以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1〜図8を参照して、本発明の第1実施形態によるX線イメージング装置100の構成、およびX線イメージング装置100が暗視野像13を生成する方法について説明する。
(X線イメージング装置の構成)
まず、図1を参照して、第1実施形態によるX線イメージング装置100の構成について説明する。
図1に示すように、X線イメージング装置100は、被写体Tを通過したX線の散乱を利用して、被写体Tの内部を画像化する装置である。また、X線イメージング装置100は、タルボ(Talbot)効果を利用して、被写体Tの内部を画像化する装置である。X線イメージング装置100は、たとえば、非破壊検査用途では、物体としての被写体Tの内部の画像化に用いることが可能である。
被写体Tは、指向性のある内部構造を含む。被写体Tは、たとえば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)である。なお、指向性のある内部構造とは、内部構造のそれぞれにおいて、X線を散乱させる方向に特徴がある内部構造のことである。すなわち、指向性のある内部構造とは、所定の方向にX線を散乱させる内部構造のことである。
図1は、X線イメージング装置100をX方向から見た図である。図1に示すように、X線イメージング装置100は、X線源1と、第1格子2と、第2格子3と、検出器4と、画像処理部5と、制御部6と、格子回動機構7と、格子移動機構8と、格子位置調整機構9とを備えている。なお、本明細書において、X線源1から第1格子2に向かう方向をZ2方向、その逆方向の方向をZ1方向とする。また、Z方向と直交する面内の左右方向をX方向とし、図1の紙面の奥に向かう方向をX2方向、図1の紙面の手前側に向かう方向をX1方向とする。また、Z方向と直交する面内の上下方向をY方向とし、上方向をY1方向、下方向をY2方向とする。また、Z方向は、特許請求の範囲の「X線の光軸方向」の一例である。
X線源1は、高電圧が印加されることにより、X線を発生させる。X線源1は、発生させたX線をZ2方向に向けて照射するように構成されている。
第1格子2は、複数のスリット2aおよびX線位相変化部2bを有している。各スリット2aおよびX線位相変化部2bは、Y方向に所定の周期(ピッチ)d1で配列されている。各スリット2aおよびX線位相変化部2bはそれぞれ、直線状に延びるように形成されている。また、各スリット2aおよびX線位相変化部2bはそれぞれ、平行に延びるように形成されている。第1格子2は、いわゆる位相格子である。
第1格子2は、X線源1と、第2格子3との間に配置されており、X線源1からX線が照射される。第1格子2は、タルボ効果により、第1格子2の自己像12(図6参照)を形成するために設けられている。可干渉性を有するX線が、スリットが形成された格子を通過すると、格子から所定の距離(タルボ距離)離れた位置に、格子の像(自己像12)が形成される。これをタルボ効果という。
第2格子3は、複数のX線透過部3aおよびX線吸収部3bを有する。各X線透過部3aおよびX線吸収部3bは、Y方向に所定の周期(ピッチ)d2で配列されている。各X線透過部3aおよびX線吸収部3bはそれぞれ、直線状に延びるように形成されている。また、各X線透過部3aおよびX線吸収部3bはそれぞれ、平行に延びるように形成されている。第2格子3は、いわゆる、吸収格子である。第1格子2、第2格子3はそれぞれ異なる役割を持つ格子であるが、スリット2aおよびX線透過部3aはそれぞれX線を透過させる。また、X線吸収部3bはX線を遮蔽する。また、X線位相変化部2bはスリット2aとの屈折率の違いによってX線の位相を変化させる。
第2格子3は、第1格子2と検出器4との間に配置されており、第1格子2を通過したX線が照射される。また、第2格子3は、第1格子2から所定のタルボ距離だけ離れた位置に配置される。第2格子3は、第1格子2の自己像12と干渉して、検出器4の検出表面上にモアレ縞11(図5参照)を形成する。
検出器4は、X線を検出するとともに、検出されたX線を電気信号に変換し、変換された電気信号を画像信号として読み取るように構成されている。検出器4は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)である。検出器4は、複数の変換素子(図示せず)と複数の変換素子上に配置された画素電極(図示せず)とにより構成されている。複数の変換素子および画素電極は、所定の周期(画素ピッチ)で、X方向およびY方向にアレイ状に配列されている。また、検出器4は、取得した画像信号を、画像処理部5に出力するように構成されている。
画像処理部5は、検出器4から出力された画像信号に基づいて、暗視野像13(図8参照)を生成するように構成されている。画像処理部5は、たとえば、GPU(Graphics Processing Unit)や画像処理用に構成されたFPGA(Field−Programmable Gate Array)などのプロセッサを含む。
制御部6は、格子回動機構7を介して、格子を回動させることにより、格子の被写体Tに対する向きを変更するように構成されている。また、制御部6は、格子移動機構8を介して、第1格子2を格子面内において縦方向(Y方向)または横方向(X方向)に移動可能に構成されている。また、制御部6は、格子の配置方向に応じて格子を移動させる方向を変更するように構成されている。また、制御部6は、格子回動機構7によって回動させた複数の格子の角度情報を記憶する格子角度情報記憶部10を含む。制御部6は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを含む。
格子回動機構7は、制御部6からの信号に基づいて、第1格子2および第2格子3を回動させるように構成されている。具体的には、格子回動機構7は、第1格子2および第2格子3にそれぞれ設けられている。格子回動機構7は、光軸方向(Z方向)と直交する面内において、縦方向(Y方向)、横方向(X方向)および斜め方向のうち、少なくともいずれか2方向に複数の格子を配置するように構成されている。また、格子回動機構7は、格子を回動させることにより、格子の被写体Tに対する向きを変更するように構成されている。格子回動機構7が格子を回動させる詳細な構成については後述する。なお、縦方向とは、X線の光軸方向(Z方向)と直交する水平方向(X方向)を基準とした場合、格子を配置する向きが略90度のことである。また、横方向とは、X線の光軸方向(Z方向)と直交する水平方向(X方向)を基準とした場合、格子を配置する向きが略0度のことである。また、斜め方向とは、格子を配置する向きが略プラスマイナス45度のことである。なお、それぞれの方向は、所定角度の範囲のずれを許容するものとする。所定角度の範囲のずれは、たとえば、プラスマイナス15度であってもよいし、プラスマイナス5度であってもよい。典型的には、縦方向(Y方向)が鉛直方向であり、横方向(X方向)が水平方向である。
格子移動機構8は、制御部6からの信号に基づいて、第1格子2を縦方向(Y方向)または横方向(X方向)に移動可能に構成されている。格子移動機構8が格子を移動させる詳細な構成については後述する。また、格子移動機構8は、格子位置調整機構9を介して格子回動機構7を保持している。
格子位置調整機構9は、制御部6からの信号に基づいて、第1格子2の複数の格子間における相対位置を調整するように構成されている。格子位置調整機構9による複数の格子の格子間における相対位置を調整する詳細な構成については後述する。
格子角度情報記憶部10は、制御部6からの信号に基づいて格子回動機構7によって回動させた複数の格子の格子角度情報を記憶するように構成されている。格子角度情報記憶部10は、たとえば、HDD(ハードディスクドライブ)およびメモリなどにより構成されている。
第1実施形態では、画像処理部5は、光軸方向(Z方向)と直交する面内(XY面内)において、格子を複数の角度に配置して撮像された暗視野像13を生成するように構成されている。具体的には、画像処理部5は、制御部6によって格子移動機構8を介して第1格子2を並進移動させながら撮像された暗視野像13(図8参照)を生成する。ここで、暗視野像とは、被写体Tの内部にある内部構造によるX線の屈折によって生じるコントラストを画像化したものである。また、第1実施形態では、画像処理部5は、制御部6によって格子回動機構7を介して第1格子2および第2格子3をそれぞれ回動されることにより、格子を複数の角度に配置して撮像された複数の暗視野像13を生成するように構成されている。
(格子回動機構)
次に、図2を参照して、第1実施形態によるX線イメージング装置100における格子回動機構7の構成について説明する。
図2に示すように、格子回動機構7は、格子を保持する格子保持部70と、格子保持部70を回動させる回動部71と、筐体72とを含む。格子保持部70は、筐体72内において、回動可能に支持されている。また、格子保持部70は、格子と接触した状態で格子を内部に保持するように構成されている。また、格子保持部70は、円盤状に形成されている。また、格子保持部70は、外周面が歯車状に形成されている。図2に示す例では、便器上、格子の向きがわかるように格子(格子パターン)を大きく図示しているが、実際には各格子の格子パターンは非常に細かく、肉眼で格子の向きを判別することは難しい。そこで、第1実施形態では、格子保持部70は、格子の回動をユーザが確認できるようにするために、第1マーカ73a、第2マーカ73bおよび第3マーカ73cが設けられている。なお、図2に示すように、第1マーカ73a、第2マーカ73bおよび第3マーカ73cは、互いに識別可能に構成されている。なお、格子パターンとは、スリット2a、X線位相変化部2b、X線透過部3a、X線吸収部3bなどのことである。
回動部71は、動力部(図示せず)と回転部71aとを含む。動力部は、モータ、エンコーダーなどを含む。回転部71aは、円盤状に形成されている。また、回転部71aは、外周面が歯車状に形成されている。また、回転部71aは、動力部によって回転されるように構成されている。格子保持部70と回動部71(回転部71a)とは、互いに係合する(歯車同士がかみ合う)ように形成されており、回動部71(回転部71a)が回動することにより、格子保持部70が回動するように形成されている。したがって、格子回動機構7は、制御部6からの信号に基づいて回動部71が回動され、回動部71の回動によって格子保持部70が回動されることにより、格子を回動させるように構成されている。なお、回動部71の可動範囲は、どのような範囲でもよい。たとえば、略0度から略360度の範囲で回転するように構成されていてもよく、略0度から略180度の範囲で回動するように構成されていてもよい。また、略マイナス90度から略90度の範囲で回動するように構成されていてもよい。第1実施形態では、回動部71は、略0度から略90度の範囲で可動するように構成されている。また、回動部71に含まれるエンコーダーなどにより、回動部71の回動角度θ(図6参照)が格子角度情報記憶部10に記憶される。すなわち、格子回動機構7によって各格子が回動された角度θが格子角度情報記憶部10に記憶される。
図3は、格子回動機構7による格子の回動を示す模式図(A)〜(C)である。図3(A)は、格子を横向き(X方向)に向けて配置した際の模式図である。図3(B)は、格子を斜めに向けて配置した際の模式図である。図3(C)は、格子を縦向き(Y方向)に向けて配置した際の模式図である。第1実施形態では、制御部6は、格子回動機構7を介して各格子を回動させることにより、図3(A)〜図3(C)に示すような向きに格子を配置することができる。格子回動機構7は、各格子の回動角度θが略同一になるように構成されている。第1実施形態では、X線イメージング装置100は、格子を縦向き(Y方向)に向けた配置、および横向き(X方向)に向けた配置で被写体Tを撮像するように構成されている。なお、格子の向きとは、格子パターンの延びる方向である。
(格子移動機構および格子位置調整機構)
図4に示すように、格子移動機構8は、光軸方向(Z方向)に直交する面内(XY面内)において、格子を縦方向(Y方向)または横方向(X方向)に移動可能に構成されている。具体的には、図4に示すように、格子移動機構8は、X方向直動機構80と、Y方向直動機構81とを含む。X方向直動機構80は、X方向に並進移動可能に構成されている。X方向直動機構80は、たとえば、ステッピングモータなどを含む。Y方向直動機構81は、Y方向に並進移動可能に構成されている。Y方向直動機構81は、たとえば、ステッピングモータなどを含む。格子移動機構8は、X方向直動機構80の動作により、格子位置調整機構9を介して格子回動機構7をX方向に並進させるように構成されている。また、格子移動機構8は、Y方向直動機構81の動作により、格子位置調整機構9を介して格子回動機構7をY方向に並進させるように構成されている。すなわち、格子移動機構8は、格子回動機構7とともに、第1格子2を移動させるように構成されている。
また、図4に示すように、格子位置調整機構9は、格子移動機構8上に保持されている。格子位置調整機構9は、ステージ支持部90と、駆動部91と、ステージ92とを含む。ステージ支持部90は、ステージ92を下方(Y1方向)から支持している。駆動部91は、ステージ支持部90をX方向に往復移動させるように構成されている。ステージ92は、底部がステージ支持部90に向けて凸曲面状に形成されており、X方向に往復移動されることにより、Z方向の中心軸線周りに回動するように構成されている。各格子を大きく回動させることにより各格子の向きを変更する格子回動機構7とは異なり、格子位置調整機構9は、格子のXY面内における微細な角度のずれを調整する機構である。したがって、格子位置調整機構9は、格子回動機構7と比較した場合、位置精度が高くなるように構成されている。また、格子位置調整機構9は、格子回動機構7と比較した場合、格子の回動量が小さくなるように構成されている。
(格子の位置調整)
次に、図5を参照して、制御部6が第1格子2および第2格子3の位置調整を行う構成について説明する。図5(A)に示す例は、格子回動機構7によって第1格子2および第2格子3を回動させた後の画像の模式図である。格子回動機構7による格子の回動後に、第1格子2および第2格子3の格子間における相対位置がずれる場合がある。第1格子2および第2格子3の格子間における相対位置がずれた場合、被写体Tを配置しないエア撮影の状態でも、図5(A)に示すようにモアレ縞11が生じる。図5(A)に示す例では、周期d3のモアレ縞11が生じている。
第1実施形態では、制御部6は、格子回動機構7によって第1格子2および第2格子3を回動させた後に生じるモアレ縞11に基づいて、格子位置調整機構9による格子の調整量gaを算出するように構成されている。具体的には、制御部6は、以下に示す式(1)により、格子の調整量gaを算出する。
ここで、gaは格子の調整量である。また、d2は、第2格子3の格子ピッチである。また、d3はモアレ縞11のピッチである。また、sは検出器4の画素サイズである。
制御部6は、上記式(1)によって格子の調整量gaを算出し、算出した調整量ga分、格子位置調整機構9によって第1格子2を回動させることにより、第1格子2および第2格子3の格子間における位置調整を行うように構成されている。第1格子2および第2格子3の格子間における位置調整後には、図5(B)に示すようにモアレ縞11は周期が十分大きくなり、場合によっては略消える。
(格子の並進移動方向の切り替え)
次に、図6を参照して、第1実施形態における制御部6が、格子移動機構8による格子の並進移動の方向を切り替える構成について説明する。第1実施形態では、画像処理部5は縞走査法により、暗視野像13を生成している。縞走査法とは、格子の1周期分以上、格子を並進移動させながら撮像することによって、検出されるX線の検出信号曲線(ステップカーブ)に基づいて画像を生成する手法である。第1実施形態では、格子移動機構8は、第1格子2を第2格子3の1周期(d2)分以上並進移動させるように構成されている。また、格子移動機構8は、第1格子2および第2格子3の配置方向に応じて格子を移動させる方向を変更するように構成されている。格子移動機構8は、第1格子2を第2格子3の1周期(d2)分以上並進移動させる際に、並進移動の距離が小さくなる方向に第1格子2を移動させるように構成されている。
具体的には、制御部6は、以下の式(2)および式(3)によって算出された並進距離のうち、並進させる距離が小さくなる方向に格子を並進移動させるように構成されている。
ここで、swcおよびswsは、格子を並進移動させる際の並進距離である。また、d2は第2格子3のピッチである。また、θはX線の光軸方向(Z方向)に直交する面内(XY面内)における格子の回動角度である。また、nは格子を並進させる回数(ステップ数)である。
上記式(2)で算出される並進移動の並進距離swcは、格子を縦方向(Y方向)に移動させる際の移動距離である。上記式(3)で算出される並進移動の並進距離swsは、格子を横方向(X方向)に移動させる際の移動距離である。制御部6は、横方向(X方向)に並進移動させる際の並進距離swcおよび縦方向(Y方向)に並進移動させる際の並進距離swsを算出し、移動距離が小さくなる方向に格子を並進移動させる。
図6(A)に示す例は、格子が横向き(X方向)に配置されている場合の格子の並進移動を示した模式図である。格子が横向き(X方向)に配置されている場合、制御部6は、格子位置調整機構9を介して第1格子2をY2方向に並進移動させる。
図6(B)に示す例は、格子を斜めに配置した場合のステップ方向を示す模式図である。図6(B)は、格子の回動角度θが小さい場合の例である。図6(B)に示す例では、格子の回動角度θは、たとえば30度である。格子の回動角度θが30度の場合、縦方向(Y方向)の並進距離swcは横方向(X方向)の並進距離swsよりも小さくなる。したがって、図6(B)に示す例では、第1格子2を縦方向(Y方向)に並進移動させる。図6(C)に示す例は、格子を斜めに配置した場合のステップ方向を示す模式図である。図6(C)は、格子の回動角度θが大きい場合の例である。図6(C)に示す例では、格子の回動角度θは、たとえば、60度である。格子の回動角度θが60度の場合、横方向(X方向)の並進距離swsは縦方向(Y方向)の並進距離swcよりも小さくなる。したがって、図6(C)に示す例では、第1格子2を横方向(X方向)に並進移動させる。
(被写体の撮像)
次に、図7を参照して、第1実施形態によるX線イメージング装置100による被写体Tを撮像する構成の流れについて説明する。
ステップS1において、制御部6は、格子回動機構7を介して、第1格子2および第2格子3を横向き(X方向)に配置する。次に、ステップS2において、操作者により、被写体Tが配置される。なお、ステップS2は、ステップS3の前であれば、いつ行われてもよい。
次に、ステップS3において、制御部6は、格子移動機構8を介して第1格子2を並進移動させながら、被写体Tを撮像する。次に、ステップS4において、画像処理部5は、被写体Tの暗視野像13を生成する。
次に、ステップS5において、制御部6は、第1格子2および第2格子3が所望の角度で配置された状態で撮像されたかどうかを判定する。第1格子2および第2格子3が所望の角度で配置された状態で撮像されていない場合、ステップS6に進む。第1格子2および第2格子3が所望の角度で配置された状態で撮像された場合、処理を終了する。
ステップS6において、制御部6は、格子回動機構7を介して第1格子2および第2格子3を所定角度回動させることにより、第1格子2および第2格子3を縦向き(Y方向)に配置する。第1実施形態では、所定角度は、略90度である。次に、ステップS7において、制御部6は、格子位置調整機構9を介して第1格子2の位置調整を行う。その後、ステップS3に進む。
(画像処理部が生成する画像)
次に、図8を参照して、第1実施形態による画像処理部5が生成する画像について説明する。
第1実施形態では、画像処理部5は、光軸方向(Z方向)と直交する面内(XY面内)において、第1格子2および第2格子3を複数の角度に配置して撮像された暗視野像13を生成するように構成されている。なお、図8に示す例は、被写体T(CFRP)に打撃を与え、クラック(傷14)を形成させて撮像した暗視野像13である。
ここで、暗視野像13は、X線が散乱することによって生じる検出器4の画素ごとのX線の線量の変化に基づく画像である。すなわち、格子を透過して検出器4で検出されていたX線が散乱することにより、その散乱されたX線は格子によって吸収されるため、X線のうち散乱された分は検出器4で検出されなくなる。一方、格子によって吸収されていたX線が散乱することにより、その散乱されたX線は格子を透過するようになり、その散乱されて格子を透過したX線は、検出器4で検出されるようになる。したがって、暗視野像13では、検出器4の各画素において検出されるX線の線量が変化する。格子の向きと直交する方向にX線が散乱する場合、検出器4で検出されるX線の線量の変化が顕著となる。また、X線の散乱は、被写体Tの内部構造(傷14)によってX線が多重に屈折することに起因する。X線の屈折は、X線が屈折率の異なる領域の境界を通過する際におこる。傷14によってX線が屈折する場合、傷14とそれ以外の領域との境界で屈折するため、X線は傷14が延びる方向と交差する方向に屈折する。これにより、暗視野像13では、X線の散乱の指向性を捉えることが可能である。
図8(A)は、格子を横向き(X方向)に配置(図3(A)参照)して撮像された暗視野像13aである。図8(A)に示す例では、格子を横向き(X方向)に配置しているため、被写体Tの内部にある傷14のうち、横方向(X方向)に延びる傷14aが描出されている。また、被写体Tの内部にある傷14のうち、斜め方向に延びる傷14bおよび傷14cも描出されている。斜め方向に延びる傷14bおよび傷14cは、横方向(X方向)および縦方向(Y方向)に対するX線の散乱成分を含んでいるため、格子を横向き(X方向)に配置した場合でも描出される。しかし、斜め方向の傷14bおよび傷14cは、横方向(X方向)の傷14aと比較した場合、縦方向(Y方向)に散乱するX線の量が小さくなるため、暗視野像13aにおいては、横方向(X方向)に延びる傷14aよりも薄く描出される。
また、図8(A)に示す暗視野像13aのうち、円形の領域15は、被写体Tに打撃を与えた際の打撃痕である。打撃によって被写体TのZ方向における各層の間隔が詰まり(縮まり)、X線の散乱が弱くなるため、画像中では白く表示されている。また、図8(A)に示す暗視野像13aのうち、楕円形の領域16a(点状のハッチング部)は、被写体Tに打撃を与えたことにより被写体T内のZ方向における層間の剥離によって生じたX線の散乱によって描出された領域である。楕円形の領域16aは、被写体Tの層間の剥離によって、縦方向(Y方向)に散乱されたX線が検出された領域である。なお、図8(A)に示す例では、格子角度情報記憶部10によって記憶される各格子の角度は、略0度であり、格子移動機構8によって第1格子2が並進移動される方向は、Y方向である。
図8(B)は、格子を縦向き(Y方向)に配置(図3(C)参照)して撮像された暗視野像13bである。図8(B)に示す例では、格子を縦向き(Y方向)に配置しているため、被写体Tの内部にある傷14のうち、縦方向(Y方向)に延びる傷14dが描出されている。また、暗視野像13aと同様に、被写体Tの内部にある傷14のうち、斜め方向に延びる傷14bおよび傷14cも描出されている。斜め方向の傷14bおよび傷14cは、縦方向(Y方向)の傷14dと比較した場合、横方向(X方向)に散乱するX線の量が小さくなるため、暗視野像13においては、縦方向の傷14dよりも薄く描出される。また、図8(B)に示す暗視野像13bのうち、円形の領域15は、被写体Tに打撃を与えた際の打撃痕である。
また、図8(B)に示す暗視野像13bのうち、楕円形の領域16bは、被写体Tに打撃を与えたことにより被写体T内のZ方向における層間の剥離によって生じたX線の散乱によって描出された領域である。楕円形の領域16b(点状のハッチング部)は、被写体Tの層間の剥離によって、横方向(X方向)に散乱されたX線が検出された領域である。したがって、楕円形の領域16bは、図8(A)に示す楕円形の領域16aとは、わずかに形状が異なっている。図示は省略するが、図3(B)に示すように各格子を斜めに配置した場合、格子の向きに沿う方向に延びる傷14cが描出される。しかし、格子の向きと直交する方向に延びる傷14bは描出されない。なお、傷14aおよび傷14dは、それぞれ格子に対して斜め方向に延びているため、暗視野像13においては傷14cよりも薄く描出される。図8(B)に示す例では、格子角度情報記憶部10によって記憶される各格子の角度は、略90度であり、格子移動機構8によって第1格子2が並進移動される方向は、X方向である。
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第1実施形態では、上記のように、X線イメージング装置100は、X線源1と、X線源1から照射されるX線により、自己像12を形成するための第1格子2と第1格子2の自己像12と干渉させるための第2格子3とを含む複数の格子と、X線源1から照射されたX線を検出する検出器4と、X線の光軸方向(Z方向)と直交する面内(XY面内)において、複数の格子をそれぞれ回動させる格子回動機構7と、検出器4により検出されたX線の強度分布から、少なくとも暗視野像13を生成する画像処理部5とを備え、画像処理部5は、光軸方向(Z方向)と直交する面内(XY面内)において、格子を複数の角度に配置して撮像された暗視野像13を生成するように構成されている。これにより、格子の向きを変更することにより、格子に対する被写体Tの向きを変更することなく格子に対する被写体Tの向きを変更することができる。したがって、格子に対する被写体Tの向きを変更することなく、被写体Tの内部構造(傷14)を画像化することができる。また、格子に対する被写体Tの向きを変更することなく被写体Tの内部構造(傷14)を画像化することが可能となるので、たとえば、格子を複数の角度に配置して撮像された暗視野像13を見比べる場合でも、各画像における被写体Tの向きを合わせる必要がなく、容易に各画像を見比べることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、格子回動機構7は、光軸方向(Z方向)と直交する面内(XY面内)において、縦方向(Y方向)、横方向(X方向)および斜め方向のうち、縦方向(Y方向)および横方向(X方向)に複数の格子を配置するように構成されている。これにより、格子を回動させた際、被写体Tの向きに対する格子の向きがそれぞれ異なるように複数の格子を回動させることができる。その結果、被写体T内において、X線の散乱方向が異なる内部構造(傷14)をそれぞれ画像化することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、X線イメージング装置100は、第1格子2を移動させる格子移動機構8をさらに備え、格子移動機構8は、複数の格子を回動させた後に、格子回動機構7とともに第1格子2を移動させるように構成されている。これにより、第1格子2および第2格子3を回動させた後に第1格子2を移動する場合でも、格子移動機構8を回動させることなく第1格子2を移動させることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、格子移動機構8は、光軸方向(Z方向)に直交する面内(XY面内)において、格子を縦方向(Y方向)または横方向(X方向)に移動可能に構成されているとともに、複数の格子の配置方向に応じて格子を移動させる方向を変更するように構成されており、第1格子2を第2格子3の1周期(d2)分以上並進移動させる際に、並進移動の距離が小さくなる方向に第1格子2を移動させるように構成されている。これにより、格子を複数の角度に配置して並進させた場合でも、格子の配置方向に応じて格子の並進移動の距離が小さくなる方向に格子を並進させることができる。その結果、並進移動させる際の誤差に起因する画像の画質の劣化を抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、格子回動機構7は、格子を保持する格子保持部70と、格子保持部70を回動させる回動部71とを含む。これにより、たとえば、格子移動機構8とともに格子を回動させる場合と比較して、回動部71によって格子保持部70を回動させることにより、格子回動機構7を小型化することができる。また、格子回動機構7によって格子を回動させることが可能となるので、格子の回転に伴って格子移動機構8を回動させる機構が必要なくなるため、その分、装置構成を簡素化することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第1格子2の複数の格子の格子間における相対位置を調整する格子位置調整機構9をさらに備え、格子回動機構7は、格子位置調整機構9を介して格子移動機構8上に保持されるように構成されている。これにより、格子回動機構7によって格子を回動させた場合でも、格子位置調整機構9および格子移動機構8を回動させることなく格子の位置調整および格子の移動を行うことができる。その結果、格子の回動に伴って格子位置調整機構9および格子移動機構8を回動させる必要がなくなるため、装置構成が複雑化することを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、X線イメージング装置100は、格子回動機構7によって複数の格子を回転させた後に生じるモアレ縞11に基づいて、格子位置調整機構9による格子の調整量gaを算出する制御部6をさらに備える。これにより、格子を回動させることによって、複数の格子の格子間における相対位置にずれが生じた場合でも、モアレ縞11に基づいて格子の調整量gaを算出すことが可能となるので、容易に格子の位置調整を行うことができる。
また、第1実施形態では、上記のように、格子回動機構7によって回動させた複数の格子の角度情報を記憶する格子角度情報記憶部10をさらに備える。これにより、画像解析時において、散乱成分の方向を容易に把握することができる。
[第2実施形態]
次に、図1、図9および図10を参照して、第2実施形態によるX線イメージング装置200(図1参照)について説明する。格子を横向き(X方向)および縦向き(Y方向)に配置して撮像した画像からそれぞれ暗視野像13を生成する第1実施形態とは異なり、第2実施形態では、画像処理部5は、光軸方向(Z方向)と直交する面内(XY面内)において、格子を複数の角度に配置して撮像された複数の暗視野像13を合成して、被写体TによるX線の散乱の強度を表す全散乱像20(図10参照)を生成するように構成されている。なお、全散乱像20とは、被写体Tによって生じるX線の全方向への散乱を画像化した像である。また、上記第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
(X線イメージング装置の構成)
まず、図1を参照して、第2実施形態によるX線イメージング装置200の構成について説明する。
第2実施形態では、画像処理部5は、光軸方向(Z方向)と直交する面内(XY面内)において、格子を複数の角度に配置して撮像された複数の暗視野像13を合成して、被写体TによるX線の散乱の強度を表す全散乱像20を生成するように構成されている。具体的には、画像処理部5は、格子を横向き(X方向)に配置して撮像された暗視野像13aおよび縦向き(Y方向)に配置して撮像された暗視野像13bを合成して、全散乱像20を生成するように構成されている。また、第2実施形態では、画像処理部5は、被写体Tの特徴量として、被写体T内において指向性のある内部構造(傷14)に関する情報を取得するように構成されており、被写体T内において指向性のある内部構造(傷14)に関する情報は、少なくとも傷14aの長さL(図10参照)と、傷14dの幅W(図10参照)とを含む。なお、傷14aの長さLおよび傷14dの幅Wは、それぞれ、特許請求の範囲の「指向性のある内部構造の長さ」および「指向性のある内部構造の幅」の一例である。
(被写体の撮像方法)
次に、図9を参照して、第2実施形態によるX線イメージング装置200において被写体Tを撮像する方法の流れについて説明する。なお、第1実施形態と同様のステップの説明については省略する。
ステップS1〜ステップS7において、各格子を所望の角度に配置して撮像された複数の暗視野像13を生成する。その後、ステップS8に進む。
ステップS8において、画像処理部5は、第1格子2および第2格子3を横向き(X方向)に配置して撮像した暗視野像13aおよび第1格子2および第2格子3を縦向き(Y方向)に配置して撮像した暗視野像13bを合成して、全散乱像20を生成する。
次に、ステップS9において、画像処理部5は、合成した全散乱像20から、被写体Tの内部構造(傷14)の特徴量を抽出する。
(画像処理部が生成する画像)
次に、図10を参照して、第2実施形態による画像処理部5が生成する画像について説明する。
図10(A)および図10(B)は、それぞれ、図8(A)および図8(B)と同様の模式図であるので、説明は省略する。図10(C)は、格子を横向き(X方向)に配置して撮像した暗視野像13aと、格子を縦向きに配置して撮像した暗視野像13bとを合成した全散乱像20の模式図である。合成手法としては、どのような手法を用いてもよいが、第2実施形態では、画像処理部5は、図10(A)に示す暗視野像13aと、図10(B)に示す暗視野像13bと、以下に示す式(4)とによって全散乱像20を生成するように構成されている。
ここで、I
dark k(x、y)は、暗視野像13である。また、kは、格子の向きを変えて撮像した複数の暗視野像13のそれぞれを表す数である、また、Mは、撮像した暗視野像13の総数(枚数)である。第2実施形態では、たとえば、M=2である。また、xおよびyは、それぞれ、画像におけるx方向およびy方向の画素の位置座標である。
図10(C)に示す全散乱像20のうち、楕円形の領域16(点状のハッチング部)は、被写体Tに打撃を与えたことにより被写体T内のZ方向における層間の剥離によって生じたX線の散乱によって描出された領域である。楕円形の領域16は、被写体Tの層間の剥離によって、縦方向(Y方向)および横方向(X方向)に散乱されたX線が検出された領域である。
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第2実施形態では、上記のように、画像処理部5は、光軸方向(Z方向)と直交する面内(XY面内)において、格子を複数の角度に配置して撮像された複数の暗視野像13を合成するように構成されている。ここで、暗視野像13は、被写体TにおけるX線の散乱に基づいて画像化しているため、格子の向きに応じて感度が異なる(一部の散乱線を画像化できない)。上記のように構成することにより、複数の方向にX線を散乱させた複数の暗視野像13を合成して生成された全散乱像20により、X線の散乱の感度の差異を補った全方向の散乱像を得ることができる。また、被写体Tの向きを変更せずに撮像することが可能となるので、被写体Tの位置合わせを行うことなく全散乱像20を生成することができる。その結果、全散乱像20を容易に、かつ、正確に生成することができる。
また、第2実施形態では、上記のように、画像処理部5は、複数の暗視野像13を合成して生成した画像(全散乱像20)から、被写体Tの特徴量を取得するように構成されている。これにより、位置合わせ不要で正確に合成できるので、容易に、かつ、高精度に特徴量を取得することができる。
また、第2実施形態では、上記のように、画像処理部5は、被写体Tの特徴量として、被写体T内において指向性のある内部構造(傷14)に関する情報を取得するように構成されており、被写体T内において指向性のある内部構造(傷14)に関する情報は、少なくとも傷14aの長さLと、傷14dの幅Wとを含む。これにより、たとえば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の内部構造(傷14)などの指向性のある内部構造(傷14)の形状をより詳細に把握することができる。
[第3実施形態]
次に、図1および図11〜図14を参照して、第3実施形態によるX線イメージング装置300(図1参照)について説明する。被写体Tの全散乱像20を生成する第2実施形態とは異なり、第3実施形態では、画像処理部5(図1参照)は、複数の格子の角度が異なる複数の暗視野像13を用いて、被写体TによるX線の散乱の指向性を表す散乱指向像22(図13参照)と、被写体TによるX線の散乱の指向性の強弱を表す指向性強弱像23(図14参照)とのうち、少なくともどちらか一方をさらに生成するように構成されている。なお、散乱指向像22とは、被写体Tに対する格子の向きを変更して撮像された暗視野像13により、被写体Tの内部構造の各々がX線を散乱させる方向に基づいて画像化した像である。また、指向性強弱像23とは、被写体Tの内部構造の各々のX線の散乱の指向性の強弱に基づいて画像化した像である。また、上記第1および第2実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
(X線イメージング装置の構成)
まず、図1を参照して、第3実施形態によるX線イメージング装置300の構成について説明する。
第3実施形態では、画像処理部5は、複数の格子の角度が異なる複数の暗視野像13を用いて、被写体TによるX線の散乱の指向性を表す散乱指向像22と、被写体TによるX線の散乱の指向性の強弱を表す指向性強弱像23とのうち、少なくともどちらか一方を生成するように構成されている。具体的には、画像処理部5は、格子を0度、45度、90度および135度に配置して撮像された複数の暗視野像13(図12参照)に基づいて、散乱指向像22と指向性強弱像23とのうち、少なくともどちらか一方を生成するように構成されている。第3実施形態では、散乱指向像22および指向性強弱像23の両方を生成する例を示す。
(被写体の撮像方法)
次に、図11を参照して、第2実施形態によるX線イメージング装置300において被写体Tを撮像する方法の流れについて説明する。なお、第1および第2実施形態と同様のステップの説明については省略する。
ステップS1〜ステップS5、ステップS10およびステップS7において、各格子を所望の角度に配置して撮像された複数の暗視野像13を生成する。その後、ステップS11に進む。なお、ステップS10の処理は、第1および第2実施形態のステップS6における処理とは異なり、制御部6は、格子回動機構7を介して、格子を0度、45度、90度、135度に回動させる。
ステップS11において、画像処理部5は、第1格子2および第2格子3を0度、45度、90度および135度に配置して撮像された複数の暗視野像13に基づいて、散乱指向像22または指向性強弱像23を生成し処理を終了する。
(画像処理部が生成する画像)
次に、図12〜図14を参照して、第3実施形態による画像処理部5が生成する画像について説明する。
図12(A)〜図12(D)は、それぞれ、異なる向きに格子を配置して撮像した暗視野像13の模式図である。具体的には、図12(A)〜図12(D)は、それぞれ、格子を0度、45度、90度および135度に配置した状態で撮像された暗視野像13である。なお、第3実施形態では、被写体Tとして、複数の繊維21を束ねた繊維束を撮像する例を示している。図12に示す例は、環状に曲がった状態で配置された被写体Tを撮像する例である。被写体Tが環状に曲がっているため、被写体T内では、繊維21の格子に対する向きが異なる領域が生じる。格子に対する繊維21の向きが異なると、X線の散乱の感度が異なるため、暗視野像13において写り方が異なる。X線の散乱の感度は、格子の延びる方向とおおむね直交する方向にX線を散乱させた場合に強くなる。図12において、被写体T内の繊維21のうち、X線の散乱の感度が強くなる方向に配置されている繊維21を繊維21aとして実線で図示している。また、X線の散乱の感度が弱くなる方向に配置されている繊維21を繊維21bとして破線で図示している。
第3実施形態では、画像処理部5は、図12に示す複数の暗視野像13に基づいて、散乱指向像22または指向性強弱像23を生成する。具体的には、複数の格子方向で撮影された暗視野像13の複素平面上での中心を以下の式(5)のように定義する。
ここで、S
dark(x、y)は、複数の格子方向で撮影された暗視野像13の複素平面上での中心であり、kは、各格子方向の識別番号に対応する。
画像処理部5は、上記式(4)、上記式(5)、以下に示す式(6)および式(7)に基づいて、散乱指向像22または指向性強弱像23を生成するように構成されている。
ここで、φ
dark(x、y)は、X線の散乱の指向を示す式である。式(6)は、I
dark kをkの関数としたときの位相情報を取得していることになり、これが散乱の指向性に対応する。また、V
dark(x、y)は、X線の散乱の指向性の強弱を示す式である。式(7)は、I
dark kをkの関数としたときの振幅を平均値で規格化しているものであり、これが指向性の強弱に対応する。なお、X線の散乱の指向とは、主としてどの方向にX線を散乱させるかということである。また、X線の散乱の指向性の強弱とは、X線を散乱させる方向の偏りを示しており、X線の散乱の指向性が強いほど、特定の方向にX線を散乱させる。また、X線の散乱の指向性が弱いほど、X線を等方に散乱させる。
ここで、散乱指向像22において、X線の散乱の方向を画素値の違い(濃淡)で表した場合、どの画素値がどの方向にX線を散乱させているのかを一見して把握することが難しい場合がある。そこで、第3実施形態では、画像処理部5は、X線の散乱の指向性と色彩とを対応付けて表示させた散乱指向像22を生成するように構成されている。X線の散乱の指向性と色彩とを対応付けて表示させる方法としては、たとえば、指向性(0度〜359度)を、色相環(色相の変化を環状に示したもの)の各色に対応させて表現する方法などがある。指向性を色相環の各色に対応させて表現した場合、ユーザは、指向性の角度を色相環における対応色の位置に類推して把握することができる。なお、図13に示す例では、便宜上、散乱の指向性と繊維21を示す線の種類とを対応付けて表示している。
すなわち、図13において、被写体Tに含まれる繊維21のうち、X線を縦(90度)方向に散乱させる繊維21を、繊維21cとして、実線で図示している。また、被写体Tに含まれる繊維21のうち、X線を斜め(45度)方向に散乱させる繊維21を、繊維21dとして、一点鎖線で図示している。また、被写体Tに含まれる繊維21のうち、X線を横(0度)方向に散乱させる繊維21を、繊維21eとして、破線で図示している。また、被写体Tに含まれる繊維21のうち、X線を斜め(135度)方向に散乱させる繊維21を、繊維21fとして、二点鎖線で図示している。
また、図14に示す例では、指向性強弱像23において、指向性の強さを繊維21を示す線の種類に対応付けて表示している。すなわち、被写体Tに含まれる繊維21のうち、X線の散乱の指向性が強い繊維21を繊維21gとして実線で図示している。また、被写体Tに含まれる繊維21のうち、X線の散乱の指向性が中程度である繊維21を繊維21hとして破線で図示している。また被写体Tに含まれる繊維21のうち、X線の散乱の指向性が弱い繊維21を繊維21iとして一点鎖線で図示している。
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1および第2実施形態と同様である。
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第3実施形態では、上記のように、画像処理部5は、複数の格子の角度が異なる複数の暗視野像13を用いて、被写体TによるX線の散乱の指向性を表す散乱指向像22と、被写体TによるX線の散乱の指向性の強弱を表す指向性強弱像23とのうち、少なくともどちらか一方をさらに生成するように構成されている。これにより、散乱指向像22を生成することによって、被写体TによるX線の散乱を把握することができる。また、指向性強弱像23を生成することによって、被写体TによるX線の散乱の指向性の強弱を把握することができる。これらの結果、被写体T内において散乱の指向性がそれぞれ異なる複数の内部構造(繊維21)の分布や被写体T内に生じた欠陥の分布などをより詳細に把握することができる。
また、第3実施形態では、上記のように、画像処理部5は、X線の散乱の指向性と色彩とを対応付けて表示させた散乱指向像22を生成するように構成されている。これにより、散乱指向像22においてX線の散乱の指向性と色彩とが関連付けられているので、たとえば、指向性の違いを画素値の差(画像の明暗)によって表示させた散乱指向像22と比較して、X線の散乱の指向性を容易に把握することができる。
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1および第2実施形態と同様である。
[第4実施形態]
次に、図1、図15および図16を参照して、第4実施形態によるX線イメージング装置400(図1参照)について説明する。格子回動機構7が歯車状の格子保持部70および歯車状の回動部71を含む第1実施形態とは異なり、第4実施形態では、格子回動機構7は、格子保持部70と回動部71とがベルト74で接続された、ベルト−プーリ機構によって構成されている。格子保持部70は、たとえば、歯付プーリを含む。回動部71は、たとえば、ピニオンを含む。ベルト74は、たとえば、タイミングベルトを含む。なお、上記第1〜3実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
(格子回動機構の構成)
図15に示すように、第4実施形態による格子回動機構7は、格子保持部70と、回動部71と、格子保持部70と回動部71とを接続するベルト74を含む。第4実施形態における格子回動機構7は、いわゆるベルト−プーリ機構である。また、第4実施形態では、図15に示すように、格子回動機構7は、格子を回動可能な状態と格子を回動不可能な状態とに切り替えるストッパ機構75をさらに含む。格子保持部70、回動部71、ベルト74およびストッパ機構75は、それぞれ、筐体72内に設けられている。
ストッパ機構75は、格子保持部70に当接する当接部材75aと、当接部材75aを格子保持部70に対して付勢する付勢部材75b(図16参照)と、付勢力に抗して当接部材75aを格子保持部70から離間させる当接状態解除部75cとを含む。当接部材75aは、たとえば、ゴムなどのブレーキパッドなどを含む。当接部材75aと、当接状態解除部75cとは、第1中間部材75dを介して接続されている。当接部材75aは、格子保持部70に当接することにより、格子保持部70を回動不可能な状態にするように構成されている。当接部材75aは、中心軸75eを中心に、第1中間部材75dと一体的にZ方向の軸線周りに回動可能に構成されている。
付勢部材75bは、当接部材75aに対して、X2方向に付勢している。具体的には、付勢部材75bは、格子回動機構7のZ2側において、一端側が第2中間部材75fに接続されている。また、付勢部材75bの他端側は、筐体72に固定されている。第2中間部材75fは、中心軸75eを介して当接部材75aと接続されている。付勢部材75bは、X2方向の張力Fを第2中間部材75fに付勢することにより、当接部材75aを格子保持部70に当接させる。付勢部材75bは、たとえば、コイルばねを含む。また、当接状態解除部75cは、制御部6(図1参照)によって電力が供給された際に、第1中間部材75dに対してY2方向の力を印加するように構成されている。当接状態解除部75cは、たとえば、ソレノイドを含む。なお、当接状態解除部75cが第1中間部材75dを介して当接部材75aに印加する力は、付勢部材75bによって当接部材75aに付勢される張力Fよりも大きくなるように設定される。
(ストッパ機構による格子の回動状態の切り替え)
第4実施形態では、ストッパ機構75は、制御部6の制御の下、格子を回動可能な状態と格子を回動不可能な状態とに切り替えるように構成されている。具体的には、ストッパ機構75は、制御部6の制御の下、当接状態解除部75cによって当接部材75aが格子保持部70に当接する状態と、当接部材75aが格子保持部70から離間した状態とを切り替えるように構成されている。
付勢部材75bは、当接部材75aに対して常にX2方向に張力Fを付勢している。当接状態解除部75cは、制御部6によって電力が供給されていない状態では、第1中間部材75dに対してY2方向に力を印加しない。したがって、当接状態解除部75cに対する通電が行われていない場合は、当接部材75aに対しては付勢部材75bからの張力Fのみが印加されている。この状態が、格子を回動不可能な状態である。格子を回動不可能な状態では、当接部材75aは付勢部材75bによってX2方向に付勢されているため、格子保持部70に当接した状態となっている。したがって、格子保持部70は回動することができない。
一方、制御部6によって当接状態解除部75cに対して通電された場合、当接状態解除部75cが第1中間部材75dに対してY2方向の力を印加することにより、当接部材75aを格子保持部70から離間した状態にする。この状態が、格子を回動可能な状態である。被写体Tに対する格子の向きを変更したい場合には、制御部6は当接状態解除部75cに通電することにより、当接部材75aを離間させることにより、格子保持部70を回動可能な状態にする。上記のようにして、ストッパ機構75は、格子を回動可能な状態と格子を回動不可能な状態とに切り替えるように構成されている。
また、図15に示すように、第4実施形態では、格子回動機構7は、格子の原点位置を検知する原点位置検知部76を備える。原点位置検知部76は、格子保持部70に設けられた被検知部77の位置を検知するように構成されている。原点位置検知部76は、たとえば、フォトセンサを含む。図15に示す例では、原点位置検知部76は、格子保持部70の中心からY2方向に延びる線80上に設けられている。第4実施形態では、制御部6は、原点位置検知部76によって被検知部77が検知された位置を格子の原点位置として記憶部(図示せず)に記憶するように構成されている。
なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1〜第3実施形態と同様である。
(第4実施形態の効果)
第4実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第4実施形態では、上記のように、格子回動機構7は、格子を回動可能な状態と格子を回動不可能な状態とに切り替えるストッパ機構75をさらに含む。これにより、被写体Tを撮像する際に格子を回動不可能な状態にしておくことにより、たとえば、回動部71の誤作動など、意図しない格子の回転を抑制することができる。その結果、格子回動機構7により格子の向きを変更した後、撮像を行うまでに、格子の光軸周りの回転方向における意図しない位置ずれが発生することを抑制することができる。
また、第4実施形態では、上記のように、ストッパ機構75は、格子保持部70に当接する当接部材75aと、当接部材75aを格子保持部70に対して付勢する付勢部材75bと、付勢部材75bの付勢力に抗して当接部材75aを格子保持部70から離間させる当接状態解除部75cとを含む。これにより、当接状態解除部75cを作動させることにより、付勢部材75bの付勢力による格子を回動不可能な状態から、格子を回動可能な状態に切り替えることができる。その結果、格子の向きを変更する時に限定して格子を回動可能な状態にすることが可能となるので、簡単な構成で格子の回転位置ずれを極力抑制することができる。
また、第4実施形態では、上記のように、格子回動機構7は、格子の原点位置を検知する原点位置検知部76をさらに備える。これにより、各格子を回動させる際に、各格子が原点位置に配置されているかを容易に確認することができる。その結果、各格子を回動させる際に、それぞれの格子を容易に初期位置に配置することができる。
なお、第5実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
[第5実施形態]
次に、図17および図18を参照して、第5実施形態によるX線イメージング装置500について説明する。被写体Tの2次元暗視野像13を生成する第1実施形態とは異なり、第2実施形態では、X線イメージング装置500は、X線源1と検出器4と複数の格子とによって構成される撮像系17と被写体Tとを相対回転させる回転機構18をさらに備え、画像処理部5は、被写体Tと撮像系17とを相対回転させながら複数の回転角度において撮像された複数の暗視野像13から、3次元暗視野像を生成するように構成されている。なお、上記第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する。
(X線イメージング装置の構成)
まず、図17を参照して、第5実施形態によるX線イメージング装置500の構成について説明する。
図17に示すように、第5実施形態におけるX線イメージング装置500は、X線源1と検出器4と複数の格子とによって構成される撮像系17と被写体Tとを相対回転させる回転機構18をさらに備える。具体的には、回転機構18は、被写体Tを回転軸AR周りに回転させることにより、被写体Tと撮像系17とを相対回転させるように構成されている。回転機構18は、たとえば、被写体Tを配置する回転可能な被写体ステージであり、モータなどを含む。
(被写体の撮像方法)
次に、図18を参照して、第5実施形態によるX線イメージング装置500において被写体Tを撮像する方法の流れについて説明する。なお、第1実施形態と同様のステップの説明については省略する。
第5実施形態では、画像処理部5は、被写体Tと撮像系17とを相対回転させながら複数の回転角度において撮像された複数の暗視野像13から、3次元暗視野像を生成するように構成されている。
具体的には、ステップS1およびステップS2において、第1格子2および第2格子3を横向き(X方向)に配置し、被写体Tを回転機構18に配置する。その後、ステップS12へ進む。
ステップS12において、制御部60は、回転機構18を介して被写体Tを回転させることにより被写体Tと撮像系17とを相対回転させながら、複数の回転角度において第1格子2を並進移動させて撮像することにより、複数の暗視野像13を撮像する。その後、ステップS13へ進む。なお、本明細書において、被写体Tを回転させながら第1格子2を並進移動させて撮像する手法を、位相CT撮像とする。
ステップS13において、画像処理部5は、被写体Tと撮像系17とを相対回転させながら複数の回転角度において撮像された複数の暗視野像13から、3次元暗視野像を生成する。
その後、ステップS5において、格子の向きを変更して撮像したかを判定する。格子の向きを変更して撮像している場合、処理を終了する。格子の向きを変更して撮像していない場合は、ステップS6へと進む。
なお、第5実施形態のその他の構成は、上記第1〜第4実施形態と同様である。
(第5実施形態の効果)
第5実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第5実施形態では、上記のように、X線源1と検出器4と複数の格子とによって構成される撮像系17と被写体Tとを相対回転させる回転機構18をさらに備え、画像処理部5は、被写体Tと撮像系17とを相対回転させながら複数の回転角度において撮像された複数の暗視野像13から、3次元暗視野像を生成するように構成されている。ここで、被写体Tと撮像系17との相対回転を行う際の回転軸ARの方向と格子の向きとによっても強調されるX線の散乱方向が異なるため、被写体Tと撮像系17との相対回転を行う際の回転軸ARの方向を変更したい場合がある。また、被写体Tと撮像系17との相対回転を行う際の回転軸ARに対する被写体Tの向きを変更したい場合もある。上記のように位相CT撮像を行うことにより、被写体Tと撮像系17との相対回転を行う際の回転軸ARの方向を変更することなく、格子に対する被写体Tの向きを変更して撮像した3次元暗視野像を生成することができる。また、被写体Tの向きを変更することなく格子に対する被写体Tの向きを変更して撮像した3次元暗視野像を生成することができる。その結果、被写体Tと撮像系17との相対回転を行う際の回転軸ARの方向を変更するための機構および被写体Tの向きを変更するための機構を組み合わせる必要がなくなるため、装置構成が複雑化することを抑制することができる。
なお、第5実施形態のその他の効果は、上記第1〜第4実施形態と同様である。
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記第1〜第5実施形態では、格子移動機構8が、第1格子2を並進移動させる例を示したが、本発明はこれに限られない。並進移動させる格子はいずれの格子であってもよい。
また、上記第1〜第5実施形態では、格子位置調整機構9が、第1格子2の位置ずれを調整する例を示したが、本発明はこれに限られない。位置ずれを調整する格子はいずれの格子であってもよい。
また、上記第1〜第5実施形態では、格子移動機構8の上部に格子位置調整機構9を配置する例を示したが、本発明はこれに限られない。格子移動機構8および格子位置調整機構9は別々の格子の下に配置されていてもよい。
また、上記第1〜第5実施形態では、複数の格子として、第1格子2および第2格子3を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図13に示すX線イメージング装置400のように、X線源1と第1格子2との間に、第3格子19を設ける構成でもよい。第3格子19は、Y方向に所定の周期(ピッチ)d4で配列される複数のスリット19aおよびX線吸収部19bを有している。各スリット19aおよびX線吸収部19bはそれぞれ、直線状に延びるように形成されている。また、各スリット19aおよびX線吸収部19bはそれぞれ、平行に延びるように形成されている。また、第3格子19は、X線源1と第1格子2との間に配置されており、X線源1からX線が照射される。第3格子19は、各スリット19aを通過したX線を、各スリット19aの位置に対応する線光源とするように構成されている。また、第3格子19を設ける構成では、第3格子19を回動可能に保持する格子回動機構7が設けられ、第3格子19は、制御部6からの信号によって、格子回動機構7を介して第1格子2および第2格子3と略同一の回動角度θに配置されるように構成されている。これにより、第3格子19は、X線源1から照射されるX線の可干渉性を高めることができる。その結果、X線源1の焦点サイズに依存することなく第1格子2の自己像12を形成させることが可能となるので、X線源1の選択の自由度を向上させることができる。
また、第3格子19をさらに設ける場合において、複数の格子は、複数の格子のいずれか1つの格子間における相対位置が調整されることにより、第2格子3および第3格子19が、第1格子2を基準として相対的かつ対照的な相対位置に配置されるように構成されている。すなわち、第3格子19と第1格子2との間の距離と、第1格子2と第2格子3との間の距離とが等しくなるように各格子が配置されている場合、第3格子19がXY面内において、X線の光軸方向(Z方向)と直交する水平方向(X方向)を基準として、角度θだけ回動して配置されている場合、第2格子3がXY面内において、X線の光軸方向(Z方向)と直交する水平方向(X方向)を基準として、角度θだけ反対方向(マイナス方向)に回動して配置されていれば、検出器4上のモアレ縞11が消えるため、位置調整が完了した配置とみなすことができる。上記のように構成すれば、第1格子2、第2格子3、および第3格子19のうちのいずれか1つの位置を、第1格子2を基準として相対的かつ対照的な相対位置に配置することにより、複数の格子の位置調整を行うことが可能となるので、複数の格子の格子間における相対位置を容易に調整することができる。
また、上記第1、第2、第4および第5実施形態では、縦方向(Y方向)および横方向(X方向)の例として、略90度および略0度に格子を向ける例を示したが、本発明はこれに限られない。互いに略直交する2方向であれば、略90度および略0度以外の方向に格子を配置してもよい。たとえば、30度と120度の向きに各格子を配置してもよい。また、格子を配置する向きは、互いに異なっていれば、任意の角度に配置してもよく、第3実施形態のように、2方向よりも多くの角度に格子を配置して撮像してもよい。ただし、互いの角度が近い場合、X線の散乱が強調されない方向が含まれる可能性があるので、少なくとも略直交する2方向を含めた方向に格子を配置して撮像する方が好ましい。
また、上記第5実施形態では、被写体Tを回転させる例を示したが、本発明はこれに限られない。撮像系17を回転させる構成でもよい。
また、上記第1〜第5実施形態では、第1格子2を並進移動させることにより暗視野像13を生成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば。複数の格子のうち、いずれか1つをXY平面内で回転させてモアレ縞11を形成して撮像するモアレ1枚撮り手法によって暗視野像13を生成するように構成されていてもよい。
また、上記第1〜第5実施形態では、第1格子2として、位相格子を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1格子2として、吸収格子を用いてもよい。
また、上記第1、第2、第4および第5実施形態では、被写体Tとして、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を撮像する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)などを被写体として用いてもよい。撮像する被写体内に指向性のある内部構造が含まれていれば、どのような被写体であってもよい。
また、上記第1〜第5実施形態では、被写体TをX線源1と第1格子2との間に配置する例を示したが、本発明はこれに限られない。第1格子2と第2格子3との間に被写体Tを配置してもよい。なお、いずれの場合においても、第1格子2から離れた位置に被写体Tを配置すると、位相感度が低下するため、被写体Tは第1格子2に近い位置に配置することが好ましい。
また、上記第4実施形態では、格子回動機構7のそれぞれに回動部71を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、各格子を回動させる複数の格子回動機構7を、1つの回動部71によって回動させるように構成されていてもよい。
また、上記第3実施形態では、画像処理部5が、散乱指向像22および指向性強弱像23の両方を生成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画像処理部5は、散乱指向像22または指向性強弱像23のどちらか一方を生成するように構成されていてもよい。また、画像処理部5は、第2実施形態において生成した全散乱像20と、散乱指向像22と、指向性強弱像23とを組み合わせて合成した合成画像を生成するように構成されていてもよい。
また、上記第4実施形態では、ベルト−プーリ機構である格子回動機構7がストッパ機構75を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1実施形態に示すように、格子回動機構7が歯車状の格子保持部70と、歯車状の回動部71とを含む構成において、ストッパ機構75を設ける構成であってもよい。
また、上記第3実施形態では、画像処理部5が、上記式(6)および上記式(7)によって、散乱指向像22および指向性強弱像23を取得する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画像処理部5は、I
dark kを、kの関数としてサインカーブ(正弦波)によってフィッティングすることにより、散乱指向像22および指向性強弱像23を取得するように構成されていてもよい。具体的には、暗視野像13を以下に示す式(8)のように正弦波であると仮定する。
ここで、θは、格子の角度である。また、φは、I
dark kをkの関数としたときの位相情報である。画像処理部5は、上記式(8)の位相情報φからφ
dark(x、y)を、B/AからV
dark(x、y)を算出することにより、散乱指向像22および指向性強弱像23を取得するように構成されていてもよい。またk(格子方向)は4方向に限定されるわけではない。格子を配置する方向は2方向であってもよい。しかし、格子を配置する方向が2方向である場合、被写体TによるX線の散乱の方向によっては、感度よく検出することが難しい場合があるので、格子を配置する方向は、3方向以上であることが好ましい。またkは等間隔である必要もないが、その場合は上記式(8)のようなサインカーブのフィッティング方法で散乱指向像22や指向性強弱像23を算出することが好ましい。