本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は本実施形態に係る冷蔵庫の外観である。図1に示すように本実施形態の冷蔵庫1は,上方から冷蔵室2,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6から構成されている。冷蔵室2は左右に分割された冷蔵室ドア2a,2bを備え,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6は,それぞれ引き出し式の製氷室ドア3a,上段冷凍室ドア4a,下段冷凍室ドア5a,野菜室ドア6aを備えている。以下では,冷蔵室ドア2a,2b,製氷室ドア3a,上段冷凍室ドア4a,下段冷凍室ドア5a,野菜室ドア6aを,単にドア2a,2b,3a,4a,5a,6aと呼ぶ。冷蔵庫1とドア2a,2bを固定するドアヒンジが冷蔵庫上部に設けてあり,ドアヒンジはドアヒンジカバー53で覆われている。
図2は本実施形態に係る冷蔵庫のA−A断面図である。冷蔵庫1の庫外と庫内は,発泡断熱材を充填することにより形成される断熱箱体10により隔てられている。冷蔵庫1の断熱箱体10には,複数の真空断熱材25を実装している。断熱仕切壁28により,冷蔵室2と上段冷凍室4及び製氷室3が隔てられ,また,同様に断熱仕切壁29により,下段冷凍室5と野菜室6が隔てられている。ドア2a,2bの庫内側には複数のドアポケットが上から33a,33b,33cの順番で備えてあり,冷蔵室2は複数の棚が上から34a,34b,34c,34d,34e(図3参照)により,複数の貯蔵スペースに区画されている。また棚34a,34bは一部ガラスで構成された棚になっており,34c,34d,34eは樹脂で構成されている。
冷蔵室2の最下段棚34eの下部には,減圧して食品を貯蔵する減圧貯蔵室35を設けている。減圧貯蔵室35の内部の圧力を低下させるために,減圧用ポンプ(図示なし)を備えてあり,内部の圧力を維持するために減圧貯蔵室のドア56は,ハンドル55でロックできるようになっている(図3参照)。減圧貯蔵室35内の温度は,外部から設定できるようになっており,減圧貯蔵室35の背面側に設けた吐出口38(風量調整装置(ダンパ)付き)からの冷気で,減圧貯蔵室35の背面側に設けた温度センサ45で検出される温度に従い,温度調整がなされる。なお、本実施形態では減圧貯蔵室35としたが、最下段棚34eによって区画形成し、最下段棚34eを天井とする、減圧しない低温貯蔵室(チルド室)であっても良い。
上段冷凍室4と下段冷凍室5の間には,冷凍室の断熱仕切壁40を設けている。上段冷凍室4,下段冷凍室5及び野菜室6には,それぞれの冷却室の前方に備えられたドア3a,4a,5a,6aと一体に収納容器3b,4b,5b,6bがそれぞれ設けられており,ドア4a,5a,6aを手前側に引き出すことにより,収納容器4b,5b,6bも引き出せるようになっている。製氷室3にもドア3aと一体に収納容器が設けられ,ドア3aを手前側に引き出すことにより,収納容器3bも引き出せる。また,庫外温度センサ52は,例えば,冷蔵庫1のドアヒンジカバー53の内部に設けている。
冷却器7は下段冷凍室5の略背部に備えた冷却器収納室8内に設けてあり,冷却器7の上方に設けた庫内ファン9により,冷却器7と熱交換した冷気が冷蔵室冷気ダクト11(第一冷気ダクト11aと,第二冷気ダクト11b),上段冷凍室冷気ダクト12,下段冷凍室送風ダクト13及び製氷室送風ダクト(図示なし)を介して,冷蔵室2,上段冷凍室4,下段冷凍室5,製氷室3の各貯蔵室へそれぞれ送られる。
各貯蔵室への冷気の送風は,風量調整装置,すなわち冷蔵室ツインダンパ20(20a,20b)と,冷凍室ダンパ60の開閉により制御される。冷蔵室ツインダンパ20は,2つのバッフル20aと20bを有しているツインバッフル型のダンパで,モータ駆動部46(図3参照)によって前記バッフルを開閉させて風量を調整する。
冷蔵室2を冷却する冷蔵室冷却運転の場合には,冷蔵室ツインダンパ20を開,冷凍室ダンパ60を閉にし,冷蔵室ダクト11を経て吹き出し口30a,30b,30c,30d,31a,31bから冷蔵室2に冷気が送られる。冷蔵室2に冷気を循環した後,冷蔵室下部の左右一方側に設けた冷蔵室戻り口39(図3参照)に冷気が流入し,その後,冷却器7に戻される。野菜室6の冷却手段については種々の方法があるが,例えば,冷蔵室2を冷却した後に野菜室6に冷気を直接送る方法や,野菜室専用のダンパを用いて冷却器7で発生した冷気を直接野菜室6に送る方法が考えられる。本実施形態においては,野菜室6への冷気の供給方法についてはいずれの場合でも良い。図2に記載の例では,野菜室6に流入した冷気は,断熱仕切壁29の下部前方に設けた,野菜室戻り口18aから野菜室戻りダクト18を介して,野菜室戻り吐出口18bから冷却器7に流入する。
冷凍室4,5(製氷室3含む)を冷却する冷凍室冷却運転の場合には,冷蔵室ツインダンパ20を閉,冷凍室ダンパ60を開にし,冷気は上段冷凍室4,下段冷凍室5及び製氷室3を冷却した後,冷凍室戻り口17から冷却器7に戻される。庫内の温度に応じて,冷蔵室2と冷凍室4,5を同時に冷却する運転もあり,その場合には冷蔵室ツインダンパ20と冷凍室ダンパ60をいずれも開として各貯蔵室に冷気を送風する。
冷蔵室の棚34bと天井面で区画された領域の温度を検出する第一の温度センサ43,冷蔵室の棚34bと最下段棚34eで区画された領域の温度を検出する第二の温度センサ42,最下段棚34eと断熱仕切壁28で区画された領域の温度を検出する第三の温度センサ45,等で検出される温度に応じて,冷蔵室ツインダンパ20のバッフル20a,20bの開閉を制御する。
冷却器7の下部には除霜ヒータ22を設けてある。除霜時に発生したドレン水は樋23に一旦落下し,ドレン孔27を介して圧縮機24の頭部に設けた蒸発皿21に放出される。冷蔵庫の背面下部に設けた機械室61内には,圧縮機24の他に放熱器と放熱用のファン(図示なし)が配置されている。
冷蔵庫1の天井壁上面にはメモリー,インターフェース回路を搭載した制御基板51が配置されており,制御基板51に記憶された制御に従って冷凍サイクル及び送風系の制御が実施される。制御基板51は基板カバー50で覆われている。
図3は冷蔵室2の内部の正面図で(ドア2a,2bは省略),図4は図3の冷蔵室を拡大したB−B断面図である。第一冷気ダクト11aと第二冷気ダクト11bからなる冷蔵室冷気ダクト11は,冷蔵室ツインダンパ20に設けた2つの開口部からなるバッフル20a,20bにそれぞれ接続されている。具体的には、冷蔵室ツインダンパ20のうち、開口面積の大きいバッフル20a側が、流路断面積が大きく上方まで延びる第一冷気ダクト11aに接続されている。そして、第一冷気ダクト11aで冷却する場合はバッフル20aを開,バッフル20bは閉,第二冷気ダクト11bで冷却する場合はバッフル20aを閉,バッフル20bは開,また,両方のダクトで冷却する場合はバッフル20a,20bをそれぞれ開にする。冷蔵室上部の冷却を行う際は冷気ダクト11aを使用し,冷蔵室下部を冷却する際は冷気ダクト11bを使用する。
第一冷気ダクト11aには,上から順番に吐出口30e,30f,30a,30bを設けてあり,それぞれの吐出口から送風される冷気で,天井面63と,2段目の棚34bとで区画された領域2A(図2,4参照),すなわち,棚34a,34b,ドアポケット33a,33bに置かれた食品を主に冷却する。第二冷気ダクト11bには吐出口30c,30dを設けてあり,それぞれの吐出口から送風される冷気で,上から2段目の棚34bと上から4段目(最下段)の棚34eとで区画された領域2B(図2,4参照),すなわち棚34c,34d,34eに置かれた食品を主に冷却する。棚34eよりも下部の領域2C(図2,4参照)には減圧貯蔵室35や製氷タンク36が設けられており,第一冷気ダクト11aと第二冷気ダクト11bの両方からの冷気によって共通に冷却され,また冷蔵室2の下部に設けた冷凍温度帯室の影響により冷却され易い領域となる。
冷蔵室2の領域2A内に第一の温度センサ43,領域2B内に第二の温度センサ42,領域2C内に第三の温度センサ45を設けている。例えば,本実施形態においては第一の温度センサ43は、冷蔵室2の天井面63に設けている。第二の温度センサ42は、棚34dと34eとの間に位置しており,冷蔵室2の奥側に設けた冷蔵室冷気ダクト11を形成するパネルカバー30に設けている。第三の温度センサ45は、同様にパネルカバー30に設けられ,第一冷気ダクト11aの吐出口30e,30f,30a,30bと第二冷気ダクト11bの吐出口30c,30dから送風された冷気が共通して循環する領域2C(製氷タンク36や減圧貯蔵室35の周囲温度)の温度を検出する。
図5は冷蔵室冷気ダクト11(第一冷気ダクト11a,第二冷気ダクト11b)を拡大したものであり,それぞれ正面図である。また,図6は,図5のC−C断面図である。図5に示すように、第一冷気ダクト11aは、第二冷気ダクト11bよりも高い位置まで形成され、少なくとも第二冷気ダクト11bの上端の高さまでは、第一冷気ダクト11aの幅寸法が、第二冷気ダクト11bの幅寸法よりも広くなっている。
ここで、一般的な冷蔵庫で冷蔵室内を冷却する場合、冷蔵室上部領域2Aと冷蔵室下部領域2Bは同時に冷却される。しかし、どちらかの領域のみに冷蔵庫外から食品が投入された場合,もう一方の領域で既に冷却されている食品はさらに冷却されることになり、凍結や品質の劣化が懸念される。そこで、本実施形態では、第一の温度センサ43,第二の温度センサ42及び第三の温度センサ45で検出される温度に基づいて、冷蔵室上部領域2Aを冷却する第一冷気ダクト11aと、冷蔵室下部領域2Bを冷却する第二冷気ダクト11bと,を適宜切り替えることにより、過度の冷却を抑制して省エネルギー性を高めている。
図7に、第一冷気ダクト11aで冷却した場合の,冷蔵室2の冷気の流れを示す。冷蔵室ツインダンパ20のバッフル20aを開(バッフル20bは閉)状態にすると,第一冷気ダクト11aに設けた吐出口30a,30b,30e,30fから冷気が吐出する。吐出した冷気は、最上段の棚34a,34bとドアポケット33a,33bの配された領域2Aの食品を主に冷却した後,最下段の棚34eと断熱仕切壁28で区画された領域2Cへ到達して,この空間の冷却を行う。領域2Aに食品が投入され,第一の温度センサ43が領域2Aの温度上昇を検知し,かつ,第二の温度センサ42が領域2Bの温度上昇を検知しなかった場合,冷気ダクト11aでの冷却パターンを実施する。領域2A内に新たに投入された食品のみを主に冷却するため,領域2B内の食品を冷やし過ぎることがなく,省エネルギー性の向上も可能である。
一方,図8に、第二冷気ダクト11bで冷却した場合の,冷蔵室2の冷気の流れを示す。冷蔵室ツインダンパ20のバッフル20bを開(バッフル20aは閉)状態にすると,第二冷気ダクト11bに設けた吐出口30c,30dから冷気が吐出する。吐出した冷気は、棚34c,34d,34eの配された領域Bの食品を主に冷却した後,最下段の棚34eと断熱仕切壁28で区画された領域2Cへ到達して,この空間の冷却を行う。領域2Bに食品が投入され、第一の温度センサ43が領域2Aの温度上昇を検知せず,かつ,第二の温度センサ42が領域2Bの温度上昇を検知した場合,冷気ダクト11bでの冷却パターンを実施する。冷気ダクト11aでの冷却パターンに対して,領域2B内を効率よく冷却できる。
さらに,図9に示すように,冷蔵室ツインダンパ20のバッフル20aと20bの両方を開状態にすれば,第一冷気ダクト11aと第二冷気ダクト11bの両方を用いた冷却パターンも実施できる。この冷却パターンを実施すれば、領域2A,2B内に同時に食品が投入された場合でも効率よく冷却できる。
本実施形態では,各温度センサを用いて、冷蔵室内の各領域の温度を検知し,その検知結果に応じて、風量調整装置を制御することで,それぞれの領域の温度が適切になるように冷却できる。このため、既に冷えている領域を過度に冷却することがなく,省エネルギー性を高めた冷却が実施でき,食品の凍結や品質の劣化を抑止する効果が得られる。
また、本実施形態の冷蔵庫では、上述の第一の温度センサ43,第二の温度センサ42,第三の温度センサ45とは別に、冷蔵室下部への食品投入を検知するための第四の温度センサ(食品検知センサ)48を設けている。
図3に示すように、食品検知センサ48は、高さ位置として、減圧貯蔵室35のすぐ上にある棚34eと、その次の棚34cとの間であり、左右方向位置として、左右中央よりも冷蔵室戻り口39のある側にある。より具体的な左右方向位置としては、最下段の棚34eとその上段の棚34cとの間に設けられた冷蔵室下部冷却用の吐出口30dと、冷気戻り口39との間が望ましい。なお、吐出口30dは、パネルカバー30の左右中央より一方側(本実施形態では右側)に偏在しており、冷気戻り口39も最下段棚34eの下方における一方側(本実施形態では中央より右側)に形成されている。
したがって、吐出口30dから冷気戻り口39に至る冷気の通り道となっている、少なくとも最下段棚34eとその上の棚34dとの間で中央より右側(図3の領域2D)を、急速冷却コーナとすることで、冷却効率を高めることができる。そして、本実施形態では、吐出口30dと冷気戻り口39のとの間に食品検知センサ48を配置することで、この急速冷却コーナに温かい食品が置かれたことを精度よく検知し、自動的に急速冷却を開始できる。なお、急速冷却コーナに、アルミトレイを配置すれば、使用者が急速冷却用の空間であることを認識しやすくなる。
なお、第二冷気ダクト11bは、冷蔵室2の中間高さ付近にある棚34bのすぐ下にも吐出口30cが設けられているため、棚34cと棚34bとの間の空間(図3の領域2E)も急速冷却コーナにすることができる。ここで、食品検知センサ48は棚34cのすぐ下にあり、棚34cの上の空間に食品が置かれた場合でも検知が可能である。また、領域2Eには、左右を仕切る部材が存在しないので、領域2Cと比べて幅広い空間、すなわち、左側の棚34dのすぐ上の領域を、急速冷却の対象にすることもできる。
ここで、食品検知センサ48による自動急冷却の制御について、図15および図16を用いて説明する。まず、自動急冷却モードの設定がONであるか否かを判定する(ステップS1)。自動急冷却モードの設定がONの状態のときに、ステップS2においてドア2a,2bの開閉動作が行われた場合、急速冷却を許可するか否かを判定するための監視状態に移行する。ステップS3において、監視状態へ移行した後、急冷却許可判定閾値以上の状態を食品検知センサ48が一定時間(急冷却開始判定時間)維持した場合、冷蔵室2の下部に食品が投入されたとみなして、急速冷却を開始する。ここで、急冷却許可判定閾値は、ドア2a,2bを閉じたときの食品検知センサ48の検知温度に対して一定温度高い値を設定する。
急速冷却が開始されると、圧縮機24を高速回転(2000rpm〜4000rpm)させ、庫内ファン9も高速回転させるとともに、第一冷気ダクト11a用のバッフル20aと第二冷気ダクト11b用のバッフル20bの両方を開状態にし、冷蔵室2の上部と下部の両方に冷気が供給され、まず冷蔵室2の全体を冷却する。その後、食品検知センサ48の検知した温度が、所定の閾値(バッフル20a閾値)以下になった場合、第一冷気ダクト11aのバッフル20aを閉状態にする。このとき、第二冷気ダクト11bからのみ冷気が供給されるが、第二冷気ダクト11bは冷蔵室2の下部にしか吐出口がないため、冷蔵室2の下部である領域2D及び領域2Eが集中的に冷却される。
次に、食品検知センサ48の検知した値が、バッフル20a閾値より低い所定の閾値(バッフル20b閾値)以下になった場合、第二冷気ダクト11bのバッフル20bも閉状態にし、圧縮機24および庫内ファン9の回転を停止させて、急速冷却を終了する。なお、バッフル20aやバッフル20bを閉状態にするタイミングは、急速冷却が開始してから所定時間が経過したか否かを基にして判定しても良い(ステップS4)。
このように、本実施形態では、ドア2a,2bの開閉後、冷蔵室下部に食品が投入されたことを食品検知センサ48で検知した場合、上部を主に冷却する第一冷気ダクト11aと、下部を主に冷却する第二冷気ダクト11bと、の両方を用いて冷気を供給して冷蔵室全体をまず冷却した後、第二冷気ダクト11bだけを用いて冷気を供給して冷蔵室下部を集中的に冷却する。特に、本実施形態では、第一冷気ダクト11aに設けられた吐出口30e,30f,30a,30bの開口面積の合計より、第二冷気ダクト11bに設けられた吐出口30c,30dの開口面積の合計が小さくなっているので、冷蔵室2下部の急速冷却コーナへ供給される冷気の風速が高まり、この空間を効果的に冷却できる。なお、ドア2a,2bの開閉後、すぐ第二冷気ダクト11bだけを用いた冷却を行った場合、冷蔵室全体の温度の高いことが影響して、下部の食品も冷え難くなっているので、上述のように、まず両方のダクトを用いた冷却を行う。
その結果、温かい鍋物を冷蔵室下部に収納しても、冷蔵室下部における鍋物の周囲にある食品の温度上昇を抑えて劣化を防ぐことが可能となる。また、温かい鍋物から遠い冷蔵室上部を過剰に冷却するのを抑制し、消費電力を低減できる。
ここで、上述の図8における冷却パターンでも、第二冷気ダクト11bで冷却することを説明したが、図8の冷却パターンでは、冷蔵室下部のあくまで庫内温度を検知する第二の温度センサ42を用いて制御しており、圧縮機24および庫内ファン9の回転速度も低速回転となっている。これに対して、自動急冷却の冷却パターンでは、冷蔵室下部の急速冷却コーナの近傍に設けた食品検知センサ48を用いて制御しており、圧縮機24および庫内ファン9の回転速度を高速回転に上昇させている。このため、温かい食品の投入を精度よく検知し、かつ、その食品に対してすばやく効果的に冷気を当てることが可能となる。
なお、冷蔵室2の下部に食品が投入されたら自動で急速冷却するだけでなく、コントロールパネル等による選択により、使用者が設定した場合には、食品検知の有無にかかわらず、冷蔵室2の下部を強制的に急速冷却させても良い。
次に、各温度センサと各冷気ダクトを利用して、冷蔵室2の下部の温度を、冷蔵室2の上部の温度と比べて2℃以上低くなるように保つ、下段冷却の制御について説明する。下段冷却モードはコントロールパネルでON/OFFの設定が可能であり、このモードがONに設定された場合には、設定されなかった場合と比べて、バッフル20bの開状態を長く(バッフル20aの開状態時間に対するバッフル20bの開状態時間の割合を高く)する。具体的には、OFF設定の場合と異なり、バッフル20aが閉状態でバッフル20bのみ開状態となる時間を設ける。ただし、下段冷却の運転中における圧縮機24の回転速度は、急速冷却のときのような高速回転にはせず、低速回転(1000rpm〜2000rpm)を維持している。
次に、下段冷却モードがONに設定された場合における制御に関し、図17を用いて説明する。下段冷却の運転では、圧縮機24が停止してから所定時間が経過した場合、または第二の温度センサ42の検知温度が所定の閾値(バッフル開閾値)以上になった場合、圧縮機24を低速回転させると共に、バッフル20a,20bを両方開状態にする。その後、第二の温度センサ42の検知温度が所定の閾値(バッフル20a閾値)以下になった場合、バッフル20aを閉状態にする。さらに、第二の温度センサ42の検知温度が所定の閾値(バッフル20b閾値)以下になった場合、バッフル20bも閉状態にする。
一般の冷蔵庫でも、冷蔵室内の低温空気は下方へ集まり易く、冷蔵室内でも上部より下部の方が低温化される傾向にあるが、本実施形態によれば、上部と下部の温度をより差別化でき、保存に適した温度帯が異なる食品であっても収納場所を選び分けることが可能となる。特に、冷蔵室下部が一般の冷蔵庫と比べて低温に保たれるので、低温保存用の減圧貯蔵室35等が食品で一杯の場合に、この冷蔵室下部の空間を代わりに利用でき、使い勝手が良くなる。なお、下段冷却モードがOFFに設定された場合は、図18のような制御となり、ダンパ20a,20bは常に同じタイミングで両方を開状態にし、常に同じタイミングで閉状態にする。また、下段冷却モードの対象空間は、上述の自動急冷却モードの対象空間である2D+2E(図3)よりも広く、棚34bと棚34eとの間の空間全体である。
本実施形態では、冷蔵室下部の所定コーナに食品が投入されたことを検知すると自動で急冷却する上記自動急冷却モードと、冷蔵室下部を低温化してOFF設定時よりも冷蔵室上部との温度差を大きくする上記下段冷却モードと、を有しているが、これらのモードの設定のON/OFFは1度の動作で常に同時に行われるようにしている。つまり、上記自動急冷却モードのみをONにして下段冷却モードをOFFにしたり、上記自動急冷却モードをOFFにして下段冷却モードのみをONにしたり、は設定できないようにしている。このように、1度の操作で上記2つのモードを同時に切り替えられるので、使用者の利便性が向上する。
また、上記2つのモードが同時にONに設定された場合、1つずつONに設定された場合よりも、冷却効果が向上する。すなわち、仮に上記自動急冷却モードだけONに設定されていた場合、急速冷却コーナに投入した食品を早く冷やすことはできるが、急速冷却コーナ以外の冷蔵室スペースに既に置かれていた他の食品は、比較的温度が高い状態にある。したがって、急速冷却コーナに食品を投入した直後、既存の他の食品の温度が上昇した場合に、冷蔵温度帯を超えてしまう可能性がある。一方、仮に上記下段冷却モードだけONに設定されていた場合、急速冷却コーナに投入した食品を冷やすのが遅くなるのは勿論のこと、既に比較的温度が低い状態にあった他の食品が過剰に冷却されてしまう可能性がある。このように、上記自動急冷却モードと上記下段冷却モードとを同時にONに設定することで、新たに投入された食品を早く冷やしつつ、既存の食品への温度影響を抑えた冷却運転が可能となる。
また、減圧貯蔵室35、冷蔵室2と製氷室3や上段冷凍室4との間に設けられる断熱仕切壁28、製氷用の給水パイプ64等の部品は、冷凍温度帯にある製氷室3や上段冷凍室4の近くに位置するため、低温になり易い。そこで、これらの部品が凍結に至らない温度に保つため、断熱仕切壁28内であって減圧貯蔵室35の底面側に減圧貯蔵室温度保障ヒータ65を設けるとともに、断熱仕切壁28内であって給水パイプ64の底面側に給水パイプ温度保障ヒータ66を設けている(図4)。
特に、下段冷却モードや自動急冷却モードの設定をONにすると、上記部品が更に低温化し易くなる。このため、これらの設定がONのときは、図19に示すように、減圧貯蔵室温度保障ヒータ65や給水パイプ温度保障ヒータ66の通電時間を、OFF設定時と比べて長くし、凍結をより確実に防止している。なお、これらの温度保障ヒータの目的は、温度の低下を防ぐことであるので、ヒータの通電時間を長くする方法だけでなく、ヒータの出力を高める他の方法であっても、その目的は達成できる。
次に、冷蔵室冷気ダクト11の構成について、詳細に説明する。本実施形態における第一冷気ダクト11aおよび第二冷気ダクト11bは、図10のように、パネルカバー30、流路形成部材41、シール部材62及びダンパカバー32等で構成されている。
まず、パネルカバー30は、合成樹脂製であり、冷蔵室ダンパが収容されるベース部30vと、このベース部30vから鉛直方向上方へ向かって延びる垂直部30uと、を有している。パネルカバー30の垂直部30uのうち冷蔵室を臨む側は、吐出口30a〜30dに対応する異なる高さ位置に、複数の前面凹部30wが形成されている。そして、このパネルカバー30は、冷蔵室2の背面側の左右方向中央に配置される。また、パネルカバー30の上端部には、左右2つの吐出口30e,30fが形成されており、この天井側の吐出口30e,30fからの冷気を、最上部のドアポケット33aに向けることが可能である。
図11は、パネルカバー30を背面(裏面)側から見たときの斜視図である。パネルカバー30の背面側には、上述の前面凹部30wに対応する箇所に、案内凸部30tが形成されている。なお、これら案内凸部30tの下面(上流側面)には、それぞれ冷気流入口30t0が形成されており、これら冷気流入口30t0から案内凸部30t内に流入した冷気は、前面凹部30wの上壁面を介して冷蔵室2内の前面側へ誘導される。
次に、流路形成部材41について説明する。流路形成部材41は、発泡ポリスチレンなどを切削加工するなどして形成され、図10に示すように、パネルカバー30のベース部30vに嵌合する下方流路部41vと、パネルカバー30の垂直部30xに嵌合する本体流路部41xと、を有している。下方流路部41vは、冷蔵室ツインダンパ22が取り付けられる共に、冷蔵室ツインダンパ22のバッフル22aと連通する第一冷気ダクト11aの一部と、冷蔵室ツインダンパ22のバッフル20bと連通する第二冷気ダクト11bの一部と、を構成している。
また、流路形成部材41の本体流路部41xには、高さの異なる位置に複数の切欠孔41hが形成されている。具体的には、最も高い位置と、それより一段低い位置とには、第一冷気ダクト11a用の切欠孔41h1が形成され、最も低い位置と、それより一段高い位置とには、第二冷気ダクト11b用の切欠孔41h2が形成されている。ここで、上方に形成される切欠孔41h1は、下方に形成される切欠孔41h2と比べて、幅寸法が大きくなっている。これは、第一冷気ダクト11aの上方にある吐出口30a,30bが形成される幅領域が、第二冷気ダクト11bの吐出口30c,30dが形成される幅領域よりも広いためである。
なお、上方にあって隣接する複数の切欠孔41h1の間には、図12に示すように、上下方向へ延びる突出片である整流部41kが設けられている。この整流部41kは、上流側からの冷気を上方へ導き、天井側の吐出口30e,30fからドアポケット33aへ冷気を効果的に流す働きをする。また、この整流部41kは、切欠孔41h1で挟まれた部分の流路形成部材41を補強する効果や、シール部材62のたわみを防止する効果もある。
また、流路形成部材41の背面(裏面)側には、第一溝部41uaと第二溝部41ubとが形成されており、シール部材62との間で、それぞれ第一冷気ダクト11aと第二冷気ダクト11bとを構成している。第一溝部41uaは、左右方向一端側(図12では右側)に、鉛直方向へ延びる延設壁11aaが形成され、左右方向他端側(図12では左側)に、第二溝部41ubの上端より高い所定の位置まで延設壁11aa、その下流側には天井へ向けて直線状または円弧状に延びる拡幅壁11abが形成されている。これにより、第一冷気ダクト11aには、第二溝部41ubと併設される高さにある上流部と、流路断面積を徐々に拡大する流路拡大部と、上流部よりも流路断面積が大きい下流部とが形成される。ここで、第一冷気ダクト11aのバッフル20aの鉛直投影と、吐出口30eの鉛直投影とは、少なくとも一部が重なるような位置関係となっている。従って、パネルカバー30の下端部一方(左)側にあるバッフル20aから流入した冷気が、大きな通風抵抗を受けずに、パネルカバー30の上端部一方(左)側にある吐出口30eへ向かって流れるので、冷蔵室2内に効率よく冷気を送風できる。
さらに、流路形成部材41の下流部の背面側には、第1冷気ダクト11a内の冷気を左右方向に分岐させる分岐部41vが形成されており、分岐後の冷気は、吐出口30e,30fに対応して流路形成部材41の上端に設けられた溝出口41h3,41h4へ流れる。これにより、左右のドア2a,2b内にある最上段のドアポケット33aへ、効率よく冷気を供給できる。
図13は、パネルカバー30の背面に流路形成部材41を嵌合した状態における、2段目の棚34bの高さ付近の拡大斜視図である。流路形成部材41の溝部41u内面とシール部材62内面とで囲まれた空間を、上流側から下流側へ流れる冷気は、下流側へ行くほど徐々に前面側へ凹む(深くなる)傾斜部41sにより、パネルカバー30の冷気流入口30t0へ案内される。このように、冷気流入口30t0の上流側に位置する流路形成部材41壁面に傾斜部41sを設けることで、案内凸部30tの高さを低くでき、案内凸部30tによるダクト内の通風抵抗の影響を抑制することが可能である。なお、傾斜部41sの鉛直方向寸法は、切欠孔41hの鉛直方向寸法より小さくすることにより、傾斜部41sの形成に伴う流路形成部材41の厚み縮小を抑え、断熱性能の低下を防ぐことが可能である。
ここで、案内凸部30tの上流側面には冷気流入口30t0が左右方向に複数形成されるが、隣接する冷気流入口30t0の間には仕切壁30t2が設けられているので、実質的に幅の広い吐出口を形成するだけでなく、パネルカバー30の強度を確保しつつゴミの侵入を防止できる。なお、吐出口30bに限らず、吐出口30a,30c,30dについても同様の構成となっている。
また、流路形成部材41は、左右方向について中央部が正面側へ膨らむような湾曲状となっている。このため、流路形成部材41とシール部材62とで形成される冷気ダクトの流路断面積を拡大することが可能である。一方のパネルカバー30も同様に、水平断面が湾曲状となっている。このため、パネルカバー30から冷蔵室2内へ向かって、冷気が放射状に広がって吐出されやすく、冷蔵室2内を効率的に冷却できる。
さらに、図14に示すように、パネルカバー30の案内凸部30tの下流側内壁面(前面凹部30w1の上壁面)30t1も曲面を有している。このため、流路形成部材41の傾斜部41sから冷気流入口30t0を通って案内凸部30t内に流入した冷気が、通風抵抗を抑制しながら前方へ誘導され、冷却効率向上に寄与する。
本実施形態では、この冷蔵室側(前面側)を臨む各前面凹部30wが、見かけ上、吐出口30a〜30dに相当する。しかし、実際に冷気が吐出されるのは、冷気流入口30t0の存在する領域であるため、各吐出口30a〜30dの開口面積という場合は、各冷気流入口30t0の合計面積を指す。
シール部材62は、合成樹脂材料などで形成された板状部材であり、流路形成部材41の第一溝部41ua及び第二溝部41ubの全体を覆うように配置される。また、シール部材62を用いて内箱47に接続することで、冷気ダクトを冷蔵室の背面側に設置することが可能となっている。
以上述べた本実施形態の構成により、次のような効果が得られる。
まず、流路が長いことにより通風抵抗が大きくなる第一冷気ダクト11aについて、流路の断面積を第二冷気ダクト11bよりも大きくすることで、冷気が下流に達するまでの通風抵抗を全体として抑制でき、結果として、冷蔵室2上部空間へ効率よく冷気を送風し、省エネルギー性の向上が可能となる。
次に、冷気ダクト11の前面側を形成する壁面の内側に、水平方向に延びて上流側から至る冷気を受け止める案内凸部30tが形成され、この案内凸部30tの上流側壁面(下面)に冷気流入口30t0が形成されているので、冷気ダクト11内の冷気を効率良く引き込むことができる。また、この冷気流入口30t0から流入した冷気が、案内凸部30tの内部を通り、前面凹部30wの上壁面を介して冷蔵室2内の前面側へ誘導される。結果として、吐出される冷気の風量が増大するため、冷却効率が向上する。
また、案内凸部30tの下面を鉛直方向に貫通するように吐出口が形成されているので、使用者が正面側から冷蔵室2内を見た場合でも吐出口が認識し難くなっており、意匠性が向上する。なお、案内凸部30tの下面は水平に限られず、鉛直方向よりも水平方向に近いものであれば、吐出口が見え難くなる効果や、吐出風量を増大させる効果は、一定程度奏する。
さらに、高さの異なる位置にある横長矩形状の前面凹部30wが、吐出口の幅領域の大小にかかわらず同じ幅としてあるため、使用者にとって違和感がなく、意匠性を高く保つことができる。なお、各前面凹部30wの幅寸法は厳密な同一に限らず、90%〜110%の範囲内であれば構わない。
また、本実施形態では、第一冷気ダクト11aの前面側に形成される吐出口が、第二冷気ダクト11bの前面に形成される吐出口よりも広いため、一般に冷え難い冷蔵室2上部へ広範囲に冷気を供給でき、冷却効率が高まる。そして、第二冷気ダクト11bよりも高くまで延びる第一冷気ダクト11aは、第二冷気ダクト11bの最上段の吐出口30cよりも高い場所に、すべての吐出口30a,30bを形成しているので、冷蔵室2上部へ集中して冷気を供給でき、冷却効率が高まる。
一方、第二冷気ダクト11bの上端は、冷蔵室2の高さのうち半分より低い位置にあり、第二冷気ダクト11bのすべての吐出口も、冷蔵室2の高さのうち半分より低い位置にある。従って、冷蔵室ツインダンパ20のバッフル20aを閉にしつつバッフル20bを開にすれば、冷蔵室2の下部に冷気を集中して供給できるため、冷蔵室2下部に温かい食品が投入された際の急速冷却や、冷蔵室2下部を上部と比べて低温に保つ下段冷却が、可能である。ここで、冷蔵室2の高さの半分から下の空間は、平均的な使用者のウエストラインに近い断熱仕切壁28に対して、少し高い位置に相当し、使用頻度が高いので、この空間を急速冷却や下段冷却の対象とするのは有効である。特に、冷蔵室2下部を2℃以下に保つと、作り置き食品等の長期保存性が大幅に向上する。また、冷蔵室2の一部空間に温かい食品が投入されても、その空間が急速冷却されるので、他の空間の温度が上がるのも抑制でき、結果として冷蔵室2全体の保存性も高まる。