JP2019052244A - 難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線、メタルケーブル、光ファイバケーブル及び成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な難燃性を有しながら、耐摩耗性を向上させることができる難燃性樹脂組成物等を提供すること。【解決手段】ポリオレフィン樹脂を含むベース樹脂と、炭化ケイ素粒子と、シリコーン化合物と、脂肪酸含有化合物とを含み、前記炭化ケイ素粒子が前記ベース樹脂100質量部に対して5質量部以上60質量部以下の割合で配合され、前記シリコーン化合物が前記ベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合され、前記脂肪酸含有化合物が前記ベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合される、難燃性樹脂組成物。【選択図】図1
Description
本発明は、難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線、メタルケーブル、光ファイバケーブル及び成形品に関する。
ケーブルの被覆、ケーブルの外被、チューブ、テープ、包装材、建材等には、いわゆるエコマテリアルが広く使用されるようになっている。
このようなエコマテリアルとして、例えばポリオレフィン樹脂に、炭酸カルシウム粒子、シリコーン化合物及び脂肪酸含有化合物を配合した難燃性樹脂組成物が知られている(下記特許文献1参照)。
ところで、近年、難燃性樹脂組成物には、ケーブルをはじめとする種々の用途に適用できるようにするため、難燃性のみならず、耐摩耗性をも向上させることが要求されるようになってきている。
しかし、上記特許文献1に記載の難燃性樹脂組成物は優れた難燃性を有しているものの、耐摩耗性の点では改善の余地を有していた。
このため、良好な難燃性を有しながら、耐摩耗性を向上させることができる難燃性樹脂組成物が求められていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、良好な難燃性を有しながら、耐摩耗性を向上させることができる難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線、メタルケーブル、光ファイバケーブル及び成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するため検討を重ねた。その結果、本発明者らは、ベース樹脂に対し、炭化ケイ素粒子、シリコーン化合物、及び脂肪酸含有化合物をそれぞれ所定の割合で配合することで、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち本発明は、ポリオレフィン樹脂を含むベース樹脂と、炭化ケイ素粒子と、シリコーン化合物と、脂肪酸含有化合物とを含み、前記炭化ケイ素粒子が前記ベース樹脂100質量部に対して5質量部以上60質量部以下の割合で配合され、前記シリコーン化合物が前記ベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合され、前記脂肪酸含有化合物が前記ベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合される、難燃性樹脂組成物である。
本発明の難燃性樹脂組成物によれば、良好な難燃性を有しながら、耐摩耗性を向上させることができる。
なお、本発明者らは、本発明の難燃性樹脂組成物において、上記の効果が得られる理由については以下のように推察している。
すなわち、難燃性樹脂組成物中に炭化ケイ素粒子、シリコーン化合物及び脂肪酸含有化合物が含まれていると、難燃性樹脂組成物の燃焼時に、ベース樹脂の表面に、主として炭化ケイ素、シリコーン化合物、脂肪酸含有化合物及びこれらの分解物からなるバリア層が形成され、ベース樹脂の燃焼が抑制される。また、炭化ケイ素は難燃性樹脂組成物の熱伝導率高める効果があり、バリア層の形成を促進させると考えられる。そのため、良好な難燃性が確保されるものと考えられる。また、難燃性樹脂組成物が炭化ケイ素粒子を含む場合、炭化ケイ素は、新モース硬度が13と非常に硬い物質のため、耐摩耗性を向上に寄与することができるものと考えられる。
上記難燃性樹脂組成物においては、前記脂肪酸含有化合物が脂肪酸金属塩であることが好ましい。
この場合、脂肪酸含有化合物が脂肪酸金属塩でない場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
また本発明は、金属導体と、前記金属導体を被覆する絶縁層とを備え、前記絶縁層が、上述した難燃性樹脂組成物で構成される絶縁電線である。
本発明の絶縁電線によれば、絶縁層が、上述した難燃性樹脂組成物で構成されるため、良好な難燃性を有しながら、耐摩耗性を向上させることができる。
また、本発明は、金属導体、及び、前記金属導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線と、前記絶縁電線を被覆する被覆層とを備え、前記絶縁層及び前記被覆層の少なくとも一方が、上記難燃性樹脂組成物で構成されるメタルケーブルである。
本発明のメタルケーブルによれば、絶縁層及び被覆層の少なくとも一方が、上記難燃性樹脂組成物で構成されるため、良好な難燃性を有しながら、耐外傷性を向上させることができる。
さらに本発明は、光ファイバと、前記光ファイバを被覆する被覆部とを備え、前記被覆部が、前記光ファイバを直接被覆する絶縁体を有し、前記絶縁体が、上述した難燃性樹脂組成物で構成される光ファイバケーブルである。
本発明の光ファイバケーブルによれば、絶縁体が上記難燃性樹脂組成物で構成されるため、良好な難燃性を有しながら、耐摩耗性を向上させることができる。
また本発明は、上記難燃性樹脂組成物で構成される成形品である。
本発明の成形品によれば、良好な難燃性を有しながら、耐摩耗性を向上させることができる。
本発明によれば、良好な難燃性を有しながら、耐摩耗性を向上させることができる難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線、メタルケーブル、光ファイバケーブル及び成形品が提供される。
以下、本発明の実施形態について図1及び図2を用いて詳細に説明する。
[メタルケーブル]
図1は、本発明に係るメタルケーブルの一実施形態を示す部分側面図である。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。図1及び図2に示すように、メタルケーブル10は、絶縁電線4と、絶縁電線4を被覆するチューブ状の被覆層3とを備えている。そして、絶縁電線4は、金属導体1と、金属導体1を被覆するチューブ状の絶縁層2とを有している。
図1は、本発明に係るメタルケーブルの一実施形態を示す部分側面図である。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。図1及び図2に示すように、メタルケーブル10は、絶縁電線4と、絶縁電線4を被覆するチューブ状の被覆層3とを備えている。そして、絶縁電線4は、金属導体1と、金属導体1を被覆するチューブ状の絶縁層2とを有している。
ここで、チューブ状の絶縁層2及び被覆層3は難燃性樹脂組成物で構成されており、この難燃性樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂を含むベース樹脂と、炭化ケイ素粒子と、シリコーン化合物と、脂肪酸含有化合物とを含む。そして、炭化ケイ素粒子がベース樹脂100質量部に対して5質量部以上60質量部以下の割合で配合され、シリコーン化合物がベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合され、脂肪酸含有化合物がベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合される。
上記難燃性樹脂組成物で構成される絶縁層2及び被覆層3は、良好な難燃性を有しながら、耐摩耗性を向上させることができる。従って、メタルケーブル10は、良好な難燃性を有しながら、耐摩耗性を向上させることができる。
[メタルケーブルの製造方法]
次に、上述したメタルケーブル10の製造方法について説明する。
次に、上述したメタルケーブル10の製造方法について説明する。
<金属導体>
まず金属導体1を準備する。金属導体1は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。また、金属導体1は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。
まず金属導体1を準備する。金属導体1は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。また、金属導体1は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。
<難燃性樹脂組成物>
一方、上記難燃性樹脂組成物を準備する。難燃性樹脂組成物は、上述したように、ポリオレフィン樹脂を含むベース樹脂と、炭化ケイ素粒子と、シリコーン化合物と、脂肪酸含有化合物とを含む。
一方、上記難燃性樹脂組成物を準備する。難燃性樹脂組成物は、上述したように、ポリオレフィン樹脂を含むベース樹脂と、炭化ケイ素粒子と、シリコーン化合物と、脂肪酸含有化合物とを含む。
(1)ベース樹脂
ベース樹脂は、ポリオレフィン樹脂を含んでいればよい。ポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)、エチレン系共重合体、ポリプロピレン(PP)、プロピレン系共重合体、変性ポリオレフィン、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。エチレン系共重合体としては、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体及びエチレン−オクテン共重合体などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。プロピレン系共重合体としては、例えばブロックポリプロピレン共重合体及びランダムポリプロピレン共重合体などが挙げられる。
ベース樹脂は、ポリオレフィン樹脂を含んでいればよい。ポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)、エチレン系共重合体、ポリプロピレン(PP)、プロピレン系共重合体、変性ポリオレフィン、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。エチレン系共重合体としては、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体及びエチレン−オクテン共重合体などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。プロピレン系共重合体としては、例えばブロックポリプロピレン共重合体及びランダムポリプロピレン共重合体などが挙げられる。
ベース樹脂は、ポリオレフィン樹脂のみで構成されていても、それ以外の樹脂との混合樹脂であってもよい。この場合、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂としては、例えばスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、水添SBR、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)などのスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリカーボネート樹脂などのエンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。
ベース樹脂中のポリオレフィン樹脂の含有率は特に制限されるものではないが、好
ましくは50〜100質量%であり、より好ましくは90〜100質量%である。
ましくは50〜100質量%であり、より好ましくは90〜100質量%である。
(2)炭化ケイ素粒子
炭化ケイ素粒子は平均粒径が0.6〜45μmであることが好ましい。この場合、炭化ケイ素粒子の平均粒径が0.6μm未満の場合に比べて、難燃性樹脂組成物中において炭化ケイ素粒子の偏析が起こりにくくなり、難燃性樹脂組成物における特性の均一性がより向上する。また、炭化ケイ素粒子の平均粒径が45μmより大きい場合と比べて耐摩耗性がより向上する。
炭化ケイ素粒子は平均粒径が0.6〜45μmであることが好ましい。この場合、炭化ケイ素粒子の平均粒径が0.6μm未満の場合に比べて、難燃性樹脂組成物中において炭化ケイ素粒子の偏析が起こりにくくなり、難燃性樹脂組成物における特性の均一性がより向上する。また、炭化ケイ素粒子の平均粒径が45μmより大きい場合と比べて耐摩耗性がより向上する。
なお、本発明において、「平均粒径」とは、複数個の炭化ケイ素粒子をSEMで観察したときの2次元画像の面積Sをそれぞれ求め、これらの面積Sをそれぞれ円の面積に等しいと考え、これらの面積から下記式:
R=2×(S/π)1/2
に基づいてそれぞれ算出したRの平均値を言うものとする。
R=2×(S/π)1/2
に基づいてそれぞれ算出したRの平均値を言うものとする。
炭化ケイ素粒子は、ベース樹脂100質量部に対して5質量部以上の割合で配合されていればよい。炭化ケイ素粒子がベース樹脂100質量部に対して5質量部未満の割合で配合されていると、難燃性と耐摩耗性が顕著に低下する。
炭化ケイ素粒子は、ベース樹脂100質量部に対して60質量部以下の割合で含まれていることが好ましい。炭化ケイ素粒子粒子の割合が60質量部より大きい場合に比べて、より優れた難燃性を得ることができる。
また、炭化ケイ素粒子は40質量部以下の割合で含まれていることがより好ましく、20質量部以下の割合で含まれていることが特に好ましい。炭化ケイ素粒子が上記範囲で配合されていると、上記各範囲の上限値を超える場合に比べて、より優れた機械特性を得ることができる。
(3)シリコーン化合物
シリコーン化合物は、難燃助剤として機能するものであり、シリコーン化合物としては、ポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。ここで、ポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合を主鎖とし側鎖に有機基を有するものであり、有機基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、ビニル基及びフェニル基などのアリール基などが挙げられる。具体的にはポリオルガノシロキサンとしては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン及びメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサンなどが挙げられる。ポリオルガノシロキサンは、シリコーンオイル、シリコーンパウダー、シリコーンガム又はシリコーンレジンの形態で用いられる。中でも、ポリオルガノシロキサンは、シリコーンガムの形態で用いられることが好ましい。この場合、シリコーン化合物がシリコーンガム以外のシリコーン化合物である場合に比べて、難燃性樹脂組成物においてブルームが起こりにくくなる。
シリコーン化合物は、難燃助剤として機能するものであり、シリコーン化合物としては、ポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。ここで、ポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合を主鎖とし側鎖に有機基を有するものであり、有機基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、ビニル基及びフェニル基などのアリール基などが挙げられる。具体的にはポリオルガノシロキサンとしては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン及びメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサンなどが挙げられる。ポリオルガノシロキサンは、シリコーンオイル、シリコーンパウダー、シリコーンガム又はシリコーンレジンの形態で用いられる。中でも、ポリオルガノシロキサンは、シリコーンガムの形態で用いられることが好ましい。この場合、シリコーン化合物がシリコーンガム以外のシリコーン化合物である場合に比べて、難燃性樹脂組成物においてブルームが起こりにくくなる。
シリコーン化合物は、上述したようにベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合される。この場合、ベース樹脂100質量部に対するシリコーン化合物の配合割合が3質量部未満である場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。またベース樹脂100質量部に対するシリコーン化合物の配合割合が10質量部より大きい場合に比べて、難燃性樹脂組成物の耐摩耗性をより向上させることができると共にブルームが起こりにくくなる。
シリコーン化合物は、炭化ケイ素粒子の表面に予め付着させておいてもよい。この場合、難燃性樹脂組成物中においてシリコーン化合物の偏析が起こりにくくなり、難燃性樹脂組成物における特性の均一性がより向上する。
炭化ケイ素粒子の表面にシリコーン化合物を付着させる方法としては、例えば炭化ケイ素粒子にシリコーン化合物を添加して混合し、混合物を得た後、この混合物を40〜75℃にて10〜40分乾燥し、乾燥した混合物をヘンシェルミキサ、アトマイザなどにより粉砕する方法が挙げられる。
(4)脂肪酸含有化合物
脂肪酸含有化合物は難燃助剤として機能するものである。脂肪酸含有化合物とは、脂肪酸又はその金属塩を含有するものを言う。ここで、脂肪酸としては、例えば炭素原子数が12〜28である脂肪酸が用いられる。このような脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ベヘン酸及びモンタン酸が挙げられる。中でも、脂肪酸としては、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸が好ましく、ステアリン酸が特に好ましい。この場合、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸以外の脂肪酸を用いる場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
脂肪酸含有化合物は難燃助剤として機能するものである。脂肪酸含有化合物とは、脂肪酸又はその金属塩を含有するものを言う。ここで、脂肪酸としては、例えば炭素原子数が12〜28である脂肪酸が用いられる。このような脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、ベヘン酸及びモンタン酸が挙げられる。中でも、脂肪酸としては、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸が好ましく、ステアリン酸が特に好ましい。この場合、ステアリン酸又はツベルクロステアリン酸以外の脂肪酸を用いる場合に比べて、より優れた難燃性が得られる。
脂肪酸含有化合物は脂肪酸の金属塩であることが好ましい。この場合、脂肪酸含有化合物が脂肪酸である場合に比べて、難燃性樹脂組成物において、より優れた難燃性が得られる。脂肪酸の金属塩を構成する金属としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛及び鉛などが挙げられる。脂肪酸の金属塩としては、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。この場合、ステアリン酸マグネシウム以外の脂肪酸金属塩を用いる場合に比べて、難燃性樹脂組成物においてより少ない添加量でより優れた難燃性が得られる。
脂肪酸含有化合物は、上述したようにベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合される。この場合、ベース樹脂100質量部に対する脂肪酸含有化合物の割合が3質量部未満である場合に比べて、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。またベース樹脂100質量部に対する脂肪酸含有化合物の配合割合が10質量部より大きい場合に比べて、ブルームが起こりにくくなる。
脂肪酸含有化合物は炭化ケイ素粒子の表面に予め付着させておいてもよい。この場合、難燃性樹脂組成物中において脂肪酸含有化合物の偏析がより起こりにくくなり、難燃性樹脂組成物における特性の均一性がより向上する。さらに脂肪酸含有化合物とシリコーン化合物とを、炭化ケイ素粒子の表面に予め付着させておいてもよい。この場合、難燃性樹脂組成物中においてシリコーン化合物及び脂肪酸含有化合物の偏析がより起こりにくくなり、難燃性樹脂組成物における特性の均一性がさらに向上する。
炭化ケイ素粒子の表面にシリコーン化合物及び脂肪酸含有化合物を付着させる方法としては、例えば、炭化ケイ素粒子の表面にシリコーン化合物及び脂肪酸含有化合物を添加して混合し、混合物を得た後、この混合物を40〜75℃にて10〜40分乾燥し、乾燥した混合物をヘンシェルミキサ、アトマイザなどにより粉砕する方法が挙げられる。
上記難燃性樹脂組成物は、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、加工助剤、着色顔料、滑剤などの充填剤を必要に応じてさらに含んでもよい。
上記難燃性樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂を含むベース樹脂、炭化ケイ素粒子、シリコーン化合物及び脂肪酸含有化合物等を混練することにより得ることができる。混練は、例えばバンバリーミキサ、タンブラ、加圧ニーダ、混練押出機、二軸押出機、ミキシングロール等の混練機で行うことができる。このとき、シリコーン化合物の分散性を向上させる観点からは、ベース樹脂の一部とシリコーン化合物とを混練し、得られたマスターバッチ(MB)を、残りのベース樹脂、脂肪酸含有化合物及び炭化ケイ素粒子等と混練してもよい。
次に、上記難燃性樹脂組成物で金属導体1を被覆する。具体的には、上記の難燃性樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混練し、チューブ状の押出物を形成する。そして、このチューブ状押出物を金属導体1上に連続的に被覆する。こうして絶縁電線4が得られる。
<被覆層>
最後に、上記のようにして得られた絶縁電線4を1本用意し、この絶縁電線4を、上述した難燃性樹脂組成物を用いて作製した絶縁体としての被覆層3で被覆する。被覆層3は、いわゆるシースであり、絶縁層2を物理的又は化学的な損傷から保護するものである。
最後に、上記のようにして得られた絶縁電線4を1本用意し、この絶縁電線4を、上述した難燃性樹脂組成物を用いて作製した絶縁体としての被覆層3で被覆する。被覆層3は、いわゆるシースであり、絶縁層2を物理的又は化学的な損傷から保護するものである。
以上のようにしてメタルケーブル10が得られる。
[成形品]
本発明は、上述した難燃性樹脂組成物で構成される成形品である。
本発明は、上述した難燃性樹脂組成物で構成される成形品である。
この成形品は、良好な難燃性を有しながら、耐摩耗性を向上させることができる。
上記成形品は、射出成形法、押出成形法などの一般的な成形法によって得ることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態ではメタルケーブルとして、1本の絶縁電線4を有するメタルケーブルが用いられているが、本発明のメタルケーブルは1本の絶縁電線4を有するメタルケーブルに限定されるものではなく、被覆層3の内側に絶縁電線4を2本以上有するケーブルであってもよい。また被覆層3と絶縁電線4との間には、ポリプロピレン等からなる樹脂部が設けられていてもよい。
また上記実施形態では、絶縁電線4の絶縁層2及び被覆層3が上記の難燃性樹脂組成物で構成されているが、絶縁層2が通常の絶縁樹脂で構成され、被覆層3のみが、上記の難燃性樹脂組成物で構成されてもよい。
さらに、上記実施形態において絶縁電線4の絶縁層2及び被覆層3を構成する難燃性樹脂組成物は、光ファイバと、光ファイバを直接被覆する絶縁体を有する被覆部とを備える光ファイバケーブルの絶縁体としても適用可能である。例えば図3は、本発明の光ファイバケーブルの一実施形態としてのインドア型光ファイバケーブルを示す断面図である。図3に示すように、インドア型光ファイバケーブル20は、2本のテンションメンバ22,23と、光ファイバ24と、これらを被覆する被覆部25とを備えている。ここで、光ファイバ24は、被覆部25を貫通するように設けられている。ここで、被覆部25は、光ファイバ24を直接被覆する絶縁体で構成され、絶縁体は、上記実施形態において絶縁電線4の絶縁層2及び被覆層3を構成する難燃性樹脂組成物で構成される。
なお、光ファイバケーブル20においては、被覆部25が絶縁体のみで構成されているが、被覆部25は、絶縁体の外周を被覆する被覆体をさらに有していてもよい。ここで、被覆体は、上記実施形態において絶縁電線4の絶縁層2及び被覆層3を構成する難燃性樹脂組成物で構成されてもよいし、構成されていなくてもよいが、上記実施形態において絶縁電線4の絶縁層2及び被覆層3を構成する難燃性樹脂組成物で構成されていることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜9及び比較例1〜6)
ベース樹脂、シリコーンマスターバッチ(シリコーンMB)、脂肪酸含有化合物及び炭化ケイ素粒子を、表1〜3に示す配合量で配合し、バンバリーミキサによって160℃にて15分間混練し、難燃性樹脂組成物を得た。ここで、シリコーンMBはポリエチレンとシリコーンガムとの混合物である。なお、表1〜3において、各配合成分の配合量の単位は質量部である。また表1〜3において、ベース樹脂の配合量の合計が100質量部となっていない場合があるが、ベース樹脂は、ポリオレフィン樹脂と、シリコーンMB中のポリエチレンとの混合物で構成されており、ポリオレフィン樹脂とシリコーンMB中のポリエチレンの配合量とを合計すれば、その合計は100質量部となる。
ベース樹脂、シリコーンマスターバッチ(シリコーンMB)、脂肪酸含有化合物及び炭化ケイ素粒子を、表1〜3に示す配合量で配合し、バンバリーミキサによって160℃にて15分間混練し、難燃性樹脂組成物を得た。ここで、シリコーンMBはポリエチレンとシリコーンガムとの混合物である。なお、表1〜3において、各配合成分の配合量の単位は質量部である。また表1〜3において、ベース樹脂の配合量の合計が100質量部となっていない場合があるが、ベース樹脂は、ポリオレフィン樹脂と、シリコーンMB中のポリエチレンとの混合物で構成されており、ポリオレフィン樹脂とシリコーンMB中のポリエチレンの配合量とを合計すれば、その合計は100質量部となる。
上記ポリオレフィン樹脂、シリコーンMB、脂肪酸含有化合物及び炭化ケイ素粒子としては具体的には下記のものを用いた。
(1)ポリオレフィン樹脂
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE):住友化学社製、密度928kg/m3
(2)シリコーンMB:信越化学工業社製
(50質量%シリコーンガムと50質量%ポリエチレン(PE)とを含有)
(4)脂肪酸含有化合物
ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸Mg):ADEKA社製
ステアリン酸亜鉛(ステアリン酸Zn):日油社製
ステアリン酸:日油社製
(5)炭化ケイ素粒子:屋久島工業社製、平均粒径1.7μm
(1)ポリオレフィン樹脂
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE):住友化学社製、密度928kg/m3
(2)シリコーンMB:信越化学工業社製
(50質量%シリコーンガムと50質量%ポリエチレン(PE)とを含有)
(4)脂肪酸含有化合物
ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸Mg):ADEKA社製
ステアリン酸亜鉛(ステアリン酸Zn):日油社製
ステアリン酸:日油社製
(5)炭化ケイ素粒子:屋久島工業社製、平均粒径1.7μm
[特性評価]
上記のようにして得られた実施例1〜9及び比較例1〜6の難燃性樹脂組成物について、難燃性及び耐摩耗性の評価を行った。
上記のようにして得られた実施例1〜9及び比較例1〜6の難燃性樹脂組成物について、難燃性及び耐摩耗性の評価を行った。
なお、難燃性及び耐摩耗性は、実施例1〜9及び比較例1〜6の難燃性樹脂組成物を用いて以下のようにして絶縁電線を作製し、この絶縁電線について評価した。
(絶縁電線の作製)
実施例1〜9及び比較例1〜6の難燃性樹脂組成物を、単軸押出機(L/D=20、スクリュー形状:フルフライトスクリュー、マース精機社製)に投入して混練し、その押出機からチューブ状の押出物を押し出し、断面積2mm2の導体上に、厚さが0.7mmとなるように被覆した。こうして絶縁電線を作製した。
実施例1〜9及び比較例1〜6の難燃性樹脂組成物を、単軸押出機(L/D=20、スクリュー形状:フルフライトスクリュー、マース精機社製)に投入して混練し、その押出機からチューブ状の押出物を押し出し、断面積2mm2の導体上に、厚さが0.7mmとなるように被覆した。こうして絶縁電線を作製した。
<難燃性>
上記のようにして各実施例比較例毎に作製した10本の絶縁電線について、JIS C3005に準拠して60°傾斜燃焼試験を行った。まず、30秒以内で絶縁電線に着火が起こるまで接炎を行った。そして、燃焼中にドリップせず、30秒以内に自己消火した絶縁電線を合格とした。また、30秒接炎しても着火しない絶縁電線は、合格として実験を終了した。10本の絶縁電線のうち、この自己消火したもしくは着火しなかった絶縁電線の割合を合格率(単位:%)として下記式に基づいて算出し、この合格率を難燃性の評価指標とした。
合格率(%)=100×自己消火したもしくは着火しなかった絶縁電線の本数/試験を行った絶縁電線の総数(10本)
結果を表1〜3に示す。なお、難燃性の合格基準は以下の通りとした。
(合格基準)合格率が100%であること
上記のようにして各実施例比較例毎に作製した10本の絶縁電線について、JIS C3005に準拠して60°傾斜燃焼試験を行った。まず、30秒以内で絶縁電線に着火が起こるまで接炎を行った。そして、燃焼中にドリップせず、30秒以内に自己消火した絶縁電線を合格とした。また、30秒接炎しても着火しない絶縁電線は、合格として実験を終了した。10本の絶縁電線のうち、この自己消火したもしくは着火しなかった絶縁電線の割合を合格率(単位:%)として下記式に基づいて算出し、この合格率を難燃性の評価指標とした。
合格率(%)=100×自己消火したもしくは着火しなかった絶縁電線の本数/試験を行った絶縁電線の総数(10本)
結果を表1〜3に示す。なお、難燃性の合格基準は以下の通りとした。
(合格基準)合格率が100%であること
<耐摩耗性>
上記のようにして各実施例比較例毎に作製した絶縁電線について、JASO D618に準拠してスクレープ試験を行い、 スクレープ回数を測定した。なお、スクレープは電線上の針に対して1220gの荷重をかけた状態で行った。結果を表1〜3に示す。スクレープ回数が20000回以上となった場合は、それ以上の測定は行わず、「20000回以上」と表記している。耐摩耗性の合格基準は以下の通りとした。
(合格基準)スクレープ回数が4000回以上であること。
上記のようにして各実施例比較例毎に作製した絶縁電線について、JASO D618に準拠してスクレープ試験を行い、 スクレープ回数を測定した。なお、スクレープは電線上の針に対して1220gの荷重をかけた状態で行った。結果を表1〜3に示す。スクレープ回数が20000回以上となった場合は、それ以上の測定は行わず、「20000回以上」と表記している。耐摩耗性の合格基準は以下の通りとした。
(合格基準)スクレープ回数が4000回以上であること。
表1〜3に示す結果より、実施例1〜9の難燃性樹脂組成物は、難燃性及び耐摩耗性について合格基準に達していた。これに対し、比較例1〜6の難燃性樹脂組成物は、難燃性及び耐摩耗性のうち少なくとも1つについて合格基準に達していなかった。
このことから、本発明の難燃性樹脂組成物が、良好な難燃性を有しながら、耐摩耗性を向上させることができることが確認された。
1…金属導体
2…絶縁層
3…被覆層
4…絶縁電線
10…メタルケーブル
20…光ファイバケーブル
24…光ファイバ
25…被覆部(絶縁体)
2…絶縁層
3…被覆層
4…絶縁電線
10…メタルケーブル
20…光ファイバケーブル
24…光ファイバ
25…被覆部(絶縁体)
Claims (6)
- ポリオレフィン樹脂を含むベース樹脂と、
炭化ケイ素粒子と、
シリコーン化合物と、
脂肪酸含有化合物とを含み、
前記炭化ケイ素粒子が前記ベース樹脂100質量部に対して5質量部以上60質量部以下の割合で配合され、
前記シリコーン化合物が前記ベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合され、
前記脂肪酸含有化合物が前記ベース樹脂100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の割合で配合される、難燃性樹脂組成物。 - 前記前記脂肪酸含有化合物が脂肪酸金属塩である、請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物。
- 金属導体と、
前記金属導体を被覆する絶縁層とを備え、
前記絶縁層が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物で構成される絶縁電線。 - 金属導体、及び、前記金属導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線と、
前記絶縁電線を被覆する被覆層とを備え、
前記絶縁層及び前記被覆層の少なくとも一方が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物で構成されるメタルケーブル。 - 光ファイバと、
前記光ファイバを被覆する被覆部とを備え、
前記被覆部が、前記光ファイバを直接被覆する絶縁体を有し、
前記絶縁体が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物で構成される光ファイバケーブル。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物で構成される成形品。
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JP2017177298A JP2019052244A (ja) | 2017-09-15 | 2017-09-15 | 難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線、メタルケーブル、光ファイバケーブル及び成形品 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021229669A1 (ja) * | 2020-05-12 | 2021-11-18 | 住友電気工業株式会社 | 樹脂成形体、タブリード及び電池 |
CN115521520A (zh) * | 2022-10-21 | 2022-12-27 | 安徽电缆股份有限公司 | 一种防白蚁电缆外护套料及其制备方法 |
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-
2017
- 2017-09-15 JP JP2017177298A patent/JP2019052244A/ja not_active Withdrawn
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