JP2019069985A - ミトコンドリア標的化抗酸化剤は機械的人工呼吸誘発性横隔膜機能障害および骨格筋萎縮を防止する - Google Patents

ミトコンドリア標的化抗酸化剤は機械的人工呼吸誘発性横隔膜機能障害および骨格筋萎縮を防止する Download PDF

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Abstract

【課題】本明細書において、骨格筋疾患、例えば機械的人工呼吸(MV)誘発性横隔膜筋力低下、機能障害および/または萎縮の予防および治療のための方法および組成物が開示される。【解決手段】本開示は、哺乳動物被験者におけるMV誘発性または不使用誘発性骨格筋疾患を予防または治療するための方法および組成物を提供する。本方法はさらに、芳香族カチオン性ペプチドの有効量を被験者に投与することを含む。【選択図】なし

Description

政府の支援
本発明は、米国立衛生研究所によるグラントR01HL08783の元で連邦政府の支援を受けて行われた。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
関連出願の相互参照
本願は、米国仮出願第61/308,508号(出願日:2010年2月26日、参照によりその全体が本願に組み込まれる)に基づく優先権を主張する。
本明細書において、骨格筋疾患(skeletal muscle infirmity)、例えば筋力低下、機能障害および/または筋萎縮などの予防および治療に有用な芳香族カチオン性ペプチドを含む方法および組成物が開示される。特に、機械的人工呼吸(MV)誘発性横隔膜疾患(mechanical ventilation(MV)-induced diaphragm infirmity)および不使用誘発性骨格筋疾患(disuse-induced skeletal muscle infirmity)の予防および治療のための方法および組成物が開示される。
以下の説明は、読者の理解を助けるために提供される。提供される情報または引用される参考文献のいずれも本発明の先行技術であると認めるものではない。
機械的人工呼吸(MV)は、十分な肺胞換気を維持することができない被験者において適切な肺のガス交換を行わせるために臨床的に用いられている。MVの一般の適応症は呼吸不全、心不全、手術、薬物過量投与および脊髄損傷を含む。MVは、呼吸不全被験者にとっては救命処置ではあるが、MVからの患者の離脱に関連する合併症が広く知られている。実際、離脱困難は臨床上の重要な問題点である。機械的人工呼吸を行った被験者の20〜30%は離脱困難を経験する。"離脱失敗"は、骨格筋である横隔膜の呼吸筋筋力低下を含むいくつかの要素に帰することができる。
骨格筋筋力低下は、筋肉線維の萎縮および機能障害から生じる。この点において、筋肉の不使用は、例えば、骨折のギプス固定による筋強制または長期のMVなどの身体または肢の固定を受けている個体に深刻な問題をもたらす。しかしながら、このような筋肉の不使用は、細胞レベルにおける筋肉線維分解の病因を説明するものではない。このために、酸化ストレス、例えばキサンチンオキシダーゼの活性化による反応性酸素種(ROS)の生成は、骨格筋分解および収縮機能障害の機構を付与できる。しかしながら、キサンチンオキシダーゼ活性の阻害は、骨格筋不使用誘発性またはMV誘発性酸化ストレスの効果、付随する萎縮および筋力低下を完全には防止しない。従って、筋肉の機能障害および萎縮と関連するさらなる要素の同定は、これらの予防または治療のための新戦略の開発において考慮されるべき問題である。
本明細書において、骨格筋疾患、例えば機械的人工呼吸(MV)誘発性横隔膜筋力低下、機能障害および/または萎縮の予防および治療のための方法および組成物が開示される。一般に、本方法および組成物は、1以上の芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩(例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩)を含み、いくつかの実施形態において、骨格筋疾患、例えば筋力低下、機能障害および/または萎縮を治療もしくは予防または治療するために、それを必要とする被験者に1以上の芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩(例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩)の治療的有効量が投与される。
本明細書において、骨格筋疾患、例えば機械的人工呼吸(MV)誘発性横隔膜筋力低下、機能障害および/または萎縮、ならびに/または不使用誘発性筋肉疾患の予防および治療のための方法および組成物が開示される。一般に、本方法および組成物は1以上の芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩(例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩)を含み、いくつかの実施形態において、骨格筋疾患を治療または予防するために、それを必要とする被験者に1以上の芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩(例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩)の治療的有効量が投与される。
いくつかの側面において、哺乳動物被験者における骨格筋疾患の治療または予防方法が提供される。一般的には、本方法は、哺乳動物被験者にペプチドD-Arg-2',6'Dmt-Lys-Phe-NH2またはその薬学的に許容される塩(例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩)の治療的有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは経口、局所、全身、静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内投与される。
いくつかの実施形態において、骨格筋は横隔膜筋を含み、骨格筋疾患は機械的人工呼吸(MV)に起因する。いくつかの実施形態において、哺乳動物被験者におけるMV誘発性横隔膜機能障害の治療または予防方法が提供される。いくつかの実施形態において、MV期間は少なくとも10時間であり、いくつかの実施形態において、ペプチドはMV前、MV中またはその両方において被験者に投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドは経口、局所、全身、静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内投与される。
これに加えて、あるいはこれに代えて、いくつかの実施形態において、哺乳動物被験者における不使用誘発性骨格筋萎縮の治療または予防方法が提供される。一般的には、このような方法は、哺乳動物被験者にペプチドD-Arg-2',6'Dmt-Lys-Phe-NH2またはその薬学的に許容される塩(例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩)の治療的有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、骨格筋はヒラメ筋もしくは足底筋またはヒラメ筋および足底筋の両方を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは不使用前または不使用中に被験者に投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドは経口、局所、全身、静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内投与される。
これに加えて、あるいはこれに代えて、いくつかの実施形態において、哺乳動物被験者の骨格筋における酸化障害亢進を特徴とする疾患または状態の治療方法が提供される。一般的には、このような方法は、D-Arg-2',6'Dmt-Lys-Phe-NH2またはその薬学的に許容される塩(例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩)の有効量を被験者に投与することを含む。
いくつかの実施形態において、ペプチドは酸化障害亢進の前またはその間に被験者に投与される。いくつかの実施形態において、酸化障害は、対照レベルと比較しての1以上のバイオマーカーの遺伝子発現レベル、タンパク質発現レベル、活性または分解の変化と関連する。いくつかの実施形態において、対照レベルは、不使用誘発性骨格筋萎縮またはMV誘発性横隔膜機能障害に苦しんでいない健常者からの1以上のバイオマーカーレベルである。いくつかの実施形態において、バイオマーカーはカルパイン、カスパーゼ-3、カスパーゼ12、20Sプロテアソーム、E3リガーゼ、アトロギン-1/MAFbx、MuRF-1、αII-スペクトリン、サルコメアタンパク質、4-HNE付加細胞質ゾルタンパク質および、筋線維タンパク質におけるタンパク質カルボニルからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、酸化障害亢進を特徴とする疾患または状態は、不使用誘発性骨格筋萎縮またはMV誘発性横隔膜機能障害を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは経口、局所、全身、静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内投与される。
一側面において、本開示は、MV誘発性横隔膜機能障害の治療または予防方法であって、芳香族カチオン性ペプチドの治療的有効量をそれを必要とする哺乳動物被験者に投与することを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは:
少なくとも1つの正味の正電荷;
最低4つのアミノ酸;
最大約20のアミノ酸;
正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との関係であって、3pmがr+1以下の最大数である関係;および
芳香族基の最小数(a)と正味の正電荷の総数(pt)との関係であって、2aがpt+1以下の最大数であり、ただし、aが1であるとき、ptは1であることもできる関係;
を含むペプチドである。いくつかの実施形態において、哺乳動物被験者はヒトである。
一実施形態において、2pmはr+1以下の最大数であり、ptと等しくてもよい。芳香族カチオン性ペプチドは、最低2つのまたは最低3つの正電荷を有する水溶性ペプチドであることができる。
一実施形態において、ペプチドは、1以上の天然に存在しないアミノ酸、例えば、1以上のD-アミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、C末端アミノ酸のC末端カルボキシル基はアミド化されている。特定の実施形態において、ペプチドは最低4つのアミノ酸を有する。ペプチドは、最大約6つ、最大約9つまたは最大約12のアミノ酸を有することができる。
一実施形態において、ペプチドは、N末端にチロシンまたは2',6'-ジメチルチロシン(Dmt)残基を含む。例えば、ペプチドは、式Tyr-D-Arg-Phe-Lys-NH2(SS-01)または2',6'-Dmt-D-Arg-Phe-Lys-NH2(SS-02)を含むことができる。他の実施形態において、ペプチドはN-末端にフェニルアラニンまたは2',6'-ジメチルフェニルアラニン残基を含む。例えば、ペプチドは式Phe-D-Arg-Phe-Lys-NH2(SS-20)または2',6'-Dmp-D-Arg-Phe-Lys-NH2を含むことができる。特定の実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは式D-Arg-2',6'-Dmt-Lys-Phe-NH2(SS-31)を有する。
一実施形態において、ペプチドは下記式Iで定義される。
Figure 2019069985
式中、R1およびR2は、それぞれ独立して
(i)水素;
(ii)直鎖または分枝鎖C1-C6アルキル;
(iii)
Figure 2019069985
(式中、m=1〜3である);
(iv)
Figure 2019069985
(v)
Figure 2019069985
から選択され、
R3およびR4は、それぞれ独立して
(i)水素;
(ii)直鎖または分枝鎖C1-C6アルキル;
(iii)C1-C6アルコキシ;
(iv)アミノ;
(v)C1-C4アルキルアミノ;
(vi)C1-C4ジアルキルアミノ;
(vii)ニトロ;
(viii)ヒドロキシル;
(ix)ハロゲン(ここで、"ハロゲン"はクロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを含む);
から選択され、
R5、R6、R7、R8およびR9は、それぞれ独立して
(i)水素;
(ii)直鎖または分枝鎖C1-C6アルキル;
(iii)C1-C6アルコキシ;
(iv)アミノ;
(v)C1-C4アルキルアミノ;
(vi)C1-C4ジアルキルアミノ;
(vii)ニトロ;
(viii)ヒドロキシル;
(ix)ハロゲン(ここで、"ハロゲン"はクロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを含む);
から選択され、nは1〜5の整数である。
特定の実施形態において、R1およびR2は水素であり;R3およびR4はメチルであり;R5、R6、R7、R8およびR9はすべて水素であり;nは4である。
一実施形態において、ペプチドは下記式IIで定義される。
Figure 2019069985
式中、R1およびR2は、それぞれ独立して
(i)水素;
(ii)直鎖または分枝鎖C1-C6アルキル;
(iii)
Figure 2019069985
(式中、m=1〜3である);
(iv)
Figure 2019069985
(v)
Figure 2019069985
から選択され、
R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は、それぞれ独立して
(i)水素;
(ii)直鎖または分枝鎖C1-C6アルキル;
(iii)C1-C6アルコキシ;
(iv)アミノ;
(v)C1-C4アルキルアミノ;
(vi)C1-C4ジアルキルアミノ;
(vii)ニトロ;
(viii)ヒドロキシル;
(ix)ハロゲン(ここで、"ハロゲン"はクロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを含む);
から選択され、nは1〜5の整数である。
特定の実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11およびR12はすべて水素であり;nは4である。他の実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR11はすべて水素であり;R8およびR12はメチルであり;R10はヒドロキシルであり;nは4である。
芳香族カチオン性ペプチドは種々の方法で投与できる。いくつかの実施形態において、ペプチドは経口、局所、鼻腔内、腹腔内、静脈内または皮下投与される。
図1Aおよび1Bは、対照ラット、機械的人工呼吸を行ったラット(MV)およびミトコンドリア標的化抗酸化剤SS-31で処置した機械的人工呼吸を行ったラット(MVSS)の横隔膜から単離されたミトコンドリアからの過酸化水素放出速度を示すグラフである。図1Aは状態3ミトコンドリア呼吸を示す。図IBは状態4ミトコンドリア呼吸を示す。 図2Aおよび2Bは対照ラット、MVラットおよび、ミトコンドリア標的化抗酸化剤SS-31で処置した機械的人工呼吸を行ったラット(MVSS)の横隔膜における酸化修飾タンパク質レベルを示すグラフである。図2Aは、3つの実験群の横隔膜における4-ヒドロキシノネナール付加タンパク質レベルを示す。ヒストグラムの上部の画像は3つの実験群からの典型的なウェスタンブロットデータである。図2Bは3つの実験群の横隔膜におけるタンパク質カルボニルレベルを示す。ヒストグラムの上部の画像は3つの実験群からの典型的なウェスタンブロットデータである。 図3は、対照ラットならびに、ミトコンドリア標的化抗酸化剤の存在下および非存在下で機械的人工呼吸を行ったラットにおける横隔膜の力-頻度応答(in vitro)に対する長期のMVの効果を示すグラフである。 図4は対照ラットおよび(MVSS)で機械的人工呼吸を行ったラットからの横隔膜筋筋線維における線維断面積(CSA)を示すグラフである。 図5Aはプロテアーゼ活性を示すグラフである。図5Aは20Sプロテアソームの活性を示す。 図5Bはプロテアーゼ活性を示すグラフである。図5Bは、アトロギン-1のmRNAおよびタンパク質レベルを示す。図5Bにおけるヒストグラムの上部の画像は、3つの実験群からの典型的なウェスタンブロットデータである。 図5Cはプロテアーゼ活性を示すグラフである。図5CはMuRF-1のmRNAおよびタンパク質レベルを示す。図5Cにおけるヒストグラムの上部の画像は、3つの実験群からの典型的なウェスタンブロットデータである。 図6Aおよび6Bは、対照動物ならびに、ミトコンドリア標的化抗酸化剤の存在下および非存在下で機械的人工呼吸を行った動物(MVSS)からの横隔膜におけるカルパイン1およびカスパーゼ3活性のグラフである。図6Aは12時間のMVの完了時における、横隔膜筋におけるカルパイン1の活性体を示す。図5Bは、12時間のMVの完了時における、横隔膜筋におけるカスパーゼ-3の切断および活性バンドを示す。ヒストグラムの上部の画像は、3つの実験群からの典型的なウェスタンブロットデータである。 図7Aおよび7Bは、対照動物ならびに、ミトコンドリア標的化抗酸化剤の存在下および非存在下で機械的人工呼吸を行った動物(MV)からの横隔膜におけるカルパインおよびカスパーゼ-3活性を示すグラフである。図7Aは、12時間のMV後の横隔膜筋における145kDaのα-II-スペクトリン分解産物(SBPD)レベルを示す。図7Bは、12時間のMV後の横隔膜筋における120kDaのα-II-スペクトリン分解産物(SBPD 120kDa)レベルを示す。ヒストグラムの上部の画像は、3つの実験群からの典型的なウェスタンブロットデータである。 図8は、対照動物ならびに、ミトコンドリア標的化抗酸化剤の存在下および非存在下で機械的人工呼吸を行った動物(MV)からの横隔膜におけるアクチンレベルと全サルコメアタンパク質レベルの比を示すグラフである。ヒストグラムの上部の画像は3つの実験群からの典型的なウェスタンブロットデータである。 図9A〜9Dは、正常な筋肉において、ミトコンドリア標的化抗酸化剤(SS-31)は、ヒラメ筋重量(図9A)、呼吸対照比またはRCR(図9B)、ミトコンドリア状態3呼吸(図9C)またはミトコンドリア状態4呼吸(図9D)に効果を示さなかったことを示すグラフである。 10A〜10Cは、正常なヒラメ筋において、ミトコンドリア標的化抗酸化剤(SS-31)は、ヒラメ筋タイプI(図10A)、タイプIIa(図10B)またはタイプIIb/x(図10C)の線維サイズ(断面積)に効果を示さなかったことを示すグラフである。 図11A〜11Bは、正常な筋肉において、ミトコンドリア標的化抗酸化剤(SS-31)は、足底筋重量(図11A)、呼吸対照比またはRCR(図11B)に効果を示さなかったことを示すグラフである。 図11C〜11Dは、正常な筋肉において、ミトコンドリア標的化抗酸化剤(SS-31)は、ミトコンドリア状態3呼吸(図11C)またはミトコンドリア状態4呼吸(図11D)に効果を示さなかったことを示すグラフである。 図12Aおよび12Bは、正常な足底筋において、ミトコンドリア標的化抗酸化剤(SS-31)は足底筋タイプIIa(図12A)、またはタイプIIb/x(図12B)の線維サイズ(断面積)に効果を示さなかったことを示すグラフである。 図13A〜13Dは、7日間のギプス固定はヒラメ筋重量(図13A)の有意な減少を引き起こしたが、これはSS-31によって防止されたことを示すグラフである。ギプス固定(casting)はまた、ミトコンドリア状態3(図13C)呼吸を有意に低下させたが、状態4には効果を示さず(図13D)、従ってRCRの有意な減少をもたらした(図13B)。前述の欠陥は、すべてSS-31によって防止された。 図13A〜13Dは、7日間のギプス固定はヒラメ筋重量(図13A)の有意な減少を引き起こしたが、これはSS-31によって防止されたことを示すグラフである。ギプス固定(casting)はまた、ミトコンドリア状態3(図13C)呼吸を有意に低下させたが、状態4には効果を示さず(図13D)、従ってRCRの有意な減少をもたらした(図13B)。前述の欠陥は、すべてSS-31によって防止された。 図14Aおよび14Bは、7日間のギプス固定は、ヒラメ筋から単離されたミトコンドリアによるH2O2生成を有意に増加させたが、これはSS-31によって防止されたことを示すグラフである(図14A)。図14Bは、示された3つすべてのタイプの線維の断面積の減少をSS-31が防止したことを示す。 図15A〜15Dは、7日間のギプス固定は脂質過酸化反応によって測定されるヒラメ筋における酸化障害を亢進させたが(図15A)、これはSS-31によってブロックされたことを示すグラフである。ギプス固定はまた、ヒラメ筋において、カルパイン-1(図15B)、カスパーゼ-3(図15C)およびカスパーゼ-12のプロテアーゼ活性を有意に亢進させたが(図15D)、これはSS-31によって防止された。 図15A〜15Dは、7日間のギプス固定は脂質過酸化反応によって測定されるヒラメ筋における酸化障害を亢進させたが(図15A)、これはSS-31によってブロックされたことを示すグラフである。ギプス固定はまた、ヒラメ筋において、カルパイン-1(図15B)、カスパーゼ-3(図15C)およびカスパーゼ-12のプロテアーゼ活性を有意に亢進させたが(図15D)、これはSS-31によって防止された。 図16A〜16Dは、7日間のギプス固定は足底筋における足底筋重量(図16A)およびミトコンドリアRCRを低下させたが(図16B)、これはSS-31によって防止されたことを示すグラフである。図16Cは状態3呼吸を示し、図16Dは状態4呼吸を示す。 図16A〜16Dは、7日間のギプス固定は足底筋における足底筋重量(図16A)およびミトコンドリアRCRを低下させたが(図16B)、これはSS-31によって防止されたことを示すグラフである。図16Cは状態3呼吸を示し、図16Dは状態4呼吸を示す。 図17は、7日間のギプス固定は、足底筋から単離されたミトコンドリアによるH2O2生成を有意に増加させたが(図17A)、これはSS-31によって防止されたことを示すグラフである。図17Bは、SS-31は、示された2つのタイプの線維の断面積の減少を防止したことを示す。 図18A〜18Dは、7日間のギプス固定は脂質過酸化反応によって測定される足底筋の酸化障害を亢進させたが(図18A)、これはSS-31によってブロックされたことを示すグラフである。ギプス固定はまた、足底筋において、カルパイン-1(図18B)、カスパーゼ-3(図18C)およびカスパーゼ-12のプロテアーゼ活性を亢進させたが(図18D)、これはSS-31によって防止された。 図18A〜18Dは、7日間のギプス固定は脂質過酸化反応によって測定される足底筋の酸化障害を亢進させたが(図18A)、これはSS-31によってブロックされたことを示すグラフである。ギプス固定はまた、足底筋において、カルパイン-1(図18B)、カスパーゼ-3(図18C)およびカスパーゼ-12のプロテアーゼ活性を亢進させたが(図18D)、これはSS-31によって防止された。
発明の詳細な説明
当然のことながら、本発明の特定の側面、方法、実施形態、変形および特徴は、本発明の実質的理解を提供するために、種々のレベルで以下に詳細に説明されている。本明細書で用いられる特定の用語の定義を以下に示す。特記しない限り、本明細書で用いられるすべての学術用語は、一般に、当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。
本技術の実施において、分子生物学、タンパク質生化学、細胞生物学、免疫学、微生物学および組換えDNAにおける多くの慣用法が用いられる。これらの技術は公知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Vols. I-III, Ausubel, Ed. (1997); Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989) において説明されている。本明細書に引用したすべての参考文献は、その全体が参照により本願に組み込まれる。
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形"ある(a)"、"ある(an)"および"その(the)"は、特記しない限り複数指示対象を含む。例えば、"ある(a)ペプチド"とは、2以上のペプチドの組み合わせを含むなどである。
本明細書において、例えば、要素Aは要素Bと"関連する"という語句は、両方の要素は存在するが、ある要素がもう1つの要素と因果関係があるとは必ずしも言えないことを意味するとして説明されるべきである。
本明細書において、被験者への薬剤、薬物またはペプチドの"投与"は、その意図された機能を発揮させるための、被験者に化合物を導入または送達する任意の経路を含む。投与は、経口、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内もしくは皮下)または局所を含む任意の適切な経路によって行うことができる。投与は、自己投与および他人による投与を含む。
本明細書において、用語"アミノ酸"は、天然に存在するアミノ酸、L-アミノ酸、D-アミノ酸および合成アミノ酸ばかりでなく、天然に存在するアミノ酸と同様の方法で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸ミメティックをも含む。天然に存在するアミノ酸には、遺伝コードによってコードされるアミノ酸に加えて、後に修飾を受けるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸およびO-ホスホセリンがある。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、例えば水素に結合したα炭素、カルボキシル基、アミノ基およびR基を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムのことを言う。このようなアナログは修飾されたR基(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド主鎖を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持している。アミノ酸ミメティックは、アミノ酸の一般化学構造とは異なるが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する構造を有する化学化合物のことを言う。本明細書においては、アミノ酸は、それらの一般に知られている3文字記号かまたはIUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)によって推奨されている1文字記号によって表すことができる。
本明細書において、用語"有効量"または"治療的有効量"または"薬学的有効量"は、所望の治療および/または予防効果を得るのに十分な量、例えば、筋肉の機能障害もしくは萎縮またはそれらに関連する1以上の症状の予防または低下をもたらす量を指す。治療または予防的投与に関連して、被験者に投与される組成物の量は、疾患のタイプおよび重症度ならびに個体の特徴、例えば一般健康状態、年齢、性別、体重および薬物抵抗性に左右される。これはまた、疾患の程度、重症度およびタイプにも左右される。当業者は、これらおよび他の要素に応じて適切な用量を決定することができる。組成物は、1以上の追加の治療化合物と組み合わせて投与することもできる。本明細書に記載の方法において、筋肉の不使用、MV器具などと関連する影響の1以上の徴候または症状を有する被験者に芳香族カチオン性ペプチドを投与することができる。例えば、1以上の芳香族カチオン性ペプチドの"治療的有効量"とは、最低でもMV誘発性または不使用誘発性の筋萎縮、機能障害、分解、収縮機能障害、損傷などを改善するのに十分な量のことを言う。
本明細書において、用語"病状"は、限定するものではないが、治療および/または予防が望ましい1以上の身体および/または精神症状として現れる任意の状態または疾患を含み、以前および新規に確認された疾患および他の障害を含む。例えば、病状は、MV誘発性もしくは不使用誘発性の筋萎縮または機能障害または収縮機能障害または任意の関連する症状もしくは合併症であることができる。
"単離された"または"精製された"ポリペプチドまたはペプチドは、その薬剤が由来する細胞または組織源からの細胞物質または他の混在するポリペプチドを実質的に含まないか、あるいは化学合成された場合に化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。例えば、単離された芳香族カチオン性ペプチドは、その薬剤の診断または治療上の使用を妨げる物質を含まないであろう。このような妨害物質は、酵素、ホルモンならびに他のタンパク性および非タンパク性溶質を含むことができる。
本明細書において、用語"正味電荷"は、ペプチドに存在するアミノ酸が有する正電荷数と負電荷数の差のことを言う。本明細書において、正味電荷は生理学的なpHで測定されることは言うまでもない。生理学的なpHで正に荷電する天然に存在するアミノ酸はL-リジン、L-アルギニンおよびL-ヒスチジンを含む。生理学的なpHで負に荷電した天然に存在するアミノ酸はL-アスパラギン酸およびL-グルタミン酸を含む。
本明細書において、用語"ポリペプチド"、"ペプチド"および"タンパク質"は同義で使用され、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合によって互いに結合された2以上のアミノ酸、すなわちペプチドイソスターを含むポリマーを意味する。ポリペプチドは、通常はペプチド、グリコペプチドまたはオリゴマーと呼ばれる短鎖と、一般にタンパク質と呼ばれるより長い鎖の両方のことを言う。ポリペプチドは、遺伝子によってコードされる20のアミノ酸以外のアミノ酸を含むことができる。ポリペプチドは、翻訳後プロセシングなどの天然プロセスまたは当該分野で公知の化学修飾技術によって修飾されたアミノ酸配列を含む。
本明細書において、障害または状態の"予防"または"防止"は、統計的な試料において、無処置対照試料に対して処置試料において障害または状態の発現を低下させるか、または無処置対照試料に対して障害または状態の1以上の症状の発症を遅延させるかもしくはその重症度を低下させる化合物のことを言う。本明細書において、骨格筋機能障害の防止は、骨格筋機能障害の開始の防止、骨格筋機能障害の開始の遅延、骨格筋機能障害の進行または発達の防止、骨格筋機能障害の進行または発達の減速、骨格筋機能障害の進行または発達の遅延および、進行病期からあまり進行していない病期への骨格筋機能障害の進行の逆進を含む。
本明細書において、筋力低下または筋肉の機能障害または筋萎縮の原因またはそれらとの相関に関する用語"長期の(prolonged)"または"長期のMV(prolonged-MV)"または"長期の不使用(prolonged-disuse)"は、少なくとも約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、50、または100時間から少なくとも約1、10、20、50、75、100またはそれ以上の時間、日数、年数までの時間を含む。
本明細書において、用語"同時の"治療上の使用は、同じ経路による同時または実質的同時の少なくとも2つの活性成分の投与のことを言う。
本明細書において、用語"分離した"治療上の使用は、異なる経路による少なくとも2つの活性成分の同時または実質的に同時の投与のことを言う。
用語"重複する"治療上の使用は、異なるが重複する時間での1以上の活性成分の投与のことを言う。重複する治療上の使用は、異なる経路または同じ経路での活性成分の投与を含む。
本明細書において、用語"順次の"治療上の使用は、異なる時間における少なくとも2つの活性成分の投与であって、その投与経路が同一または異なる経路での経路のことを言う。より具体的には、順次の使用とは、他の成分(単数または複数)の投与が開始される前の活性成分の1つの全投与のことを言う。従って、他の活性成分(単数または複数)の投与の前に、活性成分の1つを数分、数時間または数日間にわたって投与することが可能である。この場合は同時投与はない。
本明細書において、用語"被験者"は、任意の脊椎動物種の一員のことを言う。本開示の対象の方法は、温血脊椎動物に特に有用である。本明細書においては、ヒトなどの哺乳動物の治療ばかりでなく、絶滅寸前である哺乳動物、経済的観点から重要である哺乳動物(ヒトによる消費のために農場で飼育されている動物)および/またはヒトに対して社会的に重要である哺乳動物(ペットとして、または動物園で飼育されている動物)の治療もまた提供される。特定の実施形態において、被験者はヒトである。
本明細書において、用語"筋肉疾患"は、筋肉機能の低下または異常のことを言い、例えば筋力低下、筋肉の機能障害、萎縮、不使用、分解、収縮機能障害または損傷の1以上を含む。筋肉疾患の1例は機械的人工呼吸(MV)誘発性横隔膜筋力低下である。筋肉疾患のもう1例は、例えば肢のギプス固定による筋肉の不使用によって誘発される筋力低下である。筋肉疾患は、年齢、遺伝的性質、疾患(例えば感染)、機械的原因または化学的原因を含むが限定されないいくつかの理由の1以上によって誘発されるか、誘導されるかまたは発生する恐れがある。筋肉疾患が生じる、限定するものではないいくつかの例は、加齢、長期の安静臥床、微小重力状態と関連する筋力低下(例えば宇宙飛行などの場合)、薬物誘発性筋力低下(例えばスタチン、抗レトロウイルス剤およびチアゾリジンジオンの影響など)および癌または他の疾患による悪液質を含む。筋肉疾患、例えば骨格筋疾患は、筋細胞自体にある酵素(例えばキサンチンオキシダーゼ、NADPHオキシダーゼ)および/またはミトコンドリア反応性酸素種("ROS")の生成によって引き起こされる酸化ストレスに起因する場合がある。このようなROSは、上記に列挙したものを含む任意の数の環境下で生成されうる。筋肉疾患または筋肉疾患の大きさは、1以上の身体および/または生理学的パラメータを評価することによって決定できる。
本明細書において、用語"処置"または"治療"または"軽減"は、標的となる病的状態または障害を防止するかまたは遅らせる(減らす)ことが目的である治療処置のことを言う。本明細書に記載の方法に従って芳香族カチオン性ペプチドの治療量を投与された後に、MV誘発性または不使用誘発性疾患の1以上の徴候および症状、例えばMV誘発性または不使用誘発性の筋萎縮、機能障害、分解、収縮機能障害、損傷などの観察可能なおよび/または測定可能な低下または非存在を被験者が示す場合、被験者は、MV誘発性または不使用誘発性の筋肉疾患が有効に"処置されている"。本明細書に記載の病状の治療または予防の種々の方法は、完全ばかりでなく完全未満の治療または予防を含み、何らかの生物学的または医学的に関連性のある結果が得られる"実質的"を意味するものとすることもまた明らかであろう。本明細書において、筋肉疾患の処置はまた、筋肉の機能障害、萎縮、不使用、分解、収縮機能障害、損傷などのいずれか1つ以上の処置のことを言う。
I.芳香族カチオン性ペプチド
一側面において、骨格筋疾患(例えば筋力低下、萎縮、機能障害など)の治療または予防のための組成物および方法が提供される。いくつかの実施形態において、組成物および方法は特定の芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩の投与を含む。芳香族カチオン性ペプチドは水溶性でありかつ高極性である。これらの特性にもかかわらず、このペプチドは容易に細胞膜を通過することができる。芳香族カチオン性ペプチドは、一般的には、ペプチド結合で共有結合された最低3つのアミノ酸または最低4つのアミノ酸を含む。芳香族カチオン性ペプチドに存在するアミノ酸の最大数はペプチド結合で共有結合された約20のアミノ酸である。適切には、アミノ酸の最大数は約12であり、より好ましくは約9つであり、最も好ましくは約6つである。
芳香族カチオン性ペプチドのアミノ酸は任意のアミノ酸であることができる。本明細書において、用語"アミノ酸"は少なくとも1つのアミノ基および少なくとも1つのカルボキシル基を含む任意の有機分子を指すのに用いられる。一般的には、少なくとも1つのアミノ基はカルボキシル基に対してα位にある。アミノ酸は天然に存在するものであることができる。天然に存在するアミノ酸は、例えば、通常哺乳動物のタンパク質中に見られる20の最も一般的な左旋性(L)アミノ酸、すなわち、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gin)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(He)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン、(Trp)、チロシン(Tyr)およびバリン(Val)を含む。他の天然に存在するアミノ酸は、例えば、タンパク質合成と関連しない代謝過程で合成されるアミノ酸を含む。例えば、アミノ酸であるオルニチンおよびシトルリンは、哺乳動物の代謝において尿素生成中に合成される。天然に存在するアミノ酸の他の例はヒドロキシプロリン(Hyp)を含む。
ペプチドは、場合により1以上の天然に存在しないアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは天然に存在するアミノ酸を有さない。天然に存在しないアミノ酸は左旋性(levorotary)(L-)、右旋性(D-)またはそれらの混合物であることができる。天然に存在しないアミノ酸は、一般的には、生体内で通常の代謝過程においては合成されず、タンパク質中に天然には存在しないアミノ酸である。さらに、天然に存在しないアミノ酸はまた、適切には、一般のプロテアーゼでは認識されない。天然に存在しないアミノ酸はペプチドの任意の位置に存在することができる。例えば、天然に存在しないアミノ酸は、N末端、C末端またはN末端とC末端の間の任意の位置にあることができる。本技術のペプチドの薬学的に許容される塩形は、本明細書に記載の本技術によって提供される方法に有用である(例えば限定するものではないが、それらの酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩)。
非天然アミノ酸は、例えば、天然アミノ酸中に見られないアルキル、アリールまたはアルキルアリール基を含むことができる。非天然アルキルアミノ酸のいくつかの例は、α-アミノ酪酸、β-アミノ酪酸、γ-アミノ酪酸、δ-アミノ吉草酸およびε-アミノカプロン酸を含む。非天然アリールアミノ酸のいくつかの例は、オルト、メタおよびパラアミノ安息香酸を含む。非天然アルキルアリールアミノ酸のいくつかの例は、オルト、メタおよびパラ-アミノフェニル酢酸ならびにγ-フェニル-β-アミノ酪酸を含む。天然に存在しないアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸の誘導体を含む。天然に存在するアミノ酸の誘導体は、例えば天然に存在するアミノ酸への1以上の化学基の付加を含むことができる。
例えば1以上の化学基は、フェニルアラニンまたはチロシン残基の芳香環の3'、4'、5'もしくは6'位またはトリプトファン残基のベンゾ環の4'、5'、6'もしくは7'位の1以上に付加することができる。この基は、芳香環に付加することができる任意の化学基であることができる。このような基のいくつかの例は、分枝鎖または非分枝鎖C1-C4アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはt-ブチル、C1-C4アルキルオキシ(すなわち、アルコキシ)、アミノ、C1-C4アルキルアミノおよびC1-C4ジアルキルアミノ(例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ)、ニトロ、ヒドロキシル、ハロ(すなわち、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)を含む。天然に存在するアミノ酸の天然に存在しない誘導体のいくつかの具体例はノルバリン(Nva)およびノルロイシン(Nle)を含む。
ペプチドにおけるアミノ酸の修飾の他の例は、ペプチドのアスパラギン酸またはグルタミン酸残基のカルボキシル基の誘導体化である。誘導体化の1例は、アンモニアまたは第一級もしくは第二級アミン、例えばメチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミンもしくはジエチルアミンとのアミド化である。誘導体化の他の例は、例えばメチルまたはエチルアルコールとのエステル化を含む。もう1つのこのような修飾は、リジン、アルギニンまたはヒスチジン残基のアミノ基の誘導体化を含む。例えばこのようなアミノ基はアシル化されることができる。適切なアシル基のいくつかは、例えばベンゾイル基または、上で述べたC1-C4アルキル基のいずれかを含むアルカノイル基、例えばアセチルもしくはプロピオニル基を含む。
天然に存在しないアミノ酸は、適切には、一般のプロテアーゼに抵抗性または非感受性である。プロテアーゼに抵抗性または非感受性の天然に存在しないアミノ酸の例は、前記の天然に存在するL-アミノ酸のいずれかの右旋性(D-)体ばかりでなく、天然に存在しないL-および/またはD-アミノ酸を含む。D-アミノ酸は、通常はタンパク質中に存在しないが、細胞の通常のリポソームのタンパク質合成機構以外の手段で合成される特定のペプチド抗生物質中に見いだされる。本明細書においては、D-アミノ酸は天然に存在しないアミノ酸とみなす。
プロテアーゼ感受性を最小限にするために、アミノ酸が天然に存在するか存在しないかにかかわらず、ペプチドは、一般のプロテアーゼによって認識される隣接するL-アミノ酸を、5つ未満、好ましくは4つ未満、より好ましくは3つ未満、そして最も好ましくは2つ未満有するべきである。ペプチドは、D-アミノ酸のみを有し、L-アミノ酸を有さないのが最適である。ペプチドがプロテアーゼ感受性アミノ酸配列を含む場合、アミノ酸の少なくとも1つは天然に存在しないD-アミノ酸であり、それによってプロテアーゼ抵抗性が付与されることが好ましい。プロテアーゼ感受性配列の例は、一般のプロテアーゼ、例えばエンドペプチダーゼおよびトリプシンによって容易に切断される2以上の隣接する塩基性アミノ酸を含む。塩基性アミノ酸の例は、アルギニン、リジンおよびヒスチジンを含む。
芳香族カチオン性ペプチドは、そのペプチド中のアミノ酸残基の総数と比較して、生理学的なpHでの最小数の正味の正電荷を有するべきである。生理学的なpHでの正味の正電荷の最小数は、下記では(pm)で表す。ペプチド中のアミノ酸残基の総数は、下記では(r)で表す。下記で説明される正味の正電荷の最小数は、すべて生理学的なpHでのものである。
本明細書において、用語"生理学的なpH"は、哺乳動物体の組織および器官の細胞における通常のpHのことを言う。例えば、ヒトの生理学的なpHは通常おおよそ7.4であるが、哺乳動物における通常の生理学的なpHは約7.0〜約7.8の任意のpHであることができる。
一般的には、ペプチドは正に荷電したN末端アミノ基および負に荷電したC末端カルボキシル基を有する。電荷は生理学的なpHで互いに相殺される。正味電荷の算出の例として、ペプチドTyr-Arg-Phe-Lys-Glu-His-Trp-D-Argは、負に荷電したアミノ酸(すなわちGlu)を1つおよび正に荷電したアミノ酸(すなわち2つのArg残基、1つのLysおよび1つのHis)を4つ有する。従って、上記ペプチドは正味の正電荷3を有する。
一実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは、3pmがr+1以下の最大数である、生理学的なpHでの正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との関係を有する。この実施形態において、正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との関係は次のとおりである:
Figure 2019069985
他の実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは、2pmがr+1以下の最大数である、正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との関係を有する。この実施形態において、正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との関係は次のとおりである:
Figure 2019069985
一実施形態において、正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)は等しい。他の実施形態において、このペプチドは3つまたは4つのアミノ酸残基および最低1つの正味の正電荷を有し、適切には、最低2つの正味の正電荷、より好ましくは最低3つの正味の正電荷を有する。
芳香族カチオン性ペプチドが、正味の正電荷の総数(pt)と比較して最小数の芳香族基を有することもまた重要である。芳香族基の最小数は、以下では(a)で表す。芳香族基を有する天然に存在するアミノ酸は、アミノ酸ヒスチジン、トリプトファン、チロシンおよびフェニルアラニンを含む。例えば、ヘキサペプチドであるLys-Gln-Tyr-D-Arg-Phe-Trpは、正味の正電荷2(リジンおよびアルギニン残基の寄与)および3つの芳香族基(チロシン、フェニルアラニンおよびトリプトファン残基の寄与)を有する。
芳香族カチオン性ペプチドは、3aはpt+1以下の最大数であるが、ただしptが1であるとき、aもまた1であることができる、芳香族基の最小数(a)と生理学的なpHでの正味の正電荷の総数(pt)との関係も有するべきである。この実施形態において、芳香族基の最小数(a)と正味の正電荷の総数(pt)との関係は次のとおりである:
Figure 2019069985
他の実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは、2aがpt+1以下の最大数である、芳香族基の最小数(a)と正味の正電荷の総数(pt)との関係を有する。この実施形態において、芳香族アミノ酸残基の最少数(a)と正味の正電荷の総数(pt)との関係は次のとおりである。
Figure 2019069985
他の実施形態において、芳香族基の数(a)と正味の正電荷の総数(pt)は等しい。
カルボキシル基、特にC末端アミノ酸の末端カルボキシル基は、適切には例えばアンモニアでアミド化されてC末端アミドを形成する。あるいは、C末端アミノ酸の末端カルボキシル基は任意の第一級または第二級アミンでアミド化されることができる。第一級または第二級アミンは、例えばアルキル、特に分枝鎖もしくは非分枝鎖C1-C4アルキルアミンまたはアリールアミンであることができる。従って、ペプチドのC末端アミノ酸は、アミド、N-メチルアミド、N-エチルアミド、N,N-ジメチルアミド、N,N−ジエチルアミド、N-メチル-N-エチルアミド、N-フェニルアミドまたはN-フェニル-N-エチルアミド基に変換されることができる。芳香族カチオン性ペプチドのC末端には存在しないアスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸残基の遊離カルボン酸基もまた、ペプチド内のどこに存在しようとアミド化されることができる。これらの内部の位置でのアミド化は、前述のアンモニアまたは第一級もしくは第二級アミンのいずれかによることができる。
一実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは2つの正味の正電荷および少なくとも1つの芳香族アミノ酸を有するトリペプチドである。特定の実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは2つの正味の正電荷および2つの芳香族アミノ酸を有するトリペプチドである。
芳香族カチオン性ペプチドは、限定するものではないが、以下のペプチドの例を含む:
Lys-D-Arg-Tyr-NH2
Phe-D-Arg-His
D-Tyr-Trp-Lys-NH2
Trp-D-Lys-Tyr-Arg-NH2
Tyr-His-D-Gly-Met
Phe-Arg-D-His-Asp
Tyr-D-Arg-Phe-Lys-Glu-NH2
Met-Tyr-D-Lys-Phe-Arg
D-His-Glu-Lys-Tyr-D-Phe-Arg
Lys-D-Gln-Tyr-Arg-D-Phe-Trp-NH2
Phe-D-Arg-Lys-Trp-Tyr-D-Arg-His
Gly-D-Phe-Lys-Tyr-His-D-Arg-Tyr-NH2
Val-D-Lys-His-Tyr-D-Phe-Ser-Tyr-Arg-NH2
Trp-Lys-Phe-D-Asp-Arg-Tyr-D-His-Lys
Lys-Trp-D-Tyr-Arg-Asn-Phe-Tyr-D-His-NH2
Thr-Gly-Tyr-Arg-D-His-Phe-Trp-D-His-Lys
Asp-D-Trp-Lys-Tyr-D-His-Phe-Arg-D-Gly-Lys-NH2
D-His-Lys-Tyr-D-Phe-Glu-D-Asp-D-His-D-Lys-Arg-Trp-NH2
Ala-D-Phe-D-Arg-Tyr-Lys-D-Trp-His-D-Tyr-Gly-Phe
Tyr-D-His-Phe-D-Arg-Asp-Lys-D-Arg-His-Trp-D-His-Phe
Phe-Phe-D-Tyr-Arg-Glu-Asp-D-Lys-Arg-D-Arg-His-Phe-NH2
Phe-Try-Lys-D-Arg-Trp-His-D-Lys-D-Lys-Glu-Arg-D-Tyr-Thr
Tyr-Asp-D-Lys-Tyr-Phe-D-Lys-D-Arg-Phe-Pro-D-Tyr-His-Lys
Glu-Arg-D-Lys-Tyr-D-Val-Phe-D-His-Trp-Arg-D-Gly-Tyr-Arg-D-Met-NH2
Arg-D-Leu-D-Tyr-Phe-Lys-Glu-D-Lys-Arg-D-Trp-Lys-D-Phe-Tyr-D-Arg-Gly
D-Glu-Asp-Lys-D-Arg-D-His-Phe-Phe-D-Val-Tyr-Arg-Tyr-D-Tyr-Arg-His-Phe-NH2
Asp-Arg-D-Phe-Cys-Phe-D-Arg-D-Lys-Tyr-Arg-D-Tyr-Trp-D-His-Tyr-D-Phe-Lys-Phe
His-Tyr-D-Arg-Trp-Lys-Phe-D-Asp-Ala-Arg-Cys-D-Tyr-His-Phe-D-Lys-Tyr-His-Ser-NH2Gly-Ala-Lys-Phe-D-Lys-Glu-Arg-Tyr-His-D-Arg-D-Arg-Asp-Tyr-Trp-D-His-Trp-His-D-Lys-Asp
Thr-Tyr-Arg-D-Lys-Trp-Tyr-Glu-Asp-D-Lys-D-Arg-His-Phe-D-Tyr-Gly-Val-Ile-D-His-Arg-Tyr-Lys-NH2
一実施形態において、本ペプチドはμオピオイド受容体アゴニスト活性を有する(すなわち、本ペプチドはμオピオイド受容体を活性化する)。μオピオイド受容体アゴニスト活性を有するペプチドは、一般的には、N末端(すなわち、第1アミノ酸の位置)にチロシン残基またはチロシン誘導体を有するペプチドである。チロシンの適切な誘導体は、2'-メチルチロシン(Mmt);2',6'-ジメチルチロシン(2'6'-Dmt);3',5'-ジメチルチロシン(3'5'Dmt);N,2',6'-トリメチルチロシン(Tmt);および2'-ヒドロキシ-6'-メチルチロシン(methyltryosine)(Hmt)を含む。
一実施形態において、μオピオイド受容体アゴニスト活性を有するペプチドは、式Tyr-D-Arg-Phe-Lys-NH2(本明細書では"SS-01"と呼ぶ)を有する。SS-01は、正味の正電荷3(アミノ酸チロシン、アルギニンおよびリジンの寄与)ならびに2つの芳香族基(アミノ酸フェニルアラニンおよびチロシンの寄与)を有する。SS-01のチロシンは例えば2',6'-ジメチルチロシンなどの修飾されたチロシン誘導体であることができ、式2',6'-Dmt-D-Arg-Phe-Lys-NH2(本明細書では"SS-02"と呼ぶ)を有する化合物が生じる。SS-02は分子量640を有し、生理学的なpHで正味の正電荷3を有する。SS-02は、エネルギー非依存的にいくつかの哺乳動物細胞タイプの細胞膜を容易に通過する(Zhao et ah, J. Pharmacol Exp Ther., 304:425-432, 2003)。
あるいは、他の例において、芳香族カチオン性ペプチドはμオピオイド受容体アゴニスト活性を有さない。例えば長期治療中に、例えば慢性の病状または病態において、μオピオイド受容体を活性化する芳香族カチオン性ペプチドの使用は禁忌である場合がある。これらの例において、芳香族カチオン性ペプチドの潜在的副作用または習慣性作用によって、ヒト患者または他の哺乳動物の治療レジメンにおいてμオピオイド受容体を活性化する芳香族カチオン性ペプチドの使用が排除される場合がある。潜在的副作用は、鎮静作用、便秘および呼吸抑制を含むことができる。このような場合に、μオピオイド受容体を活性化しない芳香族カチオン性ペプチドが適切な治療である場合がある。μオピオイド受容体アゴニスト活性を有さないペプチドは、一般にN末端(すなわち、アミノ酸位置1)にチロシン残基またはチロシン誘導体を有さない。N末端におけるアミノ酸は、チロシン以外の天然に存在するかまたは天然に存在しない任意のアミノ酸であることができる。一実施形態において、N末端におけるアミノ酸はフェニルアラニンまたはその誘導体である。フェニルアラニンの例示的な誘導体は2'-メチルフェニルアラニン(Mmp)、2',6'-ジメチルフェニルアラニン(2',6'-Dmp)、N,2',6'-トリメチルフェニルアラニン(Tmp)および2'-ヒドロキシ-6'-メチルフェニルアラニン(Hmp)を含む。
μオピオイド受容体アゴニスト活性を有さない芳香族カチオン性ペプチドの例は式Phe-D-Arg-Phe-Lys-NH2(本明細書においては"SS-20"と呼ぶ)を有する。あるいは、N末端フェニルアラニンはフェニルアラニンの誘導体、例えば2',6'-ジメチルフェニルアラニン(2'6'-Dmp)であることができる。アミノ酸位置1に2',6'-ジメチルフェニルアラニンを含むSS-01は、式2',6'-Dmp-D-Arg-Phe-Lys-NH2を有する。一実施形態において、SS-02のアミノ酸配列は、DmtがN末端に無いように再配列される。μオピオイド受容体アゴニスト活性を有さないこのような芳香族カチオン性ペプチドの例は、式D-Arg-2'6'-Dmt-Lys-Phe-NH2を有する。
本明細書に記載のペプチドの適切な置換バリアントは保存的アミノ酸置換を含む。アミノ酸は、それらの物理化学的特性に従って以下のように分類することができる:
(a)非極性アミノ酸:Ala(A) Ser(S) Thr(T) Pro(P) Gly(G) Cys(C);
(b)酸性アミノ酸:Asn(N) Asp(D) Glu(E) Gln(Q);
(c)塩基性アミノ酸:His(H) Arg(R) Lys(K);
(d)疎水性アミノ酸:Met(M) Leu(L) Ile(I) Val(V);および
(e)芳香族アミノ酸:Phe(F) Tyr(Y) Trp(W) His(H)。
ペプチド内のアミノ酸の、同じグループ内の他のアミノ酸による置換は保存的置換と呼ばれ、元のペプチドの物理化学的特性を保存することができる。対照的に、ペプチド内のアミノ酸の、異なるグループ内の他のアミノ酸による置換は、一般に元のペプチドの特性を変化させる可能性が高い。
μオピオイド受容体を活性化するペプチドの例は、限定するものではないが、表5に示す芳香族カチオン性ペプチドを含む。
表5.μオピオイド活性を有するペプチドアナログ
Figure 2019069985

Figure 2019069985

Figure 2019069985

Figure 2019069985
Cha=シクロヘキシルアラニン
Dab=ジアミノ酪酸
Dap=ジアミノプロピオン酸
Dmt=ジメチルチロシン
Mmt=2'-メチルチロシン
Tmt=N,2',6'-トリメチルチロシン
Hmt=2'-ヒドロキシ,6'-メチルチロシン
dnsDap=β-ダンシル-L-α,β-ジアミノプロピオン酸
atnDap=β-アントラニロイル-L-α,β-ジアミノプロピオン酸
Bio=ビオチン
μオピオイド受容体を活性化しないペプチドの例は、限定するものではないが、表6に示す芳香族カチオン性ペプチドを含む。
表6.μオピオイド活性を欠くペプチドアナログ
Figure 2019069985
表5および6に示すペプチドのアミノ酸は、L-またはD-立体配置のいずれかであることができる。
本ペプチドは当該分野で公知のいずれかの方法で合成できる。タンパク質を化学的に合成するのに適切な方法は、例えば、Solid Phase Peptide Synthesis, Second Edition, Pierce Chemical Company (1984) およびMethods Enzymol., 289, Academic Press, Inc, New York (1997) においてStuartおよびYoungによって記載されている方法を含む。
II.芳香族カチオン性ペプチドの使用
ROS放出の増加は、酸化ストレスおよび、それに付随するMV誘発性および不使用誘発性骨格筋筋力低下における筋肉疾患(例えば筋力低下、萎縮、機能障害)の原因因子であることが示されている。ROSは、主に筋細胞におけるミトコンドリアによって生成されると考えられ、以下の実験例(Experimental Example)に示されるように、ミトコンドリアからのROS放出は、骨格筋(例えば横隔膜、ヒラメ筋および足底筋)疾患をもたらすMV誘発性および不使用誘発性酸化ストレスに関与する。NADPH活性化およびキサンチンオキシダーゼの活性化もまたROSの生成に関与するが、NADPH活性はわずか(すなわち5%)であり、キサンチンオキシダーゼ活性の阻害は、骨格筋不使用誘発性またはMV誘発性酸化ストレスの効果およびそれに付随する萎縮および筋力低下を完全には防止しない。さらに、ミトコンドリアからのROS放出は、横隔膜および他の骨格筋におけるプロテアーゼ、例えばカルパイン、カスパーゼ-3および/またはカスパーゼ-12のMVまたは不使用誘発性活性化の上流シグナルである。
従って、本開示は、長期のMV中の横隔膜または一般に肢の固定もしくは筋肉の不使用中の他の骨格筋、例えばヒラメ筋または足底筋においてミトコンドリアからのROS生成を減少させることができるミトコンドリア標的化抗酸化剤である芳香族カチオン性ペプチドを含む方法および組成物を記載する。
一側面において、本開示は、ミトコンドリア標的化抗酸化剤、すなわち、D-Arg-2',6'Dmt-Lys-Phe-NH2もしくは"SS-31"またはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を提供する。例えばいくつかの実施形態において、SS-31は、ミトコンドリア由来ROSによって引き起こされる筋肉疾患、例えば筋力低下、萎縮、機能障害などを患っているかまたはそれを患う恐れがある被験者において治療剤および/または予防剤として用いられる。いくつかの実施形態において、SS-31は、筋肉におけるミトコンドリアからのROS放出を低下させる。これに加えて、あるいはこれに代えて、いくつかの実施形態において、SS-31は、骨格筋のミトコンドリアに選択的に濃縮されて、H2O2、OH-およびONOO-のラジカル消去を提供し、いくつかの実施形態において、ラジカル消去は用量依存的に提供される。
いくつかの実施形態において、筋肉疾患(例えば筋力低下、萎縮、機能障害など)の治療方法が記載されている。このような治療用途において、芳香族カチオン性ペプチド、例えばSS-31またはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を含む組成物または医薬は、筋肉疾患をすでに患っているかまたはそれが疑われる被験者に、疾患の発症における合併症および中間の病理学的表現型を含む筋肉疾患の症状を防止、低下、軽減または少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で投与される。このように、本発明は、本明細書に記載の筋肉疾患を患っているかまたはそれが疑われる個体の治療方法を提供する。一実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドSS-31、またはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩が投与される。
他の側面において、本開示は、疾患の開始または進行の可能性を防止または低下させる芳香族カチオン性ペプチドを被験者に投与することによって、本明細書に記載の筋肉疾患の可能性を防止または低下させる方法を提供する。筋肉疾患を発症する恐れがある被験者は容易に同定することができ、例えば、MVもしくは関連する横隔膜筋の不使用または任意の他の骨格筋不使用(例えば、肢のギプス固定)を準備しているかまたはそれが間近い被験者を医療専門家は認識することができる。一実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは、SS-31またはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を含む。
このような予防的投与において、1以上の芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を含む医薬組成物または医薬は、筋肉疾患に罹患しやすいかあるいはその恐れがある被験者に、筋肉疾患の生化学的、組織学的および/または行動症状、その合併症ならびにその疾患の発症中に呈する中間の病理学的表現型を含む筋肉疾患のリスクを除去もしくは低下させるか、その重症度を減らすかまたはその発症を遅延させるのに十分な量で投与される。本明細書に記載の芳香族カチオン性ペプチドの1以上の投与は、障害を防止するかあるいはその進行を遅延させるように、その異常に特有な症状発現の前に行うことができる。適切な化合物は、前述のスクリーニングアッセイまたは当該分野で公知のスクリーニングアッセイに基づいて決定することができる。一実施形態において、医薬組成物はSS-31またはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を含む。
種々の実施形態において、特定の芳香族カチオン性ペプチドに基づく治療の効果およびその投与が治療に必要かどうかを決定するために、適切なin vitroまたはin vivoアッセイが行われる。種々の実施形態において、所定の芳香族カチオン性ペプチドベース治療が筋力低下(例えば、萎縮、機能障害など)の予防または治療に所望の効果を発揮するかどうかを決定するために、典型的な動物モデルを用いてアッセイを行うことができる。ヒト被験者における試験の前に、限定するものではないがラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなどを含む適切な動物モデルシステムにおいて治療に使用する化合物を試験することができる。同様に、in vivo試験のために、ヒト被験者への投与の前に、当該技術分野で公知の動物モデル系のいずれかを用いることができる。
いくつかの実施形態において、筋肉疾患からの保護またはその治療を必要とする被験者はまた、酸化障害と関連する疾患、状態または治療を患っている被験者も含む。一般的には、酸化障害はフリーラジカル、例えば反応性酸素種(ROS)および/または反応性窒素種(RNS)によって引き起こされる。ROSおよびRNSの例は、ヒドロキシルラジカル(HO・)、スーパーオキシドアニオンラジカル(02・-)、一酸化窒素(NO・)、過酸化水素(H2O2)、次亜塩素酸(HOCl)およびペルオキシ亜硝酸アニオン(ONOO-)を含む。
呼吸筋疾患は、長期のMV、例えば12時間を超えるMVから生じうる。いくつかの実施形態において、呼吸筋疾患は収縮機能障害および/または萎縮によって生じる。しかしながら、このような長期のMVは任意の特定の時間の長さに限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、長期のMVは、少なくとも約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、50または100時間から少なくとも約1、10、20、50、75、100またはそれ以上までの時間、日数または年数の時間を含む。他の実施形態において、長期のMVは、少なくとも約5、6、7、8、9または10時間から少なくとも約10、20または50時間までの時間を含む。いくつかの実施形態において、長期のMVは、約少なくとも10〜12時間から10〜12時間を超える任意の時間までである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の芳香族ペプチド組成物の投与は、MVまたは筋肉の固定中の任意の時間に行われる。いくつかの実施形態において、1以上のカチオン性ペプチド組成物の1回量は、MV前、MV開始直後、MV中および/またはMV直後に投与される。
筋肉の不使用萎縮は、固定後に筋肉機能の回復を試みる被験者にも回復の障害をもたらす。この点において、本明細書に記載の芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩は、骨格筋関連疾患を患っているかまたはそれを患う恐れがある被験者を処置するための予防法および治療法を提供する。このような筋肉疾患は、限定するものではないが、筋肉の不使用またはMVに由来するかまたはそれを含む。ここで筋肉の不使用またはMVは、アポトーシス、酸化ストレス、酸化障害、収縮機能障害、筋萎縮、筋肉タンパク質分解、プロテアーゼ活性化、ミトコンドリアからのROS放出、ミトコンドリアのH2O2放出、ミトコンドリア脱共役、ミトコンドリアカップリング障害、障害状態3ミトコンドリア呼吸、障害状態4ミトコンドリア呼吸、呼吸調節比(RCR)の低下、脂質過酸化反応の低下またはそれらの任意の組み合わせを誘発する。
筋肉の固定、例えばギプス固定または他の不使用によるものと関連する筋肉疾患を治療または防止するための本明細書に記載のカチオン性ペプチドを含む組成物は、固定または不使用の前、最中または後のいつでも投与できる。例えば、いくつかの実施形態において、1以上のカチオン性ペプチド組成物の1回量は、筋肉の固定もしくは不使用の前、筋肉の固定もしくは不使用の直後、筋肉の固定もしくは不使用の過程中および/または筋肉の固定もしくは不使用後(例えば、ギプス除去後)に投与される。限定を意図したものではないが、例として、いくつかの実施形態において、カチオン性ペプチド(例えば、SS-31またはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩)は、固定または不使用の間、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日6回あるいはそれ以上投与される。他の実施形態において、カチオン性ペプチド(例えば、SS-31またはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩)は、固定または不使用の間、毎日、1日おきに、週2回、3回もしくは4回、あるいは月1回、2回、3回、4回、5回もしくは6回投与される。
いくつかの実施形態において、筋肉量および強度の低下と関連する、筋肉の不使用または不使用萎縮による筋肉疾患を治療または防止する方法もまた開示される。萎縮は、組織、例えば線維筋組織の再吸収および分解に関連する生理過程であり、細胞レベルにおけるアポトーシスを含む。萎縮が栄養補給低下または他の疾患によって生じる場合、それは病理性萎縮として知られている。このような萎縮または病理性萎縮は、肢の固定、長期の肢の固定、ギプス固定による肢の固定、MV、長期のMV、長期の安静臥床 悪液質、うっ血性心不全、肝疾患、筋肉減少症、消耗、栄養不十分、血行不良、ホルモン異常、神経機能の喪失などによって生じうるし、あるいはそれらに関連する場合もある。従って、本方法は、それを必要とする被験者に芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩の有効量を投与することによる、被験者における骨格筋萎縮を含む筋肉疾患の予防および/または治療を提供する。
本明細書に記載の組成物および製剤を投与することによって治療、防止または軽減できる筋肉疾患のさらなる例は、限定するものではないが、加齢に伴う筋肉疾患、長期の安静臥床と関連する筋肉疾患、宇宙飛行などにおける微小重力状態と関連する筋力低下および萎縮などの筋肉疾患、特定の薬物(例えば、スタチン、抗レトロウイルス剤およびチアゾリジンジオン(TZD))の影響と関連する筋肉疾患ならびに悪液質、例えば癌もしくは他の疾患によって引き起こされる悪液質などの筋肉疾患を含む。
III.投与方法および用量
細胞、器官または組織とペプチドとを接触させるための、当業者に公知の任意の方法を用いることができる。適切な方法は、in vitro法、ex vivo法またはin vivo法を含む。in vivo法は、一般的には、芳香族カチオン性ペプチド、例えば前述の芳香族カチオン性ペプチドの哺乳動物、適切にはヒトへの投与を含む。in vivoで治療に用いる場合、芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩は有効量(すなわち、所望の治療効果を得る量)で被験者に投与される。1回量および用法・用量は、被験者における筋肉疾患の程度、用いられる特定の芳香族カチオン性ペプチドの特徴(例えばその治療係数)、被験者および被験者の病歴によって左右される。
有効量は、医師および臨床医によく知られた方法で、前臨床試験および臨床試験の間に決定することができる。本方法に有用なペプチドの有効量は、医薬品を投与するための多くの公知の方法のいずれかによって、それを必要とする哺乳動物に投与することができる。ペプチドは全身投与または局所投与することができる。
本ペプチドは薬学的に許容される塩として製剤化することができる。用語"薬学的に許容される塩"は、患者、例えば哺乳動物への投与が許容される塩基または酸から製造される塩(例えば、所定の用法・用量で許容される哺乳動物に対する安全性を有する塩)を意味する。しかしながら、患者への投与を目的としない中間化合物の塩などは、薬学的に許容される塩であることを必要としないことは言うまでもない。薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機または有機塩基由来であることもできるし、薬学的に許容される無機酸または有機酸由来であることもできる。さらに、ペプチドが塩基性部分、例えばアミン、ピリジンまたはイミダゾールおよび酸性部分、例えばカルボン酸またはテトラゾールの両方を含む場合、両性イオンを形成することができ、これらは本明細書において用語"塩"に含まれる。薬学的に許容される無機塩基由来の塩は、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛塩などを含む。薬学的に許容される有機塩基由来の塩は、置換アミン、環状アミン、天然に存在するアミンなどを含む第一級、第二級および第三級アミン、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペラジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩を含む。薬学的に許容される無機酸由来の塩は、ホウ酸、炭酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸またはヨウ化水素酸)、硝酸、リン酸、スルファミン酸および硫酸の塩を含む。薬学的に許容される有機酸由来の塩は、脂肪族ヒドロキシル酸(例えば、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸および酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸およびトリフルオロ酢酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、p-クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチジン酸、馬尿酸およびトリフェニル酢酸)、芳香族ヒドロキシル酸(例えば、o-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、1-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸および3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸およびコハク酸)、グルクロン酸、マンデル酸、粘液酸、ニコチン酸、オロチン酸、パモ酸、パントテン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、カンホスルホン酸、エジシル酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸)、キシナホン酸などの塩を含む。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される塩は酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩を含む。
本明細書に記載の芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩は、本明細書に記載の障害の治療または予防のために、被験者への投与のために単独または組み合わせで医薬組成物に組み込まれることができる。このような組成物は、一般的には、活性薬剤および薬学的に許容される担体を含む。本明細書において、用語"薬学的に許容される担体"は、医薬投与と適合する生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などを含む。補助活性化合物もまた組成物に組み込むことができる。
医薬組成物は、一般的には、その対象とする投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例は、非経口(例えば、静脈内、皮内、腹腔内または皮下)、経口、吸入、経皮(局所)、眼内、イオン導入および経粘膜投与を含む。非経口、皮内または皮下投与に用いる溶液または懸濁液は以下の成分:滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩および張度調整のための薬剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロースを含むことができる。pHは、酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムで調整することができる。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブルシリンジまたは複数回投与バイアルに密閉することができる。患者または治療医師の便宜のために、投与製剤は、治療コース(例えば、7日間の治療)に必要なすべての器具(例えば、薬物のバイアル、希釈剤のバイアル、シリンジおよび針)を含むキットで提供されることができる。
注射用途に適した医薬組成物は、すぐに使用できる滅菌注射液もしくは分散剤製剤のための滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散剤および滅菌粉末を含むことができる。静注のために、適切な担体は、生理食塩水、静菌性水、クレモフォアEL(登録商標)(BASF社、パーシッパニー、N.J.)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を含む。すべての場合において、非経口投与のための組成物は滅菌されていなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流動性でなければならない。その組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。
芳香族カチオン性ペプチド組成物は担体を含むことができ、この担体は例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)ならびにそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であることができる。レシチンなどのコーティングの使用、分散剤の場合の必要な粒度の維持および界面活性剤の使用などによって、適当な流動性を維持することができる。微生物作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌薬、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チオメラソル(thiomerasol)などによって達成することができる。酸化を防止するために、グルタチオンおよび他の抗酸化剤を含ませることができる。多くの場合、組成物中に糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが好ましいであろう。組成物中にモノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含むことによって、注射用組成物に持続吸収をもたらすことができる。
必要に応じて上記の成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に必要量で活性化合物を混合し、次いで濾過滅菌することによって滅菌注射液を製造することができる。一般に、基本的な分散媒および上記の分散媒からの他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を混合することによって分散剤が製造される。滅菌注射液の製造のための滅菌粉末の場合は、製剤の典型的な方法は、活性成分に任意の追加の所望の成分を加えた粉末を前もって無菌濾過したそれらの溶液から生成させることができる真空乾燥および凍結乾燥を含む。
経口組成物は、一般に不活性希釈剤または可食担体を含む。経口治療投与の目的で、活性化合物を賦形剤と混合し、錠剤、トローチまたはカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態で用いることができる。経口組成物はまた、口内洗浄剤として使用するために流動性の担体を用いて製造することもできる。薬学的に適合する結合剤および/またはアジュバント材料を組成物の一部として含むことができる。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の成分:バインダー、例えば微結晶セルロース、トラガントガムもしくはゼラチン;賦形剤、例えばデンプンもしくはラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、プリモゲル(Primogel)もしくはコーンスターチ;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムもしくはステロート(Sterotes);流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えばショ糖もしくはサッカリン;または風味剤、例えばセイヨウハッカ、サリチル酸メチルもしくはオレンジ風味剤、または同様な性質を有する化合物のいずれかを含むことができる。
吸入投与のために、適切な噴射剤、例えば二酸化炭素などのガスを含む圧力容器もしくはディスペンサーまたはネブライザーからのエアゾールスプレーの形態で化合物を送達することができる。
本明細書に記載の治療化合物の全身投与は、経粘膜または経皮手段によることもできる。経粘膜または経皮投与のために、浸透されるべきバリアに適した浸透剤が製剤中に用いられる。このような浸透剤は、一般に当該技術分野で公知であり、例えば経粘膜投与のために、洗剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、点鼻スプレーの使用によって達成することができる。経皮投与のために、活性化合物は、一般に当該技術分野で公知の軟膏、膏薬、ゲルまたはクリーム中に製剤化される。一実施形態において、経皮投与はイオントフォレシスによって行うことができる。
治療用タンパク質もしくはペプチドまたはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩は、担体系中に製剤化することができる。担体はコロイド系であることができる。コロイド系は、リン脂質二重層ビヒクルであるリポソームであることができる。一実施形態において、治療用ペプチドは、ペプチドの完全性を維持しながらリポソームに封入される。当業者には明らかなように、リポソームを製造するために種々の方法がある(Lichtenberg et al, Methods Biochem. Anal., 33:337-462 (1988); Anselem et al., Liposome Technology, CRC Press (1993) を参照のこと)。リポソーム製剤は、クリアランスを遅延させ、細胞取り込みを増加させることができる(Reddy, Ann. Pharmacother ., 34(7-8):915-923 (2000)を参照のこと)。活性薬剤はまた、限定するものではないが、可溶性、不溶性、透過性、不透過性、生体内分解性または胃保持性のポリマーまたはリポソームを含む薬学的に許容される成分から製造される粒子に負荷することもできる。このような粒子は、限定するものではないが、ナノ粒子、生体内分解性ナノ粒子、ミクロ粒子、生体内分解性ミクロ粒子、ナノスフェア、生体内分解性ナノスフェア、マイクロスフェア、生体内分解性マイクロスフェア、カプセル、エマルション、リポソーム、ミセルおよびウイルスベクター系を含む。
担体はまた、生体内分解性生体適合性ポリマーなどのポリマーマトリックスであることもできる。一実施形態において、治療用ペプチドは、タンパク質の完全性を維持しながらポリマーマトリックスに封入することができる。ポリマーは天然のポリペプチド、タンパク質または多糖であることもできるし、あるいは合成のポリα-ヒドロキシ酸であることもできる。例は、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、多糖、フィブリン、ゼラチンおよびそれらの組み合わせからなる担体を含む。一実施形態において、ポリマーはポリ乳酸(PLA)またはコポリ乳酸/グリコール酸(PGLA)である。ポリマーマトリックスは、マイクロスフェアおよびナノスフェアを含む種々の形態およびサイズで調製および単離されることができる。ポリマー製剤は、長期の治療効果をもたらすことができる(Reddy, Ann. Pharmacother., 34(7-8):915-923 (2000) を参照のこと)。ヒト成長ホルモン(hGH)のためのポリマー製剤は臨床試験に用いられてきた(Kozarich and Rich, Chemical Biology, 2:548-552 (1998) を参照のこと)。
ポリマーマイクロスフェア持続放出製剤の例は、国際公開番号WO99/15154(Tracyら)、米国特許第5,674,534号および第5,716,644号(共にZaleら)、国際公開番号WO96/40073(Zaleら)および国際公開番号WO00/38651(Shahら)に記載されている。米国特許第5,674,534号および第5,716,644号ならびに国際公開番号WO96/40073は、塩による凝集に対して安定化されたエリスロポエチンの粒子を含むポリマーマトリックスを記載している。
いくつかの実施形態において、治療化合物は、治療化合物が身体から迅速に除去されるのを防止する担体、例えばインプラントおよびマイクロカプセル化デリバリーシステムを含む徐放性製剤で調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生体内分解性生体適合性ポリマーを使用できる。このような製剤は公知の技術を用いて製造できる。これらの物質は、例えばAlza Corporation社およびNova Pharmaceuticals社から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(細胞特異抗原に対するモノクローナル抗体で特定の細胞を標的にするリポソームを含む)もまた薬学的に許容される担体として用いることができる。これらは、当業者に公知の方法、例えば米国特許第4,522,811号の記載に従って製造することができる。
細胞内送達を促進するために治療化合物を製剤化することもできる。例えば、リポソームデリバリーシステムは当該技術分野で公知であり、例えば、Chonn and Cullis, "Recent Advances in Liposome Drug Delivery Systems," Current Opinion in Biotechnology 6:698-708 (1995); Weiner, "Liposomes for Protein Delivery: Selecting Manufacture and Development Processes," Immunomethods, 4(3):201-9 (1994);および Gregoriadis, "Engineering Liposomes for Drug Delivery: Progress and Problems," Trends Biotechnol., 13(12):527-37 (1995). Mizguchi et al, Cancer Lett., 100:63-69 (1996) は、in vivoおよびin vitroの両方での細胞へのタンパク質を送達する膜融合リポソーム(fusogenic liposome)の使用を記載している。
治療剤の用量、毒性および治療効果は、LD50(その集団の50%致死用量)およびED50(その集団の50%有効量)の測定などの、細胞培養物または実験動物における標準的薬学的方法によって測定することができる。毒性作用と治療効果との用量比は治療係数であり、比LD50/ED50で表現できる。高い治療係数を示す化合物が好ましい。中毒性副作用を示す化合物も使用できるが、非感染細胞に対して起こりうる障害を最少限にし、それによって副作用を低下させるために、このような化合物を罹患組織部位へ導くデリバリーシステムを設計するように留意しなければならない。
ヒトに使用するための用量範囲を策定するために、細胞培養アッセイおよび動物実験から得られるデータを使用できる。このような化合物の用量は、ほとんど毒性を示さないED50を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましい。用量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変化することができる。本方法で用いられる任意の化合物のためには、治療有効量は初めに細胞培養アッセイから算出できる。1回量は、細胞培養において測定できるIC50(すなわち、症状の最大の2分の1の抑制を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を達成する動物モデルにおいて策定することができる。ヒトにおける有用な1回量をより正確に決定するために、このような情報を用いることができる。血漿中濃度は、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定できる。
一般的には、治療または予防効果を得るために十分な芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩(例えば、SS-31またはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩)の有効量は、約0.000001mg/体重(kg)/日〜約10,000mg/体重(kg)/日である。適切には、投与量範囲は、約0.0001mg/体重(kg)/日〜約100mg/体重(kg)/日である。例えば、用量は、1日1回、2日に1回または3日に1回1mg/体重(kg)または10mg/体重(kg)であるか、あるいは週1回、2週間に1回または3週間に1回1〜10mg/kgであることができる。一実施形態において、ペプチドの単回投与量は、0.001〜10,000マイクログラム/体重(kg)である。一実施形態において、担体中の芳香族カチオン性ペプチド濃度は、0.2〜2000マイクログラム/送達量(ミリリットル)である。例示的な投与設計は、1日1回または週1回投与を含む。治療用途において、疾患の進行を抑制また停止させるまで、そして好ましくは疾患の症状の部分的または完全な改善を被験者が示すまで、比較的短い間隔で比較的高用量が必要な場合がある。その後、患者には予防レジメンを投与することができる。
限定を意図したものではないが、例として、MV誘発性横隔膜筋力低下の予防または改善のための一実施形態において、カチオン性ペプチド(例えば、SS-31またはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩)の初回量は、約1〜20mg/kg、約1〜15mg/kg、約1〜10mg/kg、約1〜5mg/kg、2〜15mg/kg、約2〜10mg/k、約2〜5mg/kg、約2〜3mg/kgまたは約3mg/kgで投与される。初回量は、MV前またはMV開始直後に投与される。これに加えて、あるいはこれに代えて、初回量に続いて、約0.01mg/kg/時間、約0.02mg/kg/時間、約0.03mg/kg/時間、約0.04mg/kg/時間、約0.05mg/kg/時間、約0.06mg/kg/時間、約0.07mg/kg/時間、約0.08mg/kg/時間、約0.09mg/kg/時間、約0.1mg/kg/時間、約0.2mg/kg/時間、約0.3mg/kg/時間、約0.5mg/kg/時間、約0.75mg/kg/時間または約1.0mg/kg/時間の1回量が投与される。
いくつかの実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩の治療的有効量は、標的組織における10-12〜10-6mol、例えばおおよそ10-7molのペプチド濃度と定義できる。この濃度は、0.001〜100mg/kgまたは体表面積当たりの等価用量の全身投与によって送達することができる。1回量のスケジュールは、標的組織における治療濃度を維持するために、最も好ましくは1日1回または週1回投与により、また継続投与(例えば、非経口注入または経皮投与)を含めて最適化されるであろう。
疾患または障害の重症度、以前の治療、一般健康状態ならびに/または被験者の年齢および存在する他の疾患を含むが限定されない特定の要素が被験者を効果的に治療するのに必要な用量およびタイミングに影響しうることは当業者には明らかであろう。さらに、本明細書に記載の治療用組成物の治療的有効量を用いる被験者の治療は1回の治療および一連の治療を含むことができる。
本方法によって治療される哺乳動物は、例えば、農園動物、例えばヒツジ、ブタ、ウシおよびウマ;ペット動物、例えばイヌおよび;実験動物、例えばラット、マウスおよびウサギを含む任意の哺乳動物であることができる。一実施形態において、哺乳動物はヒトである。
一実施形態において、相乗治療効果が生じるように、芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩、例えば酢酸塩またはトリフルオロ酢酸塩と組み合わせて追加の治療剤が被験者に投与される。"相乗治療効果"は、2つの治療剤の組み合わせによって生じ、そうでなくてそれぞれの治療剤単独の個別投与によって生じる効果を超える、添加剤を超える治療効果のことを言う。従って、筋肉疾患の治療により低い投与量の治療剤の1つまたは両方を用いることができ、治療効果の増強および副作用の低下がもたらされる。
複数の治療剤は、任意の順序で、同時に、順次にまたは重複して投与することができる。同時の場合、複数の治療剤は、1つの単一形態または複数形態で(ただの例であるが、単一錠剤または2つの異なる錠剤で)提供することができる。治療剤の1つを複数回投与で投与することもできるし、両方を複数回投与で投与することもできる。同時でない場合、複数回投与間のタイミングは、ゼロ週を超え4週未満まで変化させることができる。さらに、組み合わせ方法、組成物および製剤は2つの薬剤のみの使用に限定されない。
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、これらを多少なりとも限定するものと解釈してはならない。
実施例1
A.実験計画
本実験の目的は、ミトコンドリアからのROS放出がMV誘発性横隔膜筋力低下において果たす役割を明らかにし、さらにラットのミトコンドリア機能および横隔膜筋に対するミトコンドリア標的化抗酸化剤ペプチド(SS-31)の効果を明らかにすることであった。ラットの2つの異なる群(1および2)を以下のように処置した。
1.覚醒時自発的呼吸下ラット
覚醒時自発的呼吸下ラットにおける横隔膜収縮機能、線維断面積(CSA)およびミトコンドリア機能に対するミトコンドリア標的化抗酸化剤(SS-31)の効果を測定するために、動物を次のとおりに処置した。動物(n=6/群)を2つの実験群:(1)対照群-3時間毎に12時間生理食塩水(i.p.)を注入;および(2)ミトコンドリア抗酸化剤群-3時間毎に12時間SS-31を注入(i.p.)、の1つに無作為に割り付けた。12時間の処置時間の完了時に、横隔膜収縮機能、線維CSA、ミトコンドリアROS放出およびミトコンドリア呼吸機能を測定した。
ミトコンドリア標的化抗酸化剤SS-31を生理食塩水に溶解し、12時間の実験期間中に4回の皮下注射で送達した。実験の開始時に最初のボーラス(負荷)量(3mg/kg;皮下注射)を投与した。次いで、12時間の実験中3時間毎に行われる皮下注射によってSS-31(0.05mg/kg/時間)を投与した。SS-31投与を必要とするすべての実験に関して、すべての動物に12時間の間に同じ総量のSS-31を投与した。
2.麻酔ラット
MV誘発性横隔膜酸化ストレス後のミトコンドリアからのROS放出および筋力低下を分析するために、ラットを3つの実験群(n=12/群):(1)急性麻酔対照群;(2)12時間のMV群(MV);および3)ミトコンドリア標的化抗酸化剤SS-31で処置した12時間のMV群(MVSS)、の1つに無作為に割り付けた。我々の多数の依存する測定値のために多量の組織を必要とするため、各実験群から6匹の動物をミトコンドリア測定のために用い、各群における残りの6匹の動物はすべての他の生化学的アッセイに用いた。
対照群の動物は、ペントバルビタールナトリウムの腹腔内(IP)注射(60mg/体重(kg))で急性麻酔した。麻酔が外科的水準に達した後、横隔膜を急いで摘出した。動物の1つの群(n=6)において、直ちに肋骨横隔膜中央部のストリップをin vitro収縮測定に用い、別の断片を組織学的測定のために保存し、肋骨横隔膜の残った部分を液体窒素中で急速に凍結し、その後の生化学的分析のために-80℃で保存した。動物の第2群(n=6)において、全肋骨横隔膜を急速に摘出し、ミトコンドリアを単離してミトコンドリアの呼吸およびROS放出を測定するために用いた。ミトコンドリア標的化抗酸化剤SS-31を生理食塩水に溶解し、MVの開始15分前にボーラス(負荷)量(3mg/kg;皮下注射)で送達した。MVを通じてSS-31の一定の静脈内注入(0.05mg/kg/時間)を維持した。
B.材料および方法:
ミトコンドリア標的化抗酸化剤-化学的詳細および実験的送達。本実験に使用するために、"SS-31"で表わされるミトコンドリア標的化抗酸化剤を選択した。この分子は、交互芳香族カチオン性モチーフを含み、ミトコンドリアを選択的に標的とする小さな水溶性ペプチドのファミリーに属する。例えば、Zhao et al., Cell-permeable peptide antioxidants targeted to inner mitochondrial membrane inhibit mitochondrial swelling, oxidative cell death, and reperfusion injury. The Journal of biological chemistry. Vol., 279(33): 34682-34690 (2004)を参照のこと。
機械的人工呼吸。すべての外科手術は無菌操作を用いて行った。MV群における動物をペントバルビタールナトリウムのIP注射(60mg/体重(kg))で麻酔し、気管を切開し、以下の設定:上気道圧力限界:20cm H2O、PEEPより上の典型的な圧力発生6〜9cm H2O、呼吸率:80bpm;PEEP:1cm H2O、で12時間圧調節ベンチレーター(Servo Ventilator300、Siemens社)を用いて機械的人工呼吸を行った。
プロトコル中に血圧の連続測定および血液の採取を可能にするために頚動脈にカニューレを挿入した。動脈血試料(1試料当たり100μl)を定期的に摘出し、電子装置の血液ガス分析装置(GEM Premier3000;Instrumentation Laboratory社、レキシントン、MA)を用いて動脈血のpO2、pCO2およびpHを分析した。動脈血のPC02が40mmHgを超えたとき、ベンチレーターの調整を行った。実験を通じてFIO2を増加(酸素22〜26%)させることによって動脈血のP02を>60mmHgに維持した。
ペントバルビタールナトリウムの持続注入(〜10mg/kg/時間)および体液交換のために、静脈カテーテルを頚静脈に挿入した。再循環加熱毛布を使用して体温を37℃に維持し、第II誘導心電計によって心拍数をモニターした。MVプロトコル中の継続したケアには眼の潤滑、膀胱の絞り出し、気道粘液の除去、動物の回転および四肢の受動的運動を含めた。動物にはまた、気道分泌を低下させるために、MV中、2時間毎にグリコピロラートの筋注(0.18mg/kg)を行った。MV完了時に、6匹の動物群の1つにおいて、横隔膜を急いで摘出し、in vitro収縮測定のために肋骨横隔膜中央部のストリップを用い、組織化学分析のために断片を保存し、残りの部分を液体窒素中で凍結し、その後の分析のために-80℃で保存した。動物のさらなる群(n=6)において、全肋骨横隔膜を急速に摘出し、ミトコンドリアを単離してミトコンドリアの呼吸およびROS放出を測定するために用いた。
生化学的測定。ミトコンドリアの単離。おおよそ500mgの肋骨横隔膜筋を用いMakinenおよびLeeの方法を用いて横隔膜ミトコンドリアを単離した(Makinen and Lee, Biochemical studies of skeletal muscle mitochondria. I. Microanalysis of cytochrome content, oxidative and phosphorylative activities of mammalian skeletal muscle mitochondria. Archives of biochemistry and biophysics., Vol., 126(l):75-82 (1968) に少し変更を加えて行った;例えば、Kavazis et al., Mechanical ventilation induces diaphragmatic mitochondrial dysfunction and 増加d oxidant production. Free radical biology & medicine., Vol., 46(6):842-850 (2009) を参照のこと)。
ミトコンドリア呼吸。従来の技術を用いてミトコンドリアによる酸素消費を測定した。例えば、Kavazis et al., Mechanical ventilation induces diaphragmatic mitochondrial dysfunction and 増加d oxidant production. Free radical biology & medicine. Vol., 46(6): 842-850 (2009) を参照のこと。最大呼吸(状態3)および状態4呼吸(基礎呼吸)は、Eastbrook et al. Mitochondrial 呼吸 対照 and the polarographic measurement of ADP/O 比s. Methods Enzymology. Vol., 10: 41-47 (1967) の記載に従って測定した。
呼吸調節比(RCR)は状態3を状態4呼吸で割ることにより算出した。
ミトコンドリアからのROS放出。Amplex(登録商標)Red(Molecular Probes社、ユージン、オレゴン州)を用いて横隔膜ミトコンドリアからのROS放出を測定した。本アッセイの詳細は前述した。例えば、Kavazisら(2009)を参照のこと。ミトコンドリアによるROS生成は、呼吸を定常状態に保つクレアチンキナーゼエネルギークランプ技術を用いて測定した。本手順の方法の詳細はMesserおよび共同研究者によって以前に述べられている。Messer et al, Pyruvate and citric acid cycle carbon requirements in isolated skeletal muscle mitochondria. American journal of physiology. Vol., 286(3):C565-572 (2004) を参照のこと。最後に、H2O2放出速度は、ミトコンドリアのタンパク質含量に対して正規化した。
ウェスタンブロット分析。横隔膜試料中のタンパク質量は、前述の方法を用い、ウェスタンブロット分析によって測定した。McClung et al, Caspase-3 regulation of diaphragm myonuclear domain during mechanical ventilation-induced atrophy. Am J Respir Crit Care Med Vol., 175(2): 150-159 (2007) を参照のこと。電気泳動後、タンパク質をニトロセルロース膜に移行させ、目的とするタンパク質に対する一次抗体と共にインキュベートした。酸化ストレスを示す測定値として4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)(Abcam社)を調べ、タンパク質分解活性は、murf1(ECM Biosciences社)、atrogin1(ECM Biosciences社)、切断(活性型)カルパイン-1(Cell Signaling社)および切断(活性型)カスパーゼ-3(Cell Signaling社)を分析することによって評価した。さらにまた、MV中にカルパイン-1およびカスパーゼ-3活性の両方のさらなる測定値を得るために、α-IIスペクトリン(Santa Cruz社)のカルパイン特異的切断(145kDa切断産物)およびカスパーゼ-3特異的切断(120kDaの切断産物)を測定した。横隔膜における全タンパク質分解の指標としてアクチン(Santa Cruz社)のタンパク質量を測定した。等しいタンパク質負荷および移行を裏付けるために、すべての膜はPonceau Sで染色したことに注意されたい。
反応性カルボニル誘導体によるタンパク質酸化の評価。タンパク質修飾の程度の指標として、筋線維タンパク質試料中の反応性カルボニル誘導体レベルを測定した。これは、前述のInternational社(テメキュラ、カリフォルニア州)製のOxyblot酸化タンパク質検出キットを用いて行った。Kavazisら(2009)を参照のこと。
RNAの単離およびcDNAの合成。製造業者の使用説明書に従い、TRIzol試薬(Life Technologies社、カールスバッド、カリフォルニア州)を用いて筋肉組織から全RNAを単離した。分光光度計によりRNA含量(μg/mg筋肉)を評価した。次いで、オリゴ(dT)20プライマーおよび製造業者によって概略を述べられたプロトコルを用い、RT-PCRのためのSuperscript III First-Strand Synthesis System(Life Technologies社)を用いてRNA(5μg)を逆転写した。
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応。Taqman chemistryおよびABI Prism 7000Sequence Detection system(ABI社、フォスターシティー、カリフォルニア州)を用いるリアルタイムPCRのために、cDNA 1μlをPCR反応物25μlに加えた。比較CT法(ABI社,User Bulletin#2)を用いて遺伝子発現の相対定量を行った。我々の実験操作で発現の変化を示さなかった以前の研究に基づいて、リソソームグリコシド加水分解酵素であるβ-グルクロニダーゼを参照遺伝子として選択した。例えば、Deruisseau et al., Diaphragm Unloading via 対照led Mechanical Ventilation Alters the Gene Expression Profile. Am J Respir Crit Care Med. Vol., 172(10):1267-1275 (2005) を参照のこと。Applied Biosystems社(Assays-on-Demand)から市販されているあらかじめ指定されたラットプライマーおよびプローブ配列を用いてMAFbx(GenBank NM AY059628)およびMuRF-1(GenBank NM AY059627、NM BC061824)mRNA転写物をアッセイした。
20Sプロテアソーム活性。腹部肋骨の横隔膜の断片をホモジナイズし、Steinおよび共同研究者によって記載された技術を用いて、蛍光測定法で20Sプロテアソームのin vitroキモトリプシン様活性を測定した。Stein et al., Kinetic characterization of the chymotryptic activity of the 20S proteasome. Biochemistry 35(13): 3899-3908 (1996) を参照のこと。
機能測定。in vitro横隔膜収縮特性の測定。実験期間の完了時に、全横隔膜を摘出し、95% O2-5% C02ガスで平衡させたクレブスヘンゼライト液を含む解剖チャンバーに入れた。腱中心および胸郭における腱付着物を含む筋肉ストリップ(幅〜3mm)を中部肋骨から切除した。ジャケット形組織浴内で、2つの目方の軽いプレキシグラスクランプ間で、一方を等尺性力変換器(モデルFT-03、Grass Instruments社、クインシー、マサチューセッツ州)に連結してストリップを垂直に吊るした。筋肉を電気的に刺激して収縮させ、既述のようにコンピュータ化データ収集システムによって出力を記録した。Powers et al., Mechanical ventilation results in progressive contractile dysfunction in the diaphragm. J Appl Physiol, Vol. 92(5): 1851-1858 (2002) を参照のこと。比較目的で、横隔膜(線維束)力発生を線維断面積で正規化した(すなわち、特定力発生)。
組織学的測定。筋線維の断面積。凍結した横隔膜試料からの断片をクリオトーム(Shandon社、ピッツバーグ、ペンシルベニア州)を用いて10ミクロンに切断し、前述の線維断面積分析(CSA)のためにジストロフィン、ミオシンH鎖(MHC)IおよびMHCタイプIIaタンパク質を染色した。McClung et al, Antioxidant administration attenuates mechanical ventilation-induced rat diaphragm muscle atrophy independent of protein kinase B (PKB Akt) signalling. J Physiol, Vol. 585:203-215 (2007)を参照のこと。Scionソフトウェア(NIH)を用いてCSAを測定した。
統計解析。一元配置分散分析(ANOVA)を用いて各従属変数に関して群間の比較を行い、適切な場合には、事後検定でTukey HSD(honestly significant difference)検定を行った。p<0.05で有意性を判定した。データは平均値±SEMで示す。
ミトコンドリアタンパク質のカルボニル基の測定。ミトコンドリアタンパク質の抽出のために、ミトコンドリア単離緩衝液(1mM EGTA、10mM HEPES、250mMショ糖、10mMトリス-HCl、pH7.4)中で心室組織をホモジナイズした。4℃、800gで7分間、溶解物を遠心分離した。次いで、4℃、4000gで30分間、上清を遠心分離した。粗製ミトコンドリアペレットを少量のミトコンドリア単離緩衝液に再懸濁し、氷冷しながら超音波処理して膜を粉砕し、1%硫酸ストレプトマイシンで処理してミトコンドリアの核酸を沈殿させた。1アッセイ当たりタンパク質試料1μgを分析するためにOxiSelect(登録商標)タンパク質カルボニルELISAキット(Cell Biolabs社)を用いた。取扱説明書に従い、少し変更を加えてELISAを行った。簡潔に言えば、タンパク質試料をジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)と反応させ、抗DNPH抗体でプローブし、次いでHRP標識二次抗体でプローブした。抗DNPH抗体およびHRP標識二次抗体の濃度は、それぞれ1:2500および1:4000であった。
定量PCR。PGC1-α(Mm00731216)、TFAM(Mm00447485)、NRF-1(Mm00447996)、NRF-2(Mm00487471)、コラーゲン1a2(Mm00483937)およびANP(Mm01255747)を含むTaqman Gene Expression Assays on Demandにより、Applied Biosystems7900サーモサイクラーを用いて、定量的リアルタイムPCRにより遺伝子発現を定量した。18S RNAに対して発現アッセイを正規化した。
NADPHオキシダーゼ活性。次のとおりにNADPHオキシダーゼアッセイを行った。手短かに言えば、PBS/DTPA(100μMDTPAを含む)中で、心室タンパク質抽出物10μgをジヒドロエチジウム(DHE、10μM)、精子DNA(1.25μg/ml)およびNADPH(50μM)と共にインキュベートした。アッセイ物を暗所37℃で30分間インキュベートし、490/580nmでの励起/放出を用いて蛍光を検出した。
C.結果:
1.自発的呼吸下動物において、SS-31は横隔膜線維のCSAまたは機能に影響しない
覚醒時自発的呼吸下ラットにおけるミトコンドリア抗酸化剤SS-31の横隔膜収縮機能、線維断面積(CSA)およびミトコンドリア機能に対する影響を測定するために、12時間のMV期間中に機械的人工呼吸を行った動物に投与したのと同じレベルのSS-31で動物を12時間処置した。下記の表7A〜7Cに示す結果は、無処置対照動物と比較して、SS-31による動物の処置は、横隔膜ミトコンドリアからのROS放出および横隔膜ミトコンドリアの呼吸比に影響しないことを示している。さらにまた、対照と比較して、SS-31による動物の処置は横隔膜収縮機能および線維CSAを変化させなかったことをこの結果は示している。
Figure 2019069985
表7Aは、対照(生理食塩水注射で処置した)および、ミトコンドリア標的化抗酸化剤SS-31で処置した覚醒時自発的呼吸下ラット動物の両方からの横隔膜筋線維における線維断面積(CSA)を示す。任意の線維タイプにおいて、対照群とSS-31群との間に横隔膜線維CSAにおける有意差はない。数値は平均値±SEMである。
Figure 2019069985
表7Bは、対照(生理食塩水を注射した)およびSS-31処置動物における横隔膜の力-頻度応答(in vitro)に対するミトコンドリア標的化抗酸化剤(SS-31)の効果を示す。任意の刺激頻度において、対照群とSS-31群との間に横隔膜力発生における有意差はなかった。数値は平均値±SEMである。
Figure 2019069985
表7Cは、対照(生理食塩水注射)およびSS-31処置動物における、横隔膜ミトコンドリアの過酸化水素放出およびミトコンドリアの呼吸機能に対するミトコンドリア標的化抗酸化剤(SS-31)の効果を示す。これらのデータは、基質としてピルビン酸/リンゴ酸を用いて得た。VO2=ミトコンドリアの酸素消費;RCR=呼吸対照比である。状態3および状態4のV02の単位はnmol酸素/mgタンパク質/分である。数値は平均値±SEMである。* = p<0.05で対照との有意差が認められた。
2.長期のMVに対する生理的応答
ホメオスタシスを維持するためのMVプロトコルの有効性を評価するために、すべての動物において、実験の最初およびMV中の種々の時間間隔で、動脈圧、動脈血PC02、動脈血P02および動脈血pHを測定した。経時的に動脈圧、血液ガスおよびpHの小さな変化が存在したが、動脈圧および血液ガス/pHの恒常性はよく維持されていたことを我々の結果は示している(表8)。
Figure 2019069985
表8は12時間の機械的人工呼吸の完了時における動物の心拍数、収縮期血圧および動脈血ガス分圧/pHを示す。数値は平均値±SEMである。これらの生理学的変数のいずれにおいても、2つの実験群に有意差はなかった。
さらに、敗血症は横隔膜収縮機能障害と関連することを考慮して、実験を通じて厳密な無菌操作を行った。重要なことに、MV中、動物は感染を生じなかったことをデータは明らかにしている。このことは、血液の顕微鏡検査から検出可能な細菌は示されなかったという所見と肺および腹腔の剖検(視覚的検査)によって検出可能な病変が示されなかったという所見によって支持される。さらにまたMV動物は治験中無熱であり、体温は36.3〜37.4℃であった。最後に、MVの過程において、MV動物の体重の有意な変化は生じなかった(P<0.05)。まとめれば、これらの結果は、MV動物は感染を明らかになにも患っていなかったことを示している。
対照と比較して、自発的呼吸下動物のSS-31による処置は、これらの依存する測定値をなんら変化させなかったことをこの結果を示している(下記参照)。従って、12時間のMVからなるMV誘発性横隔膜筋力低下中のミトコンドリアからのROS放出を分析するために、ミトコンドリア標的化抗酸化剤としてSS-31を用いてさらなる実験を行った。
3.SS-31は横隔膜ミトコンドリアからのMV誘発性ROS放出を妨げる
横隔膜におけるMV誘発性酸化障害、収縮機能障害および萎縮との関連から、ミトコンドリアにおいてミトコンドリアからのROS放出を評価した。この点に関して、横隔膜ミトコンドリアからのMV誘発性ROS放出を防止するために、ミトコンドリア標的化抗酸化剤(SS-31)でラットを処置した。SS-31による処置は、状態3および4のミトコンドリア呼吸の両方において、横隔膜ミトコンドリアからのMV誘発性H2O2放出増加を防止したことに注意されたい。図1を参照のこと。この点において、SS-31の非存在下では、機械的人工呼吸を行った(MV)ラットの横隔膜から単離されたミトコンドリアからの過酸化水素放出は低下を示さなかった。このように、SS-31による動物の処置は、長期のMV後のミトコンドリアからのH2O2放出速度を有意に低下させた。数値は平均値±SEMである。* = CONおよびMVSS(n=6/群)の両方との有意差が認められた(p<0.05)。図1を参照のこと。
長期のMVは、MV動物の横隔膜から単離されるミトコンドリアにおけるカップリング障害(すなわち、低い呼吸対照比)によって示されるミトコンドリアへの障害をもたらす。従ってSS-31による動物の処置は、MV誘発性ミトコンドリア脱共役から横隔膜ミトコンドリアを保護する。表9に示すように、SS-31による処置により、長期のMV後に生じる横隔膜ミトコンドリア脱共役を防ぐのに成功した。
表9.
Figure 2019069985
表9は、対照動物(CON)、機械的人工呼吸を行った動物(MV)および、ミトコンドリア抗酸化剤SS-31で処置した機械的人工呼吸を行った動物(MVSS)の横隔膜から単離されたミトコンドリアの状態3呼吸、状態4呼吸および呼吸対照比(RCR)を示す。これらのデータは、基質としてピルビン酸/リンゴ酸を用いて得た。状態3および状態4の酸素消費(VO2)の単位はnmol酸素/mgタンパク質/分である。数値は平均値±SEMである。* CONおよびMVSSとは有意差が認められた(p<0.05)。
4.MV誘発性酸化ストレスはミトコンドリアからのROS放出によって仲介される
ミトコンドリアからのROS放出が横隔膜におけるMV誘発性酸化ストレスに必要かどうかを決定するために、酸化障害の2つのバイオマーカーを測定した。すなわち横隔膜の4-HNE付加細胞質ゾルタンパク質レベルおよび筋線維タンパク質のタンパク質カルボニルレベルである。その結果、SS-31による動物の処置が、通常は長期のMVと関連するタンパク質カルボニルおよび4-HNE付加タンパク質の両方のROS誘発性増加に対して横隔膜を保護したことが明らかとなった。図2を参照のこと。この点に関して、対照ラット(CON)、機械的人工呼吸を行ったラット(MV)およびミトコンドリア標的化抗酸化剤SS-31で処置した機械的人工呼吸を行ったラット(MVSS)の横隔膜における酸化修飾タンパク質レベルを測定した。
図2Aに、3つの実験群の横隔膜における4-ヒドロキシノネナール付加タンパク質レベルを示す。ヒストグラム(histograph)の上部の画像は3つの実験群からの典型的なウェスタンブロットデータである。図2Bはさらに、3つの実験群の横隔膜におけるタンパク質カルボニルレベルを示す。* = CONおよびMVSS(n=6/群)の両方との有意差が認められた(p<0.05)。図2を参照のこと。
5.MV誘発性横隔膜収縮機能障害および線維萎縮にはミトコンドリアからのROS放出増加が必要である
ミトコンドリアからのROS放出がMV誘発性横隔膜収縮機能障害に果たす役割を評価するために、対照、MVおよびSS-31で処置したMV動物から得られた横隔膜筋のストリップを用いてin vitroで横隔膜収縮性能を測定した。SS-31を用いるミトコンドリアからのROS放出の予防により、長期のMVと関連する横隔膜収縮機能障害の防止に成功した。図3を参照のこと。図3に示すように、対照およびミトコンドリア標的化抗酸化剤のありなしで機械的人工呼吸を行ったラットにおいて、長期のMVは横隔膜の力-頻度応答(in vitro)に変化をもたらす。しかしながら、任意の刺激頻度において、CON群とMVSS群との間に横隔膜力発生における有意差は認められなかった。数値は平均値±SEMである。SEMバーの一部はサイズが小さいため非表示であることに注意されたい。* = CONおよびMVSS(n=6/群)の両方との有意差が認められた(p<0.05)。図3を参照のこと。
MV誘発性酸化ストレスは長期のMVと関連する横隔膜線維萎縮に必要である。Betters et al., Trolox attenuates mechanical ventilation-induced diaphragmatic dysfunction and proteolysis. Am J Respir Crit Care Med., Vol., 170(11): 1179-1184 (2004) を参照のこと。図4に示すように、対照ラット(CON)および、ミトコンドリア標的化抗酸化剤のあり(MVSS)なし(MV)で機械的人工呼吸を行ったラットからの横隔膜筋筋線維における線維断面積(CSA)を試験した。任意の線維タイプにおいて、CON群とMVSS群との間に横隔膜線維CSAにおける有意差はないことに注意されたい。数値は平均値±SEMである。* = CONおよびMVSS(n=6/群)の両方との有意差が認められた(p<0.05)。図4を参照のこと。ミトコンドリアからのMV誘発性ROS放出がMV誘発性横隔膜萎縮の必要条件であることが決定された。すべての処置群に関して、個々の線維タイプの筋線維の断面積を測定した。ミトコンドリアからのMV誘発性ROS放出増加の予防は、MV誘発性線維萎縮から横隔膜を保護することをこのデータは示している。図4を参照のこと。
6.ミトコンドリアからのMV誘発性ROS放出は横隔膜のプロテアーゼ活性化およびタンパク質分解を促進する
タンパク質分解のユビキチン-プロテアソーム系は、長期のMV中に横隔膜において活性化され、従ってMV誘発性横隔膜タンパク質分解に寄与すると考えられる。タンパク質分解のユビキチン-プロテアソーム系に対するミトコンドリアからのROS放出の効果を測定するために、横隔膜における2つの重要な筋肉特異的E3リガーゼ(すなわち、アトロギン-1/MAFbxおよびMuRF-1)のmRNAおよびタンパク質レベルに加えて20Sプロテアソーム活性を測定した。SS-31によるミトコンドリアからのMV誘発性ROS放出の予防は、横隔膜におけるMV誘発性20Sプロテアソーム活性増加を防止したことをこの結果は示している。図5Aを参照のこと。さらにまた、長期のMVは両方のMV群の横隔膜におけるアトロギン-1/MAFbx mRNAレベルの有意な増加をもたらしたことをこの結果を示している。しかしながら、SS-31による動物の処置は、横隔膜におけるアトロギン-1/MAFbxタンパク質レベルのMV誘発性増加を有意に鈍化させた。図5Bを参照のこと。
図5Cに、横隔膜MuRF-1のmRNAおよびタンパク質レベルに対する長期のMVの影響を示す。長期のMVは、横隔膜におけるMuRF-1のmRNAレベルの有意な増加をもたらした。機械的人工呼吸を行った動物の横隔膜においてMuRF-1のタンパク質レベルは増加する傾向を見せたが、これらの差異は有意ではなかった。図5B〜Cにおけるヒストグラムの上部の画像は3つの実験群からの典型的なウェスタンブロットデータである。数値は平均値±SEMである。* = CONおよびMVSS(n=6/群)の両方との有意差が認められた(p<0.05)。図5を参照のこと。
横隔膜におけるカルパインおよびカスパーゼ-3の活性化は、MV誘発性横隔膜萎縮および収縮機能障害に重要な役割を有している。McClung et al., Caspase-3 regulation of diaphragm myonuclear domain during mechanical ventilation-induced atrophy, Am J Respir Crit Care Med., Vol. 175(2):150-159(2007)を参照のこと。横隔膜カルパインおよびカスパーゼ-3の活性は2つの異なるが相補的な方法を用いてアッセイした。最初に、切断された活性型カルパイン1およびカスパーゼ-3を検出するために、ウェスタンブロットによってこの筋肉における活性型カルパイン-1およびカスパーゼ-3レベルを検出した。図6を参照のこと。図6Aに示すように、12時間のMVの完了時に、横隔膜筋においてカルパイン1の活性体が検出される。12時間のMVの完了時における、横隔膜筋における切断されたカスパーゼ-3の活性型バンドもまた図示されている。図6Bを参照のこと。図6Aおよび6Bにおけるヒストグラムの上部の画像は、3つの実験群からの典型的なウェスタンブロットデータである。数値は平均値±SEMである。* = CONおよびMVSS(n=6/群)の両方との有意差が認められた(p<0.05)。図6Bを参照のこと。
カルパイン1およびカスパーゼ-3活性は1つの期間で測定した。従って、αII-スペクトリンのカルパインおよびカスパーゼ-3特異的分解生成物もまた測定した。なぜなら、これらの分解産物は検出可能なin vivoでのサインを提供するからである。図7を参照のこと。この技術は、MV中長期間にわたって横隔膜におけるin vivoでのカルパインおよびカスパーゼ-3活性の指標を提供する。図7Aに示すように、12時間のMV後の横隔膜筋における145kDaα-II-スペクトリン分解産物(SBPD)のレベルが測定される。SBDP 145kDaは無傷のα-II-スペクトリンのカルパイン切断に特異的なα-II-スペクトリン分解産物であり、従って、SBDP 145kDaの細胞レベルはin vivoでのカルパイン活性のバイオマーカーとして用いられることに注意されたい。
図7Bに示すように、12時間のMV後の横隔膜筋における120kDaのα-II-スペクトリン分解産物(SBPD 120kDa)レベルを測定した。SBDP 120kDaは無傷のα-II-スペクトリンのカスパーゼ-3切断に特異的なα-II-スペクトリン分解産物であり、従って、SBDP 120kDaの細胞レベルはカスパーゼ-3活性のバイオマーカーとして使用できることに注意されたい。図7Aおよび7Bヒストグラムの上部の画像は3つの実験群からの典型的なウェスタンブロットデータである。数値は平均値±SEMである。* = CONおよびMVSS(n=6/群)の両方との有意差が認められた(p<0.05)。図7を参照のこと。
これらの結果を合わせれば、ミトコンドリア標的化抗酸化剤(SS-31)による動物の処置は、カルパインおよびカスパーゼ-3の両方の活性化に対して横隔膜を保護したことは明らかである。図6〜7を参照のこと。ミトコンドリアは横隔膜のMV誘発性ROS生成の主要な供給源であり、ミトコンドリアからのROS生成は横隔膜におけるカルパインおよびカスパーゼ-3の両方のMV誘発性活性化に必須であることをこれらの発見は明らかにしている。
7.ミトコンドリア標的化抗酸化剤はMV誘発性横隔膜タンパク質分解を防止する
ミトコンドリアからのMV誘発性ROS放出の増加の予防はプロテアーゼ活性化に対して横隔膜を保護すること明らかにした後、不使用誘発性筋肉タンパク質分解のマーカーとして横隔膜におけるサルコメアタンパク質アクチンの相対存在量を測定した。アクチンは不使用による筋萎縮中に優先的に分解されるので、アクチンタンパク質レベルの評価はタンパク質分解の指標を提供する。Li et al, Interleukin-1 stimulates catabolism in C2C12 myotubes. American Journal of Physiology., Vol., 297(3):C706-714 (2009) を参照のこと。対照動物およびMVSS動物の両方からの横隔膜筋と比較して、ミトコンドリアによる抗酸化剤なしで長期のMVに暴露された動物の横隔膜筋においてアクチン存在量は著しく低下していたことをこの結果は示している。図8を参照のこと。従って、ミトコンドリアからのMV誘発性ROS放出の予防は、プロテアーゼ活性化を防止したばかりでなく、この処置は、MV誘発性横隔膜タンパク質分解を防止した。
図8に示すように、アクチンと、対照(CON)およびミトコンドリア標的化抗酸化剤のあり(MVSS)なし(MV)で機械的人工呼吸を行った動物からの横隔膜における全サルコメアタンパク質レベルとの比を測定した。不使用による筋萎縮中にアクチンは優先的に分解されるため、アクチンと全サルコメアタンパク質レベルとの比の評価は、長期のMV中の横隔膜タンパク質分解の相対指標を提供する。ヒストグラムの上部の画像は、3つの実験群からの典型的なウェスタンブロットデータである。数値は平均値±SEMである。* = CONおよびMVSS(n=6/群)の両方との有意差が認められた(p<0.05)。図8を参照のこと。
実施例2
A.実験計画および方法:
本実施例の目的は、ミトコンドリアでのMV誘発性酸化は不使用誘発性骨格筋筋力低下に一般化できることを明らかにすることであった。2つの異なるマウス群(1および2)を次のとおりに処置した。
1.正常な可動マウス
正常な可動マウスを、マウス1群あたり8匹を有する2つの群、AおよびBに無作為に割り付けた。群Aのマウスには滅菌生理食塩水の注射を行い、群Bのマウスにはミトコンドリア標的化ペプチドSS-31の注射を行った。
2.後肢のギプス固定を行ったマウス
マウスの後肢をギプス固定によって14日間固定し、それによって後肢の筋萎縮を誘発した。ギプス固定を行ったマウスには、滅菌生理食塩水(0.3ml)の注射またはペプチドSS-31(0.3ml)を含む注射を行った。未処置マウスの対照群もまた本実験に用いた。
B.材料および方法:
動物
本実験に72匹の成体オスC57B16マウス(21〜28週齢、体重26.44±0.54g)を用いた。動物を12:12時間の明暗サイクルで維持し、実験期間を通じて食物(AIN93diet)および水を自由に与えた。University of Floridaの研究機関の動物管理使用委員会はこれらの実験を承認した。
実験計画
ミトコンドリアからのROS生成が固定誘発性骨格筋萎縮に役割を果たしているという仮説を試験するために、3つの実験群(n=24/群):1)無治療(対照)群;2)14日間の後肢固定群(ギプス);および3)ミトコンドリア標的化抗酸化剤SS-31で処置した14日間の後肢固定群(ギプス+SS)、の1つにマウスを無作為に割り付けた。14日間の後肢固定群(ギプス)には生理食塩水注入を行ったのに対し、この群の動物は固定期間中、ミトコンドリア標的化抗酸化剤SS-31で処置したことに注意されたい。
実験プロトコル
固定。マウスをイソフルランガス(3%で導入、0.5〜2.5%で維持)で麻酔した。麻酔した動物を、ヒラメ筋および足底筋の最大萎縮を誘導するために、足底屈位置で肢関節で左右相称にギプス固定した。後肢および尾部の身体の4分の1を共に焼き石膏のギプス固定によって包んだ。擦傷を防止するために、ギプスの下に薄層の詰め物を置いた。さらに、動物がギプスを噛むのを防ぐために、ファイバーグラス材料のストリップの1つを焼き石膏上に使用した。噛まれた焼き石膏、擦傷、静脈閉塞および歩行障害に関してマウスを毎日モニターした。
ミトコンドリア標的化抗酸化剤投与。後肢固定群におけるマウスには、固定期間中毎日、生理食塩水に溶解したミトコンドリア標的化抗酸化剤SS-31(1.5mg/kg)の皮下注射を行った。ミトコンドリア標的化抗酸化剤としてのその特異性によりSS-31を選択した(Zhao K, Zhao GM, Wu D, Soong Y, Birk AV, Schiller PW, Szeto HH. Cell-permeable peptide antioxidants targeted to inner mitochondrial membrane inhibit mitochondrial swelling, oxidative cell death, and reperfusion injury. The Journal of biological chemistry 2004;279:34682-34690)。
生化学的測定
透過化筋線維の調製。この技術は従来の方法を変更して用いた(Korshunov SS, et al., High protonic potential actuates a mechanism of production of reactive oxygen species in mito- chondria. FEBS Lett 416: 15-18, 1997; Tonkonogi M, et al, Reduced oxidative power but unchanged antioxidative capacity in skeletal muscle from aged humans. Pfliigers Arch 446: 261-269, 2003)。簡潔に言えば、ヒラメ筋および足底筋の小部分(〜25mg)を切除し、氷冷した緩衝液X(60mM K-MES、35mM KCl、7.23mM K2EGTA、2.77mM CaK2EGTA、20mMイミダゾール、0.5mM DTT、20mMタウリン、5.7mM ATP、15mM PCrおよび6.56mM MgCl2、pH7.1)を含むプラスチックペトリ皿に乗せた。筋肉から結合組織を切り取り、線維束(湿重量4〜8mg)に切り分けた。顕微鏡下で一対の特に鋭いピンセットを用いて、線維束の表面積を最大化するように、氷冷した緩衝液Xに筋線維を穏やかに切り離して入れた。筋線維を透過化するために、回転装置上4℃で30間、50μg/mlのサポニンを含む氷冷した緩衝液X中で各線維束をインキュベートした。次いで、氷冷した緩衝液Z(110mM K-MES、35mM KCl、1mM EGTA、5mM K2HP04および3mM MgCl2、0.005mMグルタミン酸塩および0.02mMリンゴ酸塩ならびに0.5mg/ml BSA、pH7.1)中で透過化束を洗浄した。
透過化線維におけるミトコンドリア呼吸。37℃に維持した呼吸チャンバー中、ポーラログラフィーで呼吸を測定した(Hansatech Instruments社、英国)。呼吸チャンバーをキャリブレーションした後、透過化線維束を、クレアチンキナーゼを飽和するための20mMクレアチンを含む1mlの呼吸緩衝液Zと共にインキュベートした(Saks VA, et al. Permeabilized cell and skinned fiber techniques in studies of mitochondrial function in vivo. Mol Cell Biochem 184: 81-100, 1998; Walsh B, et al. The role of phosphorylcreatine and creatine in the regulation of mitochondrial respiration in human skeletal muscle. J Physiol 537: 971- 978, 2001)。5mMピルビン酸および2mMリンゴ酸を用いて、複合体Iを介するフラックスを測定した。ADPの存在下での呼吸速度と定義される最大呼吸(状態3)は、呼吸チャンバーに0.25mM ADPを添加することによって開始させた。ATP合成を阻害する10μg/mlのオリゴマイシンの存在下で基礎呼吸(状態4)を測定した。状態3呼吸を状態4呼吸で割ることによって呼吸対照比(RCR)を算出した。
ミトコンドリアからのROS生成。Amplex(登録商標)Red(Molecular Probes社、ユージン、オレゴン州)を用いてミトコンドリアからのROS生成を測定した。基質としてコハク酸を用い、96ウェルプレート、37℃で本アッセイを行った。特に、本アッセイは、西洋ワサビペルオキシダーゼが非蛍光性Amplex(登録商標)Redの蛍光性Resorufin RedへのH2O2依存酸化を触媒するという概念に基づいて開発され、スーパーオキシド産生の指標としてのH2O2を測定するために用いられている。すべてのスーパーオキシドをH2O2に変換するために、40単位/mlでスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を添加した。マルチウェルプレートリーダー蛍光光度計(SpectraMax、Molecular Devices社、サニーベール、カリフォルニア州)を用い、545nmの励起波長および590nmの発光波長でResorufin生成(H2O2によって酸化されたAmplex(登録商標)Red)をモニターした。Resorufinの生成レベルを5分毎に15分間記録し、検量線を用いてH2O2生成を算出した。
ウェスタンブロット分析。ウェスタンブロット分析によって骨格筋試料中のタンパク質量を測定した。簡潔に言えば、ヒラメ筋試料および足底筋組織試料を、1:10(wt/vol)で、プロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma社)を含む5mMトリス(pH7.5)および5mM EDTA(pH8.0)中でホモジナイズし、1500g、4℃で10分間遠心分離した。得られた上清を採取後、Bradfordの方法(Sigma社、セントルイス)によって筋肉タンパク質含量を評価した。0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含む4〜20%ポリアクリルアミドゲルによって、200Vで〜1時間、電気泳動を用いてタンパク質を分離した。電気泳動後、タンパク質をニトロセルロース膜に移行させ、目的とするタンパク質に対する一次抗体と共にインキュベートした。酸化ストレスを示す測定値として4-HNE(Abcam社)をプローブし、タンパク質分解活性は切断(活性型)カルパイン-1(Cell Signaling社)および切断(活性型)カスパーゼ-3(Cell Signaling社)によって評価した。インキュベーション後、膜をPBS-ツイーンで洗浄し、二次抗体(Amersham Biosciences社)で処置した。標識タンパク質(GE Healthcare社)を検出するために化学発光系を用い、オートラジオグラフィーフィルムおよび現像液(Kodak社)を用いて膜を現像した。コンピュータ化画像解析を用いて得られた画像を解析し、対照からの変化率を決定した。等しいタンパク質負荷および移行を裏付けるために、膜をPonceau Sで染色し、分析した。
組織学的測定
筋線維の断面積。凍結したヒラメ筋および足底筋試料(OCT中に包埋)からの断片をクリオトーム(Shandon社、ピッツバーグ、ペンシルベニア州)を用いて10ミクロンに切断し、前述の線維断面積分析(CSA)のためにジストロフィン、ミオシンH鎖(MHC)IおよびMHCタイプIIaタンパク質を染色した(McClung JM, et al, Antioxidant administration attenuates mechanical ventilation-induced rat diaphragm muscle atrophy independent of protein kinase b (pkb akt) signalling. J Physiol 2007;585:203-215)。Scionソフトウェア(NIH)を用いてCSAを測定した。
統計解析
一元配置分散分析(ANOVA)を用いて各従属変数に関して群間の比較を行い、適切な場合には、事後検定でTukey HSD(honestly significant difference)検定を行った。p<0.05で有意性を判定した。データは平均値±SEMで示す。
C.結果:
図9〜18に示すように、SS-31は正常な骨格筋サイズまたはミトコンドリア機能に効果を示さなかった。しかしながら、SS-31は、後肢固定から生じる酸化障害および関連する筋力低下(例えば、萎縮、収縮機能障害など)を防止することができた。
1.正常な可動マウス
図9A〜Dに示すように、可動マウスにおいて、SS-31は、ヒラメ筋重量、呼吸共役比(RCR)、ミトコンドリア状態3呼吸またはミトコンドリア状態4呼吸にそれぞれ効果を示さなかった。RCRは、酸素消費によって測定される、状態3呼吸の状態4呼吸に対する呼吸指数比である。同様に、図10A〜Cは、SS-31が、正常なヒラメ筋における異なるサイズの筋線維に変動する効果を何も示さなかったことを示す。さらにまた、図11A〜Dに示すように、SS-31は、足底筋重量、呼吸共役比(RCR)、ミトコンドリア状態3呼吸、またはミトコンドリア状態4呼吸にそれぞれ効果を示さなかった。同様に、SS-31は正常な足底筋線維組織における異なるサイズの筋線維に変動する効果をなんら付与しなかったことを図12A〜Bは示している。
2.後肢のギプス固定を行ったマウス
図13A〜Dに示すように、7日間のギプス固定は、ヒラメ筋重量(図13A)、RCR(図13B)およびミトコンドリア状態3呼吸(図13C)に有意な減少をもたらしたが、それらはすべて、SS-31の投与によって覆された。ギプス固定は、状態4呼吸に有意な効果を示さなかった。同様に、7日間のギプス固定は、ヒラメ筋から単離されたミトコンドリアによるH2O2生成を有意に増加させたが、これもまた同様にSS-31によって防止された。図14A〜Bを参照のこと。図14Bに示すように、ヒラメ筋における3つのタイプの線維(タイプI、IIaおよびIIb/x)の断面積減少をSS-31は防止した。
ギプス固定はまた、4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)による脂質過酸化反応によって測定される、ヒラメ筋における酸化障害を有意に亢進した。図15Aを参照のこと。この効果はSS-31投与によって克服された。さらに、ギプス固定は、ヒラメ筋におけるプロテアーゼ活性を有意に亢進させたが、このことは筋肉分解および萎縮の主な原因となると考えらえる。図15B〜Dに示すように、カルパイン-1、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-12による筋肉のタンパク質分解は、それぞれ、SS-31によってすべて防止された。
図16A〜Dに示すように、7日間のギプス固定は、足底筋重量(図16A)、RCR(図16B)および、ROSと密接に関連するミトコンドリア状態4呼吸(図16D)に有意な減少をもたらした。これらの効果はすべてSS-31の投与によって覆された。ギプス固定は状態3呼吸に有意な効果を示さなかった。図16Cを参照のこと。同様に、7日間のギプス固定は足底筋から単離されたミトコンドリアによって生成されるH2O2を有意に増加させたが、これはSS-31によって防止された。図17A〜Bを参照のこと。図17Bに示すように、足底筋における2つのタイプの線維(タイプIIaおよびIIb/x)の断面積減少をSS-31は防止した。
ギプス固定はまた、4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)による脂質過酸化反応によって測定される足底筋における酸化障害を有意に亢進した。図18Aを参照のこと。この効果はSS-31投与によって克服された。さらに、ギプス固定はヒラメ筋におけるプロテアーゼ活性を有意に亢進させたが、このことは筋肉分解および萎縮の主な原因となると考えられる。図18B〜Dに示すように、カルパイン-1、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-12による筋肉のタンパク質分解は、それぞれSS-31によってすべて防止された。
要約すれば、MV誘発性または不使用誘発性のミトコンドリアからのROS放出増加を示す被験者へのSS-31の投与は、プロテアーゼ活性を低下させるばかりでなく、骨格筋萎縮および収縮機能障害も減らすことをこれらの実施例からの結果は示している。ミトコンドリア標的化抗酸化剤SS-31による動物の処置は、前述の骨格筋におけるタイプI、IIaおよびIIx/b線維の萎縮の防止に成功した。さらにまた、MV誘発性および不使用誘発性のミトコンドリアからのROS放出増加の予防はまた、最大下および最大刺激頻度におけるMV誘発性の横隔膜特定力発生低下に対しても横隔膜を保護する。図3を参照のこと。合わせれば、SS-31は、横隔膜および他の骨格筋におけるMV誘発性および不使用誘発性のミトコンドリアからのROS放出を防止および治療することができることをこれらの結果は示している。
本発明は、本願に記載の特定の実施形態に限定されるものではなく、これらは単に本発明の個々の側面の1つの例示を示したものである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の多くの改変および変形が可能であることは当業者に明らかであろう。本発明の範囲内の機能的に同等な方法および装置は、本明細書に記載のものに加えて、前述の説明から当業者に明らかであろう。このような改変および変形は、添付の特許請求の範囲内であるものとする。本発明は、添付の特許請求の範囲に加えて前記特許請求の範囲の権利が与えられる均等物の全範囲の用語によってのみ限定される。本発明は、特定の方法、試薬、化合物組成物または生体系には限定されず、それらはもちろん変更しうることが理解されるべきである。本明細書で用いられる用語法は、ただ特定の実施形態を説明することを目的とし、限定するものではないこともまた理解されなければならない。
さらに、本開示の特徴または側面がマーカッシュ群に関して記載されている場合、本開示はまた、それによって、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの部分群に関して記載されているということは、当業者に明らかであろう。
当業者には当然のことながら、あらゆる目的のために、本明細書に記載のすべての範囲はまた、特に記述を提供することに関して、すべての範囲は、任意かつ全ての可能な部分範囲およびそれらの部分範囲の組み合わせもまた含む。任意の記載された範囲は、その範囲が少なくとも半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに細分化されことが十分に記載され、かつそれが可能であることは容易に認識できる。限定するものではない例として、本明細書に記載の範囲は、下部3分の1、中部3分の1および上部3分の1などに容易に分けることができる。"まで"、"少なくとも"、"を超え"、"未満"などのすべての文言は、記載された数を含み、かつ続いて上記のように部分範囲に細分しうる範囲を指すこともまた当業者には明らかであろう。最後に、当業者には当然のことながら、範囲は個別のメンバーを含む。従って、例えば、1〜3ペプチドを有する群は、1、2または3ペプチドを有する群のことを言い、同様に、1〜5ペプチドを有する群は、1、2、3、4または5ペプチドを有する群のことを言うなどである。
本明細書に記載または引用されたすべての特許、特許出願、米国仮出願および公報は、本明細書の明確な教示と矛盾しない限り、すべての図面および表を含めて、その全体が参照として包含される。
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲において示される。

Claims (20)

  1. ペプチドD-Arg-2',6'Dmt-Lys-Phe-NH2またはその薬学的に許容される塩の治療的有効量を含む、哺乳動物被験者における骨格筋疾患の治療または予防のための医薬の製造における芳香族カチオン性ペプチドの使用。
  2. 前記骨格筋が横隔膜筋を含む、請求項1記載の使用。
  3. 前記骨格筋疾患が機械的人工呼吸(MV)に起因する、請求項1記載の使用。
  4. 前記MVの期間が少なくとも10時間である、請求項3記載の使用。
  5. 前記医薬がMV前、MV中またはその両方において被験者に投与される、請求項3記載の使用。
  6. 前記医薬が経口、局所、全身、静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内投与されるよう製剤化される、請求項1記載の使用。
  7. ペプチドD-Arg-2',6'Dmt-Lys-Phe-NH2またはその薬学的に許容される塩の治療的有効量を含む、哺乳動物被験者におけるMV誘発性横隔膜機能障害の治療または予防のための医薬の製造における芳香族カチオン性ペプチドの使用。
  8. 前記医薬がMV前、MV中またはその両方において被験者に投与される、請求項7記載の使用。
  9. 前記MVが少なくとも10時間である、請求項7記載の使用。
  10. 前記医薬が経口、局所、全身、静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内投与されるよう製剤化される、請求項7記載の使用。
  11. ペプチドD-Arg-2',6'Dmt-Lys-Phe-NH2またはその薬学的に許容される塩の治療的有効量を含む、哺乳動物被験者における不使用誘発性骨格筋萎縮の治療または予防のための医薬の製造における芳香族カチオン性ペプチドの使用。
  12. 前記骨格筋がヒラメ筋もしくは足底筋、またはヒラメ筋および足底筋の両方を含む、請求項11記載の使用。
  13. 前記医薬が不使用前または不使用中に被験者に投与される、請求項11記載の使用。
  14. 前記医薬が経口、局所、全身、静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内投与されるよう製剤化される、請求項11記載の使用。
  15. D-Arg-2',6'Dmt-Lys-Phe-NH2またはその薬学的に許容される塩の有効量を含む、治療を必要とする哺乳動物被験者の骨格筋における酸化障害亢進を特徴とする疾患または状態の治療のための医薬の製造における芳香族カチオン性ペプチドの使用であって、前記酸化障害が、対照レベルと比較しての、カルパイン、カスパーゼ-3、カスパーゼ12、20Sプロテアソーム、E3リガーゼ、アトロギン-1/MAFbx、MuRF-1、αII-スペクトリン、サルコメアタンパク質、4-HNE付加細胞質ゾルタンパク質および、筋線維タンパク質におけるタンパク質カルボニルからなる群から選択される1以上のバイオマーカーの遺伝子発現レベル、タンパク質レベル、活性または分解の変化と関連する前記使用。
  16. 前記酸化障害亢進を特徴とする疾患または状態が、不使用誘発性骨格筋萎縮またはMV誘発性横隔膜機能障害を含む、請求項15記載の使用。
  17. 前記対照レベルが、不使用誘発性骨格筋萎縮またはMV誘発性横隔膜機能障害に苦しんでいない健常者からの1以上のバイオマーカーレベルである、請求項15記載の使用。
  18. 前記医薬が酸化障害亢進の前またはその間に被験者に投与される、請求項15記載の使用。
  19. 前記医薬が経口、局所、全身、静脈内、皮下、腹腔内または筋肉内投与されるよう製剤化される、請求項15記載の使用。
  20. 前記骨格筋がヒラメ筋もしくは足底筋、またはヒラメ筋および足底筋の両方を含む、請求項15記載の使用。
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