JP2019064403A - 車両用外装部品 - Google Patents

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宰慶 金
英史 小澤
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英史 小澤
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康雄 中島
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Abstract

【課題】セルロースが熱可塑性樹脂中で微細化されることで、軽量化と高剛性の両立を可能とした車両用外装部品を提供することを目的とする。【解決手段】車両用外装部品は、熱可塑性合成樹脂およびセルロース成分を含有し、該熱可塑性合成樹脂の少なくとも1種が、ポリマー分子中に、酸無水物の部分構造を含む基およびアシル化セルロース構造を含む基から選択される少なくとも1種の基を有する樹脂である熱可塑性樹脂組成物で形成された樹脂部を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、車両用外装部品に関し、特に、セルロースを含有する熱可塑性樹脂組成物で形成された樹脂部を備える車両用外装部品に関する。
従来、自動車をはじめとする車両では、化石燃料などの資源節約の観点等から、燃費向上を目的とした軽量化が検討されている。しかも単に軽量化するだけでなく、安全性、品質を向上させるために、外装パネルなどの外装部品を樹脂化するための研究が盛んに行われている。このような外装部品では、高い機械的強度と耐衝撃性が要求されることから、樹脂の強化材として、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維などが開発されている。
しかしながら、ガラス繊維のみでは表面性が悪く、車両用の外装材料としてはそのまま使用できず、逆に樹脂のみにしようとすると外装材料の剛性が不足する。この結果、異種の素材を複合した複合材料を用いることになるため、各素材の熱膨張率の差から、接合や外観に不具合を生じることがある。しかも車両では、装飾や意匠性のために、表面に加飾性の成形体を導入することも求められる。特に近年、環境負荷を低減し、また、資源の枯渇を心配しなくてよい原料での強化材が強く望まれている。
これまで、発明者らは、車両用材料としての外装部品に対して種々検討を行った結果、母材である樹脂に、充填材である強化材を良分散化できる複合材料の開発が重要であることが分かった。また、バックドアなどの車両用外装部品において、アウターパネル(例えば、鋼製)とインナーパネル(例えば、樹脂製)とが異なった素材であると、剛性差によって突き抜けなどの問題が発生することから、この剛性差を極力小さくすることが重要であることが分かった。更に、外装部品の塗装を簡略化するために、素材の着色が容易であることも重要であることが分かった。
ここで、セルロースは微小なサイズにまで微細化することで機械特性が上昇し、ナノサイズまで微細化を進めると、極めて高弾性率かつ高強度な材料となることが知られている。そこで、セルロースを樹脂の強化材として利用する研究が行われ、その可能性が注目されている。
このようなセルロース系微細繊維と熱可塑性樹脂からなる複合樹脂の製造方法としては、最初に植物繊維を解繊(ミクロフィブリル化)し、このミクロフィブリル化された植物繊維(セルロース系微細繊維)を、分散性と繊維−樹脂間の界面制御を行うために相容化剤や界面補強材を使用して、ポリプロピレンのような熱可塑性樹脂と混合して混練する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このような方法では、少なくとも、植物繊維を解繊(ミクロフィブリル化)する工程と、このミクロフィブリル化された植物繊維(セルロース系微細繊維)を熱可塑性樹脂に混合して複合化する工程を含む。このため、手順が煩雑になり、製造コストが高くなることに加え、熱可塑性樹脂に混練する際に再凝集しやすく、そのコントロールが難しいのが実態である。
また近年、植物繊維を化学処理して表面を変性した後、この変性植物繊維と熱可塑性樹脂を加工機で混練するという方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法は、加工機内で、変性植物繊維を熱可塑性樹脂と一緒に混練しながら、植物繊維の微細化を促す方法である。
しかしながら、このような方法も、化学処理の工程において、植物繊維を一度膨潤させてから化学物質を作用させ、乾燥させた後に加工機内に投入するため、上記の方法よりも改善されてはいるものの、手順が煩雑であり、コスト低減に限界があった。
米国特許出願公開第2008/0146701号明細書 国際公開第2013/133093号パンフレット
本発明は、従来の材料を用いた車両用外装部品における問題に鑑み、セルロースが熱可塑性樹脂中で微細化されることで、軽量化と高剛性の両立を可能とした車両用外装部品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂に、該熱可塑性樹脂の1種としてポリマー分子鎖中に酸無水物の分子構造を含む基およびアシル化セルロース構造を含む基から選択される少なくとも1種の基を有する樹脂を含有させることで、植物由来の繊維が微細化され、さらに、ここにイオン物質を共存させることで、植物由来の繊維の微細化が更に促進されるという知見を得た。その結果、母材である熱可塑性樹脂内で、充填材であるセルロースを微細化することができ、これにより、微細化されたセルロースと熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物で成形された樹脂部を備える車両用外装部品が得られることを見出した。
すなわち、本発明の要旨構成は以下の通りである。
[1]熱可塑性合成樹脂およびセルロース成分を含有し、該熱可塑性合成樹脂の少なくとも1種が、ポリマー分子中に、酸無水物の部分構造を含む基およびアシル化セルロース構造を含む基から選択される少なくとも1種の基を有する樹脂である熱可塑性樹脂組成物で形成された樹脂部を備える車両用外装部品。
[2]イオン化合物を含有し、該イオン化合物の含有量が、前記セルロースの含有質量の0.001倍以上1.000倍未満である上記[1]に記載の車両用外装部品。
[3]前記イオン化合物が、下記一般式(1)または(2)で表される上記[2]に記載の車両用外装部品。
Figure 2019064403
一般式(1)および(2)において、Zは=C(Ra)−または=N−を示す。ここで、Raは水素原子または置換基を示す。Lは2価の連結基を示す。R〜Rは各々独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を示す。R〜Rの少なくとも2つが互いに結合して環を形成してもよい。Xはアニオンを示す。
[4]前記一般式(1)または(2)で表される化合物が、下記一般式(1a)、(1b)、(2a)〜(2c)のいずれかで表される上記[3]に記載の車両用外装部品。
Figure 2019064403
一般式(1a)、(1b)、(2a)〜(2c)において、R、RおよびXは、前記一般式(1)または(2)におけるR、RおよびXと同義である。R11およびR12は各々独立に置換基を示す。n11は0〜3の整数であり、n12は0〜5の整数である。ここで、R11が2以上のとき、複数のR11は互いに同一でも異なってもよい。また、少なくとも2つのR11が互いに結合して環を形成してもよい。
13〜R15は各々独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を示す。ただし、R、R13〜R15の少なくとも2つが互いに結合して環を形成することはない。R21はRと同義である。Zは単結合、メチレン基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−SO−、−N(Rα1)−または−N(Rα1)(Rα2)−を示し、Rα1は水素原子または置換基を示し、Rα2は置換基を示す。ここで、Rα1とRα2が互いに結合して環を形成してもよい。
[5]前記Xが、ハロゲンイオン、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、リン酸アニオン、ホスホン酸アニオン、ジシアナミドイオンまたはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンである上記[3]または[4]に記載の車両用外装部品。
[6]前記セルロースが、植物由来の繊維のセルロースである上記[1]〜[5]のいずれかに記載の車両用外装部品。
[7]前記セルロースの含有量が、前記熱可塑性合成樹脂100質量部に対して、1〜100質量部である上記[1]〜[6]のいずれかに記載の車両用外装部品。
[8]前記ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂の含有量が、前記熱可塑性合成樹脂中、1〜50質量%である上記[1]〜[7]のいずれかに記載の車両用外装部品。
[9]前記熱可塑性樹脂組成物に含まれるセルロースの見かけの弾性率(Ef)が、前記イオン化合物または前記ポリマー分子中に酸無水物を含む基を有する樹脂を含有しない熱可塑性樹脂組成物に含まれるセルロースの見かけの弾性率(Ef)に対して、1.1倍以上である上記[1]〜[8]のいずれかに記載の車両用外装部品。
[10]フェンダー、バックドア又はスポイラーである上記[1]〜[9]のいずれかに記載の車両用外装部品。
[11]前記バックドアは、インナーパネル及びアウターパネルを有し、
前記インナーパネル及び前記アウターパネルの一方又は双方が、前記熱可塑性樹脂組成物で形成されている上記[10]に記載の車両用外装部品。
本発明によれば、微細化されたセルロースを含有する熱可塑性樹脂組成物で成形された樹脂部を備える車両用外装部品を提供することができる。
すなわち、単に、植物由来のセルロースと熱可塑性樹脂中で混練することで、その混練工程内においてパルプの微細化を進行させることができる。このため、予め植物由来のセルロースを微細化する工程が不要となり、製造コストの大幅な低減が期待できる。しかも、微細化されたセルロースにより弾性率が上昇するため、車両用外装部品の強化効率を高めることができる。
また、車両用外装部品として、特に、フェンダー、バックドア又はスポイラーが上記熱可塑性樹脂組成物で成形されていることで、車両の安全性、品質を向上しつつ、車両の燃費を向上することができ、化石燃料などの資源を節約することができる。また、車両用外装部品の薄肉化を実現できると共に、廃棄時の焼却灰の低減なども期待できる。
また、本発明によれば、軽量化と剛性の両立が可能であり、室温での線熱膨張率が低く、かつ高温での流動性に優れ、更には外観および着色性に優れた車両用外装部品を提供することができる。
特に、上記熱可塑性樹脂組成物は、線熱膨張係数が小さく、異方性も小さいので、安定した複合材料として使用できる。このため、インナーパネルとアウターパネルとを有するバックドアなどの車両用外装部品である場合、インナーパネルとアウターパネルの双方を同じ素材で容易に製造でき、剛性差による突き抜けなどの発生を防止することができる。また、インナーパネルとアウターパネルとの双方を上記熱可塑性樹脂組成物で一体成形することも可能となり、車両の部品点数を削減して、組立工数を低減することができる。
また、上記熱可塑性樹脂組成物を使用して形成された車両用外装部品は、表面が滑らかで手触りがよく、樹脂への着色性も優れ、塗装の簡略化を実現することができる。加えて、植物由来の繊維をマイクロオーダー、好ましくはナノオーダーまで微細化して得られるセルロースを熱可塑性樹脂の強化材として使用するので、環境負荷の低減が可能であると共に、資源を有効活用することができる。
本発明の実施形態に係る車両用外装部品を備える車両の一例を示す模式図である。
本発明の実施形態に係る車両用外装部品は、熱可塑性合成樹脂およびセルロース成分を含有し、該熱可塑性合成樹脂の少なくとも1種が、ポリマー分子中に、酸無水物の部分構造を含む基およびアシル化セルロース構造を含む基から選択される少なくとも1種の基を有する樹脂である熱可塑性樹脂組成物で形成された樹脂部を備える。
<<熱可塑性樹脂組成物>>
本実施形態に係る車両用外装部品に使用される熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも、熱可塑性合成樹脂およびセルロースを含有する。以下、熱可塑性樹脂組成物の構成要素を、熱可塑性合成樹脂から順に、説明する。
<熱可塑性合成樹脂>
本発明では、ベース樹脂が熱可塑性合成樹脂であり、このうちの少なくとも1種が、ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂である。
なお、ベース樹脂とは、熱可塑性樹脂組成物中に含有する熱可塑性合成樹脂の中で最も含有量の多い樹脂成分である。ここで、セルロースは合成樹脂でないことから、熱可塑性合成樹脂には含まれない。
本発明で使用する、ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂を含む熱可塑性合成樹脂は、特に限定されるものではなく、一般的に熱可塑性合成樹脂として使用されているものであればどのような合成樹脂でも構わない。
これは、以下に説明する理由による。
本発明では、以後に説明するように、セルロースを熱可塑性合成樹脂中で混練することで、セルロースの微細化を実現するものである。
このため、セルロースと混合する際の熱可塑性合成樹脂の粘度が重要な特性となる。
すなわち、熱可塑性合成樹脂中に存在するセルロース(イオン化合物を添加する場合はイオン化合物を含む)の分散体がせん断場で感じる応力(Fh)は、簡易的に下記式(1.1)で表現される。
Figure 2019064403
なお、上記式(1.1)において・付きγを、以下では、単にγとして説明する。
上記分散体がせん断場で感じる応力(Fh)は、γのせん断速度を持つ粘度ηの熱可塑性合成樹脂内で、半径Rの球形フィラーが感じる力を表している。
ただし、熱可塑性合成樹脂中に存在するセルロースは球状ではなく繊維状であるため、このままの式を適用できないが、原理的には同じことであり、上記分散体がせん断場で感じる応力(Fh)に影響するパラメーター(η、γ、R)も同じであると考えられる。
従って、セルロースを微細化するためには、熱可塑性合成樹脂内のせん断場で、いかに大きな力をかけられるかが重要であるため、ηもしくはγが大きいほど有利になると考えられる。
ここで、せん断速度(γ)を速くするということは、機械的に熱可塑性合成樹脂にかけるせん断速度を速くするということを意味する。
従って、せん断速度(γ)を速くすると、セルロースが熱可塑性合成樹脂内で感じる力は大きくなるが、混練による摩擦力も同時に大きくなり、熱可塑性合成樹脂の温度が上昇することになる。
しかしながら、一般的にセルロースは200℃を超えると変色し、300℃近くから熱分解してしまう性質を持つため、温度を極端に上げてしまうようなせん断場に晒す方法は、材料としての特性を維持する観点から適切ではない。
このことから、セルロースの微細化のためには、熱可塑性合成樹脂の粘度(η)を高めることが重要となる。
一般的に熱可塑性合成樹脂の粘度(η)は、次のような関係(アンドレードの式)を満たす。
Figure 2019064403
ここで、Aは比例定数であり、Evは流動活性化エネルギーであり、Rは気体定数であり、Tは温度(K)である。流動活性化エネルギーは、アレニウスの化学反応における活性化エネルギーに相当するもので、流動を速度過程と見なすことで理解される。
従って、粘度(η)を制御するために重要なパラメーターは、温度である。
温度は、熱可塑性合成樹脂の種類に関わらず、加工温度として操作、調整することが可能である。
従って、セルロースを微細化するのに必要な力を与える媒体としての熱可塑性合成樹脂は、特に種類の制約を受けることなく、広く適用可能なものである。
〔ベース樹脂〕
ベース樹脂は、熱可塑性樹脂組成物中に含有する熱可塑性合成樹脂の中で最も含有量の多い樹脂成分であり、少なくともポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂と同質量以上含有する。なお、ベース樹脂は、本発明では、ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂以外の熱可塑性合成樹脂である。
ベース樹脂の熱可塑性合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、セルロースアシレート樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられる。
このうち、本発明では、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
<ポリオレフィン樹脂>
ポリオレフィン樹脂は、少なくとも1種のオレフィンを重合してなるポリオレフィン樹脂であり、単独重合体であっても共重合体であっても構わない。
このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、イソブテン(1−ブテン)を含む炭素原子数4〜12のα−オレフィン、ブタジエン、イソプレン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。
なお、炭素原子数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ポリイソブテン樹脂、ポリイソプレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、(メタ)アクリル樹脂(いわゆるアリル樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル樹脂、ポリ(メタ)アクリルアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
これらの樹脂のうち、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)が好ましく、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂がなかでも好ましい。
ポリエチレン樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体などが挙げられる。
なお、密度もしくは形状で分類した場合、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)のいずれでも構わない。
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレンブロック共重合体(プロピレン単独重合体成分または主にプロピレンからなる共重合体成分と、エチレンおよびα−オレフィンから選択されるモノマーの少なくとも1種とプロピレンとを共重合して得られる共重合体とからなる)などが挙げられる。これらのポリプロピレン樹脂は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
ポリプロピレン樹脂に用いられるα−オレフィンは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンが好ましく、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンがより好ましい。
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム共重合体などが挙げられる。
プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体などが挙げられる。
プロピレンブロック共重合体としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体などが挙げられる。
これらのポリプロピレン樹脂のうち、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレンブロック共重合体が好ましい。
ポリプロピレン樹脂の結晶性は、融解温度(融点)や立体規則性で求められ、本発明のポリオレフィン樹脂組成物に求められる品質や、それを成形して得られる成形品に求められる品質に応じて、調整する。
なお、立体規則性はアイソタクチックインデックス、シンジオタクチックインデックスと称される。
アイソタクチックインデックスは、Macromolecules,第8巻,687頁(1975年)に記載の13C−NMR法で求められる。具体的には13C−NMRスペクトルのメチル基の炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率として、ポリプロピレン樹脂のアイソタクチックインデックスを求める。
アイソタクチックインデックスが高いものは、結晶性が高く、0.96以上が好ましく、0.97以上がより好ましく、0.98以上がさらに好ましい。
一方、シンジオタクチックインデックスは、J.Am.Chem.Soc.,110,6255(1988)やAngew.Chem.Int.Ed.Engl.,1955,34,1143−1170に記載の方法で求められ、シンジオタクチックインデックスが高いものが、結晶性が高い。
ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂[塩化ビニルモノマーの単独重合体(ポリ塩化ビニル樹脂など)、塩化ビニル単量体と他の単量体との共重合体(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)など]、ビニルアルコール樹脂(ポリビニルアルコールなどの単独重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの共重合体など)、ポリビニルホルマールなどのポリビニルアセタール樹脂などが挙げられる。これらのビニル樹脂は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、通常、0.01〜400g/10分であり、機械的強度や生産安定性を高めるという観点から、好ましくは0.1〜400g/10分であり、より好ましくは0.5〜200g/10分である。
なお、MFRは、特段の断りがない限り、JIS K 7210に準拠し、190℃、2.16kg荷重下で10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)である。
〔ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂〕
ポリマー分子中、すなわち分子鎖中に酸無水物の部分構造を含む基とは、酸無水物の水素原子の少なくとも1つを結合手(−)に置き換えた基である。酸無水物は、鎖状の酸無水物でも環状の酸無水物でも構わない。また混合酸無水物でも構わない。
本発明では、ポリマー分子鎖中に、上記基が化学結合により、組み込まれている。
酸無水物の部分構造を含む基が、酸無水物の水素原子の1つを結合手(−)に置き換えた基の場合、以下の一般式(Aanh−1)で表される基が好ましい。
Figure 2019064403
一般式(Aanh−1)において、Lsは単結合または連結基を表し、Rsは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を示す。ここで、RsとLsが互いに結合して環を形成してもよい。
Lsにおける連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価のヘテロ環基、−C(=O)−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−N(Rsa)−、またはこれらの基が組み合わされた基が好ましい。ここで、Rsaは水素原子または置換基を示す。
アルキレン基の炭素数は1〜12が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。例えば、メチレン、エチレン、イソプロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレンが挙げられる。アルキレン基は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
アルケニレン基の炭素数は2〜12が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。例えば、ビニレン、プロピニレン、4−プロピル−2−ペンテニレンが挙げられる。アルケニレン基は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
アルキニレン基の炭素数は2〜12が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。例えば、エチニレン、エチニレンメチレン、メチレンエチニレンメチレンが挙げられる。アルキニレン基は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
シクロアルキレン基の炭素数は3〜12が好ましく、3〜8がより好ましい。シクロアルキレン基の環員数は3〜7が好ましく、3、5または6がより好ましく、5または6がさらに好ましい。例えば、シクロプロピレン、シクロペンチレン、シクロへキシレンが挙げられる。シクロアルキレン基は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
シクロアルケニレン基の炭素数は5〜12が好ましく、5〜8がより好ましい。シクロアルケニレン基の環員数は5〜7が好ましく、5または6がより好ましい。例えば、シクロペンテニレン、シクロへキセニレンが挙げられる。シクロアルケニレン基は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
アリーレン基の炭素数は6〜12が好ましく、6〜8がより好ましい。例えば、フェニレン、ナフチレンが挙げられる。アリーレン基は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
2価のヘテロ環基の炭素数は、0〜12が好ましく、1〜8がより好ましい。
2価のヘテロ環基の環員数およびヘテロ環基のヘテロ環は、後述のRaと同じであり、好ましい範囲も同じである。2価のヘテロ環基は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
Rsaにおける置換基は、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
Rsaは水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロ環基が好ましい。
アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価のヘテロ環基、−C(=O)−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−N(Rsa)−が組み合わされた基は、例えば、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−N(Rsa)−C(=O)−、−C(=O)−N(Rsa)−、−N(Rsa)−SO−、−SO−N(Rsa)−、アルキレン−O−、−O−アルキレン、アルキレン−O−アルキレン、アルキレン−S−、−S−アルキレン、アルキレン−S−アルキレン、アリーレン−アルキレン、アルキレン−アリーレン、−O−アリーレン、アリーレン−O−が挙げられる。
Rsにおけるアルキル基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ドデシルが挙げられる。Rsにおけるアルキル基は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
Rsにおけるアルケニル基の炭素数は、2〜12が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル、2−ペンテニルが挙げられる。Rsにおけるアルケニル基は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
Rsにおけるアルキニル基の炭素数は、2〜12が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。例えば、エチニル、2−プロピニル、2−ペンテン−4−イニルが挙げられる。Rsにおけるアルキニル基は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
Rsにおけるシクロアルキル基の炭素数は3〜12が好ましく、3〜8がより好ましい。シクロアルキル基の環員数は3〜7が好ましく、3、5または6がより好ましく、5または6がさらに好ましい。例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロへキシルが挙げられる。Rsにおけるシクロアルキル基は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
Rsにおけるシクロアルケニル基の炭素数は5〜12が好ましく、5〜8がより好ましい。シクロアルケニル基の環員数は5〜7が好ましく、5または6がより好ましい。例えば、シクロペンテニル、シクロへキセニルが挙げられる。Rsにおけるシクロアルケニル基は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
Rsにおけるアリール基の炭素数は6〜12が好ましく、6〜8がより好ましい。例えば、フェニル、ナフチルが挙げられる。Rsにおけるアリール基は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
Rsにおけるヘテロ環基の炭素数は、0〜12が好ましく、1〜8がより好ましい。
ヘテロ環基の環員数およびヘテロ環基のヘテロ環は、後述のRaと同じであり、好ましい範囲も同じである。Rsにおけるヘテロ環基は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
RsとLsが互いに結合して形成する環は、飽和炭素環、不飽和炭素環、芳香族炭素環、ヘテロ環のいずれでも構わない。また、形成される環の環員数は、3〜7が好ましく、5または6がより好ましく、5がさらに好ましい。
RsとLsが互いに結合して形成する環は、例えば、2,5−ジオキソテトラヒドロフラン環(無水マレイン酸環)、2,5−ジオキソベンゾテトラヒドロフラン環(無水フタル酸環)、2,6−ジオキソテトラヒドロピラン環、2,6−ジオキソ−1,4−ジオキサン環、2,6−ジオキソモルホリン環、2,6−ジオキソチオモルホリン環が挙げられる。
形成される環は、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
一般式(Aanh−1)で表される基は、1価の基であり、ポリマーの側鎖または末端に有する。
ここで、ポリマー側鎖とは、ポリマーの主鎖を構成する原子に結合することを意味する。
本発明では、RsとLsが互いに結合して環を形成する場合が好ましく、この場合、形成された環の環構成原子とポリマーの主鎖を構成する原子とが直結する場合が最も好ましい。
ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基が、酸無水物の水素原子の少なくとも2つを結合手(−)に置き換えた基である場合も好ましい。
酸無水物の水素原子の少なくとも2つを結合手(−)に置き換えた基である場合、酸無水物の環か、ポリマーの主鎖を構成する原子として組み込まれるのが好ましい。
なかでも、ポリマー主鎖に下記一般式(Aanh−2)で表される単位で組み込まれるのが好ましい。
Figure 2019064403
一般式(Aanh−2)において、RtおよびRtは各々独立に水素原子または置換基を示す。ここで、RtとRtが互いに結合して環を形成してもよい。
RtおよびRtにおける置換基は、後述のRaで挙げた置換基が挙げられる。
RtおよびRtは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基が好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基がより好ましく、水素原子、アルキル基がさらに好ましい。
RtおよびRtにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基は、Rsにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同じである。また、これらは、置換基を有してもよく、このような置換基としては、後述のRaにおける置換基が挙げられる。
RtとRtが互いに結合して形成する環は、5〜7員環が好ましく、5または6員環がより好ましい。また、炭素環が好ましい。なかでも、シクロペンタン環、シクロヘキサン環が好ましい。
ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂は、不飽和カルボン酸無水物で酸変性された、いわゆる、不飽和カルボン酸無水物変性樹脂が好ましい。
不飽和カルボン酸無水物変性熱可塑性合成樹脂は、前記のベース樹脂の不飽和カルボン酸無水物変性樹脂、すなわち、前記のベース樹脂を不飽和カルボン酸無水物で変性した樹脂が好ましく、前記のポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸無水物で変性した不飽和カルボン酸無水物変性ポリオレフィン樹脂がより好ましい。
不飽和カルボン酸無水物による変性は、グラフト変性であっても、ポリマー主鎖に繰り返し単位として組み込まれてもよい。
なお、変性の段階、すなわち、合成段階で一部が加水分解したものを含んでも構わない。
不飽和カルボン酸無水物のうち、環状の酸無水物としては、例えば、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物(メチルマレイン酸無水物)、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、2−(2−カルボキシエチル)−3−メチルマレイン酸無水物、2−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、フェニルマレイン酸無水物、2,3−ジフェニルマレイン酸無水物、5,6−ジヒドロ−1,4−ジチイン−2,3−ジカルボン酸無水物、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイン酸無水物などのマレイン酸骨格の酸無水物、4−エチニルフタル酸無水物、4,4’−(エチン−1,2−ジイル)ジフタル酸無水物、4−(1−プロピニル)フタル酸無水物、4−フェニルエチニルフタル酸無水物などのフタル酸骨格の酸無水物が挙げられる。
不飽和カルボン酸無水物のうち、鎖状の酸無水物としては、例えば、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸の各酸無水物、および、これらの不飽和カルボン酸と飽和脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、ヘテロ環カルボン酸との混合酸無水物が挙げられる。
本発明では、環状の不飽和カルボン酸無水物が好ましく、マレイン酸骨格の酸無水物がより好ましく、マレイン酸無水物がさらに好ましい。
無水マレイン酸変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリスチレンが好ましいが、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンがより好ましい。
なお、エチレン、プロピレンおよびスチレンから選択される2種の共重合体の無水マレイン酸変性共重合体も好ましい。
無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンとしては、無水マレイン酸変性のエチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性のエチレン−α−オレフィン共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体など)、無水マレイン酸を含む基を有するスチレン/エチレン/ブチレン/スチレン(SEBS)が挙げられる。また、グラフトもしくは共重合される極性基として無水マレイン酸のみでなく、極性基〔アルキレングリコール系、(メタ)アクリル酸系のモノマー成分〕を含有していてもよい。
この中でも特に好ましいのは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンまたはそれらの共重合体)、無水マレイン酸変性のエチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性のエチレン−α−オレフィン共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体など)、無水マレイン酸を含む基を有するスチレン/エチレン/ブチレン/スチレン(SEBS)である。
ここで、不飽和カルボン酸無水物変性の変性方法(合成方法)は特に限定されない。グラフト押出や、溶液系のグラフト重合でもよく、コモノマーとしてスチレンを含有していてもよい。極性基の導入に、共重合反応による合成工程を経ていてもよい。
ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂の含有量は、熱可塑性合成樹脂中、1〜50質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。
酸無水物構造の−C(=O)−O−C(=O)−は、極性が高く、親水性が強く、同様に親水性を持つポリマー分子と双極子相互作用、水素結合相互作用により、親水性を持つポリマー分子表面との密着性に優れる。また、特に、親水性を持つポリマー分子の親水表面に水酸基(−OH)が存在する場合には、部分的にエステル反応にて共有結合を形成し、より強固な密着性を示す。
本発明においては、セルロース繊維は、繊維の表面が親水性であるため、ここに、ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂が作用し、マトリックス樹脂(ベース樹脂を含む熱可塑性合成樹脂)とセルロースとの密着性を向上させると考えられる。
この現象が起きると、熱可塑性合成樹脂全体としては粘度が上がる方向に作用する。これを、前述の熱可塑性合成樹脂で説明した、せん断場で感じる応力(Fh)の式(1.1)およびこれに関係する式(1.2)に当てはめて考えると、せん断場の中でセルロースが感じる力がより大きくなる方向に作用することになる。
すなわち、ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂を含有させることで、せん断場内でセルロースに掛かる力を強めることができる。これによりセルロースの微細化が促進され、結果的に見かけのセルロースの弾性率が向上するものと推測される。
(熱可塑性樹脂組成物に含まれるセルロースの見かけの弾性率)
本発明では、熱可塑性樹脂組成物に含まれるセルロースの見かけの弾性率(Ef)が、イオン化合物またはポリマー分子中に酸無水物を含む基を有する樹脂を含有しない熱可塑性樹脂組成物に含まれるセルロースの見かけの弾性率(Ef)に対して、1.1倍以上であるのが好ましい。
この倍率(Ef/Ef)は、高いほど好ましく、1.2倍以上がより好ましく、1.3倍以上がさらに好ましく、1.4倍以上が特に好ましく、1.5倍以上が最も好ましい。また、上限は、15倍以下が現実的である。
なお、熱可塑性樹脂組成物に含まれるセルロースの見かけの弾性率は、以下のようにして測定できる。
セルロース強化熱可塑性樹脂組成物を用いて、射出成形し、曲げ試験片(厚み4mm×長さ80mm)を作製する。なお、射出条件は、一般的に適切とされる成形条件で実施する。
曲げ弾性率は、JIS K 7171に従い算出する。密度は、JIS K 7112に準拠して求めるが、測定溶媒は水ではなくエタノールを使用する。
得られた密度から、合成樹脂およびセルロースの各成分について体積分率を算出する。
ここで、合成樹脂のみの密度および弾性率は、別途JIS K 7112およびJIS K 7171にて算出する。
セルロースの見かけの弾性率Efは、下記式(2.1)を変形した式(2.2)から求められる。
なお、Emは、通常、マトリックス樹脂が単一系の場合もしくは、実質的に単一系と見なせる場合は下記式(3.1)で求める。
本発明では、マトリックス樹脂が少なくとも2種であるため、複合則に基づく下記式(4.1)から式(4.2)であるとして求める。
この弾性率をEfとする。
Figure 2019064403
ここで、Ecは複合材料である曲げ試験片のヤング率(弾性率)であり、Emは母材である熱可塑性合成樹脂のヤング率(弾性率)であり、Efは繊維であるセルロースのヤング率(弾性率)である。
Vmは母材である熱可塑性合成樹脂の体積率であり、Vfは繊維であるセルロースの体積率である。これらの体積率は、密度から求められる。
一方、マトリックス樹脂が単一系の場合もしくは、実質的に単一系と見なせる場合は複合材料の体積率が1であることから、下記式(3.1)で求められる。
Figure 2019064403
マトリックス樹脂が単一系と見なせない場合(2種類以上の混合物であり、その混合量から弾性率にも大幅な影響を与えていると考えられる場合)は、マトリックス樹脂の中でも複合則に従っているとして、下記式(4.1)から各成分の弾性率を規定した上で、最終的に上記式(2.2)でセルロースの見かけの弾性率を求める。
ここで、各成分のVpの総和は1、すなわち下記式(4.2)を満たす。
Figure 2019064403
ここで、各成分は、Epは成分pのヤング率(弾性率)であり、Vpは成分pの体積率であり、密度から求める。なお、成分は1〜n存在し、nは存在する成分数の最大値である。
一方、上記の熱可塑性樹脂組成物から、酸変性熱可塑性合成樹脂とイオン化合物を除いた熱可塑性樹脂組成物(いずれか一方しか存在しない場合は、存在する酸変性熱可塑性合成樹脂またはイオン化合物を除く)も同様にして、セルロースの見かけの弾性率Efを求める。この場合の弾性率をEfとする。
上記で得られた各弾性率、EfおよびEfをもとに、Efに対するEfの倍率(Ef/Ef)を求める。
<セルロース>
本発明で使用するセルロースは、繊維状のセルロースであり、植物由来の繊維状のセルロースが好ましく、特に、微細な植物由来の繊維状のセルロース(粉状パルプ)が好ましい。
パルプは、紙の原料ともなるもので、植物から抽出される仮道管を主成分とする。化学的に見ると、主成分は多糖類であり、その主成分はセルロースである。
植物由来の繊維状のセルロースは、特に限定されるものではないが、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農作物残廃物(例えば、麦や稲などの藁、とうもろこし、綿花などの茎、サトウキビ)、布、再生パルプ、古紙などの植物に由来のものが挙げられるが、本発明では、木材もしくは木材由来のものが好ましく、クラフトパルプが特に好ましい。
なお、クラフトパルプは、木材もしくは植物原料から、苛性ソーダなどの化学処理によって、リグニン・ヘミセルロースを除去し、純粋に近いセルロースを取り出したパルプの総称である。
本発明では、このようなセルロースに対し、熱可塑性合成樹脂中で混練することで、セルロースの微細化を実現するものである。
植物由来の繊維状のセルロースは、30〜40分子が束となり、直径約3nm、長さは数百nmから数十μmの超極細幅で高結晶性のミクロフィブリルを形成し、これらが軟質な非結晶部を介しながら束となった構造を形成している。本発明の原料として使用する粉末状セルロース(粉状パルプ)は、この束状の集合体である。なお、ミクロフィブリルは、構成するセルロース分子鎖が伸びきり鎖結晶となっていることにより、極めて弾性率が高く、理想的には140GPa程度の弾性率を有すると言われている。また、セルロースの弾性率は、線径が小さくなるに従い上昇していくことが知られている。従って、強化樹脂としての性能を向上するためには、熱可塑性合成樹脂中に分散しているセルロースが細径化・微細化しているほど効果的である。
本発明では、微細化されたセルロースは、棒状繊維のセルロースが好ましい。棒状繊維の形態は特に限定されず、真っ直ぐな繊維や折れ曲がった繊維を挙げることができる。
セルロースの短辺長(直径)は2μm以下が好ましく、3nm〜2μmがより好ましく、3nm〜1μmがより好ましく、3nm〜0.5μmがさらに好ましく、4〜300nmが特に好ましい。一方、長辺長(長さ)は、0.03〜500μmが好ましく、0.05〜200μmがより好ましい。アスペクト比は5以上が好ましく、10〜1000がより好ましい。なお、アスペクト比は平均長さを平均繊維径で割った値である。
また、本発明では、微細化されたセルロースは、含有するセルロースの15%以上が短辺長2μm以下であることが好ましい。短辺長2μm以下のセルロース繊維の含有量は20%以上がより好ましく、25%以上がさらに好ましい。
本発明では、セルロースの含有量は、熱可塑性合成樹脂100質量部に対し、1〜100質量部が好ましく、5〜70質量部がより好ましく、10〜50質量部がさらに好ましい。
セルロースの含有量が1質量部未満であると、混練中にセルロースに対する力の伝達が効果的に起こらず、実質的に微細化したセルロースを得ることが難しい。逆に、100質量部を超えると、熱可塑性合成樹脂中でのセルロースの良分散化が困難になり、材料として使用するのに良好な特性を得ることができない。
<イオン化合物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、セルロースとともに、イオン化合物を含有してもよい。
本発明で使用するイオン化合物は、一般に、イオン液体と称されるものが好ましい。
イオン液体は、幅広い温度範囲で液体として存在する塩であり、イオンのみからなる液体である。一般に100℃以下の融点を有する塩がイオン液体(IL)と定義され、室温付近に融点を有するイオン液体を、「RTIL(room temperature IL)」と称す。
本発明で使用するイオン化合物は、一般に、イオン液体と称されるものが好ましいが、融点は100℃を超えても、例えば、150℃以上でも構わない。
すなわち、本発明では、セルロース強化樹脂もしくはセルロース強化樹脂組成物を押出し、射出などにより加工、成形する段階で、加工機内で混練することで、セルロースを微細化するため、加工工程、加工機内の温度をイオン化合物の融点以上に設定することができる。従って、例えば、イオン化合物の融点が180℃であったとしても、180℃より高い温度、例えば、190℃で加工することで、いわゆるイオン液体と同じ作用が期待できる。
本発明では、イオン化合物は、有機のイオン化合物が好ましく、第四級ホスホニウム塩、第四級アンモニウム塩などのオニウム塩が好ましく、この中でも、下記一般式(1)または(2)で表される化合物が好ましい。
Figure 2019064403
一般式(1)および(2)において、Zは=C(Ra)−または=N−を示す。ここで、Raは水素原子または置換基を示す。Lは2価の連結基を示す。R〜Rは各々独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を示す。R〜Rの少なくとも2つが互いに結合して環を形成してもよい。X−はアニオンを示す。
は=C(Ra)−または=N−であるが、=C(Ra)−が好ましい。
Raにおける置換基は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。
アルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましい。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、n−ペンチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシルが挙げられる。
アルキル基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙られる。
アルケニル基の炭素数は、2〜20が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜8がさらに好ましい。
アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、オレイルが挙げられる。
アルケニル基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
シクロアルキル基は、3〜7員環のシクロアルキル基が好ましく、3、5または7員環のシクロアルキル基がより好ましく、5または6員環のシクロアルキル基がさらに好ましい。
シクロアルキル基の炭素数は、3〜20が好ましく、3〜12がより好ましく、5〜12がさらに好ましく、5〜8が特に好ましい。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。
シクロアルキル基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
アリール基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜12がより好ましく、6〜8がさらに好ましい。
アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチルが挙げられる。
アリール基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
ヘテロ環基のヘテロ環は、該ヘテロ環を構成するヘテロ原子が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選択され、5または7員環のヘテロ環が好ましい。また、該ヘテロ環は、芳香環であっても、不飽和環であっても、飽和環であっても構わない。
ヘテロ環基の炭素数は、0〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましい。
ヘテロ環基のヘテロ環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、インドリン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロチオフェン環、ピロリジン環、メピロリジン環、イミダゾリジン環、イミダゾリン環、ピラゾジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、1,1−ジオキソチオモルホリン環、1−オキソモルホリン環、キヌクリジン環、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン環、シアヌル酸環などが挙げられる。
また、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環のように、ベンゼン環や他の環で縮環したものも挙げられる。
ヘテロ環基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
アルコキシ基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、t−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、n−ペンチルオキシ、n−オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、n−オクチルオキシ、n−デシルオキシ、n−ドデシルオキシ、n−ヘキサデシルオキシ、n−オクタデシルオキシが挙げられる。
アルコキシ基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
アリールオキシ基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜12がより好ましく、6〜8がさらに好ましい。
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ、ナフトキシが挙げられる。
アリールオキシ基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
アルキルチオ基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましい。
アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、イソブチルチオ、t−ブチルチオ、n−ペンチルオチオ、t−ペンチルチオ、n−ヘキシルチオ、n−ペンチルチオ、n−オクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ、n−オクチルチオ、n−デシルチオ、n−ドデシルチオ、n−ヘキサデシルチオ、n−オクタデシルチオが挙げられる。
アルキルチオ基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
アリールチオ基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜12がより好ましく、6〜8がさらに好ましい。
アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ、ナフチルチオが挙げられる。
アリールチオ基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
アミノ基は、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、アミノ基の炭素数は、0〜20が好ましく、0〜12がより好ましく、1〜12がさらに好ましく、1〜8が特に好ましい。
アミノ基としては、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、イソプロピルアミノ、ジn−プロピルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、n−オクチルアミノ、ドデシルアミノ、フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、フェニルメチルアミノが挙げられる。
アミノ基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
アシル基は、ホルミル基、アルカノイル基、アシクロアルカノイル基、アルケノイル基、アリーロイル基、ヘテロ環カルボニル基を含む。
アシル基の炭素数は、1〜20が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜8がさらに好ましい。
アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、ピバロイル、ラウロイル、パルミトイル、ステアロイル、シクロプロピルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル、アクリロイル、メタクリロイル、オレイル、ベンゾイル、ナフトイル、ニコチノイル、イソニコチノイルが挙げられる。
アシル基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
アシルアミノ基は、上記アシル基が窒素原子に置換したアミノ基が挙げられる。アシルアミノ基の炭素数は、1〜20が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜8がさらに好ましい。
アシルアミノ基としては、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチリルアミノ、バレリルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、パルミトイルアミノ、ステアロイルアミノ、シクロプロピルカルボニルアミノ、シクロペンチルカルボニルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、アクリロイルアミノ、メタクリロイルアミノ、オレイルアミノ、ベンゾイルアミノ、ナフトイルアミノ、ニコチノイルアミノ、イソニコチノイルアミノが挙げられる。
アシルアミノ基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
スルホンアミド基は、アルキルスルホンアミド基、シクロアルキルスルホンミド基、アリールスルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基を含む。
スルホンアミド基の炭素数は、1〜20が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜8がさらに好ましい。
スルホンアミド基としては、例えば、メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、プロパンスルホンアミド、オクタンスルホンアミド、シクロペンタンスルホンミド、シクロヘキサンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、ナフタレンスルホンアミドが挙げられる。
スルホンアミド基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
カルバモイル基は、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、シクロアルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、ヘテロ環カルバモイル基を含む。
カルバモイル基の炭素数は、1〜20が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜8がさらに好ましい。
カルバモイル基としては、例えば、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−フェニル−N−メチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−イミダゾリルカルバモイル、ピロリジンカルボニル、ピペリジンカルボニルが挙げられる。
カルバモイル基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
スルファモイル基は、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、シクロアルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、ヘテロ環スルファモイル基を含む。
スルファモイル基の炭素数は、0〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましい。
スルファモイル基としては、例えば、N−メチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル、N−フェニル−N−メチルスルファモイル、N−シクロヘキシルスルファモイル、N−イミダゾリルスルファモイル、ピロリジンスルファモイル、ピペリジンスルファモイルが挙げられる。
スルファモイル基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基の炭素数は、2〜20が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜8がさらに好ましい。
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、t−ペンチルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル、n−ヘキサデシルオキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニルが挙げられる。
アルコキシカルボニル基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
アリールオキシカルボニル基の炭素数は、7〜20が好ましく、7〜12がより好ましい。
アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル、ナフトキシカルボニルが挙げられる。
アリールオキシカルボニル基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
アシルオキシ基は、ホルミルオキシ基、アルカノイルオキシ基、アシクロアルカノイルオキシ基、アルケノイルオキシル基、アリーロイルオキシ基、ヘテロ環カルボニルオキシ基を含む。
アシルオキシ基の炭素数は、1〜20が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜8がさらに好ましい。
アシルオキシ基としては、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、バレリルオキシ、ピバロイルオキシ、ラウロイルオキシ、パルミトイルオキシ、ステアロイルオキシ、シクロプロピルカルボニルオキシ、シクロペンチルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、オレイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ、ニコチノイルオキシ、イソニコチノイルオキシが挙げられる。
アシルオキシ基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
スルホニル基は、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環スルホニル基を含む。
スルホニル基の炭素数は、1〜20が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜8がさらに好ましい。
スルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル、プロパンスルホニル、オクタンスルホニル、シクロペンタンスルホニル、シクロヘキサンスルホニル、ベンゼンスルホニル、ナフタレンスルホニルが挙げられる。
スルホニル基は、置換基を有してもよく、該置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基が好ましく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基がより好ましく、水素原子、アルキル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
は2価の連結基であり、−N(R)=Z−とともに、5または6員の含窒素ヘテロ環を形成する連結基が好ましく、5または6員の含窒素ヘテロ芳香環を形成する連結基がより好ましく、5員環の含窒素ヘテロ芳香環がさらに好ましい。
ここで、形成された上記の含窒素ヘテロ環は、ベンゼン環や他の環で縮環されていてもよく、また、置換基で置換されていてもよい。このような置換基としては、Raにおける置換基が挙げられる。
における2価の連結基は、連結原子が、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子から選択される連結基が好ましい。
における2価の連結基と−N(R)=Z−で形成される環は、例えば、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、1−ピロリジン環、イミダゾリン環、およびこれらのベンゼン縮合体が挙げられる。
〜Rにおけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基は、Raにおけるアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
〜Rの少なくとも2つが互いに結合して形成する環は、5〜7員環が好ましく、5または6員環がより好ましい。また、形成される環は、芳香環でも、不飽和環でも、飽和環でもよいが、飽和環が好ましい。
〜Rの2つが互いに結合して形成する環としては、例えば、ピロリジン環、ピロリン環、ピラゾリジン環、ピラゾリン環、ピロール環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、1,1−ジオキソチオモルホリン環、1−オキソモルホリン環が挙げられる。
〜Rの3つが互いに結合して形成する環としては、例えば、キヌクリジン環、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン環が挙げられる。
一般式(1)または(2)で表される化合物のうち、カチオン(X以外の部分)は、具体的には以下のカチオンが挙げられる。
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムなどの1−アルキル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ペンチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘプチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−オクチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム1−シアノメチル−3−メチルイミダゾリウム、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム、
1−ブチルピリジニウム、1−ヘキシルピリジニウム、N−(3−ヒドロキシプロピル)ピリジニウム、N−ヘキシル−4−ジメチルアミノピリジニウム、N−(メトキシエチル)−N−メチルモルフォリウム、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウム、1−(メトキシエチル)−1−メチルピペリジニウム、N−(メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウム、1,2−ジメチルピラゾリウム、N−(メトキシエチル)−2−メチルオキサゾリウム、N−(メトキシエチル)−2−メチルチアゾリウム、
1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウム、
1,1−ジメチル−2−ヘプチルイミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−(2−ヘプチル)イミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−(3−ヘプチル)イミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−(4−ヘプチル)イミダゾリニウム、1,1−ジメチル−2−ドデシルイミダゾリニウム、1,1−ジメチルイミダゾリニウム、1,1,2−トリメチルイミダゾリニウム、1,1,2,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,1,2,5−テトラメチルイミダゾリニウム、1,1,2,4,5−ペンタメチルイミダゾリニウム、
テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウム、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム、N−エチル−N,N−ジメチル−2−メトキシエチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、
N,N−ビス(2−メトキシエチル)ピロリジニウム、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピロリジニウム、N−メチル−N−2−メトキシエチルピロリジニウム、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)モルホリニウム、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)チオモルホリニウム、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペリジニウム、N,N,N’,N’−テトラ(2−ヒドロキシエチル)ピペラジニウム、N,N−ビス(2−エトキシエチル−1,1−ジオキソチオモルホリニウム、N,N−ビス(2−エトキシエチル−1−オキソチオモルホリニウム、
1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、
1−メチルキヌクリジン、1−エチルキヌクリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)キヌクリジン、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム、5−メチル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネニウム、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム、5−エチル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネニウム。
におけるアニオンは、無機アニオン、有機アニオンのいずれでも構わない。
無機アニオンとしては、ハロゲンイオン(F、Cl、Br、I)、スルホン酸アニオン(HSO 、SO 2−)、リン酸アニオン〔P(=O)(OH)(O)、P(=O)(OH)(O、P(=O)(O〕、ホスホン酸アニオン〔HP(=O)(OH)(O)、HP(=O)(O〕、テトラフルオロボレート(PF )、BF 、AsF 、SbF−、ClO 、AlF 、AlCl 、TaF 、NbF 、SiF 、CN、F(HF)n(nは1〜4の整数)が挙げられる。
有機アニオンとしては、有機のカルボン酸アニオン、有機のスルホン酸アニオン、有機のリン酸アニオン、有機のホスホン酸アニオン、ジシアナミドイオン〔N(CN)〕、有機のイミドイオン、有機のメチドアニオン、有機のリンアニオン、有機ホウ素アニオンが挙げられる。
有機のカルボン酸もしくはスルホン酸アニオンは、脂肪族のカルボン酸もしくはスルホン酸アニオン、芳香族のカルボン酸もしくはスルホン酸アニオン、ヘテロ環のカルボン酸もしくはスルホン酸アニオンのいずれでも構わない。また、ジカルボン酸もしくはジスルホン酸などの多価カルボン酸もしくはスルホン酸のアニオン(多価アニオン)でも構わない。
有機のカルボン酸アニオンの好ましいアニオンは、下記一般式(A1)で表される。
また、有機のスルホン酸アニオンの好ましいアニオンは、下記一般式(A2)で表される。
Figure 2019064403
一般式(A1)、(A2)において、Rbは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を示し、Rcはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を示す。
RbおよびRcにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基およびヘテロ環基は、Raにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基およびヘテロ環基と同義である。また、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基およびヘテロ環基は置換基を有してもよく、このような置換基としては、Raで挙げた置換基が挙げられる。
有機のカルボン酸アニオンとしては、例えば、ギ酸アニオン、酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン、酪酸アニオン、イソ酪酸アニオン、吉草酸アニオン、イソ吉草酸アニオン、ピバル酸アニオン、ラウリン酸アニオン、ミリスチン酸アニオン、パルミチン酸アニオン、ステアリン酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、トリクロロ酢酸アニオン、アミノ酸のアニオン(例えば、グリシン、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、アルギニン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、プロリン、セリン、チロシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、スレオニン、リジンの各アニオン)、アクリル酸アニオン、メタクリル酸アニオン、クロトン酸アニオン、イソクロトン酸アニオン、オレイン酸アニオン、桂皮酸アニオン、シクロプロパンカルボン酸アニオン、シクロペンタンカルボン酸アニオン、シクロヘキサンカルボン酸アニオン、安息香酸アニオン、トルイル酸アニオン、ナフタレンカルボン酸アニオン、ニコチン酸アニオン、イソニコチン酸アニオン、フル酸アニオン、テン酸アニオン、シュウ酸モノもしくはジアニオン、マロン酸モノもしくはジアニオン、コハク酸モノもしくはジアニオン、グルタル酸モノもしくはジアニオン、アジピン酸モノもしくはジアニオン、ピメリン酸モノもしくはジアニオン、スベリン酸モノもしくはジアニオン、アゼライン酸モノもしくはジアニオン、セバシン酸モノもしくはジアニオン、マレイン酸モノもしくはジアニオン、フマル酸モノもしくはジアニオン、シトラコン酸モノもしくはジアニオン、メサコン酸モノもしくはジアニオン、フタル酸モノもしくはジアニオン、テレフタル酸モノもしくはジアニオン、イソフタル酸モノもしくはジアニオン、カンファー酸モノもしくはジアニオン、1,4−ナフタレンジカルボン酸モノもしくはジアニオン、トリメリット酸モノ、ジもしくはトリアニオン、ピロメリット酸モノ〜テトラアニオン、メリット酸モノ〜ヘキサアニオンが挙げられる。
有機のスルホン酸アニオンとしては、例えば、メタンスルホン酸アニオン、エタンスルホン酸アニオン、プロパンスルホン酸アニオン、オクタンスルホン酸アニオン、2−エチルヘキサンスルホン酸アニオン、シクロヘキサンスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、ナフタレンスルホン酸アニオン、4,6−ジスルホ−1−ナフタレンスルホン酸モノ、ジもしくはトリアニオン、o−スルホベンゼンカルボン酸モノもしくはジアニオンが挙げられる。
有機のリン酸もしくはホスホン酸アニオンは、下記一般式(A3)で表されるアニオンが好ましい。
Figure 2019064403
一般式(A3)において、Rdは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を示し、Yは、−Oまたは−OReを示す。ここで、Reは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を示す。
Rdにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基およびアリールオキシ基は、Raにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基およびアリールオキシ基と同義であり、Reにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基およびヘテロ環基は、Raにおけるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基およびヘテロ環基と同義である。
有機のリン酸もしくはホスホン酸アニオンは、メチルホスホン酸モノもしくはジアニオン、エチルホスホン酸モノもしくはジアニオン、プロピルホスホン酸モノもしくはジアニオン、ヘプチルホスホン酸モノもしくはジアニオン、ヘキシルホスホン酸モノもしくはジアニオン、デシルホスホン酸モノもしくはジアニオン、オクチルホスホン酸モノもしくはジアニオン、ビニルホスホン酸モノもしくはジアニオン、アミノメチルホスホン酸モノもしくはジアニオン、フェニルホスホン酸モノもしくはジアニオン、メチレンジホスホン酸モノ〜テトラアニオン、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸モノ〜ヘキサアニオン)、1,4−フェニレンジホスホン酸モノ〜テトラアニオン、4−ホスホノ酪酸モノ、ジもしくはトリアニオン、p−キシレンジホスホン酸モノ〜テトラアニオン、モノエチルホスフェートモノもしくはジアニオン、ジエチルホスフェートアニオン、ジブチルホスフェートアニオン、ジデシルホスフェートアニオン、ジフェニルホスフェートアニオン、フェニルホスフェートモノもしくはジアニオンが挙げられる。
有機のイミドイオン、有機のメチドアニオン、有機のリンアニオンおよび有機ホウ素アニオンは、それぞれ下記一般式(A4)〜(A7)で表されるアニオンが好ましい。
Figure 2019064403
一般式(A4)〜(A7)において、Rf〜Rfはフッ素原子が置換したアルキル基またはフッ素原子が置換したアリール基を示し、2つのRf、3つのRfおよび3つのRfは、それぞれにおいて、同一でも異なってもよい。Rg〜Rgは各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を示す。
Rf〜Rfにおけるフッ素原子が置換したアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8がさらに好ましく、1または2が特に好ましい。
フッ素原子が置換したアルキル基は、フッ素原子が少なくとも1つ置換したアルキル基であるが、パーフルオロアルキル基が好ましい。フッ素原子が置換したアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロブチル、パーフルオロペンチル、パーフルオロヘキシル、パーフルオロオクチル、パーフルオロ2−エチルヘキシル、ジフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、1,1−ジフルオロエチル、1,1,2−トリフルオロエチル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル、パーフルオロベンジルが挙げられる。
Rf〜Rfにおけるフッ素原子が置換したアリール基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜12がより好ましく、6〜10がさらに好ましく、6〜8が特に好ましい。
フッ素原子が置換したアリール基は、フッ素原子が少なくとも1つ置換したアリール基であるが、パーフルオロアリール基が好ましい。
フッ素原子が置換したアリール基としては、例えば、パーフルオロフェニル、パーフルオロトリル、2,6−ジクロロ−3,4,5−トリフルオロフェニルが挙げられる。
Rg〜Rgにおけるアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基は、Raにおけるアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基と同義である。
Rg〜Rgは、アルキル基またはアリール基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜16のアリール基がより好ましい。なお、アリール基は、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
ここで、上記の有機ホウ素アニオンとしては、例えば、以下のアニオンが挙げられる。
Figure 2019064403
は、ハロゲンイオン、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、リン酸アニオン、ホスホン酸アニオン、ジシアナミドイオン、一般式(A4)で表されるアニオンが好ましく、ハロゲンイオン、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、リン酸アニオン、ホスホン酸アニオン、ジシアナミドイオンまたはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンがより好ましく、ハロゲンイオン、カルボン酸アニオンが特に好ましく、カルボン酸アニオンが最も好ましい。
イオン化合物は、上記一般式(1)または(2)で表される化合物以外に、第四級ホスホニウム塩が挙げられ、本発明でも好ましい。
第四級ホスホニウム塩の第四級ホスホニウムとしては、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、メチルトリブチルホスホニウム、ジメチルジエチルホスホニウムが挙げられる。アニオンは上記Xが好ましい。
上記一般式(1)または(2)で表される化合物は、下記一般式(1a)、(1b)、(2a)〜(2c)のいずれかで表されるのが好ましい。
Figure 2019064403
一般式(1a)、(1b)、(2a)〜(2c)において、R、RおよびXは、前記一般式(1)または(2)におけるR、RおよびXと同義であり、好ましい範囲も同じである。R11およびR12は各々独立に置換基を示す。n11は0〜3の整数であり、n12は0〜5の整数である。ここで、R11が2以上のとき、複数のR11は互いに同一でも異なってもよい。また、少なくとも2つのR11が互いに結合して環を形成してもよい。
13〜R15は各々独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を示す。ただし、R、R13〜R15の少なくとも2つが互いに結合して環を形成することはない。R21はRと同義であり、好ましい範囲も同じである。Zは単結合、メチレン基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−SO−、−N(Rα1)−または−N(Rα1)(Rα2)−を示し、Rα1は水素原子または置換基を示し、Rα2は置換基を示す。ここで、Rα1とRα2が互いに結合して環を形成してもよい。
11およびR12における置換基はRaと同義である。Rは一般式(1)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同じである。Rは一般式(2)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同じである。
13〜R15は、一般式(2)において、2つ以上が互いに結合して環を形成することがない以外は、一般式(2)におけるR〜Rと同義であり、好ましい範囲も同じである。
Rα1における置換基は、Raで挙げた置換基が挙げられ、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、スルホニル基が好ましく、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基がより好ましく、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基がさらに好ましい。
Rα2における置換基は、Rα1における置換基と同義であり、好ましい範囲も同じである。
少なくとも2つのR11が互いに結合して形成する環は、5または6員環が好ましく、ベンゼン環、ヘテロ環がより好ましく、ベンゼン環、ヘテロ芳香環がさらに好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
Rα1とRα2が互いに結合して形成する環は、5または6員環が好ましく、含窒素飽和環がより好ましく、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環がさらに好ましい。
11およびR12はアルキル基が好ましく、R13〜R15、RおよびR21は、アルキル基、アリール基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
また、RとR12は互いに、炭素数が異なるアルキル基が好ましい。
本発明では、一般式(1a)、(1b)、(2a)〜(2c)で表される化合物のうち、一般式(1a)、(1b)または(2a)で表される化合物が好ましく、一般式(1a)または(2a)で表される化合物がより好ましく、一般式(1a)で表される化合物がさらに好ましい。
本発明で使用するイオン化合物としては、以下のイオン液体が挙げられる。
例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ブチルトリフェニルボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ブチルトリス(4−t−ブチルフェニル)ボレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ブチルトリス(1−ナフチル)ボレート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム ブチルトリス(4−メチルナフタレン−1−イル)ボレート、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム ブチルトリフェニルボレート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム ヘキシルトリス(4−t−ブチルフェニル)ボレート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム2−エチル ヘキシルトリフェニルボレート、
1−ブチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、1−ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−シアノメチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N−ヘキシル−4−ジメチルアミノピリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)ピリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N−エチル−N,N−ジメチル−2−メトキシエチルアンモニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、N−(3−ヒドロキシプロピル)ピリジニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、N−(メトキシエチル)−N−メチルモルフォリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−(2−メトキシエチル)−1−メチルーピロリジニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−(メトキシエチル)−1−メチルピペリジニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−(メトキシエチル)−1−メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N−(メトキシエチル)−1−メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N−(メトキシエチル)−N−メチルモルフォリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが挙げられる。
なお、イオン液体を含むイオン化合物は市販されているものを使用することもできる。このような化合物としては、以下のイオン液体が挙げられる。
1)非水混和性のイオン液体
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド〔以上、Covalent Associates Incより市販〕、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド〔以上、関東化学(株)より市販〕。
2)水混和性のイオン液体
N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム アセテート〔以上、関東化学(株)より市販〕、沃化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム〔東京化成工業(株)より市販〕、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロアセテート〔メルク(株)より市販〕。
イオン化合物は、1種類でも、2種以上併用してもよい。
本発明では、イオン化合物の含有量は、セルロースに対して、質量比で0.001倍以上1.000倍未満が好ましく、0.01倍以上1.000倍未満がより好ましく、0.01倍以上1.000倍未満がさらに好ましく、0.01〜0.8倍が特に好ましく、0.05〜0.7倍が最も好ましい。
イオン化合物は、アニオン成分とカチオン成分からなる塩であり、セルロース分子との高い親和性から、イオン物質が液体の状態である場合には、セルロースを完全に溶解するほどの溶液特性を示すものも存在する。
イオン化合物とセルロース分子との相互作用は、例えば、Green Chem.,2015,17,694−714で報告されているように、セルロース分子が有する水酸基(ヒドロキシ基)にイオン化合物が作用し、セルロース分子の水酸基同士によって形成される水素結合を切って、セルロース分子間に入り込むという機構により、イオン化合物への溶解が起こるものと提唱されている。
このため、イオン化合物の含有量は、セルロースに対して1.000倍以上の場合、セルロース内の結晶が溶解し、結果的に弾性率の低下を引き起こす。
逆に、イオン化合物の含有量がセルロースに対して0.001倍未満の場合、強固なセルロース分子間の水素結合の大部分が残ったままとなるので弾性率の低下は起きないが、加工機内のせん断応力だけではセルロースの微細化を起こすことができない。
このように、加工機内でセルロースを微細化することと、微細化されたセルロースにおいては、セルロース分子間の強固な水素結合を形成しているとで得られる機械特性の向上とを両立させることが重要となる。
<その他の添加物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記以外に、酸化防止剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤、着色剤(染料、有機顔料、無機顔料)、充填剤、滑剤、可塑剤、アクリル加工助剤等の加工助剤、発泡剤、パラフィンワックス等の潤滑剤、表面処理剤、結晶核剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、防徽剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤等の他の添加成分を、上記目的を損なわない範囲で適宜含有することができる。
酸化防止剤、劣化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤が挙げられ、フェノール系ではオルト位にt−アルキル基を有するヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオビス−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]であり、さらに好ましくは、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、ラウリル−3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、パルミチル−3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ステアリル−3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ベヘニル−3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチル−フェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、トコフェロール類等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンジホスホナイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フルオロホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル) エチルホスファイト、2−(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−5−エチル−5−ブチル−1,3,2−オキサホスホリナン、2,2’,2’−ニトリロ[トリエチル−トリス(3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル) ホスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、トリデシル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ネオペンタンテトライルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキル(炭素原子数12〜14のアルキル)チオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィド等が挙げられる。
光安定剤としては、分子量が1000以上のヒンダードアミン光安定剤(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を分子内に有する光安定剤)が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチレート系化合物、シアノアクリルレート系化合物、ニッケル系化合物が挙げられる。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、無機顔料、有機顔料が挙げられる。例えば、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が挙げられる。無機顔料としては、例えば、鉄黒、弁柄、酸化チタン、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、群青、コバルトブルー、チタンイエロー、鉛丹、鉛黄、紺青等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、キナクリドン、ポリアゾイエロー、アンスラキノンイエロー、ポリアゾレッド、アゾレーキイエロー、ペリレン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、イソインドリノンイエロー等が挙げられる。これらの着色剤は単独でも、2種類以上を併用してもよい。
充填剤としては、シリカ、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、チタニア、ベーマイト、タルク、または炭酸カルシウムなどの金属化合物などが好ましく挙げられる。
<<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>>
最初に、セルロースを含む熱可塑性合成樹脂中で、セルロースの微細化を行う。
熱可塑性樹脂組成物を製造するに際し、熱可塑性合成樹脂と、セルロースを、または、セルロースおよびイオン化合物を、それぞれ配合して、熱可塑性合成樹脂100質量部に対し、セルロースの含有量を1〜100質量部、セルロースおよびイオン化合物を配合する場合はイオン化合物の含有量を、セルロースの0.001倍以上1.000倍未満としてもよい。
セルロースの微細化を行うために、特に、セルロースおよびイオン化合物の混合物、すなわち、セルロース組成物を調製し、このセルロース組成物と熱可塑性合成樹脂を配合することが好ましい。
このため、セルロースおよびイオン化合物を配合する場合には、イオン化合物の含有量が、0.1質量%以上50質量%未満であるセルロース組成物を調製する工程を行う。
本発明では、セルロース組成物の配合量は、熱可塑性合成樹脂100質量部に対し、セルロースの含有量が1〜100質量部となるように行うことが好ましい。
ここで、イオン化合物、例えば、ハロゲンアニオン(特に塩素アニオン)の場合は、保管状態によっては吸湿して液状になることがある。このような場合は、真空乾燥によって水を飛ばし、常温で固体状になったものを使用することが好ましい。
セルロースは、分子内の水酸基による水素結合で、分子間結合力が強固である。
熱可塑性樹脂の1種としてポリマー分子鎖中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂を含有させることで植物繊維が微細化され、さらに、ここにイオン物質を共存させることで、より微細化が促進され、さらにイオン化合物がセルロース分子間の水素結合を切断すると考えられる。しかも、イオン化合物の構成要素の中のアニオン成分が直接的に、セルロース分子が有する水酸基の水素原子に作用すると考えられているため、セルロースの溶解能に対してアニオン成分の構造が大きな影響を及ぼすものと推測される。
セルロース自体は、上記のように、分子間結合力が強固であるため、加工機でのせん断応力だけでは微細化を進めることができない。しかしながら、ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂があれば、セルロースと樹脂の界面における密着性が向上することで、加工機内で生じる樹脂内のせん断応力がセルロースにもよく伝達するため、微細化が起きやすくなる。さらに、ここにイオン化合物を併用すると、部分的にセルロース分子間結合力が弱まることで、微細化をより進めることが可能となる。
熱可塑性合成樹脂とセルロース組成物とを配合した後、混練加工する工程を行い、この工程で、セルロースを微細化する。
特に、ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂とセルロース組成物とを配合した後、混練加工する工程を行うのが好ましく、この混練加工する工程の後に、ベース樹脂(ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂以外の熱可塑性樹脂)とブレンドすることが好ましい。
この混練加工工程は、押出し、射出などにより加工、成形する段階で、加工機内で混練することが好ましい。
混練温度は、樹脂が混練可能であれば特に制限されることはなく、イオン化合物を含まない場合は、樹脂の融点(非結晶樹脂の場合は軟化点)を下限とし、イオン化合物を含む場合は、上記の条件かつイオン化合物の融点を下限とし、セルロースの熱分解が少ない温度を上限とすることが望ましい。従って、イオン化合物の種類により下限温度は変化するが、上限温度は300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、230℃以下がさらに好ましい。
混練における撹拌は、スクリュー軸方向に適宜ニーディングディスクを配置するなどして、十分な混練性を確保可能なスクリュー構成を組み、かつ必要な生産量を得ることが可能なスクリュー回転数(通常は100〜300rpm程度の範囲)で混練することが好ましい。
混練加工する装置としては、同方向二軸スクリュー方式の装置が好ましく、例えば、二軸押出機〔(株)テクノベル製 KZW15TW−45MGNH〕が挙げられる。
ただし、同方向二軸押出機に限られることはなく、単軸押出機や、異方向二軸押出機、3軸以上の多軸押出機、バッチ式混練機(ニーダー、バンバリー等)など、充分な混練性が得られ、本発明と同様の効果が得られるのであれば、どのような方式でも構わない。
<<車両用外装部品の構成およびその製造方法>>
本発明の車両用外装部品は、熱可塑性合成樹脂およびセルロース成分を含有し、該熱可塑性合成樹脂の少なくとも1種が、ポリマー分子中に、酸無水物の部分構造を含む基およびアシル化セルロース構造を含む基から選択される少なくとも1種の基を有する樹脂である熱可塑性樹脂組成物で形成された樹脂部を備える。すなわち、上記車両用外装部品の少なくとも一部が上記熱可塑性樹脂組成物で形成されており、好ましくは、その全体が上記熱可塑性樹脂組成物で形成されている。
本発明の車両用外装部品では、熱可塑性樹脂組成物中に、セルロースとポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂を含有することから、セルロースの水酸基とポリマー分子中の酸無水物の部分構造を含む基とが反応することがある。このため、反応した場合、ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂の酸無水物部分が、アシル化剤として作用し、セルロースが、このアシル化剤でアシル化されたセルロースとなって、ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂と複合体を形成することになる。
逆に、反応しなかった場合は、ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基のままである。
このため、本発明の車両用外装部品中には、イオン化合物以外に、ポリマー分子中に、酸無水物の部分構造を含む基(すなわち、セルロースと反応しなかった基)およびアシル化セルロース構造を含む基(一部でも反応した場合)から選択される少なくとも1種の基を有する樹脂を含むことになる。
本発明の車両用外装部品の全部又はその一部である樹脂部が、上記熱可塑性樹脂組成物、特に、上記熱可塑性樹脂組成物の製造方法で製造された熱可塑性樹脂組成物を使用して、例えば射出、押出によって成形される。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用外装部品を備える車両の一例を示す模式図である。同図に示すように、車両用外装部品は、車両1に取り付けられる種々の外装部品であり、例えば、フロントフェンダー2、バックドア3、リアスポイラー4、フロントスポイラー5、サイドスポイラー6、アンダーパネル7、リアフェンダー8、ルーフパネル9、サイドミラーカバー10、給油タンクフラップ11、又はドアノブ12である。このうち、好ましくは、車両用外装部品は、フロントフェンダー2、バックドア3又はリアスポイラー4である。
フロントフェンダー2は、車両1の前方側であって車幅の左右側部に配置されている。このフロントフェンダー2は、例えば、車幅方向の内方に配置されてタイヤの外周を囲うように取り付けられたインナー部材と、車幅方向の外方に配置されてタイヤの空気抵抗を低減するように取り付けられたアウター部材とを有する。上記インナー部材及びアウター部材の一方又は双方が、上記熱可塑性樹脂組成物で形成されている。
バックドア3は、バックライトなどの機構部品やガラス板と共に、車両1の後方側に開閉可能に取り付けられている。このバックドア3は、車体長方向の内方に配置されたインナーパネルと、車体長方向の外方に配置されたアウターパネルとを有する。インナーパネル及びアウターパネルの一方又は双方が、上記熱可塑性樹脂組成物で形成されている。
リアスポイラー4は、車両1の後方側であって車高方向の上部に配置されて、車両1のルーフパネルに沿って流れる気流を変化させて揚力を低減するように、車幅方向に延在して取り付けられている。リアスポイラー4は、表面パネルを有しており、少なくとも該表面パネルが上記熱可塑性樹脂組成物で形成されている。リアスポイラー4は、その全体が上記熱可塑性樹脂組成物で形成されていてもよい。
本発明の車両用外装部品は、フロントフェンダー2、バックドア3、リアスポイラー4、フロントスポイラー5、サイドスポイラー6、アンダーパネル7、リアフェンダー8、ルーフパネル9、サイドミラーカバー10、給油タンクフラップ11及びドアノブ12からなる群から選択された一又は複数の部品であってもよい。また、上記の各車両用外装部品が複数の構成要素を有する場合、該複数の構成要素のうちの少なくとも1つが本発明の熱可塑性樹脂組成物で形成されていてもよい。
本発明の車両用外装部品が適用される車両1は、ワンボックス型であるが、これに限らず、セダン型、クーペ型、SUV型、ハードトップ型、ハッチバック型、ミニバン型、コンバーチブル型、ステーションワゴン型又はピックアップ型であってもよい。また、車両1は、ガソリン、軽油、水素などの燃料によって駆動するエンジン、バッテリーなどから供給される電力によって駆動するモーター、又は、上記エンジン及びモーターの双方を、動力源として備えていてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の用途としては、例えば、二輪車や四輪車などの自動車、列車などの車両を構成する車両用外装部品が挙げられる。また、これに限らず、上記熱可塑性樹脂組成物の用途として、航空機、船舶、ロボットなどの移動体を構成する移動体用外装部品が挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
使用した素材を以下に示す。
<使用素材>
(1)熱可塑性合成樹脂
・ベース樹脂:高密度ポリエチレン〔MFR(190℃/2.16kg)=25g/10分、密度=0.94g/cm
(2)酸変性熱可塑性合成樹脂
・FUSABOND M603〔商品名デュポン(株)製、マレイン酸変性エチレン−プロピレンランダム共重合体、MFR(190℃/2.16kg)=1.4g/10分、密度=0.862g/cm
(3)セルロース
・KCフロックW−200〔商品名日本製紙(株)製、平均粒径約32μmの粉末状セルロース〕
(4)イオン化合物
・イオン化合物:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート(融点:−20℃以下)
実施例1
以下の工程で、セルロース強化熱可塑性樹脂を作製した。
1)セルロース組成物の調製工程
アセトン溶媒に90質量部の粉末セルロースを分散し、10質量部のイオン液体の1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテートを混合した後、数時間ごとにかき混ぜつつ、蓋をした容器内に12時間以上放置した。
その後、容器の蓋を開け、アセトン溶媒を乾燥させ、アセトン溶媒がほぼ飛びきった後、水分乾燥のため、さらに80℃の恒温槽内に12時間以上保存した。
2)セルロース組成物と熱可塑性合成樹脂との混練工程(セルロース強化熱可塑性樹脂組成物の製造)
二軸押出機〔(株)テクノベル製 KZW15TW−45MG−NH〕に、酸変性熱可塑性合成樹脂のFUSABOND M603〔商品名デュポン(株)製〕を、出口温度150℃、300g/時間の速度でフィードしつつ、2台目のフィーダーにより、上記で調製したセルロース組成物を300g/時間の速度でフィードし、押出しを行い、セルロース強化熱可塑性樹脂組成物を製造した。この時、スクリュー回転数は100rpmとした。
この押出の過程で、酸変性熱可塑性合成樹脂と粉末セルロースが混練され、粉末セルロースが分散されることで、セルロース繊維が微細化される。また、下記3)の調製工程でもその微細化がさらに進行するものと思われる。なお、仮に、この2)の混練工程で、微細化が不十分であっても下記3)の調製工程を行うことで微細化できる。
3)熱可塑性合成樹脂のベース樹脂を含むセルロース強化熱可塑性樹脂組成物の調製工程
上記の押出しで微細化されたセルロース繊維が酸変性熱可塑性合成樹脂に分散されたセルロース強化熱可塑性樹脂組成物と、熱可塑性合成樹脂のベース樹脂を、質量比で、ベース樹脂:酸変性熱可塑性合成樹脂が、80:20となるようにドライブレンドし、二軸押出機〔(株)テクノベル製 KZW15TW−45MG−NH〕にて、セルロース強化熱可塑性樹脂組成物を調製し、製造した。この時、二軸押出機の出口温度を190℃とし、1000g/時間の速度でフィードしつつ、セルロース強化熱可塑性樹脂組成物を調整した。このとき、スクリュー回転数は100rpmとした。
この調製工程でも、セルロース繊維の微細化が、さらに進行しているものと思われる。
4)車両用外装部品の製造工程
上記3)で調製したセルロース強化熱可塑性樹脂組成物を用いて射出成形し、車両用外装部品を作製した。なお、射出条件は、一般的に適切とされる成形条件で実施した。
実施例2
実施例1において、ベース樹脂、酸変性熱可塑性合成樹脂、セルロース組成物の内訳が、下記表1のような配合量になるようにした以外は、実施例1と同様にして、セルロース強化熱可塑性樹脂組成物を製造した。次に、このセルロース強化熱可塑性樹脂組成物を使用して、実施例1と同様の方法で車両用外装部品を作製した。
実施例3
実施例1において、ベース樹脂、酸変性熱可塑性合成樹脂、セルロース組成物の内訳が、下記表1のような配合量になるようにした以外は、実施例1と同様にして、セルロース強化熱可塑性樹脂組成物を製造した。次に、このセルロース強化熱可塑性樹脂組成物を使用して、実施例1と同様の方法で車両用外装部品を作製した。
実施例4
実施例1において、ベース樹脂、酸変性熱可塑性合成樹脂、セルロース組成物の内訳が、下記表1のような配合量になるようにした以外は、実施例1と同様にして、セルロース強化熱可塑性樹脂組成物を製造した。次に、このセルロース強化熱可塑性樹脂組成物を使用して、実施例1と同様の方法で車両用外装部品を作製した。
実施例5
実施例1において、ベース樹脂、酸変性熱可塑性合成樹脂、セルロース組成物の内訳が、下記表1のような配合量になるようにした以外は、実施例1と同様にして、セルロース強化熱可塑性樹脂組成物を製造した。次に、このセルロース強化熱可塑性樹脂組成物を使用して、実施例1と同様の方法で車両用外装部品を作製した。
実施例6
実施例1において、ベース樹脂、酸変性熱可塑性合成樹脂、セルロース組成物の内訳が、下記表1のような配合量になるようにした以外は、実施例1と同様にして、セルロース強化熱可塑性樹脂組成物を製造した。次に、このセルロース強化熱可塑性樹脂組成物を使用して、実施例1と同様の方法で車両用外装部品を作製した。
実施例7
実施例1の1)の工程を行わず、セルロース組成物の代わりに粉末セルロースそのものを使用し、実施例1の2)の工程で、熱可塑性合成樹脂100質量部に対して、粉末セルロース11.1質量部を配合し、二軸押出機〔(株)テクノベル製 KZW15TW−45MG−NH〕で押出しすることで、セルロース強化熱可塑性樹脂組成物を調製し、製造した。次に、このセルロース強化熱可塑性樹脂組成物を使用して、実施例1と同様の方法で車両用外装部品を作製した。
比較例1
実施例1の1)の工程において、粉末セルロース30質量部に対して、イオン液体Aを70質量部配合した。この場合、粉末セルロースが溶解し、部分的にアセトン溶媒内にセルロースが再結晶化したり、乾燥後に高粘度の液状になったセルロース溶解物がまとわりつくなどハンドリング性に支障をきたしたため、2)の工程では二軸押出機ではなく、ラボプラストミル〔(株)東洋精機製作所製 混練・押出成形評価試験装置 ラボプラストミル・マイクロ〕を使用し、得られた組成物をペレタイズして熱可塑性樹脂組成物を調製し、製造した。
また、3)の工程では、ベース樹脂を、質量比で、ベース樹脂:酸変性熱可塑性合成樹脂が、80:20となるようにドライブレンドしたこと以外は、実施例1の3)の工程と同様にしてセルロース強化熱可塑性樹脂組成物を製造した。次に、このセルロース強化熱可塑性樹脂組成物を使用して、実施例1と同様の方法で車両用外装部品を作製した。
上記のようにして調製、製造された各セルロース強化熱可塑性樹脂組成物において、各セルロース強化熱可塑性樹脂組成物に含まれるセルロースの見かけの弾性率を以下のようにして測定した。
(熱可塑性樹脂組成物に含まれるセルロースの見かけの弾性率の測定)
上記で製造した各セルロース強化熱可塑性樹脂組成物を用いて、射出成形し、曲げ試験片(厚み4mm×長さ80mm)を作製した。なお、射出条件は、一般的に適切とされる成形条件で実施した。
曲げ弾性率は、JIS K 7171に従い算出した。密度は、JIS K 7112に準拠した。ただし、測定溶媒は水ではなくエタノールを使用した。
得られた密度から、合成樹脂およびセルロースの各成分について体積分率を算出した。
なお、合成樹脂のみの密度および弾性率は、別途JIS K 7112およびJIS K 7171にて算出した。
セルロースの見かけの弾性率Efは、下記式(2.1)を変形した式(2.2)から求めた。
なお、Emは、複合則に基づく下記式(4.1)から式(4.2)であるとして求めた。
この弾性率をEfとする。
Figure 2019064403
一方、実施例1〜7および比較例1において、酸変性熱可塑性合成樹脂とイオン化合物のイオン液体を加えない以外は、実施例1〜7および比較例1と同様にして作製した熱可塑性樹脂組成物についても同様に、セルロースの見かけの弾性率Efを求めた。
この場合の弾性率をEfとする。
上記で得られた各弾性率、EfおよびEfをもとに、Efに対するEfの倍率(Ef/Ef)を求めた。
ここで、上記倍率は、1.1倍以上が合格レベルである。
得られた結果を、まとめて下記表1に示す。
ここで、表中の熱可塑性合成樹脂とセルロース組成物およびこれらの内訳における数字は質量部である。
Figure 2019064403
上記表1から、実施例1〜7の熱可塑性樹脂組成物は、いずれもセルロースの見かけの弾性率の倍率が1.1倍以上であった。
すなわち、実施例1〜7の熱可塑性樹脂組成物では、セルロースの見かけの弾性率の倍率が大きく向上していることから、セルロースの微細化が大きく促進されている。
この向上は、酸変性熱可塑性合成樹脂のマレイン酸変性エチレン−プロピレンランダム共重合体によって、熱可塑性合成樹脂−セルロース繊維間の界面性が向上しているため、熱可塑性合成樹脂からセルロース繊維への力の伝達が改善したことによる向上と思われる。また、イオン化合物であるイオン液体を使用することで、セルロースの微細化がさらに進行し、セルロースによる強度の強化効果が得られる。
これに対して、比較例1の熱可塑性樹脂組成物では、セルロースの見かけの弾性率の倍率が0.88倍と、逆に低くなった。これは、セルロースに対してイオン化合物の配合量が多すぎ、セルロースが溶解し、結晶も失われたことから、熱可塑性合成樹脂に混練した後も強化効果を発揮できなかったものと考えられる。
本発明の実施例1〜7の熱可塑性樹脂組成物は、弾性率が向上し、熱可塑性樹脂の強化効率が高いことから、車両用外装部品として有用であることがわかる。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の特許請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
1 車両
2 フロントフェンダー
3 バックドア
4 リアスポイラー
5 フロントスポイラー
6 サイドスポイラー
7 アンダーパネル
8 リアフェンダー
9 ルーフパネル
10 サイドミラーカバー
11 給油タンクフラップ
12 ドアノブ

Claims (11)

  1. 熱可塑性合成樹脂およびセルロース成分を含有し、該熱可塑性合成樹脂の少なくとも1種が、ポリマー分子中に、酸無水物の部分構造を含む基およびアシル化セルロース構造を含む基から選択される少なくとも1種の基を有する樹脂である熱可塑性樹脂組成物で形成された樹脂部を備える車両用外装部品。
  2. イオン化合物を含有し、該イオン化合物の含有量が、前記セルロースの含有質量の0.001倍以上1.000倍未満である請求項1に記載の車両用外装部品。
  3. 前記イオン化合物が、下記一般式(1)または(2)で表される請求項2に記載の車両用外装部品。
    Figure 2019064403
    一般式(1)および(2)において、Zは=C(Ra)−または=N−を示す。ここで、Raは水素原子または置換基を示す。Lは2価の連結基を示す。R〜Rは各々独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を示す。R〜Rの少なくとも2つが互いに結合して環を形成してもよい。Xはアニオンを示す。
  4. 前記一般式(1)または(2)で表される化合物が、下記一般式(1a)、(1b)、(2a)〜(2c)のいずれかで表される請求項3に記載の車両用外装部品。
    Figure 2019064403
    一般式(1a)、(1b)、(2a)〜(2c)において、R、RおよびXは、前記一般式(1)または(2)におけるR、RおよびXと同義である。R11およびR12は各々独立に置換基を示す。n11は0〜3の整数であり、n12は0〜5の整数である。ここで、R11が2以上のとき、複数のR11は互いに同一でも異なってもよい。また、少なくとも2つのR11が互いに結合して環を形成してもよい。
    13〜R15は各々独立に、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を示す。ただし、R、R13〜R15の少なくとも2つが互いに結合して環を形成することはない。R21はRと同義である。Zは単結合、メチレン基、−C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−、−SO−、−N(Rα1)−または−N(Rα1)(Rα2)−を示し、Rα1は水素原子または置換基を示し、Rα2は置換基を示す。ここで、Rα1とRα2が互いに結合して環を形成してもよい。
  5. 前記Xが、ハロゲンイオン、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、リン酸アニオン、ホスホン酸アニオン、ジシアナミドイオンまたはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンである請求項3または4に記載の車両用外装部品。
  6. 前記セルロースが、植物由来の繊維状のセルロースである請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用外装部品。
  7. 前記セルロースの含有量が、前記熱可塑性合成樹脂100質量部に対して、1〜100質量部である請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両用外装部品。
  8. 前記ポリマー分子中に酸無水物の部分構造を含む基を有する樹脂の含有量が、前記熱可塑性合成樹脂中、1〜50質量%である請求項1〜7のいずれか1項に記載の車両用外装部品。
  9. 前記熱可塑性樹脂組成物に含まれるセルロースの見かけの弾性率(Ef)が、前記イオン化合物または前記ポリマー分子中に酸無水物を含む基を有する樹脂を含有しない熱可塑性樹脂組成物に含まれるセルロースの見かけの弾性率(Ef)に対して、1.1倍以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載の車両用外装部品。
  10. フェンダー、バックドア又はスポイラーである請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両用外装部品。
  11. 前記バックドアは、インナーパネル及びアウターパネルを有し、
    前記インナーパネル及び前記アウターパネルの一方又は双方が、前記熱可塑性樹脂組成物で形成されている請求項10に記載の車両用外装部品。
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