以下、本発明に係る実施形態について図を参照して説明する。
蒸気タービン100は、主蒸気Sのエネルギーを回転動力として取り出す回転機械である。本実施形態の蒸気タービン100は、低圧タービンである。蒸気タービン100は、図1に示すように、ケーシング1と、静翼2と、ロータ3と、軸受部4と、を備えている。
なお、以下では、ロータ3の軸線Acが延びている方向を軸方向Daとする。また、軸線Acに対する周方向を単に周方向Dcとする。また、軸線Acに対する径方向を単に径方向Drとする。また、軸方向Daの一方側(第一側)を上流側、軸方向Daの他方側(第二側)を下流側とする。
ケーシング1は、内部の空間が気密に封止されているとともに、主蒸気Sの流路が内部に形成されている。ケーシング1は、径方向Drの外側からロータ3を覆っている。ケーシング1には、上流側部分にケーシング1内に主蒸気Sを導く蒸気入口11が形成されている。ケーシング1には、下流側部分にケーシング1内を通った主蒸気Sを外部に排出する蒸気出口12が形成されている。
静翼2は、ロータ3の周方向Dcに沿って並んでケーシング1の内側を向く面に複数設けられている。静翼2は、ロータ3に対して径方向Drに間隔を空けて配置されている。静翼2は、後述する動翼6と軸方向Daに間隔を空けて配置されている。
ロータ3は、軸線Acを中心として回転する。ロータ3は、ロータ軸5と、動翼6とを有する。
ロータ軸5は、軸線Acを中心として回転可能とされている。ロータ軸5は、ケーシング1を貫通するように軸方向Daに延びている。ロータ軸5の動翼6が設けられた中間部分は、ケーシング1の内部に収容されている。ロータ軸5の両端部は、ケーシング1の外部に突出している。ロータ軸5の両端部は、軸受部4により回転可能に支持されている。
軸受部4は、ロータ3を軸線Ac回りに回転可能に支持している。軸受部4は、ロータ軸5の両端部にそれぞれ設けられたジャーナル軸受41と、ロータ軸5の一端側に設けられたスラスト軸受42と、を備えている。
動翼6は、ロータ軸5を囲むように周方向Dcに複数並んで配置されている。複数の動翼6は、環状をなしてロータ軸5の外周面に配置されている。動翼6は、ロータ3の軸方向Daに流れる主蒸気Sを受けて軸線Ac回りにロータ軸5を回転させる。
ここで、本実施形態の蒸気タービン翼として静翼2を例に挙げて説明する。なお、蒸気タービン翼は、静翼2であることに限定されるものではなく、動翼6であってもよい。
静翼2は、環状に並んで相互に連結されることで1つの静翼環を形成している。静翼2は、ロータ軸5を囲むように周方向Dcに複数配置されている。本実施形態の静翼2は、図9に示すように、翼本体7と、内側シュラウド21と、外側シュラウド22とを有している。
翼本体7は、蒸気タービン100において主蒸気Sが流れる主流路C1に配置可能とされている。主流路C1は、図1に示すように、蒸気入口11と蒸気出口12とで挟まれたケーシング1の内部の空間である。つまり、主流路C1に静翼2及び動翼6が配置されている。翼本体7は、図2に示すように、断面が翼形状をなして翼高さ方向D1(図9参照)を径方向Drとして延びている。翼本体7は、翼高さ方向D1に延びる翼面70を有している。翼本体7は、翼高さ方向D1から見た際に、背側の翼面70である背側面701が凸面状に形成されている。翼本体7は、翼高さ方向D1から見た際に、腹側の翼面70である腹側面702が凹面状に形成されている。翼本体7は、背側面701及び腹側面702が接続される翼弦方向D2の前方側の端部が前縁部7aを形成している。翼本体7は、背側面701及び腹側面702が接続される翼弦方向D2の後方側の端部が後縁部7bを形成している。したがって、翼本体7は、腹側面702と背側面701とが前縁部7aと後縁部7bとを介して連続してなる翼型断面を有している。翼本体7は、図3に示すように、翼厚方向D3を周方向Dcとして、離れて複数並んでいる。周方向Dcで隣り合う位置に配置された翼本体7の間には、スロート部25が形成されている。
ここでのスロート部25とは、周方向Dcで隣り合う位置に配置された2つの翼本体7の間に形成される流路が、一方の翼本体7の背側面701と他方の翼本体7の腹側面702とに接触する仮想内接円を描いたときに内接円直径で示される幅の流路のことをいう。図3では、説明の便宜上、スロート部25を直線で図示している。
なお、スロート部25が形成される位置は、翼本体7の形状によって異なる。図3に示すスロート部25の形成位置は、一例であり、図3に示す位置に限定されるものではない。背側面701は、スロート部25に対応するスロート位置25aを有する。
ここで、翼本体7の翼高さ方向D1は、翼本体7の延びている方向である。また、翼本体7の翼弦方向D2は、本実施形態における翼高さ方向D1と直交する方向であって、翼本体7の翼弦の延びる方向を含む前縁部7a側の端部と後縁部7b側の端部とを結んだ仮想線と平行な方向とする。翼本体7の翼厚方向D3は、本実施形態における翼高さ方向D1及び翼弦方向D2と直交する方向とする。
内側シュラウド21は、図9に示すように、複数の翼本体7を翼高さ方向D1の基端部側で連結している。外側シュラウド22は、複数の翼本体7を翼高さ方向D1の先端部側で連結している。内側シュラウド21及び外側シュラウド22には、後述するドレンを排出するための排出流路(不図示)が内部に形成されている。内側シュラウド21及び外側シュラウド22は、不図示の復水器に接続されることで、排出流路内が負圧(例えば、真空)とされている。
また、本実施形態の翼本体7は、図2に示すように、背側板材71と、腹側板材72と、複数の溶接部73とを有している。
背側板材71は、翼面70として凸面状の背側面701を形成している。背側板材71は、板状の部材であって、翼本体7の内部に空間を形成するように湾曲している。背側面701は、背側板材71が腹側板材72に溶接される際に、外側を向く面である。また、背側板材71において、背側板材71が腹側板材72に溶接される際に、翼本体7の内部に空間を形成する面であって、背側面701よりも腹側板材72側に位置する面が背側板材内側面71aである。本実施形態の背側板材71は、背側板材内側面71aが後縁部7bにおける腹側面702の一部を形成することで、後縁部7bの端部を形成している。
腹側板材72は、翼面70として凹面状の腹側面702を形成している。腹側板材72は、板状の部材であって、背側板材71とともに翼本体7の内部に空間を形成するように湾曲している。腹側面702は、腹側板材72が背側板材71に溶接される際に、外側を向く面である。また、腹側板材72において、腹側板材72が背側板材71に溶接される際に、翼本体7の内部に空間を形成する面であって、腹側面702よりも背側板材71側に位置する面が腹側板材内側面72aである。
溶接部73は、背側板材71と腹側板材72とを溶接された状態で接合している。本実施形態の溶接部73は、ろう付けによって背側板材71と腹側板材72とを接合している部分であり、銀ロウが凝固することで形成されている。溶接部73は、翼高さ方向D1に隙間なく背側板材71と腹側板材72とを接合している。本実施形態の翼本体7では、溶接部73は、前縁部7aと、後縁部7bと、後述する仕切部80とのように、翼弦方向D2に離れた複数の箇所に設けられている。
また、本実施形態の翼本体7は、吸込口74と、ドレン流路75と、連通路76と、断熱空間77と、加熱部78と、仕切部80と、を有している。
吸込口74は、翼高さ方向D1に延びて翼面70で開口している。本実施形態の吸込口74は、腹側面702のみに形成されている。吸込口74は、翼高さ方向D1における腹側面702の全域にわたって形成されている。つまり、吸込口74は、翼高さ方向D1に延びるように腹側面702から窪む一つの長い溝として形成されている。吸込口74は、翼厚方向D3から腹側面702を見た際に、細長く翼高さ方向D1に延びる矩形状に形成されている。吸込口74は、翼弦方向D2の中心よりも後縁部7b側に形成されている。吸込口74は、背側板材71及び腹側板材72の少なくとも一方に形成された吸込口形成面81によって形成されている。本実施形態の吸込口74は、腹側板材72の後縁部7b側の端面72bと、背側板材71の背側板材内側面71aから窪む吸込口背側形成面81aとによって形成されている。したがって、本実施形態において、吸込口74を形成する吸込口形成面81は、腹側板材72の後縁部7b側の端面72bと、背側板材71の背側板材内側面71aに形成された吸込口背側形成面81aとである。
ドレン流路75は、腹側板材72と背側板材71との間に形成される空間である。ドレン流路75は、翼本体7の内部で翼高さ方向D1に延びている。ドレン流路75は、内側シュラウド21及び外側シュラウド22と連通するように翼本体7を貫通している。ドレン流路75は、後述する断熱空間77よりも後縁部7b側に形成されている。ドレン流路75は、背側板材内側面71a及び腹側板材内側面72aにそれぞれ形成されたドレン流路形成面82によって,背側板材71と腹側板材72との間に形成されている。ドレン流路形成面82は、背側板材内側面71a及び腹側板材内側面72aの少なくとも一方から窪んで形成されている。本実施形態のドレン流路75は、背側板材内側面71aから凹曲面を形成するように窪むドレン流路背側形成面82aと、腹側板材内側面72aから凹曲面を形成するように窪むドレン流路腹側形成面82bとによって形成されている。本実施形態のドレン流路背側形成面82aは、吸込口背側形成面81aから凹曲面を形成するように窪んでいる。したがって、本実施形態におけるドレン流路75を形成するドレン流路形成面82は、背側板材内側面71aに形成されたドレン流路背側形成面82aと、腹側板材内側面72aに形成されてドレン流路腹側形成面82bとである。つまり、本実施形態のドレン流路形成面82は、背側板材内側面71a及び腹側板材内側面72aの両方からそれぞれ窪んでいる。
連通路76は、翼本体7の内部で翼高さ方向D1に互いに離れて複数形成されている。複数の連通路76は、互いに独立した状態で吸込口74とドレン流路75とを連通させている。つまり、複数の連通路76は、吸込口74とドレン流路75との間では互いに繋がらないように形成されている。連通路76は、背側板材71と腹側板材72との間に形成される空間である。連通路76は、背側板材内側面71a及び腹側板材内側面72aにそれぞれ形成された連通路形成面83によって、背側板材71と腹側板材72との間に形成されている。本実施形態の連通路76は、吸込口背側形成面81aと、腹側板材72の腹側板材内側面72aから角溝状をなして窪む連通路腹側形成面83bとによって形成されている。したがって、本実施形態における連通路76を形成する連通路形成面83は、吸込口背側形成面81aの一部と、腹側板材内側面72aに形成された連通路腹側形成面83bとである。つまり、本実施形態の連通路形成面83は、腹側板材内側面72aのみから窪んでいる。
断熱空間77は、翼本体7の内部に形成される空間である。断熱空間77は、蒸気タービン100が運転状態である場合に、腹側面702及び背側面701が曝されている外部である主流路C1よりも圧力が低い真空状態となる。断熱空間77は、翼本体7を損傷させないように、内部の流体が膨張した際に流体を逃がす小さな孔等で外部と連通していてもよいが、原則として内部での流体の流れがほとんどない状態となっている。断熱空間77は、ドレン流路75よりも前縁部7a側に形成されている。本実施形態の断熱空間77は、腹側板材72と背側板材71との間に形成される空間である。断熱空間77は、翼本体7の内部で翼高さ方向D1に延びている。断熱空間77は、背側板材内側面71a及び腹側板材内側面72aにそれぞれ形成された断熱空間形成面84によって、背側板材71と腹側板材72との間に形成されている。本実施形態の断熱空間77は、背側板材71が曲げられることで背側板材内側面71aに形成される断熱空間背側形成面84aと、腹側板材72が曲げられることで腹側板材内側面72aに形成される断熱空間腹側形成面84bとによって形成されている。したがって、本実施形態における断熱空間77を形成する断熱空間形成面84は、背側板材内側面71aの一部である断熱空間背側形成面84aと、腹側板材内側面72aの一部である断熱空間腹側形成面84bとである。
加熱部78は、背側面701と断熱空間77との間に形成されている。加熱部78は、蒸気タービン100が運転状態である場合に、外部である主流路C1の温度よりも高い温度で背側面701を加熱可能とされている。加熱部78は、腹側面702及び背側面701のうちで、加熱部78に対して断熱空間77が間に介在されていない側の翼面70を内部から加熱可能とされている。本実施形態の加熱部78は、背側面701を内部から加熱する。加熱部78は、翼高さ方向D1に延びている。加熱部78は、翼高さ方向D1における背側面701の全域にわたって形成されている。加熱部78は、背側板材71の内部のみに形成されている。加熱部78は、スロート位置25aよりも前縁部7a側に形成されている。加熱部78は、溝部781と、蓋部782とを有している。
溝部781は、背側面701から窪むように形成されている。本実施形態の溝部781は、翼高さ方向D1に延びるように溝を形成するように、背側面701から窪んでいる。溝部781は、溝部781は、第一溝部781aと、第二溝部781bとを有している。
第一溝部781aは、背側面701から垂直に窪む角溝である。第一溝部781aは、背側面701よりも外側に向かって突出しないように蓋部782を収容可能とされている。
第二溝部781bは、第一溝部781aよりも小さな断面形状をなして、第一溝部781aの内面のうち、背側面701と平行な内面から垂直に窪む角溝である。本実施形態の第二溝部781bは、翼高さ方向D1と直交する断面において、翼弦方向D2の長さが第一溝部781aよりも短く形成されている。
蓋部782は、溝部781の開口を閉塞している。蓋部782は、第一溝部781aに隙間なく嵌まり込む形状で形成されている。蓋部782は、翼高さ方向D1に延びる板状部材である。蓋部782は、第一溝部781aに嵌まり込んだ状態で、その断面形状における第二溝部781b側に、第二溝部781bの開口を閉塞する平面である溝部閉塞面782aが形成されている。蓋部782は、第一溝部781aに嵌まり込んだ状態で、その断面形状における外側に、背側面701を形成する面である蓋部外側面782bが形成されている。
本実施形態の加熱部78は、蒸気タービン100が運転状態である場合に、翼本体7の周囲を流通する主蒸気Sよりも温度の高い高温蒸気が流通する高温蒸気流通空間79を有している。高温蒸気流通空間79は、翼本体7の内部で翼高さ方向D1に延びる空間である。本実施形態の高温蒸気流通空間79は、溝部781と蓋部782とによって、翼本体7の内部で背側面701に沿って形成される空間である。つまり、高温蒸気流通空間79は、第二溝部781bを形成する面と蓋部782の溝部閉塞面782aとによって囲まれた空間である。
高温蒸気流通空間79は、図9に示すように、静翼2を翼高さ方向D1に貫通している。本実施形態の高温蒸気流通空間79は、翼本体7だけでなく内側シュラウド21及び外側シュラウド22を貫通するように形成されている。高温蒸気流通空間79は、図2に示すように、翼高さ方向D1と直交する断面において、翼弦方向D2の長さが断熱空間77よりも短く形成されている。高温蒸気流通空間79には、蒸気タービン100が運転状態である場合に、高温蒸気流通空間79が形成された翼本体7が配置された主流路C1の位置よりも上流側を流れる主蒸気Sが、高温蒸気として外側シュラウド22側から供給される。具体的には、本実施形態の高温蒸気流通空間79には、高温蒸気導入部791によって高温蒸気が供給される。高温蒸気導入部791は、高温蒸気流通空間79が形成された翼本体7よりも上流側(例えば、初段の静翼2と動翼6との間)で主流路C1と繋がっている。これにより、高温蒸気導入部791は、高圧の主蒸気Sが流れる主流路C1と高温蒸気流通空間79とを連通させている。高温蒸気流通空間79に供給された主蒸気Sは、内側シュラウド21側から主流路C1に戻される。高温蒸気流通空間79に供給された主蒸気Sは、高温蒸気流通空間79が形成された翼本体7が配置された主流路C1の位置よりも下流側で主流路C1に戻される。したがって、本実施形態の加熱部78は、翼面70を加熱する加熱手段として、上流側を流れる主蒸気Sを利用している。
また、本実施形態の加熱部78は、表面積増加部91を有している。表面積増加部91は、高温蒸気流通空間79を形成する内側面の表面積を増加させている。具体的には、本実施形態では、図5に示すように、蓋部782がメッシュ状に形成されている。これにより、高温蒸気流通空間79を形成する面である溝部閉塞面782aの表面積が増加している。つまり、メッシュ状の蓋部782自体が表面積増加部91を形成している。
また、本実施形態では、蓋部782は、背側面701を形成する外周面の表面積を増加させる外側表面積増加部88を有している。具体的には、メッシュ状の蓋部782によって、蓋部外側面782bの表面積が増加している。つまり、メッシュ状の蓋部782自体が表面積増加部91だけでなく外側表面積増加部88も形成している。
仕切部80は、図2に示すように、ドレン流路75と断熱空間77とを翼本体7の内部で互いに独立させるように仕切っている。仕切部80は、ドレン流路75と断熱空間77との間で、背側板材71と腹側板材72とが接合されている領域である。仕切部80は、翼高さ方向D1の全域にわたってドレン流路75と断熱空間77とを隔離している。本実施形態の仕切部80は、背側板材71の背側板材内側面71aと腹側板材72の腹側板材内側面72aとが溶接された溶接部73によって形成されている。
次に、以上で説明した蒸気タービン翼(静翼2)の製造方法について、図6に示すフローチャートに従って説明する。
蒸気タービン翼の製造方法S1は、図6に示すように、準備工程S2と、加工工程S3と、溶接工程S4とを含む。
蒸気タービン翼の製造方法S1では、第一に、準備工程S2を実施する。準備工程S2では、翼面70として凸面状の背側面701を形成可能な平板状の背側板材71が準備される。準備工程S2では、翼面70として凹面状の腹側面702を形成可能な平板状の腹側板材72が準備される。準備工程S2で準備された背側板材71及び腹側板材72は、断面が矩形の平板状をなしている。また、準備工程S2では、蓋部782として、メッシュ状の平板部材が準備される。
加工工程S3では、背側板材71及び腹側板材72が加工される。加工工程S3では、背側板材71及び腹側板材72の少なくとも一方に、吸込口74を形成する吸込口形成面81が形成される。加工工程S3では、背側板材71及び腹側板材72の両方に、ドレン流路75を形成するドレン流路形成面82と、連通路76を形成する連通路形成面83とが形成される。加工工程S3では、背側板材71に背側面701が形成される。加工工程S3では、腹側板材72に腹側面702が形成される。加工工程S3では、断熱空間77を形成する断熱空間形成面84が背側板材71及び腹側板材72の両方に形成される。加工工程S3では、溝部781が背側板材71に形成される。
本実施形態の加工工程S3では、吸込口形成面81として、吸込口背側形成面81aが形成される。加工工程S3では、ドレン流路形成面82として、ドレン流路背側形成面82aと、ドレン流路腹側形成面82bとが形成される。加工工程S3では、連通路形成面83として、連通路腹側形成面83bが形成される。加工工程S3では、断熱空間形成面84として、断熱空間背側形成面84aと、断熱空間腹側形成面84bとが形成される。加工工程S3では、溝部781が背側板材71のみに形成される。
また、本実施形態の加工工程S3は、背側板材71及び腹側板材72の一部を削って除去する除去工程S31と、背側板材71及び腹側板材72を曲げる曲げ工程S32とを含んでいる。
除去工程S31では、図7及び図8に示すように、研削加工や切削加工によって背側板材71及び腹側板材72が削られて一部除去される。具体的には、背側板材71を加工する場合から説明する。図7に示すように、除去工程S31では、背側板材71を腹側板材72に組み合わせた際に、前縁部7aや後縁部7bや翼面70が形作られるように、板状の背側板材71から不要な部分が削られて除去される。この際、除去工程S31では、背側板材内側面71aを作業者が削ることで、吸込口形成面81として、背側板材71に吸込口背側形成面81aが形成される。除去工程S31では、吸込口背側形成面81aの一部をさらに作業者が削ることで、背側板材71にドレン流路背側形成面82aが形成される。除去工程S31では、背側面701を作業者が削ることで、背側板材71に溝部781が形成される。除去工程S31では、まず、第一溝部781aが背側面701に形成される。その後、除去工程S31では、背側面701と平行な第一溝部781aの内面を背側面701側からさらに削ることによって、第二溝部781bが形成される。
次に、腹側板材72を加工する場合を説明する。図8に示すように、除去工程S31では、背側板材71を腹側板材72に組み合わせた際に、前縁部7aや後縁部7bや翼面70が形作られるように、板状の腹側板材72から不要な部分が削られて除去される。この際、除去工程S31では、腹側板材72の後縁部7b側を作業者が削ることで、吸込口形成面81として、吸込口背側形成面81aの形状に対応した平滑な端面72bが形成される。除去工程S31では、腹側板材内側面72aを作業者が削ることで、腹側板材72にドレン流路腹側形成面82bが形成される。除去工程S31では、腹側板材内側面72aを作業者が削ることで、腹側板材72に連通路腹側形成面83bが形成される。
曲げ工程S32では、背側板材71及び腹側板材72を湾曲させて、背側板材71及び腹側板材72に所定の形状の翼面70が形成される。したがって、曲げ工程S32で背側板材71及び腹側板材72が曲げられることで、背側面701が凸面状に形成され、腹側面702が凹面状に形成される。曲げ工程S32では、背側板材内側面71aが凹面状に曲げられることで、断熱空間形成面84として、背側板材71に断熱空間背側形成面84aが形成される。曲げ工程S32では、腹側板材内側面72aが凸面状に曲げられることで、断熱空間形成面84として、腹側板材72に断熱空間腹側形成面84bが形成される。また、曲げ工程S32では、溝部閉塞面782aと反対側を向く蓋部782の面が背側面701の一部をなすように蓋部782が曲げられる。
溶接工程S4では、吸込口74、ドレン流路75、連通路76、及び断熱空間77を背側板材71と腹側板材72との間に形成するように、背側板材71と腹側板材72とが溶接される。具体的には、溶接工程S4では、前縁部7aの端部で背側板材71と腹側板材72とが溶接される。また、溶接工程S4では、吸込口背側形成面81aと腹側板材72の後縁部7b側の端面72bとの間に吸込口74を形成するように背側板材71と腹側板材72とが溶接される。また、溶接工程S4では、断熱空間形成面84とドレン流路形成面82との間で背側板材71と腹側板材72とが溶接される。これにより、溶接工程S4では、断熱空間77とドレン流路75とが互いに独立するように仕切る仕切部80が溶接部73として形成される。また、溶接工程S4では、高温蒸気流通空間79を背側板材71内に形成するように、蓋部782が溝部781に嵌め込まれて溶接される。本実施形態の溶接工程S4では、溝部閉塞面782aが第二溝部781bを向くように、蓋部782が第一溝部781aに嵌め込まれて溶接される。具体的には、第一溝部781aに蓋部782が嵌め込まれた状態で、蓋部782と第一溝部781aとの隙間を埋めるように背側面701側から溶接が実施される。溶接工程S4では、ろう付けによって各部材が接合される。
上記のような蒸気タービン100では、図3に示すように、静翼2の翼本体7は、軸方向Daの上流側(図3紙面左側)から下流側(図3紙面右側)に向かって主蒸気Sが流通する主流路C1内に配置されている。この主蒸気S中では、圧力低下とともに水滴が発生する。そのため、特に最も下流側の最終段付近では水滴が発生し易くなる。したがって、主蒸気Sは、水滴を含んだ状態で主流路C1内を流通している。主蒸気Sが腹側面702付近を流れる場合には、主蒸気Sx中の水滴は、慣性によって微細な水滴Wxとして腹側面702に付着する。また、主蒸気Sが背側面701付近を流れる場合には、主蒸気Sy中の水滴は、慣性によって微細な水滴Wyとして背側面701に付着する。
水滴を含んだ主蒸気Sが翼本体7に衝突することで、翼面70には水滴(ドレン)が付着する。特に、腹側面702は、主蒸気Sの流れに対向する表面積が広いことで、微細な水滴が付着し易くなっている。そして、腹側面702に付着したドレンは、凹面状をなす腹側面702に沿って前縁部7a側から後縁部7b側に向かって液膜を形成するように流れる。腹側面702に付着したドレンは、後縁部7bの端部に向かう途中で、吸込口74に流れ込む。ここで、ドレン流路75が、内側シュラウド21や外側シュラウド22に形成された排出流路を介して不図示の復水器に接続されていることで、真空状態となっている。そのため、吸込口74に流れ込んだドレンは、翼高さ方向D1に離れて複数並んだ連通路76に引き込まれて、ドレン流路75に流入する。ドレン流路75に流入したドレンは、内側シュラウド21や外側シュラウド22を介して復水器に送られる。
また、背側面701は、主蒸気Sの流れに対向する表面積が狭いことで、腹側面702よりも微細な水滴が付着しづらくなっている。一方で、図4に示すように、上流側に配置されている動翼6によって主蒸気Sが背側面701に向かうような周方向Dcの速度成分をもっている。そのため、動翼6から離脱した比較的大きな水滴である粗大水滴Wzは、気相との抗力によって生じた速度ベクトルuと、動翼の旋回速度ベクトルvの重ね合わせによって、速度ベクトルwを得る。一般に速度ベクトルwは、動翼6の旋回速度ベクトルvを保ったまま、下流側の静翼2に衝突する。その結果、図4に示すように、粗大水滴Wzは、背側面701の前縁部7aに近い領域に付着し易くなっている。背側面701に付着したドレンは、凸面状をなす背側面701に沿って前縁部7a側から後縁部7b側に向かって流れる。通常、背側面701に付着したドレンは、背側面701が凸面状をなしていることで、後縁部7b側の端部に到達する前にスロート位置25a付近で背側面701から剥離してしまう。しかしながら、翼弦方向D2においてスロート位置25aよりも前縁部7a側に加熱部78が形成されていることで、背側面701に付着したドレンは剥離する前に加熱部78によって加熱された気化する。
上記のような蒸気タービン翼(静翼2)では、蒸気タービン100が運転状態である場合に、断熱空間77が真空状態となる。この状態で、加熱部78が背側面701を加熱することで、加熱部78で生じた熱は断熱空間77によって断熱されて、腹側面702には伝わらない。そのため、加熱部78で生じた熱エネルギーを加熱部78に対して断熱空間77が配置されていない側の翼面70である背側面701を加熱することだけに効果的に利用することができる。これにより、加熱部78によって背側面701を効率良く加熱することができる。
また、本実施形態では、除去工程S31において、平板状の背側板材71に吸込口背側形成面81a、ドレン流路背側形成面82a、及び加熱部78の溝部781が形成されている。また、平板状の腹側板材72にドレン流路腹側形成面82b及び連通路腹側形成面83bが形成されている。さらに、曲げ工程S32によって、背側板材71に断熱空間背側形成面84aが形成されている。また、平板状の腹側板材72に断熱空間腹側形成面84bが形成されている。そして、曲げ工程S32後の背側板材71及び腹側板材72を溶接して組み合わせることで吸込口74、ドレン流路75、連通路76、及び断熱空間77が形成されている。また、曲げ工程S32後の背側板材71及び蓋部782を溶接して組み合わせることで、高温蒸気流通空間79が形成されている。
このように、除去工程S31や曲げ工程S32で事前に平板状の背側板材71や腹側板材72に加工を施すことで、翼本体7の最終的な形状に影響を受けずに加工できる。そのため、吸込口背側形成面81a、ドレン流路背側形成面82a、ドレン流路腹側形成面82b、連通路腹側形成面83b、溝部781、断熱空間背側形成面84a、及び断熱空間腹側形成面84bは、平板状の背側板材71や腹側板材72を加工するだけで形成できる。その結果、吸込口背側形成面81a、ドレン流路背側形成面82a、ドレン流路腹側形成面82b、連通路腹側形成面83b、溝部781、断熱空間背側形成面84a、及び断熱空間腹側形成面84bの加工が容易になる。また、吸込口背側形成面81a、ドレン流路背側形成面82a、ドレン流路腹側形成面82b、連通路腹側形成面83b、溝部781、断熱空間背側形成面84a、及び断熱空間腹側形成面84bの加工精度を向上させることができる。
さらに、高い精度で形成された吸込口背側形成面81a、ドレン流路背側形成面82a、ドレン流路腹側形成面82b、連通路腹側形成面83b、溝部781、断熱空間背側形成面84a、及び断熱空間腹側形成面84bによって、吸込口74、ドレン流路75、連通路76、加熱部78、及び断熱空間77が形成される。その結果、翼本体7が薄い場合や翼面70が複雑な三次元曲面で形成されている場合のように、翼本体7が加工を施すことが難しい形状をしていても、翼本体7の最終的な形状による加工難度の影響を抑えて、吸込口74、ドレン流路75、連通路76、加熱部78、及び断熱空間77を翼本体7の内部に容易に形成できる。したがって、ドレンを除去するための構造を翼本体7の内部に容易に形成することができる。
また、二枚の板の表面を利用して吸込口74、ドレン流路75、連通路76、加熱部78、及び断熱空間77を形成することで、吸込口74、ドレン流路75、連通路76、加熱部78、及び断熱空間77を形成する位置や形状等の製造上の自由度を向上させることができる。
また、吸込口74が翼面70に形成されていることで、加熱部78でドレンを気化させるだけでなく、吸込口74からドレンを回収させて、翼面70に付着したドレンを除去できる。そのため、吸込口74を設けずに、翼面70の全域において付着したドレンを加熱部78だけで気化させて除去する場合に比べて、加熱部78で使用される熱エネルギーを抑えることができる。また、加熱部78を設けずに、吸込口74を介してドレン流路75から翼面70の全域において付着したドレンを排出する場合に比べて、主流路C1を流通する主蒸気Sの吸い込み量を抑えることができる。したがって、高温蒸気流通空間79に供給する主蒸気Sの量や主流路C1を流通する主蒸気Sのロスを抑えて、効率的にドレンを除去できる。
また、腹側面702では液膜を形成するようにドレンが流れるために、全てのドレンを気化させるには、大量のエネルギーが必要となる。その結果、高温蒸気流通空間79に多くの主蒸気Sを供給する必要が有り、非常に効率が悪化する可能性が有る。ところが、本実施形態では、加熱部78が背側面701に形成され、吸込口74が腹側面702に形成されている。そのため、背側面701を加熱するために必要な主蒸気Sを高温蒸気流通空間79に供給するだけでよい。これにより、高温蒸気流通空間79に供給する主蒸気Sの量をより抑えて、効率的にドレンを除去できる。
また、高温蒸気流通空間79が、溝部781と、溝部781の開口を閉塞する蓋部782とによって形成されている。背側面701から凹む溝部781を蓋部782で閉塞することによって、高温蒸気流通空間79を容易に形成できる。さらに、背側板材71と分離可能な蓋部782を有することで、蓋部782に対する加工が容易になる。そのため、蓋部782に後加工を施すことで、高温蒸気流通空間79を形成する内面である溝部閉塞面782aに任意の形状を形成することが容易にできる。これにより、高温の主蒸気Sを利用して背側面701を効率的に加熱可能な高温蒸気流通空間79を翼本体7に容易に形成することができる。
また、蓋部782がメッシュ状に形成されることで、溝部閉塞面782aの表面積が増加する。このように、蓋部782自体が高温蒸気流通空間79を形成する面の一つの表面積を増加させる表面積増加部91を形成している。これにより、高温蒸気流通空間79を流れる主蒸気Sの熱が効率良く翼本体7に伝わる。特に、高温蒸気流通空間79を形成する面の中でも背側面701に最も近い溝部閉塞面782aでの熱伝導性が向上する。そのため、高温蒸気流通空間79を流れる主蒸気Sの熱エネルギーを効率良く利用して、背側面701を加熱することができる。
さらに、蓋部782がメッシュ状に形成されることで、蓋部外側面782bの表面積が増加する。その結果、蓋部外側面782bに付着した水膜の表面積が増加し、蓋部外側面782bに付着したドレンを蒸発させやすくすることができる。
また、背側面701において、吸込口74より前縁部7a側であってスロート位置25aよりも前縁部7a側に加熱部78が形成されている。そのため、背側面701において、最もドレンが付着し易い位置に近い領域であって、付着したドレンが背側面701から剥離し難い領域でドレンを気化させることができる。したがって、加熱部78を効果的に利用してドレンを除去できる。
また、スロート位置25aよりも前縁部7a側に加熱部78が形成されていることで、スロート位置25aよりも前縁部7a側の背側面701の温度が上昇する。そのため、通常では温度が低下して水滴が生じやすくなっているスロート部25付近の温度を上昇させることができる。これにより、スロート部25付近での水滴の発生自体を抑えることができる。
また、連通路76が翼高さ方向D1に複数独立して形成されている。これにより、翼高さ方向D1の全域にわたって連通した状態で形成されている場合に比べて、周りを流通する主蒸気Sの流入を抑えることができる。したがって、主流路C1を流れる主蒸気Sの流通への影響を抑えつつ、ドレンを除去することができる。
また、吸込口74が、腹側面702の翼高さ方向D1の全域に形成されている。これにより、腹側面702の翼高さ方向D1のどの位置に付着したドレンであっても、吸込口74に流入させることができる。したがって、腹側面702に付着して後縁部7b側に向かって流れるドレンを高い精度で回収することができる。
また、吸込口74が、腹側面702において、翼弦方向D2の中心よりも後縁部7b側に形成されている。そのため、腹側面702に付着して液膜を形成するようにまとまりながら後縁部7b側に流れてきたドレンをまとめて吸込口74に流入させることができる。その結果、より多くのドレンを吸込口74から回収することができる。
また、本実施形態では、連通路76が、孔あけ加工ではなく、腹側板材72に溝加工を施した後に、背側板材71と腹側板材72とを溶接することによって形成されている。その結果、溶接部73に近傍に吸込口74を形成することができる。これにより、後縁部7b側の端部のように肉厚の薄い部分の強度を維持したまま、吸込口74を形成することができる。つまり、より後縁部7bの端部に近い位置に吸込口74を形成でき、より多くのドレンを吸込口74から回収することができる。したがって、腹側面702に付着したドレンを吸込口74で効率良く回収することができる。
また、ドレン流路形成面82として、背側板材内側面71aから窪むドレン流路背側形成面82aと、腹側板材内側面72aから窪むドレン流路腹側形成面82bとが形成されている。背側板材71及び腹側板材72の少なくとも一方から窪むようにドレン流路形成面82を形成することで、背側板材71及び腹側板材72の板厚を厚くすることなく、ドレン流路75をより大きく形成することができる。
また、平板状の背側板材71や腹側板材72の表面を加工するだけでドレン流路形成面82を形成できるため、ドレン流路形成面82の加工が容易になる。さらに、ドレン流路背側形成面82aとドレン流路腹側形成面82bとによって、背側板材71と腹側板材72との間にドレン流路75が形成される。したがって、ドレン流路75を翼本体7の内部に容易に形成できる。
特に、本実施形態のようにドレン流路背側形成面82aと、ドレン流路腹側形成面82bとを両方形成することで、背側板材71及び腹側板材72のいずれか一方のみにドレン流路形成面82を形成する場合に比べて、ドレン流路形成面82を形成する際の一枚当たりの窪ませる深さを抑えることができる。したがって、背側板材71及び腹側板材72の板厚が厚くなってしまうことを抑えることができる。
また、連通路腹側形成面83bが腹側板材内側面72aから窪む溝として形成されている。これにより、連通路形成面83は、平板状の腹側板材72の表面を加工するだけで形成できる。そのため、連通路形成面83の加工が容易になる。また、連通路形成面83によって背側板材71と腹側板材72との間に連通路76が形成される。そのため、連通路76を翼本体7の内部に容易に形成できる。
また、除去工程S31において、吸込口背側形成面81a、ドレン流路背側形成面82a、ドレン流路腹側形成面82b、及び連通路腹側形成面83bが背側板材71及び腹側板材72がそれぞれ削ることで形成されている。また、背側面701及び腹側面702を形成するタイミングで断熱空間形成面84が曲げ工程S32で形成されている。そのため、吸込口74、ドレン流路75、連通路76、及び断熱空間77を形成するために、背側板材71及び腹側板材72以外の別の部材を新たに準備する必要が無い。その結果、翼本体7を形成する部品点数を削減することができ、翼本体7の製造コストを低減することができる。
また、断熱空間形成面84は、平板状の背側板材71や腹側板材72に曲げ加工を施すだけで形成できる。その結果、断熱空間形成面84の加工が容易になる。また、断熱空間形成面84によって断熱空間77が形成される。そのため、翼本体7が薄い場合や翼面70が複雑な三次元曲面で形成されている場合のように、翼本体7の最終的な形状が内部に加工を施すことが難しい形状であっても、断熱空間77を翼本体7の内部に容易に形成できる。
また、ドレン流路75と断熱空間77とを独立した状態とする仕切部80が溶接部73によって形成されている。そのため、仕切部80を別部材で形成したり、仕切部80をドリルや放電加工等の後加工で削り出したりする作業が不要となる。したがって、二枚の板材を事前に加工した上で仕切部80を形成するように溶接することで、加工を施すことが難しい形状の翼本体7であっても、翼本体7の内部で翼高さ方向D1に連通する二つの空間を独立した状態で容易に形成することができる。そのため、翼本体7の形状による加工難度の影響を抑えて、独立したドレン流路75及び断熱空間77を翼本体7の内部に形成することができる。つまり、ドレン流路75及び断熱空間77を形成する位置や形状等の製造上の自由度をさらに向上させることができる。
また、上記のような蒸気タービン100によれば、静翼2でドレンを効率良く回収でき、蒸気タービン100を効率的に運転させることができる。
《第一変形例》
次に、図10を参照して本実施形態の第一変形例の翼本体7Aについて説明する。
第一変形例においては、実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第一変形例では、断熱空間77A及びドレン流路75Aの構成について実施形態と相違する。
第一変形例の翼本体7Aは、鋳造等によって形成されている。つまり、第一変形例の翼本体7Aは、背側板材71及び腹側板材72を有していない。翼本体7Aは、吸込口74Aと、ドレン流路75Aと、連通路76Aと、断熱空間77Aと、加熱部78と、仕切部80Aと、を有している。
ドレン流路75A及び断熱空間77Aは、翼本体7Aの内部の空間として、鋳造時に中子を用いたり、ドリル加工等で事後的に加工したりして翼本体7Aの外形と一体に形成されている。ドレン流路75A及び断熱空間77Aは、別部材として準備された仕切部80Aを溶接で翼本体7Aの内部に固定することで、それぞれ独立した空間として形成されている。吸込口74A及び連通路76Aは、後加工によって腹側面702に形成されている。
このような第一変形例の翼本体7Aを有する静翼2であっても、実施形態と同様に、蒸気タービン100が運転状態である場合に、断熱空間77Aが真空状態となる。この状態で、加熱部78が背側面701を加熱することで、加熱部78で生じた熱は断熱空間77Aによって断熱されて、腹側面702には伝わらない。そのため、背側面701を加熱することだけに、加熱部78で生じた熱エネルギーを効果的に利用することができる。これにより、加熱部78によって背側面701を効率良く加熱することができる。
《第二変形例》
次に、図11を参照して本実施形態の第二変形例の翼本体7Bについて説明する。
第二変形例においては、実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第二変形例では、翼本体7Bの内部の構造が実施形態や第一変形例と相違する。
第二変形例の翼本体7Bは、隔壁部材92と、収容溝部93と、空間形成溝部94と、空間形成蓋部90とを有している。
隔壁部材92は、翼本体7Bの内部で、断熱空間77Bと、高温蒸気流通空間79Bとを形成する部材である。隔壁部材92は、板状をなして翼高さ方向D1に延びている。隔壁部材92は、空間形成部921と、フランジ部922と、を有している。
空間形成部921は、翼高さ方向D1と直交する断面において、背側面701側が開口するように凹状に窪んでいる。フランジ部922は、翼高さ方向D1と直交する断面において、空間形成部921の両端から背側面701と平行に延びている。
収容溝部93は、中実の翼本体7Bの背側面701から垂直に窪む角溝である。収容溝部93は、背側面701よりも外側に向かって突出しない状態で空間形成蓋部90及び隔壁部材92を収容可能とされている。収容溝部93は、実施形態の第一溝部781aよりも深く形成されている。
空間形成溝部94は、隔壁部材92とともに、断熱空間77Bを形成する溝である。空間形成溝部94は、収容溝部93よりも小さな断面形状をなして、収容溝部93の内面のうち、背側面701と平行な内面から垂直に窪む角溝である。本実施形態の空間形成溝部94は、翼高さ方向D1と直交する断面において、翼弦方向D2の長さが収容溝部93よりも短く形成されている。空間形成溝部94には、空間形成部921と間隔を空けることが可能な深さで形成されている。
空間形成蓋部90は、収容溝部93の開口を閉塞している。空間形成蓋部90は、収容溝部93に各壁部材とともに収容されている。空間形成蓋部90は、隔壁部材92よりも背側面701側に配置され、収容溝部93内で隙間なく嵌まり込んでいる。空間形成蓋部90は、隔壁部材92と同じ板厚で形成され、翼高さ方向D1に延びる板状部材である。空間形成蓋部90は、収容溝部93に嵌まり込んだ状態で、その断面形状における空間形成溝部94側に、隔壁部材92の空間形成部921の開口を閉塞する平面である空間形成部閉塞面901が形成されている。
また、翼本体7Bは、吸込口74Aと、ドレン流路75Bと、連通路76Aと、隔壁部材92と、断熱空間77Bと、加熱部78Bと、を有している。
ドレン流路75Bは、翼高さ方向D1に延びる円形の貫通孔である。ドレン流路75Bは、例えば、ドリル加工を施すことで形成されている。
第二変形例の断熱空間77Bは、背側面701から窪む溝によって形成される空間である。断熱空間77Bは、空間形成溝部94と空間形成部921との間に形成されている。具体的には、断熱空間77Bは、空間形成溝部94の内面と、空間形成部921の腹側面702側を向く面との間に形成されている。
第二変形例の加熱部78Bの高温蒸気流通空間79Bは、断熱空間77Bとともに背側面701から窪む溝によって形成される空間である。高温蒸気流通空間79Bは、空間形成蓋部90の腹側面702側を向く空間形成部閉塞面901と、空間形成部921の背側面701側を向く面との間に形成されている。
このような第二変形例の翼本体7Bを有する静翼2であっても、実施形態と同様に、蒸気タービン100が運転状態である場合に、断熱空間77Bが真空状態となる。この状態で、加熱部78Bが背側面701を加熱することで、加熱部78Bで生じた熱は断熱空間77Bによって断熱されて、腹側面702には伝わらない。そのため、加熱部78Bで生じた熱を効果的に利用して、翼面70の任意の箇所である背側面701を効率良く加熱することができる。
《第三変形例》
次に、図12を参照して本実施形態の第三変形例の翼本体7Cについて説明する。
第三変形例においては、実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第三変形例の翼本体7Cでは、高温蒸気流通空間79C内の構造が実施形態と相違する。
第三変形例の翼本体7Cでは、図12に示すように、加熱部78Cが複数の突出部95を有している。突出部95は、高温蒸気流通空間79Cを形成する面から突出している。突出部95は、翼高さ方向D1から見た際に、高温蒸気流通空間79Cを閉塞するように翼高さ方向D1と交差する方向に互い違いに延びている。本実施形態では、突出部95は、翼高さ方向D1と直交する方向に延びるように蓋部782の溝部閉塞面782aから突出している。突出部95は、翼高さ方向D1から見た際に、高温蒸気流通空間79Cを閉塞するように交互に延びている。
このような第三変形例の翼本体7Cを有する静翼2によれば、突出部95が翼高さ方向D1から見た際に、高温蒸気流通空間79Cを閉塞するように交互に延びている。そのため、高温蒸気流通空間79C内における高温蒸気の流通する流路長さが長くなる。これにより、高温蒸気を高温蒸気流通空間79C内により長い時間留まらせることができる。したがって、高温蒸気の熱エネルギーを効率的に利用して背側面701を加熱することができる。
《第四変形例》
次に、図13を参照して本実施形態の第四変形例の翼本体7Dについて説明する。
第四変形例においては、実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第四変形例の翼本体7Dでは、高温蒸気流通空間79D内の構造が実施形態と相違する。
第四変形例の翼本体7Dでは、図13に示すように、高温蒸気流通空間79Dは、実施形態や第三変形例と異なり、翼高さ方向D1の一方の端部が開口され、他方の端部が閉塞されている。具体的には、第四変形例の高温蒸気流通空間79Dは、翼本体7Dと外側シュラウド22のみを貫通するように形成されている。高温蒸気流通空間79Dには、蒸気タービン100が運転状態である場合に、高温蒸気流通空間79Dが形成された翼本体7Dが配置された主流路C1の位置よりも上流側を流れる主蒸気Sが、高温蒸気として、外側シュラウド22側から供給される。高温蒸気流通空間79Dに供給された主蒸気Sは、外側シュラウド22側から主流路C1に戻される。
また、加熱部78Dが、区画部96を有している。区画部96は、翼高さ方向D1に仕切り、かつ、翼高さ方向D1の他方のみで連通するよう高温蒸気流通空間79Dの内部を区画している。本実施形態の区画部96は、高温蒸気流通空間79Dを形成する面から突出している。区画部96は、平板状をなすように翼高さ方向D1に延びて突出している。本実施形態では、区画部96は、蓋部782の溝部閉塞面782aから突出している。本実施形態の区画部96によって、高温蒸気流通空間79D内には、外側シュラウド22側の後縁部7b側から主蒸気Sを流入させるとともに、内側シュラウド21側で主蒸気Sの流通方向を反転させ、外側シュラウド22側の前縁部7a側から主蒸気Sを流出させる流路が形成されている。
このような第四変形例の翼本体7Dを有する静翼2によれば、高温蒸気流通空間79D内における高温蒸気の流通する流路長さが長くなる。これにより、高温蒸気を高温蒸気流通空間79D内により長い時間留まらせることができる。したがって、高温蒸気の熱エネルギーを効率的に利用して背側面701を加熱することができる。
《第五変形例》
次に、図14を参照して本実施形態の第五変形例について説明する。
第五変形例においては、実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第五変形例の表面積増加部91Eの構成が実施形態と相違する。
第五変形例では、蓋部782Eに表面積増加部91Eとして複数のフィン97が形成されている。フィン97は、蓋部782Eよりも熱伝導性の高い材料で形成されている。フィン97は、翼高さ方向D1に長い矩形平板状をなしている。複数のフィン97は、互いに間隔を空けて溝部閉塞面782aから突出している。
このような第五変形例の蓋部782Eを有する静翼2によれば、フィン97によって溝部閉塞面782aの表面積が増加する。これにより、高温蒸気流通空間79を流れる主蒸気Sの熱が効率良く翼本体7に伝わる。特に、高温蒸気流通空間79を形成する面の中でも背側面701に最も近い溝部閉塞面782aでの熱伝導性が向上し、高温蒸気流通空間79を流れる主蒸気Sの熱エネルギーを効率良く利用して、背側面701を加熱することができる。
《第六変形例》
次に、図15を参照して本実施形態の第六変形例について説明する。
第六変形例においては、実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第六変形例は、蓋部782Fに連通孔98が形成されている。
第六変形例では、加熱部78Fは、高温蒸気流通空間79を形成する面と背側面701とを連通させる複数の連通孔98を有している。本実施形態の連通孔98は、蓋部782Fに形成されている。連通孔98は、溝部閉塞面782aで開口するように蓋部782Fを貫通している。連通孔98は、例えば、円形状の貫通孔である。複数の連通孔98は、千鳥格子状に形成されている。
このような第五変形例の蓋部782Fを有する静翼2によれば、高温蒸気流通空間79を流通する主蒸気Sが連通孔98を介して背側面701に噴出する。その結果、連通孔98から噴出した高温の主蒸気Sが背側面701に沿って流れ、背側面701が直接加熱される。これにより、高温蒸気流通空間79を流れる主蒸気Sの熱エネルギーを効率良く利用して、背側面701を加熱することができる。また、背側面701の近くを流れる主蒸気Sを加熱することで、背側面701の凝結を防止することができる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
なお、加熱部78は、本実施形態のように加熱手段として高温蒸気を利用する構成に限定されるものではない。例えば、加熱部78は、ヒータを有していてもよい。具体的には、高温蒸気流通空間79として形成された空間内に高温蒸気を流通させるのではなく、電気的に加熱可能なヒータを配置してもよい。
また、加熱部78は、実施形態のように背側面701を加熱する構造に限定されるものではない。加熱部78は、腹側面702を加熱する構造とされていてもよい。腹側面702を加熱する場合には、加熱部78は、例えば、腹側板材72の内部で腹側面702と断熱空間77との間に形成されていてもよい。
また、断熱空間形成面84は、実施形態のように曲げ工程S32で形成されることに限定されるものではない。断熱空間形成面84は、ドレン流路形成面82と同様に、除去工程S31で背側板材71の背側板材内側面71a及び腹側板材72の腹側板材内側面72aから窪むように削って形成されてもよい。
また、加熱部78及び断熱空間77は、翼高さ方向D1の全域にわたって形成されていることに限定されるものではない。加熱部78F及び断熱空間77は、翼高さ方向D1において特にドレンが付着しやすい領域のみに形成されていてもよい。
また、吸込口74は、翼高さ方向D1に連続した形状で形成されていることに限定されるものではない。吸込口74は、複数の連通路76に繋がれていれば、翼高さ方向D1に不連続なスリットとして形成されていてもよい。
また、吸込口74が、翼高さ方向D1の全域にわたって形成されていることに限定されるものではない。吸込口74は、翼面70の先端部側の一部の領域のみに形成されていてもよい。
また、吸込口74は、腹側面702のみに形成されることに限定されるものではない。したがって、吸込口74は、背側面701に形成されていてもよい。
また、ドレン流路形成面82は、実施形態のように背側板材71の背側板材内側面71a及び腹側板材72の腹側板材内側面72aの両方から窪むように形成されることに限定されるものではない。ドレン流路形成面82は、背側板材71の背側板材内側面71a及び腹側板材72の腹側板材内側面72aのいずれか一方のみから窪むように形成されていてもよい。
また、ドレン流路形成面82は、実施形態のように除去工程S31で形成されることに限定されるものではない。例えば、ドレン流路形成面82は、断熱空間形成面84と同様に、曲げ工程S32で形成されてもよい。