図1は、本発明の実施の形態に係る電力変換装置1の構成を説明するための図である。電力変換装置1は、直流電源部2から供給される直流電力を交流電力に変換して、商用電力系統3(以下、単に系統3という)に出力する。直流電源部2は、太陽電池、蓄電池、燃料電池などの直流電源と、直流電源の出力電圧を調整可能なDC/DCコンバータを含む。
電力変換装置1は、直交変換部10、フィルタ部20及び制御部30を備える。直交変換部10は、直流電源部2と並列に接続された第1アーム回路(U相)と、第2アーム回路(W相)を備える。第1アーム回路は、直流電源部2の正側配線と負側配線との間に、第1スイッチング素子Q1、第1フライングキャパシタ回路F1、第2スイッチング素子Q2の順に直列接続されて構成される。第2アーム回路は、直流電源部2の正側配線と負側配線との間に、第3スイッチング素子Q3、第2フライングキャパシタ回路F2、第4スイッチング素子Q4の順に直列接続されて構成される。
第1スイッチング素子Q1と第1フライングキャパシタ回路F1との接続点と、第2フライングキャパシタ回路F2と第4スイッチング素子Q4との接続点との間に、第5スイッチング素子Q5が接続される。第3スイッチング素子Q3と第2フライングキャパシタ回路F2との接続点と、第1フライングキャパシタ回路F1と第2スイッチング素子Q2との接続点との間に、第6スイッチング素子Q6が接続される。
第1スイッチング素子Q1〜第6スイッチング素子Q6には例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を使用できる。第1ダイオードD1〜第6ダイオードD6は、第1スイッチング素子Q1〜第6スイッチング素子Q6にそれぞれ並列に、逆向きに接続される。なお第1スイッチング素子Q1〜第6スイッチング素子Q6にMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を使用してもよい。この場合、第1ダイオードD1〜第6ダイオードD6は、ソースからドレイン方向に形成される寄生ダイオードを利用できる。第1ダイオードD1〜第6ダイオードD6は還流ダイオードとして作用する。
直交変換部10は、第1アーム回路及び第2アーム回路に並列接続された直流電源部2の直流電力を交流電力に変換し、当該交流電力を第1フライングキャパシタ回路F1及び第2フライングキャパシタ回路F2の中点から出力するインバータ回路として動作する。
フィルタ部20は、第1リアクトルL1、第2リアクトルL2及び第3コンデンサC3を含み、直交変換部10の出力電圧および出力電流の高調波成分を減衰させて、直交変換部10の出力電圧および出力電流を正弦波に近づける。
制御部30は、第1スイッチング素子Q1〜第6スイッチング素子Q6、並びに第1フライングキャパシタ回路F1及び第2フライングキャパシタ回路F2に含まれる複数のスイッチング素子をPWM制御する。制御部30は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてアナログ素子、マイクロコンピュータ、DSP、ROM、RAM、FPGA、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてファームウェア等のプログラムを利用できる。
図2(a)−(c)は、フライングキャパシタ回路の構成例を示す図である。図2(a)は1段のフライングキャパシタ回路を示す。図2(a)に示すフライングキャパシタ回路は、直列接続された第7−1スイッチング素子Q71、第7−2スイッチング素子Q72、第7−3スイッチング素子Q73及び第7−4スイッチング素子Q74と、第1キャパシタC1を備える。第1キャパシタC1は、第7−1スイッチング素子Q71と第7−2スイッチング素子Q72との接続点と、第7−3スイッチング素子Q73と第7−4スイッチング素子Q74との接続点との間に接続される。
第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74には、IGBT又はMOSFETを使用できる。第7−1ダイオードD71〜第7−4ダイオードD74は、第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74にそれぞれ並列に、逆向きに接続または形成される。
図2(b)は2段のフライングキャパシタ回路を示す。2段のフライングキャパシタ回路では、第7−1スイッチング素子Q71の高電位側に第7−5スイッチング素子Q75がさらに接続され、第7−4スイッチング素子Q74の低電位側に第7−6スイッチング素子Q76がさらに接続される。第7−5スイッチング素子Q75と第7−1スイッチング素子Q71との接続点と、第7−4スイッチング素子Q74と第7−6スイッチング素子Q76との接続点との間に、第1−2キャパシタC1bがさらに接続される。
図2(c)は3段のフライングキャパシタ回路を示す。3段のフライングキャパシタ回路では、第7−5スイッチング素子Q75の高電位側に第7−7スイッチング素子Q77がさらに接続され、第7−6スイッチング素子Q76の低電位側に第7−8スイッチング素子Q78がさらに接続される。第7−7スイッチング素子Q77と第7−5スイッチング素子Q75との接続点と、第7−6スイッチング素子Q76と第7−8スイッチング素子Q78との接続点との間に、第1−3キャパシタC1cがさらに接続される。
図2(a)−(c)のいずれかのフライングキャパシタ回路を直流電源部2に対して2アーム、並列接続し、コモンモード電圧を一定に保つように2アームを対象にスイッチング制御する場合、N段のフライングキャパシタから(2N+1)レベルの電圧を出力可能である。
図3は、図1の第1フライングキャパシタ回路F1及び第2フライングキャパシタ回路F2に、1段のフライングキャパシタ回路を使用した場合の構成を示す図である。第1フライングキャパシタ回路F1は、第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74及び第1キャパシタC1を含む。第2フライングキャパシタ回路F2は、第8−1スイッチング素子Q81〜第8−4スイッチング素子Q84及び第2キャパシタC2を含む。それぞれの接続関係は、図2(a)に示した1段のフライングキャパシタ回路の接続関係と同じである。第7−2スイッチング素子Q72と第7−3スイッチング素子Q73との接続点、及び第8−2スイッチング素子Q82と第8−3スイッチング素子Q83との接続点が、直交変換部10の出力点となる。
図3に示す回路構成では、第1アーム回路と第2アーム回路がたすき掛け接続されているため、直交変換部10からフィルタ部20に5レベル(+Vdc、+Vdc/2、0、−Vdc/2、−Vdc)の電圧を出力可能である。
上述のように、第1スイッチング素子Q1、第6スイッチング素子Q6及び第4スイッチング素子Q4は、交流電力の正の半波を生成する期間、オン状態に固定され、負の半波を生成する期間、オフ状態に固定される。第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5及び第3スイッチング素子Q3は、交流電力の正の半波を生成する期間、オフ状態に固定され、負の半波を生成する期間、オン状態に固定される。日本では系統3の周波数は50/60Hzであるため、第1スイッチング素子Q1〜第6スイッチング素子Q6は50/60Hzの半分の周波数でスイッチング制御される。
一方、第1フライングキャパシタ回路F1に含まれる第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、及び第2フライングキャパシタ回路F2に含まれる第8−1スイッチング素子Q81〜第8−2スイッチング素子Q82は、高周波(例えば、20kHz)でスイッチング制御される。以下、図3に示す電力変換装置1の動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
以下の説明において、第1スイッチング素子Q1〜第6スイッチング素子Q6のオン状態は、定常的なオン状態を意味し、第1スイッチング素子Q1〜第6スイッチング素子Q6のオフ状態は、定常的なオフ状態を意味する。一方、第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81〜第8−2スイッチング素子Q82のオン状態は、PWMスイッチングされた状態を意味し、第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81〜第8−2スイッチング素子Q82のオフ状態は、定常的なオフ状態を意味する。
図4(a)、(b)は、図3の直交変換部10の状態1及び状態2Aの電流経路を示す図である。図5(a)、(b)は、図3の直交変換部10の状態2B及び状態3Aの電流経路を示す図である。図6(a)、(b)は、図3の直交変換部10の状態5及び状態4Aの電流経路を示す図である。図7(a)、(b)は、図3の直交変換部10の状態4B及び状態3Bの電流経路を示す図である。図8は、状態1、状態2A、状態2B、状態3A、状態3B、状態4A、状態4B、状態5における、第1スイッチング素子Q1〜第6スイッチング素子Q6、第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81〜第8−4スイッチング素子Q84のオン/オフ状態をまとめた図である。
図4(a)に示す状態1は、直流電源部2の電圧Vdcを、極性を変えずにそのまま出力している状態である。制御部30は第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−1スイッチング素子Q71、第7−2スイッチング素子Q72、第8−3スイッチング素子Q83、第8−4スイッチング素子Q84をオン状態に制御し、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−3スイッチング素子Q73、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81、第8−2スイッチング素子Q82をオフ状態に制御する。状態1では、直流電源部2を介在し、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2を介在せずに電流が流れる。
図4(b)に示す状態2Aは、直流電源部2の電圧Vdcを、極性を変えずに半分にして出力している状態である。制御部30は第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−1スイッチング素子Q71、第7−3スイッチング素子Q73、第8−2スイッチング素子Q82、第8−4スイッチング素子Q84をオン状態に制御し、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−2スイッチング素子Q72、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81、第8−3スイッチング素子Q83をオフ状態に制御する。状態2Aでは、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2にそれぞれ、直流電源部2の電圧Vdcの1/4の電圧幅に相当する電荷が充電される。状態2Aでは、直流電源部2、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2を介在して電流が流れる。直流電源部2の正極側の電位が第1キャパシタC1により1/4の電圧幅分、プルダウンされ、直流電源部2の負極側の電位が第2キャパシタC2により1/4の電圧幅分、プルアップされることにより、+Vdc/2が出力される。
図5(a)に示す状態2Bも、直流電源部2の電圧Vdcを、極性を変えずに半分にして出力している状態である。制御部30は第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−2スイッチング素子Q72、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81、第8−3スイッチング素子Q83をオン状態に制御し、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−1スイッチング素子Q71、第7−3スイッチング素子Q73、第8−2スイッチング素子Q82、第8−4スイッチング素子Q84をオフ状態に制御する。状態2Bでは、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2に充電された電荷がそれぞれ放電される。状態2Bでは、直流電源部2を介在せずに、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2を介在して還流電流が流れる。第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2にはそれぞれ、直流電源部2の電圧Vdcの1/4の電圧幅に相当する電荷が充電されているため、+Vdc/2が出力される。
図5(b)に示す状態3Aは、0Vを出力している状態である。制御部30は第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−3スイッチング素子Q73、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81、第8−2スイッチング素子Q82をオン状態に制御し、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−1スイッチング素子Q71、第7−2スイッチング素子Q72、第8−3スイッチング素子Q83、第8−4スイッチング素子Q84をオフ状態に制御する。状態3Aでは、直流電源部2、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2を介在せずに、短絡経路が形成される。
図6(a)に示す状態5は、直流電源部2の電圧Vdcを、極性を反転させて出力している状態である。制御部30は第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−3スイッチング素子Q73、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81、第8−2スイッチング素子Q82をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−1スイッチング素子Q71、第7−2スイッチング素子Q72、第8−3スイッチング素子Q83、第8−4スイッチング素子Q84をオフ状態に制御する。状態5では、直流電源部2を介在し、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2を介在せずに電流が流れる。図4(a)と比較して第1アーム回路と第2アーム回路に流れる電流の関係が反対になる。
図6(b)に示す状態4Aは、直流電源部2の電圧Vdcを、極性を反転させ、かつ半分にして出力している状態である。制御部30は第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−2スイッチング素子Q72、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81、第8−3スイッチング素子Q83をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−1スイッチング素子Q71、第7−3スイッチング素子Q73、第8−2スイッチング素子Q82、第8−4スイッチング素子Q84をオフ状態に制御する。状態4Aでは、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2にそれぞれ、直流電源部2の電圧Vdcの1/4の電圧幅に相当する電荷が充電される。状態4Aでは、直流電源部2、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2を介在して電流が流れる。直流電源部2の正極側の電位が第2キャパシタC2により1/4の電圧幅分、プルダウンされ、直流電源部2の負極側の電位が第1キャパシタC1により1/4の電圧幅分、プルアップされることにより、−Vdc/2が出力される。図4(b)と比較して第1アーム回路と第2アーム回路に流れる電流の関係が反対になる。
図7(a)に示す状態4Bも、直流電源部2の電圧Vdcを、極性を反転させ、かつ半分にして出力している状態である。制御部30は第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−1スイッチング素子Q71、第7−3スイッチング素子Q73、第8−2スイッチング素子Q82、第8−4スイッチング素子Q84をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−2スイッチング素子Q72、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81、第8−3スイッチング素子Q83をオフ状態に制御する。状態4Bでは、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2に充電された電荷がそれぞれ放電される。状態4Bでは、直流電源部2を介在せずに、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2を介在して還流電流が流れる。第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2にはそれぞれ、直流電源部2の電圧Vdcの1/4に相当する電荷が充電されているため、−Vdc/2が出力される。図5(a)と比較して第1アーム回路と第2アーム回路に流れる電流の関係が反対になる。
図7(b)に示す状態3Bは、0Vを出力している状態である。制御部30は第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−1スイッチング素子Q71、第7−2スイッチング素子Q72、第8−3スイッチング素子Q83、第8−4スイッチング素子Q84をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−3スイッチング素子Q73、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81、第8−2スイッチング素子Q82をオフ状態に制御する。状態3Bでは、直流電源部2、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2を介在せずに、短絡経路が形成される。図5(b)と比較して第1アーム回路と第2アーム回路に流れる電流の関係が反対になる。
図9は、5レベル(+Vdc、+Vdc/2、0、−Vdc/2、−Vdc)の電圧で生成される擬似的正弦波を示す図である。期間1では+Vdc/2と0を交互に出力し、期間2では+Vdcと+Vdc/2を交互に出力し、期間3では0と−Vdc/2を交互に出力し、期間4では−Vdc/2と−Vdcを交互に出力する。電圧指令値が正のとき、状態1、状態2A、状態2B、状態3Aが使用される。これらの状態では、第1スイッチング素子Q1、第6スイッチング素子Q6及び第4スイッチング素子Q4がオン状態に固定され、第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5及び第3スイッチング素子Q3がオフ状態に固定され、電力変換装置1は交流電力の正の半波を生成する。
一方、電圧指令値が負のとき、状態5、状態4A、状態4B、状態3Bが使用される。これらの状態では、第2スイッチング素子Q2、第5スイッチング素子Q5及び第3スイッチング素子Q3がオン状態に固定され、第1スイッチング素子Q1、第6スイッチング素子Q6及び第4スイッチング素子Q4がオフ状態に固定され、電力変換装置1は交流電力の負の半波を生成する。
以上に説明したように本実施の形態では、1段のフライングキャパシタ回路で5レベルの電圧を出力可能である。これは、第1アーム回路と第2アーム回路が、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6を介してたすき掛け接続されていることにより、正負2通りの電圧を出力可能になるためである。これに対して、第1アーム回路と第2アーム回路がたすき掛け接続されていない場合、3レベルの電圧しか出力できない。
以上の知見は、2段以上のフライングキャパシタ回路でも同じである。N段のフライングキャパシタ回路を用いた、たすき掛け接続されていない第1アーム回路と第2アーム回路を用いた場合、(2N+1)レベルの電圧を出力可能である。一方、本実施の形態のように、N段のフライングキャパシタ回路を用いた、たすき掛け接続されている第1アーム回路と第2アーム回路を用いた場合、(2N+3)レベルの電圧を出力可能である。即ち、本実施の形態ではキャパシタの数を、1段削減することができる。フライングキャパシタ回路はキャパシタの充放電を制御するため、段数が多いほど、スイッチングパターンが複雑化する。これに対して本実施の形態では、同じマルチレベル出力を実現する際のキャパシタの数を削減することができる。
図9の各期間において、2通りのスイッチングパターンを有する。期間1はスイッチングパターンCとスイッチングパターンDを有し、期間2はスイッチングパターンAとスイッチングパターンBを有し、期間3はスイッチングパターンEとスイッチングパターンFを有し、期間4はスイッチングパターンGとスイッチングパターンHを有する。
図10(a)−(d)は、スイッチングパターンA−Dにおける、第1スイッチング素子Q1〜第6スイッチング素子Q6、第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81〜第8−4スイッチング素子Q84のオン/オフ状態をまとめた図である。図11(a)−(d)は、スイッチングパターンE−Hにおける、第1スイッチング素子Q1〜第6スイッチング素子Q6、第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81〜第8−4スイッチング素子Q84のオン/オフ状態をまとめた図である。
図10(a)に示すようにスイッチングパターンAは、状態1(+Vdc)と状態2A(+Vdc/2)を交互に繰り返すスイッチングパターンであり、両者の間にデッドタイム期間が挿入される。デッドタイム期間は、貫通電流を防止するために挿入される。当該デッドタイム期間中、制御部30は第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−1スイッチング素子Q71、第8−4スイッチング素子Q84をオン状態に制御し、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−2スイッチング素子Q72、第7−3スイッチング素子Q73、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81、第8−2スイッチング素子Q82、第8−3スイッチング素子Q83をオフ状態に制御する。
図10(b)に示すようにスイッチングパターンBは、状態1(+Vdc)と状態2B(+Vdc/2)を交互に繰り返すスイッチングパターンであり、両者の間にデッドタイム期間が挿入される。当該デッドタイム期間中、制御部30は第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−2スイッチング素子Q72、第8−3スイッチング素子Q83をオン状態に制御し、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−1スイッチング素子Q71、第7−3スイッチング素子Q73、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81、第8−2スイッチング素子Q82、第8−4スイッチング素子Q84をオフ状態に制御する。
図10(c)に示すようにスイッチングパターンCは、状態3A(0V)と状態2A(+Vdc/2)を交互に繰り返すスイッチングパターンであり、両者の間にデッドタイム期間が挿入される。当該デッドタイム期間中、制御部30は第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−3スイッチング素子Q73、第8−2スイッチング素子Q82をオン状態に制御し、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−1スイッチング素子Q71、第7−2スイッチング素子Q72、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81、第8−3スイッチング素子Q83、第8−4スイッチング素子Q84をオフ状態に制御する。
図10(d)に示すようにスイッチングパターンDは、状態3A(0V)と状態2B(+Vdc/2)を交互に繰り返すスイッチングパターンであり、両者の間にデッドタイム期間が挿入される。当該デッドタイム期間中、制御部30は第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81をオン状態に制御し、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−1スイッチング素子Q71、第7−2スイッチング素子Q72、第7−3スイッチング素子Q73、第8−2スイッチング素子Q82、第8−3スイッチング素子Q83、第8−4スイッチング素子Q84をオフ状態に制御する。
図11(a)に示すようにスイッチングパターンEは、状態3B(0V)と状態4A(−Vdc/2)を交互に繰り返すスイッチングパターンであり、両者の間にデッドタイム期間が挿入される。当該デッドタイム期間中、制御部30は第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−2スイッチング素子Q72、第8−3スイッチング素子Q83をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−1スイッチング素子Q71、第7−3スイッチング素子Q73、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81、第8−2スイッチング素子Q82、第8−4スイッチング素子Q84をオフ状態に制御する。
図11(b)に示すようにスイッチングパターンFは、状態3B(0V)と状態4B(−Vdc/2)を交互に繰り返すスイッチングパターンであり、両者の間にデッドタイム期間が挿入される。当該デッドタイム期間中、制御部30は第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−1スイッチング素子Q71、第8−4スイッチング素子Q84をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−2スイッチング素子Q72、第7−3スイッチング素子Q73、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81、第8−2スイッチング素子Q82、第8−3スイッチング素子Q83をオフ状態に制御する。
図11(c)に示すようにスイッチングパターンGは、状態5B(−Vdc)と状態4A(−Vdc/2)を交互に繰り返すスイッチングパターンであり、両者の間にデッドタイム期間が挿入される。当該デッドタイム期間中、制御部30は第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−1スイッチング素子Q71、第7−2スイッチング素子Q72、第7−3スイッチング素子Q73、第8−2スイッチング素子Q82、第8−3スイッチング素子Q83、第8−4スイッチング素子Q84をオフ状態に制御する。
図11(d)に示すようにスイッチングパターンHは、状態5B(−Vdc)と状態4B(−Vdc/2)を交互に繰り返すスイッチングパターンであり、両者の間にデッドタイム期間が挿入される。当該デッドタイム期間中、制御部30は第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、第5スイッチング素子Q5、第7−3スイッチング素子Q73、第8−2スイッチング素子Q82をオン状態に制御し、第1スイッチング素子Q1、第4スイッチング素子Q4、第6スイッチング素子Q6、第7−1スイッチング素子Q71、第7−2スイッチング素子Q72、第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81、第8−3スイッチング素子Q83、第8−4スイッチング素子Q84をオフ状態に制御する。
図12は、図9の期間2におけるスイッチング状態遷移と出力電圧の一例を示す図である。図12において、「遷移」はデッドタイム期間に相当する。制御部30は、各期間における2通りのスイッチングパターンを、第1キャパシタC1の電圧、第2キャパシタC2の電圧、出力電流の極性に応じて切り替える。第1キャパシタC1の電圧値、及び第2キャパシタC2の電圧値は、電圧センサ(不図示)で計測した値を使用してもよい。使用するキャパシタの充電時間/放電時間と電圧との関係を規定した充放電特性をもとに推定した値を使用してもよい。第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2が充電中か放電中かは、出力電流の極性により決定される。期間2における遷移中の出力電圧も、出力電流の極性により、VdcかVdc/2かが決定される。
制御部30は、設定された目標デューティ比をもとに、単位制御周期における状態1のオン時間T1と状態2のオン時間T2を決定する。なお目標デューティ比は、出力電流の目標値と、電流センサ(不図示)で実際に計測された出力電流の計測値との差分をもとに決定される。制御部30は、上記目標デューティ比をもとに決定された状態2のオン時間T2を、第1キャパシタC1の電圧、第2キャパシタC2の電圧、出力電流の極性に応じて、状態2Aのオン時間T2Aと状態2Bのオン時間T2Bに時分割する。制御部30は、状態2Aのオン時間T2Aと状態2Bのオン時間T2Bの合計が、上記目標デューティ比をもとに決定された状態2のオン時間T2と等しくなるように制御する。
図3に示した回路構成において、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6には、直流電源部2の電圧より高い耐圧のスイッチング素子が使用される。一方、第1スイッチング素子Q1〜第4スイッチング素子Q4、第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、及び第8−1スイッチング素子Q81〜第8−4スイッチング素子Q84には、直流電源部2の電圧より低い耐圧のスイッチング素子が使用される。
例えば、系統3の電圧がAC200Vの場合において、直流電源部2として太陽電池や蓄電池が1つの直流バスに並列接続されている場合、当該直流バスの電圧が最大450V程度まで上昇することがある。第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6は、当該直流バスの電圧を1つのスイッチング素子で受ける経路が形成される可能性があるため、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6は、450V以上の耐圧が必要である。例えば、第1スイッチング素子Q1→第5スイッチング素子Q5→第4スイッチング素子Q4の経路が形成され、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4がオン状態の場合、第5スイッチング素子Q5には、450V印加される可能性がある。そこで第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6に、450Vにマージンを加えた約600V耐圧のスイッチング素子を使用する。
第1スイッチング素子Q1〜第4スイッチング素子Q4は、上記直流バスの電圧を2つのスイッチング素子で受ける経路が形成される可能性があるため、第1スイッチング素子Q1〜第4スイッチング素子Q4はそれぞれ、(450/2)V以上の耐圧が必要である。例えば、第1スイッチング素子Q1→第5スイッチング素子Q5→第4スイッチング素子Q4の経路が形成され、第5スイッチング素子Q5がオン状態の場合、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4にそれぞれ、(450/2)V印加される可能性がある。そこで第1スイッチング素子Q1〜第4スイッチング素子Q4に、(450/2)Vにマージンを加えた約300V耐圧のスイッチング素子を使用する。
第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、及び第8−1スイッチング素子Q81〜第8−4スイッチング素子Q84は、上記直流バスの電圧を4つのスイッチング素子で受ける経路が形成される可能性があるため、第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、及び第8−1スイッチング素子Q81〜第8−4スイッチング素子Q84はそれぞれ、(450/4)V以上の耐圧が必要である。例えば、第1スイッチング素子Q1→第7−1スイッチング素子Q71→第7−2スイッチング素子Q72→第7−3スイッチング素子Q73→第7−4スイッチング素子Q74→第2スイッチング素子Q2の経路が形成され、第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2がオン状態の場合、第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74にそれぞれ、(450/4)V印加される可能性がある。そこで第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、及び第8−1スイッチング素子Q81〜第8−4スイッチング素子Q84に、(450/4)Vにマージンを加えた約150V耐圧のスイッチング素子を使用する。
なお、第7−1スイッチング素子Q71と第7−2スイッチング素子Q72との接続点と、第7−3スイッチング素子Q73と第7−4スイッチング素子Q74との接続点との間には第1キャパシタC1が接続されており、第1キャパシタC1は直流電源部2の電圧の1/4に相当する電荷を充電可能であるため、第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74間において、略1/4ずつの分圧が可能である。
上述のように高耐圧のスイッチング素子は、スイッチング速度の限界が低くなるが、図3の回路構成では、高耐圧の第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6は、高周波スイッチングされない箇所に使用されており、スイッチング制御に対する追従遅れは基本的に発生しない。一方、第1フライングキャパシタ回路F1及び第2フライングキャパシタ回路F2に、低耐圧の第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、及び第8−1スイッチング素子Q81〜第8−4スイッチング素子Q84を使用することにより、導通損失及びスイッチング損失を低減でき、高効率化を図ることができる。
図13は、図3の回路構成の第1スイッチング素子Q1〜第4スイッチング素子Q4をそれぞれ、2直列のより低耐圧のスイッチング素子に置き換えた回路構成を示す図である。図3の第1スイッチング素子Q1は、第1−1スイッチング素子Q1aと第1−2スイッチング素子Q1bの直列回路に置き換えられる。第2スイッチング素子Q2−第4スイッチング素子Q4も同様である。
第1−1スイッチング素子Q1aと第1−2スイッチング素子Q1bのそれぞれには、第1スイッチング素子Q1の耐圧の約半分の耐圧のスイッチング素子が使用される。例えば、第1フライングキャパシタ回路F1に含まれる第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74と同じスイッチング素子が使用される。第2−1スイッチング素子Q2aと第2−2スイッチング素子Q2b、第3−1スイッチング素子Q3aと第3−2スイッチング素子Q3b、及び第4−1スイッチング素子Q4aと第4−2スイッチング素子Q4bも同様である。
300V耐圧のスイッチング素子を150V耐圧のスイッチング素子に置き換えると、導通損失を1/2より小さくできる。従って、150V耐圧のスイッチング素子を2直列で使用した方が、導通損失を低減することができる。
なお300V耐圧のスイッチング素子を、2直列の150V耐圧のスイッチング素子(2個)に置き換えた場合、電流容量が不足する場合がある。その場合、300V耐圧のスイッチング素子を、2直2並列の150V耐圧のスイッチング素子(4個)に置き換える。
第1スイッチング素子Q1〜第4スイッチング素子Q4は、高周波スイッチングされない箇所のスイッチング素子である。従って、2直列化/2直2並列化された複数のスイッチング素子間において、素子ばらつき等に起因するオン/オフタイミングの僅かなずれは許容される。
図14は、図3の回路構成の第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6をそれぞれ、4直列のより低耐圧のスイッチング素子に置き換えた回路構成を示す図である。図3の第5スイッチング素子Q5は、第5−1スイッチング素子Q5a〜第5−4スイッチング素子Q5dの直列回路に置き換えられる。第6スイッチング素子Q6も同様である。
第5−1スイッチング素子Q5a〜第5−4スイッチング素子Q5dのそれぞれには、第5スイッチング素子Q5の耐圧の約1/4の耐圧のスイッチング素子が使用される。例えば、第1フライングキャパシタ回路F1に含まれる第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74と同じスイッチング素子が使用される。第6−1スイッチング素子Q6a〜第6−4スイッチング素子Q6dも同様である。
図15は、図3の回路構成に短絡回路を追加した回路構成を示す図である。短絡回路は、第1フライングキャパシタ回路F1の中点と第2フライングキャパシタ回路F2の中点との間に接続される。即ち、直交変換部10の出力端子間に接続される。図15では、短絡回路が、第9−1スイッチング素子Q91と第9−2スイッチング素子Q92が逆向きに直列接続された双方向スイッチで構成される例を示している。なお短絡回路には、IGBT又はMOSFETの代わりに、GaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップの半導体スイッチを使用してもよい。
図16は、図9に示した擬似的正弦波のゼロクロスを示す図である。図16に示すように期間1から期間3に遷移する際、出力電圧がゼロクロスする。期間3から期間1に遷移する際も、同様に出力電圧がゼロクロスする。制御部30は、電力変換装置1の出力する交流電力のゼロクロス付近で、第9−1スイッチング素子Q91及び第9−2スイッチング素子Q92をオン状態にして短絡回路を短絡させる。
図17(a)、(b)は、スイッチングパターンIにおける、第1スイッチング素子Q1〜第6スイッチング素子Q6、第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81〜第8−4スイッチング素子Q84、第9−1スイッチング素子Q91、第9−2スイッチング素子Q92のオン/オフ状態をまとめた図である。図17(a)は短絡回路が設けられない場合のスイッチングパターンIを示しており、図17(b)は短絡回路が設けられる場合のスイッチングパターンIを示している。なお状態3A及び状態3Bでは、第9−1スイッチング素子Q91及び第9−2スイッチング素子Q92はオフ状態に制御される。
スイッチングパターンIは、状態3A(0V)と状態3B(0V)間の切り替え時におけるスイッチングパターンであり、両者の間にデッドタイム期間が挿入される。図17(a)に示す例では、当該デッドタイム期間中、制御部30は第1スイッチング素子Q1〜第6スイッチング素子Q6、第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81〜第8−4スイッチング素子Q84の全てをオフ状態(以下、全オフ状態という)に制御する。
全オフ状態では、第1フライングキャパシタ回路F1の中点と第2フライングキャパシタ回路F2の中点間が電気的に分離されるため、いずれかのアームの還流ダイオードに電流が流れると、第1フライングキャパシタ回路F1の中点または第2フライングキャパシタ回路F2の電位が変動して、0Vから離れてしまうことがある。
図17(b)に示す例では、状態3Aと全オフ状態との間に、第1スイッチング素子Q1〜第6スイッチング素子Q6、第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81〜第8−4スイッチング素子Q84のオン/オフ状態が状態3Aのオン/オフ状態と同じで、第9−1スイッチング素子Q91及び第9−2スイッチング素子Q92がオフ状態の短絡状態Aを設ける。
同様に状態3Bと全オフ状態との間に、第1スイッチング素子Q1〜第6スイッチング素子Q6、第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、第8−1スイッチング素子Q81〜第8−4スイッチング素子Q84のオン/オフ状態が状態3Bのオン/オフ状態と同じで、第9−1スイッチング素子Q91及び第9−2スイッチング素子Q92がオフ状態の短絡状態Bを設ける。
このように全オフ状態に移行する前に第9−1スイッチング素子Q91と第9−2スイッチング素子Q92をオフ状態に制御して、出力端子間を短絡させることにより、状態3A(0V)と状態3B(0V)間の切り替え時において、出力電圧が0Vから離れてしまうことを防止することができる。即ち、出力電圧を0Vに維持すべき期間において、短絡回路を短絡させることにより、出力電圧が0Vから離れてしまうことを防止することができる。
図18は、図3の回路構成に第1DC/DCコンバータ11及び第2DC/DCコンバータ12を追加した回路構成を示す図である。第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2が充電された状態では、それぞれ直流電源部2の電圧の1/4の電圧幅で安定するはずである。しかしながら、系統3の過渡応答や位相跳躍などが発生すると、第1キャパシタC1の電圧と、第2キャパシタC2の電圧とのバランスが崩れるときがある。
図18に示す回路構成では、第1キャパシタC1と並列に第1DC/DCコンバータ11を接続して、第1キャパシタC1の電圧を安定させている。同様に第2キャパシタC2と並列に第2DC/DCコンバータ12を接続することにより、第2キャパシタC2の電圧を安定させている。第1DC/DCコンバータ11は、第1キャパシタC1が充電された状態において、第1キャパシタC1の正極電位を直流電源部2の正極電位に、第1キャパシタC1の負極電位を、直流電源部2の電圧の3/4の電位に制御する。第2DC/DCコンバータ12は、第1キャパシタC1が充電された状態において、第2キャパシタC2の正極電位を、直流電源部2の電圧の1/4の電位に、第2キャパシタC2の負極電位を直流電源部2の負極電位に制御する。
図19は、図3の回路構成に絶縁型DC/DCコンバータ13を追加した回路構成を示す図である。図19に示す回路構成では、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2と並列に絶縁型DC/DCコンバータ13が接続される。上述のように第1キャパシタC1の正極電位と第2キャパシタC2の正極電位、第1キャパシタC1の負極電位と第2キャパシタC2の負極電位はそれぞれ異なる。これに対して、絶縁型DC/DCコンバータ13は、トランスにより1次側と2次側が絶縁されているため、1次側と2次側の基準電位が揃っている必要がない。図19に示す回路構成では、第1キャパシタC1の電力と第2キャパシタC2の電力を、絶縁型DC/DCコンバータ13を介して融通し合うことが可能である。
図20は、図3の回路構成にアクティブバッファ回路14を追加した回路構成を示す図である。図20に示す回路構成では、直流電源部2と並列にアクティブバッファ回路14が接続される。直流電源部2と直交変換部10を接続する直流バスの正側配線と負側配線間には、大容量の電解コンデンサが接続されることが多い。近年、当該電解コンデンサを、電解コンデンサより寿命が長いフィルムコンデンサに置き換える設計方法が、採用され始めている。
フィルムコンデンサは、電解コンデンサより高価であり体積も大きい。同じ容量の場合、フィルムコンデンサの体積が、電解コンデンサの10倍以上の体積になる場合もある。そこでフィルムコンデンサの容量を小さくすることが考えられる。それにより直流バスの容量が小さくなると、リップルノイズの影響が大きくなる。これに対して、アクティブバッファ回路14を追加することにより、リップルノイズの影響を低減することができる。従って、大容量の電解コンデンサを、当該電解コンデンサより容量が小さいフィルムコンデンサに置き換えることができ、コンデンサの寿命を延ばすことができる。
以上説明したように本実施の形態によれば、高効率で小型の電力変換装置1を実現することができる。第1フライングキャパシタ回路F1及び第2フライングキャパシタ回路F2を用いたマルチレベル電力変換装置であるため、フィルタ部20の第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2のサイズを小さくすることができる。
また、擬似的正弦波の半波を実際に生成している第1フライングキャパシタ回路F1に含まれる第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、及び第2フライングキャパシタ回路F2に含まれる第8−1スイッチング素子Q81〜第8−4スイッチング素子Q84を高速(例えば、20kHz)にスイッチングすることにより、フィルタ部20の第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2のサイズをさらに小さくすることができる。
また、高速スイッチングされる第7−1スイッチング素子Q71〜第7−4スイッチング素子Q74、及び第8−1スイッチング素子Q81〜第8−4スイッチング素子Q84に、低耐圧のスイッチング素子を使用することにより、導通損失及びスイッチング損失を低減することができる。
また、導通損失及びスイッチング損失が相対的に大きい高耐圧のスイッチング素子は、第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6の2個しか使用しない。また、相対的にスイッチング速度が遅い第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6は、極性切替時にのみスイッチングする箇所に使用する。このように高耐圧のスイッチング素子が高周波スイッチングしないことにより、スイッチング損失の増大を抑制することができる。また電力変換装置1全体としては高周波化が容易に可能であり、高周波化することにより、第1リアクトルL1及び第2リアクトルL2のサイズを小さくすることができる。
また第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6は相補的に動作するため、直流電源部2から供給される電流が、高耐圧のスイッチング素子を2個通過するスイッチングパターンが発生しない。これに対してHブリッジ回路では、高耐圧のスイッチング素子を2個通過するスイッチングパターンが発生する。
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
上述の実施の形態では、第1フライングキャパシタ回路F1及び第2フライングキャパシタ回路F2に、1段のフライングキャパシタ回路を使用する例を示した。この点、2段以上のフライングキャパシタ回路を使用してもよい。
図21は、図13の回路構成の第1フライングキャパシタ回路F1及び第2フライングキャパシタ回路F2を、3段のフライングキャパシタ回路に置き換えた回路構成を示す図である。図21に示す回路構成では、9レベル(+Vdc、+Vdc*3/4、+Vdc/2、+Vdc/4、0、−Vdc*3/4、−Vdc/2、−Vdc/4、−Vdc)の電圧を出力可能である。
図21の回路構成において、第1フライングキャパシタ回路F1に含まれる第7−1スイッチング素子Q71〜第7−8スイッチング素子Q78、及び第2フライングキャパシタ回路F2に含まれる第8−1スイッチング素子Q81〜第8−8スイッチング素子Q88に、約75V耐圧のスイッチング素子を使用する。
第5スイッチング素子Q5及び第6スイッチング素子Q6には、約600V耐圧のスイッチング素子を使用し、第1−1スイッチング素子Q1a、第1−2スイッチング素子Q1b、第2−1スイッチング素子Q2a、第2−2スイッチング素子Q2b、第3−1スイッチング素子Q3a、第3−2スイッチング素子Q3b、第4−1スイッチング素子Q4a、第4−2スイッチング素子Q4bには、約150V耐圧のスイッチング素子を使用する。図21に示すように9レベル出力の電力変換装置1を使用すれば、より滑らかな擬似的正弦波を生成することができる。
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
[項目1]
直流電源(2)と並列に、第1スイッチング素子(Q1)、第1フライングキャパシタ回路(F1)、第2スイッチング素子(Q2)の順に直列接続された第1アーム回路と、
前記直流電源(2)及び前記第1アーム回路と並列に、第3スイッチング素子(Q3)、第2フライングキャパシタ回路(F2)、第4スイッチング素子(Q4)の順に直列接続された第2アーム回路と、
前記第1スイッチング素子(Q1)と前記第1フライングキャパシタ回路(F1)との接続点と、前記第2フライングキャパシタ回路(F2)と前記第4スイッチング素子(Q4)との接続点との間に接続された第5スイッチング素子(Q5)と、
前記第3スイッチング素子(Q3)と前記第2フライングキャパシタ回路(F2)との接続点と、前記第1フライングキャパシタ回路(F1)と前記第2スイッチング素子(Q2)との接続点との間に接続された第6スイッチング素子(Q6)と、を備え、
前記第1フライングキャパシタ回路(F1)の中点と、前記第2フライングキャパシタ回路(F2)の中点から交流電力を出力することを特徴とする電力変換装置(1)。
これによれば、高効率で小型の電力変換装置(1)を実現することができる。
[項目2]
前記第1スイッチング素子(Q1)、前記第6スイッチング素子(Q6)、及び前記第4スイッチング素子(Q4)がオン状態、並びに前記第2スイッチング素子(Q2)、前記第5スイッチング素子(Q5)、及び前記第3スイッチング素子(Q3)がオフ状態で前記交流電力の半波を生成し、
前記第1スイッチング素子(Q1)、前記第6スイッチング素子(Q6)、及び前記第4スイッチング素子(Q4)がオフ状態、並びに前記第2スイッチング素子(Q2)、前記第5スイッチング素子(Q5)、及び前記第3スイッチング素子(Q3)がオン状態で前記交流電力の逆極性の半波を生成することを特徴とする項目1に記載の電力変換装置(1)。
このように第1スイッチング素子(Q1)〜第6スイッチング素子(Q6)が制御されることにより、交流電力の極性を切り替えることができる。
[項目3]
前記第1スイッチング素子(Q1)、前記第6スイッチング素子(Q6)、及び前記第4スイッチング素子(Q4)がオン状態、並びに前記第2スイッチング素子(Q2)、前記第5スイッチング素子(Q5)、及び前記第3スイッチング素子(Q3)がオフ状態と、
前記第1スイッチング素子(Q1)、前記第6スイッチング素子(Q6)、及び前記第4スイッチング素子(Q4)がオフ状態、並びに前記第2スイッチング素子(Q2)、前記第5スイッチング素子(Q5)、及び前記第3スイッチング素子(Q3)がオン状態の切替が、
前記第1フライングキャパシタ回路(F1)の中点と前記第2フライングキャパシタ回路(F2)の中点から出力される出力電圧の極性を切り替えるときに動作する項目1に記載の電力変換装置。
このように第1スイッチング素子(Q1)〜第6スイッチング素子(Q6)が制御されることにより、交流電力の極性を切り替えることができる。
[項目4]
前記第1フライングキャパシタ回路(F1)は、
直列接続された第7−1スイッチング素子(Q71)、第7−2スイッチング素子(Q72)、第7−3スイッチング素子(Q73)、及び第7−4スイッチング素子(Q74)と、
前記第7−1スイッチング素子(Q71)と第7−2スイッチング素子(Q72)との接続点と、第7−3スイッチング素子(Q73)と第7−4スイッチング素子(Q74)との接続点との間に接続された第1キャパシタ(C1)と、を含み、
前記第2フライングキャパシタ回路(F2)は、
直列接続された第8−1スイッチング素子(Q81)、第8−2スイッチング素子(Q82)、第8−3スイッチング素子(Q83)、及び第8−4スイッチング素子(Q84)と、
前記第8−1スイッチング素子(Q81)と第8−2スイッチング素子(Q82)との接続点と、第8−3スイッチング素子(Q83)と第8−4スイッチング素子(Q84)との接続点との間に接続された第2キャパシタ(C2)と、を含むことを特徴とする項目1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、5レベルの電圧を生成することができる。
[項目5]
前記第5スイッチング素子(Q5)、及び前記第6スイッチング素子(Q6)には、前記直流電源(2)の電圧より高い耐圧の素子が使用され、
前記第1スイッチング素子(Q1)、前記第2スイッチング素子(Q2)、前記第3スイッチング素子(Q3)、前記第4スイッチング素子(Q4)、前記第7−1スイッチング素子(Q71)、前記第7−2スイッチング素子(Q72)、前記第7−3スイッチング素子(Q73)、前記第7−4スイッチング素子(Q74)、前記第8−1スイッチング素子(Q81)、前記第8−2スイッチング素子(Q82)、前記第8−3スイッチング素子(Q83)、及び前記第8−4スイッチング素子(Q84)には、前記直流電源(2)の電圧より低い耐圧の素子が使用されることを特徴とする項目4に記載の電力変換装置(1)。
高速スイッチングが不要な箇所に高耐圧のスイッチング素子を使用し、高速スイッチングが必要な箇所に低耐圧のスイッチング素子を使用することにより、安全性を確保しつつ、全体としての導通損失及びスイッチング損失を低減することができる。
[項目6]
前記第1フライングキャパシタ回路(F1)は、N(Nは自然数)個のキャパシタを含み、
前記第2フライングキャパシタ回路(F2)は、N(Nは自然数)個のキャパシタを含み、
前記第1フライングキャパシタ回路(F1)の中点と、前記第2フライングキャパシタ回路(F2)の中点から、(2N+3)レベルの電圧が出力されることを特徴とする項目1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、少ないキャパシタの数で、より多くの電圧レベルを生成することができる。
[項目7]
前記第1スイッチング素子(Q1)、前記第2スイッチング素子(Q2)、前記第3スイッチング素子(Q3)、及び前記第4スイッチング素子(Q4)の少なくとも1つが、前記第1フライングキャパシタ回路(F1)、及び前記第2フライングキャパシタ回路(F2)に含まれるスイッチング素子の耐圧に対応する複数のスイッチング素子で構成される直列回路または直並列回路に置き換えられることを特徴とする項目1から6のいずれか1項に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、導通損失及びスイッチング損失を低減することができる。
[項目8]
前記第1フライングキャパシタ回路(F1)の中点と、前記第2フライングキャパシタ回路(F2)の中点との間に接続された短絡回路(Q91、Q92)をさらに備えることを特徴とする項目1から7のいずれか1項に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、マルチレベルの1つに含まれる0Vを高精度に生成することができる。
[項目9]
前記短絡回路(Q91、Q92)は、前記交流電力のゼロクロス付近において短絡することを特徴とする項目8に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、交流電力がゼロクロスする際に、0V以外の電圧が出力されることを回避することができる。
[項目10]
前記短絡回路(Q91、Q92)は、前記電力変換装置(1)の出力電圧を0Vに維持すべき期間に短絡することを特徴とする項目8または9に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、交流電力がゼロクロスする際に、0V以外の電圧が出力されることを回避することができる。
[項目11]
前記第1フライングキャパシタ回路(F1)、及び前記第2フライングキャパシタ回路(F2)に含まれる少なくとも1つのキャパシタと並列に接続されたDC/DCコンバータ(11、12、13)をさらに備えることを特徴とする項目1から10のいずれか1項に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、第1キャパシタ(C1)及び/又は第2キャパシタ(C2)の電圧を安定化させることができる。
[項目12]
前記直流電源(2)と並列に接続されたアクティブバッファ回路(14)をさらに備えることを特徴とする項目1から11のいずれか1項に記載の電力変換装置(1)。
これによれば、直流バスに重畳されるリップルノイズを低減することができる。