以下、本発明の電力中継装置、送電器、受電器、及び、送受電システムを適用した実施の形態について説明する。
<実施の形態>
図1は、実施の形態の電力伝送システム50のコイルの構成を示す図である。電力伝送システム50は、交流電源1、一次側(送電側)の送電器100、及び二次側(受電側)の受電器80を含む。電力伝送システム50は、送電器100及び受電器80を複数含んでもよい。
送電器100は、一次側コイル11と一次側共振コイル12を有する。受電器80は、二次側共振コイル81と二次側コイル82を有する。二次側コイル82には負荷装置30が接続される。
図1に示すように、送電器100及び受電器80は、一次側共振コイル(LC共振器)12と二次側共振コイル(LC共振器)81の間の磁界共鳴(磁界共振)により、送電器100から受電器80へエネルギー(電力)の伝送を行う。ここで、一次側共振コイル12から二次側共振コイル81への電力伝送は、磁界共鳴だけでなく電界共鳴(電界共振)等も可能であるが、以下の説明では、主として磁界共鳴を例として説明する。
また、実施の形態では、一例として、交流電源1が出力する交流電圧の周波数が6.78MHzであり、一次側共振コイル12と二次側共振コイル81の共振周波数が6.78MHzである場合について説明する。
なお、一次側コイル11から一次側共振コイル12への電力伝送は電磁誘導を利用して行われ、また、二次側共振コイル81から二次側コイル82への電力伝送も電磁誘導を利用して行われる。
次に、図2を用いて、実施の形態の受電器80と送電器100について説明する。図2は、実施の形態の受電器80と送電器100を示す図である。
送電器100は、交流電源1、一次側コイル11、一次側共振コイル12、整合回路13、キャパシタ14、制御部110、メタマテリアル120、及び位置検出部130を有する。交流電源1は、図1に示すものと同様である。
ここで、制御部110とメタマテリアル120は、実施の形態の電力中継装置を構築する。すなわち、送電器100は、実施の形態の電力中継装置を含んでいる。また、受電器80と送電器100は、実施の形態の送受電システムを構築する。
受電器80は、二次側共振コイル81、二次側コイル82、整流回路83、平滑キャパシタ84、出力端子86A、86Bを含む。出力端子86A、86Bには、DCDCコンバータ210が接続されており、DCDCコンバータ210の出力側にはバッテリ220が接続されている。図2では、負荷回路はバッテリ220である。
図2に示すように、一次側コイル11は、ループ状のコイルであり、両端間に整合回路13を介して交流電源1に接続されている。一次側コイル11は、一次側共振コイル12と非接触で近接して配置されており、一次側共振コイル12と電磁界結合される。一次側コイル11は、自己の中心軸が一次側共振コイル12の中心軸と一致するように配設される。中心軸を一致させるのは、一次側コイル11と一次側共振コイル12との結合強度を向上させるとともに、磁束の漏れを抑制して、不必要な電磁界が一次側コイル11及び一次側共振コイル12の周囲に発生することを抑制するためである。
一次側コイル11は、交流電源1から整合回路13を経て供給される交流電力によって磁界を発生し、電磁誘導(相互誘導)により電力を一次側共振コイル12に送電する。
図2に示すように、一次側共振コイル12は、一次側コイル11と非接触で近接して配置されて一次側コイル11と電磁界結合されている。一次側共振コイル12と一次側コイル11との間隔は、一例として、数ミリメートルから数十センチメートル程度である。
また、一次側共振コイル12は、所定の共振周波数を有し、高いQ値を有するように設計されている。一次側共振コイル12の共振周波数は、二次側共振コイル81の共振周波数と等しくなるように設定されている。一次側共振コイル12の両端の間に、共振周波数を調整するためのキャパシタ14が直列に接続される。
一次側共振コイル12の共振周波数は、交流電源1が出力する交流電力の周波数と同一の周波数になるように設定されている。一次側共振コイル12の共振周波数は、一次側共振コイル12のインダクタンスと、キャパシタ14の静電容量によって決まる。このため、一次側共振コイル12のインダクタンスと、キャパシタ14の静電容量は、一次側共振コイル12の共振周波数が、交流電源1から出力される交流電力の周波数と同一の周波数になるように設定されている。
整合回路13は、一次側コイル11、一次側共振コイル12、二次側共振コイル81、及び二次側コイル82と交流電源1とのインピーダンス整合を取るために挿入されており、インダクタLとキャパシタCを含む。なお、一次側コイル11、一次側共振コイル12、二次側共振コイル81、及び二次側コイル82と交流電源1のインピーダンスが近い値の場合には、整合回路13を設けなくてもよい。
交流電源1は、磁界共鳴に必要な周波数の交流電力を出力する電源であり、出力電力を増幅するアンプを内蔵する。交流電源1は、例えば、数十kHzから数十MHz程度の高周波の交流電力を出力する。
キャパシタ14は、一次側共振コイル12の両端の間に、直列に挿入されるキャパシタである。キャパシタ14は、一次側共振コイル12の共振周波数を調整するために設けられる。
制御部110は、交流電源1の出力電圧及び出力周波数の制御等を行う。また、制御部110は、位置検出部130で検出される二次側共振コイル81の位置に基づいて、メタマテリアル120の比透磁率の分布を調整する制御処理を行う。
メタマテリアル120は、一次側共振コイル12の送電側(二次側共振コイル81が位置する側)に配置され、一次側共振コイル12から出力される電力を二次側共振コイル81に中継する。メタマテリアル120は、マトリクス状に配列される複数の共振コイルを有する。ここでは、メタマテリアル120の表面は、複数の共振コイルがマトリクス状に配列される平面と平行であるものとする。
メタマテリアル120は、平面視で矩形状であり、平面視でのサイズは、一次側共振コイル12及び二次側共振コイル81の平面視でのサイズよりも大きい。メタマテリアル120は、メタマテリアル120の表面が一次側共振コイル12の平面と平行になり、かつ、一次側共振コイル12の中心軸が、平面視で矩形状のメタマテリアル120の中心を通るように配設される。
また、メタマテリアル120と一次側共振コイル12との間の間隔は、メタマテリアル120が一次側共振コイル12から出力される電力を効率的に中継できる間隔に設定されている。ここでは、一例として、メタマテリアル120と一次側共振コイル12との間の間隔は、数十センチメートル以下である。このように、メタマテリアル120と一次側共振コイル12は、互いにとって最適な位置に配置されており、この位置関係は固定されている。
メタマテリアル120は、位置検出部130によって検出される二次側共振コイル81の位置に応じて、表面に平行な平面内における比透磁率の分布を調整することができる。メタマテリアル120によって表面に平行な平面内における比透磁率の分布が調整されると、メタマテリアル120から出力される磁束が収束される位置をメタマテリアル120の表面に平行な平面内で調整することができる。
これにより、メタマテリアル120は、二次側共振コイル81の位置に磁束を誘導することができ、受電器80は、一次側共振コイル12から出力され、メタマテリアル120によって中継される電力を二次側共振コイル81で効率的に受電することができる。
このようなメタマテリアル120の制御は、制御部110によって行われる。メタマテリアル120の構成の詳細については、図3を用いて後述する。
位置検出部130は、メタマテリアル120に対する二次側共振コイル81の位置を検出する。位置検出部130が検出する二次側共振コイル81の位置は、メタマテリアル120に対する相対的な位置である。このように位置を検出する場合には、メタマテリアル120の基準点(例えば、表面の中心)に対する、二次側共振コイル81の基準点(例えば、コイルの中心)の位置を検出すればよい。
ここでは、メタマテリアル120と一次側共振コイル12は、互いにとって最適な位置に配置されているため、位置検出部130が、メタマテリアル120に対する二次側共振コイル81の位置を検出する形態について説明する。
一次側共振コイル12と二次側共振コイル81の中心軸同士が一致せず、一次側共振コイル12の位置に対する二次側共振コイル81の位置がずれている場合には、メタマテリアル120のうち、二次側共振コイル81に近い部分に磁束が誘導されるようにメタマテリアル120の比透磁率を制御すれば、二次側共振コイル81の受電効率を最大にすることができる。このような理由から、送電器100は、位置検出部130によって、メタマテリアル120に対する二次側共振コイル81の位置を検出する。
なお、上述のように、メタマテリアル120と一次側共振コイル12は、互いにとって最適な位置に配置されているため、位置検出部130が、メタマテリアル120に対する二次側共振コイル81の位置を検出することは、位置検出部130が、一次側共振コイル12に対する二次側共振コイル81の位置を検出することと同義である。
また、ここでは、メタマテリアル120の中心と一次側共振コイル12の中心軸とが一致している場合について説明するが、メタマテリアル120の中心と一次側共振コイル12の中心軸とがずれている場合には、位置検出部130は、メタマテリアル120に対する、一次側共振コイル12及び二次側共振コイル81の位置を検出すればよい。このように位置を検出する場合には、メタマテリアル120の基準点(例えば、表面の中心)に対する、一次側共振コイル12及び二次側共振コイル81の基準点(例えば、コイルの中心)の位置を検出すればよい。
位置検出部130としては、例えば、赤外線センサ若しくはレーザーセンサ等の光学センサ、又は、ホールセンサ等の磁気センサを用いることができる。また、位置検出部130としてカメラを用い、カメラで取得した画像に対して制御部110が画像処理を行うことによって、二次側共振コイル81の位置を検出してもよい。
なお、画像処理で位置を検出する場合には、カメラは受電器80に設けられていてもよい。受電器80の制御部又は制御部110で画像処理を行って、メタマテリアル120に対する二次側共振コイル81の位置を検出すればよい。この場合に、受電器80と送電器100との間で無線通信を行って、必要なデータの送受信を行えばよい。
また、二次側共振コイル81の位置を検出する代わりに、受電器80の位置を検出し、検出した受電器80の位置から、二次側共振コイル81の位置を割り出してもよい。例えば、二次側共振コイル81の位置を検出することが困難である場合には、受電器80の中における二次側共振コイル81の位置を表すデータを制御部110が保持しておき、制御部110が位置検出部130の出力に基づいて受電器80の位置を検出し、検出した受電器80の位置から二次側共振コイル81の位置を求めればよい。
以上のような送電器100は、交流電源1から一次側コイル11に供給される交流電力を磁気誘導により一次側共振コイル12に送電し、一次側共振コイル12から磁界共鳴により電力をメタマテリアル120に出力する。
制御部110は、位置検出部130で検出される二次側共振コイル81の位置に応じて、二次側共振コイル81の位置における磁束密度が高くなるように、メタマテリアル120の比透磁率の分布を調整する。メタマテリアル120から出力される電力は、磁界共鳴を保持した状態で、受電器80の二次側共振コイル81によって受電される。
なお、送電器100は、一次側コイル11を含まずに、整合回路13と一次側共振コイル12が直接接続される構成であってもよい。
二次側共振コイル81は、一次側共振コイル12と同一の共振周波数を有し、高いQ値を有するように設計されている。二次側共振コイル81の一対の端子は、コンデンサ81Aに接続されている。二次側共振コイル81は、二次側コイル82と電磁界結合しており、電磁誘導によって電力を二次側コイル82に伝送する。二次側共振コイル81は、送電器100の一次側共振コイル12から磁界共鳴によって送電される交流電力を電磁誘導によって二次側コイル82に伝送する。二次側共振コイル81は、図1に示す二次側共振コイル81に相当する。
二次側コイル82は、一対の端子が整流回路83に接続されており、二次側共振コイル81から電磁誘導で受電した電力を整流回路83に出力する。
整流回路83は、4つのダイオード83A〜83Dを有する。ダイオード83A〜83Dは、ブリッジ状に接続されており、二次側コイル82から入力される電力を全波整流して出力する。
平滑キャパシタ84は、整流回路83の出力側に接続されており、整流回路83で全波整流された電力を平滑化して直流電力として出力する。平滑キャパシタ84の出力側には、出力端子86A、86Bが接続される。整流回路83で全波整流された電力は、交流電力の負成分を正成分に反転させてあるため、略直流電力として取り扱うことができるが、平滑キャパシタ84を用いることにより、全波整流された電力にリップルが含まれるような場合でも、安定した直流電力を得ることができる。
DCDCコンバータ210は、出力端子86A、86Bに接続される入力端子210A、210Bを有し、受電器80から出力される直流電力の電圧をバッテリ220の定格電圧に変換して出力する。
DCDCコンバータ210は、一例として、降圧型のDCDCコンバータであり、整流回路83を介して供給される受電電力の電圧値(入力電圧)をバッテリ220の定格電圧に降圧してバッテリ220に供給する。降圧型のDCDCコンバータを用いるのは、昇圧型及び昇降圧型のDCDCコンバータに比べると、降圧型は電流値が比較的低く小型であり、小型軽量化が求められる受電器80に向いているからである。
バッテリ220は、繰り返し充電が可能な二次電池であればよく、例えば、リチウムイオン電池を用いることができる。例えば、受電器80がタブレットコンピュータ又はスマートフォン等の電子機器に内蔵される場合は、バッテリ220は、このような電子機器のメインのバッテリである。
なお、一次側コイル11、一次側共振コイル12、二次側共振コイル81、二次側コイル82は、例えば、銅線を巻回することによって作製される。しかしながら、一次側コイル11、一次側共振コイル12、二次側共振コイル81、二次側コイル82の材質は、銅以外の金属(例えば、金、アルミニウム等)であってもよい。また、一次側コイル11、一次側共振コイル12、二次側共振コイル81の材質は異なっていてもよい。
このような構成において、一次側コイル11及び一次側共振コイル12が電力の送電側であり、二次側共振コイル81が電力の受電側である。
磁界共鳴方式によって、一次側共振コイル12と二次側共振コイル81との間で生じる磁界共鳴を利用して送電側から受電側に電力を伝送するため、送電側から受電側に電磁誘導で電力を伝送する電磁誘導方式よりも長距離での電力の伝送が可能である。
図3は、メタマテリアル120を示す図である。図3では、XYZ座標系を定義する。メタマテリアル120は、マトリクス状に(XY平面的に)配列される複数の共振コイル121を有する。メタマテリアル120の表面は、複数の共振コイル121がマトリクス状に配列されるXY平面と平行である。共振コイル121の数は、例えば、X軸方向に数十個で、Y軸方向に数十個である。
図3では、共振コイル121の配列を示すために、メタマテリアル120の構成要素のうちの共振コイル121以外のものを省略するが、メタマテリアル120は、共振コイル121の他に、すべての共振コイル121を収容する筐体、及び、すべての共振コイル121のスイッチ121Bを制御するための制御線等を有する。
共振コイル121は、コイル部121Aとスイッチ121Bを有する。コイル部121Aは、ループコイルであり、両端にスイッチ121Bが挿入されている。スイッチ121Bは、共振コイル121のループの接続/遮断を切り替えるスイッチであり、例えば、FET(Field Effect Transistor)のような半導体スイッチを用いることができる。
スイッチ121Bがオンになってコイル部121Aの両端を接続した状態では、共振コイル121はオンの状態(共振電流が通流可能な状態)であり、スイッチ121Bがオフになってコイル部121Aの両端を遮断した状態では、共振コイル121はオフの状態(共振電流が通流不可能な状態)である。共振コイル121がオンの状態で、一次側コイル11から磁界共鳴による電力が送電されると、共振コイル121には共振電流が流れる。
一例として、一次側共振コイル12及び二次側共振コイル81の磁界共鳴の共振周波数が6.78MHzである場合には、共振コイル121の共振周波数は、磁界共鳴の共振周波数よりも少し低い周波数(例えば、6MHz)に設定される。すなわち、一次側コイル11から磁界共鳴による6.78MHzの電力が送電されると、共振コイル121にはその共振点である6MHzよりも少し高い周波数の電流が流れる。
スイッチ121Bのオン/オフを切り替えることによって、共振コイル121のオン/オフを切り替えることができる。共振コイル121のオン/オフを切り替えることは、共振状態を変えることの一例である。
なお、共振コイル121は、共振周波数を調整するために、コイル部121Aの両端間に挿入されるキャパシタを有するが、ここでは省略する。
図4は、メタマテリアル120の比透磁率の周波数特性を示す図である。横軸は周波数を表し、縦軸はメタマテリアル120の比透磁率μを表す。
メタマテリアル120の比透磁率μは、共振コイル121の共振周波数frよりも少し低い周波数帯で極大値を有し、共振周波数frよりも少し高い周波数帯で極小値を有する。比透磁率μの極小値は、負の値であり、極小値を取る周波数をf1とする。周波数f1よりも高くなると、比透磁率μは再び正の値を取る周波数特性である。
図5は、メタマテリアル120のレンズ効果を説明する図である。図5では、図3と同一のXYZ座標系を用いる。一次側共振コイル12と二次側共振コイル81のXY平面内での位置は、メタマテリアル120の中心と一致している。
メタマテリアル120の共振コイル121は、周波数f1が6.78MHzになるように周波数特性が設定されている。メタマテリアル120の比透磁率μは、周波数f1において負の値の極小値になるため、メタマテリアル120が一次側共振コイル12と二次側共振コイル81との間で6.78MHzの電力を中継すると、レンズ効果によって磁界が収束される。
例えば、すべての共振コイル121をオンにすると、メタマテリアル120の比透磁率μは、負の値で平面的に一様になる。図5(A)には、メタマテリアル120の比透磁率μが一様な状態を表すために、メタマテリアル120をグレーで示す。
図5(A)に示すように、メタマテリアル120の比透磁率μが負の値で平面的に一様になると、一次側共振コイル12から出力される磁界は、メタマテリアル120のレンズ効果によって、メタマテリアル120に左側から入射すると、メタマテリアル120の厚さ(図中の左右方向の厚さ)の中間付近で収束し、メタマテリアル120の右側から出射する際に、再び収束して二次側共振コイル81に向かう。このようなレンズ効果が得られるのは、メタマテリアル120の比透磁率μが負の値に設定されているからである。
次に、図5(B)を用いて、メタマテリアル120のうちのX軸負方向側の半分に含まれる共振コイル121の一部をオフ(残りの一部をオン)にし、X軸正方向側の半分に含まれるすべての共振コイル121をオンにする場合について説明する。
メタマテリアル120のうちのX軸負方向側の半分に含まれる共振コイル121の一部をオフ(残りの一部をオン)にすることにより、メタマテリアル120のX軸負方向側の半分の部分における比透磁率μは負の値であるが、メタマテリアル120に含まれるすべての共振コイル121をオンにする場合に比べて絶対値が小さくなる。
また、メタマテリアル120のX軸正方向側の半分のすべての共振コイル121をオンにすることにより、メタマテリアル120のX軸正方向側の半分の部分における比透磁率μは、メタマテリアル120に含まれる共振コイル121をオンにする場合と同様に、絶対値の大きな負の値を取る。
このため、メタマテリアル120の比透磁率μの分布は、X軸負方向側からX軸正方向側にかけて、徐々に絶対値が大きくなる負の値になる。図5(B)では、比透磁率μの絶対値が小さい部分を薄いグレーで示し、比透磁率μの絶対値が大きい部分を濃いグレーで示すことにより、XY平面での比透磁率μの分布を表す。
例えば、図5(B)に示すように、二次側共振コイル81の位置が、メタマテリアル120のXY平面の中心に対してX軸正方向側にずれた場合には、メタマテリアル120のX軸正方向側における比透磁率μを絶対値の大きな負の値に設定する。
このようにすれば、一次側共振コイル12から出力される磁界は、メタマテリアル120のレンズ効果によって、メタマテリアル120に左側から入射すると、X軸正方向側に向かいながらメタマテリアル120の厚さの中間付近で収束し、メタマテリアル120の右側から出射する際に、X軸正方向側に向かいながら再び収束して二次側共振コイル81に向かう。
このように、メタマテリアル120のXY平面での比透磁率μの分布を調整することにより、一次側共振コイル12から出力される磁界が収束する方向(磁束が誘導される方向)を調節することができる。
図6は、メタマテリアル120の比透磁率μに分布を設けるための共振コイル121の駆動状態の一例を示す図である。図6には、図3及び図5と同一のXYZ座標系を示す。また、図6では、共振コイル121を円で示し、オンにされている共振コイル121を黒い円で示し、オフにされている共振コイル121を薄いグレーの円で示す。
図6に示すように、X軸方向における中央よりもX正方向側の半分の領域では、すべての共振コイル121をオンにし、X軸方向における中央よりもX軸負方向側の半分の領域では、一部の共振コイル121をオンにする(残りの一部の共振コイル121はオフにする)。一部の共振コイル121をオンにすることは、オンにする共振コイル121を間引くことである。
このようにすることで、メタマテリアル120の比透磁率μに、X軸方向における分布を持たせることができる。なお、図6では、メタマテリアル120の比透磁率μにX軸方向の分布を設ける場合の駆動状態について説明したが、X負方向側のすべての共振コイル121をオンにし、X軸正方向側で一部の共振コイル121をオンに(残りの一部の共振コイル121はオフに)すれば、X軸方向における比透磁率μの分布を逆にすることができる。
また、Y軸方向において共振コイル121のオン/オフに分布を持たせれば、比透磁率μにY軸方向の分布を持たせることができる。さらに、XY平面内において、ある特定の部分の比透磁率μの絶対値を大きくしたい場合には、その特定の部分に含まれるすべての共振コイル121をオンにし、残りの部分の共振コイル121のうちの一部をオフにすればよい。
図7は、一次側共振コイル12と二次側共振コイル81の位置関係と、二次側共振コイル81の受電効率ηとを示す図である。一次側共振コイル12と二次側共振コイル81の位置関係は、図3、5、6と同一のXYZ座標系で示す。
図7(A1)、(A2)には、比較用に、メタマテリアル120を用いずに、一次側共振コイル12から二次側共振コイル81に電力を伝送する場合の位置関係と受電効率とを示す。
また、図7(B1)、(B2)には、比較用に、メタマテリアル120の比透磁率の分布を負の一定の値に設定して、一次側共振コイル12から二次側共振コイル81に電力を伝送する場合の位置関係と受電効率とを示す。メタマテリアル120の比透磁率の分布を負の一定の値に設定するには、例えば、すべての共振コイル121をオンにすればよい。
また、図7(C1)、(C2)には、メタマテリアル120に対する二次側共振コイル81の位置に応じてメタマテリアル120の比透磁率の分布を設定した場合において、一次側共振コイル12から二次側共振コイル81に電力を伝送する場合の位置関係と受電効率とを示す。メタマテリアル120の比透磁率は、二次側共振コイル81に近いほど絶対値が大きい負の値に設定され、二次側共振コイル81から遠いほど絶対値が小さい負の値に設定される。
ここでは、一例として、平面視でメタマテリアル120の表面の中心と二次側共振コイル81の中心軸とが一致していない場合に、メタマテリアル120に対する二次側共振コイル81の位置に応じてメタマテリアル120の比透磁率の分布を制御することとする。
なお、図7(B1)、(B2)、(C1)、(C2)において、比透磁率を負の値に設定するのは、メタマテリアル120のレンズ効果を得るためである。
図7(A1)、(B1)、(C1)では、平面視でメタマテリアル120の表面の中心と二次側共振コイル81の中心軸とは一致している。すなわち、一次側共振コイル12と二次側共振コイル81の中心軸同士が一致しており、メタマテリアル120に対する二次側共振コイル81の位置ずれがない状態である。また、図7(A2)、(B2)、(C2)では、平面視でメタマテリアル120の表面に対して、二次側共振コイル81の中心軸はX軸正方向側にずれている。
図7(A1)に示すように、メタマテリアル120を用いずに、一次側共振コイル12と二次側共振コイル81の中心軸同士が一致している状態では、二次側共振コイル81の受電効率ηは、一次側共振コイル12の中心軸上で最も高く、X軸方向にずれるに従って低下する。このため、図7(A1)のように、メタマテリアル120を用いない場合には、一次側共振コイル12と二次側共振コイル81の中心軸同士が一致している状態において、二次側共振コイル81の受電効率ηが最大になる。
また、図7(A2)に示すように、メタマテリアル120を用いずに、一次側共振コイル12に対して二次側共振コイル81がX軸正方向側にずれている状態では、図7(A1)に示す状態に比べて、二次側共振コイル81の受電効率ηは低下する。
また、図7(B1)に示すように、メタマテリアル120の比透磁率の分布を一様にして、一次側共振コイル12と二次側共振コイル81の中心軸同士が一致している状態では、二次側共振コイル81の受電効率ηは、一次側共振コイル12の中心軸上で最も高く、X軸方向にずれるに従って低下する。
この場合の受電効率ηは、図7(A1)に示すようにメタマテリアル120を用いない場合に比べて、一次側共振コイル12の中心軸上において高くなる。また、X軸方向において一次側共振コイル12の中心軸から離れるに従って、図7(A1)に示すようにメタマテリアル120を用いない場合に比べて低くなる。これは、メタマテリアル120のレンズ効果によって、メタマテリアル120の中心側で磁束密度が高くなるためである。
このため、図7(B1)のように、負の値の比透磁率の分布が一様のメタマテリアル120を用いる場合には、一次側共振コイル12と二次側共振コイル81の中心軸同士が一致している状態において、二次側共振コイル81の受電効率ηが最大になる。
また、図7(B2)に示すように、負の値の比透磁率の分布が一様のメタマテリアル120を用いて、一次側共振コイル12に対して二次側共振コイル81がX軸正方向側にずれている状態では、図7(B1)に示す状態に比べて、二次側共振コイル81の受電効率ηは低下する。
また、図7(C1)では、一次側共振コイル12と二次側共振コイル81の中心軸同士が一致している。この状態では、メタマテリアル120の比透磁率の分布を一様に設定する。このため、図7(B1)に示す状態と同様に、二次側共振コイル81の受電効率ηは、一次側共振コイル12の中心軸上で最も高く、X軸方向にずれるに従って低下する。
また、図7(C2)では、一次側共振コイル12に対して二次側共振コイル81がX軸正方向側にずれているため、メタマテリアル120の比透磁率の分布を二次側共振コイル81の位置に応じて制御する。ここでは、比透磁率の値が負で絶対値が大きい部分ほど濃いグレーで示し、比透磁率の値が負で絶対値が小さい部分ほど薄いグレーで示す。
図7(C2)に示すように、一次側共振コイル12に対して二次側共振コイル81がX軸正方向側にずれていても、二次側共振コイル81に近い部分の比透磁率の負の値の絶対値を大きくし、二次側共振コイル81から離れている(遠い)部分の比透磁率の負の値の絶対値を小さくするので、磁束を二次側共振コイル81に近い部分に誘導することができる。
このため、二次側共振コイル81の受電効率ηは、一次側共振コイル12の中心軸上で最も高く、X軸方向にずれるに従って低下する。
メタマテリアル120の比透磁率は負の値であり、X軸の中央で最も絶対値が大きく、両端に向かって絶対値が小さくなるように分布しているため、X軸の中央における二次側共振コイル81の受電効率ηは、図7(C1)及び図7(B1)に示す受電効率ηと同等にすることができる。
なお、図7(C2)に示すように、二次側共振コイル81に近い部分の比透磁率の負の値の絶対値を大きくし、二次側共振コイル81から離れている(遠い)部分の比透磁率の負の値の絶対値を小さくするためには、例えば、図6に示すように共振コイル121を駆動すればよい。
図6では、X軸方向における中央よりもX正方向側の半分の領域では、すべての共振コイル121をオンにし、X軸方向における中央よりもX軸負方向側の半分の領域では、一部の共振コイル121をオンにするが、このように共振コイル121のオン/オフを区分する領域の境界は、X軸方向における中央に限られない。
共振コイル121のオン/オフを区分する領域の境界は、メタマテリアル120に対する二次側共振コイル81の位置に応じて決めればよい。また、オンにする共振コイル121を間引く際には、段階的に間引くようにしてもよい。例えば、X軸方向に数十個配列される共振コイル121を数個ずつのグループに分け、グループ毎に間引く数を段階的に増やすことによって、X軸方向における比透磁率の分布が緩やかに変化するようにしてもよい。
また、すべての共振コイル121をオンにするグループは、二次側共振コイル81の中心軸のX軸方向における位置を含むグループとして、当該グループよりもX軸正方向側のグループにおいてオンにする共振コイル121の数をX軸正方向に向かって段階的に減らすようにしてもよい。
例えば、メタマテリアル120のX軸正方向に30個の共振コイル121が配列されていて、X軸方向に3個ずつの10個のグループに分けた場合に、二次側共振コイル81の中心軸がX軸負方向側から7個目のグループの位置に含まれる場合には、次のようにすればよい。すなわち、X軸負方向側から7個目のグループの位置に含まれるすべての共振コイル121をオンにし、X軸負方向側から6個目から1個目のグループについては、この順にオンにする共振コイル121の数を減らせばよい。同様に、X軸負方向側から8個目から10個目のグループについては、この順にオンにする共振コイル121の数を減らせばよい。
図8は、送電器100及び受電器80の適用例を示す図である。ここでは、車両500の底部に受電器80が取り付けられており、路面側に送電器100が配置されている場合について説明する。なお、ここでは、送電器100及び受電器80のうちの主な構成要素のみを示す。
図8(A1)、(A2)、(A3)には、駐車場の駐車スペースの路面に送電器100が配置されている場合を示す。駐車スペースに車両500を駐車する際に、図8(A2)に示すように、一次側共振コイル12と二次側共振コイル81の中心軸同士が略一致する場合もあれば、図8(A1)、(A3)に中心軸同士がずれる場合もある。中心軸同士がずれた場合には、送電器100の位置検出部130が位置ずれを検出し、制御部110が位置ずれに応じてメタマテリアル120の比透磁率の分布を制御すれば、二次側共振コイル81は高い受電効率で電力を受電することができ、バッテリ220を充電することができる。
また、図8(B)には、道路の走行レーンの路面に沿って複数の送電器100が配置されている場合を示す。図8(B)には、車両500が走行する状態を3つの図に分けて、右から左にかけて時系列的に示す。
車両500が走行レーンを走行する際に、複数の送電器100は、順次、制御部110が位置ずれに応じてメタマテリアル120の比透磁率の分布を制御すればよい。このようにすれば、走行中の車両500に搭載された受電器80の二次側共振コイル81は、路面に設置された複数の送電器100から順番に電力を受電することができる。個々の送電器100は、自己が送電する際に、一次側共振コイル12に対する二次側共振コイル81の位置ずれに応じて、メタマテリアル120の比透磁率の分布を制御すればよい。
以上、実施の形態によれば、平面視でメタマテリアル120の表面の中心に対して二次側共振コイル81の中心軸がずれた場合に、磁束が二次側共振コイル81に誘導されるように、二次側共振コイル81の位置に応じてメタマテリアル120の比透磁率の分布を制御する。メタマテリアル120の表面の中心は、一次側共振コイル12の中心軸と一致している。
従って、二次側共振コイル81の中心軸が一次側共振コイル12の中心軸からずれても、メタマテリアル120の比透磁率の分布を調整することにより、一次側共振コイル12からメタマテリアル120を経て供給される磁束が二次側共振コイル81に誘導されるので、二次側共振コイル81の受電効率を改善することができる。
従って、実施の形態によれば、伝送効率を改善した電力中継装置、送電器100、及び、送受電システムを提供することができる。
なお、以上では、送電器100がメタマテリアル120及び位置検出部130を含み、一次側共振コイル12の中心軸に対する二次側共振コイル81の中心軸の位置ずれに応じてメタマテリアル120の比透磁率の分布を制御する形態について説明した。
しかしながら、メタマテリアル120及び位置検出部130は、送電器100ではなく受電器80に含まれていてもよい。この場合には、メタマテリアル120は二次側共振コイル81の受電側(一次側共振コイル12が位置する側)に設けられていればよい。受電器80に設けられた位置検出部130が二次側共振コイル81の中心軸に対する一次側共振コイル12の中心軸の位置ずれを検出し、位置ずれに応じてメタマテリアル120の比透磁率の分布を制御することによって、一次側共振コイル12からメタマテリアル120を経て供給される磁束が二次側共振コイル81に誘導されるようにすれば、二次側共振コイル81の受電効率を改善することができる。
このような実施の形態によれば、伝送効率を改善した受電器80側の電力中継装置、受電器80、及び、送受電システムを提供することができる。
また、送電器100及び受電器80の両方が、メタマテリアル120を含んでいてもよい。この場合には、送電器100側では、送電器100の位置検出部130が一次側共振コイル12の中心軸に対する二次側共振コイル81の中心軸の位置ずれを検出して、送電器100の制御部110がメタマテリアル120の比透磁率の分布を制御すればよい。また、受電器80側では、受電器80の位置検出部130が二次側共振コイル81の中心軸に対する一次側共振コイル12の中心軸の位置ずれを検出して、受電器80の制御部110がメタマテリアル120の比透磁率の分布を制御すればよい。
また、このように送電器100及び受電器80の両方が、メタマテリアル120を含む場合に、送電器100と受電器80との間に、制御部110、メタマテリアル120、及び位置検出部130を含む電力中継装置を設けてもよい。この場合には、送電器100の一次側共振コイル12と、受電器80の二次側共振コイル81との間に、3つのメタマテリアル120が互いの表面が平行になるように配置されることになる。
この場合に、送電器100及び受電器80におけるメタマテリアル120の比透磁率の分布の制御は、送電器100及び受電器80の両方が、メタマテリアル120を含む場合と同様である。
また、送電器100と受電器80との間に設けられ、制御部110、メタマテリアル120、及び位置検出部130を含む電力中継装置では、例えば、位置検出部130が一次側共振コイル12の中心軸に対する二次側共振コイル81の中心軸の位置ずれを検出して、メタマテリアル120の比透磁率の分布を制御すればよい。また、この代わりに、二次側共振コイル81の中心軸に対する一次側共振コイル12の中心軸の位置ずれを検出して、メタマテリアル120の比透磁率の分布を制御してもよい。
また、以上では、送電器100が位置検出部130を含み、位置検出部130で検出される一次側共振コイル12の中心軸に対する二次側共振コイル81の中心軸の位置ずれに応じてメタマテリアル120の比透磁率の分布を制御する形態について説明した。
しかしながら、送電器100は、位置検出部130を含まずに、メタマテリアル120の比透磁率の分布を制御するものであってもよい。例えば、一次側共振コイル12の中心軸に対する二次側共振コイル81の中心軸の位置ずれが固定値であり、既知である場合には、メタマテリアル120の共振コイル121のオン/オフを予め設定しておけば、一次側共振コイル12の中心軸に対して中心軸の位置がずれた二次側共振コイル81にメタマテリアル120で磁束を誘導することができる。この結果、二次側共振コイル81の受電効率を改善することができる。
また、以上では、メタマテリアル120の共振コイル121のオン/オフを切り替えることによって、共振コイル121の共振状態を制御する形態について説明したが、共振コイル121の代わりに、次のような共振コイル320をマトリクス状に配置したメタマテリアル120を用いてもよい。
図9及び図10は、共振コイル320の構成を示す図である。図9に示すように、共振コイル320は、一対の端子321A、321Bを有し、端子321Aから端子321Bまで渦巻き状に巻回されている。端子321Aと321Bは、共振コイル320の中心322を通る直線R1上に位置しており、共振コイル320は、端子321Aから端子321Bに向かって、径方向に一定間隔で内側に5回渦巻き状に巻回されている。
共振コイル320は、さらに、端子321A、321Bと中心322とを結ぶ直線上に位置する端子323A、323B、323C、323Dを有する。端子323A、323B、323C、323Dは、この順番で端子321Aと端子321Bとの間で直線R1上に位置する。
共振コイル320は、さらに、スイッチ324と、端子325A、325Bとを有する。スイッチ324は、スイッチ部324A、324B、324C、324D、324Eを有する。スイッチ部324A、324B、324C、324D、324Eの一端は、それぞれ、端子323A、323B,323C、323D、321Bに接続されており、他端は端子325Bに接続されている。また、端子325Aは、端子321Aに接続されている。
図9に示すように、スイッチ部324Eを閉成(オン)し、スイッチ部324A、324B、324C、324Dを開放(オフ)すると、共振コイル320は、端子321Aから端子321Bまでの5巻のコイルになる。
図10に示すように、スイッチ部324Cを閉成(オン)し、スイッチ部324A、324B、324D、324Eを開放(オフ)すると、共振コイル320は、端子321Aから端子323Cまでの3巻のコイルになる。
同様に、スイッチ部324Aを閉成(オン)し、スイッチ部324B、324C、324D、324Eを開放(オフ)すると、共振コイル320は、端子321Aから端子323Aまでの1巻のコイルになる。また、スイッチ部324Bを閉成(オン)し、スイッチ部324A、324C、324D、324Eを開放(オフ)すると、共振コイル320は、端子321Bから端子323Bまでの2巻のコイルになる。また、スイッチ部324Dを閉成(オン)し、スイッチ部324A、324B、324C、324Eを開放(オフ)すると、共振コイル320は、端子321Dから端子323Dまでの4巻のコイルになる。
スイッチ部324A、324B、324C、324D、324Eのうちのいずれか1つを選択して閉成(オン)することにより、共振コイル320の巻数を変更することができる。スイッチ324のスイッチ部324A、324B、324C、324D、324Eのオン/オフの制御は、制御部110によって行われる。以下では、スイッチ部324A、324B、324C、324D、324Eのオン/オフを制御することをスイッチ324のオン/オフを制御することと称す。
制御部110がスイッチ324のオン/オフを制御することにより、共振コイル320の出力電圧を変化させることができる。共振コイル320の出力電圧が変化すれば、DCDCコンバータ210の入力電圧及び負荷抵抗が変化する。
共振コイル320をマトリクス状に配置したメタマテリアルの比透磁率の周波数特性は、図4に示すメタマテリアル120の比透磁率の周波数特性と同様の特性になる。
例えば、共振コイル320の巻数を3巻にしたときに、共振コイル320の共振周波数が6MHzになり、比透磁率が極小値を取る周波数f1が6.78MHzになることとする。比透磁率の極小値は、比透磁率が負の値で絶対値が最大になる値である。
このような場合に、スイッチ324を切り替えて、共振コイル320の巻数を3巻から1巻、2巻、4巻、又は5巻に変更すると、共振コイル320のインダクタンスが変わることによって共振周波数が変わるため、6.78MHzにおける比透磁率の値が増大する(負の値であっても絶対値が小さくなる、又は、正の値になる)。これは、図4に示す特性全体が、低周波数側(左側)又は高周波数側(右側)にシフトするイメージである。
このように、共振コイル320のインダクタンスが変わることによって共振周波数を変えると、6.78MHzにおける比透磁率の値を3巻のときの極小値よりも増大させることができる。このため、一次側共振コイル12と二次側共振コイル81の間で共振周波数が6.78MHzの磁界共鳴を生じさせた場合に、メタマテリアルの比透磁率が変わり、メタマテリアルが誘導する磁束の位置を調整することができる。上述のように共振コイル320の共振周波数を変えることは、共振コイル320の共振状態を変えることの一例である。
また、共振コイル121はオン/オフのみの切り替えであったが、共振コイル320は、3巻から1巻、2巻、4巻、又は5巻に切り替えることにより、6.78MHzの磁界共鳴に対するメタマテリアルの比透磁率をきめ細かく調整することができる。6.78MHzで極小値が得られる特性に対して、6.78MHzで極小値よりも大きな4つの値を選択することができる。
図11は、共振コイル320をマトリクス状に配置したメタマテリアル120Aの比透磁率μに分布を設けるための共振コイル320の駆動状態の一例を示す図である。ここでは、図2に示すメタマテリアル120の代わりに、共振コイル320をマトリクス状に配置したメタマテリアル120Aを送電器100に設け、一次側共振コイル12に対して二次側共振コイル81がX軸正方向側にずれている場合について説明する。
図11では、共振コイル320を円で示し、巻数が3巻に設定される共振コイル320を黒い円で示す。巻数が3巻に設定される共振コイル320は、6.78MHzにおける比透磁率の値が極小値になる。
また、一例として、巻数を2巻、4巻、5巻、1巻に変更すると、この順に6.78MHzにおける比透磁率の値が増大することとする。ここでは、巻数が2巻、4巻、5巻、1巻に設定された共振コイル320のグレーの濃さを、6.78MHzにおける比透磁率の値が小さい程(絶対値が大きい程)濃く、6.78MHzにおける比透磁率の値が大きい程(絶対値が小さい程)薄く示す。
このようなメタマテリアル120Aにおいて、図11に示すように、X軸方向において最も正方向側の比透磁率の絶対値を最も大きくし(極小値に設定し)、X軸方向において負方向側に行くに従って、徐々に6.78MHzにおける比透磁率の値が大きくなるようにすればよい。
このようにすれば、メタマテリアル120Aにおける比透磁率の分布を、よりきめ細かく設定することができる。
図12は、共振コイル420を示す図である。共振コイル420は、共振コイル320の代わりにメタマテリアル120Aに用いることができるものである。
共振コイル420は、コイル部421、キャパシタ422A、422B、422C、422D、及びスイッチ423A、423B、423C、423Dを有する。キャパシタ422A、422B、422C、422D、及び、スイッチ423A、423B、423C、423Dは、それぞれ、直列に接続されている。
キャパシタ422A及びスイッチ423A、キャパシタ422B及びスイッチ423B、キャパシタ422C及びスイッチ423C、キャパシタ422D及びスイッチ423Dは、コイル部421の両端の間に互いに並列に接続されている。
スイッチ423A、423B、423C、423Dは、例えば、FETで実現されるスイッチであり、制御部110によってオン/オフが切り替えられる。スイッチ423A、423B、423C、423Dをすべてオンにすれば、コイル部421には、互いに並列に接続されるキャパシタ422A、422B、422C、422Dが直列に挿入される。
また、スイッチ423A、423B、423Cをオンにすれば、コイル部421には、互いに並列に接続されるキャパシタ422A、422B、422Cが直列に挿入される。同様に、スイッチ423A、423Bをオンにすれば、コイル部421には、互いに並列に接続されるキャパシタ422A、422Bが直列に挿入される。また、スイッチ423Aのみをオンにすれば、コイル部421には、キャパシタ422Aのみが直列に挿入される。なお、スイッチ423A、423B、423C、423Dを上述以外の組み合わせでオンにすれば、オンにされたスイッチに直列に接続されるキャパシタがコイル部421に接続される。
ここで、一例として、キャパシタ422A、422B、422C、422Dの静電容量は互いに等しいものとする。オンにするスイッチをスイッチ423A、423B、423C、423Dのうちから選択することにより、コイル部421に接続されるキャパシタの静電容量を調整することができる。
例えば、スイッチ423A、423Bをオンにした場合に、共振コイル420の共振周波数が6MHzになり、比透磁率が極小値を取る周波数f1が6.78MHzになることとする。比透磁率の極小値は、比透磁率が負の値で絶対値が最大になる値である。
このような場合に、スイッチ423Aのみをオンにする状態、スイッチ423A、423B、423Cをオンにする状態、又は、スイッチ423A、423B、423C、423Dのすべてをオンにする状態に切り替えれば、メタマテリアルの6.78MHzにおける比透磁率を増大させることができ、図9及び図10に示す共振コイル320を用いる場合と同様に、共振状態を制御することができる。
従って、共振コイル420をマトリクス状に配置したメタマテリアルを用いた場合にも、一次側共振コイル12の中心軸に対して中心軸の位置がずれた二次側共振コイル81にメタマテリアル120で磁束を誘導することができる。この結果、二次側共振コイル81の受電効率を改善することができる。
以上、本発明の例示的な実施の形態の電力中継装置、送電器、受電器、及び、送受電システムについて説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
平面視でマトリクス状に配置される複数の共振コイルを有し、磁界共鳴又は電界共鳴で電力を伝送する一次側共振コイルと二次側共振コイルとの間で前記電力を中継するメタマテリアルと、
前記複数の共振コイルの共振状態を制御することにより、前記複数の共振コイルの共振状態によって決定される前記メタマテリアルの平面視での比透磁率の分布を制御する制御部と
を含む、電力中継装置。
(付記2)
前記メタマテリアルに対する、前記一次側共振コイル及び前記二次側共振コイルの平面視での相対位置を検出する位置検出部をさらに含み、
前記制御部は、前記複数の共振コイルのうち、前記位置検出部によって検出される相対位置が所定相対位置よりも近い共振コイルがある第1領域の第1比透磁率が、負の値であって、前記位置検出部によって検出される相対位置が前記所定相対位置よりも遠い共振コイルがある第2領域における第2比透磁率よりも小さな値になるように、前記複数の共振コイルの共振状態を制御する、付記1記載の電力中継装置。
(付記3)
前記制御部は、前記位置検出部によって検出される相対位置が、前記一次側共振コイルと前記二次側共振コイルとの平面視での位置ずれがあることを表す場合に、前記複数の共振コイルの共振状態を制御する、付記2記載の電力中継装置。
(付記4)
前記制御部は、前記第2比透磁率が負の値になるように、前記第2領域の共振コイルの共振状態を制御する、付記1乃至3のいずれか一項記載の電力中継装置。
(付記5)
前記共振コイルは、当該共振コイルのインダクタンス又はキャパシタンスを可変制御する可変回路を有し、
前記制御部は、前記複数の共振コイルの各々の前記可変回路のインダクタンス又はキャパシタンスを可変制御することにより、前記第1比透磁率が、負の値であって、前記第2比透磁率よりも小さな値になるように、前記複数の共振コイルの共振状態を制御する、付記2乃至4のいずれか一項記載の電力中継装置。
(付記6)
前記可変回路は、前記共振コイルの巻数を可変制御する可変回路である、付記5記載の電力中継装置。
(付記7)
前記可変回路は、前記共振コイルに直列に挿入されるキャパシタの数を可変制御する可変回路である、付記5記載の電力中継装置。
(付記8)
前記共振コイルは、前記磁界共鳴又は前記電界共鳴の共鳴周波数よりも低い共振周波数を有し、前記共鳴周波数における共振状態によって得られる比透磁率が負の値になる共振コイルであり、
前記制御部は、前記第1領域の共振コイルをオンにするとともに、前記第2領域の共振コイルをオフにすることにより、前記第1比透磁率が、負の値であって、前記第2比透磁率よりも小さな値になるように、前記複数の共振コイルの共振状態を制御する、付記2乃至4のいずれか一項記載の電力中継装置。
(付記9)
前記共振コイルは、当該共振コイルに直列に挿入され、オン/オフを切り替えるスイッチを有する、付記8記載の電力中継装置。
(付記10)
高周波電源と、
前記高周波電源に接続される一次側共振コイルと、
平面視でマトリクス状に配置される複数の共振コイルを有し、前記一次側共振コイルから磁界共鳴又は電界共鳴で送電される電力を二次側共振コイルに中継するメタマテリアルと、
前記複数の共振コイルの共振状態を制御することにより、前記複数の共振コイルの共振状態によって決定される前記メタマテリアルの平面視での比透磁率の分布を制御する制御部と
を含む、送電器。
(付記11)
平面視でマトリクス状に配置される複数の共振コイルを有し、高周波電源に接続される一次側共振コイルから磁界共鳴又は電界共鳴で送電される電力を中継するメタマテリアルと、
前記メタマテリアルによって中継される電力を受電する二次側共振コイルと、
前記複数の共振コイルの共振状態を制御することにより、前記複数の共振コイルの共振状態によって決定される前記メタマテリアルの平面視での比透磁率の分布を制御する制御部と
を含む、受電器。
(付記12)
高周波電源と、
前記高周波電源に接続される一次側共振コイルと、
平面視でマトリクス状に配置される複数の共振コイルを有し、前記一次側共振コイルから磁界共鳴又は電界共鳴で送電される電力を中継するメタマテリアルと、
前記メタマテリアルによって中継される電力を受電する二次側共振コイルと、
前記複数の共振コイルの共振状態を制御することにより、前記複数の共振コイルの共振状態によって決定される前記メタマテリアルの平面視での比透磁率の分布を制御する制御部と
を含む、送受電システム。