JP2019070400A - 駆動力伝達制御装置及び駆動力伝達装置の制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】多板クラッチによって伝達される駆動力に誤差を生じさせるような不調が油圧回路に発生したとき、電動モータの制御によってその誤差を小さくすることが可能な駆動力伝達制御装置及び駆動力伝達装置の制御方法を提供する。【解決手段】駆動力伝達制御装置1は、多板クラッチ53と、シリンダ220における作動油の圧力により多板クラッチ53を押圧するピストン50と、ポンプ82と、ポンプ82を動作させる電動モータ81と、ポンプ82から吐出された作動油の一部をシリンダ220に導く流路構成部材と、電動モータ81を制御する制御装置9とを備える。制御装置9は、電流指令値を演算する電流指令値演算手段911と、電流指令値を補正して補正電流指令値を演算する補正手段912とを有する。補正手段912は、所定の動作条件で電動モータ81を動作させたときの回転速度又はモータ電流の測定値と基準値との差に応じて補正値を算出する。【選択図】図8
Description
本発明は、電動モータによって動作するポンプ、及びポンプから吐出される作動流体の圧力により押圧される多板クラッチを有し、入力回転部材と出力回転部材との間で多板クラッチを介して伝達される駆動力を制御する駆動力伝達制御装置、及び駆動力伝達装置の制御方法に関する。
従来、エンジン等の駆動源の駆動力が油圧によって押圧される多板クラッチを介して補助駆動輪に伝達される4輪駆動車がある。多板クラッチは、電動モータによって動作するポンプから吐出される作動油の圧力を受けるピストンによって押圧される。制御装置は、電動モータにモータ電流を供給し、多板クラッチを介して補助駆動輪に伝達される駆動力を制御する(例えば、特許文献1,2参照)。
特許文献1に記載の油圧ユニットは、電動モータと、電動モータにより駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプからピストンのシリンダに至る管路に配置された制御バルブと、油圧ポンプと制御バルブとの間の管路から分岐した管路において、同管路の分岐点とリザーバとの間に配置された固定絞りとを有している。
特許文献2に記載の油圧供給装置は、電動モータと、電動モータにより回転駆動されるオイルポンプと、オイルポンプの吐出側に介挿された逆止弁と、逆止弁とシリンダとの間の管路に接続されたアキュムレータと、アキュムレータよりもシリンダ側の管路に介挿された圧力制御弁とを有している。また、特許文献2に記載の車両には、各種のセンサや制御装置あるいは電動モータや圧力制御弁等の機器に異常が発生した際にそれを検出する各種の異常検出回路が搭載されている。
油圧ユニット等の油圧回路では、異常が検出されるには至らない様々な不調が発生する場合がある。このような不調は、例えば機器の摺動部における摩耗や管路における異物の堆積、あるいは固定絞りにおける流路面積の変化等に起因する。このような不調があると、所望の圧力の作動油をシリンダに供給することができず、多板クラッチを介して伝達される駆動力に誤差が生じるおそれがある。
そこで、本発明は、多板クラッチによって伝達される駆動力に誤差を生じさせるような不調が油圧回路に発生したとき、電動モータの制御によってその誤差を小さくすることが可能な駆動力伝達制御装置及び駆動力伝達装置の制御方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記の目的を達成するため、駆動力が入力される入力回転部材と、前記入力回転部材と相対回転可能に配置された出力回転部材と、前記入力回転部材と前記出力回転部材との間に配置された多板クラッチと、シリンダに供給される作動流体の圧力により前記多板クラッチを押圧するピストンと、リザーバに貯留された作動流体を吸入して吐出するポンプと、モータ電流の供給を受けて前記ポンプを動作させる電動モータと、前記ポンプから吐出された作動流体のうち一部を弁体を介して前記リザーバに還流させると共に他の一部を前記シリンダに導く流路構成部材と、モータ電流を増減して前記電動モータを制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、モータ電流の目標値である電流指令値を演算する電流指令値演算手段と、前記電流指令値演算手段で演算された前記電流指令値を補正して補正電流指令値を演算する補正手段と、前記補正電流指令値に応じたモータ電流が前記電動モータに供給されるようにフィードバック制御をおこなう電流制御手段とを有し、
前記補正手段は、所定の動作条件で前記電動モータを動作させたときの前記電動モータの回転速度又はモータ電流の測定値と基準値との差に応じて補正値を算出し、前記補正値を前記電流指令値に適用して前記補正電流指令値を演算する、駆動力伝達制御装置を提供する。
前記補正手段は、所定の動作条件で前記電動モータを動作させたときの前記電動モータの回転速度又はモータ電流の測定値と基準値との差に応じて補正値を算出し、前記補正値を前記電流指令値に適用して前記補正電流指令値を演算する、駆動力伝達制御装置を提供する。
また、本発明は、上記の目的を達成するため、駆動力が入力される入力回転部材と、前記入力回転部材と相対回転可能に配置された出力回転部材と、前記入力回転部材と前記出力回転部材との間に配置された多板クラッチと、シリンダに供給される作動流体の圧力により前記多板クラッチを押圧するピストンと、リザーバに貯留された作動流体を吸入して吐出するポンプと、モータ電流の供給を受けて前記ポンプを動作させるトルクを発生する電動モータと、前記ポンプから吐出された作動流体のうち一部を前記リザーバに還流させると共に他の一部を前記シリンダに導く流路構成部材とを備えた駆動力伝達装置の制御方法であって、所定の動作条件で前記電動モータを動作させたときの前記電動モータの回転速度又はモータ電流の測定値と基準値との差に応じて電流指令値の補正値を算出し、前記補正値を前記電流指令値に適用して得られた補正電流指令値に応じたモータ電流を前記電動モータに供給する、駆動力伝達装置の制御方法を提供する。
本発明に係る駆動力伝達制御装置及び駆動力伝達装置の制御方法によれば、多板クラッチによって伝達される駆動力に誤差を生じさせるような不調が油圧回路に発生したとき、電動モータの制御によってその誤差を小さくすることが可能となる。
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1乃至図8を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
本発明の実施の形態について、図1乃至図8を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
図1は、本発明の実施の形態に係る4輪駆動車の構成例を模式的に示す構成図である。4輪駆動車100は、走行用の駆動力を発生させる駆動源としてのエンジン102と、トランスミッション103と、左右一対の主駆動輪としての前輪104L,104R及び左右一対の補助駆動輪としての後輪105L,105Rと、エンジン102の駆動力を前輪104L,104R及び後輪105L,105Rに伝達する駆動力伝達機構7を含む駆動力伝達系101と、駆動力伝達機構7に作動油を供給する油圧ユニット8と、油圧ユニット8を制御する制御装置9とを備えている。
駆動力伝達機構7及び油圧ユニット8は、駆動力伝達装置10を構成する。駆動力伝達装置10は、制御装置9と共に駆動力伝達制御装置1を構成する。駆動力伝達機構7は、油圧ユニット8から供給される作動流体としての作動油の圧力により作動する。駆動力伝達機構7、油圧ユニット8、及び制御装置9の詳細については後述する。
4輪駆動車100は、エンジン102の駆動力を前輪104L,104R及び後輪105L,105Rに伝達する4輪駆動状態と、エンジン102の駆動力を前輪104L,104Rのみに伝達する2輪駆動状態とを切り替え可能である。本実施の形態において、各符号における「L」及び「R」は、車両の前進方向に対する左側及び右側の意味で使用している。なお、駆動源としては、内燃機関であるエンジン102に限らず、同期モータ等の電動機を駆動源としてもよく、内燃機関と電動機とを組み合わせて駆動源を構成してもよい。
駆動力伝達系101は、その構成要素として、駆動力伝達機構7の他、フロントディファレンシャル11と、駆動力の伝達を遮断可能な噛み合いクラッチ12と、車両前後方向に延在するプロペラシャフト108と、前輪側のドライブシャフト106L,106R及び後輪側のドライブシャフト107L,107Rとを有する。前輪104L,104Rには、フロントディファレンシャル11及びドライブシャフト106L,106Rを介してエンジン102の駆動力が常に伝達される。後輪105L,105Rには、噛み合いクラッチ12、プロペラシャフト108、駆動力伝達機構7、及びドライブシャフト107L,107Rを介してエンジン102の駆動力が伝達される。
駆動力伝達機構7は、プロペラシャフト108から入力された駆動力を遮断可能に、かつ差動を許容してドライブシャフト107L,107Rに伝達する。駆動力伝達機構7は、油圧ユニット8から供給される作動油の圧力に応じて後輪105L,105Rに伝達される駆動力を調節することが可能である。2輪駆動状態での走行時には、噛み合いクラッチ12及び駆動力伝達機構7における駆動力の伝達が共に遮断され、駆動力伝達系101の一部であるプロペラシャフト108の回転が停止する。これにより、プロペラシャフト108の回転に伴う動力ロスが低減され、燃費性能が向上する。
フロントディファレンシャル11は、一対の前輪側のドライブシャフト106L,106Rにそれぞれ連結された一対のサイドギヤ111、一対のサイドギヤ111にギヤ軸を直交させて噛合する一対のピニオンギヤ112、一対のピニオンギヤ112を支持するピニオンギヤ支持部材113、及びこれら一対のサイドギヤ111と一対のピニオンギヤ112とピニオンギヤ支持部材113を収容するフロントデフケース114を有している。フロントデフケース114には、トランスミッション103で変速されたエンジン102の駆動力が伝達される。
噛み合いクラッチ12は、フロントデフケース114と一体に回転する第1回転部材121と、第1回転部材121と軸方向に並んで配置された第2回転部材122と、第1回転部材121と第2回転部材122とを相対回転不能に連結することが可能なスリーブ123とを有している。スリーブ123は、制御装置9に制御される図略のアクチュエータにより、第1回転部材121及び第2回転部材122に噛み合う連結位置と、第2回転部材122にのみ噛み合う非連結位置との間を軸方向に移動する。スリーブ123が連結位置にあるとき、第1回転部材121と第2回転部材122とが相対回転不能に連結され、スリーブ123が非連結位置にあるとき、第1回転部材121と第2回転部材122とが相対回転自在となる。
プロペラシャフト108は、エンジン102の駆動力をフロントデフケース114から噛み合いクラッチ12を介して受け、駆動力伝達機構7側に伝達する。プロペラシャフト108の前輪側端部にはピニオンギヤ108aが設けられており、このピニオンギヤ108aが、噛み合いクラッチ12の第2回転部材122に相対回転不能に連結されたリングギヤ108bに噛み合っている。駆動力伝達機構7は、プロペラシャフト108から入力される駆動力を後輪側のドライブシャフト107L,107Rに差動を許容して配分する。ドライブシャフト107Lは左後輪105Lに連結され、ドライブシャフト107Rは右後輪105Rに連結されている。
(駆動力伝達装置の全体構成)
図2は、駆動力伝達機構7の構成例を示す断面図である。図3は、図2の部分拡大図である。図2では、駆動力伝達機構7の全体を、後輪側のドライブシャフト107L,107Rの一部と共に示している。
図2は、駆動力伝達機構7の構成例を示す断面図である。図3は、図2の部分拡大図である。図2では、駆動力伝達機構7の全体を、後輪側のドライブシャフト107L,107Rの一部と共に示している。
駆動力伝達機構7は、車体に支持される装置ケース2と、プロペラシャフト108が連結される連結部材31と、連結部材31と一体に回転するピニオンギヤシャフト32と、ピニオンギヤシャフト32からエンジン102の駆動力を受けて回転するデフケース40と、デフケース40に入力された駆動力を一対のサイドギヤ43から差動を許容して出力する差動歯車機構4と、差動歯車機構4の一方のサイドギヤ43に連結された軸状の中間軸60と、中間軸60とドライブシャフト107Lとの間での駆動力の伝達を断続するクラッチ機構5とを備えている。
連結部材31とピニオンギヤシャフト32とは、ボルト301及び座金302によって結合されている。また、ピニオンギヤシャフト32は、軸部321とギヤ部322とを有し、軸部321が一対の円錐ころ軸受61,62によって回転可能に支持されている。ギヤ部322は、複数のボルト400によってデフケース40と一体に回転するように固定されたリングギヤ44に噛み合っている。ピニオンギヤシャフト32のギヤ部322及びリングギヤ44は、例えばハイポイドギヤからなり、装置ケース2に封入されたギヤオイルによって潤滑される。
差動歯車機構4は、デフケース40に支持されたピニオンシャフト41と、ピニオンシャフト41に軸支された一対のピニオンギヤ42と、一対のピニオンギヤ42にギヤ軸を直交させて噛合する一対のサイドギヤ43とを有している。デフケース40は、円錐ころ軸受63,64によって装置ケース2に回転可能に支持されている。中間軸60は、例えばスプライン嵌合により一対のサイドギヤ43のうち一方のサイドギヤ43と相対回転不能に連結されている。
4輪駆動車100の直進時において、一方のサイドギヤ43から中間軸60及びクラッチ機構5を経てドライブシャフト107Lに伝達される駆動力が調節されると、差動歯車機構4の差動機能により、ドライブシャフト107Rにも、ドライブシャフト107Lに伝達される駆動力と同等の駆動力が伝達される。ドライブシャフト107Rは、一対のサイドギヤ43のうち、中間軸60とは反対側の他方のサイドギヤ43にスプライン嵌合によって相対回転不能に連結されている。ドライブシャフト107Lは、スプライン嵌合によって後述する第2回転部材52の連結部521に相対回転不能に連結されている。クラッチ機構5によるドライブシャフト107Lへの駆動力の伝達が遮断されると、ドライブシャフト107Lにも駆動力が伝達されなくなる。
(クラッチ機構の構成)
クラッチ機構5は、油圧ユニット8から供給される作動油の圧力によって移動するピストン50と、中間軸60と一体に回転する第1回転部材51と、ドライブシャフト107Lと一体に回転する第2回転部材52と、第1回転部材51と第2回転部材52との間に配置された多板クラッチ53と、ピストン50と多板クラッチ53との間に配置されたプレッシャプレート54及びスラストころ軸受55とを有している。クラッチ機構5は、第1回転部材51に入力される駆動力を第2回転部材52からドライブシャフト107Lに出力する。第1回転部材51は、クラッチ機構5において中間軸60から駆動力が入力される入力回転部材である。第2回転部材52は、クラッチ機構5の出力回転部材であり、第1回転部材51と同軸上で相対回転可能に配置されている。
クラッチ機構5は、油圧ユニット8から供給される作動油の圧力によって移動するピストン50と、中間軸60と一体に回転する第1回転部材51と、ドライブシャフト107Lと一体に回転する第2回転部材52と、第1回転部材51と第2回転部材52との間に配置された多板クラッチ53と、ピストン50と多板クラッチ53との間に配置されたプレッシャプレート54及びスラストころ軸受55とを有している。クラッチ機構5は、第1回転部材51に入力される駆動力を第2回転部材52からドライブシャフト107Lに出力する。第1回転部材51は、クラッチ機構5において中間軸60から駆動力が入力される入力回転部材である。第2回転部材52は、クラッチ機構5の出力回転部材であり、第1回転部材51と同軸上で相対回転可能に配置されている。
多板クラッチ53は、図3に示すように、第1回転部材51と共に回転する複数のインナクラッチプレート531と、第2回転部材52と共に回転する複数のアウタクラッチプレート532とからなる。インナクラッチプレート531とアウタクラッチプレート532との摩擦摺動は、図略の潤滑油によって潤滑される。複数のインナクラッチプレート531及び複数のアウタクラッチプレート532は、軸方向に沿って交互に配置されている。
ピストン50は、第1回転部材51及び第2回転部材52の回転軸線Oに沿う軸方向移動により多板クラッチ53を押圧する。多板クラッチ53は、ピストン50の押圧力をプレッシャプレート54及びスラストころ軸受55を介して受けることによって発生する複数のインナクラッチプレート531と複数のアウタクラッチプレート532との摩擦力により、第1回転部材51と第2回転部材52との間で駆動力を伝達する。
第1回転部材51は、外周面に軸方向に沿って延びる複数のスプライン突起からなるスプライン係合部511aが形成された円筒状の円筒部511と、円筒部511よりも小径で、中間軸60がスプライン嵌合により連結される有底円筒状の連結部512と、円筒部511と連結部512とを接続する接続部513とを一体に有している。連結部512の外周面には、装置ケース2に支持されたシール部材690が摺接する。
プレッシャプレート54は、第1回転部材51の円筒部511の端部に形成された突起511bを挿通させる挿通孔540が形成されており、第1回転部材51に対して相対回転不能かつ軸方向移動可能である。プレッシャプレート54は、第1回転部材51の円筒部511よりも外周側に配置されて多板クラッチ53を押圧する押圧部541と、円筒部511の内側に配置された内壁部542とを有している。挿通孔540は、押圧部541と内壁部542との間に形成されている。プレッシャプレート54の内壁部542と、第1回転部材51の接続部513との間には、複数のコイルばね57が軸方向に圧縮された状態で配置されている。図2及び図3では、このうち1つのコイルばね57を図示している。複数のコイルばね57は、その復元力によりプレッシャプレート54をピストン50側に付勢している。
第2回転部材52は、第1回転部材51と軸方向に並置されている。第2回転部材52は、図3に示すように、ドライブシャフト107Lが連結される連結部521と、連結部521の第1回転部材51側の端部から軸方向に突出するボス部522と、連結部521から外方に張り出した環状の壁部523と、壁部523の外周端部から軸方向に延びる円筒状の円筒部524とを一体に有している。
多板クラッチ53は、第1回転部材51の円筒部511と、第2回転部材52の円筒部524との間に配置されている。インナクラッチプレート531には、その内周側の端部に第1回転部材51の円筒部511のスプライン係合部511aに係合する複数の突起531aが形成されている。これにより、インナクラッチプレート531は、第1回転部材51に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結されている。また、アウタクラッチプレート532には、その外周側の端部に第2回転部材52の円筒部524の内周面に形成されたスプライン係合部524aに係合する複数の突起532aが形成されている。これにより、アウタクラッチプレート532は、第2回転部材52に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結されている。
第1回転部材51は、装置ケース2に取り付けられた玉軸受65によって支持されている。第2回転部材52は、連結部521と装置ケース2の内面との間に配置された玉軸受66によって支持されている。第2回転部材52のボス部522の外周面と第1回転部材51との間には、玉軸受67が配置されている。また、第2回転部材52の壁部523と第1ケース部材21の内面との間には、スラストころ軸受68が配置されている。
装置ケース2は、クラッチ機構5を収容する第1ケース部材21と、シリンダ220が形成された第2ケース部材22と、差動歯車機構4及びデフケース40を収容する第3のケース部材23とを有している。第1ケース部材21と第2ケース部材22、及び第2ケース部材22と第3のケース部材23とは、例えばボルト締結によって結合されている。図2及び図3では、第1ケース部材21と第2ケース部材22とを結合する複数のボルト201を図示している。
第1ケース部材21には、第2回転部材52を挿通させる挿通孔の内面にシール部材691が嵌着されている。第3のケース部材23には、ドライブシャフト107Rを挿通させる挿通孔の内面にシール部材692が嵌着され、連結部材31及びピニオンギヤシャフト32を挿通させる挿通孔の内面にシール部材693が嵌着されている。
第2ケース部材22には、ピストン50に油圧を付与して多板クラッチ53側に移動させる作動油が供給される環状のシリンダ220、及びシリンダ220に作動油を供給する作動油供給孔221が設けられている。シリンダ220は、回転軸線Oを中心として環状に形成されている。
シリンダ220には、作動油供給孔221を介して油圧ユニット8から作動油が供給される。ピストン50は、軸方向の一部がシリンダ220内に配置された状態で回転軸線Oと平行な軸方向に進退移動可能であり、シリンダ220に供給された作動油の油圧によって多板クラッチ53を軸方向に押圧し、インナクラッチプレート531とアウタクラッチプレート532とを摩擦接触させる。多板クラッチ53は、ピストン50の移動によって、駆動力の伝達状態と遮断状態とが切り替わる。
また、ピストン50は、シリンダ220の作動油の圧力が低下すると、プレッシャプレート54を介して受けるコイルばね57の付勢力によってシリンダ220の奥側に移動し、多板クラッチ53から離間する。ピストン50の内周面及び外周面には、それぞれ周方向溝が形成され、これらの周方向溝にOリング694,695が保持されている。
(油圧ユニット及び制御装置の構成)
図4は、制御装置9及び油圧ユニット8における油圧回路の構成例を示す構成図である。油圧ユニット8は、管路80と、電動モータ81と、電動モータ81が出力するトルクによって作動して作動油を吐出するポンプ82と、ポンプ82から吐出される作動油を受けてピストン50に作用する油圧を調整する電磁弁83と、作動油が貯留されたリザーバ84と、ポンプ82の吐出側とリザーバ84との間に配置されたオリフィス(固定絞り弁)85とを有している。
図4は、制御装置9及び油圧ユニット8における油圧回路の構成例を示す構成図である。油圧ユニット8は、管路80と、電動モータ81と、電動モータ81が出力するトルクによって作動して作動油を吐出するポンプ82と、ポンプ82から吐出される作動油を受けてピストン50に作用する油圧を調整する電磁弁83と、作動油が貯留されたリザーバ84と、ポンプ82の吐出側とリザーバ84との間に配置されたオリフィス(固定絞り弁)85とを有している。
管路80は、ポンプ82と電磁弁83の入力ポートとの間の第1管路801と、第1管路801から分岐してオリフィス85に至る第2管路802と、電磁弁83の出力ポートと作動油供給孔221とを結ぶ第3管路803とを有している。管路80、電磁弁83、及びオリフィス85は、ポンプ82から吐出された作動油のうち一部を弁体としての電磁弁83及びオリフィス85を介してリザーバ84に還流させると共に、他の一部をシリンダ220に導く流路構成部材の一態様である。
電動モータ81は、例えば三相ブラシレスモータであり、制御装置9からモータ電流の供給を受けてポンプ82を動作させるトルクを発生する。電動モータ81の回転子とポンプ82のロータとは連結軸86によって連結されている。ポンプ82は、それ自体は周知のものであり、電動モータ81の回転数に応じた量の作動油をリザーバ84から吸入して吐出し、油圧を発生させる。ポンプ82としては、例えば外接ギヤポンプや内接ギヤポンプ、あるいはベーンポンプを用いることができる。
電磁弁83は、ポンプ82からシリンダ220に供給される作動油の圧力を調節する圧力制御弁であり、より具体的には電磁比例圧力制御バルブである。電磁弁83の弁開度は、制御装置9から供給される制御電流に応じて変化する。電磁弁83は、第1管路801から供給される作動油の一部を排出ポートからリザーバ84に還流させ、作動油の圧力を減圧して第3管路803に出力する。制御装置9は、モータ電流を増減し、ポンプ82の吐出圧がピストン50に作用させるべき作動油の油圧よりもやや高くなるように電動モータ81を制御する。なお、オリフィス85を設けることにより、電磁弁83が全閉状態でも、ポンプ82から吐出された作動油が還流するので、電動モータ81を低速で回転させておくことができ、必要時には速やかに電動モータ81の回転速度を高めることができる。
制御装置9は、CPU(演算処理装置)を有する制御部91と、CPUが実行するプログラム等を記憶する不揮発性メモリを有する記憶部92と、バッテリー等の電源の直流電圧をスイッチングして電磁弁83に制御電流を供給する電磁弁駆動部93と、同じく直流電圧をスイッチングして電動モータ81にモータ電流を供給するインバータ回路部94とを有している。インバータ回路部94は、トランジスタ等の複数のスイッチング素子を有し、制御部91から出力されるPWM(Pulse Width Modulation)信号に基づいて直流電圧をスイッチングし、モータ電流を生成する。
制御部91は、記憶部92に記憶されたプログラムをCPUが実行することにより、電磁弁制御手段910、電流指令値演算手段911、補正手段912、電流制御手段913、及び異常時処理手段914として機能する。なお、これら各手段910〜914の一部又は全部の機能をASICやFPGA等の回路で実現してもよい。
制御部91は、電動モータ81の回転子の回転を検出する回転検出部811の検出信号により、電動モータ81の実際の回転速度(単位時間当たりの回転数の測定値)を取得することが可能である。また、制御部91は、電流センサ940の検出信号により、モータ電流の大きさ(実電流値)を取得することが可能である。
電磁弁制御手段910は、ポンプ82の吐出圧が電磁弁83で減圧されてシリンダ220に供給されるように制御電流の電流値を演算し、演算した電流値の電流が電磁弁83に供給されるように電磁弁駆動部93に駆動信号を出力する。
電流指令値演算手段911は、例えば前輪104L,104Rと後輪105L,105Rとの回転速度差である前後輪回転差に基づいて、電動モータ81に供給すべきモータ電流の目標値である電流指令値を演算する。より具体的には、前後輪回転差に略比例して大きくなるように多板クラッチ53によって伝達すべき駆動力(トルク)の目標値であるトルク指令値を演算し、このトルク指令値に対応する電動モータ81の回転速度を得るために必要なモータ電流を電流指令値として演算する。
補正手段912は、電流指令値演算手段911で演算された電流指令値を補正して補正電流指令値を演算する。電流制御手段913は、電流センサ940によって検出された実電流値に基づいて、補正電流指令値に応じたモータ電流が電動モータ81に供給されるようにPWM信号のデューティーを演算し、電流フィードバック制御をおこなう。異常時処理手段914は、補正手段912が実行する補正処理(後述)によってもトルク指令値に対応する速度で電動モータ81を回転させることができないと判断されるとき、異常の発生を記憶部92の不揮発性メモリに記憶し、あるいは4輪駆動車100の運転者に報知する。
図5は、電動モータ81に供給されるモータ電流(指令値)と、電動モータ81が発生するトルクと、電動モータ81の単位時間(1分)当たりの回転数であるモータ回転数との相互関係を2軸グラフの形式で示す特性線図である。図5において、横軸はトルクを示し、第1軸はモータ回転数を、第2軸はモータ電流を、それぞれ示している。
また、この特性線図では、モータ電流とトルクとの関係を示すI−T特性線を細線で示し、油圧ユニット8の温度が低温(例えば0℃)の場合の低温時負荷特性線ならびに高温(例えば80℃)の場合の高温時負荷特性線を太線で示している。また、モータ回転数とトルクとの関係を示す第1及び第2N−T特性線を一点鎖線で示している。例えば、モータ電流がI1の場合のI−T特性線に対応するトルクはT1であり、T1に対応する高温時負荷特性線上の点をP1とし、T1に対応する低温時負荷特性線上の点をP2とすると、P1に対応するモータ回転数はN1であり、P2に対応するモータ回転数はN2である。図5に示す各特性線は、それぞれの特性の基準値となる代表的な特性を示すものである。
なお、図5では、例として2本の負荷特性線(高温時負荷特性線及び低温時負荷特性線)を示しているが、温度毎に異なるより多くの負荷特性線を用いてもよい。この場合、測定された油圧ユニット8の温度に最も近い負荷特性線を用いてもよく、あるいは測定された温度の上側及び下側でそれぞれ最も近い2つの負荷特性線間を線形補間してもよい。負荷特性線の情報は、例えばマップの形式で記憶部92に記憶されている。
ところで、任意のモータ電流を電動モータ81に供給した場合のモータ回転数は、温度変化に伴う作動油の粘性の変化によって変動する他、例えば電動モータ81やポンプ82あるいは電磁弁83やオリフィス85の寸法誤差や組立て誤差等によっても変動する。寸法誤差や組立て誤差等に起因するモータ回転数の変動幅は、通常、許容範囲内の比較的小さなものである。
また、電動モータ81、ポンプ82、あるいは電磁弁83の摺動部における摩耗や作動油に混入した異物の堆積、あるいはオリフィス85における流路面積の変化等に起因して、モータ回転数が許容範囲を超えて大きく変動してしまう不調が発生すると、所望の圧力の作動油をシリンダ220に供給することができず、多板クラッチ53を介して後輪105L,105Rに伝達される駆動力に誤差が生じてしまう。本実施の形態では、このような不調が発生していることを検知した場合、制御部91が補正手段912によって電流指令値を補正し、シリンダ220に所望の圧力の作動油を供給することを可能にしている。以下、このための処理について詳細に説明する。
図6は、図5に示すグラフから低温時負荷特性線及び第2N−T特性線を省略し、高温時負荷特性線に対して許容される誤差の上限値及び下限値を示す上限特性線及び下限特性線を示すグラフである。上限特性線及び下限特性線を示す数値情報は、例えば複数の温度毎にマップの形式で記憶部92に記憶されている。図6の図示例では、上限特性線及び下限特性線を、高温時負荷特性線上の各値に対して所定の係数を乗じて得られる直線として示しているが、これに限らず例えば高温時負荷特性線を第1軸の上下方向に所定量オフセットさせて上限特性線及び下限特性線を規定してもよい。
図6に示すように、モータ電流がI1の場合のトルクT1に対応する下限特性線上の点をP11とし、T1に対応する上限特性線上の点をP12とすると、P11に対応するモータ回転数はN11であり、P12に対応するモータ回転数はN12である。すなわち、モータ電流I1に対するモータ回転数の許容幅の下限値はN11あり、上限値はN12である。また、モータ回転数の誤差の許容範囲は、モータ回転数の高速側ではN12−N1であり、低速側ではN1−N11である。
ここで、モータ電流をI1とした場合のモータ回転数がN12よりも大きいN3であった場合には、例えばオリフィス85の緩み等によって、第2管路802を介したリザーバ84への作動油の還流量が大きくなっていることが考えられる。このため、N1とN3との差である回転数偏差ΔNに応じた補正値で電動モータ81の電流指令値を補正することで、シリンダ220に所望の圧力の作動油を供給することが可能となる。この場合、制御部91の補正手段912は、電流指令値演算手段911によって演算された電流指令値に補正値を加算して、より大きな電流が電動モータ81に供給されるように補正電流指令値を演算する。
なお、電流指令値に適用される補正値は、回転数偏差ΔNの絶対値が大きいほど大きな値となる正の値である。補正手段912は、回転数偏差ΔNに基づいて、記憶部92に記憶したマップを参照して補正値を求めてもよく、プログラム中に定義された関数によって補正値を求めてもよい。
また、モータ電流をI1とした場合のモータ回転数がN11よりも小さいN4であった場合には、例えばオリフィス85における流路面積が異物によって狭くなり、第2管路802を介したリザーバ84への作動油の還流量が小さくなっていることが考えられる。このため、N1とN4との差である回転数偏差ΔNに応じた補正値で電動モータ81の電流指令値を補正することで、シリンダ220に所望の圧力の作動油を供給することが可能となる。この場合、制御部91の補正手段912は、電流指令値演算手段911によって演算された電流指令値から補正値を減算し、電動モータ81に供給される電流を小さくするように補正電流指令値を演算する。
このような補正処理によれば、制御部91は、油圧ユニット8に不調が発生していても、補正手段912の処理により、所定の動作条件で電動モータ81を動作させたときのモータ回転数(回転速度)の測定値と基準値との差に応じて補正値を算出し、この補正値を電流指令値に適用して補正電流指令値を演算することで、シリンダ220に所望の圧力の作動油を供給することができる。ここで、所定の動作条件とは、例えば図6に示すように電流指令値を所定値I1とすることであり、この場合のモータ回転数の基準値はN1である。
制御部91は、電動モータ81の回転数の測定値と基準値との差が許容範囲を超えたとき、補正手段912により上記の処理を実行する。これにより、不要な演算負荷の増大を避けることができる。また、制御部91は、電動モータ81の回転数の測定値と基準値との差が補正手段912により補正可能な範囲を超えているとき、異常時処理手段914の処理により、異常の発生を記憶部92に記録し又は運転者に報知する。ここで、「又は」とは、記録及び報知の少なくとも何れかを行うことをいう。異常の発生を記憶部92に記録すれば、例えば4輪駆動状態と2輪駆動状態との切り替えが適切に行えなくなった4輪駆動車100の修理の際に制御装置9の記憶部92に記録された情報を読み出すことにより、故障の発生原因を特定しやすくなる。また、異常の発生を運転者に報知すれば、運転者に修理を促すことが可能となる。
なお、電動モータ81の回転数の測定値と基準値との差が補正手段912により補正可能な範囲を超える事態は、電動モータ81の負荷が軽くなり、回転数の測定値が基準値よりも大きくなった場合に発生しやすい。このような場合には、電動モータ81の回転数を高くしてシリンダ220における作動油の圧力を高めることに限界があるためである。一方、例えばオリフィス85の詰まりによって電動モータ81の負荷が増大した場合には、モータ電流を小さくすることによってシリンダ220における作動油の圧力を適正値に近づけることができる。したがって、電動モータ81の負荷が増大した場合には、必ずしも異常を記録あるいは報知しなくてもよい。
また、図6では、電動モータ81に供給するモータ電流を所定値としたときの電動モータ81の回転速度の測定値と基準値との差に応じて補正値を算出する場合について説明したが、電動モータ81を所定の回転速度で回転させたときのモータ電流の測定値と基準値との差に応じて補正値を算出することも可能である。次に、この場合の制御部91の補正手段912の処理について、図7を参照して説明する。
図7に示すように、モータ回転数N1に対応する高温時負荷特性線、下限特性線、及び上限特性線上の点は、それぞれP1,P13,P14である。また、P13及びP14をI−T特性線に投影して得られるモータ電流はI3,I4である。すなわち、モータ回転数N1に対するモータ電流の許容幅の下限値はI4であり、上限値はI3である。また、モータ電流の誤差の許容範囲は、I1を基準値として、高電流側ではI3−I1であり、低電流側ではI1−4である。
また、モータ回転数をN1とした場合のモータ電流の測定値がI3よりも大きい場合には、その測定値とI1との差である電流偏差ΔIに応じた補正値で電動モータ81の電流指令値を補正することで、シリンダ220に所望の圧力の作動油を供給することが可能となる。この場合、制御部91の補正手段912は、電流指令値演算手段911によって演算された電流指令値から補正値を減算し、電動モータ81に供給される電流を小さくするように補正電流指令値を演算する。
一方、モータ回転数をN1とした場合のモータ電流の測定値がI4よりも小さい場合には、その測定値とI1との差である電流偏差ΔIに応じた補正値で電動モータ81の電流指令値を補正することで、シリンダ220に所望の圧力の作動油を供給することが可能となる。この場合、制御部91の補正手段912は、電流指令値演算手段911によって演算された電流指令値に補正値を加算し、電動モータ81に供給される電流を大きくするように補正電流指令値を演算する。
図8は、電動モータ81を所定の動作条件で動作させて補正値を演算する際に制御部91が実行する処理の一例を示すフローチャートである。制御部91は、このフローチャートに示す処理を、多板クラッチ53が作動しても走行に与える影響が少ない試験動作可能時に実行する。この試験動作可能時は、例えば停車時や、二輪駆動状態で一定の速度で直進走行する定常走行時である。
この処理において、制御部91は、電磁弁83に制御電流を供給して弁開度を全開とし(ステップS1)、所定の動作条件で電動モータ81を駆動する(ステップS2)。この所定の動作条件は、図6に示す例では電動モータ81に一定のモータ電流を供給することであり、図7に示す例では一定のモータ回転数で電動モータ81を回転させることである。
次に、制御部91は、モータ回転数又はモータ電流の測定値が下限値未満か否かを判定し(ステップS3)、この判定結果が否(No)であれば、測定値が上限値を超えているか否かを判定する(ステップS4)。ステップS3の判定で測定値が下限値未満である場合、制御部91は、偏差(電流偏差ΔI又は回転数偏差ΔN)を演算し(ステップS5)、この偏差が補正可能な範囲か否かを判定する(ステップS6)。そして、偏差が補正可能な範囲であれば、偏差に基づいて補正値を演算する(ステップS7)。この補正値は、記憶部92に記憶され、その後における4輪駆動状態での走行時にモータ電流の電流指令値に適用される。
一方、ステップS6の処理で偏差が補正可能な範囲でない場合、制御部91は第2カウンタをクリアし(ステップS8)、第1カウンタをカウントアップする(ステップS9)。そして、第1カウンタが所定値に達しているか否かを判定し(ステップS10)、所定値に達していれば異常時の処理(異常の記録又は報知)を実行する(ステップS11)。また、第1カウンタが所定値に達していなければ、所定時間(例えば5ms)の経過後にステップS3以降の処理を再度実行する。
また、ステップS4の判定で測定値が上限値を超えている場合、制御部91は、偏差を演算し(ステップS12)、この偏差が補正可能な範囲か否かを判定する(ステップS13)。そして、偏差が補正可能な範囲であれば、偏差に基づいて補正値を演算する(ステップS7)。
一方、ステップS13の処理で偏差が補正可能な範囲でない場合、制御部91は第1カウンタをクリアし(ステップS14)、第2カウンタをカウントアップする(ステップS15)。そして、第2カウンタが所定値に達しているか否かを判定し(ステップS16)、所定値に達していれば異常時の処理を実行する(ステップS17)。また、第2カウンタが所定値に達していなければ、所定時間(例えば5ms)の経過後にステップS3以降の処理を再度実行する。
なお、第1カウンタ及び第2カウンタを用いたステップS8〜S11及びステップS14〜S17の処理は、異常の誤検出を防ぐための処理であり、例えば1秒間連続して補正不能な偏差が発生した場合に異常発生を確定させる。第1カウンタがカウントアップされるのは、図6に示すように一定のモータ電流を供給する場合には電動モータ81の負荷が高い高負荷時であり、図7に示すようにモータ回転数を一定にする場合には、電動モータ81の負荷が低い低負荷時である。また、第2カウンタがカウントアップされるのは、図6に示すように一定のモータ電流を供給する場合には電動モータ81の負荷が低い低負荷時であり、図7に示すようにモータ回転数を一定にする場合には、電動モータ81の負荷が高い高負荷時である。
なお、図8のフローチャートに示す処理は、油圧ユニット8の温度が大きく変化することのない所定の時間間隔で実行することが望ましい。油圧ユニット8の温度が大きく変化すると、温度変化によって測定値が変化し、電流指令値に適用すべき補正値も変わるためである。
また、上記の例では、所定の動作条件として、モータ電流を所定値とする場合ならびに所定の回転速度で電動モータ81を回転させる場合について説明したが、これに限らず、電動モータ81に印加する電圧の実効値を所定値としたときの電動モータ81の回転速度又はモータ電流の測定値と基準値との差に応じて補正値を算出してもよい。この場合、具体的にはPWM信号のデューティーを一定とし、測定値としてモータ電流又は回転速度を用いて図8に示すフローチャートの処理を実行する。
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、多板クラッチ53によって伝達される駆動力に誤差を生じさせるような不調が油圧ユニット8の油圧回路に発生したとき、電流指令値を補正することにより伝達される駆動力の誤差を小さくすることが可能となる。これにより、4輪駆動車100の4輪駆動状態での走行時において、適切な駆動力が後輪105L,105Rに配分される。
以上説明した実施の形態によれば、多板クラッチ53によって伝達される駆動力に誤差を生じさせるような不調が油圧ユニット8の油圧回路に発生したとき、電流指令値を補正することにより伝達される駆動力の誤差を小さくすることが可能となる。これにより、4輪駆動車100の4輪駆動状態での走行時において、適切な駆動力が後輪105L,105Rに配分される。
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、4輪駆動車100の構成は、図1に例示したものに限らず、様々な構成の4輪駆動車に本発明の駆動力伝達制御装置を適用することが可能である。
1…駆動力伝達制御装置 51…第1回転部材(入力回転部材)
52…第2回転部材(出力回転部材) 53…多板クラッチ
80…管路(流路構成部材) 81…電動モータ
82…ポンプ 83…電磁弁(流路構成部材)
84…リザーバ 85…オリフィス(流路構成部材)
9…制御装置 911…電流指令値演算手段
912…補正手段 913…電流制御手段
914…異常時処理手段
52…第2回転部材(出力回転部材) 53…多板クラッチ
80…管路(流路構成部材) 81…電動モータ
82…ポンプ 83…電磁弁(流路構成部材)
84…リザーバ 85…オリフィス(流路構成部材)
9…制御装置 911…電流指令値演算手段
912…補正手段 913…電流制御手段
914…異常時処理手段
Claims (7)
- 駆動力が入力される入力回転部材と、前記入力回転部材と相対回転可能に配置された出力回転部材と、前記入力回転部材と前記出力回転部材との間に配置された多板クラッチと、シリンダに供給される作動流体の圧力により前記多板クラッチを押圧するピストンと、リザーバに貯留された作動流体を吸入して吐出するポンプと、モータ電流の供給を受けて前記ポンプを動作させる電動モータと、前記ポンプから吐出された作動流体のうち一部を弁体を介して前記リザーバに還流させると共に他の一部を前記シリンダに導く流路構成部材と、モータ電流を増減して前記電動モータを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、モータ電流の目標値である電流指令値を演算する電流指令値演算手段と、前記電流指令値演算手段で演算された前記電流指令値を補正して補正電流指令値を演算する補正手段と、前記補正電流指令値に応じたモータ電流が前記電動モータに供給されるようにフィードバック制御をおこなう電流制御手段とを有し、
前記補正手段は、所定の動作条件で前記電動モータを動作させたときの前記電動モータの回転速度又はモータ電流の測定値と基準値との差に応じて補正値を算出し、前記補正値を前記電流指令値に適用して前記補正電流指令値を演算する、
駆動力伝達制御装置。 - 前記補正手段は、前記電動モータの回転速度又はモータ電流の測定値と基準値との差が所定の許容範囲を超えたとき、前記補正値を算出して前記電流指令値に適用する、
請求項1に記載の駆動力伝達制御装置。 - 前記制御装置は、前記電動モータの回転速度又はモータ電流の測定値と基準値との差が前記補正手段により補正可能な範囲を超えているとき、異常の発生を記録又は報知する異常時処理手段を有する、
請求項1又は2に記載の駆動力伝達制御装置。 - 前記補正手段は、前記電動モータに供給するモータ電流を所定値としたときの前記電動モータの回転速度の測定値と基準値との差に応じて前記補正値を算出する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の駆動力伝達制御装置。 - 前記補正手段は、前記電動モータを所定の回転速度で回転させたときのモータ電流の測定値と基準値との差に応じて前記補正値を算出する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の駆動力伝達制御装置。 - 前記補正手段は、前記電動モータに印加する電圧の実効値を所定値としたときの前記電動モータの回転速度又はモータ電流の測定値と基準値との差に応じて前記補正値を算出する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の駆動力伝達制御装置。 - 駆動力が入力される入力回転部材と、前記入力回転部材と相対回転可能に配置された出力回転部材と、前記入力回転部材と前記出力回転部材との間に配置された多板クラッチと、シリンダに供給される作動流体の圧力により前記多板クラッチを押圧するピストンと、リザーバに貯留された作動流体を吸入して吐出するポンプと、モータ電流の供給を受けて前記ポンプを動作させるトルクを発生する電動モータと、前記ポンプから吐出された作動流体のうち一部を前記リザーバに還流させると共に他の一部を前記シリンダに導く流路構成部材とを備えた駆動力伝達装置の制御方法であって、
所定の動作条件で前記電動モータを動作させたときの前記電動モータの回転速度又はモータ電流の測定値と基準値との差に応じて電流指令値の補正値を算出し、前記補正値を前記電流指令値に適用して得られた補正電流指令値に応じたモータ電流を前記電動モータに供給する、
駆動力伝達装置の制御方法。
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