JP2019067476A - 磁気記録媒体および磁気記録再生装置 - Google Patents
磁気記録媒体および磁気記録再生装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2019067476A JP2019067476A JP2018170189A JP2018170189A JP2019067476A JP 2019067476 A JP2019067476 A JP 2019067476A JP 2018170189 A JP2018170189 A JP 2018170189A JP 2018170189 A JP2018170189 A JP 2018170189A JP 2019067476 A JP2019067476 A JP 2019067476A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- magnetic
- magnetic layer
- magnetic recording
- recording medium
- layer
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Landscapes
- Magnetic Record Carriers (AREA)
Abstract
Description
非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
上記強磁性粉末は強磁性六方晶フェライト粉末であり、上記磁性層は酸化物研磨剤を含み、
In−Plane法を用いた上記磁性層のX線回折分析により求められる六方晶フェライト結晶構造の(114)面の回折ピークのピーク強度Int(114)に対する(110)面の回折ピークのピーク強度Int(110)の強度比(Int(110)/Int(114);以下、「XRD(X−ray diffraction)強度比」とも記載する。)は0.5以上4.0以下であり、
上記磁気記録媒体の垂直方向角型比は0.65以上1.00以下であり、
上記磁性層の表面において測定される1−ブロモナフタレンに対する接触角(以下、「磁性層の1−ブロモナフタレン接触角」または単に「1−ブロモナフタレン接触角」とも記載する。)は50.0°以上55.0°以下であり、かつ
上記磁性層の表面に集束イオンビーム(FIB;Focused Ion Beam)を照射して取得される2次イオン像から求められる上記酸化物研磨剤の平均粒子直径(以下、「FIB研磨剤径」とも記載する。)は0.04μm以上0.08μm以下である磁気記録媒体、
に関する。
本発明の一態様は、非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、上記強磁性粉末は強磁性六方晶フェライト粉末であり、上記磁性層は酸化物研磨剤を含み、In−Plane法を用いた上記磁性層のX線回折分析により求められる六方晶フェライト結晶構造の(114)面の回折ピークのピーク強度Int(114)に対する(110)面の回折ピークのピーク強度Int(110)の強度比(Int(110)/Int(114))は0.5以上4.0以下であり、上記磁気記録媒体の垂直方向角型比は0.65以上1.00以下であり、上記磁性層の表面において測定される1−ブロモナフタレンに対する接触角は50.0°以上55.0°以下であり、かつ上記磁性層の表面に集束イオンビームを照射して取得される2次イオン像から求められる上記酸化物研磨剤の平均粒子直径(FIB研磨剤径)は0.04μm以上0.08μm以下である磁気記録媒体に関する。
本発明者らは、上記磁気記録媒体の垂直方向角型比およびXRD強度比が上記範囲であることが、上記磁気記録媒体が優れた電磁変換特性を発揮できること、詳しくは、磁気記録媒体に記録された情報を高SNR(Signal−to−Noise−Ratio)で再生できること、に主に寄与すると考えている。この点について、以下に更に記載する。
上記磁気記録媒体は、磁性層に強磁性六方晶フェライト粉末を含む。本発明者らは、磁性層に含まれる強磁性六方晶フェライト粉末の中には、強磁性六方晶フェライト粉末(粒子の集合)の磁気特性に影響を及ぼす粒子(以下、「前者の粒子」ともいう。)と、影響を及ぼさないか影響が少ないと考えられる粒子(以下、「後者の粒子」ともいう。)とが含まれていると推察している。後者の粒子は、例えば磁性層形成用組成物の調製時に行われる分散処理により粒子が一部欠けること(チッピング(chipping))により発生した微細な粒子と考えられる。
そして本発明者らは、磁性層に含まれる強磁性六方晶フェライト粉末に含まれる粒子の中で、前者の粒子は、In−Plane法を用いたX線回折分析において回折ピークをもたらす粒子であり、後者の粒子は微細なため回折ピークをもたらさないか回折ピークへの影響は小さいと考えている。そのため、In−Plane法を用いた磁性層のX線回折分析によってもたらされる回折ピークの強度に基づけば、強磁性六方晶フェライト粉末の磁気特性に影響を及ぼす粒子の磁性層における存在状態を制御することができると推察している。詳細を後述するXRD強度比は、この点に関する指標と本発明者らは考えている。
一方、垂直方向角型比とは、磁性層表面に対して垂直な方向で測定される飽和磁化に対する残留磁化の比であって、残留磁化が小さいほど値が小さくなる。上記の後者の粒子は微細であり磁化を保持し難いと考えられるため、磁性層において後者の粒子が多く含まれるほど、垂直方向角型比は小さくなる傾向があると推察される。そのため、垂直方向角型比は、磁性層における上記の後者の粒子(微細な粒子)の存在量の指標になり得ると本発明者らは考えている。かかる微細な粒子の磁性層における存在量が少ないほど、強磁性六方晶フェライト粉末の磁気特性は向上すると考えられる。
そして磁性層における後者の粒子(微細な粒子)の存在量を低減し、かつ磁性層における前者の粒子の存在状態を制御することにより、磁気記録媒体の垂直方向角型比およびXRD強度比をそれぞれ上記範囲とすることによって、電磁変換特性の向上が可能になると、本発明者らは推察している。
磁性層表面とヘッドとの親和性には、磁性層表面の表面自由エネルギーが影響を及ぼすと考えられる。表面自由エネルギーに関する北崎−畑の理論(三液法)によれば、表面自由エネルギーは、分散成分、水素結合成分および分極成分の和として求められる。ただし、三液法を用いて磁気記録媒体の磁性層表面で測定される表面自由エネルギーでは、上記3つの成分の中で、磁性層の構成成分の物性に起因して分散成分が支配的であると考えられる。以上より、磁性層表面とヘッドとの親和性には、主に、分散成分が寄与すると推察される。この点に関して、1−ブロモナフタレンも表面自由エネルギーの中で分散成分が支配的であるため、1−ブロモナフタレン接触角は、磁性層表面のヘッドに対する親和性の指標になり得ると本発明者らは考えている。そして1−ブロモナフタレン接触角が50.0°以上55.0°以下である磁性層表面はヘッドとの親和性に優れると考えられ、このことが磁性層表面とヘッドとを円滑に摺動させることに寄与すると本発明者らは推察している。ただし推察に過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
(1)2次イオン像の取得
集束イオンビーム装置により、FIB研磨剤径を求める対象の磁気記録媒体の磁性層表面の25μm角(25μm×25μm)の領域の2次イオン像を取得する。集束イオンビーム装置としては、日立ハイテクノロジーズ社製MI4050を使用することができる。
2次イオン像を取得する際の集束イオンビーム装置のビーム照射条件を、加速電圧30kV、電流値133pA(ピコアンペア)、BeamSize30nmおよびBrightness50%に設定する。磁性層表面への撮像前のコーティング処理は行わない。2次イオン検出器によって、2次イオン(SI;secondary ion)信号を検出し、2次イオン像を撮像する。2次イオン像の撮像条件は、以下の方法により決定する。磁性層表面の未撮像領域3箇所において、ACB(Auto Contrast Brightess)を実施する(即ち、ACBを3回実施する)ことにより画像の色味を安定させ、コントラスト基準値およびブライトネス基準値を決定する。本ACBにより決定されたコントラスト基準値から1%下げたコントラスト値および上記のブライトネス基準値を、撮像条件とする。磁性層表面の未撮像領域を選択し、上記で決定された撮像条件下で2次イオン像を撮像する。撮像された画像からサイズ等を表示する部分(ミクロンバー、クロスマーク等)を消し、2000pixel×2000pixelの画素数の2次イオン像を取得する。撮像条件の具体例については、後述の実施例を参照できる。
(2)FIB研磨剤径の算出
上記(1)で取得した2次イオン像を、画像処理ソフトに取り込み、以下の手順により2値化処理を行う。画像解析ソフトとしては、例えば、フリーソフトのImageJを使用することができる。
上記(1)で取得した2次イオン像を8bitに色調変更する。2値化処理するための閾値は、下限値を250諧調、上限値を255諧調とし、これら2つの閾値により2値化処理を実行する。2値化処理後に画像解析ソフトによりノイズ成分除去処理を行う。ノイズ成分除去処理は、例えば以下の方法により行うことができる。画像解析ソフトImageJにおいて、ノイズカット処理Despeckleを選択し、AnalyzeParticleでSize 4.0−Infinityを設定してノイズ成分の除去を行う。
こうして得られた2値化処理画像において白く光る各部分を酸化物研磨剤と判断し、画像解析ソフトにより、白く光る部分の個数を求め、かつ白く光る各部分の面積を求める。ここで求められた白く光る各部分の面積から、各部分の円相当径を求める。具体的には、求められた面積Aから、(A/π)^(1/2)×2=Lにより、円相当径Lを算出する。
以上の工程を、FIB研磨剤径を求める対象の磁気記録媒体の磁性層表面の異なる箇所(25μm角)において4回実施し、得られた結果から、FIB研磨剤径を、FIB研磨剤径=Σ(Li)/Σiにより算出する。Σiは、4回の実施により得られた2値化処理画像において観察された白く光る部分の総数である。Σ(Li)は、4回の実施により得られた2値化処理画像において観察された白く光る各部分について求めた円相当径Lの合計である。白く光る部分について、その部分の一部のみが2値化処理画像に含まれている場合もあり得る。そのような場合には、その部分は含めずにΣiおよびΣ(Li)を求める。
上記磁気記録媒体は、磁性層に強磁性六方晶フェライト粉末を含む。XRD強度比は、強磁性六方晶フェライト粉末を含む磁性層をIn−Plane法を用いてX線回折分析することによって求められる。以下において、In−Plane法を用いて行われるX線回折分析を、「In−Plane XRD」とも記載する。In−Plane XRDは、薄膜X線回折装置を用いて、以下の条件で、磁性層表面にX線を照射して行うものとする。磁気記録媒体は、テープ状の磁気記録媒体(磁気テープ)とディスク状の磁気記録媒体(磁気ディスク)とに大別される。測定方向は、磁気テープについては長手方向、磁気ディスクについては半径方向とする。
Cu線源使用(出力45kV、200mA)
Scan条件:20〜40degreeの範囲を0.05degree/step、0.1degree/min
使用光学系:平行光学系
測定方法::2θχスキャン(X線入射角0.25°)
上記条件は、薄膜X線回折装置における設定値である。薄膜X線回折装置としては、公知の装置を用いることができる。薄膜X線回折装置の一例としては、リガク社製SmartLabを挙げることができる。In−Plane XRDの分析に付す試料は、測定対象の磁気記録媒体から切り出した媒体試料であって、後述する回折ピークが確認できればよく、その大きさおよび形状は限定されるものではない。
本発明者らは、In−Plane XRDによって求められるX線回折スペクトルにおいて、六方晶フェライト結晶構造の(114)面の回折ピークのピーク強度Int(114)に対する(110)面の回折ピークのピーク強度Int(110)の強度比(Int(110)/Int(114);XRD強度比)が大きいほど、磁化容易軸方向と直交する方向が磁性層表面に対してより平行に近い状態で存在する前者の粒子が磁性層に多く存在することを意味し、XRD強度比が小さいほど、そのような状態で存在する前者の粒子が磁性層に少ないことを意味すると推察している。そして、XRD強度比が0.5以上4.0以下である状態とは、前者の粒子が磁性層において適度に整列した状態にあることを意味すると考えられる。このことが、電磁変換特性の向上に寄与すると、本発明者らは推察している。
XRD強度比は、電磁変換特性の更なる向上の観点から、3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましい。また、同様の観点から、XRD強度比は、0.7以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましい。XRD強度比は、例えば、磁気記録媒体の製造工程において行われる配向処理の処理条件によって制御することができる。配向処理としては、垂直配向処理を行うことが好ましい。垂直配向処理は、好ましくは、湿潤状態(未乾燥状態)の磁性層形成用組成物の塗布層の表面に対して垂直に磁場を印加することにより行うことができる。配向条件を強化するほど、XRD強度比の値は大きくなる傾向がある。配向処理の処理条件としては、配向処理における磁場強度等が挙げられる。配向処理の処理条件は特に限定されるものではない。0.5以上4.0以下のXRD強度比が実現できるように配向処理の処理条件を設定すればよい。一例として、垂直配向処理における磁場強度は、0.10〜0.80Tとすることができ、または0.10〜0.60Tとすることもできる。磁性層形成用組成物における強磁性六方晶フェライト粉末の分散性を高めるほど、垂直配向処理によりXRD強度比の値は大きくなる傾向がある。
垂直方向角型比とは、磁気記録媒体の垂直方向において測定される角型比である。角型比に関して記載する「垂直方向」とは、磁性層表面と直交する方向をいう。例えば磁気記録媒体がテープ状の磁気記録媒体、即ち磁気テープである場合には、垂直方向は、磁気テープの長手方向と直交する方向でもある。垂直方向角型比は、振動試料型磁束計を用いて測定される。詳しくは、本発明および本明細書における垂直方向角型比は、振動試料型磁束計において、23℃±1℃の測定温度において、磁気記録媒体に外部磁場を最大外部磁場1194kA/m(15kOe)かつスキャン速度4.8kA/m/秒(60Oe/秒)の条件で掃引して求められる値であって、反磁界補正後の値とする。測定値は、振動試料型磁束計のサンプルプローブの磁化をバックグラウンドノイズとして差し引いた値として得るものとする。
上記磁気記録媒体の磁性層の表面にFIBを照射して取得される2次イオン像から求められるFIB研磨剤径は、0.04μm以上0.08μm以下である。FIB研磨剤径が0.08μm以下であることは、GTTにおいて酸化物研磨剤によってヘッド素子が削られることを抑制することに寄与すると考えられる。また、FIB研磨剤径が0.04μm以上であることは、GTTにおいて磁性層表面との摺動によりヘッドに付着した磁性層由来の成分を除去することに寄与すると推察される。このことは、GTTにおいて磁性層由来の成分がヘッドに付着した状態で磁性層表面とヘッドが摺動することによってヘッドの素子が削れることを抑制することに寄与すると考えられる。GTTにおけるヘッド素子削れの発生をより一層抑制する観点からは、FIB研磨剤径は0.05μm以上であることが好ましく、0.06μm以上であることがより好ましい。また、同様の観点から、FIB研磨剤径は、0.07μm以下であることが好ましい。FIB研磨剤径を調整するための手段の具体的態様は、後述する。
上記磁気記録媒体の磁性層表面において測定される1−ブロモナフタレン接触角は、50.0°以上55.0°以下である。1−ブロモナフタレン接触角が上記範囲であることが、磁性層表面とヘッドとの摺動性を向上させることに寄与し、GTTにおけるヘッド素子削れの発生を抑制することにつながると推察される。GTTにおけるヘッド素子削れの発生をより一層抑制する観点から、磁性層の1−ブロモナフタレン接触角は、50.5°以上であることが好ましく、51.0°以上であることがより好ましく、51.5°以上であることが更に好ましく、52.0°以上であることが一層好ましく、52.5°以上であることがより一層好ましい。また、製造容易性等の観点からは、磁性層の1−ブロモナフタレン接触角は、54.5°以下であることが好ましく、54.0°以下であることがより好ましい。
1−ブロモナフタレン接触角調整成分は、磁性層表面において測定される1−ブロモナフタレン接触角を調整可能な成分である。ここで調整可能とは、1−ブロモナフタレン接触角を変化させる作用を奏することができることをいう。かかる作用を奏することは、1−ブロモナフタレン接触角調整成分の有無により、磁性層表面において測定される1−ブロモナフタレン接触角が変化することによって、確認することができる。1−ブロモナフタレン接触角調整成分は、1−ブロモナフタレン接触角の値を大きくする作用を奏することが好ましい。1−ブロモナフタレン接触角調整成分の一態様は潤滑剤であり、他の一態様は後述するポリマーである。以下、これら成分について、順次説明する。
潤滑剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等の各種磁気記録媒体に通常使用される各種潤滑剤を挙げることができる。磁性層に含まれる潤滑剤が多いほど、磁性層表面において測定される1−ブロモナフタレン接触角の値は大きくなる傾向がある。
脂肪酸エステル含有量は、磁性層形成用組成物における脂肪酸エステル含有量として、強磁性六方晶フェライト粉末100.0質量部あたり、例えば0.1〜10.0質量部であり、好ましくは0.5〜8.0質量部であり、より好ましくは1.0〜7.0質量部である。
脂肪酸アミド含有量は、磁性層形成用組成物において、強磁性六方晶フェライト粉末100.0質量部あたり、例えば0〜3.0質量部であり、好ましくは0〜2.0質量部であり、より好ましくは0〜1.0質量部である。
また、上記磁気テープが非磁性支持体と磁性層との間に非磁性層を有する場合、非磁性層に潤滑剤が含まれてもよく、含まれなくてもよい。非磁性層に含まれる潤滑剤は、通常、少なくとも一部は磁性層側に移行し磁性層に存在し得る。非磁性層形成用組成物における脂肪酸含有量は、非磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0〜10.0質量部であり、好ましくは1.0〜10.0質量部であり、より好ましくは1.0〜7.0質量部である。脂肪酸エステル含有量は、非磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0〜10.0質量部であり、好ましくは0.1〜8.0質量部である。非磁性層形成用組成物における脂肪酸アミド含有量は、非磁性粉末100.0質量部あたり、例えば0〜3.0質量部であり、好ましくは0〜1.0質量部である。
脂肪酸と脂肪酸の誘導体(エステル、アミド等)とを併用する場合、脂肪酸誘導体の脂肪酸由来部位は、併用される脂肪酸と同様または類似の構造を有することが好ましい。例えば、一例として、脂肪酸としてステアリン酸を用いる場合には、ステアリン酸ブチル等のステアリン酸エステルおよび/またはステアリン酸アミドを使用することは好ましい。
以下において、1−ブロモナフタレン接触角調整成分として機能することができるポリマーを、「1−ブロモナフタレン接触角調整剤」ともいう。1−ブロモナフタレン接触角調整剤の一態様としては、含窒素ポリマーを挙げることができる。含窒素ポリマーに含まれるポリマー鎖が、磁性層表面において測定される1−ブロモナフタレン接触角を高めることに寄与すると推察される。含窒素ポリマーとは、構造中に窒素原子を含むポリマーをいう。好ましい含窒素ポリマーとしては、アミン系ポリマーの一種であるポリアルキレンイミン系ポリマー、およびポリアルキレンイミン系ポリマー以外のアミン系ポリマー等を挙げることができる。ポリアルキレンイミン系ポリマーとは、ポリアルキレンイミン鎖を1つ以上含むポリマーである。ポリアルキレンイミン系ポリマーの詳細については、特開2016−51493号公報の段落0035〜0077を参照できる。また、アミン系ポリマーの詳細については、特開2016−51493号公報の段落0078〜0080を参照できる。
GPC装置:HLC−8120(東ソー社製)
カラム:TSK gel Multipore HXL−M(東ソー社製、7.8mmID(inner diameter(内径))×30.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
<強磁性六方晶フェライト粉末>
上記磁気記録媒体の磁性層は、強磁性粉末として強磁性六方晶フェライト粉末を含む。強磁性六方晶フェライト粉末に関して、六方晶フェライトの結晶構造としては、マグネトプランバイト型(「M型」とも呼ばれる。)、W型、Y型およびZ型が知られている。上記磁性層に含まれる強磁性六方晶フェライト粉末は、いずれの結晶構造を取るものであってもよい。また、六方晶フェライトの結晶構造には、構成原子として、鉄原子および二価金属原子が含まれる。二価金属原子とは、イオンとして二価のカチオンになり得る金属原子であり、バリウム原子、ストロンチウム原子、カルシウム原子等のアルカリ土類金属原子、鉛原子等を挙げることができる。例えば、二価金属原子としてバリウム原子を含む六方晶フェライトは、バリウムフェライトであり、ストロンチウム原子を含む六方晶フェライトは、ストロンチウムフェライトである。また、六方晶フェライトは、二種以上の六方晶フェライトの混晶であってもよい。混晶の一例としては、バリウムフェライトとストロンチウムフェライトの混晶を挙げることができる。
Hc=2Ku/Ms{1−[(kT/KuV)ln(At/0.693)]1/2}
[上記式中、Ku:異方性定数、Ms:飽和磁化、k:ボルツマン定数、T:絶対温度、V:活性化体積、A:スピン歳差周波数、t:磁界反転時間]
磁気記録媒体には高密度記録化が常に望まれている。高密度記録化を達成するための方法としては、磁性層に含まれる強磁性粉末の粒子サイズを小さくし、磁性層の強磁性粉末の充填率を高める方法が挙げられる。この点から、強磁性六方晶フェライト粉末の活性化体積は、2500nm3以下であることが好ましく、2300nm3以下であることがより好ましく、2000nm3以下であることが更に好ましい。一方、磁化の安定性の観点からは、活性化体積は、例えば800nm3以上であることが好ましく、1000nm3以上であることがより好ましく、1200nm3以上であることが更に好ましい。
上記磁気記録媒体は、磁性層に結合剤を含む。結合剤とは、一種以上の樹脂である。樹脂はホモポリマーであってもコポリマー(共重合体)であってもよい。磁性層に含まれる結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等を共重合したアクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルキラール樹脂等から選択したものを単独で用いることができ、または複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂および塩化ビニル樹脂である。これらの樹脂は、後述する非磁性層および/またはバックコート層においても結合剤として使用することができる。以上の結合剤については、特開2010−24113号公報の段落0029〜0031を参照できる。結合剤として使用される樹脂の平均分子量は、重量平均分子量として、例えば10,000以上200,000以下であることができる。
上記磁気記録媒体は、磁性層に酸化物研磨剤を含む。酸化物研磨剤は、モース硬度8超の非磁性酸化物粉末であり、モース硬度9以上の非磁性酸化物粉末であることが好ましい。なおモース硬度の最大値は10である。酸化物研磨剤は、無機酸化物粉末であっても有機酸化物粉末であってもよく、無機酸化物粉末であることが好ましい。具体的には、研磨剤としては、アルミナ(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化セリウム(CeO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)等の粉末を挙げることができ、中でもアルミナ粉末が好ましい。なおアルミナのモース硬度は約9である。アルミナ粉末については、特開2013−229090号公報の段落0021も参照できる。また、酸化物研磨剤の粒子サイズの指標としては、比表面積を用いることができる。比表面積が大きいほど酸化物研磨剤を構成する粒子の一次粒子の粒子サイズが小さいと考えることができる。酸化物研磨剤としては、BET(Brunauer−Emmett−Teller)法によって測定された比表面積(以下、「BET比表面積」と記載する。)が14m2/g以上の酸化物研磨剤を使用することが好ましい。また、分散性の観点からは、BET比表面積が40m2/g以下の酸化物研磨剤を使用することが好ましい。磁性層における酸化物研磨剤の含有量は、強磁性六方晶フェライト粉末100.0質量部に対して1.0〜20.0質量部であることが好ましく、1.0〜10.0質量部であることがより好ましい。
磁性層には、強磁性六方晶フェライト粉末、結合剤および酸化物研磨剤が含まれ、必要に応じて一種以上の添加剤が更に含まれていてもよい。添加剤としては、一例として、上記の硬化剤が挙げられる。また、磁性層に含まれ得る添加剤としては、酸化物研磨剤以外の非磁性粉末、潤滑剤、分散剤、分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤等を挙げることができる。添加剤は、所望の性質に応じて市販品を適宜選択して、または公知の方法で製造して、任意の量で使用することができる。分散剤については、特開2012−133837号公報の段落0061および0071を参照できる。分散剤は、非磁性層に含まれていてもよい。非磁性層に含まれ得る分散剤については、特開2012−133837号公報の段落0061を参照できる。
次に非磁性層について説明する。
上記磁気記録媒体は、非磁性支持体表面上に直接磁性層を有していてもよく、非磁性支持体と磁性層との間に非磁性粉末と結合剤を含む非磁性層を有していてもよい。非磁性層に含まれる非磁性粉末は、無機粉末でも有機粉末でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機粉末としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の粉末が挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2010−24113号公報の段落0036〜0039を参照できる。非磁性層における非磁性粉末の含有量(充填率)は、好ましくは50〜90質量%の範囲であり、より好ましくは60〜90質量%の範囲である。
次に、非磁性支持体(以下、単に「支持体」とも記載する。)について説明する。
非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましい。これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理等を行ってもよい。
上記磁気記録媒体は、非磁性支持体の磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末および結合剤を含むバックコート層を有することもできる。バックコート層には、カーボンブラックおよび無機粉末の一方または両方が含有されていることが好ましい。バックコート層に含まれる結合剤、任意に含まれ得る各種添加剤については、バックコート層に関する公知技術を適用することができ、磁性層および/または非磁性層の処方に関する公知技術を適用することもできる。例えば、特開2006−331625号公報の段落0018〜0020および米国特許第7,029,774号明細書の第4欄65行目〜第5欄38行目の記載を、バックコート層について参照できる。
上記磁気記録媒体における非磁性支持体および各層の厚みについて、以下に説明する。
非磁性支持体の厚みは、例えば3.0〜80.0μmであり、好ましくは3.0〜50.0μmであり、より好ましくは3.0〜10.0μmである。
<各層形成用組成物の調製>
磁性層、非磁性層またはバックコート層を形成するための組成物を調製する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程を含む。個々の工程はそれぞれ二段階以上に分かれていてもかまわない。各層形成用組成物の調製に用いられる成分は、どの工程の最初または途中で添加してもかまわない。例えば、一態様では、磁性層形成用組成物は、強磁性六方晶フェライト粉末および酸化物研磨剤をそれぞれ溶媒等と混合し分散させて分散液を調製し、次いで、調製した各種分散液を残りの成分(1−ブロモナフタレン接触角調整成分等)と混合することにより調製することができる。溶媒としては、塗布型磁気記録媒体の製造に通常用いられる各種溶媒の一種または二種以上を用いることができる。溶媒については、例えば特開2011−216149号公報の段落0153を参照できる。また、個々の成分を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、結合剤を混練工程、分散工程および分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。上記磁気記録媒体を製造するためには、従来の公知の製造技術を各種工程において用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダ等の強い混練力をもつものを使用することが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報および特開平1−79274号公報を参照できる。分散機は公知のものを使用することができる。各層形成用組成物を調製する任意の段階において、公知の方法によってろ過を行ってもよい。ろ過は、例えばフィルタろ過によって行うことができる。ろ過に用いるフィルタとしては、例えば孔径0.01〜3μmのフィルタ(例えばガラス繊維製フィルタ、ポリプロピレン製フィルタ等)を用いることができる。
なお本発明および本明細書におけるビーズ径は、先に記載した粉末の平均粒子サイズの測定方法と同様の方法で測定される値とする。
一方、第一の段階における第一の分散ビーズ量も、上記範囲とすることが好ましい。
一方、第一の分散ビーズとしては、密度が3.7g/cm3超の分散ビーズが好ましく、密度が3.8g/cm3以上の分散ビーズがより好ましく、4.0g/cm3以上の分散ビーズが更に好ましい。第一の分散ビーズの密度は、例えば7.0g/cm3以下であってもよく、7.0g/cm3超でもよい。第一の分散ビーズとしては、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ等を用いることが好ましく、ジルコニアビーズを用いることがより好ましい。
磁性層は、磁性層形成用組成物を非磁性支持体の表面に直接塗布するか、または非磁性層形成用組成物と逐次もしくは同時に重層塗布することにより形成することができる。バックコート層は、バックコート層形成用組成物を、非磁性支持体の磁性層を有する(または磁性層が追って設けられる)表面側とは反対の表面側に塗布することにより形成することができる。各層形成のための塗布の詳細については、特開2010−231843号公報の段落0066を参照できる。
磁気テープ製造のためのその他の各種工程については、特開2010−231843号公報の段落0067〜0070を参照できる。磁性層形成用組成物の塗布層には、この塗布層が湿潤(未乾燥)状態にあるうちに配向処理を施すことが好ましい。配向処理については、特開2010−231843号公報の段落0067の記載をはじめとする各種公知技術を適用することができる。先に記載したように、配向処理としては垂直配向処理を行うことが、XRD強度比を制御する観点から好ましい。配向処理については、先の記載も参照できる。
本発明の一態様は、上記磁気記録媒体と、磁気ヘッドと、を含む磁気記録再生装置に関する。
各層形成用組成物の処方を、下記に示す。
表1の条件Cに示す酸化物研磨剤(アルミナ粉末)100.0部に対し、表1の条件Cに示す量の2,3−ジヒドロキシナフタレン(東京化成社製)、極性基としてSO3Na基を有するポリエステルポリウレタン樹脂(東洋紡社製UR−4800(極性基量:80meq/kg))の32%溶液(溶媒はメチルエチルケトンとトルエンの混合溶媒)31.3部、溶媒としてメチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1(質量比)の混合液570.0部を混合し、ジルコニアビーズ(ビーズ径:0.1mm)存在下で、ペイントシェーカーにより、表1の条件Cに示す時間(ビーズ分散時間)、分散させた。分散後、メッシュにより分散液とビーズとを分離して得られた分散液の遠心分離処理を実施した。遠心分離処理は、遠心分離機として日立工機社製CS150GXL(使用ローターは同社製S100AT6)を使用し、表1の条件Cに示す回転数(rpm;rotation per minute)で表1の条件Cに示す時間(遠心分離時間)、実施した。その後、表1の条件Cに示す孔径のフィルタでろ過を行い、アルミナ分散物(研磨剤液)を得た。
(磁性液)
板状強磁性六方晶フェライト粉末(M型バリウムフェライト):100.0部
(活性化体積:1500nm3)
オレイン酸:2.0部
塩化ビニル共重合体(日本ゼオン製MR−104):10.0部
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:4.0部
(重量平均分子量70000、SO3Na基:0.07meq/g)
アミン系ポリマー(ビックケミー社製DISPERBYK−102):6.0部
メチルエチルケトン:150.0部
シクロヘキサノン:150.0部
(研磨剤液)
上記研磨剤液:6.0部
(突起形成剤液(シリカゾル))
コロイダルシリカ:2.0部
(平均粒子サイズ80nm)
メチルエチルケトン:8.0部
(その他の成分)
1−ブロモナフタレン接触角調整剤:表2参照
ステアリン酸:表2参照
ステアリン酸アミド:0.3部
ステアリン酸ブチル:6.0部
メチルエチルケトン:110.0部
シクロヘキサノン:110.0部
ポリイソシアネート(東ソー社製コロネート(登録商標)L):3.0部
上記磁性液の各種成分を、バッチ式縦型サンドミルによりビーズ径0.5mmのジルコニアビーズ(第一の分散ビーズ、密度6.0g/cm3)を使用して24時間分散し(第一の段階)、その後、0.5μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過することにより分散液Aを調製した。ジルコニアビーズは、強磁性六方晶フェライト粉末の質量に対して、質量基準で10倍量用いた。
その後、分散液Aをバッチ式縦型サンドミルにより表2に示すビーズ径のダイヤモンドビーズ(第二の分散ビーズ、密度3.5g/cm3)を使用して表2に示す時間分散し(第二の段階)、遠心分離機を用いてダイヤモンドビーズを分離した分散液(分散液B)を調製した。下記磁性液は、こうして得られた分散液Bである。
上記磁性液、研磨剤液、突起形成剤液、および上記のその他の成分をディゾルバー撹拌機に導入し、周速10m/秒で表1の条件Cに示す時間(撹拌時間)、撹拌した。その後、フロー式超音波分散機により流量7.5kg/分で表1の条件Cに示す時間(超音波分散時間)、超音波分散処理を行った後に、表1の条件Cに示す孔径のフィルタで表1の条件Cに示す回数ろ過して磁性層形成用組成物を調製した。
下記の非磁性層形成用組成物の各種成分を、バッチ式縦型サンドミルによりビーズ径0.1mmのジルコニアビーズを使用して24時間分散し、その後、0.5μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過することにより、非磁性層形成用組成物を調製した。
(平均粒子サイズ10nm、BET比表面積75m2/g)
カーボンブラック:25.0部
(平均粒子サイズ20nm)
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂:18.0部
(重量平均分子量70000、SO3Na基含有量0.2meq/g)
ステアリン酸:1.0部
シクロヘキサノン:300.0部
メチルエチルケトン:300.0部
下記のバックコート層形成用組成物の各種成分のうち潤滑剤(ステアリン酸およびステアリン酸ブチル)、ポリイソシアネートならびにシクロヘキサノン200.0部を除いた成分をオープンニーダにより混練および希釈した後、横型ビーズミル分散機によりビーズ径1mmのジルコニアビーズを用い、ビーズ充填率80体積%、ローター先端周速10m/秒で1パスあたりの滞留時間を2分間とし、12パスの分散処理に供した。その後、上記の残りの成分を添加してディゾルバーで撹拌し、得られた分散液を1μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過することにより、バックコート層形成用組成物を調製した。
(平均粒子サイズ0.15μm、BET比表面積52m2/g)
カーボンブラック:20.0部
(平均粒子サイズ20nm)
塩化ビニル共重合体:13.0部
スルホン酸塩基含有ポリウレタン樹脂:6.0部
フェニルホスホン酸:3.0部
シクロヘキサノン:155.0部
メチルエチルケトン:155.0部
ステアリン酸:2.0部
ステアリン酸ブチル:3.0部
ポリイソシアネート:5.0部
シクロヘキサノン:200.0部
厚み5.0μmのポリエチレンナフタレート製支持体の表面上に、乾燥後の厚みが100nmになるように上記で調製した非磁性層形成用組成物を塗布し乾燥させて非磁性層を形成した。形成した非磁性層の表面上に、乾燥後の厚みが70nmになるように上記で調製した磁性層形成用組成物を塗布して塗布層を形成した。この磁性層形成用組成物の塗布層が湿潤(未乾燥)状態にあるうちに、表2に示す強度の磁場を上記塗布層の表面に対し垂直方向に印加する垂直配向処理を施した。その後、上記塗布層を乾燥させた。
その後、上記支持体の非磁性層および磁性層を形成した表面とは反対側の表面上に乾燥後の厚みが0.4μmになるように上記で調製したバックコート層形成用組成物を塗布し、乾燥させた。得られたテープを金属ロールのみから構成されるカレンダにより、速度100m/minかつ線圧300kg/cm(294kN/m)にて、表面温度90℃のカレンダロールを用いてカレンダ処理(表面平滑化処理)し、その後雰囲気温度70℃の環境で36時間熱処理を施した。熱処理後1/2インチ(0.0127メートル)幅にスリットし、市販のサーボライターによって磁性層にサーボパターンを形成した。
以上により、実施例1の磁気テープを得た。
表1および表2に示す各種項目を各表に示すように変更した点以外、実施例1と同様に磁気テープを作製した。
表1に記載されている酸化物研磨剤は、いずれもアルミナ粉末である。
表2中、分散ビーズの欄および時間の欄に「なし」と記載されている比較例については、磁性液分散処理において第二の段階を実施せずに磁性層形成用組成物を調製した。
表2中、垂直配向処理磁場強度の欄に「なし」と記載されている例については、配向処理を行わずに磁性層を形成した。
(1)XRD強度比
作製した磁気テープから、テープ試料を切り出した。
切り出したテープ試料について、薄膜X線回折装置(リガク社製SmartLab)を用いて磁性層表面にX線を入射させて、先に記載した方法によりIn−Plane XRDを行った。
In−Plane XRDにより得られたX線回折スペクトルから、六方晶フェライト結晶構造の(114)面の回折ピークのピーク強度Int(114)および(110)面の回折ピークのピーク強度Int(110)を求め、XRD強度比(Int(110)/Int(114))を算出した。
作製した各磁気テープについて、振動試料型磁束計(東英工業社製)を用いて先に記載した方法により垂直方向角型比を求めた。
接触角測定機(協和界面科学社製接触角測定装置DropMaster700)により、以下の方法により磁性層表面において1−ブロモナフタレン接触角の測定を行った。
ロール状に巻き取った磁気テープをロールの端部から一定長さ切り取り得られたテープサンプルを、バックコート層表面がスライドガラス表面と接触するようにスライドガラス上に設置した。テープサンプル表面(磁性層表面)に測定用液体(1−ブロモナフタレン)2.0μlを滴下し、滴下した液体が安定した液滴を形成したことを目視で確認した後、上記接触角測定機に付随の接触角解析ソフトウェアFAMASにより液滴像を解析し、テープサンプルと液滴の接触角を測定した。接触角の算出はθ/2法によって行い、1サンプルにつき6回測定した平均値を1−ブロモナフタレン接触角とした。測定は、雰囲気温度25℃および相対湿度25%の環境で行い、以下の解析条件で接触角を求めた。
手法:液滴法(θ/2法)
着滴認識:自動
着滴認識ライン(針先からの距離):50dot
アルゴリズム:自動
イメージモード:フレーム
スレッシホールドレベル:自動
作製した各磁気テープのFIB研磨剤径を、以下の方法により求めた。集束イオンビーム装置としては、日立ハイテクノロジーズ社製MI4050を使用し、画像解析ソフトとしては、フリーソフトのImageJを使用した。
(i)2次イオン像の取得
作製した各磁気テープから切り出した測定用サンプルのバックコート層表面を、市販のSEM測定用カーボン両面テープ(アルミニウム製基材上にカーボン膜が形成された両面テープ)の粘着層に貼り付けた。この両面テープのバックコート層表面と貼り付けた表面とは反対の表面上の粘着層を、集束イオンビーム装置の試料台に貼り付けた。こうして、測定用サンプルを、磁性層表面を上方に向けて集束イオンビーム装置の試料台上に配置した。
撮像前コーティング処理を行わず、集束イオンビーム装置のビーム設定を、加速電圧30kV、電流値133pA、BeamSize30nmおよびBrightness50%に設定し、2次イオン検出器によりSI信号を検出した。磁性層表面の未撮像領域3箇所においてACBを実施することにより画像の色味を安定させ、コントラスト基準値およびブライトネス基準値を決定した。本ACBにより決定されたコントラスト基準値から1%下げたコントラスト値および上記のブライトネス基準値を、撮像条件として決定した。磁性層表面の未撮像領域を選択し、上記で決定された撮像条件下で、Pixel distance=25.0(nm/pixel)にて撮像を実施した。画像取り込み方式は、PhotoScan Dot×4_Dwell Time 15μsec(取り込み時間:1分)とし、取り込みサイズは25μm角とした。こうして、磁性層表面の25μm角の領域の2次イオン像を得た。得られた2次イオン像は、スキャン終了後、取り込み画面上でマウスを右クリックし、ExportImageでファイル形式をJPEGとして保存した。画像の画素数が2000pixel×2100pixelであることを確認し、取り込み画像のクロスマークおよびミクロンバーを消し、2000pixel×2000pixel画像とした。
(ii)FIB研磨剤径の算出
上記(i)で取得した2次イオン像の画像データを、画像解析ソフトImageJにドラッグおよびドロップした。
画像解析ソフトを用いて、画像データを8bitに色調変更した。具体的には、画像解析ソフトの操作メニューのImageを押し、Typeの8bitを選択した。
2値化処理するために、下限値250諧調、上限値255諧調を選択し、これら2つの閾値による2値化処理を実行した。具体的には、画像解析ソフトの操作メニュー上、Imageを押し、AdjustのThresholdを選択し、下限値250、上限値255を選択した後にapplyを選択した。得られた画像について、画像解析ソフトの操作メニューのProcessを押し、NoiseからDespeckleを選択し、AnalyzeParticleでSize 4.0−Infinityを設定してノイズ成分の除去を行った。
こうして得られた2値化処理画像について、画像解析ソフトの操作メニューからAnalyzeParticleを選択し、画像上の白く光る部分の個数およびArea(単位:Pixel)を求めた。面積は、画像解析ソフトにより画面上の白く光る各部分について、Area(単位:Pixel)を面積に変換して求めた。具体的には、上記撮像条件により得られた画像において、1pixelは0.0125μmに相当するため、面積A=Area pixel×0.0125^2により、面積A[μm2]を算出した。こうして算出された面積を用いて、円相当径L=(A/π)^(1/2)×2=Lにより、白く光る各部分について円相当径Lを求めた。
以上の工程を、測定用サンプルの磁性層表面の異なる箇所(25μm角)において4回実施し、得られた結果から、FIB研磨剤径を、FIB研磨剤径=Σ(Li)/Σiにより算出した。
作製した各磁気テープの電磁変換特性を、ヘッドを固定した1/2インチ(0.0127メートル)リールテスターを用いて以下の方法により測定した。以下の記録および再生は、磁気テープの磁性層表面とヘッドとを摺動させて行われた。
磁気テープの走行速度(磁気ヘッド/磁気テープ相対速度)は4m/秒とした。記録ヘッドとしてMIG(Metal−In−Gap)ヘッド(ギャップ長0.15μm、トラック幅1.0μm)を使い、記録電流は各磁気テープの最適記録電流に設定した。再生ヘッドとしては素子厚み15nm、シールド間隔0.1μmおよびリード幅0.5μmのGMR(Giant−Magnetoresistive)ヘッドを使用した。線記録密度300kfciで信号の記録を行い、再生信号をシバソク社製のスペクトラムアナライザーで測定した。キャリア信号の出力値と、スペクトル全帯域の積分ノイズとの比をSNRとした。SNR測定のためには、磁気テープの走行後に信号が十分に安定した部分の信号を使用した。SNRは、比較例1のSNRを0.0dBとしたときの相対値として表2に示した。なお単位kfciとは、線記録密度の単位(SI単位系に換算不可)である。
IBM社製TS1140テープドライブで使用されている磁気ヘッド(MRヘッド)をリールテスターに取り付け、1巻1000m長の磁気テープを、磁性層表面とMRヘッドとを摺動させながら、走行速度(磁気ヘッド/磁気テープ相対速度)を4m/秒として200パス走行させた。
上記と同様の200パス走行を、磁気テープを新品に取り替えて繰り返した後(磁気テープを1000巻使用)、以下の方法によって上記MRヘッドのMR素子の削れ量を測定した。
上記MRヘッドの磁性層表面との摺動面を含む表面上に、真空蒸着装置(JEOL社製JEE−4X)を用いてカーボン膜を蒸着し、このカーボン膜の上にイオンスパッタ装置(日立ハイテクノロジーズ社製E−1030)を用いて白金膜をスパッタ成膜した。その後、MRFEI社製FIB−SEM複合機Helios400Sを用いて、上記MRヘッドから、走行時の磁気テープとの摺動方向と平行な断面が露出し、かつこの断面にMR素子が含まれるように断面観察用試料(厚み100nmの切片)を切り出した。この断面観察用試料を透過型電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)(FEI社製Titan80−300)により加速電圧300kVで観察して得られたTEM像を用いて、磁性層表面との摺動面とMR素子の頂部との垂直方向距離求めた。求められた距離と未使用のMRヘッドについて同じ方法で求めた距離との差分を、GTTにおけるヘッド素子削れ量として表2に示した。
Claims (10)
- 非磁性支持体上に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
前記強磁性粉末は強磁性六方晶フェライト粉末であり、前記磁性層は酸化物研磨剤を含み、
In−Plane法を用いた前記磁性層のX線回折分析により求められる六方晶フェライト結晶構造の(114)面の回折ピークのピーク強度Int(114)に対する(110)面の回折ピークのピーク強度Int(110)の強度比、Int(110)/Int(114)、は0.5以上4.0以下であり、
前記磁気記録媒体の垂直方向角型比は0.65以上1.00以下であり、
前記磁性層の表面において測定される1−ブロモナフタレンに対する接触角は50.0°以上55.0°以下であり、かつ
前記磁性層の表面に集束イオンビームを照射して取得される2次イオン像から求められる前記酸化物研磨剤の平均粒子直径は0.04μm以上0.08μm以下である磁気記録媒体。 - 前記垂直方向角型比は、0.65以上0.90以下である、請求項1に記載の磁気記録媒体。
- 前記酸化物研磨剤は、アルミナ粉末である、請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層は、含窒素ポリマーを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記磁性層は、脂肪酸、脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミドからなる群から選ばれる成分の一種以上を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 前記非磁性支持体の前記磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末および結合剤を含むバックコート層を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 磁気テープである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の磁気記録媒体と、
磁気ヘッドと、
を含む磁気記録再生装置。 - 前記磁気ヘッドは、磁気抵抗効果型素子を含む磁気ヘッドである、請求項9に記載の磁気記録再生装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
US16/143,747 US10978105B2 (en) | 2017-09-29 | 2018-09-27 | Magnetic recording medium having characterized magnetic layer and magnetic recording and reproducing device |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017191662 | 2017-09-29 | ||
JP2017191662 | 2017-09-29 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2019067476A true JP2019067476A (ja) | 2019-04-25 |
JP6723302B2 JP6723302B2 (ja) | 2020-07-15 |
Family
ID=66339642
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018170189A Active JP6723302B2 (ja) | 2017-09-29 | 2018-09-12 | 磁気記録媒体および磁気記録再生装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6723302B2 (ja) |
Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002304717A (ja) * | 2001-04-04 | 2002-10-18 | Sony Corp | 磁気記録媒体及びその製造方法 |
JP2016051493A (ja) * | 2014-08-29 | 2016-04-11 | 富士フイルム株式会社 | 磁気記録媒体 |
JP2017054564A (ja) * | 2015-09-08 | 2017-03-16 | 富士フイルム株式会社 | 磁気記録媒体 |
JP2017068893A (ja) * | 2015-09-30 | 2017-04-06 | 富士フイルム株式会社 | 磁気テープおよびその製造方法 |
JP2018045751A (ja) * | 2016-09-16 | 2018-03-22 | 富士フイルム株式会社 | 磁気記録媒体およびその製造方法 |
-
2018
- 2018-09-12 JP JP2018170189A patent/JP6723302B2/ja active Active
Patent Citations (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002304717A (ja) * | 2001-04-04 | 2002-10-18 | Sony Corp | 磁気記録媒体及びその製造方法 |
JP2016051493A (ja) * | 2014-08-29 | 2016-04-11 | 富士フイルム株式会社 | 磁気記録媒体 |
JP2017054564A (ja) * | 2015-09-08 | 2017-03-16 | 富士フイルム株式会社 | 磁気記録媒体 |
JP2017068893A (ja) * | 2015-09-30 | 2017-04-06 | 富士フイルム株式会社 | 磁気テープおよびその製造方法 |
JP2018045751A (ja) * | 2016-09-16 | 2018-03-22 | 富士フイルム株式会社 | 磁気記録媒体およびその製造方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP6723302B2 (ja) | 2020-07-15 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US10978105B2 (en) | Magnetic recording medium having characterized magnetic layer and magnetic recording and reproducing device | |
US10854233B2 (en) | Magnetic recording medium having characterized magnetic layer and magnetic recording and reproducing device | |
JP6717785B2 (ja) | 磁気記録媒体 | |
US10854234B2 (en) | Magnetic recording medium having characterized magnetic layer and magnetic recording and reproducing device | |
US10438623B2 (en) | Magnetic tape having characterized magnetic layer | |
JP7427064B2 (ja) | 磁気テープおよび磁気記録再生装置 | |
US10854231B2 (en) | Magnetic recording medium having characterized magnetic layer and magnetic recording and reproducing device | |
JP6585570B2 (ja) | 磁気記録媒体およびその製造方法 | |
JP6707061B2 (ja) | 磁気記録媒体 | |
JP6678135B2 (ja) | 磁気記録媒体 | |
US10515657B2 (en) | Magnetic tape having characterized magnetic layer and magnetic recording and reproducing device | |
US10839849B2 (en) | Magnetic recording medium having characterized magnetic layer | |
US10482913B2 (en) | Magnetic tape having characterized magnetic layer | |
JP2020068042A (ja) | 磁気テープ、磁気テープカートリッジおよび磁気テープ装置 | |
WO2019065200A1 (ja) | 磁気テープおよび磁気記録再生装置 | |
JP6723303B2 (ja) | 磁気記録媒体および磁気記録再生装置 | |
JP6723296B2 (ja) | 磁気記録媒体 | |
JP6725611B2 (ja) | 磁気記録媒体および磁気記録再生装置 | |
JP6714658B2 (ja) | 磁気記録媒体および磁気記録再生装置 | |
JP6754404B2 (ja) | 磁気テープおよび磁気記録再生装置 | |
JP6723302B2 (ja) | 磁気記録媒体および磁気記録再生装置 | |
JP6902660B2 (ja) | 磁気テープ、磁気テープカートリッジおよび磁気テープ装置 | |
JP6678205B2 (ja) | 磁気記録媒体 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20190815 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20200529 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20200609 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20200623 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6723302 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |