JP2019044945A - トルク伝達軸 - Google Patents

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Abstract

【課題】トルク伝達軸に接続される軸の振れ回りを抑えることができる構造を実現する。【解決手段】軸方向一端部にヨーク部22が一体に設けられ、かつ、軸方向他端部の外周面に突条であるシャフト側係合部33が設けられたシャフト20と、挿入孔37の内周面に軸方向に伸長した凹溝であるクランプ側係合部38が設けられたクランプ21とを、互いに別体とし、シャフト20の軸方向他端部にクランプ21を外嵌した状態で、シャフト側係合部33とクランプ側係合部38とを凹凸係合させ、かつ、シャフト側係合部33のうち、軸方向に関してクランプ21の両側に隣接する部分にかしめ変形部40を形成する。【選択図】図1

Description

本発明は、自動車用のステアリング装置などに組み込まれるトルク伝達軸に関する。
図12は、特開2017−25964号公報に記載され、従来から知られた自動車用のステアリング装置を示している。ステアリング装置は、ステアリングホイール1と、ステアリングシャフト2と、ステアリングコラム3と、1対の自在継手4a、4bと、中間シャフト5と、ステアリングギヤユニット6と、1対のタイロッド7とを備えている。
ステアリングホイール1は、ステアリングコラム3の内側に回転自在に支持されたステアリングシャフト2の後端部に取り付けられている。ステアリングシャフト2の前端部は、1対の自在継手4a、4b及び中間シャフト5を介して、ステアリングギヤユニット6のピニオン軸8に接続されている。そして、ピニオン軸8の回転を図示しないラックの直線運動に変換することで、1対のタイロッド7を押し引きし、操舵輪にステアリングホイール1の操作量に応じた舵角を付与する。なお、前後方向とは、ステアリング装置が組み付けられる車体の前後方向をいう。
自在継手4a、4bは、互いに同一直線上に存在しない回転軸である、ステアリングシャフト2と中間シャフト5並びに中間シャフト5とピニオン軸8を、互いにトルク伝達可能に接続するものであり、例えば特開2011−220398号公報に記載されているように、従来から1対のヨークと十字軸とを備えた十字軸式の自在継手が使用されている。
特開2017−25964号公報 特開2011−220398号公報
ところで、大型の自動車に搭載されるステアリング装置にあっては、ステアリングシャフトからステアリングギヤユニットまでの距離が長くなる。このため、複数の軸(トルク伝達軸)同士を連結して中間シャフトを構成したり、自在継手を構成するヨークと、ステアリングシャフトやピニオン軸などの軸との間に、別の軸(いわゆるエクステンションシャフト)を介在させたりすることが考えられている。
図13は、本発明者等が先に考えた中間シャフトを構成するトルク伝達軸9を示している。トルク伝達軸9は、蛇腹部を有する第一軸10と、第二軸11との間に配置され、これら第一軸10及び第二軸11に対してそれぞれトルク伝達可能に接続される。トルク伝達軸9には、軸方向一端部の外周面に、接続部に相当する雄セレーション12が設けられており、軸方向他端部の内周面に雌セレーション13が設けられている。トルク伝達軸9の軸方向他端部には、トルク伝達軸9の軸方向他端部を縮径するためのクランプ部14が一体に設けられている。具体的には、トルク伝達軸9の軸方向他端部の円周方向1箇所に不連続部が設けられており、該不連続部の両側に1対のフランジ部15が設けられている。フランジ部15には、図示しない締付部材を挿入するための取付孔16が設けられている。
トルク伝達軸9の軸方向一端部は、第一軸10の軸方向他端部の内側に挿入し、雄セレーション12を第一軸10の内周面に形成された雌セレーション17にセレーション係合させる。また、トルク伝達軸9と第一軸10とを溶接固定する。
トルク伝達軸9の軸方向他端部の内側には、第二軸11の軸方向片端部を挿入し、雌セレーション13に第二軸11の外周面に形成された雄セレーション18をセレーション係合させる。また、前記締付部材の先端部を取付孔16又は図示しないナットに螺合することで、トルク伝達軸9の内周面により第二軸11の外周面を強く締め付ける。
上述のような構成を有するトルク伝達軸9は、冷間鍛造加工により造られる場合が多く、熱間鍛造加工により造られる場合に比べて形状精度及び寸法精度は高いが、金属材料の流動が複雑になるクランプ部14を一体に設けていることなどに起因して、トルク伝達軸9の軸方向両端部に設ける雄セレーション12と雌セレーション13との同軸度を高度に確保することが難しくなる。また、トルク伝達軸9と第一軸10とを溶接固定しているため、熱変形などに起因して、トルク伝達軸9と第一軸10との同軸度が低くなりやすい。このため、図13の(C)に示すように、トルク伝達軸9に接続される軸(第一軸10又は第二軸11)の振れ回りが大きくなる可能性がある。この結果、ステアリング装置の一部で、振れ回りに起因した異音(回転方向の摺動異音、スティックスリップ振動異音など)を発生させる可能性がある。
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、トルク伝達軸に接続される軸の振れ回りを抑えられる構造を実現することにある。
本発明のトルク伝達軸は、シャフトと、クランプとを備える。
前記シャフトは、中空状に構成されており、軸方向一端部には、他の部材に対してトルク伝達可能に接続される接続部が設けられ、かつ、軸方向他端部には、軸方向に伸長したスリットが設けられている。また、前記シャフトには、内周面の軸方向他端部に、雌セレーションが設けられ、かつ、外周面の軸方向他端部に、軸方向に伸長した突条又は凹溝であるシャフト側係合部が設けられている。
前記クランプは、例えば欠円筒状に構成されており、前記シャフトの軸方向他端部に外嵌されて、前記シャフトの軸方向他端部を縮径させるものである。前記クランプには、円周方向1箇所に不連続部が設けられ、かつ、前記不連続部を挟んで両側に、締付部材を挿入するための取付孔をそれぞれ有する1対のフランジ部が設けられている。さらに、前記クランプのうち、前記シャフトが挿入される挿入孔の内周面には、軸方向に伸長した凹溝又は突条であるクランプ側係合部が設けられている。
特に本発明のトルク伝達軸にあっては、前記シャフト側係合部と前記クランプ側係合部とが凹凸係合している。
本発明では、前記スリットの軸方向一端部である奥端部に、軸方向他方側に隣接する部分に比べて幅寸法が大きい応力緩和部を設けることができる。前記応力緩和部としては、例えば円形状や楕円形状、滴形状など、内面を凹曲面により構成した形状を採用することができる。
本発明では、前記シャフト側係合部のうちで、軸方向に関して前記クランプの両側に隣接する部分に、前記シャフト側係合部を塑性変形させて成る塑性変形部をそれぞれ設けることができる。
前記塑性変形部としては、例えば、前記シャフト側係合部のうちで、軸方向に関して前記クランプの両側に隣接する部分をかしめ変形させて成る、かしめ変形部を採用できる。
本発明では、前記シャフト側係合部を突条とし、前記クランプ側係合部を凹溝とすることもできるし、反対に、前記シャフト側係合部を凹溝とし、前記クランプ側係合部を突条とすることもできる。
本発明では、前記シャフトの外周面のうちで前記各取付孔と対向する部分に、前記シャフトの中心軸に直交する方向に伸長し、かつ、その内側に前記締付部材が配置される係合凹溝を設けることができる。
本発明では、前記接続部を、自在継手を構成する二股状のヨーク部とすることができる。
あるいは、前記接続部を、セレーション部若しくはスプライン部、又はキー係合部とすることもできる。
本発明によれば、トルク伝達軸に接続される軸の振れ回りを抑えることができる。
図1は、実施の形態の第1例に係るトルク伝達軸の斜視図である。 図2は、実施の形態の第1例に係るトルク伝達軸の分解斜視図である。 図3は、実施の形態の第1例に係るトルク伝達軸の側面図である。 図4は、図3のA矢視図である。 図5は、実施の形態の第1例に係るトルク伝達軸を軸方向他方側から見た端面図である。 図6は、実施の形態の第1例に係るトルク伝達軸を構成するシャフトを取り出して示す平面図である。 図7は、実施の形態の第1例に係るトルク伝達軸を構成するクランプを取り出して示す断面図である。 図8は、実施の形態の第1例に係るトルク伝達軸と該トルク伝達軸に接続される軸とを示す分解斜視図である。 図9は、実施の形態の第1例に係るトルク伝達軸と該トルク伝達軸に接続される軸との接続状態を示す断面図である。 図10は、実施の形態の第2例に係るトルク伝達軸の分解斜視図である。 図11は、実施の形態の第2例に関する、図4に相当する図である。 図12は、従来から知られているステアリング装置を示す部分断面側面図である。 図13の(A)は、本発明者等が先に考えたトルク伝達軸を、第一軸及び第二軸にそれぞれ接続した状態を示す断面図であり、図13の(B)は(A)の分解図であり、図13の(C)は、第一軸及び第二軸に振れ回りが生じる状態を説明するための模式図である。
[実施の形態の第1例]
実施の形態の第1例について、図1〜図9を用いて説明する。
本例のトルク伝達軸19は、例えば大型の自動車のステアリング装置に組み込まれて、互いに同一直線上に存在しない回転軸である、ステアリングシャフトと中間シャフト、又は、中間シャフトとピニオン軸をトルク伝達可能に接続するために使用する。
トルク伝達軸19は、互いに別体に構成された、中空筒状のシャフト20と欠円筒状(略U字状)のクランプ21とから構成されている。なお、以下の説明において、軸方向とは、特に断らない限り、トルク伝達軸19の軸方向をいう。また、軸方向に関して一端側とは、図1〜図4、図6、図8及び図9の左端側をいい、軸方向に関して他端側とは、図1〜図4、図6、図8及び図9の右端側をいう。
シャフト20は、例えば炭素鋼鋳鋼材(SC材)などの素材に、鍛造加工(冷間鍛造加工又は熱間鍛造加工)及び切削加工等を施すことにより造られている。シャフト20は、軸方向一端部に設けられた接続部に相当する二股状のヨーク部22と、軸方向他端部乃至中間部に設けられた筒部23とを備えている。
ヨーク部22は、十字軸式の自在継手を構成するもので、1対の腕部24a、24bから構成されている。これら各腕部24a、24bは、筒部23の軸方向一端縁の直径方向反対側となる2個所位置から軸方向一方側に伸長する状態で設けられている。これら各腕部24a、24bの先端部には、円孔25が互いに同軸に形成されている。円孔25の内側には、図示しない軸受カップ及びニードルが配置され、十字軸を構成する軸部が回転自在に支持される。
シャフト20を構成する筒部23は、全体が中空筒状に構成されており、軸方向一方側から順に、大径筒部26と、円すい筒部27と、小径筒部28とを備えている。
大径筒部26は、図示の例では段付円筒状に構成されており、その軸方向他端縁が、円すい筒部27の軸方向一端縁につながっている。また、大径筒部26の外径寸法及び内径寸法は、小径筒部28の外径寸法及び内径寸法よりも大きくなっている。
円すい筒部27は、外径寸法及び内径寸法が、軸方向他方側に向かうほど小さくなる部分円すい筒状に構成されており、その軸方向他端縁が、小径筒部28の軸方向一端縁につながっている。
小径筒部28は、円筒状に構成されており、シャフト20の軸方向他端部乃至中間部にわたる範囲に設けられている。小径筒部28の外周面は、後述するシャフト側係合部33を除き、軸方向にわたり外径寸法が変化しない円筒面状に構成されているのに対し、小径筒部28の内周面には、雌セレーション29がその全長にわたり形成されている。小径筒部28の内側には、図8及び図9に示すように、例えばステアリングシャフトやピニオン軸などの軸41の端部が挿入され、該軸41の端部外周面に形成された雄セレーション42を、雌セレーション29に対しセレーション係合させる。
小径筒部28のうち、ヨーク部22を構成する一方の腕部24aと周方向位置(位相)が一致する部分には、軸方向に伸長したスリット30が形成されている。スリット30は、小径筒部28の内外両周面同士を連通させる。スリット30の軸方向一端部である奥端部は、小径筒部28の軸方向中間部に位置しており、スリット30の軸方向他端縁部は、小径筒部28(シャフト20)の軸方向他端縁に開口している。スリット30の奥端部には、軸方向他方側に隣接する部分に比べて幅寸法が大きくなった、平面視略円形状の応力緩和部31が設けられている。このように、シャフト20の軸方向他端部にスリット30を設けることで、シャフト20の軸方向他端部(小径筒部28の軸方向他半部)を縮径可能に構成している。また、スリット30の奥端部に応力緩和部31を設けることで、シャフト20を縮径した際に、応力が集中しやすいスリット30の奥端部に亀裂などの損傷が生じることを防止している。
小径筒部28の軸方向他端寄り部分の外周面のうちで、ヨーク部22を構成する一方の腕部24aと周方向位置が一致する部分には、シャフト20の中心軸に対し直交する方向に伸長した係合凹溝32が設けられている。このため、係合凹溝32は、スリット30と交差するように形成されており、これら係合凹溝32とスリット30との交差部には、スリット30のうちで交差部の軸方向両側に隣接する部分に比べて幅寸法が大きくなった幅広部が形成されている。また、係合凹溝32は、部分円筒面状に構成されており、その曲率半径はクランプ21に設けられた後述する取付孔39a(39b)の曲率半径とほぼ同じである。
シャフト20の軸方向他端部乃至中間部にわたる範囲の外周面、具体的には、小径筒部28の軸方向他端部から円すい筒部27の軸方向中間部にわたる範囲の外周面に、軸方向に伸長した突条であるシャフト側係合部33を設けている。シャフト側係合部33は、シャフト20の外周面のうち、シャフト20の直径方向に関してスリット30とは反対側部分に設けられている。また、シャフト側係合部33は、断面半円形状で、シャフト20の中心軸から頂部までの高さ寸法及び幅寸法が全長にわたり一定である。
クランプ21は、シャフト20の軸方向他端部に外嵌されて、シャフト20の軸方向他端部を縮径させるものである。具体的には、クランプ21は、シャフト20を構成する小径筒部28の軸方向他端部に外嵌されて、小径筒部28の軸方向他半部を縮径させる。このようなクランプ21は、シャフト20を構成する材料よりも硬度の高い、例えばS35C(機械構造用炭素鋼)などの素材に熱間鍛造加工もしくは切削加工等を施すことにより、あるいは、例えばS10C又はS15C(機械構造用炭素鋼)などの素材に加工硬化を生じる冷間鍛造加工を施すことにより造られている。
クランプ21は、全体が欠円筒状(略U字状)に構成されており、半円筒状の基部34と、該基部34の円周方向両端部に設けられたそれぞれが略矩形板状の1対のフランジ部35とを有している。また、1対のフランジ部35同士の間部分に位置するクランプ21の円周方向1箇所には、不連続部36が設けられている。したがって、不連続部36を挟んで両側には、1対のフランジ部35が設けられている。また、シャフト20の軸方向他端部にクランプ21を固定した状態で、不連続部36とシャフト20に設けられたスリット30との周方向位置は互いに一致している。また、本例では、クランプ21の自由状態での不連続部36の幅寸法と、シャフト20(小径筒部28)の自由状態でのスリット30の幅寸法とを、互いに同じにしている。
クランプ21には、シャフト20の小径筒部28を挿入するための挿入孔37が設けられている。挿入孔37は、基部34の内周面と1対のフランジ部35の径方向内側面とにより構成されており、部分円筒面状になっている。挿入孔37の内径寸法は、クランプ21の自由状態で、小径筒部28の自由状態での外径寸法と同じかこれよりも僅かに大きい。
挿入孔37の内周面には、軸方向に伸長した凹溝であり、シャフト側係合部33と凹凸係合可能なクランプ側係合部38を設けている。クランプ側係合部38は、挿入孔37の内周面のうち、挿入孔37の直径方向に関して不連続部36とは反対側部分に設けられている。また、クランプ側係合部38は、挿入孔37の軸方向全幅にわたり設けられており、クランプ21の軸方向両端面にそれぞれ開口している。クランプ側係合部38は、断面半円形状で、深さ寸法及び幅寸法が全長にわたり一定である。本例では、シャフト20の軸方向他端部にクランプ21を固定した状態で、クランプ側係合部38の内側にシャフト側係合部33を進入させて、これらシャフト側係合部33とクランプ側係合部38とを凹凸係合させている。
1対のフランジ部35のうち、互いに整合する部分には、それぞれ取付孔39a、39bが同軸に形成されている。これら各取付孔39a、39bは、挿入孔37の中心軸に対し捩れの位置に形成されており、それぞれ挿入孔37に開口している。また、1対の取付孔39a、39bのうち、一方の取付孔39aは通孔で、他方の取付孔39bはねじ孔である。シャフト20の軸方向他端部にクランプ21を固定した状態で、1対の取付孔39a、39bの開口部にそれぞれ対向する位置に、係合凹溝32が形成されている。
本例では、後述するようにシャフト20の軸方向他端部にクランプ21を固定する以前の状態で、締付部材である締付ボルト43を、1対の取付孔39a、39bの内側に挿入するとともに、係合凹溝32の内側に配置する。具体的には、締付ボルト43の基端寄り部分を通孔である一方の取付孔39aの内側にがたつきなく挿入するとともに、締付ボルト43の中間部を係合凹溝32の内側にがたつきなく配置する。この状態で、締付ボルト43の先端部を、ねじ孔である他方の取付孔39bに少しだけ螺合させる(小径筒部28を縮径するほどは螺合させない)。これにより、係合凹溝32と、クランプ21に対して両端部が支持された締付ボルト43とを、キー係合させられるため、シャフト20とクランプ21との軸方向に関する位置決めを図る。
特に本例では、シャフト20の軸方向他端部にクランプ21を外嵌した状態で、シャフト側係合部33とクランプ側係合部38とを凹凸係合させて、シャフト20とクランプ21とが相対回転するのを防止している。さらに、シャフト側係合部33のうち、軸方向に関してクランプ21の両側に隣接する部分をかしめ変形(例えばクランプ21の軸方向端面側に近づく程盛り上がるように塑性変形)させて、当該部分にかしめ変形部40を形成している。これにより、シャフト20とクランプ21とが軸方向に相対変位することを防止している。本例では、このようにシャフト側係合部33とクランプ側係合部38を利用して、シャフト20の軸方向他端部にクランプ21を固定している。
上述のような構成を有するトルク伝達軸19を製造するには、先ず、クランプ21の挿入孔37の内側にシャフト20を軸方向他端側から挿入する。この際、シャフト側係合部33とクランプ側係合部38とを凹凸係合させることで、シャフト20とクランプ21との周方向に関する位置決め(位相合わせ)を行う。次いで、1対の取付孔39a、39bと係合凹溝32との軸方向位置が一致するまで、シャフト20とクランプ21とを軸方向に相対移動させる。次いで、1対の取付孔39a、39bと係合凹溝32の内側に、締付ボルト43を配置することで、シャフト20とクランプ21との軸方向に関する位置決めを図る。そして最後に、シャフト側係合部33のうち、軸方向に関してクランプ21の両側に隣接する部分(クランプ21の軸方向両側に露出した部分)にかしめ変形部40を形成して、シャフト20とクランプ21とを固定する。
トルク伝達軸19の使用状態では、トルク伝達軸19の軸方向一端部に設けられたヨーク部22を図示しない別のヨーク及び十字軸と組み合わせて、トルク伝達軸19を、前記別のヨークを備えた中間シャフトなどの軸にトルク伝達可能に接続する。これに対して、小径筒部28の内側には、ステアリングシャフトやピニオン軸などの軸41を挿入し、該軸41の外周面に形成された雄セレーション42を、小径筒部28の内周面に形成された雌セレーション29にセレーション係合させる。これにより、トルク伝達軸19と軸41との相対回転を防止する。また、軸41の先端部外周面に雄セレーション42を周方向に横切るように形成された環状凹溝44の内側に、係合凹溝32とスリット30との交差部である幅広部を通じて締付ボルト43の中間部を進入させて、環状凹溝44と締付ボルト43とをキー係合させる。これにより、軸41とトルク伝達軸19とが軸方向に相対移動することを防止する。また、締付ボルト43の螺合量を増やして不連続部36の幅寸法を小さくし、小径筒部28を縮径することで、小径筒部28の内周面により軸41の外周面を強く締め付ける。これにより、トルク伝達軸19とステアリングシャフトやピニオン軸などの軸41とをトルク伝達可能に結合する。
以上のような構成を有する本例のトルク伝達軸19によれば、トルク伝達軸19に接続される軸の振れ回りを抑えることができる。
すなわち、本例のトルク伝達軸19は、クランプ21を、シャフト20に対して一体に設けずに、クランプ21に設けたクランプ側係合部38と、シャフト20に設けたシャフト側係合部33とを凹凸係合させることで、シャフト20とクランプ21との円周方向に関する相対変位を防止し、かつ、シャフト側係合部33にかしめ変形部40を形成することで、シャフト20とクランプ21との軸方向に関する相対変位を防止して、シャフト20とクランプ21とを固定している。このため、シャフト20の軸方向両端部に設けるヨーク部22と雌セレーション29との同軸度を高く確保できる。さらに、シャフト20とヨーク部22とを一体に設けているため、溶接時の熱変形の影響を受けずに済み、シャフト20(筒部23)に対するヨーク部22の同軸度を高く確保できる。したがって、ヨーク部22に接続される軸及び雌セレーション29に接続される軸41の振れ回りを抑えることができる。この結果、ステアリング装置の一部で、軸の振れ回りに起因した異音(回転方向の摺動異音、スティックスリップ振動異音など)が発生することを防止できる。また、シャフト20を中空状に構成しているため、トルク伝達軸19全体としての軽量化を図る上で有利になる。
[実施の形態の第2例]
実施の形態の第2例について、図10及び図11を用いて説明する。
本例では、シャフト20の外周面に、軸方向に伸長した凹溝であるシャフト側係合部33aを設けている。これに対し、クランプ21の挿入孔37の内周面に、軸方向に伸長した突条であるクランプ側係合部38aを設けている。なお、シャフト側係合部33aの深さ寸法及び幅寸法、並びに、クランプ側係合部38aの高さ寸法及び幅寸法は、それぞれ全長にわたり一定である。
そして、シャフト20の軸方向他端部にクランプ21を外嵌した状態で、シャフト側係合部33aとクランプ側係合部38aとを凹凸係合させている。さらに、シャフト側係合部33aのうち、軸方向に関してクランプ21の両側に隣接する部分(クランプ21の軸方向両側に露出した部分)をかしめ変形(例えば凹溝の幅が狭くなるように塑性変形)させて、当該部分にかしめ変形部40aを形成している。このような本例の場合にも、シャフト側係合部33aとクランプ側係合部38aを利用して、シャフト20とクランプ21との、相対回転及び軸方向に関する相対変位を防止できる。
その他の構成及び作用効果については、実施の形態の第1例と同じである。
本発明を実施する場合に、シャフトに形成するスリットの円周方向位置は、実施の形態の各例で示した位置に限定されない。また、スリットの数も、1つに限らず、複数設けることもできる。さらに、スリットの奥端部に形成する応力緩和部の形状も、実施の形態の各例で示した形状に限定されず、楕円形状や滴形状などのその他の形状を採用することもできる。
また、本発明を実施する場合に、突条の高さ寸法、及び、凹溝の深さ寸法は、軸方向にわたり一定としなくても良い。例えば、シャフト側係合部を突条とし、クランプ側係合部を凹溝とする場合には、シャフト側係合部の高さ寸法を軸方向一方側に向かう程大きくする、又は、クランプ側係合部の溝深さを軸方向他方側に向かう程小さくすることで、シャフトとクランプとを軸方向に相対移動させた際に、適切な固定位置にて、シャフト側係合部とクランプ側係合部との係合力が高まる(きつくなる)ような構成とし、軸方向に関する位置決めに利用することもできる。同じように、突条及び凹溝の幅寸法を軸方向に関して変化させることで、シャフトとクランプとの軸方向に関する位置決めに利用することもできる。また、シャフト側係合部及びクランプ側係合部の断面形状は、半円形状に限らず、シャフトとクランプとの相対回転を防止できる形状であれば、断面三角形状や断面矩形状などのその他の形状を採用することもできる。また、実施の形態の各例では、シャフトの軸方向一端部に、接続部としてヨーク部を設けた例を示したが、本発明を実施する場合には、ヨーク部に代えて、セレーション部若しくはスプライン部又はキー係合部などの円周方向に関する凹凸部を設けることもできる。さらに、クランプに設ける1対の取付孔をそれぞれ通孔とし、ナットと組み合わせて使用することもできる。
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3 ステアリングコラム
4a、4b 自在継手
5 中間シャフト
6 ステアリングギヤユニット
7 タイロッド
8 ピニオン軸
9 トルク伝達軸
10 第一軸
11 第二軸
12 雄セレーション
13 雌セレーション
14 クランプ部
15 フランジ部
16 取付孔
17 雌セレーション
18 雄セレーション
19 トルク伝達軸
20 シャフト
21 クランプ
22 ヨーク部
23 筒部
24a、24b 腕部
25 円孔
26 大径筒部
27 円すい筒部
28 小径筒部
29 雌セレーション
30 スリット
31 応力緩和部
32 係合凹溝
33、33a シャフト側係合部
34 基部
35 フランジ部
36 不連続部
37 挿入孔
38、38a クランプ側係合部
39a、39b 取付孔
40、40a かしめ変形部
41 軸
42 雄セレーション
43 締付ボルト
44 環状凹溝

Claims (7)

  1. 軸方向一端部に他の部材に対してトルク伝達可能に接続される接続部が設けられ、かつ、軸方向他端部に軸方向に伸長したスリットが設けられており、内周面の軸方向他端部に雌セレーションが設けられ、かつ、外周面の軸方向他端部に軸方向に伸長したシャフト側係合部が設けられた、中空状のシャフトと、
    前記シャフトの軸方向他端部に外嵌されて前記シャフトの軸方向他端部を縮径させるもので、円周方向1箇所に不連続部が設けられ、かつ、前記不連続部を挟んで両側に、締付部材を挿入するための取付孔をそれぞれ有する1対のフランジ部が設けられており、前記シャフトが挿入される挿入孔の内周面に軸方向に伸長したクランプ側係合部が設けられたクランプと、を備え、
    前記シャフト側係合部と前記クランプ側係合部とが凹凸係合しているトルク伝達軸。
  2. 前記スリットの軸方向一端部である奥端部には、軸方向他方側に隣接する部分に比べて幅寸法が大きい応力緩和部が設けられている、請求項1に記載したトルク伝達軸。
  3. 前記シャフト側係合部のうちで、軸方向に関して前記クランプの両側に隣接する部分に、前記シャフト側係合部を塑性変形させて成る塑性変形部がそれぞれ設けられている、請求項1〜2のうちのいずれか1項に記載したトルク伝達軸。
  4. 前記シャフト側係合部が突条であり、前記クランプ側係合部が凹溝である、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載したトルク伝達軸。
  5. 前記シャフト側係合部が凹溝であり、前記クランプ側係合部が突条である、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載したトルク伝達軸。
  6. 前記シャフトの外周面のうちで前記各取付孔と対向する部分に、前記シャフトの中心軸に直交する方向に伸長し、かつ、その内側に前記締付部材が配置される係合凹溝が設けられている、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載したトルク伝達軸。
  7. 前記接続部が、ヨーク部である、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載したトルク伝達軸。
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