1.加飾シート
本発明の加飾シートは、少なくとも保護層を備え、保護層が、オレフィン系ワックス及びフッ素系ワックスの少なくとも一方と、アマイド系ワックスとを含むことを特徴としている。本発明の加飾シートは、このような構成を有することにより、優れた耐傷性と、優れた三次元成形性とを両立することができる。以下、本発明の加飾シートについて詳述する。
なお、本明細書において、「〜」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2〜15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。また、後述の通り、本発明の加飾シートは、装飾層などを有していなくてもよく、例えば透明であってもよい。また、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
加飾シートの積層構造
図1〜図3及び図5,6に示されるように、本発明の加飾シートは、少なくとも保護層1を備えている。本発明の加飾シートは、加飾シートの保形性を高めることなどを目的として、必要に応じて、基材2を有していてもよい。なお、後述の通り、本発明の加飾シートを用いて加飾樹脂成形品を製造する場合において、図2,3に示されるように、加飾シートの基材2(以下、積層用基材2aということがある)が加飾樹脂成形品に含まれる第1の態様の加飾シート、または、図5,6に示されるように、加飾シートの基材2を転写用として用い、転写後に当該基材2(以下、転写用基材2bということがある)が剥離されて、加飾樹脂成形品に含まれない第2の態様の転写型の加飾シートを用いることができる。
また、図1〜図3及び図5,6に示されるように、本発明の加飾シートには、必要に応じて、プライマー層3、装飾層4、透明樹脂層5などを設けてもよい。プライマー層3は、基材2、装飾層4、透明樹脂層5などの層間の密着性を向上させることなどを目的として、これら層間の少なくとも1箇所に設けることができる。また、装飾層4は、加飾シートに装飾性を付与することを目的として、図2,3に示されるように、基材2と保護層1との間や、図5,6の転写型の加飾シートであれば保護層1の基材2とは反対側に設けることができる。また、透明樹脂層5は、加飾シートの成形性を高めることなどを目的として、図3に示されるように、基材2と保護層1との間や、図6の転写型の加飾シートであれば保護層1の基材2とは反対側に設けることができる。
また、図示を省略するが、第2の態様の転写型の加飾シートにおいて、基材2の保護層1からの剥離性を高めることを目的として、必要に応じて基材2と保護層1との間に離型層(図示を省略)を設けてもよい。また、第1の態様の加飾シートにおいて、加飾樹脂成形品に含まれることになる基材2の色の変化やバラツキを抑制することなどを目的として、基材2とプライマー層3との間や、装飾層4の裏面(成形樹脂層6側)などに、必要に応じて、隠蔽層(図示を省略)を設けてもよい。また、成形樹脂層6側の最表面(第1の態様の加飾シートにおいては、基材2側の表面であり、第2の態様の加飾シートにおいては、基材2とは反対側の表面)に、接着層(図示を省略)などを設けてもよい。
前述の通り、本発明の加飾シートを用いて加飾樹脂成形品を製造する場合において、加飾シートの基材2(積層用基材2a)が加飾樹脂成形品に含まれる第1の態様の加飾シート、または加飾シートの基材2(転写用基材2b)が加飾樹脂成形品に含まれない第2の態様の転写型の加飾シートを用いることができる。すなわち、第1の態様の加飾シートでは、成形樹脂層6を基材2側に形成することにより、図4に示すように、基材2が加飾樹脂成形品に含まれる。一方、第2の態様の転写型の加飾シートでは、図7,8に示すように、成形樹脂層6を基材2とは反対側に形成して、例えば図7のような転写用基材付きの加飾樹脂成形品を得た後、基材2を剥離するため、図8のように基材2が加飾樹脂成形品に含まれない。なお、転写用基材2bを用いて転写される層(すなわち、保護層1、プライマー層3、装飾層4、透明樹脂層5、隠蔽層、接着層など)を合わせて転写層10という(図5〜図8参照)。
本発明の第1の態様の加飾シートの積層構造として、基材/保護層がこの順に積層された積層構造;基材/装飾層/保護層がこの順に積層された積層構造;基材/装飾層/プライマー層/保護層がこの順に積層された積層構造;基材/装飾層/プライマー層/透明樹脂層/プライマー層/保護層がこの順に積層された積層構造;基材/隠蔽層/装飾層/プライマー層/透明樹脂層/プライマー層/保護層がこの順に積層された積層構造;接着層/基材/隠蔽層/装飾層/プライマー層/透明樹脂層/プライマー層/保護層がこの順に積層された積層構造などが挙げられる。図1に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材/保護層がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。図2に、第1の態様の加飾シートの積層構造の一態様として、基材/装飾層/プライマー層/保護層がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。図3に、第1の態様の加飾シートの積層構造の一態様として基材/装飾層/プライマー層/透明樹脂層/プライマー層/保護層がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。
また、本発明の第2の態様の加飾シートの積層構造として、基材/保護層がこの順に積層された積層構造;装飾層/保護層/基材がこの順に積層された積層構造;装飾層/プライマー層/保護層/基材がこの順に積層された積層構造;装飾層/プライマー層/透明樹脂層/プライマー層/保護層/基材がこの順に積層された積層構造;装飾層/プライマー層/透明樹脂層/プライマー層/保護層/基材がこの順に積層された積層構造;装飾層/プライマー層/透明樹脂層/プライマー層/保護層/離型層/基材がこの順に積層された積層構造などが挙げられる。図1に、本発明の加飾シートの積層構造の一態様として、基材/保護層がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。図5に、第2の態様の加飾シートの積層構造の一態様として、装飾層/プライマー層/保護層/基材がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。図6に、第2の態様の加飾シートの積層構造の一態様として装飾層/プライマー層/透明樹脂層/プライマー層/保護層/基材がこの順に積層された加飾シートの一例の略図的断面図を示す。
加飾シートを形成する各層の組成
[基材2]
基材2は、本発明の加飾シートにおいて、支持体としての役割を果たす樹脂シート(樹脂フィルム)により形成されている。
第1の態様の加飾シートにおいて、基材2(積層用基材2a)に使用される樹脂成分については、特に制限されず、三次元成形性や成形樹脂層との相性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下「ABS樹脂」と表記することもある);アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ABS樹脂が三次元成形性の観点から好ましい。積層用基材2aを形成する樹脂成分としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、積層用基材2aは、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。
積層用基材2aは、隣接する層との密着性を向上させるために、必要に応じて、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理が施されていてもよい。基材2の表面処理として行われる酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン紫外線処理法等が挙げられる。また、積層用基材2aの表面処理として行われる凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、積層用基材2aを構成する樹脂成分の種類に応じて適宜選択されるが、効果及び操作性等の観点から、好ましくはコロナ放電処理法が挙げられる。
また、積層用基材2aには、着色剤などを配合した着色、色彩を整えるための塗装、デザイン性を付与するための模様の形成などがなされていてもよい。
積層用基材2aの厚みは、特に制限されず、加飾シートの用途等に応じて適宜設定されるが、例えば50〜800μm程度、好ましくは100〜600μm程度、さらに好ましくは200〜500μm程度が挙げられる。積層用基材2aの厚みが上記範囲内であると、加飾シートに対してより一層優れた三次元成形性などを備えさせることができる。
また、第2の態様の加飾シートにおいて、基材2(転写用基材2b)は、転写層10を成形樹脂層6に転写するために設けられる層であり、支持体としての役割も果たす樹脂シート(樹脂フィルム)により形成されている。
転写用基材2bに使用される樹脂成分については、特に制限されず、保護層1からの剥離性等に応じて適宜選定すればよいが、好ましくは、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、具体的には、前述の第1の態様の積層用基材2aで例示したものと同じものが例示できる。これらの中でも、転写用基材2bとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂が好ましい。転写用基材2bを形成する樹脂成分としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、転写用基材2bは、これら樹脂の単層シートで形成されていてもよく、また同種又は異種樹脂による複層シートで形成されていてもよい。
転写用基材2bの厚みは、特に制限されず、加飾シートの用途等に応じて適宜設定されるが、通常10〜150μm程度、好ましくは10〜125μm程度、さらに好ましくは10〜80μm程度が挙げられる。
[離型層]
離型層は、第2の態様の加飾シートにおいて、必要に応じて転写用基材2bと保護層1との間に設けられる。離型層は、転写用基材2bの保護層1からの剥離性を高める役割を有する層である。
離型層は、転写用基材2bの全面を被覆(全面ベタ状)しているベタ離型層であっても良いし、一部に設けられるものであっても良い。通常は、剥離性を考慮して、ベタ離型層が好ましい。
離型層は、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル−メラミン系樹脂が含まれる。)、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体、あるいはこれらの樹脂を(メタ)アクリル酸やウレタンで変性したものを、単独で又は複数を混合した樹脂組成物を用いて形成することができる。なかでも、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、これらの樹脂を形成するモノマーの共重合体、及びこれらをウレタン変性したものが好ましく、より具体的には、アクリル−メラミン系樹脂単独、アクリル−メラミン系樹脂含有組成物、ポリエステル系樹脂とエチレン及びアクリル酸の共重合体をウレタン変性したものとを混合した樹脂組成物、アクリル系樹脂とスチレン及びアクリルとの共重合体のエマルションとを混合した樹脂組成物などが挙げられる。これらの内、アクリル−メラミン系樹脂単独又はアクリル−メラミン系樹脂を50質量%以上含有組成物で離型層を構成することが特に好ましい。
また、離型層を構成する素材としては、後述の保護層1で例示する電離放射線硬化性樹脂を用いることもできる。離型層を電離放射線硬化性樹脂により形成する場合、電離放射線硬化性樹脂の中でも、後述のポリカーボネート(メタ)アクリレート(ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートなど)を用いることが好ましい。
離型層の厚みは、例えば0.01〜5μm程度、好ましくは0.05〜3μm程度である。
[保護層1]
保護層1は、加飾樹脂成形品の耐傷付き性、耐薬品性などを高めるために、加飾シートの表面に設けられる層である。保護層1を形成する樹脂としては、特に制限されず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを両立させる観点からは、電離放射線硬化性樹脂が好ましい。
保護層1を形成する熱硬化性樹脂としては、特に制限されず、例えば、アクリルポリオール;ポリエステルポリオール;ポリエステルウレタンポリオール、アクリル−ウレタンポリオールなどのウレタンポリオール;ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどのポリオレフィンポリオール;などのポリオール樹脂と硬化剤とを含む樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
保護層1を形成する熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET);アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂);アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル樹脂;などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
(電離放射線硬化性樹脂)
保護層1の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、保護層1の形成において好適に使用される。
なお、本発明の加飾シートにおいて、保護層1の形成に電離放射線硬化性樹脂を用いる場合、加飾シートの状態での保護層は硬化したものであってもよいし、未硬化または半硬化であってもよい。加飾シートの状態での保護層が未硬化または半硬化である場合には、加飾シートを加飾樹脂成形品に加工した後、保護層を硬化させる。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能性(メタ)アクリレートとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートであるポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールやカプロラクトン系ポリオールとポリイソシアネート化合物の反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらの中でも、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリカーボネート(メタ)アクリレート(ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートなど)、ウレタン(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記した電離放射線硬化性樹脂の中でも、優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを両立させる観点からは、ポリカーボネート(メタ)アクリレート(ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートなど)を用いることが好ましく、ポリカーボネート(メタ)アクリレート(ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレートなど)と多官能(メタ)アクリレートを併用することが特に好ましい。
ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールの水酸基の一部又は全てを(メタ)アクリレート(アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル)に変換して得られる。このエステル化反応は、通常のエステル化反応によって行うことができる。例えば、1)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとを、塩基存在下に縮合させる方法、2)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸無水物又はメタクリル酸無水物とを、触媒存在下に縮合させる方法、あるいは3)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸又はメタクリル酸とを、酸触媒存在下に縮合させる方法などが挙げられる。
上記のポリカーボネートポリオールは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端あるいは側鎖に2個以上、好ましくは2〜50個の、より好ましくは3〜50個の水酸基を有する重合体である。このポリカーボネートポリオールの代表的な製造方法は、ジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とから重縮合反応による方法である。原料として用いられるジオール化合物(A)は、一般式 HO−R1−OHで表される。ここで、R1は、炭素数2〜20の2価炭化水素基であって、基中にエーテル結合を含んでいてもよい。例えば、直鎖、又は分岐状のアルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基である。
ジオール化合物(A)の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらジオールは、それを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
また、3価以上の多価アルコール(B)の例としては、トリメチロールプルパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトールなどのアルコール類を挙げることができる。さらに、これらの多価アルコールの水酸基に対して、1〜5当量のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、あるいはその他のアルキレンオキシドを付加させた水酸基を有するアルコール類であってもよい。多価アルコールは、これらを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
カルボニル成分となる化合物(C)は、炭酸ジエステル、ホスゲン、又はこれらの等価体の中から選ばれるいずれかの化合物である。その具体例としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの炭酸ジエステル類、ホスゲン、あるいはクロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸フェニルなどのハロゲン化ギ酸エステル類などが挙げられる。これらは、単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
ポリカーボネートポリオールは、前記したジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とを、一般的な条件下で重縮合反応することにより合成される。例えば、ジオール化合物(A)と多価アルコール(B)との仕込みモル比は、50:50〜99:1の範囲にあることが好ましく、また、カルボニル成分となる化合物(C)のジオール化合物(A)と多価アルコール(B)に対する仕込みモル比は、ジオール化合物及び多価アルコールの持つ水酸基に対して、0.2〜2当量であることが好ましい。
前記の仕込み割合で重縮合反応した後のポリカーボネートポリオール中に存在する水酸基の当量数(eq./mol)は、1分子中に平均して3以上、好ましくは3〜50、より好ましくは3〜20である。この範囲であると、後述するエステル化反応によって必要な量の(メタ)アクリレート基が形成され、またポリカーボネート(メタ)アクリレート樹脂に適度な可撓性が付与される。なお、このポリカーボネートポリオールの末端官能基は、通常はOH基であるが、その一部がカーボネート基であってもよい。
以上説明したポリカーボネートポリオールの製造方法は、例えば、特開昭64−1726号公報に記載されている。また、このポリカーボネートポリオールは、特開平3−181517号公報に記載されているように、ポリカーボネートジオールと3価以上の多価アルコールとのエステル交換反応によっても製造することができる。
本発明に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートの分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。さらに好ましくは、2,000以上50,000以下であり、特に好ましくは、5,000〜20,000である。
電離放射線硬化性樹脂組成物において、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、多官能(メタ)アクリレートと共に用いることが好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートと該多官能(メタ)アクリレートの質量比としては、ポリカーボネート(メタ)アクリレート:多官能(メタ)アクリレート=98:2〜50:50であることがより好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が98:2より小さくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が、2成分の合計量に対して98質量%以下であると)、前述の耐久性、及び耐薬品性がさらに向上する。一方、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が50:50より大きくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が、2成分の合計量に対して50質量%以上となると)、三次元成形性がさらに向上する。好ましくは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が95:5〜60:40である。
本発明に用いられる多官能(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。ここで、2官能とは、分子内にエチレン性不飽和結合{(メタ)アクリロイル基}を2個有することをいう。官能基数としては、好ましくは2〜6程度が挙げられる。
また、多官能(メタ)アクリレートは、オリゴマー及びモノマーのいずれでもよいが、優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを両立させる観点からは、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
上記の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。ここで、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、他の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
また、上記の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。以上述べた多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー及び多官能性(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
保護層1を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物中におけるポリカーボネート(メタ)アクリレートの含有量としては、特に制限されないが、優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを両立させる観点からは、好ましくは98〜50質量%程度、より好ましくは90〜65質量%程度が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂を用いて保護層1を形成する場合、保護層1の形成は、例えば、電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
本発明においては、調製された塗布液を、所望の厚みとなるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて保護層1を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度が挙げられる。
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、保護層1の下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと保護層1の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。また、転写用基材2bの上に形成された離型層と、保護層1と共に電子線によって硬化させる場合には、電子線の透過深さと離型層及び保護層1の合計厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより、離型層の下に位置する転写用基材2bへの余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による転写用基材2bの劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、保護層1の架橋密度が十分な値となる量であり、好ましくは60〜300kGy(6〜30Mrad)、より好ましくは70〜200kGy(7〜20Mrad)が挙げられる。照射線量をこのような範囲に設定することにより、保護層1を透過した電離放射線による保護層1の下に位置する層の劣化を抑制することができる。なお、上記例は多官能(メタ)アクリレートの官能基数を2とした場合であり、官能基数に応じて適切な照射線量が必要である。
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈、紫外線発光ダイオード(LED−UV)等が挙げられる。
本発明において、保護層1は、オレフィン系ワックス及びフッ素系ワックスの少なくとも一方と、アマイド系ワックスとを含む。本発明の加飾シートは、これにより、優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを両立することが可能となっている。オレフィン系ワックス、フッ素系ワックス、及びアマイド系ワックスは、それぞれ、粒子により構成されている。
オレフィン系ワックスとしては、ポリオレフィンにより形成されたワックスであれば特に制限されず、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスが挙げられ、好ましくはポリエチレンワックスが挙げられる。オレフィン系ワックスは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
加飾シートに優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを効果的に発揮させる観点から、オレフィン系ワックスの粒子径としては、好ましくは1.0〜10.0μm程度、より好ましくは3.0〜6.0μm程度が挙げられる。なお、本明細書において粒子径とは、加飾シートの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、10点の平均値として求めた値を意味するものとする。
保護層1に含まれるオレフィン系ワックスの含有量は、特に制限されないが、加飾シートに優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを効果的に発揮させる観点から、保護層1に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜5.0質量部程度、より好ましくは0.1〜1.0質量部程度が挙げられる。
また、フッ素系ワックスとしては、フッ素系樹脂により形成されたワックスであれば特に制限されず、例えばポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレン変性ポリエチレンワックスなどが挙げられる。フッ素系ワックスは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
加飾シートに優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを効果的に発揮させる観点から、フッ素系ワックスの粒子径としては、好ましくは1.0〜10.0μm程度、より好ましくは3.0〜6.0μm程度が挙げられる。
保護層1に含まれるフッ素系ワックスの含有量は、特に制限されないが、加飾シートに優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを効果的に発揮させる観点から、保護層1に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜5.0質量部程度、より好ましくは0.1〜1.0質量部程度が挙げられる。
また、オレフィン系ワックス及びフッ素系ワックスを併用する場合、保護層1に含まれるオレフィン系ワックス及びフッ素系ワックスの合計含有量は、保護層1に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜5.0質量部程度、より好ましくは0.1〜1.0質量部程度が挙げられる。
アマイド系ワックスとしては、特に制限されず、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミドなどが挙げられる。
飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族系ビスアミドの具体例としては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。
アマイド系ワックスは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
加飾シートに優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを効果的に発揮させる観点から、アマイド系ワックスの粒子径としては、好ましくは1.0〜10.0μm程度、より好ましくは1.0〜4.0μm程度が挙げられる。また、アマイド系ワックスは、特定の粒子径を有していない不定形状の粒子であってもよい。
保護層1に含まれるアマイド系ワックスの含有量は、特に制限されないが、加飾シートに優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを効果的に発揮させる観点から、保護層1に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜5.0質量部程度、より好ましくは0.1〜3.0質量部程度が挙げられる。
保護層1の厚みについては、特に制限されないが、好ましくは1〜30μm程度、より好ましくは2〜20μm程度、さらに好ましくは3〜15μm程度が挙げられる。このような範囲の厚みを満たすと、加飾シートが優れた耐傷性と優れた三次元成形性とを効果的に発揮し得る。また、保護層1を電離放射線硬化性樹脂により形成する場合、電離放射線硬化性樹脂組成物に対して電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。
[プライマー層3]
プライマー層3は、基材2、装飾層4、透明樹脂層5などの層間の密着性を向上させることなどを目的として、これら層間の少なくとも1箇所に、必要に応じて設けられる層である。プライマー層3は、プライマー層形成用樹脂組成物により形成することができる。
プライマー層形成用樹脂組成物に用いる樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリオール及び/又はその硬化物、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、好ましくは、ポリオール及び/又はその硬化物、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明において、プライマー層3は、ポリオールとウレタン樹脂を含む樹脂組成物により形成することが好ましい。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であればよく、具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられ、好ましくはアクリルポリオールが挙げられる。
プライマー層3の形成にポリオールとウレタン樹脂とを使用する場合、これらの質量比(ポリオール:ウレタン樹脂)としては、好ましくは5:5〜9.5:0.5程度、より好ましくは7:3〜9:1程度が挙げられる。
ポリオールの硬化物としては、例えばウレタン樹脂が挙げられる。ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。
イソシアネートとしては、具体的には、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート;4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが挙げられる。イソシアネートを硬化剤として用いる場合、プライマー層形成用樹脂組成物におけるイソシアネートの含有量は特に制限されないが、密着性の観点や、後述の装飾層4などを積層する際の印刷適正の観点からは、上記のポリオール100質量部に対して3〜45質量部が好ましく、3〜25質量部がより好ましい。
上記ウレタン樹脂の中でも、架橋後の密着性の向上等の観点から、好ましくは、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、又は4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートとの組み合わせ;さらに好ましくは、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとの組み合わせが挙げられる。
上記アクリル樹脂としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂として、より具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が挙げられる。また、硬化剤としては、前述する各種イソシアネートが用いられる。アクリル−ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂におけるアクリルとウレタン比の比率については、特に制限されないが、例えば、アクリル/ウレタン比(質量比)として、9/1〜1/9、好ましくは8/2〜2/8が挙げられる。
プライマー層3の厚みについては、特に制限されないが、例えば0.1〜10μm程度、好ましくは1〜10μm程度(すなわち、塗布量が例えば0.1〜10g/m2程度、好ましくは1〜10g/m2)が挙げられる。プライマー層3がこのような厚みを充足することにより、基材2、装飾層4、透明樹脂層5などの層間の密着性を効果的に高めることができる。
プライマー層3を形成する組成物には、備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、マット剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができ、例えばマット剤としてはシリカ粒子や水酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
プライマー層3は、プライマー層形成用樹脂組成物を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法とは、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層や接着層の塗膜を形成し、その後に加飾シート中の対象となる層表面に被覆する方法である。
プライマー層3を保護層1の表面に形成する際には、硬化後の保護層1の上に形成してもよい。また、保護層1を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物の層の上にプライマー層形成用組成物からなる層を積層してプライマー層3を形成した後、電離放射線硬化性樹脂からなる層に電離放射線を照射し、電離放射線硬化性樹脂からなる層を硬化させて保護層1を形成してもよい。
[装飾層4]
装飾層4は、樹脂成形品に装飾性を付与するために、必要に応じて設けられる層である。装飾層4は、例えば、絵柄層及び/又は隠蔽層や、金属薄膜層などにより構成される。ここで、絵柄層は、模様や文字等とパターン状の絵柄を表現するために設けられる層であり、隠蔽層は、通常全面ベタ層であり成形樹脂等の着色等を隠蔽するために設けられる層である。隠蔽層は、絵柄層の絵柄を引き立てるために絵柄層の内側に設けてもよく、また隠蔽層単独で装飾層4を形成してもよい。金属薄膜層についても、単独で装飾層4を形成してもよい。
絵柄層の絵柄については、特に制限されないが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字等からなる絵柄が挙げられる。
絵柄層は、着色剤、バインダー樹脂、及び溶剤又は分散媒を含む印刷インキを用いて形成される。
絵柄層の形成に用いられる印刷インキの着色剤としては、特に制限されないが、例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、錫、チタン、リン化鉄、銅、金、銀、真鍮等の金属、合金、又は金属化合物の鱗片状箔粉からなるメタリック顔料;マイカ状酸化鉄、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、二酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、着色二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料;アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸バリウム、硫化亜鉛、硫化カルシウム等の蛍光顔料;二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色無機顔料;亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料;イソインドリノンイエロー、ハンザイエローA、キナクリドンレッド、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(染料も含む)等が挙げられる。これらの着色剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、絵柄層の形成に用いられる印刷インキのバインダー樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、絵柄層の形成に用いられる印刷インキの溶剤又は分散媒としては、特に制限されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等が挙げられる。これらの溶剤又は分散媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、絵柄層の形成に使用される印刷インキには、必要に応じて、沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、滑剤等が含まれていてもよい。
装飾層4は、例えば保護層1やプライマー層3上など隣接する層の上に、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の印刷法によって形成することができる。また、装飾層4を絵柄層及び隠蔽層の組み合わせとする場合には、一方の層を積層させて乾燥させた後に、もう一方の層を積層させて乾燥させればよい。
装飾層4の厚さについては、特に制限されないが、例えば、1〜40μm程度、好ましくは3〜30μm程度が挙げられる。
装飾層4は金属薄膜層であってもよい。金属薄膜層を形成する金属としては、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。金属薄膜層の形成方法は特に制限されず、例えば上記の金属を用いた、真空蒸着法などの蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。また、隣接する層との密着性を向上させるため、金属薄膜層の表面や裏面には公知の樹脂を用いたプライマー層を設けてもよい。
[透明樹脂層5]
本発明の加飾シートにおいて、透明樹脂層5は、加飾シートの成形性を高めることなどを目的として、図3に示されるように、基材2と保護層1との間や、図6の転写型の加飾シートであれば保護層1の基材2とは反対側に設けることができる。透明樹脂層5は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。透明樹脂層5を形成する樹脂成分としては、装飾層4で例示したバインダー樹脂などが挙げられる。
透明樹脂層5には、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
透明樹脂層5は、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の印刷法によって形成することができる。
透明樹脂層5の厚みとしては、特に限定されないが、一般的には0.1〜10μm程度、好ましくは1〜10μm程度が挙げられる。
[接着層]
接着層は、加飾シートと成形樹脂との接着性や密着性を向上させることなどを目的として、加飾シートの成形樹脂層側の最表面に必要に応じて設けられる層である(図示していない)。接着層を形成する樹脂としては、加飾シートと成形樹脂との接着性や密着性を向上させることができるものであれば、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層は必ずしも必要な層ではないが、本発明の加飾シートを、後述する真空圧着法など、予め用意された樹脂成形体上へ貼着による加飾方法に適用することを想定した場合は、設けられていることが好ましい。真空圧着法に用いる場合、上記した各種の樹脂のうち、加圧又は加熱により接着性を発現する樹脂として慣用のものを使用して接着層を形成することが好ましい。
2.樹脂成形品及びその製造方法
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートに成形樹脂を一体化させることにより成形されてなるものである。即ち、本発明の加飾樹脂成形品は、少なくとも、成形樹脂層と、保護層とを備え、保護層が、オレフィン系ワックス及びフッ素系ワックスの少なくとも一方と、アマイド系ワックスとを含むことを特徴とする。本発明の加飾樹脂成形品では、必要に応じて、加飾シートに前述の基材2(積層用基材2a)、プライマー層3、装飾層4、透明樹脂層5、隠蔽層、接着層などの少なくとも1層がさらに設けられていてもよい。
図2,3に示されるような前述の第1の態様においては、加飾樹脂成形品に基材2が設けられていてもよい。図4は、図3に示される加飾シートに成形樹脂層6が積層された加飾樹脂成形品の断面図である。また、図7に示されるような前述の第2の態様においては、図7のように、加飾樹脂成形品に転写用基材2bが設けられていてもよい(このような状態の加飾樹脂成形品を転写用基材付き加飾樹脂成形品ともいう)。図8は、図7に記載の転写用基材付き加飾樹脂成形品から転写用基材を剥離して得られる加飾樹脂成形品であり、図6に示される加飾シートに成形樹脂層6が積層された構成を備えている。
本発明の加飾樹脂成形品は、本発明の加飾シートを用いて、例えば、インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法、ガスインジェクション成形法等の各種射出成形法により作製される。これらの射出成形法の中でも、好ましくはインサート成形法及び射出成形同時加飾法が挙げられる。
インサート成形法では、まず、真空成形工程において、本発明の加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含むインサート成形法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、真空成形された加飾シートの余分な部分をトリミングして成形シートを得るトリミング工程、及び成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を射出成形型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する一体化工程。
インサート成形法における真空成形工程では、加飾シートを加熱して成形してもよい。この時の加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、例えば基材としてABS樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常120〜200℃程度とすることができる。また、一体化工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度とすることができる。
また、射出成形同時加飾法では、本発明の加飾シートを射出成形の吸引孔が設けられた真空成形型との兼用雌型に配置し、この雌型で予備成形(インライン予備成形)を行った後、射出成形型を型締めして、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に本発明の加飾シートを一体化させることにより、加飾樹脂成形品が製造される。
より具体的には、下記の工程を含む射出成形同時加飾法によって、本発明の加飾樹脂成形品が製造される。
本発明の加飾シートを、所定形状の成形面を有する可動金型の当該成形面に対し、加飾シートの基材の表面が対面するように設置した後、当該加飾シートを加熱、軟化させると共に、可動金型側から真空吸引して、軟化した加飾シートを当該可動金型の成形面に沿って密着させることにより、加飾シートを予備成形する予備成形工程、
成形面に沿って密着された加飾シートを有する可動金型と固定金型とを型締めした後、両金型で形成されるキャビティ内に、流動状態の樹脂を射出、充填して固化させることにより樹脂成形体を形成し、樹脂成形体と加飾シートを積層一体化させる一体化工程、及び
可動金型を固定金型から離間させて、加飾シート全層が積層されてなる樹脂成形体を取り出す取出工程。
射出成形同時加飾法の予備成形工程において、加飾シートの加熱温度は、特に限定されず、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常70〜130℃程度とすることができる。また、射出成形工程において、流動状態の樹脂の温度は、特に限定されないが、通常180〜320℃程度とすることができる。
また、本発明の加飾樹脂成形品は、真空圧着法等の、予め用意された立体的な樹脂成形体(成形樹脂層)上に、本発明の加飾シートを貼着する加飾方法によっても作製することができる。
真空圧着法では、まず、上側に位置する第1真空室及び下側に位置する第2真空室からなる真空圧着機内に、本発明の加飾シート及び樹脂成形体を、加飾シートが第1真空室側、樹脂成形体が第2真空室側となるように、且つ加飾シートの基材側が樹脂成形体側に向くように真空圧着機内に設置し、2つの真空室を真空状態とする。樹脂成形体は、第2真空室側に備えられた、上下に昇降可能な昇降台上に設置される。次いで、第1の真空室を加圧すると共に、昇降台を用いて成形体を加飾シートに押し当て、2つの真空室間の圧力差を利用して、加飾シートを延伸しながら樹脂成形体の表面に貼着する。最後に2つの真空室を大気圧に開放し、必要に応じて加飾シートの余分な部分をトリミングすることにより、本発明の加飾樹脂成形品を得ることができる。
真空圧着法においては、上記の成形体を加飾シートに押し当てる工程の前に、加飾シートを軟化させて成形性を高めるため、加飾シートを加熱する工程を備えることが好ましい。当該工程を備える真空圧着法は、特に真空加熱圧着法と呼ばれることがある。当該工程における加熱温度は、加飾シートを構成する樹脂の種類や、加飾シートの厚みなどによって適宜選択すればよいが、基材としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常60〜200℃程度とすることができる。
本発明の加飾樹脂成形品において、成形樹脂層は、用途に応じた樹脂を選択して形成すればよい。成形樹脂層を形成する成形樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、第2の態様においては、上記のような方法により加飾シートと成型樹脂とを一体化して得られた転写用基材付き加飾樹脂成形品から転写用基材2bを剥離除去することにより、加飾樹脂成形品が得られる。転写用基材2bを剥離除去する工程は任意の時期に行うことができ、例えば得られた転写用基材付き加飾樹脂成形品を成形装置から取り出すと同時に転写用基材2bを剥離除去することができる。また、転写用基材付き加飾樹脂成形品において、転写用基材2bは、加飾樹脂成形品の保護シートとしての役割を果たすので、転写用基材付き加飾樹脂成形品の製造後に剥離させずにそのまま保管しておき、用時に転写用基材を剥がしてもよい。このような態様で使用することにより、輸送時の擦れ等によって加飾樹脂成形品に傷付きが生じるのを防止することができる。
本発明の加飾樹脂成形品は、優れた耐傷性を有するため、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜4及び比較例1〜4)
[加飾シートの製造]
工程フィルムとしての、一方の面にヘアライン状の微細な凹凸形状を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、厚さ50μm)の当該凹凸形状面に、それぞれ、保護層の組成が表1に記載の組成となるように電離放射線硬化性樹脂組成物をバーコーターにより塗工膜厚10.0μmになるよう塗工し、保護層形成用塗膜を形成した。この塗膜上から加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、保護層形成用塗布膜を硬化させて保護層を形成した。この保護層の上に、アクリルポリオールを含むプライマー層形成用の樹脂組成物をグラビア印刷により塗工し、プライマー層(厚み1.0μm)を形成した。さらに、プライマー層上に、アクリル系樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂をバインダー樹脂(アクリル樹脂50質量%、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂50質量%)として含む装飾層形成用黒色系インキ組成物(黒色)を用いて装飾層(厚さ1.0μm)をグラビア印刷により形成した。次に、得られた積層体の装飾層側と、基材としてのABS樹脂フィルム(厚さ350μm)とを加熱圧着させ、工程フィルムを剥離することにより、保護層/プライマー層/装飾層/基材が順に積層された加飾シートを得た。ここで保護層の表面には工程フィルムの凹凸形状に由来するヘアライン状の微細な凹凸形状が賦型されていた。保護層の形成に用いた表1に記載の各成分の詳細は、以下の通りである。
[保護層の形成に用いた成分]
電離放射線硬化性樹脂: ポリカーボネート(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレート
オレフィン系ワックス: ポリエチレンワックス(粒子径5μm、球状粒子)
フッ素系ワックス: ポリテトラフルオロエチレンワックス(粒子径6μm、球状粒子)
アマイド系ワックスA: 不定形状の粒子
アマイド系ワックスB: 粒子径3.0μmの粒子
<耐傷付き性評価試験>
実施例1〜4及び比較例1〜4の加飾シートの透明樹脂層側の表面を爪で5往復ひっかき、表面の状態を目視で観察し、以下の基準に従い評価した。
○:表面に傷付きがなかった
×:表面に著しい傷があり、表面が削られていた
<三次元成形性の評価>
赤外線ヒータを用いて、上記で得られた各加飾シートを160℃に加熱して軟化させた。次に、真空成形型を用いて真空成形を行い(最大延伸倍率300%)、加飾シートを型の内部形状に成形した。加飾シートを冷却後、型から加飾シートを離型した。成形後の加飾シートの表面状態を目視で観察し、発生したクラックの数で成形性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
1;加飾シートに全くクラックが生じていない
2;加飾シートに1〜5本クラックが生じているが実用上問題ないレベル
3;加飾シートに6〜10本クラックが生じているが実用上問題ないレベル
4;加飾シートに11〜15本クラックが発生。実用上問題有り。
5;加飾シートに15本以上クラックが発生。実用上問題有り。
表1に示されるように、実施例1〜4の加飾シートは、保護層にオレフィン系ワックス及びフッ素系ワックスの少なくとも一方と、アマイド系ワックスとを含んでおり、優れた耐傷性と、優れた成形性とを両立できていた。一方、例えば実施例2、比較例1、及び比較例4を対比すると、比較例1の加飾シートに対して、比較例4のように保護層にアマイド系ワックスを添加するだけでは、耐傷性及び成形性は向上せず、実施例2のように、フッ素系ワックスとアマイド系ワックスを併用することによって、優れた耐傷性と優れた成形性とが両立されることが分かる。