[三次元測定システムの全体構成]
図1は、三次元測定システム9の概略図である。図1に示すように、三次元測定システム9は、本発明の被測定装置に相当する三次元測定機10(CMM:Coordinate Measuring Machine)と、駆動コントローラ30と、校正装置本体40と、コンピュータ60と、を備える。
[三次元測定機の構成]
三次元測定機10は、接触式のタッチプローブ25a(図2参照)の位置及び姿勢を変位させながら不図示の被測定物(ワーク)内の測定位置での座標値(X軸方向の座標値、Y軸方向の座標値、及びZ軸方向の座標値)を測定する測定機であり、座標測定機又は三次元座標測定機とも称される。なお、図1中のX軸、Y軸、及びZ軸は、三次元測定機10に固有の機械座標原点に基づいて定められる座標系である。
三次元測定機10は、架台12と、架台12上に設けられた定盤14と、定盤14の両端部に立設された右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lと、右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lの上部を連結するXガイド18と、を備える。これら右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L、及びXガイド18により門型フレーム19が構成される。
定盤14の上面には、測定対象の被測定物(不図示)が配置される。また、後述の校正装置本体40により三次元測定機10の校正を行う場合、定盤14の上面には7個のボールレンズ80A,80Bが所定の配置パターンで配置される。
定盤14の両端部には、Y軸方向に沿って右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lが摺動する摺動面が形成されている。また、右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lには、定盤14の摺動面に対向する位置にエアベアリング(図示は省略)が設けられている。これにより、右Yキャリッジ16R及び左Yキャリッジ16Lは、Xガイド18と共にY軸方向に移動自在になる。
Xガイド18には、Xキャリッジ20が取り付けられている。このXガイド18には、Xキャリッジ20が摺動する摺動面がX軸方向に沿って形成されている。また、Xキャリッジ20には、Xガイド18の摺動面に対向する位置にエアベアリング(図示は省略)が設けられている。これにより、Xキャリッジ20はX軸方向に移動自在になる。
Xキャリッジ20には、Zキャリッジ22(Zスピンドルともいう)が取り付けられている。また、Xキャリッジ20には、Zキャリッジ22をZ軸方向に案内するZ軸方向案内用のエアベアリング(図示せず)が設けられている。これにより、Zキャリッジ22は、Xキャリッジ20によってZ軸方向に移動可能に保持されている。
Zキャリッジ22の下端には、プローブヘッド24が取り付けられている。なお、右Yキャリッジ16R、左Yキャリッジ16L、Xキャリッジ20、Zキャリッジ22、及び後述の第2駆動部36は、本発明の可動部を構成する。
図2は、プローブヘッド24の斜視図である。図2の符号2Aに示すように、プローブヘッド24は、例えば無段階位置決め機構を備えた5軸同時制御プローブヘッドであり、各種プローブが交換可能に取り付けられる。具体的に、三次元測定機10により被測定物(不図示)の測定を行う場合、プローブヘッド24には、接触式タッチトリガのタッチプローブ25aが取り付けられる。タッチプローブ25aの先端には、スタイラス25bの基端が取り付けられている。このスタイラス25bの先端には、接触子25cが取り付けられている。スタイラス25b及び接触子25cは、タッチプローブ25aの測定子を構成する。
プローブヘッド24には、タッチプローブ25aを互いに直交する2つの回転軸(Z軸に平行な回転軸及びZ軸に垂直な回転軸)の各々の軸周りに回転させるモータなどの第1駆動部35が設けられている。なお、図1では、図面の煩雑化を防止するため、プローブヘッド24の外部に第1駆動部35を図示している。この第1駆動部35により、タッチプローブ25aの回転角ψと回転角θとをそれぞれ無段階に調整することができ、その結果、タッチプローブ25aの姿勢を任意に変位(回転)させることができる。
図2の符号2Bに示すように、後述の校正装置本体40により三次元測定機10の校正を行う場合、プローブヘッド24にはレーザプローブ47が取り付けられる。レーザプローブ47は、校正装置本体40の一部を構成するものであり、後述のパルス干渉計44から入力される光コム50を、定盤14上に配置されたボールレンズ80A,80Bに向けて出射する。なお、レーザプローブ47が取り付けられた状態のプローブヘッド24は、本発明の光ヘッドに相当し、以下、レーザヘッド24Lという。また、レーザヘッド24Lはその姿勢(光出射方向)を変化させることができれば、種類及び構成は特に限定はされない。
レーザヘッド24Lは、既述の第1駆動部35により、レーザプローブ47の回転角φと回転角θとをそれぞれ無段階に調整することができ、その結果、レーザヘッド24Lの姿勢を任意に変位(回転)させることができる。このため、レーザヘッド24Lから出射される後述の測定光50A(図3参照)の出射方向を、三次元測定機10の測定範囲内の任意の位置に向けることができる。
図1に戻って、三次元測定機10には、図示は省略するが、門型フレーム19をY軸方向に移動させるY軸駆動部と、Xキャリッジ20をX軸方向に移動させるX軸駆動部と、Zキャリッジ22をZ軸方向に移動させるZ軸駆動部と、を含む第2駆動部36が設けられている。これにより、プローブヘッド24(レーザヘッド24L)を、互いに直交する3軸方向(XYZ方向)に移動させることができる。これら第1駆動部35及び第2駆動部36によりタッチプローブ25a及びレーザプローブ47の位置及び姿勢が変位自在となる。
定盤14の右Yキャリッジ16R側の端部には、Y軸方向位置検出用リニアスケール(図示せず)が設けられている。また、Xガイド18にはX軸方向位置検出用リニアスケール(図示せず)が設けられ、Zキャリッジ22にはZ軸方向位置検出用リニアスケール(図示せず)が設けられている。
一方、右Yキャリッジ16Rには、Y軸方向位置検出用リニアスケールを読み取るY軸方向位置検出ヘッド(図示せず)が設けられている。また、Xキャリッジ20には、X軸方向位置検出用リニアスケール及びZ軸方向位置検出用リニアスケールをそれぞれ読み取るX軸方向位置検出ヘッド(図示せず)とZ軸方向位置検出ヘッド(図示せず)とが設けられている。さらに、プローブヘッド24には、タッチプローブ25a及びレーザプローブ47の回転角θ,φをそれぞれ検出するロータリエンコーダ等の回転角検出部(図示せず)が設けられている。なお、三次元測定機10による被測定物(不図示)の測定時には、XYZ軸方向検出ヘッドの検出結果と、回転角検出部の検出結果とに基づき、タッチプローブ25aの接触子25cが被測定物に接触したときのXYZ軸方向の座標値を検出することができる。
三次元測定機10は、第1駆動部35及び第2駆動部36を制御して、プローブヘッド24の動き、すなわち、タッチプローブ25a及びレーザプローブ47の位置及び姿勢の変位を制御する駆動コントローラ30を備えている。ここで三次元測定機10は、測定及び校正を自動で行う自動モードと、測定及び校正を手動で行う手動モードとを有している。従って、駆動コントローラ30は、自動モード時には後述のコンピュータ60の制御の下、第1駆動部35及び第2駆動部36を制御して、タッチプローブ25a及びレーザプローブ47の位置及び姿勢を変位させる。
また、駆動コントローラ30には、タッチプローブ25a及びレーザプローブ47の位置及び姿勢を手動操作するための手動操作部(不図示)が設けられている。従って、駆動コントローラ30は、手動モード時には手動操作部に対する操作入力に応じて、第1駆動部35及び第2駆動部36を制御することにより、タッチプローブ25a及びレーザプローブ47の位置及び姿勢を変位させる。
駆動コントローラ30には、既述のタッチプローブ25aの接触検知センサ(図示せず)と、既述のXYZ軸方向検出ヘッド(不図示)及び回転角検出部(不図示)とが接続されている。そして、駆動コントローラ30は、被測定物(不図示)の測定時において、接触検知センサによりタッチプローブ25aの接触子25cが被測定物内の測定位置に接触したことを検知した瞬間に、XYZ軸方向検出ヘッド及び回転角検出部の各々の検出結果を取得して、測定位置のXYZ軸方向の座標値を検出する。この測定位置のXYZ軸方向の座標値は、駆動コントローラ30からコンピュータ60へ出力される。
また、駆動コントローラ30は、三次元測定機10の校正時において、XYZ軸方向検出ヘッド及び回転角検出部の各々の検出結果を取得し、各検出結果をコンピュータ60へ出力する。これにより、コンピュータ60においてレーザプローブ47の位置及び姿勢を取得することができる。
[校正装置本体の構成]
図3は、校正装置本体40の概略図である。図1及び図3に示すように、校正装置本体40は、後述のコンピュータ60と共に本発明の校正装置を構成するものである。この校正装置本体40は、三次元測定機10の定盤14の上面に配置された7個のボールレンズ80A,80Bを用いて、三次元測定機10のプローブヘッド24(レーザヘッド24L)の位置決め精度(すなわち寸法測定精度)の測定を行う。校正装置本体40は、光周波数コム光源42、エタロン43、パルス干渉計44、レーザプローブ47、及び光検出部48等を備える。
光周波数コム光源42は、所定の繰り返し周波数を有する光コム50を発生し、光ファイバーケーブルC1を介してこの光コム50をエタロン43へ出力する。なお、光周波数コム光源42の構成については公知であるので、その詳細な説明は省略する。
図4は、時間領域の光コム50と周波数領域の光コム50とを説明するための説明図である。図4の符号4Aに示すように、光コム50は、時間領域では非常に安定した超短パルスの列として現れる。また、図4の符号4Bに示すように、光コム50は、周波数領域では、正確に一定周波数(繰り返し周波数frep)ずつ離れている多数の光により成り立つ。具体的に光コム50は、繰り返し周波数frepの逆数の時間間隔TRを有する安定したパルス列として出力される。なお、図中のfceoはオフセット周波数である。
図3に戻って、エタロン43は、例えば干渉間距離が固定されたファブリーペローエタロンが用いられる。このエタロン43は、光ファイバーケーブルC1を介して光周波数コム光源42から入力された光コム50から、所望の繰り返し周波数frepを持つ光コム50を生成し、この光コム50を、光ファイバーケーブルC2を介してパルス干渉計44へ出力する。例えば本実施形態のエタロン43は、1GHzの繰り返し周波数frepを持つ光コム50を生成する。このようにエタロン43を介在させることで、計測目的に合致した繰り返し周波数frepを持つ光コム50、すなわちパルス列のパルス間隔(後述の空間距離Dr)を短くした光コム50を生成することができる。
なお、光周波数コム光源42から出力される光コム50が、もともと計測目的に合致した繰り返し周波数frepの光コム50として生成されている場合には、エタロン43は省略することができる。
パルス干渉計44は、本発明の干渉光学系に相当するものであり、所謂コモンパス(共通光路)型である。このパルス干渉計44は、ファイバーサーキュレータ52、ビームスプリッタ53、光路差可変部54、及び光ファイバーケーブルC3〜C6等を備える。
ファイバーサーキュレータ52は、光ファイバーケーブルC2を介してエタロン43から入力された光コム50を、光ファイバーケーブルC3を介してビームスプリッタ53へ出力する。
ビームスプリッタ53は、光ファイバーケーブルC3を介してファイバーサーキュレータ52から入力された光コム50を、測定光50Aと参照光50Bとに分岐(分割)する。そして、ビームスプリッタ53は、測定光50Aを光ファイバーケーブルC4へ出力し、参照光50Bを光ファイバーケーブルC5へ出力する。
光ファイバーケーブルC4は、測定光50Aの光路である測定光路OP1を構成する。光ファイバーケーブルC4は、その一端側がビームスプリッタ53に接続され、その他端側がレーザヘッド24Lのレーザプローブ47に接続されている。これにより、ビームスプリッタ53から光ファイバーケーブルC4へ出力された測定光50Aが、光ファイバーケーブルC4を通ってレーザヘッド24L(レーザプローブ47)に入力される。
レーザヘッド24Lのレーザプローブ47は、三次元測定機10の校正時において、光ファイバーケーブルC4から入力された測定光50Aをボールレンズ80A,80Bに向けて出射する。これにより、ボールレンズ80A,80Bにて反射された測定光50Aが、レーザプローブ47に入射し、さらにレーザプローブ47から光ファイバーケーブルC4を介してビームスプリッタ53に入力される。
光ファイバーケーブルC5は、参照光50Bの光路である参照光路OP2を構成する。光ファイバーケーブルC5は、その一端側がビームスプリッタ53に接続され、その他端側に反射コート面59が形成されている。また、光ファイバーケーブルC5の途中には、光路差可変部54が設けられている。
光路差可変部54は、参照光50Bの光路長を一定範囲内で変化させることにより、測定光50Aの光路と参照光50Bの光路との光路差(以下、単に光路差という)を一定範囲内で変化させる。この光路差可変部54は、第1コリメータ55A、リフレクタ56、リフレクタ57、走査ステージ58、及び第2コリメータ55Bにより構成されている。
第1コリメータ55Aは、ビームスプリッタ53から入力される参照光50Bを平行光線としてリフレクタ56に向けて出射する。
リフレクタ56は、第1コリメータ55Aから入力された参照光50Bをリフレクタ57に向けて反射する第1反射面56Aと、第1反射面56Aを経てリフレクタ57から入射する参照光50Bを第2コリメータ55Bに向けて反射する第2反射面56Bと、を有する。なお、第2反射面56Bは、第2コリメータ55Bから入力された参照光50Bをリフレクタ57に向けて反射する。また、第1反射面56Aは、第2反射面56Bを経てリフレクタ57から入射する参照光50Bを第1コリメータ55Aに向けて反射する。
リフレクタ57は、リフレクタ56により反射された参照光50Bの光路上に配置されている。このリフレクタ57は、リフレクタ56の第1反射面56A及び第2反射面56Bの一方から入射した参照光50Bを、第1反射面56A及び第2反射面56Bの他方へ反射する。
走査ステージ58は、リフレクタ57を往復動自在に保持する。この走査ステージ58は、後述のコンピュータ60の制御の下、リフレクタ56とリフレクタ57との間の参照光50Bの光路に平行な方向に沿って、リフレクタ57の走査(往復動)を実行する。これにより、参照光50Bの光路長を一定範囲内で変化させることができ、その結果、既述の光路差も一定範囲内で変化させることができる。
第2コリメータ55Bは、リフレクタ56から入射する参照光50Bを集光し、この参照光50Bを、光ファイバーケーブルC5を介して反射コート面59へ出力する。
反射コート面59は、本発明の所定位置の参照面に相当するものである。反射コート面59は、光ファイバーケーブルC5を介して、第2コリメータ55Bから入力された参照光50Bを反射して第2コリメータ55Bへ戻す。なお、本発明の所定位置の参照面として、光ファイバーケーブルC5の他端側に各種のミラー及びリフレクタ等を配置してもよい。
反射コート面59から第2コリメータ55Bに向けて反射された参照光50Bは、第2コリメータ55B、第2反射面56B、リフレクタ57、第1反射面56A、及び第1コリメータ55A等を経て、ビームスプリッタ53に入力される。
なお、光ファイバーケーブルC4,C5は、各々の他端側がレーザヘッド24LのXYZ軸方向の変位に応じてレーザヘッド24Lと共に変位することができるように、十分に余裕を持った長さを有する。
図5は、パルス干渉計44とレーザプローブ47との間の光ファイバーケーブルC4,C5の配線状態を説明するための説明図である。図6は、図5に示した光ファイバーケーブルC4,C5の断面図である。
図5及び図6に示すように、測定光路OP1を構成する光ファイバーケーブルC4と、参照光路OP2を構成する光ファイバーケーブルC5とは一体化されている。このため、三次元測定機10を設置する工場或いは研究室等の施設500内において、パルス干渉計44からレーザヘッド24Lまでの間の光ファイバーケーブルC4,C5の配線経路を共通化することができる。これにより、測定光路OP1と参照光路OP2とがコモンパス(共通光路)になる。
本実施形態では測定光路OP1(光ファイバーケーブルC4)を三次元測定機10のレーザヘッド24Lまで延長する必要があるが、この際に、測定光路OP1と参照光路OP2との環境(温度等)に差異があると、後述の校正(レーザヘッド24Lの位置決め精度の測定)において誤差が生じるおそれがある。このため、本実施形態では、測定光路OP1と参照光路OP2とをコモンパスにすることで両者の環境の差異をなくして、校正における誤差を低減させることができる。このように本実施形態では、長いコモンパスを形成する必要があるため、測定光路OP1を光ファイバーケーブルC4で構成し且つ参照光路OP2を光ファイバーケーブルC5で構成する。また、連続波を用いた干渉計では、光路を光ファイバーケーブルで構成することが困難であると共に、プローブヘッド24の先端(制御軸先端)に取り付けるような小型化も困難であるため、本実施形態の校正装置本体40ではパルス干渉計44を採用している。
図3に戻って、ビームスプリッタ53は、光ファイバーケーブルC4から入力される測定光50Aと、光ファイバーケーブルC5から入力される参照光50Bとの光干渉信号SLを生成し、この光干渉信号SLを、光ファイバーケーブルC3を介してファイバーサーキュレータ52へ出力する。また、ファイバーサーキュレータ52は、ビームスプリッタ53から入力される光干渉信号SLを、光ファイバーケーブルC6を介して光検出部48へ出力する。
光検出部48は、本発明の信号検出部に相当する。この光検出部48は、光ファイバーケーブルC6を介してファイバーサーキュレータ52から入力される光干渉信号SLを電気信号に変換する各種の光電変換センサであり、入射する光干渉信号SLの強さに応じた電気信号(電圧信号)を出力する。この電気信号は、光検出部48から不図示のアンプ及びフィルタを経てコンピュータ60へ出力される。
図7は、時間領域の参照光50B(図7の上段参照)及び測定光50A(図7の下段参照)の一例を示す図である。図7に示すように、参照光50Bと測定光50Aとは、同じ光周波数コム光源42から出力された光コム50であり、繰り返し周波数frep及びパルス列の時間間隔TRが同じである。
従って、参照光50Bの光路長と測定光50Aの光路長とが一致している場合、或いは両者の光路長の差(既述の光路差)がパルス列の時間間隔TRに対応する空間距離Dr(図13参照)の整数倍の場合、参照光50Bと測定光50Aとが干渉する。即ち、図7において、参照光50Bと測定光50Aとの時間波形のずれ時間(ΔT)がゼロになる場合、参照光50Bと測定光50Aとが干渉する。
[三次元測定機の校正方法]
<ボールレンズの配置及び校正方向>
三次元測定機10の校正は、既述の校正装置本体40と定盤14の上面に配置された7個のボールレンズ80A,80Bとを用いて、既述のJIS B7440シリーズに従って行われる。具体的には、三次元測定機10の測定範囲内の7つの校正方向におけるレーザヘッド24Lの位置決め精度(寸法測定精度)を測定する。7つの校正方向は、測定範囲内の任意の対角4方向にそれぞれ沿った4つの校正方向D1と、三次元測定機10のXYZ軸にそれぞれ沿った3つの校正方向D2とを含む。
図8は、三次元測定機10の校正時に定盤14の上面に配置される7個のボールレンズ80A,80Bの上面図である。図9は、校正方向D1を説明するための説明図である。図10は、校正方向D2を説明するための説明図である。なお、図8から図10における座標(0,0,0)及び座標(1,0,0)等の各XYZ座標は、定盤14上での相対位置関係を示した座標である。
図8から図10に示すように、ボールレンズ80Aは定盤14の上面に4個配置され、ボールレンズ80Bは定盤14の上面に3個配置されている。各ボールレンズ80A,80Bは、レーザヘッド24Lから入射される測定光50Aを、レーザヘッド24Lに向けて反射する本発明の反射体である。なお、本発明の反射体として例えばコーナーキューブリフクレタ等の各種反射体を用いてもよいが、ボールレンズ80A,80Bはどの方向から入射する光も反射可能であるため、後述のレーザヘッド24Lのアライメントが容易になる。
4個のボールレンズ80Aは、座標(0,0,0)と、座標(1,0,0)と、座標(1,1,0)と、座標(0,1,0)とにそれぞれ配置されている。各ボールレンズ80Aは、4つの校正方向D1におけるレーザヘッド24Lの位置決め精度の測定に用いられる。
校正方向D1は、座標(0,0,0)のボールレンズ80Aと座標(1,1,1)とを結ぶ方向、座標(1,0,0)のボールレンズ80Aと座標(0,1,1)とを結ぶ方向、座標(1,1,0)のボールレンズ80Aと座標(0,0,1)とを結ぶ方向、及び座標(0,1,0)のボールレンズ80Aと座標(1,0,1)とを結ぶ方向である。
3個のボールレンズ80Bは、座標(1,1/2,1/2)と、座標(1/2,1,1/2)と、座標(1/2,1/2,0)とにそれぞれ配置されている。各ボールレンズ80Bは、3つの校正方向D2におけるレーザヘッド24Lの位置決め精度の測定に用いられる。
校正方向D2は、座標(1,1/2,1/2)のボールレンズ80Bと座標(0,1/2,1/2)とを結ぶ方向、座標(1/2,1,1/2)のボールレンズ80Bと座標(1/2,0,1/2)とを結ぶ方向、及び座標(1/2,1/2,0)のボールレンズ80Bと座標(1/2,1/2,1)とを結ぶ方向である。
<プローブヘッドの位置決め精度の測定>
レーザヘッド24Lの位置決め精度の測定は、校正方向D1,D2ごと、すなわち7方向ごとに個別に実行される。最初に、レーザヘッド24Lのアライメントが実行される。なお、レーザヘッド24Lのアライメントには、レーザヘッド24Lの姿勢制御と、レーザヘッド24LのXYZ軸方向の位置制御と、が含まれる。
図11は、レーザヘッド24Lの姿勢制御の説明図である。図11に示すように、レーザヘッド24Lの姿勢制御では、既述の第1駆動部35を駆動して、レーザヘッド24Lの姿勢を、7方向の校正方向D1,D2の中で第N番目(Nは1以上7以下の自然数)の方向である「第N番目の校正方向」にセットする。具体的には、レーザヘッド24Lの姿勢を「第N番目の校正方向」に平行にする。
図12は、レーザヘッド24Lの位置制御の説明図である。図12に示すように、レーザヘッド24Lのアライメントでは、既述の第2駆動部36を駆動して、レーザヘッド24Lを「第N番目の校正方向」に対応したボールレンズ80A、80Bに対するアライメント位置P0に移動させる。
このアライメント位置P0は、レーザヘッド24Lから出射される測定光50Aの光軸(出射光軸)と、「第N番目の校正方向」に対応したボールレンズ80A、80Bの中心とが一致する位置であって、且つ既述の光路差がパルス列の時間間隔TR(図7参照)に対応する空間距離Dr(図13参照)の整数倍となる位置である。このため、レーザヘッド24Lがアライメント位置P0に移動された場合、光検出部48で検出される光干渉信号SLの強度が最大(極大)となる。
以上で「第N番目の校正方向」に対応したボールレンズ80A、80Bに対するレーザヘッド24Lのアライメントが完了する。このレーザヘッド24Lのアライメント(姿勢制御、位置制御)は、後述の校正プログラム62B(図15参照)に基づき、第1駆動部35及び第2駆動部36を駆動することによって行われる。なお、校正プログラム62Bの作成方法については後述する。
レーザヘッド24Lのアライメント位置P0へのアライメント完了後、このレーザヘッド24Lを、「第N番目の校正方向」に沿った延長方向(ボールレンズ80A,80Bから遠ざかる方向)に向けてステップ移動させる。
図13は、レーザヘッド24Lの位置と、光検出部48で検出される光干渉信号SLの強度との関係を説明するための説明図である。光コム50は、国家標準又は国際標準が確保されており、非常に高い周波数安定性を有している。従って、レーザヘッド24Lをアライメント位置P0から既述の延長方向に沿って移動させた場合(ここでは走査ステージ58によるリフレクタ57の走査制御は行わないと仮定する)、図13に示すような光干渉信号SLが光検出部48で検出される。
この場合、既述の光路差がパルス列の時間間隔TRに対応する空間距離Drの整数倍となる位置にレーザヘッド24Lが位置決めされるごとに、光検出部48で検出される光干渉信号SLの強度が最大(干渉ピーク)となる。換言すると、光検出部48で検出される光干渉信号SLの強度が最大になった場合、レーザヘッド24Lがアライメント位置P0から空間距離Drの整数倍の位置に制御されたことになる。このため、本実施形態では、光コム50を所謂「光のものさし」として用いることにより、レーザヘッド24Lの位置決め精度(位置決め誤差)を測定する。
図14は、レーザヘッド24Lの位置決め制御の説明図である。図14に示すように、最大位置LMは、アライメント位置P0から空間間隔L0の5倍の距離に相当する位置である。個々の空間間隔L0は、既述の空間距離Dr、すなわち光コム50の繰り返し周波数frep(時間間隔TR)の周波数間隔に基づき決定される間隔である。
具体的に空間間隔L0は、空間距離Drの整数倍に相当する間隔である。なお、パルス干渉計44での測定光50A及び参照光50Bの折り返しを考慮した場合、空間間隔L0は、空間距離Drの整数倍に限定されるものではなく、少なくとも空間距離Drの1/2の整数倍に相当する間隔であってもよい。そして、空間間隔L0は、その5倍の値(5×L0)、すなわちアライメント位置P0から最大位置LMまでの距離が、レーザヘッド24Lの移動可能範囲内で最大となるように設定される。空間距離Drとレーザヘッド24Lの移動可能範囲とは既知であるので、アライメント位置P0が定まれば、最大位置LM(空間間隔L0)は自動的に決定することができる。その結果、アライメント位置P0から最大位置LMまでの「第N番目の校正方向」に沿った空間間隔L0ごとの特定位置P1〜P5が規定される。なお、校正方向D1,D2ごとの特定位置P1〜P5についても後述の校正プログラム62Bにより予め規定されている。
レーザヘッド24Lのアライメント完了後、校正プログラム62Bに従って第2駆動部36が駆動されることにより、レーザヘッド24Lがアライメント位置P0から特定位置P1〜P5の各位置に順番に位置決め(すなわち、ステップ移動)される。
そして、本実施形態では、レーザヘッド24Lが特定位置P1〜P5の各位置に順番に位置決めされるごとに、光周波数コム光源42からの光コム50の出射と、走査ステージ58によるリフレクタ57の走査制御と、を行う。なお、光周波数コム光源42からの光コム50の出射は常時行ってもよく、この場合、例えばレーザヘッド24Lが特定位置P1〜P5の各位置に位置決めされるごとに光検出部48による光干渉信号SLの検出を開始するようにしてもよい。
上述の走査制御では、走査ステージ58によりリフレクタ57を予め定めた基準である干渉基準点を中心として一定範囲内で走査する。ここで干渉基準点は、レーザヘッド24Lの位置決め誤差が零となる理想状態において、光検出部48で検出される光干渉信号SLの強度が最大(干渉ピーク)となるリフレクタ57の位置であり、例えば走査ステージ58の略中央位置である。
第2駆動部36を駆動してレーザヘッド24Lを特定位置P1〜P5の各位置に順番に位置決めした場合、特定位置P1〜P5ごとにレーザヘッド24Lの位置決め誤差が生じる。このため、走査ステージ58によりリフレクタ57の走査制御を行って既述の光路差を変化させると、上述の位置決め誤差の方向及び大きさに応じてリフレクタ57が干渉基準点からずれた位置で、光検出部48により検出される光干渉信号SLの強度が最大(干渉ピーク)となる。従って、走査ステージ58によりリフレクタ57の走査制御を行った場合に、光検出部48で検出される光干渉信号SLの強度が最大となるリフレクタ57の位置(干渉基準点からのずれ方向及びずれ量)に基づき、レーザヘッド24Lの位置決め精度を測定することができる。
JIS B7440シリーズでは、既述の特定位置P1〜P5ごとのレーザヘッド24Lの位置決め精度の測定が3回繰り返し行われる。以上で「第N番目の校正方向」に対応するレーザヘッド24Lの位置決め精度(位置決め誤差)の測定が完了する。そして、7方向の校正方向D1,D2の各々について、上述の処理(アライメント、特定位置P1〜P5ごとの位置決め、及び走査制御等)が繰り返し実行される。これにより、JIS B7440シリーズで規定されている三次元測定機10の校正に必要なデータが得られる。
[校正プログラムの作成]
校正プログラム62B(図15参照)は、校正方向D1,D2ごとのレーザヘッド24Lの姿勢、アライメント位置P0、及び特定位置P1〜P5をそれぞれ規定したものである。この校正プログラム62Bは、レーザヘッド24Lの位置決め精度の測定に先立って予め作成された後、コンピュータ60に記憶される。
最初に、校正方向D1,D2ごとのレーザヘッド24L(レーザプローブ47)の姿勢(回転角ψ及び回転角θ)を予めコンピュータ60に記憶しておく。
「第N番目の校正方向」に対応する校正プログラム62B(図15参照)を作成する場合、コンピュータ60に予め記憶された「第N番目の校正方向」に対応するレーザヘッド24Lの回転角ψ及び回転角θに基づき、第1駆動部35を駆動してレーザヘッド24Lの姿勢制御を行う。これにより、レーザヘッド24Lの姿勢が「第N番目の校正方向」に平行になる。
次いで、第2駆動部36を駆動してレーザヘッド24Lを既述のアライメント位置P0へ移動させる。この移動方法は、特に限定されず、手動又は自動で行ってもよく、自動で行う場合には公知の手法を用いることができる。
例えば、定盤14上でのボールレンズ80A,80Bの概略位置が既知である場合、この概略位置に基づき仮のアライメント位置P0を推定し、この仮のアライメント位置P0においてレーザヘッド24LをXYZ軸方向に位置調整しながら光検出部48で光干渉信号SLを検出する。そして、この光干渉信号SLの強度が最大になるレーザヘッド24Lの位置をアライメント位置P0として決定する。
また、公知の手法でボールレンズ80A,80Bの中心座標を検出し、この中心座標と、レーザヘッド24Lの姿勢(回転角ψ及び回転角θ)に基づき、アライメント位置P0を決定してもよい。
レーザヘッド24Lのアライメント位置P0へのアライメント完了後、レーザヘッド24Lの姿勢と、アライメント位置P0と、既述の空間距離Drと、レーザヘッド24Lの移動可能範囲とに基づき、「第N番目の校正方向」に対応する最大位置LM及び空間間隔L0を決定する。これにより、「第N番目の校正方向」に対応する特定位置P1〜P5を決定することができる。その結果、「第N番目の校正方向」に対応したレーザヘッド24Lの姿勢(回転角ψ及び回転角θ)と、アライメント位置P0と、特定位置P1〜P5と、を規定した校正プログラム62B(図15参照)を作成することができる。
以下、全ての校正方向D1,D2について上述の処理を繰り返し行うことで、校正方向D1,D2ごとのレーザヘッド24Lの姿勢、アライメント位置P0、及び特定位置P1〜P5をそれぞれ規定した校正プログラム62B(図15参照)を作成することができる。
[コンピュータ]
図15は、コンピュータ60の機能を示す機能ブロック図である。図15に示すように、コンピュータ60は、駆動コントローラ30を介して三次元測定機10に接続し、且つ校正装置本体40の各部(光周波数コム光源42及び光検出部48)に接続している。このコンピュータ60は、三次元測定機10による被測定物(不図示)の測定を制御する測定制御装置として機能し、且つ校正装置本体40と共に本発明の校正装置として機能する。なお、コンピュータ60の測定制御装置としての機能については公知技術であるので、図15では図示を省略している。
コンピュータ60は、不図示のCPU(central processing unit)及びメモリ等により構成されている。コンピュータ60は、そのCPUが不図示のソフトウェアプログラムを実行することで、統括制御部61、記憶部62、駆動制御部63、光源制御部64、走査制御部65、信号取得部66、及び位置決め精度測定部67として機能する。
統括制御部61は、コンピュータ60の他の各部の動作を制御することにより、三次元測定機10及び校正装置本体40の動作を統括制御する。
記憶部62は、三次元測定機10及び校正装置本体40を制御するためのソフトウェアプログラム(不図示)の他、制御情報62A及び校正プログラム62B等が記憶されている。制御情報62Aは、7方向の校正方向D1,D2にそれぞれ対応したレーザヘッド24Lの姿勢(回転角ψ及び回転角θ)、空間距離Dr(時間間隔TR及び繰り返し周波数frep)、及びレーザヘッド24Lの移動可能範囲等を含む。この制御情報62Aを参照して、統括制御部61は、既述の校正プログラム62Bの作成を行う。
具体的に、統括制御部61は、制御情報62Aに基づき校正方向D1,D2ごとのレーザヘッド24Lの姿勢(回転角ψ及び回転角θ)を取得する。また、統括制御部61は、第2駆動部36の駆動によりレーザヘッド24Lが校正方向D1,D2ごとのアライメント位置P0に移動された場合、このアライメント位置P0と、既述の空間距離Drと、レーザヘッド24Lの姿勢及び移動可能範囲とに基づき、校正方向D1,D2ごとの最大位置LM及び空間間隔L0を決定する。これにより、統括制御部61は、校正方向D1,D2ごとのレーザヘッド24Lの姿勢、アライメント位置P0、及び特定位置P1〜P5をそれぞれ規定した校正プログラム62Bを作成して記憶部62に記憶させる。
駆動制御部63は、駆動コントローラ30を介して第1駆動部35及び第2駆動部36をそれぞれ駆動して、レーザヘッド24Lの姿勢及び位置を制御する。この駆動制御部63は、位置姿勢制御部63Aと位置決め制御部63Bとを含む。
位置姿勢制御部63Aは、本発明の第1制御部として機能する。位置姿勢制御部63Aは、校正プログラム62Bの作成時において、制御情報62Aに含まれるレーザヘッド24Lの姿勢に基づき、駆動コントローラ30を介して第1駆動部35を駆動することにより、既述の図11で説明したレーザヘッド24Lの姿勢制御を行う。次いで、位置姿勢制御部63Aは、自動又は手動により第2駆動部36を駆動して、レーザヘッド24Lを「第N番目の校正方向」に対応したボールレンズ80A,80Bに対するアライメント位置P0に移動させる。
一方、位置姿勢制御部63Aは、レーザヘッド24Lの位置決め精度の測定時において、記憶部62内の校正プログラム62Bに基づき第1駆動部35及び第2駆動部36を駆動して、レーザヘッド24Lの姿勢及び位置を制御することで、「第N番目の校正方向」に対応したボールレンズ80A,80Bに対するレーザヘッド24Lのアライメントを行う。これにより、レーザヘッド24Lの姿勢を「第N番目の校正方向」に平行することができる。また、レーザヘッド24Lの位置を「第N番目の校正方向」に対応したアライメント位置P0にセットすることができる。
位置決め制御部63Bは、本発明の第2制御部に相当するものである。位置決め制御部63Bは、記憶部62内の校正プログラム62Bに基づき、第2駆動部36を駆動して、レーザヘッド24Lを「第N番目の校正方向」に沿ってステップ移動させる。これにより、レーザヘッド24Lが、既述の図14に示したように、アライメント位置P0から「第N番目の校正方向」に沿った空間間隔L0ごとの特定位置P1〜P5(以下、まとめて特定位置PMという:Mは1以上5以下の自然数)に順番に位置決めされる。
光源制御部64は、光周波数コム光源42による光コム50の出射を制御する。光源制御部64は、レーザヘッド24Lが特定位置PMのいずれかに位置決めされるごとに、少なくともリフレクタ57の走査制御が完了するまでの間、光周波数コム光源42から光コム50を出射させる。これにより、レーザヘッド24Lから「第N番目の校正方向」に対応したボールレンズ80A,80Bに向けて測定光50Aが出射され、さらにボールレンズ80A,80Bにて反射された測定光50Aがレーザヘッド24Lに受光される。その結果、光検出部48にて光干渉信号SLが検出される。
走査制御部65は、レーザヘッド24Lが特定位置PMのいずれかに位置決めされるごとに、走査ステージ58を駆動してリフレクタ57の走査制御を行う。これにより、参照光50Bの光路長が変化し、この変化に伴い既述の光路差が変化する。その結果、光検出部48は、レーザヘッド24Lが特定位置PMのいずれかに位置決めされている状態で、且つ少なくともリフレクタ57の走査制御が実行されている間、光干渉信号SLの検出と電気信号の出力とを連続的に行う。
また、走査制御部65は、走査ステージ58上でのリフレクタ57の位置に関する情報、すなわち既述の干渉基準点からのリフレクタ57の位置のずれ方向及びずれ量に関する情報を位置決め精度測定部67へ逐次出力する。
信号取得部66は光検出部48に接続している。光検出部48は、少なくともリフレクタ57の走査制御が実行されている間、光干渉信号SLの検出を連続的に行って、この光干渉信号SLの電気信号を信号取得部66へ出力する。そして、信号取得部66は、光検出部48から取得した電気信号を位置決め精度測定部67へ出力する。
位置決め精度測定部67は、特定位置PMのいずれかへのレーザヘッド24Lの位置決めとリフレクタ57の走査制御とが実行されるごとに、走査制御部65から入力されるリフレクタ57の位置に関する情報と、信号取得部66から入力される電気信号とに基づき、光検出部48で検出される光干渉信号SLの強度が最大(干渉ピーク)となるリフレクタ57の位置を測定する。これにより、特定位置PMごとのレーザヘッド24Lの位置決め精度(位置決め誤差)が測定される。
なお、統括制御部61は、コンピュータ60の各部を制御して、特定位置PMごとのレーザヘッド24Lの位置決め精度の測定を3回繰り返し実行させる。そして、統括制御部61は、コンピュータ60の各部を繰り返し作動させて、7方向の校正方向D1,D2ごとに、上述の処理(アライメント、特定位置PMへの位置決め、走査制御、及び位置決め精度の測定等)を繰り返し実行させる。従って、統括制御部61は、本発明の第3制御部として機能する。
[三次元測定システムの作用]
図16は、上記構成の三次元測定システム9における三次元測定機10の校正処理、より具体的にはレーザヘッド24Lの位置決め精度の測定処理の流れを示すフローチャートである(本発明の校正方法に相当)。
オペレータは、既述のJIS B7440シリーズに従って三次元測定機10の校正、すなわちレーザヘッド24Lの位置決め精度の測定を行う場合、最初に、プローブヘッド24にレーザプローブ47を取り付けてレーザヘッド24Lにする。また、オペレータは、既述の図8等に示したように定盤14の上面に7個のボールレンズ80A,80Bを配置する(ステップS1)。
さらに、オペレータは、コンピュータ60のキーボード等を操作して、既述の制御情報62Aを記憶部62に記憶させる。これにより、7方向のレーザヘッド24Lの姿勢(回転角ψ及び回転角θ)、空間距離Dr(時間間隔TR及び繰り返し周波数frep)、及びレーザヘッド24Lの移動可能範囲等が、コンピュータ60に記憶される(ステップS2)。なお、記憶部62に過去に入力された制御情報62Aが保存されている場合、ステップS2は省略してもよい。次に、校正プログラム62Bの作成処理が開始される(ステップS3)。
図17は、校正プログラム62Bの作成処理の流れを示すフローチャートである。図17に示すように、オペレータがコンピュータ60に対して校正プログラム62Bの作成指示を入力すると、コンピュータ60の位置姿勢制御部63Aは、記憶部62内の制御情報62Aを参照して、「第1番目(N=1)の校正方向」に対応したレーザヘッド24Lの姿勢(回転角ψ及び回転角θ)を取得する。そして、位置姿勢制御部63Aは、取得したレーザヘッド24Lの姿勢に基づき、第1駆動部35を駆動して、レーザヘッド24Lの姿勢を「第1番目の校正方向」に平行にする(ステップS3A,S3B,S3C)。
次いで、位置姿勢制御部63Aは、自動(公知の方法)又は手動で第2駆動部36を駆動して、レーザヘッド24Lを、「第1番目の校正方向」に対応したボールレンズ80A,80Bに対するアライメント位置P0に移動させる(ステップS3D)。
このレーザヘッド24Lの移動が完了すると、統括制御部61は、アライメント位置P0と、空間距離Drと、レーザヘッド24Lの姿勢及び移動可能範囲とに基づき、図14等に示した最大位置LM及び空間間隔L0を決定する(ステップS3E)。これにより、「第1番目の校正方向」に対応した特定位置P1〜P5が統括制御部61により決定される。その結果、「第1番目の校正方向」に対応したレーザヘッド24Lの姿勢、アライメント位置P0、及び特定位置PMが決定する。
以下、同様に「第2番目の校正方向」から「第7番目の校正方向」について、既述のステップS3BからステップS3Fまでの処理の繰り返し実行される(ステップS3FでNO、ステップS3G)。これにより、統括制御部61は、校正方向D1,D2ごとのレーザヘッド24Lの姿勢、アライメント位置P0、及び特定位置PMを定めた校正プログラム62Bを作成し、この校正プログラム62Bを記憶部62に記憶させる(ステップS3FでYES、ステップS3H)。以上で三次元測定機10の校正の準備が完了する。
図16に戻って、オペレータがコンピュータ60にレーザヘッド24Lの位置決め精度の測定開始指示を入力すると、最初に「第1番目(N=1)の校正方向」でのレーザヘッド24Lの位置決め精度の測定が開始される(ステップS4及びステップS5)。
コンピュータ60の位置姿勢制御部63Aは、記憶部62内の校正プログラム62Bに基づき、第1駆動部35及び第2駆動部36をそれぞれ駆動してレーザヘッド24Lの姿勢及び位置を制御することにより、「第1番目の校正方向」に対応したボールレンズ80A,80Bに対してレーザヘッド24Lをアライメントする(ステップS6,S7)。これにより、レーザヘッド24Lの姿勢が「第1番目の校正方向」に平行になり、且つレーザヘッド24Lの位置が「第1番目の校正方向」に対応するアライメント位置P0にセットされる。なお、ステップS7は、本発明の第1工程に相当する。
レーザヘッド24Lのアライメントが完了すると、位置決め制御部63Bは校正プログラム62Bに従って、第2駆動部36を駆動して、レーザヘッド24Lを特定位置P1(M=1)に位置決めする(ステップS8及びステップS9、本発明の第4工程に相当)。
レーザヘッド24Lが特定位置P1に位置決めされると、光源制御部64は、光周波数コム光源42による光コム50の出射を開始させる(ステップS10、本発明の第2工程に相当)。これにより、レーザヘッド24Lから「第1番目の校正方向」に対応したボールレンズ80A,80Bへの測定光50Aの出射と、レーザヘッド24Lによる測定光50Aの反射光の受光と、パルス干渉計44から光検出部48への光干渉信号SLの出力と、光検出部48による光干渉信号SLの検出(電気信号の出力)とが開始される(本発明の第3工程に相当)。
一方、走査制御部65は、レーザヘッド24Lが特定位置P1に位置決めされると、走査ステージ58を駆動してリフレクタ57を、干渉基準点を中心として一定範囲内で走査する走査制御を実行する(ステップS11、本発明の第5工程に相当)。またこの際に、走査制御部65は、走査ステージ58上でのリフレクタ57の位置に関する情報を位置決め精度測定部67へ逐次出力する。
また同時に、光検出部48は、少なくともリフレクタ57の走査制御が実行されている間、光干渉信号SLを連続的に検出して、その検出結果である電気信号を信号取得部66へ出力する。そして、信号取得部66は、光検出部48から取得した電気信号を位置決め精度測定部67へ逐次出力する(ステップS11、本発明の第6工程に相当)。
位置決め精度測定部67は、リフレクタ57の走査制御が完了すると、走査制御部65から入力されるリフレクタ57の位置に関する情報と、信号取得部66から入力される電気信号とに基づき、光干渉信号SLの強度が最大(干渉ピーク)となるリフレクタ57の位置を判別する。位置決め精度測定部67は、判別したリフレクタ57の位置(干渉基準点からのずれ方向及びずれ量)に基づき、「第1番目の校正方向」の特定位置P1でのレーザヘッド24Lの位置決め精度(位置決め誤差)を測定する(ステップS12、本発明の第8工程に相当)。
「第1番目の校正方向」の特定位置P1でのレーザヘッド24Lの位置決め精度の測定が完了すると、位置決め制御部63Bは、第2駆動部36を駆動して、レーザヘッド24Lを特定位置P2(M=2)に位置決めする(ステップS13でNO、ステップS14、及びステップS9)。そして、既述のステップS10からステップS12までの処理が繰り返し実行されることにより、「第1番目の校正方向」の特定位置P2でのレーザヘッド24Lの位置決め精度が測定される。
以下、同様に「第1番目の校正方向」の特定位置P3〜P5でのレーザヘッド24Lの位置決め精度がそれぞれ測定される。なお、図示は省略するが、特定位置P1〜P5でのレーザヘッド24Lの位置決め精度の測定は3回繰り返し実行される。
3回目の特定位置P5でのレーザヘッド24Lの位置決め精度の測定が完了すると、「第2番目(N=2)の校正方向」でのレーザヘッド24Lの位置決め精度の測定が開始される(ステップS13でYES、ステップS15でNO、ステップS16、本発明の第7工程に相当)。このように第1駆動部35及び第2駆動部36を制御してレーザヘッド24Lの姿勢及び位置を変えるだけで「第2番目の校正方向」でのレーザヘッド24Lの位置決め精度の測定を開始することができるので、オペレータによる段取り替えを省略することができる。そして、既述のステップS5からステップS15までの処理が繰り返し実行されることで、「第2番目の校正方向」の特定位置P1〜P5でのレーザヘッド24Lの位置決め精度の測定が行われる。
以下同様に、「第3番目の校正方向」から「第7番目の校正方向」の各々について、特定位置P1〜P5でのレーザヘッド24Lの位置決め精度が測定される(ステップS15でYES、本発明の第7工程に相当)。
以上でJIS B7440シリーズの規定に従った三次元測定機10の校正に必要な測定データが得られる。オペレータは、得られた測定データに基づき、三次元測定機10の校正を必要に応じて行う。なお、具体的な校正手法は公知技術であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
[本実施形態の効果]
本実施形態では、三次元測定機10のXYZ軸方向に移動自在な可動部(Zキャリッジ22)に設けられたレーザヘッド24Lを設けることにより、定盤14上に配置された7個のボールレンズ80A,80Bの各々に対するレーザヘッド24Lのアライメントを、第1駆動部35及び第2駆動部36を駆動することにより実行できる。
このため、定盤14上にパルス干渉計44を配置し且つレーザヘッド24Lにボールレンズ80A,80Bを取り付ける従来技術では、校正方向ごとにオペレータが定盤14上でのパルス干渉計44等の配置変更を行い、その都度、アライメントを行う所謂「段取り替え」を行う必要があるが、本実施形態では段取り替えを省略することができる。その結果、校正方向D1,D2ごとの校正(測定)に要する時間が短縮される。このため、校正方向D1,D2ごとのレーザヘッド24Lの位置決め精度をほぼ同一条件(同じ環境)で行うことができる。また、パルス干渉計44の配置変更等により生じる誤差の発生が抑えられる。
また、本実施形態では、上記非特許文献3とは異なりレーザヘッド24Lを複数設ける必要がないので、測定光50Aの光量が分散されず光干渉信号SLの信号強度が確保される。その結果、安定した測定が可能となり、三次元測定機10の大きさに関係なく安定したシステムを構築できる。
さらに本実施形態では、光コム50を光源とするパルス干渉計44を用いることで、位置決め精度の測定を高精度に行うことができる。また、測定光50A及び参照光50Bの光路として光ファイバーケールの利用が可能となり、三次元測定機10の可動部(制御軸)に取り付け可能な大きさにレーザヘッド24Lを小型化することができる。
以上の通り、本実施形態では、三次元測定機10の大きさに関係なく、段取り替えの省略と、校正の高精度化及び時間短縮と、を実現することができる。
さらにまた、本実施形態では、校正プログラム62Bに従って第1駆動部35及び第2駆動部36を駆動することにより、既述の図16に示したステップS4以降の一連の校正作業(7方向のレーザヘッド24Lの位置決め精度の測定)を自動且つ連続して行う、すなわち全自動で行うことができる。その結果、より校正に要する時間が短縮される。
[その他]
上記実施形態では、パルス干渉計44の一例を図4に示したが、パルス干渉計44の構成は適宜変更してもよい。また、パルス干渉計44の代わりに、光コム50を用いたブロードスペクトル干渉計を本発明の干渉光学系として用いてもよい。
上記実施形態の光路差可変部54は、走査ステージ58によるリフレクタ57の走査制御により参照光50Bの光路長を変化させることで既述の光路差を変化させているが、参照光50Bの光路長を変化させることが可能であれば光路差可変部54の構成は適宜変更してもよい。また、参照光50Bの光路長を変化させる代わりに、測定光50Aの光路長を変化させることにより、既述の光路差を変化させてもよい。
上記実施形態では、コンピュータ60が三次元測定機10と別体に設けられているが、コンピュータ60が三次元測定機10と一体に設けられていてもよい。また、三次元測定システム9の各部は同じ場所に設けられている必要はなく、例えば、光周波数コム光源42、エタロン43、及びパルス干渉計44等(或いは光周波数コム光源42のみ)が、三次元測定機10とは異なる場所に設けられていてもよい。これにより、校正装置本体40と、別の場所(例えば数km離れた位置)にある工場などに配置された三次元測定機10のレーザヘッド24Lとを光通信接続して、工場内の三次元測定機10を校正する場合にも本発明を適用可能である。光ファイバーケーブルC4,C5を数kmにわたって延長することにより、異なる場所・建物に存在する三次元測定機10を校正することができる。
上記実施形態では、被校正装置として三次元測定機10を例に挙げて説明を行ったが、三次元測定機10に限定されることなく、各種の測定機(座標測定機)及び工作機械等の複数方向に変位自在な各種可動部を有する被校正装置の校正に本発明を適用することができる。この場合、被校正装置の種類及び校正の規格等に応じて、校正方向の数(反射体の数、配置パターン、及び被校正装置内での配置場所)及び特定位置の数を適宜変更する。