイオン注入する方法も挙げられる。
アルカリ金属を第一化合物半導体層の表面にイオン注入する方法としては、特に制限はなく、通常の加速型イオン注入装置を利用する方法が挙げられる。
そして、アルカリ金属を第一化合物半導体層の表面にイオン注入することで、第一化合物半導体層の表層に、アルカリ金属が拡散する。
この工程を経ることで、第一化合物半導体層上に、第二化合物半導体層が形成できる。具体的には、第一化合物半導体層の表層に、アルカリ金属を含む第二化合物半導体層が形成できる。
第二化合物半導体層の膜厚としては、5nm以上500nm以下が好ましく、5nm以上100nm以下がより好ましく、5nm以上50nm以下がさらに好ましい。
[バッファ層]
バッファ層は、光吸収層である第二化合物半導体層の受光面上に形成される。
バッファ層は、第12族元素(亜鉛、カドミウム、又はマグネシウム)を含む化合物半導体層である。
バッファ層は、その構成元素である第12族元素を、光吸収層の表面に、拡散し、Cu空孔(アクセプタ性欠陥)と置換してCdCu等のドナーを形成することで、浅いpnホモ接合を形成する。さらに、光吸収層と透明電極の間に挿入することで、光吸収層と透明電極との間の伝導帯整合性(オフセット)を最適化し、変換効率を改善する。また、透明電極に入射した光を光吸収層まで透過させるために形成されている。つまり、本実施形態に係るバッファ層は、一層で構成してもよく、低抵抗バッファ層および高抵抗バッファ層の2層で構成されていてもよい。
低抵抗バッファ層に含まれる第12族元素を含む化合物半導体としては、変換効率に優れた薄膜太陽電池を得る観点から、CdS、ZnS、ZnO、Zn(S,O,OH)、ZnMgO等が挙げられ、これらの中でもCdS、Zn(S,O,OH)、ZnMgOが好ましく、CdSがより好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高抵抗バッファ層に用いる材料としては、低抵抗バッファ層13aと同様に第12族元素を含む化合物半導体を含むことが好ましい。
高抵抗バッファ層に含まれる第12族元素を含む化合物半導体としては、ZnS、ZnO、Zn(S,O,OH)、ZnMgO等が挙げられ、これらの中でも、ZnO、ZnMgOが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
低抵抗バッファ層の形成は、溶液中の第12族元素のプラスイオンと、第16属元素のマイナスイオンを交互に析出させながら結晶成長するイオン種反応法(溶液成長法)、又は有機金属を加熱分解し反応させ化合物を成長させる有機金属気相成長法(MOCVD)法や、原子層エピタキシー(ALD)法によって形成することが好ましい。
高抵抗バッファ層の形成は、有機金属気相成長法(MOCVD)法、又はスパッタ法によって形成することが好ましい。
低抵抗バッファ層の膜厚としては、5nm以上100nm以下が好ましく、20nm以上60nm以下がより好ましく、5nm以上30nm以下がさらに好ましい。
高抵抗バッファ層の膜厚としては、20nm以上200nm以下が好ましく、30nm以上100nm以下がより好ましく、30nm以上50nm以下がさらに好ましい。
[透明電極]
透明電極は、バッファ層13の受光面上に形成される。
透明電極は、第12族元素(亜鉛、カドミウム、又はマグネシウム)を含む酸化物半導体層である。
第12族元素を含む酸化物半導体としては、例えば、酸化亜鉛、アルミニウム添加酸化亜鉛、又はホウ素添加酸化亜鉛等が挙げられる。なお、上記酸化物半導体に対し、添加物として、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、アンチモン、フッ素、水素等を添加してもよい。また、上記酸化物半導体と、酸化インジウムスズ(ITO)又は酸化スズ(SnO)とを、組み合わせてもよい。
上記の中でも、透明電極は、変換効率に優れた薄膜太陽電池を得る観点から、低い電気抵抗率かつ高い光透過率が必要であることから、アルミニウム添加酸化亜鉛とホウ素添加酸化亜鉛が好ましく、長波長領域においても光吸収損の少ないホウ素添加酸化亜鉛がより好ましい。
透明電極の形成方法は、ジエチル亜鉛、ジボラン、水蒸気等を原料とし、加熱して透明導電膜を形成する有機金属気相成長法(MOCVD)や、RFマグネトロンスパッタ法等の気相成膜法により、アルゴンガス共存下、真空度及び酸素流量を制御して成膜する。又は、塗布法により形成することもできる。
透明電極の膜厚としては、特に制限されるものではないが、0.2μm以上2μm以下が好ましく、0.3μm以上1.5μm以下がより好ましく、0.3μm以上1.0μm以下がさらに好ましい。
[表面電極]
表面電極は、透明電極の受光面上に形成される。
表面電極としては、特に限定するものではないが、例えば、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。
表面電極の形成には、直流電源を用いるDCスパッタリング法により室温にて形成することができる。
なお、薄膜太陽電池は、MgF膜等の周知の反射防止膜を設けてもよい。
[太陽電池構造に対する熱及び外部電界の印加の処理工程]
次に、上述した形成工程を経て製造した、裏面電極と、光吸収層と、バッファ層と透明電極とを有する太陽電池構造に対し、加熱処理及び外部電界の印加の処理を同時に行う。なお、外部電界は、裏面電極から透明電極への方向に印加する。
本実施形態に係る薄膜太陽電池の製造において、加熱しつつ、裏面電極から前記透明電極に向かう外部電界を印加する処理工程を含むと、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池が得られる。
加熱及び外部電界を印加する時間は、1分以上200分以下が好ましく、1分以上100分以下がより好ましく、10分以上60分以下がさらに好ましい。
特に、加熱及び外部電界を印加する時間が、1分以上30分以下であると、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池が得られ易くなる。
(熱処理の方法)
加熱方法としては、薄膜太陽電池における少なくとも基板側の端部に対し、加熱が可能なヒーターを設置し、加熱処理を行うことが好ましい。
加熱方式としては、接触加熱方式、及び輻射加熱方式が挙げられる。これらの中でも、接触加熱方式のヒーターを用いることが好ましい。
加熱温度としては、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池を得る観点から、40℃以上250℃以下が好ましく、50℃以上200℃以下がより好ましく、70℃以上150℃以下がより好ましい。
特に、加熱温度を50℃以上200℃以下とすると、第二化合物層中に含まれるアルカリ金属等の材料がpn接合界面へと移動しやすくなるため、また、光吸収層中のキャリア濃度が上昇するため、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池が得られ易くなる。
なお、加熱温度の測定には、上述の温度センサーを適用することができる。
(外部電界の印加処理)
外部電界の印加の方法としては、薄膜太陽電池を2つの電極で、外部電界を印加する手法が好ましい。
具体的には、電圧印加手段の端子を、裏面電極10と透明電極15とに対して電気的に接続し、電圧印加手段により所定の電圧を印加することで、裏面電極と透明電極との間に外部電界を印加する。
電圧印加手段としては、必要に応じて交流電源、直流電源のいずれも利用でき、交流電圧と直流電圧とを重畳して印加する場合には双方を併用することもできる。また、電界制御手段も備えていることが更に好ましい。
前記外部電界の印加は、裏面電極を正極、透明電極を負極として、裏面電極及び透明電極の間に電圧を印加することが好ましい。
外部電界の印加において、裏面電極を正極、透明電極を負極として、裏面電極及び透明電極の間に電圧を印加すると、光吸収層における第一化合物半導体層の内部がp型層、光吸収層における表層(第二化合物半導体層)がn型層として、効果的に機能するため、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池が得られ易くなる。
外部電界強度は、0.1V/μm以上20V/μm以下が好ましく、0.1V/μm以上10V/μm以下がより好ましく、0.1V/μm以上5V/μm以下がさらに好ましい。
特に、外部電界強度が、0.1V/μm以上10V/μm以下であると、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池が得られ易くなる。
裏面電極及び透明電極の間に印加する電圧は、0.1V以上2.0V以下が好ましく、0.5V以上2.0V以下がより好ましく、0.6V以上2.0V以下がさらに好ましい。また、裏面電極および透明電極の間に印加する電圧は、太陽電池の開放電圧Voc以上でもよい。
特に、裏面電極及び透明電極の間に印加する電圧が、0.5V以上であると、効率的にキャリア濃度を高くすることができるため、変換効率に優れた薄膜太陽電池が得られ易くなる。また、裏面電極及び透明電極の間に印加する電圧が、2.0V以下であると、キャリア濃度を高く維持したまま、空乏層の幅も適度に保つことができるため、変換効率に優れた薄膜太陽電池が得られ易くなる。
なお、外部電界の印加処理は、上記に限らず、別途設けた一対の電極間に、処理対象となる薄膜太陽電池構造を設置し、前記一対の電極間に電圧を印加する処理であってもよい。
[その他の工程]
本実施形態に係る薄膜太陽電池の製造方法は、熱及び外部電界の印加処理を行った後に、暗状態及び大気中における熱処理、すなわちアニーリング処理を行う事が好ましい。
アニーリングの温度としては、50℃以上200℃以下が好ましく、100℃以上150℃以下がより好ましく、120℃以上150℃以下がより好ましい。
アニーリングの時間としては、1分以上200分以下が好ましく、10分以上100分以下がより好ましく、20分以上60分以下がさらに好ましい。
薄膜太陽電池は、熱及び外部電界の印加処理を行った後に、一度室温に戻してからアニーリング処理を行うことが好ましい。薄膜太陽電池を室温に戻す手法としては、大気中で自然冷却してもファンなどを用いて冷却(風冷)してもよい。
熱及び外部電界の印加処理を行った後に、アニーリング処理を行うと、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池が得られ易くなる。その作用は、以下のように推定される。
薄膜太陽電池に熱及び外部電界の印加処理を行うと、キャリア濃度が上昇する。キャリア濃度が上昇すると、Vocも上昇する。
しかしその一方で、光吸収層における空乏層の幅が狭くなり易い。空乏層の幅が狭くなると、薄膜太陽電池が、例えば、2重傾斜禁制帯構造を有する場合、空乏層の範囲にノッチが含まれないことがある。空乏層の範囲にノッチが含まれないと、短絡電流が低下し易い。
薄膜太陽電池の変換効率は、短絡電流とVocとの積から求められるため、短絡電流が低下すると、先の熱及び外部電界の印加処理に由来してVocが上昇したとしても、変換効率への寄与が小さい。
これに対し、熱及び外部電界の印加処理の後に、さらにアニール処理を行うと、加熱により、キャリア濃度が適度に低下するため、光吸収層における空乏層の幅が広がり易くなる。空乏層の幅が広がることで、薄膜太陽電池が、例えば、2重傾斜禁制帯構造を有する場合、空乏層の範囲内にノッチが含まれ易くなる。空乏層の範囲内にノッチが含まれると、短絡電流が上昇し易くなる。従って、先の熱及び外部電界の印加処理に加えて、アニール処理を行うことで、Voc及び短絡電流の両方が上昇するため、熱及び外部電界の印加処理のみを施した薄膜太陽電池よりも、変換効率が上昇し易くなると考えられる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」を意味する。
−薄膜太陽電池の製造−
[実施例1]
ソーダライムガラス(SLG)の基板上に、膜厚0.5〜1μmのMo裏面電極をDCスパッタ法で室温製膜し、裏面電極とした。
次に、得られた裏面電極面の受光面上に、膜厚2〜3μmの第一化合物半導体層を、3段階蒸着法により製膜した。3段階法では、第1段階でIn、Ga、Seを基板温度350〜400℃で照射し、第2段階で基板温度を500〜550℃で照射し、CuとSeのみを照射する。そして、第3段階で、In、Ga、Seを再び照射し、平均膜組成が(Cu/III=0.8〜0.9)となる第一化合物半導体層(Cu(In1−xGa)Se層)を作製した。得られた第一化合物半導体層は、Ga/(In+Ga)比が膜厚方向でV字型となっており、薄膜太陽電池の高効率化の必要な2重傾斜禁制帯(ダブル・グレーデッド・バンドギャップ)構造となっている。
第一化合物半導体層の作製後、同じ製膜装置内で、第一化合物半導体層の受光面上に、第二化合物半導体層を作製した。具体的に、フッ化ナトリウムを、真空中、基板温度を350℃とし、1〜2分間蒸着する。その後、蒸着した表面を、水洗し、過剰なフッ化カリウム及びフッ化ナトリウムを除去した。それにより、第一化合物半導体層の表層に、第二化合物半導体層(Na(In1−xGa)Se層)を作製した。このようにして、第一化合物半導体層と第二化合物半導体層からなる光吸収層を作製した。
次に、光吸収層の受光面上に、低抵抗バッファ層を溶液成長法(Chemical Bath Deposition:CBD法)で堆積した。具体的には、65℃の硫化カドミウム−チオウレア−アンモニア水溶液中に、光吸収層を12分間浸し、大気中、室温でゆっくり60mg程度の硫化カドミウムの結晶を析出させ、CdS層を形成した。
次に、低抵抗バッファ層の受光面上に、RFマグネトロンスパッタ法を用いて、高抵抗バッファ層として、100−400nm程度の酸化亜鉛膜を形成した。
次に、Ni/Al電極を真空蒸着法により蒸着し、薄膜太陽電池を作製した。
最後に、得られた薄膜太陽電池に対し、基板側から、130℃で加熱および電圧を0.8Vで印加する処理を30分間同時に行った。なお、前記外部電界の印加は、裏面電極を正極、透明電極を負極として電圧を印加した。熱及び外部電界の印加処理後は、大気中において暗状態で2時間静置し、室温にまで放冷した。
[比較例1]
実施例1において、加熱及び外部電界の印加処理をしていない以外は、実施例1と同様に操作を行い、薄膜太陽電池を得た。
[比較例2〜4]
実施例1において、第二化合物半導体層を形成していない、及び、加熱及び外部電界の印加処理における条件を表1に示す仕様にした以外は、実施例1と同様に操作を行い、薄膜太陽電池を得た。
[実施例2〜3、比較例6]
実施例1において、第二化合物半導体層の形成時に、フッ化ナトリウムの代わりにフッ化セシウムを用いた。また、熱及び外部電界の印加処理の工程において、印加する電圧を表2に示す仕様にした以外は、実施例1と同様に操作を行い、各薄膜太陽電池を得た。
[比較例5]
実施例1において、加熱及び外部電界印加処理の代わりに、加熱・光照射処理を行った以外は、実施例1と同様に操作を行い、薄膜太陽電池を得た。
なお、加熱・光照射処理としては、光源としてソーラーシュミレータを用い、AM1.5の擬似太陽光を100W/cmの光強度にて半導体電極側から照射しながら、基板側から130℃で加熱する処理を30分間行った。
[実施例4〜6、比較例7]
実施例1において、第二化合物半導体層の形成時に、フッ化ナトリウムの代わりにフッ化セシウムを用いた。また、熱及び外部電界の印加処理の工程において、加熱する温度を表3に示す仕様にした以外は、実施例1と同様に操作を行い、各薄膜太陽電池を得た。なお、実施例4〜6、比較例7の薄膜太陽電池は、同じ製造バッチとした。
[実施例7〜8、比較例8]
実施例1において、第二化合物半導体層の形成時に、フッ化ナトリウムの代わりにフッ化セシウムを用いた。また、熱及び外部電界の印加処理の工程において、印加する電圧を表4に示す仕様にした以外は、実施例1と同様に操作を行い、各薄膜太陽電池を得た。なお、実施例7〜8、比較例8の薄膜太陽電池は、同じ製造バッチとした。
[実施例9〜11、比較例9〜10]
実施例1において、第二化合物半導体層の形成時に、フッ化ナトリウムの代わりにフッ化セシウムを用いた。また、表5に示す仕様の熱及び外部電界の印加処理の工程の後に、大気中室温における30分間の放冷、及び更に冷却ファンを用いて30分間放冷し、薄膜太陽電池を室温に戻した。なお、実施例9〜11、比較例9〜10の薄膜太陽電池は、同じ製造バッチとした。
−評価−
実施例1〜実施例11、及び比較例1〜比較例10で得られた薄膜太陽電池について、次の評価を実施した。評価結果を表1〜表5に示す。
製造した薄膜太陽電池の評価は、ソーラーシミュレータを用いた擬似太陽光(エアマス1.5、光強度100mW/cm)および大気中で周囲温度25℃の条件下で、電流−電圧特性の測定を行い、太陽電池としての発電性能を示すEff(変換効率)、FF(曲線因子)、Voc(開放電圧)及びJsc(短絡電流)を求めた。なお、ソーラーシミュレータの校正はシリコン基準電池を用いた。太陽電池としての発電性能を示すEff(変換効率)、FF(曲線因子)、Voc(開放電圧)及びJsc(短絡電流)は、それぞれJIS−C−8912、JIS−C−8913及びJIS−C−8914に準拠して測定を行なうことで得られたものである。
[表1について]
上記結果から、本実施例の薄膜太陽電池は、比較例の薄膜太陽電池に比べ、製造時間が短縮化された、及び変換効率に優れた薄膜太陽電池であることがわかる。
具体的に、裏面電極、第一化合物半導体層と第二化合物半導体層からなる光吸収層、バッファ層、及び透明電極を含み、熱及び外部電界の印加処理を経て製造された実施例1の薄膜太陽電池は、同じ薄膜太陽電池構造を有するが熱及び外部電界の印加処理を行っていない比較例1の薄膜太陽電池に比べ、キャリア濃度が上がり、Voc、変換効率(Eff)、共に高い値が得られた(図2、及び図4参照)。
一方、熱及び外部電界の印加処理の工程の代わりに、熱・光照射処理の工程を経て得た比較例5の薄膜太陽電池では、Voc、変換効率、共に低い結果となった。
また、実施例1の薄膜太陽電池は、本実施形態に係る構成を有さない、すなわち、第二化合物半導体層にアルカリ金属を含まない比較例2〜4の薄膜太陽電池と比べても、優れた変換効率を与えた(図2及び図3参照)。
[表2について]
実施例1において、フッ化ナトリウムの代わりに、フッ化セシウムを用いて第二化合物半導体層を形成する処理を行った実施例2〜3の薄膜太陽電池は、実施例1の薄膜太陽電池と比べ、Vocが改善され、高い変換効率を示した。
また、熱及び外部電界の印加処理における電圧を0.5V〜1.0Vに変更した実施例2〜3の薄膜太陽電池は、熱及び外部電界の印加処理を行っていない比較例6の薄膜太陽電池と比べて、変換効率が向上している。従って、印加する電圧が1.0Vまで増加すると変換効率も向上する傾向がわかった。
[表3について]
また、熱及び外部電界の印加処理における加熱温度を、100℃〜150℃に調整した実施例4〜6の薄膜太陽電池に示すように、加熱温度は130℃前後が最も良い変換効率を示すことが分かった(図5参照)。この際、比較例7の薄膜太陽電池に示すように、熱及び外部電界の印加処理を行わないと、変換効率は低下する傾向にあった(図5参照)。
[表4について]
図6に示すように、本実施形態に係る構成を有する、すなわち熱及び外部電界の印加処理を施した実施例8の薄膜太陽電池は、熱及び外部電界の印加処理を施していない比較例8の薄膜太陽電池と比べ、短絡電流が低下する傾向があった。
これに対し、熱及び外部電界の印加処理の後に、更に、アニーリング処理を行った実施例7の薄膜太陽電池では、アニーリング処理を行っていない実施例8の薄膜太陽電池と比べ、短絡電流、及び変換効率が上昇した(図6、及び図7参照)。このように、熱及び外部電界における印加処理の後に、アニーリング処理を行うことで、印加電圧を1Vまで上げても、短絡電流が回復し、変換効率が更に高く得られることがわかった。
[表5について]
また、熱及び外部電界の印加処理の後に、薄膜太陽電池を冷却する手段として、大気中で30分間自然冷却した後、更に冷却ファンを用いて30分間冷却した実施例9〜11においても、大気中において自然冷却した実施例1の薄膜太陽電池と同様に、優れた変換効率を示す薄膜太陽電池が得られた(図8参照)。
10 基板、11 裏面電極、12 光吸収層、12a 第一化合物半導体層、12b 第二化合物半導体層、13 バッファ層、13a 低抵抗バッファ層、13b 高抵抗バッファ層、14 透明導電膜、15 表面電極、20 薄膜太陽電池

Claims (9)

  1. 裏面電極と、
    前記裏面電極上に形成され、第11族元素と第13族元素と第16族元素とを含む第一化合物半導体層と、前記第一化合物半導体層における下記バッファ層側の表層に設けられた第二化合物半導体層と、からなる光吸収層と、前記光吸収層上に形成され、第12族元素を含む化合物半導体層からなるバッファ層と、前記バッファ層上に形成され、第12族元素を含む酸化物半導体層からなる透明電極とを有する太陽電池構造を準備する工程と、
    前記太陽電池構造に対して、加熱しつつ、前記裏面電極から前記透明電極に向かう外部電界を印加する処理工程と、
    を有する薄膜太陽電池の製造方法。
  2. 太陽電池構造に対する、加熱温度が50℃以上200℃以下であり、外部電界強度が0.1V/μm以上10V/μm以下であり、加熱及び外部電界印加時間が1分以上100分以下である請求項1に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
  3. 前記第二化合物半導体層は、アルカリ金属、第11族元素、第13族元素および第16族元素を含む化合物半導体層である請求項1又は請求項2に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
  4. 第二化合物半導体層は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択される少なくとも1種を含むアルカリ金属化合物を前記第一化合物半導体層の表面に堆積させ、前記第一化合物半導体層の表層にアルカリ金属を拡散することにより形成されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
  5. 第二化合物半導体層は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムから選択される少なくとも1種を含むアルカリ金属を前記第一化合物半導体層の表面にイオン注入することにより形成されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
  6. 前記光吸収層において、単傾斜禁制帯構造、又は、前記光吸収層の空乏層の幅が、伝導帯下端が最小となる位置より広い2重傾斜禁制帯構造を有する請求項1〜請求項5に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
  7. 前記外部電界の印加は、前記裏面電極を正極、前記透明電極を負極として、前記裏面電極および前記透明電極の間に電圧を印加することで行う請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
  8. 前記裏面電極および前記透明電極の間に印加する電圧が、0.5V〜2.0Vである請求項7に記載の太陽電池の製造方法。
  9. 前記裏面電極および前記透明電極の間に印加する電圧が、太陽電池の開放電圧Voc以上である請求項7又は請求項8に記載の薄膜太陽電池の製造方法。
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