以下、図面を参照しながら、実施形態に係る高周波増幅器及び磁気共鳴イメージング装置について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成例を示す図である。
例えば、図1に示すように、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、全身用RFコイル4、送信回路5、局所用RFコイル6、受信回路7、RFシールド8、架台9、寝台10、入力インタフェース11、ディスプレイ12、記憶回路13、第1〜第4の処理回路14〜17を備える。
静磁場磁石1は、被検体Sが配置される撮像空間に静磁場を発生させる。具体的には、静磁場磁石1は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、円筒内の空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成された冷却容器と、当該冷却容器内に充填された冷却材(例えば、液体ヘリウム等)に浸漬された超伝導磁石等の磁石とを有する。ここで、例えば、静磁場磁石1は、永久磁石を用いて静磁場を発生させるものであってもよい。
傾斜磁場コイル2は、静磁場磁石1の内側に配置されており、被検体Sが配置される撮像空間に傾斜磁場を印加する。具体的には、傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、円筒内の空間に、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の各軸に沿った傾斜磁場を発生させる。ここで、X軸、Y軸及びZ軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。例えば、Z軸は、傾斜磁場コイル2の円筒の軸に一致し、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束に沿って設定される。また、X軸は、Z軸に直交する水平方向に沿って設定され、Y軸は、Z軸に直交する鉛直方向に沿って設定される。
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給することで、傾斜磁場コイル2の内側の空間に、X軸、Y軸及びZ軸それぞれに沿った傾斜磁場を発生させる。このように、傾斜磁場電源3がX軸、Y軸及びZ軸それぞれに沿った傾斜磁場を発生させることによって、リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場を発生させることができる。リードアウト方向、位相エンコード方向、及びスライス方向それぞれに沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、位相エンコード方向に沿った傾斜磁場を位相エンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。
これらの傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳され、磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号に空間的な位置情報を付与するために用いられる。具体的には、リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、MR信号にリードアウト方向に沿った位置情報を付与する。また、位相エンコード傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、MR信号に位相エンコード方向の位置情報を付与する。また、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ、枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させることで、MR信号にスライス方向に沿った位置情報を付与する。
全身用RFコイル4は、傾斜磁場コイル2の内側に配置されており、被検体Sが配置される撮像空間に高周波エネルギー(高周波磁場)を印加し、当該高周波エネルギーの影響で被検体Sから発生するMR信号を受信する。具体的には、全身用RFコイル4は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、円筒内の空間に高周波エネルギーを印加する。また、全身用RFコイル4は、被検体Sから発生するMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。
送信回路5は、ラーモア周波数に対応するRFパルス信号を全身用RFコイル4に出力する。具体的には、送信回路5は、発振器、位相選択器、周波数変換器、振幅変調器、及び、高周波増幅器を備える。発振器は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波パルスを発生する。位相選択器は、発振器から出力される高周波パルスの位相を選択する。周波数変換器は、位相選択器から出力される高周波パルスの周波数を変換する。振幅変調器は、周波数変換器から出力される高周波パルスの振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波増幅器は、振幅変調器から出力される高周波パルスを電力増幅して全身用RFコイル4に出力する。
局所用RFコイル6は、被検体Sから発生するMR信号を受信する。具体的には、局所用RFコイル6は、全身用RFコイル4の内側に配置された被検体Sに装着され、全身用RFコイル4によって印加される高周波エネルギーの影響で被検体Sから発生するMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。例えば、局所用RFコイル6は、撮像対象の部位ごとに用意された受信コイルであり、頭部用の受信コイルや、頚部用の受信コイル、肩用の受信コイル、胸部用の受信コイル、腹部用の受信コイル、下肢用の受信コイル、脊椎用の受信コイル等である。なお、局所用RFコイル6は、高周波エネルギーを印加する送信機能をさらに有していてもよい。その場合には、局所用RFコイル6は、送信回路5に接続され、送信回路5から出力されるRFパルス信号に基づいて、被検体Sに高周波エネルギーを印加する。
受信回路7は、全身用RFコイル4又は局所用RFコイル6から出力されるMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを第2の処理回路15に出力する。例えば、受信回路7は、選択器、前段増幅器、位相検波器、及び、アナログデジタル変換器を備える。選択器は、全身用RFコイル4又は局所用RFコイル6から出力されるMR信号を選択的に入力する。前段増幅器は、選択器から出力されるMR信号を増幅する。位相検波器は、前段増幅器から出力されるMR信号の位相を検波する。アナログデジタル変換器は、位相検波器から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換することでMR信号データを生成し、生成したMR信号データを第2の処理回路15に出力する。
RFシールド8は、傾斜磁場コイル2と全身用RFコイル4との間に配置されており、全身用RFコイル4によって発生する高周波エネルギーを遮蔽する。具体的には、RFシールド8は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、傾斜磁場コイル2の内周側の空間に、全身用RFコイル4の外周面を覆うように配置されている。
架台9は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、全身用RFコイル4及びRFシールド8を収容している。具体的には、架台9は、円筒状に形成された中空のボアBを有しており、ボアBを囲むように静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、全身用RFコイル4及びRFシールド8を配置した状態で、それぞれを収容している。ここで、架台9が有するボアBの内側の空間が、被検体Sの撮像が行われる際に被検体Sが配置される撮像空間となる。
寝台10は、被検体Sが載置される天板10aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、架台9におけるボアBの内側へ天板10aを挿入する。例えば、寝台10は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置されている。
入力インタフェース11は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース11は、第4の処理回路17に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し制御回路へと出力する。例えば、入力インタフェース11は、撮像条件や関心領域(Region Of Interest:ROI)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力インタフェース、及び音声入力インタフェース等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース11は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース11の例に含まれる。
ディスプレイ12は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ12は、第4の処理回路17に接続されており、第4の処理回路17から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ12は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
記憶回路13は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路13は、MR信号データや画像データを記憶する。例えば、記憶回路13は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
第1の処理回路14は、寝台制御機能14aを有する。寝台制御機能14aは、寝台10に接続され、制御用の電気信号を寝台10へ出力することで、寝台10の動作を制御する。例えば、寝台制御機能14aは、入力インタフェース11を介して、天板10aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板10aを移動するように、寝台10が有する天板10aの駆動機構を動作させる。
第2の処理回路15は、実行機能15aを有する。実行機能15aは、第4の処理回路17から出力されるシーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7を駆動することで、各種のパルスシーケンスを実行する。例えば、実行機能15aは、傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7それぞれに入力信号を送信することで、傾斜磁場電源3、送信回路5及び受信回路7を駆動する。
ここで、シーケンス実行データは、MR信号データを収集するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。具体的には、シーケンス実行データは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給する電流の強さ、送信回路5が全身用RFコイル4に供給するRFパルス信号の強さや供給タイミング、受信回路7がMR信号を検出する検出タイミング等を定義した情報である。
そして、実行機能15aは、各種パルスシーケンスを実行した結果として、受信回路7からMR信号データを受信し、受信したMR信号データを記憶回路13に記憶させる。なお、実行機能15aによって受信されたMR信号データの集合は、前述したリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によって付与された位置情報に応じて2次元又は3次元に配列されることで、k空間を構成するデータとして記憶回路13に記憶される。
第3の処理回路16は、画像生成機能16aを有する。画像生成機能16aは、記憶回路13に記憶されたMR信号データに基づいて画像を生成する。具体的には、画像生成機能16aは、実行機能15aによって記憶回路13に記憶されたMR信号データを読み出し、読み出したMR信号データに後処理、即ち、フーリエ変換等の再構成処理を施すことで画像を生成する。また、画像生成機能16aは、生成した画像の画像データを記憶回路13に記憶させる。
第4の処理回路17は、主制御機能17aを有する。主制御機能17aは、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、主制御機能17aは、入力インタフェース11を介して操作者から撮像条件の入力を受け付ける。そして、主制御機能17aは、受け付けた撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成し、当該シーケンス実行データを第2の処理回路15に送信することで、各種のパルスシーケンスを実行する。また、例えば、主制御機能17aは、操作者からの要求に応じて、記憶回路13から画像データを読み出してディスプレイ12に出力する。
ここで、例えば、上述した各処理回路は、それぞれプロセッサによって実現される。その場合に、例えば、各処理回路が有する処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路13に記憶されている。各処理回路は、記憶回路13から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各処理回路は、図1の各処理回路内に示された各機能を有することとなる。
また、各処理回路は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサがプログラムを実行することによって各機能を実現するものとしてもよい。また、各処理回路が有する機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、各処理回路が有する機能は、回路等のハードウェアとソフトウェアとの混合によって実現されても構わない。
以上、本実施形態に係るMRI装置100の全体構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係るMRI装置100は、静磁場中に配置された被検体Sに全身用RFコイル4から高周波エネルギーを印加し、当該高周波エネルギーの影響で被検体Sから発生する磁気共鳴信号に基づいて被検体S内の画像を生成する。ここで、被検体Sに印加される高周波エネルギーは、送信回路5において、所望の波形及び周波数の高周波パルスを発振器、位相選択器、周波数変換器、振幅変調器によって生成し、生成した高周波パルスを高周波増幅器によって電力増幅することで得られる。
このようなMRI装置100において、一般的に、高周波エネルギーは、被検体における撮像対象の部位にわたって均一に印加されることが望ましい。この一方で、近年では、信号の高SNR(Signal to Noise Ratio)化を目指して、共鳴周波数を高めるためにより高い強度(例えば、3T(tesla)から7T等)の静磁場が用いられるようになってきている。このように静磁場強度を増大した場合には、巨視的磁化が増大し、それに比例して信号強度が大きくなる一方で、共鳴周波数が高くなることによって、撮像対象の部位における高周波エネルギーの分布が不均一になるという課題が生じる。これは、被検体に高周波エネルギーを印加した場合に被検体に発生する高周波の渦電流や誘電率影響等のように、被検体の形状も含めた電気特性によるものであることが知られている。
本実施形態に係るMRI装置100は、このような被検体S内における高周波エネルギーの分布の不均一を解消するための手段として、パラレルトランスミッションと呼ばれる手法を用いて被検体Sの撮像を行う機能を有している。
具体的には、本実施形態に係るMRI装置100では、全身用RFコイル4が、複数の実質的に独立したコイル素を有する。そして、送信回路5に含まれる高周波増幅器が、最終的に被検体S内で高周波エネルギーの分布が均一になるように予めコイル素ごとに決定された振幅及び位相で、各コイル素に高周波電力を供給する。ここで、本実施形態では、送信回路5が有する高周波増幅器は、各コイル素に高周波電力を供給するための複数の増幅モジュールを有する。
このようなパラレルトランスミッションでは、被検体の形状等によって、各コイル素に出力される高周波電力の大きさが変化する。そのため、例えば、各コイル素に高周波電力を供給する増幅モジュールの数がコイル素ごとに固定であった場合には、以下のように、高周波増幅器において、高周波エネルギーの印加に必要な所要電力が増加することがあり得る。
図2及び3は、第1の実施形態の比較例に係る高周波増幅器の構成例を示す図である。
例えば、図2及び3に示すように、全身用RFコイル4が、2つのコイル素を有しており、送信回路5に含まれる高周波増幅器90が、4つの増幅モジュールを有していたとする。
具体的には、全身用RFコイル4は、第1及び第2のコイル素41,42を有する。また、高周波増幅器90は、第1〜第4の増幅モジュール911〜914を有する。ここで、第1及び第2の増幅モジュール911,912は、互いに並列に、第1の合成器921に接続されている。また、第3及び第4の増幅モジュール913,914は、互いに並列に、第2の合成器922に接続されている。
このような構成において、例えば、図2に示すように、第1のコイル素41及び第2のコイル素42それぞれに2kWの高周波電力を出力する場合には、各増幅モジュールが、1kWの高周波電力を出力する。
この結果、第1の合成器921には、第1及び第2の増幅モジュール911,912それぞれから1kWの高周波電力が供給され、第1のコイル素41には、第1の合成器921によって合成された2kWの高周波電力が供給されることになる。一方、第2の合成器922には、第3及び第4の増幅モジュール913,914それぞれから1kWの高周波電力が供給され、第2のコイル素42には、第2の合成器922によって合成された2kWの高周波電力が供給されることになる。
一方、例えば、図3に示すように、第1のコイル素41に3kWの高周波電力を出力し、第2のコイル素42に1kWの高周波電力を出力する場合には、第1及び第2の増幅モジュール911,912が、それぞれ1.5kWの高周波電力を出力し、第3及び第4の増幅モジュール913,914が、それぞれ0.5kWの高周波電力を出力する。
この結果、第1の合成器921には、第1及び第2の増幅モジュール911,912それぞれから1.5kWの高周波電力が供給され、第1のコイル素41には、第1の合成器921によって合成された3kWの高周波電力が供給されることになる。一方、第2の合成器922には、第3及び第4の増幅モジュール913,914それぞれから0.5kWの高周波電力が供給され、第2のコイル素42には、第2の合成器922によって合成された1kWの高周波電力が供給されることになる。
なお、前述したように、パラレルトランスミッションでは、被検体の形状等によって各コイル素に出力される高周波電力の大きさが変化するため、図3に示す例とは逆に、第1のコイル素41に1kWの高周波電力を出力し、第2のコイル素42に3kWの高周波電力を出力する場合もあり得る。
このため、図2及び3に示す構成では、各増幅モジュールは1.5kWの最大出力を有することが必要になり、高周波増幅器90としては、合計で、1.5kW×4(個の増幅モジュール)=6kWの最大出力が必要となる。この結果、高周波増幅器において、高周波エネルギーの印加に必要な所要電力が増加することになる。
このようなことから、本実施形態に係るMRI装置100では、送信回路5に含まれる高周波増幅器が、高周波エネルギーの印加に必要な所要電力を低減することができるように構成されている。
具体的には、本実施形態では、送信回路5に含まれる高周波増幅器が、全身用RFコイル4に含まれるコイル素の個数より少なくとも1つ多い個数の増幅モジュールを備える。また、高周波増幅器は、全身用RFコイル4に含まれるコイル素ごとに設けられ、増幅モジュールそれぞれから出力される高周波電力を合成して、対応するコイル素に出力する合成器を備える。そして、高周波増幅器は、合成器それぞれに接続される増幅モジュールの個数を選択可能に構成されている。
ここで、本実施形態では、高周波増幅器は、合成器ごとに設けられ、当該合成器の前段に配置されたスイッチをさらに備える。そして、当該スイッチが、対応する合成器に接続される増幅モジュールの数を選択可能に構成されている。
また、本実施形態では、合成器に接続される増幅モジュールは、それぞれ、当該合成器に対応するコイル素に必要とされる高周波電力を当該増幅モジュールの個数で割った値と略等しい高周波電力を合成器に出力する。ここで、合成器によって合成される高周波電力の振幅及び位相は、実質的に同一である。
また、高周波電力が伝送される伝送線路では、伝送線路内の各所で電圧と電流との比が変化し、その結果、伝送線路内の各所でインピーダンスが異なると考えられる。そこで、本実施形態では、増幅モジュールとスイッチとの間の伝送線路の線路長は、スイッチが開状態となる際に増幅モジュールからみたスイッチ側のインピーダンスも略開状態となるように、高周波電力の1/2波長の整数倍と略同じ長さに定められている。
図4及び5は、第1の実施形態に係る高周波増幅器の構成例を示す図である。
例えば、図4及び5に示すように、本実施形態では、全身用RFコイル4が、2つのコイル素を有しており、送信回路5に含まれる高周波増幅器50が、4つの増幅モジュールと、2つの合成器と、8つのスイッチとを有する。
具体的には、全身用RFコイル4は、第1及び第2のコイル素41,42を有する。また、高周波増幅器50は、第1〜第4の増幅モジュール511〜514と、第1及び第2の合成器521,522と、第1〜第8のスイッチ531〜538とを有する。
ここで、第1〜第4の増幅モジュール511〜514は、第1〜第4のスイッチ531〜534を介して、互いに並列に、第1の合成器521に接続されている。さらに、第1〜第4の増幅モジュール511〜514は、第5〜第8のスイッチ535〜538を介して、互いに並列に、第2の合成器522に接続されている。
具体的には、第1の増幅モジュール511は、第1のスイッチ531を介して第1の合成器521に接続され、さらに、第5のスイッチ535を介して第2の合成器522に接続されている。また、第2の増幅モジュール512は、第2のスイッチ532を介して第1の合成器521に接続され、さらに、第6のスイッチ536を介して第2の合成器522に接続されている。また、第3の増幅モジュール513は、第3のスイッチ533を介して第1の合成器521に接続され、さらに、第7のスイッチ537を介して第2の合成器522に接続されている。また、第4の増幅モジュール514は、第4のスイッチ534を介して第1の合成器521に接続され、さらに、第8のスイッチ538を介して第2の合成器522に接続されている。
このような構成において、本実施形態では、第2の処理回路15の実行機能15aが、各増幅モジュールから出力される高周波電力の大きさを制御する。また、本実施形態では、第2の処理回路15の実行機能15aが、各スイッチの開閉状態を切り替えることで、高周波増幅器50における各合成器と各増幅モジュールとの間の接続を制御する。
ここで、例えば、各合成器に接続される増幅モジュールの個数及び組み合わせは、撮像対象の部位ごとに、予め決められている。例えば、MRI装置100において、1つの部位を対象にした検査で行われる複数の撮像パラメーター(プロトコルとも呼ばれる)それぞれに関する撮像条件を設定した情報が予め検査ごとに記憶回路13に記憶されている場合には、各検査に対応付けて、各合成器に接続される増幅モジュールの個数及び組み合わせを示す設定情報がさらに記憶される。この場合には、第2の処理回路15の実行機能15aが、記憶回路13に記憶されている当該設定情報を参照して、各スイッチの開閉状態を切り替える。
例えば、図4に示すように、第1及び第2のコイル素41,42それぞれに2kWの高周波電力を出力する場合には、実行機能15aは、第1及び第2の合成器521,522それぞれに2つの増幅モジュールを接続し、各増幅モジュールが、1kWの高周波電力を出力するように制御する。
具体的には、実行機能15aは、第1及び第2のスイッチ531,532を閉状態にし、第3及び第4のスイッチ533,534を開状態にすることで、第1の合成器521に、第1及び第2の増幅モジュール511,512を接続する。また、実行機能15aは、第5及び第6のスイッチ535,536を開状態にし、第7及び第8のスイッチ537,538を閉状態にすることで、第2の合成器522に第3及び第4の増幅モジュール513,514を接続する。
この結果、第1の合成器521には、第1及び第2の増幅モジュール511,512それぞれから1kWの高周波電力が供給され、第1のコイル素41には、第1の合成器521によって合成された2kWの高周波電力が供給されることになる。一方、第2の合成器522には、第3及び第4の増幅モジュール513,514それぞれから1kWの高周波電力が供給され、第2のコイル素42には、第2の合成器522によって合成された2kWの高周波電力が供給されることになる。
一方、例えば、図5に示すように、第1のコイル素41に3kWの高周波電力を出力し、第2のコイル素42に1kWの高周波電力を出力する場合には、実行機能15aは、第1の合成器521に3つの増幅モジュールを接続し、第2の合成器522に1つの増幅モジュールを接続し、各増幅モジュールが、1kWの高周波電力を出力するように制御する。
具体的には、実行機能15aは、第1〜第3のスイッチ531〜533を閉状態にし、第4のスイッチ534を開状態にすることで、第1の合成器521に、第1〜第3の増幅モジュール511〜513を接続する。また、実行機能15aは、第5〜第7のスイッチ535〜537を開状態にし、第8のスイッチ538を閉状態にすることで、第2の合成器522に、第4の増幅モジュール514を接続する。
この結果、第1の合成器521には、第1〜第3の増幅モジュール511〜513それぞれから1kWの高周波電力が供給され、第1のコイル素41には、第1の合成器521によって合成された3kWの高周波電力が供給されることになる。一方、第2の合成器522には、第4の増幅モジュール514から1kWの高周波電力が供給され、第2のコイル素42には、第2の合成器522によって合成された1kWの高周波電力が供給されることになる。
このように、本実施形態では、図4及び5に示す例のいずれの場合でも、各増幅モジュールは1kWの最大出力を有していればよく、高周波増幅器50としては、合計で、1kW×4(個の増幅モジュール)=4kWの最大出力で済むことになる。したがって、本実施形態では、図2及び3に示した例と比較して、最大出力が低い増幅モジュールの組合せで、各コイル素に必要な高周波電力を供給することが可能である。
なお、ここでは、全身用RFコイル4が2つのコイル素を有する場合の例を説明したが、コイル素の個数はこれに限られない。全身用RFコイル4に備えられるコイル素の個数は、パラレルトランスミッションを行うことが可能であれば、2つ以上の複数であってもよい。
また、ここでは、高周波増幅器50が4つの増幅モジュールを備える場合の例を説明したが、増幅モジュールの個数は4つに限られない。高周波増幅器50に備えられる増幅モジュールの数は、全身用RFコイル4に備えられるコイル素の個数より少なくとも1つ多い個数であればよい。これにより、パラレルトランスミッションにおいて各コイル素に出力される高周波電力の大きさを変える場合に、少なくとも1つの増幅モジュールについて、接続先を複数のコイル素の間で動的に変更することが可能になる。
上述したように、第1の実施形態では、高周波増幅器50は、コイル素の個数より少なくとも1つ多い個数の増幅モジュールを備える。また、高周波増幅器50は、コイル素ごとに設けられ、増幅モジュールそれぞれから出力される高周波電力を合成して、対応するコイル素に出力する合成器を備える。そして、高周波増幅器50は、合成器それぞれに接続される増幅モジュールの個数を選択可能に構成されている。これにより、本実施形態では、高周波増幅器50に備えられる各増幅モジュールの最大出力を低減することができる。
したがって、第1の実施形態によれば、高周波エネルギーの印加に必要な所要電力を低減することができる。また、所要電力の低減によって、高周波増幅器50に実装される素子等の破損リスクを低減することが可能になる。この結果、高周波増幅器50及びMRI装置100の信頼性を向上させることができる。
(第1の実施形態の変形例)
なお、上述した第1の実施形態で説明した高周波増幅器50において、合成器及びスイッチの構成は、図4及び5に示したものに限られない。
図6は、第1の実施形態に係る高周波増幅器における合成器及びスイッチの他の構成例を示す図である。
ここで、図6に示す例は、高周波増幅器50に含まれる増幅モジュールの個数が5つであり、全身用RFコイル4が有するコイル素が2つである場合の例である。この場合に、高周波増幅器50は、コイル素ごとに設けられた2つの合成器を有する。
例えば、図6に示すように、第1の合成器1521は、第1の入力端子IN1を介して第1の増幅モジュール(図示省略)に接続され、第2の入力端子IN2を介して第2の増幅モジュール(図示省略)に接続され、第3の入力端子IN3を介して第3の増幅モジュール(図示省略)に接続されている。
ここで、第1の入力端子IN1は、インダクタL1を介して第1の合成点CP1に接続されており、第1の入力端子IN1とインダクタL1との間の伝送線路がコンデンサC1を介して接地されている。また、第2の入力端子IN2は、インダクタL2を介して第1の合成点CP1に接続されており、第2の入力端子IN2とインダクタL2との間の伝送線路がコンデンサC21を介して接地され、インダクタL2と第1の合成点CP1との間の伝送線路がコンデンサC22を介して接地されている。また、第3の入力端子IN3は、直列に接続されたスイッチS1、インダクタL31、及びスイッチS2を介して第1の合成点CP1に接続されており、スイッチS1とインダクタL31との間の伝送線路がコンデンサC31を介して接地されている。そして、第1の合成点CP1は、第1の出力端子OUT1を介して、第1のコイル素(図示省略)に接続されている。
さらに、第1の入力端子IN1と第2の入力端子IN2との間は、直列に接続された2つの抵抗R11,R12を含む伝送線路と、直列に接続された2つの抵抗R21,R22を含む伝送線路とを介して接続されている。そして、第3の入力端子IN3は、直列に接続されたスイッチS3、2つの抵抗R31,R32、及びスイッチS4を含む伝送経路を介して、第1の入力端子IN1と第2の入力端子IN2とを接続する2つの伝送経路(抵抗R11,R12を含む伝送線路、及び、抵抗R21,R22を含む伝送線路)の間に接続されている。ここで、例えば、抵抗R11,R12,R21,R22,R31,R32は、それぞれ50Ωである。
一方、第2の合成器1522は、第3の入力端子IN3を介して第3の増幅モジュール(図示省略)に接続され、第4の入力端子IN4を介して第4の増幅モジュール(図示省略)に接続され、第5の入力端子IN5を介して第5の増幅モジュール(図示省略)に接続されている。
ここで、第3の入力端子IN3は、直列に接続されたスイッチS5、インダクタL32、及びスイッチS6を介して第2の合成点CP2に接続されており、スイッチS5とインダクタL32との間の伝送線路がコンデンサC32を介して接地されている。また、第4の入力端子IN4は、インダクタL4を介して第2の合成点CP2に接続されており、第4の入力端子IN4とインダクタL4との間の伝送線路がコンデンサC41を介して接地され、インダクタL4と第2の合成点CP2との間の伝送線路がコンデンサC42を介して接地されている。また、第5の入力端子IN5は、インダクタL5を介して第2の合成点CP2に接続されており、第5の入力端子IN5とインダクタL5との間の伝送線路がコンデンサC5を介して接地されている。そして、第2の合成点CP2は、第2の出力端子OUT2を介して、第2のコイル素(図示省略)に接続されている。
さらに、第4の入力端子IN4と第5の入力端子IN5との間は、直列に接続された2つの抵抗R41,R42を含む伝送線路と、直列に接続された2つの抵抗R51,R52を含む伝送線路とを介して接続されている。そして、第3の入力端子IN3は、直列に接続されたスイッチS7、2つの抵抗R33,R34、及びスイッチS8を含む伝送経路を介して、第4の入力端子IN4と第5の入力端子IN5とを接続する2つの伝送経路(抵抗R41,R42を含む伝送線路、及び、抵抗R51,R52を含む伝送線路)の間に接続されている。ここで、例えば、抵抗R41,R42,R51,R52,R33,R34は、それぞれ50Ωである。
このような構成において、本変形例でも、第2の処理回路15の実行機能15aが、各スイッチの開閉状態を切り替えることで、高周波増幅器50における各合成器と各増幅モジュールとの間の接続を制御する。
例えば、図6に示すように、実行機能15a(第2の処理回路15)は、第1の合成器1521側に設けられている全てのスイッチS1〜S4を閉状態にする一方で、第2の合成器1522側に設けられている全てのスイッチS5〜S8を開状態にすることで、第3の入力端子IN3と第1の出力端子OUT1との間を導通させる。
この場合には、第1の入力端子IN1を介して第1の増幅モジュールから入力された高周波電力と、第2の入力端子IN2を介して第2の増幅モジュールから入力された高周波電力と、第3の入力端子IN3を介して第3の増幅モジュールから入力された高周波電力とが、第1の合成器1521によって合成されて、第1の出力端子OUT1を介して第1のコイル素に供給されることになる。また、この場合には、第2のコイル素には、第4の入力端子IN4を介して第4の増幅モジュールから入力された高周波電力と、第5の入力端子IN5を介して第5の増幅モジュールから入力された高周波電力とが、第2の合成器1522によって合成されて、第2の出力端子OUT2を介して供給されることになる。
一方、例えば、図6に示す例とは逆に、実行機能15a(第2の処理回路15)は、第1の合成器1521側に設けられている全てのスイッチS1〜S4を開状態にする一方で、第2の合成器1522側に設けられている全てのスイッチS5〜S8を閉状態にすることで、第3の入力端子IN3と第2の出力端子OUT2との間を導通させる。
この場合には、第4の入力端子IN4を介して第4の増幅モジュールから入力された高周波電力と、第5の入力端子IN5を介して第5の増幅モジュールから入力された高周波電力と、第3の入力端子IN3を介して第3の増幅モジュールから入力された高周波電力とが、第2の合成器1522によって合成されて、第2の出力端子OUT2を介して第2のコイル素に供給されることになる。また、この場合には、第1の出力端子OUT1には、第1の入力端子IN1を介して第1の増幅モジュールから入力された高周波電力と、第2の入力端子IN2を介して第2の増幅モジュールから入力された高周波電力とが、第1の合成器1521によって合成されて、第1の出力端子OUT1を介して供給されることになる。
このように、本変形例でも、パラレルトランスミッションにおいて各コイル素に出力される高周波電力の大きさを変える場合に、第3の増幅モジュールについて、接続先を2つのコイル素の間で動的に変更することが可能になる。
さらに、上述した第1の実施形態では、高周波増幅器50において、各合成器の前段にスイッチが設けられる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、他の変形例として、各合成器が、コイル素に出力する高周波電力の大きさを調整できるように構成されていてもよい。その場合には、合成器は、増幅モジュールから入力した高周波電力を、対応するコイル素に必要とされる大きさに変換して、当該コイル素に供給する。例えば、合成器は、複数のコイルを有し、当該コイル間の磁気結合度を変えることによって、高周波電力の大きさを変換する。例えば、このような合成器は、可変トランス(transformer)により実現される。
また、上述した第1の実施形態では、各合成器に接続される増幅モジュールの個数及び組み合わせが、撮像対象の部位ごとに予め決められている場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、他の変形例として、各合成器に接続される増幅モジュールの個数及び組み合わせが、被検体ごとに変更されるようにしてもよい。なお、この場合も、同じ検査内では、検査を通して同じ増幅モジュールの個数及び組み合わせが用いられる。
(第2の実施形態)
また、上述した第1の実施形態では、高周波増幅器50において、コイル素ごとに合成器が設けられる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。そこで、以下では、第2の実施形態として、高周波増幅器の他の構成例について説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとし、第1の実施形態で説明した構成要素と同じ役割を果たす構成要素については同一の符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
本実施形態では、送信回路5に含まれる高周波増幅器は、1つ又は複数の増幅モジュールと、合成器と、分配器とを備える。合成器は、増幅モジュールから出力される高周波電力を合成して分配器に出力する。分配器は、合成器から出力される高周波電力を全身用RFコイル4の各コイル素に分配する。そして、分配器は、各コイル素に出力される高周波電力の配分を選択可能に構成されている。
図7及び8は、第2の実施形態に係る高周波増幅器の構成例を示す図である。
例えば、図7及び8に示すように、本実施形態では、全身用RFコイル4が、2つのコイル素を有しており、送信回路5に含まれる高周波増幅器250が、4つの増幅モジュールと、1つの合成器と、1つの分配器とを有する。
具体的には、全身用RFコイル4は、第1及び第2のコイル素41,42を有する。また、高周波増幅器250は、第1〜第4の増幅モジュール511〜514と、合成器252と、分配器253とを有する。
ここで、第1〜第4の増幅モジュール511〜514は、互いに並列に、合成器252に接続されている。合成器252は、分配器253に接続されており、第1〜第4の増幅モジュール511〜514それぞれから出力される高周波電力を合成して、分配器253に出力する。分配器253は、第1及び第2のコイル素41,42それぞれに接続されており、合成器252から出力される高周波電力を各コイル素に分配する。
そして、分配器253は、第1及び第2のコイル素41,42それぞれに出力される高周波電力の配分を選択可能に構成されている。例えば、分配器253は、複数のコイルを有し、当該コイル間の磁気結合度を変えることによって、第1のコイル素41に出力する高周波電力の配分量と、第2のコイル素42に出力する高周波電力の配分量とを制御する。例えば、このような分配器253は、可変トランス(transformer)により実現される。
なお、本実施形態でも、合成器252に接続される第1〜第4の増幅モジュール511〜514は、それぞれ、当該合成器252に対応するコイル素に必要とされる高周波電力を当該増幅モジュールの個数で割った値と略等しい高周波電力を合成器252に出力する。そして、本実施形態では、第2の処理回路15の実行機能15aが、分配器253を制御することで、各コイル素に供給される高周波電力の配分量を制御する。
例えば、図7に示すように、第1及び第2のコイル素41,42それぞれに2kWの高周波電力を出力する場合には、第2の処理回路15の実行機能15aは、各増幅モジュールが、1kWの高周波電力を出力するように制御する。これにより、合成器252には、第1〜第4の増幅モジュール511〜514それぞれから1kWの高周波電力が供給されることになる。そして、実行機能15aは、分配器253を制御することで、合成器252によって合成された4kWの高周波電力が第1及び第2のコイル素41,42それぞれに2kWずつ分配されるように、各コイル素への高周波電力の配分量を制御する。
一方、例えば、図8に示すように、第1のコイル素41に3kWの高周波電力を出力し、第2のコイル素42に1kWの高周波電力を出力する場合には、第2の処理回路15の実行機能15aは、各増幅モジュールが、1kWの高周波電力を出力するように制御する。これにより、合成器252には、第1〜第4の増幅モジュール511〜514それぞれから1kWの高周波電力が供給されることになる。そして、実行機能15aは、分配器253を制御することで、合成器252によって合成された4kWの高周波電力が第1のコイル素41には3kW分配され、第2のコイル素42には1kW分配されるように、各コイル素への高周波電力の配分量を制御する。
このように、本実施形態では、図7及び8に示す例のいずれの場合でも、各増幅モジュールは1kWの最大出力を有していればよく、高周波増幅器250としては、合計で、1kW×4(個の増幅モジュール)=4kWの最大出力で済むことになる。したがって、本実施形態でも、図2及び3に示した例と比較して、最大出力が低い増幅モジュールの組合せで、各コイル素に必要な高周波電力を供給することが可能である。
なお、ここでは、全身用RFコイル4が2つのコイル素を有する場合の例を説明したが、コイル素の個数はこれに限られない。全身用RFコイル4に備えられるコイル素の個数は、パラレルトランスミッションを行うことが可能であれば、2つ以上の複数であってもよい。
また、ここでは、高周波増幅器250が4つの増幅モジュールを備える場合の例を説明したが、増幅モジュールの個数はこれに限られない。高周波増幅器250に備えられる増幅モジュールの個数は、合計で4kWの最大出力が得られるのであれば、1つであってもよいし、4つ以外の複数であってもよい。なお、増幅モジュールの個数が1つである場合には、高周波増幅器250は、合成器252を備えずに、増幅モジュールと分配器253とが直接接続された構成であってもよい。
上述したように、第2の実施形態では、高周波増幅器250は、1つ又は複数の増幅モジュールを備える。また、高周波増幅器250は、増幅モジュールから出力される高周波電力を合成して分配器に出力する合成器を備える。また、高周波増幅器250は、合成器から出力される高周波電力を全身用RFコイル4の各コイル素に分配する分配器を備える。そして、分配器は、各コイル素に出力される高周波電力の配分を選択可能に構成されている。これにより、本実施形態でも、高周波増幅器250に備えられる各増幅モジュールの最大出力を低減することができる。
したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、高周波エネルギーの印加に必要な所要電力を低減することができる。また、所要電力の低減によって、高周波増幅器250に実装される素子等の破損リスクを低減することが可能になる。この結果、高周波増幅器250及びMRI装置100の信頼性を向上させることができる。
なお、上述した各実施形態では、合成器、スイッチ及び分配器が高周波増幅器に備えられる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、各実施形態において、合成器、スイッチ及び分配器は、それらの全て又は一部が架台9側に配置されていてもよい。
なお、上述した各実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)−ROM、FD(Flexible Disk)、CD−R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、高周波エネルギーの印加に必要な所要電力を低減することができる高周波増幅器及び磁気共鳴イメージング装置を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。