例示的な実施形態に係るレーザ治療装置について図面を参照しながら詳細に説明する。以下の実施形態において、上記の特許文献に開示された技術を任意に援用することが可能である。また、以下に説明する実施形態及び変形例のうちのいずれか2以上を組み合わせることが可能である。
〈第1の実施形態〉
[構成]
本実施形態に係るレーザ治療装置1の構成の一例を図1に示す。レーザ治療装置1は、患者の眼(患者眼E)にレーザ治療を施すために使用される。レーザ治療は、患者眼Eの眼底Efや隅角に対して施される。隅角は、角膜Ecと虹彩Eiとが接触している部位である。図1に示す符号Elは水晶体を表す。
レーザ治療装置1は、光源ユニット2と、スリットランプ顕微鏡3と、光ファイバ4と、処理ユニット5と、操作ユニット6と、表示ユニット7とを備える。なお、スリットランプ顕微鏡3に代えて、手術用顕微鏡や、倒像鏡や、眼内挿入タイプの観察装置などを用いてレーザ治療を実施するようにしてもよい。
光源ユニット2とスリットランプ顕微鏡3は、光ファイバ4を介して光学的に接続されている。光ファイバ4は、1つ以上の導光路を有する。光源ユニット2と処理ユニット5は、信号を伝送可能に接続されている。スリットランプ顕微鏡3と処理ユニット5は、信号を伝送可能に接続されている。操作ユニット6と処理ユニット5は、信号を伝送可能に接続されている。表示ユニット7と処理ユニット5は、信号を伝送可能に接続されている。信号の伝送形態は有線でも無線でもよい。
処理ユニット5は、ハードウェアとソフトウェアとの協働によって動作するコンピュータを含む。このハードウェアは、プロセッサと記憶装置とを含む。処理ユニット5が実行する処理については後述する。
本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
(光源ユニット2)
光源ユニット2は、患者眼Eに照射される光を発生する。光源ユニット2は、照準光源2aと、治療光源2bと、ガルバノミラー2cと、遮光板2dとを含む。なお、これら以外の部材が光源ユニット2に設けられていてもよい。例えば、光ファイバ4の直前位置に、光源ユニット2により発生された光を光ファイバ4の端面に入射させる光学素子(レンズ等)を設けることができる。
(照準光源2a)
照準光源2aは、レーザ治療が施される部位に照準を合わせるための照準光LAを発生する。照準光LAは、エイミング光などとも呼ばれる。照準光LAは、ガルバノミラー2cに導かれる。照準光源2aの動作は、処理ユニット5により制御される。照準光源2aは任意の種別の光源であってよい。
接眼レンズを介して患者眼Eを観察しつつ照準を合わせる構成が適用される場合、術者眼E0によって認識可能な可視光を発する光源(レーザ光源、発光ダイオード等)が照準光源2aとして用いられる。また、患者眼Eの撮影画像を観察しつつ照準を合わせる構成が適用される場合、撮影画像を取得するための撮像装置が感度を有する波長帯の光を発する光源(レーザ光源、発光ダイオード等)が照準光源2aとして用いられる。
(治療光源2b)
治療光源2bは、治療用レーザ光(治療光LT)を発する。治療光LTは、その用途に応じて可視レーザ光でも不可視レーザ光でもよい。また、治療光源2bは、異なる波長のレーザ光を発する単一のレーザ光源又は複数のレーザ光源を含んでいてよい。治療光LTは、ガルバノミラー2cに導かれる。治療光源2bの動作は、処理ユニット5により制御される。治療光源2bは任意の種別のレーザ光源であってよい。
(ガルバノミラー2c)
ガルバノミラー2cは、反射面を有するミラーと、ミラーの向き(反射面の向き)を変更するアクチュエータとを含む。照準光LAと治療光LTは、ガルバノミラー2cの反射面の同じ位置に到達するようになっている。なお、照準光LAと治療光LTをまとめて「照射光」と呼ぶことがある。
ガルバノミラー2c(の反射面)の向きは、少なくとも、照射光を光ファイバ4に向けて反射させる向き(照射用向き)と、照射光を遮光板2dに向けて反射させる向き(停止用向き)とに切り替えられる。光ファイバ4に2以上の導光路が設けられている場合、予め選択された導光路に照射光を入射させるようにガルバノミラー2cの向きが制御される。ガルバノミラー2cの動作は、処理ユニット5により制御される。
(遮光板2d)
ガルバノミラー2cが停止用向きに配置されているとき、照射光は遮光板2dに到達する。遮光板2dは、例えば照射光を吸収する材質及び/又は形態からなる部材であり、遮光作用を有する。
例示的な実施形態において、照準光源2aと治療光源2bのそれぞれは、連続光を発生する。この場合、ガルバノミラー2cを照射用向きに配置させることで、照射光を患者眼Eに照射させる。また、ガルバノミラー2cを停止用向きに配置させることで、患者眼Eに対する照射光の照射を停止させる。
他の例示的な実施形態において、照準光源2a及び/又は治療光源2bは、断続的に光を発生可能に構成されていてよい。すなわち、照準光源2a及び/又は治療光源2bは、パルス光を発生可能に構成されていてよい。この場合、処理ユニット5は、照準光源2a及び/又は治療光源2bのパルス制御を実行する。このような構成が適用される場合には、ガルバノミラー2c及び遮光板2dが設けられていなくてよい。
(スリットランプ顕微鏡3)
スリットランプ顕微鏡3は、患者眼Eの前眼部及び眼底Efの観察に用いられる眼科装置である。より詳しく説明すると、スリットランプ顕微鏡3は、患者眼Eをスリット光で照明し、その照明野の拡大像を観察するための眼科装置である。ここで、「観察」は、患者眼Eからの戻り光を接眼レンズを介して観察する場合と、患者眼Eからの戻り光を撮像装置で検出して得られた撮影画像を観察する場合との少なくとも一方を含む。
スリットランプ顕微鏡3は、照明部3aと、観察部3bと、接眼部3cと、レーザ照射部3dとを含む。照明部3aには、図2に示す照明系10が設けられている。観察部3bと接眼部3cには観察系30が設けられている。観察部3bには更に撮影系40が設けられている。接眼部3cには、表示系60が設けられている。レーザ照射部3dにはレーザ照射系50が設けられている。なお、照明系10、観察系30、撮影系40、照射系50、及び表示系60のそれぞれの配置は、本例に限定されない。
(スリットランプ顕微鏡3の光学系)
スリットランプ顕微鏡3に設けられた光学系について図2を参照しつつ説明する。患者眼Eには、眼底Efや隅角のレーザ治療に用いられるコンタクトレンズCLが当接される。スリットランプ顕微鏡3は、照明系10と、観察系30と、撮影系40と、レーザ照射系50と、表示系60とを含む。
(照明系10)
照明系10は、患者眼Eを観察するための照明光を出力する。照明部3aは、照明系10の光軸(照明光軸)10aの向きを変更するための機構を含む。それにより、患者眼Eの照明方向を任意に変更することができる。
照明系10は、光源11と、集光レンズ12と、フィルタ13、14及び15と、スリット絞り16と、結像レンズ17、18及び19と、偏向部材20とを含む。
光源11は照明光を出力する。照明系10に複数の光源を設けてもよい。例えば、定常光を出力する光源(ハロゲンランプ、LED等)と、フラッシュ光を出力する光源(キセノンランプ、LED等)の双方を光源11として設けることができる。また、前眼部観察用の光源と眼底観察用の光源とを別々に設けてもよい。集光レンズ12は、光源11から出力された光を集めるレンズ(系)である。光源11の動作は、処理ユニット5により制御される。
フィルタ13〜15は、それぞれ、照明光の特定の成分を除去又は弱める作用を持つ光学素子である。フィルタ13〜15としては、例えば、ブルーフィルタ、無赤色フィルタ、減光フィルタ、防熱フィルタ、角膜蛍光フィルタ、色温度変換フィルタ、演色性変換フィルタ、紫外線カットフィルタ、赤外線カットフィルタなどがある。各フィルタ13〜15は、照明系10が形成する光路(照明光路)に対して挿脱される。各フィルタ13〜15の挿脱動作は、処理ユニット5により制御される。
スリット絞り16は、スリット状の光(スリット光)を生成するためのスリットを形成する。スリット絞り16は、一対のスリット刃を含む。これらスリット刃の間隔を変更することによりスリット幅が変更される。また、一対のスリット刃を一体的に回転させることによりスリットの向きが変更される。このときの回転中心は照明光軸10aである。スリット幅を変更する動作やスリットの向きを変更する動作は、処理ユニット5によって制御される。
スリット絞り16とは異なる構成の絞り部材を照明系10に設けてもよい。そのような絞り部材の例として、照明光の光量を変更するための照明絞りや、照明野のサイズを変更するための照明野絞りがある。また、液晶シャッタなどのデバイスを利用して照明光の光量や照明野のサイズを変更するように構成してもよい。これら部材やデバイスの動作は、処理ユニット5により制御される。
結像レンズ17、18及び19は、照明光(典型的にはスリット光)の像を形成するためのレンズ系である。偏向部材20は、結像レンズ17、18及び19を経由した照明光を偏向して患者眼Eに投射させる。偏向部材20としては、例えば反射ミラー又は反射プリズムが適用される。
上記以外の部材が照明系10に設けられていてもよい。例えば、偏向部材20と患者眼Eとの間に拡散板を設けることができる。拡散板は、患者眼Eに向かう照明光を拡散して照明野の明るさを一様にする。拡散板は、照明光路に対して挿脱される。照明系10は、患者眼Eに背景照明光を投射する背景光源を含んでいてよい。背景照明光は、照明光が投射される領域の周囲(背景領域)に投射される。
(観察系30)
観察系30は、患者眼Eに投射された照明光の戻り光を術者眼E0に案内する光学系を含む。観察系30は、左右両眼での観察を可能とする左右一対の光学系を含む。左右の光学系は実質的に同一の構成を有する。図2には一方の光学系のみが示されている。
観察部3bは、観察系30の光軸(観察光軸)30aの向きを変更するための機構を含む。それにより、患者眼Eの観察方向を任意に変更することができる。
観察系30は、対物レンズ31と、変倍レンズ32及び33と、保護フィルタ34と、結像レンズ35と、間隔変更部36と、視野絞り37と、接眼レンズ38とを含む。
対物レンズ31は、患者眼Eに対向して配置される。変倍レンズ32及び33は、変倍光学系(ズームレンズ系)として機能する。変倍レンズ32及び33は、観察光軸30aに沿って相対的に移動される。変倍光学系の他の例は、観察系30が形成する光路(観察光路)に対して選択的に挿入可能な複数の変倍レンズ群を含む。これら変倍レンズ群は、それぞれ異なる倍率(観察倍率、撮影倍率)に対応する。
保護フィルタ34は、治療光LTを遮蔽するフィルタである。それにより、術者眼E0をレーザ光から保護することができる。保護フィルタ34は、例えば、レーザ治療(又はレーザ出力)の開始トリガに対応して観察光路に挿入される。保護フィルタ34の挿脱は、処理ユニット5により制御される。保護フィルタ34の代わりに、又は、保護フィルタ34に加えて、見かけ上の色味の変化を減少させる多層膜構造のフィルタが設けられていてもよい。多層膜フィルタは、典型的には、常に観察光路に配置されている。
結像レンズ35は、患者眼Eの像を形成するレンズ(系)である。間隔変更部36は、左右の光軸の間の距離を変更する。それにより、左光学系(少なくとも、左眼用の接眼レンズ38)と右光学系(少なくとも、右眼用接眼レンズ38)との間隔を、術者の眼幅に合わせて調整することができる。間隔変更部36は、プリズム36a及び36bを含む。接眼レンズ38は間隔変更部36と一体的に移動する。間隔変更部36と接眼レンズ38は接眼部3cに格納されている。
(撮影系40)
撮影系40は、患者眼Eを撮影するための光学系を含む。撮影系40は、ビームスプリッタ41と、結像レンズ42と、イメージセンサ43とを含む。撮影系40の光路は、観察系30の光路から分岐している。
ビームスプリッタ41は、結像レンズ35と間隔変更部36との間に配置されており、観察光路からの分岐光路を形成する。ビームスプリッタ41は、例えばハーフミラーである。ビームスプリッタ41により形成される分岐光路に結像レンズ42とイメージセンサ43とが配置されている。
結像レンズ42は、患者眼Eの像をイメージセンサ43上に形成するレンズ(系)である。イメージセンサ43は、例えば、CCDやCMOS等の撮像素子を含むエリアセンサである。イメージセンサ43から出力される信号(画像信号、映像信号)は、処理ユニット5に送られる。
撮影系40は、観察系30における左右の光学系の一方又は双方に設けられている。左右の光学系の双方に撮影系40が設けられる場合、患者眼Eの立体画像(ステレオ画像)を取得することができる。
(レーザ照射系50)
レーザ照射系50は、光源ユニット2から光ファイバ4を介してスリットランプ顕微鏡3に伝送された照射光を患者眼Eに導く光学系を含む。レーザ照射系50は、コリメータレンズ51と、光スキャナ52と、ミラー53と、リレーレンズ54及び55と、ミラー56と、コリメータレンズ57と、偏向部材58とを含む。
コリメータレンズ51は、光ファイバ4から出射された照射光を平行光束にする。光スキャナ52は、照射光を2次元的に偏向する。光スキャナ52は、例えば、1つの2次元光スキャナ又は2つの1次元光スキャナを含む。光スキャナ52は、ガルバノスキャナ、MEMS光スキャナなど、任意の種類の光スキャナを含む。光スキャナ52の動作は、処理ユニット5により制御される。
ミラー53は、光スキャナ52を経由した照射光を反射して、その進行方向を変える。リレーレンズ54及び55は、ミラー53により反射された照射光をリレーする。ミラー56は、リレーレンズ54及び55を経由した照射光を反射して、その進行方向を変える。コリメータレンズ57は、リレーレンズ54及び55を経由した照射光を平行光束にする。偏向部材58は、対物レンズ31の後方に配置され、コリメータレンズ57を経由した照射光を偏向し、対物レンズ31を介して患者眼Eに照射させる。
(表示系60)
表示系60は、術者に情報を提示するための光学系を含む。表示系60は、表示装置61と、レンズ62と、ビームスプリッタ63とを含む。
表示装置61は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、マイクロディスプレイ(マイクロディスプレイプロジェクタ)など、任意の種類の表示デバイスを含む。表示装置61の動作は、処理ユニット5により制御される。
レンズ62は、表示装置61から出力された光を集光してビームスプリッタ63に導く。ビームスプリッタ63は、間隔変更部36と接眼レンズ38との間に配置されており、表示装置61から出射された光の光路を観察光路に結合する。ビームスプリッタ41は、例えばハーフミラーである。
表示装置61から出射された光は、レンズ62により集光され、ビームスプリッタ63により反射され、接眼レンズ38を介して術者眼E0に入射する。
(コンタクトレンズCL)
眼底Efや隅角のレーザ治療を行う場合、角膜EcにコンタクトレンズCLが当接される。様々な種類のレーザ治療を行うために、倍率や形状が異なる複数のコンタクトレンズが準備されている。ユーザは、治療種別や治療部位や患者眼Eの状態などに応じてコンタクトレンズを選択する。
(操作ユニット6、表示ユニット7)
操作ユニット6及び表示ユニット7は、レーザ治療装置1のユーザインターフェイス(マンマシンインターフェイス)として機能する。ユーザインターフェイスは、他の要素を含んでいてもよい。例えば、ユーザインターフェイスは、音声出力装置、音声入力装置、各種センサなどを含んでいてよい。
操作ユニット6は、レーザ治療装置1に対する指示入力や情報入力に用いられる。操作ユニット6は、各種ハードウェアキー及び/又は各種ソフトウェアキーを含む。ハードウェアキーの例として、スリットランプ顕微鏡3に設けられたボタン・ハンドル・ノブや、スリットランプ顕微鏡3に接続されたコンピュータ(処理ユニット5等)に設けられたキーボード・ポインティングデバイス(マウス・トラックボール等)や、フットスイッチ・操作パネルなどがある。ソフトウェアキーは、例えば、表示ユニット7などの表示デバイスに表示されるグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)に設けられている。
表示ユニット7は、例えばフラットパネルディスプレイを含む。操作ユニット6の少なくとも一部と表示ユニット7の少なくとも一部とを一体的に構成することが可能である。タッチパネルディスプレイはその一例である。
[照射条件]
レーザ治療装置1は、事前に指定されたパターンに応じて照射光を患者眼Eに適用することができる。照射光の投影像をスポットと呼ぶ。照射光には様々な条件(照射条件)がある。例示的な照射条件として、複数のスポットの配列パターン(配列条件)、配列パターンのサイズ(配列サイズ条件)、配列パターンの向き(配列方向条件)、スポットのサイズ(スポットサイズ条件)、スポットの間隔(スポット間隔条件)、照射光の強度(パワー条件)、照射光の波長(波長条件)、照射光が適用される時間の長さ(照射時間条件)などがある。処理ユニット5は、設定された照射条件にしたがってレーザ治療装置1(特に、レーザ照射系50、光源ユニット2など)の動作を制御する。
[処理系]
レーザ治療装置1の処理系について、図3を参照しながら説明する。ここで、図3は、レーザ治療装置1が実行する処理に関連する要素の一部のみを含む。
レーザ治療装置1の処理系は、制御部100と、記憶部110と、データ処理部120とを含む。制御部100、記憶部110、及びデータ処理部120は、例えば、処理ユニット5に設けられている。
(制御部100)
制御部100は、レーザ治療装置1の各要素を制御する。例えば、制御部100は、光源ユニット2の制御、表示ユニット7の制御、照明系10の制御、観察系30の制御、レーザ照射系50の制御、表示系60の制御などを行う。制御部100は、少なくとも図3に示す要素を制御する。例えば、制御部100は、前述した照射条件に基づく制御や、各種情報を表示装置61に表示させる制御を実行する。
光源ユニット2の制御として、制御部100は、照準光源2aの制御、治療光源2bの制御、ガルバノミラー2cの制御などを行う。照準光源2a及び治療光源2bの制御は、照射光の出力のオン/オフ、照射光の出力強度(出力パワー)の制御などを含む。また、1つ以上の治療光源2bにより複数種別の治療光LTを出力可能な構成が適用される場合、制御部100は、治療光LTを選択的に出力させるように治療光源2bを制御する。ガルバノミラー2cの制御は、ガルバノミラー2cの反射面の向きを変更する制御を含む。
照明系10の制御として、制御部100は、光源11の制御、フィルタ13〜15の制御、スリット絞り16の制御、その他の絞り部材の制御などを行う。光源11の制御は、照明光の出力のオン・オフ、照明光の出力強度(出力光量)の制御などを含む。フィルタ13〜15の制御は、照明光軸10aに対してフィルタ13〜15をそれぞれ挿脱する制御を含む。フィルタ13〜15の制御は、フィルタ駆動部13Aを制御することにより行われる。スリット絞り16の制御は、一対のスリット刃の間隔を変更する制御と、一対のスリット刃を一体的に移動・回転させる制御とを含む。前者の制御は、スリット幅の変更制御に相当する。後者の制御は、スリット幅を一定に保った状態で照明光(スリット光)の照射位置を変更する制御に相当する。その他の絞り部材には、前述のように、照明光の光量を変更するための照明絞りや、照明野のサイズを変更するための照明野絞りがある。スリット絞り16、照明絞り、照明野絞りの制御は、絞り駆動部16Aを制御することによりそれぞれ行われる。
観察系30の制御として、制御部100は、変倍レンズ32及び33の制御、保護フィルタ34の制御などを行う。変倍レンズ32及び33の制御は、変倍駆動部32Aを制御してこれらを観察光軸30aに沿って移動させる制御、或いは、異なる倍率の変倍レンズ群を観察光路に配置させる制御である。それにより、倍率(画角)が変更される。保護フィルタ34の制御は、保護フィルタ駆動部34Aを制御して、保護フィルタ34を観察光軸30aに対して挿脱する制御である。
レーザ照射系50の制御として、制御部100は、光スキャナ52の制御などを行う。それにより、光源ユニット2から光ファイバ4を介して入射された照射光が2次元的に偏向される。制御部100は、予め設定された照射条件に基づいて光源ユニット2及び/又はレーザ照射系50を制御することができる。
制御部100は、プロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等を含む。ハードディスクドライブには、制御プログラム等のコンピュータプログラムが予め記憶されている。制御部100の機能は、コンピュータプログラムと上記ハードウェアとが協働することによって実現される。また、制御部100は、外部装置と通信するための通信デバイスを含んでいてもよい。
(記憶部110)
記憶部110は各種のデータやコンピュータプログラムを記憶する。記憶部110は、例えばRAM、ROM、ハードディスクドライブ等の記憶装置を含む。記憶部110は、画像データ記憶部111と、条件情報記憶部112とを含む。画像データ記憶部111と条件情報記憶部112は、同じ記憶装置に設定された異なる記憶領域であってもよいし、異なる記憶装置であってもよい。
(画像データ記憶部111)
画像データ記憶部111は、患者眼Eの画像データを記憶する。特に、画像データ記憶部111には、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)血管造影を患者眼Eの眼底Efに適用して取得された画像データ(血管造影画像データ)が記憶される。
OCT血管造影(OCT−Angiography)は、眼底にOCTを適用して収集された時系列データに基づいて、血管が強調された画像(血管造影画像、アンジオグラム、モーションコントラスト画像)を構築する撮像モダリティである(例えば、特許文献7を参照)。
典型的には、患者眼Eの眼底Efの3次元領域に対してOCT血管造影が適用されて3次元血管造影画像データが取得され、この3次元血管造影画像データが画像データ記憶部111に格納される。画像データ記憶部111は、3次元血管造影画像データをレンダリングして構築された画像データ(プロジェクション画像データ、シャドウグラムデータ、多断面再構成(MPR)画像データ、ボリュームレンダリングデータ、サーフェスレンダリングデータなど)を記憶してもよい。
眼底Efに対するOCT血管造影は、少なくともOCT機能を有する任意の眼科装置を用いて行われる。典型的には、レーザ治療の術前プランニングのためにOCT血管造影が行われる。術前プランニングでは、患者眼Eの検査結果や画像や解析結果や診断結果などに基づいて、レーザ治療(レーザ手術)の内容や条件が決定される。また、過去に実施されたレーザ治療の結果や、患者・患者眼の属性(性別、年齢、既往歴、治療歴等)や、標準データ・統計データなどを参照してもよい。
術前プランニングで決定される事項として、レーザ治療の目標となる眼底Efの位置(治療目標位置)や、レーザ治療の目標となる眼底Efの深さ領域や、治療光LTの条件(例えば、前述した照射条件)、コンタクトレンズCLの種別や、レーザ治療の実施回数・実施間隔などがある。
なお、レーザ治療の目標となる眼底Efの深さ領域と治療光LTの波長との間には関係がある。一般に、治療の目的となる領域の深さが増すほど、治療光LTの波長が長くなる。典型的な例として、ブルー・グリーン波長(514nm)、グリーン波長(532nm)、イエロー波長(561nm)、レッド波長(670nm)の順に、治療の目的となる深さが増加する。このような既知の対応関係に基づいて、レーザ治療の目標となる眼底Efの深さ領域と治療光LTの波長とを同一視することや、一方から他方を求めることが可能である。
レーザ治療装置1が撮影機能(例えば、OCT機能、眼底撮影機能など)を備える場合、レーザ治療装置1により取得された画像データを画像データ記憶部111に記憶することができる。
患者眼Eの画像データに関連する情報を画像データ記憶部111に記憶させてもよい。画像データに関連する情報の例として、撮影日時、撮影場所、撮影者名、OCT撮像条件、画像データの識別情報、患者の識別情報などがある。このような情報は、例えば、画像規格や通信規格に準拠したフォーマット(典型的には、DICOMのタグ情報)で内包される。
(条件情報記憶部112)
条件情報記憶部112は、患者眼Eに対するレーザ治療の条件を表す条件情報を記憶する。
条件情報は、例えば、術前プランニングにおいて設定された条件に基づき予め生成される。典型的には、条件情報は、レーザ治療の目標となる眼底Efの位置(治療目標位置)を表す治療目標位置情報、レーザ治療の目標となる眼底Efの深さ領域を表す深さ領域情報(これに対応する治療光LTの波長を表す波長情報)、治療光LTの条件(例えば、前述した照射条件)を表す情報、コンタクトレンズCLの種別を表す情報などがある。
条件情報は、レーザ治療において設定、調整又は補正された条件に基づき生成されてもよい。このような条件の例として、レーザ治療において眼底Efを観察しつつ設定、調整又は補正された治療目標位置、深さ領域、照射条件などがある。レーザ治療において条件が設定、調整又は補正されたとき、この条件に基づく条件情報の生成は、例えばデータ処理部120によって実行される。
条件情報は、レーザ治療を行うための条件を表す情報には限定されず、実際に行なわれたレーザ治療における条件を表す情報を含んでいてもよい。例えば、条件情報は、レーザ治療が適用された眼底Efの位置を表す治療目標位置情報、レーザ治療が適用された眼底Efの深さ領域を表す深さ領域情報、レーザ治療において適用された治療光LTの照射条件を表す情報、レーザ治療において使用されたコンタクトレンズCLの種別を表す情報などがある。
(データ処理部120)
データ処理部120は各種のデータ処理を行う。データ処理部120は、レジストレーション部121と、レンダリング部122とを含む。
(レジストレーション部121)
レジストレーション部121は、イメージセンサ43により取得された眼底Efの画像データと画像データ記憶部111に記憶された画像データとの間のレジストレーションを行う。
典型的には、レジストレーション部121は、イメージセンサ43により取得された眼底Efの正面画像データ(例えば、観察画像のフレーム)と、画像データ記憶部111に記憶された3次元血管造影画像データ(又は、そのレンダリング画像データ)との間のレジストレーションを行う。
レジストレーションとは、異なる2以上の画像の間の位置合わせ(画像マッチング)である。本実施形態では、任意のレジストレーション手法が適用される。例えば、特徴ベースのレジストレーション手法、又は、領域ベースのレジストレーション手法が適用される。特徴ベースの手法では、画像から特徴点(例えば、エッジ、コーナー)を抽出し、その周囲の情報から特徴量を算出することにより、画像間のレジストレーションを行う。領域ベースの手法では、探索目標となる領域のテンプレートを用意し、このテンプレートと画像との比較によって、画像間のレジストレーションを行う。
眼底Efの2次元画像データ(例えば、正面画像データ)と3次元データ(例えば、3次元血管造影画像データ)との間のレジストレーションが行われる場合、一方又は双方の画像データに前処理を施すことができる。例えば、3次元血管造影画像データをレンダリングして2次元血管造影画像データ(例えば、プロジェクション画像データ、シャドウグラムデータ、Cスキャン画像データ)を作成し、この2次元血管造影画像データと正面画像データとの間のレジストレーションを実行することができる。
画像データ記憶部111に血管造影画像データ以外の画像データも記憶されている場合、レジストレーション部121は、この画像データと、イメージセンサ43により取得された眼底Efの画像データとの間のレジストレーションを実行し、その結果を利用して、イメージセンサ43により取得された眼底Efの画像データと、血管造影画像データとの間のレジストレーションを行うようにしてもよい。画像データ記憶部111に記憶される血管造影画像データ以外の画像データの例として、通常の3次元OCT画像データがある。ここで、通常の3次元OCT画像データの描出領域の少なくとも一部と、血管造影画像データの描出領域の少なくとも一部とは、共通である。
(レンダリング部122)
レンダリング部122は、画像データ記憶部111に記憶された3次元血管造影画像データをレンダリングして正面血管造影画像を形成する。
正面血管造影画像データは、例えば、3次元血管造影画像データの全体(全ての深さ領域)を深さ方向(Aライン方向)に投影して得られるプロジェクション画像データ、3次元血管造影画像データの一部(一部の深さ領域)を深さ方向に投影して得られるシャドウグラムデータ、又は、3次元血管造影画像データのCスキャン断面を表すCスキャン画像であってよい。
シャドウグラムデータを形成する場合などにおいて、レンダリング部122は、3次元血管造影画像データにセグメンテーションを適用することができる。セグメンテーションは、画像データ中の部分データを特定する処理である。レンダリング部122は、例えば、眼底Efの任意の深さ領域又は任意の組織に相当する部分データを特定することができる。特定された部分データを深さ方向に投影することによってシャドウグラムデータが構築される。
このようにして形成されるシャドウグラムデータの例として、眼底Efの任意の深さ領域(例えば、網膜浅部、網膜深部、脈絡膜毛細血管板、強膜など)に相当する部分データに基づき形成されるシャドウグラムデータや、眼底Efの所定組織(例えば、内境界膜、神経線維層、神経節細胞層、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層、外境界膜、網膜色素上皮、ブルッフ膜、脈絡膜、脈絡膜強膜境界、強膜、これらのいずれかの一部、これらの少なくとも2以上の組み合わせなど)に相当する部分データに基づき形成されるシャドウグラムデータがある。
条件情報記憶部112に記憶された条件情報が、前述した波長情報及び深さ領域情報の少なくとも一方を含む場合、レンダリング部112は、波長情報及び深さ領域情報の少なくとも一方に基づいて3次元血管造影画像データにセグメンテーションを適用することができる。
例えば、レンダリング部122は、波長情報が表す波長に対応する深さ領域に相当する3次元部分データ、又は、深さ領域情報が表す深さ領域に相当する3次元部分データを、3次元血管造影画像データから抽出することができる。
更に、レンダリング部122は、抽出された3次元部分データを深さ方向に投影してシャドウグラムを形成する。このシャドウグラムは、波長情報が表す波長に対応する深さ領域を表現した正面血管造影画像データ、又は、深さ領域情報が表す深さ領域を表現した正面血管造影画像データである。
レンダリング部122が実行可能なレンダリング手法は任意であってよく、例えば3次元コンピュータグラフィクスを含む。3次元コンピュータグラフィクスは、3次元座標系により定義された3次元空間内の仮想的な立体物(スタックデータ、ボリュームデータなどの3次元画像データ)を2次元情報に変換することによって立体感のある画像データを作成する演算手法である。
レンダリングの例として、ボリュームレンダリング法、最大値投影法(MIP)、最小値投影法(MinIP)、サーフェスレンダリング法、多断面再構成法(MPR)、プロジェクション画像形成、シャドウグラム形成などがある。
[動作]
本実施形態に係るレーザ治療装置1の動作について説明する。レーザ治療装置1の動作の一例を図4に示す。
(S1:患者眼の血管造影画像データを記憶する)
まず、レーザ治療装置1は、予め取得された患者眼Eの血管造影画像データを画像データ記憶部111に記憶する。この血管造影画像データは、例えば、術前プランニングにおいて参照されたものである。
(S2:患者眼に関する条件情報を記憶する)
また、レーザ治療装置1は、患者眼Eについて予め生成された条件情報を条件情報記憶部112に記憶する。この条件情報は、例えば、術前プランニングにおいて作成されたものである。
(S3:観察開始の指示を受ける)
レーザ治療装置1のユーザ(例えば、術者である医師)は、患者眼Eの観察を開始するための指示を、操作ユニット6を用いて入力する。
(S4:患者眼の照明を開始する)
制御部100は、ステップS3で入力された指示を受け、照明系10の光源11を点灯させる。それにより、患者眼Eの照明が開始される。ユーザは接眼レンズ38を介して患者眼E(眼底Ef)を観察することができる。ここで、ユーザは、スリット絞り16などを操作して照明状態(観察状態)を任意に調整することが可能である。
(S5:血管造影画像と条件情報を表示する)
制御部100は、ステップS1で画像データ記憶部111に記憶された血管造影画像データに基づく血管造影画像と、ステップS2で条件情報記憶部112に記憶された条件情報の少なくとも一部に基づく情報とを、表示系60の表示装置61に表示させる。それにより、ユーザは、患者眼E(眼底Ef)の観察画像とともに、血管造影画像及び条件情報を、接眼レンズ38を介して視認することができる。
観察画像と血管造影画像とは、例えば、一方が他方にオーバーレイ表示されてよい。或いは、観察画像と血管造影画像とは、所定のレイアウトで配列されてよい。或いは、観察画像と血管造影画像とを切り替えて表示されてよい。なお、観察画像と血管造影画像とを位置合わせ(レジストレーション)することや、互いの位置関係を表す情報を表示させることも可能である。
条件情報に基づき表示される情報の例として、治療目標位置情報、深さ領域情報、照射条件などがある。また、照射条件の例として、配列条件、配列サイズ条件、配列方向条件、スポットサイズ条件、スポット間隔条件、パワー条件、波長条件、照射時間条件などがある。また、照射条件は、レーザ照射による外傷(エンドポイント)の程度を制御するためのパラメータを含んでいてもよい(例えば、特許文献5を参照)。また、マイクロパルスが適用される場合、照射条件は、マイクロパルスに関するパラメータ(例えば、デューティ比)を含んでいてもよい。
(S6:観察画像と表示情報を参照してレーザ治療を実施する)
ユーザは、患者眼E(眼底Ef)の観察画像、血管造影画像、及び条件情報を参照してレーザ治療を行うことができる。レーザ治療のために、制御部100は、条件情報に含まれる照射条件に基づいて光源ユニット2やレーザ照射系50を制御する。それにより、例えば、治療光LTの波長・パワー・照射時間の設定や、スポットの配列パターン・サイズ・間隔の設定が行われる。
レーザ治療では、まず、眼底Efに照準光LAが投射され、治療目標位置に対するエイミングが行われる。このとき、動脈/静脈の判定、無血管領域の特定、血流の有無の判定、新生血管の特定などを行うことができる。動脈/静脈の判定は、例えば、観察画像、血管造影画像、OCT血流計測で得られたデータ、レーザスペックルフローグラフィで得られたデータ、眼底撮影画像、蛍光血管造影画像などに基づいて実行することが可能である。無血管領域の特定についても同様である。血流の有無の判定は、例えば、OCT血流計測で得られたデータ、レーザスペックルフローグラフィで得られたデータ、蛍光血管造影画像などに基づいて実行することが可能である。新生血管の特定は、例えば、レーザスペックルフローグラフィで得られたデータ、蛍光血管造影画像などに基づいて実行することが可能である。
エイミングでは、治療目標位置の調整や照射条件の調整が行われる。治療目標位置の調整結果や照射条件の調整結果を条件情報として条件情報記憶部112に保存することができる。エイミングや各種調整が完了したら、眼底Efに治療光LTが適用される。実際に適用された治療光LTの照射条件、治療光LTが適用された位置(治療目標位置)を表す情報、治療光LTが適用された深さ領域を表す情報などを、条件情報として条件情報記憶部112に保存することができる。治療目標位置情報や深さ領域情報は、例えば、血管造影画像データ(典型的には、3次元血管造影画像データ)における位置(座標)として記録される。
図4のステップS5(血管造影画像と条件情報を表示する)の具体例を説明する。図5のフローチャートは、眼底Efの観察画像と血管造影画像とのレジストレーションを行う場合におけるステップS5の処理の例を示す。図6のフローチャートは、レーザ治療が適用される位置を提示する場合におけるステップS5の処理の例を示す。図7のフローチャートは、レーザ治療が適用される深さ領域に対応する正面血管造影を提示する場合におけるステップS5の処理の例を示す。
ステップS5で実行可能な処理はこれらに限定されない。例えば、これら3つの処理例のいずれか2つを組み合わせることや、これら3つの処理例と異なる処理を実行することや、これら3つの処理例のいずれかと他の処理とを組み合わせることが可能である。
まず、図5を参照しつつ、眼底Efの観察画像と血管造影画像とのレジストレーションを行う場合におけるステップS5の処理の例を説明する。
(S11:患者眼を撮影して画像データを得る)
撮影系40は、ユーザが接眼レンズ38を介して観察している患者眼Eを撮影することができる。イメージセンサ43により得られた患者眼Eの画像データ(撮影画像データ)は、制御部100に送られる。
(S12:撮影画像データと血管造影画像データのレジストレーションを行う)
レジストレーション部121は、ステップS11で取得された撮影画像データと、ステップS1で画像データ記憶部111に記憶された血管造影画像データとの間のレジストレーションを実行する。なお、血管造影画像データのレンダリング画像を表示させる場合には、このレンダリング画像データと撮影画像データとの間のレジストレーションを行うようにしてもよい。
(S13:血管造影画像の表示位置を決定する)
制御部100は、ステップS12で行なわれたレジストレーションの結果に基づいて、血管造影画像データに基づく血管造影画像の表示位置を決定する。
ここで図8を参照する。図8は、ステップS12のレジストレーションの結果の例を表す。符号G1は、ステップS11で取得された撮影画像データを示し、符号G2は、ステップS1で画像データ記憶部111に記憶された血管造影画像データを示す。図8に示すレジストレーション結果に基づいて、制御部100は、血管造影画像データG2に基づく血管造影画像H2の表示位置(表示装置61における座標)を決定する。本例では、図9に示す表示位置(表示装置61の表示画面における略中央上部位置)に、血管造影画像H2が表示される。それにより、ユーザは、接眼レンズ38を介して、図9に示すような位置関係で重畳配置された眼底Efの観察画像H1と血管造影画像H2とを観察することができる。観察画像H1と血管造影画像H2との位置関係は、撮影画像データG1と血管造影画像データG2との位置関係と実質的に同じである。なお、図9では、条件情報は省略されている。
患者眼Eの眼球運動などにより、接眼レンズ38を介して観察される眼底Efの観察画像は移動する。この観察画像の移動に合わせて血管造影画像の表示位置を移動させることが可能である。例えば、ステップS11の撮影画像データの取得を所定時間間隔で繰り返し実行し、繰り返し取得される撮影画像データそれぞれと血管造影画像データとのレジストレーション(ステップS12)を逐次に実行し、繰り返し取得されるレジストレーション結果それぞれに応じて血管造影画像の表示位置を逐次に決定することができる。
(S14:決定位置に血管造影画像を表示し、且つ、条件情報を表示する)
上記したように、制御部100は、ステップS13で決定された位置に血管造影画像データに基づく血管造影画像を表示させ、且つ、ステップS2で条件情報記憶部112に記憶された条件情報の少なくとも一部に基づく情報を表示させる。
図5に示す例によれば、眼底Efをリアルタイムで観察しつつ、この観察画像上の好適な位置に配置された血管造影画像を観察することができる。それにより、ユーザは、眼底Efをリアルタイムで観察しつつ眼底血管の分布を把握することが可能である。
次に、図6を参照しつつ、レーザ治療が適用される位置を提示する場合におけるステップS5の処理の例を説明する。本例において、条件情報記憶部112に記憶された条件情報は、予め設定されたレーザ治療の目標となる眼底Efの位置を表す治療目標位置情報を含んでいる。
(S21〜S23)
ステップS21、S22、及びS23は、それぞれ、図5のステップS11、S12、及びS13と同じ要領で実行される。
(S24:治療目標位置画像の表示位置を決定する)
制御部100は、ステップS22で行なわれたレジストレーションの結果に基づいて、条件情報に含まれる治療目標位置情報が表す位置を示す画像(治療目標位置画像)の表示位置を決定する。
治療目標位置情報と血管造影画像データG2との間には、直接的又は間接的な関係がある。例えば、図10に示すように、治療目標位置情報が表す位置Pは、血管造影画像データG2における座標として定義されていてよい。ステップS22において実行された撮影データG1と血管造影画像データG2との間のレジストレーションの結果を、先の例を同じく図8に示す。このようなレジストレーション結果に基づいて、制御部100は、治療目標位置画像Qの表示位置(表示装置61における座標)を決定する。この処理は、治療目標位置情報と血管造影画像データG2との間の位置関係と、レジストレーションで得られた撮影データG1と血管造影画像データG2との間の位置関係とを組み合わせることによって行われる。
本例では、図11にそれぞれ示す表示位置に血管造影画像H2と治療目標位置画像Qとを表示させることができる。それにより、ユーザは、接眼レンズ38を介して、図11に示すような位置関係で重畳配置された眼底Efの観察画像H1と血管造影画像H2とを観察することができ、更に、治療目標位置画像Qによってレーザ治療の目標となる位置を把握することができる。
或いは、本例において、血管造影画像H2を表示させることなく、図12に示す表示位置に治療目標位置画像Qを表示させることができる。それにより、ユーザは、接眼レンズ38を介して、眼底Efの観察画像H1を観察しつつレーザ治療の目標となる位置を把握することができる。
先の例と同じ要領で、患者眼Eの眼球運動などに起因する観察画像の移動に合わせて治療目標位置画像(及び血管造影画像)の表示位置を移動させることが可能である。
(S25:血管造影画像と治療目標位置画像をそれぞれの決定位置に表示する)
上記したように、制御部100は、ステップS23で決定された位置に血管造影画像データに基づく血管造影画像を表示させ、且つ、ステップS24で決定された位置に治療目標位置画像を表示させる。
図6に示す例によれば、眼底Efをリアルタイムで観察しつつレーザ治療の目標位置を把握することができる。また、眼底Efをリアルタイムで観察しつつ、この観察画像上の好適な位置に配置された血管造影画像を観察し、更に、レーザ治療の目標位置を把握することができる。それにより、ユーザは、眼底Efをリアルタイムで観察しつつレーザ治療の目標位置や眼底血管の分布を把握することが可能である。
次に、図7を参照しつつ、レーザ治療が適用される深さ領域に対応する正面血管造影を提示する場合におけるステップS5の処理の例を説明する。本例において、条件情報記憶部112に記憶された条件情報は、予め設定された治療光の波長を表す波長情報、及び/又は、レーザ治療の目標となる眼底Efの深さ領域を表す深さ領域情報を含んでいる。また、ステップS1で画像データ記憶部111に記憶される血管造影画像データは、3次元血管造影画像データを含む。
(S31:波長情報/深さ領域情報に対応する3次元部分データを3次元血管造影画像データから抽出する)
レンダリング部122は、画像データ記憶部111に記憶されている3次元血管造影画像データから、条件情報に含まれる波長情報及び/又は深さ領域情報に対応する3次元部分データを抽出する。
(S32:3次元部分データをレンダリングしてシャドウグラムデータを形成する)
続いて、レンダリング部122は、ステップS31で抽出された3次元部分データをレンダリングして正面血管造影画像データを形成する。この正面血管造影画像データは、波長情報及び/又は深さ領域情報に対応する眼底Efの深さ領域における血管分布を表すシャドウグラムデータである。
(S33:患者眼を撮影して画像データを得る)
撮影系40は、ユーザが接眼レンズ38を介して観察している患者眼Eを撮影して画像データ(撮影画像データ)を取得する。取得された撮影画像データは、制御部100に送られる。
(S34:撮影画像データとシャドウグラムデータのレジストレーションを行う)
レジストレーション部121は、ステップS33で取得された撮影画像データと、ステップS32で形成されたシャドウグラムデータとの間のレジストレーションを実行する。なお、3次元血管造影画像データと撮影画像データとの間のレジストレーションを実行し、その結果をシャドウグラムデータに反映させるようにしてもよい。
(S35:シャドウグラムの表示位置を決定する)
制御部100は、ステップS34で行なわれたレジストレーションの結果に基づいて、シャドウグラムデータに基づく血管造影画像(シャドウグラム)の表示位置を決定する。
(S36:決定位置にシャドウグラムを表示し、且つ、深さ領域を表す情報を表示する)
制御部100は、ステップS35で決定された位置にシャドウグラムを表示させ、且つ、波長情報及び/又は深さ領域情報に対応する深さ領域を表す情報を表示させる。
深さ領域を表す表示情報は、例えば、深さ領域を表す文字列、色などであってよい。深さ領域を表す文字列は、例えば、眼底組織の名称又は略称を表す文字列を含んでいてよい。深さ領域を表す色は、例えば、眼底の複数の深さ領域に対して予め割り当てられた複数の色のいずれかであってよい。複数の深さ領域に割り当てられる複数の色は、例えば、対応する深さ領域のレーザ治療に適用される治療光の色に合わせられていてよい。
図7に示す例によれば、眼底Efをリアルタイムで観察しつつ、レーザ治療の対象となる深さ領域における血管造影画像を観察することができる。それにより、ユーザは、眼底Efをリアルタイムで観察しつつ、レーザ治療の対象となる深さ領域における血管の分布を把握することが可能である。
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態では、患者眼Eの眼底Efの観察画像、血管造影画像、及び条件情報の全てを、接眼レンズ38を介して提示する構成について説明したが、実施形態はこれに限定されない。例えば、観察画像、血管造影画像、及び条件情報のいずれかを接眼レンズ38を介さずに提示できるように構成されていてもよい。
このような構成の例として、第2の実施形態では、観察画像、血管造影画像、及び条件情報の全てを接眼レンズ38を介さずに提示可能なレーザ治療装置について説明する。なお、観察画像、血管造影画像、及び条件情報のいずれかを接眼レンズ38を介さずに提示可能な構成において、観察画像、血管造影画像、及び条件情報の一部又は全てを接眼レンズ38を介して提示可能であってもよい。
本実施形態に係るレーザ治療装置は、第1の実施形態に係るレーザ治療装置1と同様の構成を備えていてよい。以下、図1〜図3を参照する。
図2に示すように、本実施形態に係るレーザ治療装置は、患者眼Eを撮影するための撮影系40を含む。患者眼Eに投射された照明光の戻り光は、撮影系40のイメージセンサ43に導かれる。
制御部100は、画像データ記憶部111に記憶された血管造影画像データに基づく血管造影画像と、条件情報の少なくとも一部に基づく情報と、イメージセンサ43により取得された画像データに基づく観察画像とを、表示デバイス7に表示させることができる。
第1の実施形態と同様に、観察画像と血管造影画像とを重畳表示することも可能である。例えば、レジストレーション部121は、イメージセンサ43により取得された画像データと画像データ記憶部111に記憶された画像データとの間のレジストレーションを行う。第1の実施形態で説明したように、画像データ記憶部111に記憶された画像データは、血管造影画像データでもよいし、他の種類の画像データでもよい。
制御部100は、イメージセンサ43により取得された画像データと画像データ記憶部111に記憶された画像データとの間のレジストレーションの結果に基づいて、血管造影画像と観察画像との間の相対位置を決定することができる。
更に、制御部100は、決定された相対位置に応じて血管造影画像と観察画像とを表示デバイス7に表示させ、且つ、条件情報の少なくとも一部に基づく情報を表示デバイス7に表示させることができる。
第1の実施形態と同様に、レーザ照射目標位置を観察画像に重畳表示することも可能である。この場合、条件情報記憶部112に記憶された条件情報は、予め設定されたレーザ治療の目標となる眼底Efの位置を表す治療目標位置情報を含む。
レジストレーション部121は、イメージセンサ43により取得された画像データと画像データ記憶部111に記憶された画像データとの間のレジストレーションを行う。
制御部100は、レジストレーションの結果に基づいて、治療目標位置情報が表す位置を示す治療目標位置画像と観察画像との間の相対位置を決定することができる。
更に、制御部100は、決定された相対位置に応じて治療目標位置画像と観察画像とを表示デバイス7に表示させ、且つ、血管造影画像を表示デバイス7に表示させることができる。
本実施形態に係るレーザ治療装置に対し、第1の実施形態における任意の要素や事項を適用することが可能である。
〈第3の実施形態〉
本実施形態に係るレーザ治療装置は、患者眼の眼底に対して光コヒーレンストモグラフィ(OCT)を適用するための構成を備える。特に、本実施形態に係るレーザ治療装置は、OCT血管造影を行うための制御及びデータ処理を行うことが可能である。OCTの手法は、例えば、スペクトラルドメインOCT又はスウェプトソースOCTであってよい。
本実施形態に係るレーザ治療装置の構成の例を図13に示す。図13に示す構成では、図3に示す第1の実施形態の構成に、OCTデータ収集部130と画像形成部123とが付加されている。
OCTデータ収集部130は、眼底EfにOCT血管造影を適用してデータを収集する。画像形成部123は、OCTデータ収集部130により収集されたデータを処理して血管造影画像データを形成する。なお、OCTデータ収集部130は通常のOCTスキャンを実行可能であり、画像形成部123は通常のOCT画像データを形成することが可能である。
OCT血管造影は、典型的には、眼底Efの3次元領域にOCTを適用して収集された時系列データに基づいて、血管が強調された画像(血管造影画像、アンジオグラム、モーションコントラスト画像)を構築する技術である。
画像形成部123は、図示しない画像形成プロセッサを含む。画像形成部123は、OCTデータ収集部130により収集されたデータに基づいて、眼底Efの断面像データを形成する。この処理には、従来のOCTと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、高速フーリエ変換(FFT)などの信号処理が含まれる。画像形成部123により形成される画像データは、スキャンラインに沿って配列された複数のAライン(深さ方向に沿うスキャンライン)における反射強度プロファイルを画像化することにより形成された一群の画像データ(一群のAスキャン像データ)を含むデータセットである。
OCT血管造影が実施される場合、画像形成部123は、所定回数だけ繰り返し行われたスキャンにより収集されたデータに基づいて、モーションコントラスト画像を形成することができる。このモーションコントラスト画像は、眼底Efの血管が強調された血管造影画像(アンジオグラム)である。なお、モーションコントラスト画像とは、同一位置において異なる時間に取得された複数のデータ(画像)に基づき作成された画像であって、当該位置における運動を表現した画像である。
ここで、OCT血管造影に適用可能なスキャンパターンの典型的な例を説明する。OCT血管造影では3次元スキャン(ラスタースキャン)が適用される。3次元スキャンは、互いに平行に配列された複数のスキャンラインに沿ったスキャンである。複数のスキャンラインは予め順序付けられており、この順序でスキャンが適用される。本実施形態において適用可能な3次元スキャンの例を図14A及び図14Bに示す。
図14Bに示すように、本例の3次元スキャンは320本のスキャンラインL1〜L320に対して実行される。1本のスキャンラインLi(i=1〜320)に沿った1回のスキャンはBスキャンと呼ばれる。1つのBスキャンは320個のAスキャンからなる(図14Aを参照)。Aスキャンは1つのAラインに対するスキャンである。つまり、Aスキャンは、OCT測定光の入射方向(深さ方向、軸方向)に沿うAラインに対するスキャンである。Bスキャンは、深さ方向に直交する面上のスキャンラインLiに沿って配列された320個のAスキャンからなる。
本例の3次元スキャンでは、スキャンラインL1〜L320に対するBスキャンを任意の順序で4回ずつ実行する。各スキャンラインLiに対する4回のBスキャンはレペティションスキャンと呼ばれる。各スキャンラインLiに対する4回の繰り返し(レペティション)の順序は、任意である。例えば、4回のスキャンを連続的に行ってもよいし、4回のスキャンの間に他のスキャンラインに対するBスキャンを行ってもよい。
スキャンラインL1〜L320は、これらの配列順序に応じて5本ずつの組に分類されている。この分類により得られる64個の組のそれぞれはユニットと呼ばれ、各ユニットに対するスキャンをユニットスキャンと呼ぶ。ユニットスキャンは、5本のスキャンラインのそれぞれに対する4回のBスキャン(レペティション)からなる。すなわち、ユニットスキャンは、20回のBスキャンからなる。
画像形成部123は、このようなスキャンパターンでOCTデータ収集部130が収集したデータをスキャンラインLi毎のデータセット(時系列データ)に分類する。ここで、データセットには、4回のレペティションに対応する4つのBスキャンデータが含まれている。4つのBスキャンデータのそれぞれは、スキャンラインLiに対する1回のBスキャンで収集されたデータである。
更に、画像形成部123は、各スキャンラインLiに対応するデータセットに基づいて当該スキャンラインLiに対応するモーションコントラスト画像データを形成する。各スキャンラインLiに対応するモーションコントラスト画像データは、このスキャンラインLiを含むBスキャン面(縦断面)を表す2次元血管造影画像データである。
モーションコントラスト画像データを形成する処理は、従来のOCT血管造影データの形成と同様にして実行される。前述したように、本例では、スキャンラインLiに対応するデータセットに4つのBスキャンデータが含まれている。各Bスキャンデータは、スキャンラインLiに対する1回のBスキャンで収集されたデータである。
まず、画像形成部123は、各Bスキャンデータに基づいて、通常のOCT画像データを形成する。このOCT画像データは、320個のAスキャン像データからなるBスキャン画像データである。それにより、スキャンラインLiに対応する4個のBスキャン画像データが得られる。
次に、画像形成部123は、4個のBスキャン画像データの間で変化している画像領域を特定する。この処理は、例えば、異なるBスキャン画像データの間の差分を求める処理を含む。各Bスキャン画像データは、眼底Efの形態を表す輝度画像データ(強度画像データ)であり、血管以外の部位に相当する画像領域は実質的に不変であると考えられる。一方、干渉信号に寄与する後方散乱が血流によってランダムに変化することを考慮すると、4個のBスキャン画像データの間で変化が生じた画像領域(例えば、差分がゼロでない画素、又は差分が所定閾値以上である画素)は血管領域であると推定することができる。
画像形成部123は、特定された血管領域内の画素に所定の画素値を付与する。この画素値は、例えば、比較的高い輝度値(表示時には明るく、白く表現される)や、疑似カラー値であってよい。なお、他の従来技術と同様に、ドップラーOCTや画像処理を用いて血管領域を特定することも可能である。
このような処理により、320本のスキャンラインL1〜L320に対応する320個の2次元血管造影画像データが得られる。画像形成部123は、320本のスキャンラインL1〜L320の配列にしたがって320個の2次元血管造影画像データを配置する。この処理は、例えば、320本のスキャンラインL1〜L320の配列順序及び配列間隔(スペーシング)に合わせて、320個の2次元血管造影画像データを単一の3次元座標系に配置する(埋め込む)処理を含む。つまり、320本のスキャンラインL1〜L320の配列に応じた320個の2次元血管造影画像データのスタックデータを形成することができる。このスタックデータは、眼底Efの血管の3次元的な分布を表す画像データ(3次元血管造影画像データ)の例である。画像形成部123は、このスタックデータに補間処理等を施してボリュームデータ(ボクセルデータ)を形成することも可能である。
収集されたデータから血管造影画像データを形成する処理は上記の例には限定されず、任意の公知技術を用いて血管造影画像データを形成することが可能である。
データ処理部120は、ボリュームデータやスタックデータなどの3次元画像データを加工することができる。例えば、レンダリング部122は、3次元画像データにレンダリングを適用することができる。レンダリングの手法としては、ボリュームレンダリング、最大値投影(MIP)、最小値投影(MinIP)、サーフェスレンダリング、多断面再構成(MPR)などがある。また、レンダリング部122は、3次元画像データの少なくとも一部をAライン方向(深さ方向)に投影することにより、プロジェクションデータやシャドウグラムデータを構築することができる。
データ処理部120は、任意の解析処理や画像処理を実行することができる。例えば、データ処理部120は、2次元断面像データ又は3次元画像データにセグメンテーションを適用することができる。セグメンテーションは、画像データ中の部分データを特定する処理である。本例では、眼底Efの所定組織に相当する画像領域を特定することができる。
OCT血管造影において、レンダリング部122は、3次元血管造影画像データから、任意の2次元血管造影画像データ及び/又は任意の擬似的3次元血管造影画像データを構築することが可能である。例えば、データ処理部230は、3次元血管造影画像データに多断面再構成を適用することにより、眼底Efの任意の断面を表す2次元血管造影画像データを構築することができる。
また、画像形成部123は、3次元血管造影画像データにセグメンテーションを適用して眼底Efの所定組織に相当する画像領域を特定し、特定された画像領域をAスキャン方向に投影してシャドウグラムデータ(正面血管造影画像データ)を構築することができる。正面血管造影画像データの例として、眼底Efの任意の深さ領域(例えば、網膜浅部、網膜深部、脈絡膜毛細血管板、強膜など)に対応する正面画像や、眼底Efの所定組織(例えば、内境界膜、神経線維層、神経節細胞層、内網状層、内顆粒層、外網状層、外顆粒層、外境界膜、網膜色素上皮、ブルッフ膜、脈絡膜、脈絡膜強膜境界、強膜、これらのいずれかの一部、これらの少なくとも2以上の組み合わせなど)に対応する正面画像データがある。
画像データ記憶部111は、画像形成部123により形成された血管造影画像データを記憶することができる。また、画像データ記憶部111は、画像形成部123により形成された血管造影画像データをレンダリング部122がレンダリングすることによって構築された画像データを記憶することができる。このような画像データはレーザ治療において取得される。例えば、レーザ照射前、レーザ照射中、レーザ照射後などの任意のタイミングでOCT(特にOCT血管造影)を行うことが可能である。
レーザ治療において取得された画像データは、例えば、治療効果の診断、術前術後比較、経過観察などに利用される。
〈第4の実施形態〉
レーザ治療を行っているときにも患者眼は随意的及び不随意的な運動を行っている。したがって、リアルタイムで得られる患者眼の観察画像と、表示装置61や表示ユニット7などに表示される血管造影画像との間の位置関係は、常に変化している。第4の実施形態に係るレーザ治療装置は、患者眼の動きに応じて血管造影画像の表示位置を変更することによって、ユーザにそれぞれ提供される観察画像と血管造影画像との間の位置関係の維持を図る。
本実施形態に係るレーザ治療装置の構成の例を図15に示す。図15に示す構成では、図3に示す第1の実施形態の構成に、動き検出部140が付加されている。
動き検出部140は、患者眼Eの動きを検出する。眼球運動の検出方法は任意であってよい。例えば、角膜に光源の虚像を形成し、この虚像の移動をビデオカメラで検出する方法がある。角膜表面の反射光と角膜内部の反射光とを組み合わせた方法(二重プルキンエ像法などと呼ばれる)もある。また、角膜(黒目)と強膜(白目)との境界に光を当て、黒目と白目との反射率の相違により眼球運動を検出する方法がある。また、交流磁界内のコイルに磁界と成す角度に応じた電位が発生する現象を利用して眼位を検出する方法(サーチコイル法などと呼ばれる)がある。また、眼周辺の皮膚の電位の変化から眼位の変化を検出する方法(眼球電位法、EOG法などと呼ばれる)がある。
他の例に係る動き検出部140は、患者眼Eの前眼部を動画撮影するカメラと、このカメラにより取得される前眼部の観察画像をリアルタイムで解析するプロセッサとを含む。プロセッサは、観察画像のフレームを解析することにより、このフレーム中における瞳孔領域(又は、瞳孔輪郭、角膜強膜境界、瞳孔中心位置、瞳孔重心位置など)を検出する。プロセッサは、逐次に取得されるフレームに対して当該処理を順次に適用することにより、瞳孔領域の位置の時系列変化を取得する。プロセッサは、このようにして取得される患者眼Eの動きを表す情報(眼球運動情報)を、リアルタイムで制御部100に入力する。
また、患者眼Eの眼底Efの特徴点(例えば、視神経乳頭、乳頭中心、黄斑、血管、病変部、レーザ治療痕など)の変位から患者眼Eの動きを検出することも可能である。動き検出部140の構成は以上の例示に限定されず、患者眼Eの動きを検出可能な任意の構成であってよい。
制御部100は、動き検出部140からの出力に基づいて、表示装置61又は表示ユニット7に表示される血管造影画像の表示位置を変更する。
典型的には、動き検出部140は、所定の時間間隔で眼位を検出する。例えば、動き検出部140は、前述したカメラの撮影レート(動画のフレームレート)又はその整数分の1のレートで眼位を検出する。眼位の時系列変化は、例えば、基準となる検出位置に対する変位ベクトルとして得られる。典型的には、眼位の時系列変化は、初期眼位に対する変位ベクトルとして逐次に検出される。他の例として、眼位の時系列変化は、直前の眼位に対する変位ベクトルとして逐次に検出される。
このようにして逐次に取得される変位ベクトルに基づき、制御部100は、血管造影画像の表示位置を変化させる。例えば、制御部100は、逐次に取得される変位ベクトルだけ血管造影画像の表示位置をリアルタイムで変更する。それにより、眼球運動が発生しても、患者眼Eの観察画像と血管造影画像との間の位置関係を維持することができる。
〈第5の実施形態〉
第1及び第2の実施形態では、治療用レーザ光の照射目標となる眼底の位置を血管造影画像とともに提示するための構成を説明した。これに対し、第5の実施形態では、治療用レーザ光の照射が禁止されるべき眼底の位置を血管造影画像とともに提示するための構成について説明する。
本実施形態に係るレーザ治療装置の構成の例を図15に示す。図15に示す構成では、図3に示す第1の実施形態の構成に、照射禁止位置決定部124が付加されている。
照射禁止位置決定部124は、画像データ記憶部111に記憶された画像データに基づいて、治療光LTの照射が禁止される眼底Efの位置を決定する。一例において、照射禁止位置決定部124は、画像データ記憶部111に記憶された血管造影画像データ(又は、そのレンダリング画像データ)に基づいて血管領域を特定し、特定された血管領域を照射禁止位置に設定することができる。
他の例において、照射禁止位置決定部124は、同じ要領で血管領域を特定し、特定された血管領域から所定領域を抽出し、抽出された所定領域を照射禁止位置に設定することができる。この所定領域の例として、動脈領域、静脈領域、血管径が閾値以上である血管領域、血管径が閾値以下である血管領域などがある。
更に他の例において、照射禁止位置決定部124は、同じ要領で血管領域を特定し、眼底Efの所定領域(視神経乳頭、黄斑、病変部、レーザ治療痕など)を特定し、血管領域と所定領域との位置関係を参照して照射禁止位置を決定することができる。
照射禁止位置の種類やその決定方法は、以上の例示に限定されない。
制御部100は、照射禁止位置決定部124により決定された眼底Efの位置を示す照射禁止位置画像を血管造影画像とともに表示装置61又は表示デバイス7に表示させる。
制御部100は、照射目標位置画像と照射禁止位置画像との双方を血管造影画像とともに表示させることができる。この場合、制御部100は、照射目標位置画像を第1の表示態様で表示させ、且つ、第1の表示態様と異なる第2の表示態様で照射禁止位置画像を表示させることが可能である。例えば、制御部100は、照射目標位置画像を第1の色(例えば、青色)で表示させ、且つ、第1の色と異なる第2の色(例えば、赤色)で照射禁止位置画像を表示させることができる。
また、治療光LTの照射が禁止される理由や禁止の程度などに応じて表示態様(例えば、表示色)を変更するようにしてもよい。
〈作用・効果〉
例示的な実施形態に係るレーザ治療装置の作用及び効果について説明する。
例示的な実施形態に係るレーザ治療装置は、患者眼のレーザ治療を行うために用いられ、照明光学系と、観察光学系と、画像データ記憶部と、表示制御部と、光路結合部材とを含む。照明光学系(照明系10)は、患者眼の眼底に照明光を投射する。観察光学系(観察系30)は、眼底に投射された照明光の戻り光を接眼レンズ(38)に導く。画像データ記憶部(111)は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)血管造影を眼底に適用して取得された血管造影画像データを含む眼底の画像データを記憶する。表示制御部(制御部100)は、血管造影画像データに基づく血管造影画像を表示装置(61)に表示させる。光路結合部材(ビームスプリッタ63)は、表示装置から出射された光の光路と観察光学系が形成する光路(観察光路)とを結合する。
このような実施形態によれば、ユーザは、接眼レンズを介して患者眼(眼底)を観察しつつ、術前プランニングなどで参照された血管造影画像を同じく接眼レンズを介して参照して眼底血管分布を認識することができる。したがって、眼科レーザ治療に有効な態様で患者眼の血管造影画像を提示することが可能である。
例示的な実施形態において、レーザ治療装置は、観察光学系(観察系30)が形成する光路からの分岐光路を形成する光路分岐部材(ビームスプリッタ41)と、この分岐光路に配置された第1撮像装置(イメージセンサ43)と、この第1撮像装置により取得された画像データと画像データ記憶部(111)に記憶された画像データとの間のレジストレーションを行う第1レジストレーション部(レジストレーション部121)とを含んでいてよい。更に、表示制御部(制御部100)は、レジストレーションの結果に基づいて血管造影画像の表示位置を決定するように構成されていてよい。
このような構成によれば、接眼レンズを介して提供される患者眼(眼底)の観察画像と血管造影画像との間の位置関係をユーザに提供することができる。例えば、観察画像に血管造影画像を重ねてユーザに提示することが可能である。したがって、眼科レーザ治療に有効な態様で患者眼の血管造影画像を提示することが可能である。
例示的な実施形態に係るレーザ治療装置は、患者眼のレーザ治療を行うために用いられ、照明光学系と、撮影光学系と、画像データ記憶部と、表示制御部とを含む。照明光学系(照明系10)は、患者眼の眼底に照明光を投射する。撮影光学系(観察系30、撮影系40)は、眼底に投射された照明光の戻り光を第2撮像装置(イメージセンサ43)に導く。画像データ記憶部(111)は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)血管造影を眼底に適用して取得された血管造影画像データを含む眼底の画像データを記憶する。表示制御部(制御部100)は、血管造影画像データに基づく血管造影画像と第2撮像装置により取得された画像データに基づく観察画像とを表示装置(表示ユニット7)に表示させる。
このような実施形態によれば、ユーザは、表示装置を介して患者眼(眼底)を観察しつつ、術前プランニングなどで参照された血管造影画像を同じく表示装置を介して参照して眼底血管分布を認識することができる。したがって、眼科レーザ治療に有効な態様で患者眼の血管造影画像を提示することが可能である。
例示的な実施形態において、レーザ治療装置は、第2撮像装置(イメージセンサ43)により取得された画像データと画像データ記憶部(111)に記憶された画像データとの間のレジストレーションを行う第2レジストレーション部(レジストレーション部121)を含んでいてよい。更に、表示制御部(制御部100)は、レジストレーションの結果に基づいて、血管造影画像と観察画像との間の相対位置を決定するように構成されていてよい。
このような構成によれば、表示装置を介して提供される患者眼(眼底)の観察画像と血管造影画像との間の位置関係をユーザに提供することができる。例えば、観察画像に血管造影画像を重ねて表示させることが可能である。したがって、眼科レーザ治療に有効な態様で患者眼の血管造影画像を提示することが可能である。
例示的な実施形態において、血管造影画像データは、患者眼の眼底の3次元領域にOCT血管造影を適用して取得された3次元血管造影画像データを含んでいてよい。また、レーザ治療装置は、この3次元血管造影画像データをレンダリングして正面血管造影画像を形成するレンダリング部(122)を更に含んでいてよい。更に、表示制御部(制御部100)は、レンダリング部により形成された正面血管造影画像を血管造影画像として表示させるように構成されていてよい。
このような構成によれば、ユーザは、正面血管造影画像(シャドウグラム、プロジェクション画像など)が表す血管分布を参照することができる。したがって、眼科レーザ治療に有効な態様で患者眼の血管造影画像を提示することが可能である。
例示的な実施形態において、レンダリング部(122)は、治療用レーザ光(治療光LT)の波長を表す波長情報、及び、レーザ治療の目標となる眼底の深さ領域を表す深さ領域情報の少なくとも一方に基づいて、3次元血管造影画像データの3次元部分データを抽出し、この3次元部分データをレンダリングして正面血管造影画像を形成するように構成されていてよい。
このような構成によれば、レーザ治療の目標となる眼底の深さ領域における血管分布を選択的にユーザに提供することが可能である。したがって、眼科レーザ治療に有効な態様で患者眼の血管造影画像を提示することが可能である。
例示的な実施形態において、表示制御部(制御部100)は、波長情報及び深さ領域情報の少なくとも一方に基づき決定された色で正面血管造影画像を表示させるように構成されていてよい。
このような構成によれば、ユーザは、レーザ治療の目標となる眼底の深さ領域を、正面血管造影画像の表示色から把握することが可能である。したがって、眼科レーザ治療に有効な態様で患者眼の血管造影画像を提示することが可能である。
例示的な実施形態において、レーザ治療装置は、患者眼の動きを検出する検出部(動き検出部140は、)を更に含んでいてよい。更に、表示制御部は、検出部からの出力に基づいて血管造影画像の表示位置を変更するように構成されていてよい。
このような構成によれば、患者眼の動きに応じて血管造影画像の表示位置を変更することで、ユーザにそれぞれ提供される観察画像と血管造影画像との間の位置関係の維持を図ることができる。したがって、眼科レーザ治療に有効な態様で患者眼の血管造影画像を提示することが可能である。
例示的な実施形態において、レーザ治療装置は、患者眼に対するレーザ治療の条件を表す条件情報を記憶する条件情報記憶部(112)を更に含んでいてよい。更に、表示制御部(制御部100)は、条件情報の少なくとも一部に基づく情報を血管造影画像とともに表示装置(表示装置61、又は表示ユニット7)に表示させるように構成されていてよい。
このような構成によれば、ユーザは、患者眼の眼底の観察画像及び血管造影画像(血管分布)に加え、レーザ治療の条件も参照することができる。したがって、眼科レーザ治療に有効な態様で患者眼の血管造影画像を提示しつつレーザ治療の条件も提示することが可能である。
例示的な実施形態において、条件情報は、予め設定されたレーザ治療の目標となる眼底の位置を表す治療目標位置情報を含んでいてよい。更に、表示制御部(制御部100)は、この治療目標位置情報が表す位置を示す治療目標位置画像を血管造影画像とともに表示装置(表示装置61、又は表示ユニット7)に表示させるように構成されていてよい。
このような構成によれば、ユーザは、患者眼の眼底の観察画像及び血管造影画像(血管分布)を参照しつつ、レーザ治療の目標となる眼底の位置を把握することができる。したがって、眼科レーザ治療に有効な態様で患者眼の血管造影画像を提示しつつレーザ治療の目標となる眼底の位置も提示することが可能である。
例示的な実施形態において、レーザ治療装置は、画像データ記憶部(111)に記憶された画像データに基づいて、治療用レーザ光(治療光LT)の照射が禁止される眼底の位置を決定する照射禁止位置決定部(124)を更に含んでいてよい。更に、表示制御部(制御部100)は、照射禁止位置決定部により決定された眼底の位置を示す照射禁止位置画像を血管造影画像とともに表示装置(表示装置61、又は表示ユニット7)に表示させるように構成されていてよい。
このような構成によれば、ユーザは、患者眼の眼底の観察画像及び血管造影画像(血管分布)を参照しつつ、治療用レーザ光の適用が禁止される眼底の位置を把握することができる。したがって、眼科レーザ治療に有効な態様で患者眼の血管造影画像を提示しつつレーザ治療が禁止されるべき眼底の位置も提示することが可能である。
例示的な実施形態において、レーザ治療装置は、患者眼の眼底にOCT血管造影を適用してデータを収集するデータ収集部(130)と、データ収集部により収集されたデータを処理して血管造影画像データを形成するデータ処理部(画像形成部123)とを更に含んでいてよい。更に、画像データ記憶部(111)は、データ処理部により形成された血管造影画像データを記憶するように構成されていてよい。
このような構成によれば、レーザ治療装置を用いてOCT血管造影を実施できるので、レーザ治療の直前、レーザ治療中、レーザ治療の直後における患者眼の眼底の血管造影画像データを取得することが可能である。更に、この新たな血管造影画像を観察することや、この新たな血管造影画像と術前に得られた血管造影画像とを比較することが可能となる。したがって、眼科レーザ治療に有効な態様で患者眼の血管造影画像を提示することが可能である。
以上に説明した実施形態及び変形例は例示に過ぎない。本発明を実施しようとする者は、本発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加、置換等を施すことが可能である。