JP2019059688A - 結晶性l−カルノシン亜鉛錯体の製造方法 - Google Patents

結晶性l−カルノシン亜鉛錯体の製造方法 Download PDF

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健次 田中
Kenji Tanaka
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佐藤  誠
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Yoshihiro Yokoo
嘉寛 横尾
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Abstract

【課題】 保護L−カルノシンの脱保護反応を行い、L−カルノシンとした後、該L-カルノシンから結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)を製造するに際し、高収率でポラポレジンクを製造する方法を提供する。【解決手段】 下記式(i)【化1】(式中、PGは、アミノ基の保護基である。)で示される保護L−カルノシンの脱保護反応を、該保護L−カルノシンが溶解する溶媒中で行うことにより、L−カルノシンを製造した後、得られたL−カルノシンを、結晶として単離することなく、亜鉛塩化することにより結晶性L−カルノシン亜鉛錯体を製造する方法である。【選択図】 なし

Description

本発明は、結晶性L−カルノシン亜鉛錯体の新規な製造方法に関する。
下記式
Figure 2019059688
で示されるL−カルノシンは、組織修復促進作用、免疫調整作用、抗炎症作用を有していることから、医薬品や健康食品などの需要が高まっている。また、該L−カルノシンは、容易に金属とキレート結合をつくることから、亜鉛と錯形成した、下記式
Figure 2019059688
で示される結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(以下、単に「ポラプレジンク」とする場合もある)などの抗潰瘍薬、味覚障害治療薬へ応用されている。
前記ポラプレジンクは、通常、結晶(固体)のL−カルノシンをメタノール、および水酸化ナトリウムと混合して溶解させた後、該溶液に酢酸亜鉛を加えて製造されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特公平07−116160号公報 特開2007−204397号公報 国際公開WO2015/119235号パンフレット
ポラプレジンクは、医薬品であるため、高純度のものが要求されている。そのため、原料となるL−カルノシンも純度の高いものが要求されている。従来の方法よれば、純度の高いポラプレジンクを製造することができる。
しかしながら、本発明者等の検討によれば、従来の方法には以下の点で改善の余地があることが分かった。すなわち、従来の方法では、最終的に得られるポラプレジンクの収率が低くなるという点で改善の余地があることが分かった。
したがって、本発明の目的は、ポラプレジンクの収率を高める点にある。
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った。そして、ポラプレジンクの収率が低下する原因を様々検討した結果、L−カルノシンを結晶として取り出す際に、L−カルノシンの収率が大きく低下することが原因ではないかと考えた。
L−カルノシンは、アミノ基、および水酸基を有する化合物であり、水、およびアルコールを使用して精製する場合が多い。本発明者等の検討によれば、水、およびアルコールのような溶媒に対して、L−カルノシンは溶解性が高く、結晶として取り出す際に、液中に結晶化されないL−カルノシンが多く存在することが分かった。通常、L−カルノシンを亜鉛塩化してポラプレジンクにする場合には、結晶化して単離したL−カルノシンを原料としており、L−カルノシンの収率低下がポラプレジンクの収率低下につながっていると考えられた。
そこで、本発明者等は、上記原因を解消するために、L−カルノシンを製造した際に、反応系外に一旦、固体(結晶)として取り出さずに、そのままポラプレジンクへと変換することにより、ポラプレジンクの収率を高くできることを見出し、本発明を完成するに至った。つまり、結晶化・濾過精製により高度に高純度化していないL−カルノシンを用いて亜鉛塩化することにより、高収率で結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)下記式(i)
Figure 2019059688
(式中、PGは、アミノ基の保護基である。)で示される保護L−カルノシン(以下、単に「保護L−カルノシン(i)」とする場合もある。)の脱保護反応を該保護L−カルノシンが溶解する溶媒中で行うことにより、L−カルノシンを製造した後、
得られたL−カルノシンを、結晶として単離することなく、亜鉛塩化することにより結晶性L−カルノシン亜鉛錯体を製造する方法である。
なお、PGで示されるアミノ基の保護基とは、アミノ基の保護基とは、アミノ基に置換して所定反応中に不活性化する基であり、所定反応後、脱保護によりアミノ基が形成される基である。
本発明は、以下の態様をとることができる。
(2)前記保護L−カルノシンの脱保護反応を該保護L−カルノシンが溶解する溶媒中で行うことにより、L−カルノシンを製造した後、
該L−カルノシン、および前記溶媒を含む混合液と、少なくとも水酸化アルカリとを混合し、次いで、
得られた混合溶液と酢酸亜鉛とを混合することにより、該L−カルノシンを亜鉛塩化して結晶性L−カルノシン亜鉛錯体を製造する(1)に記載の方法である。
(3)前記式(i)におけるアミノ基の保護基であるPGが、置換基を有してもよいベンジルオキシカルボニル基、又はt−ブトキシカルボニル基であり、
前記脱保護反応を、パラジウム系触媒、および水素源の存在下で実施するか、又は酸により実施する前記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)得られたL−カルノシン、および溶媒を含む前記混合液が、L−カルノシン1質量部当たり、該溶媒を1〜100質量部含む前記(2)又は(3)に記載の方法。
また、脱保護反応を酸で実施した場合には、混合物と水酸化アルカリとの混合を、以下のように多段階に分けて実施することが好ましい。
(5)前記脱保護反応を酸により実施した後、
得られたL−カルノシンを含む混合物と、少なくとも水酸化アルカリとを混合してpHが7.0〜9.0である前処理溶液とし、
該前処理溶液に含まれる溶媒を炭素数1〜3のアルコールに置換した後、さらに、少なくとも水酸化アルカリを混合して混合溶液とし、次いで、
得られた混合溶液と酢酸亜鉛とを混合することにより、該L−カルノシンを亜鉛塩化して結晶性L−カルノシン亜鉛錯体を製造する(1)に記載の方法。
本発明において、「単離することなく」とは、「脱保護反応により得られたL−カルノシンを結晶として一旦取り出すことがない」ということを意味する。すなわち、脱保護反応時、および分散媒等に使用した溶媒とL−カルノシンとを、デカンテーション、又は濾過操作により分別することなく、該L−カルノシンを亜鉛塩化して結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)とするものである。そのため、L−カルノシンと溶媒とを含む混合液を濃縮して、該溶媒の量を低減した混合液を使用して結晶性L−カルノシン亜鉛錯体を製造することもできる(この場合、デカンテーション、又は濾過操作を行わないため、ろ液と共にL−カルノシンを損失せず、濃縮した混合液を使用することができる。)。
本発明によれば、前記デカンテーション、又は濾過操作等により、溶媒とL−カルノシンとを分離する際に、本来であれば該溶媒(ろ液)ともに除去されるL−カルノシンをも効率よく、結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)とすることができる。その結果、該結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)の収率を向上できる。加えて、L−カルノシンを結晶として取り出さないため、結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)の製造方法を簡略化することができる。さらには、得られた結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)は、水、およびアルコール等の溶媒により、高純度化することができる。
以上の通り、本発明によれば、より簡便な方法で結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)を高収率で製造できるため、本発明の工業的利用価値は高い。
本発明は、アミノ基を保護した保護L−カルノシンの脱保護反応を溶媒中で行った後、得られたL−カルノシンを、単離することなく(結晶として取り出すことなく)、亜鉛塩化することにより結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラポレジンク)を製造する方法である。以下、順を追って説明する。
<保護L−カルノシン>
本発明においては、先ず、下記式(i)
Figure 2019059688
(式中、PGは、アミノ基の保護基である。)で示される保護L−カルノシンの脱保護反応を、該保護L−カルノシンが溶解する溶媒中で行う。
前記式(i)におけるPGは、アミノ基の保護基である。該保護基は、公知のアミノ基の保護基が挙げられ、具体的には、置換基を有していてもよいベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、トリフルオロアセチル基、t−ブトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシキカルボニル基、又はホルミル基であることが好ましい。この中でも、脱保護反応という点から、t−ブトキシカルボニル基、又は置換基を有してもよいベンジルオキシカルボニル基が好ましい。ベンジルオキシカルボニル基が有する置換基とは、ベンジルオキシカルボニル基のフェニル基が有する置換基である。該置換基としては、メチル基、メトキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、ジメチルアミノ基が挙げられる。中でも、最も好ましい保護アミノ基としては、非置換の、単なるベンジルオキシカルボニル基、又はt−ブトキシカルボニル基であることが好ましい。
前記保護L−カルノシンは、特に制限されるものではなく、公知の方法で製造できる。例えば、中国特許出願公開CN103408497号、国際公開第WO2011/080139号パンフレット等に記載の方法に従い製造できる。より詳細に説明すると、PGがベンジルオキシカルボニル基である保護L−カルノシンは、国際公開第WO2011/080139号パンフレットに記載の方法により製造できる。また、PGがt−ブトキシカルボニル基である保護L−カルノシンは、中国特許出願公開CN103408497号に記載の方法により製造できる。
<保護L−カルノシンの好適な製造方法>
中でも、効率よく純度の高い保護L−カルノシンを製造するためには、下記反応式に従い保護L−カルノシンを製造することが好ましい。
Figure 2019059688
すなわち、前記式(1)で示される酸無水物と、前記式(2)で示されるL−ヒスチジン誘導体とを反応させることにより、保護L−カルノシンを製造することが好ましい。前記酸無水物は、新規化合物である。先ず、この酸無水物について説明する。
<保護L−カルノシンの好適な製造方法;原料化合物 酸無水物>
下記式(1)
Figure 2019059688
で示される酸無水物を原料として保護L-カルノシンを製造することが好ましい。
前記式(1)において、Rは、下記式(1a)
Figure 2019059688
(式中、
は、アミノ基の保護基である。)
で示される保護アミノエチル基である。
前記式(1a)の保護アミノエチル基において、アミノ基の保護基であるRは、公知の保護基が挙げられる。中でも、酸無水物自体の生産性、所定反応時の安定性、および脱保護反応を考慮すると、置換基を有していてもよいベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、トリフルオロアセチル基、t−ブトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシキカルボニル基、又はホルミル基である。この酸無水物から合成される保護L−カルノシンにおいて、PGは、Rに該当する。そのため、特に好ましいRは、ベンジルオキシカルボニル基、又はt−ブトキシカルボニル基である。
は、前記保護アミノエチル基、または下記式(1b)
Figure 2019059688
(式中、
、R、およびRは、それぞれ、水素原子、又は炭素数1〜6のア
ルキル基であり、ただし、R、R、およびRの少なくとも2つの基が
炭素数1〜6のアルキル基である。)で示される分岐基である。
において、保護アミノエチル基は、前記Rで説明したものと同じ基が挙げられ、同じ理由で好ましい基も同じである。
また、Rは、前記式(1b)で示される分岐基であってもよい、該分岐基において、R、R、およびRは、それぞれ、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基であり、ただし、R、R、およびRの少なくとも2つの基が炭素数1〜6のアルキル基である。つまり、R、R、およびRが結合する炭素原子は、2級または3級炭素原子とならなければならない。中でも、酸無水物の反応性、それ自体の生産性を考慮すると、R、R、およびRのアルキル基は、炭素数1〜3であることが好ましい。最も好ましくは、該分岐基がt−ブチル基となる場合である。すなわち、R、R、およびRが、メチル基となる場合である。
前記酸無水物は、新規な化合物である。そして、Rが前記保護アミノエチル基、又は前記分岐基の場合とでその製造方法が異なるが、本発明においては、Rが前記分岐基である場合の製造方法について説明する。
<保護L−カルノシンの好適な製造方法;原料化合物酸無水物;酸無水物(I)、およびその製造方法>
前記酸無水物において、Rが前記分岐基である場合には、下記式(1’)
Figure 2019059688
で示される酸無水物(I)となる(以下、単に「酸無水物(I)」とする場合もある。)。なお、前記酸無水物(I)において、Rは、前記式(1)におけるものと同義であり、好ましい基も同じ理由で前記に説明した基が挙げられる。
また、R、R、およびRは、前記式(1b)におけるものと同義であり、好ましい基も同じ理由で前記に説明した基が挙げられる。
前記酸無水物(I)は、特に制限されるものではないが、以下の方法で製造することができる。具体的には、
下記式(4)
Figure 2019059688
{式中、Rは、前記式(1)におけるものと同義である。}で示されるN−保護−β−アラニン誘導体と、
下記式(5)
Figure 2019059688
(式中、Xは、ハロゲン原子であり、R、R、およびRは、前記式(1b)におけるものと同義である。)で示されるハロゲン化物とを、有機塩基の存在下で反応させることにより製造できる。なお、当然ことではあるが、R、R、R、およびRは、<酸無水物>で説明したのと同じ理由で好ましい基も同じである。
前記式(4)で示される前記N−保護−β−アラニン誘導体は、公知の化合物であり、例えば、国際公開第WO1998/019705号に記載の方法で製造することができる。この中でも、酸無水物(I)の生産性、反応時における安定性、および脱保護のし易さ等を考慮すると、前記N−保護−β−アラニン誘導体は、N−t−ブトキシカルボニル−β−アラニン、又はN−ベンジルオキシカルボニル−β−アラニンであることが最も好ましい。
前記式(5)において、Xは、ハロゲン原子である。中でも、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であることが好ましく、特に、塩素原子であることが好ましい。前記ハロゲン化物は、公知の化合物であり、公知の方法で製造できる。例えば、CN 101311155に記載の方法で製造することができる。この中でも、酸無水物(I)の生産性、反応時における安定性、および脱保護のし易さ等を考慮すると、前記ハロゲン化物は、クロロ炭酸エチル、ピバロイルクロリドであることが好ましく、ピバロイルクロリドであることが最も好ましい。
前記ハロゲン化物は、前記N−保護−β−アラニン誘導体1モルに対して、1〜5モル使用することが好ましく、さらに1〜2モル使用することが好ましい。
前記酸無水物(I)を製造するためには、前記N−保護−β−アラニン誘導体と前記ハロゲン化物とを有機塩基存在下で反応させる。
前記有機塩基は、特に制限されるものではない。中でも、有機塩基の窒素原子に水素原子が結合していない3級アミン、および複素環式化合物であることが好ましい。具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルモルホリン、等の3級アミン、ピリジン、キノリン等の、窒素原子を有し、かつ該窒素原子が水素原子と結合していない複素環式化合物であることが好ましい。
前記有機塩基は、特に制限されるものではないが、前記N−保護−β−アラニン誘導体1モルに対して、1〜5モル使用することが好ましく、さらに1〜2モル使用することが好ましい。
前記酸無水物(I)は、前記有機塩基の存在下、前記N−保護−β−アラニン誘導体と前記ハロゲン化物とを反応させることにより、製造できる。該反応は、有機溶媒中で実施することが好ましい。具体的には、該反応は、有機溶媒中で前記有機塩基、前記N−保護−β−アラニン誘導体、および前記ハロゲン化物を攪拌混合することにより、実施することが好ましい。
前記酸無水物(I)の製造方法において、有機溶媒を使用する場合、該有機溶媒は、前記N−保護−β−アラニン誘導体と前記ハロゲン化物との反応を阻害しないものであれば、特に制限されるものではない。好適な有機溶媒を例示すると、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフランが好ましい。
前記有機溶媒の使用量は、特に制限されるものではなく、各成分を有機溶媒中で十分に攪拌混合できる量であればよい。前記有機塩基の存在下、前記N−保護−β−アラニン誘導体と前記ハロゲン化物とを反応させるには、各成分を攪拌混合して接触させればよい。
前記N−保護−β−アラニン誘導体と前記ハロゲン化物とを反応させる際の反応温度は、特に制限されるものではないが、−30〜40℃であることが好ましく、−10〜20℃であることがより好ましい。
反応雰囲気も、特に制限されるものではなく、乾燥空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、通常の空気雰囲気下で実施することができる。また、大気圧下、減圧下、加圧下の何れの圧力下で反応を実施してもよい。そのため、操作性を考慮すると、空気雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下、大気圧下で反応を実施することが好ましい。
以上のような方法で前記酸無水物(I)を製造することができる。得られた酸無水物(I)は、以下の方法に従い反応系内から取り出すか、反応液をそそのまま用いることができる。
次に、前記酸無水物(酸無水物(I))と、L−ヒスチジン誘導体又はL−ヒスチジンとを反応させて、保護L−カルノシンを製造する方法について説明する。
<保護L−カルノシンの好適な製造方法;原料化合物 L−ヒスチジン誘導体>
前記酸無水物と反応させるのは、下記式(2)
Figure 2019059688
で示されるL−ヒスチジン誘導体である。
式中、R、およびRは、水素原子、又はアミノ基の保護基である。
該アミノ基の保護基としては、公知の保護基が挙げられる。中でも、L−ヒスチジン誘導体自体の生産性、所定反応時の安定性、および脱保護のし易さ等を考慮すると、炭素数が3〜12のトリアルキルシリル基であることが好ましく、特に、トリメチルシリル基が好ましい。
前記Rは、水素原子、又はカルボキシル基の保護基である。
該カルボキシル基の保護基としては、公知の保護基が挙げられる。中でも、L−ヒスチジン誘導体自体の生産性、所定反応時の安定性、および脱保護のし易さ等を考慮すると、炭素数が3〜12のトリアルキルシリル基であることが好ましく、特に、トリメチルシリル基が好ましい。
なお、R、R、およびRが水素原子である場合には、L−ヒスチジンとなる。
以上のようなL−ヒスチジン誘導体は、公知の化合物であり、例えば、中国特許出願公開CN101284862に記載の方法で製造することができる。
前記酸無水物と前記L−ヒスチジン誘導体とを反応させることにより、少なくとも保護基としてR(PG−NH−CHCH−;PGとRとは同一の基である)を有する保護L−カルノシンを製造できる。この反応は、酸無水物とアミン化合物(例えば、前記式(2)で示されるL−ヒスチジン誘導体)との反応であるため、容易に進行することができる。以下、R、R、およびRがトリメチルシリル基であるL−ヒスチジン誘導体を使用した場合の反応について例示する。
前記L−ヒスチジン誘導体を使用した場合には、前記酸無水物(I)1モルに対して、0.25〜3モルを使用することが好ましく、0.5〜1.5モル使用することがより好ましい。反応は、有機溶媒中で実施することが好ましい。具体的には、該反応は、有機溶媒中で前記酸無水物(I)、および前記L−ヒスチジン誘導体を攪拌混合することにより、実施することが好ましい。好適に使用できる有機溶媒は、<酸無水物(I)>で説明した有機溶媒が挙げられ、好適な有機溶媒も同じである。
前記酸無水物(I)と前記L−ヒスチジン誘導体とを反応させる際の反応温度は、特に制限されるものではないが、−78〜100℃であることが好ましく、−20〜20℃であることがより好ましい。
反応雰囲気も、特に制限されるものではなく、乾燥空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、通常の空気雰囲気下で実施することができる。また、大気圧下、減圧下、加圧下の何れの圧力下で反応を実施してもよい。そのため、操作性を考慮すると、空気雰囲気下、大気圧下で反応を実施することが好ましい。
得られた化合物は、R以外の保護基を下記に詳述する方法でする。具体的には、水、または、アルコール(水とアルコールとの混合溶媒でもよい)と接触させることにより、トリメチルシリル基を脱保護できる。使用する水、またはアルコールの量は、特に制限されるものではなく、保護L−カルノシン誘導体(I)と水、またはアルコールとが十分に接触できるだけの量であればよい。
以上の反応により、前記式(i)で示される保護L−カルノシンを製造できる。なお、当然のことながら、酸無水物とL−ヒスチジンとを反応させても、前記式(i)で示される保護L−カルノシンは製造できる。
本発明においては、前記にて例示した方法で製造した下記式(i)
Figure 2019059688
(式中、PGは、アミノ基の保護基である。)で示される保護L−カルノシンの脱保護反応を、該保護L−カルノシンが溶解する溶媒中で行う。
<結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラポレジンク)の製造方法>
本発明は、前記方法等で製造した保護L−カルノシン(i)の脱保護反応を行い、L−カルノシンとし、次いで、該L−カルノシンを亜鉛塩化して結晶性L−カルノシン亜鉛錯体を製造する方法において、該L−カルノシンを反応系外に取り出すことなく、連続して脱保護反応、および亜鉛塩化を行うことを特徴とするものである。
前記保護L−カルノシンにおけるPGを脱保護するためには、酸処理を行う方法、パラジウム系触媒存在下、および水素源を存在させる方法が挙げられる。酸を使用する場合には、PGは、置換基を有してもよいベンジルオキシ基、又はt−ブトキシカルボニル基であることが好ましく、中でも、t−ブトキシカルボニル基であることが好ましい。また、パラジウム系触媒存在下、および水素源を存在させる方法においては、PGは、置換基を有していてもよいベンジルオキシカルボニル基(好ましくは非置換のベンジルオキシカルボニル基)であることが好ましい。これらの方法は、PGの種類に応じて選択すればよい。次に、脱保護反応から亜鉛塩化するまでの一連の方法について説明する。先ず、酸処理により脱保護反応を行い、続けて、亜鉛塩化を行う方法について説明する。
<結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラポレジンク)の製造方法>
<脱保護反応;酸を使用してPGを脱保護する場合>
例えば、PGがt−ブトキシカルボニル基である場合には、酸処理によって脱保護反応を行うことが好ましい。使用する酸は、特に制限されるものではなく、塩化水素、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、フルオロホウ酸などのブレンステッド酸;、塩化アルミニウム、塩化鉄、ボロントリフルオリドーエーテル錯体などのルイス酸が挙げられる。中でも、除去のし易さ等を考慮すると、塩化水素であることが好ましい。また、これら酸は、水溶液の状態で反応系内に導入することができる。
酸の使用量は、特に制限されるものではないが、前記保護L−カルノシン(i)1モルに対して、酸を0.1〜100モル使用することが好ましい。中でも、前記保護L-カルノシン(i)と酸とを接触させる反応系内のpHが−1以上4未満となる範囲の使用量とすることが好ましい。このような条件で脱保護反応を実施するのが好ましい。前記反応系内pHは、使用する酸全量を反応系内に導入した際のpHの範囲である。
<脱保護反応:酸を使用してPGを脱保護する場合;溶媒>
脱保護反応は、溶媒中で実施することができる。脱保護反応を実施する場合には、酸が液体である場合には、無溶媒で実施することもできるが、溶媒中で実施することが好ましい。使用できる溶媒としては、
水、
酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、
塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、
トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒、
アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、
t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、
メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、
アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等のヘテロ原子含有溶媒等が挙げられる。これら溶媒は、単独種でも複数種であってもよい。この中でも、好ましい溶媒としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジオキサン等のエーテル系溶媒の難水溶性の有機溶媒が挙げられる。中でも、これら有機溶媒と水とを含む溶媒中で酸処理を行うことが好ましい。水を含む溶媒中で行う場合には、特に制限されるものではないが、有機溶媒/水の体積比が0.01/1〜1000/1となることが好ましい。水を使用する場合は、酸を希釈するのに使用する水も溶媒に含まれるものとする。
また、溶媒の使用量も、特に制限されるものではなく、前記保護L−カルノシン(i)と酸とが十分に接触混合できるような量であればよい。通常であれば、前記保護L−カルノシン(i)1gに対して、該溶媒(2種以上の溶媒を含む場合には合計溶媒量)を1〜100ml使用することが好ましい。
<脱保護反応;酸を使用してPGを脱保護する場合;その他条件>
酸を使用してPGの脱保護反応を行うに際し、反応系内へ前記保護L−カルノシン(i)、及び酸を導入する手順は、特に制限されるものではない。例えば、必要に応じて溶媒で希釈した前記保護L−カルノシン誘導体(i)、必要に応じて希釈した前記酸を同時に反応系内に導入し、攪拌混合する方法を採用できる。また、何れか一方を必要に応じて溶媒で希釈して先ず反応系内へ入れておき、必要に応じて溶媒で希釈したもう一方を反応系内へ添加して攪拌混合することもできる。中でも、不純物を低減するという点では、必要に応じて前記溶媒で希釈した前記保護L−カルノシン(i)を先に反応系内に導入し、それに、必要に応じて前記溶媒で希釈した前記酸を添加して、攪拌混合する方法を採用することが好ましい。
脱保護反応を行う際の反応温度は、特に制限されるものではなく、反応時間、収量、不純物副生の抑制等を考慮すると、−10〜200℃とすることが好ましく、さらには10〜120℃とすることが好ましい。
脱保護反応の反応時間は、特に制限されるものではないが、原料の消費量、L−カルノシンの生成量等を確認しながら、適宜決定すればよい。上記条件であれば、通常、0.1〜96時間あれば十分であり、好ましくは0.5〜24時間である。
反応雰囲気も、特に制限されるものではなく、乾燥空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、通常の空気雰囲気下で実施することができる。また、大気圧下、減圧下、加圧下の何れの圧力下で反応を実施してもよい。そのため、操作性を考慮すると、空気雰囲気下、大気圧下で反応を実施することが好ましい。
<酸処理による脱保護反応から亜鉛塩化する方法>
<混合液の第一前処理方法>
以上のような方法により、酸処理を行い、反応に使用した溶媒と、脱保護反応により得られたL−カルノシンとを含む混合液を準備する。従来であれば、得られたL−カルノシンを結晶化させて精製分離させた後、亜鉛塩化を行うが、本発明においては、結晶として取り出すことなく、前記混合液を使用する。ただし、最終的に得られる結晶性L−カルノシン亜鉛錯体の純度を高めるためには、該混合液をそのまま使用するのではなく、濃縮等による前処理を行うことが好ましい。この場合、酸による脱保護反応は、前記難水溶性の有機溶媒、および水を含む溶媒中で実施することが好ましく、該混合液は、該難水溶性の有機溶媒、および水を含むことが好ましい。また、濃縮等の前処理を行う場合に、酸の除去も可能であるという利点から、塩化水素を含む水、つまり、塩酸を酸処理に用いることが好ましい。
該混合液が難水溶性の有機溶媒を含む場合、先ず、該混合液が有機溶媒層と水層と分離する。次いで、該有機溶媒層に水を加え、L−カルノシンを水層に抽出する。そして、先に分離していた水層と、抽出に使用した水層とを併せた状態で次の亜鉛塩化を実施することが好ましい。
亜鉛塩化は、前記水層を使用することができる。ただし、前記水層(分離水、および洗浄水を合わせたもの)をそのまま使用することができるが、効率よく反応を実施するためには、該水層を濃縮することが好ましい。酸処理に塩化水素(塩酸)を用いた場合には、濃縮時に一部の塩化水素を除去することもできる。なお、この水層を濃縮した液を第一混合物とする。この場合、第一混合物は、L−カルノシン1質量部に対して、水を0〜0.1質量部含むことが好ましい。
脱保護反応を酸処理で行った場合には、前記方法で得られた第一混合物を、さらに以下に示す第二前処理を行った後、亜鉛塩化を実施することが好ましい。
<第二前処理方法;第一混合物の中和処理:前処理液の準備>
前記第一混合物は、使用した酸の量にもよるが、酸性となっている。そのため、一旦、中和処理して前処理液とすることが好ましい。中和処理には、前記第一混合物に、塩基を加え、pHが7.0〜9.0の前処理液とすることが好ましい。使用する塩基は、除去のし易さ、取り扱いやすさを考慮すると、亜鉛塩化する工程で説明するものと同一の水酸化アルカリであることが好ましい。また、混合する塩基の量は、特に制限されるものではなく、前処理液のpHが7.0〜9.0となる量を配合すればよい。この場合、前処理液は、L−カルノシン1質量部に対して、水を1〜100質量部含むことが好ましい。なお、前記水酸化アルカリは、そのまま混合することもできるが、水溶液、又は炭素数1〜3のアルコールに溶解させた溶液の状態で混合することもできる。
<酸により脱保護反応を実施した場合の亜鉛塩化(結晶性L−カルノシン亜鉛錯体の製造方法)>
前記方法で得られた前処理液は、そのまま、水酸化アルカリと混合した後、さらに、酢酸亜鉛と混合して、結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)とすることもできる。ただし、操作性を向上させるためには、前処理液に炭素数1〜3のアルコールを加え、該前処理液に含まれる水を炭素数1〜3のアルコールに置換した後、水酸化アルカリを加えることが好ましい。
炭素数1〜3のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、又はイソプロピルアルコールが挙げられる。中でも、メタノールが好ましい。
該アルコールで置換する方法は、前処理液にアルコールを追加した後、得られた液を濃縮して水とアルコールとを共沸除去して、徐々に水の量を減らせばよい。この方法を繰り返し行い、水を低減することが好ましい。該アルコールで置換した液は、特に制限されるものではないが、L−カルノシン1質量部当たり、水が0〜0.1質量部となることが好ましい。また、炭素数1〜3のアルコールは、L−カルノシン1質量部当たり、5〜100質量部となることが好ましい。
次に、アルコール置換した前処理液に、水酸化アルカリ、および炭素数1〜3のアルコールを加える。
水酸化アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。中でも、水酸化ナトリウムが好ましい。
水酸化アルカリの使用量は、特に制限されるものではないが、L−カルノシン1モルに対して、3〜10モル使用することが好ましい。なお、この水酸化アルカリは、前記炭素数1〜3のアルコールに溶解したものを使用することができる。
また、使用するアルコールの量は、特に制限されるものではないが、該アルコールを追加した混合溶液において、L−カルノシン1質量部に対して、該アルコールが5〜100質量部となることが好ましい。
アルコール置換した前処理液と、炭素数1〜3のアルコール、および水酸化アルカリを混合して混合溶液を製造する方法は、特に制限されるものではなく、添加順序は関係なく、各成分を混合してやればよい。必要に応じて、水酸化アルカリは、炭素数1〜3のアルコールに溶解して混合することできる。こうすることにより、混合溶液を得ることができる。
得られた混合溶液には、酢酸亜鉛を混合することにより、該混合溶液に含まれるL−カルノシンを結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)とすることができる。混合する酢酸亜鉛は、特に制限されるものではないが、取扱の容易さから、酢酸亜鉛の2水和物を使用することが好ましい。酢酸亜鉛の使用量は、特に制限されるものではなく、L−カルノシン1モルに対して、酢酸亜鉛換算で1〜3モルとすることが好ましい。この酢酸亜鉛は、そのまま混合溶液と混合することもできるが、炭素数1〜3のアルコールに溶解させた溶液として混合することもできる。
酢酸亜鉛と混合溶液とを混合する際には、−10〜70℃、好ましくは0〜50℃、より好ましくは0〜30℃の反応温度とすることが好ましい。また、該酢酸亜鉛と混合溶液とを混合する際の雰囲気も、特に制限されるものではなく、乾燥空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、通常の空気雰囲気下で実施することができる。また、大気圧下、減圧下、加圧下の何れの圧力下で反応を実施してもよい。そのため、操作性を考慮すると、空気雰囲気下、大気圧下で反応を実施することが好ましい。
以上のような方法で混合溶液と酢酸亜鉛とを混合することにより、L−カルノシンを結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)とすることができる。上記方法によれば、使用した溶媒を濃縮することはあっても、L−カルノシンを溶媒から単離する操作を行っていないため、結晶性L−カルノシン亜鉛錯体の収率を高くすることができる。
<結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)の精製方法>
上記方法に従えば、反応溶液中に、結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)が析出する。該結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)は、公知の方法、例えば、国際公開第WO2015/119235号パンフレット等の方法に従い、アルカリ金属塩等の不純物を除去することができる。具体的には、結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)を濾別した後、炭素数1〜3のアルコールで洗浄し、水、および熱水等で洗浄することにより、不純物が低減された結晶性L−カルノシン亜鉛錯体を得ることができる。
以上、酸を使用して脱保護反応を行った場合の結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)の製造方法について説明したが、次に、パラジウム系触媒、水素源を用いた場合の方法について説明する。
<結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラポレジンク)の製造方法>
<脱保護反応;パラジウム系触媒、水素源を使用してPGを脱保護する場合>
前記式(i)で示される保護L−カルノシンにおいて、PGが、置換基を有してもよいベンジルオキシカルボニル基(好ましくは、非置換のベンジルオキシカルボニル基)である場合には、パラジウム系触媒/水素源を使用して脱保護反応を行うことが好ましい。
<脱保護反応;パラジウム系触媒、水素源を使用してPG脱保護する場合;パラジウム系触媒>
本発明においては、脱ベンジル化等が実施できる、公知のパラジウム系触媒を使用することができる。具体的には、1〜30質量%(好ましくは1〜20質量%)のパラジウムが担持したパラジウム炭素触媒、パラジウム硫酸バリウム触媒、パラジウム炭酸カルシウム触媒、パラジウムブラック触媒が挙げられる。
該パラジウム系触媒の使用量は、特に制限されるものではいが、前記保護L−カルノシン誘導体(II)100質量部に対して0.001〜20質量部(金属量換算)であれば十分である。
<脱保護反応;パラジウム系触媒、水素源を使用してPG脱保護する場合;水素>
本脱保護反応は、水素の存在下で実施することが好ましい。水素の存在下とする際し水素ガスを使用する場合には、反応系内を水素圧0.5〜100気圧とすることが好ましく、1〜100気圧とすることがより好ましく、1〜30気圧とすることがさらに好ましく、1〜20気圧とすることが特に好ましい。
また、水素源とするためには、水素を発生する物質、具体的には、蟻酸、蟻酸アンモニウムを系内に存在させることが好ましい。この場合、保護L−カルノシン(i)1モルに対して、水素を発生する物質を1〜100モル使用することが好ましく、1〜10モル使用することがさらに好ましい。
<脱保護反応;パラジウム系触媒、水素源を使用してPG脱保護する場合;溶媒>
パラジウム系触媒を使用する場合、水素ガス存在下、溶媒中で前記保護L−カルノシン(i)とパラジウム系触媒とを攪拌混合することが好ましい。
溶媒としては、
メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール溶媒;
1,4−ジオキサン、THF、ジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、

を使用することができる。これら溶媒は、単独で使用しようすることもできるし、複数種類の混合溶媒として使用することもできる。以上の溶媒の中も、操作性等を考慮すると、アルコール、水、またはアルコールと水との混合溶媒を使用することが好ましい。混合溶媒を使用する場合には、特に制限されるものではないが、アルコールと水との体積比(アルコール/水)は、23℃において、0.01/1〜1000/1の範囲とすることが好ましい。
また、溶媒の使用量も、特に制限されるものではなく、前記保護L−カルノシン(i)とパラジウム系触媒とが十分に接触混合できるような量であればよい。通常であれば、前記保護L−カルノシン(i)1質量部に対して、該溶媒を1〜100質量部使用することが好ましい。
<脱保護反応;パラジウム系触媒、水素源を使用してPG脱保護する場合;その他条件>
パラジウム系触媒を使用してPGの脱保護反応を行うに際し、反応系内へ前記保護L−カルノシン(i)、パラジウム系触媒、および水素を導入する手順は、特に制限されるものではない。例えば、必要に応じて溶媒で希釈した前記保護L−カルノシン(i)、必要に応じて該溶媒に分散させたパラジウム系触媒を同時に反応系内に導入し、さらに、水素ガスを反応系内に導入して攪拌混合する方法が挙げられる。また、何れか一方を必要に応じて溶媒で希釈(分散)して先ず反応系内へ入れておき、必要に応じて溶媒で希釈(分散)したもう一方を反応系内へ添加して、水素ガスを反応系内に導入して攪拌混合する方法が挙げられる。なお、前記方法においては、前記保護L−カルノシン(i)、およびパラジウム系触媒を反応系内に導入した後、水素ガスを反応系内に導入する方法を示したが、当然のことながら、予め反応系内に水素ガスを導入し、反応系内を水素雰囲気下とした後、各成分を反応系内に導入することもできる。また、前記には、水素ガスを使用した場合の例を示したが、蟻酸、蟻酸塩など水素ガスを発生する化合物を使用することもできる。
該脱保護反応を行う際の反応温度は、特に制限されるものではなく、反応時間、収量、不純物副生の抑制等を考慮すると、−10〜200℃とすることが好ましく、10〜120℃とすることより好ましく、20〜70℃とすることがさらに好ましい。
脱保護反応の反応時間は、特に制限されるものではないが、原料の消費量、L−カルノシンの生成量等を確認しながら、適宜決定すればよい。上記条件であれば、通常、0.1〜200時間あれば十分であり、好ましくは0.2〜150時間である。
反応雰囲気も、特に制限されるものではなく、乾燥空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、通常の空気雰囲気下で実施することができる。また、大気圧下、減圧下、加圧下の何れの圧力下で反応を実施してもよい。そのため、操作性を考慮すると、空気雰囲気下、大気圧下で反応を実施することが好ましい。
以上の方法によれば、前記保護L−カルノシンの脱保護反応を行い、L−カルノシン、及び該脱保護反応に使用した溶媒を含む混合液を得ることができる。次に、この混合液を使用した結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)を製造する方法について説明する。
<パラジウム系触媒、水素源により脱保護反応を実施した場合の亜鉛塩化(結晶性L−カルノシン亜鉛錯体の製造方法)>
前記方法で得られた混合液は、少なくとも水酸化アルカリと混合することにより混合溶液とすることができる。この混合液は、特に制限されるものではないが、操作性を向上するためには、脱保護反応で使用した反応系そのままを混合液とすることが好ましい。そのため、L−カルノシン1質量部当たり、脱保護反応に使用した溶媒を1〜100質量部含むことが好ましい。この混合液は、そのまま水酸化アルカリと混合することもできるし、混合を容易にするため、さらに炭素数1〜3のアルコールを追加することもできるし、必要に応じて、濃縮により該溶媒量を低減させることもできる。
そして、該混合液と少なくとも水酸化アルカリとを混合して混合溶液とする。水酸化アルカリは、そのまま該混合液と混合することができるが、必要に応じて、炭素数1〜3のアルコールに溶解させ溶液として使用することができる。
使用する炭素数1〜3のアルコール、および水酸化アルカリは、前記<酸により脱保護反応を実施した場合の亜鉛塩化(結晶性L−カルノシン亜鉛錯体の製造方法)>で説明したものと同様のものが使用できる。
本発明においては、得られた混合溶液と、酢酸亜鉛とを混合することもできるが、該混合溶液は不溶なパラジウム系触媒を含むため、該パラジウム誌系触媒を濾過により取り除くことが好ましい。そして、パラジウム系触媒を取り除いた混合溶液に、さらに、酢酸亜鉛と混合して、結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)とすることが好ましい。
使用する炭素数1〜3のアルコールは、パラジウム系触媒を取り除いた後の混合溶液において、L−カルノシン1質量部あたり、炭素数1〜3のアルコールが5〜100質量部となることが好ましく、10〜20質量部となることが好ましい。パラジウム系触媒を取り除いた混合溶液において、炭素数1〜3のアルコールが前記範囲を満足する場合には、該アルコールを追加しなくともよい。また、該アルコールが前記範囲を超えている場合には、濃縮等により該アルコールを低減させることができる。当然のことながら、足りない場合には、該アルコールを追加することもできる。
使用する水酸化アルカリの使用量は、L−カルノシン1モルに対して、2〜9モルであることが好ましい。
得られた混合溶液は、酢酸亜鉛を混合することにより、該混合溶液に含まれるL−カルノシンを結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)とすることができる。混合する酢酸亜鉛は、特に制限されるものではないが、取扱の容易さから、酢酸亜鉛の2水和物を使用することが好ましい。酢酸亜鉛の使用量は、特に制限されるものではなく、L−カルノシン1モルに対して、酢酸亜鉛換算で1〜3モルとすることが好ましい。この酢酸亜鉛は、そのまま混合溶液と混合することもできるが、炭素数1〜3のアルコールに溶解させた溶液として混合することもできる。
酢酸亜鉛と混合溶液とを混合する際には、−10〜70℃、好ましくは0〜50℃、より好ましくは0〜30℃の反応温度とすることが好ましい。また、該酢酸亜鉛と混合溶液とを混合する際の雰囲気も、特に制限されるものではなく、乾燥空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、通常の空気雰囲気下で実施することができる。また、大気圧下、減圧下、加圧下の何れの圧力下で反応を実施してもよい。そのため、操作性を考慮すると、空気雰囲気下、大気圧下で反応を実施することが好ましい。
以上のような方法で混合溶液と酢酸亜鉛とを混合することにより、L−カルノシンを結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)とすることができる。上記方法によれば、使用した溶媒を濃縮することはあっても、L−カルノシンを溶媒から単離する操作を行っていないため、結晶性L−カルノシン亜鉛錯体の収率を高くすることができる。
得られた結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)は、前記<結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)の精製方法>で説明したのと同様の方法で精製して反応系外に取り出すことができる。
以下、本発明を、実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
下記反応式で示される反応に従い、結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)を製造した。使用した保護L−カルノシンは、PGがベンジルオキシカルボニル基であり、国際公開第WO2011/080139に記載の方法で合成したもの(N−Cbz−L−カルノシン)である。
Figure 2019059688
<パラジウム系触媒、水素源を使用した脱保護反応>
N―Cbz−L−カルノシン(保護L−カルノシン、3.78g、10.49mmol)をメタノール(溶媒;40mL)に溶解した。得られた溶液に、市販のパラジウム(Pd)/炭素(C)(パラジウム系触媒、Pd:4.85質量%、水:53.0質量%、0.43g、パラジウム換算0.01mmol)を加えた。この液を水素(1気圧)雰囲気下、50℃、8時間撹拌した。得られた混合液には、L-カルノシンが生成されていたことを確認した。
<亜鉛塩化;結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)の製造>
次いで、得られたL−カルノシン、およびメタノールを含む混合液に、水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ、0.44g、20.98mmol)をメタノール(炭素数1〜3のアルコール、40ml)に溶解させた溶液を、5℃の温度を維持するように加えた。その後、5℃にて1時間攪拌後、パラジウム系触媒を濾過により取り除いた。
得られた混合溶液に、酢酸亜鉛・2水和物(酢酸亜鉛、2.30g、酢酸亜鉛換算10.49mmol)をメタノール(20mL)に溶解させた溶液を、5℃の温度を維持するように、10分間かけて滴下した。得られた液(固体が生じた懸濁液)を室温まで昇温し、2時間攪拌後、濾過した。濾取した固体を湿体のままイオン交換水(40mL)にて1時間攪拌後、濾過した。得られた固体を70℃で4時間送風乾燥した後、IRにて分析すると下記の結果となり、該固体が結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)であることを確認した。収量は3.03gであり、N−Cbz−L−カルノシンからの収率は100%であった。
分析結果
IR(KBr)3282、1618、1559、1383、1257、1115、998
cm−1
実施例2
下記反応式に従い、結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)を製造した。
Figure 2019059688
<酸無水物(I)の製造>
N−Cbz−β−アラニン(N−保護−β−アラニン誘導体、16.9g、75.8mmol)をクロロホルム(40mL)に溶解した溶液に、トリエチルアミン(7.68g、75.6mmol)を加え、7℃まで冷却した。ここへ、ピバロイルクロリド(ハロゲン化物、9.12g、75.6mmol)をクロロホルム(23mL)に溶解した溶液を、反応液の温度が10℃となるように維持しながら、20分間かけて滴下し、酸無水物(I)のクロロホルム溶液を得た。
<L−ヒスチジン誘導体の製造>
一方、硫酸(0.06g、0.6mmol)にヘキサメチルジシラザン(41.61g、257.8mmol)を加え5分攪拌した。その後、L−ヒスチジン(10.06g、64.4mmol)を加え、外部加熱が130℃の温度で、40分間、前記混合物を加熱還流した。得られた反応液を100℃まで冷却して減圧濃縮を行い、残渣にクロロホルム(10mL)を加え、トリ−トリメチルシリル基保護−L−ヒスチジン誘導体(L−ヒスチジン誘導体)が溶解したクロロホルム溶液を得た。
<保護L−カルノシンの製造>
次いで、得られたトリ−トリメチルシリル保護−L−ヒスチジン誘導体のクロロホルム溶液に、上記の酸無水物(I)のクロロホルム溶液を、反応液の温度が7℃を維持するように、1時間かけて滴下した。滴下後の反応液の温度を7℃に維持しながら2時間攪拌を行った。得られた反応液を減圧濃縮し、濃縮残渣にメタノール250mLを加え、減圧留去した。得られた濃縮残渣には、N−Cbz−L−カルノシン(保護L−カルノシン、20.4g、L−ヒスチジンからの収率:88%)が含まれていた。
<パラジウム系触媒、水素源を使用した脱保護反応>
上記のN−Cbz−L−カルノシンを含む濃縮残渣に、メタノール(溶媒、216mL)、および市販のパラジウム(Pd)/炭素(C)(パラジウム系触媒、Pd:4.85質量%、水:53.0質量%、2.32g、パラジウム換算0.054mmol)を加えた。この混合液を水素(1気圧)雰囲気下、50℃、8時間撹拌した。得られた混合液には、L-カルノシンが生成されていたことを確認した。
<亜鉛塩化;結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)の製造>
次いで、得られたL−カルノシン、およびメタノールを含む混合液に、水酸化ナトリウム(2.38g、113mmol)、およびメタノール(216ml)を、混合溶液の温度が5℃を維持するように加えた。5℃にて1時間攪拌後、濾過してパラジウム系触媒を取り除いた。
この混合溶液(濾液)に、酢酸亜鉛・2水和物(酢酸亜鉛、12.4g、酢酸亜鉛換算56.67mmol)のメタノール(108mL)溶液を、5℃を維持するように10分間かけて滴下した。得られた液(固体が生じた懸濁液)を室温まで昇温し、2時間攪拌後、濾過した。濾取した固体を湿体のままイオン交換水(40mL)を加えて1時間攪拌後、濾過した。得られた固体を70℃で4時間送風乾燥した後、IRにて分析すると下記の結果となり、該固体が結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)であることを確認した。収量は16.37gであり、N−Cbz−L−カルノシンからの収率は100%、N−Cbz−β−アラニンからの収率は88%であった。
実施例3
下記反応式で示される反応に従い、結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)を製造した。使用した保護L−カルノシンは、PGがt−ブトキシカルボニル基であり、中国公開CN103408497号公報に記載の方法で合成したもの(N−Boc−L−カルノシン)である。
Figure 2019059688
<酸により脱保護反応>
N−Boc−L−カルノシン(保護L−カルノシン、20g、61.2mmol)をクロロホルム(溶媒、100mL)に溶解した。得られた溶液に、4N−HCl(酸、60mL、塩化水素換算;197.6mmol)を10分間かけて滴下し、4時間攪拌を行い、混合液を得た。
<混合液の第一前処理方法>
得られた混合液を分液ロートに移し水層を分離後、クロロホルム層を水(20mL)で抽出し、前述の水層と合わして減圧濃縮して、水、およびL−カルノシンを含む第一混合物とした。
<第二前処理方法;第一混合物の中和処理:前処理液の準備>
前記第一混合物に、水(20mL)を加え、さらに、24%質量 水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH:8.2の前処理液を調整した。この前処理液を、再度、減圧濃縮した。得られた濃縮残渣にメタノール(20ml)を加えて濃縮し、さらにメタノール(20ml)を加え濃縮して、前処理液に含まれる水を極力低減した。
<酸により脱保護反応を実施した場合の亜鉛塩化(結晶性L−カルノシン亜鉛錯体の製造方法)>
得られたL−カルノシンを含む濃縮残渣に、水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ、4.90g、122.6mmol)をメタノール(炭素数1〜3のアルコール、180mL)に溶解した溶液を、5℃の温度を維持するように加えながら1時間攪拌して混合溶液を得た。
得られた混合溶液に、酢酸亜鉛・2水和物(酢酸亜鉛、13.44g、酢酸亜鉛換算61.2mmol)をメタノール(200mL)に溶解した溶液を5℃の温度を維持するように加えた後、23℃で17時間攪拌した。得られた液を濾過して固体を分別し、該固体をメタノール(100mL)で洗浄した。さらに、濾取した固体を湿体のまま水(300mL)中に分散して、23℃で2時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、濾取した固体を、熱水(100mL)で洗浄後、70℃で4時間送風乾燥することにより、固体の結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)であることを確認した。収量は7.06gであり、N−Boc−L−カルノシンからの収率は80%であった。
比較例1
N−Boc−L−カルノシン(6.78g、35.8mmol)から実施例3の<酸により脱保護反応>と同様の操作を行い、得られた混合液からL−カルノシンを結晶として取り出した(L−カルノシンの収量5.54gg、収率68.32%)。
得られたL−カルノシンに、水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ、1.96g、49.0mmol)をメタノール(炭素数1〜3のアルコール、72mL)に溶解した溶液を、5℃の温度を維持するように加えながら1時間攪拌して混合溶液を得た。
得られた混合溶液に、酢酸亜鉛・2水和物(酢酸亜鉛、5.38g、酢酸亜鉛換算24.5mmol)をメタノール(80mL)に溶解した溶液を5℃の温度を維持するように加えた後、23℃で17時間攪拌した。得られた液(固体が生じた懸濁液)を濾過して固体を分別し、該固体をメタノール(40mL)で洗浄した。さらに、濾取した固体を湿体のまま水(120mL)中に分散して、23℃で2時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、濾取した固体を、熱水(40mL)で洗浄後、70℃で4時間送風乾燥することにより、固体の結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)であることを確認した。収量は5.90gであり、N−Boc−L−カルノシンからの収率は68.32%であった。
実施例4
下記反応式に従い、結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)を製造した。
Figure 2019059688
<酸無水物(I)の製造>
N−Boc−β−アラニン(N−保護−β−アラニン誘導体、6.78g、35.8mmol)をクロロホルム(30mL)に溶解した溶液に、トリエチルアミン(3.63g、35.9mmol)を加え、7℃まで冷却した。ここへ、ピバロイルクロリド(ハロゲン化物、4.32g、35.8mmol)をクロロホルム(20mL)に溶解した溶液を、反応液の温度が7℃を維持するように、1時間かけて滴下し、その後、7℃で1時間攪拌を行い、酸無水物(I)のクロロホルム溶液を得た。
<L−ヒスチジン誘導体の製造>
一方、硫酸(0.015g、0.15mmol)にヘキサメチルジシラザン(19.8g、122.7mmol)を加え10分間、23℃で攪拌した。その後、L−ヒスチジン(4.8g、30.9mmol)を加え、外部加熱が130℃の温度で、40分間、前記混合物を加熱還流した。得られた反応液を100℃まで冷却して減圧濃縮を行い、残渣にクロロホルム(10mL)を加え、トリ−トリメチルシリル基保護−L−ヒスチジン誘導体(L−ヒスチジン誘導体)が溶解したクロロホルム溶液を得た。
<保護L−カルノシンの製造>
次いで、得られたトリ−トリメチルシリル基保護−L−ヒスチジン誘導体のクロロホルム溶液に、上記の酸無水物(I)のクロロホルム溶液を、反応液の温度が7℃を維持するように、1時間かけて滴下した。滴下後の反応液の温度を7℃に維持しながら2時間攪拌を行うことにより、N−Boc−L−カルノシン(8.36g、N−Boc−β―アラニンからの収率:83.6%)のクロロホルム溶液を得た。
<酸により脱保護反応>
前記N−Boc−L−カルノシンのクロロホルムに、4N−HCl(酸、30mL、塩化水素換算;98.8mmol)を10分間かけて滴下し、4時間攪拌を行い、混合液を得た。
<混合液の第一前処理方法>
得られた混合液を分液ロートに移し水層を分離後、クロロホルム層を水(10mL)で抽出し、前述の水層と合わして減圧濃縮して、水、およびL−カルノシンを含む第一混合物とした。
<第二前処理方法;第一混合物の中和処理:前処理液の準備>
前記第一混合物に、水(10mL)を加え、さらに、24%質量 水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH:8.2の前処理液を調整した。この前処理液を、再度、減圧濃縮した。得られた濃縮残渣にメタノール(20ml)を加えて濃縮し、さらにメタノール(20ml)を加え濃縮して、前処理液に含まれる水を極力低減した。濃縮残渣にはL−カルノシンが5.84g含まれていた。N−Boc−β−アラニンからの収率は83.6%であった。
<酸により脱保護反応を実施した場合の亜鉛塩化(結晶性L−カルノシン亜鉛錯体の製造方法)>
得られたL−カルノシンを含む濃縮残渣に、水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ、2.45g、61.3mmol)をメタノール(炭素数1〜3のアルコール、90mL)に溶解した溶液を、5℃の温度を維持するように加えながら1時間攪拌して混合溶液を得た。
得られた混合溶液に、酢酸亜鉛・2水和物(酢酸亜鉛、6.72g、酢酸亜鉛換算30.6mmol)をメタノール(100mL)に溶解した溶液を5℃の温度を維持するように加えた後、23℃で17時間攪拌した。得られた液(固体が生じた懸濁液)を濾過して固体を分別し、該固体をメタノール(50mL)で洗浄した。さらに、濾取した固体を湿体のまま水(150mL)中に分散して、23℃で2時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、濾取した固体を、熱水(50mL)で洗浄後、70℃で4時間送風乾燥することにより、固体の結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)であることを確認した。収量は7.38gであり、N−Boc−L−カルノシンからの収率は100%、N−Boc−β−アラニンからの収率は83.6%であった。
比較例2
実施例4と同様の方法で、<酸無水物(I)の製造>、<L−ヒスチジン誘導体の製造>、<保護L−カルノシンの製造>、<酸により脱保護反応>、<混合液の第一前処理方法>、<第二前処理方法;第一混合物の中和処理:前処理液の準備>を行い、前処理液に含まれる水を極力低減した濃縮残渣を得た。同じく濃縮残渣には、L−カルノシンが6.92g含まれていた。この時、N−Boc−β−アラニンからの収率は85.4%であった。
<L−カルノシンの取り出し>
該濃縮残渣に、メタノール(53mL)を加えて23℃で終夜攪拌し、5℃まで冷却した後、5℃の温度を維持しながら3時間撹拌した。その後、析出した固体を濾取することによりL−カルノシン(5.54g、含量補正した実質収量;結晶化濾取によるL−カルノシンの回収率:80%;N−Boc−β−アラニンからの収率:68.32%)を得た。
<結晶性L−カルノシン亜鉛錯体の製造>
前記L−カルノシンの結晶に、水酸化ナトリウム(1.96g、49.0mmol)をメタノール(72mL)に溶解した溶液を、5℃の温度を維持しながら加え、1時間攪拌した。ここへ、酢酸亜鉛・2水和物(酢酸亜鉛、5.38g、酢酸亜鉛換算24.5mmol)をメタノール(80mL)で溶解した溶液を、5℃の温度を維持しながら加えた後、23℃で17時間攪拌した。得られた液(固体が生じた懸濁液)を濾過して固体を分別し、該固体をメタノール(40mL)で洗浄した。さらに、濾取した固体を湿体のまま水(120mL)に分散して、23℃で2時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、濾取した固体を、熱水(40mL)で洗浄後、70℃で4時間送風乾燥することにより、固体の結晶性L−カルノシン亜鉛錯体(ポラプレジンク)であることを確認した。収量は5.90gであり、N−Boc−L−カルノシンからの収率80%、N−Boc−β−アラニンからの収率は68.32%であった。

Claims (5)

  1. 下記式(i)
    Figure 2019059688
    (式中、PGは、アミノ基の保護基である。)で示される保護L−カルノシンの脱保護反応を該保護L−カルノシンが溶解する溶媒中で行うことにより、L−カルノシンを製造した後、
    得られたL−カルノシンを、結晶として単離することなく、亜鉛塩化することにより結晶性L−カルノシン亜鉛錯体を製造する方法。
  2. 前記保護L−カルノシンの脱保護反応を該保護L−カルノシンが溶解する溶媒中で行うことにより、L−カルノシンを製造した後、
    該L−カルノシン、および前記溶媒を含む混合液と、少なくとも水酸化アルカリとを混合し、次いで、
    得られた混合溶液と酢酸亜鉛とを混合することにより、該L−カルノシンを亜鉛塩化して結晶性L−カルノシン亜鉛錯体を製造する請求項1に記載の方法。
  3. 前記式(i)におけるアミノ基の保護基であるPGが、置換基を有してもよいベンジルオキシカルボニル基、又はt−ブトキシカルボニル基であり、
    前記脱保護反応を、パラジウム系触媒、および水素源の存在下で実施するか、又は酸により実施する請求項1又は2に記載の方法。
  4. 得られたL−カルノシン、および溶媒を含む前記混合液が、L−カルノシン1質量部当たり、該溶媒を1〜100質量部含む請求項2又は3に記載の方法。
  5. 前記脱保護反応を酸により実施した後、
    得られたL−カルノシンを含む混合物と、少なくとも水酸化アルカリとを混合してpHが7.0〜9.0である前処理溶液とし、
    該前処理溶液に含まれる溶媒を炭素数1〜3のアルコールに置換した後、さらに、少なくとも水酸化アルカリを混合して混合溶液とし、次いで、
    得られた混合溶液と酢酸亜鉛とを混合することにより、該L−カルノシンを亜鉛塩化して結晶性L−カルノシン亜鉛錯体を製造する請求項1に記載の方法。
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