JP2019061762A - リチウムイオン電池正極用導電ペースト及びリチウムイオン電池正極用合材ペースト - Google Patents
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Abstract
Description
項1.分散樹脂(A)、導電カーボン(B)、及び溶媒(C)を含有するリチウムイオン電池正極用導電ペーストであって、
Na、Ca、Fe、Si、Cu、Zn、Mg及びTiからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属(D)の合計含有量が300ppm未満であることを特徴とするリチウムイオン電池正極用導電ペースト。
項2.金属(D)の合計含有量が、1ppm以上であることを特徴とする項1に記載のリチウムイオン電池正極用導電ペースト。
項3.さらに、ポリフッ化ビニリデン(E)を含有することを特徴とする項1又は2に記載のリチウムイオン電池正極用導電ペースト。
項4.分散樹脂(A)が、水酸基含有分散樹脂(A−1)を含み、金属(D)の含有量をXppm、リチウムイオン電池正極用導電ペーストに対する水酸基含有分散樹脂(A−1)の含有量をY質量%、水酸基含有分散樹脂(A−1)の水酸基価をZmgKOH/gとした場合のX/(Y×Z)の値が、100未満であることを特徴とする項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池正極用導電ペースト。
項5.項1〜4のいずれか1項に記載の導電ペーストに、さらに電極活物質を配合してなるリチウムイオン電池正極用合材ペースト。
項6.項5に記載のリチウムイオン電池正極用合材ペーストを用いて得られるリチウムイオン電池正極用電極。
項7.項6に記載のリチウムイオン電池正極用電極を有するリチウムイオン電池。
なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
本発明は、分散樹脂(A)、導電カーボン(B)、及び溶媒(C)を含有するリチウムイオン電池正極用導電ペーストであって、
Na、Ca、Fe、Si、Cu、Zn、Mg及びTiからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属(D)の合計含有量が300ppm未満であることを特徴とするリチウムイオン電池正極用導電ペーストを提供する。
上記分散樹脂(A)としては、本発明の属する電池の分野において用いられている樹脂を適宜使用することができる。分散樹脂(A)としては、例えば、多環芳香族炭化水素基を有する樹脂(A1)、ポリビニルアルコール樹脂(A2)等が挙げられる。本発明においては、分散樹脂(A)は、多環芳香族炭化水素基を有する樹脂(A1)及びポリビニルアルコール樹脂(A2)を共に含むことが好ましい。
上記多環芳香族炭化水素基を有する樹脂(A1)は、モノマー混合物の固形分の総量を基準として、多環芳香族炭化水素を有するモノマー(A1−1)を、例えば、1〜70質量%含有するモノマー混合物を共重合することにより得ることができる。この場合の樹脂(A1)は、モノマー混合物の固形分の総量を基準として、多環芳香族炭化水素を有するモノマー(A1−1)を1〜70質量%含有するモノマー混合物の共重合体と言い換えることもできる。また、多環芳香族炭化水素を有さない樹脂を合成した後に多環芳香族炭化水素を付加することで多環芳香族炭化水素基を有する樹脂を得ることもできる。
上記多環芳香族炭化水素を有するモノマー(A1−1)の多環芳香族炭化水素としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、テトラセン環、クリセン環、ピレン環、ペンタセン環、ヘキサセン環、ヘプタセン環、コロネン環、ケクレン環を有する炭化水素基及びその誘導体が挙げられる。本発明の好ましい実施形態において、多環芳香族炭化水素を有するモノマー(A1−1)としては、上記多環芳香族のうち、ナフタレン環を有するもの、すなわち、ナフチル基を有する重合性不飽和モノマー又はその誘導体(A1−2)が挙げられる。ナフチル基を有する重合性不飽和モノマー又はその誘導体(A1−2)としては、例えば、後述する式(3)で表わされるナフチル基を有する重合性不飽和モノマー又はその誘導体(A1−1−2)等が挙げられる。
上記ナフチル(メタ)アクリレート又はその誘導体(A1−1−3)としては、例えば、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、及びこれらの誘導体等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
上記多環芳香族炭化水素基を有する樹脂(A1)は、多環芳香族炭化水素を有する重合性不飽和モノマー(A1−1)と該(A1−1)以外の重合性不飽和モノマーを共重合して得ることができる。多環芳香族炭化水素を有する重合性不飽和モノマー(A1−1)以外の重合性不飽和モノマーとしては、通常、アクリル樹脂の合成で使用される重合性不飽和モノマーであれば特に制限なく用いることができ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数3以下のアルキル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和化合物;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、分子末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等のウレタン結合を含まない含窒素重合性不飽和モノマー;イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと水酸基含有化合物との反応生成物又は水酸基含有重合性不飽和モノマーとイソシアネート基含有化合物との反応生成物等のウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等、これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基を有する重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
CH2=C(R1)COO(CnH2nO)m−R2 ・・・式(6)
〔式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは4〜60、特に4〜55の整数であり、nは2〜3の整数であり、ここで、m個のオキシアルキレン単位(CnH2nO)は同じであっても又は互いに異なっていてもよい。〕
CH2=C(−R1)−C(=O)−N(−R2)−R3 ・・・式(7)
上記式(7)中のR1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3は異なっていても同じでも良く、水素原子、水酸基を有する有機基及びアルキル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。さらにR2及びR3の両方又は片方が水酸基を有する有機基であることがより好ましく、具体的には、例えば、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル−N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、及びN−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル)アクリルアミドから選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。
上記多環芳香族炭化水素基を有する樹脂(A1)は、ラジカル重合開始剤の存在下に、有機溶剤中で溶液重合する方法、又は水性媒体中でエマルション重合する方法等の、それ自体既知のラジカル重合法によって得ることができる。
上記ポリビニルアルコール樹脂(A2)としては、下記式(1)で示される重合性不飽和基含有モノマー(A2a−1)とその他の重合性不飽和モノマーとを共重合して得られる樹脂(本明細書において、単にポリビニルアルコール樹脂(A2a)又は樹脂(A2a)と示すこともある)、スルホン酸変性ポリビニルアルコール樹脂(A2b)(本明細書において、単にポリビニルアルコール樹脂(A2b)又は樹脂(A2b)と示すこともある)、及び樹脂(A2a)と樹脂(A2b)以外のポリビニルアルコール樹脂(A2c)(本明細書において、単にポリビニルアルコール樹脂(A2c)又は樹脂(A2c)と示すこともある)が挙げられる:
ポリビニルアルコール樹脂(A2a)は、前記式(1)で示される重合性不飽和基含有モノマー(A2a−1)とその他の重合性不飽和モノマーとを共重合して得られる樹脂である。本発明において、「重合性不飽和基含有モノマー(A2a−1)を構成成分の1つとする樹脂」とは、重合性不飽和基含有モノマー(A2a−1)を含む原料モノマーの(共)重合により得られる樹脂を意味する。同様に、本発明において、モノマーXを「構成成分とする」樹脂とは、モノマーXを含む原料を(共)重合することにより得られる樹脂を意味する。また、上記ポリビニルアルコール樹脂(A2a)はスルホン酸変性をしておらず、スルホン酸変性ポリビニルアルコール樹脂(A2b)とは明確に区別できる。
中でも、単結合(Xは存在しない)、炭化水素基、エステル基〔−C(=O)−O−〕、アミド基〔−C(=O)−NH−〕、アミドメチル基〔−C(=O)NH−CH2−〕から選ばれる連結鎖であることが好ましく、単結合(Xは存在しない)であることがより好ましい。
言い換えると、少なくとも1種の重合性不飽和基含有モノマー(A2a−1)と少なくとも1種の脂肪酸ビニルエステル(A2a−2)の共重合体をケン化することによって、樹脂(A2a)が、重合性不飽和基含有モノマー(A2a−1)、脂肪酸ビニルエステル(A2a−2)、及びビニルアルコール(A2a−3)を構成成分とする樹脂となることが特に好ましい。
スルホン酸変性ポリビニルアルコール樹脂(A2b)は、以下の製造方法でスルホン酸を付与したポリアルコール樹脂のことである。また、ポリビニルアルコール樹脂(A2b)は前記式(1)で示される重合性不飽和基含有モノマー(A2a−1)を含有しておらず、ポリビニルアルコール樹脂(A2a)とは明確に区別できる。
(1)スルホン酸基及び重合性不飽和基を含有する化合物と、酢酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルとを共重合し、得られる重合体を更にケン化する方法。
(2)ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等をポリビニルアルコールにマイケル付加させる方法。
(3)ポリビニルアルコールを硫酸化合物溶液(硫酸水溶液や亜硫酸ナトリウム水溶液等)で加熱する方法。
(4)ポリビニルアルコールをスルホン酸基含有アルデヒド化合物でアセタール化する方法。
(5)スルホン酸基を有するアルコール、アルデヒド及びチオール等の官能基を有する化合物を連鎖移動剤として共存させ、ポリビニルアルコールの重合をする方法。
分散樹脂(A)は、前記重合性不飽和基含有モノマー(A2a−1)を含まず、スルホン酸変性をしていないケン化度30〜100mol%のポリビニルアルコール樹脂(A2c)を含有することができる。本発明において、「重合性不飽和基含有モノマー(A2a−1)を含まないポリビニルアルコール樹脂」とは、重合性不飽和基含有モノマー(A2a−1)を含まない原料モノマーの(共)重合により得られるポリビニルアルコール樹脂を意味する。また、「スルホン酸変性をしていないポリビニルアルコール樹脂」とは、スルホン酸基を含有しない原料モノマーの(共)重合により得られるポリビニルアルコール樹脂またはポリビニルアルコール樹脂を前述した変性等によりスルホン酸基を付加していない樹脂を意味する。
また、ケン化度は、通常30〜100mol%の範囲内であり、好ましくは32〜94mol%の範囲内である。
尚、上記ポリビニルアルコール樹脂(A2c)は市販品であっても良い。
分散樹脂(A)には、上記の樹脂(A1)及び樹脂(A2)以外の樹脂を任意選択で配合してもよい。例えば、樹脂(A1)及び樹脂(A2)以外のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリケート樹脂、塩素系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)以外のフッ素系樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、フッ素樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の樹脂を併用して用いることが好ましい。また、これらの樹脂は、顔料分散樹脂として、又は顔料分散後の添加樹脂として導電ペーストに配合することができる。
尚、本発明において、水酸基含有分散樹脂(A−1)とは、分散樹脂(A)に含まれる樹脂のうち、水酸基を含有するものを意味する。また、水酸基含有分散樹脂(A−1)が複数含有している場合、水酸基価はその平均値である。
上記導電カーボン(B)としては、本発明の属する電池の分野において用いられている導電カーボンを適宜使用することができる。上記導電カーボン(B)としては、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、ケッチェンブラック、バルカン、カーボンナノチューブ、グラフェン、気相成長カーボンファイバー(VGCF)、黒鉛等が挙げられる。好ましくは、アセチレンブラック、黒鉛等が挙げられ、より好ましくはアセチレンブラック等が挙げられる。また、本発明の好ましい実施形態において、導電カーボン(B)は、アセチレンブラック及び黒鉛の両方を含んでいてもよい。これらの導電カーボンは、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
上記溶媒(C)としては、リチウムイオン電池正極用導電ペーストの分野において既知のものを広く用いることができ、前述した多環芳香族炭化水素基を有する樹脂(A1)の重合又は希釈に使用される水以外の溶媒を好適に用いることができる。好ましい溶媒(C)の具体例としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール等が挙げられ、好ましくはN−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
リチウムイオン電池正極用導電ペーストには、上記成分(A)、(B)、(C)及び(D)以外の成分を配合してもよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(E)、脱水剤、添加剤を用いることができ、特にポリフッ化ビニリデンを用いることが好ましい。
上記ポリフッ化ビニリデンとしては、発明が属するリチウムイオン電池正極用導電ペーストの分野において耕地のものを広く用いることができる。ポリフッ化ビニリデンの重量平均分子量は特に限定されないが、通常10,000〜2,000,000が好ましく、50,000〜1,700,000がより好ましく、100,000〜1,500,000が特に好ましい。上記ポリフッ化ビニリデンは、導電カーボンの分散樹脂として用いてもよく、または導電カーボンの分散後に添加してもよい。ポリフッ化ビニリデン(E)を用いる場合、リチウムイオン電池正極用導電ペースト固形分中のポリフッ化ビニリデン(E)の固形分含有量は、通常、1質量%以上、かつ30質量%未満、好ましくは2質量%以上、かつ25質量%未満、より好ましくは4質量%以上、かつ20質量%未満が電池性能の点から好適である。
上記脱水剤としては、脱水作用を有するものであれば公知のものを特に制限なく用いることができる。導電ペーストの溶媒(C)に溶解しない固体の脱水剤でもよいし、溶媒(C)に溶解する脱水剤でもよい。具体的には、例えば、ゼオライト、シリカゲル、酸化カルシウム、モレキュラーシーブ、活性アルミナ、酸化バリウム、水素化カルシウム、硫酸ナトリウム等の固形脱水剤;トリメチルホスフェイト、トリ−2−プロピルホスフェイト、トリブチルホスフェイト、テトライソプロピルエチレンホスホネート等のリン酸エステル;トルブチルホスフィンオキサイド、トリオクチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド;オルト蟻酸メチルエステル、オルト蟻酸エチルエステル、オルト酢酸メチルエステル、オルト酢酸エチルエステル、オルト安息香酸エチルエステル等のオルトエステル類;無水シュウ酸、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、二硫酸、五酸化二窒素、二リン酸、五酸化二リン、三酸化二リン、五酸化二ヒ素、三酸化二ヒ素、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、スルホ安息香酸無水物等の酸無水物などが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
添加剤としては、例えば、中和剤、顔料分散剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、結着剤(バインダー)等を挙げることができる。
本発明のリチウムイオン電池正極用導電ペーストは、以上に述べた各成分を、例えば、ディスパー、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、ペブルミル、ロールミル、LMZミル、DCPパールミル、遊星ボールミル、ホモジナイザー、各種ミキサー、二軸混練機、薄膜旋回型高速ミキサー等の従来公知の分散機を用いて均一に混合、分散させることにより調製することができる。
本発明は、前述した本発明のリチウムイオン電池正極用導電ペーストに、さらに電極活物質を配合してなるリチウムイオン電池正極用合材ペーストを提供する。
上記電極活物質としては、本発明の属する電池の分野において用いられている電極活物質を適宜使用することができる。リチウムイオン電池正極用合材ペーストの分野において既知のものを広く用いることができる。例えば、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等のリチウム複合酸化物等が挙げられる。これらの電極活物質は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。本発明のリチウムイオン電池正極用合材ペースト固形分中の電極活物質の固形分含有量は、通常30質量%以上、かつ99質量%未満、好ましくは50質量%以上、かつ95質量%未満であることが、電池容量、電池抵抗等の面から好適である。
ペーストを25℃の温度で7日間貯蔵を行い、初期粘度と貯蔵後の粘度の比較を行う。粘度は、25℃の温度でコーン&プレート型粘度計(「Mars2」(商品名、HAAKE社製))を用い、シアーレート1.0sec−1で測定する。
〔粘度変化率(%)〕=〔貯蔵後の粘度〕/〔初期粘度〕×100
本発明は、前述した本発明のリチウムイオン電池正極用合材ペーストを用いて得られるリチウムイオン電池正極用電極を提供する。
多環芳香環含有樹脂の製造
製造例1
攪拌加熱装置と冷却管を備えた反応容器に、プロピレングリコールモノメチルエーテル300部を仕込み、窒素置換後、105℃に保った。この中に、以下に示すモノマー混合物を3時間かけて滴下した。
<モノマー混合物>
4−ヒドロキシ−1−ナフチルメタクリレート 250部
2−メトキシ−4−ヒドロキシ−1−ナフチルアクリレート 250部
スチレン 50部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 50部
N,N−ジメチルアクリルアミド 200部
N−エチル−N−ヒドロキシエチルアクリルアミド 200部
2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル) 40部
滴下終了後から1時間経過後、この中に2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)5部をプロピレングリコールモノメチルエーテル100部に溶かした溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、これをさらに1時間105℃に保持したのち、排出して熱風乾燥機で乾燥した。最終的に固形分100%の多環芳香環含有樹脂No.1を得た。多環芳香環含有樹脂No.1は、重量平均分子量11,000であった。
製造例1のモノマー組成を下記表1の種類及び配合量とする以外は、製造例1と同じ組成及び製造方法で多環芳香環含有樹脂No.2及び3を製造した。(重量平均分子量は共に11,000であった。)
製造例4
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル90質量部及び2−ブテン−1,4−ジオール10質量部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してケン化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥した。最終的に、重合度300、ケン化度95モル%のポリビニルアルコール樹脂No.1を得た。
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル90質量部及び1−ブテン−3,4−ジオール10質量部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してケン化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥した。最終的に、重合度300、ケン化度95モル%のポリビニルアルコール樹脂No.2を得た。
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル90質量部及び1−ペンテン−4,5−ジオール10質量部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してケン化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥した。最終的に、重合度300、ケン化度95モル%のポリビニルアルコール樹脂No.3を得た。
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル97質量部及びアリルスルホン酸ナトリウム3.0質量部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してケン化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥した。最終的に、重合度300、ケン化度95モル%のポリビニルアルコール樹脂No.4を得た。
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してケン化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥した。最終的に、重合度500、ケン化度57モル%のポリビニルアルコール樹脂No.5を得た。
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してケン化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥した。最終的に、重合度500、ケン化度75モル%のポリビニルアルコール樹脂No.6を得た。
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してケン化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥した。最終的に、重合度500、ケン化度92モル%のポリビニルアルコール樹脂No.7を得た。
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管および撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してケン化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥した。最終的に、重合度500、ケン化度5モル%のポリビニルアルコール樹脂No.8を得た。
実施例1
製造例1で得られた多環芳香環含有樹脂No.1 6部(固形分6部)、製造例5で得られたポリビニルアルコール樹脂No.2 9部(固形分9部)、製造例6で得られたポリビニルアルコール樹脂No.3 9部(固形分9部)、製造例10で得られたポリビニルアルコール樹脂No.7 6部(固形分6部)、アセチレンブラック1200部、KFポリマーW#7300(商品名、ポリフッ化ビニリデン、クレハ社製、水分量100ppm)220部、N−メチル−2−ピロリドン8500部、及び脱水剤6部(五酸化二リン1.5部、無水酢酸1.5部、メタンスルホン酸無水物1.5部、オルト蟻酸エチルエステル1.5部)を混合してボールミルにて5時間分散し、導電ペーストX−1を得た。尚、金属(Na、Ca、Fe、Si、Cu、Zn、Mg、Ti)含有量は、原料からの持ち込みと後添加により、それぞれ10ppmに調整した。
下記表2のものとする以外は、実施例1と同様にして、導電ペーストX−2〜X−37を製造した。尚、表中の樹脂配合量は全て固形分の値である。
また、下記表2中に、ICP発光分析装置「ICPS−8100」で測定した金属(Na、Ca、Fe、Si、Cu、Zn、Mg、Ti)含有量(ppm)と、金属含有量(ppm)/〔水酸基含有分散樹脂含有量(質量%)×水酸基価(mgKOH/g)〕〔X/(Y×Z)〕を記す。
実施例29
実施例1で得られた導電ペーストX−1 100部、及び活物質粒子(組成式LiNi0.5Mn1.5O4で表されるスピネル構造のリチウムニッケルマンガン酸化物粒子。平均粒径6μm、BET比表面積0.7m2/g)150部を混合して合材ペーストY−1を製造した。
下記表3のものとする以外は、実施例29と同様にして、合材ペーストY−2〜Y−37を製造した。
<導電ペーストの粘度>
実施例及び比較例で得られた導電ペーストをコーン&プレート型粘度計「Mars2」(商品名、HAAKE社製)を用い、シアーレート1.0sec−1で粘度を測定し、下記基準により評価した。評価としては、S、A、B、Cが合格で、Dが不合格である。
S:粘度が、1Pa・s未満である。
A:粘度が、1Pa・s以上、かつ5Pa・s未満である。
B:粘度が、5Pa・s以上、かつ30Pa・s未満である。
C:粘度が、30Pa・s以上、かつ100Pa・s未満である。
D:粘度が、100Pa・s以上である。
Claims (7)
- 分散樹脂(A)、導電カーボン(B)、及び溶媒(C)を含有するリチウムイオン電池正極用導電ペーストであって、
Na、Ca、Fe、Si、Cu、Zn、Mg及びTiからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属(D)の合計含有量が300ppm未満であることを特徴とするリチウムイオン電池正極用導電ペースト。 - 金属(D)の合計含有量が、1ppm以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池正極用導電ペースト。
- さらに、ポリフッ化ビニリデン(E)を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池正極用導電ペースト。
- 分散樹脂(A)が、水酸基含有分散樹脂(A−1)を含み、金属(D)の含有量をXppm、リチウムイオン電池正極用導電ペーストに対する水酸基含有分散樹脂(A−1)の含有量をY質量%、水酸基含有分散樹脂(A−1)の水酸基価をZmgKOH/gとした場合のX/(Y×Z)の値が、100未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池正極用導電ペースト。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電ペーストに、さらに電極活物質を配合してなるリチウムイオン電池正極用合材ペースト。
- 請求項5に記載のリチウムイオン電池正極用合材ペーストを用いて得られるリチウムイオン電池正極用電極。
- 請求項6に記載のリチウムイオン電池正極用電極を有するリチウムイオン電池。
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